(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025152039
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】改質フライアッシュの製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 18/08 20060101AFI20251002BHJP
C04B 20/00 20060101ALI20251002BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20251002BHJP
B09B 101/30 20220101ALN20251002BHJP
【FI】
C04B18/08 Z ZAB
C04B20/00 B
B09B3/40
B09B101:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024053745
(22)【出願日】2024-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】大村 昂平
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA36
4D004AB05
4D004CA07
4D004CA22
4D004DA06
(57)【要約】
【課題】 原料フライアッシュの未燃カーボン量が多様な場合において、未燃カーボン量が安定的に小さい改質フライアッシュを得るための環境負荷が小さい、効率的な手段を提供することにある。
【解決手段】 未燃カーボン量が予め設定した閾値より大きい原料フライアッシュは加熱法により改質処理して加熱フライアッシュを製造し、未燃カーボン量が閾値以下の原料フライアッシュは篩法にて改質処理して分級フライアッシュを製造した上で、篩法で粗粒分として分離される残渣を単独又は前記閾値より大きい原料フライアッシュと混合して、加熱法により加熱処理して加熱フライアッシュを製造した後、加熱フライアッシュと分級フライアッシュを混合して改質フライアッシュとする。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料フライアッシュに含まれる未燃カーボンを低減して、未燃カーボン量の少ない改質フライアッシュを製造するための方法であって、
未燃カーボン量が予め設定した閾値より大きい原料フライアッシュは加熱法により改質処理して加熱フライアッシュを製造し、未燃カーボン量が閾値以下の原料フライアッシュは篩法にて改質処理して分級フライアッシュを製造し、篩法で粗粒分として分離される残渣を該残渣単独で又は前記閾値より大きい原料フライアッシュと混合して、加熱法により加熱処理して加熱フライアッシュを製造し、得られた加熱フライアッシュと分級フライアッシュを混合して改質フライアッシュとする
ことを特徴とする改質フライアッシュの製造方法。
【請求項2】
原料フライアッシュに含まれる未燃カーボンを低減して、未燃カーボン量の少ない改質フライアッシュを製造するための方法であって、
原料フライアッシュに含まれる未燃カーボン量を測定して、
未燃カーボン量が予め設定した閾値より大きい原料フライアッシュを加熱法により改質処理して加熱フライアッシュを製造し、未燃カーボン量が閾値以下の原料フライアッシュを篩法にて改質処理して分級フライアッシュを製造し、篩法で粗粒分として分離される残渣を該残渣単独又は前記閾値より大きい原料フライアッシュと混合して、加熱法により加熱処理して加熱フライアッシュを製造し、得られた加熱フライアッシュと分級フライアッシュを混合して改質フライアッシュとする
ことを特徴とする改質フライアッシュの製造方法。
【請求項3】
改質フライアッシュに含まれる未燃カーボン量の目標範囲を予め設定し、
加熱フライアッシュと分級フライアッシュに含まれる未燃カーボン量をそれぞれ測定して、改質フライアッシュの未燃カーボン量が目標範囲内となる比率で混合することを特徴とする請求項1又は2記載の改質フライアッシュの製造方法。
【請求項4】
改質フライアッシュに含まれる未燃カーボン量が1.5~3.5質量%である請求項1又は2記載の改質フライアッシュの製造方法。
【請求項5】
篩の網の目開きが75~106μmであることを特徴とする請求項1又は2記載の改質フライアッシュの製造方法。
【請求項6】
加熱手段が流動層式加熱炉を用いた方法であることを特徴とする請求項1又は2記載の改質フライアッシュの製造方法。
【請求項7】
流動層式加熱炉での加熱温度が800~950℃の範囲にあることを特徴とする請求項6記載の改質フライアッシュの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未燃カーボン量が低減された改質フライアッシュの製造方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
セメント混合材、コンクリート混合材、モルタル混合材等としてフライアッシュが使用されているが、このフライアッシュは、一般に、炭素分の燃え残りとされる未燃カーボン量が少ないものが好適とされている。例えば、フライアッシュ中の未燃カーボン量が多いと、モルタルやコンクリートの表面に未燃カーボンが浮き出し、黒色部が発生することがある。また、モルタルやコンクリートに添加される化学混和剤などの薬剤が、未燃カーボンに吸着されるといった問題がある。
【0003】
日本国内で前記用途に使用可能なフライアッシュはJIS A 6201内に品質が規定されている。品質のグレードとしてはI~IV種が規定されており、中でもII種が多用される。II種の強熱減量は5.0質量%以下と規定されているため、規格を満たす上では0~5.0質量%の範囲内であれば問題ないが、実際は1.5~3.5質量%のフライアッシュが多く流通しており、例えば0.5質量%や4.5質量%といったフライアッシュは流通が少ない。この理由は、強熱減量が0~5.0質量%の範囲内でも大きく変動すると、前記用途に使用する上で均一性に問題が生じるためである。このため、好ましくは1.5~3.5質量%、より好ましくは2.0~3.5質量%の範囲内に変動を抑えることがフライアッシュを前記用途に使用する上で求められている。
【0004】
しかしながら、一般に、火力発電所から発生するフライアッシュは、その未燃カーボン量が一様ではなく、多いもので15質量%ほど存在するものもあり、セメントの少量混合成分や、セメント・コンクリート混合材として好適なものは、一部に限られているのが現状である。
【0005】
このような状況下、フライアッシュに含まれる未燃カーボンを低減する方法が種々提案されおり、例えば、加熱法、篩法などが提案されている。
【0006】
加熱法は、フライアッシュ中の未燃カーボンを効率的に除去できる方法の一つであり、加熱炉内にて未燃カーボンが燃焼することにより、フライアッシュから除去される仕組みとなっており、フライアッシュ中の未燃カーボン量を十分に低減することが可能な手段である。
【0007】
篩法は、フライアッシュ粒子のうち未燃カーボン粒子が比較的大きい状態で存在することから、篩分けを行うことで粗粒分側に未燃カーボンを濃縮させ、微粉側は未燃カーボンの少ないフライアッシュとすることができる手法である。しかしながら、篩法は他法に比べ未燃カーボン量の除去率が小さいことが特徴であり、未燃カーボン量の多い原料フライアッシュなどは十分に低減することが困難である。また、未燃カーボンを多く含む粗粒分が残渣として発生し、その処理が問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-130507号公報
【特許文献2】国際公開第2018/180680号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したように、加熱法は未燃カーボンを大幅に低減することが可能な手段であるが、化石燃料の使用が必要であり、それにより二酸化炭素が排出されるという問題がある。例えば、特許文献1にはロータリーキルンを用いたフライアッシュの加熱改質装置が記載されている。そして、助燃バーナや外熱バーナなどを使用して加熱炉の温度を高温に制御し、フライアッシュを加熱して未燃カーボンを低減する方法が記載されている。ここで、加熱炉を高温に保持するための熱源としては、バーナから供給される化石燃料の他に、未燃カーボン自体の燃焼があり、炉内の温度を一定にするためには双方から供給される熱源を一定にコントロールする必要がある。即ち、未燃カーボン量が大きくないフライアッシュを加熱法にて改質する場合は、全体における未燃カーボン自体の発熱量が小さくなるため、その分化石燃料を多量に使用しなければならない。従って、多量の二酸化炭素を排出してしまうといった問題に加え、未燃カーボン量の大きくないフライアッシュを改質する場合は化石資源保護の観点からも好ましいとは言えない。
【0010】
一方、篩法においては、未燃カーボン量が十分に低減できないといった問題がある。特許文献2には、目開き90μmと45μmの網を使用して篩分けした際の未燃カーボン量の変化が示されている。未燃カーボン低減効果の大きい45μmの網を使用した場合でも、未燃カーボン量を3質量%以下にするためには、原料フライアッシュの未燃カーボン量がおよそ5質量%以下でないとならないことが示されている。即ち、篩法は未燃カーボン量が大きいフライアッシュには適用不可であるという問題がある。さらには、篩法においてはどうしても残渣が発生するという問題がある。特許文献2には90μmで篩った際に10質量%前後、45μmで篩った際に20質量%前後が残渣として発生することが記載されている。即ち、原料フライアッシュの量に対して、目的とする改質フライアッシュの量が少なくなってしまい、さらに残渣の処理問題が発生するということになる。
【0011】
従って本発明の目的は、原料フライアッシュの未燃カーボン量が多様な場合において、二酸化炭素の排出量と化石燃料の使用量を従来よりも少なくすることができ、また残渣を発生しない手段にて、未燃カーボン量の少ない改質フライアッシュを得るための手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題に鑑み、鋭意検討を行った結果、未燃カーボン量を低減する手段として、加熱と篩の二通りの方法を用い、原料フライアッシュ中の未燃カーボン量によって低減手段を決定し、それぞれの方法において未燃カーボン量を低減したフライアッシュを製造した後、混合することで、原料フライアッシュの未燃カーボン量が多様な場合において、二酸化炭素の排出量と化石燃料の使用量を従来よりも少なくすることができ、また残渣が発生せずに、未燃カーボン量が少なく、かつ変動が小さい改質フライアッシュを得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち本発明は、原料フライアッシュに含まれる未燃カーボンを低減して、未燃カーボン量の少ない改質フライアッシュを製造するための方法であって、
未燃カーボン量が予め設定した閾値より大きい原料フライアッシュは加熱法により改質処理して加熱フライアッシュを製造し、未燃カーボン量が閾値以下の原料フライアッシュは篩法にて改質処理して分級フライアッシュを製造し、篩法で粗粒分として分離される残渣を該残渣単独で又は前記閾値より大きい原料フライアッシュと混合して、加熱法により加熱処理して加熱フライアッシュを製造し、得られた加熱フライアッシュと分級フライアッシュを混合して改質フライアッシュとする
ことを特徴とする改質フライアッシュの製造方法である。
【0014】
本発明の改質フライアッシュの製造方法においては、改質フライアッシュに含まれる未燃カーボン量の目標範囲を予め設定し、加熱フライアッシュと分級フライアッシュに含まれる未燃カーボン量をそれぞれ測定して、改質フライアッシュの未燃カーボン量が目標範囲内となる比率で混合することが好ましい。また、改質フライアッシュに含まれる未燃カーボン量が1.5~3.5質量%であることが好ましい。篩法において篩の網の目開きが75~106μmであることが好ましい。加熱法においては加熱手段が流動層式加熱炉を用いた方法であることが好ましく、流動層式加熱炉での加熱温度は800~950℃の範囲にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、原料フライアッシュの未燃カーボン量が多様なフライアッシュに対応可能であり、かつ二酸化炭素の排出量と化石燃料の使用量を従来よりも少なくすることができ、また残渣が発生せずに、未燃カーボン量が少なく、かつ変動が小さい改質フライアッシュを得るための製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、原料フライアッシュ中の未燃カーボンを低減して、未燃カーボン量の少ない改質フライアッシュを製造するための方法に適用される。ここで、原料フライアッシュは石炭火力発電所などの石炭を燃料として使用する設備において発生する一般的なフライアッシュの他、石炭と共に石炭以外の燃料(例えば、アンモニアやバイオマス燃料等)や廃棄物(例えば、廃プラスチックや汚泥など)が混焼され発生したフライアッシュなどの多様なフライアッシュを用いることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明は、未燃カーボンの低減手段として加熱法と篩法の二通りを使用する。原料フライアッシュの未燃カーボン量によって加熱法による改質処理と篩法による改質処理とを使い分ける。
【0018】
加熱法では加熱炉を使用して未燃カーボン量を低減した加熱フライアッシュを製造する。加熱炉の形式は特に限定されず、公知の加熱炉が適用可能である。例えば、工業的に適用可能な加熱炉としては流動層加熱炉、ロータリーキルンが挙げられる。加熱炉は連続式でもバッチ式でも構わない。加熱温度は700~1000℃に設定されることが好ましく、800~950℃に設定されることがより好ましい。温度が低すぎると未燃カーボンが十分に低減せず、温度が高すぎると加熱炉の内部でフライアッシュが融着したり、フライアッシュの結晶化が進行することによりセメント・コンクリート混合材として使用した際の有用性が低下したりする可能性が高くなる。
【0019】
篩法では一般的な工業用篩機を使用して未燃カーボン量を低減した分級フライアッシュを製造する。篩を通過した微粉が分級フライアッシュとなり、通過しなかった粗粒分は残渣となる。篩法では公知の篩機として、例えば、振動篩機、揺動篩機、旋回篩機などが挙げられる。篩機についても連続式でもバッチ式でも構わない。また、篩機に設置する網の目開きは45~150μmの範囲であることが好ましく、75~106μmの範囲であることがより好ましい。網の目開きが小さすぎると、改質フライアッシュの回収率が低下して残渣発生量が多くなったり、網の目詰まりによるトラブルが生じやすくなったりする。また、網の目開きが大きすぎると残渣の発生量は減るが、未燃カーボンの低減効果がほとんど発揮されない。なお、残渣には未燃カーボンが濃縮されており、後述するように本発明では残渣を加熱法で処理することで残渣の発生を抑制することを可能とした。
【0020】
本発明では、未燃カーボン量が予め設定した閾値より大きい原料フライアッシュは加熱法により改質処理して加熱フライアッシュを製造し、未燃カーボン量が閾値以下の原料フライアッシュは篩法にて改質処理して分級フライアッシュを製造する。
【0021】
原料フライアッシュに含まれる未燃カーボン量が予め分かっている場合には、未燃カーボン量を測定する必要はないが、未燃カーボン量が不明の場合にはまず、原料フライアッシュに含まれる未燃カーボン量を測定する。未燃カーボン量を測定する方法は、特に限定されず公知の手法が使用可能である。例えば、フライアッシュの未燃カーボン量を測定する方法として最も一般的なJIS A 6201に記載される強熱減量の測定方法を使用することができる。その他の測定方法としては、燃焼させて発生したCO2・COガスを赤外線検出する方法、メチレンブルー吸着量に基づいて算出する方法、マイクロ波を照射して未燃カーボン量を推定する方法等が挙げられる。なお、JIS A 6201内で表記される「強熱減量」は本発明における「未燃カーボン量」と同等の数値として取り扱うことができる。中でも特に推奨される方法は、マイクロ波を照射して未燃カーボン量を推定する方法である。マイクロ波を照射する方法は測定に要する時間が短いことから、連続的に未燃カーボン量を監視するうえで有用である。例えば、貯蔵設備から取り出される原料フライアッシュの未燃カーボン量を随時測定し、測定値に応じて加熱法による改質処理側か篩法による改質処理側へ連続的に振り分けることが可能である。測定するためには必要量を自動的に取出し、測定装置に導入して測定することで、数分~数十分間隔で未燃カーボン量の測定値を得ることができる。なお、加熱フライアッシュ、分級フライアッシュ、改質フライアッシュに含まれる未燃カーボン量を測定する際も同様の手法にて行うことができる。
【0022】
そして、予め設定された閾値により原料フライアッシュを加熱法、篩法のいずれにより改質するかを決定する。未燃カーボン量が閾値より大きい原料フライアッシュは加熱法へ、閾値以下の原料フライアッシュは篩法へ振り分ける。このように閾値によって振り分けることで、加熱法では未燃カーボン量の多い原料フライアッシュを、篩法では未燃カーボン量の少ない原料フライアッシュを改質することとなる。加熱法においては未燃カーボンが多いことで加熱炉内での発熱量が大きくなるため、化石燃料の使用量を削減することが可能になり、篩法においては原料フライアッシュの未燃カーボン量が小さいものを選択的に使用することで、改質後の未燃カーボン量のバラツキを抑制して安定的に低い値とすることができる。なお、原料フライアッシュの未燃カーボン量の閾値は状況に応じて適宜変更することができる。
【0023】
閾値は特に限定されず、適宜設定することが可能である。閾値の決定には使用する原料フライアッシュの未燃カーボン量がどの程度変動するか、加熱法と篩法でそれぞれどの程度の原料フライアッシュを処理する能力を有しているか、最終的に製造する改質フライアッシュの未燃カーボン量をどの程度に設定するかなどの要素を勘案して決定する。
【0024】
加熱法と篩法は同時並行で行うことも可能である。同時並行で行うためには原料フライアッシュの未燃カーボン量が閾値より大きい原料フライアッシュと、閾値以下原料フライアッシュとを、それぞれを貯蔵するための貯蔵設備に貯蔵しておくことが好ましい。前記閾値より大きい未燃カーボン量の原料フライアッシュを貯蔵する貯蔵設備と、前記閾値以下の未燃カーボン量の原料フライアッシュを貯蔵する貯蔵設備とを用意して、未燃カーボン量の大小により予め一定量の原料フライアッシュを分けて用意しておくことで、加熱法と篩法でのそれぞれの処理を連続的に実施することが可能である。
【0025】
いずれの貯槽設備へ振り分けるかを決定する原料フライアッシュの未燃カーボン量は、原料フライアッシュを受け入れる際に一部を採取して分析して求めるか、火力発電所などのフライアッシュの排出元の分析値を利用すればよい。または、一度一つの貯蔵設備に受け入れた後に、貯蔵設備内の原料フライアッシュの未燃カーボン量を測定して、複数の貯蔵設備に分配することも可能である。
【0026】
そして、加熱炉又は篩機に導入された原料フライアッシュは、未燃カーボンを低減するための改質処理がなされ、未燃カーボン量が低減された加熱フライアッシュ及び分級フライアッシュがそれぞれ製造される。このとき篩法で発生した未燃カーボンが濃縮されている残渣については、残渣単独で又は前記閾値より大きい原料フライアッシュと混合して、加熱法により加熱処理して加熱フライアッシュとする。その後、製造された加熱フライアッシュと分級フライアッシュを混合することで、改質フライアッシュとする。加熱フライアッシュと分級フライアッシュの混合方法は特に限定されない。粉体用の混合器を使用して混合してもよいし、輸送設備や貯蔵設備内で合流させて混合することも可能である。
【0027】
改質フライアッシュの未燃カーボン量は、好ましくは1.5~3.5質量%、より好ましくは2.0~3.5質量%である。一般に日本国内で流通するコンクリート用フライアッシュの未燃カーボン量は1.5~3.5質量%であり、この範囲であれば流通品と同等の取り扱いが可能である。さらに2.0~3.5質量%の範囲とすることで、品質の安定性を高めることができる。
【0028】
改質フライアッシュの未燃カーボン量を安定的にするためには、改質フライアッシュに含まれる未燃カーボン量の目標範囲を予め決定し、当該目標範囲内となるよう、加熱フライアッシュと分級フライアッシュの混合比率を決定し、混合することが好ましい。例えば、改質フライアッシュの未燃カーボン量の目標範囲を1.5~3.5質量%とした際、加熱法で2.0質量%の加熱フライアッシュが、篩法で5.5質量%の分級フライアッシュが製造された場合に、それぞれを等量混合すると改質フライアッシュの未燃カーボン量は計算上3.8質量%となってしまい目標範囲を外れてしまう。このような場合には、加熱フライアッシュと分級フライアッシュを7:3で混合すれば、改質フライアッシュの未燃カーボン量は3.0質量%とすることができ、目標範囲内とすることができる。この場合、混合比率は適宜調整して目標範囲である1.5~3.5質量%に収まりさえすれば問題ない。実運用上は加熱フライアッシュと分級フライアッシュの生産量や在庫量の関係で、どちらかを優先的に消費しなければならない状況が想定される。例えば、加熱フライアッシュを優先的に使用したい場合は、加熱フライアッシュと分級フライアッシュを9:1で混合して2.3質量%としてもよい。
【0029】
ここで、加熱フライアッシュと分級フライアッシュの混合比率を決定するために、それぞれの未燃カーボン量を測定するが、加熱フライアッシュと分級フライアッシュの未燃カーボン量を工程中で都度測定すればよい。測定手段としては前述の原料フライアッシュの未燃カーボン量を測定する方法が使用可能である。測定箇所としては、各改質工程にて製造された加熱フライアッシュ及び分級フライアッシュを別々の貯蔵設備に貯蔵して、必要量を抜き出して測定するか、貯蔵設備の出口から混合設備の入口までの輸送配管において定期的に必要量を抜き出してから測定を行うことができる。そして、測定値を得た後にそれぞれの混合比率を決定し、後の混合工程に送られる。
【0030】
篩処理の工程で発生した残渣については、残渣単独で又は前記閾値より大きい原料フライアッシュと混合して、加熱法により加熱処理することで、工程全体での残渣発生をゼロとすることができる。
【0031】
未燃カーボン量が多様な原料フライアッシュを一種類の改質方法で改質しようとすると、前述したように、加熱法においては未燃カーボン量が十分に低い改質フライアッシュを得ることができるが、原料フライアッシュの未燃カーボン量が大きくない場合には化石燃料を多量に使用しなければならない。また、篩法においては未燃カーボン量が大きい原料フライアッシュに対応することが困難であり、残渣の処理も必要となってくる。そして、原料フライアッシュの未燃カーボン量の変動を打ち消すことができず、改質フライアッシュの未燃カーボン量もバラバラになってしまう。しかしながら、本発明を用いることにより、化石燃料の使用量を削減した上で、残渣の発生を抑制しつつ、未燃カーボン量の安定した改質フライアッシュを得ることが可能である。
【実施例0032】
以下に実施例及び比較例を示すが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。なお、本実施例においては、強熱減量の測定値をフライアッシュ中の未燃カーボン量として示す。強熱減量の測定は、JIS A 6201に記載される強熱減量の測定方法により行った。
【0033】
原料フライアッシュに対する加熱法および篩法による改質処理は以下の条件の通り実施した。
【0034】
(加熱法)
加熱炉:流動層式加熱炉(内径φ400mm)
加熱媒体:珪砂
加熱温度:900℃
使用燃料:プロパンガス(1.5Nm3/h固定)、A重油(可変)
(篩法)
篩機:揺動式篩(内径600mm)
網の目開き:90μm
【0035】
(実施例1)
表1に示す原料フライアッシュA~Dの4種類を準備した。未燃カーボン量の閾値を5.0質量%と設定して、まず、未燃カーボン量が5.0質量%以下の原料フライアッシュA、Bを篩法で改質処理した。
【0036】
このときの未燃カーボン量の変化と重量バランスを表2に示す。
【0037】
篩法では原料フライアッシュを86.0kg/hで供給し、原料フライアッシュAでは篩残渣が8.7kg/h(未燃カーボン量11.5質量%)、原料フライアッシュBでは篩残渣が7.8kg/h(未燃カーボン量17.9質量%)発生した。
【0038】
次に、未燃カーボン量が5.0質量%超の原料フライアッシュC、Dを加熱法で改質処理した。このとき、原料フライアッシュCには原料フライアッシュA由来の篩残渣(残渣A)を混合して、また原料フライアッシュDには原料フライアッシュB由来の篩残渣(残渣B)を混合して、加熱法で改質処理した。原料フライアッシュCの加熱処理においては原料フライアッシュ86.0kgに残渣A8.7kgを加えて混合したものを94.7kg/hで供給した。原料フライアッシュDの加熱処理においては原料フライアッシュ86.0kgに残渣B7.8kgを加えて混合したものを93.8kg/hで供給した。
【0039】
このときの未燃カーボン量の変化と重量バランス、およびA重油の使用量を表3に示す。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
上記改質処理による分級又は加熱フライアッシュの未燃カーボン量は2.1~3.6質量%であった。
【0044】
その後、改質処理1時間分の回収された分級フライアッシュAと加熱フライアッシュC、分級フライアッシュBと加熱フライアッシュDをそれぞれ全量混合することで改質フライアッシュを得た。表4にそれぞれの改質フライアッシュの未燃カーボン量を示す(実施例1-1)。
【0045】
また、改質処理1時間分の回収された分級フライアッシュAと加熱フライアッシュD、分級フライアッシュBと加熱フライアッシュCをそれぞれ全量混合することで改質フライアッシュを得た。表4にそれぞれの改質フライアッシュの未燃カーボン量を示す(実施例1-2)。
【0046】
【0047】
いずれの場合も未燃カーボン量が2%台の安定した改質フライアッシュを得ることできた。このとき、篩の残渣は加熱法で処理したため、残渣の発生はゼロであった。そして、加熱処理で使用したA重油は原料フライアッシュCの処理で1.0L/h、原料フライアッシュDの処理で0.6L/hであった。すなわち、実施例1で準備した原料フライアッシュA~Dを改質するために使用したA重油の量は1.6L/hであった。
【0048】
(実施例2)
実施例1で得られる表2,3に示す未燃カーボン量が2.1~3.6質量%の分級又は加熱フライアッシュを用い、改質フライアッシュの未燃カーボン量の目標範囲を2.5~3.0質量%と設定して、分級フライアッシュA又はBと、加熱フライアッシュC又はDを表5に示す比率(質量)で混合し、改質フライアッシュを得た。得られた改質フライアッシュの未燃カーボン量を表5に示す。
【0049】
目標範囲に合わせて混合比率を調整することで、改質フライアッシュの未燃カーボン量はさらに安定し、変動が小さいものとすることができることがわかる。
【0050】
【0051】
(比較例1)
原料フライアッシュA~Dを加熱法のみで改質処理した。このとき得られる加熱フライアッシュの未燃カーボン量は表6に示す通り1.1~2.2質量%となり、安定して低い数値となった。また、すべてを加熱法で処理したため残渣の発生は無かった。
【0052】
しかし一方で、本比較例で使用したA重油の合計量は6.4L/hであり、実施例1の1.6L/hと比較して非常に多いことがわかる。また、実施例1で加熱法を使用した原料フライアッシュC又はDのみと比較しても原料フライアッシュCでは実施例1が1.0L/h、本比較例1が1.3L/h、原料フライアッシュDでは実施例1が0.6L/h、本比較例1が0.7L/hであり、本比較例1の方が消費量が多い。これは、実施例1では未燃カーボンが濃縮された篩の残渣を加熱法の原料フライアッシュに混合しているため、未燃カーボン由来の入熱が寄与し、A重油の使用量が低減しているためである。
【0053】
【0054】
(比較例2)
原料フライアッシュA~Dを篩法のみで改質処理した。燃焼法と異なり未燃カーボンを燃焼させるための燃料は不要であるが、このとき得られる分級フライアッシュの未燃カーボン量は表7に示す通り2.6~6.7質量%となり、変動が大きいうえ、一般に日本国内で流通するコンクリート用フライアッシュの未燃カーボン量の範囲から大きく逸脱していることがわかる。さらに、篩法のみで改質処理しているので残渣が処理されず残存している。
【0055】
【0056】
(比較例3)
実施例1で得られる分級フライアッシュA、Bと加熱フライアッシュC、Dを、これらを混合せずにそれぞれを改質フライアッシュとした(表8)。このときに得られる改質フライアッシュの未燃カーボン量は2.1~3.6質量%であり、一般に日本国内で流通するコンクリート用フライアッシュの未燃カーボン量の範囲からやや逸脱していることがわかる。また、実施例1で最終的に得られた表4に示す改質フライアッシュと比較して未燃カーボン量のばらつきが大きく、品質の安定性の面で低いことがわかる。
【0057】
【0058】
(比較例4)
原料フライアッシュA及び原料フライアッシュB由来の篩残渣は加熱法で処理しなかったこと以外は実施例1と同様にして、改質フライアッシュを得た。このときの未燃カーボン量の変化と重量バランス、およびA重油の使用量を表9に示す。また、得られた改質フライアッシュの未燃カーボン量を表10に示す(比較例4-1、4-2)。
【0059】
【0060】
【0061】
いずれの場合も未燃カーボン量が2%台の安定した改質フライアッシュを得ることができている。
【0062】
しかし、篩の残渣を加熱法で処理していないため、残渣が発生した。そして、加熱処理で使用したA重油は原料フライアッシュCの処理で1.3L/h、原料フライアッシュDの処理で0.7L/hであった。すなわち、比較例4で原料フライアッシュA~Dを改質するために使用したA重油の量は2.0L/hであり、実施例1での使用量1.6L/hと比較して多くなっていることがわかる。これは比較例1でも述べた理由と同様で、本比較例では未燃カーボンが濃縮された篩の残渣を加熱法の原料フライアッシュに混合していないことにより、実施例1と比較して未燃カーボン由来の入熱が小さかったためである。
【0063】
以上の実施例および比較例から、未燃カーボン量が予め設定した閾値より大きい原料フライアッシュは加熱法により改質処理して加熱フライアッシュを製造し、未燃カーボン量が閾値以下の原料フライアッシュは篩法にて改質処理して分級フライアッシュを製造し、このとき篩法で粗粒分として分離される残渣を単独又は前記閾値より大きい原料フライアッシュと混合して、加熱法により加熱処理して加熱フライアッシュを製造し、その後、得られた加熱フライアッシュと分級フライアッシュを混合して改質フライアッシュとすることが、改質フライアッシュの未燃カーボン量を安定的に低くすること、化石燃料の使用量を最小限にできること、残渣の発生無く処理可能であることがわかる。