(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025150179
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】積層体及び包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 7/025 20190101AFI20251002BHJP
B65D 85/86 20060101ALI20251002BHJP
B65D 77/04 20060101ALI20251002BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20251002BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
B32B7/025
B65D85/86 100
B65D77/04 E
B32B27/00 B
B32B3/30
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024050926
(22)【出願日】2024-03-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2025-07-23
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】宇佐 利裕
【テーマコード(参考)】
3E067
3E096
4F100
【Fターム(参考)】
3E067AA12
3E067AB41
3E067AC03
3E067BA01B
3E067BA12C
3E067BB14C
3E067CA04
3E067CA11
3E067EA06
3E067FA04
3E067FC01
3E096AA05
3E096BA08
3E096BB03
3E096CA01
3E096CA12
3E096CB01
3E096CB03
3E096FA05
3E096FA10
3E096GA01
4F100AK01C
4F100AK01D
4F100AK07
4F100AK12
4F100AK18
4F100AK42
4F100AR00B
4F100AR00E
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA31A
4F100BA31B
4F100DD01
4F100DD01B
4F100DD01E
4F100EJ39
4F100EJ94A
4F100EJ94B
4F100EJ94C
4F100EJ94D
4F100EJ94E
4F100GB15
4F100GB41
4F100JD02
4F100JD02C
4F100JD02D
4F100JG01
4F100JG01B
4F100JG01E
4F100JG04
4F100JG04A
4F100YY00C
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】損傷しやすい等の機械的に脆い異方導電性部材を搬送及び保管できる積層体及び包装体を提供する。
【解決手段】積層体は、電気的な絶縁性を有する絶縁性基材と、絶縁性基材の厚み方向に貫通して設けられ、絶縁性基材の少なくとも一方の面から突出した突出部を備える複数の導通路とを有する異方導電性部材と、異方導電性部材の絶縁性基材の厚み方向において対向する2つの面のうち、少なくとも一方の面上に配置された有機膜とを有する。有機膜は気体透過度が2.3×10
8~4.6×10
9ml/(m
2・day・MPa)である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的な絶縁性を有する絶縁性基材と、前記絶縁性基材の厚み方向に貫通して設けられ、前記絶縁性基材の少なくとも一方の面から突出した突出部を備える複数の導通路とを有する異方導電性部材と、
前記異方導電性部材の前記絶縁性基材の厚み方向において対向する2つの面のうち、少なくとも一方の面上に配置された有機膜とを有し、
前記有機膜は、気体透過度が2.3×108~4.6×109ml/(m2・day・MPa)である、積層体。
【請求項2】
前記有機膜は、前記絶縁性基材の厚み方向において対向する前記2つの面上に配置されている、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記有機膜が前記異方導電性部材と接する面に配置されたスペーサーを有する、請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
巻芯を有し、前記異方導電性部材と前記有機膜とが積層された状態で前記巻芯に巻回されている、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記巻芯は、円筒で構成され、前記巻芯の軸方向の両端部に、それぞれ径が前記巻芯の径よりも大きいフランジが設けられている、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記有機膜は、多孔質膜である、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記異方導電性部材は、前記有機膜の少なくとも一方の面上に、一方向に沿って複数配置されている、請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
前記異方導電性部材は、前記有機膜の厚み方向において対向する2つの面に、それぞれ配置されている、請求項1に記載の積層体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の積層体と、前記積層体を収納する収納袋とを有し、
前記収納袋は、気体透過度が1×10-5~1ml/(m2・day・MPa)である、包装体。
【請求項10】
前記収納袋は、光の透過率が、波長100~780nmの波長域において最大1%以下である、請求項9に記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電性部材と有機膜とが積層された積層体、及び積層体を収納した包装体に関し、特に、異方導電性部材が絶縁性基材の厚み方向に貫通して設けられた導通路を有し、有機膜が気体透過性を有する積層体及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性基材に設けられた複数の貫通孔に金属等の導電性物質が充填された導通路を有する異方導電性部材がある。
異方導電性部材は、半導体素子等の電子部品と回路基板との間に挿入し、加圧するだけで電子部品と回路基板間の電気的接続が得られるため、半導体素子等の電子部品等の電気的接続部材、及び機能検査を行う際の検査用コネクタ等として広く使用されている。
特に、半導体素子等の電子部品は、ダウンサイジング化が顕著である。従来のワイヤーボンディングのような配線基板を直接接続する方式、フリップチップボンディング、及びサーモコンプレッションボンディング等では、電子部品の電気的な接続の安定性を十分に保証することができない場合があるため、電子接続部材として異方導電性部材が注目されている。
異方導電性部材を電子接続部材に用いる場合、異方導電性部材は、チップマウンター等の表面実装機を用いてプリント基板に配置される。この場合、異方導電性部材は、キャリアテープ等を用いて搬送及び保管される。
【0003】
例えば、特許文献1に、電子部品収納部を有するキャリアテープと、電子部品収容部を封止するカバーテープとを有する包装体が記載されている。カバーテープは、表面に帯電防止性が付与された基材層と、接着層と、基材層と接着層との間に設けられた静電誘導防止層とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、カバーテープの長手方向の両縁部をそれぞれ0.3~1.0mm幅で連続的にシールして包装し、リールに巻き取ることによって包装体が得られることが記載されている。電子部品等はこの包装体の形態で、保管あるいは搬送されることが記載されている。また、特許文献1では、カバーテープを引き剥がし、ピックアップ装置により電子部品等の存在、向き、及び位置を確認しながら取り出される。
ここで、上述の異方導電性部材は、電気的な絶縁性を有する絶縁性基材を有する構成である。絶縁性基材は、一般的に金属材よりも機械的に脆いことが知られており、異方導電性部材をプリント基板等に移送するとき、又は保管中に異方導電性部材が外力により振動して損傷する可能性がある。
しかしながら、特許文献1では、振動等により損傷しやすい等の機械的に脆いものを扱うことについて何ら考慮されていない。
本発明の目的は、損傷しやすい等の機械的に脆い異方導電性部材を搬送及び保管できる積層体及び包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、発明[1]は、電気的な絶縁性を有する絶縁性基材と、絶縁性基材の厚み方向に貫通して設けられ、絶縁性基材の少なくとも一方の面から突出した突出部を備える複数の導通路とを有する異方導電性部材と、異方導電性部材の絶縁性基材の厚み方向において対向する2つの面のうち、少なくとも一方の面上に配置された有機膜とを有し、有機膜は、気体透過度が2.3×108~4.6×109ml/(m2・day・MPa)である、積層体である。
【0007】
発明[2]は、有機膜は、絶縁性基材の厚み方向において対向する2つの面上に配置されている、発明[1]に記載の積層体である。
発明[3]は、有機膜が異方導電性部材と接する面に配置されたスペーサーを有する、発明[1]又は[2]に記載の積層体である。
発明[4]は、巻芯を有し、異方導電性部材と有機膜とが積層された状態で巻芯に巻回されている、発明[1]~[3]のいずれか1つに記載の積層体である。
発明[5]は、巻芯は、円筒で構成され、巻芯の軸方向の両端部に、それぞれ径が巻芯の径よりも大きいフランジが設けられている、発明[4]に記載の積層体である。
【0008】
発明[6]は、有機膜は、多孔質膜である、発明[1]~[5]のいずれか1つに記載の積層体である。
発明[7]は、異方導電性部材は、有機膜の少なくとも一方の面上に、一方向に沿って複数配置されている、発明[1]~[6]のいずれか1つに記載の積層体である。
発明[8]は、異方導電性部材は、有機膜の厚み方向において対向する2つの面に、それぞれ配置されている、発明[1]~[7]のいずれか1つに記載の積層体である。
【0009】
発明[9]は、発明[1]~[8]のいずれか1項に記載の積層体と、積層体を収納する収納袋とを有し、収納袋は、気体透過度が1×10-5~1ml/(m2・day・MPa)である、包装体である。
発明[10]は、収納袋は、光の透過率が、波長100~780nmの波長域において最大1%以下である、発明[9]に記載の包装体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、損傷しやすい等の機械的に脆い異方導電性部材を搬送及び保管できる積層体及び包装体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態の積層体の第1の例を示す模式的断面図である。
【
図2】本発明の実施形態の積層体の第1の例の積層状態の一例を示す模式的断面図である。
【
図3】本発明の実施形態の積層体の第1の例の積層状態の他の例を示す模式的断面図である。
【
図4】本発明の実施形態の積層体の第2の例を示す模式的断面図である。
【
図5】本発明の実施形態の積層体の第2の例の積層状態の一例を示す模式的断面図である。
【
図6】本発明の実施形態の積層体の第2の例の積層状態の他の例を示す模式的断面図である。
【
図7】本発明の実施形態の積層体の第3の例を示す模式的平面図である。
【
図8】本発明の実施形態の積層体の第3の例を示す模式的断面図である。
【
図9】本発明の実施形態の積層体の第4の例を示す模式的斜視図である。
【
図10】本発明の実施形態の積層体の第5の例を示す模式的断面図である。
【
図11】本発明の実施形態の包装体の第1の例を示す模式図である。
【
図12】本発明の実施形態の包装体の第2の例を示す模式的斜視図である。
【
図13】本発明の実施形態の積層体の異方導電性部材の一例を示す模式的断面図である。
【
図14】本発明の実施形態の積層体の異方導電性部材の一例を示す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の積層体及び包装体を詳細に説明する。
なお、以下に説明する図は、本発明を説明するための例示的なものであり、本発明を説明するために簡略化している。このため、以下に示す図に本発明が限定されるものではない。
なお、以下において数値範囲を示す「~」とは両側に記載された数値を含む。例えば、εが数値εα~数値εβとは、εの範囲は数値εαと数値εβを含む範囲であり、数学記号で示せばεα≦ε≦εβである。
「平行」及び「直交」については、特に記載がなければ、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
【0013】
[積層体の第1の例]
図1は本発明の実施形態の積層体の第1の例を示す模式的断面図である。
図2は本発明の実施形態の積層体の第1の例の積層状態の一例を示す模式的断面図である。
図3は本発明の実施形態の積層体の第1の例の積層状態の他の例を示す模式的断面図である。
なお、
図1~
図3において、複数の異方導電性部材12を示しているが、異方導電性部材12の数は、
図1~
図3に示す数に、特に限定されるものではない。
図1に示す積層体10は、異方導電性部材12と、有機膜14とが積層された構成である。異方導電性部材12と、有機膜14とが積層された方向が積層方向Dsである。
積層体10では、異方導電性部材12の絶縁性基材50(
図13参照)の厚み方向において対向する2つの面のうち、少なくとも一方の面上に有機膜14が配置されている。
図1では、異方導電性部材12の表面12a上に有機膜14が配置されている。異方導電性部材12の表面12aに有機膜14の裏面14bが接している。
有機膜14は、例えば、一方向D
1に延在する長尺状の部材である。異方導電性部材12は、一方向D
1に沿って間隔をあけて複数、有機膜14の裏面14bに配置されている。
【0014】
なお、異方導電性部材12の表面12aは、絶縁性基材50(
図13参照)の表面50a(
図13参照)である。異方導電性部材12の裏面12bは、絶縁性基材50(
図13参照)の裏面50b(
図13参照)である。異方導電性部材12の表面12aと裏面12bとは絶縁性基材50の厚み方向Dt(
図13参照)において対向する面である。
【0015】
異方導電性部材12は、後に詳細に説明するが、電気的な絶縁性を有する絶縁性基材50(
図13参照)と、絶縁性基材50の厚み方向Dt(
図13参照)に貫通して設けられ、絶縁性基材50の少なくとも一方の面から突出した突出部52a(
図13参照)を備える複数の導通路52(
図13参照)とを有する。上述のように、絶縁性基材は、一般的に金属材よりも機械的に脆いことが知られている。
【0016】
有機膜14は、気体透過度が2.3×108~4.6×109ml/(m2・day・MPa)である。
上述の有機膜14の気体透過度は、流体力学的方法を用い、差圧0.95166kg/cm2(700mmHg)、温度25℃環境下での単位体積あたりの毎分流量を測定することにより求めることができる。
流体力学的方法とは、測定対象の有機膜をガス透過試験装置に取り付け、任意の圧力差を作り出し、ガスが有機膜を通過する速度、又は流れの変化を測定して、気体透過性を求める方法である。
有機膜14は、気体透過度が2.3×108~4.6×109ml/(m2・day・MPa)であると、例えば、チップマウンター(図示せず)を用いてヘッド19を有機膜14の表面14aに接触させて有機膜14を吸引した場合、有機膜14を通して異方導電性部材12を吸引でき、ヘッド19で異方導電性部材12を保持できる。このため、有機膜14がヘッド19と異方導電性部材12との間にあっても、異方導電性部材12を搬送できる。
【0017】
有機膜14を異方導電性部材12の表面12a上に設けることにより、例えば、チップマウンター(図示せず)を用いてヘッド19で有機膜14を吸引して異方導電性部材12を搬送する場合、ヘッド19と異方導電性部材12との間に有機膜14が存在するため、有機膜14が緩衝材の役割を果たして異方導電性部材12の損傷、例えば、絶縁性基材の欠け及び割れの発生が抑制される。さらには、異方導電性部材12には、突出部52a(
図13参照)を備える複数の導通路52(
図13参照)があるが、突出部52a(
図13参照)についても、ヘッド19と異方導電性部材12との間に有機膜14が存在するため、損傷が抑制される。このように損傷しやすい等の機械的に脆い異方導電性部材12を搬送できる。
なお、異方導電性部材12の損傷には、上述のように絶縁性基材の欠け及び割れ、導通路の突出部の変形及び欠損等が含まれる。例えば、絶縁性基材に欠け等がある場合、絶縁性基材の一部が剥落してコンタミネーションの原因になる可能性がある。また、突出部が変形して隣接する突出部と接触した状態で、異方導電性部材を電子接続部材に用いると、電気的な接続を適切にできない可能性がある。このため、異方導電性部材12の損傷を抑制する必要がある。
【0018】
また、積層体10では、上述のように有機膜14を異方導電性部材12の表面12a上に設けることにより、有機膜14が緩衝材の役割を果たすことから、保管中、異方導電性部材12に外力による振動が加わっても、異方導電性部材12の損傷が抑制される。これにより、損傷しやすい等の機械的に脆い異方導電性部材12を、損傷を抑制して安定して保管できる。
【0019】
積層体10において、異方導電性部材12の有機膜14が設けられていない裏面12bには、何も設けられていない構成でもよい。この構成の場合、例えば、積層体10を支持体(図示せず)上に設置する場合、異方導電性部材12の裏面12bが支持体と接する。
また、積層体10は、
図2に示すように異方導電性部材12が積層方向Dsに積層した構成でもよい。
図2では、積層方向Dsにおいて異方導電性部材12が重なって積層されている。この場合、異方導電性部材12は、有機膜の厚み方向において対向する2つの面に、それぞれ配置されている。
積層体10を積層する場合、積層方向Dsにおいて異方導電性部材12を重ねて積層することに限定されるものでない。例えば、
図3に示すように、積層方向Dsの下側の異方導電性部材12を、積層方向Dsの上側の異方導電性部材12の一方向D
1における間の領域13に配置して、積層方向Dsにおいて異方導電性部材12が重らないようにしてもよい。
図3に示すように、異方導電性部材12が重ならない構成とすることにより、異方導電性部材12を積層方向Dsに積層した場合に比して、異方導電性部材12に対して積層方向Dsに作用する力を小さくできるため、異方導電性部材12の絶縁性基材及び突出部の損傷を更に抑制できる。なお、積層体10を積層する具体的な構成は、後に説明する。
【0020】
[積層体の第2の例]
図4は本発明の実施形態の積層体の第2の例を示す模式的断面図である。
図5は本発明の実施形態の積層体の第2の例の積層状態の一例を示す模式的断面図である。
図6は本発明の実施形態の積層体の第2の例の積層状態の他の例を示す模式的断面図である。
なお、
図4~
図6において、複数の異方導電性部材12を示しているが、異方導電性部材12の数は、
図4~
図6に示す数に、特に限定されるものではない。
図4~
図6において、
図1~3に示す積層体10と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0021】
図4に示す積層体10は、
図1に示す積層体10に比して、有機膜14が、異方導電性部材12の絶縁性基材の厚み方向において対向する2つの面上に配置されている点が異なり、それ以外の構成は、
図1に示す積層体10と同様の構成である。
図4に示す積層体10は、異方導電性部材12の表面12aと裏面12bとに、それぞれ有機膜14が設けられている。この構成により、異方導電性部材12の2つの面が保護されることになり、異方導電性部材12の損傷が更に抑制される。このため、損傷しやすい等の機械的に脆い異方導電性部材12を、損傷を抑制して安定して搬送することができ、保管することができる。
また、上述のようにチップマウンター(図示せず)を用いて異方導電性部材12を搬送する場合、異方導電性部材12の表面12a側及び裏面12b側のいずれかに配置された有機膜14をヘッド19で吸引すればよいことから、異方導電性部材12の搬送の自由度も高い。
また、例えば、積層体10を巻回した状態から巻き戻す場合、異方導電性部材12の表面12a側及び裏面12b側に有機膜14があるため、巻き戻しについても自由度が高い。
【0022】
また、積層体10は、
図5に示すように異方導電性部材12が積層方向Dsに積層した構成でもよい。
図5では、積層方向Dsにおいて異方導電性部材12が重なって積層されている。積層体10を積層する場合、積層方向Dsにおいて異方導電性部材12を重ねて積層することに限定されるものでない。例えば、
図6に示すように、積層方向Dsの下側の異方導電性部材12を、積層方向Dsの上側の異方導電性部材12の一方向D
1における間の領域13に配置して、積層方向Dsにおいて異方導電性部材12が重らないようにしてもよい。
図6に示すように、異方導電性部材12が重ならない構成とすることにより、異方導電性部材12を積層方向Dsに積層した場合に比して、異方導電性部材12に対して積層方向Dsに作用する力を小さくできるため、異方導電性部材12の絶縁性基材及び突出部の損傷を更に抑制できる。なお、積層体10を積層する具体的な構成は、後に説明する。
【0023】
図4に示す積層体10は、異方導電性部材12の表面12a側及び裏面12b側に有機膜14がある構成としたが、これに限定されるものではない。異方導電性部材12の表面12a側及び裏面12b側の有機膜14のうち、いずれか一方は、有機膜14ではなくてもよい。例えば、有機膜14に代えて、有機膜14以外のポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はポリプロピレン(PP)で形成されたテープを配置してもよい。
有機膜14に代わるテープは、電子部品の実装装置に用いられるキャリアテープを利用することができる。また、有機膜14に代わるテープに、例えば、異方導電性部材12を収納するための凹部が、延在する一方向に沿って複数配置されたエンボスキャリアテープを用いることもできる。エンボスキャリアテープでは、1つの凹部に、1つの異方導電性部材が配置されるため、異方導電性部材12をより安定して収納できる。エンボスキャリアテープを用いる場合、異方導電性部材12を凹部に載置した後、有機膜14を被せてシールしてもよい。
【0024】
[積層体の第3の例]
図7は本発明の実施形態の積層体の第3の例を示す模式的平面図である。
図8は本発明の実施形態の積層体の第3の例を示す模式的断面図である。
図8は
図7のA-A線による断面を示している。
なお、
図7及び
図8において、複数の異方導電性部材12を示しているが、異方導電性部材12の数は、
図7及び
図8に示す数に、特に限定されるものではない。
図7及び
図8において、
図4~6に示す積層体10と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0025】
図7及び
図8に示す積層体10は、
図4に示す積層体10に比して、有機膜14が異方導電性部材12と接する面に配置されたスペーサーを有する点が異なり、それ以外の構成は、
図4に示す積層体10と同様の構成である。
図7及び
図8に示すように、積層体10には、積層方向Dsの下側の有機膜14の表面14aにおいて、有機膜14の一方向D
1と面内で直交する幅方向Dwの両側に、スペーサー16が配置されている。このスペーサー16により異方導電性部材12は幅方向Dwの移動が規制され、かつ異方導電性部材12に対して積層方向Dsに作用する力が低減される。このため、異方導電性部材12の損傷を更に一層抑制できる。
スペーサー16は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はポリプロピレン(PP)で形成されたテープで構成される。
また、スペーサー16の積層方向Dsの厚みは、異方導電性部材12の積層方向Dsの厚みと同じであることが好ましい。これにより、異方導電性部材12の積層方向Dsにおける移動が制限されて、搬送、輸送又は保管中に外力による振動が異方導電性部材12に加わっても損傷がより一層抑制される。
【0026】
[積層体の第4の例]
図9は本発明の実施形態の積層体の第4の例を示す模式的斜視図である。
なお、
図9において、
図1に示す積層体10と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図9に示す積層体11は、巻芯22を有し、異方導電性部材12と有機膜14とが積層された状態で巻芯22に巻回されている点が異なり、それ以外の構成は、
図1に示す積層体10と同様の構成である。
【0027】
図9に示す積層体11では、異方導電性部材12と有機膜14とが積層された状態のものを積層材17という。積層材17がリール20の巻芯22に巻回されている。
リール20は、例えば、円筒で構成された巻芯22と、巻芯22の軸方向の両端部に、それぞれ径が巻芯22の径よりも大きいフランジ24が設けられている。巻芯22は、貫通孔23を有する。貫通孔23には、リール20を回転させるための回転軸(図示せず)が挿入される。
フランジ24は、例えば、平板で構成されており、外形が円形である。フランジ24の径は、上述のように巻芯22の径よりも大きい。フランジ24の外形が円形の場合、フランジ24の径は直径である。巻芯22の外形が円形の場合、巻芯22の径は直径である。
積層材17は、一方向D
1の一方の端部が巻芯22に接続されて、フランジ24の間で巻芯22に巻回される。
【0028】
リール20は、材質は、特に限定されるものではないが、例えば、各種のプラスチックで構成される。
また、巻芯22は、円筒に特に限定されるものではなく、公知の巻芯の形状とすることができる。巻芯22の径の大きさ及び軸方向の長さについても、特に限定されるものではなく、用途等に応じて適宜決定される。
巻芯22に巻回される積層材17の曲率をX(1/m)とし、曲率半径をR(m)とするとき、5≦X(1/m)≦40、すなわち、0.025≦R(m)≦0.2であることが好ましい。巻芯22が円筒の場合には直径、円筒ではない場合には円相当径は、巻芯22に積層材17を巻回した場合、積層材17の曲率X(1/m)及び曲率半径R(m)を、上述の5≦X(1/m)≦40、すなわち、0.025≦R(m)≦0.2となるように設定することが好ましい。
リール20は、フランジ24がある構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば、フランジ24がない構成でもよい。しかしながら、フランジ24は、有機膜14の幅方向Dwの位置を規制し、かつ異方導電性部材12が有機膜14からの落下を防止できるため、リール20はフランジ24を有することが好ましい。
なお、積層材17は、
図4に示すように、異方導電性部材12の両面に有機膜14が配置された構成でもよい。積層材17を巻芯22に巻回した場合、例えば、異方導電性部材12は、
図2、
図3、
図5及び
図6に示すような積層状態になる。
【0029】
[積層体の第5の例]
図10は本発明の実施形態の積層体の第5の例を示す模式的断面図である。
なお、
図10において、
図1に示す積層体10と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図10に示す積層体11aは、収納容器30と、異方導電性部材12と有機膜14とを有し、収納容器30内で異方導電性部材12と有機膜14とが積層されている点が異なり、それ以外の構成は、
図1に示す積層体10と同様の構成である。
収納容器30は、容器本体32と蓋34とを有する。容器本体32は、例えば、底部32bを有する筒状の部材で構成されている。容器本体32の底部32bの上方が開口しており、開口部32cを有する。蓋34は、容器本体32の開口部32cを閉塞する部材である。容器本体32及び蓋34は、例えば、円筒状の部材であり、容器本体32の開口部32cの外形が円形である。収納容器30には、例えば、シリコンウエハケースを利用できる。
【0030】
容器本体32の内部32aに、底部34b側から異方導電性部材12、有機膜14の順で繰り返し積層されて、異方導電性部材12と有機膜14とが配置されている。
積層体11aでは、例えば、積層方向Dsの下側の異方導電性部材12を、積層方向Dsの上側の異方導電性部材12の積層方向Dsと直交する横方向Dmにおける間18に配置して、積層方向Dsにおいて異方導電性部材12が重らないようにしている。これにより、異方導電性部材12に対して積層方向Dsに作用する力を小さくでき、異方導電性部材12の絶縁性基材及び突出部の損傷を更に抑制できる。
【0031】
図11では、異方導電性部材12と有機膜14とをそれぞれ5層配置しているが、配置する層の数は、収納容器30のサイズ又は異方導電性部材12のサイズに応じて適宜決定されるものであり、
図11に示す構成に特に限定されるものではない。
図11に示すように収納容器30に異方導電性部材12を積層して収納することにより、多くの異方導電性部材12を、損傷を抑制して安定に保管することができ、かつ収納容器30のまま輸送することもできる。収納容器30を輸送する場合でも、異方導電性部材12の損傷が抑制される。
【0032】
積層方向Dsにおいて異方導電性部材12が重らないように積層したが、これに限定されるものではなく、
図2に示すように積層方向Dsにおいて異方導電性部材12を重ねて積層してもよい。
また、異方導電性部材12の表面12aと裏面12bとに、それぞれ有機膜14を配置して、容器本体32内に異方導電性部材12、有機膜14の順で繰り返し積層してもよい。
【0033】
また、積層方向Dsと直交する横方向Dmにおいて隣接する異方導電性部材12との間18に、上述のスペーサー16(
図8参照)を設けてもよい。スペーサー16により、異方導電性部材12の横方向Dmの移動が規制され、かつ異方導電性部材12に対して積層方向Dsに作用する力が低減される。このため、異方導電性部材12の損傷を更に一層抑制できる。
積層体11aでも、スペーサー16の積層方向Dsの厚みは、異方導電性部材12の積層方向Dsの厚みと同じであることが好ましい。これにより、異方導電性部材12の積層方向Dsにおける移動が制限されて、輸送又は保管中に外力による振動が異方導電性部材12に加わっても損傷がより一層抑制される。
【0034】
[包装体の第1の例]
図11は本発明の実施形態の包装体の第1の例を示す模式図である。
図11において、
図9に示す積層体11と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図11に示す包装体36は、積層体11と、積層体11を収納する収納袋37とを有する。収納袋37の内部37aに積層体11が収納されている。
収納袋37は、気体透過度が1×10
-5~1ml/(m
2・day・MPa)である。
収納袋37の気体透過度は、例えば、JIS(Japanese Industrial Standards) K 7126-1:2006 プラスチック―フィルム及びシート―ガス透過度試験方法を用いて測定される。
包装体36は、収納袋37により、内部37aへの酸素の進入が抑制され、異方導電性部材12の導通路が金属で構成されている場合、導通路の酸化が抑制される。このため、異方導電性部材12の輸送及び保管の際に、導電性等の性能の劣化を抑制しながら、リール20に巻回された状態で、異方導電性部材12を輸送及び保管できる。
【0035】
なお、包装体36は、収納袋37の内部37aに脱酸素剤38を設けてもよく、脱酸素剤38以外に、吸湿剤(図示せず)を設けてもよい。また、収納袋37の内部37aを、アルゴンガス及び窒素ガス等の不活性ガスに置換する不活性ガス置換包装としてもよく、さらには、真空包装としてもよい。
また、収納袋37の内部37aへの光の入射を抑制する場合、収納袋37は遮光性を有することが好ましい。この場合、収納袋37の光の透過率は、波長100~780nmの波長域において最大1%以下であることが好ましい。
収納袋37の光の透過率は、波長100nm~780nmの波長域について、分光光度計を用いて測定される。
【0036】
[包装体の第2の例]
図12は本発明の実施形態の包装体の第2の例を示す模式的斜視図である。
図12において、
図10に示す積層体11aと、
図11に示す包装体36と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図12に示す包装体36aは、積層体11aと、積層体11aを収納する収納袋39とを有する。収納袋39の内部39aに積層体11aが収納されている。
包装体36aは、収納袋39により、内部39aへの酸素の進入が抑制され、異方導電性部材12の導通路が金属で構成されている場合、導通路の酸化が抑制される。このため、異方導電性部材12の輸送及び保管の際に、導電性等の性能の劣化を抑制しながら、収納容器30に収納された状態で、異方導電性部材12を輸送及び保管できる。
【0037】
なお、包装体36aは、収納袋39の内部39aに脱酸素剤38を設けてもよく、脱酸素剤38以外に、吸湿剤(図示せず)を設けてもよい。また、収納袋39の内部39aを、アルゴンガス及び窒素ガス等の不活性ガスに置換する不活性ガス置換包装としてもよく、さらには、真空包装としてもよい。
また、収納袋39の内部39aへの光の入射を抑制する場合、収納袋39は遮光性を有することが好ましい。この場合、収納袋39の光の透過率は、波長100~780nmの波長域において最大1%以下であることが好ましい。
収納袋39の光の透過率は、上述の収納袋37の光の透過率の測定方法と同様の方法で測定される。
【0038】
(有機膜)
有機膜は、上述のように気体透過度が2.3×108~4.6×109ml/(m2・day・MPa)である。有機膜は、異方導電性部材を吸引しやすくするために、多孔質膜であることが好ましい。
また、有機膜は、高分子を含むものであり、高分子は、例えば、フッ素原子を含有する。有機膜は、例えば、PTFE(ポリエチレンテレフタレート)で構成される。有機膜には、より具体的には、住友電工ファインポリマー株式会社製ポアフロン(登録商標)メンブレンFPシリーズを用いることができる。
有機膜は、例えば、温度25℃における曲げ弾性率が、100~10000(MPa)である。
【0039】
(収納袋)
収納袋は、上述のように気体透過度が1×10-5~1ml/(m2・day・MPa)である。
収納袋には、例えば、三菱ガス化学株式会社製のRPシステム(登録商標)に用いられるガスバリア袋(PTS袋(品名)及びアルミ袋(品名))を用いることができる。
また、収納袋は、上述のように光の入射を抑制する場合、遮光性を有することが好ましい。この場合、収納袋の光の透過率は、波長100~780nmの波長域において最大1%以下であることが好ましい。収納袋の光の透過率の測定方法は、上述のとおりである。
収納袋の光の透過率は、収納袋を形成するフィルム材の光の透過率である。例えば、収納袋が樹脂フィルム材を封止して作製されていれば、樹脂フィルム材の光の透過率が、収納袋の光の透過率となる。
【0040】
(異方導電性部材)
図13は本発明の実施形態の積層体の異方導電性部材の一例を示す模式的断面図である。
図14は本発明の実施形態の積層体の異方導電性部材の一例を示す模式的平面図である。
図14は
図13の陽極酸化膜の表面側から見た平面図であり、樹脂層54がない状態を示す。
図13に示す異方導電性部材12は、電気的な絶縁性を有する絶縁性基材50と、絶縁性基材50を厚み方向Dtに貫通し、互いに電気的に絶縁された状態で設けられ、少なくとも一方の面から突出した突出部を備える複数の導通路52とを有する。また、絶縁性基材50の少なくとも一方の面を覆う樹脂層54を有する。異方導電性部材12は、絶縁性基材50の厚み方向Dtに導電性を有する。
上述の積層体10(
図1参照)では、異方導電性部材12は、絶縁性基材50の厚み方向Dtと、積層体10の積層方向Dsとを平行にして、有機膜14と積層される。
なお、異方導電性部材12において、樹脂層54は必ずしも必要なものではなく、樹脂層54がない構成でもよい。
【0041】
複数の導通路52は、絶縁性基材50に、互いに電気的に絶縁された状態で設けられている。この場合、例えば、絶縁性基材50は、厚み方向Dtに貫通する複数の細孔51を有する。複数の細孔51に導通路52が設けられている。導通路52は、絶縁性基材50の表面50aから突出している。また、導通路52は、絶縁性基材50の裏面50bから突出している。
導通路52は、絶縁性基材50の厚み方向Dtにおける一方の面から突出していればよい。例えば、導通路52が突出している絶縁性基材50の面に樹脂層54が設けられる。樹脂層54は導通路52の突出部52aを覆い、突出部52aは樹脂層54に埋設されている。また、樹脂層54は導通路52の突出部52bを覆い、突出部52bは樹脂層54に埋設されている。
絶縁性基材50は、例えば、陽極酸化膜で構成される。陽極酸化膜は、例えば、バルブ金属を陽極酸化して形成される。
絶縁性基材50の表面50aと絶縁性基材50の裏面50bとは、絶縁性基材50の厚み方向Dtにおいて対向する面である。
【0042】
異方導電性部材12は異方導電性を有するものであり、上述のように厚み方向Dtに導電性を有するが、絶縁性基材50の表面50aに平行な方向における導電性が十分に低い。
異方導電性部材12は、
図14に示すように、例えば、外形が四角形である。なお、異方導電性部材12の外形及びサイズは、用途等に合わせて適宜決定される。
例えば、異方導電性部材12は、樹脂層54がない状態、又は樹脂層54があっても表面54aに何もない状態で接合される。
【0043】
以下、異方導電性部材の構成についてより具体的に説明する。異方導電性部材は、例えば、国際公開第2022/163260号に記載の構造体と同様の構成であり、また、上述の構造体と同様にして製造できる。
【0044】
<絶縁性基材>
絶縁性基材50は、導電体で構成された、複数の導通路52を互いに電気的に絶縁された状態にするものである。上述のように絶縁性基材50は電気的な絶縁性を有する。また、絶縁性基材50は、導通路52が形成される複数の細孔51を有する。絶縁性基材50の組成等については後に説明する。
絶縁性基材50の厚み方向Dtにおける長さ、すなわち、絶縁性基材50の厚みhtは、1~1000μmの範囲内であるのが好ましく、5~500μmの範囲内であるのがより好ましく、10~300μmの範囲内であるのが更に好ましい。絶縁性基材50の厚みhtがこの範囲であると、絶縁性基材50の取り扱い性が良好となる。
絶縁性基材50の厚みhtは、巻き取りやすさの観点から、30μm以下であることが好ましく、5~20μmであることがより好ましい。
【0045】
なお、絶縁性基材の厚みは、絶縁性基材を厚み方向Dtに対して集束イオンビーム(FIB)を用いて切削加工し、その断面を電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて倍率50000倍の撮影画像を取得することで測定可能である。撮影画像において、絶縁性基材の厚みに相当する箇所の長さを10箇所測定し、測定した10箇所の長さの平均値を求める。この平均値を絶縁性基材の厚みとする。
【0046】
<細孔の平均直径>
細孔51の平均直径は、1μm以下であることが好ましく、5~500nmであることがより好ましく、20~400nmであることが更に好ましく、40~200nmであることがより一層好ましく、50~100nmであることが最も好ましい。細孔51の平均直径dが1μm以下であり、上述の範囲であると、上述の平均直径を有する導通路52を得ることができる。
細孔51の平均直径は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて絶縁性基材50の表面を真上から倍率100~10000倍で撮影し撮影画像を得ることで測定可能である。撮影画像において、周囲が環状に連なっている細孔を少なくとも20個抽出し、その直径を測定し開口径とし、これら開口径の平均値を細孔の平均直径として算出する。
なお、倍率は、細孔を20個以上抽出できる撮影画像が得られるように上述した範囲の倍率を適宜選択することができる。また、開口径は、細孔部分の端部間の距離の最大値を測定する。すなわち、細孔の開口部の形状は略円形状に限定はされないので、開口部の形状が非円形状の場合には、細孔部分の端部間の距離の最大値を開口径とする。従って、例えば、2以上の細孔が一体化したような形状の細孔の場合にも、これを1つの細孔とみなし、細孔部分の端部間の距離の最大値を開口径とする。
【0047】
<導通路>
複数の導通路52は、上述のように、絶縁性基材50、例えば、陽極酸化膜において、互いに電気的に絶縁された状態で設けられている。
複数の導通路52は、電気導電性を有する。導通路は、導電性物質で構成される。導電性物質は、特に限定されるものではなく、金属が挙げられる。金属の具体例としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)及びコバルト(Co)等が好適に例示される。電気伝導性の観点から、銅、金、アルミニウム、ニッケル及びコバルトが好ましく、銅及び金がより好ましく、銅が最も好ましい。
金属は酸化物導電体に比して延性等に優れ変形しやすく、接合の際の圧縮でも変形しやすいため、導通路は金属で構成することが好ましい。
厚み方向Dtにおける導通路52の高さは、10~300μmであることが好ましく、20~30μmであることがより好ましい。
【0048】
<<導通路の形状>>
導通路52の平均直径dは、1μm以下であることが好ましく、5~500nmであることがより好ましく、20~400nmであることがさらに好ましく、40~200nmであることがより一層好ましく、50~100nmであることが最も好ましい。
導通路52の密度は、2万個/mm2以上であることが好ましく、200万個/mm2以上であることがより好ましく、1000万個/mm2以上であることがさらに好ましく、5000万個/mm2以上であることが特に好ましく、1億個/mm2以上であることが最も好ましい。
さらに、隣接する各導通路52の中心間距離pは、20nm~500nmであることが好ましく、40nm~200nmであることがより好ましく、50nm~140nmであることがさらに好ましい。
【0049】
導通路の平均直径は、走査電子顕微鏡を用いて絶縁性基材の表面を真上から倍率100~10000倍で撮影し撮影画像を得る。撮影画像において、周囲が環状に連なっている導通路を少なくとも20個抽出し、その直径を測定し開口径とし、これら開口径の平均値を導通路の平均直径として算出する。
なお、倍率は、導通路を20個以上抽出できる撮影画像が得られるように上述した範囲の倍率を適宜選択することができる。また、開口部の形状が非円形状の場合には、導通路部分の端部間の距離の最大値を開口径とする。従って、例えば、2以上の導通路が一体化したような形状の導通路の場合にも、これを1つの導通路とみなし、導通路部分の端部間の距離の最大値を開口径とする。導通路52の平均直径dは、突出部の平均径と同じである。
隣接する各導通路52の中心間距離pは、上述のようにして得た絶縁性基材50の撮影画像において、特定した導通路の中心位置(図示せず)を、さらに特定する。隣接する導通路の中心位置の間の距離を10箇所に求めた。この平均値を、隣接する各導通路52の中心間距離pとした。中心位置は、上述の撮影画像において導通路52に相当する領域の中心位置である。なお、撮影画像において、領域の中心位置の算出には、公知の画像解析法が用いられる。
【0050】
<<突出部>>
突出部は導通路の一部であり、柱状である。突出部は、接合対象との接触面積を大きくできることから、円柱状であることが好ましい。
突出部52aの平均突出長さha及び突出部52bの平均長さhbは、10nm~1000nmであることが好ましく、50nm~500nmがより好ましい。平均突出長さha及び平均長さhbが10nm~1000nmであれば、樹脂層54と絶縁性基材50との密着性が良好になる。
突出部52aの平均突出長さha及び突出部52bの平均長さhbは、上述のように走査電子顕微鏡を用いて突出部の断面画像を取得し、断面画像に基づき、突出部の高さを、それぞれ10点測定し、測定した平均値である。
【0051】
導通路52に関し、隣接する突出部との間隔は、20nm~200nmであることが好ましく、40nm~100nmであることがより好ましい。隣接する突出部との間隔が上述の範囲であると、導通路52の絶縁性基材50の表面50a又は裏面50bで導通路52の間隔を維持できる。これにより、半導体デバイス等の接続対象との接合時において、導通路52の短絡が抑制され、接合時の信頼性がさらに増す。
【0052】
<<樹脂層>>
樹脂層は、上述のように絶縁性基材の表面及び裏面のうち、少なくとも一方の面を覆うものであり、絶縁性基材及び導通路を保護する。樹脂層は、例えば、導通路が突出部を有するものであれば、突出部を埋設する。すなわち、樹脂層は、絶縁性基材から突出した導通路の端部を被覆し、突出部を保護する。
樹脂層は、上述の機能を発揮するために、例えば、50℃~200℃の温度範囲で流動性を示し、200℃以上で硬化するものであることが好ましい。樹脂層は、例えば、熱可塑性樹脂等で構成される熱可塑性層であるが、樹脂層については後に詳細に説明する。
樹脂層54の平均厚みhmは、10μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下である。樹脂層54の平均厚みhmが上述の10μm以下であれば、導通路52の突出部を保護し、かつ半導体デバイス等の接続対象との接合の際に電極の周囲を充填する効果を十分に発揮できる。
樹脂層54の平均厚みhmは、絶縁性基材50の表面50aからの平均距離、又は絶縁性基材50の裏面50bからの平均距離である。上述の樹脂層54の平均厚みhmは、樹脂層を異方導電性部材12の厚み方向Dtに切断し、走査電子顕微鏡を用いて切断断面の撮影画像を取得する。撮影画像において、樹脂層に該当する絶縁性基材50の表面50aからの距離を10箇所測定し、測定した10箇所の長さの平均値を求める。この平均値を、絶縁性基材50の表面50a側の樹脂層54の平均厚みhmとする。
更に絶縁性基材50の裏面50bからの距離を10箇所測定する。測定した10箇所の長さの平均値を求める。この平均値を、絶縁性基材50の裏面50b側の樹脂層54の平均厚みhmとする。
【0053】
樹脂層は、以下に示す組成を用いることもできる。以下、樹脂層の組成について説明する。例えば、樹脂層は、高分子材料を含有するものであり、酸化防止材料を含んでもよい。
樹脂層を構成する樹脂材料としては、具体的には、例えば、エチレン系共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、及びセルロース系樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。樹脂層54を構成する樹脂材料として、ポリアクリロニトリルも用いることができる。
樹脂層としては、上述のもの以外に、例えば、国際公開第2022/163260号に記載のアクリルポリマーと、アクリルモノマーと、マレイミド化合物とを含む主組成物を含有するものを用いることができる。
【0054】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の積層体及び包装体について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良又は変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0055】
10、11、11a 積層体
12 異方導電性部材
12a、14a、50a、54a 表面
12b、14b、50b 裏面
13 領域
14 有機膜
16 スペーサー
17 積層材
18 間
19 ヘッド
20 リール
22 巻芯
23 貫通孔
24 フランジ
30 収納容器
32 容器本体
32a、37a、39a 内部
32b 底部
32c 開口部
34 蓋
34b 底部
36 包装体
36a 包装体
37、39 収納袋
38 脱酸素剤
50 絶縁性基材
51 細孔
52 導通路
52a、52b 突出部
54 樹脂層
D1 一方向
Dm 横方向
Ds 積層方向
Dt 厚み方向
Dw 幅方向
d 平均直径
hm 平均厚み
ht 厚み
p 中心間距離
【手続補正書】
【提出日】2025-02-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的な絶縁性を有する絶縁性基材と、前記絶縁性基材の厚み方向に貫通して設けられ、前記絶縁性基材の少なくとも一方の面から突出した突出部を備える複数の導通路とを有する異方導電性部材と、
前記異方導電性部材の前記絶縁性基材の厚み方向において対向する2つの面のうち、少なくとも一方の面に直接又は間接的に配置された有機膜とを有し、
前記有機膜は、酸素の気体透過度が2.3×108~4.6×109ml/(m2・day・MPa)であり、フッ素原子を含有する高分子を含む、積層体。
【請求項2】
前記有機膜は、前記絶縁性基材の厚み方向において対向する前記2つの面上に配置されている、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記有機膜が前記異方導電性部材と接する面に配置されたスペーサーを有する、請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
巻芯を有し、前記異方導電性部材と前記有機膜とが積層された状態で前記巻芯に巻回されている、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記巻芯は、円筒で構成され、前記巻芯の軸方向の両端部に、それぞれ径が前記巻芯の径よりも大きいフランジが設けられている、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記有機膜は、多孔質膜である、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記異方導電性部材は、前記有機膜の少なくとも一方の面上に、一方向に沿って複数配置されている、請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
前記異方導電性部材は、前記有機膜の厚み方向において対向する前記2つの面に、それぞれ配置されている、請求項2に記載の積層体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の積層体と、前記積層体を収納する収納袋とを有し、
前記収納袋は、酸素の気体透過度が1×10-5~1ml/(m2・day・MPa)である、包装体。
【請求項10】
前記収納袋は、光の透過率が、波長100~780nmの波長域において最大1%以下である、請求項9に記載の包装体。
【手続補正書】
【提出日】2025-06-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的な絶縁性を有する絶縁性基材と、前記絶縁性基材の厚み方向に貫通して設けられ、前記絶縁性基材の少なくとも一方の面から突出した突出部を備える複数の導通路とを有する異方導電性部材と、
前記異方導電性部材の前記絶縁性基材の厚み方向において対向する2つの面のうち、少なくとも一方の面に直接配置された有機膜とを有し、
前記有機膜は、酸素の気体透過度が2.3×108~4.6×109ml/(m2・day・MPa)であり、フッ素原子を含有する高分子を含む、積層体。
【請求項2】
前記有機膜は、前記絶縁性基材の厚み方向において対向する前記2つの面に直接配置されている、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記有機膜が前記異方導電性部材と接する面に配置されたスペーサーを有する、請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
巻芯を有し、前記異方導電性部材と前記有機膜とが積層された状態で前記巻芯に巻回されている、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記巻芯は、円筒で構成され、前記巻芯の軸方向の両端部に、それぞれ径が前記巻芯の径よりも大きいフランジが設けられている、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記有機膜は、多孔質膜である、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記異方導電性部材は、前記有機膜の少なくとも一方の面上に、一方向に沿って複数配置されている、請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
前記異方導電性部材は、前記有機膜の厚み方向において対向する前記2つの面に直接、それぞれ配置されている、請求項2に記載の積層体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の積層体と、前記積層体を収納する収納袋とを有し、
前記収納袋は、酸素の気体透過度が1×10-5~1ml/(m2・day・MPa)である、包装体。
【請求項10】
前記収納袋は、光の透過率が、波長100~780nmの波長域において最大1%以下である、請求項9に記載の包装体。