(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025151101
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】硬化物、積層体、及び、半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 21/312 20060101AFI20251002BHJP
C08F 299/02 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
H01L21/312 B
C08F299/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024052346
(22)【出願日】2024-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】白川 三千紘
【テーマコード(参考)】
4J127
5F058
【Fターム(参考)】
4J127AA04
4J127BA04
4J127BB041
4J127BB22
4J127BC031
4J127BC131
4J127BD261
4J127BE241
4J127BE24Y
4J127BF451
4J127BF531
4J127BG051
4J127BG121
4J127BG161
4J127BG251
4J127DA19
4J127DA23
4J127DA26
4J127EA13
4J127FA38
4J127FA41
5F058AA08
5F058AB05
5F058AC02
5F058AC07
5F058AD04
5F058AD08
5F058AF04
5F058AG01
5F058AH02
(57)【要約】
【課題】
繰り返しの耐湿試験を行っても、クラックの発生が抑制される硬化物、上記硬化物を含む積層体、及び、上記硬化物を含む半導体デバイスを提供すること。
【解決手段】
ポリイミド及びポリイミド前駆体からなる群から選択される少なくとも1種以上の樹脂Bと、感光剤とを含む硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物であって、上記硬化物のヤング率が2.5~6.0GPaであり、上記硬化物が含窒素複素環化合物を含有し、さらに、上記樹脂組成物の硬化後に形成される樹脂Aが下記式(A-1)で表される繰返し単位を有する、硬化物、上記硬化物を含む積層体、並びに、上記硬化物を含む半導体デバイス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド及びポリイミド前駆体からなる群から選択される少なくとも1種以上の樹脂Bと、
感光剤とを含む硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物であって、
前記硬化物のヤング率が2.5~6.0GPaであり、
前記硬化物が含窒素複素環化合物を含有し、
さらに、前記樹脂組成物の硬化後に形成される樹脂Aが下記式(A-1)で表される繰返し単位を有する、
硬化物。
【化1】
式(A-1)中、X
A1は式(X-A1)で表される構造であり、Y
A1は2価の連結基である。
【化2】
式(X-A1)中、*は式(A-1)中のカルボニル基との結合部位を表す。
【請求項2】
前記樹脂Aが、下記式(A-2)で表される繰返し単位を有する樹脂である、請求項1に記載の硬化物。
【化3】
式(A-2)中、X
A2は4価の有機基であり、Y
A2は2価の連結基であり、下記条件1及び2の少なくとも一方を満たす。
条件1:X
A2が下記式(X-A2)で表される構造である
条件2:Y
A2が下記式(Y-A2)で表される構造である
【化4】
式(X-A2)中、*は式(A-2)中のカルボニル基との結合部位を表す。
【化5】
式(Y-A2)中、*は式(A-2)中の窒素原子との結合部位を表す。
【請求項3】
前記樹脂Aが、下記式(A-3)で表される繰返し単位を有する樹脂である、請求項1又は2に記載の硬化物。
【化6】
式(A-2)中、X
A3は4価の有機基であり、Y
A3は2価の連結基であり、下記条件3及び4の少なくとも一方を満たす。
条件3:X
A3が下記式(X-A3)で表される構造である
条件4:Y
A3が下記式(Y-A3)~式(Y-A5)のいずれかで表される構造である
【化7】
式(X-A3)中、*は式(A-3)中のカルボニル基との結合部位を表す。
【化8】
式(Y-A3)~式(Y-A5)中、*は式(A-3)中の窒素原子との結合部位を表す。
【請求項4】
前記樹脂Bの重量平均分子量が15,000~40,000である、請求項1又は2に記載の硬化物。
【請求項5】
前記樹脂組成物が、チタン錯体化合物を含む、請求項1又は2に記載の硬化物。
【請求項6】
前記感光剤としてオキシム化合物を更に含む、請求項1又は2に記載の硬化物。
【請求項7】
前記樹脂組成物が、酸化防止剤を更に含む、請求項1又は2に記載の硬化物。
【請求項8】
前記樹脂組成物が、更に、アニリン化合物を有する、請求項1又は2に記載の硬化物。
【請求項9】
前記樹脂組成物が、更に、ジアルキルウレア化合物を有する、請求項1又は2に記載の硬化物。
【請求項10】
前記樹脂Bにおける、アミック酸構造及びアミック酸エステル構造の合計モル量に対する、アミック酸エステル構造の含有モル量の割合が90~99.9%である、請求項1又は2に記載の硬化物。
【請求項11】
前記樹脂Bに含まれる、中和点のpHが7.0~12.0の範囲にある酸性官能基量が0.0010~0.3000mmol/gである、請求項1又は2に記載の硬化物。
【請求項12】
前記樹脂Bのアミン価が0.001~0.300mmol/gである、請求項1又は2に記載の硬化物。
【請求項13】
前記樹脂Bのイミド化率が3~40%である、請求項1又は2に記載の硬化物。
【請求項14】
前記樹脂Bが下記式(1)で表される構造を含み、樹脂組成物の全固形分に対する式(1)で表される構造の含有モル量が0.01~1.0mmol/gである、請求項1又は2に記載の硬化物。
【化9】
式(1)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、炭素数3~6の飽和脂肪族炭化水素基、または、炭素数1~10のアルキル基で置換されてもよいフェニル基を表し、X
1は酸素原子または硫黄原子を表し、L
1は-C(=O)-、または、-S(=O)
2-を表し、*
1及び*
2は、それぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、R
1、R
2、*
1に結合する構造、及び、*
2に結合する構造のうち少なくとも2つが結合して環構造を形成してもよい。
【請求項15】
請求項1又は2に記載の硬化物からなる層を2層以上含み、上記硬化物からなる層同士のいずれかの間に金属層を含む積層体。
【請求項16】
請求項1又は2に記載の硬化物を含む、半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物、積層体、及び、半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
現代では様々な分野において、樹脂を含む樹脂組成物から製造された樹脂材料を活用することが行われている。
例えば、ポリイミド等の複素環含有ポリマーを含む硬化物は、耐熱性及び絶縁性等に優れるため、様々な用途に適用されている。上記用途としては、特に限定されないが、実装用の半導体デバイスを例に挙げると、絶縁膜や封止材の材料、又は、保護膜としての利用が挙げられる。また、フレキシブル基板のベースフィルムやカバーレイなどとしても用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、シロキサン結合を含むアミン化合物に由来する構造を有するポリイミド前駆体、及び、上記ポリイミド前駆体と、溶剤とを含有するハイブリッドボンディング絶縁膜形成材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、半導体パッケージに使用されている再配線層(RDL)用絶縁膜において、厳しい使用環境化で安定した性能を発現することが求められている。
【0006】
本発明は、繰り返しの耐湿試験を行っても、クラックの発生が抑制される硬化物、上記硬化物を含む積層体、及び、上記硬化物を含む半導体デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の代表的な実施態様の例を以下に示す。
<1> ポリイミド及びポリイミド前駆体からなる群から選択される少なくとも1種以上の樹脂Bと、
感光剤とを含む硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物であって、
上記硬化物のヤング率が2.5~6.0GPaであり、
上記硬化物が含窒素複素環化合物を含有し、
さらに、上記樹脂組成物の硬化後に形成される樹脂Aが下記式(A-1)で表される繰返し単位を有する、
硬化物。
【化1】
式(A-1)中、X
A1は式(X-A1)で表される構造であり、Y
A1は2価の連結基である。
【化2】
式(X-A1)中、*は式(A-1)中のカルボニル基との結合部位を表す。
<2> 上記樹脂Aが、下記式(A-2)で表される繰返し単位を有する樹脂である、<1>に記載の硬化物。
【化3】
式(A-2)中、X
A2は4価の有機基であり、Y
A2は2価の連結基であり、下記条件1及び2の少なくとも一方を満たす。
条件1:X
A2が下記式(X-A2)で表される構造である
条件2:Y
A2が下記式(Y-A2)で表される構造である
【化4】
式(X-A2)中、*は式(A-2)中のカルボニル基との結合部位を表す。
【化5】
式(Y-A2)中、*は式(A-2)中の窒素原子との結合部位を表す。
<3> 上記樹脂Aが、下記式(A-3)で表される繰返し単位を有する樹脂である、<1>又は<2>に記載の硬化物。
【化6】
式(A-2)中、X
A3は4価の有機基であり、Y
A3は2価の連結基であり、下記条件3及び4の少なくとも一方を満たす。
条件3:X
A3が下記式(X-A3)で表される構造である
条件4:Y
A3が下記式(Y-A3)~式(Y-A5)のいずれかで表される構造である
【化7】
式(X-A3)中、*は式(A-3)中のカルボニル基との結合部位を表す。
【化8】
式(Y-A3)~式(Y-A5)中、*は式(A-3)中の窒素原子との結合部位を表す。
<4> 上記樹脂Bの重量平均分子量が15,000~40,000である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の硬化物。
<5> 上記樹脂組成物が、チタン錯体化合物を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の硬化物。
<6> 上記感光剤としてオキシム化合物を更に含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の硬化物。
<7> 上記樹脂組成物が、酸化防止剤を更に含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の硬化物。
<8> 上記樹脂組成物が、更に、アニリン化合物を有する、<1>~<7>のいずれか1つに記載の硬化物。
<9> 上記樹脂組成物が、更に、ジアルキルウレア化合物を有する、<1>~<8>のいずれか1つに記載の硬化物。
<10> 上記樹脂Bにおける、アミック酸構造及びアミック酸エステル構造の合計モル量に対する、アミック酸エステル構造の含有モル量の割合が90~99.9%である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の硬化物。
<11> 上記樹脂Bに含まれる、中和点のpHが7.0~12.0の範囲にある酸性官能基量が0.0010~0.3000mmol/gである、<1>~<10>のいずれか1つに記載の硬化物。
<12> 上記樹脂Bのアミン価が0.001~0.300mmol/gである、<1>~<11>のいずれか1つに記載の硬化物。
<13> 上記樹脂Bのイミド化率が3~40%である、<1>~<12>のいずれか1つに記載の硬化物。
<14> 上記樹脂Bが下記式(1)で表される構造を含み、樹脂組成物の全固形分に対する式(1)で表される構造の含有モル量が0.01~1.0mmol/gである、<1>~<13>のいずれか1つに記載の硬化物。
【化9】
式(1)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、炭素数3~6の飽和脂肪族炭化水素基、または、炭素数1~10のアルキル基で置換されてもよいフェニル基を表し、X
1は酸素原子または硫黄原子を表し、L
1は-C(=O)-、または、-S(=O)
2-を表し、*
1及び*
2は、それぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、R
1、R
2、*
1に結合する構造、及び、*
2に結合する構造のうち少なくとも2つが結合して環構造を形成してもよい。
<15> <1>~<14>のいずれか1つに記載の硬化物からなる層を2層以上含み、上記硬化物からなる層同士のいずれかの間に金属層を含む積層体。
<16> <1>~<14>のいずれか1つに記載の硬化物を含む、半導体デバイス。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、繰り返しの耐湿試験を行っても、クラックの発生が抑制される硬化物、上記硬化物を含む積層体、及び、上記硬化物を含む半導体デバイスが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の主要な実施形態について説明する。しかしながら、本発明は、明示した実施形態に限られるものではない。
本明細書において「~」という記号を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、その工程の所期の作用が達成できる限りにおいて、他の工程と明確に区別できない工程も含む意味である。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有しない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた露光も含む。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線又は放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方、又は、いずれかを意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」の両方、又は、いずれかを意味し、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方、又は、いずれかを意味する。
本明細書において、構造式中のMeはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。また本明細書において、固形分濃度とは、組成物の総質量に対する、溶剤を除く他の成分の質量百分率である。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に述べない限り、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法を用いて測定した値であり、ポリスチレン換算値として定義される。本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC-8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてガードカラムHZ-L、TSKgel Super HZM-M、TSKgel Super HZ4000、TSKgel Super HZ3000、及び、TSKgel Super HZ2000(以上、東ソー(株)製)を直列に連結して用いることによって求めることができる。それらの分子量は特に述べない限り、溶離液としてNMP(N-メチル-2-ピロリドン)を用いて測定したものとする。ただし、溶解性が低い場合など、溶離液としてNMPが適していない場合にはTHF(テトラヒドロフラン)を用いることもできる。また、GPC測定における検出は特に述べない限り、UV線(紫外線)の波長254nm検出器を使用したものとする。
本明細書において、積層体を構成する各層の位置関係について、「上」又は「下」と記載したときには、注目している複数の層のうち基準となる層の上側又は下側に他の層があればよい。すなわち、基準となる層と上記他の層の間に、更に第3の層や要素が介在していてもよく、基準となる層と上記他の層は接している必要はない。特に断らない限り、基材に対し層が積み重なっていく方向を「上」と称し、又は、樹脂組成物層がある場合には、基材から樹脂組成物層へ向かう方向を「上」と称し、その反対方向を「下」と称する。なお、このような上下方向の設定は、本明細書中における便宜のためであり、実際の態様においては、本明細書における「上」方向は、鉛直上向きと異なることもありうる。
本明細書において、特段の記載がない限り、組成物は、組成物に含まれる各成分として、その成分に該当する2種以上の化合物を含んでもよい。特段の記載がない限り、組成物における各成分の含有量とは、その成分に該当する全ての化合物の合計含有量を意味する。
本明細書において、特に述べない限り、温度は23℃、気圧は101,325Pa(1気圧)、相対湿度は50%RHである。
本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0010】
(硬化物)
本発明の硬化物は、ポリイミド及びポリイミド前駆体からなる群から選択される少なくとも1種以上の樹脂Bと、感光剤とを含む硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物であって、上記硬化物のヤング率が2.5~6.0GPaであり、上記硬化物が含窒素複素環化合物を含有し、さらに、上記樹脂組成物の硬化後に形成される樹脂Aが式(A-1)で表される繰返し単位を有する。
【0011】
本発明の硬化物は、例えば、半導体デバイスの絶縁膜、再配線層用層間絶縁膜、ストレスバッファ膜等として用いることができ、再配線層用層間絶縁膜として用いられることが好ましい。
【0012】
本発明の硬化物は、繰り返しの耐湿試験を行っても、クラックの発生が抑制される。
繰り返しの耐湿試験としては、下記条件1の耐湿試験と、条件2の加熱プロセスを交互に3回繰り返す試験等が挙げられる。
条件1(耐湿試験)
・130℃、85%相対湿度(RH)、96時間
条件2(加熱プロセス)
・175℃、50%相対湿度(RH)、96時間
上記効果が得られるメカニズムは不明であるが、下記のように推測される。
【0013】
本発明者らは、繰り返し耐湿試験後のクラック発生抑制には、水分の浸透を抑制すること、水分が浸透した場合に加速される金属(好ましくは銅又は銅を含む合金、より好ましくは銅)表面の腐食を抑制すること、金属の腐食時に生じる界面応力を適切に緩和すること、の3つの要素が適切に働く必要があることを見出した。
水分の浸透抑制について、ヤング率が特定の範囲(2.5GPa以上)であり、かつ、樹脂Aが、式(X-A1)で表される構造を含むことが効果的と考えられる。ヤング率が2.5GPa以上であれば、硬化物への水分浸透時のひずみを生じにくくなり、また、式(X-A1)で表される構造は、疎水的な構造であるため、耐湿試験における水分の浸透を抑制する効果があるものと推定される。
次に、金属の腐食抑制について、含窒素複素環化合物を有し、かつ、樹脂Aが、式(X-A1)で表される構造を含むことが効果的と考えられる。特定のビフェニル構造は、含窒素複素環化合物と弱い電荷移動相互作用を形成し膜内に均一に近い状態で含窒素複素環化合物を分布させる効果があると推定される。
また、金属の腐食時に生じる界面応力の緩和について、ヤング率が特定の範囲(6.0GPa以下)であることが効果的と考えられる。ヤング率が6.0GPaを超える場合、脆性破壊が起きやすくなるため、わずかな金属の腐食でもクラックが発生するものと推定される。
【0014】
ここで、特許文献1には、本発明の硬化物に該当する硬化物については記載されていない。
【0015】
以下、本発明の硬化物について詳細に説明する。
【0016】
<硬化物の特性>
本発明の硬化物は、後述する樹脂組成物を硬化してなる硬化物である。
樹脂組成物の硬化は加熱によるものであることが好ましく、加熱温度が120℃~400℃がより好ましく、140℃~380℃が更に好ましく、170℃~350℃が特に好ましい。硬化物の形態は、特に限定されず、フィルム状、棒状、球状、ペレット状など、用途に合わせて選択することができる。本発明において、硬化物は、フィルム状であることが好ましい。樹脂組成物のパターン加工によって、壁面への保護膜の形成、導通のためのビアホール形成、インピーダンスや静電容量あるいは内部応力の調整、放熱機能付与など、用途にあわせて、硬化物の形状を選択することもできる。硬化物(硬化物からなる膜)の膜厚は、0.5μm以上150μm以下であることが好ましい。
樹脂組成物を硬化した際の収縮率は、50%以下が好ましく、45%以下がより好ましく、40%以下が更に好ましい。ここで、収縮率は、樹脂組成物の硬化前後の体積変化の百分率を指し、下記の式より算出することができる。
収縮率[%]=100-(硬化後の体積÷硬化前の体積)×100
【0017】
本発明の硬化物の破断伸びは、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上が更に好ましい。
本発明の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、180℃以上であることが好ましく、210℃以上であることがより好ましく、230℃以上であることがさらに好ましい。
【0018】
<ヤング率>
本発明の硬化物は、ヤング率が2.5~6.0GPaである。
上記ヤング率は、3.0GPa以上であることが好ましく、3.5GPa以上であることがより好ましい。
また、上記ヤング率は、5.0GPa以下であることが好ましく、4.5GPa以下であることがより好ましい。
本発明において、硬化物のヤング率は以下のように算出される。
硬化物を引張り試験機(インストロン社製モデル5965)を用いてクロスヘッドスピード300mm/分、幅2mm、試料長30mmの試料として試料の長手方向について、23℃、50%RHの環境下にてJIS-K7127:1999に準拠してヤング率値を測定する。試料は打ち抜き機を用いて作製する。評価は5回行い算術平均値を用いる。
【0019】
<樹脂A>
〔式(A-1)で表される繰返し単位〕
本発明の硬化物は、樹脂組成物の硬化後に形成される樹脂Aを含む。
樹脂Aは、樹脂Bのイミド化等の変性により得られる樹脂であり、例えば樹脂Bが重合性基を有する場合には、重合後の構造であることが好ましい。また、樹脂Bが重合性基を有し、樹脂組成物が重合性化合物を含む場合、樹脂Bと重合性化合物の重合により形成される構造であることが好ましい。また、樹脂Aには光重合開始剤などの樹脂組成物に含まれる成分に由来する構造が含まれる場合がある。
【0020】
樹脂Aは下記式(A-1)で表される繰返し単位を有する。
【化10】
式(A-1)中、X
A1は式(X-A1)で表される構造であり、Y
A1は2価の連結基である。
【化11】
式(X-A1)中、*は式(A-1)中のカルボニル基との結合部位を表す。
【0021】
-X
A1-
X
A1を含む式(A-1)は、下記式(A-1-2)で表される構造であることが好ましく、下記式(A-1-3)で表される構造であることがより好ましい。
【化12】
式(A-1-2)及び式(A-1-3)中、Y
A1は2価の連結基である。
式(A-1-2)及び式(A-1-3)中、Y
A1の好ましい態様は式(A-1)中のY
A1の好ましい態様と同様である。
【0022】
-Y
A1-
Y
A1の炭素数は、4以上であることが好ましく、4~50であることがより好ましく、4~40であることが更に好ましい。
式(A-1)中、Y
A1は下記式(V-1)~式(V-10)のいずれかで表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む基であってもよい。
式(V-1)~式(V-10)のいずれかで表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む基であることにより、硬化物の耐薬品性及び平坦性が向上する。
【化13】
式(V-2)中、R
X1はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はハロゲン化アルキル基である。
式(V-3)中、R
X2及びR
X3はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
X2とR
X3は結合して環構造を形成してもよい。
式(V-8)中、R
X5はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はハロゲン化アルキル基である。
【0023】
式(V-2)中、RX1はそれぞれ独立に、アルキル基又はハロゲン化アルキル基であることが好ましく、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のハロゲン化アルキル基であることがより好ましく、メチル基又はトリフルオロメチル基が更に好ましい。ハロゲン化アルキル基とは、アルキル基の水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子により置換された基をいう。ハロゲン原子としては、F又はClが好ましく、Fがより好ましい。
式(V-3)中、RX2及びRX3はそれぞれ独立に、水素原子であることが好ましい。RX2とRX3が結合して環構造を形成する場合、RX2とRX3が結合して形成される構造は、単結合、-O-又は-C(R)2-であることが好ましく、-O-又は-C(R)2-であることがより好ましく、-O-であることが更に好ましい。Rは水素原子又は1価の有機基を表し、水素原子、アルキル基又はアリール基が好ましく、水素原子が更に好ましい。
式(V-8)中、RX5はそれぞれ独立に、アルキル基又はハロゲン化アルキル基であることが好ましく、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のハロゲン化アルキル基であることがより好ましく、メチル基又はトリフルオロメチル基が更に好ましい。ハロゲン化アルキル基とは、アルキル基の水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子により置換された基をいう。ハロゲン原子としては、F又はClが好ましく、Fがより好ましい。
【0024】
Y
A1が、式(V-1)で表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む基である場合、Y
A1は下記式(V-1-2)で表される基であることが好ましい。下記式中、*は式(A-1)中のY
A1が結合する2つの窒素原子との結合部位を表し、n1は1~5の整数を表す。また、下記構造における水素原子は、炭化水素基等の公知の置換基により更に置換されていてもよい。
【化14】
【0025】
Y
A1が、式(V-2)で表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む基である場合、Y
A1は下記式(V-2-3)又は式(V-2-4)で表される基であることが好ましく、硬化物の誘電率を低下させる等の観点からは、式(V-2-4)で表される基であることが好ましい。下記式中、L
X1は単結合又は-O-を表し、*は式(A-1)中のY
A1が結合する2つの窒素原子との結合部位を表す。また、R
X1の定義及び好ましい態様は上述の通りである。また、これらの構造における水素原子は、炭化水素基等の公知の置換基により更に置換されていてもよい。
【化15】
【0026】
Y
A1が、式(V-3)で表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む基である場合、Y
A1は下記式(V-3-3)又は式(V-3-4)で表される基であることが好ましく、硬化物の誘電率を低下させる等の観点からは、式(V-3-3)で表される基であることが好ましい。下記式中、*は式(A-1)中のY
A1が結合する2つの窒素原子との結合部位を表す。また、R
X2及びR
X3の定義及び好ましい態様は上述の通りである。また、これらの構造における水素原子は、炭化水素基等の公知の置換基により更に置換されていてもよい。
【化16】
【0027】
Y
A1が、式(V-4)で表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む基である場合、Y
A1は下記式(V-4-2)又は式(V-4-3)で表される基であることが好ましい。下記式中、*は式(A-1)中のY
A1が結合する2つの窒素原子との結合部位を表し、n1は0~5の整数を表す。またn1が0である態様も、本発明の好ましい態様の一つである。また、下記構造における水素原子は、炭化水素基等の公知の置換基により更に置換されていてもよい。公知の置換基としては、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【化17】
【0028】
Y
A1が、式(V-5)で表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む基である場合、Y
A1は下記式(V-5-2)で表される基であることが好ましい。下記式中、*は式(A-1)中のY
A1が結合する2つの窒素原子との結合部位を表す。また、式(V-5-2)における水素原子は、炭化水素基等の公知の置換基により更に置換されていてもよい。公知の置換基としては、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。ただし、(V-5-2)で表される構造における水素原子がいずれも置換されていないことも好ましい。
【化18】
【0029】
Y
A1が、式(V-6)で表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む基である場合、Y
A1は下記式(V-6-2)で表される基であることが好ましい。下記式中、*は式(A-1)中のY
A1が結合する2つの窒素原子との結合部位を表す。また、下記構造における水素原子は、炭化水素基等の公知の置換基により更に置換されていてもよい。
【化19】
【0030】
Y
A1が、式(V-7)で表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む基である場合、Y
A1は下記式(V-7-2)で表される基であることが好ましい。下記式中、*は式(A-1)中のY
A1が結合する2つの窒素原子との結合部位を表す。また、下記構造における水素原子は、炭化水素基等の公知の置換基により更に置換されていてもよい。
【化20】
【0031】
Y
A1が、式(V-8)で表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む基である場合、Y
A1は下記式(V-8-2)で表される基であることが好ましい。下記式中、*は式(A-1)中のY
A1が結合する2つの窒素原子との結合部位を表す。また、R
X5の定義及び好ましい態様は上述の通りである。また、下記構造における水素原子は、炭化水素基等の公知の置換基により更に置換されていてもよい。
【化21】
【0032】
Y
A1が、式(V-9)で表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む基である場合、Y
A1は下記式(V-9-2)で表される基であることが好ましい。下記式中、*は式(A-1)中のY
A1が結合する2つの窒素原子との結合部位を表す。また、下記構造における水素原子は、炭化水素基等の公知の置換基により更に置換されていてもよい。
【化22】
【0033】
Y
A1が、式(V-10)で表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む基である場合、Y
A1は下記式(V-10-2)で表される基であることが好ましい。下記式中、*は式(A-1)中のY
A1が結合する2つの窒素原子との結合部位を表す。また、下記構造における水素原子は、炭化水素基等の公知の置換基により更に置換されていてもよい。
【化23】
【0034】
その他、YA1は特開2023-003421号公報の段落0042~0053に記載の基であってもよい。
また、YA1は構造中にイミド構造を含まないことが好ましい。
また、YA1は構造中にウレタン結合、ウレア結合及びアミド結合を含まないことが好ましい。
更に、YA1は構造中にエステル結合を含まないことが好ましい。
これらの中でも、YA1はイミド構造、ウレタン結合、ウレア結合及びアミド結合を含まないことが好ましく、イミド構造、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合及びエステル結合を含まないことがより好ましい。
【0035】
〔式(A-2)で表される繰返し単位〕
樹脂Aは、下記式(A-2)で表される繰返し単位を有することが好ましい。
ここで、式(A-2)で表される繰返し単位は、上述の式(A-1)で表される繰返し単位には該当しない繰返し単位である。
【化24】
式(A-2)中、X
A2は4価の有機基であり、Y
A2は2価の連結基であり、下記条件1及び2の少なくとも一方を満たす。
条件1:X
A2が下記式(X-A2)で表される構造である
条件2:Y
A2が下記式(Y-A2)で表される構造である
【化25】
式(X-A2)中、*は式(A-2)中のカルボニル基との結合部位を表す。
【化26】
式(Y-A2)中、*は式(A-2)中の窒素原子との結合部位を表す。
【0036】
-X
A2-
条件1を満たす場合、X
A2を含む式(A-2)は、下記式(A-2-2)で表される構造であることが好ましく、下記式(A-2-3)で表される構造であることがより好ましい。
【化27】
式(A-2-2)及び式(A-2-3)中、Y
A2は2価の連結基である。
式(A-2-2)及び式(A-2-3)中、Y
A2の好ましい態様は式(A-2)中のY
A2の好ましい態様と同様である。
【0037】
条件1を満たさない場合(条件2のみを満たす場合)、X
A2は4価の有機基であり、4価の有機基としては、芳香環を含む4価の有機基が好ましく、下記式(5)又は式(6)で表される基がより好ましい。
式(5)又は式(6)中、*はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表す。
【化28】
式(5)中、R
112は単結合又は2価の連結基であり、単結合、又は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-CO-、-S-、-SO
2-、及び-NHCO-、ならびに、これらの組み合わせから選択される基であることが好ましく、単結合、または、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキレン基、-O-、-CO-、-S-及び-SO
2-から選択される基であることがより好ましく、-CH
2-、-C(CF
3)
2-、-C(CH
3)
2-、-O-、-CO-、-S-及び-SO
2-からなる群より選択される2価の基であることが更に好ましい。
【0038】
XA2の炭素数は、4以上であることが好ましく、4~50であることがより好ましく、4~40であることが更に好ましい。
【0039】
これらの中でも、XA2が上述の式(V-1)~式(V-10)のいずれかで表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む有機基であることにより、硬化物の耐薬品性及び平坦性が向上する。
また、XA2が式(V-1)~式(V-5)のいずれかで表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む有機基であることにより、現像残渣の発生の抑制、硬化物の低誘電率化、熱膨張係数の低減等の効果も得られる。
式(V-6)~式(V-10)のいずれかで表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む有機基であることにより、紫外光の透過性の向上により硬化物のパターンがテーパー状になりにくい、露光量に対する許容度が広い等の効果も得られる。
【0040】
X
A2が、式(V-1)で表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む基である場合、X
A2は下記式(V-1-1)で表される基であることが好ましい。下記式中、*は式(A-2)中のX
A2が結合する4つのカルボニル基との結合部位を表し、n1は1~5の整数を表し、1~3の整数であることも好ましい。また、下記構造における水素原子は、炭化水素基等の公知の置換基により更に置換されていてもよい。
【化29】
【0041】
X
A2が、式(V-2)で表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む基である場合、X
A2は下記式(V-2-1)又は式(V-2-2)で表される基であることが好ましく、樹脂におけるアミン価を下げる等の観点からは、式(V-2-2)で表される基であることが好ましい。本明細書において、環構造の辺と交差する結合は、その環構造における水素原子のいずれかを置換することを意味している。下記式中、L
X1は単結合又は-O-を表し、*は式(A-2)中のX
A2が結合する4つのカルボニル基との結合部位を表す。また、R
X1の定義及び好ましい態様は上述の通りである。また、これらの構造における水素原子は、又は、炭化水素基等の公知の置換基により更に置換されていてもよい。
【化30】
【0042】
X
A2が、式(V-3)で表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む基である場合、X
A2は下記式(V-3-1)又は式(V-3-2)で表される基であることが好ましく、硬化物の誘電率を低下させる等の観点からは、式(V-3-2)で表される基であることが好ましい。下記式中、*は式(A-2)中のX
A2が結合する4つのカルボニル基との結合部位を表す。また、R
X2及びR
X3の定義及び好ましい態様は上述の通りである。また、これらの構造における水素原子は、炭化水素基等の公知の置換基により更に置換されていてもよい。
【化31】
【0043】
X
A2が、式(V-4)で表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む基である場合、X
A2は下記式(V-4-1)で表される基であることが好ましい。
下記式(V-4-1)中、*は式(A-2)中のX
A2が結合する4つのカルボニル基との結合部位を表し、n1は0~5の整数を表す。また、式(V-4-1)における水素原子は、炭化水素基等の公知の置換基により更に置換されていてもよい。公知の置換基としては、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。ただし、(V-4-1)で表される構造における水素原子がいずれも置換されていないことも好ましい。
【化32】
【0044】
X
A2が、式(V-5)で表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む基である場合、X
A2は下記式(V-5-1)で表される基であることが好ましい。下記式中、*は式(A-2)中のX
A2が結合する4つのカルボニル基との結合部位を表す。また、式(V-5-1)における水素原子は、炭化水素基等の公知の置換基により更に置換されていてもよい。公知の置換基としては、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。ただし、(V-5-1)で表される構造における水素原子がいずれも置換されていないことも好ましい。
【化33】
【0045】
X
A2が、式(V-6)で表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む基である場合、X
A2は下記式(V-6-1)で表される基であることが好ましい。下記式中、*は式(A-2)中のX
A2が結合する4つのカルボニル基との結合部位を表す。また、下記構造における水素原子は、炭化水素基等の公知の置換基により更に置換されていてもよい。
【化34】
【0046】
X
A2が、式(V-7)で表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む基である場合、X
A2は下記式(V-7-1)で表される基であることが好ましい。下記式中、*は式(A-2)中のX
A2が結合する4つのカルボニル基との結合部位を表す。また、下記構造における水素原子は、炭化水素基等の公知の置換基により更に置換されていてもよい。
【化35】
【0047】
X
A2が、式(V-8)で表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む基である場合、X
A2は下記式(V-8-1)で表される基であることが好ましい。下記式中、*は式(A-2)中のX
A2が結合する4つのカルボニル基との結合部位を表す。R
X5の定義及び好ましい態様は上述の通りである。また、下記構造における水素原子は、炭化水素基等の公知の置換基により更に置換されていてもよい。
【化36】
【0048】
X
A2が、式(V-9)で表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む基である場合、X
A2は下記式(V-9-1)で表される基であることが好ましい。下記式中、*は式(A-2)中のX
A2が結合する4つのカルボニル基との結合部位を表す。また、下記構造における水素原子は、炭化水素基等の公知の置換基により更に置換されていてもよい。
【化37】
【0049】
X
A2が、式(V-10)で表される構造から2以上の水素原子を除いた構造を含む基である場合、X
A2は下記式(V-10-1)で表される基であることが好ましい。下記式中、*は式(A-2)中のX
A2が結合する4つのカルボニル基との結合部位を表す。また、下記構造における水素原子は、炭化水素基等の公知の置換基により更に置換されていてもよい。
【化38】
【0050】
その他、XA2は特開2023-003421号公報の段落0055~0057に記載のテトラカルボン酸二無水物から無水物基の除去後に残存するテトラカルボン酸残基であってもよい。
【0051】
また、XA2は構造中にイミド構造を含まないことが好ましい。
また、XA2は構造中にウレタン結合、ウレア結合及びアミド結合を含まないことが好ましい。
本発明において、ウレタン結合とは*-O-C(=O)-NRN-*で表される結合であり、RNは水素原子又は1価の有機基を表し、*はそれぞれ、炭素原子との結合部位を表す。RNは水素原子又は炭化水素基が好ましく、水素原子又はアルキル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
本発明において、ウレア結合とは、*-NRN-C(=O)-NRN-*で表される結合であり、RNはそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、*はそれぞれ、炭素原子との結合部位を表す。RNの好ましい態様は上述の通りである。
更に、XA2は構造中にエステル結合を含まないことが好ましい。
本発明において、エステル結合とは、*-O-C(=O)-*で表される結合である。
これらの中でも、XA2はイミド構造、ウレタン結合、ウレア結合及びアミド結合を含まないことが好ましく、イミド構造、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合及びエステル結合を含まないことがより好ましい。
【0052】
また、式(A-2)中のX
A2が下記式(X-2)で表される構造であってもよい。
【化39】
式(X-2)中、X
2はそれぞれ独立に、3価の連結基を表し、L
3は2価の連結基を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
【0053】
式(X-2)中、X2は直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族基、環状の脂肪族基、及び芳香族基、又は単結合若しくは連結基によりこれらを2以上連結した基が例示され、炭素数2~20の直鎖状の脂肪族基、炭素数3~20の分岐鎖状の脂肪族基、炭素数3~20の環状の脂肪族基、炭素数6~20の芳香族基、又は、単結合若しくは連結基によりこれらを2以上組み合わせた基が好ましく、炭素数6~20の芳香族基、又は、単結合若しくは連結基により炭素数6~20の芳香族基を2以上組み合わせた基がより好ましい。
上記連結基としては、-O-、-S-、-C(=O)-、-S(=O)2-、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基、又はこれらを2以上結合した連結基が好ましく、-O-、-S-、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基、又はこれらを2以上結合した連結基がより好ましい。
上記アルキレン基としては、炭素数1~20のアルキレン基が好ましく、炭素数1~10のアルキレン基がより好ましく、炭素数1~4のアルキレン基が更に好ましい。
上記ハロゲン化アルキレン基としては、炭素数1~20のハロゲン化アルキレン基が好ましく、炭素数1~10のハロゲン化アルキレン基がより好ましく、炭素数1~4のハロゲン化アルキレン基が更に好ましい。また、上記ハロゲン化アルキレン基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。上記ハロゲン化アルキレン基は、水素原子を有していても、水素原子の全てがハロゲン原子で置換されていてもよいが、水素原子の全てがハロゲン原子で置換されていることが好ましい。好ましいハロゲン化アルキレン基の例としては、(ジトリフルオロメチル)メチレン基等が挙げられる。
上記アリーレン基としては、フェニレン基又はナフチレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましく、1,3-フェニレン基又は1,4-フェニレン基が更に好ましい。
【0054】
また、X2は少なくとも1つのカルボキシ基がハロゲン化されていてもよいトリカルボン酸化合物から誘導されることが好ましい。上記ハロゲン化としては、塩素化が好ましい。
本発明において、カルボキシ基を3つ有する化合物をトリカルボン酸化合物という。
上記トリカルボン酸化合物の3つのカルボキシ基のうち2つのカルボキシ基は酸無水物化されていてもよい。
ハロゲン化されていてもよいトリカルボン酸化合物としては、分岐鎖状の脂肪族、環状の脂肪族又は芳香族のトリカルボン酸化合物などが挙げられる。
これらのトリカルボン酸化合物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
【0055】
X2は構造中にイミド構造を含まないことが好ましい。
また、X2は構造中にウレタン結合、ウレア結合及びアミド結合を含まないことが好ましい。
更に、X2は構造中にエステル結合を含まないことが好ましい。
これらの中でも、X2はイミド構造、ウレタン結合、ウレア結合及びアミド結合を含まないことが好ましく、イミド構造、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合及びエステル結合を含まないことがより好ましい。
【0056】
具体的には、トリカルボン酸化合物としては、炭素数2~20の直鎖状の脂肪族基、炭素数3~20の分岐鎖状の脂肪族基、炭素数3~20の環状の脂肪族基、炭素数6~20の芳香族基、又は、単結合若しくは連結基によりこれらを2以上組み合わせた基を含むトリカルボン酸化合物が好ましく、炭素数6~20の芳香族基、又は、単結合若しくは連結基により炭素数6~20の芳香族基を2以上組み合わせた基を含むトリカルボン酸化合物がより好ましい。
【0057】
また、トリカルボン酸化合物の具体例としては、1,2,3-プロパントリカルボン酸、1,3,5-ペンタントリカルボン酸、クエン酸、トリメリット酸、2,3,6-ナフタレントリカルボン酸、フタル酸(又は、無水フタル酸)と安息香酸とが単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-SO2-又はフェニレン基で連結された化合物等が挙げられる。
これらの化合物は、2つのカルボキシ基が無水物化した化合物(例えば、トリメリット酸無水物)であってもよいし、少なくとも1つのカルボキシ基がハロゲン化した化合物(例えば、無水トリメリット酸クロリド)であってもよい。
【0058】
式(X-2)中、L3は直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族基、環状の脂肪族基、芳香族基、又は単結合若しくは連結基によりこれらを2以上連結した基が例示され、炭素数2~20の直鎖状の脂肪族基、炭素数3~20の分岐鎖状の脂肪族基、炭素数3~20の環状の脂肪族基、炭素数6~20の芳香族基、又は、単結合若しくは連結基によりこれらを2以上組み合わせた基が好ましく、炭素数6~20の芳香族基、又は、単結合若しくは連結基により炭素数6~20の芳香族基を2以上組み合わせた基がより好ましい。
上記連結基としては、-O-、-S-、-C(=O)-、-S(=O)2-、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基、又はこれらを2以上結合した連結基が好ましく、-O-、-S-、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基、又はこれらを2以上結合した連結基がより好ましい。
上記アルキレン基としては、炭素数1~20のアルキレン基が好ましく、炭素数1~10のアルキレン基がより好ましく、炭素数1~4のアルキレン基が更に好ましい。
上記ハロゲン化アルキレン基としては、炭素数1~20のハロゲン化アルキレン基が好ましく、炭素数1~10のハロゲン化アルキレン基がより好ましく、炭素数1~4のハロゲン化アルキレン基が更に好ましい。また、上記ハロゲン化アルキレン基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。上記ハロゲン化アルキレン基は、水素原子を有していても、水素原子の全てがハロゲン原子で置換されていてもよいが、水素原子の全てがハロゲン原子で置換されていることが好ましい。好ましいハロゲン化アルキレン基の例としては、(ジトリフルオロメチル)メチレン基等が挙げられる。
上記アリーレン基としては、フェニレン基又はナフチレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましく、1,3-フェニレン基又は1,4-フェニレン基が更に好ましい。
【0059】
また、X
A2は下記式(X-3)で表される構造であってもよい。
【化40】
式(X-3)中、X
2はそれぞれ独立に、3価の連結基を表し、L
3は2価の連結基を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
式(X-3)中、X
2及びL
3の好ましい態様は、式(X-2)中のX
2及びL
3の好ましい態様と同様である。
【0060】
X
A2は、具体的には、テトラカルボン酸二無水物から無水物基の除去後に残存するテトラカルボン酸残基などが挙げられる。ポリイミド前駆体は、X
A2に該当する構造として、テトラカルボン酸二無水物残基を、1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
テトラカルボン酸二無水物は、下記式(O)で表されることが好ましい。
【化41】
式(O)中、R
115は、4価の有機基を表す。R
115の好ましい範囲は式(A-2)におけるX
A2の好ましい範囲と同様である。
【0061】
テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3-ジフェニルヘキサフルオロプロパン-3,3,4,4-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,8,9,10-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ならびに、これらの炭素数1~6のアルキル及び炭素数1~6のアルコキシ誘導体が挙げられる。
【0062】
また、国際公開第2017/038598号の段落0038に記載のテトラカルボン酸二無水物(DAA-1)~(DAA-5)も好ましい例として挙げられる。
【0063】
-YA2-
条件2を満たす場合、YA2は式(Y-A2)で表される構造である。
条件2を満たさない場合(条件1のみを満たす場合)、YA2の好ましい態様は、上述の式(A-1)におけるYA1の好ましい態様と同様である。
【0064】
また、樹脂Aが条件1及び条件2を満たす式(A-2)で表される繰返し単位と含むことも、好ましい態様の一つである。
【0065】
〔式(A-3)で表される繰返し単位〕
樹脂Aは、下記式(A-3)で表される繰返し単位を有することが好ましい。
ここで、式(A-3)で表される繰返し単位は、上述の式(A-1)で表される繰返し単位及び式(A-2)で表される繰返し単位のいずれにも該当しない繰返し単位である。
【化42】
式(A-3)中、X
A3は4価の有機基であり、Y
A3は2価の連結基であり、下記条件3及び4の少なくとも一方を満たす。
条件3:X
A3が下記式(X-A3)で表される構造である
条件4:Y
A3が下記式(Y-A3)~式(Y-A5)のいずれかで表される構造である
【化43】
式(X-A3)中、*は式(A-3)中のカルボニル基との結合部位を表す。
【化44】
式(Y-A3)~式(Y-A5)中、*は式(A-3)中の窒素原子との結合部位を表す。
【0066】
-X
A3-
条件3を満たす場合、X
A3を含む式(A-3)は、下記式(A-3-2)で表される構造であることが好ましい。
【化45】
【0067】
条件3を満たさない場合(条件4のみを満たす場合)、XA3の好ましい態様は、上述の式(A-2)における条件1を満たさない場合のXA2の好ましい態様と同様である。
【0068】
-YA3-
条件4を満たす場合、YA3は下記式(Y-A3)~式(Y-A5)のいずれかで表される構造である。
条件4を満たさない場合(条件3のみを満たす場合)、YA3の好ましい態様は、上述の式(A-2)における条件2を満たさない場合のYA2の好ましい態様と同様である。
【0069】
また、樹脂Aが条件3及び条件4を満たす式(A-3)で表される繰返し単位と含むことも、好ましい態様の一つである。
【0070】
〔他の繰返し単位〕
樹脂Aは他の繰返し単位を更に有してもよい。
他の繰返し単位としては、下記式(A-4)で表される繰返し単位が挙げられる。
式(A-4)で表される繰返し単位は、上述の式(A-1)で表される繰返し単位、式(A-2)で表される繰返し単位、及び、式(A-3)で表される繰返し単位のいずれにも該当しない繰返し単位である。
【化46】
式(A-4)中、X
A4は4価の有機基であり、Y
A4は2価の連結基である。
X
A4の好ましい態様は、上述の式(A-2)における条件1を満たさない場合のX
A2の好ましい態様と同様である。
Y
A4の好ましい態様は、上述の式(A-2)における条件2を満たさない場合のY
A2の好ましい態様と同様である。
ただし、X
A4は式(X-A2)で表される構造又は式(X-A3)で表される構造となることはなく、Y
A4は式(Y-A2)~式(Y-A5)のいずれかで表される構造となることはない。
【0071】
樹脂Aの一実施形態として、式(A-1)、式(A-2)、式(A-3)又は式(A-4)で表される繰返し単位の合計含有量が、全繰返し単位の50モル%以上である態様が挙げられる。上記合計含有量は、70モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが更に好ましく、90モル%超であることが特に好ましい。上記合計含有量の上限は、特に限定されず、末端を除く樹脂Aにおける全ての繰返し単位が、式(A-1)、式(A-2)、式(A-3)又は式(A-4)で表される繰返し単位で表される繰返し単位であってもよい。
【0072】
また、本発明における樹脂Aの別の一実施形態として、式(A-1)で表される繰返し単位の含有量は、全繰返し単位の20~100モル%であることが好ましく、全繰返し単位の30~100モル%であることがより好ましく、全繰返し単位の40~80モル%であることが更に好ましい。
また、本発明における樹脂Aの別の一実施形態として、式(A-1)で表される繰返し単位と式(A-2)で表される繰返し単位の合計含有量は、全繰返し単位の20~100モル%であることが好ましく、全繰返し単位の30~100モル%であることがより好ましく、全繰返し単位の40~100モル%であることが更に好ましい。
また、本発明における樹脂Aの別の一実施形態として、式(A-1)で表される繰返し単位と式(A-3)で表される繰返し単位の合計含有量は、全繰返し単位の20~100モル%であることが好ましく、全繰返し単位の30~100モル%であることがより好ましく、全繰返し単位の40~100モル%であることが更に好ましい。
また、本発明における樹脂Aの別の一実施形態として、式(A-1)で表される繰返し単位と式(A-2)で表される繰返し単位と式(A-3)で表される繰返し単位の合計含有量は、全繰返し単位の50~100モル%であることが好ましく、全繰返し単位の60~100モル%であることがより好ましく、全繰返し単位の70~100モル%であることが更に好ましい。
【0073】
また、樹脂Aは、接着性の観点からは、フッ素原子を実質的に含まないことも好ましい。ここで、実質的に含まないとは、樹脂Aの全質量に対するフッ素原子の量が、5質量%未満であることをいい、1質量%未満であることが好ましく、0.1質量%未満であることがより好ましく、0.01質量%未満であることが更に好ましい。上記フッ素原子の量の下限は特に限定されず、0質量%であってもよい。
【0074】
樹脂Aの含有量は、硬化物の全質量に対し、70~99.9質量部が好ましく、80~99.8質量部がより好ましい。
樹脂Aは1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0075】
<含窒素複素環化合物>
本発明の硬化物は含窒素複素環化合物を含む。
含窒素複素環化合物としては、芳香環に環員として窒素原子が含まれた化合物が好ましい。
例えば、硬化物を形成するための樹脂組成物として含窒素複素環化合物を含むことにより、含窒素複素環化合物を含む組成物を得ることができる。
【0076】
含窒素複素環化合物としては、特に制限はないが、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、トリアジン環を有する化合物、が挙げられる。特に、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール等のトリアゾール系化合物、1H-テトラゾール、5-フェニルテトラゾール、5-アミノ―1H-テトラゾール等のテトラゾール系化合物が好ましく使用できる。
これらの中でも、硬化物は、8-アザアデニンを含むことが好ましい。
【0077】
硬化物が含窒素複素環化合物を有する場合、含窒素複素環化合物の含有量は、硬化物の全質量に対して、0.01~5.0質量%であることが好ましく、0.05~2.0質量%であることがより好ましく、0.1~1.0質量%であることが更に好ましい。
【0078】
含窒素複素環化合物は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。含窒素複素環化合物が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0079】
<酸化防止剤>
本発明の硬化物は酸化防止剤を含んでもよい。
本発明において、酸化防止剤とは金属の酸化を防止する機能がある化合物をいい、例えば、フェノール化合物、亜リン酸エステル化合物、チオエーテル化合物などが挙げられる。フェノール化合物としては、フェノール系酸化防止剤として知られる任意のフェノール化合物を使用することができる。好ましいフェノール化合物としては、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。フェノール性ヒドロキシ基に隣接する部位(オルト位)に置換基を有する化合物が好ましい。置換基としては炭素数1~22の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。また、酸化防止剤は、同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する化合物も好ましい。
酸化防止剤により金属の酸化が防止されるため、酸化防止剤を含む硬化物は密着性に優れると考えられる。
また、酸化防止剤により、樹脂組成物の保管時の重合性化合物の重合が抑制されるため、酸化防止剤を含む樹脂組成物は保存安定性及び得られる硬化物の解像性に優れると考えられる。
【0080】
酸化防止剤としては、イソシアヌル酸骨格を有することが好ましく、イソシアヌル酸骨格を有するヒンダードフェノール化合物であることがより好ましい。
【0081】
好ましい酸化防止剤の例としては、2,2-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,6-ジ-t-ブチルフェノールおよび式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0082】
【0083】
一般式(3)中、R5は水素原子または炭素数1以上のアルキル基を表し、R6は炭素数1以上のアルキレン基、炭素数2以上のアルキレンカルボニル基又は炭素数2以上のアルキレンカルボニルオキシ基を表し、R7は、炭素数2以上のアルキレン基、O原子、およびN原子のうち少なくともいずれかを含む1~4価の有機基を表し、iは1~4の整数を表し、jは0~4の整数を表し、i+jは1~4の整数であり、kは1~4の整数を示す。
【0084】
一般式(3)で表される化合物を含むことにより、金属の酸化が抑制されることに加え、樹脂の脂肪族基やフェノール性水酸基の酸化劣化が抑制される。
【0085】
R5は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
R6がアルキレン基である場合、炭素数1~5のアルキレン基が好ましく、1~3のアルキレン基がより好ましい。
R6がアルキレンカルボニル基である場合、炭素数3~6のアルキレンカルボニル基が好ましく、メチル基がより好ましい。また、カルボニル基はR7との結合部位に存在することが好ましい。
R6がアルキレンカルボニルオキシ基である場合、炭素数3~4のアルキレンカルボニルオキシ基が好ましく、メチル基がより好ましい。
R7としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルエーテル基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基、アリール基、アリールエーテル基、カルボキシル基、カルボニル基、アリル基、ビニル基、複素環基、-O-、-NH-、-NHNH-、それらを組み合わせたものなどが挙げられ、さらに置換基を有していてもよい。
この中でも、現像性や金属密着性の点から、アルキルエーテル、-NH-、イソシアヌル環を有することが好ましく、樹脂との相互作用と金属錯形成による金属密着性の点からイソシアヌル環がより好ましい。
【0086】
iは1又は2が好ましく、1がより好ましい。
jは0~3の整数が好ましく、0~2の整数がより好ましい。
kは2~4の整数がより好ましい。
【0087】
下記一般式(3)で表される化合物は、例としては以下のものが挙げられるが、下記構造に限らない。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
その他、酸化防止剤としては、フェノール系化合物、キノン系化合物、アミノ系化合物、N-オキシルフリーラジカル化合物系化合物、ニトロ系化合物、ニトロソ系化合物、ヘテロ芳香環系化合物、金属化合物などが挙げられる。
【0093】
これらの具体的な化合物としては、国際公開第2021/112189号の段落0310に記載の化合物、p-ヒドロキノン、o-ヒドロキノン、p-メトキシフェノール、2-ニトロソ-1-ナフトール、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルフリーラジカル、フェノキサジン、1,4,4-トリメチル-2,3-ジアザビシクロ[3.2.2]ノナ-2-エン-N,N-ジオキシド等が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0094】
また、酸化防止剤は、リン系酸化防止剤も好適に使用することができる。リン系酸化防止剤としてはトリス[2-[[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、トリス[2-[(4,6,9,11-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-2-イル)オキシ]エチル]アミン、亜リン酸エチルビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)などが挙げられる。酸化防止剤の市販品としては、例えば、アデカスタブ AO-20、アデカスタブ AO-30、アデカスタブ AO-40、アデカスタブ AO-50、アデカスタブ AO-50F、アデカスタブ AO-60、アデカスタブ AO-60G、アデカスタブ AO-80、アデカスタブ AO-330(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。また、酸化防止剤は、特許第6268967号公報の段落番号0023~0048に記載された化合物を使用することもできる。また、本発明の組成物は、必要に応じて、潜在酸化防止剤を含有してもよい。潜在酸化防止剤としては、酸化防止剤として機能する部位が保護基で保護された化合物であって、100~250℃で加熱するか、又は酸/塩基触媒存在下で80~200℃で加熱することにより保護基が脱離して酸化防止剤として機能する化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、国際公開第2014/021023号、国際公開第2017/030005号、特開2017-008219号公報に記載された化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤の市販品としては、アデカアークルズGPA-5001((株)ADEKA製)等が挙げられる。
【0095】
酸化防止剤の添加量は、硬化物の全質量に対し、0.1~10質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましい。
酸化防止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0096】
<その他の化合物>
本発明の硬化物は、他の成分を更に含んでもよい。
他の成分としては、後述の樹脂組成物に含まれる成分、又は、例えば後述する重合性化合物の重合後の成分など、後述の樹脂組成物に含まれる成分が化学的に変性した成分などが挙げられる。
【0097】
<樹脂組成物>
本発明の硬化物は、ポリイミド及びポリイミド前駆体からなる群から選択される少なくとも1種以上の樹脂Bと、重合開始剤と、を含む樹脂組成物を硬化してなる硬化物である。
以下、樹脂組成物の好ましい態様について説明する。
【0098】
〔樹脂B〕
【0099】
-式(B1-1)及び式(B2-1)の少なくとも一方で表される繰返し単位-
樹脂Bは、下記式(B1-1)及び式(B2-1)の少なくとも一方で表される繰返し単位を有することが好ましい。
【化53】
式(B1-1)中、A
B1及びA
B2はそれぞれ独立に、-O-又は-NR
Z-であり、R
Zは水素原子又は1価の有機基であり、R
B1及びR
B2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基であり、X
B1は式(X1-B1)で表される構造であり、Y
B1は2価の連結基である。
式(B2-1)中、X
B2は式(X2-B1)で表される構造であり、Y
B2は2価の連結基である。
【化54】
式(X2-B1)中、*は式(B1-1)中のカルボニル基との結合部位を表す。
【化55】
式(X2-B1)中、*は式(B2-1)中のカルボニル基との結合部位を表す。
【0100】
樹脂Bは重合性基を有することが好ましく、ラジカル重合性基を含むことがより好ましい。
また、樹脂組成物は、(1)樹脂Bが重合性基を有する、及び、(2)樹脂Bには該当しない重合性化合物を更に含む、の少なくとも一方を満たすことが好ましい。
樹脂Bがラジカル重合性基を有する場合、樹脂組成物は、ラジカル重合開始剤を含むことが好ましく、ラジカル重合開始剤を含み、かつ、ラジカル架橋剤を含むことがより好ましい。さらに必要に応じて、増感剤を含むことができる。このような樹脂組成物からは、例えば、ネガ型感光膜が形成される。
また、樹脂Bは、酸分解性基等の極性変換基を有していてもよい。
樹脂Bが酸分解性基を有する場合、樹脂組成物は、光酸発生剤を含むことが好ましい。このような樹脂組成物からは、例えば、化学増幅型であるポジ型感光膜又はネガ型感光膜が形成される。
【0101】
-AB1及びAB2-
式(B1-1)中、AB1及びAB2はそれぞれ独立に、-O-であることが好ましい。また、AB1及びAB2の少なくとも一方が-NRZ-である場合、RZは水素原子又はアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。
【0102】
-RB1及びRB2-
式(B1-1)中、RB1及びRB2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。1価の有機基としては、直鎖又は分岐のアルキル基、環状アルキル基、芳香族基、又はポリアルキレンオキシ基を含むことが好ましい。また、RB1及びRB2の少なくとも一方が重合性基を含むことが好ましく、両方が重合性基を含むことがより好ましい。RB1及びRB2の少なくとも一方が2以上の重合性基を含むことも好ましい。重合性基としては、熱、ラジカル等の作用により、架橋反応することが可能な基であって、ラジカル重合性基が好ましい。重合性基の具体例としては、エチレン性不飽和結合を有する基、アルコキシメチル基、ヒドロキシメチル基、アシルオキシメチル基、エポキシ基、オキセタニル基、ベンゾオキサゾリル基、ブロックイソシアネート基、アミノ基が挙げられる。ポリイミド前駆体が有するラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基が好ましい。
エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、アリル基、イソアリル基、2-メチルアリル基、ビニル基と直接結合した芳香環を有する基(例えば、ビニルフェニル基など)、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロイルオキシ基、下記式(III)で表される基などが挙げられ、下記式(III)で表される基が好ましい。
【0103】
【0104】
式(III)において、R200は、水素原子、メチル基、エチル基又はメチロール基を表し、水素原子又はメチル基が好ましい。
式(III)において、*は他の構造との結合部位を表す。
式(III)において、R201は、炭素数2~12のアルキレン基、-CH2CH(OH)CH2-、シクロアルキレン基又はポリアルキレンオキシ基を表す。
好適なR201の例は、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、ドデカメチレン基等のアルキレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基、-CH2CH(OH)CH2-、ポリアルキレンオキシ基が挙げられ、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基、-CH2CH(OH)CH2-、シクロヘキシル基、ポリアルキレンオキシ基がより好ましく、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基、又はポリアルキレンオキシ基が更に好ましい。
本発明において、ポリアルキレンオキシ基とは、アルキレンオキシ基が2以上直接結合した基をいう。ポリアルキレンオキシ基に含まれる複数のアルキレンオキシ基におけるアルキレン基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
ポリアルキレンオキシ基が、アルキレン基が異なる複数種のアルキレンオキシ基を含む場合、ポリアルキレンオキシ基におけるアルキレンオキシ基の配列は、ランダムな配列であってもよいし、ブロックを有する配列であってもよいし、交互等のパターンを有する配列であってもよい。
上記アルキレン基の炭素数(アルキレン基が置換基を有する場合、置換基の炭素数を含む)は、2以上であることが好ましく、2~10であることがより好ましく、2~6であることがより一層好ましく、2~5であることが更に好ましく、2~4であることが一層好ましく、2又は3であることがより更に好ましく、2であることが特に好ましい。
また、上記アルキレン基は、置換基を有していてもよい。好ましい置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。
また、ポリアルキレンオキシ基に含まれるアルキレンオキシ基の数(ポリアルキレンオキシ基の繰返し数)は、2~20が好ましく、2~10がより好ましく、2~6が更に好ましい。
ポリアルキレンオキシ基としては、溶剤溶解性及び耐溶剤性の観点からは、ポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、ポリトリメチレンオキシ基、ポリテトラメチレンオキシ基、又は、複数のエチレンオキシ基と複数のプロピレンオキシ基とが結合した基が好ましく、ポリエチレンオキシ基又はポリプロピレンオキシ基がより好ましく、ポリエチレンオキシ基が更に好ましい。上記複数のエチレンオキシ基と複数のプロピレンオキシ基とが結合した基において、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基とはランダムに配列していてもよいし、ブロックを形成して配列していてもよいし、交互等のパターン状に配列していてもよい。これらの基におけるエチレンオキシ基等の繰返し数の好ましい態様は上述の通りである。
【0105】
式(B1-1)において、RB1が水素原子である場合、又は、RB2が水素原子である場合、ポリイミド前駆体はエチレン性不飽和結合を有する3級アミン化合物と対塩を形成していてもよい。このようなエチレン性不飽和結合を有する3級アミン化合物の例としては、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリレートが挙げられる。
【0106】
式(B1-1)において、RB1及びRB2の少なくとも一方が、酸分解性基等の極性変換基であってもよい。酸分解性基としては、酸の作用で分解して、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基等のアルカリ可溶性基を生じるものであれば特に限定されないが、アセタール基、ケタール基、シリル基、シリルエーテル基、第三級アルキルエステル基等が好ましく、露光感度の観点からは、アセタール基又はケタール基がより好ましい。
酸分解性基の具体例としては、tert-ブトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、エトキシエチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、トリメチルシリル基、tert-ブトキシカルボニルメチル基、トリメチルシリルエーテル基などが挙げられる。露光感度の観点からは、エトキシエチル基、又は、テトラヒドロフラニル基が好ましい。
【0107】
式(B1-1)中、XB1の好ましい態様は、式(A-1)中のXA1の好ましい態様と同様である。
式(B1-1)中、YB1の好ましい態様は、式(A-1)中のYA1の好ましい態様と同様である。
【0108】
式(B2-1)中、XB2の好ましい態様は、式(A-1)中のXA1の好ましい態様と同様である。
式(B2-1)中、YB2の好ましい態様は、式(A-1)中のYA1の好ましい態様と同様である。
【0109】
-式(B1-2)及び式(B2-2)の少なくとも一方で表される繰返し単位-
上記樹脂Bが、下記式(B1-2)及び式(B2-2)の少なくとも一方で表される繰返し単位を有する樹脂であることが好ましい。
【化57】
式(B1-2)中、A
B3及びA
B4はそれぞれ独立に、-O-又は-NR
Z-であり、R
Zは水素原子又は1価の有機基であり、R
B3及びR
B4はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基であり、X
B3は4価の有機基であり、Y
B3は2価の連結基であり、下記条件5及び6の少なくとも一方を満たす。
式(B2-2)中、X
B4は4価の有機基であり、Y
B4は2価の連結基であり、下記条件7及び8の少なくとも一方を満たす。
条件5:X
B3が下記式(X1-B2)で表される構造である
条件6:Y
B3が下記式(Y1-B2)で表される構造である
条件7:X
B4が下記式(X2-B2)で表される構造である
条件8:Y
B4が下記式(Y2-B2)で表される構造である
【化58】
式(X1-B2)中、*は式(B1-2)中のカルボニル基との結合部位を表す。
【化59】
式(Y1-B2)中、*は式(B1-2)中の窒素原子との結合部位を表す。
【化60】
式(X2-B2)中、*は式(B2-2)中のカルボニル基との結合部位を表す。
【化61】
式(Y2-B2)中、*は式(B2-2)中の窒素原子との結合部位を表す。
【0110】
式(B1-2)中、AB3、AB4、RB3及びRB4の好ましい態様は、式(B1-1)中のAB1、AB2、RB1及びRB2の好ましい態様と同様である。
式(B1-2)中、XB3及びYB3の好ましい態様は、式(A-2)中のXA2及びYA2の好ましい態様と同様である。
【0111】
式(B2-2)中、XB4及びYB4の好ましい態様は、式(A-2)中のXA2及びYA2の好ましい態様と同様である。
【0112】
-式(B1-3)及び式(B2-3)の少なくとも一方で表される繰返し単位-
樹脂Bは、下記式(B1-3)及び式(B2-3)の少なくとも一方で表される繰返し単位を有する樹脂であることが好ましい。
式(B1-3)で表される繰返し単位は、式(B1-1)で表される繰返し単位及び式(B1-2)で表される繰返し単位には該当しない繰返し単位である。
式(B2-3)で表される繰返し単位は、式(B2-1)で表される繰返し単位及び式(B2-2)で表される繰返し単位には該当しない繰返し単位である。
【化62】
式(B1-3)中、A
B5及びA
B6はそれぞれ独立に、-O-又は-NR
Z-であり、R
Zは水素原子又は1価の有機基であり、R
B5及びR
B6はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基であり、X
B5は4価の有機基であり、Y
B5は2価の連結基であり、下記条件9及び10の少なくとも一方を満たす。
式(B2-3)中、X
B6は4価の有機基であり、Y
B6は2価の連結基であり、下記条件11及び12の少なくとも一方を満たす。
条件9:X
B5が下記式(X1-B3)で表される構造である
条件10:Y
B5が下記式(Y1-B3)~式(Y1-B5)のいずれかで表される構造である
条件11:X
B6が下記式(X2-B3)で表される構造である
条件12:Y
B6が下記式(Y2-B3)~式(Y2-B5)のいずれかで表される構造である
【化63】
式(X1-B3)中、*は式(B1-3)中のカルボニル基との結合部位を表す。
【化64】
式(Y1-B3)~式(Y1-B5)中、*は式(B1-3)中の窒素原子との結合部位を表す。
【化65】
式(X2-B3)中、*は式(B2-3)中のカルボニル基との結合部位を表す。
【化66】
式(Y2-B3)~式(Y2-B5)中、*は式(B2-3)中の窒素原子との結合部位を表す。
【0113】
式(B1-3)中、AB5、AB6、RB5及びRB6の好ましい態様は、式(B1-1)中のAB1、AB2、RB1及びRB2の好ましい態様と同様である。
式(B1-3)中、XB5及びYB5の好ましい態様は、式(A-3)中のXA3及びYA3の好ましい態様と同様である。
【0114】
式(B2-3)中、XB6及びYB6の好ましい態様は、式(A-3)中のXA3及びYA3の好ましい態様と同様である。
【0115】
-式(B1-4)及び式(B2-4)の少なくとも一方で表される繰返し単位-
樹脂Bは、下記式(B1-4)及び式(B2-4)の少なくとも一方で表される繰返し単位を有する樹脂であることが好ましい。
式(B1-4)で表される繰返し単位は、式(B1-1)で表される繰返し単位、式(B1-2)で表される繰返し単位及び式(B1-3)で表される繰返し単位には該当しない繰返し単位である。
式(B2-4)で表される繰返し単位は、式(B2-1)で表される繰返し単位、式(B2-2)で表される繰返し単位及び式(B2-3)で表される繰返し単位には該当しない繰返し単位である。
【化67】
式(B1-4)中、A
B7及びA
B8はそれぞれ独立に、-O-又は-NR
Z-であり、R
Zは水素原子又は1価の有機基であり、R
B7及びR
B8はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基であり、X
B7は4価の有機基であり、Y
B7は2価の連結基である。
式(B2-4)中、X
B8は4価の有機基であり、Y
B8は2価の連結基である。
【0116】
式(B1-4)中、AB7、AB8、RB7及びRB8の好ましい態様は、式(B1-1)中のAB1、AB2、RB1及びRB2の好ましい態様と同様である。
式(B1-4)中、XB7及びYB7の好ましい態様は、式(A-4)中のXA4及びYA4の好ましい態様と同様である。
【0117】
式(B2-4)中、XB8及びYB8の好ましい態様は、式(A-4)中のXA4及びYA4の好ましい態様と同様である。
【0118】
樹脂Bの一実施形態として、式(B1-1)、式(B2-1)、式(B1-2)、式(B2-2)、式(B1-3)、式(B2-3)、式(B1-4)、又は式(B2-4)で表される繰返し単位の合計含有量が、全繰返し単位の50モル%以上である態様が挙げられる。上記合計含有量は、70モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが更に好ましく、90モル%超であることが特に好ましい。上記合計含有量の上限は、特に限定されず、末端を除く樹脂Bにおける全ての繰返し単位が、式(B1-1)、式(B2-1)、式(B1-2)、式(B2-2)、式(B1-3)、式(B2-3)、式(B1-4)、又は式(B2-4)で表される繰返し単位で表される繰返し単位であってもよい。
【0119】
また、本発明における樹脂Bの別の一実施形態として、式(B1-1)又は式(B2-1)で表される繰返し単位の合計含有量は、全繰返し単位の20~100モル%であることが好ましく、全繰返し単位の30~100モル%であることがより好ましく、全繰返し単位の40~80モル%であることが更に好ましい。
また、本発明における樹脂Bの別の一実施形態として、式(B1-1)、式(B2-1)、式(B1-2)又は式(B2-2)、で表される繰返し単位の合計含有量は、全繰返し単位の30~100モル%であることが好ましく、全繰返し単位の40~100モル%であることがより好ましく、全繰返し単位の50~100モル%であることが更に好ましい。
また、本発明における樹脂Bの別の一実施形態として、式(B1-1)、式(B2-1)、式(B1-3)又は式(B2-3)で表される繰返し単位の合計含有量は、全繰返し単位の30~100モル%であることが好ましく、全繰返し単位の40~100モル%であることがより好ましく、全繰返し単位の50~100モル%であることが更に好ましい。
また、本発明における樹脂Bの別の一実施形態として、式(B1-1)、式(B2-1)、式(B1-2)、式(B2-2)、式(B1-3)又は式(B2-3)で表される繰返し単位の合計含有量は、全繰返し単位の50~100モル%であることが好ましく、全繰返し単位の60~100モル%であることがより好ましく、全繰返し単位の70~100モル%であることが更に好ましい。
【0120】
また、樹脂Bは、接着性の観点からは、フッ素原子を実質的に含まないことも好ましい。ここで、実質的に含まないとは、樹脂Bの全質量に対するフッ素原子の量が、5質量%未満であることをいい、1質量%未満であることが好ましく、0.1質量%未満であることがより好ましく、0.01質量%未満であることが更に好ましい。上記フッ素原子の量の下限は特に限定されず、0質量%であってもよい。
【0121】
〔イミド化率〕
樹脂Bのイミド化率は、3~40%であることが好ましい。
上記イミド化率は、破断伸びの観点からは、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、15%以上であることがさらに好ましい。
また、上記イミド化率は、解像性の観点からは、35%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、25%以下であることがさらに好ましい。
【0122】
本発明において、イミド化率とは以下の方法により算出される値である。
樹脂をγ-ブチロラクトンに溶解させ、粘度が2,000mPa・sになるよう希釈し、スピンコート法でシリコンウエハ上に適用して樹脂層を形成する。γ-ブチロラクトンに対する樹脂の溶解性が低い等の理由により、樹脂層が形成できない場合には溶剤を他の溶剤に変更してもよい。他の溶剤としては、樹脂組成物に含まれる溶剤を使用することもでき、例えば、NMPが挙げられる。また、粘度については調整できる範囲で適宜変更してもよい。得られた樹脂層を適用したシリコンウエハをホットプレート上で、110℃で5分間乾燥し、シリコンウエハ上に製膜後の膜厚が約15μmの均一な厚さの樹脂層を得る。ここで、粘度が小さい樹脂溶液しか得られず、膜厚が15μmである樹脂層が得られにくいなどの事情がある場合には、膜厚は適宜変更してもよい。例えば膜厚が5μm以上であれば、イミド化率の値としては同程度の値が得られる。
上記樹脂層をNicoletiS20(Thermofisher社製)でATR法にて測定し、測定範囲4000~700cm-1、測定回数50回で測定を行う。1380cm-1付近(1350~1450cm-1、複数ピークがある場合はピーク強度が最大のもの)のピーク高さと1500cm-1付近(1460~1550cm-1、複数ピークがある場合はピーク強度が最大のもの)のピーク高さで割った値を樹脂のイミド化指数Aとし、窒素雰囲気下で10℃/分の昇温速度で昇温し350℃で1時間加熱した膜について、同様の方法でイミド化指数Bを算出し、イミド化指数Aをイミド化指数Bで割った値を樹脂のイミド化率として算出する。
イミド化率の測定において、組成物からイミド化率を測定する樹脂を、例えば以下の方法で取得することができる。組成物1gとテトラヒドロフラン2gの溶液をメタノールまたは水50gに添加して晶析させ、樹脂を析出させ、ろ過する。ろ物を回収し、THF(テトラヒドロフラン)3.0gに溶解し、これをメタノールまたは水50gに添加して晶析させ、ろ過し、45℃で20時間乾燥させて樹脂を得る。
以下、酸価、アミン価など、樹脂Bの物性を測定する際には、同様の方法により樹脂を得て測定することができる。
【0123】
〔酸価〕
樹脂Bの酸価は、0.0010~0.3000mmol/gであることが好ましく、0.02~0.150mmol/gであることがより好ましく、0.03~0.100mmol/gであることが更に好ましい。
上記酸価は、公知の方法により測定され、例えば、下記条件により測定される。
条件:樹脂0.300gをNMP80mLに溶解させた後に水5mLを混合させ、0.01mol/L KOH水溶液で滴定する。
樹脂が溶解したか否かは、目視により残存物が存在しないことにより確認することができる。上記量の樹脂がNMPに完全に溶解しない場合、樹脂量を適宜減少させて完全に溶解する濃度において測定してもよい。
【0124】
また、密着性の観点からは、樹脂Bは、中和点のpHが7.0~12.0の範囲にある酸性官能基量が0.0010~0.3000mmol/gであることが好ましく、0.02~0.150mmol/gであることがより好ましく、0.03~0.100mmol/gであることが更に好ましい。
中和点のpHが7.0~12.0の範囲にある酸性官能基量は後述の実施例に記載の方法と同様の方法によりされる。具体的には、0.30gの樹脂をNMP80mLに溶解させた後、水5mLを添加して測定溶液を作製する。その溶液を0.01N(0.01mol/L)水酸化カリウム(KOH)水溶液で滴定を行い、pHが7.0~12.0の範囲にあるピークから上記酸性官能基量を算出する。
【0125】
〔アミン価〕
組成物の保存安定性の観点からは、樹脂Bのアミン価は、0.001~0.300mmol/g以下であることが好ましく、0.01~0.200mmol/gであることがより好ましく、0.03~0.100mmol/gであることがさらに好ましい。
上記アミン価は、0.60gの樹脂をジグリム50mLに溶解させた後、酢酸10mLを添加して測定溶液を作製した。その溶液を0.01N(0.01mol/L)過塩素酸の酢酸溶液で滴定して中和点を検出することにより測定される。
【0126】
樹脂Bが下記式(1)で表される構造を含むことが好ましく、樹脂組成物の全固形分に対する式(1)で表される構造の含有モル量が0.01~1.0mmol/gであることがより好ましい。
上記含有モル量は、0.015~0.5mmol/gであることが好ましく、0.02~0.3mmol/gであることがより好ましい。
【化68】
式(1)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、炭素数3~6の飽和脂肪族炭化水素基、または、炭素数1~10のアルキル基で置換されてもよいフェニル基を表し、X
1は酸素原子または硫黄原子を表し、L
1は-C(=O)-、または、-S(=O)
2-を表し、*
1及び*
2は、それぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、R
1、R
2、*
1に結合する構造、及び、*
2に結合する構造のうち少なくとも2つが結合して環構造を形成してもよい。
【0127】
式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、炭素数3~6の飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。
上記飽和脂肪族炭化水素基としては、イソプロピル基又はシクロへキシル基がより好ましい。
上記脂肪族炭化水素基は公知の置換基により水素原子が置換されていてもよいが、置換基を有しないことも本発明の好ましい態様の一つである。
上記フェニル基の置換基としては、炭素数3~10の分岐アルキル基、又は、炭素数5~10の環状アルキル基がより好ましく、炭素数3~6の分岐アルキル基が更に好ましく、イソプロピル基が特に好ましい。
上記置換基の数は特に限定されないが、1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。
【0128】
式(1)中、X1は酸素原子が好ましい。
【0129】
式(1)中、L1は-C(=O)-が好ましい。
【0130】
式(1)中、R1、R2、*1に結合する構造、及び、*2に結合する構造のうち少なくとも2つが結合して環構造を形成してもよい。形成される環構造としては、ヒダントイン環、N-アシルイミダゾリジノン環等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明において、R1、R2、*1に結合する構造、及び、*2に結合する構造のいずれもが環構造を形成しない態様も好ましい態様の一つである。
【0131】
樹脂Bは、式(1)で表される構造を有する構造として、下記式(1-5)で表される構造を含むことが好ましい。
【化69】
式(1-5)中、R
51はそれぞれ独立に、炭素数3~6の飽和脂肪族炭化水素基、または、炭素数1~10のアルキル基で置換されてもよいフェニル基を表し、R
52は水素原子又は有機基であり、*は樹脂構造との結合部位を表す。
式(1-5)中、R
51の好ましい態様は、式(1)中のR
1の好ましい態様と同様である。
式(1-5)中、R
52は水素原子であることが好ましい。R
52が有機基である場合の好ましい態様は、R
51の好ましい態様と同様である。
【0132】
式(1-5)で表される構造は、樹脂の主鎖末端に存在してもよいし、側鎖に存在してもよい。
例えば、式(B1-1)のR
B1、A
B1及びカルボニル基、R
B2、A
B2及びカルボニル基、式(B1-2)のR
B3、A
B3及びカルボニル基、R
B4、A
B4及びカルボニル基、式(B1-3)のR
B5、A
B5及びカルボニル基、R
B6、A
B6及びカルボニル基、式(B1-4)のR
B7、A
B7及びカルボニル基、並びに、R
B8、A
B8及びカルボニル基の少なくとも1つが式(1-5)で表される構造を構成する態様などが挙げられる。
また、式(1-5)で表される構造として、例えば、樹脂Bは下記式(1-5-1)又は、式(1-5-2)で表される構造を有することも好ましい。
【化70】
式(1-5-1)中、A
2は-O-又は-NR
Z-であり、R
Zは水素原子又は1価の有機基であり、R
2は水素原子又は1価の有機基であり、X
2は4価の有機基であり、R
Aは上述の式(1-5)で表される基であり、*は他の構造との結合部位である。
式(1-5-2)中、A
41及びA
42はそれぞれ独立に、-O-又は-NR
Z-であり、R
Zは水素原子又は1価の有機基であり、R
41及びR
42はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基であり、X
4は4価の有機基であり、R
Aは上述の式(1-5)で表される基であり、*は他の構造との結合部位である。
式(1-5-1)中、A
2、R
Z及びR
2の好ましい態様は、上述の式(B1-1)におけるA
B1、R
Z及びR
B1の好ましい態様と同様である。
式(1-5-1)中、X
2の好ましい態様は、式(B2-1)中のX
B2、式(B2-2)中のX
B4、式(B2-3)中のX
B6、式(B2-4)中のX
B8のいずれかの好ましい態様と同様である。
式(1-5-2)中、A
41、A
42、R
Z、R
41及びR
42の好ましい態様は、上述の式(B1-1)におけるA
B1、A
B2、R
Z、R
B1及びR
B2の好ましい態様と同様である。
式(1-5-2)中、X
4の好ましい態様は、式(B1-1)中のX
B1、式(B1-2)中のX
B3、式(B1-3)中のX
B5、式(B1-4)中のX
B7のいずれかの好ましい態様と同様である。
【0133】
樹脂Bにおける式(1-5)で表される構造の含有量は、例えば、0.01~1.0mmol/gであることが好ましく、0.01~0.85mmol/gであることがより好ましい。
また、樹脂組成物の全固形分における式(1-5)で表される構造の含有量は、例えば、0.01~0.5mmol/gであることが好ましく、0.01~0.4mmol/gであることがより好ましい。
【0134】
また、樹脂Bにおけるアミック酸構造及びアミック酸エステル構造の合計モル量に対する、アミック酸エステル構造の含有モル量の割合(エステル化率)は、90~99.9%以上であることが好ましく、92~99.5%であることがより好ましく、95~99%であることがさらに好ましい。
上記エステル化率は、樹脂の酸価及び構造から推定することができる。
【0135】
樹脂Bの重量平均分子量(Mw)は、120,000以下であることが好ましく、50,000以下であることがより好ましく、40,000以下であることが更に好ましい。
また、上記Mwは5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、15,000以上であることがさらに好ましい。
樹脂Bの数平均分子量(Mn)は、40,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、20,000以下が更に好ましい。
また、上記Mnは2,000以上であることが好ましく、3,000以上であることがより好ましく、4,000以上であることがさらに好ましい。
上記樹脂Bの分子量の分散度は、1.5以上が好ましく、1.8以上がより好ましく、2.0以上であることが更に好ましい。樹脂Bの分子量の分散度の上限値は特に定めるものではないが、例えば、7.0以下が好ましく、6.5以下がより好ましく、6.0以下が更に好ましい。
本明細書において、分子量の分散度とは、重量平均分子量/数平均分子量により算出される値である。
樹脂組成物が樹脂Bとして複数種の樹脂Bを含む場合、少なくとも1種の樹脂Bの重量平均分子量、数平均分子量、及び、分散度が上記範囲であることが好ましい。また、上記複数種の樹脂Bを1つの樹脂として算出した重量平均分子量、数平均分子量、及び、分散度が、それぞれ、上記範囲内であることも好ましい。
【0136】
〔樹脂Bの製造方法〕
樹脂Bは、例えば、国際公開第2022/145355号の段落0134~0136に記載の方法により製造される。上記記載は本明細書に組み込まれる。また、その他公知の方法を参考に合成すればよい。
【0137】
〔含有量〕
樹脂組成物における樹脂Bの含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以上であることが一層好ましい。また、樹脂組成物における樹脂Bの含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、99.5質量%以下であることが好ましく、99質量%以下であることがより好ましく、98質量%以下であることが更に好ましく、97質量%以下であることが一層好ましく、95質量%以下であることがより一層好ましい。
樹脂組成物は、樹脂Bを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0138】
〔他の樹脂〕
樹脂組成物は、上述した樹脂Bと、樹脂Bとは異なる他の樹脂(以下、単に「他の樹脂」ともいう)とを含んでもよい。
他の樹脂としては、樹脂Bには該当しないポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体には該当しないポリアミド、フェノール樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリシロキサン、シロキサン構造を含む樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂、スチリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
例えば、(メタ)アクリル樹脂を更に加えることにより、塗布性に優れた樹脂組成物が得られ、また、耐溶剤性に優れたパターン(硬化物)が得られる。
例えば、後述する重合性化合物に代えて、又は、後述する重合性化合物に加えて、重量平均分子量が20,000以下の重合性基価の高い(例えば、樹脂1gにおける重合性基の含有モル量が1×10-3モル/g以上である)(メタ)アクリル樹脂を樹脂組成物に添加することにより、樹脂組成物の塗布性、パターン(硬化物)の耐溶剤性等を向上させることができる。
【0139】
樹脂組成物が他の樹脂を含む場合、他の樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが更に好ましく、2質量%以上であることが一層好ましく、5質量%以上であることがより一層好ましく、10質量%以上であることが更に一層好ましい。
樹脂組成物が他の樹脂を含む場合、他の樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましく、60質量%以下であることが一層好ましく、50質量%以下であることがより一層好ましい。
樹脂組成物の好ましい一態様として、他の樹脂の含有量が低含有量である態様とすることもできる。上記態様において、他の樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが一層好ましく、1質量%以下であることがより一層好ましい。上記含有量の下限は特に限定されず、0質量%以上であればよい。
樹脂組成物は、他の樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0140】
<酸化防止剤>
樹脂組成物は酸化防止剤を含むことが好ましい。
酸化防止剤の定義及び好ましい態様は、上述の第一の硬化物に含まれる酸化防止剤の好ましい態様と同様である。
【0141】
酸化防止剤の添加量は、樹脂組成物の全固形分に対し、0.1~10質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましい。
酸化防止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0142】
〔重合性化合物〕
樹脂組成物は、重合性化合物を含むことが好ましい。
重合性化合物としては、ラジカル架橋剤、又は、他の架橋剤が挙げられる。
【0143】
〔ラジカル架橋剤〕
樹脂組成物は、ラジカル架橋剤を含むことが好ましい。
ラジカル架橋剤は、ラジカル重合性基を有する化合物である。ラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和結合を含む基が好ましい。上記エチレン性不飽和結合を含む基としては、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基、(メタ)アクリルアミド基などが挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルフェニル基が好ましく、反応性の観点からは、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
【0144】
ラジカル架橋剤は、エチレン性不飽和結合を1個以上有する化合物であることが好ましいが、2個以上有する化合物であることがより好ましい。ラジカル架橋剤は、エチレン性不飽和結合を3個以上有していてもよい。
上記エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物としては、エチレン性不飽和結合を2~15個有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合を2~10個有する化合物がより好ましく、2~6個有する化合物が更に好ましい。
得られるパターン(硬化物)の膜強度の観点からは、樹脂組成物は、エチレン性不飽和結合を2個有する化合物と、上記エチレン性不飽和結合を3個以上有する化合物とを含むことも好ましい。
【0145】
ラジカル架橋剤の分子量は、2,000以下が好ましく、1,500以下がより好ましく、900以下が更に好ましい。ラジカル架橋剤の分子量の下限は、100以上が好ましい。
【0146】
ラジカル架橋剤の具体例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)やそのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル、及び不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類である。また、ヒドロキシ基やアミノ基、スルファニル基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能若しくは多官能イソシアネート類又はエポキシ類との付加反応物や、単官能若しくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更に、ハロゲノ基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等のビニルベンゼン誘導体、ビニルエーテル、アリルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。具体例としては、特開2016-027357号公報の段落0113~0122の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0147】
ラジカル架橋剤は、常圧下で100℃以上の沸点を持つ化合物も好ましい。常圧下で100℃以上の沸点を持つ化合物としては、国際公開第2021/112189号の段落0203に記載の化合物等が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0148】
上述以外の好ましいラジカル架橋剤としては、国際公開第2021/112189号の段落0204~0208に記載のラジカル重合性化合物等が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0149】
ラジカル架橋剤としては、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては KAYARAD D-330(日本化薬(株)製))、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては KAYARAD D-320(日本化薬(株)製)、A-TMMT(新中村化学工業(株)製))、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD D-310(日本化薬(株)製))、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)、A-DPH(新中村化学工業社製))、及びこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール残基又はプロピレングリコール残基を介して結合している構造が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。
【0150】
ラジカル架橋剤の市販品としては、例えばエチレンオキシ鎖を4個有する4官能アクリレートであるSR-494、エチレンオキシ鎖を4個有する2官能メタクリレートであるSR-209、231、239(以上、サートマー社製)、ペンチレンオキシ鎖を6個有する6官能アクリレートであるDPCA-60、イソブチレンオキシ鎖を3個有する3官能アクリレートであるTPA-330(以上、日本化薬(株)製)、ウレタンオリゴマーであるUAS-10、UAB-140(以上、日本製紙社製)、NKエステルM-40G、NKエステル4G、NKエステルM-9300、NKエステルA-9300、UA-7200(以上、新中村化学工業社製)、DPHA-40H(日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600(以上、共栄社化学社製)、ブレンマーPME400(日油(株)製)などが挙げられる。
【0151】
ラジカル架橋剤としては、特公昭48-041708号公報、特開昭51-037193号公報、特公平02-032293号公報、特公平02-016765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58-049860号公報、特公昭56-017654号公報、特公昭62-039417号公報、特公昭62-039418号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。ラジカル架橋剤として、特開昭63-277653号公報、特開昭63-260909号公報、特開平01-105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する化合物を用いることもできる。
【0152】
ラジカル架橋剤は、カルボキシ基、リン酸基等の酸基を有するラジカル架橋剤であってもよい。酸基を有するラジカル架橋剤は、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルが好ましく、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシ基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせたラジカル架橋剤がより好ましい。特に好ましくは、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシ基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせたラジカル架橋剤において、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールである化合物である。市販品としては、例えば、東亞合成(株)製の多塩基酸変性アクリルオリゴマーとして、M-510、M-520などが挙げられる。
【0153】
酸基を有するラジカル架橋剤の酸価は、0.1~300mgKOH/gが好ましく、1~100mgKOH/gがより好ましい。ラジカル架橋剤の酸価が上記範囲であれば、製造上の取扱性に優れ、現像性に優れる。また、重合性が良好である。上記酸価は、JIS K 0070:1992の記載に準拠して測定される。
【0154】
ラジカル架橋剤としては、ウレア結合、及び、ウレタン結合からなる群より選ばれた少なくとも一方を有するラジカル架橋剤(以下、「架橋剤U」ともいう。)も好ましい。
樹脂組成物が架橋剤Uを含むことにより、耐薬品性、解像性等が向上する場合が有る。
架橋剤Uとしては、国際公開第2023/190064号の段落0133~0143に記載の化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0155】
樹脂組成物は、パターンの解像性と膜の伸縮性の観点から、2官能のメタアクリレート又はアクリレートを用いることが好ましい。
具体的な化合物としては、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、PEG(ポリエチレングリコール)200ジアクリレート、PEG200ジメタクリレート、PEG600ジアクリレート、PEG600ジメタクリレート、ポリテトラエチレングリコールジアクリレート、ポリテトラエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジメタクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジメタクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキシド)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジメタクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキシド)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸変性ジメタクリレート、その他ウレタン結合を有する2官能アクリレート、ウレタン結合を有する2官能メタクリレートを使用することができる。これらは必要に応じ、2種以上を混合し使用することができる。
なお、例えばPEG200ジアクリレートとは、ポリエチレングリコールジアクリレートであって、ポリエチレングリコール鎖の式量が200程度のものをいう。
樹脂組成物は、パターン(硬化物)の反り抑制の観点から、ラジカル架橋剤として、単官能ラジカル架橋剤を好ましく用いることができる。単官能ラジカル架橋剤としては、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等のN-ビニル化合物類、アリルグリシジルエーテル等が好ましく用いられる。単官能ラジカル架橋剤としては、露光前の揮発を抑制するため、常圧下で100℃以上の沸点を持つ化合物も好ましい。
その他、2官能以上のラジカル架橋剤としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物類が挙げられる。
【0156】
ラジカル架橋剤を含有する場合、ラジカル架橋剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0質量%超60質量%以下であることが好ましい。下限は5質量%以上がより好ましい。上限は、50質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。
【0157】
ラジカル架橋剤は1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を併用する場合にはその合計量が上記の範囲となることが好ましい。
【0158】
〔他の架橋剤〕
樹脂組成物は、上述したラジカル架橋剤とは異なる、他の架橋剤を含むことも好ましい。
他の架橋剤とは、上述したラジカル架橋剤以外の架橋剤をいい、光酸発生剤、又は、光塩基発生剤の感光により、組成物中の他の化合物又はその反応生成物との間で共有結合を形成する反応が促進される基を分子内に複数個有する化合物であることが好ましく、組成物中の他の化合物又はその反応生成物との間で共有結合を形成する反応が酸又は塩基の作用によって促進される基を分子内に複数個有する化合物が好ましい。
上記酸又は塩基は、露光工程において、光酸発生剤又は光塩基発生剤から発生する酸又は塩基であることが好ましい。
他の架橋剤としては、国際公開第2022/145355号の段落0179~0207に記載の化合物が挙げられる。上記記載は本明細書に組み込まれる。
【0159】
〔感光剤〕
樹脂組成物は、感光剤を含む。
感光剤としては、光重合開始剤、光酸発生剤等が挙げられ、光重合開始剤が好ましい。
【0160】
〔光重合開始剤〕
樹脂組成物は、光重合開始剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光ラジカル重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有する光ラジカル重合開始剤が好ましい。また、光励起された増感剤と作用し、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよい。
【0161】
光ラジカル重合開始剤は、波長約240~800nm(好ましくは330~500nm)の範囲内で少なくとも約50L・mol-1・cm-1のモル吸光係数を有する化合物を、少なくとも1種含有していることが好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶剤を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0162】
光ラジカル重合開始剤としては、公知の化合物を任意に使用できる。例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物、トリハロメチル基を有する化合物など)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、アミノアセトフェノンなどのα-アミノケトン化合物、ヒドロキシアセトフェノンなどのα-ヒドロキシケトン化合物、アゾ系化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、有機ホウ素化合物、鉄アレーン錯体などが挙げられる。これらの詳細については、特開2016-027357号公報の段落0165~0182、国際公開第2015/199219号の段落0138~0151の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、特開2014-130173号公報の段落0065~0111、特許第6301489号公報に記載された化合物、MATERIAL STAGE 37~60p,vol.19,No.3,2019に記載されたパーオキサイド系光重合開始剤、国際公開第2018/221177号に記載の光重合開始剤、国際公開第2018/110179号に記載の光重合開始剤、特開2019-043864号公報に記載の光重合開始剤、特開2019-044030号公報に記載の光重合開始剤、特開2019-167313号公報に記載の過酸化物系開始剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0163】
ケトン化合物としては、例えば、特開2015-087611号公報の段落0087に記載の化合物が例示され、この内容は本明細書に組み込まれる。市販品では、カヤキュア-DETX-S(日本化薬(株)製)も好適に用いられる。
【0164】
本発明の一実施態様において、光ラジカル重合開始剤としては、ヒドロキシアセトフェノン化合物、アミノアセトフェノン化合物、及び、アシルホスフィン化合物を好適に用いることができる。より具体的には、例えば、特開平10-291969号公報に記載のアミノアセトフェノン系開始剤、特許第4225898号に記載のアシルホスフィンオキシド系開始剤を用いることができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0165】
α-ヒドロキシケトン系開始剤としては、Omnirad 184、Omnirad 1173、Omnirad 2959、Omnirad 127(以上、IGM Resins B.V.社製)、IRGACURE 184(IRGACUREは登録商標)、DAROCUR 1173、IRGACURE 500、IRGACURE-2959、IRGACURE 127(以上、BASF社製)を用いることができる。
【0166】
α-アミノケトン系開始剤としては、Omnirad 907、Omnirad 369、Omnirad 369E、Omnirad 379EG(以上、IGM Resins B.V.社製)、IRGACURE 907、IRGACURE 369、及び、IRGACURE 379(以上、BASF社製)を用いることができる。
【0167】
アミノアセトフェノン系開始剤、アシルホスフィンオキシド系開始剤、メタロセン化合物としては、例えば、国際公開第2021/112189号の段落0161~0163に記載の化合物も好適に使用することができる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0168】
光ラジカル重合開始剤として、より好ましくはオキシム化合物が挙げられる。オキシム化合物を用いることにより、露光ラチチュードをより効果的に向上させることが可能になる。オキシム化合物は、露光ラチチュード(露光マージン)が広く、かつ、光硬化促進剤としても働くため、特に好ましい。
【0169】
オキシム化合物の具体例としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)に記載の化合物、特開2000-066385号公報に記載の化合物、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2017-019766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開第2015/152153号に記載の化合物、国際公開第2017/051680号に記載の化合物、特開2017-198865号公報に記載の化合物、国際公開第2017/164127号の段落番号0025~0038に記載の化合物、国際公開第2013/167515号に記載の化合物などが挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0170】
好ましいオキシム化合物としては、例えば、下記の構造の化合物や、3-(ベンゾイルオキシ(イミノ))ブタン-2-オン、3-(アセトキシ(イミノ))ブタン-2-オン、3-(プロピオニルオキシ(イミノ))ブタン-2-オン、2-(アセトキシ(イミノ))ペンタン-3-オン、2-(アセトキシ(イミノ))-1-フェニルプロパン-1-オン、2-(ベンゾイルオキシ(イミノ))-1-フェニルプロパン-1-オン、3-((4-トルエンスルホニルオキシ)イミノ)ブタン-2-オン、及び2-(エトキシカルボニルオキシ(イミノ))-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。樹脂組成物においては、特に光ラジカル重合開始剤としてオキシム化合物を用いることが好ましい。光ラジカル重合開始剤としてのオキシム化合物は、分子内に>C=N-O-C(=O)-の連結基を有する。
【0171】
【0172】
オキシム化合物の市販品としては、IRGACURE OXE 01、IRGACURE OXE 02、IRGACURE OXE 03、IRGACURE OXE 04、IRGACURE OXE 05(以上、BASF社製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-014052号公報に記載の光ラジカル重合開始剤2)、TR-PBG-304、TR-PBG-305(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカアークルズNCI-730、NCI-831及びアデカアークルズNCI-930((株)ADEKA製)、DFI-091(ダイトーケミックス(株)製)、SpeedCure PDO(SARTOMER ARKEMA製)が挙げられる。また、下記の構造のオキシム化合物を用いることもできる。
【化72】
【化73】
【0173】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、国際公開第2021/112189号の段落0169~0171に記載のフルオレン環を有するオキシム化合物、カルバゾール環の少なくとも1つのベンゼン環がナフタレン環となった骨格を有するオキシム化合物、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。
また、国際公開第2021/020359号に記載の段落0208~0210に記載のニトロ基を有するオキシム化合物、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物、カルバゾール骨格にヒドロキシ基を有する置換基が結合したオキシム化合物を用いることもできる。これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0174】
その他、光重合開始剤としては、特開2023-058585号公報の段落0113~0117に記載の化合物を用いることもできる。この記載は本願明細書に組み込まれる。
【0175】
樹脂組成物が光重合開始剤を含む場合、その含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し0.1~30質量%が好ましく、0.1~20質量%がより好ましく、0.5~15質量%が更に好ましく、1.0~10質量%が更により好ましい。光重合開始剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。光重合開始剤を2種以上含有する場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
なお、光重合開始剤は熱重合開始剤としても機能する場合があるため、オーブンやホットプレート等の加熱によって光重合開始剤による架橋を更に進行させられる場合がある。
【0176】
〔アニリン化合物〕
樹脂組成物は、解像性の観点からは、アニリン化合物を含むことが好ましい。
アニリン化合物とは、増感剤として働く化合物が好ましく、光ラジカル重合開始剤に対して増感作用を有する化合物であることがより好ましい。
増感剤は、特定の活性放射線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感剤は、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤などと接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用が生じる。これにより、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤は化学変化を起こして分解し、ラジカル、酸又は塩基を生成する。
また、アニリン化合物の一部が硬化物に残存すると、硬化物中で発生した酸、硬化物外から持ち込まれる酸などをクエンチし、金属の酸化が抑制される結果密着性が向上する場合がある。
【0177】
アニリン化合物としては、ジアルキルアミノ基又はジヒドロキシアルキルアミノ基を置換基として有するベンゼン環構造を含む化合物が好ましく挙げられる。
【0178】
アニリン化合物としては、例えば、ミヒラーズケトン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,5-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)シクロペンタン、2,6-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p-ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p-ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2-(p-ジメチルアミノフェニルビフェニレン)-ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3-ビス(4’-ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3’-カルボニル-ビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-アセチル-7-ジメチルアミノクマリン、3-エトキシカルボニル-7-ジメチルアミノクマリン、3-ベンジロキシカルボニル-7-ジメチルアミノクマリン、3-メトキシカルボニル-7-ジエチルアミノクマリン、3-エトキシカルボニル-7-ジエチルアミノクマリン(7-(ジエチルアミノ)クマリン-3-カルボン酸エチル)、N-フェニル-N’-エチルエタノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン、N-p-トリルジエタノールアミン、N-フェニルエタノールアミン、4-モルホリノベンゾフェノン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、ジメチルアニリン、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)メタン、2-メルカプトベンズイミダゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ナフト(1,2-d)チアゾール、2-(p-ジメチルアミノベンゾイル)スチレン、ジフェニルアセトアミド、ベンズアニリド、N-メチルアセトアニリド、3‘,4’-ジメチルアセトアニリド、後述する実施例における等が挙げられる。
【0179】
これらの中でも、アニリン化合物としては、下記式(AN-1)又は下記式(AN-2)で表される化合物(以下、「化合物A」ともいう。)が好ましい。
【化74】
式(AN-1)中、R
11及びR
12はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、R
11及びR
12のうち少なくとも一方は式(R-1)で表される基を含み、Ar
1は置換基又は縮環を有してもよい芳香環構造を表し、n1は2以上の整数を表し、n1が2である場合、Xは単結合又は2価の連結基を表し、n1が3以上である場合、Xはn1価の連結基を表す。
式(AN-2)中、R
21及びR
22はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、R
21及びR
22のうち少なくとも一方は式(R-1)で表される基を含み、Ar
2は置換基又は縮環を有してもよい芳香環構造を表し、n2は1以上の整数を表す。
【化75】
式(R-1)中、R
R1及びR
R2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、m個のR
R1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、m個のR
R2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、mは2以上の整数を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
【0180】
式(AN-1)中、R11及びR12はいずれも式(R-1)で表される基であることが好ましい。
R11及びR12の一方が水素原子又は式(R-1)で表される基とは異なる1価の有機基である場合、R11及びR12の一方は式(R-1)で表される基とは異なる1価の有機基であることが好ましい。
式(R-1)で表される基とは異なる1価の有機基としては、アルキル基、アリール基等が挙げられ、アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0181】
式(R-1)で表される基において、R
R1及びR
R2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、水素原子又はアルキル基を表すことが好ましく、水素原子又はメチル基を表すことがより好ましい。また、R
R1及びR
R2がいずれも水素原子であることも好ましい態様の一つである。
式(R-1)中、mは2以上の整数を表し、2~4の整数が好ましく、2又は3がより好ましく、2が更に好ましい。
以下に、式(R-1)で表される基の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。下記具体例中、*は式(R-1)中の*と同義である。
【化76】
【0182】
式(AN-1)中、Ar1は置換基又は縮環を有してもよい芳香環構造を表す。
式(AN-1)中、Ar1における芳香環構造としては、芳香族炭化水素環構造、芳香族複素環構造のいずれであってもよいが、芳香族炭化水素環構造が好ましく、ベンゼン環構造がより好ましい。
上記置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられ、アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
上記縮環としては、シクロアルカン、芳香族環等が挙げられ、シクロプロパン環が好ましい。
【0183】
式(AN-1)中、n1は2~4の整数を表し、2又は3であることが好ましく、2であることがさらに好ましい。
【0184】
式(AN-1)中、n1が2である場合、Xは単結合又は2価の連結基を表す。上記2価の連結基としては、アルキレン基、ハロアルキレン基、アリーレン基、又はこれらの組み合わせにより表される基であることが好ましい。これらの基における水素原子は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子等の公知の置換基により置換されていてもよい。
上記アルキレン基としては、炭素数1~4のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基又はイソプロピレン基がより好ましい。
上記アリーレン基としては、芳香族炭化水素基であっても芳香族複素環基であってもよいが、芳香族炭化水素基であることが好ましく、フェニレン基がより好ましい。
【0185】
式(AN-1)中、n1が3以上である場合、Xはn1価の連結基を表す。上記n1価の連結基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族基、又はこれらの組み合わせにより表される基であることが好ましい。これらの基における水素原子は、ヒドロキシ基等の公知の置換基により置換されていてもよい。
上記脂肪族炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1~4の飽和脂肪族炭化水素基がより好ましい。
上記芳香族基としては、芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6の芳香族炭化水素基がより好ましい。
【0186】
式(AN-2)中、R21及びR22の好ましい態様は、式(AN-1)中のR11及びR12の好ましい態様と同様である。
【0187】
式(AN-2)中、Ar
2は置換基又は縮環を有してもよい芳香環構造を表す。
上記芳香環構造としては、ベンゼン環構造、カルバゾール環構造、フルオレン環構造等が挙げられる。
上記置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられ、アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
上記縮環としては、シクロアルカン、芳香族環等が挙げられ、シクロプロパン環が好ましい。
以下に、Ar
2の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。下記具体例中、*は式(AN-2)中の窒素原子との結合部位を表す。
【化77】
【0188】
式(AN-2)中、n2は1~3の整数であることが好ましく、1又は2であることがさらに好ましい。
【0189】
これらの中でも、上記化合物Aが上記式(AN-1)で表される化合物であり、上記式(AN-1)中のR11及びR12はいずれも式(R-1)で表される基であり、式(R-1)中のmが2である態様が好ましい。
上記態様における他の符号の好ましい態様は、上述の式(AN-1)の説明において記載した通りである。
【0190】
化合物Aの分子量は、1,000以下であることが好ましく、800以下であることがより好ましく、500以下であることが更に好ましい。
上記分子量の下限は特に限定されないが、例えば150以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましい。
【0191】
樹脂組成物がアニリン化合物を含む場合、アニリン化合物の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、0.01~20質量%が好ましく、0.1~15質量%がより好ましく、0.5~10質量%が更に好ましい。アニリン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0192】
また、増感剤として、他の増感色素を用いてもよい。
増感色素の詳細については、特開2016-027357号公報の段落0161~0163の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0193】
〔連鎖移動剤〕
樹脂組成物は、連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤は、例えば高分子辞典第三版(高分子学会編、2005年)683-684頁に定義されている。連鎖移動剤としては、例えば、分子内に-S-S-、-SO2-S-、-N-O-、SH、PH、SiH、及びGeHを有する化合物群、RAFT(Reversible Addition Fragmentation chain Transfer)重合に用いられるチオカルボニルチオ基を有するジチオベンゾアート、トリチオカルボナート、ジチオカルバマート、キサンタート化合物等が用いられる。これらは、低活性のラジカルに水素を供与して、ラジカルを生成するか、若しくは、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成しうる。特に、チオール化合物を好ましく用いることができる。
【0194】
また、連鎖移動剤は、国際公開第2015/199219号の段落0152~0153に記載の化合物を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0195】
樹脂組成物が連鎖移動剤を有する場合、連鎖移動剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分100質量部に対し、0.01~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、0.5~5質量部が更に好ましい。連鎖移動剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。連鎖移動剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0196】
また、樹脂組成物が、重合開始剤として、2種以上の重合開始剤を含むことも本発明の好ましい態様の一つである。
具体的には、樹脂組成物は、光重合開始剤及び後述の熱重合開始剤を含むか、又は、上述の光ラジカル重合開始剤及び光酸発生剤を含むことが好ましい。
【0197】
光重合開始剤及び後述の熱重合開始剤を含むことにより、露光によるパターン形成が可能となり、かつ、後述の加熱工程による硬化時にラジカル重合も進行しやすくなり、耐薬品性等の性能が向上する場合が有る。
光重合開始剤及び後述の熱重合開始剤を含む場合の含有比率としては、光重合開始剤及び熱重合開始剤の合計含有量に対し、熱重合開始剤の含有量が20~70質量%であることが好ましく、30~60質量%であることがより好ましい。
【0198】
光ラジカル重合開始剤及び光酸発生剤を含むことにより解像性等の性能が向上する場合が有る。
光重合開始剤及び光酸発生剤を含む場合の含有比率としては、光重合開始剤及び光酸発生剤の合計含有量に対し、光酸発生剤の含有量が20~70質量%であることが好ましく、30~60質量%であることがより好ましい。
【0199】
〔熱重合開始剤〕
熱重合開始剤としては、例えば、熱ラジカル重合開始剤が挙げられる。熱ラジカル重合開始剤は、熱のエネルギーによってラジカルを発生し、重合性を有する化合物の重合反応を開始又は促進させる化合物である。熱ラジカル重合開始剤を添加することによって樹脂及び重合性化合物の重合反応を進行させることもできるので、より耐溶剤性を向上できる。
【0200】
熱ラジカル重合開始剤として、具体的には、特開2008-063554号公報の段落0074~0118に記載されている化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0201】
熱重合開始剤を含む場合、その含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し0.1~30質量%であることが好ましく、0.1~20質量%であることがより好ましく、0.5~15質量%であることが更に好ましい。樹脂組成物は熱重合開始剤を1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。熱重合開始剤を2種以上含有する場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0202】
〔有機チタン化合物〕
樹脂組成物が有機チタン化合物を含有することにより、例えば、低温で硬化した場合であっても耐薬品性に優れる硬化物を形成できる。
【0203】
使用可能な有機チタン化合物としては、チタン原子に有機基が共有結合又はイオン結合を介して結合しているものが挙げられる。
有機チタン化合物の具体例を、以下のI)~VII)に示す:
I)チタンキレート化合物:樹脂組成物の保存安定性がよく、良好な硬化パターンが得られることから、アルコキシ基を2個以上有するチタンキレート化合物がより好ましい。具体的な例は、チタニウムビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキサイド、チタニウムジ(n-ブトキサイド)ビス(2,4-ペンタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(2,4-ペンタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)等である。
II)テトラアルコキシチタン化合物:例えば、チタニウムテトラ(n-ブトキサイド)、チタニウムテトラエトキサイド、チタニウムテトラ(2-エチルヘキソキサイド)、チタニウムテトライソブトキサイド、チタニウムテトライソプロポキサイド、チタニウムテトラメトキサイド、チタニウムテトラメトキシプロポキサイド、チタニウムテトラメチルフェノキサイド、チタニウムテトラ(n-ノニロキサイド)、チタニウムテトラ(n-プロポキサイド)、チタニウムテトラステアリロキサイド、チタニウムテトラキス[ビス{2,2-(アリロキシメチル)ブトキサイド}]等である。
III)チタノセン化合物:例えば、ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリメトキサイド、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロフェニル)チタニウム、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム等である。
IV)モノアルコキシチタン化合物:例えば、チタニウムトリス(ジオクチルホスフェート)イソプロポキサイド、チタニウムトリス(ドデシルベンゼンスルホネート)イソプロポキサイド等である。
V)チタニウムオキサイド化合物:例えば、チタニウムオキサイドビス(ペンタンジオネート)、チタニウムオキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、フタロシアニンチタニウムオキサイド等である。
VI)チタニウムテトラアセチルアセトネート化合物:例えば、チタニウムテトラアセチルアセトネート等である。
VII)チタネートカップリング剤:例えば、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート等である。
【0204】
なかでも、有機チタン化合物としては、より良好な耐薬品性の観点から、上記I)チタンキレート化合物、II)テトラアルコキシチタン化合物、及びIII)チタノセン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。特に、チタニウムジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムテトラ(n-ブトキサイド)、及びビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウムが好ましい。
【0205】
また、有機チタン化合物として、又は、有機チタン化合物に代えて、下記式(T-1)で表される化合物を含むことも好ましい。
【化78】
式(T-1)中、Mは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムであり、l1は、0~2の整数であり、l2は0又は1であり、l1+l2×2は0~2の整数であり、mは0~4の整数、nは0~2の整数であり、l1+l2+m+n×2=4であり、R
11は各々独立に置換もしくは無置換のシクロペンタジエニル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、又は、置換もしくは無置換のフェノキシ基であり、R
12は置換若しくは無置換の炭化水素基であり、R
2は各々独立に、下記式(T-2)で表される構造を含む基であり、R
3は各々独立に、下記式(T-2)で表される構造を含む基であり、X
Aはそれぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子である。
【化79】
式(T-2)中、X
1~X
3はそれぞれ独立に、-C(-*)=又は-N=を表し、*はそれぞれ他の構造との結合部位を表し、#は金属原子との結合部位を表す。
【0206】
式(T-1)中、組成物の保存安定性の観点からは、Mはチタンであることが好ましい。
式(T-1)中、l1及びl2が0である態様も、本発明の好ましい態様の一つである。
式(T-1)中、mは2又は4であることが好ましく、2であることがより好ましい。
式(T-1)中、nは1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
ここで、式(T-1)中、l1及びl2が0であり、mが0、2又は4であることも好ましい。
【0207】
式(T-1)中、特定金属錯体の安定性の観点からは、R11は置換又は無置換のシクロペンタジエニル配位子が好ましい。
また、R11におけるシクロペンタジエニル基、アルコキシ基及びフェノキシ基は置換されていてもよいが、無置換である態様も本発明の好ましい態様の一つである。
【0208】
式(T-1)中、R12は炭素数1~20の炭化水素基であることが好ましく、炭素数2~10の炭化水素基であることがより好ましい。
R12における炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基のいずれであってもよいが、芳香族炭化水素基が好ましい。
脂肪族炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基であっても不飽和脂肪族炭化水素基であってもよいが、飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。
芳香族炭化水素基としては、炭素数6~20の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6~10の芳香族炭化水素基がより好ましく、フェニレン基が更に好ましい。
R12における置換基としては、1価の置換基が好ましく、ハロゲン原子等が挙げられる。また、R12が芳香族炭化水素基である場合、置換基としてアルキル基を有してもよい。
これらの中でも、式(T-1)中、R12は無置換のフェニレン基であることが好ましい。また、R12におけるフェニレン基は1,2-フェニレン基であることが好ましい。
【0209】
式(T-1)中、mが2以上であり、R2が2以上含まれる場合、その2以上のR2の構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
式(T-1)中、nが2以上であり、R3が2以上含まれる場合、その2以上のR3の構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0210】
式(T-2)中、X1~X3はそれぞれ独立に、-C(-*)=又は-N=を表し、少なくとも1つが-C(-*)=を表すことが好ましく、少なくとも2つが-C(-*)=を表すことがより好ましい。
【0211】
これらの化合物の中でも、密着性および解像性の向上の観点からは、樹脂組成物は、金属錯体に該当する化合物を含むことが好ましく、チタン錯体に該当する化合物を含むことが好ましい。
【0212】
有機チタン化合物を含む場合、その含有量は、特定樹脂100質量部に対し、0.05~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。含有量が0.05質量部以上である場合、得られる硬化パターンの耐熱性及び耐薬品性がより良好となり、10質量部以下である場合、組成物の保存安定性により優れる。
【0213】
〔塩基発生剤〕
樹脂組成物は、塩基発生剤を含んでもよい。ここで、塩基発生剤とは、物理的または化学的な作用によって塩基を発生することができる化合物である。好ましい塩基発生剤としては、熱塩基発生剤および光塩基発生剤が挙げられる。
樹脂組成物が熱塩基発生剤を含有することによって、例えば加熱により前駆体の環化反応を促進でき、硬化物の機械特性や耐薬品性が良好なものとなり、例えば半導体パッケージ中に含まれる再配線層用層間絶縁膜としての性能が良好となる。
塩基発生剤としては、イオン型塩基発生剤でもよく、非イオン型塩基発生剤でもよい。塩基発生剤から発生する塩基としては、例えば、2級アミン、3級アミンが挙げられる。
塩基発生剤は特に限定されず、公知の塩基発生剤を用いることができる。公知の塩基発生剤としては、例えば、カルバモイルオキシム化合物、カルバモイルヒドロキシルアミン化合物、カルバミン酸化合物、ホルムアミド化合物、アセトアミド化合物、カルバメート化合物、ベンジルカルバメート化合物、ニトロベンジルカルバメート化合物、スルホンアミド化合物、イミダゾール誘導体化合物、アミンイミド化合物、ピリジン誘導体化合物、α-アミノアセトフェノン誘導体化合物、4級アンモニウム塩誘導体化合物、イミニウム塩、ピリジニウム塩、α-ラクトン環誘導体化合物、アミンイミド化合物、フタルイミド誘導体化合物、アシルオキシイミノ化合物等が挙げられる。
非イオン型塩基発生剤の具体例としては、国際公開第2022/145355号の段落0249~0275に記載の化合物が挙げられる。上記記載は本明細書に組み込まれる。
【0214】
塩基発生剤としては、下記の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0215】
【0216】
非イオン型塩基発生剤の分子量は、800以下が好ましく、600以下がより好ましく、500以下が更に好ましい。下限は、100以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上が更に好ましい。
【0217】
イオン型塩基発生剤の具体的な好ましい化合物としては、例えば、国際公開第2018/038002号の段落番号0148~0163に記載の化合物が挙げられる。
【0218】
アンモニウム塩の具体例としては、下記の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【化81】
【0219】
また、塩基発生剤としては、保存安定性およびキュア時に脱保護で塩基を発生させる観点からアミノ基がt-ブトキシカルボニル基によって保護されたアミンであることが好ましい。
【0220】
t-ブトキシカルボニル基によって保護されたアミン化合物としては、例えば、エタノールアミン、3-アミノ-1-プロパノール、1-アミノ-2-プロパノール、2-アミノ-1-プロパノール、4-アミノ-1-ブタノール、2-アミノ-1-ブタノール、1-アミノ-2-ブタノール、3-アミノ-2,2-ジメチル-1-プロパノール、4-アミノ-2-メチル-1-ブタノール、バリノール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、チラミン、ノルエフェドリン、2-アミノ-1-フェニル-1,3-プロパンジオール、2-アミノシクロヘキサノール、4-アミノシクロヘキサノール、4-アミノシクロヘキサンエタノール、4-(2-アミノエチル)シクロヘキサノール、N-メチルエタノールアミン、3-(メチルアミノ)-1-プロパノール、3-(イソプロピルアミノ)プロパノール、N-シクロヘキシルエタノールアミン、α-[2-(メチルアミノ)エチル]ベンジルアルコール、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、3-ピロリジノール、2-ピロリジンメタノール、4-ヒドロキシピペリジン、3-ヒドロキシピペリジン、4-ヒドロキシ-4-フェニルピペリジン、4-(3-ヒドロキシフェニル)ピペリジン、4-ピペリジンメタノール、3-ピペリジンメタノール、2-ピペリジンメタノール、4-ピペリジンエタノール、2-ピペリジンエタノール、2-(4-ピペリジル)-2-プロパノール、1,4-ブタノールビス(3-アミノプロピル)エーテル、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、2,2’-オキシビス(エチルアミン)、1,14-ジアミノ-3,6,9,12-テトラオキサテトラデカン、1-アザ-15-クラウン5-エーテル、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、1,11-ジアミノ-3,6,9-トリオキサウンデカン、又は、アミノ酸及びその誘導体のアミノ基をt-ブトキシカルボニル基によって保護した化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0221】
樹脂組成物が塩基発生剤を含む場合、塩基発生剤の含有量は、樹脂組成物中の樹脂100質量部に対し、0.1~50質量部が好ましい。下限は、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上が更に好ましい。上限は、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下が更に好ましく、10質量部以下が一層好ましく、5質量部以下がより一層好ましく、4質量部以下が特に好ましい。
塩基発生剤は、1種又は2種以上を用いることができる。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0222】
〔溶剤〕
樹脂組成物は、溶剤を含むことが好ましい。
溶剤は、公知の溶剤を任意に使用できる。溶剤は有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、エステル類、エーテル類、ケトン類、環状炭化水素類、スルホキシド類、アミド類、ウレア類、アルコール類などの化合物が挙げられる。
【0223】
エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸へキシル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、アルキルオキシ酢酸アルキル(例えば、アルキルオキシ酢酸メチル、アルキルオキシ酢酸エチル、アルキルオキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3-アルキルオキシプロピオン酸メチル、3-アルキルオキシプロピオン酸エチル等(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等))、2-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、2-アルキルオキシプロピオン酸メチル、2-アルキルオキシプロピオン酸エチル、2-アルキルオキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル))、2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸メチル及び2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸エチル(例えば、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等が好適なものとして挙げられる。
【0224】
エーテル類として、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が好適なものとして挙げられる。
【0225】
ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、3-メチルシクロヘキサノン、レボグルコセノン、ジヒドロレボグルコセノン等が好適なものとして挙げられる。
【0226】
環状炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族炭化水素類、リモネン等の環式テルペン類が好適なものとして挙げられる。
【0227】
スルホキシド類として、例えば、ジメチルスルホキシドが好適なものとして挙げられる。
【0228】
アミド類として、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、N-ホルミルモルホリン、N-アセチルモルホリン等が好適なものとして挙げられる。
【0229】
ウレア類として、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が好適なものとして挙げられる。
【0230】
アルコール類として、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n-アミルアルコール、メチルアミルアルコール、および、ダイアセトンアルコール等が挙げられる。
【0231】
溶剤は、塗布面性状の改良などの観点から、2種以上を混合する形態も好ましい。
【0232】
本発明では、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドトルエン、ジメチルスルホキシド、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコールメチルエーテル、及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、レボグルコセノン、ジヒドロレボグルコセノンから選択される1種の溶剤、又は、2種以上で構成される混合溶剤が好ましい。ジメチルスルホキシドとγ-ブチロラクトンとの併用、ジメチルスルホキシドとγ-バレロラクトンとの併用、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドとγ-ブチロラクトンとの併用、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドとγ-ブチロラクトンとジメチルスルホキシドとの併用、又は、N-メチル-2-ピロリドンと乳酸エチルとの併用が特に好ましい。これらの併用された溶剤に、更にトルエンを溶剤の全質量に対して1~10質量%程度添加する態様も、本発明の好ましい態様の1つである。
特に、樹脂組成物の保存安定性等の観点からは、溶剤としてγ-バレロラクトンを含む態様も、本発明の好ましい態様の1つである。このような態様において、溶剤の全質量に対するγ-バレロラクトンの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。また、上記含有量の上限は、特に限定されず100質量%であってもよい。上記含有量は、樹脂組成物に含まれる樹脂Bなどの成分の溶解度等を考慮して決定すればよい。
また、ジメチルスルホキシドとγ-バレロラクトンとを併用する場合、溶剤の全質量に対して、60~90質量%のγ-バレロラクトンと10~40質量%のジメチルスルホキシドとを含むことが好ましく、70~90質量%のγ-バレロラクトンと10~30質量%のジメチルスルホキシドとを含むことがより好ましく、75~85質量%のγ-バレロラクトンと15~25質量%のジメチルスルホキシドとを含むことが更に好ましい。
【0233】
溶剤の含有量は、塗布性の観点から、樹脂組成物の全固形分濃度が5~80質量%になる量とすることが好ましく、5~75質量%となる量にすることがより好ましく、10~70質量%となる量にすることが更に好ましく、20~70質量%となるようにすることが一層好ましい。溶剤含有量は、塗膜の所望の厚さと塗布方法に応じて調節すればよい。溶剤を2種以上含有する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0234】
〔金属接着性改良剤〕
樹脂組成物は、電極や配線などに用いられる金属材料との接着性を向上させる観点から、金属接着性改良剤を含むことが好ましい。金属接着性改良剤としては、アルコキシシリル基を有するシランカップリング剤、アルミニウム系接着助剤、チタン系接着助剤、スルホンアミド構造を有する化合物及びチオウレア構造を有する化合物、リン酸誘導体化合物、βケトエステル化合物、アミノ化合物等が挙げられる。
【0235】
〔シランカップリング剤〕
シランカップリング剤としては、例えば、国際公開第2021/112189号の段落0316に記載の化合物、特開2018-173573の段落0067~0078に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、特開2011-128358号公報の段落0050~0058に記載のように異なる2種以上のシランカップリング剤を用いることも好ましい。シランカップリング剤は、下記化合物を用いることも好ましい。以下の式中、Meはメチル基を、Etはエチル基を表す。また、下記Rはブロックイソシアネート基におけるブロック化剤由来の構造が挙げられる。ブロック化剤としては、脱離温度に応じて選択すればよいが、アルコール化合物、フェノール化合物、ピラゾール化合物、トリアゾール化合物、ラクタム化合物、活性メチレン化合物等が挙げられる。例えば、脱離温度を160~180℃としたい観点からは、カプロラクタムなどが好ましい。このような化合物の市販品としては、X-12-1293(信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0236】
【0237】
他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物が挙げられる。これらは1種単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、シランカップリング剤として、アルコキシシリル基を複数個有するオリゴマータイプの化合物を用いることもできる。
このようなオリゴマータイプの化合物としては、下記式(S-1)で表される繰返し単位を含む化合物などが挙げられる。
【化83】
式(S-1)中、R
S1は1価の有機基を表し、R
S2は水素原子、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を表し、nは0~2の整数を表す。
R
S1は重合性基を含む構造であることが好ましい。重合性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基、エポキシ基、オキセタニル基、ベンゾオキサゾリル基、ブロックイソシアネート基、アミノ基等が挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、アリル基、イソアリル基、2-メチルアリル基、ビニル基と直接結合した芳香環を有する基(例えば、ビニルフェニル基など)、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロイルオキシ基などが挙げられ、ビニルフェニル基、(メタ)アクリルアミド基又は(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましく、ビニルフェニル基又は(メタ)アクリロイルオキシ基がより好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基が更に好ましい。
R
S2はアルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であることがより好ましい。
nは0~2の整数を表し、1であることが好ましい。
ここで、オリゴマータイプの化合物に含まれる複数の式(S-1)で表される繰返し単位の構造は、それぞれ同一であってもよい。
ここで、オリゴマータイプの化合物に含まれる複数の式(S-1)で表される繰返し単位のうち、少なくとも1つにおいてnが1又は2であることが好ましく、少なくとも2つにおいてnが1又は2であることがより好ましく、少なくとも2つにおいてnが1であることが更に好ましい。
このようなオリゴマータイプの化合物としては市販品を用いることができ、市販品としては例えば、KR-513(信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0238】
その他の金属接着性改良剤としては、特開2014-186186号公報の段落0046~0049に記載の化合物、特開2013-072935号公報の段落0032~0043に記載のスルフィド系化合物を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0239】
金属接着性改良剤の含有量は樹脂B100質量部に対して、0.01~30質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、0.5~5質量部が更に好ましい。上記下限値以上とすることでパターンと金属層との接着性が良好となり、上記上限値以下とすることでパターンの耐熱性、機械特性が良好となる。金属接着性改良剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。2種以上用いる場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0240】
〔含窒素複素環化合物〕
樹脂組成物は、含窒素複素環化合物を更に含むことが好ましい。含窒素複素環化合物を含むことにより、例えば、樹脂組成物を金属層(又は金属配線)に適用して膜を形成した際に、金属層(又は金属配線)由来の金属イオンが膜内へ移動することを効果的に抑制することができる。
【0241】
含窒素複素環化合物としては、特に制限はないが、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、トリアジン環を有する化合物、が挙げられる。特に、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール等のトリアゾール系化合物、1H-テトラゾール、5-フェニルテトラゾール、5-アミノ―1H-テトラゾール等のテトラゾール系化合物が好ましく使用できる。
これらの中でも、樹脂組成物は、8-アザアデニンを含むことが好ましい。
【0242】
樹脂組成物が含窒素複素環化合物を有する場合、含窒素複素環化合物の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.01~5.0質量%であることが好ましく、0.05~2.0質量%であることがより好ましく、0.1~1.0質量%であることが更に好ましい。
【0243】
含窒素複素環化合物は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。含窒素複素環化合物が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0244】
〔他のマイグレーション抑制剤〕
樹脂組成物は、他のマイグレーション抑制剤を含んでもよい。
【0245】
他のマイグレーション抑制剤としては、チオ尿素類及びスルファニル基を有する化合物、ヒンダードフェノール系化合物、サリチル酸誘導体系化合物、ヒドラジド誘導体系化合物特開2013-015701号公報の段落0094に記載の防錆剤、特開2009-283711号公報の段落0073~0076に記載の化合物、特開2011-059656号公報の段落0052に記載の化合物、特開2012-194520号公報の段落0114、0116及び0118に記載の化合物、国際公開第2015/199219号の段落0166に記載の化合物などを使用することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
マイグレーション抑制剤としては、ハロゲンイオンなどの陰イオンを捕捉するイオントラップ剤を使用することもできる。
【0246】
樹脂組成物がマイグレーション抑制剤を有する場合、マイグレーション抑制剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.01~5.0質量%であることが好ましく、0.05~2.0質量%であることがより好ましく、0.1~1.0質量%であることが更に好ましい。
【0247】
マイグレーション抑制剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。マイグレーション抑制剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0248】
〔ウレア化合物、カルボジイミド化合物、イソウレア化合物〕
破断伸び、及び、金属又は樹脂層との密着性の観点から、樹脂組成物は、ウレア結合を有する化合物(ウレア化合物)、カルボジイミド構造を有する化合物(カルボジイミド化合物)及びイソウレア結合を有する化合物(イソウレア化合物)からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物(以下、「ウレア化合物等」ともいう)を含んでもよい。
これらの中でも、樹脂組成物は、ウレア結合を有する化合物を更に含むことが好ましい。
ここでいうウレア化合物等には、上述の重合性化合物、シランカップリング剤に該当する化合物は含まれないものとする。
ウレア化合物としては、国際公開第2022/070730号の段落0334~0339に記載の化合物等が挙げられる。
これらの中でも、樹脂組成物は、ジアルキルウレア化合物を含むことが好ましい。
ジアルキルウレア化合物におけるアルキル基としては、炭素数3~10の分岐アルキル基、又は、炭素数5~10の環状アルキル基が好ましく、イソプロピル基又はシクロへキシル基がより好ましい。
【0249】
ウレア化合物等の具体例としては、ジシクロへキシルウレア、ジイソプロピルウレア、ジシクロへキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジシクロへキシルイソウレア、ジイソプロピルイソウレア等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0250】
ウレア化合物等の合計含有量は、樹脂B100質量部に対して0.01~10.0質量部が好ましく、0.5~8.0質量部がより好ましく、1.0~6.0質量部が更に好ましい。
ウレア化合物等は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。塩基含有処理液において2種以上の塩基を併用する場合、それらの合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0251】
〔光吸収剤〕
樹脂組成物は、露光によりその露光波長の吸光度が小さくなる化合物(光吸収剤)を含むことも好ましい。
光吸収剤としては、国際公開第2022/202647号の段落0159~0183に記載の化合物、特開2019-206689号公報の段落0088~0108に記載の化合物等が挙げられる。これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0252】
また、光吸収剤として、下記構造の化合物を含むことも好ましい。
【化84】
【0253】
樹脂組成物の全固形分に対する光吸収剤の含有量は、特に限定されないが、0.1~20質量%であることが好ましく、0.5~10質量%であることがより好ましく、1~5質量%であることが更に好ましい。
【0254】
〔その他の添加剤〕
樹脂組成物は、本発明の効果が得られる範囲で、必要に応じて、各種の添加物、例えば、界面活性剤、高級脂肪酸誘導体、熱重合開始剤、無機粒子、紫外線吸収剤、光酸発生剤、凝集防止剤、フェノール系化合物、他の高分子化合物、可塑剤及びその他の助剤類(例えば、消泡剤、難燃剤など)等を含んでいてもよい。これらの成分を適宜含有させることにより、膜物性などの性質を調整することができる。これらの成分は、例えば、特開2012-003225号公報の段落番号0183以降(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の段落番号0237)の記載、特開2008-250074号公報の段落番号0101~0104、0107~0109等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。これらの添加剤を配合する場合、その合計含有量は樹脂組成物の固形分の3質量%以下とすることが好ましい。
【0255】
〔樹脂組成物の特性〕
樹脂組成物の粘度は、樹脂組成物の固形分濃度により調整できる。塗布膜厚の観点から、1,000mm2/s~12,000mm2/sが好ましく、2,000mm2/s~10,000mm2/sがより好ましく、2,500mm2/s~8,000mm2/sが更に好ましい。上記範囲であれば、均一性の高い塗布膜を得ることが容易になる。1,000mm2/s以上であれば、例えば再配線用絶縁膜として必要とされる膜厚で塗布することが容易であり、12,000mm2/s以下であれば、塗布面状に優れた塗膜が得られる。
【0256】
〔樹脂組成物の含有物質についての制限〕
樹脂組成物の含水率は、2.0質量%未満であることが好ましく、1.5質量%未満であることがより好ましく、1.0質量%未満であることが更に好ましい。2.0%未満であれば、樹脂組成物の保存安定性が向上する。
水分の含有量を維持する方法としては、保管条件における湿度の調整、保管時の収容容器の空隙率低減などが挙げられる。
【0257】
樹脂組成物の金属含有量は、絶縁性の観点から、5質量ppm(parts per million)未満が好ましく、1質量ppm未満がより好ましく、0.5質量ppm未満が更に好ましい。金属としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、銅、クロム、ニッケルなどが挙げられるが、有機化合物と金属との錯体として含まれる金属は除く。金属を複数含む場合は、これらの金属の合計が上記範囲であることが好ましい。
【0258】
また、樹脂組成物に意図せずに含まれる金属不純物を低減する方法としては、樹脂組成物を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、樹脂組成物を構成する原料に対してフィルターろ過を行う、装置内をポリテトラフルオロエチレン等でライニングしてコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法を挙げることができる。
【0259】
樹脂組成物は、半導体材料としての用途を考慮すると、ハロゲン原子の含有量が、配線腐食性の観点から、500質量ppm未満が好ましく、300質量ppm未満がより好ましく、200質量ppm未満が更に好ましい。中でも、ハロゲンイオンの状態で存在するものは、5質量ppm未満が好ましく、1質量ppm未満がより好ましく、0.5質量ppm未満が更に好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。塩素原子及び臭素原子、又は塩素イオン及び臭素イオンの合計がそれぞれ上記範囲であることが好ましい。
ハロゲン原子の含有量を調節する方法としては、イオン交換処理などが好ましく挙げられる。
【0260】
樹脂組成物の収容容器としては従来公知の収容容器を用いることができる。収容容器としては、原材料や樹脂組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成された多層ボトルや、6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0261】
<樹脂組成物の調製>
樹脂組成物は、上記各成分を混合して調製することができる。混合方法は特に限定はなく、従来公知の方法で行うことができる。
混合方法としては、撹拌羽による混合、ボールミルによる混合、タンクを回転させる混合などが挙げられる。
混合中の温度は10~30℃が好ましく、15~25℃がより好ましい。
【0262】
樹脂組成物中のゴミや微粒子等の異物を除去する目的で、フィルターを用いたろ過を行うことが好ましい。フィルター孔径は、例えば5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.5μm以下が更に好ましく、0.1μm以下が更により好ましい。フィルターの材質は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン又はナイロンが好ましい。フィルターの材質がポリエチレンである場合はHDPE(高密度ポリエチレン)であることがより好ましい。フィルターとしては、国際公開第2023/190064号の段落0287号に記載のフィルターが挙げられる。上記内容は本明細書に組み込まれる。
【0263】
(硬化物の製造方法)
本発明の硬化物の製造方法は、樹脂組成物を基材上に適用して膜を形成する膜形成工程を含むことが好ましい。
硬化物の製造方法は、上記膜形成工程、膜形成工程により形成された膜を選択的に露光する露光工程、及び、露光工程により露光された膜を現像液を用いて現像してパターンを形成する現像工程を含むことがより好ましい。
硬化物の製造方法は、上記膜形成工程、上記露光工程、上記現像工程、並びに、現像工程により得られたパターンを加熱する加熱工程及び現像工程により得られたパターンを露光する現像後露光工程の少なくとも一方を含むことが特に好ましい。
また、硬化物の製造方法は、上記膜形成工程、及び、上記膜を加熱する工程を含むことも好ましい。
以下、各工程の詳細について説明する。
【0264】
<膜形成工程>
樹脂組成物は、基材上に適用して膜を形成する膜形成工程に用いることができる。
本発明の硬化物の製造方法は、樹脂組成物を基材上に適用して膜を形成する膜形成工程を含むことが好ましい。
【0265】
〔基材〕
基材の種類は、用途に応じて適宜定めることができ、特に限定されない。基材としては、例えば、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの半導体作製基材、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基材(例えば、金属から形成された基材、及び、金属層が例えばめっきや蒸着等により形成された基材のいずれであってもよい)、紙、SOG(Spin On Glass)、TFT(薄膜トランジスタ)アレイ基材、モールド基材、プラズマディスプレイパネル(PDP)の電極板などが挙げられる。基材は、特に、半導体作製基材が好ましく、シリコン基材、Cu基材およびモールド基材がより好ましい。
これらの基材にはヘキサメチルジシラザン(HMDS)等による密着層や酸化層などの層が表面に設けられていてもよい。
基材の形状は特に限定されず、円形状であってもよく、矩形状であってもよい。
基材のサイズは、円形状であれば、例えば直径が100~450mmが好ましく、200~450mmがより好ましい。矩形状であれば、例えば短辺の長さが100~1000mmが好ましく、200~700mmがより好ましい。
基材としては、例えば板状、好ましくはパネル状の基材(基板)が用いられる。
【0266】
樹脂層(例えば、硬化物からなる層)の表面や金属層の表面に樹脂組成物を適用して膜を形成する場合は、樹脂層や金属層が基材となる。
【0267】
樹脂組成物を基材上に適用する手段としては、塗布が好ましい。
適用する手段としては、具体的には、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スプレーコート法、スピンコート法、スリットコート法、インクジェット法などが挙げられる。膜の厚さの均一性の観点から、スピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法、又は、インクジェット法が好ましく、膜の厚さの均一性の観点および生産性の観点からスピンコート法およびスリットコート法がより好ましい。適用する手段に応じて樹脂組成物の固形分濃度や塗布条件を調整することで、所望の厚さの膜を得ることができる。また、基材の形状によっても塗布方法を適宜選択でき、ウエハ等の円形基材であればスピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法等が好ましく、矩形基材であればスリットコート法、スプレーコート法、インクジェット法等が好ましい。スピンコート法の場合は、例えば、500~3,500rpmの回転数で、10秒~3分程度適用することができる。
また、あらかじめ仮支持体上に上記付与方法によって付与して形成した塗膜を、基材上に転写する方法を適用することもできる。
転写方法に関しては特開2006-023696号公報の段落0023、0036~0051や、特開2006-047592号公報の段落0096~0108に記載の作製方法を好適に用いることができる。
また、基材の端部において余分な膜の除去を行なう工程を行なってもよい。このような工程の例には、エッジビードリンス(EBR)、バックリンスなどが挙げられる。
樹脂組成物を基材に塗布する前に基材を種々の溶剤を塗布し、基材の濡れ性を向上させた後に樹脂組成物を塗布するプリウェット工程を採用しても良い。
【0268】
<乾燥工程>
上記膜は、膜形成工程(層形成工程)の後に、溶剤を除去するため、形成された膜(層)を乾燥する工程(乾燥工程)に供されてもよい。
すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、膜形成工程により形成された膜を乾燥する乾燥工程を含んでもよい。
上記乾燥工程は膜形成工程の後、露光工程の前に行われることが好ましい。
乾燥工程における膜の乾燥温度は50~150℃が好ましく、70℃~130℃がより好ましく、90℃~110℃が更に好ましい。また、減圧により乾燥を行っても良い。乾燥時間としては、30秒~20分が例示され、1分~10分が好ましく、2分~7分がより好ましい。
【0269】
<露光工程>
上記膜は、膜を選択的に露光する露光工程に供されてもよい。
硬化物の製造方法は、膜形成工程により形成された膜を選択的に露光する露光工程を含んでもよい。
選択的に露光するとは、膜の一部を露光することを意味している。また、選択的に露光することにより、膜には露光された領域(露光部)と露光されていない領域(非露光部)が形成される。
露光量は、樹脂組成物を硬化できる限り特に限定されないが、例えば、波長365nmでの露光エネルギー換算で50~10,000mJ/cm2が好ましく、200~8,000mJ/cm2がより好ましい。
【0270】
露光波長は、190~1,000nmの範囲で適宜定めることができ、240~550nmが好ましい。
【0271】
露光波長は、光源との関係でいうと、(1)半導体レーザー(波長 830nm、532nm、488nm、405nm、375nm、355nm etc.)、(2)メタルハライドランプ、(3)高圧水銀灯、g線(波長 436nm)、h線(波長 405nm)、i線(波長 365nm)、ブロード(g,h,i線の3波長)、(4)エキシマレーザー、KrFエキシマレーザー(波長 248nm)、ArFエキシマレーザー(波長 193nm)、F2エキシマレーザー(波長 157nm)、(5)極紫外線;EUV(波長 13.6nm)、(6)電子線、(7)YAGレーザーの第二高調波532nm、第三高調波355nm等が挙げられる。樹脂組成物については、特に高圧水銀灯による露光が好ましく、露光感度の観点で、i線による露光がより好ましい。
露光の方式は特に限定されず、樹脂組成物からなる膜の少なくとも一部が露光される方式であればよいが、フォトマスクを使用した露光、レーザーダイレクトイメージング法による露光等が挙げられる。
【0272】
<露光後加熱工程>
上記膜は、露光後に加熱する工程(露光後加熱工程)に供されてもよい。
すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、露光工程により露光された膜を加熱する露光後加熱工程を含んでもよい。
露光後加熱工程は、露光工程後、現像工程前に行うことができる。
露光後加熱工程における加熱温度は、50℃~140℃が好ましく、60℃~120℃がより好ましい。
露光後加熱工程における加熱時間は、30秒間~300分間が好ましく、1分間~10分間がより好ましい。
露光後加熱工程における昇温速度は、加熱開始時の温度から最高加熱温度まで1~12℃/分が好ましく、2~10℃/分がより好ましく、3~10℃/分が更に好ましい。
また、昇温速度は加熱途中で適宜変更してもよい。
露光後加熱工程における加熱手段としては、特に限定されず、公知のホットプレート、オーブン、赤外線ヒーター等を用いることができる。
また、加熱に際し、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを流す等により、低酸素濃度の雰囲気下で行うことも好ましい。
【0273】
<現像工程>
露光後の上記膜は、現像液を用いて現像してパターンを形成する現像工程に供されてもよい。
すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、露光工程により露光された膜を現像液を用いて現像してパターンを形成する現像工程を含んでもよい。
現像を行うことにより、膜の露光部及び非露光部のうち一方が除去され、パターンが形成される。
ここで、膜の非露光部が現像工程により除去される現像をネガ型現像といい、膜の露光部が現像工程により除去される現像をポジ型現像という。
【0274】
〔現像液〕
現像工程において用いられる現像液としては、アルカリ水溶液、又は、有機溶剤を含む現像液が挙げられる。
【0275】
現像液がアルカリ水溶液である場合、アルカリ水溶液が含みうる塩基性化合物としては、無機アルカリ類、第一級アミン類、第二級アミン類、第三級アミン類、第四級アンモニウム塩が挙げられる。塩基性化合物としては、国際公開第2023/190064号の段落0300号に記載の化合物が挙げられる。上記内容は本明細書に組み込まれる。現像液における塩基性化合物の含有量は、現像液全質量中0.01~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.3~3質量%が更に好ましい。
【0276】
現像液が有機溶剤を含む場合、有機溶剤としては、国際公開第2021/112189号の段落0387に記載の化合物を用いることができる。この内容は本明細書に組み込まれる。また、アルコール類として、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、オクタノール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルイソブチルカルビノール、トリエチレングリコール等、アミド類として、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等も好適に挙げられる。
【0277】
現像液が有機溶剤を含む場合、有機溶剤は1種又は、2種以上を混合して使用することができる。本発明では特にシクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、及び、シクロヘキサノンよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む現像液が好ましく、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン及びジメチルスルホキシドよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む現像液がより好ましく、シクロペンタノンを含む現像液が特に好ましい。
【0278】
現像液が有機溶剤を含む場合、現像液の全質量に対する有機溶剤の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。また、上記含有量は、100質量%であってもよい。
【0279】
現像液は、他の成分を更に含んでもよい。
他の成分としては、例えば、公知の界面活性剤や公知の消泡剤等が挙げられる。
【0280】
現像工程において、現像液を用いた処理の後、更に、リンス液によるパターンの洗浄(リンス)を行ってもよい。また、パターン上に接する現像液が乾燥しきらないうちにリンス液を供給するなどの方法を採用しても良い。
【0281】
〔リンス液〕
現像液がアルカリ水溶液である場合、リンス液としては、例えば水を用いることができる。現像液が有機溶剤を含む現像液である場合、リンス液としては、例えば、現像液に含まれる溶剤とは異なる溶剤(例えば、水、現像液に含まれる有機溶剤とは異なる有機溶剤)を用いることができる。
【0282】
リンス液が有機溶剤を含む場合の有機溶剤としては、上述の現像液が有機溶剤を含む場合において例示した有機溶剤と同様の有機溶剤が挙げられる。
リンス液に含まれる有機溶剤は、現像液に含まれる有機溶剤とは異なる有機溶剤であることが好ましく、現像液に含まれる有機溶剤よりも、パターンの溶解度が小さい有機溶剤がより好ましい。
【0283】
リンス液が有機溶剤を含む場合、有機溶剤は1種又は、2種以上を混合して使用することができる。有機溶剤は、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、シクロヘキサノン、PGMEA、PGMEが好ましく、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、PGMEA、PGMEがより好ましく、シクロヘキサノン、PGMEAがさらに好ましい。
【0284】
リンス液が有機溶剤を含む場合、リンス液の全質量に対し、有機溶剤は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。また、リンス液の全質量に対し、有機溶剤は100質量%であってもよい。
【0285】
リンス液は塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方を含んでもよい。
特に限定されないが、現像液が有機溶剤を含む場合、リンス液が有機溶剤と塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方とを含む態様も、本発明の好ましい態様の一つである。
リンス液に含まれる塩基性化合物及び塩基発生剤としては、上述の現像液が有機溶剤を含む場合に含まれてもよい塩基性化合物及び塩基発生剤として例示された化合物が挙げられ、好ましい態様も同様である。
リンス液に含まれる塩基性化合物及び塩基発生剤は、リンス液における溶剤への溶解度等を考慮して選択すればよい。
【0286】
リンス液が塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方を含む場合、塩基性化合物又は塩基発生剤の含有量はリンス液の全質量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。上記含有量の下限は特に限定されないが、例えば0.1質量%以上が好ましい。
塩基性化合物又は塩基発生剤がリンス液が用いられる環境で固体である場合、塩基性化合物又は塩基発生剤の含有量は、リンス液の全固形分に対して、70~100質量%であることも好ましい。
リンス液が塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方を含む場合、リンス液は塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方を1種のみ含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方が2種以上である場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0287】
リンス液は、他の成分を更に含んでもよい。
他の成分としては、例えば、公知の界面活性剤や公知の消泡剤等が挙げられる。
【0288】
〔リンス液の供給方法〕
リンス液の供給方法は、所望のパターンを形成できれば特に制限は無く、基材をリンス液に浸漬する方法、基材に液盛りによりリンス液を供給する方法、基材にリンス液をシャワーで供給する方法、基材上にストレートノズル等の手段によりリンス液を連続供給する方法がある。
リンス液の浸透性、非画像部の除去性、製造上の効率の観点から、リンス液をシャワーノズル、ストレートノズル、スプレーノズルなどで供給する方法があり、スプレーノズルにて連続供給する方法が好ましく、画像部へのリンス液の浸透性の観点からは、スプレーノズルで供給する方法がより好ましい。ノズルの種類は特に制限は無く、ストレートノズル、シャワーノズル、スプレーノズル等が挙げられる。
すなわち、リンス工程は、リンス液を上記露光後の膜に対してストレートノズルにより供給、又は、連続供給する工程であることが好ましく、リンス液をスプレーノズルにより供給する工程であることがより好ましい。
リンス工程におけるリンス液の供給方法としては、リンス液が連続的に基材に供給され続ける工程、基材上でリンス液が略静止状態で保たれる工程、基材上でリンス液を超音波等で振動させる工程及びそれらを組み合わせた工程などが採用可能である。
【0289】
リンス時間としては、10秒~10分間が好ましく、20秒~5分間がより好ましい。リンス時のリンス液の温度は、特に定めるものではないが、10~45℃が好ましく、18~30℃がより好ましい。
【0290】
現像工程において、現像液を用いた処理の後、又は、リンス液によるパターンの洗浄の後に、処理液とパターンとを接触させる工程を含んでもよい。また、パターン上に接する現像液又はリンス液が乾燥しきらないうちに処理液を供給するなどの方法を採用しても良い。
【0291】
<加熱工程>
現像工程により得られたパターン(リンス工程を行う場合は、リンス後のパターン)は、上記現像により得られたパターンを加熱する加熱工程に供されてもよい。
すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、現像工程により得られたパターンを加熱する加熱工程を含んでもよい。
また、本発明の硬化物の製造方法は、現像工程を行わずに他の方法で得られたパターン、又は、膜形成工程により得られた膜を加熱する加熱工程を含んでもよい。
加熱工程において、樹脂Bは環化してポリイミドとなる。
また、樹脂B、又は樹脂B以外の架橋剤における未反応の架橋性基の架橋なども進行する。
加熱工程における加熱温度(最高加熱温度)としては、50~450℃が好ましく、150~350℃がより好ましく、150~250℃が更に好ましく、160~250℃が一層好ましく、160~230℃が特に好ましい。
【0292】
加熱工程は、加熱により、上記塩基発生剤から発生した塩基等の作用により、上記パターン内で上記樹脂Bの環化反応を促進する工程であることが好ましい。
加熱工程における加熱は、例えば、国際公開第2023/190064号の段落0327~0332に記載の方法により行うことができる。上記記載は本願明細書に組み込まれる。
【0293】
<金属層形成工程>
現像工程により得られたパターン(加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方に供されたものが好ましい)は、パターン上に金属層を形成する金属層形成工程に供されてもよい。
すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、現像工程により得られたパターン(加熱工程及び現像後露光工程少なくとも一方に供されたものが好ましい)上に金属層を形成する金属層形成工程を含むことが好ましい。
【0294】
金属層としては、特に限定なく、既存の金属種を使用することができ、銅、アルミニウム、ニッケル、バナジウム、チタン、クロム、コバルト、金、タングステン、錫、銀及びこれらの金属を含む合金が例示され、銅及びアルミニウムがより好ましく、銅が更に好ましい。
【0295】
金属層の形成方法は、特に限定なく、既存の方法を適用することができる。例えば、特開2007-157879号公報、特表2001-521288号公報、特開2004-214501号公報、特開2004-101850号公報、米国特許第7888181B2、米国特許第9177926B2に記載された方法を使用することができる。例えば、フォトリソグラフィ、PVD(物理蒸着法)、CVD(化学気相成長法)、リフトオフ、電解めっき、無電解めっき、エッチング、印刷、及びこれらを組み合わせた方法などが考えられる。より具体的には、スパッタリング、フォトリソグラフィ及びエッチングを組み合わせたパターニング方法、フォトリソグラフィと電解めっきを組み合わせたパターニング方法が挙げられる。めっきの好ましい態様としては、硫酸銅やシアン化銅めっき液を用いた電解めっきが挙げられる。
【0296】
金属層の厚さとしては、最も厚肉の部分で、0.01~50μmが好ましく、1~10μmがより好ましい。
【0297】
<用途>
本発明の硬化物の製造方法、又は、硬化物の適用可能な分野としては、電子デバイスの絶縁膜、再配線層用層間絶縁膜、ストレスバッファ膜などが挙げられる。そのほか、封止フィルム、基板材料(フレキシブルプリント基板のベースフィルムやカバーレイ、層間絶縁膜)、又は上記のような実装用途の絶縁膜をエッチングでパターン形成することなどが挙げられる。これらの用途については、例えば、サイエンス&テクノロジー(株)「ポリイミドの高機能化と応用技術」2008年4月、柿本雅明/監修、CMCテクニカルライブラリー「ポリイミド材料の基礎と開発」2011年11月発行、日本ポリイミド・芳香族系高分子研究会/編「最新ポリイミド 基礎と応用」エヌ・ティー・エス,2010年8月等を参照することができる。
【0298】
本発明の硬化物の製造方法、又は、本発明の硬化物は、オフセット版面又はスクリーン版面などの版面の製造、成形部品のエッチングへの使用、エレクトロニクス、特に、マイクロエレクトロニクスにおける保護ラッカー及び誘電層の製造などにも用いることもできる。
【0299】
(積層体、及び、積層体の製造方法)
本発明の積層体とは、本発明の硬化物からなる層を複数層有する構造体をいう。
積層体は、硬化物からなる層を2層以上含む積層体であり、3層以上積層した積層体としてもよい。
上記積層体に含まれる2層以上の上記硬化物からなる層のうち、少なくとも1つが本発明の硬化物からなる層であり、硬化物の収縮、又は、上記収縮に伴う硬化物の変形等を抑制する観点からは、上記積層体に含まれる全ての硬化物からなる層が本発明の硬化物からなる層であることも好ましい。
【0300】
すなわち、本発明の積層体の製造方法は、本発明の硬化物の製造方法を含むことが好ましく、本発明の硬化物の製造方法を複数回繰り返すことを含むことがより好ましい。
【0301】
本発明の積層体は、本発明の硬化物からなる層を2層以上含み、上記硬化物からなる層同士のいずれかの間に金属層を含む態様が好ましい。上記金属層は、上記金属層形成工程により形成されることが好ましい。
すなわち、本発明の積層体の製造方法は、複数回行われる硬化物の製造方法の間に、硬化物からなる層上に金属層を形成する金属層形成工程を更に含むことが好ましい。金属層形成工程の好ましい態様は上述の通りである。
上記積層体としては、例えば、第一の硬化物からなる層、金属層、第二の硬化物からなる層の3つの層がこの順に積層された層構造を少なくとも含む積層体が好ましいものとして挙げられる。
上記第一の硬化物からなる層及び上記第二の硬化物からなる層は、いずれも本発明の硬化物からなる層であることが好ましい。上記第一の硬化物からなる層の形成に用いられる樹脂組成物と、上記第二の硬化物からなる層の形成に用いられる樹脂組成物とは、組成が同一の組成物であってもよいし、組成が異なる組成物であってもよい。本発明の積層体における金属層は、再配線層などの金属配線として好ましく用いられる。
【0302】
<積層工程>
本発明の積層体の製造方法は、積層工程を含むことが好ましい。
積層工程とは、パターン(樹脂層)又は金属層の表面に、再度、(a)膜形成工程(層形成工程)、(b)露光工程、(c)現像工程、(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方を、この順に行うことを含む一連の工程である。ただし、(a)膜形成工程および(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方を繰り返す態様であってもよい。また、(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方の後には(e)金属層形成工程を含んでもよい。積層工程には、更に、上記乾燥工程等を適宜含んでいてもよいことは言うまでもない。
【0303】
積層工程後、更に積層工程を行う場合には、上記露光工程後、上記加熱工程の後、又は、上記金属層形成工程後に、更に、表面活性化処理工程を行ってもよい。表面活性化処理としては、プラズマ処理が例示される。表面活性化処理の詳細については後述する。
【0304】
上記積層工程は、2~20回行うことが好ましく、2~9回行うことがより好ましい。
例えば、樹脂層/金属層/樹脂層/金属層/樹脂層/金属層のように、樹脂層を2層以上20層以下とする構成が好ましく、2層以上9層以下とする構成が更に好ましい。
上記各層はそれぞれ、組成、形状、膜厚等が同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0305】
本発明では特に、金属層を設けた後、更に、上記金属層を覆うように、上記樹脂組成物の硬化物(樹脂層)を形成する態様が好ましい。具体的には、(a)膜形成工程、(b)露光工程、(c)現像工程、(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方、(e)金属層形成工程、の順序で繰り返す態様、又は、(a)膜形成工程、(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方、(e)金属層形成工程の順序で繰り返す態様が挙げられる。樹脂組成物層(樹脂層)を積層する積層工程と、金属層形成工程を交互に行うことにより、樹脂組成物層(樹脂層)と金属層を交互に積層することができる。
【0306】
(表面活性化処理工程)
本発明の積層体の製造方法は、上記金属層および樹脂組成物層の少なくとも一部を表面活性化処理する、表面活性化処理工程を含むことが好ましい。
表面活性化処理工程は、通常、金属層形成工程の後に行うが、上記現像工程の後(好ましくは、加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方の後)、樹脂組成物層に表面活性化処理工程を行ってから、金属層形成工程を行ってもよい。
表面活性化処理は、金属層の少なくとも一部のみに行ってもよいし、露光後の樹脂組成物層の少なくとも一部のみに行ってもよいし、金属層および露光後の樹脂組成物層の両方について、それぞれ、少なくとも一部に行ってもよい。表面活性化処理は、金属層の少なくとも一部について行うことが好ましく、金属層のうち、表面に樹脂組成物層を形成する領域の一部または全部に表面活性化処理を行うことが好ましい。このように、金属層の表面に表面活性化処理を行うことにより、その表面に設けられる樹脂組成物層(膜)との密着性を向上させることができる。
表面活性化処理は、露光後の樹脂組成物層(樹脂層)の一部または全部についても行うことが好ましい。このように、樹脂組成物層の表面に表面活性化処理を行うことにより、表面活性化処理した表面に設けられる金属層や樹脂層との密着性を向上させることができる。特にネガ型現像を行う場合など、樹脂組成物層が硬化されている場合には、表面処理によるダメージを受けにくく、密着性が向上しやすい。
表面活性化処理は、例えば、国際公開第2021/112189号の段落0415に記載の方法により実施することができる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0307】
(半導体デバイス及びその製造方法)
本発明は、本発明の硬化物、又は、積層体を含む半導体デバイスも開示する。
また、本発明は、本発明の硬化物の製造方法、又は、積層体の製造方法を含む半導体デバイスの製造方法も開示する。
樹脂組成物を再配線層用層間絶縁膜の形成に用いた半導体デバイスの具体例としては、特開2016-027357号公報の段落0213~0218の記載及び
図1の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【実施例0308】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。「部」、「%」は特に述べない限り、質量基準である。
【0309】
<ポリマーの合成>
〔合成例P-1:樹脂(P-1)の合成〕
4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)93.07g、及び、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)62.04gをセパラブルフラスコに入れ、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)134.0g及びγ-ブチロラクトン400mLを加えた。室温下で撹拌しながら、ピリジン79.1gを加えることにより、反応混合物を得た。反応による発熱の終了後、室温まで放冷し、更に16時間静置した。
次に、氷冷下において、反応混合物に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)206.3gをγ-ブチロラクトン180mLに溶解した溶液を、撹拌しながら40分かけて加えた。続いて、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル96.0gをγ-ブチロラクトン350mLに懸濁した懸濁液を、撹拌しながら60分かけて加えた。更に室温(23℃)で2時間撹拌した後、エチルアルコール30mLを加えて1時間撹拌した。その後、γ-ブチロラクトン400mLを加えた。反応混合物に生じた沈殿物を、ろ過により取得し、反応液を得た。
得られた反応液を3Lのエチルアルコールに加えて、粗ポリマーからなる沈殿物を生成した。生成した粗ポリマーを濾取し、テトラヒドロフラン1.5Lに溶解して粗ポリマー溶液を得た。得られた粗ポリマー溶液を28Lの水に滴下してポリマーを沈殿させ、得られた沈殿物を濾取した後に真空乾燥することにより、粉末状の樹脂P-1を得た。樹脂P-1は、下記式(P-1)で表される繰返し単位を含む構造であることを1H-NMRにより確認した。樹脂P-1の重量平均分子量、イミド化率、エステル化率、アミン価、酸価は後述の表に記載した。括弧に添えた記号A及びBは、それぞれ各構造の含有モル比を表し、値は後述の表に記載した。
【0310】
〔重量平均分子量の測定方法〕
以上及び以下の合成例において、特に記載しない限り、重量平均分子量及び数平均分子量は以下の方法で測定した。
高速GPC装置HLC-8420GPC(東ソー(株)製)を用い、ガードカラムとして、TSK gurdcolumn Super AW-H(4.6mm×35mm)、カラムとして、TSKgel Super AWM-H(4.6mm×150mm)2本を直列に連結してGPC測定を行った。溶離液としては、0.01mol/LのリチウムブロマイドのNMP(N-メチル-2-ピロリドン)溶液を用いた。
【0311】
〔イミド化率の測定方法〕
各樹脂をγ-ブチロラクトンに溶解させ、2,000mPa・sになるよう希釈し、スピンコート法でシリコンウエハ上に適用して樹脂層を形成した。得られた樹脂層を適用したシリコンウエハをホットプレート上で、110℃で5分間乾燥し、シリコンウエハ上に製膜後の膜厚が約15μmの均一な厚さの樹脂層を得た。
上記樹脂層をNicoletiS20(Thermofisher社製)でATR法にて測定し、測定範囲4000~700cm-1、測定回数50回で測定を行った。1380cm-1付近(1350~1450cm-1、複数ピークがある場合はピーク強度が最大のもの)のピーク高さと1500cm-1付近(1460~1550cm-1、複数ピークがある場合はピーク強度が最大のもの)のピーク高さで割った値を樹脂のイミド化指数Aとし、窒素雰囲気下で10℃/分の昇温速度で昇温し350℃で1時間加熱した膜について、同様の方法でイミド化指数Bを算出し、イミド化指数Aをイミド化指数Bで割った値を樹脂のイミド化率として算出した。
【0312】
〔エステル化率の定量方法〕
各実施例又は比較例で使用した樹脂について、エステル化率を下記方法により測定した。
樹脂0.09gを0.9gのDMSO-d6(ジメチルスルホキシド-d6)に溶解し、1H-NMRを測定し、樹脂中のアミック酸構造及びアミック酸エステル構造の合計モル量に対する、アミック酸エステル構造の含有量(エステル化率)を算出した。
【0313】
〔酸価の定量方法〕
各実施例又は比較例で使用した樹脂について、酸価を下記方法により測定した。
0.30gの樹脂をNMP80mLに溶解させた後、水5mLを添加して測定溶液を作製した。その溶液を0.01N(0.01mol/L)水酸化カリウム(KOH)水溶液で滴定して中和点を検出することにより、樹脂の酸価を測定した。
各樹脂の測定結果は、表中の「樹脂酸価(mmol/g)」の欄に記載した。
【0314】
〔アミン価の定量方法〕
各実施例又は比較例で使用した樹脂について、アミン価を下記方法により測定した。
0.60gの樹脂をジグリム50mLに溶解させた後、酢酸10mLを添加して測定溶液を作製した。その溶液を0.01N(0.01mol/L)過塩素酸の酢酸溶液で滴定して中和点を検出することにより、樹脂のアミン価を測定した。
各樹脂の測定結果は、表中の「アミン価(mmol/g)」の欄に記載した。
【0315】
〔特定構造含有量の定量方法〕
樹脂組成物中の下記特定構造の含有量は、下記方法により測定した。
【化85】
式(1)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、炭素数3~6の飽和脂肪族炭化水素基、または、炭素数1~10のアルキル基で置換されてもよいフェニル基を表し、X
1は酸素原子または硫黄原子を表し、L
1は-C(=O)-、または、-S(=O)
2-を表し、*
1及び*
2は、それぞれ独立に、他の構造との結合部位を表し、R
1、R
2、*
1に結合する構造、及び、*
2に結合する構造のうち少なくとも2つが結合して環構造を形成してもよい。
各実施例又は比較例で使用した樹脂をd6-DMSOにて
1H-NMR解析することにより、樹脂中に含まれる上記特定構造の含有量を定量した。下記表に記載の各成分において、溶剤以外の成分の合計量を全固形分と定義し、また、上記特定構造は上記樹脂成分中にのみ含まれると仮定し、上記で定量した樹脂中の特定構造含有量と全固形分中の樹脂の含有量の関係から、全固形分中の特定構造の含有量を算出した。
測定結果は、表中の「特定構造含有量(mmol/g)」の欄に記載した。
【化86】
【0316】
〔合成例P-2~P-37:樹脂(P-2)~(P-44)の合成〕
合成例P-1において使用する原料の酸無水物、ジアミンの種類、仕込み比率を適宜変更した以外は樹脂(P-1)と同様の方法で樹脂(P-2)~(P-44)を合成した。また、樹脂(P-3)の合成においては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)をジイソプロピルカルボジイミドに変更した。樹脂(P-2)~(P-44)は、それぞれ、下記式(P-2)~(P-44)で表される繰返し単位を有する樹脂である。下記構造中、括弧に添えた記号はそれぞれ後述の表に記載の値であり、各構造の含有モル比を表す。各繰返し単位の構造は、
1H-NMRスペクトルから決定した。また、これらの樹脂の重量平均分子量(Mw)、イミド化率、エステル化率、酸価、アミン価、特定構造含有量については後述する表に記載した。
構造が同一であってMw、イミド化率、エステル化率、酸価、アミン価、特定構造含有量が異なる樹脂は、使用原料の添加量、HEMAを加えた後の反応温度、反応時間、及び、ジアミンを加えた後の反応温度、反応時間を適宜変更することにより得られた。例えば、HEMAを加えた後の反応温度を5℃とすることで、P-5のようなエステル化率88%の樹脂が得られる。また、ジアミンを加えた後の反応温度を40℃とすることで、P-16のようなイミド化率が35%である樹脂が得られる。
【化87】
【化88】
【化89】
【化90】
【化91】
【化92】
【化93】
【化94】
【化95】
【化96】
【化97】
【化98】
【化99】
【0317】
【0318】
<実施例及び比較例>
実施例及び比較例に用いた樹脂組成物は、それぞれ、下記表に記載の成分を混合することで得た。具体的には、表に記載の各成分の含有量は、表の各欄の「質量部」の欄に記載の量(質量部)とした。得られた樹脂組成物及び比較用組成物を、孔径0.8μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルタを用いて加圧ろ過した。
各樹脂組成物の評価結果は後述する表の通りであった。
【0319】
【0320】
【0321】
【0322】
【0323】
【0324】
〔樹脂〕
・P-1~P-44:上記で合成した樹脂(P-1)~(P-44)
【0325】
〔アニリン化合物〕
・B-1:N-フェニルジエタノールアミン
・B-2:下記構造の化合物
・B-3:下記構造の化合物
【化100】
【0326】
〔重合性化合物〕
・C-1:NKエステル4G(新中村化学工業(株)製
・C-2:NKエステルTMPT(新中村化学工業(株)製)
・C-3:ジペンタエリトリトールヘキサアクリラート(TCI社製)
・C-4:下記構造の化合物
・C-5:下記構造の化合物
【化101】
【0327】
〔光重合開始剤〕
・D-1:下記構造の化合物
・D-2:IRGACURE OXE 01(BASF社製)
・D-3:下記構造の化合物
・D-4:下記構造の化合物
【化102】
【0328】
〔増感剤〕
・E-1:下記構造の化合物
・E-2:下記構造の化合物
【化103】
【0329】
〔酸化防止剤〕
・F-1:下記構造の化合物
・F-2:下記構造の化合物
・F-3:下記構造の化合物
・F-4:下記構造の化合物
【化104】
【0330】
〔金属接着性改良剤〕
・G-1:下記構造の化合物
・G-2:下記構造の化合物
【化105】
【0331】
〔マイグレーション抑制剤〕
・H-1:下記構造の化合物
・H-2:下記構造の化合物
・H-3:下記構造の化合物
・H-4:下記構造の化合物
【化106】
【0332】
〔金属錯体〕
・I-1:下記構造の化合物(ただし、iPrはイソプロピル基を表す)
・I-2:下記構造の化合物
【化107】
【0333】
〔熱塩基発生剤〕
・J-1:下記構造の化合物
・J-2:下記構造の化合物
・J-3:下記構造の化合物
【化108】
【0334】
〔ウレア化合物〕
・U-1:1,3-ジシクロヘキシルウレア
・U-2:1,3-ジイソプロピルウレア
【0335】
〔溶剤〕
・L-1:γ-バレロラクトン
・L-2:乳酸エチル
・L-3:ジメチルスルホキシド
・L-4:γ-ブチロラクトン
・L-5:N-メチル-2-ピロリドン
・L-6:3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド
・L-7:3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド
【0336】
<硬化物の物性の測定>
〔ヤング率測定〕
各実施例及び比較例において、それぞれ、各樹脂組成物又は比較用組成物を、シリコンウエハ上にスピンコート法により層状に適用して、組成物層を形成した。
得られた組成物層を適用したシリコンウエハをホットプレート上で、100℃で5分間乾燥し、シリコンウエハ上に厚さ15μmの樹脂組成物層とした。シリコンウエハ上の樹脂組成物層を、ブロードバンド露光機(ウシオ電機株式会社製:UX-1000SN-EH01)を用いて、表の「露光量(mJ/cm2)」に記載の露光量で露光し、露光した樹脂組成物層を、窒素雰囲気下で、5℃/分の昇温速度で昇温し、表の「キュア条件」の欄に記載の条件において加熱した。硬化後の樹脂層を3質量%フッ化水素酸溶液に浸漬し、シリコンウエハから樹脂層を剥離し、樹脂膜を得た。
得られた樹脂膜のヤング率を引張り試験機(インストロン社製モデル5965)を用いてクロスヘッドスピード300mm/分、幅2mm、試料長30mmの試料として試料の長手方向について、23℃、50%RHの環境下にてJIS-K7127:1999に準拠してヤング率値を測定した。試料は打ち抜き機を用いて作製した。評価は5回行い算術平均値を用いた。結果を表の「ヤング率(GPa)」の欄に示す。
【0337】
<評価>
〔加熱サイクル試験を繰り返した後の密着性評価〕
実施例及び比較例において調製した樹脂組成物又は比較用組成物を、それぞれ、銅基板上にスピンコート法により層状に適用して、樹脂組成物層又は比較用組成物層を形成した。得られた樹脂組成物層又は比較用組成物層を形成した銅基板をホットプレート上で、100℃で5分間乾燥し、銅基板上に20μmの均一な厚さの樹脂組成物層又は比較用組成物層とした。銅基板上の樹脂組成物層又は比較用組成物層を、ステッパー(Nikon NSR 2005 i9C)を用いて、表の「露光量(mJ/cm2)」に記載の露光量で100μm四方の正方形状の非マスク部が形成されたフォトマスクを使用してi線により露光し、その後シクロペンタノンで60秒間現像し、さらに、PGMEAで30秒間リンスすることで、100μm四方の正方形状の樹脂層を得た。さらに、窒素雰囲気下で表の「キュア条件」の欄に記載の条件において加熱して樹脂層を形成した。
次に、得られた樹脂層を有する銅基板に対し、下記条件1の耐湿試験と、条件2の加熱プロセスを交互に3回ずつ繰り返した。
条件1(耐湿試験)
・130℃、85%相対湿度(RH)、96時間
条件2(加熱プロセス)
・175℃、50%相対湿度(RH)、96時間
上記試験後の基板上の樹脂層を光学顕微鏡で観察し、クラックの有無を判定した。観察は1か所あたり1cm四方の領域において行い、計10か所を観察した。観察結果について、下記評価基準に従って評価を行った。
(評価基準)
A:10か所いずれもクラックは観察されなかった。
B:1か所から5か所でクラックが観察された。
C:6か所から9か所でクラックが観察された。
D:10か所全てクラックが観察された。
【0338】
〔解像性の評価〕
各実施例又は比較例で調製した樹脂組成物又は比較用組成物を、表面に銅薄層が形成された樹脂基材の銅薄層の表面にスピンコート法により層状に適用して、110℃で5分間乾燥し、製膜後の膜厚が4μmの樹脂組成物層を形成した後、得られた樹脂組成物層を、0.5~10μmまで0.5μm刻みのパターンが形成されたスクエアビアマスクを用いて、i線ステッパー(Canon社製:FPA-3000i5、NA=0.5、σ=0.7)を使用して100~800mJ/cm2の範囲で50mJ/cm2刻みの各露光量で露光した。続いてシクロペンタノンで未露光部が除去されるまで現像し、PGMEAで30秒間リンスし、さらに窒素雰囲気下で10℃/分の昇温速度で昇温し、表の「キュア条件」の欄に記載の条件において加熱した。
得られた硬化物の最小開口マスク径を走査型顕微鏡S-4800(日立ハイテクノロジーズ製)で開口パターン部の断面観察により判定し、下記の評価基準に従って評価した。最小開口マスク径は、上記の各露光量のうち、少なくとも1つの露光量で開口パターンが形成されたマスク径のうち、最小のものとした。また、400mJ/cm2で露光した際の現像前後の膜厚より残膜率(%、現像後の膜厚/現像前の膜厚×100)を算出した。残膜率が80%未満となる場合、開口マスクサイズによらず、再配線層を形成する上で好ましくない。
(評価基準)
A:最小開口マスク径が3μm以下であり、かつ現像残膜率が90%以上であった。
B:最小開口マスク径が3μmを超え4μm以下であり、かつ現像残膜率が90%以上であった。
C:最小開口マスク径が4μmを超え5μm以下であり、かつ現像残膜率が90%以上であった。
D:最小開口マスク径が5μmを超えるか、現像残膜率が80%未満であった。
【0339】
〔耐薬品性〕
各実施例又は比較例で調製した樹脂組成物又は比較用組成物を、それぞれ、シリコンウエハ上にスピンコート法により層状に適用して、110℃で5分間乾燥し、製膜後の膜厚が15μmの樹脂組成物層を形成した。次いで、樹脂組成物層に対し、ブロードバンド露光機(ウシオ電機株式会社製:UX-1000SN-EH01)を使用して、表の「露光量(mJ/cm2)」に記載の露光量で全面露光を行った。次いで、クリーンオーブン(Koyo製、CLH-21)を用いてN2雰囲気下で表の「キュア条件」の欄に記載の条件において加熱処理を行い、樹脂組成物又は比較用組成物の硬化膜を得た。得られた硬化膜について下記の薬品に下記の浸漬条件で浸漬し、浸漬前後の膜厚より残膜率(浸漬後膜厚/浸漬前膜厚×100(%))を算出した。下記評価基準に従い評価を行い、評価結果を「薬品耐性」の欄に記載した。残膜率が高いほど、耐薬品性に優れているといえる。
・薬品:ジメチルスルホキシド(DMSO)と2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液の90:10の混合物
・浸漬条件:60℃で30分
-評価基準-
A:上記残膜率が95%以上であった。
B:上記残膜率が80%以上95%未満であった。
【0340】
〔製膜性〕
各実施例又は比較例で調製した樹脂組成物又は比較用組成物を、それぞれ、温度23℃、湿度50%の環境下において、シリコンウエハ上にスピンコート法により3000rpmで塗布し、スピンコート直後および、スピンコート後に5分間静置した後の膜面を目視により観察し、下記の評価基準に従って評価した。評価結果は表の「製膜性」の欄に記載した。
-評価基準-
A:スピンコート直後、および静置後に、膜の白濁が観察されなかった。
B:スピンコート直後に膜の白濁が観察されなかったが、静置後に膜の白濁が観察された。
【0341】
〔保存安定性〕
各実施例又は比較例で調製した樹脂組成物又は比較用組成物を、23℃の恒温槽で168時間保管したときの沈殿の発生有無および粘度変化率=|((保管後の粘度/保管前の粘度)×100)|を下記の評価基準に従って評価した。粘度測定はTV-100E形粘度計(東機産業製)を用いて23℃の条件下で行った。評価結果は表の「保存安定性」の欄に記載した。
-評価基準-
A: 粘度変化率が2%未満であり、沈殿は観察されなかった。
B: 粘度変化率が2%以上5%未満であり、沈殿は観察されなかった。
C: 粘度変化率が5%以上10%未満であり、沈殿は観察されなかった。
【0342】
以上の結果から、本発明に係る樹脂組成物を用いることにより繰り返しの耐湿試験後のクラック発生が抑制されることが分かる。これと比較して、樹脂が特定のビフェニル構造を有さない場合、硬化物が含窒素複素環化合物を有さない場合、あるいは、硬化物のヤング率が既定の範囲を外れる場合、繰り返しの耐湿試験後のクラック発生が著しく劣ることが分かる。
【0343】
また、本発明に係る樹脂組成物を用いることにより、絶縁性、破断伸び、残留応力、耐湿信頼性、に優れる硬化膜が得られた。