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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025151127
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】リサイクル原料の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/04 20060101AFI20251002BHJP
【FI】
C22B1/04
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024052388
(22)【出願日】2024-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相馬 悠紀
(72)【発明者】
【氏名】武田 翼
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA01
4K001AA04
4K001AA09
4K001AA41
4K001BA01
4K001BA22
4K001BA23
4K001CA11
4K001GA07
4K001GA19
(57)【要約】
【課題】 補助燃料の使用をできるだけ抑えつつ、非鉄製錬炉でリサイクル原料をできるだけ多く処理することができるリサイクル原料の処理方法を提供する。
【解決手段】 非鉄金属鉱石および非鉄金属マットの少なくともいずれか一方を含む製錬原料とともに非鉄製錬炉で処理するためのリサイクル原料の処理方法であって、前記リサイクル原料を前処理として焼却処理する際に、前記非鉄製錬炉の熱バランスとして前記製錬原料の酸化熱が不足しないように、前記焼却処理後の前記リサイクル原料の発熱量が所定の発熱量の範囲になるように管理することを特徴とする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非鉄金属鉱石および非鉄金属マットの少なくともいずれか一方を含む製錬原料とともに非鉄製錬炉で処理するためのリサイクル原料の処理方法であって、
前記リサイクル原料を前処理として焼却処理する際に、前記非鉄製錬炉の熱バランスとして前記製錬原料の酸化熱が不足しないように、前記焼却処理後の前記リサイクル原料の発熱量が所定の発熱量の範囲になるように管理することを特徴とするリサイクル原料の処理方法。
【請求項2】
前記焼却処理を行う炉として、キルン炉、ストーカ炉、またはキルンストーカ炉を用いることを特徴とする請求項1に記載のリサイクル原料の処理方法。
【請求項3】
前記焼却処理を行う炉の空気導入量を、前記焼却処理を行う炉に装入する前記リサイクル原料の炭素と水素を完全に焼却するに必要な空気量で割ることにより算出される空気比と、その空気比における焼却処理後リサイクル原料の発熱量との相関を求め、このグラフの相関を基に前記焼却処理を行う炉の空気導入量を調整し、必要な焼却処理後のリサイクル原料の発熱量を調整する、請求項2に記載のリサイクル原料の処理方法。
【請求項4】
前記キルンストーカ炉において、
キルン炉の空気導入量を、前記キルンストーカ炉に装入する前記リサイクル原料の炭素と水素を完全に焼却するに必要な空気量で割ることにより算出される空気比と、当該空気比における焼却処理後リサイクル原料の発熱量と、の相関1を求め、
ストーカ炉の空気導入量を、前記キルンストーカ炉に装入する前記リサイクル原料の炭素と水素を完全に焼却するに必要な空気量で割ることにより算出される空気比と、その空気比における焼却処理後リサイクル原料の発熱量と、の相関2を求め、
相関1と相関2を対比して、空気比に対する焼却処理後リサイクル原料の発熱量との変化が大きい方の炉を決定し、
該決定した炉の空気比を優先して決定する、請求項3に記載のリサイクル原料の処理方法。
【請求項5】
前記キルンストーカ炉で前記リサイクル原料を焼却処理する際、キルン炉の入口温度を750℃以下に管理し、前記キルン炉の出口温度を1000℃以下に管理することを特徴とする請求項2に記載のリサイクル原料の処理方法。
【請求項6】
前記キルン炉の入口温度を750℃以下に管理するために、前記リサイクル原料への散水量、前記キルンストーカ炉に供給する空気量、前記キルンストーカ炉への前記リサイクル原料の投入速度、および前記キルン炉の回転数の少なくともいずれか調整することを特徴とする請求項5に記載のリサイクル原料の処理方法。
【請求項7】
前記キルン炉の出口温度を1000℃以下に管理するために、前記リサイクル原料への散水量、前記キルンストーカ炉に供給する空気量、前記キルンストーカ炉への前記リサイクル原料の投入速度、および前記キルン炉の回転数の少なくともいずれか調整することを特徴とする請求項5に記載のリサイクル原料の処理方法。
【請求項8】
前記キルンストーカ炉のストーカ炉で、火格子の温度を、火格子の耐熱温度を下回るように調整する操作を行うことを特徴とする請求項5に記載のリサイクル原料の処理方法。
【請求項9】
前記非鉄金属が銅であり、前記非鉄製錬炉が銅製錬炉である請求項1に記載のリサイクル原料の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、リサイクル原料の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂材料を含む基板のように有機物を含む不純物を含むリサイクル原料は、非鉄製錬炉で処理する前に減容化するために前処理として焼却処理された後、非鉄製錬炉に投入される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-222288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リサイクル原料は、非鉄製錬炉で溶融処理され、リサイクル原料に含まれる有価金属がマットに溶解することで回収されている。リサイクル原料は、樹脂を材料とする基板などの有機物を含むため、燃料成分としての役割も果たす。したがって、重油などの補助燃料の使用を抑制することができる。しかしながら、リサイクル原料は、減容化するための前処理として焼却処理された後に、非鉄製錬炉内に投入される。焼却処理においては、燃料成分が焼却によって燃焼してしまい、非鉄製錬炉で熱補償が必要となるおそれがある。
【0005】
本件は上記に鑑み、補助燃料の使用をできるだけ抑えつつ、非鉄製錬炉でリサイクル原料をできるだけ多く処理することができる、リサイクル原料の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るリサイクル原料の処理方法は、非鉄金属鉱石および非鉄金属マットの少なくともいずれか一方を含む製錬原料とともに非鉄製錬炉で処理するためのリサイクル原料の処理方法であって、前記リサイクル原料を前処理として焼却処理する際に、前記非鉄製錬炉の熱バランスとして前記製錬原料の酸化熱が不足しないように、前記焼却処理後の前記リサイクル原料の発熱量が所定の発熱量の範囲になるように管理することを特徴とする。
【0007】
前記焼却処理を行う炉として、キルン炉、ストーカ炉、またはキルンストーカ炉を用いてもよい。前記キルンストーカ炉の空気導入量を、キルンストーカ炉に装入する前記リサイクル原料の炭素と水素を完全に焼却するに必要な空気量で割ることにより算出される空気比と、その空気比における焼却処理後リサイクル原料の発熱量との相関を求め、このグラフの相関を基に前記キルンストーカ炉の空気導入量を調整し、必要な焼却処理後のリサイクル原料の発熱量を調整してもよい。前記キルンストーカ炉において、キルン炉の空気導入量を、前記キルンストーカ炉に装入する前記リサイクル原料の炭素と水素を完全に焼却するに必要な空気量で割ることにより算出される空気比と、当該空気比における焼却処理後リサイクル原料の発熱量と、の相関1を求め、ストーカ炉の空気導入量を、前記キルンストーカ炉に装入する前記リサイクル原料の炭素と水素を完全に焼却するに必要な空気量で割ることにより算出される空気比と、その空気比における焼却処理後リサイクル原料の発熱量と、の相関2を求め、相関1と相関2を対比して、空気比に対する焼却処理後リサイクル原料の発熱量との変化が大きい方の炉を決定し、該決定した炉の空気比を優先して決定してもよい。前記キルンストーカ炉で前記リサイクル原料を焼却処理する際、キルン炉の入口温度を750℃以下に管理し、前記キルン炉の出口温度を1000℃以下に管理してもよい。前記キルン炉の入口温度を750℃以下に管理するために、前記リサイクル原料への散水量、前記キルンストーカ炉に供給する空気量、前記キルンストーカ炉への前記リサイクル原料の投入速度、および前記キルン炉の回転数の少なくともいずれか調整してもよい。前記キルン炉の出口温度を1000℃以下に管理するために、前記リサイクル原料への散水量、前記キルンストーカ炉に供給する空気量、前記キルンストーカ炉への前記リサイクル原料の投入速度、および前記キルン炉の回転数の少なくともいずれか調整してもよい。前記キルンストーカ炉のストーカ炉で、火格子の温度を、火格子の耐熱温度を下回るように調整する操作を行ってもよい。前記非鉄金属が銅であり、前記非鉄製錬炉が銅製錬炉であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、補助燃料の使用をできるだけ抑えつつ、非鉄製錬炉でリサイクル原料をできるだけ多く処理することができるリサイクル原料の処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】銅製錬用の自溶炉の構成を概略的に示す図である。
図2】(a)はリサイクル原料の処理方法に用いられる焼却炉の模式図であり、(b)はロータリーキルンの鏡部の側面図である。
図3】カロリーの計算を例示する図である。
図4】カロリーの計算を例示する図である。
図5】焼却後のリサイクル原料の発熱量と空気比との関係を例示する図である。
図6】焼却後のリサイクル原料の発熱量と空気比との関係を例示する図である。
図7】焼却後のリサイクル原料の発熱量と空気比との関係を例示する図である。
図8】焼却後のリサイクル原料の発熱量と空気比との関係を例示する図である。
図9】焼却後のリサイクル原料の発熱量と空気比との関係を例示する図である。
図10】焼却後のリサイクル原料カロリーの予測値と実測値の関係を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための実施形態について説明する。
【0011】
(実施形態)
図1は、非鉄製錬炉の一例として、銅製錬用の自溶炉100の構成を概略的に示す図である。図1に示すように、自溶炉100は、製錬原料と、リサイクル原料と、反応用ガスとが混合される反応シャフト1、セットラ2、アップテイク3を備える。反応シャフト1の天井部には、精鉱バーナ4が備わっている。精鉱バーナ4は、製錬原料と、リサイクル原料と、反応用ガスとを混合させながら反応シャフト1内に投入する。反応用ガスは、空気または酸素富化空気である。
【0012】
製錬原料は、CuFeSなどを銅精鉱として含み、珪酸鉱を溶剤として含む。この場合、精鉱バーナ4から製錬原料が反応シャフト1内に投入されると、下記反応式(1)などにより、銅精鉱が酸化反応を起こし、図1で例示するように、反応シャフト1の底部でマット5およびスラグ6に分離する。なお、下記反応式(1)で、CuS・FeSがマット5の主成分に相当し、FeO・SiOがスラグ6の主成分に相当する。
CuFeS+SiO+O→CuS・FeS+FeO・SiO+SO + 反応熱 (1)
【0013】
また、製錬原料には、煙灰やカラミ、またはCuを含む排水などを中和して得られた銅滓などの沈殿物、などを繰り返し物として含んでいる。これらの繰り返し物の発熱量は非常に少なくなっているか、または吸熱反応となる。または、繰り返し物を溶融させるために、むしろ熱を必要とすることもある。したがって、製錬原料に含まれる繰り返し量が多い場合には、製錬原料を溶融するために通常よりも発熱量を多く要することがある。また、銅精鉱に含まれるS/Cu比の変動に応じて、銅精鉱由来の発熱量が変動することもある。
【0014】
反応シャフト1内で発熱量が不足する場合には、熱補償するための重油などの補助燃料を用いることがある。しかしながら、補助燃料の使用量はできるだけ抑えることが望まれている。補助燃料は、リサイクル原料以外の燃料成分のことである。
【0015】
リサイクル原料は、反応シャフト1で溶融処理され、リサイクル原料に含まれる有価金属がマット5に溶解することで回収されている。リサイクル原料は、樹脂を材料とする基板などの有機物を含むため、反応シャフト1では燃料成分としての役割も果たす。したがって、製錬原料とともにリサイクル原料を反応シャフト1内に投入することで、重油などの補助燃料の使用を抑制することができる。
【0016】
しかしながら、リサイクル原料は、減容化するための前処理として焼却処理された後に、反応シャフト1内に投入される。この焼却処理においては、燃料成分が焼却によって燃焼してしまう。したがって、焼却処理でリサイクル原料を焼却しすぎると、反応シャフト1における燃料成分の量が不足し、熱補償が必要となるおそれがある。
【0017】
今後の非鉄製錬では、自溶炉100に投入するリサイクル原料の比率が多くなることが予想されている。リサイクル原料の比率が多くなると、反応シャフト1における熱バランスにおいて、リサイクル原料に含まれる燃料成分量の影響が大きくなる。したがって、リサイクル原料に含まれる成分量の管理が重要となってくる。
【0018】
そこで、本実施形態においては、補助燃料の使用をできるだけ抑えつつ、非鉄製錬炉でリサイクル原料をできるだけ多く処理することができるリサイクル原料の処理方法について説明する。
【0019】
まず、自溶炉100における熱バランスについて説明する。銅精鉱および溶剤を含む製錬原料のマット化に要する熱量は、以下のようにして算出することができる。
【0020】
定常操業時において、炉内の熱バランスとしては、精鉱バーナ4から装入される装入鉱が酸化反応による発熱、及び、精鉱バーナ4での重油燃焼やスラグ還元のために投入する炭材の酸化による発熱、による総発熱量と、炉内で装入物が反応して生成するマット、スラグ、排ガス、煙灰が自溶炉から排出されて出ていく熱量、及び、炉体から放散される熱量による熱量を合わせた総出熱量と、がバランスした状態となっている。
【0021】
装入鉱の酸化反応による発熱量は、装入鉱の成分によって変化する。装入鉱には、銅精鉱の他、珪酸鉱等の溶剤、リサイクル原料、中和滓や煙灰のような製錬所内の繰り返し物が含まれることが多い。この中のリサイクル原料については、銅の含有量は銅精鉱よりも比較的高い一方、発熱量は銅精鉱よりも比較的低い。このことから、例えば、同じ銅量を自溶炉で処理する場合であっても、銅精鉱とリサイクル原料の比率について、従来よりリサイクル原料の比率を上げた場合、自溶炉における総発熱量が減少することになる。その結果、総出熱量とのバランスを取るために、精鉱バーナ4において重油などの燃料を燃焼させて発熱量を補う必要が生じる。また、リサイクル原料は樹脂などのハロゲン元素や炭化水素を含んだものを焼却処理することが多いため、その焼却度合いによってリサイクル原料の発熱量は変動するという側面がある。
【0022】
本実施形態においては、リサイクル原料を前処理として焼却処理する際に、反応シャフト1における熱バランスとして製錬原料の酸化熱が不足しないように、焼却処理後のリサイクル原料の発熱量が所定の発熱量の範囲になるように管理する。これによって、補助燃料の使用をできるだけ抑えつつ、非鉄製錬炉でリサイクル原料をできるだけ多く処理することができるようになる。
【0023】
図2(a)は、リサイクル原料の処理方法に用いられる焼却炉200の模式図である。図2(b)は、後述するロータリーキルン10の鏡部12の側面図である。図2(a)で例示するように、焼却炉200は、概略として、第1の燃焼炉であるロータリーキルン10と第2の燃焼炉であるストーカ炉20とが互いに接続された構成を有する。
【0024】
ロータリーキルン10は、横置きの円筒状のキルン炉11を備えている。図2(b)で例示するように、キルン炉11の一方端の鏡部12に、リサイクル原料を投入するための投入口14が設けられている。また、投入口14の近傍には、キルンバーナ13が設けられている。キルンバーナ13は、重油や再生燃料などの燃料を燃焼させることによってキルン炉11内に向かって火炎を吹き出す。それにより、リサイクル原料を焼却することができる。投入口14よりも上方には、複数の(例えば3つの)空気供給口15が設けられている。投入口14よりも下方には、複数の(例えば3つの)空気供給口16が設けられている。リサイクル原料中の樹脂などの炭化水素を含んだ成分の熱分解によるガス化は連続して進行するのでキルンバーナ13を常に用いる必要はなく、空気供給口15から空気を供給することで操業することができる。ただし、炉内温度が低下した場合にはキルンバーナ13を焚いて炉内を高温に保持する。なお、後述するキルン炉11からの空気導入量には、空気供給口15から供給される空気の他、キルンバーナ13を焚かない状態でキルンバーナ13を経由して供給する空気も含む。一方、キルンバーナ13で燃料を燃焼させるために供給する空気は空気導入量に含めなくてよいが、空気供給口15からの空気量と区別できない場合や、空気導入量の算出を簡単にするために含めてもよい。キルン炉11の他端は、ストーカ炉20に接続されている。キルン炉11は、ストーカ炉20に向かって僅かに下方に傾斜するようにして配置されており、図示しないモータによって回転可能となっている。回転軸は、円筒状のキルン炉11の円筒軸に一致する。ロータリーキルン10内のリサイクル原料は、徐々に移動し、ストーカ炉20に排出される。
【0025】
ストーカ炉20は、ロータリーキルン10との接続箇所よりも下方に、格子部22を備える。ロータリーキルン10から排出されるリサイクル原料は、格子部22上に落下する。格子部22は、固定火格子と可動火格子とが段違いに設けられている。可動火格子が動くことで、リサイクル原料が前進し、かつ、下から空気を導入することで、リサイクル原料を更に燃焼させる。なお、後述するストーカ炉の空気導入量は、ここでいう格子部22の下から導入する空気量を指す。
【0026】
2次燃焼炉は、キルン炉11およびストーカー炉20で発生した可燃性ガスに2次燃焼炉空気導入口より空気を導入することで、水・二酸化炭素になるまで完全燃焼させかつ、ダイオキシンを熱分解する。2次燃焼炉内の温度が低いときは、完全燃焼及びダイオキシン分解が不十分となるため、ロータリーキルン10との接続箇所よりも上方に備えられた二次燃焼バーナ21で重油や再生燃料などの燃料を燃焼させて火炎を吹き出し、2次燃焼炉内の温度を上げる必要がある。なお、廃棄物処理法の焼却施設にかかる技術上の基準では、ダイオキシンの熱分解は800℃以上ガス滞留時間2秒以上が必要とされており、2次燃焼炉内温度は800℃以上とする必要がある。
【0027】
本実施形態において、対象とするリサイクル原料は、表1に示すような有価物である。電子部品を利用した製品及び産業から発生する貴金属スクラップ類の他、廃家電スクラップ、自動車廃棄物残渣(ASR)、金属屑、等の産業廃棄物である。例えば、表1に示すような貴金属スクラップである。
【表1】
【0028】
この焼却炉200において、反応シャフト1における熱バランスとして製錬原料の酸化熱が不足しないように、焼却処理後のリサイクル原料の発熱量が所定の発熱量の範囲になるように管理する。
【0029】
例えば、後述する計算方法を用いて算出する空気比の考え方を用いて、キルン炉とストーカ炉の空気導入量の合計値から算出される空気比と、その空気比にて焼却処理後のリサイクル原料の発熱量との相関を求め、このグラフの相関を基に、必要な焼却処理後のリサイクル原料の発熱量を調整することができる。さらに、キルン炉の空気比と焼却処理後のリサイクル原料の発熱量との相関と、ストーカ炉の空気比と焼却処理後のリサイクル原料の発熱量との相関を個別に求め、空気導入量に対する発熱量の変化が大きい炉の方の空気導入量を優先して調整し、もう一方の炉の空気導入量は必要なトータルの空気比に応じて空気比を変動させる方法も考えられる。
【0030】
空気比は、以下のように測定することができる。まず、少なくともキルン炉11で処理すると想定される代表的なリサイクル原料のサンプルを2種類用意し、発熱量と、C(炭素)およびH(水素)の含有量を分析する。そしてこのデータを基に、相関を求めるリサイクル原料の熱量を基にしてCとHの含有量を求める。以下、具体例について説明する。
【0031】
一例として、3,800kcalと2,000kcalの原料を用意する。CとHとがそれぞれ独立していると仮定し、Cのカロリーの関係およびHのカロリーの関係を独立して求める。例えば、Cのカロリーの関係は、下記式(2)および下記式(3)のように表すことができる。なお、aは傾きを表し、bは切片を表す。図3で例示するように、下記式から傾きaおよび切片bを算出し、他のカロリーは上記の一次関数上にあると仮定する。
3,800=C品位(31.75mass%)×a+b (2)
2,000=C品位(20.27mass%)×a+b (3)
以上の計算により、リサイクル原料のカロリーを測定することで、リサイクル原料中のC品位を推定する以下の式(4)を得る。
C品位(mass%)=(リサイクル原料カロリー(kcal)-b)/a (4)
【0032】
次に、Hのカロリーの関係は、下記式(5)および下記式(6)のように表すことができる。なお、a´は傾きを表し、b´は切片を表す。図4で例示するように、下記式から傾きa´および切片b´を算出し、他のカロリーは上記の一次関数上にあると仮定する。
3,800=H品位(2.22mass%)×a´+b´ (5)
2,000=H品位(1.42mass%)×a´+b´ (6)
以上の計算により、リサイクル原料カロリーを測定することで、リサイクル原料中のH品位を推定する以下の式(7)を得る。
H品位(mass%)=(リサイクル原料カロリー(kcal)-b´)/a´ (7)
【0033】
次に、焼却後のリサイクル原料の発熱量と、空気比との関係を求めるステップに移る。まず、キルン炉11、ストーカ炉20、および焼却炉200の熱処理炉で処理するリサイクル原料について発熱量を測定する。そして、上記式(4)と(7)の回帰式から発熱量を測定したリサイクル原料のCとHの品位を推定する。なお、3つ以上の代表サンプルを使って上記の関係式を求める場合には、Y軸にカロリー、X軸にCまたはHの品位としてグラフ上にプロットし、一次関数の回帰式を求めればよい。その推定品位から求まる全空気量(空気比1の状態)と、実際の送風量とから空気比を求める。なお、空気比は、原料カロリーからCとHの含有率を推定し、CとHが全量燃焼する場合の空気量について、空気比=1とする。次に、図5図10に示すように、焼却後のリサイクル原料の発熱量と空気比との関係を求める。図5および図6の結果から、焼却後のリサイクル原料カロリー、キルン空気比、およびストーカ空気比を変数として重回帰分析を行う。その結果、焼却後のリサイクル原料カロリー=-334×キルン空気比-693×ストーカ空気比+1442の関係式が得られる。
【0034】
図8および図9は、図5および図6のデータに、この関係式により得られる焼却後のリサイクル原料カロリーのデータを予測値と称して追加したものである。また、図10はこの関係式により得られる焼却後のリサイクル原料カロリーの予測値と実測値の関係を示したものである。図10は、近似直線が45°の傾きに近いほど、この関係式は精度を高いことを示す。このように、この関係式で得られる予測値は、実測値から大きく離れておらず、ある程度妥当なものであることが確認された。この関係式を用いることにより、キルンストーカ炉に導入するリサイクル原料のカロリーから、焼却後のリサイクル原料のカロリーを所定範囲にするためのキルンストーカ炉操業時の空気比を求めることができる。なお、この例ではキルン空気比とストーカー空気比を別の変数として関係式を得ているが、別の方法として、図7のようにキルンストーカ炉の合計の空気導入量から算出される空気比と焼却後リサイクル原料カロリーのデータをもとに、それぞれを変数として重回帰分析を行い、焼却後のリサイクル原料カロリー=a×(キルン+ストーカ空気比)+bのような関係式を作成してもよい(a及びbは定数)。
【0035】
例えば、原料カロリー3031kcal/kgの場合、Cは26.91%、Hは1.88%となる。6t/hで処理しているため、原料中のCは26.91%×6t/h、Hは1.88%×6t/hであり、必要な全空気量は17,356Nm/hとなる。例えば、ストーカ炉20の下方から8,000Nm/hの空気を導入する場合には、ストーカ炉20の下方における空気比は、8000/17356=0.46となる。
【0036】
また、ストーカ炉20では、火格子の温度を、火格子の耐熱温度を下回るように調整する操作を行うことが好ましい。この操作によって、火格子の耐熱温度以上となると、熱変形の危険性があるため、耐熱温度以下で操業するのが好ましい。温度調整はストーカ空気量を調整もしくは給鉱量調整の少なくともいずれかを調整してもよい。
【0037】
また、焼却炉200でリサイクル原料を焼却する場合に、未焼却量が多いと、反応シャフト1内において局所過熱による部分損耗が生じるおそれがあり、ハロゲンによる製錬設備に腐食を生じるおそれがあり、製錬過程で生産される硫酸が炭化水素によって着色するおそれがある。そこで、焼却炉200でリサイクル原料を焼却する場合の熱しゃく減量に上限を設けることが好ましい。例えば、熱しゃく減量を10%以下にすることが好ましい。
【0038】
なお、キルン炉11の出口温度が高いと、鋳付きの異常成長によって、ストーカ炉20の格子部22の可動火格子が前進できなくなるおそれがある。そこで、焼却炉200でリサイクル原料を焼却処理する際、キルン炉11の出口温度を1000℃以下に管理することが好ましい。一方で、キルン炉11の出口温度が低すぎると、ダイオキシンの分解が不十分となるおそれがある。そこで、キルン炉11の出口温度を800℃以上に管理することが好ましい。なお、キルン炉11の出口温度とは、キルン炉11の出口における雰囲気の温度のことである。
【0039】
例えば、焼却炉200に投入される前のリサイクル原料への散水量、焼却炉200内に供給する空気量、焼却炉200へのリサイクル原料の投入速度、キルン炉11の回転数などを調整することによって、キルン炉11の出口温度を管理することができる。
【0040】
また、キルン炉11の入口温度が高いと、キルン炉11内でメタルの溶融が進行し、メタル塊が多量に排出されるおそれがある。そこで、キルン炉11の入口温度を750℃以下に管理することが好ましい。一方で、キルン炉11の入口温度が低すぎると、燃焼が不十分となるおそれがある。そこで、キルン炉11の入口温度を500℃以上に管理することが好ましい。なお、キルン炉11の入口温度とは、キルン炉11の入口における雰囲気の温度のことである。
【0041】
例えば、焼却炉200に投入される前のリサイクル原料への散水量、焼却炉200内に供給する空気量、焼却炉200へのリサイクル原料の投入速度、キルン炉11の回転数などを調整することによって、キルン炉11の入口温度を管理することができる。
【0042】
なお、反応シャフト1に投入される製錬原料およびリサイクル原料のうち、リサイクル原料の重量比が大きくなる場合に、本発明を実施するとより有効である。具体的には、製錬原料及びリサイクル原料を合わせた総重量に対する、リサイクル原料中メタリックCuの割合として、6.0mass%以上28.0mass%以下、または9.0mass%以上18.0mass%以下、または9.0mass%以上12.0mass%以下の場合が想定される。
【0043】
上記実施形態では、非鉄製錬炉の一例として非鉄金属鉱石を処理する自溶炉について説明したが、上記実施形態は非鉄金属マットを処理する製錬炉にも適用することができる。例えば、非鉄金属マットを処理する製錬炉として、銅製錬の転炉などが挙げられる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態または実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、上記実施形態では、焼却処理を行う炉として、キルンストーカ炉を用いたが、キルン炉またはストーカ炉を用いてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 反応シャフト
2 セットラ
3 アップテイク
4 精鉱バーナ
5 マット
6 スラグ
10 ロータリーキルン
11 キルン炉
12 鏡部
13 キルンバーナ
14 投入口
15 空気供給口
16 空気供給口
20 ストーカ炉
21 二次燃焼バーナ
22 格子部
100 自溶炉
200 焼却炉

図1
図2
図3
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図10