(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025152015
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】異方導電性部材及び接合体
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20251002BHJP
H05K 3/32 20060101ALN20251002BHJP
【FI】
H01L21/60 311S
H05K3/32 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024053707
(22)【出願日】2024-03-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2025-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】黒岡 俊次
【テーマコード(参考)】
5E319
5F044
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319AB03
5E319AC01
5E319AC11
5E319CC03
5F044KK05
5F044LL09
5F044RR17
(57)【要約】
【課題】導通路の座屈を抑制した異方導電性部材及び接合体を提供する。
【解決手段】異方導電性部材は、電気的な絶縁性を有する絶縁性基材と、絶縁性基材の厚み方向に貫通し、互いに電気的に絶縁された状態で設けられ、絶縁性基材の少なくとも一方の面から突出した突出部を備える複数の導通路とを有する。絶縁性基材の厚み方向における断面において、導通路の突出部が突出した絶縁性基材の面は、複数の頂部と、複数の突出部が、それぞれ絶縁性基材と接触した接触部とを有する。複数の接触部と、複数の頂部との、厚み方向における算術平均距離が2nm~200nmである。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的な絶縁性を有する絶縁性基材と、
前記絶縁性基材の厚み方向に貫通し、互いに電気的に絶縁された状態で設けられ、前記絶縁性基材の少なくとも一方の面から突出した突出部を備える複数の導通路とを有し、
前記絶縁性基材の前記厚み方向における断面において、前記導通路の前記突出部が突出した前記絶縁性基材の前記面は、複数の頂部と、前記複数の突出部が、それぞれ前記絶縁性基材と接触した接触部とを有し、
前記複数の接触部と、前記複数の頂部との、前記厚み方向における算術平均距離が2nm~200nmである、異方導電性部材。
【請求項2】
前記導通路は、Cu、Au又はAlで構成されている、請求項1に記載の異方導電性部材。
【請求項3】
前記突出部の直径をdとし、前記突出部の前記絶縁性基材の前記厚み方向における長さをhとするとき、d/hが0.1~20である、請求項1に記載の異方導電性部材。
【請求項4】
前記突出部の前記絶縁性基材の前記厚み方向における長さが6~6000nmである、請求項1に記載の異方導電性部材。
【請求項5】
異方導電性部材と、被接合部材とが接合された接合体であって、
前記異方導電性部材と前記被接合部材との間に樹脂が充填されており、
前記異方導電性部材は、電気的な絶縁性を有する絶縁性基材と、
前記絶縁性基材の厚み方向に貫通し、互いに電気的に絶縁された状態で設けられ、前記絶縁性基材の少なくとも一方の面から突出した突出部を備える複数の導通路とを有し、
前記絶縁性基材の前記厚み方向における断面において、前記導通路の前記突出部が突出した前記絶縁性基材の前記面は、複数の頂部と、前記複数の突出部が、それぞれ前記絶縁性基材と接触した接触部とを有し、
前記複数の接触部と、前記複数の頂部との、前記厚み方向における算術平均距離が2nm~200nmである、接合体。
【請求項6】
前記被接合部材は、金属層と、樹脂層とを有し、前記金属層が前記樹脂層から露出している、請求項5に記載の接合体。
【請求項7】
前記被接合部材は、前記金属層を複数有し、前記複数の金属層のうち、少なくとも1つは高さが異なる、請求項5に記載の接合体。
【請求項8】
前記被接合部材は、複数の金属層が設けられた接合面を有し、前記接合面の面積は、前記異方導電性部材の前記突出部が突出した前記面の面積よりも広い、請求項6に記載の接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性基材の厚み方向に貫通して設けられ、絶縁性基材の少なくとも一方の面から突出した突出部を備える複数の導通路を備える異方導電性部材及び接合体に関し、特に、突出部が突出した絶縁性基材の面は複数の頂部と、突出部が絶縁性基材と接触した複数の接触部とを有する異方導電性部材及び接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性基材に設けられた複数の貫通孔に金属等の導電性物質が充填された導通路を有する異方導電性部材がある。
異方導電性部材は、半導体素子等の電子部品と回路基板との間に挿入し、加圧するだけで電子部品と回路基板間の電気的接続が得られるため、半導体素子等の電子部品等の電気的接続部材、及び機能検査を行う際の検査用コネクタ等として広く使用されている。
特に、半導体素子等の電子部品は、ダウンサイジング化が顕著である。従来のワイヤーボンディングのような配線基板を直接接続する方式、フリップチップボンディング、及びサーモコンプレッションボンディング等では、電子部品の電気的な接続の安定性を十分に保証することができない場合があるため、電子接続部材として異方導電性部材が注目されている。
【0003】
異方導電性部材として、例えば、特許文献1に、無機材料からなる絶縁性基材と、導電性部材からなる複数の導通路と、絶縁性基材の表面の全面に設けられた樹脂層とを具備する異方導電性接合部材が記載されている。導通路は互いに絶縁された状態で絶縁性基材を厚み方向に貫通して設けられている。導通路は、互いに平行であり、かつ絶縁性基材の表面から突出した突出部分を有しており、突出部分の端部が樹脂層に埋設している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1の異方導電性接合部材を電子接続部材に用いた場合、異方導電性接合部材の導通路と、接続対象である半導体素子の電極等とを接合する。接合時に、導通路のうち、絶縁性基材の表面から突出した突出部分が座屈してしまうことがある。
接合時に導通路の突出部分が座屈すると、導通路と、半導体素子の電極等との接合が不十分になる可能性があり、十分な接合強度が得られない可能性がある。このため、導通路が座屈することを回避することが望まれている。
本発明の目的は、導通路の座屈を抑制した異方導電性部材及び接合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、発明[1]は、電気的な絶縁性を有する絶縁性基材と、絶縁性基材の厚み方向に貫通し、互いに電気的に絶縁された状態で設けられ、絶縁性基材の少なくとも一方の面から突出した突出部を備える複数の導通路とを有し、絶縁性基材の厚み方向における断面において、導通路の突出部が突出した絶縁性基材の面は、複数の頂部と、複数の突出部が、それぞれ絶縁性基材と接触した接触部とを有し、複数の接触部と、複数の頂部との、厚み方向における算術平均距離が2nm~200nmである、異方導電性部材である。
【0007】
発明[2]は、導通路は、Cu、Au又はAlで構成されている、発明[1]に記載の異方導電性部材である。
発明[3]は、突出部の直径をdとし、突出部の絶縁性基材の厚み方向における長さをhとするとき、d/hが0.1~20である、発明[1]又は[2]に記載の異方導電性部材である。
発明[4]は、突出部の絶縁性基材の厚み方向における長さが6~6000nmである、発明[1]~[3]のいずれか1つに記載の異方導電性部材である。
【0008】
発明[5]は、異方導電性部材と、被接合部材とが接合された接合体であって、異方導電性部材と被接合部材との間に樹脂が充填されており、異方導電性部材は、電気的な絶縁性を有する絶縁性基材と、絶縁性基材の厚み方向に貫通し、互いに電気的に絶縁された状態で設けられ、絶縁性基材の少なくとも一方の面から突出した突出部を備える複数の導通路とを有し、絶縁性基材の厚み方向における断面において、導通路の突出部が突出した絶縁性基材の面は、複数の頂部と、複数の突出部が、それぞれ絶縁性基材と接触した接触部とを有し、複数の接触部と、複数の頂部との、厚み方向における算術平均距離が2nm~200nmである、接合体である。
発明[6]は、被接合部材は、金属層と、樹脂層とを有し、金属層が樹脂層から露出している、発明[5]に記載の接合体である。
発明[7]は、被接合部材は、金属層を複数有し、複数の金属層のうち、少なくとも1つは高さが異なる、発明[5]に記載の接合体である。
発明[8]は、被接合部材は、複数の金属層が設けられた接合面を有し、接合面の面積は、異方導電性部材の突出部が突出した面の面積よりも広い、発明[6]に記載の接合体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、導通路の座屈を抑制した異方導電性部材及び接合体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態の異方導電性部材の一例を示す模式的断面図である。
【
図2】本発明の実施形態の異方導電性部材の一例を示す模式的平面図である。
【
図3】本発明の実施形態の異方導電性部材の一例の一部を拡大して示す模式的断面図である。
【
図4】本発明の実施形態の接合体の第1例を示す模式的断面図である。
【
図5】本発明の実施形態の接合体の第1例の一部を拡大して示す模式的断面図である。
【
図6】本発明の実施形態の接合体の第1例の製造方法を示す模式的断面図である。
【
図7】本発明の実施形態の接合体の第2例の一部を拡大して示す模式的断面図である。
【
図8】本発明の実施形態の異方導電性部材の製造方法の一例の一工程を示す模式的断面図である。
【
図9】本発明の実施形態の異方導電性部材の製造方法の一例の一工程を示す模式的断面図である。
【
図10】本発明の実施形態の異方導電性部材の製造方法の一例の一工程を示す模式的断面図である。
【
図11】本発明の実施形態の異方導電性部材の製造方法の一例の一工程を示す模式的断面図である。
【
図12】本発明の実施形態の異方導電性部材の製造方法の一例の一工程を示す模式的断面図である。
【
図13】本発明の実施形態の異方導電性部材の製造方法の一例の一工程を示す模式的断面図である。
【
図14】本発明の実施形態の異方導電性部材の製造方法の一例の一工程を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の異方導電性部材及び接合体を詳細に説明する。
なお、以下に説明する図は、本発明を説明するための例示的なものであり、本発明を説明するために簡略化したり、誇張している。このため、以下に示す図に本発明が限定されるものではない。
なお、以下において数値範囲を示す「~」とは両側に記載された数値を含む。例えば、εが数値εα~数値εβとは、εの範囲は数値εαと数値εαを含む範囲であり、数学記号で示せばεα≦ε≦εαである。
平行及び直交については、特に記載がなければ、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
温度、時間及び圧力について、特に記載がなければ、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
また、「同一」とは、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。また、「全面」等は、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
以下、異方導電性部材及び接合体について具体的に説明する。
【0012】
[異方導電性部材の一例]
図1は本発明の実施形態の異方導電性部材の一例を示す模式的断面図である。
図2は本発明の実施形態の異方導電性部材の一例を示す模式的平面図である。
図3は本発明の実施形態の異方導電性部材の一例の一部を拡大して示す模式的断面図である。
図1及び
図3は、絶縁性基材20の厚み方向Dtにおける断面を示している。また、
図2は
図1の絶縁性基材20の表面20a側から見た平面図であり、樹脂層24がない状態を示している。
図1に示す異方導電性部材10は、電気的な絶縁性を有する絶縁性基材20と、絶縁性基材20を厚み方向Dtに貫通し、互いに電気的に絶縁された状態で設けられ、少なくとも一方の面から突出した突出部を備える複数の導通路22とを有する。また、絶縁性基材20の少なくとも一方の面を覆う樹脂層24を有する。異方導電性部材10は、絶縁性基材20の厚み方向Dtに導電性を有する。
なお、異方導電性部材10において、樹脂層24は必ずしも必要なものではなく、樹脂層24がない構成でもよい。
【0013】
複数の導通路22は、絶縁性基材20に、互いに電気的に絶縁された状態で設けられている。この場合、例えば、絶縁性基材20は、厚み方向Dtに貫通する複数の細孔21を有する。複数の細孔21に導通路22が設けられている。導通路22は、絶縁性基材20の表面20aから突出している。また、導通路22は、絶縁性基材20の裏面20bから突出している。
導通路22は、絶縁性基材20の厚み方向Dtにおける一方の面から突出していればよい。例えば、導通路22が突出している絶縁性基材20の面に樹脂層24が設けられる。樹脂層24は導通路22の突出部22aを覆い、突出部22aは樹脂層24に埋設されている。また、樹脂層24は導通路22の突出部22bを覆い、突出部22bは樹脂層24に埋設されている。
絶縁性基材20は、例えば、陽極酸化膜で構成される。陽極酸化膜は、例えば、バルブ金属を陽極酸化して形成される。
絶縁性基材20の表面20aと絶縁性基材20の裏面20bとは、絶縁性基材20の厚み方向Dtにおいて対向する面である。
【0014】
異方導電性部材10は異方導電性を有するものであり、上述のように厚み方向Dtに導電性を有するが、絶縁性基材20の表面20aに平行な方向xにおける導電性が十分に低い。方向xは、厚み方向Dtと直交する方向である。
異方導電性部材10は、
図2に示すように、例えば、外形が円形である。なお、異方導電性部材10の外形及びサイズは、用途等に合わせて適宜決定されるものであり、外形は、例えば、四角形でもよい。
例えば、異方導電性部材10は、樹脂層24がない状態、又は樹脂層24があっても表面24aに何もない状態で接合される。
【0015】
図3に示すように絶縁性基材20の表面20aは、平坦ではなく凹凸のある構成である。絶縁性基材20の表面20aに複数の凹部20dがある。導通路22毎に凹部20dが設けられている。凹部20dは、導通路22を中心として、導通路22を囲むようにして配置されている。
図3に示す絶縁性基材20の厚み方向Dtにおける断面において、突出部22aが突出した絶縁性基材20の面、すなわち、
図3では表面20aは、複数の頂部Pcと、複数の接触部Vcとを有する。
【0016】
頂部Pcは、絶縁性基材20の厚み方向Dtにおける断面において、突出部22a側の絶縁性基材20の面の高い部分である。頂部Pcは、例えば、隣接する凹部20dの境界部分である。
接触部Vcは、絶縁性基材20の厚み方向Dtにおける断面において、複数の突出部22aが、それぞれ絶縁性基材20と接触する部分である。突出部22aの絶縁性基材20側の端部に接触部Vcがある。より具体的には、凹部20dの絶縁性基材20の裏面20b側の底部に接触部Vcがある。
異方導電性部材10では、複数の接触部Vcと、複数の頂部Pcとの厚み方向Dtにおける算術平均距離が2nm~200nmであり、好ましくは、2nm~150nmであり、より好ましくは、20nm~100nmであり、更に好ましくは20nm~60nmである。
【0017】
異方導電性部材10において、突出部22aが突出した絶縁性基材20の表面20aの構成を、複数の接触部Vcと、複数の頂部Pcとの厚み方向Dtにおける算術平均距離δを、2nm~200nmとすることにより、突出部22aに、厚み方向Dtと平行な方向に力が作用した場合、絶縁性基材20の表面20aの算術平均距離が2nm未満の平坦面の場合に比して、突出部22aが方向xに多く曲がることが許容される。すなわち、凹部20d内で、平坦面の場合に比して、突出部22aは側面22cが方向xに多く変位することが許容される。これにより、突出部22aの座屈が抑制されるため、接続対象に対して十分な接合強度が得られ、接続対象と十分な導電性を確保できる。更には、隣接する突出部との接触もなく、短絡の発生も抑制される。
また、突出部22aに、厚み方向Dtと平行な方向に力が作用した場合に、突出部22aが、方向xに直径が大きくなるように変形した場合、絶縁性基材20の表面20aが平坦面の場合に比して、突出部22aが方向xに直径が大きくなるように変形することが許容される。この場合、凹部20d内で、突出部22aの直径が方向xに大きくなることが許容される。このため、突出部22aの座屈が抑制される。この場合でも、接続対象に対して十分な接合強度が得られ、接続対象と十分な導電性を確保でき、更には、隣接する突出部との接触もなく、短絡の発生も抑制される。
【0018】
上述の算術平均距離δが2nm未満の場合、突出部22aに、厚み方向Dtと平行な方向に力が作用した場合、突出部22aが方向xに変位できる量が小さく、突出部22aが座屈する。このため、接続対象に対して十分な接合強度が得られない。突出部22aが座屈すると隣接する突出部と接触することがあり、接続対象と十分な導電が確保できない。
上述の算術平均距離δが200nmを超える場合、絶縁性基材20側の端部が、より絶縁性基材20の厚み方向Dtにおける中央になり、凹部20dが深くなり、突出部22aが実質的に長くなる。このため、突出部は座屈しやすい。突出部22aに、厚み方向Dtと平行な方向に力が作用した場合、突出部は座屈して隣接する突出部と接触して、接続対象と十分な導電性を確保できない。
【0019】
上述の算術平均距離δは、例えば、以下のようにして求めることができる。
まず、異方導電性部材10を集束イオンビーム(FIB)を用いて切削加工して、絶縁性基材20の厚み方向Dtにおける断面を露出させる。
絶縁性基材20の厚み方向Dtにおける断面について、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて倍率150kの撮影画像を取得する。
撮影画像において、絶縁性基材20の表面20aの反対側にある裏面20b側の任意の位置に、基準点Pbを設定する。基準点Pbを通る方向xに平行な基準線Lsを設定する。
撮影画像において、頂部Pcに該当する点のうち、基準線Lsに対して高い順から10個の頂部Pcを選択する。また、接触部Vcに該当する点のうち、基準線Lsに対して低い順から10個の接触部Vcを選択する。
撮影画像において、選択した10個の頂部Pcに該当する点について、それぞれ基準線Lsから距離を求める。求めた10個の頂部Pcに該当する点と基準線Lsとの、10個の距離の平均値を、最小二乗法を用いて求める。最小二乗法を用いて求めた平均値を、撮影画像に点として示す。頂部Pcの平均値を示す点を通る方向xに平行な線Lcを求める。この平行な線Lcを含む平面が、絶縁性基材20の表面20aの平均面である。なお、絶縁性基材20の表面20aの平均面が突出部22aの長さの基準となる。
撮影画像において、選択した10個の接触部Vcに該当する点について、それぞれ基準線Lsから距離を求める。求めた10個の接触部Vcに該当する点と基準線Lsとの、10個の距離の平均値を、最小二乗法を用いて求める。最小二乗法を用いて求めた平均値を、撮影画像に点として示す。接触部Vcの平均値を示す点を通る方向xに平行な線Lbを求める。この平行な線Lbを含む平面が、接触部Vcの平均面である。
上述の算術平均距離δは、最小二乗法を用いて求めた頂部Pcの平均値と、最小二乗法を用いて求めた接触部Vcの平均値との差の絶対値である。すなわち、算術平均距離δは、厚み方向Dtにおける平行な線Lcと平行な線Lbとの距離である。このため、厚み方向Dtにおける平行な線Lcと平行な線Lbとの距離を求めて算術平均距離δを得る。
なお、詳細に図示していないが、絶縁性基材20の裏面20bも
図3に示す絶縁性基材20の表面20aと同様の構成である。絶縁性基材20の裏面20bについても、上述の絶縁性基材20の表面20aと同様にして算術平均距離δを求める。
【0020】
[接合体の第1例]
図4は本発明の実施形態の接合体の第1例を示す模式的断面図である。
図5は本発明の実施形態の接合体の第1例の一部を拡大して示す模式的断面図である。
なお、
図4及び
図5において、
図1~
図3に示す異方導電性部材10の構成と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図4に示す接合体12は、異方導電性部材10と、被接合部材として半導体素子30及び半導体素子31と接合されたものである。被接合部材が接続対象である。
接合体12は、異方導電性部材10と被接合部材との間に樹脂49が充填されている。
半導体素子30は、例えば、素子基板32の表面32aに、3つの電極34と、3つの電極34の間の導通を防ぐ絶縁層36が設けられている。3つの電極34は、素子基板32の表面32aからの高さが同じである。
また、半導体素子31は、例えば、素子基板37の表面37aに、3つの電極38と、3つの電極38の間の導通を防ぐ絶縁層39が設けられている。3つの電極38は、素子基板37の表面37aからの高さが同じである。
電極34及び電極38は、異方導電性部材10の導通路22と接合されている。例えば、
図5に示すように、電極34の表面34aと導通路22の突出部22aとが接触した状態で接合される。このとき、電極34の表面34aにより導通路22の突出部22aが押圧されて突出部22aが変形するが、上述のように突出部22aの座屈が抑制される。このため、接合体12では、半導体素子30と半導体素子31とに対して十分な接合強度を得ることができる。また、突出部22aの座屈が抑制されるため、接続対象と十分な導電性を確保でき、更には隣接する突出部との接触もなく、短絡の発生も抑制される。
【0021】
電極34及び電極38は、外部との信号のやり取り、又は電圧若しくは電流の授受を行うためのものであり、例えば、銅又は半田で構成される。半田で構成された電極のことを半田バンプともいう。
絶縁層39は、電極間の導通を防ぐことができれば、その構成は、特に限定されるものではなく、半導体素子に用いられる公知の絶縁層で構成することができる。絶縁層39は、例えば、シリコン酸化膜(Si02)、シリコン窒化膜(Si3N4)、PSG(Phospho Silicate Glass)膜、BPSG(Boron Phospho Silicate Glass)膜、SOG(Spin On Glass)膜で構成される。
【0022】
樹脂層33は、例えば、異方導電性部材10の樹脂層24により形成される。この場合、樹脂層24を有する異方導電性部材10を接合に用いる。
また、半導体素子30の電極34の表面34aに設けられた樹脂層(図示せず)、及び半導体素子31の電極38の表面38aに設けられた樹脂層(図示せず)により樹脂層33を形成することもできる。
また、異方導電性部材10の導通路22と電極34、38とを接合した後に、導通路22と電極34との間、導通路22と電極38との間に樹脂剤を供給して樹脂層33を形成することもできる。
【0023】
(接合体の第1例の製造方法)
図4に示す接合体12は、例えば、
図6に示すように接合される。
図6は本発明の実施形態の接合体の第1例の製造方法を示す模式的断面図である。
なお、
図6において、
図4及び
図5に示す接合体12の構成と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図6に示すように、異方導電性部材10を挟んで、半導体素子30と半導体素子31とを配置する。このとき、例えば、半導体素子30、31と異方導電性部材10とに、それぞれ設けられたアライメントマーク(図示せず)を用いて位置合せを行う。
なお、アライメントマークを用いた位置合せは、例えば、アライメントマークの画像又は反射像を取得し、アライメントマークの位置情報を求めることができれば、特に限定されるものではなく、公知の位置合せの手法を適宜利用可能である。
図6に示すように異方導電性部材10には樹脂層24が設けられており、樹脂層24が、
図4に示す接合体12の樹脂層33を形成する。
【0024】
次に、半導体素子30と異方導電性部材10、半導体素子31と異方導電性部材10と接合する。これにより、
図4に示す接合体12を製造できる。
なお、上述の半導体素子30と異方導電性部材10、半導体素子31と異方導電性部材10とを接合することが接合工程である。接合工程では、例えば、仮接合した状態で、予め定めた条件にて接合してもよいが、仮接合を省略してもよい。なお、接合工程の接合のことを本接合ともいう。
【0025】
仮接合とは、半導体素子30、31と異方導電性部材10とを位置合せした状態で固定することをいう。
仮接合プロセスにおける温度条件は特に限定されないが、0℃~300℃であることが好ましく、10℃~200℃であることがより好ましく、常温(23℃)~100℃であることが特に好ましい。
同様に、仮接合プロセスにおける加圧条件は特に限定されないが、10MPa以下であることが好ましく、5MPa以下であることがより好ましく、1MPa以下であることが特に好ましい。
【0026】
本接合における温度条件は特に限定されないが、仮接合の温度よりも高い温度であることが好ましく、具体的には、120℃~350℃であることがより好ましく、200℃~300℃であることが特に好ましい。
また、本接合における加圧条件は特に限定されないが、30MPa以下であることが好ましく、0.1MPa~20MPaであることがより好ましい。
また、本接合の時間は特に限定されないが、1秒~60分であることが好ましく、5秒~10分であることがより好ましい。
上述の条件で本接合を行うことにより、導通路22の突出部22aと電極34の表面34aとが接合し、導通路22の突出部22bと電極38の表面38aとが接合する。このとき、上述のように導通路22の突出部22a及び突出部22bは、いずれも座屈が抑制され、例えば、突出部22a、22bが倒れて隣接する突出部22a、22bと接触することも抑制される。これにより、接続対象に対して十分な接合強度が確保され、接続対象と十分な導電性が確保され、かつ短絡の発生も抑制される。
【0027】
[接合体の第2例]
図7は本発明の実施形態の接合体の第2例の一部を拡大して示す模式的断面図である。
なお、
図7において、
図4及び
図5に示す接合体12の構成と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図7に示す接合体13は、
図4及び
図5に示す接合体12に比して、半導体素子30が、高さが異なる電極35を有する点が異なり、それ以外の構成は、
図4及び
図5に示す接合体12と同様の構成である。電極35は、電極34よりも高さが高い。
接合体13は、電極34と、高さが高い電極35とが、異方導電性部材10と接合される。接合体13において、電極34と電極35とでは、電極35の方が異方導電性部材10に接近しており、導通路22の突出部22aを多く変形させる。この場合でも、上述のように突出部22aの座屈が抑制される。このように半導体素子30が相対的に高い電極35を有する構成であっても、半導体素子30と半導体素子31とに対して十分な接合強度を得ることができる。また、突出部22aの座屈が抑制されるため、十分な導電性が確保され、かつ短絡の発生も抑制される。
【0028】
なお、接合体12及び接合体13においては、被接合部材は、複数の金属層が設けられた接合面を有し、接合面の面積は、異方導電性部材の突出部が突出した面の面積よりも広いことが好ましい。
ここで、上述の半導体素子30、31は、複数の電極が、素子基板の表面に設けられており、素子基板の表面が接合面に相当する。素子基板の表面の面積は、異方導電性部材10の突出部22a、22bが突出した絶縁性基材20の表面20a及び裏面20bの面積よりも広いことが好ましい。
【0029】
以下、異方導電性部材の構成についてより具体的に説明する。
【0030】
(絶縁性基材)
絶縁性基材20は、電気的な絶縁性を有するものであり、導電性物質で構成された、複数の導通路22を互いに電気的に絶縁された状態に保つ。絶縁性基材20は、導通路22が形成される複数の細孔21を有する。絶縁性基材の組成等については後に説明する。
絶縁性基材20の厚み方向Dtにおける長さ、すなわち、絶縁性基材20の厚みhtは、1~1000μmの範囲内であるのが好ましく、5~500μmの範囲内であるのがより好ましく、10~300μmの範囲内であるのが更に好ましく、10μm以上30μm以下であることが特に好ましい。絶縁性基材20の厚みがこの範囲であると、絶縁性基材20の取り扱い性が良好となる。
【0031】
絶縁性基材の厚みは、上述の線Lcを、絶縁性基材20の表面20a側と裏面20b側についてそれぞれ求める。表面20a側の線Lcと、裏面20b側の線Lcとの厚み方向Dtにおける距離を絶縁性基材の厚みとする。
【0032】
絶縁性基材20は、例えば、無機材料からなり、従来公知の異方導電性フィルム等を構成する絶縁性基材と同程度の電気抵抗率(1014Ω・cm程度)を有するものであれば特に限定されない。
なお、「無機材料からなり」とは、後述する樹脂層を構成する高分子材料と区別するための規定であり、無機材料のみから構成された絶縁性基材に限定する規定ではなく、無機材料を主成分(50質量%以上)とする規定である。
【0033】
絶縁性基材としては、例えば、金属酸化物基材、金属窒化物基材、ガラス基材、シリコンカーバイド、シリコンナイトライド等のセラミックス基材、ダイヤモンドライクカーボン等のカーボン基材、ポリイミド基材、これらの複合材料等が挙げられる。絶縁性基材としては、これ以外に、例えば、貫通孔を有する有機素材上に、セラミックス材料又はカーボン材料を50質量%以上含む無機材料で成膜したものであってもよい。
【0034】
絶縁性基材は、所望の平均開口径を有するマイクロポアが貫通孔として形成される。絶縁性基材は、導通路を形成しやすいという理由から、金属酸化物基材であることが好ましく、バルブ金属の陽極酸化膜であることがより好ましい。
ここで、バルブ金属としては、具体的には、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン等が挙げられる。これらのうち、寸法安定性がよく、比較的安価であることからアルミニウムの陽極酸化膜(基材)であることが好ましい。このため、アルミニウム基板を用いて、絶縁性基材である陽極酸化膜を形成し、異方導電性部材を製造することが好ましい。
陽極酸化膜の厚みは、上述の絶縁性基材20の厚みである。
【0035】
<アルミニウム基板>
絶縁性基材である陽極酸化膜を形成するためのアルミニウム基板は、特に限定されず、その具体例としては、純アルミニウム板;アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板;低純度のアルミニウム(例えば、リサイクル材料)に高純度アルミニウムを蒸着させた基板;シリコンウエハ、石英、ガラス等の表面に蒸着、スパッタ等の方法により高純度アルミニウムを被覆させた基板;アルミニウムをラミネートした樹脂基板;等が挙げられる。
【0036】
アルミニウム基板のうち、陽極酸化処理工程により陽極酸化膜を設ける表面は、アルミニウム純度が、99.5質量%以上であることが好ましく、99.9質量%以上であることがより好ましく、99.99質量%以上であることが更に好ましい。アルミニウム純度が上述の範囲であると、貫通孔配列の規則性が十分となる。マイクロポアは、細孔となるものである。
アルミニウム基板は、陽極酸化膜を形成することができれば、特に限定されるものではなく、例えば、JIS(Japanese Industrial Standards) 1050材が用いられる。
【0037】
また、アルミニウム基板のうち陽極酸化処理工程を施す片側の表面は、あらかじめ熱処理、脱脂処理及び鏡面仕上げ処理が施されることが好ましい。
ここで、熱処理、脱脂処理及び鏡面仕上げ処理については、特開2008-270158号公報の[0044]~[0054]段落に記載された各処理と同様の処理を施すことができる。
陽極酸化処理の前の鏡面仕上げ処理は、例えば、電解研磨であり、電解研磨には、例えば、リン酸を含有する電解研磨液が用いられる。
【0038】
<細孔の平均直径>
細孔21の平均直径は、1μm以下であることが好ましく、5~500nmであることがより好ましく、20~400nmであることが更に好ましく、40~200nmであることがより一層好ましく、50~100nmであることが最も好ましい。細孔21の平均直径dが1μm以下であり、上述の範囲であると、上述の平均直径を有する導通路22を得ることができる。
細孔21の平均直径は、例えば、以下のように求めることができる。まず、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて絶縁性基材20の表面を真上から倍率100~10000倍で撮影し撮影画像を得る。撮影画像において、周囲が環状に連なっている細孔を少なくとも20個抽出し、その直径を測定し開口径とし、これら開口径の平均値を細孔の平均直径として算出する。
なお、倍率は、細孔を20個以上抽出できる撮影画像が得られるように上述した範囲の倍率を適宜選択することができる。また、開口径は、細孔部分の端部間の距離の最大値を測定する。すなわち、細孔の開口部の形状は略円形状に限定はされないので、開口部の形状が非円形状の場合には、細孔部分の端部間の距離の最大値を開口径とする。従って、例えば、2以上の細孔が一体化したような形状の細孔の場合にも、これを1つの細孔とみなし、細孔部分の端部間の距離の最大値を開口径とする。
【0039】
<導通路>
複数の導通路22は、上述のように絶縁性基材20、例えば、陽極酸化膜において、それぞれ互いに電気的に絶縁された状態で設けられている。
複数の導通路22は、それぞれ電気導電性を有する柱状の導電体であり、導電性物質で構成される。導電性物質は、特に限定されるものではなく、例えば、金属が挙げられる。金属の具体例としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)及びコバルト(Co)等が好適に例示される。導電性物質としては、電気伝導性、及びめっき法による形成の観点から、銅(Cu)、金(Au)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)が好ましく、銅(Cu)、金(Au)及びアルミニウム(Al)がより好ましく、銅(Cu)が更に好ましい。
金属は酸化物導電体に比して延性等に優れ変形しやすく、接合の際の圧縮でも変形しやすいため、導通路は金属で構成することが好ましい。
【0040】
導通路22の平均直径dは、1μm以下であることが好ましく、5~500nmであることがより好ましく、20~400nmであることがさらに好ましく、40~200nmであることがより一層好ましく、50~100nmであることが最も好ましい。
導通路22の密度は、2万個/mm
2以上であることが好ましく、200万個/mm
2以上であることがより好ましく、1000万個/mm
2以上であることがさらに好ましく、5000万個/mm
2以上であることが特に好ましく、1億個/mm
2以上であることが最も好ましい。
さらに、隣接する各導通路22の中心間距離pは、20nm~500nmであることが好ましく、40nm~200nmであることがより好ましく、50nm~140nmであることがさらに好ましい。
導通路22に関し、隣接する突出部との間隔w(
図1参照)は、20nm~200nmであり、40nm~100nmであることが好ましい。隣接する突出部との間隔が上述の範囲であると、導通路22の絶縁性基材20の表面20a又は裏面20bでも導通路22の間隔を維持できる。これにより、接合時において、導通路22の短絡が抑制され、接合時の信頼性が増す。
【0041】
導通路の平均直径は、例えば、以下のように求めることができる。まず、走査電子顕微鏡を用いて絶縁性基材の表面を真上から倍率100~10000倍で撮影し撮影画像を得る。撮影画像において、周囲が環状に連なっている導通路を少なくとも20個抽出し、その直径を測定し開口径とし、これら開口径の平均値を導通路の平均直径として算出する。
なお、倍率は、導通路を20個以上抽出できる撮影画像が得られるように上述した範囲の倍率を適宜選択することができる。また、開口部の形状が非円形状の場合には、導通路部分の端部間の距離の最大値を開口径とする。従って、例えば、2以上の導通路が一体化したような形状の導通路の場合にも、これを1つの導通路とみなし、導通路部分の端部間の距離の最大値を開口径とする。導通路22の平均直径dは、突出部の平均径と同じである。
導通路22の絶縁性基材20の表面20a側における形状が円ではない場合、絶縁性基材20の表面20a側の平均直径は、円相当径の平均直径とする。また、導通路22の絶縁性基材20の裏面20b側における形状が円ではない場合、絶縁性基材20の裏面20b側の平均直径は、円相当径の平均直径とする。
また、導通路22における絶縁性基材20の表面20a側における平均直径dは、絶縁性基材20の表面20aについての走査電子顕微鏡により得られた表面画像から測定できる。導通路22における絶縁性基材20の裏面20bにおける平均直径dは、絶縁性基材20の裏面20bについての走査電子顕微鏡により得られた裏面画像から測定できる。
【0042】
上述のように表面画像及び裏面画像を用いる場合に、突出部により平均直径の測定を行いにくい場合、溶解等により突出部を除去する。これにより、細孔が現れる。この状態の表面画像の複数の細孔の開口径を測定して、表面の細孔の平均開口径を、表面側の平均直径の代わりに用いることができる。また、同様に、この状態の裏面画像の複数の細孔の開口径を測定して、裏面の細孔の平均開口径を、裏面側の平均直径の代わりに用いることができる。
上述の細孔の平均開口径は、例えば、以下のように測定することができる。まず、上述の表面画像において、細孔に相当するものを20個選択し、選択した20個の細孔に相当するものについて、細孔の開口に相当する箇所の直径を測定する。測定した細孔の開口に相当する箇所の直径の平均値を算出し、この平均値を、表面側の細孔の平均開口径とする。
また、上述の裏面画像において、細孔に相当するものを20個選択し、選択した20個の細孔に相当するものについて、細孔の開口に相当する箇所の直径を測定する。測定した細孔の開口に相当する箇所の直径の平均値を算出し、この平均値を、裏面側の細孔の平均開口径とする。
【0043】
隣接する各導通路22の中心間距離pは、上述のようにして得た絶縁性基材20の撮影画像において、特定した導通路の中心位置(図示せず)を、さらに特定する。隣接する導通路の中心位置の間の距離を10箇所に求めた。この平均値を、隣接する各導通路22の中心間距離pとした。中心位置は、上述の撮影画像において導通路22に相当する領域の中心位置である。なお、撮影画像において、領域の中心位置の算出には、公知の画像解析法が用いられる。
【0044】
<<突出部>>
突出部は導通路の一部であり、柱状である。突出部は、被接合部材との接触面積を大きくできることから、円柱状であることが好ましい。
突出部22aの絶縁性基材20の厚み方向Dtにおける長さh、及び突出部22bの絶縁性基材20の厚み方向Dtにおける長さhは、2nm~6000nmであることが好ましく、5nm~3000nmがより好ましい。長さhが10nm~1000nmであれば、被接合部材と良好に接合できる。
突出部22aの長さh及び突出部22bの長さhは、上述の絶縁性基材20の表面20aの平均面を突出部22aの長さの基準とする。
上述の突出部22a及び突出部22bの絶縁性基材20の厚み方向Dtにおける長さhが2nm~6000nmであれば、被接合物側のバンプのバンプ高さ分布追従性が良好であり、被接合物側のバンプ面の高さ精度を要求しない。
【0045】
突出部22aの長さh及び突出部22bの長さhについては、絶縁性基材20の厚み方向Dtにおける断面について、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて倍率100000倍の撮影画像を取得する。撮影画像において、絶縁性基材の表面側の線Lc及び絶縁性基材の裏面側の線Lcを上述のようにして求める。
次に、撮影画像において、10個の突出部22aを選択する。選択した10個の突出部22aの頂部に該当する点を特定する。特定した突出部22aの頂部に該当する点と、絶縁性基材の表面側の線Lcとの、絶縁性基材20の厚み方向Dtにおける距離を、10個の突出部22aについてそれぞれ求める。10個の突出部22aの頂部に該当する点の上述の距離の平均値を求める。この平均値を、突出部22aの長さhとする。
また、撮影画像において、10個の突出部22bを選択する。選択した10個の突出部22bの頂部に該当する点を特定する。特定した突出部22bの頂部に該当する点と、絶縁性基材の裏面側の線Lcとの、絶縁性基材20の厚み方向Dtにおける距離を、10個の突出部22bについてそれぞれ求める。10個の突出部22bの頂部に該当する点の上述の距離の平均値を求める。この平均値を、突出部22bの長さhとする。
突出部の直径をdとし、突出部の絶縁性基材の厚み方向における長さhとするとき、アスペクト比を表すd/hが0.1~20であることが好ましい。アスペクト比d/hが0.1~20であれば、安定して製造でき、かつ接合強度が優れる。
【0046】
〔樹脂層〕
樹脂層は、上述のように絶縁性基材の表面及び裏面のうち、少なくとも一方の面を覆うものであり、絶縁性基材及び導通路を保護する。樹脂層は、例えば、導通路が突出部を有するものであれば、突出部を埋設する。すなわち、樹脂層は、絶縁性基材から突出した導通路の端部を被覆し、突出部を保護する。
樹脂層は、上述の機能を発揮するために、例えば、50℃~200℃の温度範囲で流動性を示し、200℃以上で硬化するものであることが好ましい。樹脂層は、例えば、熱可塑性樹脂等で構成される熱可塑性層であるが、樹脂層については後に詳細に説明する。
樹脂層24の平均厚みhmは、10μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下である。樹脂層24の平均厚みhmが上述の10μm以下であれば、導通路22の突出部を保護し、かつ半導体デバイス等の接続対象との接合の際に電極の周囲を充填する効果を十分に発揮できる。
樹脂層24の平均厚みhmは、絶縁性基材20の表面20aからの平均距離、又は絶縁性基材20の裏面20bからの平均距離である。上述の樹脂層24の平均厚みhmは、樹脂層を異方導電性部材10の厚み方向Dtに切断し、走査電子顕微鏡を用いて切断断面の撮影画像を取得する。撮影画像において、絶縁性基材の表面側の線Lc及び絶縁性基材の裏面側の線Lcを上述のようにして求める。
次に、撮影画像において、樹脂層の表面に該当する箇所を10箇所選択する。選択した箇所と、絶縁性基材の表面側の線Lcとの距離を、10箇所について、それぞれ求める。10箇所の距離の平均値を求める。この平均値を、絶縁性基材20の表面20a側の樹脂層24の平均厚みhmとする。
更に絶縁性基材20の裏面20b側の樹脂層についても、同様に撮影画像において、樹脂層の表面に該当する箇所を10箇所選択する。選択した箇所と、絶縁性基材の裏面側の線Lcとの距離を、10箇所について、それぞれ求める。10箇所の距離の平均値を求める。この平均値を、絶縁性基材20の裏面20b側の樹脂層24の平均厚みhmとする。
【0047】
樹脂層は、以下に示す組成を用いることもできる。以下、樹脂層の組成について説明する。例えば、樹脂層は、高分子材料を含有するものであり、酸化防止材料を含んでもよい。
樹脂層を構成する樹脂材料としては、具体的には、例えば、エチレン系共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、及びセルロース系樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。樹脂層を構成する樹脂材料として、ポリアクリロニトリルも用いることができる。樹脂層を構成する樹脂材料として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート系樹脂等が挙げられる。なかでも、絶縁信頼性がより向上し、耐薬品性に優れる理由から、ポリイミド樹脂及び/又はエポキシ樹脂を用いるのが好ましい。
樹脂層としては、上述のもの以外に、例えば、国際公開第2022/163260号に記載のアクリルポリマーと、アクリルモノマーと、マレイミド化合物とを含む主組成物を含有するものを用いることができる。
【0048】
((異方導電性部材の被接合部材))
異方導電性部材を電子接続部材として用いた場合、接続対象である被接合部材は、例えば、半導体素子、電極又は素子領域を有するものである。電極を有するものとしては、例えば、単体で特定の機能を発揮する半導体素子等が例示されるが、複数のものが集まって特定の機能を発揮するものも含まれる。更には、配線部材等の電気信号を伝達するだけのものも含まれ、プリント配線板等も電極を有するものに含まれる。
素子領域とは、電子素子として機能するための各種の素子構成回路等が形成された領域である。素子領域には、例えば、フラッシュメモリ等のようなメモリ回路、マイクロプロセッサ及びFPGA(field-programmable gate array)等のような論理回路が形成された領域、無線タグ等の通信モジュールならびに配線が形成された領域である。素子領域には、これ以外にMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)が形成されてもよい。MEMSとしては、例えば、センサー、アクチュエーター及びアンテナ等が挙げられる。センサーには、例えば、加速度、音、及び光等の各種のセンサーが含まれる。光センサーは、光を検出することができれば、特に限定されるものではなく、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサー又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサーが用いられる。
上述のように、素子領域は素子構成回路等が形成されており、半導体チップを外部と電気的に接続するために電極(図示せず)が設けられている。素子領域は電極が形成された電極領域を有する。なお、素子領域の電極とは、例えば、Cuポストである。電極領域とは、基本的には、形成された全ての電極を含む領域のことである。しかしながら、電極が離散して設けられていれば、各電極が設けられている領域のことも電極領域という。
構造体の形態としては、半導体チップのように個片化されたものでも、半導体ウエハのような形態でもよく、配線層の形態でもよい。
また、構造体は、接続対象物と接合されるが、接続対象物は、上述の半導体素子等に特に限定されるものではなく、例えば、ウエハ状態の半導体素子、チップ状態の半導体素子、プリント配線板、及びヒートシンク等が接続対象物となる。
【0049】
((半導体素子))
半導体素子は、上述のもの以外に、例えば、ロジックLSI(Large Scale Integration)(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASSP(Application Specific Standard Product)等)、マイクロプロセッサ(例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等)、メモリ(例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、HMC(Hybrid Memory Cube)、MRAM(Magnetic RAM:磁気メモリ)とPCM(Phase-Change Memory:相変化メモリ)、ReRAM(Resistive RAM:抵抗変化型メモリ)、FeRAM(Ferroelectric RAM:強誘電体メモリ)、フラッシュメモリ(NAND(Not AND)フラッシュ)等)、LED(Light Emitting Diode)、(例えば、携帯端末のマイクロフラッシュ、車載用、プロジェクタ光源、LCDバックライト、一般照明等)、パワー・デバイス、アナログIC(Integrated Circuit)、(例えば、DC(Direct Current)-DC(Direct Current)コンバータ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、(例えば、加速度センサー、圧力センサー、振動子、ジャイロセンサ等)、ワイヤレス(例えば、GPS(Global Positioning System)、FM(Frequency Modulation)、NFC(Nearfield communication)、RFEM(RF Expansion Module)、MMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)、WLAN(Wireless Local Area Network)等)、ディスクリート素子、BSI(Back Side Illumination)、CIS(Contact Image Sensor)、カメラモジュール、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、Passiveデバイス、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ、RF(Radio Frequency)フィルタ、RFIPD(Radio Frequency Integrated Passive Devices)、BB(Broadband)等が挙げられる。
半導体素子は、例えば、1つで完結したものであり、半導体素子単体で、回路又はセンサー等の特定の機能を発揮するものである。半導体素子は、インターポーザー機能を有するものであってもよい。また、例えば、インターポーザー機能を有するデバイス上に、論理回路を有する論理チップ、及びメモリーチップ等の複数のデバイスを積層することも可能である。また、この場合、それぞれのデバイスごとに電極サイズが異なっていても接合することができる。
【0050】
(異方導電性部材の製造方法の一例)
次に、異方導電性部材の製造方法について説明する。
図8~
図14は本発明の実施形態の異方導電性部材の製造方法の一例を工程順に示す模式的断面図である。なお、
図8~
図14において、
図1~
図3に示す異方導電性部材10の構成と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
異方導電性部材の製造方法の一例では、
図1に示す異方導電性部材10において、絶縁性基材20がアルミニウムの陽極酸化膜で構成されるものを例にして説明する。アルミニウムの陽極酸化膜を形成するために、アルミニウム基板を用いる。このため、異方導電性部材の製造方法の一例では、まず、
図8に示すように、アルミニウム基板40を用意する。
アルミニウム基板40は、最終的に得られる異方導電性部材10(
図1参照)の絶縁性基材20(
図1参照)の厚み、加工する装置等に応じて大きさ及び厚みが適宜決定されるものである。アルミニウム基板40は、例えば、外形が円形状の板材である。なお、アルミニウム基板に限定されるものではなく、電気的に絶縁な絶縁膜を形成できる金属基板を用いることができる。陽極酸化により陽極酸化膜を形成できるバルブ金属を用いることができる。
【0051】
次に、アルミニウム基板40の片側の表面40a(
図8参照)を陽極酸化処理する。これにより、アルミニウム基板40の片側の表面40a(
図8参照)が陽極酸化されて、
図9に示すように、アルミニウム基板40の厚み方向Dtに延在する複数の細孔21を有する陽極酸化膜44が形成される。
陽極酸化膜44は、上述の絶縁性基材20(
図1参照)である。
図9に示すように各細孔21の底部にはバリア層43が存在する。上述の陽極酸化する工程を陽極酸化処理工程という。
複数の細孔21を有する陽極酸化膜44には、上述のようにそれぞれ細孔21の底部にバリア層43が存在するが、バリア層43を除去する。これにより、バリア層43がない、複数の細孔21を有する陽極酸化膜44(
図10参照)を得る。なお、上述のバリア層43を除去する工程をバリア層除去工程という。
【0052】
バリア層除去工程において、アルミニウムよりも水素過電圧の高い金属M1のイオンを含むアルカリ水溶液を用いることにより、陽極酸化膜44のバリア層43を除去すると同時に、細孔21の底部42c(
図10参照)の面42d(
図10参照)に金属(金属M1)からなる金属層45a(
図10参照)を形成する。これにより、細孔21に露出したアルミニウム基板40は金属層45aにより被覆される。これにより、細孔21へめっきによる金属充填の際に、めっきが進行しやすくなり、細孔に金属が十分に充填されないことが抑制され、細孔21への金属の未充填等が抑制され、導通路22(
図1参照)の形成不良が抑制される。
なお、上述の金属M1のイオンを含むアルカリ水溶液は更にアルミニウムイオン含有化合物(アルミン酸ソーダ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム等)を含んでもよい。アルミニウムイオン含有化合物の含有量は、アルミニウムイオンの量に換算して0.1~20g/Lが好ましく、0.3~12g/Lがより好ましく、0.5~6g/Lが更に好ましい。
【0053】
次に、厚み方向Dtに延在する複数の細孔21を有する陽極酸化膜44の表面44aからめっきを行う。この場合、金属層45aを電解めっきの電極として用いることができる。めっきには金属45bを用い、細孔21の底部42c(
図10参照)の面42d(
図10参照)に形成された金属層45aを起点にして、めっきが進行する。これにより、
図11に示すように、陽極酸化膜44の細孔21の内部に、導通路22を構成する導電性物質として金属45bが充填される。細孔21の内部に金属45bを充填することにより、導電性を有する導通路22が形成される。なお、金属層45aと金属45bとをまとめて充填した金属45という。
陽極酸化膜44の複数の細孔21に金属45bを充填して、複数の導通路22を形成する工程を、金属充填工程という。上述のように導通路22は導電性物質で構成されるものであり、金属を充填することに限定されるものではない。金属充填工程には、電解めっきが用いられ、金属充填工程については後に詳細に説明する。なお、陽極酸化膜44の表面44aが絶縁性基材20の一方の面に相当する。陽極酸化膜44の複数の細孔21に、金属、及び金属以外も含め導電性物質を充填して、複数の導通路22を形成する工程を、単に充填工程という。
【0054】
金属充填工程の後に、
図11に示す陽極酸化膜44の表面44aを研磨して平滑化する研磨工程を実施する。研磨には、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)処理が用いられる。
次に、研磨工程の後に、
図12に示すように、陽極酸化膜44のアルミニウム基板40が設けられていない側の表面20aを厚み方向Dtに一部除去し、金属充填工程で充填した金属45を陽極酸化膜44の表面44aよりも突出させる。すなわち、導通路22を陽極酸化膜44の表面44aよりも突出させる。これにより、突出部22aが得られる。導通路22を陽極酸化膜44の表面44aよりも突出させる工程を、表面突出工程という。
なお、表面突出工程では、例えば、導通路22を構成する金属を溶解せずに陽極酸化膜44を溶解させる溶液を用いて、陽極酸化膜44の表面44aを溶解させる。このとき、溶解させる溶液を液滴状にして陽極酸化膜44の表面44aに噴射するスプレーエッチング法が用いられる。これにより、
図3に示す絶縁性基材20の表面20aが得られる。
【0055】
表面突出工程の後に、
図13に示すようにアルミニウム基板40を除去する。アルミニウム基板40を除去する工程を基板除去工程という。一方の突出部だけの構成の場合、
図13に示す状態のものを異方導電性部材10とすることができる。この場合、
図13に示す状態で、突出部22aが突出している陽極酸化膜44の表面44a全面を覆う樹脂層24(
図1参照)を形成して、異方導電性部材10とする。
【0056】
次に、
図14に示すように、基板除去工程の後に陽極酸化膜44のアルミニウム基板40が設けられていた側の表面、すなわち、陽極酸化膜44の裏面44bを研磨して平滑化する研磨工程を実施する。研磨には、例えば、CMP処理が用いられる。
次に、陽極酸化膜44の裏面44bの研磨工程の後に、
図14に示すように陽極酸化膜44の裏面44bを厚み方向Dtに一部除去し、金属充填工程で充填した金属45、すなわち、導通路22を陽極酸化膜44の裏面44bよりも突出させる。これにより、突出部22bが得られる。導通路22を陽極酸化膜44の裏面44bよりも突出させる工程を、裏面突出工程という。なお、裏面突出工程は、必ずしも実施する必要はない。裏面突出工程を実施しない場合、上述の突出部22bが形成されない。
なお、裏面突出工程では、表面突出工程と同様に、例えば、導通路22を構成する金属を溶解せずに陽極酸化膜44を溶解させる溶液を用いて、陽極酸化膜44の裏面44bを溶解させる。このとき、溶解させる溶液を液滴状にして陽極酸化膜44の裏面44bに噴射するスプレーエッチング法が用いられる。これにより、
図3に示す絶縁性基材20の表面20aと同様の裏面20bが得られる。
【0057】
上述の表面突出工程及び裏面突出工程は、両方の工程を有する態様であってもよいが、表面突出工程及び裏面突出工程のうち、一方の工程を有する態様であってもよい。表面突出工程及び裏面突出工程が「突出工程」に該当しており、表面突出工程及び裏面突出工程はいずれも突出工程である。突出工程のことをトリミング工程ともいう。
突出工程を実施する場合、突出工程後の陽極酸化膜44の厚みが、絶縁性基材の厚みである。
【0058】
次に、
図14に示すように突出部22aが突出している陽極酸化膜44の表面44a全面を覆う樹脂層24(
図1参照)を形成する。また、突出部22bが突出している陽極酸化膜44の裏面44b全面を覆う樹脂層24(
図1参照)を形成する。これにより、
図1に示す異方導電性部材10が製造される。
【0059】
〔陽極酸化処理工程〕
陽極酸化処理は、従来公知の方法を用いることができるが、マイクロポア配列の規則性を高くし、構造体の異方導電性を担保する観点から、自己規則化法又は定電圧処理を用いることが好ましい。これにより、例えば、細孔及び導体が六角形状の配置となる。
ここで、陽極酸化処理の自己規則化法及び定電圧処理については、特開2008-270158号公報の[0056]~[0108]段落及び[
図8]に記載された各処理と同様の処理を施すことができる。
【0060】
〔保持工程〕
異方導電性部材を製造する場合、保持工程を有してもよい。保持工程は、上述の陽極酸化処理工程の後に、1V以上かつ上述の陽極酸化処理工程における電圧の30%未満の範囲から選択される保持電圧の95%以上105%以下の電圧に通算5分以上保持する工程である。言い換えると、保持工程は、上述の陽極酸化処理工程の後に、1V以上かつ上述の陽極酸化処理工程における電圧の30%未満の範囲から選択される保持電圧の95%以上105%以下の電圧で通算5分以上電解処理を施す工程である。
ここで、「陽極酸化処理における電圧」とは、アルミニウム基板と対極間に印加する電圧であり、例えば、陽極酸化処理による電解時間が30分であれば、30分の間に保たれている電圧の平均値をいう。
【0061】
陽極酸化膜の側壁厚み、すなわち、細孔の深さに対してバリア層の厚みを適切な厚みに制御する観点から、保持工程における電圧が、陽極酸化処理における電圧の5%以上25%以下であることが好ましく、5%以上20%以下であることがより好ましい。
【0062】
また、面内均一性がより向上する理由から、保持工程における保持時間の合計が、5分以上20分以下であることが好ましく、5分以上15分以下であることがより好ましく、5分以上10分以下であることが更に好ましい。
また、保持工程における保持時間は、通算5分以上であればよいが、連続5分以上であることが好ましい。
【0063】
更に、保持工程における電圧は、陽極酸化処理工程における電圧から保持工程における電圧まで連続的又は段階的に降下させて設定してもよいが、面内均一性が更に向上する理由から、陽極酸化処理工程の終了後、1秒以内に、上述の保持電圧の95%以上105%以下の電圧に設定することが好ましい。
【0064】
上述の保持工程は、例えば、上述の陽極酸化処理工程の終了時に電解電位を降下させることにより、上述の陽極酸化処理工程と連続して行うこともできる。
上述の保持工程は、電解電位以外の条件については、上述の従来公知の陽極酸化処理と同様の電解液及び処理条件を採用することができる。
特に、保持工程と陽極酸化処理工程とを連続して施す場合は、同様の電解液を用いて処理することが好ましい。
【0065】
複数の細孔(マイクロポア)を有する陽極酸化膜には、上述のように細孔の底部にバリア層(図示せず)が存在する。このバリア層を除去するバリア層除去工程を有する。
【0066】
〔バリア層除去工程〕
バリア層除去工程は、例えば、アルミニウムよりも水素過電圧の高い金属M1のイオンを含むアルカリ水溶液を用いて、陽極酸化膜のバリア層を除去する工程である。
上述のバリア層除去工程により、バリア層が除去され、かつ、細孔の底部に、金属M1からなる導電体層が形成されることになる。
ここで、水素過電圧(hydrogen overvoltage)とは、水素が発生するのに必要な電圧をいい、例えば、アルミニウム(Al)の水素過電圧は-1.66Vである(日本化学会誌,1982、(8),p1305-1313)。なお、アルミニウムの水素過電圧よりも高い金属M1の例及びその水素過電圧の値を以下に示す。
<金属M1及び水素(1N H2SO4)過電圧>
・白金(Pt):0.00V
・金(Au):0.02V
・銀(Ag):0.08V
・ニッケル(Ni):0.21V
・銅(Cu):0.23V
・錫(Sn):0.53V
・亜鉛(Zn):0.70V
【0067】
上述のバリア層除去工程において、アルミニウムよりも水素過電圧の高い金属M1のイオンを含むアルカリ水溶液を用いてバリア層を除去することにより、バリア層43を除去するだけでなく、細孔21の底部に露出したアルミニウム基板40にアルミニウムよりも水素ガスが発生しにくい金属M1の金属層45aが形成される。その結果、金属充填の面内均一性が良好となる。これは、めっき液による水素ガスの発生が抑制され、電解めっきによる金属充填が進行しやすくなったと考えられる。
また、バリア層除去工程において、陽極酸化処理工程における電圧の30%未満の範囲から選択される電圧(保持電圧)の95%以上105%以下の電圧に通算5分以上保持する保持工程を設け、金属M1のイオンを含むアルカリ水溶液を適用することを組み合わせることにより、めっき処理時の金属充填の均一性が大きく良化することを見出している。このため、保持工程があることが好ましい。
詳しいメカニズムは不明だが、バリア層除去工程において、金属M1のイオンを含むアルカリ水溶液を用いることでバリア層下部に金属M1の層が形成され、これによりアルミニウム基板と陽極酸化膜との界面がダメージを受けることを抑制することができ、バリア層の溶解の均一性が向上したためと考えられる。
【0068】
なお、バリア層除去工程において、細孔21の底部に金属(金属M1)からなる金属層45aを形成したが、これに限定されるものではなく、バリア層43だけを除去し、細孔21の底にアルミニウム基板40を露出させる。アルミニウム基板40を露出させた状態で、アルミニウム基板40を電解めっきの電極として用いてもよい。
【0069】
細孔21は、マイクロポアを拡径し、かつバリア層を除去して形成することもできる。この場合、マイクロポアの拡径には、ポアワイド処理が用いられる。ポアワイド処理は、陽極酸化膜を、酸水溶液又はアルカリ水溶液に浸漬させることにより、陽極酸化膜を溶解させ、マイクロポアの孔径を拡大する処理である、ポアワイド処理には、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸又はこれらの混合物の水溶液、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウム等の水溶液を用いることができる。
なお、ポアワイド処理でも、マイクロポアの底部のバリア層を除去することができ、ポアワイド処理において水酸化ナトリウム水溶液を用いることにより、マイクロポアが拡径され、かつバリア層が除去される。
【0070】
〔充填工程〕
充填工程は、厚み方向に延在する複数の細孔を有する陽極酸化膜、すなわち、絶縁性基材に対して、細孔に導電性物質を充填して、複数の導通路を形成する工程である。導通路は、例えば、柱状の導電体である。充填工程において金属を充填する場合、金属充填工程という。
<充填工程に用いられる金属>
充填工程において、導通路を形成するために、上述の陽極酸化膜44の細孔21の内部に導電性物質として充填される金属は、電気抵抗率が103Ω・cm以下の材料であることが好ましい。上述の金属の具体例としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)及びコバルト(Co)が好適に例示される。
なお、導電性物質としては、電気伝導性、及びめっき法による形成の観点から、銅(Cu)、金(Au)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)が好ましく、銅(Cu)、及び金(Au)がより好ましく、銅(Cu)が更に好ましい。
【0071】
<めっき法>
厚み方向Dtに延在する複数の細孔21を有する陽極酸化膜44に対して、細孔21の内部に金属を充填するめっき法としては、例えば、電解めっき法又は無電解めっき法を用いることができる。
ここで、着色等に用いられる従来公知の電解めっき法では、選択的に孔中に金属を高アスペクトで析出(成長)させることは困難である。これは、析出金属が孔内で消費され一定時間以上電解を行なってもめっきが成長しないためと考えられる。
そのため、電解めっき法により金属を充填する場合は、パルス電解又は定電位電解の際に休止時間をもうける必要がある。休止時間は、10秒以上必要で、30~60秒であることが好ましい。
また、電解液のかくはんを促進するため、超音波を加えることも望ましい。
【0072】
更に、電解電圧は、通常20V以下であって望ましくは10V以下であるが、使用する電解液における目的金属の析出電位を予め測定し、その電位+1V以内で定電位電解を行なうことが好ましい。なお、定電位電解を行なう際には、サイクリックボルタンメトリを併用できるものが望ましく、Solartron社、BAS株式会社、北斗電工株式会社、IVIUM社等のポテンショスタット装置を用いることができる。
【0073】
(めっき液)
めっき液は、従来公知のめっき液を用いることができる。
具体的には、銅を析出させる場合には硫酸銅水溶液が一般的に用いられるが、硫酸銅の濃度は、1~300g/Lであることが好ましく、100~200g/Lであるのがより好ましい。また、電解液中に塩酸を添加すると析出を促進することができる。この場合、塩酸濃度は10~20g/Lであることが好ましい。
また、金を析出させる場合、テトラクロロ金の硫酸溶液を用い、交流電解でめっきを行なうのが望ましい。
【0074】
めっき液は、界面活性剤を含むことが好ましい。
界面活性剤としては公知のものを使用することができる。従来メッキ液に添加する界面活性剤として知られているラウリル硫酸ナトリウムをそのまま使用することもできる。親水性部分がイオン性(カチオン性・アニオン性・双性)のもの、非イオン性(ノニオン性)のものいずれも利用可能であるが、メッキ対象物表面への気泡の発生等を回避する点でカチオン線活性剤が望ましい。めっき液組成における界面活性剤の濃度は1質量%以下であることが望ましい。
なお、無電解めっき法では、アスペクトの高い細孔からなる孔中に金属を完全に充填には長時間を要するので、電解めっき法を用いて細孔に金属を充填することが望ましい。
【0075】
〔基板除去工程〕
基板除去工程は、充填工程の後に、上述のアルミニウム基板を除去する工程である。アルミニウム基板を除去する方法は特に限定されず、例えば、溶解により除去する方法等が好適に挙げられる。
【0076】
<アルミニウム基板の溶解>
上述のアルミニウム基板の溶解は、陽極酸化膜を溶解しにくく、アルミニウムを溶解しやすい処理液を用いることが好ましい。
このような処理液は、アルミニウムに対する溶解速度が、1μm/分以上であることが好ましく、3μm/分以上であることがより好ましく、5μm/分以上であることが更に好ましい。同様に、陽極酸化膜に対する溶解速度が、0.1nm/分以下となることが好ましく、0.05nm/分以下となるのがより好ましく、0.01nm/分以下となるのが更に好ましい。
具体的には、アルミよりもイオン化傾向の低い金属化合物を少なくとも1種含み、かつ、pHが4以下又は8以上となる処理液であることが好ましく、そのpHが3以下又は9以上であることがより好ましく、2以下又は10以上であることが更に好ましい。
【0077】
アルミニウムを溶解する処理液としては、酸又はアルカリ水溶液をベースとし、例えば、マンガン、亜鉛、クロム、鉄、カドミウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、銅、水銀、銀、パラジウム、白金、金の化合物(例えば、塩化白金酸)、これらのフッ化物、これらの塩化物等を配合したものであることが好ましい。
中でも、酸水溶液ベースが好ましく、塩化物をブレンドすることが好ましい。
特に、塩酸水溶液に塩化水銀をブレンドした処理液(塩酸/塩化水銀)、塩酸水溶液に塩化銅をブレンドした処理液(塩酸/塩化銅)が、処理ラチチュードの観点から好ましい。
なお、アルミニウムを溶解する処理液の組成は、特に限定されるものではく、例えば、臭素/メタノール混合物、臭素/エタノール混合物、及び王水等を用いることができる。
【0078】
また、アルミニウムを溶解する処理液の酸又はアルカリ濃度は、0.01~10mol/Lが好ましく、0.05~5mol/Lがより好ましい。
更に、アルミニウムを溶解する処理液を用いた処理温度は、-10℃~80℃が好ましく、0℃~60℃が好ましい。
【0079】
また、上述のアルミニウム基板の溶解は、上述のめっき工程後のアルミニウム基板を上述の処理液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸漬法が好ましい。このときの接触時間としては、10秒~5時間が好ましく、1分~3時間がより好ましい。
【0080】
なお、異方導電性部材を形成する際に陽極酸化膜44に、例えば、支持基材を設けてもよい。支持基材は陽極酸化膜44と同じ外形状であることが好ましい。支持基材を取り付けることにより、異方導電性部材を形成する際に、陽極酸化膜44の取り扱い性が増す。
【0081】
〔突出工程〕
突出工程は、研磨工程の後に、導通路を、絶縁性基材の一方の面及び他の面のうち、少なくとも1つの面から突出させる工程である。
具体例には、上述の陽極酸化膜44の一部を除去する。陽極酸化膜44の一部の除去には、例えば、導通路22を構成する金属を溶解せず、陽極酸化膜44、すなわち、酸化アルミニウム(Al2O3)を溶解する酸水溶液又はアルカリ水溶液が用いられる。上述の酸水溶液又はアルカリ水溶液を液滴状にして、金属が充填された細孔21を有する陽極酸化膜44に接触させることにより、陽極酸化膜44を一部除去する。上述の酸水溶液又はアルカリ水溶液を液滴状にして陽極酸化膜44に接触させる方法として、上述のように溶解させる溶液を液滴状にして絶縁性基材、すなわち、陽極酸化膜44に噴射するスプレーエッチング法が用いられる。
【0082】
酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸及び塩酸等の無機酸又はこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。中でもクロム酸を含有しない水溶液が安全性に優れる点で好ましい。酸水溶液の濃度は1~10質量%であることが好ましい。酸水溶液の温度は、25~60℃であることが好ましい。
また、アルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1~5質量%であることが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20~35℃であることが好ましい。
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液又は0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
【0083】
酸水溶液又はアルカリ水溶液への浸漬時間は、8~120分であることが好ましく、10~90分であるのがより好ましく、15~60分であるのが更に好ましい。ここで、浸漬時間は、短時間の浸漬処理を繰り返した場合には、各浸漬時間の合計をいう。なお、各浸漬処理の間には、洗浄処理を施してもよい。
【0084】
また、金属45、すなわち、導通路22を陽極酸化膜44の表面44a又は裏面44bより突出させる程度であるが、上述のように導通路22を陽極酸化膜44の表面44a又は裏面44bよりも、10nm~1000nm突出させることが好ましい。すなわち、上述の突出部22aの厚み方向Dtにおける長さhは、被接合部材との接合性が良好になるため、それぞれ10nm~1000nmであることが好ましく、50nm~500nmがより好ましい。
【0085】
導通路22の突出部の厚み方向Dtにおける長さhを厳密に制御する場合は、細孔21の内部に、金属等の導電性物質を充填した後、陽極酸化膜44と、金属等の導電性物質の端部とを同一平面状になるように加工した後、陽極酸化膜等の絶縁性基材を選択的に除去することが好ましい。
また、上述の金属の充填後、又は突出工程の後に、金属の充填に伴い発生した導通路22内の歪みを軽減する目的で、加熱処理を施すことができる。
加熱処理は、金属の酸化を抑制する観点から還元性雰囲気で施すことが好ましく、具体的には、酸素濃度が20Pa以下で行うことが好ましく、真空下で行うことがより好ましい。ここで、真空とは、大気よりも、気体密度及び気圧のうち、少なくとも一方が低い空間の状態をいう。
また、加熱処理は、矯正の目的で、陽極酸化膜44に応力を加えながら行うことが好ましい。
【0086】
〔樹脂層の形成工程〕
樹脂層18の形成工程には、例えば、インクジェット法、転写法、スプレー法、又はスクリーン印刷法等を用いられる。インクジェット法は、樹脂層18を絶縁性基材20に直接形成するため、樹脂層18の形成工程を簡素化することができるため、好ましい。また、樹脂層18は、例えば、従来公知の表面保護テープ貼付装置及びラミネーターを用いて形成することができる。また、樹脂層の形成工程では、絶縁性基材の表面の全面に、樹脂層を形成する。樹脂層18を構成する樹脂材料は、上述のとおりである。
【0087】
樹脂層18の形成方法としては、上述の方法以外に、例えば、後述の酸化防止材料、高分子材料、溶媒(例えば、メチルエチルケトン等)等を含有する樹脂組成物を絶縁性基材の表面の全面に塗布し、乾燥させ、必要に応じて焼成する方法等が挙げられる。
樹脂組成物の塗布方法は特に限定されず、例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、エアナイフコート法、スクリーンコート法、バーコート法、及びカーテンコート法等の従来公知のコーティング方法が使用できる。
また、塗布後の乾燥方法は特に限定されず、例えば、大気下において0℃~100℃の温度で、数秒~数十分間、加熱する処理、減圧下において0℃~80℃の温度で、十数分~数時間、加熱する処理等が挙げられる。
また、乾燥後の焼成方法は、使用する高分子材料により異なるため特に限定されないが、ポリイミド樹脂を用いる場合には、例えば、160℃~240℃の温度で2分間~60分間加熱する処理等が挙げられ、エポキシ樹脂を用いる場合には、例えば、30℃~80℃の温度で2分間~60分間加熱する処理等が挙げられる。
【0088】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の異方導電性部材及び接合体について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良又は変更をしてもよいのはもちろんである。
【実施例0089】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、及び、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例では、実施例1~12の接合体、並びに比較例1及び2の接合体を作製した。実施例1~12の接合体、並びに比較例1及び2の接合体のサイズ等は、下記表1に示す。
実施例1~12の接合体、並びに比較例1及び2の接合体について、接合強度と、接合後の突出部の状態とを評価した。接合強度と、接合後の突出部の状態の評価結果を下記表2に示す。
次に、接合強度と、接合後の突出部の状態について説明する。
【0090】
(接合強度の評価)
接合強度は、Stellar4000 ボンドテスター(ノードソンアドバンストテクノロジー株式会社製)を用いて、各実施例及び比較例のTEGチップと異方導電性部材とインターポーザーとの接合体のシェア強度を測定して評価した。
接合強度は、得られた破壊荷重からTEGチップの面積当たりの接合強度値(MPa)を求めた。接合強度値を、以下に示す評価基準により評価した。評価結果を下記表2の接合強度の欄に示した。
評価基準
A:10MPa≦接合強度値
B:3MPa≦接合強度値<10MPa
C:接合強度値<3MPa
【0091】
<評価用の接合体の作製>
Cuパッドを有するTEGチップ(Test Element Group chip)とインターポーザーを用意した。なお、絶縁層はSiNである。絶縁層とCuパッド面の段差は1μmであった。TEGチップは、チップサイズが8mm四方であり、チップ面積に対する電極面積(銅ポスト)の比率が25%のチップを用意した。インターポーザーは周囲に取出し配線を含むためチップサイズは10mm四方のものを用意した。異方導電性部材は、10mm四方のものを用いた。
なお、接合に際しては、TEGチップ、異方導電性部材及びインターポーザーをこの順で積層して、常温接合装置(WP-100(型式)、株式会社PMT社製)を用いて、加熱温度80℃、時間1分、圧力10MPaの仮接合プロセスの条件で仮接合した。
次いで、仮接合したサンプルについて、常温接合装置((型式)、株式会社PMT社製)を用いて、圧力10MPaの加圧条件で加圧した後に、加熱温度140℃、時間10秒の条件で本接合した。
次いで、本接合したサンプルについて、加熱温度250℃、180秒、圧力10MPaの樹脂硬化プロセスの条件で樹脂層を硬化させ、評価用の接合体を作製した。
TEGチップ、異方導電性部材及びインターポーザーをこの順で積層したものをタイプ1の積層構成とする。
【0092】
また、TEGチップ、異方導電性部材、TEGチップ、異方導電性部材及びインターポーザーをこの順で積層して、上述のように常温接合装置(WP-100(型式)、株式会社PMT社製)を用いて、加熱温度80℃、時間1分、圧力10MPaの仮接合プロセスの条件で仮接合した。
次いで、仮接合したサンプルについて、常温接合装置((型式)、株式会社PMT社製)を用いて、圧力10MPaの加圧条件で加圧した後に、加熱温度140℃、時間10秒の条件で本接合した。次いで、本接合したサンプルについて、加熱温度250℃、180秒、圧力10MPaの樹脂硬化プロセスの条件で樹脂層を硬化させ、評価用の接合体を作製した。
TEGチップ、異方導電性部材、TEGチップ、異方導電性部材及びインターポーザーをこの順で積層したものをタイプ2の積層構成とする。
【0093】
(接合後の突出部の状態)
接合後の突出部の状態について説明する。
各実施例及び比較例のTEGチップと異方導電性部材とインターポーザーとの接合体について、陽極酸化膜を厚さ方向に対して集束イオンビーム(FIB)を用いて切削加工した。
次に、電界放射型走査電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製 S-4800(型番))を用いて、倍率100000倍の撮影画像を取得した。
取得した撮影画像において、突出部に該当するもの100個を特定した。特定した100個の突出部について、隣接する突出部との接触の有無を判定した。特定した100個の突出部について、隣接する突出部との接触の有無に基づいて、以下に示す評価基準により、接合後の突出部の状態を評価した。評価結果を下記表1の接合後の突出部の状態の欄に示した。なお、接合後の突出部の状態は、突出部の座屈の程度を評価する指標である。
評価基準
A:100個の突出部のうち、隣接突出部と接触する突出部の数が0個
B:100個の突出部のうち、隣接突出部と接触する突出部の数が1個以上10個未満
C:100個の突出部のうち、隣接突出部と接触する突出部の数が11個以上
なお、隣接する突出部との接触の有無は、隣接突出部と一部でも接触していれば、接触と判定した。
【0094】
以下、実施例1~12並びに比較例1及び2について説明する。
(実施例1)
実施例1の接合体について説明する。実施例1では、絶縁性基材にアルミニウムの陽極酸化膜を用いた。
[構造体]
<アルミニウム基板の作製>
Si:0.06質量%、Fe:0.30質量%、Cu:0.005質量%、Mn:0.001質量%、Mg:0.001質量%、Zn:0.001質量%、Ti:0.03質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物のアルミニウム合金を用いて溶湯を調製し、溶湯処理及びろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC(Direct Chill)鋳造法で作製した。
次いで、表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。
更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った後、冷間圧延で、厚さ1.0mmに仕上げ、JIS 1050材のアルミニウム基板を得た。
アルミニウム基板を、直径200mm(8インチ)のウエハ状に形成した後、以下に示す各処理を施した。
【0095】
<電解研磨処理>
上述のアルミニウム基板に対して、以下組成の電解研磨液を用いて、電圧25V、液温度65℃、液流速3.0m/分の条件で電解研磨処理を施した。
陰極はカーボン電極とし、電源は、GP0110-30R(株式会社高砂製作所社製)を用いた。また、電解液の流速は渦式フローモニターFLM22-10PCW(アズワン株式会社製)を用いて計測した。
【0096】
(電解研磨液組成)
・85質量%リン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製試薬) 660mL
・純水 160mL
・硫酸 150mL
・エチレングリコール 30mL
【0097】
<陽極酸化処理工程>
次いで、電解研磨処理後のアルミニウム基板に、特開2007-204802号公報に記載の手順に従って、自己規則化法による陽極酸化処理を施した。
電解研磨処理後のアルミニウム基板に、0.50mol/Lシュウ酸の電解液で、電圧40V、液温度16℃、液流速3.0m/分の条件で、5時間のプレ陽極酸化処理を施した。
その後、プレ陽極酸化処理後のアルミニウム基板を、0.2mol/L無水クロム酸、0.6mol/Lリン酸の混合水溶液(液温:50℃)に12時間浸漬させる脱膜処理を施した。
その後、0.50mol/Lシュウ酸の電解液で、電圧40V、液温度16℃、液流速3.0m/分の条件で、10時間の再陽極酸化処理を施し、膜厚80μmの陽極酸化膜を得た。
なお、プレ陽極酸化処理及び再陽極酸化処理は、いずれも陰極はステンレス電極とし、電源はGP0110-30R(株式会社高砂製作所製)を用いた。また、冷却装置にはNeoCool BD36(ヤマト科学株式会社製)、かくはん加温装置にはペアスターラー PS-100(EYELA東京理化器械株式会社製)を用いた。更に、電解液の流速は渦式フローモニターFLM22-10PCW(アズワン株式会社製)を用いて計測した。
【0098】
<バリア層除去工程>
次いで、上述の陽極酸化処理と同様の処理液及び処理条件で、電圧を40Vから0Vまで連続的に電圧降下速度0.2V/秒で降下させながら電解処理(電解除去処理)を施した。
その後、5質量%リン酸に30℃、30分間浸漬させるエッチング処理(エッチング除去処理)を施し、陽極酸化膜のマイクロポアの底部にあるバリア層を除去し、マイクロポアを介してアルミニウムを露出させた。
【0099】
ここで、バリア層除去工程後の陽極酸化膜に存在するマイクロポアの平均開口径は60nmであった。なお、平均開口径は、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて倍率50000倍の表面画像を取得し、表面画像においてマイクロポアに相当するものを50個選択し、選択した50個のマイクロポアに相当するものについて、それぞれ開口に相当する箇所の直径を測定した。測定したマイクロポアの開口に相当する箇所の直径の平均値を算出した。この平均値を平均開口径とした。
また、バリア層除去工程後の陽極酸化膜の平均厚みは80μmであった。なお、平均厚みは、陽極酸化膜を厚さ方向に対して集束イオンビーム(FIB)を用いて切削加工し、その断面を電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて倍率50000倍の断面画像を取得した。断面画像において、陽極酸化膜の厚みに相当する箇所の長さを10箇所測定し、測定した10箇所の長さの平均値を求めた。この平均値を、バリア層除去工程後の陽極酸化膜の平均厚みとした。
また、陽極酸化膜に存在するマイクロポアの密度は、約1億個/mm2であった。なお、マイクロポアの密度は、特開2008-270158号公報の[0168]及び[0169]段落に記載された方法で測定し、算出した。
また、陽極酸化膜に存在するマイクロポアの規則化度は、92%であった。なお、規則化度は、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて倍率20000倍の表面画像を取得し、特開2008-270158号公報の[0024]~[0027]段落に記載された方法を用いて測定し、算出した。
【0100】
<金属充填工程>
次いで、アルミニウム基板を陰極にし、白金を正極にして電解めっき処理を施した。
具体的には、以下に示す組成の銅めっき液を使用し、定電流電解を施すことにより、細孔(マイクロポア)の内部に銅が充填されて導通路が形成された金属充填微細構造体を作製した。
ここで、定電流電解は、株式会社山本鍍金試験器社製のめっき装置を用い、北斗電工株式会社製の電源(HZ-3000)を用い、めっき液中でサイクリックボルタンメトリを行って析出電位を確認した後に、以下に示す条件で処理を施した。
(銅めっき液組成及び条件)
・硫酸銅 100g/L
・硫酸 50g/L
・塩酸 15g/L
・温度 25℃
・電流密度 10A/dm2
【0101】
<研磨工程>
次いで、金属が充填されて導通路が形成された金属充填微細構造体の表面に、CMP処理を施し表面から5μm研磨することにより、表面を平滑化した。CMPスラリーとしては、株式会社フジミインコーポレイテッド社製のPNANERLITE-7000を用いた。
細孔(マイクロポア)に金属を充填した後の陽極酸化膜の表面を電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)で観察し、1000個のマイクロポアにおける金属による封孔の有無を観察して封孔率(封孔マイクロポアの個数/1000個)を算出したところ、96%であった。
また、細孔(マイクロポア)に金属を充填した後の陽極酸化膜を厚さ方向に対してFIBで切削加工し、その断面を電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて倍率50000倍で断面画像を取得し、細孔(マイクロポア)の内部を確認したところ、封孔された細孔(マイクロポア)においては、その内部が金属で完全に充填されていることが分かった。
【0102】
<トリミング工程>
研磨工程後の金属充填微細構造体に対して、スプレーエッチング法を用い、陽極酸化膜の表面に、水酸化ナトリウム水溶液(濃度:5質量%、液温度:20℃)を液滴状にして噴霧した。上述の厚み方向における算術平均距離δ(
図3参照)が100nmとなるように酸化ナトリウム水溶液の噴霧量を調整してアルミニウムの陽極酸化膜の表面を選択的に溶解し、次いで、水洗し、乾燥して、導通路である銅の円柱を突出させた。その結果、上述の突出部の長さh(
図1参照)が1000nmであった。
スプレーエッチング法には、アクテス京三株式会社製 ADE-3000S(製品名)を用いた。
陽極酸化膜の表面側の上述の厚み方向における算術平均距離δ(
図3参照)は、上述のようにして撮影画像を用いて測定した。
【0103】
<基板除去工程>
次いで、20質量%塩化水銀水溶液(昇汞)に20℃、3時間浸漬させることによりアルミニウム基板を溶解して除去することにより構造体を作製した。
【0104】
<研磨工程>
次いで、構造体のアルミニウム基板が除去されて形成された陽極酸化膜の裏面に、CMP処理を施し、金属充填微細構造体を平滑化した。CMPスラリーとしては、株式会社フジミインコーポレイテッド社製のPNANERLITE-7000を用いた。
【0105】
<トリミング工程>
研磨工程後、構造体の陽極酸化膜の裏面に、スプレーエッチング法を用い、水酸化ナトリウム水溶液(濃度:5質量%、液温度:20℃)を液滴状にして噴霧した。上述の厚み方向における算術平均距離δ(
図3参照)が100nmとなるように酸化ナトリウム水溶液の噴霧量を調整してアルミニウムの陽極酸化膜の表面を選択的に溶解し、次いで、水洗し、乾燥して、導通路である銅の円柱を突出させた。その結果、上述の突出部の長さh(
図1参照)が1000nmであった。
スプレーエッチング法には、アクテス京三株式会社製 ADE-3000S(製品名)を用いた。
陽極酸化膜の裏面側の上述の厚み方向における算術平均距離δは、上述のようにして撮影画像を用いて測定した。
【0106】
<樹脂層形成工程>
トリミング工程後の構造体に対して、陽極酸化膜の表面及び裏面に、それぞれ樹脂層を以下に示す方法で形成し、異方導電性接合部材を作製した。
樹脂層は、非導電性のエポキシ系熱硬化性樹脂(BST001A、硬化温度150℃、ナミックス株式会社製)と希釈溶媒としてのジエチレングリコールジエチルエーテルとを含有する樹脂組成物を用いて、厚みが1.5μmとなるようにスピンコーターの回転数を調整して形成した。
次に、作製した異方導電性接合部材を10mm四方のサイズに切断した。異方導電性部材の切断には、株式会社ディスコ社製DAD3230(製品名)を使用した。
【0107】
上述の算術平均距離δは、以下のようにして求めた。
作製した異方導電性部材を、集束イオンビーム(FIB)を用いて切削加工して、絶縁性基材である陽極酸化膜の厚み方向における断面を露出させる。
次に、陽極酸化膜の厚み方向における断面について、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて倍率150kの撮影画像を取得する。
撮影画像において、絶縁性基材20の表面20aの反対側にある裏面20b側の任意の位置に、基準点Pb(
図3参照)を設定した。基準点Pbを通る方向xに平行な基準線Ls(
図3参照)を設定した。
次に、撮影画像において、頂部Pc(
図3参照)に該当する点のうち、基準線Lsに対して高い順から10個の頂部Pcを選択した。また、接触部Vc(
図3参照)に該当する点のうち、基準線Lsに対して低い順から10個の接触部Vcを選択した。
撮影画像において、選択した10個の頂部Pcに該当する点について、それぞれ基準線Lsから距離を求めた。求めた10個の頂部Pcに該当する点と基準線Lsとの、10個の距離の平均値を、最小二乗法を用いて求めた。最小二乗法を用いて求めた平均値を、撮影画像に点として示す。頂部Pcの平均値を示す点を通る方向xに平行な線Lc(
図3参照)を求めた。
撮影画像において、選択した10個の接触部Vcに該当する点について、それぞれ基準線Lsから距離を求めた。求めた10個の接触部Vcに該当する点と基準線Lsとの、10個の距離の平均値を、最小二乗法を用いて求めた。最小二乗法を用いて求めた平均値を、撮影画像に点として示す。接触部Vcの平均値を示す点を通る方向xに平行な線Lb(
図3参照)を求めた。
次に、厚み方向Dtにおける平行な線Lcと平行な線Lbとの距離を求めて算術平均距離δを得た。
【0108】
(実施例2)
実施例2は、実施例1に比して、陽極酸化膜の表面側及び裏面側の、いずれも上述の厚み方向における算術平均距離δ(
図3参照)が20nmとなるように酸化ナトリウム水溶液の噴霧量を調整してアルミニウムの陽極酸化膜の表面及び裏面を選択的に溶解した点が異なる。それ以外は、実施例1と同じとした。
(実施例3)
実施例3は、実施例1に比して、陽極酸化膜の表面側及び裏面側の、いずれも上述の厚み方向における算術平均距離δ(
図3参照)が60nmとなるように酸化ナトリウム水溶液の噴霧量を調整してアルミニウムの陽極酸化膜の表面及び裏面を選択的に溶解した点が異なる。それ以外は、実施例1と同じとした。
(実施例4)
実施例4は、実施例1に比して、陽極酸化膜の表面側及び裏面側の、いずれも上述の厚み方向における算術平均距離δ(
図3参照)が5nmとなるように酸化ナトリウム水溶液の噴霧量を調整してアルミニウムの陽極酸化膜の表面及び裏面を選択的に溶解した点が異なる。それ以外は、実施例1と同じとした。
(実施例5)
実施例5は、実施例3に比して、樹脂がCNP面にある点が異なり、それ以外は、実施例2と同じとした。なお、樹脂がCNP面にあるとは、異方導電性部材の突出部上にエポキシ樹脂を塗布した状態である。
(実施例6)
実施例6は、実施例3に比して、樹脂が電極面にある点が異なり、それ以外は、実施例2と同じとした。なお、樹脂が電極面にあるとは、TEGチップのCuパッド面上にエポキシ樹脂を塗布した状態である。
【0109】
(実施例7)
実施例7は、実施例2に比して、導通路がNiで構成されている点が異なり、それ以外は、実施例2と同じとした。
導通路は、電解液に硫酸ニッケル/塩化ニッケル/ホウ酸=300/60/40(g/L)の混合溶液を使用し、ニッケル電極を陰極にし、白金を正極にして電解めっき処理により形成した。電解めっき処理では、電解液を温度50℃に保持して定電流電解(5A/dm
2)を行った。
(実施例8)
実施例8は、実施例2に比して、上述の突出部の長さh(
図1参照)を10000nmとした点が異なり、それ以外は、実施例2と同じとした。
(実施例9)
実施例9は、実施例2に比して、上述の突出部の長さh(
図1参照)を3nmとした点が異なり、それ以外は、実施例2と同じとした。
(実施例10)
実施例10は、実施例3に比して、TEGチップのサイズを4mm四方とした点が異なり、それ以外は、実施例3と同じとした。
(実施例11)
実施例11は、実施例3に比して、異方導電性部材のサイズを8mm四方とした点が異なり、それ以外は、実施例3と同じとした。
(実施例12)
実施例12は、実施例3に比して、TEGチップ、異方導電性部材、TEGチップ、異方導電性部材及びインターポーザーをこの順で積層したタイプ2の積層構成を用いた点と、異方導電性部材のサイズを8mm四方とした点が異なり、それ以外は、実施例3と同じとした。
【0110】
(比較例1)
比較例1は、実施例1に比して、上述のいずれのトリミング工程も、スプレーエッチング法ではなく、浸漬法を用いて実施した点が異なる。更に、比較例1は、仮接合したサンプルについて、常温接合装置((型式)、株式会社PMT社製)を用いて、圧力10MPaの加圧条件で加圧した後に、加熱温度120℃、時間10秒の条件で本接合した点が異なる。これら以外は、実施例1と同じとした。
なお、比較例1は、上述の厚み方向における算術平均距離δ(
図3参照)が1nmであった。
【0111】
(比較例2)
比較例2は、実施例1に比して、陽極酸化膜の表面側及び裏面側の、いずれも上述の厚み方向における算術平均距離δ(
図3参照)が250nmとなるように酸化ナトリウム水溶液の噴霧量を調整してアルミニウムの陽極酸化膜の表面及び裏面を選択的に溶解した点が異なる。それ以外は、実施例1と同じとした。
【0112】
【0113】
【0114】
表2に示すように、実施例1~12は、比較例1及び比較例2に比して、接合強度及び接合後の突出部の状態が良好であった。
比較例1は、算術平均距離δが短く、接合強度が低く、かつ隣接する突出部と接触する突出部も多かった。
比較例2は、算術平均距離δが長く、隣接する突出部と接触する突出部が多かった。
実施例1~12から、実施例2、3、5、6、10及び11は、接合強度及び接合後の突出部の状態がより優れていた。
実施例1~4から、算術平均距離δが20~100nmの方が、接合強度及び接合後の突出部の状態がより優れており、20~60nmの方が、接合強度及び接合後の突出部の状態が更に優れていた。
実施例2と実施例7から、導通路はNiよりもCuの方が、接合強度及び接合後の突出部の状態がより優れていた。
実施例2と実施例8と実施例9から、突出部が300nmの実施例2の方が、接合強度及び接合後の突出部の状態がより優れていた。