(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025154334
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】感光性転写材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20251002BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20251002BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20251002BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
G03F7/004 512
G03F7/027 502
B32B7/022
B32B27/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024057262
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】両角 一真
(72)【発明者】
【氏名】藤本 進二
(72)【発明者】
【氏名】漢那 慎一
【テーマコード(参考)】
2H225
4F100
【Fターム(参考)】
2H225AC34
2H225AC63
2H225AC64
2H225AD14
2H225AD24
2H225AM04N
2H225AM10N
2H225AM13P
2H225AM23P
2H225AM32P
2H225AM45P
2H225AM53N
2H225AM54P
2H225AM58N
2H225AM62P
2H225AN03P
2H225AN11P
2H225AN12N
2H225AN44P
2H225AN65P
2H225AN66P
2H225AN82P
2H225AN87P
2H225AN89P
2H225BA18P
2H225BA32N
2H225BA32P
2H225BA33N
2H225BA33P
2H225CA11
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
4F100AK01
4F100AK01B
4F100AK01D
4F100AK21
4F100AK21C
4F100AK41
4F100AK41B
4F100AK49
4F100AK49A
4F100AL01
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100AT00A
4F100BA04
4F100BA07
4F100CA18
4F100CA18C
4F100JA05
4F100JA05B
4F100JB09
4F100JB09C
4F100JB16
4F100JB16B
4F100JK06
4F100JK15
(57)【要約】
【課題】仮支持体剥離露光により得られるパターンのパターン形状に優れる感光性転写材料及びその製造方法の提供。
【解決手段】仮支持体、熱可塑性樹脂層、中間層、及び、感光性樹脂層をこの順で有し、上記仮支持体の上記熱可塑性樹脂層と接する面における高さ0.5μm以上10μm未満の突起の量が、1×10
2個/mm
2以上5×10
6個/mm
2未満であり、上記熱可塑性樹脂層が、共重合ポリエステル樹脂を含み、上記熱可塑性樹脂層の平均厚みが、1μm~10μmであり、上記熱可塑性樹脂層と上記中間層との剥離力が、50mN/cm以下である仮支持体剥離露光用の感光性転写材料及びその製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮支持体、熱可塑性樹脂層、中間層、及び、感光性樹脂層をこの順で有し、
前記仮支持体の前記熱可塑性樹脂層と接する面における高さ0.5μm以上10μm未満の突起の量が、1×102個/mm2以上5×106個/mm2未満であり、
前記熱可塑性樹脂層が、共重合ポリエステル樹脂を含み、
前記熱可塑性樹脂層の平均厚みが、1μm~10μmであり、
前記熱可塑性樹脂層と前記中間層との剥離力が、50mN/cm以下である
仮支持体剥離露光用の感光性転写材料。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂層と前記中間層とが接している請求項1に記載の感光性転写材料。
【請求項3】
前記中間層が、水溶性樹脂を含む請求項1又は請求項2に記載の感光性転写材料。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂層の平均厚みが、1μm~5μmである請求項1又は請求項2に記載の感光性転写材料。
【請求項5】
前記共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度が、30℃以上80℃以下である請求項1又は請求項2に記載の感光性転写材料。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂層が、ケイ素原子を有する界面活性剤を含む請求項1又は請求項2に記載の感光性転写材料。
【請求項7】
前記中間層が、ケイ素原子を有する界面活性剤を含む請求項1又は請求項2に記載の感光性転写材料。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂層が、可塑剤を含む請求項1又は請求項2に記載の感光性転写材料。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂層が、ポリエステル系可塑剤を含む請求項1又は請求項2に記載の感光性転写材料。
【請求項10】
仮支持体の片面に、共重合ポリエステル樹脂を含有する熱可塑性樹脂層を塗布により1μm~10μmの膜厚で形成する工程と、
前記熱可塑性樹脂層の前記仮支持体と接する面と反対側の面に、前記中間層を塗布により形成する工程と、
前記中間層の前記熱可塑性樹脂層と接する面と反対側の面に、前記感光性樹脂層を塗布により形成する工程と、をこの順で含む請求項1又は請求項2に記載の感光性転写材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性転写材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定のパターンを得るための工程数が少ないという理由から、感光性転写材料を用いて任意の基板上に感光性樹脂層を配置して、この感光性樹脂層に対してマスクを介して露光し、更に現像する方法が広く利用されている。
【0003】
従来の感光性転写材料としては、特許文献1~3に記載のものが挙げられる。
特許文献1には、支持体上に、クッション層と感光層とをこの順に有するパターン形成材料において、上記感光層が、増感剤として蛍光増白剤を含み、かつ、上記感光層を露光し現像する場合において、上記感光層の露光する部分の平均厚みを上記露光及び現像後において変化させない上記露光に用いる光の最小エネルギーが0.1~50mJ/cm2であることを特徴とするパターン形成材料が記載されている。
【0004】
特許文献2には、仮支持体と、上記仮支持体に接触する中間層と、感光層と、をこの順に含み、上記中間層から上記仮支持体を剥離した場合に露出した上記中間層の表面の粗さRaが、2nm以上である、転写材料が記載されている。
【0005】
特許文献3には、仮支持体と、50μm以下の平均厚みを有する転写層と、をこの順に含む、蒸着マスク製造用転写フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-178459号公報
【特許文献2】国際公開第2022/138468号
【特許文献3】特開2022-168819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、仮支持体剥離露光により得られるパターンのパターン形状に優れる感光性転写材料及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 仮支持体、熱可塑性樹脂層、中間層、及び、感光性樹脂層をこの順で有し、上記仮支持体の上記熱可塑性樹脂層と接する面における高さ0.5μm以上10μm未満の突起の量が、1×102個/mm2以上5×106個/mm2未満であり、上記熱可塑性樹脂層が、共重合ポリエステル樹脂を含み、上記熱可塑性樹脂層の平均厚みが、1μm~10μmであり、上記熱可塑性樹脂層と上記中間層との剥離力が、50mN/cm以下である仮支持体剥離露光用の感光性転写材料。
<2> 上記熱可塑性樹脂層と上記中間層とが接している<1>に記載の感光性転写材料。
<3> 上記中間層が、水溶性樹脂を含む<1>又は<2>に記載の感光性転写材料。
<4> 上記熱可塑性樹脂層の平均厚みが、1μm~5μmである<1>~<3>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<5> 上記共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度が、30℃以上80℃以下である<1>~<4>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<6> 上記熱可塑性樹脂層が、ケイ素原子を有する界面活性剤を含む<1>~<5>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<7> 上記中間層が、ケイ素原子を有する界面活性剤を含む<1>~<6>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<8> 上記熱可塑性樹脂層が、可塑剤を含む<1>~<7>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<9> 上記熱可塑性樹脂層が、ポリエステル系可塑剤を含む<1>~<8>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<10> 仮支持体の片面に、共重合ポリエステル樹脂を含有する熱可塑性樹脂層を塗布により1μm~10μmの膜厚で形成する工程と、上記熱可塑性樹脂層の上記仮支持体と接する面と反対側の面に、上記中間層を塗布により形成する工程と、上記中間層の上記熱可塑性樹脂層と接する面と反対側の面に、上記感光性樹脂層を塗布により形成する工程と、をこの順で含む<1>~<9>のいずれか1つに記載の感光性転写材料の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、仮支持体剥離露光により得られるパターンのパターン形状に優れる感光性転写材料及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示に係る感光性転写材料の構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示について詳細に説明する。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。
本明細書において、「透明」とは、波長400~700nmの可視光の平均透過率が、80%以上であることを意味し、90%以上であることが好ましい。
本明細書において、可視光の平均透過率は、分光光度計を用いて測定される値であり、
例えば、日立製作所株式会社製の分光光度計U-3310を用いて測定できる。
本明細書において、特段の断りのない限り、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、カラムとして、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、若しくは、TSKgel G2000HxL(いずれも東ソー株式会社製の商品名)、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)、検出器として示差屈折計、及び、標準物質としてポリスチレンを使用し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により測定した標準物質のポリスチレンを用いて換算した値である。
また、本明細書において、特段の断りがない限り、分子量分布がある化合物の分子量は、重量平均分子量(Mw)である。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロイルオキシ基」は、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリルアミド基」は、アクリルアミド基及びメタクリルアミド基の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念である。
【0012】
なお、本明細書において、「アルカリ可溶性」とは、液温が22℃である1質量%炭酸ナトリウム水溶液100gへの溶解度が0.1g以上であることを意味する。したがって、例えば、アルカリ可溶性樹脂とは、上述の溶解度条件を満たす樹脂を意図する。
本明細書において「水溶性」とは、液温が22℃であるpH7.0の水100gへの溶解度が0.1g以上であることを意味する。したがって、例えば、水溶性樹脂とは、上述の溶解度条件を満たす樹脂を意図する。
本明細書において、組成物の「固形分」とは、組成物を用いて形成される組成物層を形成する成分を意味し、組成物が溶剤(有機溶剤、水等)を含む場合、溶剤を除いたすべての成分を意味する。また、組成物層を形成する成分であれば、液体状の成分も固形分とみなす。
本明細書において、仮支持体、熱可塑性樹脂層、中間層、感光性樹脂層等の平均厚みは、SEM(走査型電子顕微鏡:Scanning Electron Microscope)による断面観察により測定し、平均厚みは任意の5点の平均値として算出される。
本明細書において、24GHzにおける基板の誘電正接の測定は、共振器法により行う。
誘電正接を測定する装置としては、株式会社関東電子応用開発製の24GHzスプリットシリンダ型共振器又はこれと同程度の装置を使用することができる。
【0013】
(感光性転写材料)
本開示に係る感光性転写材料は、仮支持体、熱可塑性樹脂層、中間層、及び、感光性樹脂層をこの順で有し、上記仮支持体の上記熱可塑性樹脂層と接する面における高さ0.5μm以上10μm未満の突起の量が、1×102個/mm2以上5×106個/mm2未満であり、上記熱可塑性樹脂層が、共重合ポリエステル樹脂を含み、上記熱可塑性樹脂層の平均厚みが、1μm~10μmであり、上記熱可塑性樹脂層と上記中間層との剥離力が、50mN/cm以下である仮支持体剥離露光用の感光性転写材料である。
【0014】
仮支持体を剥離して露光する方式に用いる感光性転写材料において、仮支持体として表面突起の多い安価なフィルムを用いることにより、仮支持体を剥離して露光するにもかかわらず、突起により感光性樹脂層の表面に凹形状を含む表面荒れが生じて露光光に悪影響を与え、微細パターンの形成に不適な場合があった。
これに対し、熱可塑性樹脂及び中間層を含む上記構成とし、かつ、仮支持体の剥離時に熱可塑性樹脂層もともに剥離されることにより、仮支持体の表面突起の影響を抑制でき、表面突起が多い仮支持体を用いながらも、感光性樹脂層の表面の荒れを抑制し、微細パターンの形成が可能であることを本発明者らは見出した。
また、本発明者らが詳細に検討した結果、感光性樹脂層の表面の荒れは、熱可塑性樹脂層及び中間層が吸湿することにより生じる表面の荒れにも起因することをつきとめ、この知見に基づき、仮支持体と感光性樹脂層との間に、従来より薄い1μm~10μmの膜厚及び特定組成の熱可塑性樹脂層と、中間層とを用いる構成としたことにより、熱可塑性樹脂層及び中間層が吸湿することによる熱可塑性樹脂層及び中間層の表面の荒れを抑制し、中間層の表面の荒れに対応する感光性樹脂層の表面の荒れが抑制され、微細パターンの形成が可能であることを本発明者らは見出した。
【0015】
感光性転写材料は、感光性樹脂層の中間層側とは反対側の表面に、保護フィルムを有していてもよい。
図1は、本開示に係る感光性転写材料の構成の一例を示す概略図である。
図1に示す感光性転写材料10は、仮支持体11と、熱可塑性樹脂層13、中間層15、及び、感光性樹脂層17を含む転写層12と、保護フィルム19とを、この順に有する。また、
図1で示す感光性転写材料10は保護フィルム19を配置した形態であるが、保護フィルム19は、配置されなくてもよい。
【0016】
<仮支持体の突起の量>
上記仮支持体の上記熱可塑性樹脂層と接する面における高さ0.5μm以上10μm未満の突起の量は、1×102個/mm2以上5×106個/mm2未満である。本開示に係る感光性転写材料が上記した構成を有していることで、表面突起が多い仮支持体を用いながらも、感光性樹脂層の表面の荒れを抑制し、微細パターンの形成が可能である。
【0017】
本開示における仮支持体の熱可塑性樹脂層と接する面における高さ0.5μm以上10μm未満の突起の量は、3次元光学プロファイラー(例えば、New View7300、Zygo社製)を用いて測定する。
まず、感光性転写材料から、仮支持体を剥離する。仮支持体の中間層側表面の表面プロファイルを得る。測定・解析ソフトウェアとしては、MetroPro ver8.3.2のMicroscope Applicationを用いる。次に、測定・解析ソフトウェアを用いてSurface Map画面を表示し、Surface Map画面中でヒストグラムデータを得る。得られたヒストグラムデータから、高さ0.5μm以上10μm未満の突起の量を得る。1mm2を10か所観察し、平均を突起の量とする。
【0018】
<熱可塑性樹脂層と中間層との剥離力>
熱可塑性樹脂層と中間層との剥離力は、50mN/cm以下である。剥離力が50mN/cm以下であると、仮支持体の剥離時に仮支持体とともに熱可塑性樹脂層も剥離されることにより、仮支持体の表面突起の影響を抑制することができる。
熱可塑性樹脂層と中間層との剥離力は、パターン形状の観点から、5mN/cm~50mN/cmであることが好ましく、10mN/cm~40mN/cmであることがより好ましく、10mN/cm~20mN/cmであることが更に好ましく、10mN/cm~15mN/cmであることが特に好ましい。
【0019】
本開示において、熱可塑性樹脂層と中間層との剥離力は、以下の方法により測定される。
厚み25μmのポリイミド基板上に、蒸着法にて厚み5nmのニッケル-クロム(8/2)層と200nmの銅層をこの順に設け、銅層付きポリイミド基板を用意する。
感光性転写材料を30mm×100mmの大きさに裁断し、保護フィルムを有する場合は、保護フィルムを剥離する。ロールラミネーターを用いて、温度100℃、線圧0.5MPa、及び、線速度(所謂、ラミネート速度)1m/分の条件で、感光性転写材料と銅層付きポリイミド基板とを貼り合わせ、銅層付きポリイミド基板の面上に、感光性樹脂層、中間層、熱可塑性樹脂層、及び、仮支持体をこの順に配置し、評価用積層体を得る。
得られた積層体に対し、圧力0.45MPa、温度50℃、及び、処理時間1時間の条件でオートクレーブ処理を行う。処理後の積層体を、両面テープを用いて0.7mm厚のガラスに貼り付ける。ガラスに貼り付けた積層体に対し、テンシロン〔型番:(株)エーアンドデイー製テンシロン万能試験機〕を用いて、仮支持体を剥離する180°剥離試験を剥離速度300mm/分の条件で行い、剥離力を測定する。
【0020】
以下、上述した以外の感光性転写材料の構成について、詳細に説明する。
【0021】
<仮支持体>
仮支持体は、感光性樹脂層等を支持する部材であり、露光前には剥離処理により除去される。
【0022】
仮支持体は、単層構造であっても、複層構造であってもよい。
仮支持体は、フィルムであることが好ましく、樹脂フィルムであることがより好ましい。仮支持体としては、可撓性を有し、かつ、加圧下、又は、加圧及び加熱下において、著しい変形、収縮、又は、伸びを生じないフィルムが好ましい。
上記フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。
樹脂フィルムは、延伸フィルムであってもよく、無延伸フィルムであってもよいが、延伸フィルムであることが好ましく、2軸延伸フィルムであることがより好ましい。
中でも、仮支持体としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
また、仮支持体として使用するフィルムには、シワ等の変形、傷等がないことが好ましい。
【0023】
仮支持体の平均厚みは特に制限されないが、5.0μm~200.0μmであることが好ましく、取り扱いやすさ及び汎用性の点から、5.0μm~150.0μmであることがより好ましく、5.0μm~50.0μmであることが更に好ましく、5.0μm~25.0μmであることが特に好ましい。
【0024】
ハンドリング性を付与する点で、仮支持体の表面に、微小な粒子を含む層(滑剤層)を設けてもよい。滑剤層は仮支持体の片面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。滑剤層に含まれる粒子の直径は、0.05μm~0.8μmであることが好ましい。
また、滑剤層の膜厚は、0.05μm~1.0μmであることが好ましい。
【0025】
仮支持体の剥離性、解像性の観点から、仮支持体の中間層側の表面の表面自由エネルギーは、66.0mJ/m2以下が好ましく、63.0mJ/m2以下であることがより好ましく、60.0mJ/m2以下であることが更に好ましい。
塗膜の付着性の観点から、表面自由エネルギーの下限は、35mJ/m2以上であることが好ましく、40mJ/m2以上であることがより好ましく、45mJ/m2以上であることが更に好ましい。
【0026】
一実施形態において、仮支持体としては、基材のみからなるもの;基材と、基材の一方の面に配置されている粒子含有層と、を備える積層体;基材と、基材の両面に配置されている粒子含有層と、を備える積層体が挙げられる。
【0027】
仮支持体を構成する基材としては、上記した樹脂フィルム、ガラス、紙等が挙げられる。
仮支持体を構成する基材は、強度、可撓性及び光透過性の観点から、樹脂フィルムであることが好ましい。
樹脂フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましく、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0028】
基材の一方の面又は両面に粒子含有層が配置されている場合には、粒子含有層は1層であってもよく、2層以上であってもよい。
【0029】
粒子含有層は、例えば、基材上に、粒子含有層用組成物を塗布して乾燥させることにより形成される。また、粒子含有層は樹脂フィルムを製膜する際に共押し出し法により配置することもできる。
【0030】
粒子含有層用組成物は、バインダーポリマー及び粒子を含むことが好ましい。バインダーポリマーの種類は特に限定されず、例えば、目的に応じて適宜選択することができる。バインダーポリマーとしては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、スチレンブタジエン系樹脂、エステル樹脂、塩化ビニル樹脂、及び塩化ビニリデン樹脂が挙げられる。共押し出し法により粒子含有層を配置する場合には、バインダーポリマーとしてポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。
【0031】
粒子含有層は、バインダーポリマー及び粒子をそれぞれ1種単独で含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
【0032】
粒子含有層に含まれる粒子は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。粒子含有層における粒子の含有量は、粒子含有層用組成物への粒子の添加量によって適宜調整可能である。本明細書では、粒子含有層に含まれる粒子を「添加粒子」という。
【0033】
添加粒子は、仮支持体の製造工程中に予期せず混入した不純物、及び、仮支持体の製造工程中に形成される粒子とは区別されるものである。添加粒子は、200℃で溶融しない特性を有する粒子であることが好ましい。
【0034】
仮支持体において、添加粒子であるか否かについては、例えば、以下の方法で判別することができる。添加粒子は、通常、形状及び分布に均一性があるため、光学顕微鏡で観察することにより判別することができる。
【0035】
添加粒子としては、例えば、無機粒子及び有機粒子が挙げられる。
無機粒子としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化アルミニウム(アルミナ)等の無機酸化物の粒子が挙げられる。
有機粒子としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリスチレン等のポリマーの粒子が挙げられる。
仮支持体が粒子含有層を有する場合には、粒子含有層に含まれる添加粒子は、無機酸化物の粒子であることが好ましい。
【0036】
添加粒子の平均粒径は特に限定されないが、例えば、0.1μm~10μmである。平均粒径は、ウルトラミクロトームで100nmの平均厚みの切片を切り出し、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて測定される。
【0037】
本開示に係る感光性転写材料では、仮支持体の熱変形率が1.0%以下であり、0.5%以下であることが好ましい。熱変形率の下限値は特に限定されず、0%であることが好ましい。仮支持体の熱変形率が1.0%以下であることにより、感光性転写材料と貼り合わせられる基板の変形が抑制される。
【0038】
本開示において、熱変形率は、以下の方法で測定される。
仮支持体の主面において、対向する2組の辺のうち1組の辺と平行な方向をA方向、A方向と垂直な方向をB方向とする。
A方向の長さ30mm、B方向の長さ4mmに切り出した試験片と、B方向の長さ30mm、A方向の長さ4mmに切り出した試験片と、を準備する。
2つの試験片を用いて、以下の測定を行う。
測定装置として、熱膨張率測定装置(例えば、製品名「TMA450EM」、TAインスツルメント社製)を用いる。
測定条件は以下のとおりである。
測定モード:引張モード、
つかみ間距離:16mm
設定荷重:0.05Nから0.48Nまで6.00N/分で変化させる。
25℃から100℃まで、昇温速度20℃/分で各試験片を加熱し、各試験片の伸び率を5回ずつ測定し、平均値を算出する。
2つの試験片のうち、伸び率の平均値の大きい方を、熱変形率として採用する。
【0039】
仮支持体の熱変形率を低下させる方法としては、例えば、仮支持体の平均厚みを厚くする方法、及び、仮支持体に粒子を含有させ、仮支持体に含まれる粒子を増加させる方法が挙げられる。
【0040】
本開示に係る感光性転写材料では、感光性転写材料と貼り合わせられる基板の変形を抑制する観点から、仮支持体のヘイズは2.0%より大きいことが好ましい。
【0041】
仮支持体のヘイズは、上記観点から、2.5%以上であることがより好ましい。ヘイズの上限値は特に限定されず、例えば、10%である。
【0042】
本開示に係る感光性転写材料を用いてパターンを形成する場合に、感光性転写材料と基板と貼り合わせた後、露光前に、仮支持体を剥離することが好ましい。仮支持体を露光前に剥離すれば、仮支持体のヘイズが高いことによる露光への影響を考慮しなくてよい。
【0043】
本開示において、ヘイズは、ヘイズメータを用いて、JIS K7136:2000に準じて測定される。ヘイズメータとしては、例えば、日本電色工業社製の製品名「NDH-2000」が用いられる。
【0044】
また、本開示に係る感光性転写材料では、感光性転写材料と貼り合わせられる基板の変形を抑制する観点から、仮支持体に含まれる、直径5μm以上の粒子及び直径5μm以上の凝集物の総数が、30個/mm2より多いことが好ましい。
【0045】
上記粒子及び凝集物の総数は、上記観点から、40個/mm2以上であることがより好ましい。総数の上限値は特に限定されず、例えば、50個/mm2である。
【0046】
ここでいう粒子及び凝集物は、仮支持体を偏光顕微鏡で観察した際に、周囲の領域との偏光の違いが観察可能な領域を有するものを意味する。粒子及び凝集物としては、例えば、基材の製造中に形成される樹脂の炭化物、及び、基材の製造に用いられる触媒が挙げられる。また、上記のような粒子含有層を設ける場合に、粒子含有層に含まれる添加粒子も、上記粒子に該当する。
【0047】
本開示において、仮支持体に含まれる粒子及び凝集物の総数は、以下の方法で測定される。
【0048】
まず、仮支持体を偏光顕微鏡(製品名「BX60」に「U-POT」フィルターと「U-AN360」フィルターを挿入して簡易偏光顕微鏡としたもの、対物レンズ10倍、オリンパス社製)で観察し、偏光の乱れが発生している部分を異物(粒子又は凝集物)として特定する。特定した異物を落射型レーザー顕微鏡(製品名「共焦点レーザー顕微鏡VL2000D」、Lasertec社製)で観察する。また、光学顕微鏡(製品名「BX60」、対物レンズ100倍、オリンパス社製)で異物の直径を測定し、観察領域1mm2に含まれる、直径が5μm以上である異物の個数を計測する。なお、異物に空隙が含まれる場合には、空隙を含めて直径を測定する。異物が円形ではない場合には、最も長い径を測定する。
【0049】
本開示に係る感光性転写材料を用いてパターンを形成する場合に、感光性転写材料と基材と貼り合わせた後、露光前に、仮支持体を剥離することが好ましい。仮支持体を露光前に剥離すれば、仮支持体に含まれる粒子及び凝集物が多いことによる露光への影響を考慮しなくてよい。
【0050】
また、本開示に係る感光性転写材料では、感光性転写材料と貼り合わせられる基板の変形を抑制する観点から、仮支持体が、落射型レーザー顕微鏡で13.5mm2の面積にて観測した際の光学異常領域の合計面積比率が300ppmより大きい領域を含むことが好ましい。
【0051】
光学異常領域の合計面積比率は、上記観点から、350ppm以上であることがより好ましい。合計面積比率の上限値は特に限定されず、例えば、500ppmである。
【0052】
本開示において、光学異常領域の面積は、仮支持体の平均厚みの中心位置から厚み方向の一方又は他方へそれぞれ2μmまでの領域で観測される光学異常領域の面積を意味する。
【0053】
本開示において、光学異常領域とは、仮支持体の主領域(仮支持体を構成する樹脂)とは光学物性が異なる領域(具体的には、反射率若しくは屈折率が主領域と異なるか、又は、散乱、回折等の光学的現象が主領域よりも強く生じる領域)である。仮支持体が例えば粒子を含有する場合、光学異常領域は、粒子による遮光部分と、粒子以外の光学異常領域(例えば、粒子及び仮支持体の主領域とは異なる屈折率を有する異常屈折率領域)との両者を含み得る。光学異常領域の例は、仮支持体の主領域と配向性及び/又は結晶性が異なる領域、空気の領域、空気以外の気体の領域、気体がほぼ存在しない空洞領域等である。
【0054】
本開示において、光学異常領域の合計面積は以下の方法で測定される。
【0055】
落射型レーザー顕微鏡(Olympus製OLS-4100)の対物レンズの上部に偏光フィルター(OLS4000-QWP)を挿入する。次に、レーザー顕微鏡のステージ上に多孔質吸着板(ユニバーサル技研製65F-HG)及び真空ポンプを用いて30mm×30mmに切断した仮支持体を水平に吸引固定する。吸引固定した仮支持体を、対物レンズ50倍、レーザー光量60(レーザー波長は405nm)の条件にて観測する。この際、仮支持体の平均厚みの中心位置から厚み方向の一方又は他方へそれぞれ2μmまでの領域を測定領域に定め、測定領域259μm×260μmで測定箇所数200点で計測を行う。したがって、測定領域は合計で0.259mm×0.26mm×200=13.5mm2となる。
【0056】
計測された画像内の最大光量のピクセルと最小光量のピクセルとの光量差を4096階調(最大光量の値が4095で、最小光量の値が0になる)に分ける。画像内のピクセルの光量分布をグラフ化したヒストグラム(横軸:光量の階調(最小値0、最大値4095)、縦軸:ピクセルの個数)を作成する。作成したヒストグラムの2つある裾野の値の大きい方の裾野の値から400階調プラスした階調を閾値として、計測された画像を二値化し、閾値よりも光量が大きいピクセルの面積を合計し、その合計面積を光学異常領域の合計面積とする。計測面積に対する光学異常領域の合計面積の比率を算出する。
【0057】
仮支持体は、中間層との密着性を向上させる観点から、中間層と接する側の表面に、紫外線照射、コロナ放電、プラズマ処理等の表面処理が施されていてもよい。紫外線照射によって表面処理を行う場合には、露光量は、10mJ/cm2~2,000mJ/cm2であることが好ましく、50mJ/cm2~1,000mJ/cm2であることがより好ましい。
【0058】
紫外線照射のための光源としては、例えば、150nm~450nm波長帯域の光を発する光源(例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極放電ランプ、及び発光ダイオード(LED))が挙げられる。出力及び照度は特に制限されない。
【0059】
中間層は仮支持体の表面に接していることが好ましい。中間層に対する仮支持体の凸凹の転写の観点から、仮支持体の中間層側表面の表面粗さRmaxが0.5μm以下であることが好ましく、0.01μm~0.5μmであることがより好ましい。
【0060】
仮支持体の中間層側表面の表面粗さRmaxは、以下の方法で測定される。
本開示において、表面粗さRmaxは、3次元光学プロファイラー(例えば、New View7300、Zygo社製)を用いて測定される。
まず、感光性転写材料から、仮支持体を剥離する。仮支持体の中間層側表面の表面プロファイルを得る。測定・解析ソフトウェアとしては、MetroPro ver8.3.2のMicroscope Applicationを用いる。次に、測定・解析ソフトウェアを用いてSurface Map画面を表示し、Surface Map画面中でヒストグラムデータを得る。得られたヒストグラムデータから、表面粗さRmaxを得る。なお、表面粗さRmaxは、基準長さにおける粗さ曲線の最大高さに対応する。
【0061】
仮支持体は、リサイクル品であってもよい。リサイクル品としては、使用済みフィルム等を洗浄した後、チップ化し、チップを原料としてフィルム化したものが挙げられる。リサイクル品の具体例としては、東レ社のEcouseシリーズが挙げられる。
【0062】
<熱可塑性樹脂層>
感光性転写材料は、仮支持体と中間層との間に、熱可塑性樹脂層を有する。
上記熱可塑性樹脂層が、共重合ポリエステル樹脂を含み、また、上記熱可塑性樹脂層の平均厚みが、1μm~10μmである。
従来より薄い1μm~10μmの平均厚みを有し、かつ共重合ポリエステル樹脂を含む熱可塑性樹脂層であることにより、熱可塑性樹脂層が吸湿することによる熱可塑性樹脂層及び中間層の表面の荒れを抑制し、中間層の表面の荒れに対応する感光性樹脂層の表面の荒れが抑制され、仮支持体剥離露光により得られるパターンのパターン形状に優れる。
【0063】
共重合ポリエステル樹脂とは、ポリエステル樹脂の多価カルボン酸成分と多価アルコール成分のどちらか、あるいは両方の成分を2種類以上組み合わせた重縮合物である。
上記共重合ポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。
【0064】
多価カルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸及びこれらの置換体等が挙げられる。特に制限はないが、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル、スルホン酸ナトリウム基を有する多価カルボン酸などが挙げられる。これらの多価カルボン酸成分は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0065】
多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の脂肪族ジオールや1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオールなどが挙げられる。特に制限はないが、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブタンジオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。これらの多価アルコール成分は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0066】
共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、パターン形状、及び、表面荒れの観点から、20℃以上100℃以下であることが好ましく、30℃以上80℃以下であることがより好ましく、40℃以上70℃以下であることが特に好ましい。
また、熱可塑性樹脂層における熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、パターン形状、及び、表面荒れの観点から、20℃以上100℃以下であることが好ましく、30℃以上80℃以下であることがより好ましく、40℃以上70℃以下であることが特に好ましい。
本開示において、樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定することができる。
具体的な測定方法は、JIS K 7121(1987年)又はJIS K 6240(2011年)に記載の方法に順じて行う。本明細書におけるガラス転移温度は、補外ガラス転移開始温度(以下、Tigと称することがある)を用いている。
また、熱可塑性樹脂を2種以上含む場合は、熱可塑性樹脂の数平均分子量及びガラス転移温度は、いずれも加重平均値を意味する。
【0067】
共重合ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、パターン形状、及び、表面荒れの観点から、3,000~500,000であることが好ましく、5,000~100,000であることがより好ましく、10,000~50,000であることが更に好ましい。
【0068】
熱可塑性樹脂層は、共重合ポリエステル樹脂を1種又は2種以上含むことができる。
熱可塑性樹脂層における共重合ポリエステル樹脂の含有量は、10質量%~100質量%であることが好ましく、30質量%~100質量%であることがより好ましく、50質量%~100質量%であることが更に好ましい。
【0069】
熱可塑性樹脂層は、共重合ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
共重合ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリル共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリアミド樹脂、共重合型でないポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリアルキレングリコール等が挙げられる。
中でも、現像性及び転写性の観点から、熱可塑性樹脂は、アクリル樹脂であることが好ましい。
ここで、アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸により形成された構成単位、(メタ)アクリル酸エステルにより形成された構成単位及び(メタ)アクリル酸アミドにより形成された構成単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構成単位を有する樹脂を指し、上記構成単位の含有量が、樹脂の全量に対し、50質量%以上であることが好ましい。
【0070】
現像性の観点から、共重合ポリエステル樹脂及び熱可塑性樹脂は酸基を有することが好ましい。
【0071】
解像性、現像性等の観点から、熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5,000~500,000であることが好ましく、10,000~100,000であることがより好ましく、30,000~60,000であることが更に好ましい。
熱可塑性樹脂の分散度(Mw/Mn)は、1.0~6.0が好ましく、1.0~5.0がより好ましく、1.0~4.0が更に好ましく、1.0~3.0が特に好ましい。
【0072】
解像性、現像性等の観点から、熱可塑性樹脂の酸価は、60mgKOH/g~220mgKOH/gであることが好ましく、120mgKOH/g~200mgKOH/gであることがより好ましく、150mgKOH/g~190mgKOH/gであることが更に好ましい。
【0073】
熱可塑性樹脂層は、パターン形状、及び、表面荒れの観点から、可塑剤を含むことが好ましい。
【0074】
可塑剤は、アルカリ可溶性樹脂よりも分子量(オリゴマー又はポリマーである場合は重量平均分子量(Mw))が小さいことが好ましい。可塑剤の分子量(重量平均分子量(Mw))は、200~2,000が好ましい。
【0075】
可塑剤は、熱可塑性樹脂と相溶して可塑性を発現す化合物であれば特に限定されないが、可塑性付与の観点から、可塑剤は、分子中にアルキレンオキシ基を有することが好ましく、ポリアルキレングリコール化合物であることがより好ましい。可塑剤に含まれるアルキレンオキシ基は、ポリエチレンオキシ構造又はポリプロピレンオキシ構造であることがより好ましい。
中でも、可塑剤としては、共重合ポリエステル樹脂との相溶性、パターン形状、及び、表面荒れの観点から、ポリエステル系可塑剤であることが好ましい。
【0076】
ラミネート性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対する、可塑剤の含有量は、15質量%~60質量%であることが好ましく、25質量%~50質量%であることがより好ましく、35質量%~40質量%であることが更に好ましい。
【0077】
熱可塑性樹脂層は、界面活性剤を1種又は2種以上含んでいてもよい。
界面活性剤は、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤からなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
また、中間層と隣接する層(感光性樹脂層、熱可塑性樹脂等)との密着性(以下、「層間密着性」ともいう。)向上の観点からは、シリコーン系界面活性剤が好ましい。
仮支持体の剥離性、解像性、酸素遮断能、欠陥抑制性、層間密着性等の観点から、界面活性剤の全質量に対する、シリコーン系界面活性剤の含有量は、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることが好ましく、100質量%であってもよい。
シリコーン系界面活性剤としては、シロキサン結合からなる直鎖状ポリマー、側鎖及び末端の少なくとも一方に有機基を導入した変性シロキサンポリマー等が挙げられる。
【0078】
中でも、熱可塑性樹脂層と中間層との間の剥離性、パターン形状、及び、表面荒れの観点から、上記中間層は、ケイ素原子を有する界面活性剤を含むことが好ましく、シリコーン系界面活性剤を含むことがより好ましい。
【0079】
仮支持体剥離性、解像性、酸素遮断能等の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対する、界面活性剤の含有量は、0.01質量%~3質量%であることが好ましく、0.02質量%~1質量%であることがより好ましく、0.03質量%~0.3質量%であることが更に好ましい。
【0080】
熱可塑性樹脂層は、着色剤、色素、酸発生剤、難燃剤、酸化防止剤、防錆剤、分散剤等の添加剤を含むことができる。
【0081】
熱可塑性樹脂層の平均厚みは、1μm~10μmであり、仮支持体の剥離性、解像性、酸素遮断能、パターン形状、及び、表面荒れの観点から、1μm~8μmであることが好ましく、1μm~5μmであることがより好ましく、1μm~3μmであることが特に好ましい。
【0082】
<中間層>
本開示に係る感光性転写材料は、仮支持体と感光性樹脂層との間に、中間層を有する。
また、パターン形状、及び、表面荒れの観点から、上記熱可塑性樹脂層と上記中間層とが接していることが好ましい。
中間層は、酸素遮断能を有することが好ましい。中間層が酸素遮断能を有することで、露光時の感度が向上し、露光機の時間負荷を低減することができ、生産性を向上することができる。また、感光性転写材料中の感光性樹脂層がラジカル重合性化合物を含むネガ型感光性樹脂層である場合には、露光の際の重合反応において酸素阻害が生じにくい利点もある。
【0083】
中間層は、パターン形状、及び、表面荒れの観点から、水溶性樹脂を含むことが好ましい。
水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース化合物、(メタ)アクリルアミド、ポリエーテル化合物、ゼラチン、ビニルエーテル化合物、ポリアミド、フェノール化合物、これらの共重合体などが挙げられる。
【0084】
仮支持体の剥離性、解像性、酸素遮断能、パターンにおける欠陥抑制性(以下、単に、「欠陥抑制性」ともいう。)等の観点から、中間層は、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンの少なくとも一方を含むことが好ましく、ポリビニルアルコールを含むことがより好ましく、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンを含むことが更に好ましい。
【0085】
中間層がポリビニルアルコールを含む場合、仮支持体の剥離性、解像性、酸素遮断能、欠陥抑制性等の観点から、中間層の全質量に対するポリビニルアルコールの含有量は、5質量%~95質量%であることが好ましく、15質量%~90質量%であることがより好ましく、25質量%~80質量%であることが更に好ましく、50質量%~75質量%であることが特に好ましく、55質量%~70質量%であることが最も好ましい。
中間層がポリビニルピロリドンを含む場合、仮支持体の剥離性、解像性、酸素遮断能、欠陥抑制性等の観点から、中間層の全質量に対するポリビニルピロリドンの含有量は、20質量%~98質量%であることが好ましく、23質量%~90質量%であることがより好ましく、25質量%~75質量%であることが更に好ましく、25質量%~50質量%が特に好ましい。
中間層がポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンを含む場合、仮支持体の剥離性、解像性、酸素遮断能、欠陥抑制性等の観点から、中間層の全質量に対するポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンの含有量の和は、50質量%~99質量%であることが好ましく、70質量%~99質量%であることがより好ましく、75質量%~99質量%であることが更に好ましい。
【0086】
仮支持体の剥離性、解像性、酸素遮断能、欠陥抑制性等の観点から、中間層は、水溶性セルロース化合物、ポリエーテル化合物、フェノール化合物、及び、多価アルコール化合物からなる群から選ばれる1種以上の化合物Xを含むことが好ましい。
水溶性セルロース化合物としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等が挙げられる。
ポリエーテル化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
フェノール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールS等が挙げられる。
多価アルコール化合物としては、グリセリン、ジグリセリン、ジエチレングリコール等が挙げられる。
仮支持体の剥離性、解像性、酸素遮断能、欠陥抑制性等の観点から、上記した中でも、中間層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ビスフェノールA及びグリセリンからなる群から選ばれる1種以上の化合物Xを含むことが好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリエチレングリコールからなる群から選ばれる1種以上の化合物Xを含むことがより好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むことが更に好ましい。
【0087】
仮支持体の剥離性、解像性、酸素遮断能、欠陥抑制性等の観点から、中間層が化合物Xを含む場合、中間層の全質量に対する化合物Xの含有量の和が、0.1質量%~36質量%であることが好ましく、0.5質量%~20質量%であることがより好ましく、1質量%~15質量%であることが更に好ましい。
【0088】
仮支持体の剥離性、解像性、酸素遮断能、欠陥抑制性等の観点から、中間層は、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンの少なくとも一方と、化合物Xとを含むことが好ましく、ポリビニルアルコール及び化合物Xを含むことがより好ましく、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及び化合物Xを含むことが更に好ましい。
中間層が上述の組成である場合、化合物Xが中間層の仮支持体側の表面により偏在して存在し易く、且つ、中間層と感光性樹脂層との混合によるWBL(weak boundary layer)層の形成を抑制することができる。その結果、中間層の仮支持体側の表面自由エネルギーが適切な数値に調整され、仮支持体剥離性及び解像性をより向上することができる。
【0089】
仮支持体の剥離性、解像性、酸素遮断能、欠陥抑制性等の観点から、水溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5,000~200,000であることが好ましく、7,000~100,000であることがより好ましく、7,000~50,000であることが更に好ましい。
仮支持体の剥離性、解像性、酸素遮断能、欠陥抑制性等の観点から、水溶性樹脂の分散度(Mw/Mn)は、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。
【0090】
仮支持体の剥離性、解像性、酸素遮断能、欠陥抑制性等の観点から、中間層の全質量に対する水溶性樹脂の含有量は、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であってもよい。
【0091】
中間層は、界面活性剤を含んでいてもよい。中間層は、界面活性剤を2種以上含んでいてもよい。
界面活性剤の好ましい態様等は熱可塑性樹脂層において説明した通りであり、ここでは記載を省略する。
中でも、熱可塑性樹脂層と中間層との間の剥離性、パターン形状、及び、表面荒れの観点から、上記中間層は、ケイ素原子を有する界面活性剤を含むことが好ましく、シリコーン系界面活性剤を含むことがより好ましい。
仮支持体の剥離性、解像性、酸素遮断能、欠陥抑制性、層間密着性等の観点から、中間層の全質量に対する、界面活性剤の含有量は、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.5質量%~7質量%であることがより好ましく、1質量%~5質量%であることが更に好ましい。
【0092】
中間層は、非水溶性樹脂を含んでもよい。非水溶性樹脂としては、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。
中間層が非水溶性樹脂を含む場合、中間層の全質量に対する非水溶性樹脂の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。
【0093】
中間層は、着色剤、難燃剤、酸化防止剤、酸化防止剤、防錆剤、分散剤等の添加剤を含むことができる。
【0094】
上記中間層の平均厚みは、パターン形状、表面荒れ、及び、解像性の観点から、0.1μm~5μmであることが好ましく、0.2μm~3μmであることがより好ましく、0.5μm~2μmであることが特に好ましい。
【0095】
<感光性樹脂層>
感光性樹脂層は、ポジ型感光性樹脂層であってもよく、ネガ型感光性樹脂層であってもよいが、本開示に係る感光性転写材料においては、ネガ型感光性樹脂層であることが好ましい。
ネガ型感光性樹脂層とは、露光により露光部の現像液に対する溶解性が低下する感光性樹脂層である。感光性樹脂層がネガ型感光性樹脂層である場合、形成されるパターンは硬化層に該当する。
【0096】
感光性樹脂層は、重合体(バインダーポリマー)を含むことが好ましい。
感光性樹脂層は、重合体を1種又は2種以上含むことができる。重合体は、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
重合体は、酸基を有するモノマーにより形成された構成単位を含んでいてもよい。酸基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基等が挙げられる。酸基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、4-ビニル安息香酸、マレイン酸無水物等が挙げられる
重合体は、酸基を有しないモノマーにより形成された構成単位を含んでいてもよい。酸基を有しないモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルアルコールのエステル化合物、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ビニルアルコールのエステル化合物としては、例えば、酢酸ビニルが挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、スチレン誘導体等が挙げられる。
非酸性のモノマーは、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、スチレン誘導体及びベンジル(メタ)アクリレートからなる群より選択される1つ以上のモノマーであることが好ましい。
【0097】
解像性の観点から、アルカリ可溶性樹脂は、スチレン由来の構成単位及びスチレン誘導体由来の構成単位の少なくとも一方を含むことが好ましい。スチレン誘導体の具体例としては、例えば、ビニルトルエン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレンが挙げられる。
【0098】
上記アルカリ可溶性樹脂におけるスチレン由来の構成単位及びスチレン誘導体由来の構成単位の共重合比は、アルカリ可溶性樹脂の全質量に対して、5質量%~60質量%が好ましく、10質量%~50質量%がより好ましく、15質量%~40質量%が更に好ましい。
【0099】
密着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含むことが好ましい。
アルカリ可溶性樹脂が、スチレン由来の構成単位及びスチレン誘導体由来の構成単位の少なくとも一方と、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位とを含む場合、スチレン由来の構成単位及びスチレン誘導体由来の構成単位の含有量を1としたとき、解像性及び密着性の両立の観点から、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の含有量は0.3~2.5であることが好ましく、0.5~2.0がより好ましく、0.7~1.7が更に好ましい。
【0100】
解像性、現像性等の観点から、重合体の重量平均分子量(Mw)は、5,000~500,000であることが好ましく、10,000~100,000であることがより好ましく、30,000~60,000であることが更に好ましい。
重合体の分散度(Mw/Mn)は、1.0~6.0が好ましく、1.0~5.0がより好ましく、1.0~4.0が更に好ましく、1.0~3.0が特に好ましい。
【0101】
解像性、現像性等の観点から、重合体の酸価は、60mgKOH/g~220mgKOH/gであることが好ましく、120mgKOH/g~200mgKOH/gであることがより好ましく、150mgKOH/g~190mgKOH/gであることが更に好ましい。
【0102】
なお、酸価(mgKOH/g)とは、試料1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの質量(mg)である。酸価は、例えば、JIS K0070:1992に記載の方法に従って求めることができる。
重合体の酸価は、構成する構成単位の種類及び酸基を含む構成単位の含有量を変更することにより調整できる。
【0103】
解像性、現像性等の観点から、感光性樹脂層の全質量に対する、重合体の含有量は、30質量%~70質量%であることが好ましく、40質量%~60質量%であることがより好ましく、45質量%~57質量%であることが更に好ましい。
【0104】
感光性樹脂層は、重合性化合物を1種又は2種以上含んでいてもよい。
重合性化合物としては、制限されず、公知の重合性化合物を利用できる。重合性化合物は、エチレン性不飽和化合物であることが好ましい。エチレン性不飽和化合物は、1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物である。
エチレン性不飽和基は、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。エチレン性不飽和化合物は、(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
エチレン性不飽和化合物として、ビスフェノール構造を有するエチレン性不飽和化合物も好適に用いられる。
ビスフェノール構造を有するエチレン性不飽和化合物としては、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均5モルずつのエチレンオキサイドを付加したエチレングリコールのジメタクリレート、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均2モルのエチレンオキサイドを付加したエチレングリコールのジメタクリレート、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均5モルのエチレンオキサイドを付加したエチレングリコールのジメタクリレート、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均6モルのエチレンオキサイドと平均2モルのプロピレンオキサイドを付加したアルキレングリコールのジメタクリレート、ビスフェノールAの両端に平均15モルのエチレンオキサイドと平均2モルのプロピレンオキサイドを付加したアルキレングリコールのジメタクリレート等が挙げられる。
アルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートの具体例としては、2,2-ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタクリロキシエトキシプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0105】
重合性化合物の分子量は、200~3,000であることが好ましく、280~2,200であることがより好ましく、300~2,200であることが更に好ましい。重合性化合物が分子量分布を有する化合物(例えば、重合体)である場合、重合性化合物の重量平均分子量は、200~3,000であることが好ましく、280~2,200であることがより好ましく、300~2,200であることが更に好ましい。
【0106】
重合性化合物の含有量は、感光性樹脂層の総質量に対し、10質量%~70質量%であることが好ましく、20質量%~60質量%であることがより好ましく、20質量%~50質量%であることが更に好ましい。
【0107】
解像性、酸素遮断能等の観点から、感光性樹脂層は、上記界面活性剤を1種又は2種以上含むことが好ましい。界面活性剤の好ましい態様等は中間層において説明した通りであり、ここでは記載を省略する。
解像性、酸素遮断能等の観点から、感光性樹脂層の全質量に対する、界面活性剤の含有量は、0.05質量%~5質量%であることが好ましく、0.1質量%~3質量%であることがより好ましく、0.2質量%~1質量%であることが更に好ましい。
【0108】
感光性樹脂層は、重合開始剤を1種又は2種以上含むことができる。重合開始剤としては、従来公知のラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤等を使用することができる。
【0109】
感光性樹脂層の全質量に対する重合開始剤の含有量は、特に限定されるものではなく、1質量%~10質量%とすることができる。
【0110】
感光性樹脂層は、着色剤、増感剤、連鎖移動剤(N-フェニルカルバモイルメチル-N-カルボキシメチルアニリン、N,N-テトラエチル-4,4-ジアミノベンゾフェノン等)、重合禁止剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、酸化防止剤、防錆剤、分散剤、熱架橋性化合物(メチロール化合物、ブロックイソシアネート化合物等)などの添加剤を含むことができる。
【0111】
上記感光性樹脂層の平均厚みは、パターン形状、表面荒れ。及び、解像性の観点から、0.5μm~30μmであることが好ましく、1μm~10μmであることがより好ましく、1μm~5μmであることが特に好ましい。
【0112】
上記感光性樹脂層の25℃における溶融粘度は、転写性、クラック耐性、仮支持体剥離後の面状安定性、及び、解像性の観点から、1.0×106Pa・s~1.0×109Pa・sであることが好ましく、2.0×106Pa・s~5.0×108Pa・sであることがより好ましく、4.0×106Pa・s~1.0×108Pa・sであることが特に好ましい。
【0113】
本開示において、溶融粘度は、レオメーター(例えば、Anton Paar社製レオメーターMCR302)、12mmΦのパラレルプレート及びペルチェプレート(Gap:約0.8mm)を用いて、以下の条件で測定される。また、本開示において規定される溶融粘度は、25℃における溶融粘度である。
(1)温度:20℃~125℃
(2)昇温速度:3℃/分
(3)周波数:0.1Hz
(4)歪み:0.02%
【0114】
<保護フィルム>
感光性転写材料は、感光性樹脂層の中間層側とは反対側の表面に、保護フィルムを有していてもよい。
保護フィルムとしては、樹脂フィルムを用いることができる。上記樹脂フィルムとしては、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルムなどが挙げられる。なかでも、耐熱性等の観点から、保護フィルムは、ポリオレフィンフィルムであることが好ましく、ポリプロピレンフィルム又はポリエチレンフィルムであることがより好ましく、ポリエチレンフィルムであることが更に好ましい。
【0115】
保護フィルムの平均厚みは、特に限定されるものではなく、機械的強度等の観点からは、1.0μm~100.0μmであることが好ましく、5.0μm~50.0μmであることがより好ましく、5.0μm~40.0μmであることが更に好ましい。
【0116】
<感光性転写材料の用途>
本開示に係る感光性転写材料は、半導体パッケージ、プリント基板、フレキシブルプリント配線板、インターポーザー再配線層の製造プロセスフィルムにおける、シート、金属基板、セラミック基板、及び、ガラス等の支持基板上に配置される回路配線の形成に使用されることが好ましい。
【0117】
<感光性転写材料の製造方法>
本開示に係る感光性転写材料の製造方法は、特に制限はないが、仮支持体の片面に、共重合ポリエステル樹脂を含有する熱可塑性樹脂層を塗布により1μm~10μmの膜厚で形成する工程(以下、熱可塑性樹脂層形成工程という。)と、上記熱可塑性樹脂層の上記仮支持体と接する面と反対側の面に、上記中間層を塗布により形成する工程(以下、中間層形成工程という。)と、上記中間層の上記熱可塑性樹脂層と接する面と反対側の面に、上記感光性樹脂層を塗布により形成する工程(以下、感光性樹脂層形成工程という。)と、をこの順で含むことが好ましい。
また、本開示に係る感光性転写材料の製造方法は、感光性樹脂層の表面に、保護フィルムを設ける工程(以下、保護フィルム配置工程という。)を含んでいてもよい。
なお、本明細書において、「乾燥」とは、組成物に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去することを意味する。乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、及び、減圧乾燥が挙げられる。上記した方法を単独で又は複数組み合わせて適用することができる。
【0118】
<<熱可塑性樹脂層形成工程>>
熱可塑性樹脂層形成工程において使用される熱可塑性樹脂層形成用組成物は、上記した熱可塑性樹脂層に含有させる材料を溶剤に溶解又は分散させることにより調製することができる。
溶剤としては、上述した水溶性溶媒、アルキレングリコールエーテル、アルキレングリコールエーテルアセテート、ケトン溶剤(メチルエチルケトン等)、芳香族炭化水素溶剤(トルエン等)、非プロトン性極性溶剤(N,N-ジメチルホルムアミド等)、エーテル溶剤(ジエチルエーテル等)、エステル溶剤(酢酸n-プロピル等)、アミド溶剤、ラクトン溶剤などが挙げられる。
熱可塑性樹脂層形成用組成物の塗布方法としては、印刷法、スプレー法、ロールコート法、バーコート法、カーテンコート法、スピンコート法、ダイコート法(すなわち、スリットコート法)等が挙げられる。
乾燥温度は、80℃~130℃とすることができる。なお、乾燥温度とは、熱可塑性樹脂層形成用組成物を乾燥する環境の温度を意味する。
乾燥時間は、20秒~600秒とすることができる。
【0119】
<<中間層形成工程>>
中間層形成工程において使用される中間層形成用組成物は、上記した中間層に含有させる材料(界面活性剤等)を溶剤に溶解又は分散させることにより調製することができる。
溶剤としては、水、及び、上述した水溶性溶媒等が挙げられる。
中間層形成用組成物の塗布方法、乾燥温度、乾燥時間は、熱可塑性樹脂層形成工程の場合と同様であり、ここでは記載を省略する。
【0120】
<<感光性樹脂層形成工程>>
感光性形成工程において使用される感光性樹脂層形成用組成物は、上記した感光性樹脂層に含有させる材料を溶剤に溶解又は分散させることにより調製することができる。
溶剤としては、上述した水溶性溶媒、アルキレングリコールエーテル、アルキレングリコールエーテルアセテート、ケトン溶剤(メチルエチルケトン等)、芳香族炭化水素溶剤(トルエン等)、非プロトン性極性溶剤(N,N-ジメチルホルムアミド等)、エーテル溶剤(ジエチルエーテル等)、エステル溶剤(酢酸n-プロピル等)、アミド溶剤、ラクトン溶剤などが挙げられる。
感光性樹脂層形成用組成物の塗布方法、乾燥温度、乾燥時間は、熱可塑性樹脂層形成工程の場合と同様であり、ここでは記載を省略する。
【0121】
<<保護フィルム配置工程>>
保護フィルム配置工程は、感光性樹脂層の表面に、保護フィルムを貼り合わせることを含むことができる。
保護フィルム貼合は、真空ラミネーター、オートカットラミネーター等の公知のラミネーターを使用することにより行うことができる。ラミネーターはゴムローラー等の任意の加熱可能なローラーを備え、加圧及び加熱ができるものであることが好ましい。
【0122】
(積層体の製造方法)
本開示に係る積層体の製造方法は、露光前に仮支持体の剥離を行うこと以外、特に制限はないが、本開示に係る感光性転写材料と基板とを貼合する工程(以下「感光性転写材料貼合工程」ともいう。)と、仮支持体を剥離する工程(以下「仮支持体剥離工程」ともいう。)と、仮支持体の剥離後、露光処理を実施し、更に、露光後に現像処理を実施して、パターンを形成する工程(以下「パターン形成工程」ともいう。)と、をこの順に有することが好ましく、本開示に係る感光性転写材料の感光性樹脂層の中間層側とは反対側の表面が基板と接するように、感光性転写材料と基板とを貼合する工程と、仮支持体を剥離する工程と、仮支持体の剥離後、露光処理を実施し、更に、露光後に現像処理を実施して、パターンを形成する工程と、をこの順に有することがより好ましい。
本開示に係る積層体の製造方法に使用される感光性転写材料の好ましい態様については、上記した通りであるため、ここでは記載を省略する。
【0123】
以下において、本開示に係る積層体の製造方法について、工程毎に詳細に説明する。なお、以下に記載する構成要件の説明は、本開示に係る積層体の製造方法の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
【0124】
<感光性転写材料貼合工程>
感光性転写材料貼合工程は、仮支持体と、中間層と、感光性樹脂層とを有する感光性転写材料の感光性樹脂層の中間層側とは反対側の表面が基板と接するように、感光性転写材料と基板とを貼合する。
感光性転写材料は、仮支持体と中間層との間に、熱可塑性樹脂層を有していてもよい。
感光性転写材料は、感光性樹脂層の中間層側とは反対側の表面に、保護フィルムを有していてもよい。なお、感光性転写材料が保護フィルムを有する構成である場合、保護フィルムを剥がしてから貼合工程を実施する。
【0125】
感光性転写材料と基板とを貼合方法は、特に限定されるものではなく、公知の転写方法、及び、ラミネート方法を使用できる。中でも、感光性転写材料の感光性樹脂層の中間層側とは反対側の表面を基板に重ね、ロール等による加圧及び加熱を実施する方法により、感光性転写材料と基板とを貼合することが好ましい。
貼合には、真空ラミネーター、オートカットラミネーター等の公知のラミネーターを使用することができる。ラミネーターはゴムローラー等の任意の加熱可能なローラーを備え、加圧及び加熱ができるものであることが好ましい。
貼合温度は、特に限定されるものではなく、例えば、70℃~130℃とすることができる。
【0126】
基板は、支持基板と、支持基板上に配置される導電層とを有する導電性基板(配線基板)であることが好ましい。
【0127】
支持基板としては、例えば、樹脂基板、ガラス基板、半導体基板等が挙げられる。
支持基板の好ましい態様としては、例えば、国際公開第2018/155193号の段落0140に記載があり、この内容は本明細書に組み込まれる。
また、支持基板が樹脂基板である場合、樹脂基板の材料としては、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタレート、又はポリイミドを含む基板であることが好ましい。
支持基板の平均厚みは、特に限定されるものではなく、5.0μm~200.0μmとすることができる。
【0128】
導電層としては、導電性及び細線形成性の点から、金属層、導電性金属酸化物層、グラフェン層、カーボンナノチューブ層、及び、導電ポリマー層からなる群から選択される少なくとも1種の層であることが好ましい。
また、支持基板上には、導電層を1層のみ配置してもよいし、2層以上配置してもよい。導電層を2層以上配置する場合は、異なる材質の導電層を有することが好ましい。
導電層の好ましい態様としては、例えば、国際公開第2018/155193号の段落0141に記載があり、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0129】
導電性基板としては、透明電極及び引き回り配線の少なくとも一方を有する基板が好ましい。このような構成の導電性基板は、タッチパネル用基板として好適に使用できる。
透明電極は、タッチパネル用電極として好適に機能し得る。透明電極は、ITO(酸化インジウムスズ)及びIZO(酸化インジウム亜鉛)等の金属酸化膜、金属メッシュ及び金属ナノワイヤー等の金属細線などにより構成されることが好ましい。
金属細線としては、銀、銅等の細線が挙げられる。なかでも、銀メッシュ、銀ナノワイヤー等の銀導電性材料が好ましい。
【0130】
引き回し配線の材質としては、金属が好ましい。
引き回し配線の材質である金属としては、金、銀、銅、モリブデン、アルミニウム、チタン、クロム、亜鉛、マンガン、これらの金属元素の2種以上からなる合金等が挙げられる。引き回し配線の材質としては、銅、モリブデン、アルミニウム、又は、チタンが好ましく、銅が特に好ましい。
【0131】
基板は、半導体素子を相互に接続する素子が組み込まれた基板であってもよい。
半導体素子を相互に接続する素子としては、シリコン基板上に半導体素子を相互接続するような配線パターンが形成された素子等を挙げることができる。
【0132】
基板は、シード層を表面に有するものであってもよい。シード層を構成する材料としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛等が挙げられる。シード層の平均厚みは、特に限定されるものではなく、50nm~2μmとすることができる。シード層の形成方法としては特に制限されず、金属微粒子を分散した分散液を塗布して、塗膜を焼結する方法、スパッタリング法、蒸着法等が挙げられる。
【0133】
伝送損失低減の観点から、24GHzにおける基板の誘電正接は、0.05以下であることが好ましく、0.03以下であることがより好ましい。
【0134】
<仮支持体剥離工程>
仮支持体の剥離方法としては、特に制限されず、公知の手法に基づいて実施できる。
例えば、特開2010-072589号公報の段落0161~0162に記載されたカバーフィルム剥離機構と同様の機構を使用できる。
【0135】
<パターン形成工程>
パターン形成工程においては、仮支持体の剥離後、露光処理を実施し、更に、露光後に現像処理を実施して、パターンを形成する。
一実施形態において、パターンの形成は、露出した中間層又は熱可塑性樹脂と、マスクとを接触させ、露光処理を実施し、更に現像処理を実施することにより行われる。
【0136】
露光処理において、積層体の感光性樹脂層に対して、パターン状に露光が行われる。なお、パターン状の露光とは、感光性樹脂層に露光部及び非露光部を生じさせる露光を意味する。
【0137】
また、感光性樹脂層がネガ型感光性樹脂層である場合、露光光源としては、少なくとも感光性樹脂層を硬化し得る波長域の光(例えば、365nm又は405nm)を照射できるものであれば適宜選定して使用できる。
中でも、パターン露光の露光光の主波長は、365nmが好ましい。なお、主波長とは、最も強度が高い波長である。
光源としては、各種レーザー、発光ダイオード(LED)、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
露光量は、特に限定されるものではなく、5mJ/cm2~200mJ/cm2とすることができる。
【0138】
露光処理後であって現像処理を実施する前に、露光処理で使用したマスクを剥離するのが好ましい。
【0139】
現像処理は、露光処理により得られたパターン状に露光された感光性樹脂層を現像して、パターンを形成する処理である。
上記感光性樹脂層の現像は、現像液を使用して実施できる。例えば、感光性樹脂層がネガ型感光性樹脂層である場合、アルカリ現像液を使用した現像処理により感光性樹脂層の非露光領域が除去され、露光部に残存する感光性樹脂層により、パターンが形成される。
【0140】
現像処理において、現像液としては、アルカリ性水溶液が好ましい。アルカリ性水溶液に含まれ得るアルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、コリン(2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド)等が挙げられる。
【0141】
現像の方式としては、パドル現像、シャワー現像、スピン現像、ディップ現像等の方式が挙げられる。
【0142】
<その他の工程>
感光性転写材料が保護フィルムを有する場合、本開示に係る積層体の製造方法は、基板への貼合前に、保護フィルムを剥離する工程を有することができる。保護フィルムの剥離方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法により行うことができる。
【0143】
本開示に係る積層体の製造方法は、形成されたパターンを露光する工程(以下、「ポスト露光工程」ともいう。)及び、形成されたパターンを加熱する工程(以下、「ポストベーク工程」ともいう。)の少なくとも一方を有していてもよい。
本開示に係る積層体の製造方法がポスト露光工程及びポストベーク工程の両方を有する場合、ポスト露光工程後、ポストベーク工程を実施することが好ましい。
ポスト露光の露光量としては、100mJ/cm2~5,000mJ/cm2が好ましく、200mJ/cm2~3,000mJ/cm2がより好ましい。
ポストベークの温度としては、80℃~250℃が好ましく、90℃~160℃がより好ましい。ポストベークの時間としては、1分~180分が好ましく、10分~60分がより好ましい。
【0144】
(回路配線基板の製造方法)
本開示に係る回路配線基板の製造方法は、特に制限はないが、上記した本開示に係る積層体の製造方法により積層体を製造する工程と、パターンが形成されていない領域に、めっき処理を行い、導電パターンを形成する工程(以下、「導電パターン形成工程」ともいう。)と、パターンを除去する工程(以下、「パターン除去工程」ともいう。)と、をこの順に有することが好ましい。
本開示に係る回路配線基板の製造方法は、導体パターン形成工程後、パターン除去工程前に、めっき層の表面に、保護層を形成する工程を有していてもよい(以下、「保護層形成工程」ともいう。)。
基板がその表面にシード層を有する場合、本開示に係る回路配線基板の製造方法は、シード層を除去する工程(以下、「シード層除去工程」ともいう。)を有してもよい。
なお、上記した本開示に係る積層体の製造方法により積層体を製造する工程については、上記したため、ここでは記載を省略する。
【0145】
回路配線基板は、半導体パッケージであってもよい。
回路配線基板が半導体パッケージである場合、回路配線基板の製造方法は、シード層除去工程の後、基板の表面に、ソルダーレジストを使用して、開口部を有するソルダーレジスト層を形成する工程(以下、「ソルダーレジスト層形成工程」ともいう。)と、開口部にバンプ電極を形成する工程(以下、「バンプ電極形成工程」ともいう。)と、バンプ電極と接続する半導体素子を搭載する工程(以下、「半導体素子搭載工程」ともいう。)と、を有することができる。
【0146】
<導体パターン形成工程>
回路配線基板の製造方法は、本開示に係る積層体の製造方法により積層体のパターンが形成されていない領域に、めっき処理を行い、導体パターンを形成する工程を含む。
めっき処理の方法としては、電解めっき法、無電解めっき法が挙げられ、生産性の点から、電解めっき法が好ましい。
【0147】
めっき処理に使用される金属は特に制限されず、公知の金属を使用することができる。使用することができる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛、これらの金属の合金等が挙げられる。導電性の観点から、銅又はその合金が好ましい。
【0148】
めっき処理により形成されるめっき層の平均厚みは、特に限定されるものではなく、0.1μm~20.0μmとすることができる。
【0149】
<パターン除去工程>
パターンの除去方法としては特に制限されないが、薬品処理により除去する方法が挙げられ、除去液を用いて除去する方法が好ましい。
除去液としては、無機アルカリ成分又は有機アルカリ成分を、水、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、これらの混合溶液等に溶解させた除去液が挙げられる。
無機アルカリ成分としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
有機アルカリ成分としては、第1級アミン化合物、第2級アミン化合物、第3級アミン化合物、第4級アンモニウム塩化合物等が挙げられる。
【0150】
除去液の液温としては、30℃~80℃であることが好ましく、50℃~80℃であることがより好ましい。
除去方法の好適な一態様としては、液温が50℃~80℃である撹拌中の除去液に、除去すべきパターンを有する積層体を1分間~30分間浸漬する方法が挙げられる。
また、除去液を使用し、スプレー法、シャワー法、パドル法等の公知の方法により、パターンを除去してもよい。
【0151】
<保護層形成工程>
本開示に係る回路配線基板の製造方法は、導体パターン形成工程後、パターン除去工程前に、めっき層の表面に、保護層を形成する工程を有していてもよい。
保護層を構成する材料としては、パターン除去工程又はシード層除去工程における除去液又はエッチング液に対し、溶解しない材料が好ましい。保護層を構成する材料としては、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、マグネシウム、金、銀、これらの合金、樹脂等が挙げられる。保護層を構成する材料としては、ニッケル又はクロムが好ましい。
【0152】
保護層を形成する方法としては、無電解めっき法、電気めっき法等が挙げられ、電気めっき法が好ましい。
【0153】
保護層の平均厚みは、特に限定されるものではなく、0.3μm~3.0μmとすることができる。
【0154】
<シード層除去工程>
基板がその表面にシード層を有する場合、本開示に係る回路配線基板の製造方法は、シード層を除去する工程を有してもよい。シード層除去工程は、露出したシード層を除去して、導電性細線を得る工程である。
【0155】
シード層を除去する方法は、特に限定されるものではなく、公知のエッチング液を使用する方法により行ってもよい。
エッチング液としては、塩化第二鉄溶液、塩化第二銅溶液、アンモニアアルカリ溶液、硫酸-過酸化水素混合液、リン酸-過酸化水素混合液等が挙げられる。
【0156】
<ソルダーレジスト層形成工程>
本開示に係る回路配線基板の製造方法は、シード層が除去された基板の表面に、ソルダーレジストを使用して、開口部を有するソルダーレジスト層を形成する工程を有することができる。
開口部は、基板の表面に形成された導体パターンを露出させることが好ましい。
ソルダーレジストとしては、従来公知のものを使用することができる。ソルダーレジストとしては、アジド-環化ポリイソプレン系樹脂系、アジド-フェノール系樹脂、クロロメチルポリスチレン系樹脂等が挙げられる。
ソルダーレジスト層の平均厚みは、特に限定されるものではなく、5μm~50μmとすることができる。
ソルダーレジスト層の形成方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法により行うことができる。
【0157】
<バンプ電極形成工程>
本開示に係る回路配線基板の製造方法は、ソルダーレジスト層の開口部に、バンプ電極を形成する工程を有する。バンプ電極は、開口部において露出する導体パターンと接続されることが好ましい。
【0158】
<半導体素子搭載工程>
本開示に係る回路配線基板の製造方法は、バンプ電極と接続する半導体素子を搭載する工程を有することができる。
搭載する半導体は電極を有することが好ましく、これをバンプ電極と接続することが好ましい。
半導体の搭載後、半導体を従来公知の封止材を用いて、封止することが好ましい。
【0159】
<回路配線基板>
本開示に係る回路配線基板は、上記回路配線基板の製造方法により製造された回路配線基板である。
【0160】
<半導体パッケージ>
本開示に係る半導体パッケージは、上記回路配線基板を含む。
【0161】
<プリント配線板の製造方法>
本開示に係る感光性転写材料は、プリント配線板の製造に用いることができる。
プリント配線板の製造方法は、上述した積層体の製造方法におけるパターンを有する基板に対して、エッチング処理及びめっき処理からなる群より選ばれる少なくとも1種を施す工程を備える。ここで、基板のエッチング又はめっきは、現像されたパターンをマスクとして用いて、基板の表面を公知の方法によりエッチング又はめっきすることによって行うことができる。
また、エッチング又はめっきの前には過マンガン酸成分を含む薬液による樹脂エッチングやプラズマによる樹脂アッシング等を用いた残膜の除去工程を行ってもよい。
【0162】
エッチングに用いられるエッチング液としては、例えば、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液、及び、アルカリエッチング溶液を用いることができる。めっきとしては、例えば、銅めっき、はんだめっき、ニッケルめっき、及び、金めっきが挙げられる。
【0163】
エッチング又はめっきを行った後、パターンは、例えば、現像に用いたアルカリ性水溶液より更に強アルカリ性の水溶液で剥離することができる。この強アルカリ性の水溶液としては、例えば、1質量%~10質量%水酸化ナトリウム水溶液、及び、1質量%~10質量%水酸化カリウム水溶液が用いられる。また、剥離方法としては、例えば、浸漬方式及びスプレー方式が挙げられる。なお、パターンが形成されたプリント配線板は、多層プリント配線板であってもよく、小径スルーホールを有していてもよい。
【0164】
導電層等を備えた基板に対してめっきが行われる場合には、パターン以外の導体層を除去する必要がある。この除去方法としては、例えば、パターンを剥離した後に軽くエッチングする方法;上記めっきに続いてはんだめっき等を行った後、パターンを剥離することで配線部分をはんだでマスクし、次いで、はんだでマスクされていない部分の導体層のみをエッチング可能なエッチング液を用いて処理する方法が挙げられる。
【0165】
<蒸着マスク>
本開示の感光性転写材料は、表面に微細な凹凸を有する蒸着マスク用の金属基板の微細加工に特に好適に用いることができる。
蒸着マスクの製造方法は、上述した積層体の製造方法におけるパターンを有する基板に対して、エッチング処理を施す工程を備える。ここで、基板のエッチングは、現像されたパターンをマスクとして用いて、基板の表面を公知の方法によりエッチングすることによって行うことができる。
エッチングを行った後、パターンは、例えば、現像に用いたアルカリ性水溶液より更に強アルカリ性の水溶液で剥離することができる。この強アルカリ性の水溶液としては、例えば、1質量%~10質量%水酸化ナトリウム水溶液、及び、1質量%~10質量%水酸化カリウム水溶液が用いられる。また、剥離方法としては、例えば、浸漬方式及びスプレー方式が挙げられる。
【実施例0166】
以下に実施例に基づいて本開示を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本開示の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
なお、特に断りのない限り、「部」及び、「%」は質量基準である。
また、以下の実施例において、樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算で求めた重量平均分子量である。また、酸価は、理論酸価を用いた。
【0167】
実施例及び比較例で使用した仮支持体を表1に示す。
【0168】
【0169】
なお、仮支持体A1は東洋紡(株)製であり、仮支持体A2は三菱ケミカル(株)製である。
【0170】
〔熱可塑性樹脂層形成用組成物の調製〕
熱可塑性樹脂層形成用組成物C1~C6の組成を表2に示す。
【0171】
【0172】
表2に記載の略号の詳細を以下に示す。
・バイロンBX-1001:共重合ポリエステル樹脂、Tg-18℃、東洋紡(株)製
・バイロンGK-800:共重合ポリエステル樹脂、Tg50℃、東洋紡(株)製
・バイロン802:共重合ポリエステル樹脂、Tg60℃、東洋紡(株)製
・D620:ポリエステル系可塑剤、三菱ケミカル(株)製
・エバフレックスEV45X:エチレン-酢酸ビニル共重合体、三井・ダウポリケミカル(株)製
・フェノチアジンプリル:フェノチアジン、川口化学(株)製
・CBT-1:カルボキシベンゾトリアゾール、城北化学(株)製
・F-552 30%MEK溶液:フッ素系界面活性剤の30%メチルエチルケトン溶液、メガファック(登録商標)F-552、DIC(株)製
・EXP-S-315 30%MEK溶液:シリコーン系界面活性剤の30%メチルエチルケトン溶液、DIC(株)製
・MMPGAc:1-メトキシ-2-プロピルアセテ-ト
・MEK:メチルエチルケトン
【0173】
〔中間層形成用組成物の調製〕
中間層形成用組成物P1及びP2の組成を表3に示す。
【0174】
【0175】
表3に記載の略号の詳細を以下に示す。
・PVA:ポリビニルアルコール、(株)クラレ製クラレポバールPVA 4-88LA
・PVP:ポリビニルピロリドン、日本触媒(株)製ポリビニルピロリドンK-30
・HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース、信越化学工業(株)製メトローズ 60SH-03
・F-444:フッ素系界面活性剤、メガファック(登録商標)F-444、DIC(株)製
・BYK-348:シリコーン系界面活性剤、ビックケミー・ジャパン社製
・MeOH:メタノール
【0176】
〔感光性樹脂層形成用組成物の調製〕
感光性樹脂層形成用組成物R1及びR2の組成を表4に示す。
【0177】
【0178】
上述した以外の表4に記載の略号の詳細を以下に示す。
・重合体1:下記構造の樹脂、Mw=60,000、固形分=30質量%
【0179】
【0180】
なお、上記樹脂において、括弧の右下の数字は、質量比である。
【0181】
・BPE-500:2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、新中村化学工業(株)製
・アロニックスM-270:ポリプロピレングリコールジアクリレート(n≒12)、東亞合成(株)製
・B-IMD:(2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、黒金化成(株)製B-CIM
・EAB-F:4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、三洋貿易(株)より入手
・フェノチアジン:川口化学(株)製
・フェニドン1%MEK溶液:1質量%のフェニドンを含むメチルエチルケトン溶液
・化合物A:N-フェニルカルバモイルメチル-N-カルボキシメチルアニリン、富士フイルム和光純薬(株)製
・LCV:ロイコクリスタルバイオレット、ラジカルにより発色する色素、東京化成工業(株)製
・EXP-S-506 30%MEK溶液:シリコーン系界面活性剤の30%メチルエチルケトン溶液、DIC(株)製
・MFG:1-メトキシ-2-プロパノール
【0182】
<実施例1>
(感光性転写材料の製造)
以下の手順により、仮支持体と、熱可塑性樹脂層と、中間層と、感光性樹脂層と、保護フィルムと、をこの順に有する、実施例1の感光性転写材料を製造した。
【0183】
表5の「熱可塑性樹脂層」の欄に記載された成分を含む組成物C1を準備した。スリット状ノズルを用いて仮支持体A1の上に組成物C1を塗布した後、80℃及び2分間の条件で組成物C1を乾燥することで、熱可塑性樹脂層を形成した。熱可塑性樹脂層の膜厚(即ち、平均厚さ)は、表5に記載の通りである。
【0184】
表5の「中間層」の欄に記載された成分を含む組成物P1を準備した。スリット状ノズルを用いて熱可塑性樹脂層の上に組成物P1を塗布した後、90℃及び2分間の条件で組成物P1を乾燥することで、中間層を形成した。中間層の膜厚(即ち、平均厚さ)は、表5に記載のとおりである。
【0185】
表5の「感光性樹脂層」の欄に記載された成分を含む組成物R1を準備した。スリット状ノズルを用いて中間層の上に組成物R1を塗布した後、80℃及び2分間の条件で組成物R1を乾燥することで、感光性樹脂層を形成した。感光性樹脂層の膜厚(即ち、平均厚さ)は、表5に記載のとおりである。
【0186】
最後に、感光性樹脂層の露出した面に保護フィルム(商品名:アルファン(登録商標) E200C3、厚さ:18μm、ポリプロピレンフィルム、王子エフテックス(株)製)を熱ラミネートにより貼り合わせた。
【0187】
以上により、実施例1の感光性転写材料を得た。
【0188】
<実施例2~7、及び、比較例1~5>
仮支持体A1、組成物C1、組成物P1及び組成物R1の組成を表5に記載の組成物とし、各層の膜厚を表5に記載の膜厚に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2~7、及び、比較例1~5の各感光性転写材料(仮支持体剥離露光用の感光性転写材料)を得た。
【0189】
<比較例6>
実施例3の感光性転写材料を用いて、後述する評価において仮支持体を現像の直前に剥離した以外は、実施例3と同様の操作を行い、比較例6とした。
【0190】
<比較例7>
仮支持体A1、組成物C1、組成物P1及び組成物R1の組成を表5に記載の組成物とし、各層の膜厚を表5に記載の膜厚に変更し、後述する評価において仮支持体を現像の直前に剥離した以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例7とした。
【0191】
(評価)
実施例1~7及び比較例1~7の各感光性転写材料を用いて、以下の評価を行った。
【0192】
1.熱可塑性樹脂層と中間層との間の剥離性
1-1.評価用積層体の製造
厚み25μmのポリイミド基板上に、蒸着法にて厚み5nmのニッケル-クロム(8/2)層と200nmの銅層をこの順に設け、銅層付きポリイミド基板を用意した。
感光性転写材料を30mm×100mmの大きさに裁断し、保護フィルムを剥離した。ロールラミネーターを用いて、温度100℃、線圧0.5MPa、及び、線速度(所謂、ラミネート速度)1m/分の条件で、感光性転写材料と銅層付きポリイミド基板とを貼り合わせ、銅層付きポリイミド基板の面上に、感光性樹脂層、中間層、熱可塑性樹脂層、及び、仮支持体をこの順に配置した。以上により、評価用積層体を得た。
【0193】
1-2.評価試験
得られた積層体に対し、圧力0.45MPa、温度50℃、及び、処理時間1時間の条件でオートクレーブ処理を行った。処理後の積層体を、両面テープを用いて0.7mm厚のガラスに貼り付けた。ガラスに貼り付けた積層体に対し、テンシロン〔型番:(株)エーアンドデイー製テンシロン万能試験機〕を用いて、仮支持体を剥離する180°剥離試験を剥離速度300mm/分の条件で行い、剥離力を測定した。また、剥離試験後の積層体を観察し、剥離界面を確認した。そして、下記の評価基準に従い、熱可塑性樹脂層と中間層との間の剥離性の評価を行った。
下記の評価基準において、「5」、「4」及び「3」は、実用上の許容レベルであり、「5」であることが最も好ましい。
【0194】
-評価基準-
5:熱可塑性樹脂層と中間層との間で剥離しており、層間剥離力が15mN/cm以下である。
4:熱可塑性樹脂層と中間層との間で剥離しており、層間剥離力が15mN/cmを超えて25mN/cm以下の範囲である。
3:熱可塑性樹脂層と中間層との間で剥離しており、層間剥離力が25mN/cmを超えて50mN/cm以下の範囲である。
2:熱可塑性樹脂層と中間層との間で剥離しており、層間剥離力が50mN/cmを超えた。
1:熱可塑性樹脂層と中間層との間以外の層間で剥離している。
【0195】
剥離界面〔表中、「仮支持体を剥離したときの剥離界面」と表記〕の確認結果を表3に示す。なお、表中の「熱可塑性樹脂層/中間層間」とは、熱可塑性樹脂層と中間層との間で剥離したことを意味し、「仮支持体/熱可塑性樹脂層間」とは、仮支持体と熱可塑性樹脂層との間で剥離したことを意味し、「仮支持体/中間層間」とは、仮支持体と中間層との間で剥離したことを意味する。
また、熱可塑性樹脂層と中間層との間で剥離した場合には、剥離力〔表中、「熱可塑性樹脂層/中間層間の剥離力(mN/cm)と表記〕の測定値、及び、熱可塑性樹脂層と中間層との間の剥離性〔表中、「熱可塑性樹脂層/中間層間の剥離性と表記〕の評価結果を表5に示す。
【0196】
2.パターン形状
2-1.評価用積層体の製造
上記「1.熱可塑性樹脂層と中間層との間の剥離性」の「1-1.評価用積層体の製造」と同様にして、銅層付きポリイミド基板を得た。
感光性転写材料を90mm×90mmの大きさに裁断し、保護フィルムを剥離した。ロールラミネーターを用いて、温度100℃、線圧0.5MPa、及び、線速度(所謂、ラミネート速度)1m/分の条件で、感光性転写材料と銅層付きポリイミド基板とを貼り合わせ、銅層付きポリイミド基板の面上に、感光性樹脂層、中間層、熱可塑性樹脂層、及び、仮支持体をこの順に配置した。以上により、評価用積層体を得た。
【0197】
2-2.評価試験
得られた積層体に対し、圧力0.45MPa、温度50℃、及び、処理時間1時間の条件でオートクレーブ処理を行った。処理後の積層体から仮支持体を剥離する操作を行い、剥離により露出した面(即ち、熱可塑性樹脂層又は中間層の露出面)に露光マスクを密着させた。露光マスクは、線幅3.0~50μmのラインアンドスペースパターンを有するガラスマスクを用いた。高圧水銀灯露光機(型番:MAP-1200L、主波長:365nm、(株)大日本科研製)を用いて、仮支持体を剥離する操作を行った後の転写層に対して露光マスク側から光を照射した。露光量は、露光マスクの20μmパターンに対応する部分の、現像後に得られるレジストパターン幅が、マスクのパターン幅(即ち、20μm)となる露光量に調整した。
【0198】
次に、現像処理を行った。現像液には、液温28℃の1.0質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いた。現像時間は、最小現像時間の2倍の時間とした。「最小現像時間」とは、未露光部分の感光性樹脂層が現像処理によって完全に溶解するのに要する最も少ない時間をいう。現像の方式は、シャワー現像とした。具体的には、先ず、シャワー現像によって未露光部の感光性樹脂層が完全に溶解するのに要する最も少ない時間を求めてから、パターン露光された感光性樹脂層に対してシャワー現像を最小現像時間の2倍の時間行った。現像後は、AirKnife(エアナイフ)処理を行い、現像液を除去した後、液温25℃の純水を用いて30秒間シャワー処理を行い、更にAirKnife処理を行った。以上により、レジストパターンを有する積層体基板を得た。得られたレジストパターンを有する積層体基板を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて1mm2の面積を観察し、解像した20μmパターンの形状を確認した。そして、下記の評価基準に従い、解像度の評価を行った。
下記の評価基準において、「5」、「4」及び「3」は、実用上の許容レベルであり、「5」であることが最も好ましい。
【0199】
-評価基準-
5:パターン壁面における欠け及びエグレの総数が1個以下。
4:パターン壁面における欠け及びエグレの総数が2個以上5個以下。
3:パターン壁面における欠け及びエグレの総数が6個以上10個以下。
2:パターン壁面における欠け及びエグレの総数が11個以上20個以下。
1:パターン壁面における欠け及びエグレの総数が21個以上。
【0200】
3.表面荒れ
3-1.評価用積層体の製造
上記「2.パターン形状」の「2-1.評価用積層体の製造」と同様にして、評価用積層体を得た。
【0201】
3-2.評価試験
得られた積層体に対し、圧力0.45MPa、温度50℃、及び、処理時間1時間の条件でオートクレーブ処理を行った。処理後の積層体から仮支持体を剥離する操作を行い、剥離により露出した面(即ち、熱可塑性樹脂層又は中間層の露出面)に、高圧水銀灯露光機(型番:MAP-1200L、主波長:365nm、(株)大日本科研製)を用いて、仮支持体を剥離する操作を行った後の転写層に対してマスクを介さずに光を照射した。露光量は、「2.パターン形状」評価の露光量と同露光量に調整した。
【0202】
次に、「2.パターン形状」の「2-2.評価試験」と同様に現像処理を行った。
以上により、レジスト硬化膜を有する積層体基板を得た。得られたレジスト硬化膜を有する積層体基板の表面形状を確認した。そして、下記の評価基準に従い、表面荒れ評価を行った。
下記の評価基準において、「3」及び「2」は、実用上の許容レベルであり、「3」であることが最も好ましい。
【0203】
-評価基準-
3:肉眼で光沢感が確認でき、50倍の光学顕微鏡でも凹凸が確認できない。
2:肉眼で光沢感が確認できるが、50倍の光学顕微鏡では凹凸が確認できる。
1:肉眼で表面に白濁が見える。
【0204】
【0205】
表5の結果から、実施例1~7の感光性転写材料は、比較例1~7に比べ、仮支持体剥離露光により得られるパターンのパターン形状に優れることが分かる。