(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025152064
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20251002BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20251002BHJP
C08F 212/14 20060101ALI20251002BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
G03F7/004 503A
G03F7/004 501
G03F7/039 601
C08F212/14
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024053782
(22)【出願日】2024-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 隆史
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 知昭
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J100
【Fターム(参考)】
2H197CA06
2H197CA08
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE01
2H197CE10
2H197HA03
2H197JA22
2H225AF24P
2H225AF52P
2H225AF64P
2H225AF71P
2H225AF81P
2H225AF83P
2H225AF99P
2H225AH03
2H225AH04
2H225AH19
2H225AJ04
2H225AJ07
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2H225AJ13
2H225AJ42
2H225AJ48
2H225AJ54
2H225AM27P
2H225AM94P
2H225AM99P
2H225AN38P
2H225AN39P
2H225AN54P
2H225AN57P
2H225BA01P
2H225BA02P
2H225BA26P
2H225BA32P
2H225BA33P
2H225CA12
2H225CB14
2H225CB18
2H225CC03
2H225CC15
4J100AB07P
4J100AB07Q
4J100AL08Q
4J100AL08R
4J100AR09R
4J100BA02Q
4J100BA03P
4J100BA05Q
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4J100BC58R
4J100CA04
4J100CA05
4J100DA01
4J100DA04
4J100JA37
(57)【要約】
【課題】パターン形成の際に、解像性及びCDUに優れ、かつ、ベーク温度依存性が小さい、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、感活性光線性又は感放射線性膜、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたパターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】特定の構造を有する樹脂(A)と、酸拡散制御剤(Q)と、活性光線又は放射線により分解して酸を発生する非イオン性の化合物(C)とを含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、化合物(C)から発生する酸の分子量は300以上であり、化合物(C)から発生する酸のpKaは-1.9以上であり、化合物(C)は特定の構造を有し、化合物(C)の含有量に対する酸拡散制御剤(Q)の含有量の質量比率が6質量%以上である、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いた感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(Pa1)で表される繰り返し単位及び酸の作用により分解して極性が増大する基を有する繰り返し単位を含む樹脂(A)と、
酸拡散制御剤(Q)と、
活性光線又は放射線により分解して酸を発生する非イオン性の化合物(C)と、
を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
前記化合物(C)から発生する酸の分子量は300以上であり、
前記化合物(C)から発生する酸のpKaは-1.9以上であり、
前記化合物(C)は下記式(1)~(4)のいずれかで表される化合物であり、
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の前記化合物(C)の含有量に対する前記酸拡散制御剤(Q)の含有量の質量比率が6質量%以上であり、
前記樹脂(A)は下記式(1)~(4)のいずれかで表される化合物から水素原子を1つ以上取り除いてなる基を含まない、
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】
式(Pa1)中、
R
A1~R
A3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。
L
Aは単結合又は2価の連結基を表す。
Ar
Aは芳香環基を表す。
R
A2とAr
Aは結合して環を形成してもよい。
nAは1~5の整数を表す。
【化2】
式(1)~(4)中、R
Cはそれぞれ独立に置換基を表す。
式(1)中、R
11及びR
12はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R
11とR
12は結合して環を形成してもよい。
式(2)中、R
21、R
22及びR
23はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R
21、R
22及びR
23のうち少なくとも2つは結合して環を形成してもよい。n
21は1以上の整数を表す。
式(3)中、R
31及びR
32はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R
31とR
32は結合して環を形成してもよい。Ar
31はアリール基又はヘテロアリール基を表す。n
31は0又は1を表す。
式(4)中、R
41及びR
42はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R
41とR
42は結合して環を形成してもよい。
【請求項2】
前記化合物(C)から発生する酸の分子量が500以上である、請求項1に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
前記化合物(C)が下記式(2-1)で表される、請求項1に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化3】
式(2-1)中、
R
24は水素原子又は置換基を表す。
R
25及びR
26はそれぞれ独立に置換基を表す。
n
21は1以上の整数を表す。
R
1aはハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、エステル基、カルボキシル基又はこれらの2つ以上を組み合わせてなる基を表す。
R
1aが複数存在する場合、複数のR
1aは同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
n
22は0~5の整数を表す。
【請求項4】
前記樹脂(A)が下記式(b-1)で表される繰り返し単位を含む、請求項1に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化4】
式(b-1)中、
R
b1及びR
b2はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表す。
L
b1は単結合又は-C(=O)O-を表す。
rは0~2の整数を表す。
R
p1及びR
p2はそれぞれ独立に酸の作用により脱離する基を表す。
R
b3はハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、エステル基、カルボキシル基又はこれらの2つ以上を組み合わせてなる基を表す。
s及びtはそれぞれ独立に0~4の整数を表す。ただし、s及びtの少なくとも一方は1以上の整数である。
uは0~(5+2r-s-t)の整数を表す。
R
p1が複数存在する場合、複数のR
p1は同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
R
p2が複数存在する場合、複数のR
p2は同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
R
b3が複数存在する場合、複数のR
b3は同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
R
b3とR
p1、R
b3とR
p2、及び、R
p1とR
p2はそれぞれ結合して環を形成してもよい。
L
b1が結合する芳香環とR
b1とは結合してもよい。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成された感活性光線性又は感放射線性膜。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を露光する工程と、露光された前記レジスト膜を、現像液を用いて現像する工程とを含むパターン形成方法。
【請求項7】
請求項6に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法に関する。より詳細には、本発明は、超LSI(Large Scale Integration)及び高容量マイクロチップの製造プロセス、ナノインプリント用モールド作成プロセス並びに高密度情報記録媒体の製造プロセス等に適用可能な超マイクロリソグラフィプロセス、並びにその他のフォトファブリケーションプロセスに好適に用いることができる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)などの半導体デバイスの製造プロセスにおいては、レジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。近年、集積回路の高集積化に伴い、サブミクロン領域又はクオーターミクロン領域の超微細パターン形成が要求されるようになってきている。それに伴い、露光波長もg線からi線に、更にKrFエキシマレーザー光に、というように短波長化の傾向が見られ、現在では193nm波長を有するArFエキシマレーザーを光源とする露光機が開発されている。また、更に解像力を高める技術として、従来から投影レンズと試料の間に高屈折率の液体(以下、「液浸液」ともいう)で満たす、所謂、液浸法の開発が進んでいる。
【0003】
また、現在では、エキシマレーザー光以外にも、電子線(EB)、X線及び極紫外線(EUV)等を用いたリソグラフィーも開発が進んでいる。これに伴い、各種の活性光線又は放射線に有効に感応するレジスト組成物が開発されている。
【0004】
特許文献1には、特定の構造を有する化合物を含む感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が記載されている。
特許文献2には、特定の樹脂と特定の塩基性化合物を含む感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2022/220189号
【特許文献2】国際公開第2022/172597号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
昨今、レジスト組成物に求められる性能はますます高くなっている。特に、微細パターンを形成する際の解像性及びウェハ面内のパターン寸法の均一性を示すCDU(Critical Demension Uniformity)について、更なる向上が求められている。
また、レジスト組成物のプロセスマージンについての更なる改善が期待される。プロセスマージンとは、レジスト組成物を用いたパターン形成のプロセスにおける諸条件(例えば、加熱時の温度など)が変動しても所望の結果を得ることができる許容範囲(マージン)をいい、この許容範囲が広いほど、プロセスマージンに優れている。レジスト組成物を用いたパターン形成では、レジスト組成物から形成したレジスト膜を露光した後、現像を行う前にベーク(加熱)を行うことがある。このベーク時の温度についてのプロセスマージンを「ベーク温度依存性」ともいう。ベーク温度依存性が小さいほど、ベークの温度変化に対する性能変化が小さく、良好である。
【0007】
そこで、本発明は、パターン形成の際に、解像性及びCDUに優れ、かつ、ベーク温度依存性が小さい、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、感活性光線性又は感放射線性膜、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたパターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
[1]
下記式(Pa1)で表される繰り返し単位及び酸の作用により分解して極性が増大する基を有する繰り返し単位を含む樹脂(A)と、
酸拡散制御剤(Q)と、
活性光線又は放射線により分解して酸を発生する非イオン性の化合物(C)と、
を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
上記化合物(C)から発生する酸の分子量は300以上であり、
上記化合物(C)から発生する酸のpKaは-1.9以上であり、
上記化合物(C)は下記式(1)~(4)のいずれかで表される化合物であり、
上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の上記化合物(C)の含有量に対する上記酸拡散制御剤(Q)の含有量の質量比率が6質量%以上であり、
上記樹脂(A)は下記式(1)~(4)のいずれかで表される化合物から水素原子を1つ以上取り除いてなる基を含まない、
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0010】
【0011】
式(Pa1)中、
RA1~RA3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。
LAは単結合又は2価の連結基を表す。
ArAは芳香環基を表す。
RA2とArAは結合して環を形成してもよい。
nAは1~5の整数を表す。
【0012】
【0013】
式(1)~(4)中、RCはそれぞれ独立に置換基を表す。
式(1)中、R11及びR12はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R11とR12は結合して環を形成してもよい。
式(2)中、R21、R22及びR23はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R21、R22及びR23のうち少なくとも2つは結合して環を形成してもよい。n21は1以上の整数を表す。
式(3)中、R31及びR32はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R31とR32は結合して環を形成してもよい。Ar31はアリール基又はヘテロアリール基を表す。n31は0又は1を表す。
式(4)中、R41及びR42はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R41とR42は結合して環を形成してもよい。
[2]
上記化合物(C)から発生する酸の分子量が500以上である、[1]に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[3]
上記化合物(C)が下記式(2-1)で表される、[1]又は[2]に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0014】
【0015】
式(2-1)中、
R24は水素原子又は置換基を表す。
R25及びR26はそれぞれ独立に置換基を表す。
n21は1以上の整数を表す。
R1aはハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、エステル基、カルボキシル基又はこれらの2つ以上を組み合わせてなる基を表す。
R1aが複数存在する場合、複数のR1aは同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
n22は0~5の整数を表す。
[4]
上記樹脂(A)が下記式(b-1)で表される繰り返し単位を含む、[1]~[3]のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0016】
【0017】
式(b-1)中、
Rb1及びRb2はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表す。
Lb1は単結合又は-C(=O)O-を表す。
rは0~2の整数を表す。
Rp1及びRp2はそれぞれ独立に酸の作用により脱離する基を表す。
Rb3はハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、エステル基、カルボキシル基又はこれらの2つ以上を組み合わせてなる基を表す。
s及びtはそれぞれ独立に0~4の整数を表す。ただし、s及びtの少なくとも一方は1以上の整数である。
uは0~(5+2r-s-t)の整数を表す。
Rp1が複数存在する場合、複数のRp1は同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
Rp2が複数存在する場合、複数のRp2は同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
Rb3が複数存在する場合、複数のRb3は同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
Rb3とRp1、Rb3とRp2、及び、Rp1とRp2はそれぞれ結合して環を形成してもよい。
Lb1が結合する芳香環とRb1とは結合してもよい。
[5]
[1]~[4]のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成された感活性光線性又は感放射線性膜。
[6]
[1]~[4]のいずれか1つに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、上記レジスト膜を露光する工程と、露光された上記レジスト膜を、現像液を用いて現像する工程とを含むパターン形成方法。
[7]
[6]に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、パターン形成の際に、解像性及びCDUに優れ、かつ、ベーク温度依存性が小さい、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、感活性光線性又は感放射線性膜、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたパターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されない。
【0020】
本明細書において、「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV:Extreme Ultraviolet)、X線、軟X線、及び電子線(EB:Electron Beam)等を意味する。
本明細書において、「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。
本明細書において、「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、及びEUV等による露光のみならず、電子線、及びイオンビーム等の粒子線による描画も含む。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0021】
本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートの少なくとも1種を表す。また(メタ)アクリル酸はアクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種を表す。
【0022】
本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分散度(分子量分布ともいう)(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー株式会社製HLC-8120GPC)によるGPC測定(溶剤:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μL、カラム:東ソー株式会社製TSK gel Multipore HXL-M、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率検出器(Refractive Index Detector))によるポリスチレン換算値として定義される。
【0023】
本明細書中における基(原子団)の表記について、本発明の趣旨に反しない限り、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さない基と共に置換基を含む基をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。また、本明細書中における「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
置換基としては、特に断らない限り、1価の置換基が好ましい。置換基の例としては水素原子を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、例えば、以下の置換基Tから選択できる。
【0024】
(置換基T)
置換基Tとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基及びtert-ブトキシ基等のアルコキシ基;シクロアルキルオキシ基;フェノキシ基及びp-トリルオキシ基等のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基及びブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;シクロアルキルオキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基及びベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基及びメトキサリル基等のアシル基;スルファニル基;メチルスルファニル基及びtert-ブチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基;フェニルスルファニル基及びp-トリルスルファニル基等のアリールスルファニル基;アルキル基;アルケニル基;シクロアルキル基;アリール基;芳香族複素環式基;ヒドロキシ基;カルボキシル基;ホルミル基;スルホ基;シアノ基;アルキルアミノカルボニル基;アリールアミノカルボニル基;スルホンアミド基;シリル基;アミノ基;カルバモイル基;アルキルスルホニル基;アリールスルホニル基;等が挙げられる。また、これらの置換基が更に1個以上の置換基を有することができる場合は、その更なる置換基として上記した置換基から選択した置換基を1個以上有する基(例えば、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、トリフルオロメチル基など)も置換基Tの例に含まれる。
【0025】
本明細書において、表記される2価の基の結合方向は、特に断らない限り制限されない。例えば、「X-Y-Z」なる式で表される化合物中の、Yが-COO-である場合、Yは、-CO-O-であってもよく、-O-CO-であってもよい。上記化合物は「X-CO-O-Z」であってもよく、「X-O-CO-Z」であってもよい。
【0026】
本明細書において、酸解離定数(pKa)とは、水溶液中でのpKaを表し、具体的には、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求められる値である。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示す。
ソフトウェアパッケージ1: Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)。
【0027】
また、pKaは、分子軌道計算法によっても求められる。この具体的な方法としては、熱力学サイクルに基づいて、水溶液中におけるH+解離自由エネルギーを計算することで算出する手法が挙げられる。H+解離自由エネルギーの計算方法については、例えばDFT(密度汎関数法)により計算することができるが、他にも様々な手法が文献等で報告されており、これに制限されるものではない。なお、DFTを実施できるソフトウェアは複数存在するが、例えば、Gaussian16が挙げられる。
【0028】
本明細書において、pKaとは、上述した通り、ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を計算により求められる値を指すが、この手法によりpKaが算出できない場合には、DFT(密度汎関数法)に基づいてGaussian16により得られる値を採用するものとする。
本明細書において、pKaは、上述した通り「水溶液中でのpKa」を指すが、水溶液中でのpKaが算出できない場合には、「ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液中でのpKa」を採用するものとする。
【0029】
本明細書において、「固形分」とは、感活性光線性又は感放射線性膜を形成する成分を意味し、溶剤は含まれない。また、感活性光線性又は感放射線性膜を形成する成分であれば、その性状が液体状であっても、固形分とみなす。
【0030】
<感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物>
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(「本発明の組成物」ともいう。)は、
下記式(Pa1)で表される繰り返し単位及び酸の作用により分解して極性が増大する基を有する繰り返し単位を含む樹脂(A)と、
酸拡散制御剤(Q)と、
活性光線又は放射線により分解して酸を発生する非イオン性の化合物(C)と、
を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
上記化合物(C)から発生する酸の分子量は300以上であり、
上記化合物(C)から発生する酸のpKaは-1.9以上であり、
上記化合物(C)は下記式(1)~(4)のいずれかで表される化合物であり、
上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の上記化合物(C)の含有量に対する上記酸拡散制御剤(Q)の含有量の質量比率が6質量%以上であり、
上記樹脂(A)は下記式(1)~(4)のいずれかで表される化合物から水素原子を1つ以上取り除いてなる基を含まない、
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物である。
【0031】
【0032】
式(Pa1)中、
RA1~RA3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。
LAは単結合又は2価の連結基を表す。
ArAは芳香環基を表す。
RA2とArAは結合して環を形成してもよい。
nAは1~5の整数を表す。
【0033】
【0034】
式(1)~(4)中、RCはそれぞれ独立に置換基を表す。
式(1)中、R11及びR12はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R11とR12は結合して環を形成してもよい。
式(2)中、R21、R22及びR23はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R21、R22及びR23のうち少なくとも2つは結合して環を形成してもよい。n21は1以上の整数を表す。
式(3)中、R31及びR32はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R31とR32は結合して環を形成してもよい。Ar31はアリール基又はヘテロアリール基を表す。n31は0又は1を表す。
式(4)中、R41及びR42はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R41とR42は結合して環を形成してもよい。
【0035】
本発明の組成物により、上記した効果が得られるメカニズムは明らかになっていないが、本発明者らは以下のように推定している。ただし、本発明は以下の推定メカニズムによって何ら制限されない。
レジスト組成物に用いられる光酸発生剤として、カチオンとアニオンとを含むイオン性の化合物を用いることが知られているが、イオン性の化合物はイオン間相互作用により凝集することがある。この凝集は、レジスト膜中の素材分布均一性を低下させ、CDUを低下させる原因になっていると考えられる。そこで、本発明では、光酸発生剤の凝集を防ぐため、光酸発生剤として非イオン性(ノニオン)の化合物を用いることで、CDUの改善を図った。また、光酸発生剤から発生する酸の分子量を一定以上とすることで、酸の拡散を抑制して、解像性及びCDUを改善できると考えられる。さらに、本発明では、光酸発生剤の含有量に対する酸拡散制御剤の含有量の質量比率を一定以上とすることで、解像性及びCDUをより改善できると考えられる。
また、光酸発生剤から発生する酸のpKaを一定以上とすることで、反応性を過度に高くすることがなく、ベーク温度依存性が小さくなると考えられる。
【0036】
本発明の組成物は、レジスト組成物であることが好ましく、ポジ型のレジスト組成物であっても、ネガ型のレジスト組成物であってもよい。本発明の組成物は、アルカリ現像用のレジスト組成物であっても、有機溶剤現像用のレジスト組成物であってもよい。
本発明の組成物は、化学増幅型のレジスト組成物であっても、非化学増幅型のレジスト組成物であってもよい。
本発明の組成物を用いて感活性光線性又は感放射線性膜を形成することができる。本発明の組成物を用いて形成された感活性光線性又は感放射線性膜は、レジスト膜であることが好ましい。
【0037】
[活性光線又は放射線により分解して酸を発生する非イオン性の化合物(C)]
本発明の組成物は、活性光線又は放射線により分解して酸を発生する非イオン性の化合物(C)(単に「化合物(C)」ともいう。)を含有する。
化合物(C)は光酸発生剤である。
化合物(C)は非イオン性の化合物である。すなわち、化合物(C)はカチオン及びアニオンを含まない。
化合物(C)は上記式(1)~(4)のいずれかで表される化合物である。
【0038】
式(1)~(4)中、RCは置換基を表す。
RCが表す置換基は特に限定されず、例えば、前述の置換基Tが挙げられ、有機基であることが好ましく、炭素数1~30の有機基であることがより好ましい。
RCが表す置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環基、ヘテロ環オキシ基又はこれらの2つ以上を組み合わせてなる基であることが好ましい。これらの基は、更に1つ以上の置換基を有していてもよい。
【0039】
RCが表すアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。アルキル基の炭素数は特に制限されず、例えば、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~15が更に好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよい。また、アルキル基は鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
【0040】
RCが表すアルコキシ基、アルキルチオ基及びアルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基の説明、具体例及び好ましい範囲は、それぞれ前述したRCが表すアルキル基におけるものと同じである。
【0041】
RCが表すシクロアルキル基は、単環でも多環でもよい。シクロアルキル基の炭素数は特に制限されず、例えば、3~30が好ましく、4~20がより好ましく、5~15が更に好ましい。シクロアルキル基は置換基を有していてもよい。シクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つがカルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。また、シクロアルキル基は、シクロアルカン環を構成するエチレン基の1つ以上が、ビニレン基で置き換わっていてもよい。シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0042】
RCが表すシクロアルキルオキシ基、シクロアルキルチオ基及びシクロアルキルオキシカルボニル基に含まれるシクロアルキル基の説明、具体例及び好ましい範囲は、それぞれ前述したRCが表すシクロアルキル基におけるものと同じである。
【0043】
RCが表すアリール基の炭素数は特に制限されず、例えば、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~15が更に好ましい。アリール基は置換基を有していてもよい。アリール基は単環の基でもよいし、多環の基でもよい。
アリール基は、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、ナフタレン等の単環又は多環の炭素数6~15の芳香族炭化水素)がシクロアルカン(例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭素数3~12の単環又は多環のシクロアルカン。環を構成する基として1つ以上のカルボニル基を有していてもよい。)、シクロアルケン(例えば、シクロヘキセン等の炭素数3~12の単環又は多環のシクロアルケン。環を構成する基として1つ以上のカルボニル基を有していてもよい。)、非芳香族ヘテロ環化合物(例えば、ピロリジン、ピロリン、2-オキサゾリドン、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロチオフェン等の五員環非芳香族ヘテロ環化合物、及び、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロピラン等の六員環非芳香族ヘテロ環化合物など。環を構成する基として、カルボニル基、スルホニル基及びエチレン基からなる群より選ばれる少なくとも1つを有していてもよい。)からなる群より選択される少なくとも1つと縮合した構造を有する縮合環式化合物(例えば、インダン、インデン等)から1つの水素原子を取り除いてなる基であってもよい。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、フェナントリル基等が挙げられる。
【0044】
RCが表すアリールオキシ基、アリールチオ基及びアリールオキシカルボニル基に含まれるアリール基の説明、具体例及び好ましい範囲は、それぞれ前述したRCが表すアリール基におけるものと同じである。
【0045】
RCが表すヘテロ環基は、非芳香族ヘテロ環基でもよいし、芳香族ヘテロ環基でもよい。
【0046】
RCが表す非芳香族ヘテロ環基は飽和でも不飽和でもよい。
RCが表す非芳香族ヘテロ環基は、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1つのヘテロ原子を環員に含むことが好ましい。非芳香族ヘテロ環基の環員原子数は特に制限されないが、3~30が好ましく、4~20がより好ましく、5~15が更に好ましい。非芳香族ヘテロ環基の炭素数は特に制限されないが、1~28が好ましく、2~25がより好ましく、3~20が更に好ましく、2~6が特に好ましい。
非芳香族ヘテロ環基は単環の基でもよいし、多環の基でもよい。
非芳香族ヘテロ環基としては、例えば、ピロリジン、ピロリン、2-オキサゾリドン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン等の五員環非芳香族ヘテロ環化合物から1つの水素原子を取り除いてなる基、及び、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロピラン等の六員環非芳香族ヘテロ環化合物から1つの水素原子を取り除いてなる基などが挙げられる。
また、非芳香族ヘテロ環基は、上記五員環非芳香族ヘテロ環化合物又は上記六員環非芳香族ヘテロ環化合物が、シクロアルカン(例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭素数3~12の単環又は多環のシクロアルカン)、シクロアルケン(例えば、シクロヘキセン等の炭素数3~12の単環又は多環のシクロアルケン)、上記五員環非芳香族ヘテロ環化合物及び上記六員環非芳香族ヘテロ環化合物からなる群より選択される少なくとも1つと縮合した構造を有する縮合環式化合物から1つの水素原子を取り除いてなる基であってもよい。
非芳香族ヘテロ環基の環を構成するメチレン基の1つ以上がカルボニル基に置き換わっていてもよい。
非芳香族ヘテロ環基に含まれる隣り合う原子間の結合が単結合である場合、上記単結合は多重結合(例えば二重結合)に置き換わってもよい。
【0047】
RCが表すヘテロアリール基(芳香族ヘテロ環基)は、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1つのヘテロ原子を環員に含むことが好ましい。ヘテロアリール基の環員数は特に制限されないが、3~30が好ましく、4~20がより好ましく、5~15が更に好ましい。ヘテロアリール基の炭素数は特に制限されないが、1~28が好ましく、2~18がより好ましく、2~13が更に好ましい。ヘテロアリール基は置換基を有していてもよい。ヘテロアリール基は単環の基でもよいし、多環の基でもよい。
ヘテロアリール基としては、例えば、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、トリアゾール、チオフェン、フラン、オキサジアゾール、チアジアゾール、ジオキサゾール、ジチアゾール、テトラゾール等の五員環芳香族複素環式化合物、及び、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、チアジン、オキサジン等の六員環芳香族複素環式化合物から1つの水素原子を取り除いてなる基が挙げられる。
また、ヘテロアリール基は、上記五員環芳香族複素環式化合物又は上記六員環芳香族複素環式化合物が、上記五員環芳香族複素環式化合物、上記六員環芳香族複素環式化合物、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、ナフタレン等の単環又は多環の炭素数6~15の芳香族炭化水素)、シクロアルカン(例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭素数3~12の単環又は多環のシクロアルカン)、シクロアルケン(例えば、シクロヘキセン等の炭素数3~12の単環又は多環のシクロアルケン)、非芳香族ヘテロ環化合物(例えば、ピロリジン、ピロリン、2-オキサゾリドン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン等の五員環非芳香族ヘテロ環化合物、及び、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロピラン等の六員環非芳香族ヘテロ環化合物など)からなる群より選択される少なくとも1つと縮合した構造を有する縮合環式化合物(例えば、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、プリン、キナゾリン、キノキサリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、カルバゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、キノリン、イソキノリン等)から1つの水素原子を取り除いてなる基であってもよい。
【0048】
RCが表すアシル基は、RC1-C(=O)-で表され、RC1は有機基を表すことが好ましい。RC1が表す有機基はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロ環基であることが好ましい。RC1が表す有機基の説明、具体例及び好ましい範囲は、それぞれ前述したRCにおけるものと同じである。
【0049】
RCが表すヘテロ環オキシ基は、RC2-O-で表される基である。RC2はヘテロ環基を表す。RC2が表すヘテロ環基の説明、具体例及び好ましい範囲は、前述したRCにおけるものと同じである。
【0050】
RCは、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表すことが好ましく、アリール基を表すことがより好ましく、置換基を有するアリール基を表すことが更に好ましい。置換基を有するアリール基における置換基としては、例えば、前述の置換基Tが挙げられ、ハロゲン原子又は有機基であることが好ましく、ハロゲン原子又は炭素数1~30の有機基であることがより好ましく、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシル基、ヘテロ環基、ヘテロ環オキシ基、シアノ基、エステル基又はこれらの2つ以上を組み合わせてなる基であることが更に好ましい。ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であることが好ましい。エステル基は、-COORE1又は-OCORE1であることが好ましい。RE1は有機基を表し、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表すことが好ましい。RE1が表す有機基の説明、具体例及び好ましい範囲は、前述したRCにおけるものと同じである。置換基を有するアリール基における置換基として記載した各基の説明、具体例及び好ましい範囲は、それぞれ前述したRCにおけるものと同じである。
【0051】
式(1)中のR11及びR12はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。
R11及びR12が表す置換基は特に限定されず、例えば、前述の置換基Tが挙げられ、有機基であることが好ましく、炭素数1~30の有機基であることがより好ましい。
R11及びR12が表す置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環基、ヘテロ環オキシ基又はこれらの2つ以上を組み合わせてなる基であることが好ましい。これらの基は、更に1つ以上の置換基を有していてもよい。これらの各基の説明、具体例及び好ましい範囲は、それぞれ前述したRCにおけるものと同じである。
R11はアシル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表すことが好ましく、アシル基を表すことがより好ましい。R11が、RC1-C(=O)-で表され、RC1がアリール基であることが更に好ましい。
R12はシクロアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表すことが好ましく、アリール基を表すことがより好ましい。
【0052】
式(1)中のR11とR12は結合して環を形成してもよい。
R11がアシル基を表し、R12がアリール基を表し、かつ、R11とR12が結合して環を形成していることが、化合物(C)の好ましい一態様である。
【0053】
式(2)中のR21、R22及びR23はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。
R21、R22及びR23が表す置換基は特に限定されず、例えば、前述の置換基Tが挙げられ、有機基であることが好ましく、炭素数1~30の有機基であることがより好ましい。
R21、R22及びR23が表す置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環基、ヘテロ環オキシ基又はこれらの2つ以上を組み合わせてなる基であることが好ましい。これらの基は、更に1つ以上の置換基を有していてもよい。これらの各基の説明、具体例及び好ましい範囲は、それぞれ前述したRCにおけるものと同じである。
【0054】
R21は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環基、ヘテロ環オキシ基又はこれらの2つ以上を組み合わせてなる基であることが好ましく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロ環基であることがより好ましい。これらの基は、更に1つ以上の置換基を有していてもよい。これらの各基の説明、具体例及び好ましい範囲は、それぞれ前述したRCにおけるものと同じである。
【0055】
R22は置換基を表すことが好ましく、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環基、ヘテロ環オキシ基又はこれらの2つ以上を組み合わせてなる基であることが好ましい。これらの基は、更に1つ以上の置換基を有していてもよい。これらの各基の説明、具体例及び好ましい範囲は、それぞれ前述したRCにおけるものと同じである。
【0056】
R23は置換基を表すことが好ましく、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表すことが好ましく、アリール基又はヘテロ環基を表すことがより好ましく、置換基を有するアリール基を表すことが更に好ましい。置換基としては、例えば、前述の置換基Tが挙げられる。
【0057】
R21、R22及びR23のうち少なくとも2つは結合して環を形成してもよい。
【0058】
式(2)中のn21は1以上の整数を表し、1又は2を表すことが好ましく、1を表すことがより好ましい。
【0059】
式(3)中のR31及びR32はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。
R31及びR32が表す置換基は特に限定されず、例えば、前述の置換基Tが挙げられ、有機基であることが好ましく、炭素数1~30の有機基であることがより好ましい。
R31及びR32が表す置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環基、ヘテロ環オキシ基又はこれらの2つ以上を組み合わせてなる基であることが好ましい。これらの基は、更に1つ以上の置換基を有していてもよい。これらの各基の説明、具体例及び好ましい範囲は、それぞれ前述したRCにおけるものと同じである。
【0060】
R31及びR32は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環基、ヘテロ環オキシ基又はこれらの2つ以上を組み合わせてなる基であることが好ましく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロ環基であることがより好ましい。これらの基は、更に1つ以上の置換基を有していてもよい。これらの各基の説明、具体例及び好ましい範囲は、それぞれ前述したRCにおけるものと同じである。
【0061】
R31とR32は結合して環を形成してもよい。
【0062】
式(3)中のAr31はアリール基又はヘテロアリール基を表し、アリール基を表すことが好ましい。
Ar31が表すアリール基及びヘテロアリール基の説明、具体例及び好ましい範囲は、それぞれ前述したRCにおけるものと同じである。
Ar31が表すアリール基及びヘテロアリール基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、前述の置換基Tが挙げられる。
【0063】
式(3)中のn31は0又は1を表す。
【0064】
式(4)中のR41及びR42はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。
R31及びR32が表す置換基は特に限定されず、例えば、前述の置換基Tが挙げられ、有機基であることが好ましく、炭素数1~30の有機基であることがより好ましい。
R31及びR32が表す置換基は、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環基、ヘテロ環オキシ基又はこれらの2つ以上を組み合わせてなる基であることが好ましい。これらの基は、更に1つ以上の置換基を有していてもよい。これらの各基の説明、具体例及び好ましい範囲は、それぞれ前述したRCにおけるものと同じである。
【0065】
R41とR42は結合して環を形成してもよい。
【0066】
化合物(C)は式(2)で表されることが好ましく、下記式(2-1)で表されることが特に好ましい。
【0067】
【0068】
式(2-1)中、
R24は水素原子又は置換基を表す。
R25及びR26はそれぞれ独立に置換基を表す。
n21は1以上の整数を表す。
R1aはハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、エステル基、カルボキシル基又はこれらの2つ以上を組み合わせてなる基を表す。
R1aが複数存在する場合、複数のR1aは同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
n22は0~5の整数を表す。
【0069】
式(2-1)中のR24は水素原子又は置換基を表す。
R24の説明、具体例及び好ましい範囲は、前述した式(2)中のR21におけるものと同じである。
【0070】
式(2-1)中のR25は置換基を表す。
R25が表す置換基の説明、具体例及び好ましい範囲は、前述した式(2)中のR22におけるものと同じである。
【0071】
式(2-1)中のR26は置換基を表す。
R26が表す置換基の説明、具体例及び好ましい範囲は、前述した式(2)中のR23におけるものと同じである。
【0072】
式(2-1)中のn21は1以上の整数を表し、1又は2を表すことが好ましく、1を表すことがより好ましい。
【0073】
式(2-1)中のR1aはハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、エステル基、カルボキシル基又はこれらの2つ以上を組み合わせてなる基を表す。ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であることが好ましい。エステル基は、-COORE1又は-OCORE1であることが好ましい。RE1は有機基を表し、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表すことが好ましい。RE1が表す有機基の説明、具体例及び好ましい範囲は、前述したRCにおけるものと同じである。
R1aはアリールオキシ基、アリールチオ基、アリール基又はヘテロアリール基を表すことが好ましく、アリール基を表すことがより好ましく、置換基を有するアリール基を表すことが更に好ましい。置換基を有するアリール基における置換基としては、例えば、前述の置換基Tが挙げられ、ハロゲン原子又は有機基であることが好ましく、ハロゲン原子又は炭素数1~30の有機基であることがより好ましく、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシル基、ヘテロ環基、ヘテロ環オキシ基、シアノ基、エステル基又はこれらの2つ以上を組み合わせてなる基であることが更に好ましい。ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であることが好ましい。エステル基は、-COORE1又は-OCORE1であることが好ましい。RE1は有機基を表し、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表すことが好ましい。RE1が表す有機基の説明、具体例及び好ましい範囲は、前述したRCにおけるものと同じである。置換基を有するアリール基における置換基として記載した各基の説明、具体例及び好ましい範囲は、それぞれ前述したRCにおけるものと同じである。
【0074】
式(2-1)中のn22は0~5の整数を表し、1~3の整数を表すことが好ましい。
【0075】
化合物(C)は、活性光線又は放射線により分解して酸を発生する。
化合物(C)から発生する酸(「酸(CA)」ともいう。)は、下記式(5)で表される。
【0076】
【0077】
式(5)中、RCは置換基を表す。
式(5)中のRCは、式(1)~(4)中のRCと同じである。
【0078】
酸(CA)の分子量は300以上であり、400以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましい。また、酸(CA)の分子量は2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、1200以下であることが更に好ましい。
【0079】
酸(CA)のpKaは、-1.9以上であり、-1.5以上であることがより好ましい。
また、酸(CA)のpKaは、2.0以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましい。
なお、pKaは前述した方法で求められる。
【0080】
化合物(C)の分子量は、350~3500が好ましく、400~3000がより好ましく、500~2000が更に好ましい。
【0081】
化合物(C)は公知の方法を参照して合成することができる。例えば、“Yu, J., Cui, J., Hou, X.-S., Liu, S.-S., Gao, W.-C., Jiang, S., Tian, J., Zhang, C. (2011). Enantioselective α-tosyloxylation of ketones catalyzed by spirobiindane scaffold-based chiral iodoarenes. Tetrahedron: Asymmetry, 22(23), 2039-2055. doi:10.1016/j.tetasy.2011.12.003”などに記載の方法を参照することができる。
【0082】
化合物(C)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。Meはメチル基を表す。
【0083】
【0084】
【0085】
本発明の組成物中の化合物(C)の含有量は、本発明の組成物の全固形分に対して、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましい。また、本発明の組成物中の化合物(C)の含有量は、本発明の組成物の全固形分に対して、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
化合物(C)は、1種のみ使用してもよいし、2種以上使用してもよい。2種以上使用する場合は、それらの合計含有量が上記好適含有量の範囲内であるのが好ましい。
【0086】
本発明の組成物は、化合物(C)に加えて、さらに、化合物(C)以外の光酸発生剤を含有してもよい。
本発明の組成物が、化合物(C)以外の光酸発生剤を含む場合、化合物(C)の含有量は、本発明の組成物中の光酸発生剤の総量に対して、55質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることが更に好ましい。
【0087】
[樹脂(A)]
本発明の組成物は、式(Pa1)で表される繰り返し単位及び酸の作用により分解して極性が増大する基を有する繰り返し単位を含む樹脂(A)(単に「樹脂(A)」ともいう。)を含有する。
【0088】
樹脂(A)は前述した式(1)~(4)のいずれかで表される化合物から水素原子を1つ以上取り除いてなる基を含まない。
樹脂(A)は、化合物(C)とは別の成分である。
【0089】
(酸の作用により分解して極性が増大する基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は酸の作用により分解して極性が増大する基(「酸分解性基」ともいう。)を有する繰り返し単位を含む。
酸分解性基は、酸の作用により分解して極性基を生じる基であることが好ましい。酸分解性基は、酸の作用により脱離する基(脱離基)で極性基が保護された構造を有することが好ましい。典型的には、樹脂(A)は、酸の作用により極性が増大してアルカリ現像液に対する溶解度が増大し、有機溶剤に対する溶解度が減少する。
樹脂(A)は酸分解性樹脂であり、本発明の組成物を用いたパターン形成方法において、現像液としてアルカリ現像液を採用した場合には、ポジ型パターンが好適に形成され、現像液として有機系現像液を採用した場合には、ネガ型パターンが好適に形成される。
酸分解性基が酸の作用により分解して生じる極性基としては、アルカリ可溶性基が好ましく、例えば、カルボキシ基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及びトリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基、並びにアルコール性水酸基等が挙げられる。
【0090】
酸の作用により脱離する脱離基としては、例えば、式(Y1)~(Y4)で表される基が挙げられる。
式(Y1):-C(Rx1)(Rx2)(Rx3)
式(Y2):-C(=O)OC(Rx1)(Rx2)(Rx3)
式(Y3):-C(R36)(R37)(OR38)
式(Y4):-C(Rn)(H)(Ar)
【0091】
式(Y1)及び式(Y2)中、Rx1~Rx3は、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、シクロアルキル基(単環若しくは多環)、アリール基(単環若しくは多環)、アラルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、又はアルケニル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)を表す。なお、Rx1~Rx3の全てがアルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)である場合、Rx1~Rx3のうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
なかでも、Rx1~Rx3は、それぞれ独立に、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表すことが好ましく、Rx1~Rx3は、それぞれ独立に、直鎖状のアルキル基を表すことがより好ましい。
Rx1~Rx3の2つが互いに結合して環(単環及び多環のいずれであってもよい)を形成してもよい。
Rx1~Rx3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等の炭素数1~5のアルキル基が好ましい。
Rx1~Rx3のシクロアルキル基の炭素数は3~20が好ましく、4~15がより好ましい。Rx1~Rx3のシクロアルキル基は、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基でもよいし、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基でもよい。
Rx1~Rx3のアリール基としては、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられる。
Rx1~Rx3のアラルキル基としては、上述したRx1~Rx3のアルキル基中の1個の水素原子を炭素数6~10のアリール基(好ましくはフェニル基)で置換した基が好ましく、例えば、ベンジル基等が挙げられる。
Rx1~Rx3のアルケニル基としては、ビニル基が好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して形成される環としては、シクロアルキル基が好ましい。Rx1~Rx3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、若しくは、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又はノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、若しくは、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましく、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基がより好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基、又はビニリデン基で置き換わっていてもよい。また、これらのシクロアルキル基は、シクロアルカン環を構成するエチレン基の1つ以上が、ビニレン基で置き換わっていてもよい。
式(Y1)又は式(Y2)で表される基は、例えば、Rx1がメチル基又はエチル基であり、Rx2とRx3とが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0092】
式(Y3)中、R36~R38は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。R37とR38とは、互いに結合して環を形成してもよい。1価の有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルケニル基等が挙げられる。R36は水素原子であることも好ましい。
なお、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基には、酸素原子等のヘテロ原子及び/又はカルボニル基等のヘテロ原子を有する基が含まれていてもよい。例えば、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、例えば、メチレン基の1つ以上が、酸素原子等のヘテロ原子及び/又はカルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
また、R38は、繰り返し単位の主鎖が有する別の置換基と互いに結合して、環を形成してもよい。R38と繰り返し単位の主鎖が有する別の置換基とが互いに結合して形成する基は、メチレン基等のアルキレン基が好ましい。
【0093】
式(Y4)中、Arは、芳香環基を表す。Rnは、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表す。RnとArとは互いに結合して非芳香環を形成してもよい。Arはより好ましくはアリール基である。
【0094】
酸分解性基を有する繰り返し単位は、下記式(b-1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。樹脂(A)は下記式(b-1)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0095】
【0096】
式(b-1)中、
Rb1及びRb2はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表す。
Lb1は単結合又は-C(=O)O-を表す。
rは0~2の整数を表す。
Rp1及びRp2はそれぞれ独立に酸の作用により脱離する基を表す。
Rb3はハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、エステル基、カルボキシル基又はこれらの2つ以上を組み合わせてなる基を表す。
s及びtはそれぞれ独立に0~4の整数を表す。ただし、s及びtの少なくとも一方は1以上の整数である。
uは0~(5+2r-s-t)の整数を表す。
Rp1が複数存在する場合、複数のRp1は同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
Rp2が複数存在する場合、複数のRp2は同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
Rb3が複数存在する場合、複数のRb3は同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
Rb3とRp1、Rb3とRp2、及び、Rp1とRp2はそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。
Rb1はLb1が結合する芳香環と結合してもよい。
【0097】
式(b-1)中、Rb1及びRb2が表すアルキル基は、直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。アルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~5が好ましく、1~3がより好ましい。アルキル基は更に置換基を有していてもよい。
Rb1及びRb2は水素原子であることが好ましい。
【0098】
式(b-1)中、Lb1は単結合又は-C(=O)O-を表し、単結合であることが好ましい。
【0099】
式(b-1)中、rは0~2の整数を表し、0又は1を表すことが好ましく、0を表すことがより好ましい。式(b-1)中の芳香環は、rが0を表す場合はベンゼンになり、rが1を表す場合はナフタレンになり、rが2を表す場合はアントラセンになる。
【0100】
式(b-1)中、sは0~4の整数を表し、0~2の整数を表すことが好ましく、0又は1を表すことがより好ましい。
【0101】
式(b-1)中、Rp1は酸の作用により脱離する基を表す。酸の作用により脱離する基としては、特に限定されないが、前述の式(Y1)~(Y4)で表される基を挙げることができる。
式(b-1)中の-ORp1は、酸の作用によりRp1が脱離して、水酸基を生じる。
【0102】
式(b-1)中、tは0~4の整数を表し、0~2の整数を表すことが好ましく、0又は1を表すことがより好ましい。
s及びtの少なくとも一方は1以上の整数である。
【0103】
式(b-1)中、Rp2は酸の作用により脱離する基を表す。酸の作用により脱離する基としては、特に限定されないが、前述の式(Y1)~(Y4)で表される基を挙げることができる。
式(b-1)中の-COORp2は、酸の作用によりRp2が脱離して、カルボキシル基を生じる。
【0104】
式(b-1)中、Rb3はハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、エステル基、カルボキシル基又はこれらの2つ以上を組み合わせてなる基を表す。
Rb3が表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子又はヨウ素原子が好ましい。
Rb3が表すアルキル基としては、直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。アルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~6がより好ましい。Rb3が表すアルキル基に含まれるメチレン基は、-CO-及び-O-の少なくとも1つで置き換わっていてもよい。
Rb3が表すシクロアルキル基の炭素数は特に制限されないが、3~20が好ましく、5~15がより好ましい。Rb3が表すシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、並びにノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rb3が表すアルコキシ基中に含まれるアルキル基としては直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。アルコキシ基中に含まれるアルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~6がより好ましい。
Rb3が表すアリールオキシ基中に含まれるアリール基の炭素数は特に制限されないが、6~20が好ましく、6~10がより好ましい。Rb3が表すアリールオキシ基中に含まれるアリール基としては、フェニル基が最も好ましい。
【0105】
Rb3が表すアルキルチオ基中に含まれるアルキル基としては直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。Rb3が表すアルキルチオ基中に含まれるアルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~6がより好ましい。
Rb3が表すアリールチオ基中に含まれるアリール基の炭素数は特に制限されないが、6~20が好ましく、6~10がより好ましい。Rb3が表すアリールチオ基中に含まれるアリール基としては、フェニル基が最も好ましい。
Rb3が表すアリール基の炭素数は特に制限されないが、6~20が好ましく、6~10がより好ましい。Rb3が表すアリール基としては、フェニル基が最も好ましい。
Rb3が表すヘテロアリール基は、硫黄原子、窒素原子及び酸素原子からなる群より選ばれる少なくとも1つのヘテロ原子を含むことが好ましい。ヘテロアリール基に含まれるヘテロ原子の数は1~5個が好ましく、1~3個がより好ましい。ヘテロアリール基の炭素数は特に制限されないが、2~20が好ましく、3~15がより好ましい。ヘテロアリール基は単環でも多環でもよい。Rb3が表すヘテロアリール基としては、例えば、チエニル基、フラニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピリジル基、イソチアゾリル基、チアジアゾリル基等が挙げられる。
【0106】
Rb3はカルボキシル基であってもよい。
【0107】
Rb3が表すエステル基は-COO-を含む基であり、アルコキシカルボニル基又はアルキルカルボニルオキシ基であることが好ましい。アルコキシカルボニル基又はアルキルカルボニルオキシ基中に含まれるアルキル基は直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。アルコキシカルボニル基又はアルキルカルボニルオキシ基中に含まれるアルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~6がより好ましい。
【0108】
Rb3は上記した基の2つ以上を組み合わせてなる基であってもよい。上記した基の2つ以上を組み合わせてなる基は、特に限定されないが、例えば、エステル基と、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、及び、カルボキシル基からなる群から選択される少なくとも一つを組み合わせてなる基が挙げられる。
【0109】
Rb3が更に1個以上の置換基を有することができる場合は、Rb3は置換基を有していてもよい。
【0110】
式(b-1)中、uは0~(5+2r-s-t)の整数を表す。uは、0~4の整数が好ましく、0~2の整数がより好ましい。
uが2以上の場合、複数のRb3は互いに同じでも異なってもよく、互いに結合して環(単環でも多環でもよい。)を形成してもよい。
Rb3とRp1、Rb3とRp2、Rp1とRp2はそれぞれ互いに結合して環(単環でも多環でもよい。)を形成してもよい。Rb1はLb1が結合する芳香環と結合してもよい。
【0111】
酸分解性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。下記構造式中、Meはメチル基を表し、RxはH、CH3、CF3又はCH2OHを表し、Rxa及びRxbはそれぞれ独立に炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、pは0以上の整数を表し、Xa1はH、CH3、CF3又はCH2OHを表し、Zは置換基を表し、Zが複数存在する場合は互いに同じでも異なっていてもよい。
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、15モル%以上が更に好ましい。また、酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、70モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましく、50モル%以下が更に好ましい。
【0118】
樹脂(A)が含む酸分解性基を有する繰り返し単位は、1種でもよいし、2種以上でもよい。樹脂(A)が酸分解性基を有する繰り返し単位を2種以上含む場合は、それらの合計含有量が上記好適含有量の範囲内であるのが好ましい。
【0119】
(式(Pa1)で表される繰り返し単位)
樹脂(A)は下記式(Pa1)で表される繰り返し単位を含む。
【0120】
【0121】
式(Pa1)中、
RA1~RA3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。
LAは単結合又は2価の連結基を表す。
ArAは芳香環基を表す。
RA2とArAは結合して環を形成してもよい。
nAは1~5の整数を表す。
【0122】
式(Pa1)で表される繰り返し単位は、前述した酸分解性基を有する繰り返し単位とは異なる繰り返し単位であることが好ましい。
【0123】
式(Pa1)中のRA1、RA2及びRA3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。
RA1、RA2及びRA3が表すアルキル基としては、直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。アルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が特に好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。
RA1、RA2及びRA3が表すシクロアルキル基の炭素数は特に制限されないが、3~20が好ましく、5~15がより好ましい。RA1、RA2及びRA3が表すシクロアルキル基としては、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、並びに、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
RA1、RA2及びRA3が表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子又はヨウ素原子が好ましい。
RA1、RA2及びRA3が表すアルコキシカルボニル基中に含まれるアルキル基としては直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。アルコキシカルボニル基中に含まれるアルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~5が好ましく、1~3がより好ましい。
【0124】
式(Pa1)中のArAは芳香環基を表し、より具体的には(nA+1)価の芳香環基を表す。
ArAが表す芳香環基は、ベンゼン環基、ナフタレン環基等の芳香族炭化水素基でもよいし、芳香族ヘテロ環基でもよい。芳香族ヘテロ環基としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1つを環員として含む基が好ましい。芳香族ヘテロ環基の環員原子数は4~20が好ましい。芳香族ヘテロ環基の炭素数は1~18が好ましい。
nAが1である場合における2価の芳香環基は、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基等の炭素数6~18のアリーレン基、又は、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾピロール環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、トリアゾール環、チアジアゾール環、チアゾール環等のヘテロ環を含む2価の芳香環基が好ましい。上記芳香環基は、置換基を有していてもよい。
nAが2以上の整数である場合における(nA+1)価の芳香環基の具体例としては、2価の芳香環基の上記した具体例から、(nA-1)個の任意の水素原子を除してなる基が挙げられる。
(nA+1)価の芳香環基は、更に置換基を有していてもよい。
(nA+1)価の芳香環基が有し得る置換基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;フェニル基等のアリール基;等が挙げられる。
ArAは炭素数6~18の芳香環基を表すことが好ましく、芳香族炭化水素基を表すことがより好ましく、ベンゼン環基、ナフタレン環基又はビフェニレン環基を表すことが更に好ましい。
【0125】
式(Pa1)中のLAは単結合又は2価の連結基を表す。
LAが表す2価の連結基としては、特に限定されないが、例えば、-COO-、-CONRA4-、アルキレン基、又はこれらの基の2種以上を組み合わせてなる基が挙げられる。RA4は水素原子又はアルキル基を表す。
上記アルキレン基としては、特に限定されないが、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、及びオクチレン基等の炭素数1~8のアルキレン基が好ましい。
RA4がアルキル基を表す場合のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、炭素数8以下のアルキル基が好ましい。
【0126】
RA2とArAは結合して環を形成してもよい。RA2とArAが結合して環を形成する場合、RA2とArAは単結合で結合してもよいし、連結基を介して結合してもよい。連結基としては、例えば、-O-、-S-、-CO-、-CO2-、-SO-、-SO2-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~5)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~5)、及びこれらの2つ以上を組み合わせてなる基等が挙げられる。
【0127】
式(Pa1)で表される繰り返し単位は、ヒドロキシスチレン構造を備えていることが好ましい。すなわち、ArAはベンゼン環基を表すことが好ましい。
nAは1~3の整数を表すことが好ましく、1又は2を表すことがより好ましい。
【0128】
式(Pa1)で表される繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。下記構造式中、G1及びG2はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ヒドロキシ基又はヒドロキシメチル基を表す。f1は1~3の整数を表す。
【0129】
【0130】
樹脂(A)中の式(Pa1)で表される繰り返し単位の含有量は、特に限定されないが、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して20モル%以上であることが好ましく、30モル%以上であることがより好ましく、40モル%以上であることが更に好ましい。また、式(Pa1)で表される繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して90モル%以下であることが好ましく、85モル%以下であることがより好ましく、80モル%以下であることが更に好ましい。
【0131】
樹脂(A)が含む式(Pa1)で表される繰り返し単位は、1種でもよいし、2種以上でもよい。樹脂(A)が式(Pa1)で表される繰り返し単位を2種以上含む場合は、それらの合計含有量が上記好適含有量の範囲内であるのが好ましい。
【0132】
樹脂(A)は、式(Pa1)で表される繰り返し単位と酸分解性基を有する繰り返し単位に加えて、その他の繰り返し単位を含んでもよい。
【0133】
(ラクトン基、スルトン基又はカーボネート基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、ラクトン基、スルトン基又はカーボネート基を有する繰り返し単位(以下、「単位Y」ともいう。)を有していてもよい。
単位Yは、水酸基及びヘキサフルオロプロパノール基等の酸基を有さないことも好ましい。
【0134】
ラクトン基又はスルトン基としては、ラクトン構造又はスルトン構造を有していればよい。ラクトン構造又はスルトン構造は、5~7員環ラクトン構造又は5~7員環スルトン構造が好ましい。なかでも、ビシクロ構造若しくはスピロ構造を形成する形で5~7員環ラクトン構造に他の環構造が縮環しているもの、又はビシクロ構造若しくはスピロ構造を形成する形で5~7員環スルトン構造に他の環構造が縮環しているものがより好ましい。
カーボネート基としては、環状炭酸エステル基が好ましい。
環状炭酸エステル基を有する繰り返し単位については、例えば、国際公開第2022/024928号の[0127]~[0133]の記載を参照できる。上記記載は本明細書に組み込まれる。
【0135】
樹脂(A)は、下記式(LC1-1)~(LC1-22)のいずれかで表されるラクトン構造、下記式(SL1-1)~(SL1-3)のいずれかで表されるスルトン構造又は下記式(CC1-1)~(CC1-2)のいずれかで表される環状炭酸エステル構造の環員原子から、水素原子を1つ以上取り除いてなるラクトン基、スルトン基又はカーボネート基を有する繰り返し単位を有することが好ましく、ラクトン基、スルトン基又はカーボネート基が主鎖に直接結合していてもよい。例えば、ラクトン基、スルトン基又はカーボネート基の環員原子が、樹脂(A)の主鎖を構成してもよい。ラクトン基、スルトン基及びカーボネート基は置換基を有していてもよい。
【0136】
下記構造式中のRLは置換基を表す。RLが複数存在する場合、複数のRLは同じでもよいし、異なっていてもよい。RLとしては、例えば、炭素数1~8のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数2~8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基及び酸分解性基が挙げられる。e1は0~4の整数を表す。e1が複数存在する場合、複数のe1は同じでもよいし、異なっていてもよい。e1が2以上の場合、複数存在するRLは同一でも異なっていてもよく、複数存在するRL同士が結合して環を形成してもよい。
【0137】
【0138】
ラクトン基、スルトン基又はカーボネート基を有する繰り返し単位としては、例えば、下記式(AI-2)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0139】
【0140】
式(AI-2)中、Rb0は水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
Rb0のアルキル基は置換基を有していてもよい。Rb0のアルキル基が有していてもよい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。
Rb0のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。Rb0は水素原子又はメチル基であることが好ましい。
Abは単結合、アルキレン基、単環又は多環の脂環式炭化水素構造を有する2価の連結基、エーテル基、エステル基、カルボニル基又はこれらを組み合わせた2価の連結基を表す。なかでも、Abとしては、単結合、又は-Ab1-CO2-で表される連結基が好ましい。Ab1は、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又は単環若しくは多環のシクロアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、又はノルボルニレン基が好ましい。
Vは、式(LC1-1)~(LC1-22)のいずれかで表されるラクトン構造の環員原子から水素原子を1つ取り除いてなる基、式(SL1-1)~(SL1-3)のいずれかで表されるスルトン構造の環員原子から水素原子を1つ取り除いてなる基又は式(CC1-1)~(CC1-2)のいずれかで表される環状炭酸エステル構造の環員原子から水素原子を1つ取り除いてなる基を表す。
【0141】
樹脂(A)が単位Yを含む場合、単位Yの含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、1モル%以上でもよく、10モル%以上でもよい。また、単位Yの含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、80モル%以下でもよく、70モル%以下でもよい。
樹脂(A)は単位Yを含まないことも好ましい。
【0142】
(光酸発生基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基(「光酸発生基」ともいう。)を有する繰り返し単位を有していてもよい。
光酸発生基を有する繰り返し単位としては、式(4)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0143】
【0144】
R41は水素原子又はメチル基を表す。L41は単結合又は2価の連結基を表す。L42は2価の連結基を表す。R40は活性光線又は放射線の照射により分解して側鎖に酸を発生させる構造部位を表す。
【0145】
L41は単結合又は2価の連結基を表し、単結合又はエステル結合(-COO-)を表すことが好ましい。
【0146】
L42は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO2-、及び-NR-からなる群より選ばれる少なくとも1つからなる連結基であることが好ましい。Rは水素原子又は有機基(好ましくは炭素数1~10の有機基であり、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等)を表す。
アルキレン基は、直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。アルキレン基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましい。
シクロアルキレン基は単環のシクロアルキレン基でも多環のシクロアルキレン基でもよい。シクロアルキレン基の炭素数は特に制限されないが、3~20が好ましく、5~15がより好ましい。
アリーレン基の炭素数は特に制限されないが、6~20が好ましく、6~10がより好ましい。
アルキレン基、シクロアルキレン基及びアリーレン基は置換基を有していてもよく、置換基としては上記置換基Tが挙げられる。
【0147】
R40は下記式(S4-1)で表される基であることが好ましい。
【0148】
【0149】
式(S4-1)中、Q-は酸の残基を表し、M+はカチオンを表す。*はL41との結合位置を表す。
酸の残基とは、酸からプロトンが解離してなる基である。
Q-は、カルボキシレートアニオン基(COO-)、スルホネートアニオン基(SO3
-)、又はスルホンアミド基(N--SO2RN1で表される。RN1は有機基を表し、炭素数1~10の有機基が挙げられ、アルキル基、フルオロアルキル基又はアリール基が好ましい。)が好ましく、スルホネートアニオン基がより好ましい。
M+についての説明、具体例及び好ましい範囲は、後述する化合物(QD)の説明におけるM+と同じである。
【0150】
光酸発生基を有する繰り返し単位の具体例としては、例えば、特開2014-041327号公報の[0094]~[0105]に記載された繰り返し単位、国際公開第2018/193954号公報の[0094]に記載された繰り返し単位、国際公開第2022/024928号の[0138]に記載された繰り返し単位が挙げられる。上記記載は本明細書に組み込まれる。
【0151】
式(4)で表される繰り返し単位としては、例えば、特開2014-041327号公報の段落[0094]~[0105]に記載された繰り返し単位、及び国際公開第2018/193954号公報の段落[0094]に記載された繰り返し単位が挙げられる。
【0152】
樹脂(A)が光酸発生基を有する繰り返し単位を含む場合、光酸発生基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、1モル%以上であることが好ましく、3モル%以上であることがより好ましく、5モル%以上であることが特に好ましい。また、光酸発生基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、40モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることが特に好ましい。
樹脂(A)は光酸発生基を有する繰り返し単位を含まないことも好ましい。
【0153】
(式(V-1)又は式(V-2)で表される繰り返し単位)
樹脂(A)は、下記式(V-1)又は下記式(V-2)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
下記式(V-1)で表される繰り返し単位及び下記式(V-2)で表される繰り返し単位は前述した各繰り返し単位とは異なる繰り返し単位であることも好ましい。
【0154】
【0155】
式(V-1)及び(V-2)中、R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、エステル基(-OCOR又は-COOR:Rは炭素数1~6のアルキル基又はフッ素化アルキル基)又はカルボキシル基を表す。アルキル基としては、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が好ましい。n3は0~6の整数を表す。n4は0~4の整数を表す。X4はメチレン基、酸素原子又は硫黄原子である。
式(V-1)又は式(V-2)で表される繰り返し単位としては、例えば、国際公開第2018/193954号の段落[0100]に記載された繰り返し単位が挙げられる。
【0156】
(主鎖の運動性を低下させるための繰り返し単位)
樹脂(A)は、発生酸の過剰な拡散又は現像時のパターン崩壊を抑制できる点から、ガラス転移温度(Tg)が高くてもよい。Tgは90℃より大きくてもよく、100℃より大きくてもよく、110℃より大きくてもよく、125℃より大きくてもよい。現像液への溶解速度が優れる点から、Tgは400℃以下であってもよく、350℃以下であってもよい。
本明細書において、樹脂(A)等のポリマーのガラス転移温度(Tg)(以下「繰り返し単位のTg」)は、以下の方法で算出する。まず、ポリマー中に含まれる各繰り返し単位のみからなるホモポリマーのTgを、Bicerano法によりそれぞれ算出する。次に、ポリマー中の全繰り返し単位に対する、各繰り返し単位の質量割合(%)を算出する。次に、Foxの式(Materials Letters 62(2008)3152等に記載)を用いて各質量割合におけるTgを算出して、それらを総和して、ポリマーのTg(℃)とする。
Bicerano法は、Prediction of polymer properties, Marcel Dekker Inc,New York(1993)に記載されている。Bicerano法によるTgの算出は、ポリマーの物性概算ソフトウェアMDL Polymer(MDL Information Systems,Inc.)を用いて行うことができる。
【0157】
主鎖の運動性を低下させるための繰り返し単位については、国際公開第2022/024928号の[0144]~[0160]の内容を援用する。
【0158】
(ラクトン基、スルトン基、カーボネート基、水酸基、シアノ基及びアルカリ可溶性基から選ばれる少なくとも1種類の基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)はラクトン基、スルトン基、カーボネート基、水酸基、シアノ基及びアルカリ可溶性基から選ばれる少なくとも1種類の基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
樹脂(A)が有するラクトン基、スルトン基又はカーボネート基を有する繰り返し単位としては、前述した<ラクトン基、スルトン基又はカーボネート基を有する繰り返し単位>で説明した繰り返し単位が挙げられる。好ましい含有量も前述した<ラクトン基、スルトン基又はカーボネート基を有する繰り返し単位>で説明した通りである。
【0159】
樹脂(A)は、水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位を有していてもよい。これにより基板密着性及び現像液親和性が向上する。
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位は、水酸基又はシアノ基で置換された脂環式炭化水素構造を有する繰り返し単位であることが好ましい。
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位は、酸分解性基を有さないことが好ましい。水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位としては、特開2014-098921号公報の段落[0081]~[0084]に記載のものが挙げられる。
【0160】
樹脂(A)は、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
アルカリ可溶性基としては、例えば、カルボキシル基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、ビススルホニルイミド基、及びα位が電子求引性基で置換された脂肪族アルコール基(例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール基)が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。樹脂(A)がアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を含むことにより、特にコンタクトホール用途での解像性が向上する。アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、特開2014-098921号公報の段落[0085]及び[0086]に記載のものが挙げられる。
【0161】
(脂環式炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位)
樹脂(A)は脂環式炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を有してもよい。これにより液浸露光時にレジスト膜から液浸液への低分子成分の溶出が低減できる。脂環式炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位として、例えば、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、ジアマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位などが挙げられる。
【0162】
(水酸基及びシアノ基のいずれも有さない、式(III)で表される繰り返し単位)
樹脂(A)は、水酸基及びシアノ基のいずれも有さない、式(III)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
【0163】
【0164】
式(III)中、R5は少なくとも1つの環状構造を有し、水酸基及びシアノ基のいずれも有さない炭化水素基を表す。Raは水素原子、アルキル基又は-CH2-O-Ra2基を表す。式中、Ra2は水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。
水酸基及びシアノ基のいずれも有さない、式(III)で表される繰り返し単位としては、特開2014-098921号公報の段落[0087]~[0094]に記載のものが挙げられる。
【0165】
(その他の繰り返し単位)
更に、樹脂(A)は、前述した繰り返し単位以外のその他の繰り返し単位を有してもよい。
樹脂(A)は、例えば、オキサチアン環基を有する繰り返し単位、オキサゾロン環基を有する繰り返し単位、ジオキサン環基を有する繰り返し単位、及びヒダントイン環基を有する繰り返し単位からなる群から選択される繰り返し単位を有していてもよい。このような繰り返し単位としては、例えば、国際公開第2022/024928号の[0170]に記載のものが挙げられる。
【0166】
樹脂(A)について、さらに、国際公開第2022/024928号の[0112]~[0118]、[0171]~[0172]の内容を援用することができる。
【0167】
樹脂(A)は、常法に従って(例えばラジカル重合)合成できる。
GPC法によりポリスチレン換算値として、樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、30000以下が好ましく、1000~30000がより好ましく、3000~30000が更に好ましく、5000~15000が特に好ましい。
樹脂(A)の分散度(分子量分布、Pd、Mw/Mn)は、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1.0~3.0が更に好ましく、1.1~2.0が特に好ましい。分散度が小さいものほど、解像度、及びレジスト形状がより優れ、更に、レジストパターンの側壁がよりスムーズであり、ラフネス性にもより優れる。
【0168】
本発明の組成物において、樹脂(A)の含有量は、本発明の組成物の全固形分に対して、40.0~99.9質量%が好ましく、50.0~95.0質量%が好ましく、60.0~90.0質量%がより好ましい。
樹脂(A)は、1種で使用してもよいし、2種以上使用してもよい。樹脂(A)を2種以上使用する場合は、それらの合計含有量が上記好適含有量の範囲内であるのが好ましい。
【0169】
[酸拡散制御剤(Q)]
本発明の組成物は、酸拡散制御剤(Q)(「化合物(Q)」ともいう。)を含有する。
化合物(Q)は、露光時に、例えば、化合物(C)などの光酸発生剤等から発生する酸をトラップし、余分な発生酸による、未露光部における樹脂(A)の反応を抑制するクエンチャーとして作用することができる。
化合物(Q)の種類は特に制限されず、例えば、塩基性化合物(QA)、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(QB)、及び、活性光線又は放射線の照射により酸拡散制御能が低下又は消失する化合物(QC)が挙げられる。
化合物(QC)としては、化合物(C)から発生する酸(酸(CA))に対して相対的に弱酸となる酸のオニウム塩化合物(QD)、及び、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(QE)が挙げられる。
【0170】
(塩基性化合物(QA))
塩基性化合物(QA)としては、下記式(A)~(E)で示される構造を有する化合物が好ましい。
【0171】
【0172】
式(A)及び(E)中、
RD0、RD1及びRD2は、同一でも異なってもよく、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)又はアリール基(炭素数6~20)を表す。RD1とRD2は、互いに結合して環を形成してもよい。
RD3、RD4、RD5及びRD6は、同一でも異なってもよく、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基を表す。
【0173】
式(A)及び(E)中のRD0、RD1、RD2、RD3、RD4、RD5及びRD6が表すアルキル基又はシクロアルキル基は、置換基を有していても無置換であってもよい。
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1~20のアミノアルキル基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1~20のシアノアルキル基が好ましい。
式(A)及び(E)中のRD0、RD1、RD2、RD3、RD4、RD5及びRD6が表すアルキル基又はシクロアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0174】
式(B)、式(C)、式(D)及び(E)中、*は結合位置を表す。
【0175】
塩基性化合物(QA)としては、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジン等も挙げられる。
塩基性化合物(QA)は、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造及びピリジン構造からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する化合物であってもよい。
塩基性化合物(QA)は、水酸基及びエーテル結合からなる群より選ばれる少なくとも1つを有するアルキルアミン誘導体、又は、水酸基及びエーテル結合からなる群より選ばれる少なくとも1つを有するアニリン誘導体等であってもよい。
【0176】
塩基性化合物(QA)の共役酸のpKaと、酸(CA)のpKaとの差(塩基性化合物(QA)の共役酸のpKaから酸(CA)のpKaを引いた値)は、1.00以上が好ましく、1.00~14.00がより好ましく、2.00~13.00が更に好ましい。
また、塩基性化合物(QA)の共役酸のpKaは、例えば、1.00~14.00が好ましく、2.00~13.00がより好ましい。
【0177】
(光酸発生剤から発生する酸に対して相対的に弱酸となる酸のオニウム塩化合物(QD))
化合物(QD)は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物であってもよい。
化合物(QD)は、光酸発生剤から発生する酸よりもpKaが1.00以上大きい酸を発生する化合物であることが好ましい。
化合物(QD)から発生する酸のpKaと、光酸発生剤から発生する酸のpKaとの差(化合物(QD)から発生する酸のpKaから光酸発生剤から発生する酸のpKaを引いた値)は、1.00以上であることが好ましく、1.00~10.00であることがより好ましく、1.00~8.00であることが更に好ましく、1.00~6.00であることが特に好ましい。
また、化合物(QD)から発生する酸のpKaは、例えば、1.00~10.00が好ましく、2.00~8.00がより好ましい。
【0178】
化合物(QD)は、アニオンとカチオンとからなるオニウム塩化合物が好ましい。
化合物(QD)としては、例えば、「M+ X-」で表される化合物(オニウム塩)が挙げられる。M+は有機カチオンを表し、X-は有機アニオンを表す。
M+が表す有機カチオンは特に限定されない。有機カチオンの価数は、1又は2価以上であってもよい。
なかでも、上記有機カチオンとしては、式(ZaI)で表されるカチオン(以下「カチオン(ZaI)」ともいう)、又は、式(ZaII)で表されるカチオン(以下「カチオン(ZaII)」ともいう)が好ましい。
【0179】
【0180】
上記式(ZaI)において、R201、R202、及びR203は、それぞれ独立に、有機基を表す。
R201、R202、及びR203としての有機基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましい。R201~R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル基、アミド基、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203の内の2つが結合して形成する基としては、例えば、アルキレン基(例えば、ブチレン基及びペンチレン基)、及び-CH2-CH2-O-CH2-CH2-が挙げられる。
【0181】
式(ZaI)における有機カチオンの好適な態様としては、後述する、カチオン(ZaI-1)、カチオン(ZaI-2)、カチオン(ZaI-3b)、カチオン(ZaI-4b)が挙げられる。
【0182】
まず、カチオン(ZaI-1)について説明する。
カチオン(ZaI-1)は、上記式(ZaI)のR201~R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニウムカチオンである。
アリールスルホニウムカチオンは、R201~R203の全てがアリール基でもよいし、R201~R203の一部がアリール基であり、残りがアルキル基又はシクロアルキル基であってもよい。
R201~R203のうちの1つがアリール基であり、R201~R203のうちの残りの2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル基、アミド基、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203のうちの2つが結合して形成する基としては、例えば、1つ以上のメチレン基が酸素原子、硫黄原子、エステル基、アミド基、及び/又はカルボニル基で置換されていてもよいアルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基、及び-CH2-CH2-O-CH2-CH2-)が挙げられる。
アリールスルホニウムカチオンとしては、トリアリールスルホニウムカチオン、ジアリールアルキルスルホニウムカチオン、アリールジアルキルスルホニウムカチオン、ジアリールシクロアルキルスルホニウムカチオン、及びアリールジシクロアルキルスルホニウムカチオンが挙げられる。
【0183】
アリールスルホニウムカチオンに含まれるアリール基としては、フェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。アリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有するヘテロ環構造を有するアリール基であってもよい。ヘテロ環構造としては、ピロール残基、フラン残基、チオフェン残基、インドール残基、ベンゾフラン残基、及びベンゾチオフェン残基が挙げられる。アリールスルホニウムカチオンが2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウムカチオンが必要に応じて有しているアルキル基又はシクロアルキル基は、炭素数1~15の直鎖状アルキル基、炭素数3~15の分岐鎖状アルキル基、又は炭素数3~15のシクロアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、又はシクロヘキシル基がより好ましい。
【0184】
R201~R203のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、アルキル基(例えば、炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば、炭素数3~15)、アリール基(例えば、炭素数6~14)、アルコキシ基(例えば、炭素数1~15)、シクロアルキルアルコキシ基(例えば、炭素数1~15)、ハロゲン原子(例えば、フッ素及びヨウ素)、水酸基、カルボキシル基、エステル基、スルフィニル基、スルホニル基、アルキルチオ基、又はフェニルチオ基が好ましい。
上記置換基は可能な場合更に置換基を有していてもよく、上記アルキル基が置換基としてハロゲン原子を有して、トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基となっていることも好ましい。
上記置換基は任意の組み合わせにより、酸分解性基を形成することも好ましい。
なお、酸分解性基とは、酸の作用により分解して極性基を生じる基を意図し、酸の作用により脱離する基で極性基が保護された構造であることが好ましい。上記の極性基及び脱離基としては、前述の通りである。
【0185】
次に、カチオン(ZaI-2)について説明する。
カチオン(ZaI-2)は、式(ZaI)におけるR201~R203が、それぞれ独立に、芳香環を有さない有機基を表すカチオンである。芳香環とは、ヘテロ原子を含む芳香族環も包含する。
R201~R203としての芳香環を有さない有機基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
R201~R203としては、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基が好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、又はアルコキシカルボニルメチル基がより好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の2-オキソアルキル基が更に好ましい。
【0186】
R201~R203のアルキル基及びシクロアルキル基は、例えば、炭素数1~10の直鎖状アルキル基又は炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基)、並びに、炭素数3~10のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びノルボルニル基)が挙げられる。
R201~R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば、炭素数1~5)、水酸基、シアノ基、又はニトロ基によって更に置換されていてもよい。
R201~R203の置換基は、それぞれ独立に、置換基の任意の組み合わせにより、酸分解性基を形成することも好ましい。
【0187】
次に、カチオン(ZaI-3b)について説明する。
カチオン(ZaI-3b)は、下記式(ZaI-3b)で表されるカチオンである。
【0188】
【0189】
式(ZaI-3b)中、R1c~R5cは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基を表す。
R6c及びR7cは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(例えば、t-ブチル基等)、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアリール基を表す。
Rx及びRyは、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
R1c~R7c、並びに、Rx及びRyの置換基は、それぞれ独立に、置換基の任意の組み合わせにより、酸分解性基を形成することも好ましい。
【0190】
R1c~R5c中のいずれか2つ以上、R5cとR6c、R6cとR7c、R5cとRx、及びRxとRyは、それぞれ互いに結合して環を形成してもよく、この環は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、ケトン基、エステル結合、又はアミド結合を含んでいてもよい。
上記環としては、芳香族又は非芳香族の炭化水素環、芳香族又は非芳香族のヘテロ環、及びこれらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環が挙げられる。環としては、3~10員環が挙げられ、4~8員環が好ましく、5又は6員環がより好ましい。
【0191】
R1c~R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRxとRyが結合して形成する基としては、ブチレン基及びペンチレン基等のアルキレン基が挙げられる。このアルキレン基中のメチレン基が酸素原子等のヘテロ原子で置換されていてもよい。
R5cとR6c、及びR5cとRxが結合して形成する基としては、単結合又はアルキレン基が好ましい。アルキレン基としては、メチレン基及びエチレン基が挙げられる。
【0192】
R1c~R5c、R6c、R7c、Rx、Ry、並びに、R1c~R5c中のいずれか2つ以上、R5cとR6c、R6cとR7c、R5cとRx、及びRxとRyがそれぞれ互いに結合して形成する環は、置換基を有していてもよい。
【0193】
次に、カチオン(ZaI-4b)について説明する。
カチオン(ZaI-4b)は、下記式(ZaI-4b)で表されるカチオンである。
【0194】
【0195】
式(ZaI-4b)中、lは0~2の整数を表し、rは0~8の整数を表す。
R13は、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子及びヨウ素原子等)、水酸基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又はシクロアルキル基を含む基(シクロアルキル基そのものであってもよく、シクロアルキル基を一部に含む基であってもよい)を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
R14は、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子及びヨウ素原子等)、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、又はシクロアルキル基を含む基(シクロアルキル基そのものであってもよく、シクロアルキル基を一部に含む基であってもよい)を表す。これらの基は置換基を有してもよい。R14は、複数存在する場合は、それぞれ独立して、水酸基等の上記基を表す。
R15は、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、又はナフチル基を表す。2つのR15が互いに結合して環を形成してもよい。2つのR15が互いに結合して環を形成するとき、環骨格内に、酸素原子、又は窒素原子等のヘテロ原子を含んでもよい。
一態様において、2つのR15がアルキレン基であり、互いに結合して環構造を形成することが好ましい。なお、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、及び上記ナフチル基、並びに、2つのR15が互いに結合して形成する環は置換基を有してもよい。
【0196】
式(ZaI-4b)において、R13、R14、及びR15のアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であってもよい。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましい。アルキル基は、メチル基、エチル基、n-ブチル基、又はt-ブチル基等が好ましい。
R13~R15、並びに、Rx及びRyの各置換基は、それぞれ独立に、置換基の任意の組み合わせにより、酸分解性基を形成することも好ましい。
【0197】
次に、式(ZaII)について説明する。
式(ZaII)中、R204及びR205は、それぞれ独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
R204及びR205のアリール基としては、フェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。R204及びR205のアリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有するヘテロ環を有するアリール基であってもよい。ヘテロ環を有するアリール基の骨格としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、及びベンゾチオフェンが挙げられる。
R204及びR205のアルキル基及びシクロアルキル基としては、炭素数1~10の直鎖状アルキル基又は炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又はペンチル基)、又は炭素数3~10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、又はノルボルニル基)が好ましい。
【0198】
R204及びR205のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい。R204及びR205のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば、炭素数3~15)、アリール基(例えば、炭素数6~15)、アルコキシ基(例えば、炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、及びフェニルチオ基が挙げられる。また、R204及びR205の置換基は、それぞれ独立に、置換基の任意の組み合わせにより、酸分解性基を形成することも好ましい。
【0199】
以下に有機カチオンの具体例を示すが、本発明は、これに限定されない。
【0200】
【0201】
【0202】
「M+ X-」で表される化合物において、X-は有機アニオンを表す。
有機アニオンとしては、特に制限されず、1又は2価以上の有機アニオンが挙げられる。
有機アニオンとしては、求核反応を起こす能力が著しく低いアニオンが好ましく、非求核性アニオンがより好ましい。
【0203】
非求核性アニオンとしては、例えば、スルホン酸アニオン(脂肪族スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、及びカンファースルホン酸アニオン等)、カルボン酸アニオン(脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、及びアラルキルカルボン酸アニオン等)、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、及びトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンが挙げられる。
【0204】
脂肪族スルホン酸アニオン及び脂肪族カルボン酸アニオンにおける脂肪族部位は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であっても、シクロアルキル基であってもよく、炭素数1~30の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は、炭素数3~30のシクロアルキル基が好ましい。
上記アルキル基は、例えば、フルオロアルキル基(フッ素原子以外の置換基を有していてもよい。パーフルオロアルキル基であってもよい)であってもよい。
【0205】
芳香族スルホン酸アニオン及び芳香族カルボン酸アニオンにおけるアリール基としては、炭素数6~14のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、トリル基、及び、ナフチル基が挙げられる。
【0206】
上記で挙げたアルキル基、シクロアルキル基、及び、アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては特に制限されないが、例えば、ニトロ基、フッ素原子及び塩素原子等のハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(炭素数1~15が好ましい)、アルキル基(炭素数1~10が好ましい)、シクロアルキル基(炭素数3~15が好ましい)、アリール基(炭素数6~14が好ましい)、アルコキシカルボニル基(炭素数2~7が好ましい)、アシル基(炭素数2~12が好ましい)、アルコキシカルボニルオキシ基(炭素数2~7が好ましい)、アルキルチオ基(炭素数1~15が好ましい)、アルキルスルホニル基(炭素数1~15が好ましい)、アルキルイミノスルホニル基(炭素数1~15が好ましい)、及び、アリールオキシスルホニル基(炭素数6~20が好ましい)が挙げられる。
【0207】
アラルキルカルボン酸アニオンにおけるアラルキル基としては、炭素数7~14のアラルキル基が好ましい。
炭素数7~14のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及び、ナフチルブチル基が挙げられる。
【0208】
スルホニルイミドアニオンとしては、例えば、サッカリンアニオンが挙げられる。
【0209】
ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンにおけるアルキル基としては、炭素数1~5のアルキル基が好ましい。これらのアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、及び、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基が挙げられ、フッ素原子又はフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。
また、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオンにおけるアルキル基は、互いに結合して環構造を形成してもよい。これにより、酸強度が増加する。
【0210】
その他の非求核性アニオンとしては、例えば、フッ素化燐(例えば、PF6
-)、フッ素化ホウ素(例えば、BF4
-)、及び、フッ素化アンチモン(例えば、SbF6
-)が挙げられる。
【0211】
非求核性アニオンとしては、下記式(d1-1)~(d1-4)で表されるアニオンも挙げられ、式(d1-1)で表されるアニオン又は式(d1-2)で表されるアニオンが好ましい。
【0212】
【0213】
式(d1-1)中、R51は置換基(例えば、水酸基)を有していてもよい炭化水素基(例えば、フェニル基等のアリール基)を表す。
【0214】
式(d1-2)中、Z2cは置換基を有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基(ただし、Sに隣接する炭素原子にはフッ素原子が置換されない)を表す。
Z2cにおける上記炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、環状構造を有していてもよい。また、上記炭化水素基における炭素原子(好ましくは、上記炭化水素基が環状構造を有する場合における、環員原子である炭素原子)は、カルボニル炭素(-CO-)であってもよい。上記炭化水素基としては、例えば、置換基を有していてもよいノルボルニル基を有する基が挙げられる。上記ノルボルニル基を形成する炭素原子は、カルボニル炭素であってもよい。
式(d1-2)中のZ2cはアルキル基又はシクロアルキル基を表すことが好ましい。Z2cにおける、-SO3
-に対してα位及びβ位の原子は、置換基としてフッ素原子を有しないことが好ましい。
【0215】
式(d1-3)中、R52は有機基(好ましくはフッ素原子を有する炭化水素基)を表し、Y3は直鎖状、分岐鎖状、若しくは、環状のアルキレン基、アリーレン基、又は、カルボニル基を表し、Rfは炭化水素基を表す。
【0216】
式(d1-4)中、R53及びR54は、それぞれ独立に、有機基(好ましくはフッ素原子を有する炭化水素基)を表す。R53及びR54は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0217】
有機アニオンは、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0218】
塩基性化合物(QA)の具体例としては、例えば、国際公開第2020/066824号の段落[0132]~[0136]に記載のものが挙げられ、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(QE)の具体例としては、国際公開第2020/066824号の段落[0137]~[0155]に記載のもの、及び国際公開第2020/066824号の段落[0164]に記載のものが挙げられ、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(QB)の具体例としては、国際公開第2020/066824号の段落[0156]~[0163]に記載のものが挙げられる。
光酸発生剤等から発生する酸に対して相対的に弱酸となるオニウム塩化合物(QD)の具体例としては、例えば、国際公開第2020/158337号の段落[0305]~[0314]に記載のものが挙げられる。
【0219】
上記以外にも、例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号の段落[0627]~[0664]、米国特許出願公開2015/0004544A1号の段落[0095]~[0187]、米国特許出願公開2016/0237190A1号の段落[0403]~[0423]、及び米国特許出願公開2016/0274458A1号の段落[0259]~[0328]に開示された公知の化合物を酸拡散制御剤として好適に使用できる。
【0220】
化合物(Q)の分子量は特に制限されないが、100~3000が好ましく、150~2500がより好ましく、200~2000が更に好ましい。
【0221】
化合物(Q)は、活性光線又は放射線の照射によりpKaが0以上の酸を発生する化合物であることも好ましい。
【0222】
本発明の組成物中の化合物(Q)の含有量は、本発明の組成物の全固形分に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が更に好ましい。また、化合物(Q)の含有量は、本発明の組成物の全固形分に対して、50.0質量%以下が好ましく、40.0質量%以下がより好ましく、30.0質量%以下が更に好ましい。
化合物(Q)は、1種のみ使用してもよいし、2種以上使用してもよい。2種以上使用する場合は、その合計含有量が、上記好適含有量の範囲内であるのが好ましい。
【0223】
本発明の組成物中の化合物(C)の含有量に対する酸拡散制御剤(Q)の含有量の質量比率(「(Q)/(C)」ともいう。)は6質量%以上である。(Q)/(C)は、(酸拡散制御剤(Q)の含有量/化合物(C)の含有量)×100(%)で算出される。(Q)/(C)が6質量%以上であることで、酸の拡散を抑制でき、優れたレジスト特性を得ることができる。
(Q)/(C)は20質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。また、(Q)/(C)は500質量%以下であることが好ましく、300質量%以下であることがより好ましい。
【0224】
[疎水性樹脂]
本発明の組成物は、さらに、樹脂(A)とは異なる疎水性樹脂を含んでいてもよい。
疎水性樹脂はレジスト膜の表面に偏在するように設計されることが好ましいが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性物質及び非極性物質の均一な混合に寄与しなくてもよい。
【0225】
疎水性樹脂は、膜表層への偏在化の点から、フッ素原子、珪素原子、及び、樹脂の側鎖部分に含まれたCH3部分構造のいずれか1種以上を有するのが好ましく、2種以上を有することがより好ましい。疎水性樹脂は、炭素数5以上の炭化水素基を有することが好ましい。これらの基は樹脂の主鎖中に有していても、側鎖に置換していてもよい。
疎水性樹脂としては、国際公開第2020/004306号の段落[0275]~[0279]に記載される化合物が挙げられる。
【0226】
本発明の組成物が疎水性樹脂を含む場合、疎水性樹脂の含有量は、本発明の組成物の全固形分に対して、0.01~20.0質量%が好ましく、0.1~15.0質量%がより好ましい。
疎水性樹脂は、1種のみ使用してもよいし、2種以上使用してもよい。2種以上使用する場合は、その合計含有量が、上記好適含有量の範囲内であるのが好ましい。
【0227】
[界面活性剤]
本発明の組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤を含むと、密着性により優れ、現像欠陥のより少ないパターンを形成することができる。
界面活性剤は、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤が好ましい。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、国際公開第2018/193954号の段落[0218]及び[0219]に開示された界面活性剤が挙げられる。
【0228】
本発明の組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、本発明の組成物の全固形分に対して、0.0001~2.0質量%が好ましく、0.0005~1.0質量%がより好ましく、0.1~1.0質量%が更に好ましい。
界面活性剤は、1種で使用してもよいし、2種以上使用してもよい。2種以上使用する場合は、その合計含有量が、上記好適含有量の範囲内であるのが好ましい。
【0229】
[溶剤]
本発明の組成物は、溶剤を含むことが好ましい。
溶剤は、(M1)プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、並びに、(M2)プロピレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸エステル、酢酸エステル、アルコキシプロピオン酸エステル、鎖状ケトン、環状ケトン、ラクトン、及びアルキレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1つの少なくとも一方を含んでいることが好ましい。なお、上記溶剤は、成分(M1)及び(M2)以外の成分を更に含んでいてもよい。
【0230】
上述した溶剤と上述した樹脂とを組み合わせると、本発明の組成物の塗布性の向上、及び、パターンの現像欠陥数の低減の観点で好ましい。上述した溶剤は、上述した樹脂の溶解性、沸点及び粘度のバランスが良いため、レジスト膜の膜厚のムラ及びスピンコート中の析出物の発生等を抑制することができる。
成分(M1)及び成分(M2)の詳細は、国際公開第2020/004306号の段落[0218]~[0226]に記載され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0231】
溶剤が成分(M1)及び(M2)以外の成分を更に含む場合、成分(M1)及び(M2)以外の成分の含有量は、溶剤の全量に対して、5~30質量%が好ましい。
【0232】
本発明の組成物中の溶剤の含有量は、固形分濃度が0.5~30質量%となるように定めるのが好ましく、1~20質量%となるように定めることがより好ましい。こうすると、本発明の組成物の塗布性を更に向上させられる。
【0233】
[その他の添加剤]
本発明の組成物は、溶解阻止化合物、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、及び/又は、現像液に対する溶解性を促進させる化合物(例えば、分子量1000以下のフェノール化合物、又は、カルボキシル基を含んだ脂環族若しくは脂肪族化合物)を更に含んでいてもよい。
【0234】
上記「溶解阻止化合物」とは、酸の作用により分解して有機系現像液中での溶解度が減少する、分子量3000以下の化合物である。
【0235】
<感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法>
本発明は、本発明の組成物により形成された感活性光線性又は感放射線性膜にも関する。本発明の感活性光線性又は感放射線性膜はレジスト膜であることが好ましい。
本発明はパターン形成方法にも関する。本発明のパターン形成方法は、本発明の組成物により基板上に感活性光線性又は感放射線性膜(典型的にはレジスト膜)を形成する工程と、感活性光線性又は感放射線性膜を露光する工程と、露光された感活性光線性又は感放射線性膜を現像液を用いて現像する工程と、を有する、パターン形成方法であることが好ましい。
本発明の組成物を用いたパターン形成方法の手順は特に制限されないが、以下の工程を有することが好ましい。
工程1:本発明の組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程
工程2:レジスト膜を露光する工程
工程3:露光されたレジスト膜を現像液を用いて現像する工程
以下、上記それぞれの工程の手順について詳述する。
【0236】
(工程1:レジスト膜形成工程)
工程1は、本発明の組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程である。
【0237】
本発明の組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する方法としては、例えば、本発明の組成物を基板上に塗布する方法が挙げられる。
なお、塗布前に本発明の組成物を必要に応じてフィルター濾過することが好ましい。フィルターのポアサイズは、0.1μm以下が好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.03μm以下が更に好ましい。フィルターは、ポリテトラフルオロエチレン製、ポリエチレン製、又は、ナイロン製が好ましい。
【0238】
本発明の組成物は、集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン、二酸化シリコンで被覆されたシリコン)上に、スピナー又はコーター等の適当な塗布方法により塗布できる。塗布方法は、スピナーを用いたスピン塗布が好ましい。スピナーを用いたスピン塗布をする際の回転数は、1000~3000rpm(rotations per minute)が好ましい。
本発明の組成物の塗布後、基板を乾燥し、レジスト膜を形成してもよい。なお、必要により、レジスト膜の下層に、各種下地膜(無機膜、有機膜、反射防止膜)を形成してもよい。
【0239】
乾燥方法としては、例えば、加熱して乾燥する方法が挙げられる。加熱は通常の露光機、及び/又は、現像機に備わっている手段で実施でき、ホットプレート等を用いて実施してもよい。加熱温度は80~150℃が好ましく、80~140℃がより好ましく、80~130℃が更に好ましい。加熱時間は30~1000秒が好ましく、60~800秒がより好ましく、60~600秒が更に好ましい。
【0240】
レジスト膜の膜厚は特に制限されないが、より高精度な微細パターンを形成できる点から、10~120nmが好ましい。なかでも、EUV露光とする場合、レジスト膜の膜厚としては、10~65nmがより好ましく、15~50nmが更に好ましい。ArF液浸露光とする場合、レジスト膜の膜厚としては、10~120nmがより好ましく、15~90nmが更に好ましい。
【0241】
なお、レジスト膜の上層にトップコート組成物を用いてトップコートを形成してもよい。
トップコート組成物は、レジスト膜と混合せず、更にレジスト膜上層に均一に塗布できることが好ましい。トップコートは、特に限定されず、従来公知のトップコートを、従来公知の方法によって形成でき、例えば、特開2014-059543号公報の段落[0072]~[0082]の記載に基づいてトップコートを形成できる。
例えば、特開2013-61648号公報に記載されたような塩基性化合物を含むトップコートを、レジスト膜上に形成することが好ましい。トップコートが含み得る塩基性化合物の具体的な例は、本発明の組成物が含んでいてもよい塩基性化合物が挙げられる。
トップコートは、エーテル結合、チオエーテル結合、水酸基、チオール基、カルボニル結合、及びエステル結合からなる群より選択される基又は結合を少なくとも1つ含む化合物を含むことも好ましい。
【0242】
(工程2:露光工程)
工程2は、レジスト膜を露光する工程である。
露光の方法としては、形成したレジスト膜に所定のマスクを通して活性光線又は放射線を照射する方法が挙げられる。
活性光線又は放射線としては、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外光、X線、及び電子線が挙げられ、250nm以下が好ましく、220nm以下がより好ましく、1~200nmの波長の遠紫外光、具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F2エキシマレーザー(157nm)、EUV(13.5nm)、X線、及び電子ビームが特に好ましい。
【0243】
露光後、現像を行う前にベーク(加熱)を行うことが好ましい。ベークにより露光部の反応が促進され、感度及びパターン形状がより良好となる。
加熱温度は80~150℃が好ましく、80~140℃がより好ましく、80~130℃が更に好ましい。
加熱時間は10~1000秒が好ましく、10~180秒がより好ましく、30~120秒が更に好ましい。
加熱は通常の露光機及び/又は現像機に備わっている手段で実施でき、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
この工程は露光後ベークともいう。
【0244】
(工程3:現像工程)
工程3は、現像液を用いて、露光されたレジスト膜を現像し、パターンを形成する工程である。
現像液は、アルカリ現像液であっても、有機溶剤を含有する現像液(以下、有機系現像液ともいう)であってもよい。
【0245】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静置して現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、及び一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)が挙げられる。
また、現像を行う工程の後に、他の溶剤に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
現像時間は未露光部の樹脂が十分に溶解する時間であれば特に制限はなく、10~300秒が好ましく、20~120秒がより好ましい。
現像液の温度は0~50℃が好ましく、15~35℃がより好ましい。
【0246】
アルカリ現像液は、アルカリを含むアルカリ水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の種類は特に制限されないが、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに代表される4級アンモニウム塩、無機アルカリ、1級アミン、2級アミン、3級アミン、アルコールアミン、又は、環状アミン等を含むアルカリ水溶液が挙げられる。中でも、アルカリ現像液は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)に代表される4級アンモニウム塩の水溶液であることが好ましい。アルカリ現像液には、アルコール類、界面活性剤等を適当量添加してもよい。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常、0.1~20質量%であることが好ましい。アルカリ現像液のpHは、通常、10.0~15.0であることが好ましい。
【0247】
有機系現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び炭化水素系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有する現像液であることが好ましい。
【0248】
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤又は水と混合してもよい。現像液全体としての含水率は、50質量%未満が好ましく、20質量%未満がより好ましく、10質量%未満が更に好ましく、実質的に水分を含有しないのが特に好ましい。
有機系現像液に対する有機溶剤の含有量は、現像液の全量に対して、50質量%以上100質量%以下が好ましく、80質量%以上100質量%以下がより好ましく、90質量%以上100質量%以下が更に好ましく、95質量%以上100質量%以下が特に好ましい。
【0249】
(他の工程)
上記パターン形成方法は、工程3の後に、リンス液を用いて洗浄する工程を含むことが好ましい。
【0250】
アルカリ現像液を用いて現像する工程の後のリンス工程に用いるリンス液としては、例えば、純水が挙げられる。なお、純水には、界面活性剤を適当量添加してもよい。
リンス液には、界面活性剤を適当量添加してもよい。
【0251】
有機系現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液は、パターンを溶解しないものであれば特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用できる。リンス液は、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
【0252】
リンス工程の方法は特に限定されず、例えば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、及び基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)が挙げられる。
また、パターン形成方法は、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含んでいてもよい。本工程により、ベークによりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。また、本工程により、レジストパターンがなまされ、パターンの表面荒れが改善される効果もある。リンス工程の後の加熱工程は、通常40~250℃(好ましくは90~200℃)で、通常10秒間~3分間(好ましくは30秒間~120秒間)行う。
【0253】
また、形成されたパターンをマスクとして、基板のエッチング処理を実施してもよい。つまり、工程3にて形成されたパターンをマスクとして、基板(又は、下層膜及び基板)を加工して、基板にパターンを形成してもよい。
基板(又は、下層膜及び基板)の加工方法は特に限定されないが、工程3で形成されたパターンをマスクとして、基板(又は、下層膜及び基板)に対してドライエッチングを行うことにより、基板にパターンを形成する方法が好ましい。ドライエッチングは、酸素プラズマエッチングが好ましい。
【0254】
本発明の組成物、及びパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、トップコート形成用組成物等)は、金属等の不純物を含まないことが好ましい。これら材料に含まれる不純物の含有量は、1質量ppm(parts per million)以下が好ましく、10質量ppb(parts per billion)以下がより好ましく、100質量ppt(parts per trillion)以下が更に好ましく、10質量ppt以下が特に好ましく、1質量ppt以下が最も好ましい。下限は特に制限させず、0質量ppt以上が好ましい。ここで、金属不純物としては、例えば、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Al、Li、Cr、Ni、Sn、Ag、As、Au、Ba、Cd、Co、Pb、Ti、V、W、及びZnが挙げられる。
【0255】
各種材料から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いた濾過が挙げられる。フィルターを用いた濾過の詳細は、国際公開第2020/004306号の段落[0321]に記載される。
【0256】
各種材料に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、例えば、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する方法、各種材料を構成する原料に対してフィルター濾過を行う方法、及び装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う方法が挙げられる。
【0257】
フィルター濾過の他、吸着材による不純物の除去を行ってもよく、フィルター濾過と吸着材とを組み合わせて使用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を使用でき、例えば、シリカゲル及びゼオライト等の無機系吸着材、並びに、活性炭等の有機系吸着材を使用できる。上記各種材料に含まれる金属等の不純物を低減するためには、製造工程における金属不純物の混入を防止する必要がある。製造装置から金属不純物が十分に除去されたかどうかは、製造装置の洗浄に使用された洗浄液中に含まれる金属成分の含有量を測定して確認できる。使用後の洗浄液に含まれる金属成分の含有量は、100質量ppt以下が好ましく、10質量ppt以下がより好ましく、1質量ppt以下が更に好ましい。下限は特に制限させず、0質量ppt以上が好ましい。
【0258】
リンス液等の有機系処理液には、静電気の帯電、引き続き生じる静電気放電に伴う、薬液配管及び各種パーツ(フィルター、O-リング、及び、チューブ等)の故障を防止するため、導電性の化合物を添加してもよい。導電性の化合物は特に制限されないが、例えば、メタノールが挙げられる。添加量は特に制限されないが、好ましい現像特性又はリンス特性を維持する点で、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。下限は特に制限させず、0.01質量%以上が好ましい。
薬液配管としては、例えば、SUS(ステンレス鋼)、又は、帯電防止処理の施されたポリエチレン、ポリプロピレン、若しくは、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、又は、パーフルオロアルコキシ樹脂等)で被膜された各種配管を使用できる。フィルター及びO-リングに関しても同様に、帯電防止処理の施されたポリエチレン、ポリプロピレン、又は、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、又は、パーフルオロアルコキシ樹脂等)を使用できる。
【0259】
<電子デバイスの製造方法>
本明細書は、上記したパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法、及びこの製造方法により製造された電子デバイスにも関する。
本明細書の電子デバイスの好適態様としては、電気電子機器(家電、OA(Office Automation)、メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)に搭載される態様が挙げられる。
【実施例0260】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0261】
実施例及び比較例のレジスト組成物に用いた各種成分について以下に示す。
【0262】
<樹脂(A)>
樹脂(A)として、MP-1~MP-12を用いた。
MP-1~MP-10は、下記表1に示す繰り返し単位を表1に示す含有量で含む。また、表1には、各樹脂の重量平均分子量(Mw)、及び分散度(Mw/Mn)も記載した。各繰り返し単位の含有量は、各樹脂に含まれる全繰り返し単位に対する各繰り返し単位の含有比率(モル比率)である。
樹脂の重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)はGPC(キャリア:テトラヒドロフラン(THF))により測定した(ポリスチレン換算量である)。また、繰り返し単位の含有量は、13C-NMR(nuclear magnetic resonance)により測定した。
【0263】
【0264】
繰り返し単位の構造式を以下に示す。
【0265】
【0266】
<光酸発生剤>
光酸発生剤として使用した化合物の構造式を以下に示す。C-1~C-14は化合物(C)に該当する。RC-1~RC-3は化合物(C)に該当しない。
【0267】
【0268】
【0269】
【0270】
光酸発生剤から発生する酸(発生酸)のpKa及び発生酸の分子量を下記表2に示す。
【0271】
【0272】
<酸拡散制御剤>
酸拡散制御剤として、Q-1及びQ-2を用いた。Q-1及びQ-2の構造式を以下に示す。Q-1及びQ-2は活性光線又は放射線により分解して酸を発生する化合物であるが、Q-1から発生する酸のpKaは3.01であり、Q-2から発生する酸のpKaは4.79である。
【0273】
【0274】
<疎水性樹脂>
使用した疎水性樹脂の構造式、各繰り返し単位の含有量(モル%)、及び重量平均分子量(Mw)を以下に示す。各繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位に対する各繰り返し単位の含有比率(モル比率)である。
【0275】
【0276】
<界面活性剤>
使用した界面活性剤を以下に示す。
W-1:メガファックR08(DIC(株)製)
【0277】
<溶剤>
使用した溶剤を以下に示す。
S-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA:1-メトキシ-2-アセトキシプロパン)
S-2:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME:1-メトキシ-2-プロパノール)
S-3:乳酸エチル
S-4:γ-ブチロラクトン
【0278】
<レジスト組成物の調製>
下記表3~4に示す成分を表中に示す溶剤に溶解させ、表3~4に示す固形分濃度にて溶液を調製し、これを0.02μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターでろ過して、レジスト組成物(R-1~R-32、RR-1~RR-4)を調製した。
表中、「含有量(質量%)」の欄は、各成分のレジスト組成物中の全固形分に対する含有量(質量比率)を示す。固形分とは溶剤以外の成分を意味する。
疎水性樹脂を使用したレジスト組成物では、疎水性樹脂の含有量を5.0質量%とした。
界面活性剤を使用したレジスト組成物では、界面活性剤の含有量を0.1質量%とした。
溶剤の「質量比率」は、全溶剤(「種類」欄に記載された溶剤の総量)に対する、「種類」欄に記載された各溶剤の含有量である。
各成分を2種以上使用した場合は、それぞれの種類と質量比率を「/」で区切って表した。種類と質量比率の記載は左から順に対応している。
また、表3~4には、各レジスト組成物中の光酸発生剤の含有量に対する酸拡散制御剤の含有量の質量比率を、「(Q)/(C)」の欄に記載した。(Q)/(C)は、(酸拡散制御剤の含有量/光酸発生剤の含有量)×100(%)で求めた。
【0279】
【0280】
【0281】
<パターン形成方法(1):EB露光、アルカリ現像(EB-ポジ)>
レジスト組成物を、予めヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した6インチSiウェハ上に東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いて塗布し、100℃、60秒間ホットプレート上で乾燥して、膜厚100nmのレジスト膜を得た。
なお、上記Siウェハをクロム基板に変更しても、同様の結果が得られるものである。
上記で得られたレジスト膜が塗布されたウェハを、電子線描画装置((株)日立製作所製HL750、加速電圧50keV)を用いて、パターン照射を行った。この際、1:1のラインアンドスペースが形成されるように描画を行った。電子線描画後、ホットプレート上で、露光後加熱として100℃で60秒間加熱した後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液で30秒間現像し、純水でリンスをした後、4000rpmの回転数で30秒間ウェハを回転させた後、95℃で60秒間加熱を行うことにより、線幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターンのレジストパターンを得た。
【0282】
<性能評価>
〔解像性〕
得られたパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡(日立製作所製S-9380II)を用いて観察した。線幅50nmの1:1ラインアンドスペースのレジストパターンを解像するときの露光量(電子線照射量)を感度(Eop)とした。
上記感度(Eop)を示す露光量における限界解像力(ラインとスペース(ライン:スペース=1:1)が分離解像する最小の線幅)を解像性(nm)とした。この値が小さいほど、解像性が高い。
【0283】
〔CDU〕
ラインアンドスペース1:1パターンの線幅が50nmとなる露光量において、各ラインパターン中の100個の線幅を測定し、その測定結果から算出した平均値の標準偏差(σ)の3倍値(3σ)を求めて線幅の面内均一性(CDU)(nm)を評価した。以上から求められる3σは、その値が小さいほど、レジスト膜に形成された各ラインCDの面内均一性(CDU)が高いことを意味する。3σの値をCDU(nm)とした。3σの値が小さいほど寸法のばらつきが小さく、良好な性能であることを示す。
【0284】
〔ベーク温度依存性〕
前述のパターン形成方法(1)において、露光後加熱を100℃で60秒間ではなく、110℃で90秒間の露光後加熱を行った際に幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターンを再現する照射量を最適露光量とした。次に、最適露光量で照射を行った後に、露光後加熱温度に対して、+5℃及び-5℃(すなわち、115℃及び105℃)の2つの温度で露光後加熱を行い、各々得られたラインアンドスペースパターンを測長し、それらの線幅L1及びL2を求めた。ベーク温度依存性を、ベーク時の温度変化1℃あたりの線幅の変動と定義し、下記式により算出した。
ベーク温度依存性(nm/℃)=|L1-L2|/10
ベーク温度依存性の値が小さいほど温度変化に対する性能変化が小さく、良好であることを示す。
【0285】
下記表5に、各実施例及び比較例で使用したレジスト組成物と、各実施例及び比較例の評価結果を示す。
【0286】
【0287】
<パターン形成方法(2):EUV露光、アルカリ現像(EUV-ポジ)>
シリコンウエハ上に下層膜形成用組成物AL412(Brewer Science社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークして、膜厚20nmの下地膜を形成した。下地膜の上に、表6に示すレジスト組成物を塗布し、100℃で60秒間ベークして、膜厚50nmのレジスト膜を形成した。
EUV露光装置(Exitech社製、Micro Exposure Tool、NA0.3、Quadrupol、アウターシグマ0.68、インナーシグマ0.36)を用いて、得られたレジスト膜を有するシリコンウエハに対してパターン照射を行った。なお、レチクルとしては、ラインサイズ=50nmであり、かつ、ライン:スペース=1:1であるマスクを用いた。
露光後のレジスト膜を、露光後加熱として100℃で60秒間ベークした後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)で30秒間現像し、次いで純水で30秒間リンスした。その後、これをスピン乾燥してポジ型のパターンを得た。
【0288】
得られたレジストはそれぞれ上記の方法と同様の方法で評価を行った。評価結果を表6に記載する。
【0289】
【0290】
表5及び表6の結果から、実施例で用いたレジスト組成物は、パターン形成の際に、解像性及びCDUに優れ、かつ、ベーク温度依存性が小さいことが分かった。