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特開2025-154421ポジ型感光性樹脂組成物、硬化膜、硬化膜付き基板の製造方法及び積層体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025154421
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】ポジ型感光性樹脂組成物、硬化膜、硬化膜付き基板の製造方法及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/023 20060101AFI20251002BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
G03F7/023
G03F7/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024057414
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 正臣
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 佳佑
(72)【発明者】
【氏名】喜多 駿弥
【テーマコード(参考)】
2H196
2H225
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196AA26
2H196AA30
2H196BA10
2H196GA08
2H196HA01
2H196HA03
2H196JA04
2H225AC31
2H225AC33
2H225AC34
2H225AC36
2H225AC54
2H225AC63
2H225AD00
2H225AD02
2H225AD06
2H225AD14
2H225AE12P
2H225AF05P
2H225AN39P
2H225BA11P
2H225BA22P
2H225CA12
2H225CA13
2H225CA21
2H225CB05
2H225CC03
2H225CC21
(57)【要約】
【課題】パターン状の硬化膜を形成した際に、形状保持性、残膜率、耐熱性及び接着強度をいずれも高水準のものとすることを可能とするポジ型感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 (A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、
(B)重合性化合物、
(C)光重合開始剤、
(F)感光材、及び
(H)溶剤
を含む、ポジ型感光性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、
(B)重合性化合物、
(C)光重合開始剤、
(F)感光材、及び
(H)溶剤
を含む、ポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が、下記一般式(1)で表される樹脂である、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xは-CO-、-SO-、-C(CF-、-Si(CH-、-CH-、-C(CH-、-O-、9,9-フルオレンジイル基又は直結合を示し、Yは4価のカルボン酸残基を示し、Gはそれぞれ独立に水素原子又は下記一般式(2)で表される重合性二重結合とカルボキシル基を有する置換基を示し、Zは下記一般式(3)で表される置換基を示し、nは1~20の数を表す。)
【化2】
(式(2)中、Rは2価のアルキレン基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数3~6の脂肪族炭化水素基を示し、Zは下記一般式(3)で表される置換基を示し、qは0又は1の数を表す。)
【化3】
(式(3)中、Lは2価又は3価のカルボン酸残基を示し、pは1又は2である。)
【請求項3】
前記(B)成分の含有量が前記(A)成分100質量部に対して5~80質量部であり、
前記(C)成分の含有量が前記(A)成分と前記(B)成分の合計量100質量部に対して0.05~10.0質量部であり、
前記(F)成分の含有量が前記(A)成分と前記(B)成分の合計量100質量部に対して5~50質量部であり、かつ、
組成物中の前記(H)成分を除く固形分の含有量が5~80質量%である、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(D)光増感剤を更に含む、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のうちのいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を硬化させてなる、硬化膜。
【請求項6】
請求項1~4のうちのいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を第一の基板上に塗布することにより塗膜を得る工程と、
前記塗膜から(H)成分である溶剤を除去するプレベーク工程と、
前記プレベーク工程後の膜にマスクを通して紫外線を照射する露光工程と、
露光後の膜をアルカリ現像液で現像して前記基板上にパターンを形成する工程と、
パターンが形成された膜に紫外線を照射することにより前記膜中の感光材を分解するブリーチング工程と、
前記ブリーチング工程後の膜を加熱して硬化するポストベーク工程と、
を含むことにより、前記基板上に前記ポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜パターンを形成して硬化膜付き基板を得る、硬化膜付き基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1~4のうちのいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を第一の基板上に塗布することにより塗膜を得る工程と、
前記塗膜から(H)成分である溶剤を除去するプレベーク工程と、
前記プレベーク工程後の膜にマスクを通して紫外線を照射する露光工程と、
露光後の膜をアルカリ現像液で現像して前記基板上にパターンを形成する工程と、
パターンが形成された膜に紫外線を照射することにより前記膜中の感光材を分解するブリーチング工程と、
前記ブリーチング工程後に得られる膜付き基板に対して、前記ブリーチング工程後の膜を介して、第二の基板を25~150℃の温度で熱圧着した後、前記ブリーチング工程後の膜を加熱して硬化する工程と、
を含むことにより、前記ブリーチング工程後の膜を接着層として2枚の基板を接着し、前記第一の基板、前記接着層及び前記第二の基板がこの順に積層した積層体を得る、積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物、硬化膜、硬化膜付き基板の製造方法並びに積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より半導体や表示装置等の分野において基板のパターニング等のためにポジ型フォトレジストが用いられており、ポジ型フォトレジストとして利用可能な様々な組成物が研究されてきている。例えば、特開2003-29397号公報(特許文献1)には、特定のアルカリ可溶性不飽和樹脂と、キノンジアジド化合物、および該アルカリ可溶性不飽和樹脂間に架橋を形成し得る官能基を有する架橋剤を含有するポジ型感光性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-29397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のポジ型感光性樹脂組成物は、これを用いてフォトリソグラフィーによりパターンを形成しても、現像後の形状をポストベーク時に十分に維持することができず、現像後の形状保持性の点で十分なものではなかった。また、一般に、ポジ型感光性樹脂組成物の膜に対してマスクを介して露光する場合に、マスクと前記膜との間の距離(マスクギャップ)が広がるほど、露光時の光が本来は未露光部位としたい箇所にまで回り込んでしまうため、現像前後で膜厚が変化してしまう傾向にある。このように、従来のポジ型感光性樹脂組成物は、マスクと前記膜との間の距離(マスクギャップ)を大きくした場合においても、現像前の膜厚に対して残存する現像後の膜厚の割合(残膜率)を、十分に高い水準に維持するといった点において、必ずしも十分なものではなかった。さらに、従来のポジ型感光性樹脂組成物は、ポストベーク後の膜の耐熱性の点においても必ずしも十分なものとはならなかった。また、従来のポジ型感光性樹脂組成物は、基板上に硬化膜を形成した後、その硬化膜を接着層として他の基板等を積層させた場合に、かかる接着層と他の基板との間の接着強度を十分なものとするといった点においても十分なものではなかった。
【0005】
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、パターン状の硬化膜(硬化膜パターン)を形成した際に、形状保持性、残膜率、耐熱性及び接着強度をいずれも高水準のものとすることを可能とするポジ型感光性樹脂組成物;前記ポジ型感光性樹脂組成物を用いた硬化膜;ポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜パターンを備える硬化膜付き基板を効率よく製造することを可能とする硬化膜付き基板の製造方法;並びに、ポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜を接着層とした積層体を効率よく製造することを可能とする積層体の製造方法;を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ポジ型感光性樹脂組成物を、(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、(B)重合性化合物、(C)光重合開始剤、(F)感光材、及び(H)溶剤を含有するものとすることにより、これを用いてパターン状の硬化膜を形成した際に、形状保持性、残膜率、耐熱性及び接着強度をいずれも高水準のものとすることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の態様を提供する。
【0008】
[1](A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、
(B)重合性化合物、
(C)光重合開始剤、
(F)感光材、及び
(H)溶剤
を含む、ポジ型感光性樹脂組成物。
【0009】
[2]前記(A)成分が、下記一般式(1)で表される樹脂である、[1]に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【0010】
【化1】
【0011】
(式(1)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xは-CO-、-SO-、-C(CF-、-Si(CH-、-CH-、-C(CH-、-O-、9,9-フルオレンジイル基又は直結合(単結合)を示し、Yは4価のカルボン酸残基を示し、Gはそれぞれ独立に水素原子又は下記一般式(2)で表される重合性二重結合とカルボキシル基を有する置換基を示し、Zは下記一般式(3)で表される置換基を示し、nは1~20の数を表す。)
【0012】
【化2】
【0013】
(式(2)中、Rは2価のアルキレン基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数3~6の脂肪族炭化水素基を示し、Zは下記一般式(3)で表される置換基を示し、qは0又は1の数を表す。)
【0014】
【化3】
【0015】
(式(3)中、Lは2価又は3価のカルボン酸残基を示し、pは1又は2である。)。
【0016】
[3]前記(B)成分の含有量が前記(A)成分100質量部に対して5~80質量部であり、
前記(C)成分の含有量が前記(A)成分と前記(B)成分の合計量100質量部に対して0.05~10.0質量部であり、
前記(F)成分の含有量が前記(A)成分と前記(B)成分の合計量100質量部に対して5~50質量部であり、かつ、
組成物中の前記(H)成分を除く固形分の含有量が5~80質量%である、
[1]又は[2]に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【0017】
[4](D)光増感剤を更に含む、[1]~[3]のうちのいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【0018】
[5][1]~[4]のうちのいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を硬化させてなる、硬化膜。
【0019】
[6][1]~[4]のうちのいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を第一の基板上に塗布することにより塗膜を得る工程と、
前記塗膜から(H)成分である溶剤を除去するプレベーク工程と、
前記プレベーク工程後の膜にマスクを通して紫外線を照射する露光工程と、
露光後の膜をアルカリ現像液で現像して前記基板上にパターンを形成する工程と、
パターンが形成された膜に紫外線を照射することにより前記膜中の感光材を分解するブリーチング工程と、
前記ブリーチング工程後の膜を加熱して硬化するポストベーク工程と、
を含むことにより、前記基板上に前記ポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜パターンを形成して硬化膜付き基板を得る、硬化膜付き基板の製造方法。
【0020】
[7][1]~[4]のうちのいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を第一の基板上に塗布することにより塗膜を得る工程と、
前記塗膜から(H)成分である溶剤を除去するプレベーク工程と、
前記プレベーク工程後の膜にマスクを通して紫外線を照射する露光工程と、
露光後の膜をアルカリ現像液で現像して前記基板上にパターンを形成する工程と、
パターンが形成された膜に紫外線を照射することにより前記膜中の感光材を分解するブリーチング工程と、
前記ブリーチング工程後に得られる膜付き基板に対して、前記ブリーチング工程後の膜を介して、第二の基板を25~150℃(より好ましくは40~130℃)の温度で熱圧着した後、前記ブリーチング工程後の膜を加熱して硬化する工程と、
を含むことにより、前記ブリーチング工程後の膜を接着層として2枚の基板を接着し、前記第一の基板、前記接着層及び前記第二の基板がこの順に積層した積層体を得る、積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、パターン状の硬化膜を形成した際に、形状保持性、残膜率、耐熱性及び接着強度をいずれも高水準のものとすることを可能とするポジ型感光性樹脂組成物;前記ポジ型感光性樹脂組成物を用いた硬化膜;ポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜パターンを備える硬化膜付き基板を効率よく製造することを可能とする硬化膜付き基板の製造方法;並びに、ポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜を接着層とした積層体を効率よく製造することを可能とする積層体の製造方法;を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0023】
[ポジ型感光性樹脂組成物]
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、
(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、
(B)重合性化合物、
(C)光重合開始剤、
(F)感光材、及び
(H)溶剤
を含むものである。以下、先ず、組成物中に含まれる各成分について説明する。
【0024】
〈(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂〉
本発明にかかる不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂((A)成分)としては、特に制限されず、分子内に不飽和基(重合性不飽和基)と酸性基を有する樹脂であればよく、公知の不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(例えば、特開2019-70720号公報や特開2014-206727号公報等に記載されている不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂等)を適宜利用できる。なお、このような不飽和基の代表的な例としてはアクリル基又はメタクリル基が挙げられ、また、前記酸性基としてはカルボキシル基を代表的に例示することができる。このような(A)成分の不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は1種のみを使用しても、2種以上の混合物を使用してもよい。
【0025】
(A)成分の不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の好適な第一の例としては、エポキシ基を2個以上有する化合物と(メタ)アクリル酸(これは「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」の意味である)とを反応させ、得られたヒドロキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート化合物に(i)ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物及び/又は(ii)テトラカルボン酸二無水物を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物である。エポキシ(メタ)アクリレート酸付加物へと誘導されるエポキシ基を2個以上有する化合物としては、ビスフェノール型エポキシ化合物やノボラック型エポキシ化合物を例示することができる。
【0026】
このようなビスフェノール型エポキシ化合物は、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンとを反応させて得られる2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物であり、この反応の際には一般にジグリシジルエーテル化合物のオリゴマー化を伴うため、ビスフェノール骨格を2つ以上含むエポキシ化合物を含んでいる。この反応に用いられるビスフェノール類としては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3- クロロフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)エーテル、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フルオロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)フルオレン、4,4’-ビフェノール、3,3’-ビフェノール等を挙げられる。この中でも、フルオレン-9,9-ジイル基を有するビスフェノール類を特に好ましく用いることができる。
【0027】
また、エポキシ(メタ)アクリレートに反応させる(i)ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物としては、鎖式炭化水素ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物や脂環式ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物、芳香族ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物が使用される。ここで、鎖式炭化水素ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物としては、例えば、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の酸一無水物があり、更には任意の置換基が導入されたジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物でもよい。また、脂環式ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物としては、例えば、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ノルボルナンジカルボン酸等の酸一無水物があり、更には任意の置換基が導入されたジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物でもよい。更に、芳香族ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の酸一無水物があり、更には任意の置換基が導入されたジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物でもよい。
【0028】
また、エポキシ(メタ)アクリレートに反応させる(ii)テトラカルボン酸の酸二無水物としては、鎖式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物や脂環式テトラカルボン酸の酸二無水物、又は、芳香族テトラカルボン酸の酸二無水物が使用される。ここで、鎖式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸等の酸二無水物があり、更には任意の置換基が導入されたテトラカルボン酸の酸二無水物でもよい。また、脂環式テトラカルボン酸の酸二無水物としては、例えば、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、ノルボルナンテトラカルボン酸等の酸二無水物があり、更には任意の置換基の導入されたテトラカルボン酸の酸二無水物でもよい。更に、芳香族テトラカルボン酸の酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸等の酸二無水物が挙げられ、更には任意の置換基の導入されたテトラカルボン酸の酸二無水物でもよい。
【0029】
また、エポキシ(メタ)アクリレートに反応させる(i)ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸無水物と(ii)テトラカルボン酸の酸二無水物とのモル比(i)/(ii)の好適な一例としては、0.01~10.0とすることが挙げられ、より好ましくは0.02以上3.0未満とすることが挙げられる。モル比(i)/(ii)が上記範囲を逸脱すると、良好な光パターニング性を有する感光性樹脂組成物とするための最適分子量が得られないため、好ましくない。なお、モル比(i)/(ii)が小さいほど分子量が大となり、アルカリ溶解性が低下する傾向がある。
【0030】
なお、前記エポキシ(メタ)アクリレート酸付加物は、既知の方法、例えば、特開平8-278629号公報や特開2008-9401号公報等に記載の方法により製造することができる。先ず、エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を反応させる方法としては、例えば、エポキシ化合物のエポキシ基と等モルの(メタ)アクリル酸を溶剤中に添加し、触媒(トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、2,6-ジイソブチルフェノール等)の存在下、空気を吹き込みながら90~120℃に加熱・攪拌して反応させるという方法がある。次に、反応生成物であるエポキシアクリレート化合物の水酸基に酸無水物を反応させる方法としては、エポキシアクリレート化合物と酸二無水物及び酸一無水物の所定量を溶剤中に添加し、触媒(臭化テトラエチルアンモニウム、トリフェニルホスフィン等)の存在下、90~130℃で加熱・攪拌して反応させるという方法がある。この方法で得られたエポキシアクリレート酸付加物は一般式(2)の骨格を有する。
【0031】
(A)成分である不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂として好ましく用いることができる樹脂の別の例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の共重合体で(メタ)アクリル基とカルボキシル基を有する樹脂を挙げることができる。例えば、第一ステップとしてグリシジル(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリル酸エステル類を溶剤中で共重合させて得た共重合体に、第二ステップとして(メタ)アクリル酸を反応させ、第三ステップでジカルボン酸又はトリカルボン酸の無水物を反応させて得られる不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂である。これら共重合体の中でも好ましく用いることができる例については特願2017-33662に具体的に示されているものを参考にすることができる。
【0032】
もう1つの別の例としては、第一成分として分子中にエチレン性不飽和結合を有するポリオール化合物、第二成分として分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物、第三成分としてジイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタン化合物を挙げることができる。この系統の樹脂としては特開2017-76071に示されているものを参考にすることができる。
【0033】
また、本発明の前記(A)成分の好適な他の一例としては、例えば、下記一般式(1)で表される樹脂を挙げることができる。
【0034】
【化4】
【0035】
(式(1)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xは-CO-、-SO-、-C(CF-、-Si(CH-、-CH-、-C(CH-、-O-、9,9-フルオレンジイル基又は直結合を示し、Yは4価のカルボン酸残基を示し、Gはそれぞれ独立に水素原子又は下記一般式(2)で表される重合性二重結合とカルボキシル基を有する置換基を示し、Zは下記一般式(3)で表される置換基を示し、nは1~20の数を表す。)
【0036】
【化5】
【0037】
(式(2)中、Rは2価のアルキレン基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数3~6の脂肪族炭化水素基を示し、Zは下記一般式(3)で表される置換基を示し、qは0又は1の数を表す。)
【0038】
【化6】
【0039】
(式(3)中、Lは2価又は3価のカルボン酸残基を示し、pは1又は2である。)
【0040】
このような一般式(1)で表される樹脂(アルカリ可溶性樹脂)は、ビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を反応させ、得られた重合性不飽和基を有するジオール化合物にテトラカルボン酸類又はその酸二無水物を反応させ、得られた反応物に更に重合性二重結合を含有するオキシラン化合物を反応させ、更にジカルボン酸類又はトリカルボン酸類ならびにその酸一無水物を反応させて得られたカルボキシル基含有交互共重合体である。このような一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂は、(メタ)アクリル酸を有するジオール化合物に由来する光重合性不飽和基を有するためにラジカル重合性を有するほか、酸一無水物及び酸二無水物に由来する酸性基を含有するためアルカリ可溶性を有する。また、このような一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂は、重合性不飽和二重結合とカルボキシル基とを併せ持つため、組成物に優れた光硬化性、良現像性、パターニング特性を付与し得る。このような一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂を用いた場合、例えば、これを用いて比較的厚い膜(例えば10~50μm程度の厚みの膜)を製造した場合、樹脂底面までの光硬化性を向上して、より良好なパターン形状を形成できる傾向にある。また、例えば、前記アルカリ可溶性樹脂を用いて薄膜(例えば、厚みが1μm未満となるような膜)を製造した場合には、露光部のアルカリ現像液に対する耐性を向上する傾向にあり、これにより、現像時の膜の減量を減少させることが可能となって十分な残膜率が得られるばかりか、薄膜の基板からの剥離をより抑制することができる傾向にある。
【0041】
前記式(1)中のR、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を示す。前記式(1)中のR、R、R、及びRはそれぞれ、好ましくは水素原子、炭素数1~5のアルキル基、又はフェニル基であり、さらに好ましくは水素原子である。また、前記式(1)中のRは水素原子又はメチル基を示す。
【0042】
さらに、前記式(1)中のXは-CO-、-SO-、-C(CF-、-Si(CH-、-CH-、-C(CH-、-O-、9,9-フルオレニレン基又は直結合を示すが、9,9-フルオレニレン基であるのが好ましい。
【0043】
前記式(1)中のYは4価のカルボン酸残基を示す。なお、ここにいう「4価のカルボン酸残基」とは、4価のカルボン酸からカルボキシ基を除いた場合に残る部分の構造を表現するものであり、4価のカルボン酸の無水物(酸二無水物)から酸二無水物基を除いた場合に残る残基(4価のカルボン酸二無水物残基)と同義である(4価のカルボン酸からカルボキシ基を除いた「4価のカルボン酸残基」と、4価のカルボン酸二無水物から酸二無水物を除いた「4価のカルボン酸二無水物残基」の構造は同様のものとなり、これらは等価のものといえるからである)。このような4価のカルボン酸残基としては、飽和鎖式炭化水素テトラカルボン酸及びその酸二無水物、飽和環式炭化水素テトラカルボン酸及びその酸二無水物、並びに、芳香族テトラカルボン酸及びその酸二無水物から選択される1種からカルボキシ基及び酸無水物基を除いてなる、4価の残基(前述の4価のカルボン酸残基及び4価のカルボン酸二無水物残基)が挙げられる。これらの飽和鎖式炭化水素テトラカルボン酸及びその酸二無水物、飽和環式炭化水素テトラカルボン酸及びその酸二無水物、並びに、芳香族テトラカルボン酸及びその酸二無水物の種類等は特に制限されず、後述の酸二無水物(b1)において説明するものと同様のものを利用することが望ましい。
【0044】
また、前記式(1)中のGはそれぞれ独立に水素原子又は上記一般式(2)で表される重合性二重結合とカルボキシル基を有する置換基を示す。このような式(2)中のRは2価のアルキレン基を示す。このような2価のアルキレン基としては炭素数2~20のものが好ましく、2~10のものがより好ましい。また、前記式(2)中のRは水素原子又はメチル基を示す。Rは炭素数3~6の脂肪族炭化水素基を示す。
【0045】
また、式(1)及び(2)中、Zは上記一般式(3)で表される置換基を示す。このような式(3)中のLは、2価又は3価のカルボン酸残基を示す。ここにいう「2価又は3価のカルボン酸残基」は、ジカルボン酸又はトリカルボン酸からカルボキシ基を除いた場合に残る部分の構造を表現するものであり、ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物(酸二無水物)から、その化合物が有する全てのカルボキシ基及び酸一無水物基を除いてなる残基と同等のものとなる。このようなカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物としては、後述の酸一無水物(d1)において説明するものと同様のものが好ましい。
【0046】
ここで、このような一般式(1)で表わされるアルカリ可溶性樹脂の製造方法について説明する。先ず、一般式(1)で表わされるアルカリ可溶性樹脂は、ビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物(特に好ましくは下記一般式(I)で表されるエポキシ化合物)と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる重合性不飽和基を含有するジオール化合物から誘導される。
【0047】
【化7】
【0048】
式中のR、R、R、R、及びXは、上記式(1)において説明したものと同義である(その好適なものも同義である)。なお、Xとして選択され得る9,9-フルオレニレン基は、下記式一般式(II)で表される基をいう。
【0049】
【化8】
【0050】
このようなエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応は、公知の方法を使用することができ、例えば、エポキシ化合物1モルに対し、2モルの(メタ)アクリル酸を使用して行ってもよい。すべてのエポキシ基に(メタ)アクリル酸を反応させるため、エポキシ基とカルボキシル基の等モルよりも若干過剰に(メタ)アクリル酸を使用してもよい。この反応で得られる反応物は、例えば、特開平4-355450号公報等に記載されている。この反応で得られる反応物は重合性不飽和基を含有するジオール化合物であり、下記一般式(III)で表されるようなエポキシ(メタ)アクリレート化合物である。
【0051】
【化9】
【0052】
一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の原料となる前記一般式(I)のエポキシ化合物の製造に用いる好ましいビスフェノール類としては、次のようなものが挙げられる。ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)エーテル等である。また、Xが9,9-フルオレニル基である9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フルオロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)フルオレン等も好ましく挙げられる。更には、4,4’-ビフェノール、3,3’-ビフェノール等も好ましく挙げられる。
【0053】
一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂は、上記のようなビスフェノール類から誘導されるエポキシ化合物から得ることができるが、かかるエポキシ化合物の他にフェノールノボラック型エポキシ化合物や、クレゾールノボラック型エポキシ化合物等も2個のグリシジルエーテル基を有する化合物を有意に含むものであれば使用することができる。
【0054】
次に、前記重合性不飽和基を含有するジオール化合物(一般式(III)で表されるようなエポキシ(メタ)アクリレート化合物)に、テトラカルボン酸又はその酸二無水物を反応させ、引き続き重合性不飽和基を含有するオキシラン化合物を反応させ、さらにジカルボン酸又はトリカルボン酸ならびにその酸一無水物を反応させることにより、一般式(1)で表される本発明のアルカリ可溶性樹脂を製造する方法を説明する。このような方法の好適な一例を下記反応式(I)に示す。なお、下記反応式(I)中の「一般式(VI)で表されるアルカリ可溶性樹脂」は、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の好適な一例であり、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂は、かかる構造に限定されるものではない。
【0055】
【化10】
【0056】
(反応式(I)において、R、R、R、R、R、X、及びYは上記一般式(1)の場合と同じである。また、Rは2価のアルキレン基、Rは水素原子又はメチル基を示し、Zは上記一般式(3)で表される置換基を示す。更に、nは1~20の数であり、pは一般式(3)中のpと同義であり、qは一般式(2)中のqと同義である。)
上記反応式(I)においては、先ず、前述のエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応で得られた上記一般式(III)のエポキシ(メタ)アクリレート化合物(重合性不飽和基を含有するジオール化合物:以下、場合により「ジオール化合物(a1)」と称する)と酸成分とを反応させて一般式(IV)で表される化合物(カルボキシル基を有する反応物)を得る。この際使用する溶媒、触媒等の反応条件に関しては特に制限されないが、例えば水酸基を持たず、反応温度より高い沸点を有する溶媒を反応溶媒として用いるのがよく、このような溶媒としては、例えば、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒や、ジグライム、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の高沸点のエーテル系若しくはエステル系の溶媒や、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒等であるのがよい。また、使用する触媒としては、例えばテトラエチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリス(2、6-ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類等の公知のものを使用することができる。これらについては、例えば、特開平9-325494号公報に詳細に記載されている。また、酸成分としては、エポキシ(メタ)アクリレート化合物分子中の水酸基と反応し得る酸二無水物(b1)を使用するのがよい。酸二無水物(b1)としては、飽和直鎖炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物、飽和環式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸の酸二無水物等を使用することができる。
【0057】
ここで、飽和鎖式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸の酸二無水物等を挙げることができ、更にはシクロアルキル基、芳香族基等の置換基が置換した飽和鎖式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物でもよいし、不飽和鎖式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物でもよい。
【0058】
また、飽和環式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物としては、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、ノルボルナンテトラカルボン酸の酸二無水物等を挙げることができ、更にはアルキル基、シクロアルキル基、芳香族基等の置換基が置換した飽和環式テトラカルボン酸の酸二無水物でもよい。また、不飽和環式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物でもよい。
【0059】
また、芳香族テトラカルボン酸の酸二無水物としては、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸の酸二無水物等を挙げることができる。
【0060】
このような酸二無水物としては、好ましくはビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸の酸二無水物であり、さらに好ましくはビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸の酸二無水物である。これら酸二無水物は、2種以上を併せて使用することもできる。
【0061】
エポキシ(メタ)アクリレート化合物と酸二無水物とを反応させて一般式(IV)で表わされる化合物を製造する方法については、特に限定されるものでなく、例えば特開平9-325494号公報に記載されているように、反応温度が90~140℃でエポキシ(メタ)アクリレート化合物とテトラカルボン酸二無水物を反応させるような公知の方法を採用することができる。一般式(III)で表される重合性不飽和基を有するジオール化合物(a1)と酸二無水物(b1)とのモル比[(b1)/(a1)]は、一般式(IV)で表される化合物の末端が水酸基となるように、30モル%以上100モル%未満となるように定量的に反応させる。モル比が30モル%未満の場合は、未反応エポキシ(メタ)アクリレート化合物の含有量が増大してアルカリ可溶性樹脂組成物の経時安定性低下が懸念される。一方、モル比が100モル%以上の場合は、一般式(IV)で表される化合物の末端が酸無水物となり、また、未反応酸二無水物の含有量が増大して後にオキシラン化合物を反応させる際の副反応が懸念される。より好ましいモル比[(b1)/(a1)]は40モル%以上70モル%以下である。また、反応温度としては、90~130℃で仕込み原料を均一に溶解させると共に反応を行い、引き続いて40~80℃で反応及び熟成を行うことが好ましい。
【0062】
引き続き、前記一般式(IV)で表される化合物に、オキシラン化合物(c1)を反応させ、一般式(V)で表される化合物を得る。オキシラン化合物(c1)としては、重合性二重結合を1つ以上含有し、かつオキシラン環を1つ含有する化合物であり、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメタクリレート等が挙げられる。
【0063】
一般式(V)で表される化合物の製造方法については、特に限定されるものでなく、カルボン酸とエポキシ化合物の付加反応の一般的反応条件を用いることができる。また、例えば、特開平9-325494号公報に記載されているようなビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂とアクリル酸を、テトラエチルアンモニウムブロマイド等を触媒として用いて100℃で反応させるような、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応によるエポキシ(メタ)アクリレート化合物の製造方法も参考にすることができる。一般式(V)で表される化合物を合成する際の反応温度としては、40~120℃の範囲が好ましく、より好ましくは、40~90℃である。
【0064】
一般式(IV)で表される化合物にオキシラン化合物(c1)を反応させて一般式(V)で表される化合物を得るには、一般式(IV)で表される化合物を製造する際に用いる酸二無水物(b1)に対してオキシラン化合物(c1)を200モル%反応させることが必要である。ただし、一般式(IV)で表される化合物に追加するべき重合性不飽和結合の必要量は、アルカリ可溶性樹脂を用いた感光性樹脂組成物を使用する条件に対応して決定されるものであり、一般式(V)の化合物の各分子内の一部に一般式(VII)の構造を含んでいてもよい。
【0065】
【化11】
【0066】
また、一般式(IV)で表される化合物のカルボキシル基とオキシラン化合物(c1)のオキシラン基の反応性の問題を加味すると、一般式(V)で表される化合物を合成する際のオキシラン化合物(c1)が酸二無水物(b1)に対して、すなわちモル比〔(C)/(B)〕が、160~220モル%であるのがよい。モル比が160モル%未満の場合は、一般式(VII)の構造が増えることになり構造中に存在する未反応カルボン酸によって酸無水物の再生反応による分子量低下が懸念される。一方、モル比が220モル%を超える場合は、未反応オキシラン化合物に由来する副反応等による一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の経時変化が懸念される。モル比[(c1)/(b1)]のより好ましい範囲は、190~210モル%である。
【0067】
引き続き、上述の一般式(V)で表される化合物の水酸基と酸一無水物(d1)とを反応させ、一般式(VI)で表されるアルカリ可溶性樹脂を得る。ここで、酸一無水物(d1)としては、飽和鎖式炭化水素ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物、飽和環式炭化水素ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物、不飽和炭化水素ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物、芳香族炭化水素ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物等を使用することができる。なお、これらの酸一無水物の各炭化水素残基(カルボキシル基を除いた構造)は、さらにアルキル基、シクロアルキル基、芳香族基等の置換基により置換されていてもよい。具体的な酸一無水物の例としては、飽和鎖式炭化水素ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物としては、例えば、コハク酸、アセチルコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の無水物を挙げることができる。また、飽和環式炭化水素ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物としては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、ヘキサヒドロトリメリット酸等の酸無水物を挙げることができる。また、不飽和ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸等の酸無水物挙げることができる。さらに、芳香族炭化水素ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物としては、フタル酸、トリメリット酸等の酸無水物挙げることができる。これらのなかで、酸一無水物(d1)として好ましくはコハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、フタル酸、トリメリット酸の無水物であり、さらに好ましくはコハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸の酸無水物である。なお、これら酸一無水物(d1)は1種類を使用することも、2種類以上使用することも可能である。
【0068】
一般式(V)で表される化合物の水酸基と酸一無水物(d1)とを反応させて、一般式(VI)で表される化合物を合成する際の反応温度としては、20~120℃の範囲が好ましく、より好ましくは40~90℃である。一般式(VI)で表される化合物を合成する際の酸一無水物(d1)のモル比は、前記重合性不飽和基を有するジオール化合物(a1)、酸二無水物(b1)及びオキシラン化合物(c1)のモル数から換算される式(2×((a1)-(b1))+(c1))に対して、すなわちモル比[(d1)/[2((a1)-(b1))+(c1)]]が、20~110モル%であるのがよい。酸一無水物のモル比は前記一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の酸価を調整する目的で、上述の範囲で任意に変更できるが、20モル%未満であると酸価が小さすぎてアルカリ可溶性が不十分となる傾向にある。一方、110モル%を超えると、未反応の酸一無水物(d1)の残存量が多くなり、感光性樹脂組成物として使用して硬化物を得た場合、所望物性の硬化物を得られなくなる。より好ましい[(d1)/[2((a1)-(b1))+(c1)]]の範囲は、モル比[(c1)/(b1)]が190~210モル%である場合に、50~100モル%である。なお、モル比[(c1)/(b1)]の数値が小さい場合には、より好ましい[(d1)/[2((a1)-(b1))+(c1)]]の範囲も小さめになる傾向がある。
【0069】
前記反応式(I)に従って、一般式(VI)で表される化合物を得ようとする場合、すべての分子を一般式(VI)の構造にするためには、酸二無水物(b1)に対してオキシラン化合物(c1)を200モル%反応させ、引き続いて酸一無水物(d1)を、[(d1)/[2((a1)-(b1))+(c1)]]の値が100モル%になるように添加し、定量的に反応させることが必要である。一般式(V)で表される化合物に関する説明のところでも記載したように、一般式(IV)で表される化合物に追加するべき重合性不飽和結合の必要量は、アルカリ可溶性樹脂を用いた感光性樹脂組成物を使用する条件によって決定されるものであり、好ましい酸価もアルカリ可溶性を用いた感光性樹脂組成物の組成設計によって決定されるものである。従って、すべての分子を一般式(VI)の構造にする必要性はなく、一般式(VIII)の構造を含む化合物を含んでいてもよい。
【0070】
【化12】
【0071】
前記一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂を製造する方法の一例を、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンを出発原料とする場合について具体的に示すと次のようである。先ず、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンとエピクロロヒドリンとを反応させて下記一般式(IX)で表されるビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物を合成し、このビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物とCH=CHR-COOH(Rは前記と同じ)で表される(メタ)アクリル酸とを反応させて下記一般式(X)で表されるビスフェノールフルオレン型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を合成する。次いで、このビスフェノールフルオレン型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の溶剤中で加熱下、酸二無水物(b1)、オキシラン化合物(c1)、酸一無水物(d1)と順次反応させて、上記一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂を得る。
【0072】
【化13】
【0073】
【化14】
【0074】
また、本発明において、前記(A)成分の不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量(Mw)と酸価の範囲は、樹脂の骨格によって異なり、特に制限されないが、通常Mwは2000~50000でありかつ酸価は60~120mgKOH/gであることが好ましい。Mwが2000未満の場合はアルカリ現像時のパターンの密着性が低下してしまう場合が生じ得る。他方、Mw50000を超える場合は現像性が著しく低下し、適正な現像時間の感光性樹脂組成物を得ることができなくなる場合が生じ得る。また、酸価の値が60より小さいとアルカリ現像時に残渣が残り易くなり、酸価の値が120より大きくなるとアルカリ現像液の浸透が早くなりすぎ、好ましい溶解現像とならず、剥離現像がおきてしまうので、いずれも好ましくない。
【0075】
〈(B)重合性化合物〉
本発明にかかる重合性化合物((B)成分)としては、重合性不飽和基を有する化合物を好適なものとして挙げることができる。このような(B)成分である重合性化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、エチレン性二重結合を有する化合物として(メタ)アクリル基を有する樹枝状ポリマー等が挙げられる。このような(B)成分である重合性化合物としては、架橋密度を高め、現像液耐性を向上させる観点および硬化後の形状保持性、耐熱性、接着強度を向上させる観点から、中でも、2官能以上の重合性不飽和基を有する化合物が好ましい。これらの重合性化合物は、その1種類のみを単独で使用してもよく、あるいは、2種類以上を併用してもよい。
【0076】
また、(B)成分は、(A)成分の分子同士を架橋する役割を果たすことができればよく、この機能をより十分に発揮させる観点からは、重合性不飽和基(不飽和結合)を3個以上有するものを用いることが好ましい。また、(B)成分の重合性化合物の分子量を1分子中の(メタ)アクリル基の数で除したアクリル当量は50以上300以下であることが好ましく、80以上200以下であることがより好ましい。なお、(B)成分は、遊離のカルボキシ基を有しない化合物であることが好ましい。
【0077】
〈(C)光重合開始剤〉
本発明にかかる光重合開始剤((C)成分)としては、特に制限されず、公知の光重合開始剤を適宜利用できる。このような(C)成分である光重合開始剤としては、例えば、2-[4-(メチルチオ)ベンゾイル]-2-(4-モルホリニル)プロパン、1-(9,9-ジブチル-9H-フルオレン-2-イル)-2-メチル-2-モルホリン-4-イル-プロパン-1-オン、2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルビイミダゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)ビイミダゾール、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2、4,5-トリアリールビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2-ビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類;2-トリクロロメチル-5-スチリル-1,3,4-オキサジアゾ-ル、2-トリクロロメチル-5-(p-シアノスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(p-メトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物類;2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4、6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等のハロメチル-s-トリアジン系化合物類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)(イルガキュアOXE01、BASFジャパン社製、「イルガキュア」は同社の登録商標)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾア-ト、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-アセタート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-ビシクロヘプチル-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-アダマンチルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-アダマンチルメタン-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-テトラヒドロフラニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-テトラヒドロフラニルメタン-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-チオフェニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-チオフェニルメタン-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-モロフォニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-モロフォニルメタン-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-ビシクロヘプタンカルボキシレート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-トリシクロデカンカルボシキレート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-アダマンタンカルボシキレート、1-[4-(フェニルスルファニル)フェニル]オクタン-1,2-ジオン=2-O-ベンゾイルオキシム、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)カルバゾール-3-イル]エタノン-O-アセチルオキシム、(2-メチルフェニル)(7-ニトロ-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル)-アセチルオキシム、エタノン,1-[7-(2-メチルベンゾイル)-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル]-1-(o-アセチルオキシム)、エタノン,1-(-9,9-ジブチル-7-ニトロ-9H-フルオレン-2-イル)-1-O-アセチルオキシム、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(イルガキュアOXE02)等のO-アシルオキシム系化合物類;ベンジルジメチルケタール;2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類;アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物等が挙げられる。なお、これら光重合開始剤は、その1種のみを単独で使用してもよく、あるいは、2種以上を併用してもよい。
【0078】
〈(F)感光材〉
本発明にかかる感光材((F)成分)としては、特に制限されず、フォトレジストの分野において利用されている公知の感光材を適宜利用できる。このような(F)成分である感光材としては、いわゆる光酸発生剤を好適に利用でき、中でも、未露光部の現像液への溶解をより抑制するといった観点から、ナフトキノンジアジド化合物であることが好ましい。このようなナフトキノンジアジド化合物としては公知のものを用いることができ、例えば、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合したもの;ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの;ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合及び/又はスルホンアミド結合したもの;等が挙げられる。このようなキノンジアジド化合物としては、中でも、フェノール性水酸基を有する化合物にナフトキノンジアジドスルホン酸がエステル結合した、ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物が好ましい。なお、このような感光材は、その1種のみを単独で使用してもよく、あるいは、2種以上を併用してもよい。
【0079】
〈(H)溶剤〉
本発明にかかる溶剤((H)成分)としては、特に制限されず、フォトレジストの分野において利用されている公知の溶剤を適宜利用できる。このような(H)成分である溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、3-メトキシ-1-ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、3-ヒドロキシ-2-ブタノン、及びジアセトンアルコールなどのアルコール類;α-もしくはβ-テルピネオールなどのテルペン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、及びN-メチル-2-ピロリドンなどのケトン類;トルエン、キシレン、及びテトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、及びトリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシ-3-ブチルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類;等が挙げられる。なお、このような溶剤、その1種のみを単独で使用してもよく、あるいは、2種以上を併用してもよい。
【0080】
以上、本発明のポジ型感光性樹脂組成物が必須成分として含む各成分((A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、(B)重合性化合物、(C)光重合開始剤、(F)感光材、及び(H)溶剤)について説明したが、本発明のポジ型感光性樹脂組成物に利用可能な成分は、上記成分に制限されるものではなく、他の成分を含有していてもよい。このような他の成分としては、特に制限されるものではないが、(D)光増感剤、(G)エポキシ化合物を好適なものとして挙げることができる。以下、本発明のポジ型感光性樹脂組成物に好適に利用され得る(D)光増感剤、(G)エポキシ化合物について説明する。
【0081】
〈(D)光増感剤〉
本発明において好適に利用し得る光増感剤((D)成分)としては、特に制限されず、フォトレジストの分野において利用されている公知の光増感剤を適宜利用できる。このような(D)成分である光増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ベンゾフェノン、4,4’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン等のチオキサントン系、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン 等のアミノベンゾフェノン系、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が含まれる。なお、これら光増感剤は、その1種のみを単独で使用してもよく、あるいは、2種以上を併用してもよい。なお、このような光増感剤は、光重合開始剤の感度に応じて適宜利用すればよい。
【0082】
〈(G)エポキシ化合物〉
本発明において好適に利用し得るエポキシ化合物((G)成分)としては、特に制限されず、フォトレジストの分野において利用されている公知のエポキシ化合物を適宜利用できる。このような(G)成分であるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、ビスナフトールフルオレン型エポキシ化合物、ジフェニルフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフタレン骨格を含むフェノールノボラック化合物(例えば、NC-7000L:日本化薬株式会社製)、ビフェニル型エポキシ化合物(例えば、jER YX4000:三菱ケミカル株式会社製、「jER」は同社の登録商標)、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、トリスフェノールメタン型エポキシ化合物(例えば、EPPN-501H:日本化薬株式会社製)、テトラキスフェノールエタン型エポキシ化合物、多価アルコールのグリシジルエーテル、多価カルボン酸のグリシジルエステル、メタクリル酸とメタクリル酸グリシジルの共重合体に代表される(メタ)アクリル酸グリシジルをユニットとして含む(メタ)アクリル基を有するモノマーの共重合体、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、セロキサイド2021P:株式会社ダイセル製、「セロキサイド」は同社の登録商標)、ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε-カプロラクトン(例えば、エポリードGT401:株式会社ダイセル製、「エポリード」は同社の登録商標)、エポキシシクロヘキシル基を有するエポキシ化合物(例えば、HiREM-1:四国化成工業株式会社製)、ジシクロペンタジエン骨格を有する多官能エポキシ化合物(例えば、HP7200シリーズ:DIC株式会社製)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(例えば、EHPE-3150:株式会社ダイセル製)、エポキシ化ポリブタジエン(例えば、NISSO-PB JP-100:日本曹達株式会社製、「NISSO-PB」は同社の登録商標)、シリコーン骨格を有するエポキシ化合物等が挙げられる。なお、これらの化合物は、その1種類の化合物のみを用いてもよく、あるいは、2種以上を併用してもよい。
【0083】
以上、本発明のポジ型感光性樹脂組成物に好適に利用し得る他の成分である(D)成分及び(G)成分について説明したが、本発明のポジ型感光性樹脂組成物に利用し得る他の成分は、これらに制限されるものではなく、組成物の用途に応じて、例えば、充填材、レベリング剤、消泡剤、界面活性剤、接着助剤、帯電防止剤、保存安定剤、顔料、染料等の公知の添加剤を適宜利用してもよい。
【0084】
〈組成物の組成について〉
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、(B)重合性化合物、(C)光重合開始剤、(F)感光材、及び(H)溶剤を含むものである。このような組成物において、前記(A)成分の含有量は、組成物中の溶剤を除いた固形分(ここにいう「固形分」には組成物の硬化後に固形分となるモノマーを含む)の全量に対して20~80質量%(より好ましくは30~70質量%)であることが好ましい。前記(A)成分の含有量を前記下限以上とすることで硬化後の接着強度、耐熱性の点でより高い効果が得られる傾向にあり、他方、前記上限以下とすることで、露光部と未露光部のコントラストが付きやすく、良好なパターン形状を形成する点でより高い効果が得られる傾向にある。
【0085】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、前記(B)成分の含有量は、前記(A)成分100質量部に対して5~80質量部(より好ましくは10~70質量部)であることが好ましい。前記(B)成分の含有量を前記下限以上とすることでラジカル重合により残膜率の向上、高い形状保持性の効果が得られる傾向にあり、他方、前記上限以下とすることで、熱をかけた貼合時のタック性を発現でき、第二の基板との追従性が良くなることから、接着性の点でより高い効果が得られる傾向にある。
【0086】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、前記(C)成分の含有量は、前記(A)成分と前記(B)成分の合計量100質量部に対して0.05~10質量部(より好ましくは0.1~5質量部)であることが好ましい。前記(C)成分の含有量を前記下限以上とすることでラジカル重合で硬化しTgが高くなるため、形状保持性の点でより高い効果が得られる傾向にあり、他方、前記上限以下とすることで、熱をかけた貼合時のタック性を発現でき、第二の基板との追従性が良くなることから、接着性の点でより高い効果が得られる傾向にある。
【0087】
なお、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、前記(B)成分及び前記(C)成分を必須成分として含むことで、現像前の露光時にマスクGAPが広く、光がマスク下のプレベーク膜に照射されても、ラジカル重合されるためパターン部の現像液耐性が向上し、残膜率が高くなる。また、現像後のブリーチングでさらにラジカル重合が進むため、熱硬化後の形状を保持することが可能となると本発明者らは推察する。
【0088】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、前記(F)成分の含有量は、前記(A)成分と前記(B)成分の合計量100質量部に対して5~50質量部(より好ましくは10~40質量部)であることが好ましい。前記(F)成分の含有量を前記下限以上とすることで露光部と未露光部のコントラストがついてパターン形成に高い効果が得られる傾向にあり、他方、前記上限以下とすることで、ブリーチングにより発生するガス痕による平坦性の低下を抑制する効果が得られる傾向にある。
【0089】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、前記(H)成分の含有量は、組成物全量(溶媒を含む全量)に対して、20~95質量%(より好ましくは30~90質量%)であることが好ましい。前記(H)成分の含有量を前記下限以上とすることで固形分を溶解させ、均一なレジスト組成物とする点でより高い効果が得られる傾向にあり、他方、前記上限以下とすることで、均一に塗布、製膜できる点でより高い効果が得られる傾向にある。
【0090】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物が、前記(D)成分(光増感剤)を更に含む場合、前記(D)成分の含有量は、前記(C)成分100質量部に対して5~40質量部(より好ましくは10~30質量部)であることが好ましい。前記(D)成分の含有量を前記下限以上とすることでラジカル重合で硬化しTgが高くなるため、形状保持性の点でより高い効果が得られる傾向にあり、他方、前記上限以下とすることで、熱をかけた貼合時のタック性を発現でき、第二の基板との追従性が良くなることから、接着性の点でより高い効果が得られる傾向にある。
【0091】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物が、前記(G)成分(エポキシ化合物)を含む場合、前記(G)成分の含有量は、前記(A)成分と前記(B)成分の合計量100質量部に対して5~40質量部(より好ましくは10~30質量部)であることが好ましい。前記(G)成分の含有量を前記下限以上とすることで第二の基板との接着性の点でより高い効果が得られる傾向にあり、他方、前記上限以下とすることで、アルカリ現像液に対する溶解性が担保され、良好なパターン特性効果が得られる傾向にある。
【0092】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、該組成物中の前記(H)成分を除く固形分(ここにいう「固形分」には組成物の硬化後に固形分となるモノマーを含む)の含有量が5~80質量%(より好ましくは10~70質量%)であることが好ましい。このような固形分の含有量を前記下限以上とすることで均一に塗布、製膜できる点でより高い効果が得られる傾向にあり、他方、前記上限以下とすることで、固形分を溶解させ、均一なレジスト組成物とする点でより高い効果が得られる傾向にある。
【0093】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、パターン状の硬化膜(硬化膜パターン)を形成した際の形状保持性、残膜率、耐熱性及び接着強度の観点から、前記(B)成分の含有量が前記(A)成分100質量部に対して5~80質量部であり、前記(C)成分の含有量が前記(A)成分と前記(B)成分の合計量100質量部に対して0.05~10.0質量部であり、前記(F)成分の含有量が前記(A)成分と前記(B)成分の合計量100質量部に対して5~50質量部であり、かつ、組成物中の前記(H)成分を除く固形分の含有量が5~80質量%であるという条件を満たすものがより好ましい。
【0094】
このような本発明のポジ型感光性樹脂組成物の製造方法は特に制限されず、前述の各成分を均一に混合することによって容易に製造することができ、例えば、15~40℃(好ましくは室温程度)の温度条件下において、利用する各成分を撹拌することにより製造してもよい。
【0095】
[硬化膜]
本発明の硬化膜は、前記本発明のポジ型感光性樹脂組成物を硬化させてなるものである。このような硬化膜を製造するための方法は特に制限されず、例えば、前記本発明のポジ型感光性樹脂組成物を基板等に塗布して塗膜を形成した後、溶剤を除去し、その後、硬化させることにより製造する方法を採用してもよい。なお、このような硬化膜を製造するための方法としては、例えば、前記本発明のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布することにより塗膜を得る工程と;前記塗膜から(H)成分である溶剤を除去するプレベーク工程と;前記プレベーク工程後の膜にマスクを通して紫外線を照射する露光工程と;露光後の膜をアルカリ現像液で現像して前記基板上にパターンを形成する工程と;パターンが形成された膜に紫外線を照射することにより前記膜中の感光材を分解するブリーチング工程と;前記ブリーチング工程後の膜を加熱して硬化するポストベーク工程と;を含むことにより、パターニングされた状態の硬化膜を得る方法を好適に採用することができる。なお、これらの各工程は、後述の本発明の硬化膜付き基板の製造方法において採用されている各工程と同様の工程とすることが好ましい。
【0096】
このような硬化膜の膜厚は、用途に応じて任意に設計することができ、特に制限されるものではないが、実用上、0.1μm以上50μm以下とすることが好ましく、0.5μm以上30μm以下とすることがより好ましい。なお、このような硬化膜の用途としては、例えば、ソルダーレジスト、フルアディティブ法におけるメッキレジスト等の永久保護マスクの用途等に好適使用されるほか、プリント配線板関連のエッチングレジストや層間絶縁材料、感光性接着剤、塗料、プラスチックレリーフ、ブラスチックのハードコート剤、オフセット印刷板としてのPS版、スクリーン印刷用の感光液及びレジストインキ等が挙げられる。
【0097】
[硬化膜付き基板の製造方法]
本発明の硬化膜付き基板の製造方法は、
前記本発明のポジ型感光性樹脂組成物を第一の基板上に塗布することにより塗膜を得る工程と、
前記塗膜から(H)成分である溶剤を除去するプレベーク工程と、
前記プレベーク工程後の膜にマスクを通して紫外線を照射する露光工程と、
露光後の膜をアルカリ現像液で現像して前記基板上にパターンを形成する工程(現像工程)と、
パターンが形成された膜に紫外線を照射することにより前記膜中の感光材を分解するブリーチング工程と、
前記ブリーチング工程後の膜を加熱して硬化するポストベーク工程と、
を含むことにより、前記基板上に前記ポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜パターンを形成して硬化膜付き基板を得る方法である。
【0098】
本発明に利用する前記第一の基板としては、特に制限されないが、例えば、ガラス基板、アクリル基板、サファイア基板、及び、石英ガラス基板などが挙げられる。このような基板としては、経済性の観点からは、ガラス基板が好ましい。
【0099】
本発明の硬化膜付き基板の製造方法においては、先ず、前記本発明のポジ型感光性樹脂組成物を第一の基板上に塗布することにより塗膜を得る(塗膜を得る工程)。このような塗膜を得る工程において、前記本発明のポジ型感光性樹脂組成物を塗布する方法は特に制限されず、溶液浸漬法、スピンコート法、インクジェット法、スプレー法、ならびに、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコーター機及びスピナー機を用いる方法等の公知の方法を適宜利用できる。
【0100】
また、本発明においては、塗膜を得る工程を施した後には、前記塗膜から(H)成分である溶剤を除去するプレベーク工程を施す。このようなプレベークの方法としては、特に制限されず、公知のプレベークの方法において採用されている条件と同様の条件を適宜採用できる。このようなプレベーク工程における加熱温度としては、50~150℃(より好ましくは60~130℃)とすることが好ましい。また、加熱時間は、溶剤を除去することが可能となるように、時間を適宜設定すればよく、特に制限されるものではないが、溶剤の種類等に応じて、例えば30秒~30分間としてもよい。このようなプリベーク工程においては、プリベーク後の膜厚は、0.1~15μmとすることが好ましい。
【0101】
また、本発明においては、前記プレベーク工程を施した後、前記プレベーク工程後の膜にマスクを通して紫外線を照射する露光工程を施す。このような露光工程において照射する紫外線としては、特に制限されるものではないが、中でも、波長が250~450nmの範囲にある紫外線を好適に利用できる。また、露光光源としては、例えば、各種レーザー、発光ダイオード(LED)、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ及びメタルハライドランプが挙げられる。
【0102】
また、このような露光工程においては、目的とするパターンを形成するためのマスクを用いて、露光量が5~1000mJ/cm(より好ましくは10~500mJ/cm)となるように紫外線を照射することが好ましい。このような露光量が前記下限未満では露光部と未露光部のコントラストが不十分でパターン部(未露光部)も露光部と一緒に剥離してしまう傾向にあり、他方、前記上限を超えるとラジカル重合による効果が大きくなり、露光部が現像液に不溶となり、現像不良が発生する傾向にある。なお、このような露光量は、光源照度及び露光時間により決定すればよく、公知の光量計を用いて測定してもよい。
【0103】
また、本発明においては、前記露光工程に、露光後の膜をアルカリ現像液で現像して、前記基板上にパターンを形成する工程(現像工程)を施す。このような現像の方法としては、シャワー、ディッピング、パドルなどの方法でアルカリ現像液に露光後の膜を5秒~10分間浸漬する方法とすることが好ましい。また、アルカリ現像液としては、特に制限されず、公知のアルカリ現像液を適宜利用でき、例えば、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩等の無機アルカリ;2-ジエチルアミノエタノール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン類;及び、水酸化テトラメチルアンモニウム、コリン等の4級アンモニウム塩;等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を含む水溶液等を挙げることができる。なお、このような現像後には、得られるパターンを水で洗浄(リンス)することが好ましく、場合によっては、ブリーチングの前に50~150℃の範囲で乾燥ベークを行ってもよい。このように、露光後の膜をアルカリ現像液で現像することにより、前記基板上にパターン(パターンが形成された膜)を形成することができる(露光後、現像により露光部が溶解し、ポジ型のパターンを形成することができる)。
【0104】
また、本発明においては、前述のようにしてパターンが形成された膜を得た後、その膜に紫外線を照射することにより前記膜中の感光材を分解するブリーチング工程を施す。このようなブリーチング工程に利用する紫外線しては、特に制限されるものではないが、中でも、波長が250~450nmの範囲にある紫外線を好適に利用できる。また、紫外線の照射手段としては、例えば、各種レーザー、発光ダイオード(LED)、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ及びメタルハライドランプが挙げられる。
【0105】
また、前記ブリーチング工程における紫外線の照射に際しては、露光量が50~10000mJ/cm(より好ましくは100~5000mJ/cm)となるように紫外線を照射することが好ましい。このような露光量が前記下限未満ではポストベーク時に残存する感光材が熱分解し、発生したガス痕で平坦性が低下する。また、被着体と接着した後であれば、発生したガスが空隙となり、接着性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとラジカル重合による架橋が進み、熱をかけて貼合する際にタック性が弱く、第二の基板への追従性が低下し、接着性が低下する傾向にある。なお、このようなブリーチング露光を行うことによって、膜中に残存する未反応の感光材が光分解され、膜の光透明性がさらに向上する。
【0106】
このようにしてブリーチング工程を施した後には、前記ブリーチング工程後の膜を加熱して硬化する(ポストベーク工程)。このような加熱の際の条件は、特に制限されるものではないが、100℃以上500℃以下(より好ましくは150℃以上400℃以下)の加熱温度で30秒~10時間加熱(キュア)する条件を採用することが好ましい。このような加熱により、未反応の重合性化合物やエポキシ化合物、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂が反応してより架橋密度を高くすることが可能となり、膜を硬化させることができる。加熱温度を下限値以上とすることで、硬化が進行し、硬化膜の膜密度が上昇する傾向にある。他方、加熱温度を上限値以下とすることで、基板や無機固体物、及び周辺部材への加熱によるダメージを抑制することができる。
【0107】
このようにして、前記各工程を施すことで、前記基板上に前記ポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜パターンを形成して硬化膜付き基板を得ることができる。このような硬化膜パターンにより形成される硬化膜の膜厚は0.1μm以上50μm以下とすることが好ましく、0.1μm以上30μm以下とすることがより好ましく、0.1~15μmとすることがさらに好ましい(下限値は0.5μmとすることがより好ましい)。
【0108】
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法は、
前記本発明のポジ型感光性樹脂組成物を第一の基板上に塗布することにより塗膜を得る工程と、
前記塗膜から(H)成分である溶剤を除去するプレベーク工程と、
前記プレベーク工程後の膜にマスクを通して紫外線を照射する露光工程と、
露光後の膜をアルカリ現像液で現像して前記基板上にパターンを形成する工程(現像工程)と、
パターンが形成された膜に紫外線を照射することにより前記膜中の感光材を分解するブリーチング工程と、
前記ブリーチング工程後に得られる膜付き基板に対して、前記ブリーチング工程後の膜を介して、第二の基板を25~150℃の温度で熱圧着した後、前記ブリーチング工程後の膜を加熱して硬化する工程と、
を含むことにより、前記ブリーチング工程後の膜を接着層として2枚の基板を接着し、前記第一の基板、前記接着層及び前記第二の基板がこの順に積層した積層体を得る方法である。
【0109】
なお、本発明の積層体の製造方法において採用する、塗膜を得る工程、プレベーク工程、露光工程、現像工程、及び、ブリーチング工程は、いずれも、前記本発明の硬化膜付き基板の製造方法において説明した工程と同様の工程である。そして、本発明においては、先ず、前記本発明の硬化膜付き基板の製造方法で採用している工程と同様の「塗膜を得る工程」、「プレベーク工程」、「露光工程」、「現像工程」、及び、「ブリーチング工程」を施して、前記ブリーチング工程後の膜付き基板を得る。
【0110】
次いで、本発明においては、前記ブリーチング工程後に得られた膜付き基板に対して、前記ブリーチング工程後の膜を介して、前記第二の基板を25~150℃の温度で熱圧着する。このような第二の基板としては、特に制限されず、第一の基板と同様のものを適宜利用することができる。
【0111】
また、このような熱圧着の温度条件は25~150℃(より好ましくは40~130℃)である。このような温度条件が前記下限未満では膜の流動性が低下して第二の基板に対して追従性が低くなり、接着性が弱くなり、他方、前記上限を超えると硬化膜の架橋が進んで流動性が低下し、第二の基板に対して追従性が低くなり、接着性が弱くなる。
【0112】
また、熱圧着の圧力条件は0.05~150MPa(より好ましくは0.1~100MPa)であることが好ましい。このような圧力条件を前記下限以上とすることで、硬化膜の第二の基板に対する追従性が良く、接着性の点でより高い効果が得られる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとパターンが潰れるなどの不具合が生じる傾向にある。
【0113】
そして、本発明においては、このような熱圧着後に、前記ブリーチング工程後の膜を加熱して硬化する(ポストベーク工程)。このような熱圧着後のポストベーク工程の条件は、前記本発明の硬化膜付き基板の製造方法のポストベーク工程で採用している条件と同様の条件を採用することが好ましい。そして、本発明においては、熱圧着後に、かかるポストベーク工程を施すことにより、前記ブリーチング工程後の膜を接着層として2枚の基板を接着し、これにより、前記第一の基板、前記接着層及び前記第二の基板がこの順に積層した積層体(基板-接着層(前記硬化膜)-基板の積層体)を得る。このように、各工程を施すことで、前記ブリーチング工程後の膜を接着層として積層体を得ることができる。
【実施例0114】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0115】
なお、各種測定機器について、同一の機種を使用した場合には、2か所目から機器メーカー名を省略している。また、実施例において、測定用硬化膜付き基板の作製に使用しているガラス基板は、全て同じ処理を施して使用している。また、各成分の含有量について、小数第一位が0であるときは、小数点以下の表記を省略することがある。
【0116】
[アルカリ可溶性樹脂樹脂について]
合成例1~2に記載した方法で、アルカリ可溶性樹脂(A)-1及び(A)-2をそれぞれ合成した。なお、これらの合成例における樹脂の評価は、断りのない限り以下の通りに行った。
【0117】
〈固形分濃度〉
固形分濃度は、合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔重量:W(g)〕に含浸させて秤量し〔W(g)〕、160℃にて2時間加熱した後の重量〔W(g)〕から次式より求めた。
[固形分濃度(重量%)]=100×(W-W)/(W-W
【0118】
〈酸価〉
樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定して求めた。
【0119】
〈重量平均分子量〉
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuper H-2000(2本)+TSKgelSuper H-3000(1本)+TSKgelSuper H-4000(1本)+TSKgelSuper H-5000(1本)(東ソー株式会社製)、温度:40℃、速度:0.6ml/min)にて測定し、標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PS-オリゴマーキット)換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0120】
〈合成例で使用する成分の略号について〉
各合成例で使用する成分の略号は次のとおりである。
・PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
・FHPA:9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンとクロロメチルオキシランとの反応物と、アクリル酸とのエポキシ基とカルボキシル基の等当量反応物(なお、合成例ではFHPAの固形分濃度50wt%のPGMEA溶液を利用)
・BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
・THPA:1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物
・TPP:トリフェニルホスフィン
・GMA:グリシジルメタクリレート
・TEAB:臭化テトラエチルアンモニウム
【0121】
(合成例1)
還留冷却器付き500ml四つ口フラスコ中に、FHPAの固形分濃度50wt%のPGMEA溶液を206.3g(0.17mol)、BPDAを25.01g(0.085mol)、THPAを12.9g(0.085mol)、PGMEAを26.0g及びTPPを0.45g仕込み、120~125℃で加熱条件下において6時間撹拌し、アルカリ可溶性樹脂(A)-1の樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は55.6wt%、酸価は103mgKOH/g、分子量(Mw)は3600であった。
【0122】
(合成例2)
還留冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中にFHPAの固形分濃度50wt%PGMEA溶液を600.00g(0.49mol)、BPDAを96.02g(0.33mol)、PGMEAを4.36g、及びTEABを1.02g仕込み、120~125℃で加熱下に2hr撹拌し、更に60~65℃にて8hrの加熱撹拌を行い、反応生成物を得た。得られた反応生成物の固形分濃度は57.8wt%、酸価(固形分換算)は91.6mgKOH/g、GPC分析によるMwは8800であった。
【0123】
次いで、この反応生成物にGMA93.82g(0.66mol)を仕込み、80℃で24時間攪拌して反応させた。更に、フラスコ内にTHPAを153.67g(1.01mol)、及びPGMEAを153.67g仕込み、80℃で24時間攪拌してアルカリ可溶性樹脂(A)-2を合成し、アルカリ可溶性樹脂(A)-2の樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は59.2wt%、酸価(固形分換算)は126.8mgKOH/g、GPC分析によるMwは6800であった。
【0124】
[ポジ型感光性樹脂組成物について]
〔実施例1~11及び比較例1~2で利用した成分について〕
先ず、各実施例等で利用した成分の略号等について説明する。なお、以下においては、場合により、各成分を略称で表記する。
【0125】
〈(A)成分:アルカリ可溶性樹脂〉
・(A)-1:合成例1で得られた不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液(固形分濃度55.6質量%)
・(A)-2:合成例2で得られた不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液(固形分濃度59.2質量%)
【0126】
〈(B)成分:重合性化合物〉
・(B)-1:ポリペンタエリスリトールポリアクリレート(TPOA、新中村化学工業株式会社製)
・(B)-2:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサアクリレートとの混合物(DPHA(アクリル当量96~115)、日本化薬株式会社製)
・(B)-3:トリメチロールプロパントリアクリレートエチレンオキサイド6モル付加物(商品名:アロニックスM-360、東亞合成社製)
・(B)-4:ビスフェノールAジアクリレートのエチレンオキサイド10モル付加物(商品名:ライトアクリレートBP-10EA、共栄社化学社製)
【0127】
〈(C)成分:光重合開始剤〉
・(C)-1:2-メチル-4’-メチルチオ-2-モルホリノプロピオフェノン(商品名:OM907、IGM Resins製)
・(C)-2:1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1,2-ジオン=2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:OXE01、BASFジャパン株式会社製)
・(C)-3:1-[({1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エチリデン}アミノ)オキシ]エタノン(商品名:OXE02、BASFジャパン株式会社製)
・(C)-4:商品名「NCI-831」、株式会社ADEKA製
【0128】
〈(D)成分:光増感剤〉
・(D)-1:4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(商品名:EMK、常州強力先端電子材料有限公司製)
【0129】
〈(E)成分:熱重合開始剤)
・(E)-1:ジアゼンジイルビス(1-フェニルエタン-1,1-ジイル)=ジアセタート(商品名:OTAZO、大塚化学株式会社製)
【0130】
〈(F)成分:感光材〉
・(F)-1:6-ジアゾ-5-オキソ-5,6-ジヒドロナフタレン-1-スルホン酸と4,4’-{1-{4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル}エチリデン}ジフェノールの反応生成物(モノ、ジ及びトリエステルの混合物)(東洋合成工業株式会社製)
【0131】
〈(G)成分:エポキシ化合物〉
・(G)-1:2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(商品名:EHPE-3150、株式会社ダイセル製)
【0132】
〈(H)成分:溶剤〉
・(H)-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)。
【0133】
(実施例1~11及び比較例1~2)
上記(A)~(H)成分を、表1に示す配合で、室温にて3時間攪拌混合することにより固形分成分を溶剤(PGMEA)に溶解させることにより、ポジ型感光性樹脂組成物をそれぞれ調製した。なお、表1において、溶剤を除く各成分の数値(配合量)は固形分量を示す。また、表1に示す各成分の数値(配合量)の単位は質量部である。さらに、表1に示す成分には、はじめから溶剤(PGMEA)に溶解した状態にして利用しているものもあるが、その成分に関する表1に示す数値は前述のように固形分量(単位:質量部)であり、その成分により持ち込まれる溶剤(PGMEA)の含有量は「(H)-1成分」の含有量に加えて、表1に示す「(H)-1成分」の含有量(単位:質量部)には、組成物中に含まれる全ての溶剤(PGMEA)の合計量を表記する。
【0134】
【表1】
【0135】
〔ポジ型感光性樹脂組成物の特性の評価〕
実施例1~11及び比較例1~2で得られたポジ型感光性樹脂組成物について、以下の評価を行った。
【0136】
<形状保持性の評価>
〈評価用試料の製造工程〉
実施例1~11及び比較例1~2で得られたポジ型感光性樹脂組成物をそれぞれ用い、125mm×125mmのガラス基板(商品名:#1737、コーニング社製)上に、加熱硬化処理後の膜厚が2μmとなるようにスピンコーターの回転数を変化させて塗布し、ホットプレートを用いて80℃で1分間プリベークをして塗膜を作製した。次に、直径50μmの円形のドットパターンのマスクを、前記プリベーク後の塗膜に対してギャップゼロ(塗膜とマスクとの間の距離が0)の状態となるように配置した。その後、照度30mW/cmの超高圧水銀ランプを用いて、前記塗膜に前記マスクを介して波長365nmの紫外線を、露光量が100mJ/cmとなるように照射した。次いで、現像液として0.5重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を用いて、23℃で60秒間現像して、露光した部分を除去することにより、ガラス基板上にパターンを形成した。次いで、得られたパターン(膜)を水でリンスして乾燥した後、かかる膜に前記超高圧水銀ランプを用いて波長365nmの紫外線を1000mJ/cm照射し、膜中に残存する感光材を分解するブリーチング工程を施した(なお、以下、感光材を分解した後(ブリーチング後)かつ本硬化前のガラス基板上のパターンを「現像後のパターン」と称する)。次いで、感光材を分解した後の膜(パターン)を、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間の条件で加熱して本硬化(ポストベーク)して、円錐台状のパターンからなる硬化膜を形成して、硬化膜付きの基板を得た。そして、このようにして得られた硬化膜付きの基板を、評価用試料(試験基板)とした。
【0137】
〈形状保持性の評価方法及び評価基準〉
上述のような評価用試料の製造工程中に得られた「現像後のパターン」及び前記評価用試料(試験基板)中の「パターン(硬化膜)」に関して、現像後のパターンの上層と下層の直径差から成る角度(パターンの中心を通る断面中のパターンの左右の一方の側の壁面における上面側の端部と下面の端部を結ぶ線と;基板面と;のなす角度)、及び、ポストベーク後のパターンの上層と下層の直径差から成る角度をそれぞれ、走査電子顕微鏡により測定した。そして、ポストべーク前後の各パターンの角度の変化率を下記計算式(I):
[角度の変化率(%)]={1-(X/Y)}×100 (I)
(式中、Xはポストベーク後のパターン(硬化膜)の角度を示し、Yは現像後のパターン(ポストベーク前のパターン)の角度を示す。)
により計算し、以下の基準で評価した。なお、以下に示す形状保持性の評価基準に関して、評価が△以上(◎、○、△の評価)のものはポストベーク前後において形状の保持性が十分に高い水準にあるものであると判断でき、評価が×のものは形状保持性が不十分なものであると判断できる。測定結果及び評価結果を表2に示す。
【0138】
[形状保持性の評価基準]
◎:変化率20%未満
○:変化率20%以上~30%未満
△:変化率30%以上~60%未満
×(不合格):変化率60%以上。
【0139】
<残膜率の評価>
〈評価用試料の製造工程〉
先ず、実施例1~11及び比較例1~2で得られたポジ型感光性樹脂組成物をそれぞれ用い、125mm×125mmのガラス基板(商品名:#1737、コーニング社製)上に、加熱硬化処理後の膜厚が2μmとなるようにスピンコーターの回転数を変化させて塗布し、ホットプレートを用いて80℃で1分間プリベークをして塗膜を作製した。次に、線幅50μmのラインパターンを、前記プリベーク後の塗膜に対してギャップゼロ(塗膜とマスクとの間の距離が0)の状態となるように配置した。その後、照度30mW/cmの超高圧水銀ランプを用いて、前記塗膜に前記マスクを介して波長365nmの紫外線を、露光量が100mJ/cmとなるように照射した。次いで、現像液として0.5重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を用いて、23℃で60秒間現像して、露光した部分を除去することにより、ガラス基板上にパターンを形成した。次いで、現像液として0.5重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を用いて、23℃で60秒間現像して、ガラス基板上にパターンを形成した。次いで、得られたパターン(膜)を水でリンスして乾燥した後、かかる膜に前記超高圧水銀ランプを用いて波長365nmの紫外線を1000mJ/cm照射し、膜中に残存する感光材を分解するブリーチング工程を施した。次いで、感光材を分解した後の膜(パターン)を、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間の条件で加熱して本硬化(ポストベーク)して、ライン状のパターンが形成された硬化膜を形成することにより、硬化膜付きの基板を得て、第一の評価用試料(第一の試験基板:GAP0μmの試料)とした。
【0140】
また、マスクをプリベーク後の塗膜に配置する際に、塗膜とマスクとの間の距離(ギャップ)が100μmとなるように配置した以外は、前述の工程と同様の工程を採用して、実施例1~11及び比較例1~2で得られたポジ型感光性樹脂組成物について、それぞれ第二の評価用試料(第二の試験基板:GAP100μmの試料)を製造した。
【0141】
さらに、マスクをプリベーク後の塗膜に配置する際に、塗膜とマスクとの間の距離(ギャップ)が200μmとなるように配置した以外は、前述の形状保持性の評価の「評価用試料の製造工程」と同様の工程を採用して、実施例1~11及び比較例1~2で得られたポジ型感光性樹脂組成物について、それぞれ第三の評価用試料(第三の試験基板:GAP200μmの試料)を製造した。
【0142】
〈残膜率の評価方法及び評価基準〉
第一~第三の3種類の評価用試料(GAP0μmの第一の試料、GAP100μmの第二の試料、GAP200μmの第三の試料)の製造工程において、プリベーク後の段階の塗膜の膜厚を「初期膜厚(T)」としてそれぞれ測定するとともに、3種類の評価用試料上のポストベーク後のライン状のパターン(硬化膜)の膜厚を「ポストベーク後のパターンの膜厚(T)」として測定し、下記計算式(II):
[残膜率(%)]={T/T)}×100 (II)
(式中、Tはポストベーク後のパターン(硬化膜)の膜厚を示し、Tは初期膜厚(プリベーク後の段階の塗膜の膜厚)を示す。)
により残膜率を計算し、以下の基準で評価した。なお、以下に示す残膜率の評価基準に関して、評価が△以上(◎、○、△の評価)のものは現像前後(露光前と現像後)において膜の減少量(膜とマスクの間に回り込む光により露光されて現像時に減少する膜の量)が十分に少なく残膜率が十分に高い水準にあると判断でき、評価が×のものは現像時に減少する膜量が多く残膜率が不十分であると判断できる。測定結果及び評価結果を表2に示す。
【0143】
[残膜率の評価基準]
◎:残膜率90%以上
○:残膜率70%以上~90%未満
△:残膜率30%以上~70%未満
×(不合格):残膜率30%未満。
【0144】
<耐熱性の評価>
〈評価用試料の製造工程〉
実施例1~11及び比較例1~2で得られたポジ型感光性樹脂組成物をそれぞれ用い、125mm×125mmのガラス基板(商品名:#1737、コーニング社製)上に、加熱硬化処理後の膜厚が2μmとなるようにスピンコーターの回転数を変化させて塗布し、ホットプレートを用いて80℃で1分間プリベークをして塗膜を作製した。次に、線幅50μmのラインパターンのマスクを、前記プリベーク後の塗膜に対してギャップゼロ(塗膜とマスクとの間の距離が0)の状態となるように配置した。その後、照度30mW/cmの超高圧水銀ランプを用いて、前記塗膜に前記マスクを介して波長365nmの紫外線を、露光量が100mJ/cmとなるように照射した。次いで、現像液として0.5重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を用いて、23℃で60秒間現像して、露光した部分を除去することにより、ガラス基板上にパターンを形成した。次いで、得られたパターン(膜)を水でリンスして乾燥した後、かかる膜に前記超高圧水銀ランプを用いて波長365nmの紫外線を1000mJ/cm照射し、膜中に残存する感光材を分解するブリーチング工程を施した。次いで、感光材を分解した後の膜(パターン)を、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間の条件で加熱して本硬化(ポストベーク)して、ライン状のパターンが形成された硬化膜を形成して、硬化膜付きの基板を得た。耐熱性の評価に際しては、このようにして得られた硬化膜付きの基板を、評価用試料(試験基板)とした。
【0145】
〈耐熱性の評価方法及び評価基準〉
上述のようにして得られた評価用試料(ポストベーク後の硬化膜(ライン状のパターン)付きの基板)について、クリーンオーブンにて260℃で60分間加熱した後の硬化膜のライン状のパターンの断面形状、及び、前記クリーンオーブンでの加熱前の硬化膜のライン状のパターンの断面形状をそれぞれ測定し、それらを対比することでライン状のパターンの熱変形の評価を行った。なお、熱変形の評価は、以下の評価基準に基いて行った。なお、以下に示す熱変形の評価基準に関して、評価が△以上(◎、○、△の評価)のものは耐熱性が十分な水準にあるものと判断でき、評価が×のものは耐熱性が不十分であると判断できる。評価結果を表2に示す。
【0146】
[耐熱性の評価基準]
◎:熱ダレは発生せず、形状に変化が無い
○:熱ダレが若干発生し、形状に変化が見られる
△:熱ダレが発生するがスペースは確認できる
×(不合格):熱ダレでパターンの維持が不可能である。
【0147】
<接着強度(せん断強度)の評価>
〈評価用試料の製造工程〉
実施例1~11及び比較例1~2で得られたポジ型感光性樹脂組成物をそれぞれ用い、125mm×125mmのガラス基板(商品名:#1737、コーニング社製)上に、加熱硬化処理後の膜厚が2μm(固形分濃度が25質量%の組成物)となるようにスピンコーターの回転数を変化させて塗布し、ホットプレートを用いて80℃で1分間プリベークをして塗膜を作製した。次に、20mm角(縦横20mmの正方形状)のドットパターンのマスクを、前記プリベーク後の塗膜に対してギャップゼロ(塗膜とマスクとの間の距離が0)の状態となるように配置した。その後、照度30mW/cmの超高圧水銀ランプを用いて、前記塗膜に前記マスクを介して波長365nmの紫外線を、露光量が100mJ/cmとなるように照射した。次いで、現像液として0.5重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を用いて、23℃で60秒間現像して、露光した部分を除去することにより、ガラス基板上にパターンを形成した。次いで、得られたパターン(膜)を水でリンスして乾燥した後、かかる膜に前記超高圧水銀ランプを用いて波長365nmの紫外線を1000mJ/cm照射し、膜中に残存する感光材を分解するブリーチング工程を施した。次いで、感光材を分解した後の膜(パターン)上に2mm×2mmにカットしたガラス基板を置き、100℃のホットプレート上で1分間加熱し仮接着した。次いで、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間の条件で加熱して本硬化(ポストベーク)して、ガラス基板(125mm×125mm)、硬化膜(パターン)及びガラス基板(2mm×2mm)がこの順で積層した積層体を得た。接着強度(せん断強度)の評価に際しては、このようにして得られた積層体を、評価用試料とした。
【0148】
〈接着強度(せん断強度)の評価〉
上述のようにして得られた評価用試料(積層体)に対してダイシェアテスター(アークテック社製)を用い、測定荷重範囲100kgで試料中の硬化膜上に存在するガラス基板(2mm×2mm)を剥離させて、硬化膜とガラス基板(2mm×2mm)の界面における硬化膜の接着強度を測定し、以下の評価基準に基いて接着強度を評価した。なお、以下に示す接着強度の評価基準に関して、評価が△以上(◎、○、△の評価)のものは接着強度が十分に高い水準にあるものと判断でき、評価が×のものは接着強度が不十分であると判断できる。評価結果を表2に示す。
【0149】
[接着強度の評価基準]
◎:接着強度が15MPa以上
○:接着強度が10MPa以上、15MPa未満
△:接着強度が1MPa以上、10MPa未満
×(不合格):形状が崩れる等により接着強度が測定不能。
【0150】
【表2】
【0151】
表2に示した結果から明らかなように、実施例1~11で得られたポジ型感光性樹脂組成物は、形状保持性、残膜率、耐熱性及び接着強度の評価結果がいずれも、少なくとも△以上の評価となっており、これらの特性をバランスよく有することが確認された。これに対して、比較例1~2で得られたポジ型感光性樹脂組成物はともに、形状保持性及び接着強度が十分な水準なものとはならなかった(なお、比較例1に至っては、残膜率、耐熱性も十分な水準のものとならなった)。
【産業上の利用可能性】
【0152】
以上説明したように、本発明によれば、パターン状の硬化膜を形成した際に、形状保持性、残膜率、耐熱性及び接着強度をいずれも高水準のものとすることを可能とするポジ型感光性樹脂組成物;前記ポジ型感光性樹脂組成物を用いた硬化膜;ポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜パターンを備える硬化膜付き基板を効率よく製造することを可能とする硬化膜付き基板の製造方法;並びに、ポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜を接着層とした積層体を効率よく製造することを可能とする積層体の製造方法;を提供することが可能となる。このような本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、前述のような特性を有するため、様々な用途(例えば、ソルダーレジスト、フルアディティブ法におけるメッキレジスト等の永久保護マスクの用途等に好適使用されるほか、プリント配線板関連のエッチングレジストや層間絶縁材料、感光性接着剤、塗料、プラスチックレリーフ、ブラスチックのハードコート剤、オフセット印刷板としてのPS版、スクリーン印刷用の感光液及びレジストインキ等)に利用するためのポジ型のフォトレジスト等として有用である。