(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025149016
(43)【公開日】2025-10-08
(54)【発明の名称】マウント装置及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G03B 17/14 20210101AFI20251001BHJP
【FI】
G03B17/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024049440
(22)【出願日】2024-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001988
【氏名又は名称】弁理士法人小林国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 孝之
【テーマコード(参考)】
2H101
【Fターム(参考)】
2H101EE08
2H101EE33
2H101EE57
(57)【要約】
【課題】本発明は、質量が大きく、また、全長が長いなど、大型化したアクセサリー装置を撮像装置にマウントする場合においても、アクセサリー装置が撮像装置から引きはがされようとする力を抑制して、撮像装置へのアクセサリー装置の係合を強化することができるマウント装置及び撮像装置を提供する。
【解決手段】係止部材22は、回転可能に支持され、第1方向R1に回すと、レンズ鏡筒12と係合する第1リング部材21を、レンズ鏡筒12の光軸方向OAに押圧してレンズ鏡筒12を係止し、第2方向R2に回すと、押圧を解除する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と、
アクセサリー装置を装着する場合に、前記アクセサリー装置と係合する第1リング部材と、
回転可能に支持され、第1方向に回すと、前記アクセサリー装置と係合する前記第1リング部材を、前記アクセサリー装置の光軸方向に押圧して前記アクセサリー装置を係止し、第2方向に回すと、前記押圧を解除する係止部材とを備えるマウント装置。
【請求項2】
前記第1リング部材は、前記光軸方向の厚みが変化する第1斜面部を複数有し、
前記係止部材は、前記光軸方向の厚みが変化する第2斜面部を複数有し、
前記係止部材を前記第1方向に回すと、前記係止部材の径方向に沿って、前記第2斜面部が前記第1斜面部と重なることによって、前記係止部材が前記光軸方向に押圧される請求項1記載のマウント装置。
【請求項3】
前記第1斜面部及び前記第2斜面部はそれぞれ3カ所である請求項2記載のマウント装置。
【請求項4】
前記係止部材を前記第1方向に回した場合には、前記第2斜面部の始点部が、前記第1方向になるほど前記厚みが大きくなる前記第1斜面部を押圧しながら回転する請求項2記載のマウント装置。
【請求項5】
前記第1リング部材は、前記アクセサリー装置と係合する係合部を複数有し、
前記係止部材による前記第1リング部材への押圧によって、前記係合部が前記アクセサリー装置を押圧する請求項1記載のマウント装置。
【請求項6】
前記第1リング部材に係合された前記アクセサリー装置を付勢する付勢部を有し、
前記第1リング部材に設けられ、前記光軸方向の厚みが変化する複数の第1斜面部間に、前記付勢部が設けられている請求項1記載のマウント装置。
【請求項7】
前記第1リング部材を前記光軸方向に移動可能、及び、前記係止部材を回転可能な状態で結合するための結合部を有する第2リング部材を備え、
前記第2リング部材は、締結部材で前記固定部材に締結されており、
前記第1リング部材は、前記光軸方向の厚みが、始点部から終点部にかけて変化する第1斜面部を複数有し、
前記結合部と、前記第1斜面部の終点部とのなす角度は15°以内である請求項1記載のマウント装置。
【請求項8】
前記第1リング部材を前記光軸方向に移動可能、及び、前記係止部材を回転可能な状態で結合するための結合部を有する第2リング部材を備え、
前記係止部材には、前記係止部材の径方向に沿って、前記結合部が挿通される挿通孔が形成されている請求項1ないし7のいずれか1項に記載のマウント装置。
【請求項9】
前記挿通孔は、前記係止部材の径方向のストロークが40°以内となるように、形成されている請求項8記載のマウント装置。
【請求項10】
前記光軸方向への移動が可能であり、前記アクセサリー装置に係合されるピン部材を備える請求項1ないし7のいずれか1項に記載のマウント装置。
【請求項11】
前記第1リング部材を前記光軸方向に移動可能、及び、前記係止部材を回転可能な状態で結合するための結合部を有する第2リング部材を備え、
前記係止部材には、前記係止部材の径方向に沿って、前記ピン部材及び前記結合部が挿通される挿通孔が形成されている請求項10記載のマウント装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに1項記載のマウント装置を備えた撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マウント装置及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、交換レンズが結合されたマウントアダプタをカメラボディに結合させる場合において、カメラボディに設けられたレンズマウントの抓み部を回動させることにより、レンズマウントのマウント爪部と、レンズマウントに取り付けられたマウントアダプタの可動筒のうち一方の端部に設けられた第1のマウント爪部とが係合することが記載されている。
【0003】
特許文献2には、レンズマウントに交換レンズを取り付ける場合において、レバーを回転させることにより、レンズマウント側のバヨネット爪部とレンズバヨネット爪部とが当接して、交換レンズがレンズマウントに対して取り付けられることが記載されている。
【0004】
特許文献3には、レンズ装置などの光学装置をカメラ4に取り付ける場合において、レンズマウントをカメラマウントに挿入し、光学装置側の押圧手段を光軸方向に移動させることにより、光学装置をカメラの被写体側面に圧接することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-78902号公報
【特許文献2】特開2015-60076号公報
【特許文献3】特開2020-118774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、質量が大きく、また、全長が長いなど、大型化したアクセサリー装置を撮像装置にマウントする場合においても、アクセサリー装置が撮像装置から引きはがされようとする力を抑制して、撮像装置へのアクセサリー装置の係合を強化することができるマウント装置及び撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のマウント装置は、固定部材と、アクセサリー装置を装着する場合に、アクセサリー装置と係合する第1リング部材と、回転可能に支持され、第1方向に回すと、アクセサリー装置と係合する第1リング部材を、アクセサリー装置の光軸方向に押圧してアクセサリー装置を係止し、第2方向に回すと、押圧を解除する係止部材とを備える。
【0008】
第1リング部材は、光軸方向の厚みが変化する第1斜面部を複数有し、係止部材は、光軸方向の厚みが変化する第2斜面部を複数有し、係止部材を第1方向に回すと、係止部材の径方向に沿って、第2斜面部が第1斜面部と重なることによって、係止部材が光軸方向に押圧されることが好ましい。
【0009】
第1斜面部及び第2斜面部はそれぞれ3カ所であることが好ましい。係止部材を第1方向に回した場合には、第2斜面部の始点部が、第1方向になるほど厚みが大きくなる第1斜面部を押圧しながら回転することが好ましい。
【0010】
第1リング部材は、アクセサリー装置と係合する係合部を複数有し、係止部材による第1リング部材への押圧によって、係合部がアクセサリー装置を押圧することが好ましい。
【0011】
第1リング部材に係合されたアクセサリー装置を付勢する付勢部を有し、第1リング部材に設けられ、光軸方向の厚みが変化する複数の第1斜面部間に、付勢部が設けられていることが好ましい。
【0012】
第1リング部材を光軸方向に移動可能、及び、係止部材を回転可能な状態で結合するための結合部を有する第2リング部材を備え、第2リング部材は、締結部材で固定部材に締結されており、第1リング部材は、光軸方向の厚みが、始点部から終点部にかけて変化する第1斜面部を複数有し、結合部と、第1斜面部の終点部とのなす角度は15°以内であることが好ましい。
【0013】
第1リング部材を光軸方向に移動可能、及び、係止部材を回転可能な状態で結合するための結合部を有する第2リング部材を備え、係止部材には、係止部材の径方向に沿って、結合部が挿通される挿通孔が形成されていることが好ましい。挿通孔は、係止部材の径方向のストロークが40°以内となるように、形成されていることが好ましい。
【0014】
光軸方向への移動が可能であり、アクセサリー装置に係合されるピン部材を備えることが好ましい。第1リング部材を光軸方向に移動可能、及び、係止部材を回転可能な状態で結合するための結合部を有する第2リング部材を備え、係止部材には、係止部材の径方向に沿って、ピン部材及び結合部が挿通される挿通孔が形成されていることが好ましい。上記本発明のマウント装置を備えた撮像装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、質量が大きく、また、全長が長いなど、大型化したアクセサリー装置を撮像装置にマウントする場合においても、アクセサリー装置が撮像装置から引きはがされようとする力を抑制して、撮像装置へのアクセサリー装置の係合を強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】デジタルカメラ及びレンズ鏡筒を示す斜視図である。
【
図4】第1リング部材、係止部材、及び、第2リング部材の分解斜視図である。
【
図9】係止部材を第1方向に回した場合の第1リング部材の光軸方向の移動を示す説明図である。
【
図10】係止部材を第2方向に回した場合の第1リング部材の光軸方向の移動を示す説明図である。
【
図12】第1リング部材及び付勢リングの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、デジタルカメラ10は、被写体を撮像するための撮像装置であり、カメラボディ11、交換式のレンズ鏡筒12を備える。カメラボディ11の前面には、マウント装置13、レリーズスイッチ14、電源スイッチ(図示せず)等が設けられている。マウント装置13には、レンズ鏡筒12が着脱自在に装着される。
【0018】
図2及び
図3に示すように、マウント装置13は、カメラボディ11に固定される固定部材20と、第1リング部材21と、係止部材22とを備えている。第1リング部材21は、レンズ鏡筒12を装着する場合に、レンズ鏡筒12と係合する。第1リング部材21には、レンズ鏡筒12と係合する係合部として、バヨネット爪21aが、120°の間隔で3つ設けられている。
【0019】
係止部材22は、固定部材20に対して回転可能に支持され、第1リング部材21に係合されたレンズ鏡筒12をロックするロック部材として機能する。係止部材22は、時計回りの第1方向R1に回すと、レンズ鏡筒12と係合する第1リング部材21を、レンズ鏡筒の光軸方向OAに押圧して、レンズ鏡筒12を係止する。一方、係止部材22は、反時計回りの第2方向R2に回すと、前記第1リング部材21に対する押圧を解除する。係止部材22には、係止部材22を第1方向R1又は第2方向R2に回転させるための回転レバー22aが設けられている。
【0020】
図4に示すように、マウント装置13は、第1リング部材21を光軸方向OAに移動可能、及び、係止部材22を回転可能な状態で結合するために結合部24aを有する第2リング部材24を備えている。結合部24aはボスなどであり、6個設けられている。結合部24aは、係止部材22の挿通孔22b、第1リング部材21の挿通孔21bの順で、それぞれに挿通されている。この状態で、結合部24aに対して、締結部材であるネジ24b(
図2参照)を螺合することによって、第2リング部材24は固定部材20に締結されている。
【0021】
図5に示すように、第1リング部材21は、120°間隔で、第1斜面部26が3つ設けられている。第1斜面部26は、
図6に示すように、始点部26aから終点部26bにかけて、光軸方向OAの厚みTh1が変化する。第1斜面部26における厚みTh1は、第1方向R1になるほど、大きくなっている。
図7に示すように、係止部材22は、120°間隔で、第2斜面部28が3つ設けられている。第2斜面部28は、
図8に示すように、始点部28aから終点部28bにかけて、光軸方向OAの厚みTh2が変化する。第2斜面部28における厚みTh2は、第1方向R1になるほど、小さくなっている。
【0022】
係止部材22を第1方向R1に回した場合には、係止部材22の径方向に沿って、第1斜面部26と第2斜面部28とが重なる。この場合、係止部材22における第2斜面部28の始点部28aが、第1方向R1になるほど厚みTh1が大きくなる第1斜面部26を押圧しながら回転する。これにより、
図9に示すように、係止部材22が、光軸方向OAの第1リング部材21側に移動して、第1リング部材21を押圧する。第1リング部材においては、係止部材22による押圧に従って、バヨネット爪21aが、レンズ鏡筒12を押圧する。一方、係止部材22を第2方向R2に回した場合には、係止部材22の径方向に沿って、第1斜面部26と第2斜面部28が重ならなくなる。これにより、
図10に示すように、係止部材22が光軸方向OAの第2リング部材24に移動することで、係止部材22による第1リング部材21への押圧が解除される。これに合わせて、バヨネット爪21aによるレンズ鏡筒12の押圧も解除される。
【0023】
以上のように、係止部材22を用いて第1リング部材21を押圧することによって、レンズ鏡筒12側との光軸方向OAのクリアランスをゼロにすることができるため、レンズ鏡筒12が大型化して、レンズ鏡筒12をデジタルカメラ10から引きはがす力が働いたとしても、レンズ鏡筒12との係止状態は保持される。また、後述するように、レンズ鏡筒12は、付勢部30aによって引き込まれて保持されているが、レンズ鏡筒12の大型化により、レンズ鏡筒12をデジタルカメラ10から引きはがされるモーメント力が、付勢部30aによるレンズ鏡筒12の引き込み力よりも大きくなった場合であっても、係止部材22による第1リング部材21の押圧によって、レンズ鏡筒12がデジタルカメラ10から浮くことを避けることができる。
【0024】
また、レンズ鏡筒12は、マウント装置13のバヨネット爪21aで係合されてレンズ鏡筒12は仮保持可能であるため、係止部材22による第1方向R1への操作時には、レンズ鏡筒12を手で保持する必要がない。一方、係止部材による第2方向R2への操作時にも、レンズ鏡筒12を手で保持する必要がないため、レンズ鏡筒12が脱落するおそれがない。
【0025】
図11に示すように、マウント装置13は、第1リング部材21に係合されたレンズ鏡筒12を付勢する付勢部30aを有する付勢リング30を備えている。
図12に示すように、付勢部30aは、120°間隔で、第1リング部材21の第1斜面部26間に3つ設けられている。付勢部30aは板バネであり、レンズ鏡筒12がバヨネット爪21aで係合されると、レンズ鏡筒12のバヨネット爪係合部(図示しない)が、付勢部30aによって、付勢される。なお、付勢リング30には、第2リング部材24の結合部24aが挿通される挿通孔30bと、ピン部材32(
図14参照)が挿通される切り欠き30cとが形成されている。
【0026】
図13に示すように、第2リング部材24の結合部24aは、第1リング部材21の第1斜面部26とのなす角度θ1は、15°以内であることが好ましい。角度θ1を15°以内とすることで、係止部材22による押圧時に、第1リング部材21と第2リング部材24の変形を小さくすることができる。
【0027】
図14に示すように、係止部材22の挿通孔22bは、係止部材22の径方向のストロークθ2が40°以内となるように、ストロークθ2を40°以内とすることで、結合部24aを少なくとも6点確保することができるため、第2リング部材24による結合強度を確保することができる。
【0028】
挿通孔22bには、光軸方向OAへの移動が可能であり、レンズ鏡筒12に係合されるピン部材32も挿通される。ピン部材32は、レンズ鏡筒12の装着開始時に第2リング部材24に当接されると、光軸方向OAのカメラボディ11側に押圧される。そして、レンズ鏡筒12がバヨネット爪21aに係合されると、ピン部材32は、光軸方向OAのレンズ鏡筒12側に移動して、ピン部材32がレンズ鏡筒12に係合される。ピン部材32は、光軸方向OAのレンズ鏡筒12側に付勢されているため、マウント装置13に設けられたピン解除ボタン33を操作しない限り、ピン部材32によるレンズ鏡筒12への係合が維持される。
【0029】
そして、ピン解除ボタン33を操作することで、ピン部材32は、光軸方向OAのカメラボディ11側に移動する。これにより、ピン部材32によるレンズ鏡筒12への係合が解除されて、レンズ鏡筒12の取り外しが可能となる。
【0030】
次に、係止部材22を用いたレンズ鏡筒12の係止方法(ロック方法)及び係止解除方法(アンロック方法)について、説明する。レンズ鏡筒12をマウント装置13に係止する場合においては、レンズ鏡筒12を装着し、第1リング部材21のバヨネット爪21aに係合させる。その状態で、係止部材22を第1方向R1に回すことにより、第1リング部材21と係合するレンズ鏡筒12は、レンズ鏡筒12の光軸方向OAに押圧されて、レンズ鏡筒12が係止される。一方、レンズ鏡筒12の係止を解除する場合には、係止部材22を第2方向R2に回すことにより、係止部材22によるレンズ鏡筒12への押圧が解除される。
【0031】
なお、上記実施形態では、レンズ鏡筒12をマウント装置13に装着する場合について、説明しているが、その他のアクセサリー装置をマウント装置13に装着してもよい。例えば、アクセサリー装置として、マウントアダプタをマウント装置13に装着してもよい。
【符号の説明】
【0032】
10 デジタルカメラ
11 カメラボディ
12 レンズ鏡筒
13 マウント装置
14 レリーズスイッチ
20 固定部材
21 第1リング部材
21a バヨネット爪
21b 挿通孔
22 係止部材
22a 回転レバー
22b 挿通孔
24 第2リング部材
24a 結合部
24b ネジ
26 第1斜面部
26a 始点部
26b 終点部
28 第2斜面部
28a 始点部
28b 終点部
30 付勢リング
30a 付勢部
30b 挿通孔
30c 切り欠き
32 ピン部材
33 ピン解除ボタン
OA 光軸
R1 第1方向
R2 第2方向