(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025152775
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】放射線撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/42 20240101AFI20251002BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20251002BHJP
A61B 6/40 20240101ALI20251002BHJP
G01T 7/00 20060101ALN20251002BHJP
【FI】
A61B6/42 530R
A61B6/03 573
A61B6/40 530K
G01T7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024054844
(22)【出願日】2024-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 達彦
(72)【発明者】
【氏名】石津 崇章
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大雅
【テーマコード(参考)】
2G188
4C093
【Fターム(参考)】
2G188AA03
2G188BB02
2G188CC29
2G188DD05
2G188DD16
4C093AA22
4C093CA13
4C093EA07
4C093EA14
4C093EB13
4C093EB17
4C093EB18
(57)【要約】
【課題】実効ビーム幅が、複数の撮影モードにおいて設定される設定ビーム幅の各々を下回らない所定の範囲とすることを可能とする放射線撮影装置を提供する。
【解決手段】放射線撮影装置は、回転軸における放射線の回転軸方向の設定ビーム幅が異なる複数の撮影モードで撮影が可能である。放射線検出器は、回転軸に平行な第1方向と回転軸に直交する第2方向とに配列された複数のサブ画素を有し、第1方向に並ぶ第1数のサブ画素がグループ化された第1マクロ画素と、第1方向に並ぶ第1数とは異なる第2数のサブ画素がグループ化された第2マクロ画素とがそれぞれ複数設けられ、設定ビーム幅に対応する数のスライスを構成するための第1マクロ画素と第2マクロ画素との数により決まる実効ビーム幅が、設定ビーム幅の各々を下回らない所定の範囲となるように、第2マクロ画素が配置されている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の周りに回転して放射線を放射する放射線源と、前記回転軸の周りに前記放射線源と対向した状態で回転して前記放射線を検出する放射線検出器とを備え、前記回転軸における前記放射線の前記回転軸方向の設定ビーム幅が異なる複数の撮影モードで撮影が可能な放射線撮影装置であって、
前記放射線検出器は、
前記回転軸に平行な第1方向と前記回転軸に直交する第2方向とに配列された複数のサブ画素を有し、
前記第1方向に並ぶ第1数の前記サブ画素がグループ化された第1マクロ画素と、前記第1方向に並ぶ前記第1数とは異なる第2数の前記サブ画素がグループ化された第2マクロ画素とがそれぞれ複数設けられ、
前記設定ビーム幅に対応する数のスライスを構成するための前記第1マクロ画素と前記第2マクロ画素との数により決まる実効ビーム幅が、前記設定ビーム幅の各々を下回らない所定の範囲となるように、前記第2マクロ画素が配置されている
放射線撮影装置。
【請求項2】
前記第1数は、前記第2数よりも大きい
請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記第1数は6であり、前記第2数は5である
請求項2に記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記第1マクロ画素ごと及び前記第2マクロ画素ごとに光子を計数する光子計数回路と、
前記光子計数回路による計数値に基づいて放射線画像を生成する画像処理部と、
を備える
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、前記第2マクロ画素の配置に起因した周波数を有するアーチファクトを補正する
請求項4に記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記画像処理部は、前記第1マクロ画素ごと及び前記第2マクロ画素ごとに計数される光子の計数値を、前記第1数及び前記第2数に基づいて補正する
請求項4に記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
前記第1数が前記第2数よりも大きい場合、
前記画像処理部は、前記第1マクロ画素についての光子の計数値の一部を、隣接する前記第2マクロ画素についての光子の計数値に分配する
請求項6に記載の放射線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光子計数型検出器を搭載した放射線撮影装置であるPCCT(Photon Counting Computed Tomography)装置が知られている。光子計数型検出器は、従来のCT(Computed Tomography)装置で採用されている電荷積分型の検出器と異なり、入射した放射線の光子を計数可能である。PCCT装置は、光子ごとにエネルギを計測できるので、従来のCT装置に比べてより多くの情報が得られる。
【0003】
PCCT装置では、入射した光子を半導体層で電荷に変換し、変換された電荷を光子計数回路が計数することにより光子の計数が行われる。半導体層の上面及び下面には、半導体層に高電圧を印加するための電極が形成されており、下面側の電極をパターニングすることにより、複数のサブ画素が構成されている。また、複数のサブ画素を複数個ずつグループ化することにより複数のマクロ画素を構成することが知られている(例えば、特許文献1参照)。これにより、サブ画素又はマクロ画素の単位で光子の計数を行うことができる。
【0004】
また、CT装置には、40mm、20mm、10mm、5mmなどのスライス厚が異なる複数の撮影モードを有するマルチスライスCT装置が知られている。スライス厚は、CT装置の回転軸おける放射線の回転軸方向(すなわちスライス方向)のビーム幅に対応する。各スライス厚は、複数のスライス(いわゆるマルチスライス)で構成される。以下、撮影モードごとに設定されるビーム幅を「設定ビーム幅」という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PCCT装置において、スライス厚が異なる複数の撮影モードを実行可能とすることが考えられる。マクロ画素の単位で光子を計数する場合、1つのスライスは、スライス方向と直交するチャネル方向に並ぶ複数のマクロ画素に対応する。また、設定ビーム幅に対応する数のスライスは、放射線が照射される領域におけるスライス方向への複数のマクロ画素により構成される。したがって、回転軸における実効的なビーム幅(以下、実効ビーム幅という。)は、設定ビーム幅に対応する数のスライスを構成するためのマクロ画素の数により決まる。
【0007】
スライス方向へのサブ画素の総数は、マクロ画素としてグループ化する数で割り切れないことがある。このため、スライス方向に並ぶ第1数のサブ画素がグループ化された第1マクロ画素と、スライス方向に並ぶ第2数のサブ画素がグループ化された第2マクロ画素とをそれぞれ複数構成することが考えられる。例えば、第1数は6であり、第2数は5である。この場合、実効ビーム幅は、設定ビーム幅に対応する数のスライスを構成するための第1マクロ画素と第2マクロ画素との数によって決まる。第1マクロ画素と第2マクロ画素とはそれぞれ含むサブ画素の数が異なるので、実効ビーム幅は、第1マクロ画素の数及び第2マクロ画素の配置によって変動する。
【0008】
例えば、第1マクロ画素が等ピッチで配置され、第2マクロ画素が不等ピッチで配置されている場合には、第2マクロ画素の配置に依存して各撮影モードにおける実効ビーム幅が変動する。すなわち、いずれかの撮影モードにおいて、実効ビーム幅が設定ビーム幅を下回ることがある。実効ビーム幅が設定ビーム幅を下回ると、断層画像の画質が低下してしまう。
【0009】
そこで、本開示に係る技術は、実効ビーム幅が、複数の撮影モードにおいて設定される設定ビーム幅の各々を下回らない所定の範囲とすることを可能とする放射線撮影装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の技術に係る放射線撮影装置は、回転軸の周りに回転して放射線を放射する放射線源と、回転軸の周りに放射線源と対向した状態で回転して放射線を検出する放射線検出器とを備え、回転軸における放射線の回転軸方向の設定ビーム幅が異なる複数の撮影モードで撮影が可能な放射線撮影装置であって、放射線検出器は、回転軸に平行な第1方向と回転軸に直交する第2方向とに配列された複数のサブ画素を有し、第1方向に並ぶ第1数のサブ画素がグループ化された第1マクロ画素と、第1方向に並ぶ第1数とは異なる第2数のサブ画素がグループ化された第2マクロ画素とがそれぞれ複数設けられ、設定ビーム幅に対応する数のスライスを構成するための第1マクロ画素と第2マクロ画素との数により決まる実効ビーム幅が、設定ビーム幅の各々を下回らない所定の範囲となるように、第2マクロ画素が配置されている。
【0011】
第1数は、第2数よりも大きいことが好ましい。
【0012】
第1数は6であり、第2数は5であることが好ましい。
【0013】
第1マクロ画素ごと及び第2マクロ画素ごとに光子を計数する光子計数回路と、光子計数回路による計数値に基づいて放射線画像を生成する画像処理部と、を備えることが好ましい。
【0014】
画像処理部は、第2マクロ画素の配置に起因した周波数を有するアーチファクトを補正することが好ましい。
【0015】
画像処理部は、第1マクロ画素ごと及び第2マクロ画素ごとに計数される光子の計数値を、第1数及び第2数に基づいて補正することが好ましい。
【0016】
第1数が第2数よりも大きい場合、画像処理部は、第1マクロ画素についての光子の計数値の一部を、隣接する第2マクロ画素についての光子の計数値に分配することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本開示の技術によれば、実効ビーム幅が、複数の撮影モードにおいて設定される設定ビーム幅の各々を下回らない所定の範囲とすることを可能とする放射線撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る放射線撮影装置の構成を概略的に示す図である。
【
図2】X線検出器の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図3】検出器モジュールの構成例を概略的に示す図である。
【
図4】半導体層及びASICの構成を概略的に示す図である。
【
図5】4つの半導体層の各々に構成されるサブ画素の配列を概略的に示す図である。
【
図6】第1マクロ画素及び第2マクロ画素の配列を概略的に示す図である。
【
図7】撮影モードごとに設定される設定ビーム幅について説明する図である。
【
図8】複数の撮影モードについて説明する図である。
【
図9】実施形態に係る第2マクロ画素の配置例を示す図である。
【
図11】
図9に示すように第2マクロ画素を配置した場合における実効ビーム幅の算出値を示す図である。
【
図12】第1比較例に係る第2マクロ画素の配置例を示す図である。
【
図13】
図12に示すように第2マクロ画素を配置した場合における実効ビーム幅の算出値を示す図である。
【
図14】第2比較例に係る第2マクロ画素の配置例を示す図である。
【
図15】
図14に示すように第2マクロ画素を配置した場合における実効ビーム幅の算出値を示す図である。
【
図16】アーチファクトを抑制する処理の一例を示す図である。
【
図17】アーチファクトを抑制する処理の他の例を示す図である。
【
図18】計数値を分配する処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本開示の技術に係る実施形態を説明する。本開示の放射線撮影装置は、回転軸の周りに回転して放射線を放射する放射線源と、回転軸の周りに放射線源と対向した状態で回転して前記放射線を検出する放射線検出器とを備えるPCCT装置に適用される。本実施形態では、放射線がX線である場合を一例として説明する。
【0020】
[実施形態]
図1は、実施形態に係る放射線撮影装置2の構成を概略的に示す。放射線撮影装置2は、X線源3と、X線検出器4と、ガントリ5と、寝台6と、制御部7と、画像処理部8とを含む。ガントリ5の中央には、被写体Hを載置する寝台6を配置するための円形の開口部51が設けられている。また、ガントリ5には、X線源3とX線検出器4とが対向した位置に固定された回転板52と、回転軸Cを中心として回転板52を回転させるための不図示の駆動機構とが設けられている。
【0021】
以下、本開示において、開口部51の周方向をX方向、径方向をY方向、中心軸方向をZ方向とする(
図2参照)。Z方向は、X方向とY方向とに直交し、一般的に被写体Hの体軸方向となる。回転軸CはZ方向に平行である。被写体Hは、体軸が回転軸Cとほぼ一致するように配置される。
【0022】
また、Z方向はスライス方向であり、X方向はチャネル方向である。Z方向は、本開示の技術に係る「第1方向」に対応する。X方向は、本開示の技術に係る「第2方向」に対応する。
【0023】
X線源3は、X線管31と、アパーチャ32と、X線フィルタ33と、ボウタイフィルタ34とを含む。X線管31は、X線を発生し、発生したX線を被写体Hに照射する。アパーチャ32は、X線管31から照射されたX線を、所定のファン角及びコーン角を有するコーンビームに成形する。X線フィルタ33は、X線の線量を調節する。ボウタイフィルタ34は、周辺部の被ばく量を抑えるため、中心付近の線量を強くし、周囲の線量を低くして被ばく量を最適化する。
【0024】
X線検出器4は、
図2に示すように、複数の検出器モジュール40をX方向に円弧状に配列することにより構成されている。検出器モジュール40の各々は、コリメータ41と、半導体層42と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)43とを含む。
【0025】
コリメータ41は、半導体層42のX線入射側に配置されており、半導体層42へのX線の入射方向を制限することにより、散乱線を除去する。半導体層42は、テルル化亜鉛カドミウム(CZT)、テルル化カドミウム(CdTe)等で形成されており、被写体Hを透過して入射したX線を光子に相当する電荷に変換して出力する。
【0026】
ASIC43は、半導体層42のコリメータ41とは反対側に配置されている。ASIC43は、複数の光子計数回路44を有する回路素子である。光子計数回路44は、半導体層42が出力する電荷の数を光子数として計数し、計数信号を出力する。詳しくは後述するが、半導体層42には、複数のサブ画素と複数のマクロ画素とが構成されている。光子計数回路44は、サブ画素又はマクロ画素ごとに光子を計数して計数信号を出力する。
【0027】
制御部7は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成されている。制御部7は、X線源3、X線検出器4、ガントリ5、及び寝台6の動作を制御する。具体的には、制御部7は、X線源3のX線管31からのX線の照射、アパーチャ32によるファン角及びコーン角の変更、X線検出器4によるX線検出、ガントリ5の回転板52の回転、及び寝台6の移動を制御する。X線源3とX線検出器4とは、互いに対向した状態で回転軸Cの周りに回転する。
【0028】
制御部7は、スライス厚が異なる複数の撮影モードを実行可能に構成されている。スライス厚は、回転軸CおけるX線の回転軸方向(すなわちZ方向)のビーム幅に対応する。制御部7は、撮影モードごとに、アパーチャ32を制御してコーン角を変更することにより、回転軸方向のビーム幅を変更する。すなわち、放射線撮影装置2は、回転軸方向のビーム幅が異なる複数の撮影モードで撮影が可能なマルチスライスCT装置であり、1回の回転によって複数の断層画像を取得することができる。
【0029】
また、制御部7は、ASIC43の光子計数回路44から出力される計数信号を複数のビューについて取得する。画像処理部8は、複数のビューについて制御部7が各ASIC43から取得した計数信号により表される複数の投影データに基づいて再構成処理を行うことにより断層画像を生成する画像処理プロセッサである。画像処理部8は、制御部7の一部として構成されていてもよい。断層画像は、本開示の技術に係る「放射線画像」の一例である。
【0030】
また、制御部7には、入力装置9、表示装置10、記憶装置11、及び通信装置12が接続されている。入力装置9は、オペレータが操作指示を入力するためのデバイスであり、キーボード、マウス等によって構成されている。表示装置10は、液晶ディスプレイ等のディスプレイであり、操作画面、断層画像等を表示する。記憶装置11は、メモリ、ストレージデバイス等であり、断層画像、プログラム、各種情報等を記憶する。
【0031】
オペレータは、入力装置9を操作することにより、複数の撮影モードからいずれかを選択することができる。
【0032】
通信装置12は、放射線科情報システム(RIS:Radiology Information Systems)、画像保存通信システム(PACS:Picture Archiving and Communication Systems)等との間で行うための通信インタフェースである。通信装置12は、有線又は無線の各種の通信規格で規定された通信プロトコルに従って伝送制御を行う。
【0033】
図3は、検出器モジュール40の構成例を概略的に示す。例えば、検出器モジュール40は、保持基板46上に4つのASIC43が搭載されたものである。4つのASIC43は、Z方向に配列されている。各ASIC43上には、半導体層42が接続されている。4つの半導体層42上には、コリメータ41が配置されている。なお、検出器モジュール40に含まれる半導体層42及びASIC43の個数はそれぞれ4には限られず、適宜の個数であってよい。
【0034】
図4は、半導体層42及びASIC43の構成を概略的に示す。半導体層42の上面には共通電極42aが形成されており、半導体層42の下面には複数の個別電極42bが形成されている。個別電極42bは、X方向及びZ方向に2次元状に配列されている。1つの個別電極42bは、サブ画素SPを構成している。共通電極42aは、各サブ画素SPに共通の電極であって、電源47からバイアス電圧が印加される。
【0035】
半導体層42にX線の光子が入射すると、光子のエネルギに応じた電荷量の電子正孔対が発生し、発生した電子は共通電極42aに、発生した正孔は個別電極42bに移動する。個別電極42bは、1つの光子が入射すると、光子のエネルギに応じた大きさの電圧値を有するパルス信号を発生する。
【0036】
また、Z方向に並ぶ複数のサブ画素SPをグループ化することによりマクロ画素MPが構成されている。本実施形態では、Z方向に並ぶ第1数のサブ画素SPがグループ化された第1マクロ画素MP1と、Z方向に並ぶ第2数のサブ画素SPがグループ化された第2マクロ画素MP2とがそれぞれ複数構成されている(
図6参照)。以下、第1マクロ画素MP1と第2マクロ画素MP2とを区別しない場合は、単にマクロ画素MPという。
【0037】
ASIC43は、複数の光子計数回路44とスイッチング回路48とを含む。スイッチング回路48は、マクロ画素MPに含まれる複数の個別電極42bと複数の光子計数回路44との間に接続されている。スイッチング回路48は、複数の個別電極42bを1つの光子計数回路44に共通に接続するマクロ画素モードと、複数の個別電極42bをそれぞれ別の光子計数回路44に接続するサブ画素モードとを切り替え可能とする。
【0038】
制御部7は、スイッチング回路48を制御することにより、マクロ画素モードとサブ画素モードとを切り替える。マクロ画素モードは、マクロ画素MPごとに光子を計数するモードである。サブ画素モードは、サブ画素SPごとに光子を計数するモードである。本実施形態では、マクロ画素モードについて説明する。例えば、マクロ画素モードは、X線の減弱係数が異なる物質を弁別して可視化させる物質弁別画像を取得する場合に使用される。
【0039】
光子計数回路44は、複数のエネルギ分別器と、各エネルギ分別器に接続された複数のカウンタとで構成されており、個別電極42bが発生するパルス信号に基づき、光子のエネルギを複数のエネルギ帯に分別しながら、エネルギ帯ごとに光子を計数する。
【0040】
図5は、4つの半導体層42の各々に構成されるサブ画素SPの配列を概略的に示す。1つの半導体層42において、サブ画素SPは、X方向及びY方向に一定の配列ピッチsで配列されている。本実施形態では、1つの半導体層42に構成されるX方向のサブ画素SPの数NxとZ方向のサブ画素SPの数Nzとは等しく、例えば、Nx=Nz=128である。
【0041】
4つの半導体層42はZ方向に配列されており、互いに隣接する2つの半導体層42の間にはギャップGが存在する。ギャップGのZ方向の長さg(以下、ギャップ長gという。)は、2つの半導体層42の間で隣接する2つのサブ画素SPの間隔でもある。例えば、ギャップ長gは、サブ画素SPの配列ピッチsと等しい。
【0042】
図6は、第1マクロ画素MP1及び第2マクロ画素MP2の配列を概略的に示す。本実施形態では、第1マクロ画素MP1は6個のサブ画素SPで構成され、第2マクロ画素MP2は5個のサブ画素SPで構成されている。すなわち、上述の第1数は6であり、第2数は5である。Nz=128の場合、1つの半導体層42には、Z方向に18個の第1マクロ画素MP1が存在し、Z方向に4個の第2マクロ画素MP2が存在する。以下、第1数をn
1、第2数をn
2と表記する。
【0043】
なお、仮に、n1=8、n2=8とした場合には、128は8で割り切れるので、サブ画素SPの数が異なる第1マクロ画素MP1及び第2マクロ画素MP2を構成する必要はないが、分解能を向上させるために、n1=6、n2=5としている。
【0044】
図7は、撮影モードごとに設定される設定ビーム幅WBcについて説明する。設定ビーム幅WBcは、回転軸CおけるX線の回転軸方向のビーム幅であって、マクロ画素MPの数に基づいて設定されている。
【0045】
図8は、複数の撮影モードについて説明する。本実施形態では、WBc=40mm、20mm、10mm、5mmの4つの撮影モードのうちいずれかを選択することができる。設定ビーム幅に対応するスライスの数をN
SLとし、スライスピッチをP
SLとする。全ての撮影モードでP
SL=0.5mmとすると、WBc=40mmの場合にはN
SL=80、WBc=20mmの場合にはN
SL=40、WBc=10mmの場合にはN
SL=20、WBc=5mmの場合にはN
SL=10となる。
【0046】
1つのスライスは、X方向(すなわちチャネル方向)に並ぶ複数のマクロ画素MPに対応するので、設定ビーム幅WBcは、スライス数NSLと等しい数のマクロ画素MPに対応する。
【0047】
図9は、実施形態に係る第2マクロ画素MP2の配置例を示す。
図9において、ハッチングを施していない矩形状領域は第1マクロ画素MP1を示し、ハッチングを施した矩形状領域は第2マクロ画素MP2を示している。
【0048】
第1マクロ画素MP1は、第2マクロ画素MP2が存在する箇所を除いて、Z方向に等ピッチで配置されている。第1マクロ画素MP1より数が少ない第2マクロ画素MP2は、Z方向に不等ピッチで配置されている。
【0049】
また、
図9において、Lは、設定ビーム幅WBcに対応するN
SL個のスライスを構成するための複数のマクロ画素MP(第1マクロ画素MP1及び第2マクロ画素MP2を含む。)のZ方向の長さ(以下、構成長という。)を表している。すなわち、構成長Lは、スライス厚に対応する。X線は、これらの複数のマクロ画素MPに照射される。
【0050】
また、
図9において、SL1は、WBc=40mmの場合における第1番目のスライス位置を示しており、SL80は、WBc=40mmの場合における第80番目のスライス位置を示している。第2マクロ画素MP2は、SL9、SL18、SL19、SL23、SL27、SL40、SL41、SL54、SL58、SL62、SL63、及びSL72のスライス位置に配置されている。
【0051】
構成長Lは、ギャップGが存在することも考慮して下式(1)で表される。
【数1】
【0052】
ここで、NMP1は第1マクロ画素MP1の数、NMP2は第2マクロ画素MP2の数、NGはギャップGの数である。
【0053】
N
SL=N
MP1+N
MP2の関係が満たされるので、上式(1)は下式(1a)に変形される。
【数2】
【0054】
図10は、実効ビーム幅について説明する。
図10において、WBeは、設定ビーム幅WBcに対応するN
SL個のスライスを構成するための複数のマクロ画素MPの数により決まる実効ビーム幅を表している。
【0055】
実効ビーム幅WBeは、構成長Lを用いた幾何学的関係により下式(2)で表される。
【数3】
【0056】
ここで、SODは、X線管31から回転軸CまでのY方向への長さである。SIDは、X線管31から検出器モジュール40(具体的には半導体層42)までのY方向への長さである。
【0057】
上式(1a)に示すように、構成長Lは、第2マクロ画素MP2の数NMP2に依存する。本実施形態では、n1>n2であるので、第2マクロ画素MP2の数NMP2が多いほど実効ビーム幅WBeが小さくなり、実効ビーム幅WBeが設定ビーム幅WBcを下回る可能性がある。
【0058】
実効ビーム幅WBeが設定ビーム幅WBcを下回ると断層画像の画質が低下するので、本実施形態では、下式(3)を満たすように第2マクロ画素MP2の配置を決定している。
【数4】
【0059】
ここで、αは実効ビーム幅WBeの上限を規定するための係数であり、例えば、α=1.02である。上式(3)で規定される範囲は、本開示の技術に係る「所定の範囲」の一例である。
【0060】
図11は、
図9に示すように第2マクロ画素MP2を配置した場合における実効ビーム幅WBeの算出値を示す。ここで、SID=1079.2mm、SOD=612.3mm、s=0.15mm、g=0.15mmとしている。また、
図11には、下式(4)で表される実効スライスピッチP
SLeの算出値を示している。
【数5】
【0061】
図11に示すように、本実施形態によれば、いずれの撮影モードにおいても実効ビーム幅WBeが設定ビーム幅WBcを下回らない上式(3)で規定される範囲となっていることがわかる。また、いずれの撮影モードにおいても実効スライスピッチP
SLeは、本来のスライスピッチP
SLを下回っていないことがわかる。したがって、本実施形態によれば、断層画像の画質の低下を抑制することができる。
【0062】
[比較例]
以下に、上記実施形態とは第2マクロ画素MP2の配置が異なる比較例について説明する。
【0063】
図12は、第1比較例に係る第2マクロ画素MP2の配置例を示す。本比較例に係る放射線撮影装置2の構成は、第2マクロ画素MP2の配置が異なること以外、上記実施形態と同様である。本比較例では、第2マクロ画素MP2は、SL9、SL18、SL19、SL37、SL39、SL40、SL41、SL43、SL44、SL62、SL63、及びSL72のスライス位置に配置されている。
【0064】
本比較例では、SID=1081.5mm、SOD=612.3mm、s=0.15mm、g=0.15mmとしている。
【0065】
図13は、
図12に示すように第2マクロ画素MP2を配置した場合における実効ビーム幅WBeの算出値を示す。
図13に示すように、第1比較例では、WBc=20mm、10mm、5mmの場合に、実効ビーム幅WBeが設定ビーム幅WBcを下回ることがわかる。
【0066】
図14は、第2比較例に係る第2マクロ画素MP2の配置例を示す。本比較例に係る放射線撮影装置2の構成は、第2マクロ画素MP2の配置が異なること以外、上記実施形態と同様である。本比較例では、第2マクロ画素MP2は、SL9、SL18、SL19、SL27、SL35、SL40、SL41、SL46、SL54、SL62、SL63、及びSL72のスライス位置に配置されている。
【0067】
本比較例では、SID=1081.5mm、SOD=612.3mm、s=0.15mm、g=0.15mmとしている。
【0068】
図15は、
図14に示すように第2マクロ画素MP2を配置した場合における実効ビーム幅WBeの算出値を示す。
図15に示すように、第2比較例では、WBc=20mm、10mmの場合に、実効ビーム幅WBeが設定ビーム幅WBcを下回ることがわかる。
【0069】
[画像処理]
上記実施形態では、第2マクロ画素MP2が不等ピッチで配置されているため、画像処理部8によって再構成される断層画像には、第2マクロ画素MP2の配置に起因した周波数を有するアーチファクトが生じることがある。このアーチファクトは、リング状のリングアーチファクトとして現れること、解像度特性を低下させることなどが想定される。
【0070】
このため、画像処理部8は、第2マクロ画素MP2の配置に起因した周波数を有するアーチファクトを補正することが好ましい。例えば、
図16に示すように、断層画像が第2マクロ画素MP2の配置に起因した周波数faを有する場合、画像処理部8は、周波数faに応じた補正を行うことにより、アーチファクトを抑制する。この補正には、いわゆるRampフィルタ等の再構成フィルタを用いることができる。
【0071】
また、
図17に示すように、画像処理部8は、アーチファクトの周波数faの周辺の周波数成分の情報に基づいて、周波数faの強度I1が周辺の周波数の強度I2に近づくように断層画像を補正してもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、一定のスライスピッチを有する複数のスライスが不等ピッチの第2マクロ画素MP2を含む複数のマクロ画素MPによって生成される。このため、上記実施形態におけるスライスのサンプリング位置は、マクロ画素MPが等ピッチで配列された場合の理想的なサンプリング位置との間で相違する。これにより分解能が低下することが考えられる。
【0073】
このため、画像処理部8は、第1マクロ画素MP1ごと及び第2マクロ画素MP2ごとに計数される光子の計数値を、第1数n1及び第2数n2に基づいて補正することが好ましい。具体的には、画像処理部8は、第1マクロ画素MP1についての光子の計数値の一部を、隣接する第2マクロ画素MP2についての光子の計数値に分配することが好ましい。
【0074】
図18は、簡単化のために、Z方向に並ぶ3つの第1マクロ画素MP1と1つの第2マクロ画素MP2とによって複数のスライスが生成される場合を示す。
図18に示すPC1~PC4は、光子の計数値を表している。PC1は、左端の第1マクロ画素MP1についての計数値である。PC2は、左端から2番目の第1マクロ画素MP1についての計数値である。PC3は、左端から3番目の第2マクロ画素MP2についての計数値である。PC4は、左端から4番目の第1マクロ画素MP1についての計数値である。
【0075】
この場合、画像処理部8は、計数値PC2の一部と計数値PC4の一部とを計数値PC3に分配する。具体的には、画像処理部8は、「0.5×PC2」をPC3に加算するとともにPC2から減算する。また、画像処理部8は、「0.25×PC4」をPC3に加算するとともにPC4から減算する。
【0076】
また、画像処理部8は、隣接する第1マクロ画素MP1間においても計数値の一部を分配する。具体的には、画像処理部8は、「0.25×PC1」をPC2に加算するとともにPC1から減算する。
【0077】
上記の0.5及び0.25は、構成長Lと、第1数n1及び第2数n2とに基づいて決定される分配係数である。
【0078】
これにより、Z方向に並ぶ3つの第1マクロ画素MP1と1つの第2マクロ画素MP2とについての計数データは、等間隔データとなるので、分解能が向上する。
【0079】
また、上記実施形態では、放射線としてX線を例に説明したが、放射線としてはγ線でもよい。
【0080】
また、上記実施形態において、制御部7のハードウェア的な構造としては、下記に示す各種のプロセッサを用いることができる。各種プロセッサとしては、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field‐Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASICなどの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0081】
また、上記各種処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせなど)で実行してもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、SoC(System on a Chip)などのように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。
【0082】
以上の記載から、下記の付記項に記載の技術を把握することができる。
【0083】
[付記項1]
回転軸の周りに回転して放射線を放射する放射線源と、前記回転軸の周りに前記放射線源と対向した状態で回転して前記放射線を検出する放射線検出器とを備え、前記回転軸における前記放射線の前記回転軸方向の設定ビーム幅が異なる複数の撮影モードで撮影が可能な放射線撮影装置であって、
前記放射線検出器は、
前記回転軸に平行な第1方向と前記回転軸に直交する第2方向とに配列された複数のサブ画素を有し、
前記第1方向に並ぶ第1数の前記サブ画素がグループ化された第1マクロ画素と、前記第1方向に並ぶ前記第1数とは異なる第2数の前記サブ画素がグループ化された第2マクロ画素とがそれぞれ複数設けられ、
前記設定ビーム幅に対応する数のスライスを構成するための前記第1マクロ画素と前記第2マクロ画素との数により決まる実効ビーム幅が、前記設定ビーム幅の各々を下回らない所定の範囲となるように、前記第2マクロ画素が配置されている
放射線撮影装置。
[付記項2]
前記第1数は、前記第2数よりも大きい
付記項1に記載の放射線撮影装置。
[付記項3]
前記第1数は6であり、前記第2数は5である
付記項2に記載の放射線撮影装置。
[付記項4]
前記第1マクロ画素ごと及び前記第2マクロ画素ごとに光子を計数する光子計数回路と、
前記光子計数回路による計数値に基づいて放射線画像を生成する画像処理部と、
を備える
付記項1から付記項3のうちいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
[付記項5]
前記画像処理部は、前記第2マクロ画素の配置に起因した周波数を有するアーチファクトを補正する
付記項4に記載の放射線撮影装置。
[付記項6]
前記画像処理部は、前記第1マクロ画素ごと及び前記第2マクロ画素ごとに計数される光子の計数値を、前記第1数及び前記第2数に基づいて補正する
付記項4又は付記項5に記載の放射線撮影装置。
[付記項7]
前記第1数が前記第2数よりも大きい場合、
前記画像処理部は、前記第1マクロ画素についての光子の計数値の一部を、隣接する前記第2マクロ画素についての光子の計数値に分配する
付記項6に記載の放射線撮影装置。
【符号の説明】
【0084】
2 放射線撮影装置
3 X線源
4 X線検出器
5 Xガントリ
6 寝台
7 制御部
8 画像処理部
9 入力装置
10 表示装置
11 記憶装置
12 通信装置
31 X線管
32 アパーチャ
33 X線フィルタ
34 ボウタイフィルタ
40 検出器モジュール
41 コリメータ
42 半導体層
43 ASIC
42a 共通電極
42b 個別電極
44 光子計数回路
46 保持基板
47 電源
48 スイッチング回路
51 開口部
52 回転板
C 回転軸
G ギャップ
H 被写体
MP マクロ画素
MP1 第1マクロ画素
MP2 第2マクロ画素
SP サブ画素