IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 丸善製薬株式会社の特許一覧

特開2025-154493飲食品、酸味抑制剤、及び酸味抑制方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025154493
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】飲食品、酸味抑制剤、及び酸味抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20251002BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20251002BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20251002BHJP
   A21D 2/08 20060101ALI20251002BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20251002BHJP
   A23L 9/10 20160101ALI20251002BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20251002BHJP
   A23F 5/24 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
A23L5/00 K
A23L27/00 Z
A23L27/20 D
A21D2/08
A21D13/80
A23L9/10
A23L2/52
A23F5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024057534
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 冬馬
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 潤
【テーマコード(参考)】
4B025
4B027
4B032
4B035
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B025LB17
4B025LG21
4B025LG32
4B025LG52
4B025LG53
4B027FB24
4B027FC02
4B027FK02
4B027FK04
4B027FK10
4B027FK18
4B027FK20
4B027FQ19
4B032DB22
4B032DG02
4B032DK05
4B032DK12
4B032DK45
4B032DK47
4B032DL06
4B035LC01
4B035LG04
4B035LG15
4B035LG19
4B035LG35
4B035LG43
4B035LG44
4B035LK03
4B035LK13
4B035LK19
4B047LB09
4B047LF07
4B047LF09
4B047LG06
4B047LP02
4B117LC02
4B117LG17
4B117LK06
4B117LK12
4B117LK18
4B117LL02
4B117LL06
4B117LL09
(57)【要約】
【課題】構造式(1)で表される化合物を含有していながらも、この化合物の酸味を抑制することができる飲食品、飲食品における構造式(1)で表される化合物の酸味抑制剤、及び飲食品における構造式(1)で表される化合物の酸味抑制方法を提供する。
【解決手段】構造式(1)で表される化合物と、バニリンとを含み、前記構造式(1)で表される化合物の飲食品における含有量が、0.001~0.05%(w/w又はw/v)であり、前記バニリンの飲食品における含有量が、0.5~5,000ppbである飲食品である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(1)で表される化合物と、バニリンとを含み、
下記構造式(1)で表される化合物の飲食品における含有量が、0.001~0.05%(w/w又はw/v)であり、
前記バニリンの飲食品における含有量が、0.5~5,000ppbであることを特徴とする飲食品。
【化1】
【請求項2】
飲食品における下記構造式(1)で表される化合物の酸味抑制剤であって、
バニリンを含み、
前記飲食品に、前記バニリンが、0.5~5,000ppbとなる量で用いられるものであり、
前記飲食品が、下記構造式(1)で表される化合物を0.001~0.05%(w/w又はw/v)含有するものであることを特徴とする酸味抑制剤。
【化2】
【請求項3】
飲食品における下記構造式(1)で表される化合物の酸味抑制方法であって、
前記飲食品に、バニリンを0.5~5,000ppbとなる量で用いることを含み、
前記飲食品が、下記構造式(1)で表される化合物を0.001~0.05%(w/w又はw/v)含有するものであることを特徴とする酸味抑制方法。
【化3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造式(1)で表される化合物を含む飲食品、飲食品における構造式(1)で表される化合物の酸味抑制剤、及び飲食品における構造式(1)で表される化合物の酸味抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記構造式(1)で表される化合物の名称は、3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロピオン酸(英名:3-(4-Hydroxy-3-methoxyphenyl)propionic acid)である。下記構造式(1)で表される化合物については、特定の成分を含有する培地にてある種の乳酸菌を培養すると、当該化合物が検出されることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【化1】
【0003】
前記構造式(1)で表される化合物は、ジペプチジルペプチダーゼIV活性阻害剤などの有効成分であり、ジペプチジルペプチダーゼIV活性阻害用飲食品などに配合できることが知られている非常に有用な成分である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-003929号公報
【特許文献2】特開2020-055887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、前記構造式(1)で表される化合物は、有用な素材である。しかしながら、前記構造式(1)で表される化合物を飲食品に利用する場合、前記構造式(1)で表される化合物特有の酸味が感じられるため、当該飲食品を摂取し易くする技術の開発が求められている。
【0006】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、構造式(1)で表される化合物を含有していながらも、この化合物の酸味を抑制することができる飲食品、飲食品における構造式(1)で表される化合物の酸味抑制剤、及び飲食品における構造式(1)で表される化合物の酸味抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、飲食品における前記構造式(1)で表される化合物の酸味抑制に関して、バニリンに非常に優れた効果があること、また、バニリンを用いてもバニリンのキレの悪さが生じないことを見出した。なお、バニリンのキレの悪さとは、バニリンを含む飲食品を喫食した後に、べたりとした感覚でバニリン特有の香りが鼻に残ることをいう。
【0008】
本発明は、本発明者らの知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 下記構造式(1)で表される化合物と、バニリンとを含み、
下記構造式(1)で表される化合物の飲食品における含有量が、0.001~0.05%(w/w又はw/v)であり、
前記バニリンの飲食品における含有量が、0.5~5,000ppbであることを特徴とする飲食品である。
【化2】
<2> 飲食品における下記構造式(1)で表される化合物の酸味抑制剤であって、
バニリンを含み、
前記飲食品に、前記バニリンが、0.5~5,000ppbとなる量で用いられるものであり、
前記飲食品が、下記構造式(1)で表される化合物を0.001~0.05%(w/w又はw/v)含有するものであることを特徴とする酸味抑制剤である。
【化3】
<3> 飲食品における下記構造式(1)で表される化合物の酸味抑制方法であって、
前記飲食品に、バニリンを0.5~5,000ppbとなる量で用いることを含み、
前記飲食品が、下記構造式(1)で表される化合物を0.001~0.05%(w/w又はw/v)含有するものであることを特徴とする酸味抑制方法である。
【化4】
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、構造式(1)で表される化合物を含有していながらも、この化合物の酸味を抑制することができる飲食品、飲食品における構造式(1)で表される化合物の酸味抑制剤、及び飲食品における構造式(1)で表される化合物の酸味抑制方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(飲食品)
本発明の飲食品は、構造式(1)で表される化合物と、バニリンとを少なくとも含み、必要に応じてさらにその他の成分を含む。
【0011】
<構造式(1)で表される化合物>
下記構造式(1)で表される化合物の名称は、3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロピオン酸(英名:3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)propionic acid)である(以下、「HMPA」と称することがある。)。
【化5】
【0012】
前記構造式(1)で表される化合物は、公知の化合物であり、市販品を使用してもよいし、公知の方法により製造したものを使用してもよい。
【0013】
前記構造式(1)で表される化合物の飲食品における含有量としては、0.001~0.05%(w/w又はw/v)であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0014】
飲食品における前記構造式(1)で表される化合物の含有量の測定方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、下記条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定することができる。
-HPLC条件-
・ カラム : COSMOSIL 3PBr Packed Column(ナカライテスク株式会社製)
・ ガードカラム : COSMOSIL 3PBr Guard Cartridge(ナカライテスク株式会社製)
COSMOSIL Guard Cartridge Holder(ナカライテスク株式会社製)
COSMOSIL Column Connecting Tube(ナカライテクス株式会社製)
・ 移動相 : A)メタノール:水:ギ酸=500:500:1
B)メタノール
標準溶液分析時) 0-10min(100%A)
試料溶液分析時) 0-10min(100%A)、
10.01-24min(100%B)、
24.01-38min(100%A)
・ カラム温度 : 40℃
・ 注入量 : 10μL
・ 流速 : 1.0mL/min
・ 検出条件 : UV280nm
【0015】
<バニリン>
バニリン(別名:4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド)は、バニロイド類に属する化合物であり、化学式Cで表される化合物である。
前記バニリンは、植物などの天然原料に由来するものを用いてもよいし、合成品を用いてもよい。
前記バニリンは、市販品を使用してもよいし、公知の方法により製造したものを使用してもよい。
【0016】
前記バニリンの飲食品における含有量としては、0.5~5,000ppbであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5~500ppbが好ましい。
【0017】
飲食品における前記バニリンの含有量の測定方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、以下の方法により測定することができる。
バイアル瓶(容量20mL)に試料溶液を5g量り取り、ゲステル社製Twister(PDMS)を入れて室温で30分間、香気成分を抽出した後、加熱脱着装置付きのガスクロマトグラフ質量分析装置を用いた測定に供する。定量値は標準添加法で算出する。ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)の条件は、以下とすることができる。
-GC/MS条件-
・ 装置 :
GC : Agilent Technologies社製 GC6890N
MS : Agilent Technologies社製 5975B
・ 加熱脱着装置 : Gerstel社製 TDU
・ カラム : Inert cap pure WAX 30m×0.25mmi.d. df=0.25μm
・ 定量イオン : m/z=151
・ 温度条件 : 40℃(5分間)~10℃/分間~260℃
・ キャリアガス流量 : He 1.2mL/分間
・ TDU温度 : 260℃
・ IF温度 : 260℃
・ イオン源温度 : 230℃
【0018】
<その他の成分>
前記飲食品におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、飲食品に用いることができる成分を目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ酸、甘味料、酸味料、香料、ビタミン、ミネラル、色素類、酸化防止剤、乳化剤、保存料、エキス類、品質安定剤、食物繊維などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記飲食品におけるその他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0019】
<飲食品>
前記飲食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品などの区分に制限されるものではない。したがって、前記飲食品は、経口的に摂取される一般食品、健康食品(機能性飲食品)、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものを意味する。
【0020】
前記飲食品の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、茶飲料、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料、アルコール飲料、コーヒー飲料、コーヒー入り清涼飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、グミキャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、クッキー、ゼリー、プリン、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類;カニ、サケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ等のスープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品;サラダ、漬物等の惣菜;種々の形態の健康・美容・栄養補助食品;錠剤、粉剤、顆粒剤、カプセル剤、エキス剤、シロップ剤、ドリンク剤、トローチ等の医薬品、医薬部外品;口中清涼剤、口臭防止剤等の口腔内で使用する口腔清涼剤などが挙げられる。
【0021】
本発明の飲食品の製造方法としては、特に制限はなく、公知の飲食品の製造方法を適宜選択することができ、例えば、前記構造式(1)で表される化合物と、前記バニリンと、必要に応じて前記その他の成分とを飲食品の製造過程で配合し、製造する方法、公知の方法により製造した飲食品に、前記構造式(1)で表される化合物と、前記バニリンと、必要に応じて前記その他の成分とを添加して製造する方法などが挙げられる。
前記各種成分の配合順序としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、本発明の飲食品の製造においては、前記各種成分の含有量を調整する工程を含んでもよい。
【0022】
本発明の飲食品は、前記構造式(1)で表される化合物を含有していながらも、この化合物特有の呈味である酸味が抑制(緩和と称することもある。)されており、容易に摂取することができる。
【0023】
(酸味抑制剤)
本発明の酸味抑制剤は、バニリンを少なくとも含み、必要に応じてさらにその他の成分を含む。
【0024】
本発明の酸味抑制剤は、上記した構造式(1)で表される化合物を0.001~0.05%(w/w又はw/v)含有する飲食品に用いられる。
【0025】
本発明の酸味抑制剤は、前記飲食品における上記した構造式(1)で表される化合物の酸味を抑制するものである。
【0026】
本明細書において、酸味の抑制とは、上記した構造式(1)で表される化合物特有の呈味である酸味を緩和することをいう。例えば、構造式(1)で表される化合物を含み、バニリンを含まない飲食品と比較して、酸味が緩和された場合に、酸味を抑制したということができる。
【0027】
<バニリン>
前記バニリンは、上記した(飲食品)の項目に記載したバニリンと同様である。
【0028】
前記バニリンの前記酸味抑制剤における含有量としては、特に制限はなく、使用量などに応じて適宜選択することができる。前記酸味抑制剤は、前記バニリンのみからなるものであってもよい。
【0029】
<その他の成分>
前記酸味抑制剤におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、賦形剤、防湿剤、防腐剤、強化剤、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、甘味料、酸味料、調味料、水、飲食品に用いられる成分などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記酸味抑制剤におけるその他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0030】
<態様>
前記酸味抑制剤は、前記バニリンと、必要に応じて前記その他の成分とを同一の包材に含む態様であってもよいし、前記各成分を別々の包材に入れ、使用時に併用する態様であってもよい。
前記酸味抑制剤の形態としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0031】
<使用>
前記酸味抑制剤の使用方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、製造した飲食品に添加する方法、飲食品の製造過程で添加する方法などが挙げられる。これらは、1種単独の方法で行ってもよいし、複数の方法を組み合わせて行ってもよい。
【0032】
前記酸味抑制剤における各種成分の飲食品への配合順序としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記酸味抑制剤における各種成分は、1回でまとめて配合してもよいし、複数回に分けて配合してもよい。
【0033】
前記酸味抑制剤の使用量としては、特に制限はなく、前記バニリンや、必要に応じて用いる前記その他の成分の使用量などを考慮して、適宜選択することができる。
【0034】
前記バニリンの使用量としては、前記飲食品に、0.5~5,000ppbとなる量で用いられる限り、特に制限はなく、対象とする飲食品の種類などに応じて適宜選択することができるが、5~500ppbが好ましい。
【0035】
前記酸味抑制剤は、単独で使用してもよいし、他の酸味抑制剤と組み合わせて使用してもよい。
【0036】
<飲食品>
前記飲食品としては、上記した構造式(1)で表される化合物を0.001~0.05%(w/w又はw/v)含有する飲食品であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した(飲食品)の項目に記載したものと同様のものなどが挙げられる。
【0037】
(酸味抑制方法)
本発明の酸味抑制方法は、使用工程(以下、「配合工程」と称することがある。)を少なくとも含み、必要に応じてさらにその他の工程を含む。
【0038】
本発明の酸味抑制方法は、上記した構造式(1)で表される化合物を0.001~0.05%(w/w又はw/v)含有する飲食品に用いられる。
【0039】
本発明の酸味抑制方法は、前記飲食品における上記した構造式(1)で表される化合物の酸味を抑制する方法である。
【0040】
<使用工程>
前記使用工程は、前記飲食品に、バニリンを0.5~5,000ppbとなる量で用いる工程である。
【0041】
-バニリン-
前記バニリンは、上記した(飲食品)の項目に記載したバニリンと同様である。
【0042】
前記飲食品に、バニリンを用いる(配合する)方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した本発明の酸味抑制剤の<使用>の項目に記載した方法と同様にして行うことができ、また、使用量も同様とすることができる。
【0043】
<飲食品>
前記飲食品としては、上記した構造式(1)で表される化合物を0.001~0.05%(w/w又はw/v)含有する飲食品であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した(飲食品)の項目に記載したものと同様のものなどが挙げられる。
【0044】
本発明の酸味抑制剤及び酸味抑制方法によれば、上記した構造式(1)で表される化合物を0.001~0.05%(w/w又はw/v)含有する飲食品における、構造式(1)で表される化合物特有の呈味である酸味を抑制することができる。
【実施例0045】
以下、試験例、製造例を説明するが、本発明は、これらの試験例、製造例に何ら限定されるものではない。
【0046】
(試験例1:バニリンによる構造式(1)で表される化合物の酸味抑制)
水に、下記の表1~12に記載の配合量となるように、上記した構造式(1)で表される化合物(東京化成工業社製)と、バニリン(富士フイルム和光純薬社製)とを溶解させ、飲料とした。
【0047】
<評価>
調製した飲料について、香味及び呈味の官能評価を行った。香味については、バニリン特有のキレの悪さ(以下、「キレの悪さ」と称することがある。)の観点から主に評価し、呈味については構造式(1)で表される化合物特有の酸味(以下、「酸味」と称することがある。)の観点から主に評価した。具体的には、十分に訓練を受けた3名の専門パネリストにより、下記の評価基準で評価した。なお、評価温度は室温とした。
-評価基準-
[キレの悪さ]
5点 : バニリン特有のキレの悪さが大きく緩和されている。
4点 : バニリン特有のキレの悪さが緩和されている。
3点 : バニリン特有のキレの悪さがやや緩和されている。
2点 : バニリン特有のキレの悪さがある。
1点 : バニリン特有のキレの悪さが強い。
[酸味]
5点 : 構造式(1)で表される化合物特有の酸味が大きく緩和されている。
4点 : 構造式(1)で表される化合物特有の酸味が緩和されている。
3点 : 構造式(1)で表される化合物特有の酸味がやや緩和されている。
2点 : 構造式(1)で表される化合物特有の酸味があり、後味に残る。
1点 : 構造式(1)で表される化合物特有の酸味が強く、後味に大きく残る。
【0048】
結果を下記の表1~12に示す。なお、評価の点数は、3名の専門パネリストによる評価の平均点である。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
【0057】
【表9】
【0058】
【表10】
【0059】
【表11】
【0060】
【表12】
【0061】
表1~12に示したように、構造式(1)で表される化合物を0.001~0.05%(w/v)の濃度で含む飲料において、バニリンを0.5~5,000ppb配合することで、バニリンに起因するキレの悪さを生じさせることなく、構造式(1)で表される化合物特有の酸味を抑制できることが分かった。
【0062】
(製造例1:ミルク入りコーヒー飲料)
以下の組成の原材料を用い、常法により、ミルク入りコーヒー飲料を製造した。
・ コーヒー豆抽出液 520g
・ 牛乳 150g
・ ショ糖 20g
・ アセスルファムカリウム 0.25g
・ pH調整剤(炭酸水素ナトリウム) 適量(pH6.7に調整)
・ 乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル) 0.3g
・ 構造式(1)で表される化合物 50mg
・ バニリン 0.3mg
【0063】
(製造例2:無糖コーヒー飲料)
以下の組成の原材料を用い、常法により、無糖コーヒー飲料を製造した。
・ コーヒー豆抽出液 520g
・ pH調整剤(炭酸水素ナトリウム) 適量(pH6.7に調整)
・ 乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル) 0.3g
・ 構造式(1)で表される化合物 50mg
・ バニリン 0.3mg
【0064】
(製造例3:クッキー)
以下の組成の原材料を用い、常法により、クッキーを製造した。
・ 薄力粉 180g
・ 砂糖 50g
・ 無塩バター 100g
・ 卵液 50g
・ 構造式(1)で表される化合物 0.1g
・ バニリン 0.1mg
【0065】
(製造例4:プリン)
以下の組成の原材料を用い、常法により、プリンを製造した。
・ ゼラチン 5g
・ 水 35g
・ 牛乳 170g
・ 卵液 50g
・ 構造式(1)で表される化合物 50mg
・ バニリン 0.1mg
【0066】
製造例1~4で製造した飲食品においても、構造式(1)で表される化合物特有の酸味が抑制されており、本発明によれば、様々な飲食品において、構造式(1)で表される化合物特有の酸味を抑制できることが確認された。