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特開2025-15348光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム及び偏光フィルム
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  • 特開-光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム及び偏光フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015348
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム及び偏光フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20250123BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20250123BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20250123BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20250123BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20250123BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20250123BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20250123BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K50/86
H10K59/10
B32B27/30 A
B32B27/26
B32B27/20 Z
B32B7/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118708
(22)【出願日】2023-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】ZACROS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】客野 真人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 萌美
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】浅野 雄貴
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
4F100
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AA18
2H149AB01
2H149BA01
2H149BA11
2H149CA02
2H149EA12
2H149EA22
2H149FA02X
2H149FA08X
2H149FA08Z
2H149FA12X
2H149FA66
2H149FB01
2H149FD05
2H149FD12
2H149FD22
2H149FD25
2H149FD30
2H149FD47
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107EE26
3K107FF06
3K107FF15
3K107FF18
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK51A
4F100AK51B
4F100AK73A
4F100AK73H
4F100AN00A
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA02A
4F100CA02B
4F100DE01A
4F100EH46A
4F100EH46B
4F100GB07
4F100GB31
4F100GB41
4F100JA07A
4F100JA07B
4F100JK17
4F100JN01
4F100JN10D
4F100JN18A
4F100JN18B
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】低ヘイズを実現可能な光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム及び偏光フィルムを提供する。
【解決手段】複数の(メタ)アクリル系樹脂層11,12を有する光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム10であって、第1の(メタ)アクリル系ポリマーと、ゴム粒子と、第1の架橋剤とを含有する、第1の(メタ)アクリル系樹脂層11の厚みが1~20μmであり、第2の(メタ)アクリル系ポリマーと、第2の架橋剤とを含有し、ゴム粒子を含有しない第2の(メタ)アクリル系樹脂層12の厚みが0.5~2.0μmであり、複数の(メタ)アクリル系樹脂層11,12を合わせた膜厚が1.5μm~22μmであり、複数の(メタ)アクリル系樹脂層11,12を合わせた全ヘイズ値が1.0%以下であり、第2の(メタ)アクリル系樹脂層12が外部に接する外部接触面14の外部ヘイズ値が0.4%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の(メタ)アクリル系樹脂層を有する光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルムであって、
第1の(メタ)アクリル系ポリマーと、ゴム粒子と、第1の架橋剤とを含有する、第1の(メタ)アクリル系樹脂層と、
前記第1の(メタ)アクリル系樹脂層に積層された第2の(メタ)アクリル系ポリマーと、第2の架橋剤とを含有し、ゴム粒子を含有しない第2の(メタ)アクリル系樹脂層と、を含み、
第1の(メタ)アクリル系樹脂層の厚みが1~20μmであり、
第2の(メタ)アクリル系樹脂層の厚みが0.5~2.0μmであり、
前記複数の(メタ)アクリル系樹脂層を合わせた積層体の膜厚が1.5μm~22μmであり、
前記複数の(メタ)アクリル系樹脂層を合わせた積層体の全ヘイズ値が1.0%以下であり、
前記第2の(メタ)アクリル系樹脂層が外部に接する面の外部ヘイズ値が0.4%以下であることを特徴とする光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム。
【請求項2】
支持体と、前記支持体上に、前記第1の(メタ)アクリル系樹脂層と、前記第2の(メタ)アクリル系樹脂層とをこの順で塗工して成膜した前記複数の(メタ)アクリル系樹脂層とを有することを特徴とする請求項1に記載の光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム。
【請求項3】
前記第1の(メタ)アクリル系ポリマーが、
(1A)第1のアルキル(メタ)アクリレートであって、メチルメタクリレートを80重量部以上と、前記メチルメタクリレート以外の、ホモポリマーのTgが0℃以上であり、且つアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上との合計を100重量部と、
(1B)第1の共重合可能なモノマーであって、前記第1の架橋剤と反応できる官能基を有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~20.0重量部と、
を共重合させた重量平均分子量が10万超過100万以下の共重合体からなる(メタ)アクリル系ポリマーであり、
前記(1A)第1のアルキル(メタ)アクリレートの合計100重量部に対して、前記ゴム粒子を1.0~25.0重量部の割合で含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム。
【請求項4】
前記第2の(メタ)アクリル系ポリマーが、
(2A)第2のアルキル(メタ)アクリレートであって、メチルメタクリレートを80重量部以上と、前記メチルメタクリレート以外のアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上との合計を100重量部と、
(2B)第2の共重合可能なモノマーであって、前記第2の架橋剤と反応できる官能基を有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~30.0重量部と、
を共重合させた重量平均分子量が5万超過50万以下の共重合体からなる(メタ)アクリル系ポリマーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム。
【請求項5】
前記ゴム粒子が、コア部にSBR又はブタジエンを主体としたゴム層と、シェル部にメチルメタクリレートを主体としたアクリル層とから形成されたコアシェル粒子であり、前記ゴム粒子の体積基準平均粒子径が0.05~2.0μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム。
【請求項6】
前記第1の(メタ)アクリル系ポリマー及び/又は前記第2の(メタ)アクリル系ポリマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群から選択された少なくとも1種以上であり、かつ、8-ヒドロキシオクチルメタクリレート、6-ヒドロキシヘキシルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレートからなる化合物群から選択された少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム。
【請求項7】
前記複数の(メタ)アクリル系樹脂層を合わせた積層体の面内位相差Reが1.0nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルムから得られる、前記複数の(メタ)アクリル系樹脂層を合わせた積層体を、偏光子の片面または両面に形成してなることを特徴とする偏光フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム及び偏光フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高透明性、加熱加工性、耐候性、耐薬品性に優れていることから、電子機器、家電製品、自動車内外装部品、建築部材などの各種機器部品の表面被覆に用いる樹脂フィルムとして、(メタ)アクリル系樹脂フィルムが用いられている(例えば、特許文献1を参照)。また、(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、高透明性、耐候性などに優れていることから、光学用フィルムとして用いられている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-298122号公報
【特許文献2】特開2012-180422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学用フィルムの用途、特にディスプレイの用途では、低ヘイズが求められる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、低ヘイズを実現可能な光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム及び偏光フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、複数の(メタ)アクリル系樹脂層を有する光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルムであって、第1の(メタ)アクリル系ポリマーと、ゴム粒子と、第1の架橋剤とを含有する、第1の(メタ)アクリル系樹脂層と、前記第1の(メタ)アクリル系樹脂層に積層された第2の(メタ)アクリル系ポリマーと、第2の架橋剤とを含有し、ゴム粒子を含有しない第2の(メタ)アクリル系樹脂層と、を含み、第1の(メタ)アクリル系樹脂層の厚みが1~20μmであり、第2の(メタ)アクリル系樹脂層の厚みが0.5~2.0μmであり、前記複数の(メタ)アクリル系樹脂層を合わせた積層体の膜厚が1.5μm~22μmであり、前記複数の(メタ)アクリル系樹脂層を合わせた積層体の全ヘイズ値が1.0%以下であり、前記第2の(メタ)アクリル系樹脂層が外部に接する面の外部ヘイズ値が0.4%以下である。
【0007】
第2の態様は、第1の態様において、支持体と、前記支持体上に、前記第1の(メタ)アクリル系樹脂層と、前記第2の(メタ)アクリル系樹脂層とをこの順で塗工して成膜した前記複数の(メタ)アクリル系樹脂層とを有する。
【0008】
第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記第1の(メタ)アクリル系ポリマーが、(1A)第1のアルキル(メタ)アクリレートであって、メチルメタクリレートを80重量部以上と、前記メチルメタクリレート以外の、ホモポリマーのTgが0℃以上であり、且つアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上との合計を100重量部と、(1B)第1の共重合可能なモノマーであって、前記第1の架橋剤と反応できる官能基を有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~20.0重量部と、を共重合させた重量平均分子量が10万超過100万以下の共重合体からなる(メタ)アクリル系ポリマーであり、前記(1A)第1のアルキル(メタ)アクリレートの合計100重量部に対して、前記ゴム粒子を1.0~25.0重量部の割合で含有する。
【0009】
第4の態様は、第1~3のいずれか1の態様において、前記第2の(メタ)アクリル系ポリマーが、(2A)第2のアルキル(メタ)アクリレートであって、メチルメタクリレートを80重量部以上と、前記メチルメタクリレート以外のアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上との合計を100重量部と、(2B)第2の共重合可能なモノマーであって、前記第2の架橋剤と反応できる官能基を有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~30.0重量部と、を共重合させた重量平均分子量が5万超過50万以下の共重合体からなる(メタ)アクリル系ポリマーである。
【0010】
第5の態様は、第1~4のいずれか1の態様において、前記ゴム粒子が、コア部にSBR又はブタジエンを主体としたゴム層と、シェル部にメチルメタクリレートを主体としたアクリル層とから形成されたコアシェル粒子であり、前記ゴム粒子の体積基準平均粒子径が0.05~2.0μmである。
【0011】
第6の態様は、第1~5のいずれか1の態様において、前記第1の(メタ)アクリル系ポリマー及び/又は前記第2の(メタ)アクリル系ポリマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群から選択された少なくとも1種以上であり、かつ、8-ヒドロキシオクチルメタクリレート、6-ヒドロキシヘキシルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレートからなる化合物群から選択された少なくとも1種以上を含む。
【0012】
第7の態様は、第1~6のいずれか1の態様において、前記複数の(メタ)アクリル系樹脂層を合わせた積層体の面内位相差Reが1.0nm以下である。
【0013】
第8の態様は、第1~7のいずれか1の態様の光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルムから得られる偏光フィルムであって、前記複数の(メタ)アクリル系樹脂層を合わせた積層体を、偏光子の片面または両面に形成してなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低ヘイズを実現可能な光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム及び偏光フィルムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルムの第1例を示す断面図である。
図2】光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルムの第2例を示す断面図である。
図3】偏光フィルムの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0017】
図1及び図2に、それぞれ光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルムの第1例及び第2例を示す。図3に、偏光フィルムの一例を示す。
【0018】
第1例の光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム10は、複数の(メタ)アクリル系樹脂層11,12を有する。第2の(メタ)アクリル系樹脂層12は、第1の(メタ)アクリル系樹脂層11に積層されている。光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム10は、偏光フィルム30において、偏光子33の保護層31,32の少なくとも一方として好適に用いることができる。
【0019】
第2例の光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム20は、支持体15と、支持体15上に、第1の(メタ)アクリル系樹脂層11と、第2の(メタ)アクリル系樹脂層12とをこの順で塗工して成膜した複数の(メタ)アクリル系樹脂層11,12とを有する。光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム20から支持体15を剥離すると、第1例の光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム10が得られる。支持体15が剥離された光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム10は、複数の(メタ)アクリル系樹脂層11,12を合わせた積層体である。
【0020】
第1の(メタ)アクリル系樹脂層11は、第1の(メタ)アクリル系ポリマーと、ゴム粒子と、第1の架橋剤とを含有する。
第2の(メタ)アクリル系樹脂層12は、第2の(メタ)アクリル系ポリマーと、第2の架橋剤とを含有し、ゴム粒子を含有しない。
【0021】
第1の(メタ)アクリル系樹脂層11の厚みが1~20μmであり、第2の(メタ)アクリル系樹脂層12の厚みが0.5~2.0μmであり、複数の(メタ)アクリル系樹脂層11,12を合わせた膜厚が1.5μm~22μmである。
【0022】
複数の(メタ)アクリル系樹脂層11,12を合わせた全ヘイズ値は、1.0%以下である。ヘイズ値が低いほど、光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム10を透過する際の光散乱が減少するので、散乱光による漏光を抑制することができる。
【0023】
第2の(メタ)アクリル系樹脂層12が外部に接する外部接触面14の外部ヘイズ値が0.4%以下である。外部ヘイズ値は、光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム10の片面となる外部接触面14が外部(Air)に接する状態で測定した全ヘイズ値と、光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム10の両面が外部(Air)に接しない状態で測定した内部ヘイズ値との差である。外部ヘイズ値が低いと、外部接触面14が外部(Air)に接する状態でもヘイズ値が低いので、光学特性の検査、測定等が容易になる。
【0024】
第1例の光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム10は、第1の(メタ)アクリル系樹脂層11が支持体15に密着する支持体密着面13を有する。支持体密着面13では、第1の(メタ)アクリル系樹脂層11に含まれるゴム粒子の移動が支持体15に規制されるのに対し、(メタ)アクリル系樹脂層11,12の境界面では、ゴム粒子による起伏、凹凸等が生じる場合がある。上述の構成によれば、ゴム粒子を含まない第2の(メタ)アクリル系樹脂層12に外部接触面14が形成されるため、外部接触面14の外部ヘイズを低減することができる。
【0025】
第1の架橋剤としては、第1の(メタ)アクリル系ポリマーの有する官能基と架橋反応することができる架橋性官能基を有する化合物が挙げられる。第2の架橋剤としては、第2の(メタ)アクリル系ポリマーの有する官能基と架橋反応することができる架橋性官能基を有する化合物が挙げられる。これらの架橋剤と反応できる官能基としては、水酸基又はカルボキシル基が挙げられる。
【0026】
第1の(メタ)アクリル系ポリマーとしては、(1A)第1のアルキル(メタ)アクリレートであって、メチルメタクリレートを80重量部以上と、前記メチルメタクリレート以外の、ホモポリマーのTgが0℃以上であり、且つアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上との合計を100重量部と、(1B)第1の共重合可能なモノマーであって、前記第1の架橋剤と反応できる官能基を有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~20.0重量部と、を共重合させた重量平均分子量が10万超過100万以下の共重合体が挙げられる。
【0027】
第1の(メタ)アクリル系樹脂層11は、(1A)第1のアルキル(メタ)アクリレートの合計100重量部に対して、ゴム粒子を1.0~25.0重量部の割合で含有することが好ましい。ゴム粒子としては、特に限定されないが、コア部にスチレン-ブタジエンゴム(SBR)又はブタジエンを主体としたゴム層と、シェル部にメチルメタクリレートを主体としたアクリル層とから形成されたコアシェル粒子が好ましい。ゴム粒子の体積基準平均粒子径は、0.05~2.0μmが好ましい。
【0028】
第2の(メタ)アクリル系ポリマーとしては、(2A)第2のアルキル(メタ)アクリレートであって、メチルメタクリレートを80重量部以上と、前記メチルメタクリレート以外のアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上との合計を100重量部と、(2B)第2の共重合可能なモノマーであって、前記第2の架橋剤と反応できる官能基を有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~30.0重量部と、を共重合させた重量平均分子量が5万超過50万以下の共重合体が挙げられる。
【0029】
前記ゴム粒子は、粒子状である。第1の(メタ)アクリル系樹脂層11がゴム粒子を含有することにより、耐屈曲性を向上することができる。ゴム粒子としては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、アクリルゴム、ニトリルゴム、ブタジエン系ゴム、ポリイソプレンゴム、天然ゴム等のビニル系重合体からなるゴム化合物の粒子を用いてもよい。ゴム化合物は、物理架橋又は化学架橋により架橋されていてもよい。
【0030】
ゴム粒子の体積基準平均粒子径は、0.05~2.0μmが好ましく、0.05~1.0μmがより好ましく、0.1~0.3μmがさらに好ましい。コアシェル粒子の粒子径にはシェル部の範囲も含まれる。(1A)第1のアルキル(メタ)アクリレート100重量部に対する、前記ゴム粒子の割合は、1.0~25.0重量部が好ましく、3.0~20.0重量部がより好ましい。
【0031】
前記(メタ)アクリル系樹脂組成物は、特に限定されないが、酸化防止剤、界面活性剤、架橋促進剤、架橋遅延剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、可塑剤、充填剤、滑剤、加工助剤、老化防止剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤などの公知の添加剤が適宜に配合されてもよい。これらの添加剤は、単独で、もしくは2種以上を併せて用いることができる。
【0032】
第1及び/又は第2の(メタ)アクリル系ポリマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートを主成分とする共重合体が挙げられる。(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートの少なくとも一方を意味する。
【0033】
アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、非環状(直鎖、分枝状)、環状(単環、多環)のいずれでもよい。また、以下の説明において、モノマーについて、単にTgという場合は、ホモポリマーのTgを指す場合がある。
【0034】
(1A)第1のアルキル(メタ)アクリレート100重量部のうち、メチルメタクリレートの割合は、80~99重量部が好ましい。(1A)第1のアルキル(メタ)アクリレートに用いられる、メチルメタクリレート以外のアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートは、Tgが0℃以上である。
【0035】
(2A)第2のアルキル(メタ)アクリレート100重量部のうち、メチルメタクリレートの割合は、80~99重量部が好ましい。(2A)第2のアルキル(メタ)アクリレートに用いられる、メチルメタクリレート以外のアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートは、Tgが0℃以上でも、Tgが0℃未満でもよい。
【0036】
(1A)及び/又は(2A)において、ホモポリマーのTgが0℃以上であり、且つアルキル基の炭素数がC1~C14であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチルメタクリレート、イソペンチルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、イソヘキシルメタクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートからなる化合物群から選択した1種以上が挙げられる。
【0037】
(1A)及び/又は(2A)において、ホモポリマーのTgが0℃以上のアルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基の炭素数としては、C1~C6がより好ましく、C1~C4がさらに好ましい。具体例としては、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルアクリレート、t-ブチルメタクリレートから選択した1種以上が特に好ましい。
【0038】
(2A)において、Tgが0℃未満のアルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基の炭素数としては、C1~C6がより好ましく、C1~C4がさらに好ましい。具体例としては、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、s-ブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、イソペンチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、イソヘキシルアクリレート等が挙げられる。
【0039】
(1B)第1の共重合可能なモノマーは、第1の架橋剤と反応できる官能基を有する。第1の架橋剤と反応できる官能基としては、水酸基又はカルボキシル基が挙げられる。(1A)第1のアルキル(メタ)アクリレート100重量部に対して、(1B)第1の共重合可能なモノマーの割合は、1.0~20.0重量部が好ましく、1.0~12.0重量部がより好ましく、1.0~9.0重量部が特に好ましい。
【0040】
(2B)第2の共重合可能なモノマーは、第2の架橋剤と反応できる官能基を有する。第2の架橋剤と反応できる官能基としては、水酸基又はカルボキシル基が挙げられる。(2A)第2のアルキル(メタ)アクリレート100重量部に対して、(2B)第2の共重合可能なモノマーの割合は、1.0~30.0重量部が好ましい。
【0041】
(1B)及び/又は(2B)において、水酸基を有する共重合可能なモノマーとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、及び水酸基含有(メタ)アクリルアミド類などが好ましい。具体的には、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群から選択された少なくとも1種以上が好ましい。
【0042】
また、(1B)及び/又は(2B)において、水酸基を有する共重合可能なモノマーが、8-ヒドロキシオクチルメタクリレート、6-ヒドロキシヘキシルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレートからなる化合物群から選択された少なくとも1種以上を含むことが好ましい。
【0043】
(1B)及び/又は(2B)において、カルボキシル基を有する共重合可能なモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸などからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0044】
第1及び第2の(メタ)アクリル系ポリマーの製造方法は、特に限定されるものではなく、溶液重合法、乳化重合法等、適宜、公知の重合方法が使用可能である。(1B)は(1A)と共重合可能であればよく、(2B)は(2A)と共重合可能であればよい。
【0045】
第1の(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、10万超過100万以下が好ましく、10万超過95万以下がより好ましく、10万超過90万以下が特に好ましい。第2の(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、5万超過50万以下の共重合体が好ましい。重量平均分子量が前記下限値以下であると、架橋しても優れた物性を有する(メタ)アクリル系樹脂フィルムが得られ難くなる。重量平均分子量が前記上限値を超えると、ポリマー溶液が高粘度となり、作業性が良くない。
【0046】
第1の架橋剤及び第2の架橋剤の具体例としては、エポキシ化合物、アジリジン化合物、イソシアネート化合物からなる化合物群から選択した1種以上であることが好ましい。第1の架橋剤及び第2の架橋剤は、それぞれ独立に選択することができ、同一の化合物でも異なる化合物でもよい。
【0047】
エポキシ化合物からなるエポキシ系架橋剤としては、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。アジリジン化合物からなるアジリジン系架橋剤としては、2官能以上のアジリジン化合物が挙げられる。イソシアネート化合物からなるイソシアネート系架橋剤としては、2官能イソシアネート(ジイソシアネート化合物)や、これらのビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、アダクト体等の3官能以上のポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0048】
前記ジイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等が挙げられる。前記アダクト体としては、ジイソシアネート化合物と、トリメチロールプロパン、グリセリン等の3価以上のポリオールとのアダクト体が挙げられる。
【0049】
第1の架橋剤の配合量としては、特に限定されないが、(1A)第1のアルキル(メタ)アクリレートの合計の100重量部に対して、例えば、0.01~10重量部の割合とすることができる。第2の架橋剤の配合量としては、特に限定されないが、(2A)第2のアルキル(メタ)アクリレートの合計の100重量部に対して、例えば、0.01~10重量部の割合とすることができる。
【0050】
第2例の光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム20は、支持体15上に、第1の(メタ)アクリル系樹脂層11と、第2の(メタ)アクリル系樹脂層12とをこの順で塗工することで製造することができる。第1例の光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム10は、第2例の光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム20から支持体15を剥離することで製造することができる。
【0051】
第1の(メタ)アクリル系樹脂層11は、第1の(メタ)アクリル系ポリマーと、ゴム粒子と、第1の架橋剤とを含有する第1の(メタ)アクリル系樹脂組成物の塗工により成膜することができる。第2の(メタ)アクリル系樹脂層12は、第2の(メタ)アクリル系ポリマーと、第2の架橋剤とを含有し、ゴム粒子を含有しない第2の(メタ)アクリル系樹脂組成物の塗工により成膜することができる。
【0052】
塗工方法は、特に限定されないが、例えば、溶液キャスト法を用いて、(メタ)アクリル系樹脂組成物の溶液を所定の支持体上に塗布して薄膜を形成した後、加熱乾燥させて前記薄膜から溶剤を揮発させることにより、成膜することができる。支持体としては、ポリエステル、ポリオレフィン等の樹脂フィルム、剥離フィルムなどが挙げられる。
【0053】
(メタ)アクリル系樹脂層11,12のゲル分率は、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、90~100%がさらに好ましく、93~100%が特に好ましい。(メタ)アクリル系樹脂組成物が架橋して、ゲル分率が高くなることにより、(メタ)アクリル系樹脂層11,12の耐溶剤性を改善することができる。
【0054】
複数の(メタ)アクリル系樹脂層11,12を合わせた積層体からなる光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム10の面内位相差Reは、1.0nm以下であることが好ましい。面内位相差Reが小さいほど、前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムが光学的に等方的となり、光学装置に貼り付けたり、前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムを光学的検査の用途に供したりしたときに、色調の変化を抑制することができる。
【0055】
光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム10,20の片面または両面には、ハードコート層、帯電防止層、反射防止層、防汚層、防眩層、低屈折率層、粘着層、離型層などの1種又は2種以上を積層してもよい。これらの層を積層する場合は、支持体密着面13または外部接触面14の少なくとも一方に配置することが好ましい。複数の(メタ)アクリル系樹脂層11,12の間は、他の層が介在することなく、境界面で複数の(メタ)アクリル系樹脂層11,12が互いに接することが好ましい。複数の(メタ)アクリル系樹脂層11,12は、第1の(メタ)アクリル系樹脂層11および第2の(メタ)アクリル系樹脂層12からなる2層のみとしてもよい。低屈折率層形成用の組成物に用いられるフッ素化合物としては、フッ素化オレフィン類、フッ素化ビニルエーテル類、フッ素化アルキル(メタ)アクリレート等の1種又は2種以上の重合物である含フッ素共重合体、フッ素化アルキル基含有シラン化合物などの縮合物が挙げられる。
【0056】
光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム10,20は、光学用途に好適に用いることができる。光学用途としては、液晶表示装置、タッチパネル、電子ペーパー、有機EL等の各種表示装置における光学用フィルムが挙げられる。光学用フィルムの一例として、偏光フィルムが挙げられる。
【0057】
図3に示す偏光フィルム30は、偏光子33の両面に保護層31,32を形成してなる。偏光子33の保護層31,32としては、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、環状オレフィン系ポリマー、ポリカーボネート等が挙げられる。保護層31,32の少なくとも一方に、光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム10を用いることにより、偏光フィルム30の総厚を薄くすることができる。
【0058】
偏光子33の保護層31,32の表面に施されている表面処理が、未処理、AG処理、LR処理、AR処理、AG-LR処理、AG-AR処理からなる群より選択された少なくとも1種以上であってもよい。ここで、AGとはアンチグレア(Anti Glare)、LRとはローリフレクション(Low Reflection)、ARとはアンチリフレクション(Anti Reflection)である。
【0059】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。改変としては、各実施形態における構成要素の追加、置換、省略、その他の変更が挙げられる。
【実施例0060】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0061】
<第1の(メタ)アクリル系ポリマー溶液の製造>
[樹脂A]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置に、メチルメタクリレート90重量部、メチルアクリレート10重量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート6.0重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を滴下させ、65℃に加熱して所定の時間反応させ、樹脂Aの(メタ)アクリル系ポリマー溶液を得た。この(メタ)アクリル系ポリマー溶液に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)を測定したところ、45万であった。
【0062】
[樹脂B~C]
樹脂Aの(メタ)アクリル系ポリマーの組成を各々、表1の記載のようにした以外は、樹脂Aと同様にして、樹脂B~Cの(メタ)アクリル系ポリマー溶液を得た。樹脂B~Cの重量平均分子量(Mw)は、表1の「第1のポリマー溶液」欄に示すとおりである。
【0063】
<第2の(メタ)アクリル系ポリマー溶液の製造>
[樹脂D]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置に、メチルメタクリレート95重量部、n-ブチルアクリレート5重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート10.0重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を滴下させ、65℃に加熱して所定の時間反応させ、樹脂Dの(メタ)アクリル系ポリマー溶液を得た。この(メタ)アクリル系ポリマー溶液に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)を測定したところ、25万であった。
【0064】
[樹脂E~F]
樹脂Dの(メタ)アクリル系ポリマーの組成を各々、表1の記載のようにした以外は、樹脂Dと同様にして、樹脂E~Fの(メタ)アクリル系ポリマー溶液を得た。樹脂E~Fの重量平均分子量(Mw)は表1の「第2のポリマー溶液」欄に示すとおりである。
【0065】
【表1】
【0066】
表1中、各記号は以下の材料を意味する。[]内の数値は配合量(重量部)である。
【0067】
(1A)群及び(2A)群のモノマー
MMA:メチルメタクリレート
MA:メチルアクリレート
BMA:n-ブチルメタクリレート
BA:n-ブチルアクリレート
EA:エチルアクリレート
【0068】
(1B)群及び(2B)群のモノマー
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
6HHMA:6-ヒドロキシヘキシルメタクリレート
8HOMA:8-ヒドロキシオクチルメタクリレート
4HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
【0069】
<光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルムの作製>
[実施例1]
前記樹脂Aの(メタ)アクリル系ポリマー溶液に対して、ゴム粒子として、カネエース(登録商標)M-210を10重量部と、アセチルアセトン1.0重量部を加え撹拌した。得られた(メタ)アクリル系ポリマー溶液に対して、架橋剤としてコロネート(登録商標)HX(ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体)4.5重量部と、ジオクチル錫ジラウレート0.01重量部を加えて撹拌混合し、第1の(メタ)アクリル系樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を剥離フィルム上に塗工することで成膜し、溶剤の乾燥及び架橋剤の硬化に適した温度条件にして加熱乾燥、及び架橋させて、実施例1の第1の(メタ)アクリル系樹脂層を支持体上に形成した。得られた第1の(メタ)アクリル系樹脂層の厚み(μm)を表2の「第1の樹脂層」欄の「厚み」に示す。
【0070】
次いで、前記樹脂Dの(メタ)アクリル系ポリマー溶液に対して、架橋剤としてデュラネート(登録商標)TPA-1004.0重量部を加えて撹拌混合し、第2の(メタ)アクリル系樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、前記第1の(メタ)アクリル系樹脂層の剥離フィルムと接している面とは反対の面へ塗工し、溶剤の乾燥及び架橋剤の硬化に適した温度条件にして加熱乾燥、及び架橋させて、実施例1の光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルムを得た。得られた第2の(メタ)アクリル系樹脂層の厚み(μm)を表2の「第2の樹脂層」欄の「厚み」に示す。
【0071】
[実施例2~6]
第1及び第2の(メタ)アクリル系樹脂組成物の組成及び(メタ)アクリル系樹脂層の厚みを各々、表2の記載のようにした以外は、実施例1と同様にし、実施例2~6に記載の光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルムを得た。
【0072】
<比較例及び参考例の(メタ)アクリル系樹脂フィルムの作製>
[比較例1~4]
比較例は第2の(メタ)アクリル系樹脂層を有しない構成であり、第1の(メタ)アクリル系樹脂組成物の組成及び(メタ)アクリル系樹脂層の厚みを各々、表2の記載のようにした以外は、実施例1と同様にし、比較例1~4に記載の(メタ)アクリル系樹脂フィルムを得た。
【0073】
[参考例]
前記樹脂Aの(メタ)アクリル系ポリマー溶液に対して、アセチルアセトン1.0重量部と、架橋剤としてコロネート(登録商標)HX(ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体)4.5重量部と、ジオクチル錫ジラウレート0.01重量部を加えて撹拌混合し、剥離フィルム上に塗工することで成膜し、溶剤の乾燥及び架橋剤の硬化に適した温度条件にして加熱乾燥、及び架橋させて、参考例の(メタ)アクリル系樹脂フィルムを得た。得られた参考例の(メタ)アクリル系樹脂フィルムの厚み(μm)を表2の「第1の樹脂層」欄の「厚み」に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
表2中、各記号は以下の材料を意味する。[]内の数値は配合量(重量部)である。
【0076】
ゴム群
M210:カネエース(登録商標)M-210(コアシェル粒子、粒子径:0.2μm、コア部:SBR、シェル部:MMA、株式会社カネカの商品名)
M230:カネエース(登録商標)M-230(コアシェル粒子、粒子径:0.1μm、コア部:SBR、シェル部:MMA、株式会社カネカの商品名)
【0077】
(X)群
AAc:アセチルアセトン
(Y)群
DOTL:ジオクチル錫ジラウレート
【0078】
架橋剤群
HX:コロネート(登録商標)HX(HDIイソシアヌレート体、東ソー株式会社の商品名)
HL:コロネート(登録商標)HL(HDIアダクト体、東ソー株式会社の商品名)
TPA:デュラネート(登録商標)TPA-100(HDIイソシアヌレート体、旭化成株式会社の商品名)
TKA:デュラネート(登録商標)TKA-100(HDIイソシアヌレート体、旭化成株式会社の商品名)
【0079】
<(メタ)アクリル系樹脂フィルムの光学特性>
実施例1~6、比較例1~4及び参考例の(メタ)アクリル系樹脂フィルムから支持体(剥離フィルム)を剥離して得られた(メタ)アクリル系樹脂フィルム(以下「試験フィルム」ともいう。)の光学特性は、次のように測定した。
【0080】
(1)全ヘイズ値、全光線透過率(T.t.)
前記試験フィルムから試験片を作製し、JIS K 7136(2000)に準拠して、ヘイズメータ(製造者:株式会社村上色彩研究所、型式:ヘイズメータ HM-150N)を用いて、全ヘイズ値及び全光線透過率(T.t.)を測定した。
【0081】
(2)内部ヘイズ値
ブランクとして、厚さ10μmの粘着シート(具体的には、光学用透明アクリル粘着シート)を貼合した厚さ50μmのCOPフィルム(日本ゼオン株式会社 ゼオノアZF-16)の試験片を2片用意し、粘着シート面が互いに貼り合わさるように2片の試験片を貼合した。得られた「COPフィルム/粘着シート/粘着シート/COPフィルム」の積層体を対象とし、JIS K 7136(2000)に準拠して、前記ヘイズメータを用いてヘイズ値(%)を測定し、これをブランク2片分のヘイズ値Hb2(%)とした。
【0082】
次に、前記試験フィルムから試験片を作製し、支持体に密着していた面および支持体とは反対の面(Air面側)にそれぞれ前記ブランクを貼合した。得られた「COPフィルム/粘着シート/試験フィルム/粘着シート/COPフィルム」の積層体を対象とし、JIS K 7136(2000)に準拠して、前記ヘイズメータを用いてヘイズ値(%)を測定し、これを両面にブランクを有する試験フィルムのヘイズ値Hとした。
【0083】
下式から試験フィルムの内部ヘイズ値(%)を算出した。
内部ヘイズ値(%)=H(%)-Hb2(%)
【0084】
(3)外部ヘイズ値
前記試験フィルムから試験片を作製し、支持体に密着していた面に前記ブランクを貼合した。得られた「COPフィルム/粘着シート/試験フィルム」の積層体を対象とし、JIS K 7136(2000)に準拠して、前記ヘイズメータを用いてヘイズ値(%)を測定し、これを片面にブランクを有する試験フィルムのヘイズ値Hとした。
【0085】
下式から試験フィルムの外部ヘイズ値(%)を算出した。
外部ヘイズ値(%)=H(%)-(Hb2(%)÷2)-内部ヘイズ値(%)
【0086】
(4)測定結果
前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムの光学特性の測定を表3に示す。
【0087】
【表3】
【0088】
実施例1~6の光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、全ヘイズ値及び内部ヘイズ値が低く、全光線透過率が高いだけでなく、外部ヘイズ値も低かった。
比較例1~4の(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、全ヘイズ値及び内部ヘイズ値が低く、全光線透過率が高いが、外部ヘイズ値が高かった。
参考例1の(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、全ヘイズ値及び内部ヘイズ値が低く、全光線透過率が高いだけでなく、外部ヘイズ値も低かったが、ゴム粒子を含まないため、耐屈曲性に劣る。
【符号の説明】
【0089】
10,20…光学用多層(メタ)アクリル系樹脂フィルム、11…第1の(メタ)アクリル系樹脂層、12…第2の(メタ)アクリル系樹脂層、13…支持体密着面、14…外部接触面、15…支持体、30…偏光フィルム、31,32…保護層、33…偏光子。
図1
図2
図3