(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025149589
(43)【公開日】2025-10-08
(54)【発明の名称】コンピュータプログラム、情報処理方法及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G16H 50/30 20180101AFI20251001BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20251001BHJP
G16Y 10/60 20200101ALI20251001BHJP
G16Y 20/40 20200101ALI20251001BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20251001BHJP
【FI】
G16H50/30
G06Q50/10
G16Y10/60
G16Y20/40
G16Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024050331
(22)【出願日】2024-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】517030240
【氏名又は名称】八尾市
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】坂庭 嶺人
(72)【発明者】
【氏名】北村 明彦
【テーマコード(参考)】
5L050
5L099
【Fターム(参考)】
5L050CC11
5L099AA03
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】個人の健康寿命及び寿命を推定するためのコンピュータプログラム、情報処理方法及び情報処理装置を提供する。
【解決手段】コンピュータプログラムは、個人の年齢及び性別、並びに個人の状況を表した状況情報を取得し、取得した年齢、性別及び前記状況情報に応じて、健康寿命モデルを用いて個人の健康寿命の推定値を計算し、取得した年齢、性別及び前記状況情報に応じて、寿命モデルを用いて個人の寿命の推定値を計算し、計算した健康寿命及び寿命の推定値を出力する処理をコンピュータに実行させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人の年齢及び性別、並びに個人の状況を表した状況情報を取得し、
取得した年齢、性別及び前記状況情報に応じて、健康寿命モデルを用いて個人の健康寿命の推定値を計算し、
取得した年齢、性別及び前記状況情報に応じて、寿命モデルを用いて個人の寿命の推定値を計算し、
計算した健康寿命及び寿命の推定値を出力する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項2】
前記健康寿命モデルは、年齢、性別及び前記状況情報、並びに人が夫々の年齢になった時点から所定期間に健康を喪失する確率の標準値を用いて、個人が夫々の年齢になった時点から所定期間に健康を喪失する確率の推定値を表したモデルであり、
前記健康寿命モデルを用いて計算される、取得した年齢から未来の夫々の年齢までに健康を喪失する確率である累積健康喪失確率、又は1から前記累積健康喪失確率を減算した累積健康維持確率に基づいて、個人の健康寿命の推定値を計算し、
前記寿命モデルは、年齢、性別及び前記状況情報、並びに人が夫々の年齢になった時点から所定期間に死亡する確率の標準値を用いて、個人が夫々の年齢になった時点から所定期間に死亡する確率の推定値を表したモデルであり、
前記健康寿命モデルを用いて計算される、取得した年齢から未来の夫々の年齢までに死亡する確率である累積死亡率、又は1から前記累積死亡率を減算した累積生存確率に基づいて、個人の寿命の推定値を計算する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項3】
前記健康寿命モデルは、
個人の状況が健康へ及ぼす影響の大きさを、年齢と前記状況情報に含まれる少なくとも一部の複数の項目との線形和で表し、
前記線形和を指数としネイピア数を底とした指数関数を指数とし、人が夫々の年齢になった時点から一年間に健康を喪失する確率の標準値を底とした二重指数関数により、個人が夫々の年齢になった時点から一年間に健康を喪失する確率の推定値を表したモデルであり、
前記健康寿命モデルと、性別に予め定められている前記標準値と、性別に予め定められている、前記線形和において年齢及び前記複数の項目の夫々に乗じられる係数とを用いて、取得した年齢から未来の夫々の年齢までに健康を喪失する確率である累積健康喪失確率、又は1から前記累積健康喪失確率を減算した累積健康維持確率を計算し、
前記累積健康喪失確率又は前記累積健康維持確率が所定値になる年齢を、個人の健康寿命の推定値とする
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項4】
前記寿命モデルは、
個人の状況が寿命へ及ぼす影響の大きさを、年齢と前記状況情報に含まれる少なくとも一部の複数の項目に含まれる前記複数の項目との線形和で表し、
前記線形和を指数としネイピア数を底とした指数関数を指数とし、人が夫々の年齢になった時点から一年間に死亡する確率の標準値を底とした二重指数関数により、個人が夫々の年齢になった時点から一年間に死亡する確率の推定値を表したモデルであり、
前記寿命モデルと、性別に予め定められている前記標準値と、性別に予め定められている、前記線形和において年齢及び前記複数の項目の夫々に乗じられる係数とを用いて、取得した年齢から未来の夫々の年齢までに死亡する確率である累積死亡率、又は1から前記累積死亡率を減算した累積生存確率を計算し、
前記累積死亡率又は前記累積生存確率が所定値になる年齢を、個人の健康寿命の推定値とする
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項5】
前記係数を、取得した前記状況情報の一部の内容に応じて選択する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項3又は4に記載のコンピュータプログラム。
【請求項6】
取得した前記状況情報に含まれる少なくとも一部の複数の項目の夫々が健康寿命又は寿命の推定値に与える影響の大きさを計算し、
前記複数の項目の中で、健康寿命又は寿命の推定値に与える影響が他の項目よりも大きい項目を出力する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載のコンピュータプログラム。
【請求項7】
出力した項目が健康寿命又は寿命の推定値に与える影響の大きさを出力する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項6に記載のコンピュータプログラム。
【請求項8】
取得した前記状況情報の一部を変更する指示を取得し、
取得した指示に従って変更した前記状況情報に応じて、個人の健康寿命又は寿命の推定値を修正し、
修正した健康寿命又は寿命の推定値を出力する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
前記状況情報は、個人の食生活の習慣、個人の行動の習慣、個人の健康状態、又は個人の社会的な状況を含む
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載のコンピュータプログラム。
【請求項10】
前記健康寿命モデルは、年齢、性別及び前記状況情報を入力した場合に個人の健康寿命の推定値を出力する学習済モデルであるか、又は、
前記寿命モデルは、年齢、性別及び前記状況情報を入力した場合に個人の寿命の推定値を出力する学習済モデルである
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載のコンピュータプログラム。
【請求項11】
個人の年齢及び性別、並びに個人の状況を表した状況情報を取得し、
取得した年齢、性別及び前記状況情報に応じて、健康寿命モデルを用いて個人の健康寿命の推定値を計算し、
取得した年齢、性別及び前記状況情報に応じて、寿命モデルを用いて個人の寿命の推定値を計算し、
計算した健康寿命及び寿命の推定値を出力する
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項12】
演算部を備え、
前記演算部は、
個人の年齢及び性別、並びに個人の状況を表した状況情報を取得し、
取得した年齢、性別及び前記状況情報に応じて、健康寿命モデルを用いて個人の健康寿命の推定値を計算し、
取得した年齢、性別及び前記状況情報に応じて、寿命モデルを用いて個人の寿命の推定値を計算し、
計算した健康寿命及び寿命の推定値を出力する
ことを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人の健康寿命及び寿命を推定するためのコンピュータプログラム、情報処理方法及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平均寿命は、統計に基づき、国又は自治体に属する集団に対して計算される。個人の寿命は平均寿命と同等とは限らず、個人の寿命を推定したいというニーズがある。個人の寿命は、現在の年齢、性別、及び健康状態等の個人の状況に影響される。特許文献1には、学習済モデルを用いて、個人の体調情報に応じて個人の期待余命を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
集団の健康状態を表す指標として、健康寿命がある。健康寿命は、生涯で健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間である。例えば、要介護度が要介護2以上に認定された年齢の平均が健康寿命として用いられることがある。健康寿命は、統計に基づいて集団に対して計算される。個人の健康管理のために、集団の健康寿命だけではなく、個人の健康寿命を推定したいというニーズがある。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、個人の健康寿命及び寿命を推定するためのコンピュータプログラム、情報処理方法及び情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係るコンピュータプログラムは、個人の年齢及び性別、並びに個人の状況を表した状況情報を取得し、取得した年齢、性別及び前記状況情報に応じて、健康寿命モデルを用いて個人の健康寿命の推定値を計算し、取得した年齢、性別及び前記状況情報に応じて、寿命モデルを用いて個人の寿命の推定値を計算し、計算した健康寿命及び寿命の推定値を出力する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0007】
本発明の一形態に係る情報処理方法は、個人の年齢及び性別、並びに個人の状況を表した状況情報を取得し、取得した年齢、性別及び前記状況情報に応じて、健康寿命モデルを用いて個人の健康寿命の推定値を計算し、取得した年齢、性別及び前記状況情報に応じて、寿命モデルを用いて個人の寿命の推定値を計算し、計算した健康寿命及び寿命の推定値を出力することを特徴とする。
【0008】
本発明の一形態に係る情報処理装置は、演算部を備え、前記演算部は、個人の年齢及び性別、並びに個人の状況を表した状況情報を取得し、取得した年齢、性別及び前記状況情報に応じて、健康寿命モデルを用いて個人の健康寿命の推定値を計算し、取得した年齢、性別及び前記状況情報に応じて、寿命モデルを用いて個人の寿命の推定値を計算し、計算した健康寿命及び寿命の推定値を出力することを特徴とする。
【0009】
本発明の一形態においては、個人の年齢、性別及び状況情報に応じて、健康寿命及び寿命の推定値が計算され、健康寿命及び寿命の推定値が出力される。健康寿命モデルを用いて個人の健康寿命の推定値が計算され、寿命モデルを用いて個人の寿命の推定値が計算される。集団の健康寿命及び寿命ではなく、個人の状況に即した健康寿命及び寿命が推定される。個人は、自己の健康寿命及び寿命を知り、健康管理に役立てることができる。
【発明の効果】
【0010】
個人の状況に即した健康寿命及び寿命が推定される等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】健康寿命出力システムの構成例を示す模式図である。
【
図2】実施形態1に係る情報処理装置の内部の構成例を示すブロック図である。
【
図5】端末装置の内部の構成例を示すブロック図である。
【
図6】健康寿命出力システムが実行する処理の手順の例を示すフローチャートである。
【
図7】状況情報を入力するための入力用画像の例を示す模式図である。
【
図8】実施形態1に係る健康寿命推定処理のサブルーチンの手順の例を示すフローチャートである。
【
図9】累積健康維持確率の年齢に応じた変化を示す模式的グラフである。
【
図10】累積健康喪失確率の年齢に応じた変化を示す模式的グラフである。
【
図11】実施形態1に係る寿命推定処理のサブルーチンの手順の例を示すフローチャートである。
【
図12】一つの項目の値の変化に応じた累積健康維持確率の変化を示す模式的グラフである。
【
図13】個人の健康寿命及び寿命の推定値を含んだ画像の例を示す模式図である。
【
図14】実施形態2に係る情報処理装置の内部の構成例を示すブロック図である。
【
図15】健康寿命推定モデルの機能の例を示す概念図である。
【
図16】寿命推定モデルの機能の例を示す概念図である。
【
図17】実施形態2に係る健康寿命推定処理のサブルーチンの手順の例を示すフローチャートである。
【
図18】実施形態2に係る寿命推定処理のサブルーチンの手順の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
<実施形態1>
図1は、健康寿命出力システム100の構成例を示す模式図である。健康寿命出力システム100は、個人4の状況に応じて、個人4の健康寿命及び寿命を推定し、出力するシステムである。ここで、個人4の寿命の値は、個人4の現在の年齢に個人4の余命を加算した値である。また、個人4の健康寿命の値は、個人4が現在から日常生活が制限されることなく生活できる期間を個人4の現在の年齢に加算した値である。健康寿命出力システム100は、情報処理装置1を含んでいる。情報処理装置1は、インターネット等の通信ネットワーク3に接続されている。また、健康寿命出力システム100は、端末装置2を含んでいる。端末装置2は、有線通信又は無線通信を用いて、通信ネットワーク3を介して情報処理装置1と通信可能になっている。
【0013】
情報処理装置1及び端末装置2は、コンピュータを用いて構成されている。情報処理装置1は、情報処理方法を実行する。端末装置2は、自己の健康寿命及び寿命を知りたい個人4によって操作される。例えば、端末装置2は、個人4の所有物である。健康寿命出力システム100は、通信ネットワーク3を介して情報処理装置1と通信が可能な複数の端末装置2を含んでいてもよい。端末装置2は、個人4の操作によって個人4に関する情報を入力され、入力された情報を情報処理装置1へ送信し、情報処理装置1は、個人4に関する情報に応じて個人4の健康寿命及び寿命の推定値を計算する。情報処理装置1は、健康寿命及び寿命の推定値を端末装置2へ送信し、端末装置2は、健康寿命及び寿命の推定値を出力する。個人4は、出力された健康寿命及び寿命の推定値を確認する。端末装置2の操作並びに健康寿命及び寿命の推定値の確認は、個人4以外の者が行ってもよい。
【0014】
図2は、実施形態1に係る情報処理装置1の内部の構成例を示すブロック図である。情報処理装置1は、サーバ装置等のコンピュータを用いて構成されている。情報処理装置1は、演算部11と、メモリ12と、記憶部13と、読取部14と、通信部15とを備えている。演算部11は、例えばCPU(Central Processing Unit )、GPU(Graphics Processing Unit)、又はマルチコアCPUを用いて構成されている。演算部11は、量子コンピュータを用いて構成されていてもよい。メモリ12は、演算に伴って発生する一時的なデータを記憶する。メモリ12は、例えばRAM(Random Access Memory)である。記憶部13は、不揮発性であり、例えばハードディスク又は不揮発性半導体メモリである。読取部14は、光ディスク又は可搬型メモリ等の記録媒体10から情報を読み取る。通信部15は、有線通信又は無線通信により、通信ネットワーク3を介して情報処理装置1の外部と通信を行う。具体的には、通信部15は、端末装置2と通信を行う。
【0015】
演算部11は、記録媒体10に記録されたコンピュータプログラム(プログラム製品)131を読取部14に読み取らせ、読み取ったコンピュータプログラム131を記憶部13に記憶させる。演算部11は、コンピュータプログラム131に従って、情報処理装置1の機能を実現するための処理を実行する。コンピュータプログラム131は、予め記憶部13に記憶されているか、又は情報処理装置1の外部からダウンロードされてもよい。この場合は、情報処理装置1は読取部14を備えていなくてもよい。
【0016】
コンピュータプログラム131は、単一のコンピュータ上で、又は一つのサイトにおいて配置されるか、若しくは複数のサイトにわたって分散され、通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開することができる。即ち、情報処理装置1は、複数のコンピュータで構成されてもよく、コンピュータプログラム131は、通信ネットワークを介して接続された複数のコンピュータ上で実行されてもよい。情報処理装置1は、クラウドサーバを用いて構成されていてもよい。
【0017】
情報処理方法を実行するための後述する各ステップの処理は、複数のコンピュータで実行することが可能である。各ステップの処理は、互いに異なるコンピュータで実行することも可能である。処理の際に利用されるデータは、複数のコンピュータに記憶されてもよい。各ステップの処理は、仮想マシンを用いて実行することも可能である。各ステップの処理は、複数の演算部が実行してもよい。各ステップの処理は、互いに異なる演算部が実行してもよい。例えば、処理の一部分は一のコンピュータで実行され、処理の他の部分は他のコンピュータで実行されてもよい。
【0018】
記憶部13は、夫々の年齢での健康喪失確率と、夫々の年齢での死亡率とを記録した確率データ132を記憶している。夫々の年齢での健康喪失確率は、人が夫々の年齢になった時点から一年間に健康を喪失する確率である。夫々の年齢での死亡率は、人が夫々の年齢になった時点から一年間に死亡する確率である。
図3は、確率データ132の内容例を示す概念図である。図中の「*****」は、健康喪失確率又は死亡率の値を示す。夫々の年齢に関連付けて、夫々の年齢での健康喪失確率及び死亡率の値が記録されている。夫々の年齢での健康喪失確率及び死亡率は、性別で異なっている。確率データ132には、男性の健康喪失確率及び死亡率と、女性の健康喪失確率及び死亡率とが、別々に記録されている。
【0019】
夫々の年齢での健康喪失確率は、過去の調査に基づいて予め定められている。例えば、人の要介護度が要介護2以上に認定されることを、人が健康を喪失することの定義とし、要介護認定の統計に基づいて、健康喪失確率が定められる。例えば、国民生活基礎調査等の健康調査を行い、健康調査において不健康であるとされることを人が健康を喪失することの定義とし、健康調査の結果に基づいて、健康喪失確率が定められる。健康喪失確率は、性別に定められている。
【0020】
夫々の年齢での死亡率も、過去の調査に基づいて予め定められている。死亡率は、死亡者の統計に基づいて定められる。死亡率は、人が健康を喪失した状態になってから死亡する確率と、人が健康を喪失せずに死亡する確率との和になっている。死亡率は、性別に定められている。
【0021】
本実施形態では、確率データ132に記録されている夫々の年齢での健康喪失確率及び死亡率の値を、夫々の年齢での健康喪失確率及び死亡率の標準値とする。健康喪失確率及び死亡率の標準値は、国又は自治体等の人の集団に対する調査に基づいて定められるので、個人4が所属する集団が異なった場合は健康喪失確率及び死亡率の標準値が異なる可能性がある。確率データ132は、複数の集団の夫々に関する健康喪失確率及び死亡率を記録していてもよい。なお、確率データ132は、人が一年間以外の所定期間に健康を喪失する確率及び死亡する確率を記録していてもよい。例えば、人が夫々の半年間に健康を喪失する確率及び死亡する確率が確率データ132に記録されていてもよい。
【0022】
本実施形態では、夫々の年齢での健康喪失確率及び死亡率の標準値から、ベイズ推定Gompertz回帰曲線を利用して、個人4の夫々の年齢での健康喪失確率及び死亡率を推定する。また、本実施形態では、個人4の夫々の年齢での健康喪失確率及び死亡率を推定するために、個人4の年齢及び性別、並びに個人4の状況を表した状況情報を用いる。状況情報は、複数の項目からなる。
【0023】
個人4のX歳での健康喪失確率の推定値をA(X)とし、X歳での健康喪失確率の標準値をA0(X)とする。個人4の状況が健康へ及ぼす影響の大きさをyとし、個人4の現在の年齢をx0とし、状況情報に含まれる複数の項目の値を、x1,x2,…とする。本実施形態では、個人4のX歳での健康喪失確率の推定値A(X)は、下記の(1)式で表され、個人4の状況が健康へ及ぼす影響の大きさyは、下記の(2)式で表される。
【0024】
【0025】
(1)式に含まれるeはネイピア数である。(1)式はベイズ推定Gompertz回帰曲線であり、yを指数としネイピア数を底とした指数関数を指数とし、A0(X)を底とした二重指数関数になっている。(2)式に示すように、個人4の状況が健康へ及ぼす影響の大きさyは、個人4の現在の年齢と、状況情報に含まれる複数の項目の値との線形和で表される。(2)式に含まれるa0,a1,a2,…は、線形和において個人4の現在の年齢と状況情報に含まれる複数の項目の夫々とに乗じられる係数である。係数は実数である。(1)式で個人4の夫々の年齢での健康喪失確率を表すモデルは、健康寿命モデルに対応する。
【0026】
個人4のX歳での死亡率の推定値をB(X)とし、X歳での死亡率の標準値をB0(X)とする。個人4の状況が寿命へ及ぼす影響の大きさをzとする。本実施形態では、個人4のX歳での死亡率の推定値B(X)は、下記の(3)式で表され、個人4の状況が健康へ及ぼす影響の大きさzは、下記の(4)式で表される。
【0027】
【0028】
(3)式はベイズ推定Gompertz回帰曲線であり、zを指数としネイピア数を底とした指数関数を指数とし、B0(X)を底とした二重指数関数になっている。(4)式に示すように、個人4の状況が寿命へ及ぼす影響の大きさzは、個人4の現在の年齢と、状況情報に含まれる複数の項目の値との線形和で表される。(4)式に含まれるb0,b1,b2,…は、線形和において個人4の現在の年齢と状況情報に含まれる複数の項目の夫々とに乗じられる係数である。係数は実数である。(3)式で個人4の夫々の年齢での死亡率を表すモデルは、寿命モデルに対応する。
【0029】
状況情報は、個人4の食生活の習慣、個人4の行動の習慣、個人4の健康状態、又は個人4の社会的な状況を含む。食生活の習慣は、乳製品を摂食する頻度、魚介類を摂食する頻度、野菜を摂食する頻度、油っこい食品を摂食する頻度、砂糖入り飲料を摂食する頻度、間食の頻度、満腹まで食べるか否か、食塩の摂取量、大豆製品を摂食する頻度、又は果物を摂食する頻度等である。行動の習慣は、喫煙状況、飲酒量、運動習慣、睡眠時間、鼾の有無、ストレスの量、又は笑う頻度等である。健康状態は、BMI(Body Mass Index)、血圧値、血糖値、コレステロール値、腹囲、病歴、難聴の有無、又は残存する歯の本数等である。例えば、健康状態の一部には、健康診断又は医療検査の結果が用いられる。社会的な状況には、社会参加の頻度、友人に会う頻度、趣味の有無、ソーシャルサポートの有無、又は外出の頻度等である。
【0030】
また、状況情報には、個人4の状況が健康及び寿命へ及ぼす影響の大きさを大幅に変更させる特定の項目が含まれる。この特定の項目を、特別項目と言うことにする。特別項目は、高血圧症の有無、糖尿病の有無、又は脂質異常症の有無等である。特別項目の内容に応じて、個人4の状況が健康及び寿命へ及ぼす影響の大きさが変化する。モデルの上では、特別項目の内容に応じて、(2)式に含まれる係数a0,a1,a2,…、及び(4)式に含まれる係数b0,b1,b2,…が変更される。
【0031】
記憶部13は、(2)式に含まれる係数a
0,a
1,a
2,…及び(4)式に含まれる係数b
0,b
1,b
2,…を記録した係数データ133を記憶している。
図4は、係数データ133の内容例を示す概念図である。図中の「***」は夫々の係数の値を示す。係数の値は、個人4の性別及び年齢によって異なる。夫々の年齢に関連付けて、夫々の年齢での係数a
0,a
1,a
2,…及び係数b
0,b
1,b
2,…の値が記録されている。また、男性についての係数と、女性についての係数とが別々に記録されている。
【0032】
係数データ133には、状況情報に含まれる特別項目の内容に応じた係数が記録されている。複数の特別項目の内容の組み合わせが複数通り存在し、夫々の組み合わせに関連付けて、係数が記録されている。複数の特別項目の内容の組み合わせが異なれば、係数の値も異なる。
図4に示した例では、高血圧症の有無、糖尿病の有無、及び脂質異常症の有無の組み合わせに応じた計数が係数データ133に記録されている。
【0033】
係数データ133に記録された係数は、過去の調査に基づいて予め定められている。係数は、国又は自治体等の人の集団に対する調査に基づいて定められるので、個人4が所属する集団が異なった場合は係数が異なる可能性がある。係数データ133は、複数の集団の夫々に関する係数を記録していてもよい。
【0034】
図5は、端末装置2の内部の構成例を示すブロック図である。端末装置2は、スマートフォン、タブレット型コンピュータ又はパーソナルコンピュータ等のコンピュータを用いて構成されている。端末装置2は、演算部21と、メモリ22と、記憶部23と、操作部24と、表示部25と、通信部26とを備えている。演算部21は、例えばCPU、GPU又はマルチコアCPUを用いて構成されている。演算部21は、量子コンピュータを用いて構成されていてもよい。メモリ22は、例えばRAMである。記憶部23は、不揮発性であり、例えばハードディスク又は不揮発性半導体メモリである。
【0035】
操作部24は、個人4からの操作を受け付けることにより、テキスト等の情報の入力を受け付ける。操作部24は、例えばタッチパネル、キーボード又はポインティングデバイスである。表示部25は、画像を表示する。表示部25は、例えば液晶ディスプレイ又はELディスプレイ(Electroluminescent Display)である。操作部24及び表示部25は、一体になっていてもよい。通信部26は、有線通信又は無線通信により、端末装置2の外部と通信を行う。例えば、通信部26は、通信ネットワーク3を介して情報処理装置1と通信を行う。
【0036】
記憶部23は、コンピュータプログラム231を記憶する。コンピュータプログラム231は、通信部26を用いてダウンロードされ、記憶部23に記憶される。例えば、コンピュータプログラム231は、情報処理装置1からダウンロードされる。コンピュータプログラム231は、予め記憶部23に記憶されていてもよい。コンピュータプログラム231の一部は、メモリ22に記憶されてもよい。例えば、コンピュータプログラム231の一部は、必要に応じてダウンロードされ、メモリ22に記憶され、処理の後にメモリ22から消去されてもよい。演算部21は、コンピュータプログラム231に従って必要な処理を実行する。
【0037】
コンピュータプログラム231は、ブラウザプログラムを含んでいる。ブラウザは端末装置2で動作する。演算部21は、ブラウザプログラムに従って、ブラウザを実行するための処理を行う。端末装置2は、ブラウザを利用して情報処理装置1と情報を交換し、情報処理装置1及び端末装置2は、ウェブアプリケーションを実行する。コンピュータプログラム231は、ブラウザを利用せずに情報処理装置1と情報を交換するためのアプリケーションプログラムを含んでいてもよい。
【0038】
個人4の健康寿命を推定し出力するために健康寿命出力システム100が行う処理を説明する。
図6は、健康寿命出力システム100が実行する処理の手順の例を示すフローチャートである。以下、ステップをSと略す。演算部11がコンピュータプログラム131に従って情報処理を実行することにより、情報処理装置1は以下の処理を実行する。演算部21がコンピュータプログラム231に従って情報処理を実行することにより、端末装置2は以下の処理を実行する。
【0039】
演算部21がブラウザプログラムに従った処理を行うことにより、端末装置2は、ブラウザを実行する。端末装置2は、個人4が操作部24を操作することにより、健康寿命を出力する処理の開始の指示を受け付け、処理の開始の指示を情報処理装置1へ送信する。情報処理装置1は、処理の開始の指示を受信し、情報の入力用画像をブラウザで表示させるためのデータを端末装置2へ送信する。端末装置2は、ブラウザを利用して、受信したデータに基づいた入力用画像を表示部25に表示する。或いは、端末装置2は、演算部21がアプリケーションプログラムに従った処理を行うことにより、入力用画像を表示部25に表示する。
【0040】
情報処理装置1は、個人4の年齢、性別及び状況情報を取得する(S11)。S11では、端末装置2は、個人4が操作部24を操作することにより、個人4の年齢、性別及び状況情報を取得する。例えば、入力用画像に従って個人4が操作部24を操作することにより、個人4の年齢、性別及び状況情報が端末装置2へ入力される。
【0041】
図7は、状況情報を入力するための入力用画像の例を示す模式図である。入力用画像を用いて、状況情報に含まれる複数の項目の内容が入力される。複数の項目には、個人4の食生活の習慣、個人4の行動の習慣、個人4の健康状態、又は個人4の社会的な状況が含まれ、特別項目も含まれる。
図7に示した例では、個人4の食生活の習慣として、乳製品、魚介類及び野菜等の食品を摂食する頻度が、各食品を毎日摂食するか否かを選択することで入力される。個人4の食生活の習慣として、満腹まで食べるか否かが入力され、塩分スコアが選択されることで食塩の摂取量が入力される。塩分スコアは、どのような食事をしたかに応じて計算される点数であり、食事による食塩の摂取量を簡易的に示す。
【0042】
図7に示した例では、行動の習慣として、喫煙状況、飲酒量及び運動習慣が、選択肢の何れかを選択することで入力される。特別項目として、高血圧症、糖尿病及び脂質異常症の有無が入力される。健康状態として、BMI、血圧値及び血糖値等の健康に関する各種の数値が入力される。社会的な状況として、社会参加の頻度、友人に会う頻度及び趣味の有無が、選択肢の何れかを選択することで入力される。
図7に示した複数の項目は一例であり、状況情報には、食生活の習慣、行動の習慣、健康状態、社会的な状況及び特別項目として、その他の項目が含まれていてもよく、
図7に示した項目の一部が含まれていなくてもよい。個人4の年齢及び性別を入力するための入力用画像も同様に表示部25に表示される。
【0043】
状況情報の一部は、端末装置2の外部から、通信部26を通じて入力されてもよい。例えば、端末装置2は、通信部26を通じて、健康診断又は医療検査の結果等の状況情報の一部を記憶する図示しない記憶装置から、状況情報の一部をダウンロードしてもよい。端末装置2は、入力された個人4の年齢、性別及び状況情報を情報処理装置1へ送信する。このとき、演算部21は、通信部26に、通信ネットワーク3を介して情報処理装置1へ個人4の年齢、性別及び状況情報を送信させる。情報処理装置1は、送信された個人4の年齢、性別及び状況情報を通信部15で受信することにより、個人4の年齢、性別及び状況情報を取得する。演算部11は、取得した個人4の年齢、性別及び状況情報をメモリ12又は記憶部13に記憶する。
【0044】
情報処理装置1は、個人4の健康寿命を推定するための健康寿命推定処理を行う(S12)。
図8は、実施形態1に係る健康寿命推定処理のサブルーチンの手順の例を示すフローチャートである。情報処理装置1は、個人4の年齢、性別及び状況情報に応じて、健康寿命を推定するために用いる係数a
0,a
1,a
2,…を選択する(S21)。S21では、演算部11は、係数データ133に記録されている係数a
0,a
1,a
2,…の中から、個人4の年齢及び性別と状況情報の含まれる特別項目の内容とに関連付けられた係数a
0,a
1,a
2,…を選択する。演算部11は、選択した係数a
0,a
1,a
2,…を、係数データ133から読み出し、メモリ12又は記憶部13に記憶する。
【0045】
情報処理装置1は、個人4の夫々の年齢での健康喪失確率の推定値を計算し、個人4の夫々の年齢での累積健康維持確率を計算する(S22)。S22では、演算部11は、個人4の現在の年齢での健康喪失確率を確率データ132から読み出すことにより、現在の年齢での健康喪失確率の標準値A0(X)を定める。演算部11は、現在の年齢及び状況情報に含まれる複数の項目の内容を(2)式へ代入した計算を行うことにより、個人4の状況が健康へ及ぼす影響の大きさyを計算する。このとき、状況情報に含まれる複数の項目の中で数値で表されていない項目は、所定の規則に従って数値へ変換される。個人4の状況が健康へ及ぼす影響の大きさyを計算するために用いる複数の項目は、状況情報に含まれる複数の項目の一部であってもよい。
【0046】
演算部11は、現在の年齢での健康喪失確率の標準値A0(X)と個人4の状況が健康へ及ぼす影響の大きさyとを(1)式へ代入した計算を行うことにより、個人4の現在の年齢での健康喪失確率の推定値A(X)を計算する。演算部11は、1から健康喪失確率を減算することにより、(現在の年齢+1)の年齢になった時点での累積健康維持確率を計算する。X歳での累積健康維持確率は、個人4が現在の年齢から未来のX歳になる時点までに健康を喪失していない確率であり、現在の年齢での健康喪失確率からX歳での健康喪失確率までの複数の健康喪失確率の和である累積健康喪失確率を1から減算した値である。
【0047】
演算部11は、同様に、(現在の年齢+1)の年齢での健康喪失確率の推定値を計算し、(現在の年齢+2)の年齢になった時点での累積健康維持確率を計算する。演算部11は、同様にして、順に、個人4の現在の年齢を超過する夫々の年齢での健康喪失確率の推定値を計算し、夫々の年齢での累積健康維持確率を計算する。例えば、演算部11は、(1)式及び(2)式を利用して、X歳での健康喪失確率の推定値を計算する。演算部11は、個人4の現在の年齢での健康喪失確率からX歳での健康喪失確率までの複数の健康喪失確率の推定値の和を、1から減算することにより、(X+1)歳になった時点での累積健康維持確率を計算する。又は、演算部11は、X歳での累積健康維持確率からX歳での健康喪失確率の推定値を減算することにより、(X+1)歳になった時点での累積健康維持確率を計算する。なお、健康喪失確率の標準値として、人が一年間以外の所定期間に健康を喪失する確率が用いられ、累積健康維持確率が計算されてもよい。
【0048】
情報処理装置1は、累積健康維持確率に基づいて、個人4の健康寿命の推定値を計算する(S23)。S23では、演算部11は、累積健康維持確率が50%になる年齢を、個人4の健康寿命の推定値とする。
図9は、累積健康維持確率の年齢に応じた変化を示す模式的グラフである。図中の横軸は年齢を示し、縦軸は累積健康維持確率を示す。
図9には、個人4の現在の年齢が40歳である例を示している。現在の年齢に近い年齢では、累積健康維持確率は100%に近い。累積健康維持確率は、年齢が増加するのに従って低下する。累積健康維持確率が50%まで低下する年齢が、個人4の健康寿命の推定値である。
【0049】
例えば、演算部11は、累積健康維持確率が50%になるまで、夫々の年齢での累積健康維持確率を計算することにより、個人4の健康寿命の推定値を計算する。又は、演算部11は、100歳等の所定の年齢まで、夫々の年齢での累積健康維持確率を計算し、累積健康維持確率が50%になる年齢を特定することにより、個人4の健康寿命の推定値を計算してもよい。情報処理装置1は、累積健康維持確率が50%以外の所定値になる年齢を、個人4の健康寿命の推定値としてもよい。或いは、情報処理装置1は、累積健康維持確率の現在の年齢からの積算値(積分値)が所定値になる年齢を、個人4の健康寿命の推定値としてもよい。演算部11は、計算した個人4の健康寿命の推定値を記憶部13に記憶する。S23が終了した後は、情報処理装置1は、S12の健康寿命推定処理を終了し、処理をメインへ戻す。
【0050】
健康寿命推定処理では、情報処理装置1は、累積健康喪失確率に基づいて個人4の健康寿命の推定値を計算してもよい。この場合は、演算部11は、X歳での健康喪失確率の推定値を計算し、個人4の現在の年齢での健康喪失確率からX歳での健康喪失確率までの複数の健康喪失確率の推定値を積算することにより、累積健康喪失確率を計算する。X歳での累積健康喪失確率は、個人4が現在の年齢から未来のX歳になる時点までに健康を喪失する確率である。
【0051】
図10は、累積健康喪失確率の年齢に応じた変化を示す模式的グラフである。図中の横軸は年齢を示し、縦軸は累積健康喪失確率を示す。
図10には、個人4の現在の年齢が40歳である例を示している。現在の年齢に近い年齢では、累積健康喪失確率は0%に近い。累積健康喪失確率は、年齢が増加するのに従って増大する。累積健康喪失確率が50%になる年齢が、個人4の健康寿命の推定値である。
【0052】
演算部11は、累積健康喪失確率が50%になる年齢を、個人4の健康寿命の推定値とする。情報処理装置1は、累積健康喪失確率が50%以外の所定値になる年齢を、個人4の健康寿命の推定値としてもよい。或いは、情報処理装置1は、累積健康喪失確率の現在の年齢からの積算値(積分値)が所定値になる年齢を、個人4の健康寿命の推定値としてもよい。
【0053】
情報処理装置1は、個人4の寿命を推定するための寿命推定処理を行う(S13)。
図11は、実施形態1に係る寿命推定処理のサブルーチンの手順の例を示すフローチャートである。情報処理装置1は、個人4の年齢、性別及び状況情報に応じて、寿命を推定するために用いる係数b
0,b
1,b
2,…を選択する(S31)。S31では、演算部11は、係数データ133に記録されている係数b
0,b
1,b
2,…の中から、個人4の年齢及び性別と状況情報の含まれる特別項目の内容とに関連付けられた係数b
0,b
1,b
2,…を選択する。演算部11は、選択した係数b
0,b
1,b
2,…を、係数データ133から読み出し、メモリ12又は記憶部13に記憶する。
【0054】
情報処理装置1は、個人4の夫々の年齢での死亡率の推定値を計算し、個人4の夫々の年齢での累積生存確率を計算する(S32)。S32では、演算部11は、個人4の現在の年齢での死亡率を確率データ132から読み出すことにより、現在の年齢での死亡率の標準値B0(X)を定める。演算部11は、現在の年齢及び状況情報に含まれる複数の項目の内容を(4)式へ代入した計算を行うことにより、個人4の状況が寿命へ及ぼす影響の大きさzを計算する。このとき、状況情報に含まれる複数の項目の中で数値で表されていない項目は、所定の規則に従って数値へ変換される。個人4の状況が寿命へ及ぼす影響の大きさzを計算するために用いる複数の項目は、状況情報に含まれる複数の項目の一部であってもよい。
【0055】
演算部11は、現在の年齢での死亡率の標準値B0(X)と個人4の状況が寿命へ及ぼす影響の大きさzとを(3)式へ代入した計算を行うことにより、個人4の現在の年齢での死亡率の推定値B(X)を計算する。演算部11は、1から死亡率を減算することにより、(現在の年齢+1)の年齢になった時点での累積生存確率を計算する。X歳での累積生存確率は、個人4が現在の年齢からX歳になる時点までに死亡していない確率であり、現在の年齢での死亡率からX歳での死亡率までの複数の死亡率の和である累積死亡率を1から減算した値である。
【0056】
演算部11は、同様に、(現在の年齢+1)の年齢での死亡率の推定値を計算し、(現在の年齢+2)の年齢になった時点での累積生存確率を計算する。演算部11は、同様にして、順に、個人4の現在の年齢を超過する夫々の年齢での死亡率の推定値を計算し、夫々の年齢での累積生存確率を計算する。例えば、演算部11は、(3)式及び(4)式を利用して、X歳での死亡率の推定値を計算する。演算部11は、個人4の現在の年齢での死亡率からX歳での死亡率までの複数の死亡率の推定値の和を、1から減算することにより、(X+1)歳になった時点での累積生存確率を計算する。又は、演算部11は、X歳での累積生存確率からX歳での死亡率の推定値を減算することにより、(X+1)歳になった時点での累積生存確率を計算する。なお、死亡率の標準値として、人が一年間以外の所定期間に死亡する確率が用いられ、累積生存確率が計算されてもよい。
【0057】
情報処理装置1は、累積生存確率に基づいて、個人4の寿命の推定値を計算する(S33)。S33では、演算部11は、累積生存確率が50%になる年齢を、個人4の寿命の推定値とする。累積生存確率は、累積健康維持確率と同様に、現在の年齢に近い年齢では100%に近く、年齢が増加するのに従って低下する。累積生存確率が50%まで低下する年齢が、個人4の寿命の推定値である。
【0058】
例えば、演算部11は、累積生存確率が50%になるまで、夫々の年齢での累積生存確率を計算することにより、個人4の寿命の推定値を計算する。又は、演算部11は、100歳等の所定の年齢まで、夫々の年齢での累積生存確率を計算し、累積生存確率が50%になる年齢を特定することにより、個人4の寿命の推定値を計算してもよい。情報処理装置1は、累積生存確率が50%以外の所定値になる年齢を、個人4の寿命の推定値としてもよい。或いは、情報処理装置1は、累積生存確率の現在の年齢からの積算値(積分値)が所定値になる年齢を、個人4の寿命の推定値としてもよい。演算部11は、計算した個人4の寿命の推定値を記憶部13に記憶する。S33が終了した後は、情報処理装置1は、S13の寿命推定処理を終了し、処理をメインへ戻す。
【0059】
寿命推定処理では、情報処理装置1は、累積死亡率に基づいて個人4の寿命の推定値を計算してもよい。この場合は、演算部11は、X歳での死亡率の推定値を計算し、個人4の現在の年齢での死亡率からX歳での死亡率までの複数の死亡率の推定値を積算することにより、累積死亡率を計算する。X歳での累積死亡率は、個人4が現在の年齢からX歳になる時点までに死亡する確率である。累積死亡率は、累積健康喪失確率と同様に、現在の年齢に近い年齢では0%に近く、年齢が増加するのに従って増大する。累積死亡率が50%になる年齢が、個人4の寿命の推定値である。
【0060】
演算部11は、累積死亡率が50%になる年齢を、個人4の寿命の推定値とする。情報処理装置1は、累積死亡率が50%以外の所定値になる年齢を、個人4の寿命の推定値としてもよい。或いは、情報処理装置1は、累積死亡率の現在の年齢からの積算値(積分値)が所定値になる年齢を、個人4の寿命の推定値としてもよい。
【0061】
情報処理装置1は、次に、状況情報に含まれる複数の項目の夫々が健康寿命及び寿命の推定値に与える影響の大きさを計算する(S14)。S14では、演算部11は、状況情報に含まれる複数の項目の中から、個人4の状況が健康へ及ぼす影響の大きさyを計算するために用いる複数の項目の一つを選択し、選択した項目の値を標準の値に置き換える。夫々の項目の標準の値は、予め定められ、記憶部13に記憶されている。演算部11は、一つの項目の値を標準の値に置き換えた状態で、健康寿命推定処理を行うことにより、この状態での健康寿命を計算する。選択した項目が特別項目である場合は、演算部11は、項目の値の変更に応じて係数a0,a1,a2,…を変更して、健康寿命推定処理を行う。一つの項目の値を標準の値に置き換えることによって、個人4の健康寿命は変化する。
【0062】
図12は、一つの項目の値の変化に応じた累積健康維持確率の変化を示す模式的グラフである。図中の横軸は年齢を示し、縦軸は累積健康維持確率を示す。
図12には、個人4の累積健康維持確率の年齢に対する変化を実線で示し、一つの項目の値を標準の値に置き換えた状態での累積健康維持確率の年齢に対する変化を一点鎖線で示す。一つの項目の値を標準の値に置き換えることによって、累積健康維持確率が異なり、健康寿命が変化する。
【0063】
個人4の健康寿命の推定値と、一つの項目の値を標準の値に置き換えた状態での健康寿命との差の絶対値を、当該項目が健康寿命の推定値に与える影響の大きさとする。一つの項目の値を標準の値に置き換えた状態での健康寿命よりも、個人4の健康寿命の推定値が大きい場合は、当該項目が健康寿命の推定値に与える影響は、健康寿命を伸ばす正の影響である。一つの項目の値を標準の値に置き換えた状態での健康寿命よりも、個人4の健康寿命の推定値が小さい場合は、当該項目が健康寿命の推定値に与える影響は、健康寿命を短縮させる負の影響である。演算部11は、個人4の健康寿命の推定値と一つの項目の値を標準の値に置き換えた状態での健康寿命との大小に応じて、影響の正負を判定する。
【0064】
演算部11は、複数の項目の夫々の値を標準の値に置き換えた状態で健康寿命推定処理を行うことにより、夫々の状態での健康寿命を計算し、夫々の項目が健康寿命の推定値に与える影響を計算し、影響の正負を判定する。同様に、演算部11は、複数の項目の夫々の値を標準の値に置き換えた状態で寿命推定処理を行うことにより、夫々の状態での寿命を計算し、夫々の項目が寿命の推定値に与える影響を計算し、影響の正負を判定する。演算部11は、複数の項目の夫々が健康寿命及び寿命の推定値に与える影響の大きさと、影響の正負とを記憶部13に記憶する。
【0065】
情報処理装置1は、次に、状況情報に含まれる複数の項目の中から、健康寿命及び寿命の推定値に与える影響が大きい項目を選択する(S15)。S15では、演算部11は、複数の項目の中から、S14で計算した健康寿命の推定値に与える影響の大きさが大きい項目を所定数選択する。例えば、所定数は3である。同様に、演算部11は、複数の項目の中から、S14で計算した寿命の推定値に与える影響の大きさが大きい項目を所定数選択する。
【0066】
情報処理装置1は、個人4の健康寿命及び寿命の推定値と、健康寿命及び寿命の推定値に与える影響が大きい複数の項目と、影響の大きさとを出力する(S16)。S16では、演算部11は、個人4の健康寿命及び寿命の推定値と、影響が大きい複数の項目と、影響の大きさと、影響の正負とを、通信部15に端末装置2へ送信させる。端末装置2は、通信部26で、情報処理装置1から送信されたデータを受信する。演算部21は、個人4の健康寿命及び寿命の推定値と、影響が大きい複数の項目と、影響の大きさと、影響の正負とを含んだ画像を表示部25に表示する。
【0067】
図13は、個人4の健康寿命及び寿命の推定値を含んだ画像の例を示す模式図である。健康寿命の推定値が表示されている。また、因子の影響と称して、状況情報に含まれる複数の項目の中で健康寿命の推定値に与える影響が大きい複数の項目と、影響の大きさと、影響の正負とが表示されている。健康寿命の推定値に与える影響が大きい項目は、影響の大きさが大きい順に表示される。健康寿命の推定値が出力され、個人4は、自己の健康寿命の推定値を知ることができる。健康寿命の推定値に与える影響が大きい項目が出力され、個人4は、状況情報に含まれる複数の項目の中でどの項目が自己の健康寿命に大きく影響しているのかを知ることができ、それらの項目が健康寿命にどの程度影響しているのかも知ることができる。
【0068】
情報処理装置1は、状況情報の一部を変更する指示を取得する(S17)。S17では、端末装置2は、個人4が操作部24を操作することにより、状況情報に含まれる複数の項目の中の何れかの項目の内容を変更する指示を取得する。例えば、食生活の習慣の一部を変更する指示が端末装置2へ入力される。端末装置2は、状況情報の一部を変更する指示を情報処理装置1へ送信し、情報処理装置1は、送信された指示を受信することにより、状況情報の一部を変更する指示を取得する。
【0069】
情報処理装置1は、状況情報の一部を変更する指示に応じて、個人4の健康寿命及び寿命の推定値を修正する(S18)。S18では、演算部11は、取得した指示に従って状況情報の一部を変更した上で、健康寿命推定処理及び寿命推定処理を実行する。状況情報の一部を変更することによって、健康寿命及び寿命は修正される。
【0070】
情報処理装置1は、修正した健康寿命及び寿命の推定値を出力する(S19)。S19では、演算部11は、修正した健康寿命及び寿命の推定値を通信部15に端末装置2へ送信させる。端末装置2は、通信部26で情報処理装置1からのデータを受信し、演算部21は、修正した健康寿命及び寿命の推定値を含んだ画像を表示部25に表示する。端末装置2は、個人4の健康寿命及び寿命と、修正した健康寿命及び寿命との両方を含んだ画像を表示部25に表示してもよい。修正した健康寿命及び寿命が出力されることにより、個人4は、食生活の習慣等の自己の状況を変更した場合に健康寿命及び寿命がどの程度変化するのかを知ることができる。S17~S19は繰り返し実行されてもよい。
【0071】
S19が終了した後は、情報処理装置1は、処理を終了する。S11~S19の処理は、随時実行される。S11~S19の処理中でS17~S19の処理は省略されてもよい。S11~S19の処理では、健康寿命及び寿命の推定値の両方を出力しているが、健康寿命出力システム100は、健康寿命の推定値のみを出力する処理を行ってもよい。
【0072】
以上詳述した如く、本実施形態では、情報処理装置1は、個人4の年齢、性別及び状況情報を取得し、取得した年齢、性別及び状況情報に応じて、個人4の健康寿命及び寿命の推定値を計算し、健康寿命及び寿命の推定値を出力する。集団の健康寿命及び寿命ではなく、個人4の状況に即した健康寿命及び寿命が推定される。個人4は、自己の健康寿命及び寿命を知り、健康管理に役立てることができる。情報処理装置1は、(1)式を含む健康寿命モデルを利用して、夫々の年齢での健康喪失確率の標準値と、個人4の年齢、性別及び状況情報とに基づいて、健康寿命の推定値を計算する。また、情報処理装置1は、(3)式を含む寿命モデルを利用して、夫々の年齢での死亡率の標準値と、個人4の年齢、性別及び状況情報とに基づいて、寿命の推定値を計算する。これにより、個人4の状況に即した健康寿命及び寿命が容易に推定される。
【0073】
本実施形態では、情報処理装置1は、状況情報に含まれる夫々の項目が健康寿命又は寿命の推定値に与える影響の大きさを計算し、影響が他の項目よりも大きい項目、及び影響の大きさを出力する。個人4は、自己の健康寿命又は寿命の推定値に大きく影響している要素を知ることができ、影響の大きさも知ることができる。個人4は、健康寿命又は寿命の推定値に大きく影響している要素を知ることによって、効果的な健康管理を行うことができる。例えば、個人4は、健康寿命に対して正の効果がある要素を維持又はより改善させるように健康を管理することにより、健康寿命の維持又は伸張を図ることができる。例えば、個人4は、健康寿命に対して負の効果がある要素を改善させるように健康を管理することにより、健康寿命の伸張を図ることができる。
【0074】
本実施形態では、情報処理装置1は、状況情報に含まれるいずれかの項目を変更し、変更に応じて修正した健康寿命及び寿命の推定値を出力する。個人4は、食生活の習慣等の自己の状況を変更した場合に健康寿命及び寿命がどの程度変化するのかを知ることができる。個人4は、具体的にどの要素をどの程度改善すれば健康寿命又は寿命がどの程度改善されるのかを知り、健康寿命又は寿命を改善させるための具体的な目標を立てることができる。従って、個人4は、より効率的に健康管理を行うことができるようになる。
【0075】
<実施形態2>
実施形態2では、学習済モデルを利用して個人4の健康寿命及び寿命を推定する形態を示す。健康寿命出力システム100の情報処理装置1以外の部分の構成は実施形態1と同様である。
図14は、実施形態2に係る情報処理装置1の内部の構成例を示すブロック図である。情報処理装置1は、個人4の年齢、性別及び状況情報に応じて個人4の健康寿命の推定値を出力する健康寿命推定モデル134と、個人4の年齢、性別及び状況情報に応じて個人4の寿命の推定値を出力する寿命推定モデル135とを備えている。情報処理装置1のその他の構成は実施形態1と同様である。
【0076】
健康寿命推定モデル134は、個人4の年齢、性別及び状況情報が入力された場合に個人4の健康寿命の推定値を出力するように、予め学習された学習済モデルである。
図15は、健康寿命推定モデル134の機能の例を示す概念図である。健康寿命推定モデル134は、個人4の年齢、性別及び状況情報が入力され、個人4の健康寿命の推定値を出力する。健康寿命推定モデル134は、健康寿命モデルに対応する。
【0077】
寿命推定モデル135は、個人4の年齢、性別及び状況情報が入力された場合に個人4の寿命の推定値を出力するように、予め学習された学習済モデルである。
図16は、寿命推定モデル135の機能の例を示す概念図である。寿命推定モデル135は、個人4の年齢、性別及び状況情報が入力され、個人4の寿命の推定値を出力する。寿命推定モデル135は、寿命モデルに対応する。
【0078】
健康寿命推定モデル134及び寿命推定モデル135は、コンピュータプログラム131に従って演算部11が処理を実行することにより実現される。記憶部13は、健康寿命推定モデル134及び寿命推定モデル135を実現するために必要なデータを記憶している。例えば、健康寿命推定モデル134及び寿命推定モデル135は、ニューラルネットワークを用いて実現される。例えば、健康寿命推定モデル134及び寿命推定モデル135は、ディープニューラルネットワーク又はトランスフォーマを用いて実現されていてもよい。健康寿命推定モデル134及び寿命推定モデル135は、ニューラルネットワーク以外のモデルを用いて実現されてもよい。例えば、健康寿命推定モデル134及び寿命推定モデル135は、ブースティングを利用した決定木を用いて実現されてもよい。
【0079】
健康寿命推定モデル134又は寿命推定モデル135は、ハードウェアを用いて構成されていてもよい。例えば、健康寿命推定モデル134又は寿命推定モデル135は、プロセッサと、必要なプログラムおよびデータを記憶するメモリとを含んだハードウェアにより構成されていてもよい。健康寿命推定モデル134又は寿命推定モデル135は、量子コンピュータを用いて実現されてもよい。或いは、健康寿命推定モデル134又は寿命推定モデル135は情報処理装置1の外部に設けられ、情報処理装置1は、外部の健康寿命推定モデル134又は寿命推定モデル135を利用して処理を実行する形態であってもよい。例えば、健康寿命推定モデル134又は寿命推定モデル135は、通信ネットワークを介して接続された複数のコンピュータを用いて実現されていてもよく、クラウドを利用して実現されていてもよい。
【0080】
健康寿命推定モデル134及び寿命推定モデル135は、訓練データを用いて、予め学習されている。訓練データは、過去の調査に基づいて得られた、個人の年齢、性別及び状況情報と個人の健康寿命又は寿命とが関連付けられたデータが含まれている。訓練データに含まれる健康寿命は、健康調査の結果に基づいて定められたものであってもよく、実施形態1に係る方法で計算されたものであってもよい。訓練データに含まれる寿命は、死亡者の統計に基づいて定められものであってもよく、実施形態1に係る方法で計算されたものであってもよい。健康寿命推定モデル134は、年齢、性別及び状況情報を入力した場合に年齢、性別及び状況情報に関連付けられた健康寿命が出力されるように、予め学習されている。寿命推定モデル135は、年齢、性別及び状況情報を入力した場合に年齢、性別及び状況情報に関連付けられた寿命が出力されるように、予め学習されている。
【0081】
実施形態2においても、健康寿命出力システム100は、S11~S19の処理を行う。S12では、情報処理装置1は、健康寿命推定モデル134を用いて健康寿命推定処理を実行する。
図17は、実施形態2に係る健康寿命推定処理のサブルーチンの手順の例を示すフローチャートである。情報処理装置1は、個人4の年齢、性別及び状況情報を健康寿命推定モデル134へ入力する(S41)。S41では、演算部11は、個人4の年齢、性別及び状況情報を健康寿命推定モデル134へ入力し、健康寿命推定モデル134に処理を実行させる。健康寿命推定モデル134は、個人4の年齢、性別及び状況情報を入力されたことに応じて、個人4の健康寿命の推定値を出力する。
【0082】
情報処理装置1は、個人4の健康寿命の推定値を取得する(S42)。S42では、演算部11は、健康寿命推定モデル134が出力した健康寿命の推定値を取得し、取得した健康寿命の推定値を記憶部13に記憶する。S42が終了した後は、情報処理装置1は、S12の健康寿命推定処理を終了し、処理をメインへ戻す。
【0083】
S13では、情報処理装置1は、寿命推定モデル135を用いて寿命推定処理を実行する。
図18は、実施形態2に係る寿命推定処理のサブルーチンの手順の例を示すフローチャートである。情報処理装置1は、個人4の年齢、性別及び状況情報を寿命推定モデル135へ入力する(S51)。S51では、演算部11は、個人4の年齢、性別及び状況情報を寿命推定モデル135へ入力し、寿命推定モデル135に処理を実行させる。寿命推定モデル135は、個人4の年齢、性別及び状況情報を入力されたことに応じて、個人4の寿命の推定値を出力する。
【0084】
情報処理装置1は、個人4の寿命の推定値を取得する(S52)。S52では、演算部11は、寿命推定モデル135が出力した寿命の推定値を取得し、取得した寿命の推定値を記憶部13に記憶する。S52が終了した後は、情報処理装置1は、S13の寿命推定処理を終了し、処理をメインへ戻す。
【0085】
S14では、情報処理装置1は、状況情報に含まれる複数の項目の夫々が健康寿命及び寿命の推定値に与える影響の大きさを、健康寿命推定モデル134及び寿命推定モデル135を用いて計算する。演算部11は、健康寿命推定モデル134を用いて、複数の項目の中の一つの項目の値を標準の値に置き換えた状態での健康寿命を計算し、健康寿命の推定値と一つの項目の値を標準の値に置き換えた状態での健康寿命との差の絶対値を、当該項目が健康寿命の推定値に与える影響の大きさとする。また、演算部11は、寿命推定モデル135を用いて、一つの項目の値を標準の値に置き換えた状態での寿命を計算し、寿命の推定値と一つの項目の値を標準の値に置き換えた状態での寿命との差の絶対値を、当該項目が寿命の推定値に与える影響の大きさとする。なお、精度を向上させるために、夫々の項目が健康寿命及び寿命の推定値に与える影響の大きさを計算するために数理学的情報処理を用いてもよい。例えば、情報処理装置1は、夫々の項目が健康寿命及び寿命の推定値に与える影響の大きさを求める方法として、SHAP(shapely additive explanations)、LIME又はAttention等、学習済モデルの処理を説明するための方法を用いてもよい。S18では、情報処理装置1は、健康寿命推定モデル134及び寿命推定モデル135を用いて、健康寿命及び寿命の推定値を修正する。以上のようにして、健康寿命出力システム100は、S11~S19の処理を実行する。
【0086】
以上詳述した如く、実施形態2では、情報処理装置1は、健康寿命推定モデル134及び寿命推定モデル135を用いて個人4の健康寿命及び寿命の推定値を計算し、健康寿命及び寿命の推定値を出力する。学習済モデルである健康寿命推定モデル134及び寿命推定モデル135を用いて計算を行うことにより、情報処理装置1の計算負荷が低下する。実施形態2においても、個人4の状況に即した健康寿命及び寿命が推定され、個人4は、自己の健康寿命及び寿命を知り、健康管理に役立てることができる。
【0087】
実施形態1及び2では、健康寿命及び寿命をそのまま出力する形態を示したが、情報処理装置1は、健康寿命を健康余命へ変換して出力してもよく、寿命を余命へ変換して出力してもよい。実施形態1及び2では、状況情報に含まれる夫々の項目が健康寿命及び寿命の推定値に与える影響の大きさを出力する形態を示したが、情報処理装置1は、夫々の項目による影響の大きさを出力しない形態であってもよい。実施形態1及び2では、個人4の健康寿命及び寿命の推定値を出力する形態を示したが、情報処理装置1は、個人4の健康寿命の推定値を出力し、個人4の寿命の推定値は出力しない形態であってもよい。実施形態1及び2において情報処理装置1が実行すると説明した処理の一部又は全部は、端末装置2で実行されてもよい。例えば、コンピュータプログラム131に相当するプログラム及び必要なデータを端末装置2で記憶し、実施形態1及び2において情報処理装置1が実行すると説明した処理を全て端末装置2で実行してもよい。
【0088】
本発明は上述した実施の形態の内容に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。即ち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0089】
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 情報処理装置
10 記録媒体
11 演算部
13 記憶部
131 コンピュータプログラム
134 健康寿命推定モデル
135 寿命推定モデル
2 端末装置
3 通信ネットワーク
4 個人