(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025151471
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20251002BHJP
【FI】
A61B6/00 550P
A61B6/00 533
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024052916
(22)【出願日】2024-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 高敬
(72)【発明者】
【氏名】岸水 悠介
(72)【発明者】
【氏名】足立 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】橋元 惇
(72)【発明者】
【氏名】菊川 昂樹
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA26
4C093EA07
4C093FF19
4C093FF25
4C093FF28
4C093FF35
4C093FG11
4C093FG16
4C093FH03
(57)【要約】
【課題】骨密度画像が示す脊椎の特徴が、過去と今回の測定時とでどのように変化したのか分かりやすい表示を提供する。
【解決手段】
制御装置38は、X線測定装置の測定によって得られた脊椎の骨密度画像上で、椎間を通る直線である椎間線を求めて表示する。ユーザは、表示された椎間線が適切でなければ修正する。全ての椎間線が適切になったことを確認すると、ユーザは設定登録の操作を行う。これにより、椎間線のデータが骨密度画像に対応付けてデータベースに登録される。制御装置38は、今回の骨密度画像に対して設定された椎間線群に対して、同じ被検体の前回測定時の骨密度画像に対して設定された椎間線群を重ね合わせて表示する。前回と今回とで、椎間線の表示態様を異ならせる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の測定により得られた脊椎の骨密度画像上で、前記脊椎の椎間ごとの椎間線を設定する設定部と、
設定された前記椎間ごとの椎間線を表す椎間線データを前記被検者及び前記測定の時期と対応付けてデータベースに登録する登録部と、
前記設定部により設定された前記椎間ごとの椎間線の画像である第1椎間線画像と、前記データベースから取得した前記被検者の過去の前記椎間線データに表される前記椎間ごとの椎間線の画像である第2椎間線画像を、互いに区別可能な表示態様で重ねて表示するための処理を実行する表示処理部と、
を含む情報処理装置。
【請求項2】
前記骨密度画像に基づき、前記椎間ごとの椎間線のそれぞれについて、当該椎間線上での骨部と軟組織との境界の位置を判定する境界判定部、を更に含み、
前記第1椎間線画像内の前記椎間ごとの椎間線上には、前記境界判定部で判定された当該椎間線上での前記境界の位置が表示され、
前記第2椎間線画像内の前記椎間ごとの椎間線上には、前記第2椎間線画像の基になった前記被検者の過去の骨密度画像に基づき前記境界判定部が判定した前記境界の位置が表示される、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記表示処理部は、
前記第1椎間線画像内の前記椎間線上の前記境界の位置の、前記第2椎間線画像内の対応する前記椎間線上の前記境界の位置に対するずれ量を示す情報を更に表示する、
ことを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記設定部は、
ユーザに設定された椎間線に沿った骨密度の変化を示す骨密度プロファイルを前記骨密度画像から算出して表示する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記設定部は、更に、
前記第2椎間線画像内の前記椎間ごとの椎間線のうち、前記ユーザに設定された前記椎間線に対応する椎間線について、前記第2椎間線画像の基になった前記被検者の過去の骨密度画像から算出された当該椎間線に沿った前記骨密度プロファイル、を表示する、
ことを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
設定された前記椎間ごとの椎間線と、前記被検者の過去の前記椎間線データに表される前記椎間ごとの椎間線との間の変化に基づき、圧迫骨折のおそれの判定を行い、その判定の結果を出力する圧迫骨折判定部を更に含む、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記圧迫骨折判定部は、設定された前記椎間ごとの椎間線と、前記被検者の過去の前記椎間線データに表される前記椎間ごとの椎間線との間での、隣り合う椎間線同士の間隔の変化に基づき、当該隣り合う椎間線同士の間にある椎体についての圧迫骨折のおそれの判定を行う、
ことを特徴とする請求項6に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用の情報処理装置に関し、特に脊椎の骨密度画像に基づく診断支援に関する。
【背景技術】
【0002】
骨密度測定装置は、一般に、二重エネルギーX線吸収法(DEXA法)に基づいて被検体内の骨について骨密度を測定および演算する装置である。骨密度測定装置においては、例えば、2次元的に放射状に広がるX線のファン(扇形)ビームが、そのファンの面に垂直な方向に機械的に走査され、それと並行して被検体を透過したX線が検出される。より詳しくは、ビーム走査を行いながら、低エネルギーX線および高エネルギーX線が交互に照射され、これにより、機械走査方向に交互に並んだ低エネルギーX線検出値および高エネルギーX線検出値が取得される。骨密度測定装置は、骨密度の測定結果に基づき、骨密度の分布を示す骨密度画像を生成し、表示する。
【0003】
骨密度測定装置を用いた腰椎等の脊椎の検査または診断では、医師または検査技師が脊椎の骨密度画像を読影することにより、圧迫骨折等のおそれを判断する。脊椎の診断支援のための装置として、特許文献1に開示された装置がある。
【0004】
特許文献1に開示される装置は、脊椎を含む被検部位に対してX線を照射して得られた測定データに基づいて前記被検部位を表した二次元画像を形成する。またその装置は、前記二次元画像中の脊椎像に基づいて、前記脊椎像の長手方向の複数の位置において前記長手方向に交差する方向への脊椎像変化が反映された複数の代表座標を演算する。更にその装置は、前記複数の代表座標に基づいて、前記脊椎像の診断を支援するための診断支援像を生成する。ここで、前記複数の代表座標には、少なくとも1つの椎体像代表座標と、少なくとも1つの椎間像代表座標と、が含まれる。また、この装置では、注目するいくつかの椎体を含んだROI(関心領域)に対し、各椎間に沿った区分線を自動またはマニュアルで設定することができる。
【0005】
特許文献2には、過去の骨密度測定で得た領域の情報を、今回の測定で得た画像に重畳して表示することにより、診断を支援する技術が開示されている。すなわち、特許文献2に開示された装置は、骨密度測定において被検体のポジショニングを行う際に、過去の骨密度測定において取得されたセグメンテーション情報である関心骨領域を、現在の骨密度測定における透視像に重畳させる。操作者は、透視像に重畳される関心骨領域を参照し、現在の測定に係る透視像に映る骨領域が、過去の測定に係る関心骨領域と合致するようにポジショニングを行う。関心骨領域は自動抽出されるエッジ情報に対して操作者が修正した修正エッジに基づいて生成される正確な情報であるので、関心骨領域を参照することにより、迅速かつ正確に現在のポジショニング条件を過去のポジショニングの条件に合わせることができる。
【0006】
また、特許文献3に開示された装置では、骨密度画像上においてラインが設定されると、それに対応するプロファイルが一次元骨密度分布として表示される。プロファイルの解析により1又は複数の特徴点の位置が特定される。それらの位置は、プロファイル上においてマーカーとして表示され、骨密度画像上においてマーカーとして表示される。ラインを移動させるとプロファイルが更新され、それと共にそれぞれのグラフィック画像の内容もリアルタイムで更新される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-106720号公報
【特許文献2】特開2021-037225号公報
【特許文献3】特開2013-153999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
骨密度測定装置の中には、今回の測定で得られた骨密度画像を、過去(例えば前回)の測定で得られた骨密度画像と並べて表示し、両者の比較ができるようにしたものがある。しかし、並べて表示された2つの骨密度画像を見比べて症状の発生や進行等を判断するのは困難性が高い。
【0009】
仮に、今回と過去の骨密度画像同士を、例えば脊椎部分の色を互いに異ならせるなどした上で重ねて表示すれば、左右または上下に並べて表示した場合よりも、過去から現在への変化が把握しやすくなると考えられる。しかし、骨密度画像は情報量が多いので、骨密度画像同士を重ねたのでは、どの部分がどのように変化したのか読み取りにくい場合が少なくないと考えられる。
【0010】
本発明は、骨密度画像が示す脊椎の特徴が、過去と今回の測定時とでどのように変化したのか分かりやすい表示を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る情報処理装置は、被検者の測定により得られた脊椎の骨密度画像上で、前記脊椎の椎間ごとの椎間線を設定する設定部と、設定された前記椎間ごとの椎間線を表す椎間線データを前記被検者及び前記測定の時期と対応付けてデータベースに登録する登録部と、前記設定部により設定された前記椎間ごとの椎間線の画像である第1椎間線画像と、前記データベースから取得した前記被検者の過去の前記椎間線データに表される前記椎間ごとの椎間線の画像である第2椎間線画像を、互いに区別可能な表示態様で重ねて表示するための処理を実行する表示処理部と、を含む。
【0012】
本発明では、骨密度画像における各椎間の特徴を表す椎間線を、過去に測定した骨密度画像の椎間線と重ねて表示する。測定により得た骨密度画像を過去の測定で得た骨密度画像と重ねて表示すると、情報量が多すぎてどのように変化したかかえって分かりにくいのに対し、椎間線同士の比較することで、過去からの変化が分かりやすい。
【0013】
一つの態様では、情報処理装置は、前記骨密度画像に基づき、前記椎間ごとの椎間線のそれぞれについて、当該椎間線上での骨部と軟組織との境界の位置を判定する境界判定部、を更に含み、前記第1椎間線画像内の前記椎間ごとの椎間線上には、前記境界判定部で判定された当該椎間線上での前記境界の位置が表示され、前記第2椎間線画像内の前記椎間ごとの椎間線上には、前記第2椎間線画像の基になった前記被検者の過去の骨密度画像に基づき前記境界判定部が判定した前記境界の位置が表示される。
【0014】
この態様の表示によれば、椎間線上の骨境界の位置が過去からどのように変化したかを把握でき、脊椎の変形具合がよりわかりやすい。
【0015】
ここで、前記表示処理部は、前記第1椎間線画像内の前記椎間線上の前記境界の位置の、前記第2椎間線画像内の対応する前記椎間線上の前記境界の位置に対するずれ量を示す情報を更に表示してもよい。ずれ量の表示により、過去からの変化が定量的に把握可能になる。
【0016】
また、別の態様では、前記設定部は、ユーザに設定された椎間線に沿った骨密度の変化を示す骨密度プロファイルを前記骨密度画像から算出して表示することとしてもよい。椎間線上の骨密度プロファイルの表示により、椎体以外の骨部の状態を提示することができる。
【0017】
ここで、前記設定部は、更に、前記第2椎間線画像内の前記椎間ごとの椎間線のうち、前記ユーザに設定された前記椎間線に対応する椎間線について、前記第2椎間線画像の基になった前記被検者の過去の骨密度画像から算出された当該椎間線に沿った前記骨密度プロファイル、を表示することとしてもよい。過去の骨密度プロファイルは、測定で得られた骨密度画像に対する椎間線の設定の参考となる。
【0018】
また、更に別の態様では、情報処理装置は、設定された前記椎間ごとの椎間線と、前記被検者の過去の前記椎間線データに表される前記椎間ごとの椎間線との間の変化に基づき、圧迫骨折のおそれの判定を行い、その判定の結果を出力する圧迫骨折判定部を更に含んでいてもよい。
【0019】
ここで前記圧迫骨折判定部は、設定された前記椎間ごとの椎間線と、前記被検者の過去の前記椎間線データに表される前記椎間ごとの椎間線との間での、隣り合う椎間線同士の間隔の変化に基づき、当該隣り合う椎間線同士の間にある椎体についての圧迫骨折のおそれの判定を行うものであってもよい。
【発明の効果】
【0020】
骨密度画像が示す脊椎の特徴が、過去と今回の測定時とでどのように変化したのか分かりやすい表示を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】側面から見たX線測定装置の内部構成を模式的に示す図である。
【
図3】骨密度画像に対するROI(関心領域)の設定を説明するための図である。
【
図4】骨密度画像に対して設定された椎間線を説明するための図である。
【
図6】データベースに登録された測定データの内容を例示する図である。
【
図7】データベースに登録された椎間線データの内容を例示する図である。
【
図8】データベースに登録された椎間線上の骨境界のデータの内容を例示する図である。
【
図9】今回と前回の椎間線の重ね合わせ表示の例を示す図である。
【
図10】重ね合わせ表示において椎間線を破線で表示する効果を説明する図である。
【
図11】椎間線の数値情報の表示の例を示す図である。
【
図12】骨境界の数値情報の表示の例を示す図である。
【
図13】圧迫骨折の可能性の判定結果の表示例を示す図である。
【
図14】骨密度プロファイルの表示例を示す図である。
【
図15】前回と今回の骨密度プロファイルを並べて表示する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<装置の構成の例>
図1には、本開示に係る表示機能を適用可能なX線測定装置10の一例およびそれと共に用いられるブッキーテーブル18の斜視図が示されている。X線測定装置10は、本発明に係る医療用X線測定装置の一例である。
【0023】
X線測定装置10は、X線20を発生する本体部12、X線20を検出するアーム部14、およびアーム部14を本体部12の上方で支持する支柱16を備える。本体部12、支柱16およびアーム部14によって囲まれる空間は被検体が配置される測定空間22をなす。測定空間22には、支柱16が存在しない側からy軸正方向に向かって被検体が受け入れられる。
【0024】
X線測定装置10は、本体部12がブッキーテーブル18のテーブル台の下に入り込むよう配置される。測定空間22内においては、ブッキーテーブル18上に
図1の手前側に余裕を残して被検体が横たえられる。X線測定装置10は、本体部12から発せられ被検体を透過してアーム部14で検出されたX線20の検出値に基づいて骨密度や、体脂肪率、筋肉率(以下、体脂肪率および筋肉率を併せた測定量を脂肪・筋肉率とする。)等を測定する。
【0025】
ここでは、X線測定装置10とブッキーテーブル18とを別体とした実施形態について採り挙げているが、X線測定装置10の本体部12の上面を被検体が横たわるブッキー台とし、X線測定装置10とブッキーテーブルとを一体化した構成としてもよい。
【0026】
図2には、X線測定装置10の側面が模式的に示されている。
図2では、上下方向がx方向、左右方向がy方向であり、紙面に垂直な方向がz方向である。この図においては本体部12およびアーム部14についての主要な内部構成が示されている。X線測定装置10は、本体部筐体24に収容されたX線発生器26と、アーム部筐体28に収容されたX線検出器30とを備える。X線発生器26が照射するX線ビームは、z方向について幅のある平面状のビーム形状のものであってもよい。例えば、zx平面に平行な平面状のビーム形状がその一例である。またビーム形状は、X線発生器26から離れるに従って、z軸方向について幅が広がる末広がり形状(すなわちファン形状)としてもよい。X線発生器26は、被検体にX線を照射する照射部の一例であり、X線検出器30は、被検体を透過したX線の強度を検出する検出部の一例である。
【0027】
X線発生器26とX線検出器30とは、図示省略した搬送機構により、互いに対向した位置関係を維持しつつ、それぞれ本体部12およびアーム部14の内部において水平方向に搬送される。この搬送によりy方向についてのX線ビームの走査が実現される。したがって、y方向は、搬送機構が測定系を搬送する搬送方向であり、いいかえれば、その搬送による機械的な走査の方向である。図示の例では、X線発生器26およびX線検出器30(以下では、両者をまとめて「測定系」と呼ぶ)は、搬送範囲の最右端から左に向けて搬送される。この搬送の途中で、X線発生器26とX線検出器30との間に被検体32が存在しない領域にあるときにX線発生器26から照射されたX線をX線検出器30で検出したときの検出値が、DEXA法における基準データとして取得される。X線測定装置10は、被検体32が存在する領域を走査している期間のX線検出器30が取得した検出値および上記の基準データに基づいて、被検体32に対する吸収率の分布を求める。ここで、吸収率の分布とは、被検体32を上方向に通過するX線についての吸収率の水平面(yz平面)での分布をいう。吸収率は、基準データが示す値を、X線検出器30で検出されたX線の検出値で除した値として定義される。X線検出器30で検出されるX線の検出値が小さい程、吸収率は大きい。吸収率の分布は、X線検出器30で検出されるX線の検出値の逆数に相当する分布であるということもできる。X線測定装置10は、後述する動作によって、エネルギーが異なる2種類のX線のそれぞれについて吸収率の分布を求め、それぞれの吸収率の分布から骨密度、脂肪・筋肉率等を測定する。
【0028】
X線測定装置10の具体的な構成について説明する。X線測定装置10には、制御装置38が接続されている。制御装置38は、制御部40、操作パネル42、ディスプレイ44、解析部46、設定処理部48、表示処理部50、およびDB処理部52を備える。操作部としての操作パネル42は、例えば、キーボード、マウス、ドラッグボール、レバー等を備える。制御部40は、X線発生器26、X線検出器30、およびそれらを搬送する搬送機構等、X線測定装置10の測定機構を制御する。解析部46は、測定結果のデータ(例えばX線検出値のマップ)を解析することにより骨密度画像を生成する。また解析部46は、その骨密度画像を解析することにより、後述するマーカーの位置、椎間線、骨境界の位置、骨密度プロファイル等を求める。設定処理部48は、解析部46の解析結果やそれに対するユーザからの確認や修正等に基づき、骨密度画像に対して、マーカーの位置、椎間線、骨境界の位置等を設定する。表示処理部50は、解析部46や設定処理部48の処理結果に基づき診断支援用の画像を生成する処理を行う。DB処理部52は、データベース60に対するデータの登録や読み出しの処理を行う。例えば、DB処理部52は、骨密度画像や、設定処理部48が設定したマーカーの位置、椎間線、骨境界の位置等の測定結果データを、データベース60に登録するための処理を実行する。またDB処理部52は、表示処理部50による診断支援用の画像の生成に用いるために、DB60から被検体32の過去のデータを取得する処理も行う。
【0029】
制御装置38は、本発明に係る情報処理装置の一致例である。制御装置38は、プロセッサ、メモリ等を備えるコンピュータとして構成され、予め記憶されたプログラムに従って動作する。制御装置38は、X線測定装置10と一体化されていてもよいし、個別に構成されていてもよい。また、制御装置38は、ネットワーク等を介して相互接続された複数のコンピュータから構成されていてもよい。この場合、制御部40を構成する複数のコンピュータは、相互にデータをやりとりしながら、協働して後述する制御装置38の処理を実行する。なお、X線測定装置10から独立したコンピュータ(すなわちX線測定装置10の制御を担わないコンピュータ)に、解析部46、設定処理部48、表示処理部50、及びDB処理部52の機能を持たせてもよい。
【0030】
データベース60は、被検体32の測定結果のデータを蓄積する。データベース60は、ローカルエリアネットワーク等のデータ通信ネットワークを介して制御装置38と接続される。
【0031】
X線発生器26には、X線を発生するX線管等が用いられる。制御部40は、X線管の管電圧または管電流を制御して、発生するX線のエネルギー、放射量(強度)等を変化させる。本体部筐体24の天板はX線が透過する材料によって形成されており、X線発生器26からは天板を介して上方にX線が発せられる。
【0032】
アーム部筐体28の底板58は、X線を透過する材料によって形成されており、本体部12からアーム部14に向けて発せられたX線は、底板58を介してX線検出器30で検出される。
【0033】
X線検出器30には、X線を電気エネルギーに変換する電子管、またはX線波長に対して動作するホトダイオード等の変換デバイスが用いられる。X線検出器30は、例えば、搬送方向に垂直かつ水平方向(z軸正方向)を列方向として、複数列に亘って複数の変換デバイスを配列し、その複数の変換デバイスから検出値を出力する構成とする。また、X線検出器30は、1つの変換デバイスをz軸方向に機械的にリニア走査することで、各検出点における検出値を出力する構成としてもよい。
【0034】
この構成では、X線発生器26が本体部筐体24に収容され、X線検出器30がアーム部筐体28に収容されているが、X線測定装置10は、X線発生器26がアーム部筐体28部に収容され、X線検出器30が本体部筐体24に収容された構成であってもよい。
【0035】
以下では、X線測定装置10により被検体である人の脊椎、特に腰椎の部分、を測定する場合を例にとって説明する。
【0036】
<関心領域の設定>
設定処理部48による関心領域の設定について、
図3を参照しつつ説明する。
【0037】
図3には、X線測定装置10が生成した人の腰部の骨密度画像100が模式的に示されている。一般に、骨密度画像は、通常のX線画像と同様、X線の吸収量が大きいほど輝度が高くなる白黒画像であるが、
図3および後述の
図4の骨密度画像100は、引き出し線等を見やすくするために、白黒を反転させた状態で示している。骨密度画像100には、腸骨104の上部、およびその上に並ぶ第1から第5までの腰椎L1~L5が表されている。腸骨104や腰椎L1~L5のような骨部は、その周囲にある内臓、筋肉、脂肪等の軟組織102よりも、X線の吸収率が顕著に高い。このため、骨部と軟組織102とは、骨密度画像100において、輝度(または濃度)の違いで明確に区別される。通常のX線画像とは白黒反転して示した
図3の骨密度画像100では、腰椎L2~L4等の骨部は、軟組織102よりも黒濃度が顕著に高い。
【0038】
関心領域(以下、ROIと略称。ROIはRegion Of Interestの略)を設定するために、まずマーカーM1およびM2の設定が行われる。図示例は、第2腰椎L2~第4腰椎L4を検査の対象とする場合の例であり、この場合、上側のマーカーM1は、第1腰椎L1と第2腰椎L2との椎間に設定され、下側のマーカーM2は、第4腰椎L4と第5腰椎L5との椎間に設定される。より詳しくは、マーカーM1及びM2のy座標(すなわち横座標)は、腰椎の中心線のy座標に設定され、マーカーM1のz座標(すなわち縦座標)は腰椎L1とL2の椎間の高さに、マーカーM2のz座標は腰椎L4とL5の椎間の高さに、それぞれ設定される。マーカーM1及びM2の位置は、解析部46が骨密度画像100から自動的に計算可能である。
【0039】
例えば、腰椎の中心線は、例えば、骨密度画像100内の腰椎L1~L5の像のy方向についての中心位置を通る、z軸に平行な直線である。解析部46は、そのような中心線を、骨密度画像100から従来公知の手法で計算できる。また例えば、解析部46は、計算された腰椎の中心線に沿った骨密度の分布において、腰椎L1とL2の間で最も骨密度が低い点を、マーカーM1の位置として特定することができる。マーカーM2の位置も同様に特定可能である。
【0040】
表示処理部50は、ディスプレイ44に表示している骨密度画像100上の、解析部46が計算したマーカーM1及びM2の位置に、マーカーM1およびM2を示す図形を表示する。
図3では、この図形は十字型のマークである。ユーザ(例えば検査技師)は、この表示を見て、マーカーM1およびM2の位置が適切であるか確認する。不適切であれば、ユーザは、マーカーM1およびM2を、マウス等のポインティングデバイスの操作により、適切な位置に移動させる。自動計算されたマーカーM1およびM2の位置、またはユーザが修正したマーカーM1およびM2の位置が適切であると確認すると、ユーザは、確認の旨を示す操作(例えば図示省略した「決定」ボタンの押下)を行う。この確認操作に応じて、設定処理部48は、確認されたマーカーM1およびM2を骨密度画像100に対して設定する。すなわち、設定処理部48は、マーカーM1およびM2のデータを生成し、このデータをデータベース60に登録するようDB処理部52に指示する。DB処理部52は、マーカーM1およびM2のデータをデータベース60に登録する。
【0041】
このように設定されたマーカーM1およびM2に基づき、ROIが定まる。すなわち、ROIは、マーカーM1より所定高さ(例えば1cm)だけ上の点を通るy軸に平行な直線と、マーカーM2よりその所定高さだけ下の点を通るy軸に平行な直線と、腰椎の中心線から左右それぞれに所定距離(例えば6cm)だけ離れた位置にあるz軸に平行な2本の直線と、で囲まれる長方形の領域である。ROI内には、L1の下部と、L2と、L3と、L4と、L5の上部と、それら各腰椎(すなわち椎体)同士の椎間が含まれる
表示処理部50は、マーカーM1およびM2からROIを決定し、そのROIの長方形の外周であるROI枠110を骨密度画像100上に表示する。
【0042】
<椎間線の設定>
設定処理部48による椎間線の設定について、
図4、
図5(および
図3)を参照しつつ説明する。
【0043】
椎間線は、隣り合う椎体同士の椎間の長手方向に伸びる直線の線分である。椎間線は、ROI内の各椎間に対して設定される。
図3および
図4に示す例では、ROI内には、L1-L2間、L2-L3間、L3-L4間、およびL4-L5間、の4つの椎間が含まれる。解析部46は、それら4つの椎間のそれぞれについて椎間線を求める。椎間線は、公知の手法、例えば特許文献1に示される区分線の算出方法、に従って求めることができる。表示処理部50は、解析部46が求めた4本の椎間線DH、CG、BF、およびAEを骨密度画像100上に表示する。A、B、C、・・・Hは、各椎間線とROI枠110との交点に付した識別符号である。この例では、椎間線はROI外には延伸しないので、点A、B、・・・、Hは、椎間線の端点と捉えてもよい。これら各端点の識別符号A~Hは、骨密度画像100上に表示してもよいし、しなくてもよい。
【0044】
ユーザは、この表示を見て、各椎間線DH、CG、BF、およびAEが適切であるか確認する。不適切な椎間線があれば、ユーザは、例えばその椎間線の端点をポインティングデバイスの操作で移動させることにより、椎間線が適切になるように調整する。この例では、椎間線の中点が固定されており、端点を移動させるとその中点を回転中心として椎間線が回転する。椎間線の途中をクリック操作等で選択し、椎間線を上下に平行移動させることもできる。なお、ここで例示した操作はあくまで一例に過ぎない。
【0045】
全ての椎間線が適切な状態となるよう調整した後、ユーザは、確認の旨を示す操作を行う。この確認操作に応じて、設定処理部48は、確認された椎間線を骨密度画像100に対して設定する。すなわち、設定処理部48は、各椎間線のデータを生成し、このデータをデータベース60に登録するようDB処理部52に指示する。椎間線のデータは、例えば、当該椎間線の2つの端点の座標の組である。別の例として、椎間線の端点間の中点の座標と、椎間線の傾きとの組を、椎間線を特定するデータとしてもよい。DB処理部52は、それら椎間線のデータをデータベース60に登録する。
【0046】
図5は、一部の腰椎(例えばL3)に顕著な変形がある場合の椎間線の例を示す。
【0047】
<骨境界の設定>
設定処理部48による骨境界の設定について、
図4を参照しつつ説明する。
【0048】
ここでいう骨境界は、骨部(すなわちこの場合は腰椎)とその周囲の軟組織との境界である。本実施形態では、解析部46が、骨密度画像100に基づいて、椎間線上での骨境界を求める。骨部と軟組織は骨密度の値が大きく違う。解析部46は、骨密度画像100から椎間線上の骨密度プロファイル(詳細は後述)を求め、椎間線状で骨密度プロファイルが急変する箇所を骨境界として検出する。骨密度プロファイルに基づく骨境界の検出は精度が高いので必要性は高くないが、ユーザが骨境界の位置を確認し、修正できるようにしてもよい。骨境界は、椎間の骨部の右端と左端の2カ所について求められる。椎体の立体形状により、椎間線上にも骨部が存在している。
【0049】
設定処理部48は、求められた骨境界を骨密度画像100に対して設定する。すなわち、設定処理部48は、骨境界のデータを生成し、このデータをデータベース60に登録するようDB処理部52に指示する。骨境界のデータは、例えば、左右の骨境界の座標の組である。DB処理部52は、骨境界のデータをデータベース60に登録する。
【0050】
図4及び
図5に示した表示例には、骨境界が椎間線DH等に直行する縦棒の形で示されている。例えば、椎間線DH上には、椎間線DHの左側の骨境界DHLと右側の骨境界DHRが示されている。
【0051】
<データベースの例>
図6~
図8を参照して、データベース60に登録される測定データの例を説明する。
【0052】
図6には、データベース60に登録されている個々の被検体(すなわち患者)の骨密度測定データが例示される。例示した表形式のデータの各行が、測定日ごとにレコードである。1つのレコードには、測定日、画像ID、マーカー1、マーカー2、椎間線データ、骨境界データが含まれる。
【0053】
測定日は、骨密度測定を行った日付である。画像IDは、その測定で得られた骨密度画像のデータのID(識別情報)である。データベース60には、画像IDに対応付けて、骨密度画像の実データが保存されている。マーカー1及び2は、それぞれ、関心領域を規定する上下2つのマーカーM1およびM2の座標を示す。
【0054】
椎間線データIDは、データベース60に登録されている椎間線データの実データを特定する識別情報である。
図7に、椎間線データの実データの例を示す。この例では、椎間線データは、ROI内の4本の椎間線のそれぞれについて、椎間線名に対応付けて、左右両端点の座標を含む。
【0055】
骨境界データIDは、データベース60に登録されている骨境界データの実データを特定する識別情報である。
図8に、骨境界データの実データの例を示す。この例では、椎間線データは、4本の椎間線のそれぞれについて、椎間線名に対応付けて、左右2つの骨境界の座標を含む。
【0056】
<比較表示>
表示処理部50は、診断支援のために、今回の測定により得られた画像と、前回等の過去の測定で得られた画像とを比較可能に表示する機能を有する。特に本実施形態では、表示処理部50は、今回の測定で得られた骨密度画像100に対して設定された椎間線の画像を、過去(例えば前回)の測定時に得られた椎間線の画像と重畳して表示する。以下では、今回の椎間線の画像と前回の椎間線の画像とを重ね合わせて表示する場合を例にとって説明する。
【0057】
図9に、この重ね合わせ表示の例を示す。この例では、ROI枠110内に、今回の椎間線150、152、154、156と、前回の椎間線160、162、164、166とが、位置合わせした状態で重ねて表示されている。図面での表現の制限から、
図9では、今回の椎間線150~156と前回の椎間線160~166とは線の太さの違いで区別している。実際の表示では、線の太さ以外の表示態様、例えば線の色、の違いにより、前回と今回の椎間線同士を区別できるようにしてもよい。
【0058】
また、今回の椎間線150~156と前回の椎間線160~166の各々には、それぞれ当該椎間線上での骨境界が表示されている。例えば、今回の椎間線150上には、その椎間線150上の左側の骨境界170Lと右側の骨境界170Rが表示され、前回の椎間線160上には、その椎間線160上の左側の骨境界180Lと右側の骨境界180Rが表示されている。
【0059】
前回の測定時の各椎間線上の骨境界の位置は、例えば、前回の測定時に求めてデータベース60に登録していた骨境界のデータ(
図8参照)から求めればよい。また、別の例として、データベース60に格納されている前回の骨密度画像と前回の各椎間線のデータから、解析部46がそれら各椎間線上の骨境界の位置を特定してもよい。
【0060】
今回と前回とでROIの横幅は同じであるが、ROIの縦の長さは必ずしも同じではない。このため、今回と前回の椎間線の画像の重ね合わせる際に、ROI枠110同士が一致するように重ね合わせるという手法は、一般にはとれない。そこで、重ね合わせには、例えば次のような方法を用いてもよい。
【0061】
ROIの幅は前回と今回で同じなので、以下に例示する方法は、いずれも横方向についてはROI枠110の右辺同士、左辺同士が一致するように椎間線の画像同士を位置合わせする。一方、縦方向についての位置合わせの仕方にはいくつかのバリエーションが考えられる。
【0062】
一つめの方法では、表示処理部50は、今回と前回との間での椎間線の端点A、B、C、・・・、Hの位置の偏差の合計(例えば二乗偏差の合計)が最も小さくなるように、縦方向についての位置合わせを行う。これにより、前回と今回とで位置の変化が小さい端点、大きい端点が分かりやすくなる。
【0063】
二つ目の方法は、前回と今回とで、ROI枠110の下辺同士が一致するように、椎間線の画像同士の縦方向の位置合わせを行う。これは以下の点を考慮したものである。すなわち、胸椎は後ろへ湾曲している一方、腰椎は前へ湾曲しているので、それら湾曲が交差する第1腰椎L1付近で圧迫骨折が起こりやすい。これに対し、腰椎の最下部である第4、第5腰椎L4、5の辺りは、第1腰椎L1に比べて圧迫骨折が起こりにくく、形状が安定していることが多い。このように形状が安定している下辺同士を一致させれば、圧迫骨折が起こりやすい上側に向かってどのように腰椎がどのように湾曲しているか分かりやすい。そこで、この二つ目の方法では、腰椎の最下部辺りにあるROI枠110の下辺同士を一致させるのである。
【0064】
表示処理部50は、これらの方法のいずれかにしたがって、前回と今回の椎間線の画像同士を位置合わせして重ね合わせる。
【0065】
図9に示した椎間線の重ね合わせ画像は、例えば今回の骨密度画像100の表示の上に重ねて表示してもよい。また、ユーザからの指示に応じて、骨密度画像100の上に椎間線の重ね合わせ画像を表示したり、骨密度画像100を消して椎間線の重ね合わせ画像のみを表示したりするなど、表示方式の切り替えができるようにしてもよい。
【0066】
さて、この重ね合わせ表示では、前回と今回の椎間線が、ピッチが同じで互いに半周期ずれた破線として表示されるようにしてもよい。このような破線表示について、
図10を参照して説明する。
【0067】
図10に例示したのは、
図9に例示した前回と今回の椎間線画像の重ね合わせ表示の一部分の拡大図である。ただし、
図10のうちの点線で示した枠線190は、椎間線を示す破線のピッチを分かりやすくするための補助線であり、ディスプレイ44に表示される画像には現れない。
【0068】
図10に示すように、今回の椎間線152の破線(図では太線)と、前回の椎間線162の破線(図では細線)とは、横方向について、枠線190の矩形2つ分を一周期(すなわちピッチ)としている。今回の椎間線152の破線と前回の椎間線162の破線とは半周期ずれているので、重ね合わせ表示において両者を見分けやすくなっている。更に椎間線152と椎間線162を異なる表示態様(例えば異なる色)で表示することとすれば、更に両者を見分けやすくすることができる。
【0069】
また、
図10の例では、今回の椎間線152上に骨境界172Rが、前回の椎間線162上に骨境界182Rがそれぞれ表示されている。この表示例では、椎間線152及び162のピッチが一定なので、前回の骨境界182と今回の骨境界172との間の横方向のずれ量が、それら両者の間の破線の数を数えることで定量的に把握できる。これは、前回から今回までの腰椎の変形の定量的な評価に繋がる。
【0070】
<数値表示>
制御装置38は、椎間線に関して、
図9に例示したグラフィカル表示のほかに、数値等の情報を表示する機能も持つ。
【0071】
制御装置38が提供する数値表示の一例を
図11に示す。
図11に示す表示例は、前回と今回との椎間線の数値的な比較情報を提供するものである。この例では、前回(「2023年2月20日」)と今回(「2024年2月21日」)の椎間線の特徴が表形式で表示されている。この表には、例えば、前回と今回の各椎間線DH、CG、BF、AEの長さと、その長さの前回と今回との差が示される。また、この表には、前回と今回のそれぞれについてROIの左辺および右辺上で隣り合う椎間線の端点同士の距離が示され、更に前回と今回との間でのその距離の差が示される。例えば、隣り合う端点BとCの間の距離は、腰椎(すなわち椎体)L3の左側に対応しており、端点FとGとの間の距離は、腰椎L3の右側に対応している。例えば、
図5に示したように腰椎L3の右側が顕著に圧迫される変形が生じている場合、BC間の距離はかなり長くなる一方、FG間の距離はかなり短くなる。ROIの幅は椎体の幅よりもかなり大きいので、椎体が左右どちらかに偏って変形した場合、その変形はROI枠110の左右の辺上でのその椎体の上下の椎間線の端点同士の距離に拡大影される。例えば前回が
図4に示す状態で今回が
図5に示す状態である場合、ROIの右辺上での端点FG間の距離の減少と、左辺上での端点BC間の距離の増大が顕著となる。ユーザは、前回と今回の距離等の値や、前回と今回の差の数値を見ることで、変化を定量的に把握することができる。
【0072】
制御装置38が提供する数値表示の別の一例を
図12に示す。
図12に示す表示例は、前回と今回との椎間線上の各骨境界の数値的な比較情報を提供するものである。この例では、前回と今回の各骨境界の座標と、前回と今回の間でのずれ量とが示される。図示例では、ずれ量は、y方向についてのずれと、z方向についてのずれの組で表されている。ーザは、この表示を見ることにより、前回と今回の間での各骨境界のずれの程度を定量的に把握することができる。
【0073】
制御装置38が提供する更に別の表示の例を
図13に示す。
図13に示す表示例は、ROI内の各腰椎L2、L3、L4の圧迫骨折の可能性の高低を示すものである。圧迫骨折の可能性の高低は、解析部46が判定する。
【0074】
この判定は、腰椎の上下の椎間線のROI枠110上の端点同士の距離が前回から今回までどれだけ変化したかに基づいて行われる。それら距離の変化の量を例えば閾値と比較することにより、圧迫骨折の可能性が高いか低いかを判定する。
【0075】
例えば腰椎L3についての判定では、解析部46は、その腰椎L3の左右の端点BC間および端点FG間の各距離の、前回と今回との間の変化量をそれぞれ求める。そして、それら左右2つの変化量のうち少なくとも一方が減少している場合、解析部46は、その減少の量(すなわち変化量が負値)の大きさがあらかじめ定めた閾値以上であれば、腰椎L3が圧迫骨折している可能性が高いと判定する。また逆に、解析部46は、その減少の量の大きさがその閾値未満であれば、腰椎L3の圧迫骨折の可能性は低いと判定する。
【0076】
なお、腰椎の圧迫骨折には、腰椎の右または左の一方が強く圧迫されて骨折する場合と、腰椎の左右が均等に圧迫されて骨折する場合とがある。前回から今回までの間に左右の一方が圧迫されて骨折した場合は、前回と比べて椎間線が大きく傾き、潰れた側の端点同士の間隔(
図5の例では端点FG間)が前回と比べて顕著に狭くなる。逆に、潰れてない方の端点同士の間隔は広くなる。
【0077】
一方、左右が均等に圧迫された場合は、左右両方の辺上の、隣り合う端点同士の間隔が共に、前回と比べて狭くなる。この場合、椎間線の傾きは小さいので、隣り合う端点同士の間隔の減少量の大きさは、左右一方のみが同程度だけ圧迫された場合よりも小さい。
【0078】
したがって、左右一方の端点間の間隔が減少し他方が増大した場合と、左右両方の端点間の間隔が共に減少した場合とで、圧迫骨折の可能性が高いか低いかを判定するのに用いる閾値を異ならせてもよい。例えば、左右一方の端点間の間隔が減少し他方が増大した場合に用いる閾値を、左右両方の端点間の間隔が共に減少した場合に用いる閾値よりも大きくする。
【0079】
<骨密度プロファイルの表示>
制御装置38は、椎間線上の骨密度プロファイルを表示する機能を有していてもよい。椎間線上の骨密度プロファイルは、椎間線の各点における骨密度の値を連ねた曲線である。解析部46は、骨密度画像100において、椎間線の各点に対応する画素を特定し、それら各画素の値(すなわち骨密度)を並べることにより、骨密度プロファイルを生成する。
図14に骨密度プロファイル300の表示例を示す。
図14に示すグラフでは、横軸が椎間線の長さ方向に沿った位置を示し、縦軸が骨密度を示す。
図14に例示した骨密度プロファイル300は、腰椎L1とL2との間の椎間線(例えば
図5の例では椎間線DH)についてのものである。腰椎には、椎体以外に横突起や棘突起などの骨部があり、椎間線はそれら椎体以外の骨部を通るため、椎間線上にはある程度骨密度が高い部分が存在する。
【0080】
制御装置38は、例えば、骨密度画像100および椎間線を表示している画面上で、ユーザがクリック操作等により椎間線を選択すると、その椎間線上の骨密度プロファイルを、例えば骨密度画像100の隣に、あるいはポップアップ表示で、表示する。
【0081】
例えば、今回の測定で得た骨密度画像100を始めて表示する際、制御装置38はユーザからマーカーM1およびM2の設定を受け、ROI枠110を表示する。このとき解析部46は、各椎間の椎間線を計算し、画面上に表示する。ユーザは、表示された各椎間線が妥当であるかを、例えば順番に確認していく。この確認の際、ユーザが対象とする1つの椎間線をクリック操作等で選択すると、解析部46は、選択された椎間線の骨密度プロファイル300を生成する。表示処理部50は、画面上で、例えば骨密度画像100の隣に、骨密度プロファイル300を表示する。
【0082】
ユーザは、表示された骨密度プロファイル300を、選択された椎間線の適切さの判断材料として用いる。すなわち、腰椎は基本的に左右対称な形状なので、椎間線が適切に設定されていれば、椎間線上の骨密度プロファイル300は中央が凹んだ左右対称に近い形状となる。逆に、椎間線上の骨密度プロファイル300の形状が左右対称からかけ離れていると、椎間線が不適切である可能性が高い。ユーザは、骨密度画像100上の選択された椎間線の近傍の濃度分布や、その椎間線の骨密度プロファイル300を見て、その椎間線が適切かどうか判断する。適切でなければ、ユーザは、端点を移動させるなどの操作を行うことにより椎間線の位置や傾きを調整する。ユーザが椎間線を操作すると、解析部46が操作後の新たな椎間線上の骨密度プロファイル300を求める。これにより、画面上に表示される骨密度プロファイル300が更新される。ユーザは、操作後の椎間線の周囲の画像や、更新後の骨密度プロファイル300を参照しつつ、その椎間線が適切か否か再度判断する。ユーザは、適切な椎間線が得られるまで、このサイクルを繰り返す。
【0083】
ユーザは、全ての椎間線を適切なものに調整し終えると、制御装置38に対して、それら椎間線の設定登録を指示する。この指示に応じて、設定処理部48は、それら椎間線のデータをデータベース60に登録する。
【0084】
また、表示処理部50は、今回の骨密度画像100上でユーザに選択された椎間線に対応する、前回の椎間線の骨密度プロファイルを更に表示してもよい。例えば、ユーザが椎間線DHを選択した場合、表示処理部50は、今回の骨密度画像100における椎間線DH上の骨密度プロファイル300と、前回の骨密度画像100における椎間線DH上の骨密度プロファイルとを比較できるように表示する。比較できる表示では、例えば、今回と前回の骨密度プロファイルを上下又は左右に並べて表示すればよい。
図15には、今回の骨密度プロファイル300と前回の骨密度プロファイル310を上下に並べて表示した例を示す。
【0085】
先ほど、適切に設定された椎間線上の骨密度プロファイル300は中央の凹部を挟んで左右対称に近い形状になると説明したが、これは理想的な場合の話である。腰椎の変形等のために、椎間線をどのように設定しても、骨密度プロファイル300が左右対称に近い形状とならない場合もある。そのような場合、ユーザは、骨密度プロファイル300の形状が左右対称に近くならないとしても、その形状や、椎間線の近傍の骨密度画像100の濃度分布等を総合的に考慮して、最も適切と考えられる椎間線を求める。このとき、前回の骨密度プロファイル310は、参考になる。すなわち、前回の骨密度プロファイル310は、ユーザが前回の測定結果に基づいて適切であると判断したものなので、これを参考情報の一つとして用いるのである。ユーザは、今回の骨密度画像100上の椎間線の位置や傾きを調整する際に、その椎間線の骨密度プロファイル300が前回の骨密度プロファイル300にどの程度似ているかも判断の材料とすることができる。
【0086】
また、ユーザは、椎間線に沿った骨密度プロファイルを見ることで、椎体以外の骨部、例えば横突起や棘突起、の骨密度の状況を把握できる。
【0087】
また、表示処理部50は、骨密度画像100上に設定された全ての椎間線についての骨密度プロファイルを同一画面上に表示する機能を持っていてもよい。例えば、全ての椎間線の骨密度プロファイルが、左右対称とはいえず、同一の側に偏った形状となっている場合、測定時の被検体の姿勢が左右どちらかの側に傾いている可能性があるので、測定のし直しの必要性があることが分かる。
【符号の説明】
【0088】
10 X線測定装置、14 アーム部、24 本体部筐体、26 X線発生器、30 X線検出器、38 制御装置、40 制御部、42 操作パネル、44 ディスプレイ、46 解析部、48 設定処理部、50 表示処理部、 52 DB処理部、60 データベース。