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特開2025-149186画像処理装置、方法およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025149186
(43)【公開日】2025-10-08
(54)【発明の名称】画像処理装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20251001BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B5/055 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024049672
(22)【出願日】2024-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】淵上 卓也
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB38
4C096AC06
4C096AD07
4C096AD14
4C096BB16
4C096BB18
4C096BB23
4C096BB24
4C096BB25
4C096DC19
4C096DC23
4C096DC28
4C096DC37
4C096EA03
(57)【要約】
【課題】画像処理装置、方法およびプログラムにおいて、撮影範囲を精度よく設定できるようにする。
【解決手段】プロセッサは、被検体についての第1方向の複数の断層面のそれぞれを表す複数の第1断層画像と、第1方向に交わる第2方向の断層面を表す少なくとも1つの第2断層画像とに基づいて撮影範囲を設定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
被検体についての第1方向の複数の断層面のそれぞれを表す複数の第1断層画像と、前記第1方向に交わる第2方向の断層面を表す少なくとも1つの第2断層画像とに基づいて、撮影範囲を設定する、
画像処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記第1断層画像と前記第2断層画像とに基づいて前記第2方向の断層面における前記被検体内の構造物に関する存在情報を導出し、
前記存在情報に基づいて前記撮影範囲を設定する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
複数の構造物が前記被検体に含まれる場合において、
前記プロセッサは、前記第2断層画像に含まれる前記構造物については、前記第2断層画像に基づいて前記存在情報を導出し、
前記第2断層画像に基づいて導出した存在情報に基づいて、前記第2断層画像に含まれる前記構造物に関する撮影範囲を設定し、
前記第2断層画像に含まれない前記構造物については、前記第1断層画像に基づいて前記存在情報を導出し、
前記第1断層画像に基づいて導出した存在情報に基づいて、前記第2断層画像に含まれない前記構造物に関する撮影範囲を設定する請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記複数の第1断層画像に含まれる前記構造物の位置を表す第1位置を導出し、
前記第2断層画像に含まれる前記構造物の位置を表す第2位置を導出し、
前記第1位置および前記第2位置に基づいて前記存在情報を導出する請求項2または3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記第2断層画像をディスプレイに表示し、
前記第2断層画像において前記撮影範囲を表す指標を表示する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記第1断層画像に基づいて導出された前記撮影範囲を表す第1指標と、前記第2断層画像に基づいて導出された前記撮影範囲を表す第2指標とを区別して表示する請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記第1断層画像に基づいて導出された前記撮影範囲が前記第2断層画像の範囲外にある場合、前記第2方向における仮想的な構造物を含む仮想的な第2断層画像を前記ディスプレイに表示し、
前記仮想的な第2断層画像上に前記第1指標および前記第2指標を表示する請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、N枚の前記第1断層画像から前記第1断層画像よりもスライス厚が小さいM枚(M>N)の断層画像を含む前記被検体の疑似3次元画像を導出し、
前記疑似3次元画像に基づいて前記撮影範囲を導出する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記被検体が構造物を含み、前記構造物は前記被検体の椎骨または椎間板であり、
前記撮影範囲は前記椎骨および前記椎間板の少なくとも一方の撮像面である請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記第1方向の断層面はサジタル面であり、
前記第2方向の断層面はコロナル面である請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、隣接する前記椎骨または前記椎間板の撮像面の傾きの差があらかじめ定められた範囲内となるように前記撮像面を設定する請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記隣接する前記椎骨または前記椎間板の撮像面の傾きの差があらかじめ定められた範囲を超えた場合、隣接する前記椎骨または前記椎間板の前記撮像面の傾きの差が前記あらかじめ定められた範囲となるように前記撮像面の傾きを補正する請求項11に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、複数の前記椎骨または前記椎間板の中心線を規定し、
前記中心線と直交するように前記撮像面を設定する請求項11に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記被検体が構造物を含み、前記構造物は腎臓である請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記第1方向の断層面はコロナル面であり、
前記第2方向の断層面はアキシャル面であり、
前記撮影範囲は前記腎臓が存在する範囲である請求項14に記載の画像処理装置。
【請求項16】
コンピュータが、被検体についての第1方向の複数の断層面のそれぞれを表す複数の第1断層画像と、前記第1方向に交わる第2方向の断層面を表す少なくとも1つの第2断層画像とに基づいて、撮影範囲を設定する、
画像処理方法。
【請求項17】
被検体についての第1方向の複数の断層面のそれぞれを表す複数の第1断層画像と、前記第1方向に交わる第2方向の断層面を表す少なくとも1つの第2断層画像とに基づいて、撮影範囲を設定する手順をコンピュータに実行させる、
画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CT(Computed Tomography)装置およびMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等の医療機器の進歩により、より質の高い高解像度でスライス厚が小さい画像が画像診断に用いられるようになってきている。
【0003】
CT装置およびMRI装置等の撮影装置において被検体の撮影を行う場合、撮影範囲を決定するために、スライス厚が小さい(またはスライス間隔が小さい)画像を取得するための本撮影に先立ってスカウト撮影が行われ、本撮影の画像より相対的にスライス厚が大きい(またはスライス間隔が大きい)位置決め用画像(スカウト画像)が取得される。技師等の撮影装置の操作者は、スカウト画像を見ながら本撮影時の撮影範囲を設定する。
【0004】
一方、スカウト画像を見ながらの撮影範囲の設定は、操作者が手動で行う必要があるため、時間を要する。また、操作者の能力および経験に依存するために設定の精度にばらつきが生じる。このため、スカウト画像から自動で撮影範囲を設定するための各種手法が提案されている。例えば、アキシャル面、サジタル面およびコロナル面のそれぞれのスカウト画像からランドマークを検出し、ランドマークを用いてアキシャル面、サジタル面およびコロナル面のそれぞれについての撮影範囲を決定するための手法が提案されている(非特許文献1参照)。また、脊椎のMRI画像に関して、複数のサジタル像それぞれから椎間板領域を抽出し、抽出された複数の2次元の椎間板領域に基づいて、3次元の椎間板領域を抽出し、抽出された3次元の椎間板領域に基づいて、椎間板像の撮影範囲を設定する手法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-121598号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】インターネット<URL:https://www.siemens-healthineers.com/en-us/magnetic-resonance-imaging/technologies-and-innovations/dotgo-workflow
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された手法は、サジタル画像のみを用いて撮影範囲を設定するものであるため、サジタル面以外の他の面における撮影範囲を精度よく設定することができない。
【0008】
本開示は上記事情に鑑みなされたものであり、撮影範囲を精度よく設定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示による画像処理装置は、少なくとも1つのプロセッサを備え、
プロセッサは、被検体についての第1方向の複数の断層面のそれぞれを表す複数の第1断層画像と、第1方向に交わる第2方向の断層面を表す少なくとも1つの第2断層画像とに基づいて、撮影範囲を設定する。
【0010】
本開示による画像処理方法は、コンピュータが、被検体についての第1方向の複数の断層面のそれぞれを表す複数の第1断層画像と、第1方向に交わる第2方向の断層面を表す少なくとも1つの第2断層画像とに基づいて、撮影範囲を設定する。
【0011】
本開示による画像処理プログラムは、被検体についての第1方向の複数の断層面のそれぞれを表す複数の第1断層画像と、第1方向に交わる第2方向の断層面を表す少なくとも1つの第2断層画像とに基づいて、撮影範囲を設定する手順をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、撮影範囲を精度よく設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の第1の実施形態による画像処理装置を適用したMRI装置の概要を示す斜視図
図2】第1の実施形態による画像処理装置のハードウェア構成を示す図
図3】第1の実施形態による画像処理装置の機能的な構成を示す図
図4】第1断層画像におけるランドマークの導出を説明するための図
図5】第2断層画像におけるランドマークの導出を説明するための図
図6】サジタル画像に含まれる構造物に関する存在情報の導出を説明するための図
図7】サジタル画像に含まれる隣接する椎骨間にある椎間板を通る平面を示す図
図8】サジタル画像に含まれる構造物に関する存在情報の導出説明するための図
図9】サジタル画像に含まれる構造物に関する存在情報の他の導出を説明するための図
図10】サジタル画像とコロナル画像との位置関係を説明するための図
図11】コロナル画像に含まれる構造物に関する存在情報の導出を説明するための図
図12】コロナル画像に含まれる椎間板を通る直線を示す図
図13】コロナル画像に含まれる構造物に関する存在情報の導出を説明するための図
図14】コロナル画像に含まれる構造物に関する存在情報の他の導出を説明するための図
図15】サジタル画像への脊椎中心線の設定を説明するための図
図16】コロナル画像に含まれる構造物に関する撮影範囲の設定を説明するための図
図17】表示されたスカウト画像を示す図
図18】表示されたスカウト画像を示す図
図19】第1の実施形態において行われる処理を示すフローチャート
図20】第2の実施形態による画像処理装置の機能的な構成を示す図
図21】導出モデルの学習を説明するための図
図22】第2の実施形態において第2導出部が行う処理を説明するための図
図23】第2の実施形態において行われる処理を示すフローチャート
図24】腎臓のMRI撮影時におけるスカウト画像を用いた撮影範囲の設定を説明するための図
図25】一方の腎臓のアキシャル面に垂直な方向におけるサイズが小さい場合のスカウト画像を示す図
図26】第3の実施形態におけるコロナル画像における腎臓領域の導出を説明するための図
図27】第3の実施形態におけるアキシャル画像における腎臓領域の導出を説明するための図
図28】コロナル画像に含まれる腎臓に関する存在情報の導出を説明するための図
図29】アキシャル画像に含まれる腎臓に関する存在情報の導出を説明するための図
図30】第3の実施形態における撮影範囲の設定を説明するための図
図31】第3の実施形態において行われる処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。図1は本開示の第1の実施形態による画像処理装置を適用した撮影装置の概要を示す斜視図である。図1に示すように、本実施形態による撮影装置はMRI装置1であって、ガントリ2、寝台3およびコンソール4を備える。
【0015】
ガントリ2は、その中央に開口部5を有するトンネル状の構造を有する。ガントリ2の内部には、静磁場磁石、高周波磁場コイル、および傾斜磁場コイルで構成される磁場発生部が内蔵されている(いずれも不図示)。寝台3には、不図示の受信コイルが配される。受信コイルは、高周波磁場によって被検体Hの撮影部位から発せられる核磁気共鳴信号を受信する。受信コイルにより受信した核磁気共鳴信号に基づいて、核磁気共鳴画像すなわちMRI画像が生成される。
【0016】
寝台3は、被検体が横たわる寝台部3A、寝台部3Aを支持する基部3B、および寝台部3Aを矢印A方向に往復移動させる駆動部3Cを有する。寝台部3Aは、駆動部3Cにより基部3Bに対して矢印A方向にスライド可能である。MRI画像の撮影を行う場合、寝台部3Aがスライドすることで、寝台部3Aに横たわる被検体Hはガントリ2の開口部5内に搬送される。
【0017】
ガントリ2の駆動および寝台3の駆動による被検体の撮影は、コンソール4からの操作者の入力により行われる。コンソール4は、第1の実施形態に係る画像処理装置を内包する。
【0018】
次いで、コンソール4に内包される第1の実施形態に係る画像処理装置について説明する。まず、図2を参照して、第1の実施形態に係る画像処理装置のハードウェア構成を説明する。図2に示すように、画像処理装置20は、CPU(Central Processing Unit)11、ディスプレイ14、入力デバイス15、メモリ16、およびネットワーク4に接続されるネットワークI/F(InterFace)17を含む。CPU11、ディスプレイ14、入力デバイス15、メモリ16およびネットワークI/F17は、バス19に接続される。なお、CPU11は、本開示におけるプロセッサの一例である。
【0019】
メモリ16は、記憶部13およびRAM(Random Access Memory)18を含む。RAM18は、一次記憶用のメモリであり、例えば、SRAM(Static Random Access Memory)またはDRAM(Dynamic Random Access Memory)等のRAMである。
【0020】
記憶部13は、不揮発性のメモリであり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、およびフラッシュメモリ等の少なくとも1つによって実現される。記憶媒体としての記憶部13には、本実施形態による画像処理プログラム12が記憶される。CPU11は、記憶部13から画像処理プログラム12を読み出してRAM18に展開し、展開した画像処理プログラム12を実行する。
【0021】
ディスプレイ14は、各種画面を表示する装置であり、例えば、液晶ディスプレイまたはEL(Electro Luminescence)ディスプレイである。入力デバイス15は、ユーザが入力を行うための装置であり、例えば、キーボード、マウス、音声入力用のマイク、接触を含む近接入力用のタッチパッド、およびジェスチャー入力用のカメラの少なくともいずれかである。ネットワークI/F17は、ネットワーク4に接続するためのインタフェースである。
【0022】
なお、画像処理プログラム12は、ネットワークに接続されたサーバコンピュータの記憶装置、あるいはネットワークストレージに、外部からアクセス可能な状態で記憶され、要求に応じて画像処理装置10を構成するコンピュータにダウンロードされ、インストールされる。または、DVD(Digital Versatile Disc)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の記録媒体に記録されて配布され、その記録媒体から画像処理装置10を構成するコンピュータにインストールされる。
【0023】
次いで、第1の実施形態に係る画像処理装置の機能的な構成を説明する。図3は、第1の実施形態に係る画像処理装置の機能的な構成を示す図である。図3に示すように、画像処理装置10は、撮影制御部20、第1導出部21、第2導出部22、第3導出部23、撮影範囲設定部24および表示制御部25を備える。そして、CPU11が、画像処理プログラム12を実行することにより、CPU11は、撮影制御部20、第1導出部21、第2導出部22、第3導出部23、撮影範囲設定部24および表示制御部25として機能する。
【0024】
撮影制御部20は、入力デバイス15からの指示により、被検体Hの撮影を行うようにガントリ2に設けられた磁場発生部および寝台3に設けられた受信コイルを制御する。なお、MRI撮影に際しては、撮影範囲を決定するために、スライス厚が小さいのMRI画像を取得する本撮影に先立ってスカウト撮影が行われる。スカウト撮影は、被検体Hの所定の撮影方向に沿って数枚(例えば3枚)の断層画像を取得するように被検体Hを撮影することにより行われる。断層画像は、例えば、アキシャル面、サジタル面およびコロナル面のうちの少なくとも1つの面を示す画像である。撮影方向とは、アキシャル面、サジタル面およびコロナル面のそれぞれに垂直な方向である。
【0025】
なお、第1の実施形態においては、被検体Hの脊椎のMRI画像を取得するものとし、脊椎に含まれる複数の椎骨および複数の椎間板の撮影範囲を設定するものとする。撮影範囲を設定するために、第1の実施形態においては、本撮影の前に撮影範囲を設定するためのスカウト撮影が行われ、被検体Hのサジタル面およびコロナル面の断層画像であるサジタル画像およびコロナル画像がスカウト画像として取得される。
【0026】
スカウト撮影により取得されるスカウト画像は、本撮影により取得されるMRI画像より相対的にスライス厚が大きい複数の断層画像を含む。本実施形態においては、スカウト画像に基づいて自動で本撮影時の撮影範囲が設定される。撮影範囲の設定については後述する。撮影範囲の設定後、操作者が本撮影の指示を入力デバイス15から行うことにより、撮影制御部20が本撮影を行う。これにより、被検体HのMRI画像が取得される。なお、本撮影により取得されるMRI画像は、スカウト画像より相対的にスライス厚が小さい複数の断層画像を含む。例えば、スカウト画像のスライス厚は3mm以上であり、本撮影のMRI画像のスライス厚は1mm程度である。スカウト撮影により取得されたスカウト画像および本撮影により取得されたMRI画像はストレージ13に保存される。
【0027】
第1導出部21は、被検体Hについての第1方向の複数の断層面のそれぞれを表す複数の第1断層画像に含まれる構造物のランドマークを導出する。第1の実施形態においては、第1方向をサジタル面に垂直な方向とし、第1方向の複数の断層面をサジタル面とし、第1断層画像をサジタル画像とする。また、第1導出部21は、サジタル画像に含まれる椎骨のランドマークを導出する。サジタル画像において導出したランドマークが第1位置の一例である。椎骨のランドマークとしては、椎骨を構成する椎体の四隅の点を用いる。例えば、第1導出部21は、サジタル画像から椎体の四隅の点を検出するように機械学習がなされた検出モデルを用いて、椎骨のランドマークを導出する。
【0028】
図4は第1断層画像におけるランドマークの導出を説明するための図である。図4に示すように第1導出部21は、検出モデルを用いることにより、脊椎を含むサジタル画像30において、椎骨を構成する椎体の四隅の点を椎骨のランドマークとして導出する。図4においては導出されたランドマークを黒丸で示している。
【0029】
第2導出部22は、被検体Hについての第2方向の複数の断層面のそれぞれを表す複数の第2断層画像に含まれる構造物のランドマークを導出する。第1の実施形態においては、第2方向をコロナル面に垂直な方向とし、第2方向の複数の断層面をコロナル面とし、第2断層画像をコロナル画像とする。また、第2導出部22は、コロナル画像に含まれる椎骨のランドマークを導出する。コロナル画像において導出したランドマークが第2位置の一例である。椎骨のランドマークとしては、第1導出部21と同様に椎骨を構成する椎体の四隅の点を用いる。例えば、第2導出部22は、コロナル画像から椎体の四隅の点を検出するように機械学習がなされた検出モデルを用いて、椎骨のランドマークを導出する。
【0030】
図5は第2断層画像におけるランドマークの導出を説明するための図である。図5に示すように第2導出部22は、検出モデルを用いることにより、脊椎を含むコロナル画像40において、椎骨を構成する椎体の四隅の点を椎骨のランドマークとして導出する。図5においても導出されたランドマークを黒丸で示している。
【0031】
第3導出部23は、第1導出部21が導出したランドマークおよび第2導出部22が導出したランドマークに基づいて、第2方向の断層面における構造物に関する存在情報を導出する。ここで、椎骨の間には椎間板が存在する。第1の実施形態においては、第3導出部23は、サジタル画像に含まれる椎骨のランドマークおよびコロナル画像に含まれる椎骨のランドマークに基づいて、椎骨および椎間板の少なくとも一方の向きおよび存在範囲を構造物に関する存在情報として導出する。まず、サジタル画像に含まれる構造物に関する存在情報の導出について説明する。なお、以降の説明においては、構造物に関する存在情報として椎間板に関する存在情報を導出するものとする。
【0032】
図6はサジタル画像に含まれる構造物に関する存在情報の導出を説明するための図である。図6には、第3腰椎L3、第4腰椎L4および第3腰椎L3と第4腰椎L4との間にある椎間板35が示されている。まず、第3導出部23は、サジタル画像において導出されたランドマークを用いて、対向する2つの椎骨のランドマークの中点を導出する。例えば、第3導出部23は、サジタル画像に含まれる第3腰椎L3の左下隅のランドマークP31と第4腰椎L4の左上隅のランドマークP41との中点M1、および第3腰椎L3の右下隅のランドマークP32と第4腰椎L4の右上隅のランドマークP42との中点M2を導出する。また、第3導出部23は、第3腰椎L3の左下隅のランドマークP31、第3腰椎L3の右下隅のランドマークP32、第4腰椎L4の左上隅のランドマークP41、および第4腰椎L4の右上隅のランドマークP42の重心M3を導出する。
【0033】
サジタル画像30は複数取得されているため、第3導出部23は、複数のサジタル画像30のそれぞれに含まれる第3腰椎L3および第4腰椎L4に対して図6と同様の処理を行うことにより、複数のサジタル画像30のそれぞれにおいて、第3腰椎L3および第4腰椎L4のランドマークの中点MI,M2、および重心M3を導出する。第3導出部23は、複数のサジタル画像30について導出した第3腰椎L3および第4腰椎L4のランドマークの中点M1,M2、および重心M3を平面フィッティングすることにより、第3腰椎L3と第4腰椎L4との間を通る平面、すなわち椎間板35を通る平面を導出する。
【0034】
第3導出部23は、複数のサジタル画像30に含まれる複数の椎骨に対して上記と同様の処理を行うことにより、複数のサジタル画像30において隣接する椎骨間にある椎間板を通る平面を導出する。図7は隣接する椎骨間にある椎間板を通る平面を示す図である。図7においては、3枚のサジタル画像30A~30Cについて導出した平面が示されている。なお、第3導出部23は、すべての隣接する椎骨間にある椎間板について平面を導出するが、図7においては、すべての平面の図示を省略し、第4腰椎L4と第3腰椎L3との間の椎間板を通る平面37A、および第1腰椎L1と第12胸椎T12との間の椎間板を通る平面37Dのみを示している。
【0035】
一方、サジタル画像30A~30Cのそれぞれにおいては、図8に示すように椎間板を通る平面は直線で示される。図8においては、すべての椎間板を通る直線の図示を省略し、第4腰椎L4と第3腰椎L3との間の椎間板を通る直線36A、第3腰椎L3と第2腰椎L2との間の椎間板を通る直線36B、第2腰椎L2と第1腰椎L1との間の椎間板を通る直線36C、および第1腰椎L1と第12胸椎T12との間の椎間板を通る直線36Dのみを示している。
【0036】
上述したように第3導出部23が導出した椎間板を通る平面37A,37D(サジタル画像においては直線36A~36D)が、椎間板の向きおよび存在範囲を表す存在情報、すなわち構造物に関する存在情報の一例である。
【0037】
なお、本実施形態において、第3導出部23は、サジタル画像30に関して、隣接する椎骨についてのランドマークの中点および重心から存在情報を導出しているが、これに限定されるものではない。図9は存在情報の他の導出を説明するための図である。図9に示すように、第3導出部23は、第3腰椎L3の上側の2つのランドマークP33,P34を通る直線33A、および第3腰椎L3の下側の2つのランドマークP31,P32を通る直線33Bを導出する。また、第4腰椎L4については、第3導出部23は、第4腰椎L4の上側の2つのランドマークP41,P42を通る直線34Aおよび第4腰椎L4の下側の2つのランドマークP43,P44を通る直線34Bを導出する。さらに、第3導出部23は、第3腰椎L3の下側において導出された直線33Bと、第4腰椎L4の上側において導出された直線34Aとの間を2等分する直線36Aを導出する。直線36Aは椎間板を通るため、椎間板の向きおよび存在範囲を示す直線となる。
【0038】
第3導出部23は、サジタル画像30に含まれるすべての椎骨について図9と同様の処理を行うことにより、サジタル画像30におけるすべての椎骨の上側および下側の2つのランドマークを通る直線を導出し、隣接する椎骨の対向する2つの直線を2等分する直線、すなわち椎間板を通る直線を導出する。これにより、図8に示すように、すべてのサジタル画像について椎間板を通る直線(図8においては直線36A~36Dのみを示す)が、椎間板に関する存在情報として導出される。
【0039】
ここで、サジタル画像30は複数取得されている。このため、第3導出部23は、すべてのサジタル画像についてすべての椎骨の上側および下側の2つのランドマークを通る直線および2つの直線に基づく椎間板を通る直線を導出する。この場合において、第3導出部23は、3枚のサジタル画像30A~30Cにおいて同一の椎間板について導出した直線36を平面フィッティングすることにより、図7に示すように椎間板を通る平面(図7においては平面37A,37Dのみを示す)を導出することができる。
【0040】
ここで、スカウト画像として取得されるサジタル画像とコロナル画像との位置関係について説明する。図10はサジタル画像とコロナル画像との位置関係を説明するための図である。スカウト画像は、比較的大きいスライス間隔により、各断層面において数枚(例えば3枚)取得される。図10に示すように、サジタル画像30に直線で示すコロナル面S1,S2,S3においてコロナル画像が取得されたとする。人の脊柱は人体の前後方向に湾曲している。このため、いずれのコロナル面S1~S3においてもコロナル画像にはすべての椎骨が含まれなくなる。なお、図10においてはコロナル面S3のコロナル画像40を示している。図10に示すコロナル画像40においては、サジタル画像30における範囲32に含まれる椎骨が含まれない。
【0041】
コロナル画像40に含まれる椎骨については、第3導出部23は、第2導出部22が導出したランドマークに基づいて、第2方向の断層面における構造物に関する存在情報を導出する。
【0042】
図11はコロナル画像に含まれる構造物に関する存在情報の導出を説明するための図である。図11には、図6と同様に、第3腰椎L3、第4腰椎L4および第3腰椎L3と第4腰椎L4との間にある椎間板35が示されている。まず、第3導出部23は、コロナル画像において導出されたランドマークを用いて、対向する2つの椎骨のランドマークの中点を導出する。例えば、第3導出部23は、コロナル画像に含まれる第3腰椎L3の左下隅のランドマークP35と第4腰椎L4の左上隅のランドマークP45との中点M4、および第3腰椎L3の右下隅のランドマークP36と第4腰椎L4の右上隅のランドマークP46との中点M5を導出する。また、第3導出部23は、第3腰椎L3の左下隅のランドマークP35、第3腰椎L3の右下隅のランドマークP36、第4腰椎L4の左上隅のランドマークP45、および第4腰椎L4の右上隅のランドマークP46の重心M6を導出する。第3導出部23は、中点M4と中点M5とを通る直線46Aを導出する。直線46Aは椎間板35を通る直線となる。重心M6については後述する。
【0043】
第3導出部23は、コロナル画像40に含まれるすべての椎骨について図11と同様の処理を行うことにより、コロナル画像40におけるすべての椎骨間の椎間板を通る直線を導出する。図12は、コロナル画像に含まれる椎間板を通る直線を示す図である。なお、図12においては、すべての椎間板を通る直線の図示を省略し、第4腰椎L4と第3腰椎L3との間の椎間板を通る直線46A、第3腰椎L3と第2腰椎L2との間の椎間板を通る直線46B、第2腰椎L2と第1腰椎L1との間の椎間板を通る直線46C、および第1腰椎L1と第12胸椎T12との間の椎間板を通る直線46Dのみを示している。直線46Aが、椎間板の向きおよび存在範囲を表す存在情報、すなわち構造物に関する存在情報の一例である。
【0044】
なお、コロナル画像はスカウト撮影により複数(本実施形態においては3枚)取得されている。このため、第3導出部23は、すべてのコロナル画像についてすべての椎間板を通る直線を導出してもよい。この場合、第3導出部23は、図13に示すように、3枚のコロナル画像40A~40Cにおいて導出した同一の椎間板を通る直線を平面フィッティングすることにより椎間板を通る平面を導出し、導出した平面を椎間板の向きおよび存在範囲を表す存在情報、すなわち構造物に関する存在情報として導出してもよい。なお、第3導出部23は、すべての隣接する椎骨間にある椎間板について平面を導出するが、図13においてはすべての平面の図示を省略し、第4腰椎L4と第3腰椎L3との間の平面である撮影範囲47A、および第1腰椎L1と第12胸椎T12との間の平面である撮影範囲47Dのみを示している。なお、平面フィッティングに際しては、図11に示すようにして導出した重心M6をさらに用いるようにしてもよい。
【0045】
一方、上述した図10に示すように、コロナル画像40の範囲32においては、椎骨が含まれないため構造物に関する存在情報を導出することができない。本実施形態においては、第3導出部23は、図10に示すコロナル画像40の範囲32においては、サジタル画像30において導出した椎間板を通る平面と、コロナル画像40が示すコロナル面との交線をコロナル画像40についての椎間板を通る直線として導出する。
【0046】
なお、本実施形態では、図11に示すように、椎骨のランドマークから中点M4,M5を導出し、中点M4,M5を通る直線46Aを椎間板35を通る直線、すなわち構造物に関する存在情報として導出しているが、これに限定されるものではない。例えば、サジタル画像30において椎間板35を通る平面を導出する際に用いた点群に、コロナル画像40から導出した中点M4,M5を加えて平面フィッティング等することによって補正し、補正後の平面と、コロナル画像40が示すコロナル面との交線を、椎間板35を通る直線として導出してもよい。
【0047】
また、本実施形態では、椎骨のランドマークから椎骨に関する存在範囲として重心M3さらには重心M6を導出しているが、これに限定されるものではない。例えば、ランドマークが写っていない可能性が相対的に低いサジタル画像30から取得した重心M3を、ランドマークが写っていない部分を含む可能性が相対的に高いコロナル画像40から取得した重心M6により補正し、補正後の重心M3を存在範囲としてもよい。具体的には、サジタル面がY軸とZ軸で示され、コロナル面がX軸とZ軸に対応する場合は、重心M3のX座標を重心M6のX座標に置き換えるようにしてもよい。
【0048】
なお、本実施形態において、第3導出部23は、コロナル画像40に関して、隣接する椎骨についてのランドマークの中点および重心から存在情報を導出しているが、これに限定されるものではない。図14はコロナル画像を用いた存在情報の他の導出を説明するための図である。図14に示すように、第3導出部23は、第3腰椎L3の上側の2つのランドマークP37,P38を通る直線43Aおよび第3腰椎L3の下側の2つのランドマークP35,P36を通る直線43Bを導出する。また、第4腰椎L4については、第3導出部23は、第4腰椎L4の上側の2つのランドマークP45,P46を通る直線44Aおよび第4腰椎L4の下側の2つのランドマークP47,P48を通る直線44Bを導出する。さらに、第3導出部23は、第3腰椎L3の下側において導出された直線43Bと、第4腰椎L4の上側において導出された直線44Aとの間を2等分する直線46Aを導出する。直線46Aは椎間板を通るため、椎間板の向きおよび存在範囲を示す直線となる。
【0049】
第3導出部23は、コロナル画像40に含まれるすべての椎骨について図14と同様の処理を行うことにより、コロナル画像40におけるすべての椎骨の上側および下側の2つのランドマークを通る直線を導出し、隣接する椎骨の対向する2つの直線を2等分する直線、すなわち椎間板を通る直線を導出する。これにより、図12に示すように、コロナル画像40に含まれる椎間板を通る直線(図12においては直線46A~46Dのみを示す)が、椎間板に関する存在情報として導出される。
【0050】
ここで、コロナル画像40は複数取得されている。このため、第3導出部23は、すべてのコロナル画像についてすべての椎骨の上側および下側の2つのランドマークを通る直線およびこれに基づく椎間板を通る直線を導出する。この場合において、第3導出部23は、図13に示すように、3枚のコロナル画像40A~40Cにおいて同一の椎間板について導出した直線を平面フィッティングすることにより平面(図13においては平面47A,47Dのみを示す)を導出することができる。
【0051】
撮影範囲設定部24は、第3導出部23が導出した構造物に関する存在情報に基づいて、次の撮影、すなわち本撮影のための撮影範囲を設定する。具体的には、サジタル画像およびコロナル画像はスカウト画像であることから、スカウト画像よりもスライス厚が小さいMRI画像を取得するための本撮影を行う際の撮影範囲を設定する。
【0052】
具体的には、撮影範囲設定部24は、サジタル面に対して椎間板を通る平面が示す傾きおよびコロナル面に対して椎間板を通る直線が示す傾きを撮像面の傾きとして設定し、重心M3および重心M6の少なくとも一方を撮像中心として設定する。ここで、サジタル面に対して椎間板を通る平面が示す傾きとは、サジタル面の水平方向を示すアキシャル面と平面(例えば図7に示す平面37A,37D)とがなす傾きである。すなわち、サジタル面とアキシャル面との交線と、サジタル面と椎間板を通る平面との交線とがなす傾きである。また、コロナル面に対して椎間板を通る直線(例えば図12に示す直線46A~46D)が示す傾きとは、コロナル面の水平方向を示すアキシャル面との交線と、椎間板を通る直線とがなす傾きである。また、撮像中心とは、撮影領域の中心となる位置である。なお、重心M3のみを撮像中心として設定するようにしてもよい。
【0053】
なお、撮影範囲設定部24は、図15に示すように、サジタル画像30におけるすべての椎体のランドマークから椎体の重心を導出し、例えばスプライン曲線により重心を通るように脊椎中心線39を導出し、脊椎中心線39に基づいて撮影範囲を設定してもよい。椎体の重心とは、具体的には、図9に示す第3腰椎L3の場合、第3腰椎L3の4つのランドマークのL31~L34の重心である。なお、コロナル画像40においても同様に脊椎中心線39を導出して撮影範囲を設定してもよい。この場合、コロナル画像40において、ランドマークが導出できていない椎体の重心については、サジタル画像30において導出した椎体の重心を用いてコロナル画像40における脊椎中心線39を導出してもよい。また、撮影範囲設定部24は、具体的には、脊椎中心線39と直交する直線または平面を撮影範囲として設定してもよい。
【0054】
また、撮影範囲設定部24は、基準となる線または面に対して撮影範囲がなす角度があらかじめ定められた範囲内のものとなるように、撮影範囲を設定してもよい。例えば、撮影範囲を表すサジタル画像30若しくはコロナル画像40のいずれか上の直線、または、サジタル面若しくはコロナル面のいずれかと撮影範囲を示す平面とがなす交線が、サジタル画像30またはコロナル画像40の水平線、すなわちサジタル面またはコロナル面のいずれかとアキシャル面との交線に対して例えば、-20度~+20度の範囲となるように撮影範囲を設定してもよい。
【0055】
また、撮影範囲設定部24は、隣接する椎間板についての撮影範囲すなわち撮像面がなす角度があらかじめ定められた範囲内のものとなるように、撮影範囲を設定してもよい。例えば、隣接する撮影範囲を表す直線、すなわちサジタル画像30若しくはコロナル画像40のいずれか上の直線、またはサジタル面若しくはコロナル面のいずれかと撮影範囲を示す平面との交線の傾きの相違が-10度~+10度の範囲となるように撮影範囲を設定してもよい。とくに、隣接する椎間板についての撮影範囲すなわち撮像面がなす角度があらかじめ定められた範囲を超えた場合、隣接する椎間板についての撮影範囲がなす角度があらかじめ定められた範囲となるように、撮影範囲を補正してもよい。これにより、隣接する椎間板について導出された存在範囲が自然な傾きとなるように椎間板の存在範囲を導出することができる。
【0056】
なお、上記実施形態においては、第1導出部21および第2導出部22において椎体の四隅の点をランドマークとして導出しているが、これに限定されるものではない。椎間板領域内の点、例えば、椎間板の中心位置、および重心位置のいずれか一方の点をランドマークとして導出してもよい。
【0057】
図16は、含まれない椎骨すなわち椎間板についても撮影範囲を設定したコロナル画像を示す図である。なお、図16においては、説明のために撮影範囲を直線で示している。図16に示すように、コロナル画像40には、コロナル画像40に含まれる椎骨間の椎間板についての撮影範囲46A~46Dに加えて、コロナル画像40に含まれない椎骨間の椎間板についての撮影範囲48A~48Dが示されている。撮影範囲48A~48Dは、上述したようにサジタル画像30に基づいて導出した椎間板に関する存在情報をコロナル画像40に反映することにより導出される。なお、図16においても、一部の椎間板に対する撮影範囲を表す直線のみを付与しているが、実際にはコロナル画像40に含まれるすべての椎間板に関する撮影範囲を表す直線が付与される。
【0058】
なお、本実施形態において、撮影範囲として、椎骨のランドマークから椎間板の撮影範囲を導出する場合を示しているが、椎骨の撮影範囲を導出してもよい。この場合、例えば、サジタル画像30において、隣接する椎骨において椎間板の側にある2つのランドマークを結ぶ直線の少なくとも一方(例えば、図9においては直線33Bおよび直線34Aの少なくとも一方)から平面を導出し、導出した平面に基づいてサジタル面における撮像面の傾きを設定すればよい。また、コロナル画像40において、隣接する椎骨において椎間板の側にある2つのランドマークを結ぶ直線(例えば、図14においては直線43Bおよび直線44Aの少なくとも一方)を導出し、導出した直線に基づいてコロナル面における撮像面の傾きを設定すればよい。また、椎骨の4つのランドマークの重心を撮像中心として設定すればよい。撮像中心を導出する画像はサジタル画像30およびコロナル画像40の少なくとも一方であればよい。
【0059】
表示制御部25は、撮影範囲設定部24が設定した撮影範囲を含むスカウト画像を表示する。図17は表示されたスカウト画像を示す図である。図17に示すようにスカウト画像の表示画面50には、サジタル画像30およびコロナル画像40が表示される。サジタル画像30には、撮影範囲36A~36Dを表す指標51A~51D,52A~52Dが直線により表示されている。コロナル画像40には、サジタル画像30に表示された撮影範囲を表す指標51A~51Dに対応する撮影範囲を表す指標53A~53Dが表示される。また、コロナル画像40には、サジタル画像30に表示された撮影範囲を表す指標52A~52Dに対応する撮影範囲を表す指標54A~54Dが表示される。指標53A~53Dが第2指標の一例であり、指標54A~54Dが第1指標の一例である。
【0060】
ここで、図17に示す表示画面においても一部の撮影範囲を示す指標のみを示しているが、実際にはサジタル画像30またはコロナル画像40に含まれるすべての椎骨に関する撮影範囲を示す指標が表示される。また、サジタル画像30およびコロナル画像40の少なくとも一方が複数枚取得されている場合は、表示画面50に表示されるサジタル画像またはコロナル画像を入力デバイス15からの指示により切り替えることができる。
【0061】
なお、コロナル画像40に表示された撮影範囲はコロナル画像40に基づいて導出されたもののみではなく、サジタル画像30に基づいて導出されたものも含む。このため、コロナル画像40において、コロナル画像40に基づいて導出された撮影範囲を表す指標とサジタル画像30に基づいて導出された撮影範囲を表す指標とを区別して表示してもよい。図15においては、コロナル画像40に基づいて導出された撮影範囲を表す指標53A~53Dを実線で示し、サジタル画像30に基づいて導出された撮影範囲を表す指標54A~54Dを破線で示している。なお、線種を異なるものとすることに代えて、指標53A~53Dと指標54A~54Dとで色を異なるものとしてもよい。指標54A~54Dが第1指標の一例であり、指標53A~53Dが第2指標の一例である。
【0062】
また、スカウト画像としてのコロナル画像においては、一部の椎骨が含まれないため、表示される撮影範囲と椎骨との関係がわかりにくい。このため、図18に示すように、コロナル画像40に含まれない椎骨52を含む仮想的なコロナル画像40Dを表示し、仮想的なコロナル画像40Dに撮影範囲を表す指標を表示するようにしてもよい。
【0063】
次いで、第1の実施形態において行われる処理について説明する。図19は第1の実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。なお、スカウト画像はすでに取得されてストレージ13に保存されているものとする。
【0064】
まず、第1導出部21が、被検体Hについての第1方向の複数の断層面のそれぞれを表す複数の第1断層画像に含まれる構造物の第1位置を導出する(ステップST1)。すなわち、サジタル画像30に含まれる椎骨のランドマークを導出する。また、第2導出部22が、被検体Hについての第2方向の少なくとも1つの断層面を表す第2断層画像に含まれる構造物の第2位置を導出する(ステップST2)。すなわち、コロナル画像40に含まれる椎骨のランドマークを導出する。なお、ステップST1,ST2の処理は並列に行ってもよく、ステップST2の処理をステップST1の処理よりも先に行ってもよい。
【0065】
次いで、第3導出部23が、サジタル画像30から導出したランドマークおよびコロナル画像40から導出したランドマークに基づいて、第2方向の断層面における構造物に関する存在情報を導出する(ステップST3)。すなわち、サジタル画像30に含まれる椎骨のランドマークおよびコロナル画像40に含まれる椎骨のランドマークに基づいて、コロナル面における椎間板の傾きおよび存在範囲を、構造物すなわち椎間板に関する存在情報として導出する。
【0066】
続いて、撮影範囲設定部24が、第3導出部23が導出した椎間板に関する存在情報に基づいて本撮影のための撮影範囲を設定する(ステップST4)。さらに、表示制御部25が、設定した撮影範囲を示す指標、すなわち直線と併せて少なくともコロナル画像40をディスプレイ14に表示し(ステップST5)、処理を終了する。なお、表示制御部25は、直線と併せてコロナル画像40およびサジタル画像30を同時にディスプレイ14に表示してもよく、ユーザによる切替指示入力に応じてコロナル画像40とサジタル画像30とを切り替えて表示してもよい。
【0067】
このように、第1の実施形態においては、サジタル画像30とコロナル画像40とに基づいて撮影範囲を設定するようにした。このため、スカウト撮影のように撮影枚数が少ないことからコロナル画像40において椎骨の一部が含まれない場合であっても、サジタル画像30を用いてコロナル面における次の撮影のための撮影範囲を設定することができる。したがって、第1の実施形態によれば、スカウト画像を用いてMRI画像の本撮影時における撮影範囲を精度よく設定できる。
【0068】
また、本実施形態においては、サジタル画像30およびコロナル画像40のそれぞれに含まれる椎骨のランドマークに基づいて、構造物すなわち椎間板に関する存在情報を導出し、存在情報に基づいて次の撮影のための撮影範囲を設定するようにした。このため、撮影対象となる構造物の特徴を用いて精度よく存在情報を導出することができ、これにより、本撮影時における撮影範囲をより精度よく設定できる。
【0069】
また、コロナル画像40に撮影範囲を示す指標(直線)を表示する際に、コロナル画像40に基づいて導出した撮影範囲を表す指標と、サジタル画像30に基づいて導出した撮影範囲を表す指標とを区別して表示するようにした。このため、コロナル画像40を見た操作者は撮影範囲がどのように設定されたかを確認することができる。
【0070】
また、コロナル画像40に撮影範囲を示す指標を表示する際に、コロナル画像40に含まれない構造物については、仮想的な椎骨を含む仮想的なコロナル画像40Dに指標を表示することにより、椎骨と撮影範囲との位置関係の把握が容易となる。
【0071】
次いで、本開示の第2の実施形態について説明する。図20は第2の実施形態に係る画像処理装置の機能構成図である。なお、第2の実施形態において第1の実施形態と同一の構成については同一の参照番号を付与し、ここでは詳細な説明は省略する。第2の実施形態に係る画像処理装置10Aは、複数のサジタル画像からサジタル画像よりスライス厚またはスライス間隔が小さい複数の断層画像を含む疑似3次元画像を導出し、疑似3次元画像を用いて撮影範囲を設定するようにした点が第1の実施形態と異なる。このために、第2の実施形態においては、第1導出部21が導出モデル21Aを備える。
【0072】
導出モデル21Aは、複数の第1断層画像すなわち複数のサジタル画像から疑似3次元画像を導出する機械学習モデルである。図21は導出モデル21Aの機械学習に使用される教師データを示す図である。図21に示すように、教師データ60は、実際の本撮影により取得されたスライス厚またはスライス間隔が小さいMRI画像61およびMRI画像61からスライスを間引いた、数枚(ここでは3枚)のサジタル画像62が使用される。MRI画像61は、サジタル面に垂直な方向においてスライス間隔がスカウト画像よりも小さい複数のサジタル画像からなる。なお、サジタル面に垂直な方向とは、サジタル画像の撮影方向である。例えば、サジタル面とアキシャル面の交線が示す方向、または、被検体の左右方向を示す。MRI画像61からスライスを間引いた後のサジタル画像62の数は、スカウト撮影により取得されるサジタル画像30の数と同一とすればよい。例えば、スカウト画像により3枚のサジタル画像を取得する場合には、MRI画像61から3枚のサジタル画像62が残るようにスライスを間引けばよい。
【0073】
導出モデル21Aの機械学習に際し、サジタル画像62がモデル64に入力され、モデル64から疑似3次元画像65が出力される。そして、疑似3次元画像65とMRI画像61との差異が損失66として導出され、所定の条件を満足するまで学習を繰り返すことにより導出モデル21Aが構築される。所定の条件としては、損失66がしきい値以下となるまで、あるいはあらかじめ定められた回数の学習が終了するまでとするが、これらに限定されるものではない。
【0074】
これにより、導出モデル21Aにスカウト画像として取得されたサジタル画像30が入力されると、サジタル面に垂直な方向におけるスライス間隔がスカウト画像よりも密となる疑似3次元画像が出力される。
【0075】
図22は第2の実施形態において第1導出部21が行う処理を説明するための図である。第2の実施形態においては、第1導出部21は、導出モデル21Aによりスカウト画像として取得された数枚(ここでは3枚)のサジタル画像30から疑似3次元画像70を導出する。疑似3次元画像70は、スカウト画像として取得されたサジタル画像30よりもスライス間隔が小さい、より多くのサジタル画像からなるものとなっている。
【0076】
このため、疑似3次元画像70を用いることにより、サジタル面に垂直な方向において、同一の椎骨について導出したランドマークがスカウト画像よりも近い位置に存在することとなる。したがって、疑似3次元画像70を用いることにより、スカウト画像として取得されたサジタル画像30を用いる場合よりも、存在情報、すなわち椎間板または椎骨の方向および存在範囲をより精度よく導出することができる。よって、第2の実施形態においては撮影範囲設定部24により、本撮影のための撮影範囲をより精度よく設定することができる。
【0077】
次いで、第2の実施形態において行われる処理について説明する。図23は、第2の実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。なお、スカウト画像はすでに取得されてストレージ13に保存されているものとする。
【0078】
まず、第1導出部21が、導出モデル21Aを用いて、複数の第1断層画像から被検体の疑似3次元画像を導出する(ステップST11)。すなわち、数枚のサジタル画像30から疑似3次元画像70を導出する。そして、第1導出部21は、疑似3次元画像70において構造物の第1位置を導出する(ステップST12)。すなわち、疑似3次元画像70に含まれるサジタル画像における椎骨のランドマークを導出する。
【0079】
次いで、第2導出部22が、コロナル画像40に含まれる構造物の第2位置を導出する(ステップST13)。すなわち、コロナル画像40に含まれる椎骨のランドマークを導出する。なお、ステップST11,ST12の処理とステップST13の処理とは並列に行ってもよく、ステップST13の処理をステップST11,ST12の処理よりも先に行ってもよい。
【0080】
次いで、第3導出部23が、疑似3次元画像70から導出したランドマークおよびコロナル画像40から導出したランドマークに基づいて、第2方向の断層面における構造物に関する存在情報を導出する(ステップST14)。すなわち、疑似3次元画像70におけるサジタル画像に含まれる椎骨のランドマークおよびコロナル画像40に含まれる椎骨のランドマークに基づいて、コロナル面における椎間板または椎骨の傾きおよび存在範囲を存在情報として導出する。
【0081】
続いて、撮影範囲設定部24が、第3導出部23が導出した椎間板または椎骨に関する存在範囲に基づいて本撮影のための撮影範囲を設定する(ステップST15)。さらに、表示制御部25が、設定した撮影範囲を示す指標、すなわち直線と併せて少なくともコロナル画像40をディスプレイ14に表示し(ステップST16)、処理を終了する。
【0082】
なお、上記第1および第2の実施形態においては、被検体内の構造物として椎間板または椎骨を用いているが、これに限定されるものではない。例えば、被検体内の構造物を腎臓とすることもできる。以下、被検体内の構造物を腎臓とした場合の処理を第3の実施形態として説明する。
【0083】
図24は腎臓のMRI撮影時におけるスカウト画像を用いた撮影範囲の設定を説明するための図である。図24に示すように、腎臓のMRI画像の撮影の際しては、アキシャル面におけるアキシャル画像80およびコロナル面におけるコロナル画像82がスカウト画像として取得され、アキシャル画像80からコロナル面に垂直な方向における腎臓の範囲81が、コロナル画像82から撮像中心位置83が、それぞれ撮影範囲として設定される。なお、コロナル面に垂直な方向は、被検体の前後方向を示す。
【0084】
一方、2つの腎臓のアキシャル面に垂直な方向における位置が異なったり、一方の腎臓が他方の腎臓よりもサイズが小さかったりする場合、アキシャル画像80に腎臓が2つ含まれなくなる場合がある。例えば、図25に示すように、左右の腎臓のアキシャル面に垂直な方向における位置が異なる場合、アキシャル画像80のアキシャル面がコロナル画像82に直線で示したスライス面84であったとすると、アキシャル画像80には右側の腎臓のみが含まれ、左側の腎臓が含まれなくなる。このような場合、アキシャル画像80のみに基づいて、本撮影時における腎臓のアキシャル面の存在範囲を導出することができない。
【0085】
腎臓を撮影対象とする場合、スカウト画像を取得するためのスカウト撮影時において、コロナル面において腎臓を含むように位置決めがなされる。このため、スカウト画像としてのコロナル画像には2つの腎臓が含まれる。第3の実施形態においては、複数のコロナル画像から、2つの腎臓のコロナル面の存在範囲を導出し、コロナル面の存在範囲に基づいて、本撮影時の撮影範囲を設定するものである。
【0086】
なお、第3の実施形態における画像処理装置の機能的な構成は、上記第1の実施形態に示す画像処理装置の機能的な構成と同一であり、各部が行う処理のみが異なるため、ここでは機能的な構成についての詳細な説明は省略する。
【0087】
第3の実施形態においては、第1導出部21は、被検体Hについての第1方向の複数の断層面のそれぞれを表す複数の第1断層画像に含まれる構造物の第1位置を導出する。第3の実施形態においては、第1方向をコロナル面に垂直な方向とし、第1方向の複数の断層面をコロナル面とし、第1断層画像をコロナル画像とする。また、第1導出部21は、複数のコロナル画像に含まれる腎臓領域を導出する。コロナル画像から導出された腎臓領域が第1位置の一例である。このために、第3の実施形態においては第1導出部21は、MRI画像から腎臓領域を検出するように機械学習がなされた検出モデルを用いる。
【0088】
図26は、第3の実施形態におけるコロナル画像からの腎臓領域の導出を説明するための図である。第3の実施形態においては、3枚のコロナル画像82A~82Cが取得されているものとする。コロナル画像82A~82Cはこの順で人体の前方から後方へ向かうコロナル面の断層画像を示すものとなる。第1導出部21は、図264に示すように、コロナル画像82Aから左右の腎臓領域85AL,85ARを導出し、コロナル画像82Bから左右の腎臓領域85BL,85BRを導出し、コロナル画像82Cから左右の腎臓領域85CL,85CRを導出する。腎臓は空豆のような形状であるため、図26に示すように、人体の前方および後方のコロナル画像82A,82Cにおいて検出された腎臓領域85AL,85BR,85CL,85CRは、コロナル画像82Bにおいて検出された腎臓領域85BL,85BRよりもサイズが小さくなる。
【0089】
第3の実施形態において、第2導出部22は、被検体Hについての第2方向の少なくとも1つの断層面を表す第2断層画像に含まれる構造物の第2位置を導出する。第3の実施形態においては、第2方向をアキシャル面に垂直な方向とし、第2方向の少なくとも1つの断層面をアキシャル面とし、第2断層画像をアキシャル画像とする。また、第2導出部22は、少なくとも1つのアキシャル画像に含まれる腎臓領域を導出する。アキシャル画像から導出された腎臓領域が第2位置の一例である。このために、第3の実施形態において、第2導出部22は、MRI画像から腎臓領域を検出するように機械学習がなされた検出モデルを用いる。
【0090】
図27は、第3の実施形態におけるアキシャル画像からの腎臓領域の導出を説明するための図である。第3の実施形態においては、3枚のアキシャル画像80A~80Cが取得されているものとする。アキシャル画像80A~80Cはこの順で人体の上方から下方へ向かうアキシャル面の断層画像を示すものとなる。なお、図27に示すアキシャル画像80A~80Cには、人体の左側の腎臓が含まれていない。第2導出部22は、図27に示すように、アキシャル画像80Aから右側の腎臓領域86ARを導出し、アキシャル画像80Bから右側の腎臓領域86BRを導出し、アキシャル画像80Cから右側の腎臓領域86CRを導出する。図27に示すように、アキシャル画像80Aからは右側の腎臓の上部の腎臓領域86ARのみが検出されている。アキシャル画像80Bからは右側の腎臓の中央付近の腎臓領域86BRのみが検出されている。アキシャル画像80Cからは右側の腎臓の下方の腎臓領域86CRのみが検出されている。
【0091】
第3の実施形態においては、第3導出部23は、第1導出部21が導出したコロナル画像に含まれる腎臓領域、および第2導出部22が導出したアキシャル画像に含まれる腎臓領域に基づいて、コロナル面に垂直な方向における腎臓に関する存在情報を導出する。まず、コロナル画像に含まれる腎臓に関する存在情報の導出について説明する。なお、コロナル面に垂直な方向とは、人体の前後方向を示す。
【0092】
まず、第3導出部23は、コロナル画像において導出された腎臓領域を用いて、コロナル面における腎臓に関する存在情報を導出する。すなわち、コロナル画像82A~82Cのそれぞれにおいて導出された腎臓領域85AL,85AR,85BL,85BR,85CL,85CRのサイズおよびコロナル画像82A~82Cのスライス間隔に基づいて、腎臓の位置および存在範囲を存在情報として導出する。
【0093】
図28は、コロナル画像に含まれる腎臓に関する存在情報の導出を説明するための図である。図28に示すように、第3導出部23は、コロナル画像82A~82Cのそれぞれにおいて導出された腎臓領域85AL,85BL,85CLのサイズおよびコロナル画像82A~82Cのスライス間隔に基づいて、左腎臓の位置および存在範囲を存在情報87Lとして導出する。また、第3導出部23は、コロナル画像82A~82Cのそれぞれにおいて導出された腎臓領域85AR,85BR,85CRのサイズおよびコロナル画像82A~82Cのスライス間隔に基づいて、右腎臓の位置および存在範囲を存在情報87Rとして導出する。
【0094】
なお、存在情報を導出するために、第3導出部23は、例えばコロナル画像のスライス間隔およびコロナル画像のそれぞれに含まれる腎臓領域のサイズに基づいて腎臓に関する存在範囲を導出するように機械学習がなされた導出モデルを用いればよいが、これに限定されるものではない。
【0095】
また、第3導出部23は、アキシャル画像において導出された腎臓領域を用いてアキシャル面における腎臓に関する存在情報を導出する。図29はアキシャル画像に含まれる腎臓に関する存在情報の導出を説明するための図である。図29に示すように、第3導出部23は、アキシャル画像80A~80Cのそれぞれにおいて導出された腎臓領域86AR,86BR,86CRのサイズおよびアキシャル画像80A~80Cのスライス間隔に基づいて、腎臓の位置および存在範囲を存在情報として導出する。
【0096】
なお、存在情報を導出するために、第3導出部23は、例えばアキシャル画像のスライス間隔およびアキシャル画像のそれぞれに含まれる腎臓領域のサイズに基づいて腎臓の存在範囲を導出するように機械学習がなされた導出モデルを用いればよいが、これに限定されるものではない。
【0097】
ここで、図27に示すように、アキシャル画像80A~80Cには左側の腎臓が含まれない。このため、第3導出部23は、アキシャル画像80A~80Cに含まれる右側の腎臓領域についてのみ存在情報89Rを導出する。第3導出部23は、アキシャル画像80A~80Cから導出できない左側の腎臓領域に関する存在情報については、コロナル画像82A~82Cから導出した左側の腎臓に関する存在情報87Lを用いて導出する。具体的には、複数のコロナル画像82A~82Cのそれぞれにおける腎臓領域と、それぞれの断層画像のコロナル面と垂直な方向の位置関係に基づいて3次元的な腎臓に関する存在情報を導出し、3次元的な存在情報におけるアキシャル画像に対応する存在情報を、アキシャル画像から導出した腎臓に関する存在情報により補正する。
【0098】
なお、3次元的な存在情報の補正は、アキシャル画像から導出した存在情報と置き換えるだけでもよいが、導出モデルまたは特定の演算式等によって、置き換えた領域を中心に補正が伝播されるようにしてもよい。例えば、コロナル画像に垂直な方向をY軸とする場合において、コロナル画像から導出された存在領域と、対応するアキシャル画像から導出された存在領域のY座標を置き換えるようにし、置き換えたY座標の変化量に応じて、隣接するコロナル画像から導出した存在領域のY座標を補正するようにしてもよい。これにより、アキシャル画像を取得していない領域においてもより適切な存在範囲を導出することができる。
【0099】
撮影範囲設定部24は、第3導出部23が導出した腎臓に関する存在情報に基づいて本撮影のための撮影範囲を設定する。具体的には、取得したコロナル画像82およびアキシャル画像80はスカウト画像であることから、被検体Hの本撮影を行う際の腎臓の撮像中心位置および腎臓の前後方向の範囲を撮影範囲として設定する。
【0100】
図30は、第3の実施形態における撮影範囲の設定を説明するための図である。図30に示すようにアキシャル画像80A~80Cには、右側の腎臓のみしか含まれていないため、撮影範囲設定部24は、右側の腎臓に関する存在情報89Rに加えて、コロナル画像82A~82Cから導出した左側の腎臓に関する存在情報87Lを用いて、人体の前後方向における腎臓の範囲90を設定する。また、図30に示すように、コロナル画像82A~82Cにおいて導出された右側の腎臓に関する存在情報87Rおよび左側の腎臓に関する存在情報87Lに基づいて、撮像中心位置91を撮影範囲として導出する。
【0101】
次いで、第3の実施形態において行われる処理について説明する。図31は第3の実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。なお、スカウト画像はすでに取得されてストレージ13に保存されているものとする。
【0102】
まず、第1導出部21が、被検体Hについての第1方向の複数の断層面のそれぞれを表す複数の第1断層画像に含まれる構造物の第1位置を導出する(ステップST21)。すなわち、コロナル画像82A~82Cのそれぞれに含まれる腎臓領域を導出する。また、第2導出部22が、被検体Hについての第2方向の少なくとも1つの断層面を表す少なくとも1つの第2断層画像に含まれる構造物の第2位置を導出する(ステップST22)。すなわち、アキシャル画像80A~80Cのそれぞれに含まれる腎臓領域を導出する。なお、ステップST21,ST22の処理は並列に行ってもよく、ステップST22の処理をステップST21の処理よりも先に行ってもよい。
【0103】
次いで、第3導出部23が、コロナル画像から導出された腎臓領域およびアキシャル画像から導出された腎臓領域に基づいて、第2方向の断層面における構造物に関する存在情報を導出する(ステップST23)。すなわち、コロナル画像82A~82Cに含まれる腎臓領域およびアキシャル画像80A~80Cに含まれる腎臓領域に基づいて、アキシャル面における腎臓に関する存在情報を導出する。
【0104】
続いて、撮影範囲設定部24が、第3導出部23が導出した腎臓に関する存在情報に基づいて次の撮影のための撮影範囲を設定する(ステップST24)。さらに、表示制御部25が、設定した撮影範囲を示す指標、すなわち腎臓の人体の前後方向における範囲90およびコロナル断面における撮像中心91をそれぞれアキシャル画像80A~80Cおよびコロナル画像82A~82Cに付与してディスプレイ14に表示し(ステップST25)、処理を終了する。
【0105】
なお、上記各実施形態においては、MRI装置に対して本開示による画像処理装置を適用しているが、これに限定されるものではない。撮影範囲を設定するためのスカウト画像を本撮影の前に取得する撮影装置であれば、CT装置等に対して本開示による画像処理装置を適用してもよい。
【0106】
また、上記各実施形態においては、画像処理装置が撮影制御部20を備えるものとしているが、これに限定されるものではない。撮影制御部20を画像処理装置とは別個に設けるようにしてもよい。
【0107】
また、上記第1および第2の実施形態においては複数のコロナル画像をスカウト画像として取得し、上記第3の実施形態においては複数のアキシャル画像をスカウト画像として取得しているが、これに限定されるものではない。上記第1および第2の実施形態において、1つのコロナル画像をスカウト画像として取得してもよい。また、上記第3の実施形態において、1つのアキシャル画像をスカウト画像として取得してもよい。
【0108】
また、上記各実施形態においては、コンソール4が本実施形態に係る画像処理装置を内包しているが、これに限定されるものではない。本実施形態に係る画像処理装置をコンソール4にネットワークを介して接続された装置としてもよい。すなわち、画像処理装置は、ガントリ2および寝台3と接続されていなくてもよく、ガントリ2および寝台3の制御を行わなくてもよい。
【0109】
また、上記各実施形態において、例えば、撮影制御部20、第1導出部21、第2導出部22、第3導出部23、撮影範囲設定部24および表示制御部25といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、上述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device :PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0110】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせまたはCPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0111】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントおよびサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアとの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0112】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(Circuitry)を用いることができる。
【0113】
以下、本開示の付記項を記載する。
(付記項1)
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
被検体についての第1方向の複数の断層面のそれぞれを表す複数の第1断層画像と、前記第1方向に交わる第2方向の断層面を表す少なくとも1つの第2断層画像とに基づいて、撮影範囲を設定する、
画像処理装置。
(付記項2)
前記プロセッサは、前記第1断層画像と前記第2断層画像とに基づいて前記第2方向の断層面における前記被検体内の構造物に関する存在情報を導出し、
前記存在情報に基づいて前記撮影範囲を設定する付記項1に記載の画像処理装置。
(付記項3)
複数の構造物が前記被検体に含まれる場合において、
前記プロセッサは、前記第2断層画像に含まれる前記構造物については、前記第2断層画像に基づいて前記存在情報を導出し、
前記第2断層画像に基づいて導出した存在情報に基づいて、前記第2断層画像に含まれる前記構造物に関する撮影範囲を設定し、
前記第2断層画像に含まれない前記構造物については、前記第1断層画像に基づいて前記存在情報を導出し、
前記第1断層画像に基づいて導出した存在情報に基づいて、前記第2断層画像に含まれない前記構造物に関する撮影範囲を設定する付記項2に記載の画像処理装置。
(付記項4)
前記プロセッサは、前記複数の第1断層画像に含まれる前記構造物の位置を表す第1位置を導出し、
前記第2断層画像に含まれる前記構造物の位置を表す第2位置を導出し、
前記第1位置および前記第2位置に基づいて前記存在情報を導出する付記項2または3に記載の画像処理装置。
(付記項5)
前記プロセッサは、前記第2断層画像をディスプレイに表示し、
前記第2断層画像において前記撮影範囲を表す指標を表示する付記項1から4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
(付記項6)
前記プロセッサは、前記第1断層画像に基づいて導出された前記撮影範囲を表す第1指標と、前記第2断層画像に基づいて導出された前記撮影範囲を表す第2指標とを区別して表示する付記項5に記載の画像処理装置。
(付記項7)
前記プロセッサは、前記第1断層画像に基づいて導出された前記撮影範囲が前記第2断層画像の範囲外にある場合、前記第2方向における仮想的な構造物を含む仮想的な第2断層画像を前記ディスプレイに表示し、
前記仮想的な第2断層画像上に前記第1指標および前記第2指標を表示する付記項6に記載の画像処理装置。
(付記項8)
前記プロセッサは、N枚の前記第1断層画像から前記第1断層画像よりもスライス厚が小さいM枚(M>N)の断層画像を含む前記被検体の疑似3次元画像を導出し、
前記疑似3次元画像に基づいて前記撮影範囲を導出する付記項1から7のいずれか1項に記載の画像処理装置。
(付記項9)
前記被検体が構造物を含み、前記構造物は前記被検体の椎骨または椎間板であり、
前記撮影範囲は前記椎骨および前記椎間板の少なくとも一方の撮像面である付記項1から8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
(付記項10)
前記第1方向の断層面はサジタル面であり、
前記第2方向の断層面はコロナル面である付記項9に記載の画像処理装置。
(付記項11)
前記プロセッサは、隣接する前記椎骨または前記椎間板の撮像面の傾きの差があらかじめ定められた範囲内となるように前記撮像面を設定する付記項10に記載の画像処理装置。
(付記項12)
前記プロセッサは、前記隣接する前記椎骨または前記椎間板の撮像面の傾きの差があらかじめ定められた範囲を超えた場合、隣接する前記椎骨または前記椎間板の前記撮像面の傾きの差が前記あらかじめ定められた範囲となるように前記撮像面の傾きを補正する付記項11に記載の画像処理装置。
(付記項13)
前記プロセッサは、複数の前記椎骨または前記椎間板の中心線を規定し、
前記中心線と直交するように前記撮像面を設定する付記項11に記載の画像処理装置。
(付記項14)
前記被検体が構造物を含み、前記構造物は腎臓である付記項1から8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
(付記項15)
前記第1方向の断層面はコロナル面であり、
前記第2方向の断層面はアキシャル面であり、
前記撮影範囲は前記腎臓が存在する範囲である付記項14に記載の画像処理装置。
(付記項16)
コンピュータが、被検体についての第1方向の複数の断層面のそれぞれを表す複数の第1断層画像と、前記第1方向に交わる第2方向の断層面を表す少なくとも1つの第2断層画像とに基づいて、撮影範囲を設定する、
画像処理方法。
(付記項17)
被検体についての第1方向の複数の断層面のそれぞれを表す複数の第1断層画像と、前記第1方向に交わる第2方向の断層面を表す少なくとも1つの第2断層画像とに基づいて、撮影範囲を設定する手順をコンピュータに実行させる、
画像処理プログラム。
【符号の説明】
【0114】
1 MRI装置
2 ガントリ
3 寝台
3A 寝台部
3B 基部
3C 駆動部
4 コンソール
10,10A 画像処理装置
11 CPU
12 画像処理プログラム
13 ストレージ
14 ディスプレイ
15 入力デバイス
16 メモリ
17 ネットワークI/F
18 バス
20 撮影制御部
21 第1導出部
21A 導出モデル
22 第2導出部
23 第3導出部
24 撮影範囲設定部
25 表示制御部
30,30A~30C サジタル画像
40 コロナル画像
33A,33B,34A,34B,43A,43B,44A,44B 直線
35 椎間板
36A,36B,36C,36D,37A,37D,46A,46B,46C,46D,47A,47D,48A~48D 撮影範囲
39 脊椎中心線
40D 仮想的なコロナル画像
50 表示画面
51A~51D,52A~52D,53A~53D,54A~54D 指標
60 教師データ
61 MRI画像
62 サジタル画像
64 モデル
65 出力された疑似3次元画像
66 損失
70 疑似3次元画像
80,80A~80C アキシャル画像
81,91 腎臓の範囲
82,82A~82C コロナル画像
83,92 撮像中心位置
84 スライス面
85AL,85AR,85BR,85BR.85CL,85CR,86AR,86BR,86CR 腎臓領域
87R,87L,89R 存在情報
H 被検体
M1,M2,M4,M5 中点
M3,M6 重心
P31~38,P41~48 ランドマーク
S1~S3 コロナル面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
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図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図26
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図28
図29
図30
図31