(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015324
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】レンズ装置及びレンズ装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20250123BHJP
【FI】
G02B7/02 C
G02B7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118655
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 幸裕
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AC01
2H044AJ04
(57)【要約】
【課題】レンズに関する光学特性を効率的に変更することができるレンズ装置及びレンズ装置の製造方法を提供する。
【解決手段】レンズ装置は、固定枠と、レンズを保持し、固定枠に固定されるレンズ枠とを備える。固定枠は、光軸周りの方向に並ぶ複数の係合部を有する。レンズ枠は、複数の係合部に選択的に係合される被係合部を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定枠と、
レンズを保持し、前記固定枠に固定されるレンズ枠と、
を備え、
前記固定枠は、光軸周りの方向に並ぶ複数の係合部を有し、
前記レンズ枠は、前記複数の係合部に選択的に係合される被係合部を有する
レンズ装置。
【請求項2】
前記複数の係合部のうち前記被係合部と係合する係合部を変更することにより、前記固定枠に対する前記レンズ枠の回転角度が変更可能である
請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記回転角度が変更されることにより、前記レンズに関する光学特性を変更可能である
請求項2に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記光学特性は、前記レンズの非点収差に関する特性を含む
請求項3に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記レンズは、前記レンズ装置が有する複数のレンズのうちの物体側に配置されるレンズを含む
請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記複数の係合部は、前記光軸周りの方向に4等分以上16等分以下の間隔で並んでいる
請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記間隔は8等分である
請求項6に記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記被係合部の数は、前記複数の係合部の数よりも少ない
請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項9】
前記被係合部の数は、1つである
請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項10】
前記固定枠は、前記被係合部が前記係合部に係合する位置を識別する識別部を有する
請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項11】
複数の前記識別部は、前記光軸周りの方向に並ぶ記号を含む
請求項10に記載のレンズ装置。
【請求項12】
複数の前記識別部は、前記固定枠の側面部に設けられている
請求項10に記載のレンズ装置。
【請求項13】
前記固定枠は、前記レンズ枠が固定される固定部を有し、
前記複数の係合部は、前記固定部に形成されている
請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項14】
前記固定部は、前記固定枠の軸方向一方側の端部に設けられている
請求項13に記載のレンズ装置。
【請求項15】
各前記係合部は、凹部であり、
前記被係合部は、凸部である
請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項16】
前記凹部は、前記固定枠の径方向内側に向けて開口する凹状に形成されている
請求項15に記載のレンズ装置。
【請求項17】
前記凸部は、前記レンズ枠の径方向外側に向けて突出する凸状に形成されている
請求項15に記載のレンズ装置。
【請求項18】
前記凹部は、前記固定枠の軸方向一方側に開放されている
請求項15に記載のレンズ装置。
【請求項19】
前記凸部は、前記レンズ枠の外周部に形成されている
請求項15に記載のレンズ装置。
【請求項20】
前記レンズ枠は、光軸方向に前記凸部と並ぶリブを有する
請求項15に記載のレンズ装置。
【請求項21】
前記固定枠は、接続部を有し、
前記レンズ枠は、前記接続部に接続される被接続部を有する
請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項22】
固定枠と、レンズを保持し、前記固定枠に固定されるレンズ枠とを備えるレンズ装置の製造方法であって、
前記固定枠は、光軸周りの方向に並ぶ複数の係合部を有し、
前記レンズ枠は、前記複数の係合部に選択的に係合される被係合部を有し、
前記製造方法は、前記複数の係合部のうち前記被係合部と係合する係合部を変更することにより、前記固定枠に対する前記レンズ枠の回転角度を変更する変更工程を備える
レンズ装置の製造方法。
【請求項23】
前記固定枠は、前記係合部が前記被係合部に係合する位置を識別する識別部を有し、
前記変更工程において、複数の前記識別部のうち、目標とする前記回転角度に対応する識別部を抽出する
請求項22に記載のレンズ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、レンズ装置及びレンズ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、1又は複数の光学素子を保持する保持枠と、保持枠が取り付けられる取付部を有する鏡筒部材と、鏡筒部材の光軸方向において保持枠と取付部との間に配置され、光学素子の光軸の向き及び光軸方向の位置の少なくとも一方を調整可能な調整部材と、を備えるレンズ鏡筒が開示されている。保持枠、鏡筒部材、及び調整部材の少なくとも一つは、物体側又は像側に向かって調整部材の一部を露出させる形状を有している。
【0003】
特許文献2には、レンズ部品を保持した複数のレンズ室と、レンズ室を収納するレンズ鏡筒とを有するレンズが開示されている。レンズ室どうしは外径が同じであり、レンズ鏡筒には、レンズ室の外周面を露出させる窓部が形成されている。窓部から露出したレンズ室の外周面に力を加えることにより、レンズ鏡筒の中心軸に対して平行に延在する位置決め部材にレンズ室が当接されている。
【0004】
特許文献3には、複数の光学部材を有する光学系が開示されている。光学系には、複数の光学部材をそれぞれ複数の支持点で支持する複数の保持部材が設けられ、複数の光学部材の複数の支持点の間での変形によって生じる光学系の残留収差を低減するように複数の保持部材の内の少なくとも1つの回転角が調整されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-048434号公報
【特許文献2】特開2016-004233号公報
【特許文献3】特開2000-066075号公報
【発明の概要】
【0006】
本開示の技術に係る一つの実施形態は、レンズに関する光学特性を効率的に変更することができるレンズ装置及びレンズ装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の技術に係る第1態様は、固定枠と、レンズを保持し、固定枠に固定されるレンズ枠と、を備え、固定枠は、光軸周りの方向に並ぶ複数の係合部を有し、レンズ枠は、複数の係合部に選択的に係合される被係合部を有するレンズ装置である。
【0008】
本開示の技術に係る第2態様は、第1態様に係るレンズ装置において、複数の係合部のうち被係合部と係合する係合部を変更することにより、固定枠に対するレンズ枠の回転角度が変更可能であるレンズ装置である。
【0009】
本開示の技術に係る第3態様は、第2態様に係るレンズ装置において、回転角度が変更されることにより、レンズに関する光学特性を変更可能であるレンズ装置である。
【0010】
本開示の技術に係る第4態様は、第3態様に係るレンズ装置において、光学特性は、レンズの非点収差に関する特性を含むレンズ装置である。
【0011】
本開示の技術に係る第5態様は、第1態様から第4態様の何れか一つの態様に係るレンズ装置において、レンズは、レンズ装置が有する複数のレンズのうちの物体側に配置されるレンズを含むレンズ装置である。
【0012】
本開示の技術に係る第6態様は、第1態様から第5態様の何れか一つの態様に係るレンズ装置において、複数の係合部は、光軸周りの方向に4等分以上16等分以下の間隔で並んでいるレンズ装置である。
【0013】
本開示の技術に係る第7態様は、第6態様に係るレンズ装置において、間隔は8等分であるレンズ装置である。
【0014】
本開示の技術に係る第8態様は、第1態様から第7態様の何れか一つの態様に係るレンズ装置において、被係合部の数は、複数の係合部の数よりも少ないレンズ装置である。
【0015】
本開示の技術に係る第9態様は、第1態様から第8態様の何れか一つの態様に係るレンズ装置において、被係合部の数は、1つであるレンズ装置である。
【0016】
本開示の技術に係る第10態様は、第1態様から第9態様の何れか一つの態様に係るレンズ装置において、固定枠は、被係合部が係合部に係合する位置を識別する識別部を有するレンズ装置である。
【0017】
本開示の技術に係る第11態様は、第10態様に係るレンズ装置において、複数の識別部は、光軸周りの方向に並ぶ記号を含むレンズ装置である。
【0018】
本開示の技術に係る第12態様は、第10態様又は第11態様に係るレンズ装置において、複数の識別部は、固定枠の側面部に設けられているレンズ装置である。
【0019】
本開示の技術に係る第13態様は、第1態様から第12態様の何れか一つの態様に係るレンズ装置において、固定枠は、レンズ枠が固定される固定部を有し、複数の係合部は、固定部に形成されているレンズ装置である。
【0020】
本開示の技術に係る第14態様は、第13態様に係るレンズ装置において、固定部は、固定枠の軸方向一方側の端部に設けられているレンズ装置である。
【0021】
本開示の技術に係る第15態様は、第1態様から第14態様の何れか一つの態様に係るレンズ装置において、各係合部は、凹部であり、被係合部は、凸部であるレンズ装置である。
【0022】
本開示の技術に係る第16態様は、第15態様に係るレンズ装置において、凹部は、固定枠の径方向内側に向けて開口する凹状に形成されているレンズ装置である。
【0023】
本開示の技術に係る第17態様は、第15態様又は第16態様に係るレンズ装置において、凸部は、レンズ枠の径方向外側に向けて突出する凸状に形成されているレンズ装置である。
【0024】
本開示の技術に係る第18態様は、第15態様から第17態様の何れか一つの態様に係るレンズ装置において、凹部は、固定枠の軸方向一方側に開放されているレンズ装置である。
【0025】
本開示の技術に係る第19態様は、第15態様から第18態様の何れか一つの態様に係るレンズ装置において、凸部は、レンズ枠の外周部に形成されているレンズ装置である。
【0026】
本開示の技術に係る第20態様は、第15態様から第19態様の何れか一つの態様に係るレンズ装置において、レンズ枠は、光軸方向に凸部と並ぶリブを有するレンズ装置である。
【0027】
本開示の技術に係る第21態様は、第1態様から第20態様の何れか一つの態様に係るレンズ装置において、固定枠は、接続部を有し、レンズ枠は、接続部に接続される被接続部を有するレンズ装置である。
【0028】
本開示の技術に係る第22態様は、第1態様から第20態様の何れか一つの態様に係るレンズ装置の製造方法であって、複数の係合部のうち被係合部と係合する係合部を変更することにより、固定枠に対するレンズ枠の回転角度を変更する変更工程を備えるレンズ装置の製造方法である。
【0029】
本開示の技術に係る第23態様は、第22態様に係るレンズ装置において、固定枠は、係合部が被係合部に係合する位置を識別する識別部を有し、変更工程において、複数の識別部のうち、目標とする回転角度に対応する識別部を抽出するレンズ装置の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本開示の一実施形態に係るレンズ装置を備える撮像装置の斜視図である。
【
図2】レンズ装置の一部の構成を組立状態にて示す斜視図である。
【
図3】レンズ装置の一部の構成を分解状態にて示す斜視図である。
【
図4】レンズ装置に設けられた固定枠を物体側から見た正面図である。
【
図5】レンズ装置に設けられたレンズ枠を物体側から見た正面図である。
【
図8】レンズ枠のうちの凸部の周辺部の要部拡大斜視図である。
【
図9】レンズ装置の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【
図10】レンズ装置の製造装置を示すブロック図である。
【
図11】製造装置に適用されるコンピュータのハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
はじめに、本開示の一実施形態に係る撮像装置10の構成について説明する。
【0032】
図1は、本実施形態に係る撮像装置10の斜視図である。
図1に示すように、撮像装置10は、レンズ装置12と、撮像装置ボディ14とを備える。レンズ装置12は、撮像装置ボディ14の前部に設けられている。
図1では、レンズ装置12及び撮像装置ボディ14が模式的に示されている。撮像装置ボディ14には、イメージセンサ(図示省略)及びコンピュータ(図示省略)等が内蔵されている。レンズ装置12に関して、矢印A側は、物体側を示しており、矢印B側は、結像側を示している。光軸OAは、レンズ装置12の光軸である。以下、光軸OAの軸方向を「光軸方向」と称する。また、光軸OAを中心とする光軸OAの周りの方向を「光軸周りの方向」と称する。
【0033】
図2は、レンズ装置12の一部の構成を組立状態にて示す斜視図である。
図3は、レンズ装置12の一部の構成を分解状態にて示す斜視図である。
図2及び
図3に示すように、レンズ装置12は、鏡胴16と、固定枠18と、レンズ枠20と、レンズ22とを備える。
【0034】
鏡胴16及び固定枠18は、円筒状に形成されている。ここで言う円筒状とは、内周部及び/又は外周部に凹凸及び/又は開口等を含む円筒形状のことを指す。鏡胴16は、固定枠18の径方向外側に設けられている。レンズ枠20は、円環状に形成されている。ここで言う円環状とは、内周部及び/又は外周部に凹凸及び/又は開口等を含む円環形状のことを指す。レンズ枠20の径方向内側には、レンズ22が設けられている。レンズ22は、レンズ枠20によって保持されている。
【0035】
レンズ22は、一例として、対物レンズである。レンズ装置12は、レンズ22以外に他のレンズ(図示省略)を備えている。以下、レンズ22及び他のレンズを複数のレンズと称する。複数のレンズは、光軸方向に並んで配置されている。レンズ22は、複数のレンズのうち物体側に配置された第1群のレンズのいずれかでもよい。
【0036】
図4は、固定枠18を物体側から見た正面図である。
図5は、レンズ枠20を物体側から見た正面図である。
図4及び
図5に示すように、固定枠18は、レンズ枠20を固定するための固定部24を有する(
図3も参照)。固定部24は、固定枠18の物体側の端部に設けられている。固定枠18の物体側の端部は、本開示の技術における「固定枠の軸方向一方側の端部」の一例である。固定部24は、固定枠18の外周部に沿って環状に形成されている。
【0037】
固定枠18は、複数のネジ穴26を有する。複数のネジ穴26は、固定部24に形成されている。複数のネジ穴26は、光軸周りの方向に並んでいる。一例として、複数のネジ穴26は、光軸周りの方向に等間隔に並んでいる。複数のネジ穴26の数は、一例として、4つである。各ネジ穴26は、光軸方向に沿って形成されており、固定枠18の物体側に向けて開口している。ネジ穴26は、本開示の技術における「接続部」の一例である。
【0038】
レンズ枠20は、複数のフランジ28を有する。複数のフランジ28は、レンズ枠20の外周部20Aに形成されている。複数のフランジ28は、光軸周りの方向に並んでいる。一例として、複数のフランジ28は、光軸周りの方向に等間隔に並んでいる。複数のフランジ28の数は、一例として、8つである。各フランジ28は、レンズ枠20の外周部20Aからレンズ枠20の径方向外側に向けて延出している。各フランジ28には、光軸方向に貫通する貫通穴30が形成されている。フランジ28は、本開示の技術における「被接続部」の一例である。
【0039】
レンズ枠20は、後述するように、固定枠18に対する回転角度を45度ずつ変更することができるようになっている。そして、レンズ枠20は、レンズ22に関する光学特性に応じて定められた回転角度で固定枠18に固定される。固定枠18へのレンズ枠20の固定には、フランジ28、ネジ穴26、及びネジ32が用いられる。すなわち、各フランジ28の貫通穴30にネジ32の軸部が挿入され、各ネジ32の軸部がネジ穴26に螺入されることにより、レンズ枠20が固定枠18に固定される。
【0040】
固定枠18は、複数の凹部34を有する。複数の凹部34は、本開示の技術における「複数の係合部」の一例である。複数の凹部34は、固定部24に形成されている。複数の凹部34は、光軸周りの方向に並んでいる。一例として、複数の凹部34は、光軸周りの方向に等間隔に並んでいる。複数の凹部34の数は、一例として、8つである。各凹部34は、固定枠18の径方向内側に向けて開口する凹状に形成されている。また、各凹部34は、固定枠18の物体側に向けて開放されている。固定枠18の物体側は、本開示の技術における「固定枠の軸方向一方側」の一例である。
【0041】
以下、8つの凹部34を区別して説明する必要がある場合には、8つの凹部34を、「凹部34A」、「凹部34B」、「凹部34C」、「凹部34D」、「凹部34E」、「凹部34F」、「凹部34G」、及び「凹部34H」と称する。
【0042】
レンズ枠20は、凸部36を有する。凸部36は、本開示の技術における「被係合部」の一例である。レンズ枠20に形成された凸部36の数は、1つである。凸部36は、レンズ枠20の外周部20Aに形成されている。凸部36は、外周部20Aからレンズ枠20の径方向外側に向けて突出する凸状に形成されている。
【0043】
凸部36は、固定枠18に対するレンズ枠20の回転角度に応じて、複数の凹部34に選択的に係合される。換言すれば、複数の凹部34のうち凸部36と係合する凹部34を変更することにより、固定枠18に対するレンズ枠20の回転角度が変更可能である。
【0044】
すなわち、凸部36が凹部34Aに係合された場合には、レンズ枠20の回転角度は「0°」に設定され、凸部36が凹部34Bに係合された場合には、レンズ枠20の回転角度は「45°」に設定され、凸部36が凹部34Cに係合された場合には、レンズ枠20の回転角度は「90°」に設定され、凸部36が凹部34Dに係合された場合には、レンズ枠20の回転角度は「135°」に設定される。
【0045】
また、凸部36が凹部34Eに係合された場合には、レンズ枠20の回転角度は「180°」に設定され、凸部36が凹部34Fに係合された場合には、レンズ枠20の回転角度は「225°」に設定され、凸部36が凹部34Gに係合された場合には、レンズ枠20の回転角度は「270°」に設定され、凸部36が凹部34Hに係合された場合には、レンズ枠20の回転角度は「315°」に設定される。
【0046】
レンズ枠20の回転角度が変更されることにより、レンズ22に関する光学特性を変更可能である。ここで言う光学特性には、例えば、レンズ22の非点収差に関する特性が含まれる。非点収差(astigmatism)とは、光軸外の1点を光源とする光が、レンズ22に対して同心円方向と直径方向とで焦点距離がずれる収差をいう。レンズ22の非点収差に関する特性としては、レンズ22の非点収差に起因する結像性能が挙げられる。本実施形態では、一例として、レンズ22の非点収差に起因する結像性能の低下を抑制することを目的とする。
【0047】
詳しい説明を割愛するが、ゼルニケの多項式によれば、レンズ22の非点収差は、レンズ22の周方向に45°ピッチで表現される。したがって、レンズ枠20の回転角度を45°ずつ変更することにより、レンズ22の非点収差に起因する結像性能の低下を抑制することができる。また、レンズ枠20の回転角度を45°ずつ変更することができるので、例えば、レンズ枠20の回転角度を連続的に任意に変更できる構成(すなわち、回転角度を無段階に変更できる構成)に比して、結像性能の低下を効率よく抑制することができる。
【0048】
なお、凸部36を複数の凹部34に選択的に係合させることにより、レンズ枠20の回転角度をいずれの角度に変更した場合でも、各フランジ28が複数のネジ穴26のいずれかと対応する位置に配置される。したがって、各ネジ32の軸部を貫通穴30に貫通し、かつ各ネジ32の軸部をネジ穴26に螺入することにより、レンズ枠20の回転角度を維持した状態で、レンズ枠20を固定枠18に固定することができる。
【0049】
図6は、固定枠18の斜視図である。
図7は、固定枠18の五面図である。
図6及び
図7に示すように、固定枠18は、複数の識別部38を有する。各識別部38は、凸部36が凹部34に係合する位置を識別するためのものであり、各凹部34に対応する位置に設けられている。複数の識別部38の数は、複数の凹部34の数と対応している。複数の識別部38は、一例として、複数の番号である。複数の番号は、一例として、1~8である。
【0050】
一例として、番号1は、凹部34Aに対応しており、番号2は、凹部34Bに対応しており、番号3は、凹部34Cに対応しており、番号4は、凹部34Dに対応しており、番号5は、凹部34Eに対応しており、番号6は、凹部34Fに対応しており、番号7は、凹部34Gに対応しており、番号8は、凹部34Hに対応している。番号1~8は、本開示の技術における「記号」の一例である。
【0051】
複数の識別部38は、固定枠18の側面部18A(すなわち、外周部)に設けられている。複数の識別部38は、固定枠18の径方向外側から視認可能となっている。番号1~8は、光軸周りの方向に昇順に並んでいる。なお、番号1~8の代わりに、凸部36が凹部34に係合する位置を識別する記号(すなわち、番号以外の記号)でもよい。記号としては、アルファベットA~Hでもよい。
【0052】
複数の識別部38により、レンズ枠20の回転角度に対応する凹部34に凸部36を係合させることができる。例えば、レンズ枠20の回転角度を「0°」に設定する必要がある場合には、番号1に対応する凹部34Aに凸部36を係合させればよい。また、レンズ枠20の回転角度を「45°」に設定する必要がある場合には、番号2に対応する凹部34Bに凸部36を係合させればよい。また、レンズ枠20の回転角度を「90°」に設定する必要がある場合には、番号3に対応する凹部34Cに凸部36を係合させればよい。また、レンズ枠20の回転角度を「135°」に設定する必要がある場合には、番号4に対応する凹部34Dに凸部36を係合させればよい。
【0053】
また、レンズ枠20の回転角度を「180°」に設定する必要がある場合には、番号5に対応する凹部34Eに凸部36を係合させればよい。また、レンズ枠20の回転角度を「225°」に設定する必要がある場合には、番号6に対応する凹部34Fに凸部36を係合させればよい。また、レンズ枠20の回転角度を「270°」に設定する必要がある場合には、番号7に対応する凹部34Gに凸部36を係合させればよい。また、レンズ枠20の回転角度を「315°」に設定する必要がある場合には、番号8に対応する凹部34Hに凸部36を係合させればよい。
【0054】
したがって、例えば、レンズ枠20の回転角度を変更する作業を作業員に行わせる場合には、レンズ枠20の回転角度を作業員に具体的に指示するよりは、レンズ枠20の回転角度に対応する番号1~8のいずれかを作業員に指示した方が、作業員にとってはミスが少なくなり作業効率も向上する。
【0055】
また、複数の識別部38は、固定枠18の側面部18Aに設けられている。ここで、例えば、数の識別部38が固定部24の物体側の端面に設けられている場合には、レンズ枠20を固定部24に固定する場合に、レンズ枠20によって複数の識別部38が隠れてしまう虞がある。この点、複数の識別部38が固定枠18の側面部18Aに設けられていると、レンズ枠20によって複数の識別部38が隠れてしまうことを回避することができるので、作業性を確保することができる。
【0056】
なお、固定枠18の径方向外側には、鏡胴16が設けられるが、レンズ枠20の回転角度が変更された後に、固定枠18に鏡胴16が組み付けられてもよい。一方、レンズ枠20の回転角度が変更される前に、固定枠18に鏡胴16が組み付けられる場合には、レンズ枠20の回転角度を変更するときに、複数の識別部38が見えるように、鏡胴16の位置をずらしてもよい。
【0057】
図8は、レンズ枠20のうちの凸部36の周辺部の要部拡大斜視図である。レンズ枠20は、複数のリブ40を有する。複数のリブ40は、レンズ枠20の外周部20Aに形成されている。複数のリブ40は、光軸周りの方向に並んでいる。複数のリブ40は、凸部36に対する結像側に形成されている。複数のリブ40のうち一のリブ40Aは、凸部36と対応する位置に形成されており、光軸方向に凸部36と連なっていてもよい。
【0058】
リブ40Aが光軸方向に凸部36と並んでいると、凸部36をリブ40Aによって補強することができる。また、金型を用いてレンズ枠20を成形する場合には、リブ40A及び凸部36を金型から一方向に引き抜くことができるので、リブ40A及び凸部36が光軸周りの方向にずれている場合に比して、レンズ枠20の成形性を向上させることができる。
【0059】
次に、本実施形態に係るレンズ装置12の製造方法について説明する。
【0060】
図9は、本実施形態に係るレンズ装置12の製造方法の流れを示すフローチャートである。
図9に示すように、本実施形態に係るレンズ装置12の製造方法は、組立工程と、調整工程と、合否判定工程と、回数判定工程と、変更工程とを備える。
【0061】
組立工程ST10では、鏡胴16、固定枠18、レンズ枠20、及び複数のレンズを含む複数の部品によって、レンズ装置12の組立を行う。
【0062】
調整工程ST12は、組立工程の後に実行される。調整工程ST12では、レンズ22を含む複数のレンズのうちの少なくとも何れかの位置を、光軸と交差する方向及び/又は光軸方向に調整する。
【0063】
合否判定工程ST14は、調整工程ST12の後に実行される。合否判定工程ST14では、レンズ装置12に光を入射し、レンズ装置12を透過した光を結像させる。そして、光が結像された像面に関する合否の判定を行う。像面に関する合否の判定では、像の態様に基づいて、例えばパターンマッチング等により、合格、レンズ22の非点収差以外が要因である不合格、及びレンズ22の非点収差が要因である不合格の何れかであるかを判定する。
【0064】
合否判定工程ST14において、合格であると判定された場合には、レンズ装置12の製造方法は終了する。一方、合否判定工程ST14において、レンズ22の非点収差以外が要因である不合格と判定された場合には、調整工程ST12を再度実行する。また、合否判定工程ST14において、レンズ22の非点収差が要因である不合格と判定された場合には、回数判定工程ST16に移行する。
【0065】
回数判定工程ST16では、合否判定工程ST14においてレンズ22の非点収差が要因である不合格と判定された回数が、1回目であるか又は2回目であるかを判定する。
【0066】
変更工程ST18は、回数判定工程ST16の後に実行される。1回目の不合格である場合、変更工程ST18では、第1回転工程ST18Aに移行する。そして、第1回転工程ST18Aでは、レンズ枠20を現在の位置から90°回転させる。例えば、レンズ枠20の現在の回転角度が「0°」である場合には、回転角度が「90°」になるように、凸部36が凹部34Cに係合される。非点収差は180°の周期の関数であり、かつレンズ枠20の回転角度ピッチが45°に設定されていることから、第1回転工程ST18Aでは、レンズ枠20を回転させる角度を、現在の位置に対して最も結像性能の改善効果が得られる90°に設定している。
【0067】
一方、2回目の不合格である場合、変更工程ST18では、導出ステップST18Bに移行し、固定枠18の収差角とレンズ枠20の収差角とが直交する場合の回転角度(以下、「目標回転角度」と称する)を導出する。固定枠18の収差角とは、固定枠18に起因する非点収差の方向軸の角度を指す。また、レンズ枠20の収差角とは、レンズ枠20に起因する非点収差の方向軸の角度を指す。詳しい説明を割愛するが、固定枠18の収差角及びレンズ枠20の収差角は、検査装置を用いることにより特定される。
【0068】
目標回転角度は、合否判定工程において得られた像の態様に基づいて、例えばパターンマッチング等によって導出されてもよいし、計算式等によって導出されてもよい。そして、第2回転工程ST18Cに移行し、目標回転角度に基づいて、レンズ枠20の回転角度を変更する。例えば、レンズ枠20の現在の回転角度が「90°」であり、目標回転角度が「135°」である場合には、回転角度が「135°」になるように、凸部36が凹部34Dに係合される。
【0069】
なお、変更工程では、各ネジ32をネジ穴26から取り外した状態でレンズ枠20の回転角度を変更する。また、レンズ枠20の回転角度を変更した後に各フランジ28の貫通穴30にネジ32の軸部を挿入し、各ネジ32の軸部をネジ穴26に螺入することにより、レンズ枠20を固定枠18に固定する。
【0070】
変更工程の後には、合否判定工程に再度移行する。変更工程を調整工程の後に実行することにより、レンズ枠20の回転角度を変更した後の合否判定工程では、複数のレンズの位置による影響を排除した状態(すなわち、複数のレンズを規定の位置に設定した状態)で、合否の判定を行うことができる。
【0071】
なお、通常、2回目の不合格に対して目標回転角度が導出され、目標回転角度に基づいてレンズ枠20の回転角度が変更される場合には、3回目の合否判定工程において合格と判定されるが、3回目の合否判定工程において再度不合格と判定された場合には、異常と報知してもよい。
【0072】
また、例えば、同一のロットで製造されるレンズ装置12について、合否判定工程において合格の判定となるレンズ枠20の回転角度に一定の傾向が得られる場合には、組立工程において、一定の傾向が見られる回転角度でレンズ枠20を固定枠18に組み付けてもよい。例えば、回転角度が「45°」である場合に合否判定工程において合格の判定となる傾向が見られる場合には、組立工程において、回転角度を「45°」に設定してもよい。このようにすると、回転角度の傾向に関係なくデフォルトの回転角度を採用する場合に比して、合否判定工程において不合格と判定される回数を減らすことができる。
【0073】
図10は、レンズ装置12を製造する製造装置50を示すブロック図である。製造装置50は、上述のレンズ装置12の製造方法を実現する装置であり、組立装置52と、調整装置54と、合否判定装置56と、回数判定装置58と、変更装置60とを備える。
【0074】
組立装置52は、組立工程を実行する装置である。組立装置52は、レンズ装置12の組立を行う装置として、治具、搬送装置、又は組立用ロボット等を備えていてもよい。組立装置52が組立作業を全て行ってもよいし、組立装置52と作業員とが協同して組立作業を行ってもよい。
【0075】
調整装置54は、調整工程を実行する装置である。調整装置54は、レンズ22を含む複数のレンズの位置を、光軸と交差する方向及び/又は光軸方向に調整する装置として、治具、搬送装置、又は調整用ロボット等を備えていてもよい。調整装置54が調整作業を全て行ってもよいし、調整装置54と作業員とが協同して調整作業を行ってもよい。
【0076】
合否判定装置56は、合否判定工程を実行する装置である。合否判定装置56は、レンズ装置12を透過した光が結像された像面に関する合否の判定を行う装置として、レンズ装置12に光を入射する光源と、光が結像された像面を撮像するカメラと、カメラから出力された画像に基づいて合否の判定を行うコンピュータとを備えていてもよい。合否判定装置56が判定作業を全て行ってもよいし、合否判定装置56と作業員とが協同して判定作業を行ってもよい。例えば、カメラから出力された画像をディスプレイに表示し、作業員がディスプレイに表示された画像に基づいて合否の判定を行ってもよい。
【0077】
回数判定装置58は、回数判定工程を実行する装置である。回数判定装置58は、合否判定工程において不合格と判定された回数を判定する装置として、コンピュータを備えていてもよい。回数判定装置58の機能は、合否判定装置56のコンピュータに組み込まれてもよい。また、回数判定装置58は、ディスプレイを備えていてもよい。そして、不合格と判定された回数をディスプレイに表示し、作業員がディスプレイに表示された回数に基づいて判定を行ってもよい。
【0078】
変更装置60は、レンズ枠20の回転角度を変更する装置である。変更装置60は、レンズ枠20の回転角度を変更する装置として、治具、搬送装置、又は変更用ロボット等を備えていてもよい。変更装置60が変更作業を全て行ってもよいし、変更装置60と作業員とが協同して変更作業を行ってもよい。
【0079】
また、変更装置60は、2回目の不合格に対して目標回転角度を導出する装置として、コンピュータを備えていてもよい。コンピュータは、導出した目標回転角度に対応する指令を変更用ロボットに対して出力し、変更用ロボットは、入力した指令に基づいて、目標回転角度になるようにレンズ枠20の回転角度を変更してもよい。
【0080】
また、変更装置60は、ディスプレイを備えていてもよい。そして、変更装置60は、導出した目標回転角度をディスプレイに表示し、作業員がディスプレイに表示された目標回転角度に基づいて変更作業を行ってもよい。
【0081】
また、変更装置60は、固定枠18に設けられた複数の識別部38のうち目標回転角度に対応する識別部38の番号をテーブル等に基づいて抽出し、抽出した番号をディスプレイに表示してもよい。そして、作業員がディスプレイに表示された番号に基づいて変更作業を行ってもよい。つまり、番号に対応する凹部34に凸部36を係合するように変更作業を行ってもよい。このようにすると、作業員が、目標回転角度を把握していなくても、番号に基づいて変更作業を行えばよいので、目標回転角度に基づいて変更作業を行う場合に比して、作業効率を向上させることができる。
【0082】
図11は、コンピュータのハードウェア構成を示す図である。上記各コンピュータには、
図11に示すコンピュータ70が適用されてもよい。コンピュータ70は、CPU(Central Processing Unit)72と、ROM(Read Only Memory)74と、RAM(Random Access Memory)76と、ストレージ78と、入出力I/F(Interface)80と、受付装置82と、ディスプレイ84と、スピーカ86と、バス88とを有する。CPU72と、ROM74と、RAM76と、ストレージ78と、入出力I/F80とは、バス88を介して相互に通信可能に接続されている。
【0083】
入出力I/F80には、受付装置82、ディスプレイ84、及びスピーカ86等が接続されている。受付装置82は、マウス及びキーボード等を有する。
【0084】
CPU72は、各種のプログラムを実行する。具体的には、CPU72は、ROM74又はストレージ78に格納されている種々のプログラムを読み出し、RAM76を作業領域としてプログラムを実行する。そして、CPU72は、プログラムに従って各種の演算処理を行う。
【0085】
ROM74は、各種のプログラム及び各種のデータを格納する。RAM76は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ78は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)又はフラッシュメモリといった記録媒体で構成される。ストレージ78には、オペレーティングシステムを含む各種のプログラムと、演算処理のための各種のデータとが格納されている。
【0086】
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0087】
以上詳述した通り、本実施形態に係るレンズ装置12では、固定枠18は、光軸周りの方向に並ぶ複数の凹部34を有し、レンズ枠20は、複数の凹部34に選択的に係合される凸部36を有する。したがって、複数の凹部34のうち凸部36と係合する凹部34を変更することにより、固定枠18に対するレンズ枠20の回転角度を変更することができる。これにより、レンズ22に関する光学特性を変更することができる。
【0088】
また、例えば、レンズ22に関する光学特性には、レンズ22の非点収差に関する特性が含まれる。レンズ22の非点収差に関する特性としては、レンズ22の非点収差に起因する結像性能が挙げられる。したがって、固定枠18に対するレンズ枠20の回転角度を変更することにより、レンズ22の非点収差に起因する結像性能の低下を抑制することができる。
【0089】
また、複数の凹部34は、光軸周りの方向に8等分間隔で並んでいる。これにより、レンズ枠20の回転角度を45°ずつ変更することができる。ここで、ゼルニケの多項式によれば、レンズ22の非点収差は、レンズ22の周方向に45°ピッチで表現される。したがって、レンズ枠20の回転角度を45°ずつ変更することにより、回転角度を変更しない場合に比して、レンズ22の非点収差に起因する結像性能の低下を抑制することができる。
【0090】
また、45°ピッチで表現されるレンズ22の非点収差に対応して、レンズ枠20の回転角度を45°ずつ変更することができる。これにより、例えば、レンズ枠20の回転角度を連続的に変更できる構成に比して、結像性能の低下を効率よく抑制することができる。
【0091】
また、凸部36の数は、1つである。ここで、例えば、レンズ枠20に複数の凸部36が形成され、かつ複数の凸部36の数が凹部34の数と同じである場合、各凸部36を各凹部34に係合させるためには、複数の凸部36の間隔の精度が要求される。この点、凸部36の数が1つである場合には、レンズ枠20に複数の凸部36が形成されている場合に比して、複数の凸部36の間隔の精度が要求されないので、凸部36を凹部34に容易に係合することができる。
【0092】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0093】
上記実施形態では、固定枠18が複数の凹部34を有し、レンズ枠20が一つの凸部36を有するが、固定枠18が複数の凸部36を有し、レンズ枠20が一つの凹部34を有していてもよい。この場合には、複数の凸部36が本開示の技術における「複数の係合部」の一例であり、一つの凹部34が本開示の技術における「被係合部」の一例である。
【0094】
また、上記実施形態では、レンズ枠20が一つの凸部36を有するが、凸部36の数は、複数の凹部34の約数であれば、いくつでもよい。この場合に、凸部36の数は、複数の凹部34の数よりも少なくてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、複数の凹部34は、光軸周りの方向に8等分間隔で並んでいるが、8等分間隔以外の間隔(例えば、4等分以上16等分以下の間隔)で並んでいてもよい。例えば、複数の係合部は、光軸周りの方向に16等分間隔で並んでいてもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、複数のフランジ28の数が複数のネジ穴26の数よりも少ないが、複数のフランジ28の数が複数のネジ穴26の数と同一でもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、固定枠18がネジ穴26を有し、レンズ枠20がフランジ28を有するが、固定枠18がフランジ28を有し、レンズ枠20がネジ穴26を有していてもよい。この場合、フランジ28は、本開示の技術における「接続部」の一例であり、ネジ穴26は、本開示の技術における「被接続部」の一例である。
【0098】
また、上記実施形態では、レンズ枠20の回転角度を変更することにより、レンズ22に関する光学特性の一例として、レンズ22の非点収差に関する特性を変更可能であるが、レンズ22に関するその他の光学特性が変更可能であってもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、レンズ22の非点収差に関する特性の一例として、レンズ22の非点収差に起因する結像性能の低下を抑制可能であるが、レンズ22の非点収差に関するその他の特性の低下を抑制したり、その他の特性を向上させたりしてもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、固定枠18には、各凹部34に対応する識別部38として番号が設けられているが、番号以外の識別子が設けられていてもよい。また、固定枠18には、番号の代わりに、各凹部34に対応する回転角度が表記されていてもよい。このような複数の番号の代わりである識別子又は回転角度は、本開示の技術における「識別部」の一例である。
【0101】
また、本実施形態に係るレンズ装置12の製造方法では、レンズ枠20の回転角度を変更する変更工程の前に、複数のレンズの位置を調整する調整工程が実行されるが、調整工程は、変更工程の後に実行されてもよい。
【0102】
また、以上の変形例のうち組み合わせ可能な変形例は、適宜、組み合わされてもよい。
【0103】
なお、コンピュータ70に適用されるハードウェア資源としては、次に示す各種のプロセッサを用いることができる。プロセッサとしては、例えば、ソフトウェア、すなわち、プログラムを実行することで、ハードウェア資源として機能する汎用的なプロセッサであるCPUが挙げられる。また、プロセッサとしては、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、PLD(Programmable Logic Device)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路が挙げられる。何れのプロセッサにもメモリが内蔵又は接続されており、何れのプロセッサもメモリを使用することで各処理を実行する。
【0104】
ハードウェア資源は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ、又はCPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、各処理を実行するハードウェア資源は1つのプロセッサであってもよい。
【0105】
1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが、各処理を実行するハードウェア資源として機能する形態がある。第2に、SoC(System-on-a-Chip)などに代表されるように、各処理を実行する複数のハードウェア資源を含むシステム全体の機能を1つのICチップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各処理は、ハードウェア資源として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて実現される。
【0106】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路を用いることができる。また、上記の各処理はあくまでも一例である。従って、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【0107】
以上に示した記載内容及び図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、及び効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、及び効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容及び図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことは言うまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容及び図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0108】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0109】
10 撮像装置
12 レンズ装置
14 撮像装置ボディ
16 鏡胴
18 固定枠
18A 側面部
20 レンズ枠
20A 外周部
22 レンズ
24 固定部
26 ネジ穴
28 フランジ
30 貫通穴
32 ネジ
34 凹部
36 凸部
38 識別部
40 リブ
50 製造装置
52 組立装置
54 調整装置
56 合否判定装置
58 回数判定装置
60 変更装置
70 コンピュータ
72 CPU
74 ROM
76 RAM
78 ストレージ
80 入出力I/F
82 受付装置
84 ディスプレイ
86 スピーカ
88 バス