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特開2025-14990樹脂枠付きガラス板、及び樹脂枠付きガラス板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014990
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】樹脂枠付きガラス板、及び樹脂枠付きガラス板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/10 20060101AFI20250123BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20250123BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20250123BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20250123BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B60J1/10 A
B60J1/10 C
B60J1/00 M
B29C45/14
B29C45/26
B29C33/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118019
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】八田 直憲
(72)【発明者】
【氏名】加藤 千尋
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AD04
4F202AD09
4F202AH17
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CB20
4F202CQ01
4F202CQ05
4F206AD04
4F206AD09
4F206AH17
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB20
4F206JL02
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】車体窓用開口部に固定された際に、車体窓としての外観性を損ねるおそれを抑制する樹脂枠付きガラス板、及び樹脂枠付きガラス板の製造方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る樹脂枠付きガラス板10は、ガラス板1と、ガラス板1の周縁部1Aに設けられた樹脂枠2と、樹脂枠2に配置された加飾モール3とを備える。樹脂枠2とガラス板1と加飾モール3とが一体的に成形されている。樹脂枠2は、枠状に延びる本体2aと、本体2aの外側に設けられた外側端部2cとを備える。加飾モール3は、樹脂枠2の本体2aを覆う意匠部3aと、意匠部3aから樹脂枠2の外側端部2cに向けて延びる側壁3bとを備える。意匠部3aは、樹脂枠付きガラス板10が車両20の窓に取り付けられたとき、車両20のボディ21から離隔している。樹脂枠2の外側端部2cは、加飾モール3の側壁3bを覆う被覆部2dを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板と、前記ガラス板の周縁部に設けられた樹脂枠と、前記樹脂枠に配置された加飾モールとを備え、前記樹脂枠と前記ガラス板と前記加飾モールとが一体的に成形された樹脂枠付きガラス板であって、
前記樹脂枠は、枠状に延びる本体と、前記本体の外側に設けられた外側端部とを備え、
前記加飾モールは、前記樹脂枠の前記本体を覆う意匠部と、前記意匠部から前記樹脂枠の前記外側端部に向けて延びる側壁とを備え、
前記意匠部は、前記樹脂枠付きガラス板が車両の窓に取り付けられたとき、前記車両のボディから離隔しており、
前記樹脂枠の前記外側端部は、前記加飾モールの前記側壁を覆う被覆部を備え、前記意匠部と前記側壁との境界よりも前記樹脂枠付きガラス板の内側に位置する、樹脂枠付きガラス板。
【請求項2】
前記被覆部の長さは、2mm以上である、請求項1に記載の樹脂枠付きガラス板。
【請求項3】
前記加飾モールの前記側壁の長さに対する前記被覆部の長さの比率は、10%~75%である、請求項1又は2に記載の樹脂枠付きガラス板。
【請求項4】
前記被覆部の最薄部の厚みは、0.5mm以上である、請求項1又は2に記載の樹脂枠付きガラス板。
【請求項5】
前記被覆部の最薄部の厚みに対する前記加飾モールの前記側壁の厚みの比率は、20%~200%である、請求項1又は2に記載の樹脂枠付きガラス板。
【請求項6】
前記加飾モールの前記意匠部と前記側壁とが交差して成す角度は、20~60度である、請求項1又は2に記載の樹脂枠付きガラス板。
【請求項7】
前記意匠部の幅と、ベルトモールの幅とが同一である、請求項1又は2に記載の樹脂枠付きガラス板。
【請求項8】
金型装置を用いた樹脂枠付きガラス板の製造方法であって、
前記樹脂枠付きガラス板は、ガラス板と、前記ガラス板の周縁部に設けられた樹脂枠と、前記樹脂枠に配置された加飾モールとを備え、
前記樹脂枠は、枠状に延びる本体と、前記本体の外側に設けられた外側端部とを備え、
前記加飾モールは、前記樹脂枠の前記本体を覆う意匠部と、前記意匠部から前記樹脂枠の前記外側端部に向けて延びる側壁とを備え、
前記金型装置は、第1の金型、第2の金型及び金型部材を備え、
前記第1の金型及び前記第2の金型は、互いに押し合わさることによって、キャビティを形成可能に設けられ、
前記金型部材は、前記第2の金型の摺動部に沿って摺動可能であり、
前記加飾モール及び前記ガラス板を前記第2の金型に配置し、
前記金型部材を、前記加飾モールの前記側壁に接触するように配置し、
前記第1の金型を前記第2の金型に押し合わせることによって、前記ガラス板を挟持しつつ前記キャビティを形成し、
溶融樹脂を前記キャビティに射出することによって、前記加飾モールの前記側壁を前記溶融樹脂に埋没させる、樹脂枠付きガラス板の製造方法。
【請求項9】
前記第1の金型は、前記第2の金型の上側において、上下方向に移動可能に設けられている、請求項8に記載の樹脂枠付きガラス板の製造方法。
【請求項10】
前記第1の金型は、ストッパーを備え、
前記第1の金型を前記第2の金型に押し合わせ、前記ストッパーを前記金型部材に挿し込んで、前記金型部材を固定し、前記溶融樹脂を前記キャビティに射出する、請求項8又は9に記載の樹脂枠付きガラス板の製造方法。
【請求項11】
前記溶融樹脂を前記キャビティに射出した後、前記ストッパーによる前記金型部材の固定を解除し、前記第1の金型を前記第2の金型から離隔し、前記金型部材を前記第2の金型から離隔する、請求項10に記載の樹脂枠付きガラス板の製造方法。
【請求項12】
前記金型部材は、前記加飾モールの前記側壁に接触する接触面を備え、
前記接触面は、前記意匠部と前記側壁との境界よりも内側に配置されている、請求項8又は9に記載の樹脂枠付きガラス板の製造方法。
【請求項13】
前記加飾モールの前記意匠部と前記側壁とが交差して成す角度は、20~60度である、請求項8又は9に記載の樹脂枠付きガラス板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂枠付きガラス板、及び樹脂枠付きガラス板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、樹脂枠に加飾モールを備えた樹脂枠付き板状体が開示されている。加飾モールは、樹脂枠の表面に露出する意匠部と、樹脂枠に埋没する埋没部とを備える。
【0003】
図16に示す樹脂枠付きガラス板910は、このような樹脂枠付き板状体の一例である。樹脂枠付きガラス板910の製造方法は、金型装置930を利用する。金型装置930は、上型931及び下型933を備える。まず、加飾モール93を下型933の成形面933Bに配置し、ガラス板91を下型933の挟持部933Cに配置する。上型931を下型933に押し合わせて、上型931の挟持部931Cと下型933の挟持部933Cとがガラス板91を挟持する。溶融樹脂を上型931の樹脂注入口931Aから注入し、キャビティに充填する。充填した溶融樹脂を固めることによって、樹脂枠92を形成する。これによって、ガラス板91と樹脂枠92と加飾モール93とが一体的に成形された樹脂枠付きガラス板910が得られる。最後に、樹脂枠付きガラス板910を金型装置930から取り出す。以上より、樹脂枠付きガラス板910を製造できる。
【0004】
図17は、図16の二点鎖線で囲われた部分の拡大図である。図17に示すように、樹脂枠92の外側端部92cは、加飾モール93の意匠部93aよりも樹脂枠付きガラス板910の外側(ここでは、y軸負方向)に延びる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-209614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような樹脂枠付き板状体が、例えば車体窓用開口部に固定された際に、意匠部は車外側に向いており、車外側から視認される。しかし、意匠部からはみ出た樹脂枠も車外側から視認されることがあった。
【0007】
図18は、車体窓用開口部に固定された樹脂枠付きガラス板の下側部の中央部分を横切る切断線における断面図である。図17及び図18を用いて説明すると、意匠部93aを視認する人の視線は、多くの場合、意匠部93aの表面に対して交差する方向、例えば垂直な方向E(ここでは、z軸正方向)に向けられる。意匠部93aを視認する人は、意匠部93aから外側(y軸負方向)にはみ出た樹脂枠92の外側端部92cを視認することがあった。これによって、車体窓としての外観性を損ねるおそれがあった。
【0008】
また、車体窓用開口部の周辺には、ベルトモールが意匠部93aの長手方向(ここでは、x軸方向)に沿って配置される。ベルトモールの幅と意匠部93aの幅との差が増大すると、ベルトモールと意匠部93aとが断続しているかのように車両の外側から視認される。そのため、車体窓としての良好な外観性を確保できなかった。
【0009】
本開示は、上述した課題を鑑みてなされたものであり、車体窓用開口部に固定された際に、車体窓としての外観性を損ねるおそれを抑制する樹脂枠付きガラス板、及び樹脂枠付きガラス板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る樹脂枠付きガラス板は、
ガラス板と、前記ガラス板の周縁部に設けられた樹脂枠と、前記樹脂枠に配置された加飾モールとを備え、前記樹脂枠と前記ガラス板と前記加飾モールとが一体的に成形された樹脂枠付きガラス板であって、
前記樹脂枠は、枠状に延びる本体と、前記本体の外側に設けられた外側端部とを備え、
前記加飾モールは、前記樹脂枠の前記本体を覆う意匠部と、前記意匠部から前記樹脂枠の前記外側端部に向けて延びる側壁と、を備え、
前記意匠部は、前記樹脂枠付きガラス板が車両の窓に取り付けられたとき、前記車両のボディから離隔しており、
前記樹脂枠の前記外側端部は、前記加飾モールの前記側壁を覆う被覆部を備え、前記意匠部と前記側壁との境界よりも前記樹脂枠付きガラス板の内側に位置する。
【0011】
本開示に係る樹脂枠付きガラス板の製造方法は、金型装置を用いた樹脂枠付きガラス板の製造方法であって、
前記樹脂枠付きガラス板は、ガラス板と、前記ガラス板の周縁部に設けられた樹脂枠と、前記樹脂枠に配置された加飾モールとを備え、
前記樹脂枠は、枠状に延びる本体と、前記本体の外側に設けられた外側端部とを備え、
前記加飾モールは、前記樹脂枠の前記本体を覆う意匠部と、前記意匠部から前記樹脂枠の前記外側端部に向けて延びる側壁とを備え、
前記金型装置は、第1の金型、第2の金型及び金型部材を備え、
前記第1の金型及び前記第2の金型は、互いに押し合わさることによって、キャビティを形成可能に設けられ、
前記金型部材は、前記第2の金型の摺動部に沿って摺動可能であり、
前記加飾モール及び前記ガラス板を前記第2の金型に配置し、
前記金型部材を、前記加飾モールの前記側壁に接触するように配置し、
前記第1の金型を前記第2の金型に押し合わせることによって、前記ガラス板を挟持しつつ前記キャビティを形成し、
溶融樹脂を前記キャビティに射出することによって、前記加飾モールの前記側壁を前記溶融樹脂に埋没させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、車体窓用開口部に固定された際に、車体窓としての外観性を損ねるおそれを抑制する樹脂枠付きガラス板、及び樹脂枠付きガラス板の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1に係る樹脂枠付きガラス板の一構成例の正面図である。
図2図1の切断線I-Iにおける断面図である。
図3図1に示す樹脂枠付きガラス板を備えた車両の側面図である。
図4図3に示す車両の要部の拡大側面図である。
図5】実施の形態1に係る樹脂枠付きガラス板の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図6】実施の形態1に係る樹脂枠付きガラス板の製造方法の一例を示す概略図である。
図7】実施の形態1に係る樹脂枠付きガラス板の製造方法の一例を示す概略図である。
図8】実施の形態1に係る樹脂枠付きガラス板の製造方法の一例を示す概略図である。
図9】実施の形態1に係る樹脂枠付きガラス板の製造方法の一例を示す概略図である。
図10図9に示す製造方法の一例の拡大概略図である。
図11】実施の形態1に係る樹脂枠付きガラス板の製造方法の一例を示す概略図である。
図12】実施の形態1に係る樹脂枠付きガラス板の製造方法の一例を示す概略図である。
図13図12に示す製造方法の一例の拡大概略図である。
図14】実施の形態1に係る樹脂枠付きガラス板の製造方法の一例を示す概略図である。
図15図6の製造方法の変形例を示す概略図である。
図16】従来の樹脂枠付きガラス板の製造方法の一例を示す概略図である。
図17図16に示す製造方法の一例の拡大概略図である。
図18】車体窓用開口部に固定された従来の樹脂枠付きガラス板の下側部の中央部分を横切る切断線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0015】
(実施の形態1)
<構成>
図1図4を参照して実施の形態1に係る樹脂枠付きガラス板の一構成例について説明する。図1は、実施の形態1に係る樹脂枠付きガラス板の一構成例の正面図である。図2は、図1の切断線I-Iにおける断面図である。図3は、図1に示す樹脂枠付きガラス板を備えた車両の側面図である。図4は、図3に示す車両の要部の拡大側面図である。
【0016】
なお、当然のことながら、図1及びその他の図面に示した右手系xyz座標は、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。通常、z軸正方向が上側、xy平面が水平面であり、図面間で共通である。
【0017】
図1及び図2に示すように、樹脂枠付きガラス板10は、ガラス板1と、樹脂枠2と、加飾モール3とを備える。樹脂枠2は、ガラス板1の周縁部1Aに設けられている。加飾モール3は、樹脂枠2に配置されている。ガラス板1と、樹脂枠2と、加飾モール3とは、一体成形品である。このような樹脂枠付きガラス板は、MAW(Module Assy Window:登録商標)とも称される。本実施の形態1に係る樹脂枠付きガラス板10は、車両の固定窓に用いられ、例えば自動車のフロントベンチガラスやリアクォーターガラス等の固定窓に好適に利用できる。加飾モール3は、車両に樹脂枠付きガラス板10を取り付けた際に、樹脂枠2の車外側(ここでは、y軸正方向)に配置される。
【0018】
図1に示すガラス板1は、平面視において、略四角形状に形成されている。ただし、ガラス板1の形状は、略四角形状に限定されず、略三角形状などでもよい。ガラス板1は、無機ガラスでもよいし、有機ガラスでもよい。無機ガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラスなどが特に制限なく用いられる。これらの中でも、製造コスト及び成形性の観点から、ソーダライムガラスが特に好ましい。ガラス板1の成形法は特に限定されない。例えば、無機ガラスの場合、フロート法などにより成形されたガラス板が好ましい。ガラス板1が無機ガラスである場合、ガラス板1は、未強化ガラス又は強化ガラスのいずれでもよい。未強化ガラスは、溶融ガラスを板状に成形して徐冷したものである。強化ガラスは、未強化ガラスの表面に圧縮応力層を形成したものであり、風冷強化ガラス、化学強化ガラスのいずれでもよい。
【0019】
強化ガラスが物理強化ガラス(例えば、風冷強化ガラス)である場合、曲げ成形において均一に加熱したガラス板を軟化点付近の温度から急冷させるなど、徐冷以外の操作により、ガラス表面とガラス内部との温度差によってガラス表面に圧縮応力層を形成することで、ガラス表面を強化してもよい。強化ガラスが化学強化ガラスである場合、曲げ成形の後、イオン交換法などによってガラス表面に圧縮応力層を形成することで、ガラス表面を強化してもよい。また、ガラス板1としては、紫外線又は赤外線を吸収するガラス板を用いてもよい。ガラス板1は透明であることが好ましいが、透明性を損なわない程度に着色されたガラス板であってもよい。
【0020】
ガラス板1は、車両に取り付けられたときに、車外側(ここでは、y軸正方向)が凸となるような湾曲形状であってよい。ガラス板1は、1方向にのみ曲げ成形された単曲曲げ形状を有していてもよいし、2方向(例えば所定方向と、当該所定方向と直交する方向)に曲げ成形された複曲曲げ形状を有していてもよい。ガラス板1の曲げ成形には、重力成形、プレス成形又はローラー成形などが用いられる。ガラス板1が所定の曲率に曲げ成形されている場合、ガラス板1の曲率半径は、1000~100000mmであってよい。
【0021】
ガラス板1は、1枚のガラス板であってもよいが、例えば、2枚以上のガラス板が中間膜を介して接着された合わせガラスであってもよい。ガラス板1の一具体例は、ガラス板と別のガラス板とが中間膜を介して接着された合わせガラスである。当該中間膜は、一例としてポリビニルブチラール(PVB)製又はエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)製などの公知の熱可塑性樹脂膜が用いられる。当該中間膜は、透明であってもよいし、着色されてもよい。また、当該中間膜は2層以上であってもよい。
【0022】
ガラス板1が合わせガラスである場合、ガラス板1を車両に取り付けたときに外側に位置する外側ガラス板の厚みと、内側に位置する内側ガラス板の厚みとは同じであってもよいし、異なっていてもよい。外側ガラス板の厚みは1.0mm以上3.0mm以下であることが好ましい。外側ガラス板の厚みが1.0mm以上であると、耐飛び石性能等の強度が十分であり、3.0mm以下であると、合わせガラスの質量が大きくなり過ぎず、車両の燃費の点で好ましい。内側ガラス板の厚みは、0.3mm以上2.3mm以下であることが好ましい。内側ガラス板の板厚が0.3mm以上であることによりハンドリング性がよく、2.3mm以下であることにより質量が大きくなり過ぎない。外側ガラス板の厚みと内側ガラス板の厚みがそれぞれ1.8mm以下であれば、ガラス板1の軽量化と遮音性を両立させることができ、好ましい。なお、内側ガラス板の厚みが1.0mm以下の場合、内側ガラス板が化学強化ガラスであってもよい。内側ガラス板が化学強化ガラスである場合、ガラス表面の圧縮応力値は300MPa以上、圧縮応力層の深さは2μm以上であることが好ましい。
【0023】
ガラス板1が1枚のガラス板である場合、ガラス板1は風冷強化ガラスであることが好ましい。この場合、ガラス板1の厚みは1.0mm以上5.0mm以下であることが好ましい。
【0024】
また、ガラス板1が有機ガラスである場合、有機ガラスの材料としては、ポリカーボネート又はアクリル樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート)などの透明樹脂が挙げられる。
【0025】
ガラス板1は、車内側の主面の周縁に遮蔽層を備えていてもよい。遮蔽層は、例えば、黒色顔料及び溶融性ガラスフリットを含むセラミックカラーペーストをガラス板1の主面に塗布し、焼成することによって形成される。遮蔽層は、ガラス板1に塗布される接着剤などが紫外線によって劣化することを防ぐことができる。なお、耐候性、親水性、撥水性などの機能性を高める観点から、各種適切な膜が、ガラス板1の主面に形成されてもよい。
【0026】
図1に示す樹脂枠2の一例は、ガラス板1の周縁部を取り囲むように設けられる。樹脂枠2の材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)及び熱可塑性エラストマー(TPE)などの合成樹脂を例示できる。
【0027】
なお、図1に示す樹脂枠付きガラス板10の形状は一例であり、本実施の形態1では、図1に示す樹脂枠付きガラス板10以外の形状を有していてもよい。
【0028】
さらに、樹脂枠付きガラス板10の一構成例について具体的に説明する。
【0029】
図1に示す樹脂枠付きガラス板10は、下側部10aを備える。下側部10aは、略四角形状のガラス板1の下辺を含む。切断線I-Iは、樹脂枠付きガラス板10の下側部10aの中央部分を横切る。
【0030】
図2に示すように、樹脂枠2は、本体2aと、内側端部2bと、外側端部2cとを備える。本体2aは枠状に延びる。内側端部2bは、本体2aの内側(ここでは、y軸負方向)に設けられている。内側端部2bは、ガラス板1の周縁部1Aを包含する。外側端部2cは、本体2aの外側(ここでは、z軸負方向)に設けられている。
【0031】
加飾モール3は、意匠部3aと、側壁3bとを備える。意匠部3aは樹脂枠2の本体2aを覆う。側壁3bは、意匠部3aから樹脂枠2の外側端部2cに向けて延びる。側壁3bは、外側端部2cの内部に挿し込まれている。樹脂枠2の外側端部2cは、意匠部3aと側壁3bとの境界よりも樹脂枠付きガラス板10の内側(ここでは、z軸正方向)に位置する。外側端部2cは、加飾モール3の側壁3bを覆う被覆部2dを備える。
【0032】
加飾モール3は、金属材料をプレス成形、押出成形又は引抜成形などで成形したものである。このような金属材料としては、鉄、アルミニウム、又はこれらの合金などを例示できる。鉄合金としては、鋼、具体的にはステンレス鋼を例示できる。加飾モール3は、意匠性を発揮するものであればよく、多種多様な形状、模様、色彩、又はこれらの結合を有してもよい。
【0033】
加飾モール3の意匠部3aを視認する視線LSは、意匠部3aの表面に対して交差する方向に延びる。意匠部3aは、ボディ21から離隔している。樹脂枠2の本体2aは、ボディ21の外側(ここでは、y軸正方向)へ略C字状に張り出すとよい。内側端部2bは、適宜、ボディ21に取り付け可能な形状を有してもよい。
【0034】
次に、樹脂枠2及び加飾モール3の形状及びサイズの詳細について述べる。
【0035】
被覆部2dの長さL2dは、例えば、2mm以上であるとよい。これによって、樹脂枠2の外側端部2cが加飾モール3の側壁3bを挟持して、樹脂枠2が加飾モール3から剥離することを抑制できる。
【0036】
また、加飾モール3の側壁3bの長さL3bに対する被覆部2dの長さL2dの比率は、10%以上75%以下であると好ましく、20%以上70%以下であるとより好ましい。これによって、樹脂枠2が加飾モール3から剥離することを抑制しつつ、樹脂枠2の外側端部2cが加飾モール3の意匠部3aから外側(ここでは、z軸負方向)にはみ出ることを抑制できる。
【0037】
また、被覆部2dの最薄部の厚みt2dは、例えば、0.5mm以上であると好ましく、1mm以上であるとより好ましい。加飾モール3の側壁3bの厚みt3は、例えば、0.5mm以上であるとよい。また、被覆部2dの最薄部の厚みt2dに対する加飾モール3の側壁3bの厚みt3の比率は、20%以上200%以下であると好ましく、30%以上150%以下であるとより好ましい。
【0038】
加飾モール3の意匠部3aと側壁3bとが交差して成す角度α3は、例えば、20~60度であると好ましく、30~50度であるとより好ましい。角度α3が20~60度であると、被覆部2dの厚みを確保しつつ、ボディ21と樹脂枠2の外側端部2cとを離隔させることができる。
【0039】
樹脂枠付きガラス板10は、例えば、図3に示す車両20に搭載される。図3に示すように、車両20のボディ21は、リアサイドドア22を備える。リアサイドドア22には、リアサイドドアガラス23が設けられている。リアサイドドアガラス23の後方(ここでは、x軸負方向)には、リアクォーターガラス24が設けられている。樹脂枠付きガラス板10は、リアクォーターガラス24として車両20に搭載される。リアサイドドアガラス23が設けられている窓枠に沿って、ベルトモール25が設けられている。
【0040】
図4に示すように、ベルトモール25の幅W25と、樹脂枠付きガラス板10の意匠部3aの幅W3aとは、同一である。同一とは、ベルトモール25の幅W25と意匠部3aの幅W3aとの差が2mm以下であることを意味する。ベルトモール25の幅W25と、意匠部3aの幅W3aとは、同一であることから、意匠部3aとベルトモール25とが連続しているかのように車両20の外側から視認される。これによって、樹脂枠付きガラス板10は、車両20のリアクォーターガラス24としての良好な外観性を確保できる。
【0041】
以上、樹脂枠付きガラス板10の構成によれば、樹脂枠2の外側端部2cは、意匠部3aと側壁3bとの境界よりも樹脂枠付きガラス板10の内側に位置する。樹脂枠付きガラス板10が、車両20に搭載されたとき、意匠部3aは車両20の外側に向いており、車両20の外側から視認される。樹脂枠2の外側端部2cは、意匠部3aと側壁3bとの境界よりも樹脂枠付きガラス板10の内側に位置することから、樹脂枠2が意匠部3aから外側にはみ出ない。したがって、樹脂枠付きガラス板10の車両窓としての外観性を損ねるおそれを抑制できる。
【0042】
<製造方法>
次に、図5図14を参照して、実施の形態1に係る樹脂枠付きガラス板10の製造方法の一例について説明する。なお、図5図14では、分かり易くするために、各構成の形状は、適宜、簡略化されている。図5は、実施の形態1に係る樹脂枠付きガラス板の製造方法の一例を示すフローチャートである。図6図9図11図12図14は、実施の形態1に係る樹脂枠付きガラス板の製造方法の一例を示す概略図である。図10は、図9に示す製造方法の一例の拡大概略図である。図13は、図12に示す製造方法の一例の拡大概略図である。図15は、図6の製造方法の変形例を示す概略図である。
【0043】
本製造方法の一例では、図6に示す金型装置30を使用する。金型装置30は、上型31(第1の金型と称してよい。)と、金型部材32と、下型33(第2の金型と称してよい。)とを備える。
【0044】
上型31は、下型33の上方において、下型33に接近可能、又は離隔可能に設けられている。上型31は、樹脂注入口31Aと、成形面31Bと、挟持部31Cと、摺動部31Dとを備える。挟持部31Cは、成形面31Bよりも上型31の内側(ここでは、y軸正方向)に設けられている。摺動部31Dは、成形面31Bよりも上型31の外側(ここでは、y軸負方向)に設けられている。
【0045】
上型31は、図7に示すストッパー31Eを備えてもよい。ストッパー31Eは、金型部材32が外側に押し出されるのを抑制できるものであればよく、例えば、金型部材32の内部へ挿入可能な棒状体である。ストッパー31Eは、例えば、アンギュラピンである。ストッパー31Eは、摺動部31D又はその近傍に設けられてよい。上型31を下型33に押し合わせる際、ストッパー31Eは、金型部材32の内部へ挿入されて金型部材32の移動を抑制する。一方、上型31を下型33から離隔する際、ストッパー31Eは、金型部材32の内部から引き抜かれて金型部材32の固定を解除する。
【0046】
また、上型31は、図15に示す斜面31Fを備えてもよい。斜面31Fは、金型部材32が外側に押し出されるのを抑制できる機能を有する。斜面31Fは、例えば、摺動部31Dにおける上型31の外側(ここでは、y軸負方向)に設けられ、下型33側に傾斜する。上型31を下型33に押し合わせる際、斜面31Fは、金型部材32に押し合わせられて金型部材32の移動を抑制する。一方、上型31を下型33から離隔する際、斜面31Fは、金型部材32から離隔して金型部材32の固定を解除する。図15の変形例では、図7に示すストッパー31Eが不要である。
【0047】
図6に示す下型33は、成形面33Bと、挟持部33Cと、摺動部33Dとを備える。挟持部33Cは、成形面33Bよりも下型33の内側(ここでは、y軸正方向)に設けられている。摺動部33Dは、成形面33Bよりも下型33の外側(ここでは、y軸負方向)に設けられている。
【0048】
上型31と下型33とが押し合わされると、成形面31Bと成形面33Bとによって、キャビティCVが形成される。キャビティCVは、樹脂枠2の形状と略同じである。
【0049】
挟持部31C及び挟持部33Cは、ガラス板1を挟持可能な形状を有する。挟持部33Cがガラス板1を支持したまま、上型31と下型33とが押し合わされると、挟持部31C及び挟持部33Cがガラス板1を挟持する。
【0050】
金型部材32は、上型31と下型33との間、かつ、キャビティCVよりも外側に配置され、キャビティCVに対して接近可能、又は離隔可能に設けられている。金型部材32は、上型31と下型33との開閉方向に対して垂直な方向(ここでは、y軸方向)に移動可能である。金型部材32は、例えば、スライドコアである。
【0051】
図5に示すフローチャートを用いて本製造方法の一例について説明する。
【0052】
まず、図6に示すように、加飾モール3及びガラス板1を下型33に配置する(工程ST1)。具体的には、加飾モール3を下型33の成形面33Bに配置し、ガラス板1を下型33の挟持部33Cに配置する。加飾モール3は、適宜、成形面33Bの形状に合わせるように弾性変形又は塑性変形してもよい。意匠部3aと側壁3bとが交差して成す角度α3(図2参照)は、20~60度であると好ましく、30~50度であるとより好ましい。
【0053】
続いて、金型部材32を下型33の摺動部33Dに配置する(工程ST2)。金型部材32は、摺動部33D上を摺動可能であり、加飾モール3に接触、又は押し当たってもよい。加飾モール3は、適宜、金型部材32の形状に合わせるように弾性変形又は塑性変形してもよい。金型部材32は、加飾モール3に接触、又は押し当たる接触面32aを有する。接触面32aは、意匠部3aと側壁3bとの境界よりも上型31及び下型33の内側(ここでは、y軸正方向)であるとよい。なお、上型31及び下型33の内側は、図9に示す樹脂枠付きガラス板10の内側と同じ向きである。
【0054】
続いて、上型31を下型33に押し合わせて、上型31と下型33とを型締めする(工程ST3)。上型31の挟持部31Cと下型33の挟持部33Cとがガラス板1を挟持する。ガラス板1の周縁部1AはキャビティCVに収容される。また、ストッパー31Eを金型部材32の内部に挿し込む(図7)。
【0055】
続いて、図7に示すように、溶融樹脂42を上型31の樹脂注入口31Aから注入し、キャビティCVに充填する(工程ST4)。具体的には、射出装置(不図示)を用いて、溶融樹脂42を上型31の樹脂注入口31Aから注入し、キャビティCVに向けて方向Bに射出する。そうすると、溶融樹脂42は、加飾モール3の意匠部3aの表面上に流入する。
【0056】
その後、図8に示すように、溶融樹脂42は、キャビティCVにおいて、上型31の成形面31B及び下型33の成形面33Bに向けて方向Cに流れることによって、キャビティCVに充填される。溶融樹脂42は、ガラス板1の周縁部1A及び加飾モール3の一部を包み込むとよい。溶融樹脂42は、樹脂枠2の材料と同じ種類の材料からなるとよい。
【0057】
続いて、図9及び図10に示すように、溶融樹脂42を固めることによって、樹脂枠2を形成する(工程ST5)。キャビティCV内の溶融樹脂42は、射出装置からの溶融樹脂による圧力をかけられつつ冷却することによって、固めるとよい。これによって、ガラス板1と樹脂枠2と加飾モール3とを一体的に成形し、樹脂枠付きガラス板10が形成される。
【0058】
最後に、樹脂枠付きガラス板10を金型装置30から取り出す(工程ST6)。具体的には、図9及び図10に示すストッパー31Eを金型部材32の内部から引き抜いて、金型部材32の固定を解除する。そして、図11に示すように、上型31を下型33から離隔させる。続いて、図12及び図13に示すように、金型部材32を下型33の外側(ここでは、y軸負方向)へ引き抜く。接触面32aが意匠部3aと側壁3bとの境界よりも下型33の外側(ここでは、y軸負方向)に到達するまで、金型部材32を引き抜くとよい。その後、下型33の摺動部33Dから金型部材32を取り外す。図14に示すように、樹脂枠付きガラス板10を下型33から取り出す。
【0059】
以上より、樹脂枠付きガラス板10を製造できる。
【0060】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、本発明は、上記実施の形態やその一例を適宜組み合わせて実施してもよい。例えば、金型装置30は、固定型である第2の金型と、水平方向に移動可能な可動型である第1の金型とを備えてもよい。この場合、金型部材32は、鉛直方向に移動可能であり、第2の金型の摺動部に配置されるとよい。
【符号の説明】
【0061】
10 樹脂枠付きガラス板
10a 下側部
1 ガラス板
1A 周縁部
2 樹脂枠
2a 本体
2b 内側端部
2c 外側端部
2d 被覆部
3 加飾モール
3a 意匠部
3b 側壁
20 車両
21 ボディ
22 リアサイドドア
23 リアサイドドアガラス
24 リアクォーターガラス
25 ベルトモール
30 金型装置
31 上型(第1の金型)
31A 樹脂注入口
31B 成形面
31C 挟持部
31D 摺動部
31E ストッパー
32 金型部材
32a 接触面
33 下型(第2の金型)
33B 成形面
33C 挟持部
33D 摺動部
42 溶融樹脂
CV キャビティ
W3a、W25 幅
α3 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2024-11-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図18
【補正方法】変更
【補正の内容】
図18