(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025152077
(43)【公開日】2025-10-09
(54)【発明の名称】動作音抑制装置及びX線断層像撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20251002BHJP
【FI】
A61B6/03 521B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024053806
(22)【出願日】2024-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100153822
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 重之
(72)【発明者】
【氏名】村上 周平
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA50
4C093EE30
4C093FA49
4C093FA56
4C093FA58
(57)【要約】
【課題】、X線断層像撮影装置による撮影時において操作者と被検体との間で会話する際に動作音を抑制することが可能な動作音抑制装置、及び、動作音抑制装置を適用されたX線断層像撮影装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
X線断層像撮影装置に用いられる動作音抑制装置は、X線断層像撮影装置の操作者とX線断層像撮影装置の寝台に載置された被検体との間の会話又は会話可能な状況を検出する検出部と、検出部の検出結果に基づいてX線断層像撮影装置に設けられた1以上の冷却ファンの動作を制御するファン制御部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線断層像撮影装置に用いられる動作音抑制装置であって、
前記X線断層像撮影装置の操作者と前記X線断層像撮影装置の寝台に載置された被検体との間の会話又は会話可能な状況を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて前記X線断層像撮影装置に設けられた1以上の冷却ファンの動作を制御するファン制御部と、
を備える、動作音抑制装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記寝台の近傍を撮影する寝台撮像部を備え、
前記検出部は、前記寝台撮像部によって撮像される画像中における前記操作者と前記被検体との間の距離に基づいて、前記操作者と前記被検体との間の会話可能な状況を検出する、
請求項1に記載の動作音抑制装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記寝台の近傍の音を集音する第1集音部を備え、
前記検出部は、前記第1集音部によって集音された音に基づいて、前記操作者と前記被検体との間の会話を検出する、
請求項1に記載の動作音抑制装置。
【請求項4】
前記検出部は、X線断層像撮影装置による撮影を操作する操作部の近傍の音を集音する第2集音部を備え、
前記検出部は、前記第2集音部によって集音された音に基づいて、前記操作者と前記被検体との間の会話を検出する、
請求項1に記載の動作音抑制装置。
【請求項5】
前記ファン制御部は、前記検出部による検出結果に基づいて前記1以上の冷却ファンのうち、少なくとも1つの冷却ファンの回転数を低下させる、
請求項1に記載の動作音抑制装置。
【請求項6】
前記ファン制御部は、前記検出部による検出結果に基づいて前記1以上の冷却ファンのうち、少なくとも1つの冷却ファンを一時停止させる、
請求項1に記載の動作音抑制装置。
【請求項7】
1以上の冷却ファンと、
請求項1から6のいずれか1項に記載の動作音抑制装置と、
を備える、X線断層像撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線断層像撮影装置に用いられる動作音抑制装置、及び、動作音抑制装置を備えるX線断層像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像撮影システムでは、寝台上の位置に載置された被検体(被検者)に対して、電磁波(RFパルス)又はX線を照射し、被検者の断層像を取得する。適切な断層像を得るためには寝台上の適切な位置に被検体を載置する必要があるため、撮影前や撮影時に医用画像撮影システムの操作者と被検体との間で会話等のコミュニケーションをとることがある。
【0003】
医用画像撮影システムでは内蔵機器等から比較的大きな動作音が生じるため、このようなコミュニケーションをとる際に、操作者及び被検体が互いの声を聞き取りにくいことがある。例えば、被検体が操作者からの指示を聞き取りにくい場合、操作者は同じ指示を繰り返す必要があり、撮影の手間が増え、撮影にかかる時間が長くなる恐れがある。
【0004】
これに対して、医用画像撮影システムに設けられた緊急停止スイッチにより、コミュニケーションを行う際に医用画像撮影システムの動作を止めて動作音を低減することが考えられる。しかし、緊急停止スイッチを用いる方法では、電源が遮断されるため、復帰の際には初期値の設定等を行って緊急停止前の状態に医用画像撮影システムが復帰するまでに多くの時間を要するという問題がある。
【0005】
上記の問題を考慮して、例えば、特許文献1は、撮像を一時停止する指令を発生する撮像一時停止指令発生手段と、撮像一時停止指令発生手段からの指令により少なくとも傾斜磁場発生手段の動作を一時停止する撮像一時停止手段と、撮像一時停止手段により一時停止された撮像を再開する指令を発生する撮像再開指令発生手段とを備えるMRI装置(核磁気共鳴撮影装置)を開示する。撮像一時停止手段によって傾斜磁場発生手段の動作を一時停止して傾斜磁場印加音を消すため、特許文献1に記載のMRI装置は、MRI装置の電源を遮断することなく、コミュニケーションを行う際の動作音を低減することができる。
【0006】
また、例えば、特許文献2は、複数のファンと、位置センサと、位置情報取得部と、制御部とを有するX線断層像撮影装置(X線CT装置)を開示する。位置センサは操作パネルの前面付近に配置される人感センサであり、操作パネルの前面付近に操作者がいるか否かを示す位置情報を計測する。位置情報取得部は位置情報を取得し、制御部は取得された位置情報に基づいて各ファンの回転数又は回転方向を制御する。これにより、特許文献2に記載のX線CT装置は、操作者が発する音声に対するノイズを低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-275221号公報
【特許文献2】特開2019-130222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の技術はMRI装置では、動作音を抑制するために、傾斜磁場発生手段の動作を一時停止して傾斜磁場印加音を消している。そのため、RFパルスを用いない医用画像撮影システムには適用できないという問題がある。また、特許文献2では、操作者の位置情報に応じて動作音を低減させるため、操作者と被検体との間で会話する場合に十分に対応できないという問題がある。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、X線断層像撮影装置による撮影時において操作者と被検体との間で会話する際に動作音を抑制することが可能な動作音抑制装置、及び、動作音抑制装置を適用されたX線断層像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1態様に係るX線断層像撮影装置に用いられる動作音抑制装置は、X線断層像撮影装置の操作者とX線断層像撮影装置の寝台に載置された被検体との間の会話又は会話可能な状況を検出する検出部と、検出部の検出結果に基づいてX線断層像撮影装置に設けられた1以上の冷却ファンの動作を制御するファン制御部と、を備える。
【0011】
第2態様によれば、第1態様に係る動作音抑制装置において、検出部は、寝台の近傍を撮影する寝台撮像部を備え、検出部は、寝台撮像部によって撮像される画像中における操作者と被検体との間の距離に基づいて、操作者と被検体との間の会話可能な状況を検出する。
【0012】
第3態様によれば、第1態様又は第2態様に係る動作音抑制装置において、検出部は、寝台の近傍の音を集音する第1集音部を備え、検出部は、第1集音部によって集音された音に基づいて、操作者と被検体との間の会話を検出する。
【0013】
第4態様によれば、第1態様から第3態様のいずれか1つに係る動作音抑制装置において、検出部は、X線断層像撮影装置による撮影を操作する操作部の近傍の音を集音する第2集音部を備え、検出部は、第2集音部によって集音された音に基づいて、操作者と被検体との間の会話を検出する。
【0014】
第5態様によれば、第1態様から第4態様のいずれか1つに係る動作音抑制装置において、ファン制御部は、検出部による検出結果に基づいて1以上の冷却ファンのうち、少なくとも1つの冷却ファンの回転数を低下させる。
【0015】
第6態様によれば、第1態様から第5態様のいずれか1つに係る動作音抑制装置において、ファン制御部は、検出部による検出結果に基づいて1以上の冷却ファンのうち、少なくとも1つの冷却ファンを一時停止させる。
【0016】
第7態様に係るX線断層像撮影装置は、1以上の冷却ファンと、第1態様から第6態様のいずれか1つに係る動作音抑制装置とを備える。
【発明の効果】
【0017】
X線断層像撮影装置による撮影時において操作者と被検体との間で会話する際に動作音を抑制することができるため、操作者と被検体との間で会話を円滑に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】X線CT装置の全体の外観を説明する斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係る動作音抑制装置を適用したX線CT装置の概略構成図である。
【
図5】第2実施形態に係る動作音抑制装置を適用したX線CT装置の概略構成図である。
【
図6】第3実施形態に係る動作音抑制装置を適用したX線CT装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<X線CT装置の概略構成>
まず、
図1及び
図2を用いて本開示に係る動作音抑制装置が適用されるX線断層像撮影装置の一般的な概略構成について説明する。以下、X線断層像撮影装置をX線CT(Computed Tomography)装置と称する。
図1及び
図2において、三次元座標系はX線CT装置1における方向の定義の一例を示す。三次元座標系のX軸とY軸、Z軸は一例であり、これに限るものではない。ここで、Z軸方向は被検体Sの体軸方向である。Y軸方向は被検体Sの上下方向であり、重力方向と平行の方向である。X軸方向は被検体Sの左右方向であり、重力方向と直交する水平方向である。
【0020】
図1は、X線CT装置1の外観図である。
図1に示すようにX線CT装置1は、ガントリ20と寝台3と操作ユニット30とを備える。一般的なX線CT装置1では、ガントリ20及び寝台3は撮影室に設けられ、操作ユニット30は撮影室から離隔した位置、例えば、操作室に設けられる。被検体Sは寝台3に載置される。ガントリ20は、X線を照射する機器等を内蔵し、寝台3の周囲を回転可能に構成される。また、ガントリ20の中央付近には寝台3が通過できる開口21が形成されている。操作ユニット30は、操作者OPがX線CT装置1を操作するための装置である。
【0021】
図2は、ガントリ20の内部の概略構成図である。
図2に示すように、ガントリ20は、略円環形状を有する回転盤7と、ベアリング(不図示)を介して回転盤7を支持する固定フレーム(不図示)と、固定フレームを支持する静止側スタンド6とを有する。
【0022】
回転盤7は、固定フレームにより、回転軸を中心に回転可能に支持されている。回転盤7は、ベアリングの回転部側(内綸)を介して大プーリ(不図示)と連結される。回転盤制御装置8が静止側スタンド6に近い位置に固定されている。大プーリの外周と回転盤制御装置8の小プーリ(不図示)の外周には駆動ベルト16が巻き回されている。回転盤制御装置8が小プーリを回転駆動することにより、駆動ベルト16を介して大プーリが回転する。大プーリの回転力がベアリングの内輪を介して回転盤7に伝達され、回転盤7が回転軸を中心に回転駆動する。回転盤制御装置8は、例えば、モータである。
【0023】
回転盤7には、X線管装置4、X線検出器5、X線制御装置11、高電圧発生装置12、スキャナ制御装置13、コリメータ14及び冷却器15等の複数の部品が搭載されている。これらの部品は、回転盤7と共に回転する。
【0024】
X線管装置4は寝台3上に載置された被検体SにX線を照射する。コリメータ14はX線管装置4から照射されるX線2の放射範囲を制限する。
【0025】
X線検出器5は、回転盤7上でX線管装置4に対向して配置されている。X線検出器5は、X線管装置4から照射され被検体Sを透過したX線を検出することにより透過X線の空間的な分布を計測する。X線検出器5には、多数のX線検出素子が、回転盤7の回転方向に配列、または、回転盤7の回転方向と回転軸方向との2方向に配列されている。X線検出素子の感度には温度依存性があるため、X線検出器5の温度変化を抑制するようにX線検出器5の近傍には1以上の冷却ファン19が設けられる。
【0026】
X線制御装置11は、X線管装置4に入力される電力を制御する。高電圧発生装置12は、X線制御装置11から送信される制御信号に対応した管電圧及び管電流をX線管装置4に印加または供給する。管電圧及び管電流などX線条件は、入力装置31から操作者OPにより選択又は入力される。スキャナ制御装置13は、コリメータ―14及びX線検出器5の制御などを行う。
【0027】
一般的にX線管装置4でのX線の発生効率は1%程度であり、残り99%程度のエネルギーは熱に変換されるため、X線管装置4から発生する熱を除去する(X線管装置4を冷却する)必要がある。冷却器15はX線管装置4を所定温度以下に冷却する。冷却器15は、水冷式でもよいし、油冷式でもよい。冷却器15は、例えば、ラジエータ(放熱器)とポンプを備え、ラジエータには1以上の冷却ファン18が設けられる。
【0028】
X線管装置4の冷却器15に設けられた冷却ファン18は、X線管装置4の温度が予め設定された動作開始温度になると、回転動作を開始し、一般的には、所定時間回転動作を継続する。
【0029】
直流電源装置9は、検査室等に設けられた電源設備からの交流に基づいて直流電圧を発生する。直流電圧は、スリップリング10を介して回転盤7へ伝えられる。
【0030】
また、ガントリ20の筐体の下方には、外部から空気を流入させるために1以上の吸気口23が形成され、ガントリ20の筐体の上方には、ガントリ20の内部の空気を排出するために1以上の排気口22が設けられる。排気口22の近傍には、1以上の天井ファン(冷却ファン)17が設けられる。暖められた空気は上昇するため、天井ファン17を用いることで効果的にガントリ20の内部を冷却することができる。
【0031】
更に、ガントリ20は制御基板(不図示)を備える。例えば、制御基板は、ガントリ20内に設けられたX線管装置4、X線検出器5等の各機器の温度、及びガントリ20の内部温度等のステータス情報を読み取り、ステータス情報に基づいてガントリ20内の各機器を統合制御する。
【0032】
操作ユニット30は、入力装置31、表示装置32及び筐体33を備える。筐体33内部には、画像演算装置(不図示)と、記憶装置(不図示)とが設けられる。入力装置31は、操作者OPが撮影操作を行うための入力用インターフェースである。例えば、入力装置31は、キーボード又はポインティングデバイスである。画像演算装置は、X線検出器5で検出される計測データを演算処理してCT画像を生成する。表示装置32は、画像演算装置で作成されたCT画像を表示する装置であり、例えば、液晶ディスプレイ等である。記憶装置は、X線検出器5で収集したデータ及び画像演算装置で作成されたCT画像を記憶する装置であり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等である。
【0033】
<動作音抑制装置の原理>
次に、
図3を用いて本開示に係る動作音抑制装置40の原理について説明する。まず、冷却ファン17,18,19は、それぞれに対して予め設定された状態になると、回転動作を開始する。これらの冷却ファン17,18,19の動作音はX線CT装置1における動作音のうちの大きな割合を占める。
【0034】
ここで、X線CT装置1のX線管装置4には、そのX線管装置4がどの程度の量のX線を出力できるかを示す熱容量(最大熱容量)という数値がある。X線管装置4でX線を照射すると、X線の出力に応じて蓄積熱量が増大する。最大熱容量に対する蓄積熱量の比率(熱蓄積率)が100%になると、熱が飽和していることを意味する。熱が飽和すると、次にX線を照射するためにはX線管装置4が冷却されるのを待つ必要がある。しかし、次にX線を照射するためには、X線管装置4の熱蓄積率が0%になるまで待つ必要は無く、次に照射したいX線の出力に相当する分だけX線管装置4が冷却されるまで待てば十分である。例えば、次に照射したいX線の出力が最大熱容量の10%に相当する場合は、X線管装置4の熱蓄積率が90%になるまで待てば、次のX線照射を行うことが可能である。
【0035】
冷却ファン18はX線管装置4の温度が所定の動作開始温度以上になると、回転動作を開始する。通常、一旦、X線照射を行うと、冷却ファン18はその後数十分間、例えば50分間回転動作を継続するように制御される。しかし、多くの場合、X線CT装置1の使用頻度を考慮して、冷却待ち時間を抑制する又は冷却待ち時間が発生しない程度の大きさの最大熱容量を有するX線管装置4が選定されている。そのため、例えば、X線管装置4の熱蓄積率がある一定の値以下(後述の基準熱蓄積率RHR以下)である場合、操作者OPと被検体Sとが会話する間だけX線管装置4を冷却する冷却器15の冷却ファン18を停止させても、大きな問題とはならないと考えられる。
【0036】
天井ファン17に関しても、同様に、ガントリ20の内部温度が所定の動作開始温度以上になると、天井ファン17は回転動作を開始する。しかし、ガントリ20内の温度を必要以上に下げる必要は無いため、例えば、ガントリ20内の温度がある一定の温度以下(後述の基準内部温度RTG以下)である場合は、操作者OPと被検体Sとが会話する間だけ天井ファン17を停止させても大きな問題とはならないと考えられる。
【0037】
冷却ファン19に関しても、同様に、X線検出器5の温度が所定の動作開始温度以上になると、回転動作を開始する。しかし、X線検出器5の温度を必要以上に下げる必要は無いため、例えば、X線検出器5の温度がある一定の温度以下(後述の基準温度RTD以下)である場合は、操作者OPと被検体Sとが会話する間だけ冷却ファン19を停止させても大きな問題とはならないと考えられる。
【0038】
このような考察から、本開示に係る動作音抑制装置40は、操作者OPと被検体Sとの間の会話、又は、会話が可能な状況を検出した際、X線CT装置1の運転上問題がない場合には冷却ファン17,18,19のうちの少なくとも1つの動作を一時停止する又は回転数を下げる制御を行う。これにより、X線CT装置1の動作音を抑制し、操作者OPと被検体Sとの間で会話を円滑に行うことを可能にする。
【0039】
ここで、「操作者OPと被検体Sとの間の会話の検出」は、操作者OP又は被検体Sの音声や口の動きに基づいて行われる。「操作者OPと被検体Sとの間の会話が可能な状況の検出」は、位置情報(距離)や所定の機能の動作開始に基づいて行われる。これらについて詳しくは後述する。
【0040】
図3は、動作音抑制装置の機能ブロック図である。
図3に示すように、動作音抑制装置40は、検出部41とファン制御部45とを備える。検出部41は、X線CT装置1の操作者OPと、寝台3に載置された被検体Sとの間の会話又は会話可能な状況を検出する。
【0041】
ファン制御部45は、ガントリ20の制御基板(不図示)に接続されている。ファン制御部45と制御基板との間の接続は、有線でも無線でもよい。ファン制御部45は、検出部41の検出結果に基づいてX線CT装置1に設けられた1以上の冷却ファン17,18及び19の動作を制御する。
【0042】
より具体的には、ファン制御部45は不図示の記憶部(メモリ)を備える。その記憶部には、冷却ファン17,18及び19のうちの1以上の冷却ファンの動作を一時停止させるか否か(又は回転数を低下させるか否か)を判定するための1以上の基準値が記憶されている。
【0043】
例えば、1以上の基準値として、記憶部には、X線管装置4について所定の基準熱蓄積率RHR、ガントリ20について所定の基準内部温度RTG及びX線検出器5について所定の基準温度RTDが記憶されている。
【0044】
基準熱蓄積率RHRは、X線CT装置1による撮影時に冷却器15の冷却ファン18を一時停止しても問題ないと思われるX線管装置4の熱蓄積率を示す。基準内部温度RTGは、天井ファン17を一時停止しても問題ないと思われるガントリ20の内部温度を示す。基準温度RTDは天井ファン17を一時停止しても問題ないと思われるX線検出器5の温度を示す。基準熱蓄積率RHR、基準内部温度RTG及び基準温度RTDは、X線CT装置1の仕様及び使用状況に応じて、動作音抑制装置40の出荷時に設定され、または、操作者OPにより設定される。これらの基準値は適宜変更可能である。
【0045】
検出部41が操作者OPと寝台3に載置された被検体Sとの間の会話又は会話可能な状況を検出すると、ファン制御部45は、ガントリ20の制御基板を介して、X線検出器5の熱蓄積率、ガントリ20の内部温度、及びX線検出器5の温度を含む、ステータス情報を取得する。そして、ファン制御部45は、X線検出器5の熱蓄積率、ガントリ20の内部温度、及びX線検出器5の温度が、基準熱蓄積率RHR、基準内部温度RTG及び基準温度RTD以下であると判定した場合、例えば、冷却ファン17,18及び19を一時停止させる指示をガントリ20の制御基板に出力する。
【0046】
なお、ここでは、例として、ファン制御部45は、冷却ファン17,18及び19を全て一時停止させるように動作制御している。しかし、ファン制御部45による冷却ファン17,18及び19の動作制御は、この例に限定されない。他の例については後述する。
【0047】
上記のように、X線CT装置1において、冷却ファン17,18及び19は、他の機器と比較して大きな動作音の発生源となる。動作音抑制装置40は、操作者OPと被検体S検出部41との間の会話又は会話可能な状況の検出結果に基づいて冷却ファン17,18及び19の動作を制御することにより、操作者OPと被検体Sとの間の会話を円滑にできるように動作音を抑制することができる。
【0048】
なお、
図3において、例として、動作音抑制装置40はガントリ20とは別体に設けられている。しかし、動作音抑制装置40は、ガントリ20の内部に設けられてもよい。また、動作音抑制装置40は撮影室(不図示)に設けられてもよいし、操作室(不図示)に設けられてもよい。
【0049】
<第1実施形態>
以下、
図4から
図6を用いて動作音抑制装置40を適用したX線CT装置1について具体的に説明する。撮影の準備段階において、操作者OPは、被検体Sに対して撮影の際の息止め等の注意事項を説明する。しかし、X線CT装置1の動作音が大きいためにその説明を被検体Sが聞き取りにくいことがある。好ましくは、第1実施形態は、撮影室の寝台3の近傍において操作者OPと被検体Sとの間の会話が行われる場合に適用される。
【0050】
図4は、第1実施形態に係る動作音抑制装置40を適用したX線CT装置1の概略構成図である。
図4に示すように、検出部41は、寝台3の近傍を撮影する寝台撮像部42を備える。好ましくは、寝台撮像部42は、寝台3の上方の天井に配置され、寝台3のほぼ全体を撮影範囲に入れることができる程度の画角を有する。寝台撮像部42は、所定時間毎に、又は連続的に寝台3の画像(連続画像または動画)を撮像する。
【0051】
検出部41は、寝台撮像部42によって撮像された画像に基づいて寝台3上の被検体Sと操作者OPとの距離を算出し、距離が所定値以下(例えば距離が1メートル以下)である場合は、被検体Sと操作者OPとが会話可能な状況であることを検出する。検出部41は、検出結果をファン制御部45に出力する。
【0052】
ファン制御部45は、X線CT装置1の動作音を抑制するように冷却ファン17,18及び19の少なくとも1つの動作を制御する。冷却ファン17,18及び19の動作制御の例として、以下が挙げられる。
【0053】
(1)例えば、ファン制御部45は冷却ファン17,18及び19の全ての回転動作を一時停止させる。この場合、効果的に動作音を抑制することができる。
【0054】
具体的には、ファン制御部45は、ガントリ20の制御基板を介して、ステータス情報を取得する。そして、ファン制御部45は、ステータス情報に基づいてX線検出器5の熱蓄積率、ガントリ20の内部温度及びX線検出器5の温度が、それぞれ、基準熱蓄積率RHR、基準内部温度RTG及び基準温度RTD以下であると判定した場合、冷却ファン17,18及び19を一時停止させる指示をガントリ20の制御基板に出力する。
【0055】
(2)例えば、ファン制御部45は、冷却ファン17,18及び19の回転動作を一時停止する代わりに、回転数を低下させてもよい。より具体的には、ファン制御部45は、例えば、冷却ファン17,18及び19の回転数を所定値、例えば、定格回転数の75%に低下させてもよい。なお、この所定値は予め設定されてもよいし、操作者OPによって適宜設定し、変更されてもよい。
【0056】
(3)例えば、ファン制御部45は、冷却ファン17,18及び19のうちの少なくとも1つの動作を一時停止させてもよい。例えば、冷却ファン17,18及び19のうち最も動作音が大きい冷却ファンを冷却することによって、ある程度の冷却能力を維持しつつ動作音を抑制することができる。具体的には、X線CT装置1の仕様にもよるが、天井ファン17の動作音が最も大きい場合、天井ファン17の動作を一時停止させることにしてもよい。
【0057】
この場合、ファン制御部45は、ステータス情報に基づいて、ガントリ20の内部温度が基準内部温度RTG以下であると判定した場合、天井ファン17を一時停止させる指示をガントリ20の制御基板に出力する。これにより、ある程度の冷却能力を維持しつつ、動作音を抑制することができる。
【0058】
あるいは、冷却ファン17,18及び19の動作音の大きさに従って一時停止させる優先順位をつけ、ステータス情報に応じてその優先順位に応じて冷却ファン17,18及び19のうちの少なくとも1つの動作を一時停止させることにしてもよい。
【0059】
具体的には、X線CT装置1の仕様にもよるが、天井ファン17、冷却ファン18、冷却ファン19の順に動作音が大きい場合、天井ファン17の動作を最優先に停止させ、天井ファン17を一時停止できない場合は冷却ファン18を一時停止することとしてもよい。この場合も、ある程度の冷却能力を維持しつつ動作音を抑制することができる。なお、この優先順位は例示に過ぎない。
【0060】
(4)例えば、ファン制御部45は、回転動作を一時停止する代わりに、冷却ファン17,18及び19のうちの少なくとも1つの回転数を低下させてもよい。
【0061】
また、X線CT装置1の使用状況に応じて上記の(1)から(4)に記載した動作制御を組み合わせてもよい。例えば、冷却ファン17,18及び19のうちの少なくとも1つの回転数を低下させる場合に、優先順位に従って回転数を低下させるようにしてもよい。
【0062】
動作音を抑制した後、検出部41が、寝台撮像部42によって撮像された画像に基づいて被検体Sと操作者OPとの距離が一定値を超えたことを検出した場合、ファン制御部45は、冷却ファン17,18及び19の回転動作を通常の撮影時の状態に戻し、X線CT装置1の動作音の抑制を終了させる。
【0063】
なお、被検体Sと操作者OPとの距離に基づいて動作音の抑制を終了させるのではなく、動作音の抑制を開始してから所定時間が経過した後、自動的に冷却ファン17,18及び19の回転動作を通常の撮影時の状態に戻すことにしてもよい。
【0064】
このように、第1実施形態によれば、寝台撮像部42によって撮像された画像に基づいて被検体Sと操作者OPとが会話可能な状況であることを検出し、動作音を抑制するように冷却ファンを制御する。これにより、X線CT装置1の撮影動作を停止することを避けつつ、操作者OPと被検体Sとの間で良好に会話することができるように動作音を抑制することが可能となる。
【0065】
<第1実施形態の変形例1>
第1実施形態では、寝台撮像部42は寝台3のほぼ全体を撮影範囲に入れることができる程度の画角を有する。一方、第1実施形態の変形例では、寝台撮像部42は、例えば、ガントリ20の壁面の上に配置され、寝台3に載置された被検体Sの顔を撮像可能な撮影範囲を有する。寝台撮像部42は、所定時間毎(例えば数十秒ごと)に又は連続的に、被検体Sの顔の画像(連続画像または動画)を撮像する。
【0066】
検出部41は、寝台撮像部42によって撮像された画像に基づいて寝台3上の被検体Sの口の動きを抽出し、口の動きに基づいて被検体Sと操作者OPとの会話を検出する。具体的には、例えば、所定時間以上連続して口が動いている場合は、検出部41は被検体Sと操作者OPとの会話を検出したと判定する。そして、検出部41は検出結果をファン制御部45に出力する。ファン制御部45による冷却ファン17,18及び19の動作制御は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0067】
動作音を抑制した後、検出部41が、寝台撮像部42によって撮像された画像から口の動きを抽出できなくなった場合、ファン制御部45は、冷却ファン17,18及び19の回転動作を通常の撮影時の状態に戻し、X線CT装置1の動作音の抑制を終了させる。なお、動作音の抑制を開始してから所定時間が経過した後、自動的に冷却ファン17,18及び19の回転動作を通常の撮影時の状態に戻すことにしてもよい。この変形例でも、X線CT装置1の撮影動作を停止することを避けつつ、操作者OPと被検体Sとの間で良好に会話することができるように動作音を抑制することが可能である。
【0068】
なお、第1実施形態の変形例は、後述の第3実施形態のように、操作室にいる操作者OPと撮影室にいる被検体Sとの間で会話が行われる場合にも適用可能である。
【0069】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係る動作音抑制装置40を適用したX線CT装置1の概略構成図である。好ましくは、第2実施形態は、第1実施形態と同様に、撮影室の寝台3の近傍において、操作者OPと被検体Sとの間の会話が行われる場合に適用される。
図5に示すように、検出部41は、寝台3の近傍の音を集音する集音部(第1集音部)43を備える。例えば、集音部43は、ガントリ20の筐体の外表面の上で、寝台3の近傍に配置される。
【0070】
検出部41は、集音部43によって集音された音から人間の声に相当する周波数を抽出された場合は、被検体Sと操作者OPとが会話していることを検出する。検出部41は、その検出結果をファン制御部45に出力する。
【0071】
ファン制御部45の動作は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。動作音を抑制した後、検出部41が、集音部44によって集音された音から人間の声に相当する周波数を抽出できなくなった場合、ファン制御部45は、冷却ファン17,18及び19の回転動作を通常の撮影時の状態に戻し、X線CT装置1の動作音の抑制を終了させる。なお、動作音の抑制を開始してから所定時間が経過した後、自動的に冷却ファン17,18及び19の回転動作を通常の撮影時の状態に戻すことにしてもよい。第2実施形態でも、X線CT装置1の撮影動作を停止することを避けつつ、操作者OPと被検体Sとの間で良好に会話することができるように動作音を抑制することが可能となる。
【0072】
<第3実施形態>
第1及び第2実施形態では、撮影室において操作者OPと被検体Sとの間で会話を行う場合における動作音抑制について説明した。ところで、X線CT装置1による撮影時に、操作室で操作ユニット30にいる操作者OPから撮影室にいる被検体Sに対して、息を止めたり、体を動かしたりするよう指示を出すことや、気分が悪くなっていないか確認することがある。好ましくは、第3実施形態は、操作室にいる操作者OPと、撮影室にいる被検体Sとの間の会話が行われる場合に適用される。
【0073】
図6は、第3実施形態に係る動作音抑制装置40を適用したX線CT装置1の概略構成図である。
図6に示すように、検出部41は、操作ユニット30の近傍の音を集音する集音部44(第2集音部)を備える。例えば、集音部44として、操作室から撮影室へ音声を流すために操作ユニット30に設けられた既存のマイクを用いてもよい。
【0074】
検出部41は、集音部44によって集音された音から人間の声に相当する周波数を抽出された場合、被検体Sと操作者OPとが会話していることを検出する。検出部41は、検出結果をファン制御部45に出力し、ファン制御部45は、X線CT装置1の動作音を抑制するように冷却ファン17,18及び19の少なくとも1つを制御する。
【0075】
なお、集音部44は、操作室から撮影室に音声を流すことを指示する不図示の操作スイッチ(不図示)を備えてもよい。この場合、集音部44の操作スイッチが入れられたことを検出することにより、検出部41は、操作室から撮影室へ音声を流すことが可能な状態になっていること、つまり、被検体Sと操作者OPとが会話可能な状況であることを検出してもよい。
【0076】
また、X線CT装置1に備えられた自動音声機能(オートボイス機能)を用いて被検体Sに対して指示を出すこともある。この場合、自動音声機能からのアナウンスが開始されることを検出することにより、検出部41は、操作室から撮影室へ音声を流すことが可能な状態になっていること、つまり、被検体Sと操作者OPとが会話可能な状況であることを検出してもよい。
【0077】
ファン制御部45の動作は第1実施形態と同じであるため、省略する。動作音を抑制した後、検出部41が、集音部44によって集音された音から人間の声に相当する周波数を抽出できなくなった場合に、ファン制御部45は、冷却ファン17,18及び19の回転動作を通常の撮影時の状態に戻し、X線CT装置1の動作音の抑制を終了させる。集音部44の操作スイッチが切られた場合、又は、自動音声機能からのアナウンスが終了した場合に、冷却ファン17,18及び19の回転動作を通常の撮影時の状態に戻してもよい。動作音の抑制を開始してから所定時間が経過した後、自動的に冷却ファン17,18及び19の回転動作を通常の撮影時の状態に戻すことにしてもよい。
【0078】
第3実施形態では、操作室から操作者OPと、撮影室にいる被検体Sとの間で会話が行われる場合に、X線CT装置1の撮影動作を停止することを避けつつ、操作者OPと被検体Sとの間で良好に会話することができるように動作音を抑制することが可能となる。
【0079】
<第3実施形態の変形例>
第3実施形態では操作室に集音部44を備える。一方、第3実施形態の変形例では集音部44に代えて操作室撮像部(不図示)を備える。例えば、被検体Sに対して、操作室にいる操作者OPからの指示を動画で行うことができるように、ガントリ20内に表示部が設けられ、操作室に撮像部が設けられることがある。操作室撮像部として、このような既存の撮像部を用いてもよい。
【0080】
検出部41は、操作室撮像部によって撮像された画像に基づいて操作者OPの口の動きを抽出し、所定時間以上連続して口が動いている場合は被検体Sと操作者OPとが会話していることを検出する。検出部41は、検出結果をファン制御部45に出力する。ファン制御部45は、第1実施形態及び第1実施形態の変形例と同様であるため、説明を省略する。
【0081】
この変形例でも、X線CT装置1の撮影動作を停止することを避けつつも、操作者OPと被検体Sとの間で良好に会話することができるように動作音を抑制することが可能である。
【0082】
<その他>
ファン制御部45は、各種のプロセッサ(Processor)で実現可能である。各種のプロセッサには、汎用的なプロセッサであるCPU及び/又はGPU(Graphic Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device,PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0083】
ファン制御部45は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサで構成されてもよい。たとえば、ファン制御部45は、複数のFPGA、或いは、CPUとFPGAの組み合わせによって構成されてもよい。
【0084】
本発明は上述した実施形態に限定されず、種々の変形が可能であることは言うまでもない。例えば、第1から第3実施形態及びその変形例を適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 X線CT装置
17,18,19 冷却ファン
40 動作音抑制装置
41 検出部
42 寝台撮像部
43,44 集音部
45 ファン制御部
OP 操作者
S 被検体