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特開2025-153322不溶性担体を含む免疫学的測定試薬の製造方法、保存方法、測定対象物質の測定方法、および免疫学的測定試薬
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025153322
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】不溶性担体を含む免疫学的測定試薬の製造方法、保存方法、測定対象物質の測定方法、および免疫学的測定試薬
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20251002BHJP
【FI】
G01N33/543 581G
G01N33/543 581W
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024055753
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】花井 一馬
(72)【発明者】
【氏名】大窪 喜丸
(57)【要約】
【課題】不溶性担体を含む免疫学的測定試薬を保存する間に感度が変化することを抑制できるような、不溶性担体を含む免疫学的測定試薬の製造方法;不溶性担体を含む免疫学的測定試薬の保存安定性を向上するための保存方法;保存安定性が向上した、不溶性担体を含む免疫学的測定試薬;および上記免疫学的測定試薬を用いた測定対象物質の測定方法を提供すること。
【解決手段】測定対象物質に対する抗原または抗体を担持させた不溶性担体を、11℃~60℃で保存する工程1、および上記工程1の後に上記不溶性担体を2℃~10℃で保存する工程2を含む、不溶性担体を含む免疫学的測定試薬の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物質に対する抗原または抗体を担持させた不溶性担体を、11℃~60℃で保存する工程1、および
前記工程1の後に上記不溶性担体を2℃~10℃で保存する工程2を含む、
不溶性担体を含む免疫学的測定試薬の製造方法。
【請求項2】
工程1における温度が20~45℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
不溶性担体がラテックス粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
免疫学的測定試薬がラテックス比濁法において用いられる試薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
測定対象物質に対する抗原または抗体を担持させた不溶性担体を、11℃~60℃で保存する工程1、および
前記工程1の後に上記不溶性担体を2℃~10℃で保存する工程2を含む、
不溶性担体を含む免疫学的測定試薬の保存安定性を向上するための保存方法。
【請求項6】
工程1における温度が20~45℃である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
不溶性担体がラテックス粒子である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
免疫学的測定試薬がラテックス比濁法において用いられる試薬である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から4の何れか一項に記載の方法により不溶性担体を含む免疫学的測定試薬を製造すること;および
製造された免疫学的測定試薬と、測定対象物質とを接触させること
を含む、測定対象物質の測定方法。
【請求項10】
請求項1から4の何れか一項に記載の方法により製造される、不溶性担体を含む免疫学的測定試薬。
【請求項11】
請求項10に記載の免疫学的測定試薬と、測定対象物質とを接触させることを含む、測定対象物質の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不溶性担体を含む免疫学的測定試薬の製造方法、および不溶性担体を含む免疫学的測定試薬の保存安定性を向上するための保存方法に関する。本発明はさらに、測定対象物質の測定方法、および免疫学的測定試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
不溶性担体を用いた免疫学的測定試薬は、抗原抗体反応を利用した生体試料中の微量成分の測定方法として汎用されている。不溶性担体を用いた免疫学的測定試薬において、その性能の安定性を維持することは試薬の製造において重要である。免疫学的測定試薬の保存安定性を高める試みは従来から検討されており、免疫学的測定試薬の保存安定性を評価および判断する方法が報告されている。特許文献1には、被測定対象物質に対する抗体または抗原を不溶性担体に担持してなる免疫学的測定試薬の保存安定性評価方法であって、免疫学的測定試薬を30~45℃において3~5日間保存し、保存前および保存後に測定した吸光度の変化量により保存安定性を評価する方法が記載されている。特許文献2には、測定対象物質に対する特異的結合物質を固定化した担体を含む測定対象物質の測定試薬において陽イオンおよび陰イオンが各々100mM 以上存在することを特徴とする測定対象物質の測定試薬が記載されており、30℃で50日間保存する前後での吸光度の差が評価されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-108679号公報
【特許文献2】特開2006-227027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
体外診断薬として用いられる免疫反応試薬または生化学試薬を自動分析装置において測定する場合、測定毎に検量線を作成して測定値を演算することは試薬の使用量および測定作業の観点から非効率的であり、現実的には一度作成した検量線を数日間にわたって使用して測定値の算出が行われている。従って、これらの試薬の感度はその期間において変動しないことが望ましい。しかしながら、抗体または抗原を不溶性担体に結合することによって作製した免疫学的測定試薬は、結合に伴う抗体または抗原の構造変化、および溶媒中に含まれる物質の影響により、試薬感度が経時的に変化する場合がある。
【0005】
本発明は、不溶性担体を含む免疫学的測定試薬を保存する間に感度が変化することを抑制できるような、不溶性担体を含む免疫学的測定試薬の製造方法を提供することを解決すべき課題とする。さらに本発明は、不溶性担体を含む免疫学的測定試薬の保存安定性を向上するための保存方法を提供することを解決すべき課題とする。さらに本発明は、保存安定性が向上した、不溶性担体を含む免疫学的測定試薬、および上記免疫学的測定試薬を用いた測定対象物質の測定方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解するために鋭意検討した結果、不溶性担体を含む免疫学的測定試薬を所定の温度以上の温度条件に一定期間曝露することによって、経時的な試薬感度の変化率を縮小できることを見出した。本発明は上記知見に基づいて完成したものである。
【0007】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
<1> 測定対象物質に対する抗原または抗体を担持させた不溶性担体を、11℃~60℃で保存する工程1、および
上記工程1の後に上記不溶性担体を2℃~10℃で保存する工程2を含む、
不溶性担体を含む免疫学的測定試薬の製造方法。
<2> 工程1における温度が20~45℃である、<1>に記載の方法。
<3> 不溶性担体がラテックス粒子である、<1>または<2>に記載の方法。
<4> 免疫学的測定試薬がラテックス比濁法において用いられる試薬である、<1>から<3>の何れか一に記載の方法。
<5> 測定対象物質に対する抗原または抗体を担持させた不溶性担体を、11℃~60℃で保存する工程1、および
上記工程1の後に上記不溶性担体を2℃~10℃で保存する工程2を含む、
不溶性担体を含む免疫学的測定試薬の保存安定性を向上するための保存方法。
<6> 工程1における温度が20~45℃である、<5>に記載の方法。
<7> 不溶性担体がラテックス粒子である、<5>または<6>に記載の方法。
<8> 免疫学的測定試薬がラテックス比濁法において用いられる試薬である、<5>から<7>の何れか一に記載の方法。
<9> <1>から<4>の何れか一に記載の方法により不溶性担体を含む免疫学的測定試薬を製造すること;および
製造された免疫学的測定試薬と、測定対象物質とを接触させること
を含む、測定対象物質の測定方法。
<10> <1>から<4>の何れか一に記載の方法により製造される、不溶性担体を含む免疫学的測定試薬。
<11> <10>に記載の免疫学的測定試薬と、測定対象物質とを接触させることを含む、測定対象物質の測定方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、免疫学的測定試薬の保存安定性を向上することができ、免疫学的測定試薬を保存する間に感度が変化することを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書において「~」は、その前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。
【0010】
<不溶性担体を含む免疫学的測定試薬の製造方法、および不溶性担体を含む免疫学的測定試薬の保存安定性を向上するための保存方法>
本発明による不溶性担体を含む免疫学的測定試薬の製造方法は、測定対象物質に対する抗原または抗体を担持させた不溶性担体を、11℃~60℃で保存する工程1、および上記工程1の後に上記不溶性担体を2℃~10℃で保存する工程2を含む。
【0011】
本発明による不溶性担体を含む免疫学的測定試薬の保存安定性を向上するための保存方法は、測定対象物質に対する抗原または抗体を担持させた不溶性担体を、11℃~60℃で保存する工程1、および上記工程1の後に上記不溶性担体を2℃~10℃で保存する工程2を含む。
【0012】
工程1は、測定対象物質に対する抗原または抗体を担持させた不溶性担体を、11℃~60℃で保存する工程である。免疫学的測定試薬の保存安定性を向上させる目的のために11℃~60℃で保存する処理を行うことについては従来報告されておらず、本発明の効果は予想外のものである。特に、特許文献1においては、免疫学的測定試薬は高温処理により劣化することが示されているので、11℃~60℃で保存する処理を行うことにより保存安定性が向上することは予想外な効果である。
【0013】
本発明において、測定対象物質は特に限定されず、例えば生物学的および臨床的重要性を有する薬剤、代謝物質、ビタミン、殺虫剤、ステロイド、ペプチド、ホルモン、肝炎マーカー、癌マーカー、抗体および血清タンパク等、通常補体免疫測定法で測定可能と考えられる測定対象物質は全て挙げることができる。具体例として、内分泌機能関連物質としては、例えば甲状腺刺激ホルモン(TSH)、副甲状腺ホルモン(iPTH)、成長ホルモン(GH)、ソマトメジンC(IGF-1)、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、プロラクチン(PRL)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、バソプレッシン、オキシトシン、ソマトスタチン、エンケファリン、β-エンドルフィン、サイロキシン、トリヨードサイロニン、サイログロブリン、抗サイログロブリン抗体、抗T3抗体、抗T4抗体、抗TSH抗体、カルシトニン、カテコールアミン、ドーパミン、セロトニン、アルドステロン、レニン、アンギオテンシン、コルチゾール、デオキシコルチゾール、コルチゾン、コルチコステロン、デオキシコルチコステロン、アンドロステロン、プロゲステロン、プレグネノロン、エストロゲン、エストロン、エストリオール、エストラジオール、テストステロン、ゴナドトロピン、インシュリン、抗インシュリン抗体、C-ペプタイド、グルカゴン、ガストリン、セクレチン、サイクリックAMP、サイクリックGMP、プロスタグランジン類、トロンボキサン、エリスロポエチン、ヒスタミン等が挙げられ、腫瘍関連物質としては、例えばCEA、フェリチン、β2-マイクログロブリン、エラスターゼ、α-フェトプロテイン、神経特異エノラーゼ、前立腺特異抗原、CA19-9等が挙げられ、薬物、ビタミン関連物質としては、例えばフェノバルビタール、フェニトイン、カルバマゼピン、プリミドン、エトスクシミド、バルプロ酸、アセタゾールアミド、スルチアム、グルテチミド、クロナゼパム、ニトラゼパム、ジアゼパム、ペントバルビタール、セコバルビタール、ブピバカイン、メピバカイン、リドカイン、プロカインアミド、キニジン、ジゴキシン、ジキトキシン、テオフィリン、アミトリプチリン、イミプラミン、アミカシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、セファレキシン、スルファメトキサゾール、メトトレキサート、シクロスポリン、メチルプレドニゾロン、サリチル酸、アセトアミノフェン、インドメタシン、アロプリノール、ビタミンA、カロチン、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE等が挙げられ、血清または血漿タンパク関連物質としては、例えばアルブミン、α1-マイクログロブリン、α1-アンチトリプシン、α2-マクログロブリン、ハプトグロブリン、ヘモペキシン、トランスフェリン、ミオグロビン、CK-MB(creatine kinase MB)、トロポニン、BNP、NTpro-BNP、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、フィブリノーゲン、アンチトロンビン、プラスミノーゲン、アンチプラスミン、プロテインC、リウマチ因子、抗DNA抗体、抗CCP抗体、抗胃壁細胞抗体、C反応性蛋白等が挙げられ、ウイルス、感染症関連物質としては、例えばHBs抗原、HBs抗体、HBc抗体、HTLV-I抗体、HTLV-III抗体、TPHA、各種ウイルス抗原、各種ウイルス抗体等が挙げられる。測定対象物質の具体例としては、後記の実施において測定したフェリチンおよびCK-MBが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
本発明においては、測定対象物質が抗体である場合には、上記抗体に対する抗原を不溶性担体に担持させる。
本発明においては、測定対象物質が抗原である場合には、上記抗原に対する抗体を不溶性担体に担持させる。
【0015】
不溶性担体としては、特に限定されないが、プレート(例えば、プラスチック製マイクロタイタープレートなど)、ラテックス粒子、磁性粒子などが挙げられる。不溶性担体は好ましくはラテックス粒子である。ラテックス粒子としては、ポリスチレン、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン-スチレンスルホン酸塩共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、塩化ビニル-アクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニルアクリレートなどのラテックス粒子を使用することができる。磁性粒子としては、磁性シリカ粒子等を使用することができる。
【0016】
工程1における温度は、11℃~60℃であり、好ましくは20~45℃であり、より好ましくは35℃~45℃である。
【0017】
工程1における保存期間は、12時間~30日間であり、好ましくは1日間~7日間であり、より好ましくは1日間~3日間である。
【0018】
免疫学的測定試薬とは、上記した測定対象物質に対する抗原または抗体を担持させた不溶性担体であればよいが、ラテックス比濁法において用いられる試薬であることが好ましい。
【0019】
工程2においては、上記工程1の後に不溶性担体を2℃~10℃で保存する。
【0020】
<不溶性担体を含む免疫学的測定試薬>
本発明によれば、本発明による不溶性担体を含む免疫学的測定試薬の製造方法により製造される、不溶性担体を含む免疫学的測定試薬が提供される。
【0021】
不溶性担体、および免疫学的測定試薬の詳細は、上記した通りである。
本発明の不溶性担体を含む免疫学的測定試薬は、測定対象物質の測定方法において使用することができる。
【0022】
<測定対象物質の測定方法>
本発明によれば、本発明による不溶性担体を含む免疫学的測定試薬の製造方法により不溶性担体を含む免疫学的測定試薬を製造すること;および
製造された免疫学的測定試薬と、測定対象物質とを接触させること
を含む、測定対象物質の測定方法(測定方法1)が提供される。
本発明によればさらに、本発明の免疫学的測定試薬と、測定対象物質とを接触させることを含む、測定対象物質の測定方法(測定方法2)が提供される。
以下、上記の測定方法1と上記の測定方法2を総称して、本発明の測定方法と言う。
【0023】
本発明の測定方法においては、標識を有していてもよい、測定対象物質に対する抗原または抗体と、試料とを接触させることを含むことが好ましい。
【0024】
試料としては、特に限定されないが、生体試料が好ましく、より好ましくはヒト由来の試料である。試料としては、例えば、血液由来試料(血液、血漿、血清等)、尿、唾液、リンパ、髄液、胸水、腹水、涙液、精液、膀胱洗浄物、組織抽出液、組織切片、組織生検試料、またはこれらから調製されたもの等が挙げられるが、特に限定されない。試料としては、血液由来試料が好ましく、血清または血漿がより好ましく、血清が特に好ましい。
【0025】
<標識法>
一例においては、標識に基づいて試料中の測定対象物質を測定することができる。
測定対象物質の測定は、当分野で通常行われる、文献[例えば、酵素免疫測定法第2版(石川栄治ら編集、医学書院)1982年]記載のサンドイッチ法、競合法および特開平6-130063号公報記載の測定法に準じて行えばよい。
【0026】
サンドイッチ法においては、例えば、磁性シリカ粒子などの固相担体の表面に、測定対象物質に対する抗原または抗体が固定化されており、試料と、固相担体と、標識により標識された「測定対象物質に結合する物質」とを混合し、固定化された「測定対象物質に対する抗原または抗体」と、試料中の測定対象物質と、標識された「測定対象物質に結合する物質」とを接触させる。これにより、固定化された「測定対象物質に対する抗原または抗体」と、試料中の測定対象物質と、標識された「測定対象物質に結合する物質」との複合体である標識複合体を形成させる。次いで、標識複合体を担持した固相担体をB/F分離して、標識複合体中の標識の量を測定し、標識複合体中の標識の量に基づいて試料中の測定対象物質の量を測定する。
【0027】
固相担体としては、通常の免疫学的測定法で用いられる支持体(特に、不溶性の支持体)であれば何れも使用可能であるが、例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリルアミド、ポリグリシジルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニール、ポリエチレン、ポリクロロカーボネート、シリコーン樹脂、シリコーンラバー、アガロース、デキストラン、エチレン-無水マレイン酸共重合物等の有機物;ガラス、酸化ケイ素、ケイソウ、多孔性ガラス、スリガラス、アルミナ、シリカゲル、金属酸化物等の無機物質;鉄、コバルト、ニッケル、マグネタイト、クロマイト等の磁性体等;およびこれらの磁性体の合金を材料として調製されたものが挙げられる。固相化は、固相(例えば、ビーズ、磁気ビーズ、メンブレン、プレートなどのあらゆる表面)に対してなされ得る。磁気ビーズは、市販の様々なものを用いることができる。磁気ビーズとしては、例えば、WO2012/173002Aに開示されるビーズを用いてもよい。
【0028】
サンドイッチ法におけるB/F分離(Bound/Free分離)とは、固相担体に担持された物質とそれ以外の物質との分離を意味する。
【0029】
サンドイッチ法は、マイクロ流体チップ(micro-total analysis systems;μTAS)によって行うこともできる。マイクロ流体チップは、流路を備え、流路はサンプル導入口を有し、例えば、試料導入口において、ポリカチオンまたはポリアニオン(例えば、DNA)を結合した免疫学的測定試薬と、試料中の測定対象物質とを接触させて、免疫学的測定試薬と測定対象物質との複合体を形成させ、電場をかけて複合体を移動させ、流路の途中に存在する、標識された「測定対象物質に結合する物質」と複合体が接触すると、免疫学的測定試薬と、測定対象物質と、標識された「測定対象物質に結合する物質」との複合体が形成され、更に電場により複合体は、流路を移動して、標識複合体がB/F分離されて、流路上の検出部に到達し、標識複合体中の標識の量を測定し、標識複合体中の標識の量に基づいて試料中の測定対象物質の量を測定すればよい。
【0030】
競合法とは、例えば、測定対象物質に特異的に結合する免疫学的測定試薬に対して、試料中の測定対象物質と、測定対象物質と同じ物質を競合させる、或いは試料中の測定対象物質、および測定対象物質の類似物質を競合させる反応を利用して、試料中の測定対象物質の量を測定する方法等のことをいう。
【0031】
競合法の一例においては、固相担体の表面には、測定対象物質に対する抗原または抗体が固定化されており、試料と、固相担体と、標識により標識された「測定対象物質またはその類似物質」とを混合する。これにより、試料中の測定対象物質と、標識により標識された「測定対象物質またはその類似物質」とを競合させて、固定化された「測定対象物質に対する抗原または抗体」に接触させて、標識により標識された「測定対象物質またはその類似物質」と、固定化された「測定対象物質に対する抗原または抗体」とを含む複合体である標識複合体を形成させる。次いで、標識複合体を担持した固相担体をB/F分離して、標識複合体中の標識の量を測定し、標識複合体中の標識の量に基づいて試料中の測定対象物質の量を測定することができる。
【0032】
この方法においては、試料中の測定対象物質、固定化された「測定対象物質に対する抗原または抗体」、および、標識により標識された「測定対象物質またはその類似物質」を同時に競合反応させているが、試料中の測定対象物質を、固定化された「測定対象物質に対する抗原または抗体」に加えた後に、標識により標識された「測定対象物質またはその類似物質」を加えて競合反応させてもよい。
【0033】
上記競合法におけるB/F分離とは、固相担体に担持された物質とそれ以外の物質との分離を意味する。具体的には、標識により標識された「測定対象物質またはその類似物質」と固定化された「測定対象物質に対する抗原または抗体」とを含む標識複合体と、他の成分(試料中の測定対象物質以外の成分)との分離を意味する。
【0034】
試料中の測定対象物質、「測定対象物質に対する抗原または抗体」、標識された「測定対象物質に結合する物質」、測定対象物質またはその類似物質等を接触させる方法としては、通常なされる撹拌、混合等の処理により、接触されればよい。反応時間は、サンドイッチ法、競合法等の違いに応じて適宜設定されればよいが、通常1分~24時間、好ましくは1分~1時間、より好ましくは1~10分、特に好ましくは1~5分である。
【0035】
B/F分離は、例えば、固相担体の磁性を利用し、反応槽の外側等から磁石等により固相担体を集めて、反応液を排出し、洗浄液を加えた後、磁石を取り除き、固相担体を混合して分散させ、洗浄することによりなされる。上記操作を1~3回繰り返してもよい。洗浄液としては、通常この分野で用いられるものであれば特に限定はされない。
【0036】
標識としては、例えば酵素免疫測定法(EIA)に於いて用いられる酵素であることが好ましい。酵素としては、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、マイクロペルオキシダーゼ等のペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース-6-リン酸脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素、ルシフェラーゼ、チロシナーゼ、酸性ホスファターゼ等を挙げることができる。上記の中でもさらに好ましいのはアルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼおよびグルコースオキシダーゼであり、特に好ましいのはペルオキシダーゼである。
【0037】
本発明においては、上記の通り標識として酵素を使用し、酵素反応を行うことが好ましい。酵素反応の好ましい一例としては、過酸化水素の存在下で行われるペルオキシダーゼによる反応である。
【0038】
上記した標識を、測定対象物質に結合する物質、測定対象物質またはその類似物質等に結合させるには、通常この分野で用いられる方法[例えば、医化学実験講座、第8巻、山村雄一監修、第1版、中山書店、1971;図説蛍光抗体、川生明著、第1版、(株)ソフトサイエンス社、1983;酵素免疫測定法、石川栄治、河合忠、宮井潔編、第2版、医学書院、1982等]等を利用すればよい。
【0039】
標識の使用量は、用いる標識の種類に応じて適宜設定することができ、例えばペルオキシダーゼを標識として使用する場合には、測定対象物質に結合する物質と標識とを、例えば通常1:1~20のモル比、好ましくは1:1~10のモル比、更に好ましくは1:2~6のモル比となるようにすることが好ましい。また、ペルオキシターゼにより標識された「測定対象物質に結合する物質」は、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、ホウ酸緩衝液、グッド緩衝液(例えば、MES(2-モルホリノエタンスルホン酸)緩衝液等)等の通常この分野で用いられている緩衝液中に含有させて用いればよい。
【0040】
上記緩衝液のpHは、抗原抗体反応を抑制しない範囲であればよく、通常5~9である。また、このような緩衝液中には、抗原抗体反応を阻害しないものであれば、例えばアルブミン、グロブリン、水溶性ゼラチン、ポリエチレングリコール等の安定化剤、界面活性剤、糖類等を含有させておいてもよい。尚、本明細書においてpHは、JISK0400-12-10:2000に準拠して測定される(測定温度25℃)数値のことを意味する。
【0041】
標識の測定方法としては、発色による測定法、または化学発光免疫測定法(ECLIA,CLIAおよびCLEIA)が挙げられる。
【0042】
発色基質としては、3’,3’,5’,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)、4-クロロ-1-ナフトール(4-CN)、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)などが挙げられる。
【0043】
発光基質は、アミノ基を有する窒素含有複素環式化合物またはその塩であることが好ましく、例えば、ルミノール、イソルミノール、N-アミノヘキシル-N-エチルイソルミノール(AHEI)、N-アミノブチル-N-エチルイソルミノール(ABEI)およびこれらの金属塩(アルカリ金属塩等)、8-アミノ-5-クロロ-7-フェニルピリド[3,4-d]ピリダジン-1,4(2H,3H)-ジオンまたはその塩などが挙げられる。
【0044】
<非標識法>
抗原抗体反応を用いた測定方法においては、標識を使用しない方法、即ち非標識法として、沈降反応を利用した免疫拡散法、免疫比濁法、免疫比朧法(ネフェロメトリー)、ラテックス凝集法などがある。ラテックス凝集法などの標識を使用しない方法においては、標識操作が不要であり、さらに紫外~可視~近赤外領域のある特定波長における測光により測定対象成分の定量が可能であるため、汎用・小型の分光学的装置のみ準備すればよく、小規模医療施設やPOCTの分野における導入が簡単である。特に、 ラテックス凝集法は、試薬製造時の調製方法が比較的簡単であり、またユーザーが使用する際に、ラテックス試薬に検体を添加するだけで測定開始、一定時間における紫外~可視~近赤外領域のある特定波長での測定を行えばよく、通常の場合は数分~数十分後に測定完了と、迅速性、簡便性、汎用性に優れた方法である。好ましくは、本発明においては、凝集法により試料中の測定対象物質を測定することができ、より好ましくはラテックス凝集により試料中の測定対象物質を測定することができる。
【0045】
凝集法において使用する不溶性担体としては、免疫凝集反応の分野において用いられる公知の担体用材質であれば、特に制限されることなく使用できる。そのような材質の例として、ポリスチレン、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン-スチレンスルホン酸塩共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、塩化ビニル-アクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニルアクリレートなどの合成高分子粉末があり、これらを均一に懸濁させたラテックスが好ましい。また、その他の有機高分子粉末や無機物質粉末、微生物、血球や細胞膜片、プラスチック製マイクロタイタープレートなどが挙げられる。無機物質粉末の例としては、金、チタン、ニッケルなどの金属片やシリカ、アルミナなどが挙げられる。
【0046】
不溶性担体の粒径は、通常は0.01~1.0μm、より好ましくは0.05~0.7μmである。
【0047】
測定対象物質に対する抗原または抗体を不溶性担体に担持させる方法については、物理吸着法および共有結合による化学結合法のいずれでも使用可能である。測定対象物質に対する抗原または抗体を担体に担持させた後に、測定対象物質に対する抗原または抗体が被覆されていない担体表面を覆うブロッキング剤としては、公知の物質、例えば、BSA(ウシ血清アルブミン)やブロックエース、スキムミルク、カゼインなどが使用可能である。ブロッキング剤は、必要に応じて熱や酸・アルカリ等により部分変性などの前処理を施してもよい。
【0048】
凝集による測定については、測定対象物質に対する抗原または抗体を担持させた担体の分散液と、測定対象物質を含む試料とを接触させて反応を開始させ、抗原抗体反応に伴う凝集物の生成を、一定時間における紫外~可視~近赤外領域のある特定波長での測定により定量する。通常の場合、数分~数時間後には測定が完了する。担体の分散液と試料の2液で反応を開始させてもよいし、さらに安定化剤あるいは凝集促進剤を含む溶液を別に調製して、3液で反応させてもよい。安定化剤あるいは凝集促進剤は、担体の分散液や検体中に含有されていてもよく、これらの物質は必要に応じて添加可能である。
【0049】
安定化剤とは、例えばグッドバッファーなどの緩衝液、ポリエチレングリコールや多糖類などの合成あるいは天然高分子、界面活性剤など、反応時の各試薬および成分、あるいは反応の進行自体を安定化するものであれば特に制限されない。これらの物質が安定化剤としてのみではなく、凝集反応の促進物質として作用する場合も同様である。反応時の各試薬および成分とは、例えば、不溶性担体に結合させた「測定対象物質に対する抗原または抗体」、または測定対象物質のことであり、抗体や酵素などの蛋白質を安定化するために糖類またはアミノ酸を添加してもよい。
【0050】
凝集促進剤の例として、例えば、ポリエチレングリコール、ポリグリコシルメタクリレート、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、プルラン等の合成あるいは天然高分子が挙げられる。同様の作用を有する界面活性剤の例としては、例えば、ポリエチレングリコール脂肪酸モノエステル誘導体が挙げられる。
【0051】
使用することのできる緩衝液は、通常の抗原抗体反応が行われるpH条件下で緩衝能を有していればよく、そのようなpH条件として5~11、より好ましくは、6~10が用いられる。このpH条件下で緩衝能を有す緩衝液の例として、例えば、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、MES緩衝液、HEPES緩衝液、グリシン緩衝液、クエン酸緩衝液など、グッドバッファーを含む、通常の生化学実験において使用され得る緩衝液であれば、いずれも使用可能である。また、測定対象物質に対する抗原または抗体を担持させた不溶性担体の分散液や、測定対象物質を含む試料など、凝集反応に関与する液体については、必要に応じて界面活性剤、合成あるいは天然高分子、有機および無機試薬などを添加することができる。例えば、界面活性剤については、ノニオン系、アニオン系、カチオン系等、免疫凝集反応に公知のものが使用可能である。
【0052】
抗原抗体反応に伴う凝集反応を行わせる際、凝集の度合いを測定する方法としては、目視やビデオ等による撮影の他に分光学的に行う方法などがある。分光学的な測定については、測定対象物質に対する抗原または抗体を担持させた不溶性担体の分散液と、測定対象物質を含む試料とを接触させた反応液を用いて公知の方法によって行えばよく、例えば担体の粒径、濃度、反応時間の経過に伴う散乱光強度や吸光度または透過光の変化(増加や減少)を測定する。
【0053】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0054】
実施例1:抗ヒトフェリチンウサギポリクローナル抗体感作ラテックス試液の調製
(1)抗ヒトフェリチンウサギポリクローナル抗体のラテックスへの感作(固定化)
抗ヒトフェリチンウサギポリクローナル抗体(アジレント・テクノロジー社製)0.5mgを含む50mmol/Lホウ酸緩衝液(pH7)0.5mLと、ポリスチレンラテックス〔平均粒径0.3μm〕を1%(W/V)となるように懸濁させた50mmol/Lホウ酸緩衝液(pH7)0.5mLとを混合し、25℃で2時間反応させた。その後、遠心分離により分離したラテックスを50mmol/Lホウ酸緩衝液(pH7)で洗浄し、ラテックスを濃度が0.1%(W/V)となるように、BSAを0.5%(W/V)含有する50mmol/Lホウ酸緩衝液(pH7)中で懸濁し、得られたものを抗ヒトフェリチンウサギポリクローナル抗体感作ラテックス試液[1]とした。
【0055】
(2)加温処理
上記抗ヒトフェリチンウサギポリクローナル抗体感作ラテックス試液[1]を、40℃で1日間保存し、抗ヒトフェリチンウサギポリクローナル抗体感作ラテックス試液[2]とした。
【0056】
(3)冷蔵保存
上記抗ヒトフェリチンウサギポリクローナル抗体感作ラテックス試液[1]および[2]を、冷蔵条件下(7℃)で7日間保存し、保存後の試液を抗ヒトフェリチンウサギポリクローナル抗体感作ラテックス試液[1’]、[2’]とした。
【0057】
実施例2:ラテックス免疫比濁法によるフェリチンの測定
(1)フェリチン試料の調製
フェリチン標準品(H.D.M Labs製)を1%BSAを含有する10mmol/Lリン酸緩衝液(0.85%NaCl含)で希釈し、100~500ng/mLとした。
【0058】
(2)試液
0.1%(W/V)のBSAを含む20mmol/LのHEPES緩衝液(pH7)を試薬[1]とし、この試薬[1]と上記実施例1において調製した抗ヒトフェリチンウサギポリクローナル抗体感作ラテックス試液[1]および[2]、抗ヒトフェリチンウサギポリクローナル抗体感作ラテックス試液[1’]および[2’]を使用した。
【0059】
(3)フェリチンの測定(2ポイントエンド法)
日立7170自動分析装置((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、以下の測定を行った。すなわち、上記(1)で調製したフェリチン試料10μLに上記(2)の試薬[1]150μLを混合し、37℃で5分保温した。ラテックス試液[1’]添加後30秒後から5分後までの、660nmでの吸光度変化を測定した。
また、抗ヒトフェリチンウサギポリクローナル抗体感作ラテックス試液[2’]も同様の手順で、同じ試料中のフェリチンの測定を行った。
対照として、上記(2)の抗ヒトフェリチンウサギポリクローナル抗体感作ラテックス試液[1]および[2]を用いる以外は、同じ試薬、測定機器を用い、同じ方法で、同じ試料中のフェリチンの測定を行った。
【0060】
(4)結果(ラテックス試液の測定感度変化の比較)
測定結果を表1に示す。
加温処理後に冷蔵保存を実施したラテックス試液[2’]の測定感度変化は、ラテックス試液[2](冷蔵保存開始時)の測定感度と比較して98%~100%であったが、加温処理を実施していないラテックス試液[1’]の測定感度変化は、ラテックス試液[1](冷蔵保存開始時)の測定感度と比較して90%~94%であった。以上の結果から、加温処理によって冷蔵保存時の試薬感度を安定化することが示された。
【0061】
【表1】
【0062】
実施例3:抗ヒトCK-MBマウスモノクローナル抗体感作ラテックス試液の調製
(1)抗ヒトCK-MBマウスモノクローナル抗体のラテックスへの感作(固定化)
抗ヒトCK-MBマウスモノクローナル抗体(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)0.5mgを含む50mmol/Lホウ酸緩衝液(pH7)0.5mLと、ポリスチレンラテックス〔平均粒径0.3μm〕を1%(W/V)となるように懸濁させた50mmol/Lホウ酸緩衝液(pH7)0.5mLとを混合し、25℃で2時間反応させた。その後、遠心分離により分離したラテックスを50mmol/Lホウ酸緩衝液(pH7)で洗浄し、ラテックスを濃度が0.1%(W/V)となるように、BSAを0.5%(W/V)含有する50mmol/Lホウ酸緩衝液(pH7)中で懸濁し、得られたものを抗ヒトCK-MBマウスモノクローナル抗体感作ラテックス試液[3]とした。
【0063】
上記抗ヒトCK-MBマウスモノクローナル抗体感作ラテックス試液[3]に使用した抗体とは異なる抗ヒトCK-MBマウスモノクローナル抗体(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)0.5 mgを含む50mmol/Lホウ酸緩衝液(pH7)0.5mLと、ポリスチレンラテックス〔平均粒径0.3μm〕を1%(W/V)となるように懸濁させた50mmol/Lホウ酸緩衝液(pH7)0.5mLとを混合し、25℃で2時間反応させた。その後、遠心分離により分離したラテックスを50mmol/Lホウ酸緩衝液(pH7)で洗浄し、上記ラテックスを濃度が0.1%(W/V)となるように、BSAを0.5%(W/V)含有する50mmol/Lホウ酸緩衝液(pH7)中で懸濁し、得られたものを抗ヒトCK-MBマウスモノクローナル抗体感作ラテックス試液[4]とした。
【0064】
(2)加温処理
上記の抗ヒトCK-MBマウスモノクローナル抗体感作ラテックス試液[3]について、37℃で2日間保存し、抗ヒトCK-MBマウスモノクローナル抗体感作ラテックス試液[5]とした。
上記の抗ヒトCK-MBマウスモノクローナル抗体感作ラテックス試液[4]について、37℃で2日間保存し、抗ヒトCK-MBマウスモノクローナル抗体感作ラテックス試液[6]とした。
抗ヒトCK-MBマウスモノクローナル抗体感作ラテックス試液[3]および[4]を等量混合したものを抗ヒトCK-MBマウスモノクローナル抗体感作ラテックス試液[7]とした。
抗ヒトCK-MBマウスモノクローナル抗体感作ラテックス試液[5]および[6]を等量混合したものを抗ヒトCK-MBマウスモノクローナル抗体感作ラテックス試液[8]とした。
【0065】
(3)冷蔵保存
上記抗ヒトCK-MBマウスモノクローナル抗体感作ラテックス試液[7]および[8]を、冷蔵条件下(7℃)で7日間保存し、保存後の試液を抗ヒトCK-MBマウスモノクローナル抗体感作ラテックス試液[7’]、[8’]とした。
【0066】
実施例4:ラテックス免疫比濁法によるCK-MBの測定
(1)CK-MB試料の調製
CK-MB(株式会社ベリタス製)を3%BSAを含有するGood’s緩衝液(50mmol/L pH 7)で希釈し、6~78ng/mLとした。
【0067】
(2)試液
0.1%(W/V)のBSAを含む20mmol/LのHEPES緩衝液(pH7)を試薬[9]とし、上記実施例3において調製した抗ヒトCK-MBマウスモノクローナル抗体感作ラテックス試液[7]および[8]、抗ヒトCK-MBマウスモノクローナル抗体感作ラテックス試液[7’]および[8’]を使用した。
【0068】
(3)CK-MBの測定(2ポイントエンド法)
日立7170自動分析装置((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、以下の測定を行った。
すなわち、上記(1)で調製したCK-MB試料10μLに上記(2)の試薬[9]150μLを混合し、37℃で5分保温した。ラテックス試液[7’]の添加後30秒後から5分後までの、660nmでの吸光度変化を測定した。
また、抗ヒトCK-MBマウスモノクローナル抗体感作ラテックス試液[8’]も同様の手順で、同じ試料中のCK-MBの測定を行った。
対照として、上記(2)の抗ヒトCK-MBマウスモノクローナル抗体感作ラテックス試液[7]および[8]を用いる以外は、同じ試薬、測定機器を用い、同じ方法で、同じ試料中のCK-MBの測定を行った。
【0069】
(4)結果(ラテックス試液の測定感度変化の比較)
測定結果を表2に示す。
加温処理後に冷蔵保存を実施したラテックス試液[8’]の測定感度変化は、ラテックス試液[8](冷蔵保存開始時)の測定感度と比較して102%~109%であったが、加温処理を実施していないラテックス試液[7’]の測定感度変化は、ラテックス試液[7](冷蔵保存開始時)の測定感度と比較して126%~144%であった。以上の結果から、加温処理によって冷蔵保存時の試薬感度を安定化することが示された。
【0070】
【表2】