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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025154923
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】フタロシアニン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/22 20060101AFI20251002BHJP
   C07F 3/02 20060101ALN20251002BHJP
   C07F 9/00 20060101ALN20251002BHJP
   C07F 3/06 20060101ALN20251002BHJP
【FI】
C07D487/22
C07F3/02 Z
C07F9/00 A
C07F3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024058213
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 優介
(72)【発明者】
【氏名】藤江 賀彦
【テーマコード(参考)】
4H048
4H050
【Fターム(参考)】
4H048AA02
4H048AC28
4H048AC50
4H048BB21
4H048BC10
4H048BC31
4H048VA11
4H048VA20
4H048VA32
4H048VA60
4H048VA66
4H048VB10
4H050AA02
4H050AC50
4H050BB21
4H050BC10
4H050BC31
4H050WB13
4H050WB21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エステル側鎖を有するフタロシアニン化合物を高純度に得ることができるフタロシアニン化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表されるフタロニトリル化合物と、金属化合物と、一般式(5)で表される化合物とを混合する工程を含む、フタロシアニン化合物の製造方法。一般式(1)中、Z~Zは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基等を表し、Z~Zの少なくとも1つは一般式(2)で表される置換基である。一般式(2)中、Lはアルキレン、又はアリーレンを表し、Rはアルキル基、又はアリール基を表す。一般式(5)中、Rは一般式(2)におけるRと同じである。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるフタロニトリル化合物と、金属化合物と、下記一般式(5)で表される化合物とを混合する工程を含む、
フタロシアニン化合物の製造方法。
【化1】


一般式(1)中、Z、Z、Z、及びZは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のアリールチオ基、又は下記一般式(2)で表される置換基を表す。但し、Z、Z、Z、及びZの少なくとも1つは下記一般式(2)で表される置換基である。
【化2】

一般式(2)中、Lは置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のアリーレン基を表し、Rは置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基を表す。
【化3】

一般式(5)中、Rは一般式(2)におけるRと同じである。
【請求項2】
前記一般式(5)で表される化合物の含有量が、前記一般式(1)で表されるフタロニトリル化合物と、前記金属化合物と、前記一般式(5)で表される化合物とを混合して得られる混合液100質量%に対し、0.01質量%~10質量%である、請求項1に記載のフタロシアニン化合物の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(5)で表される化合物の含有量が、前記混合液100質量%に対し、0.40質量%~5.00質量%である、請求項2に記載のフタロシアニン化合物の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(5)で表される化合物を、前記一般式(1)で表されるフタロニトリル化合物1当量に対して、0.05当量~2.0当量含む、請求項1に記載のフタロシアニン化合物の製造方法。
【請求項5】
前記混合する工程において、さらに、反応溶媒としてベンゾニトリルを混合する、請求項1に記載のフタロシアニン化合物の製造方法。
【請求項6】
前記一般式(1)で表されるフタロニトリル化合物と、前記金属化合物と、前記一般式(5)で表される化合物とを混合して得られる混合液100質量%に対する水の含有量が、0.05質量%未満である、請求項1に記載のフタロシアニン化合物の製造方法。
【請求項7】
130℃以上170℃以下に加熱する工程をさらに含む、請求項1に記載のフタロシアニン化合物の製造方法。
【請求項8】
前記フタロシアニン化合物が、下記一般式(3)で表されるフタロシアニン化合物である、請求項1に記載のフタロシアニン化合物の製造方法。
【化4】


一般式(3)中、Mは、金属原子又は金属原子の酸化物を表し、
11、Z12、Z13、Z14、Z15、Z16、Z17、Z18、Z19、Z20、Z21、Z22、Z23、Z24、Z25、及びZ26は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のアリールチオ基、又は一般式(4)で表される置換基を表す。
ただし、Z11、Z12、Z13、Z14、Z15、Z16、Z17、Z18、Z19、Z20、Z21、Z22、Z23、Z24、Z25、及びZ26のうち、少なくとも1つが、下記一般式(4)で表される置換基である。
【化5】


一般式(4)中、Lは置換若しくは無置換のアルキレン、置換若しくは無置換のアリーレン基を表し、Rは置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。
【請求項9】
前記一般式(3)におけるMが、亜鉛、マグネシウム又はオキシバナジウム(V=O)である、請求項8に記載のフタロシアニン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フタロシアニン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フタロシアニン化合物の製造方法としては、無水フタル酸化合物と尿素、金属化合物を原料とするワイラー法と、フタロニトリル化合物と金属化合物を原料に用いるフタロニトリル法とが知られている。
フタロニトリル化合物は無水フタル酸化合物等と比較して反応性が高く、反応性の低い金属化合物、例えば、亜鉛化合物、マグネシウム化合物、酸化バナジウム化合物等を用いてフタロシアニン化合物を合成する場合、高純度にフタロシアニン化合物を合成する必要がある場合等には、上記のうちフタロニトリル法が選択される。
一方で、電子求引性の高い置換基を有するフタロニトリル化合物は、フタロニトリルに配位してルイス酸として機能する金属化合物が共存する場合、例えば、水などの求核剤が存在すると望まない副反応が起こる場合がある。なかでも、フタロニトリル化合物の置換基としてエステル官能基がある場合は、水などの存在により望まない加水分解反応が起こる場合がある。
【0003】
フタロシアニン化合物の反応時間を短縮することを課題とし、フタロニトリル化合物を、金属化合物と環化反応させる工程を有し、反応溶液100質量%に対し、水の含有量を0.05~0.40質量%範囲とし、金属化合物を金属ヨウ化物として、環化反応を行うフタロシアニン化合物の製造方法が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-133059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フタロシアニン化合物の製造に、一般に環化しにくい金属化合物、例えば、亜鉛、マグネシウム、バナジウム等を用いた場合、環化反応において厳しい反応条件に附すことが多く、高温であり、且つ長時間の反応が必要であり、工業的製造にはエネルギー負荷が大きいという問題がある。
また、厳しい反応条件において環化反応を行うと、副反応も進行しやすくなり、高純度且つ高収率に目的とするフタロシアニン化合物を得ることが困難であった。特に側鎖にエステルのような弱い官能基を持つ場合、加水分解などの分解反応を受け易いため、特に高純度且つ高収率に目的物を得ることが困難であるという問題がある。
【0006】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、エステル側鎖を有するフタロシアニン化合物を高純度に得ることができるフタロシアニン化合物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の態様を含む。
<1> 下記一般式(1)で表されるフタロニトリル化合物と、金属化合物と、下記一般式(5)で表される化合物とを混合し、混合する工程を含む、フタロシアニン化合物の製造方法。
【化1】

【0008】
一般式(1)中、Z、Z、Z、及びZは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のアリールチオ基、又は一般式(2)で表される置換基を表す。但し、Z、Z、Z、及びZの少なくとも1つは下記一般式(2)で表される置換基である。
【0009】
【化2】
【0010】
一般式(2)中、Lは置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のアリーレン基を表し、Rは置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。
【0011】
【化3】
【0012】
一般式(5)中、Rは一般式(2)におけるRと同じである。
【0013】
<2> 上記一般式(5)で表される化合物の含有量が、上記一般式(1)で表されるフタロニトリル化合物と、金属化合物と、上記一般式(5)で表される化合物とを混合して得られる混合液100質量%に対し、0.01質量%~10質量%である、<1>に記載のフタロシアニン化合物の製造方法。
<3> 上記一般式(5)で表される化合物の含有量が、上記混合液100質量%に対し、0.40質量%~5.00質量%である、<2>に記載のフタロシアニン化合物の製造方法。
【0014】
<4> 上記一般式(5)で表される化合物を、上記一般式(1)で表されるフタロニトリル化合物1当量に対して、0.05当量~2.0当量含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載のフタロシアニン化合物の製造方法。
<5> 上記混合する工程において、さらに、反応溶媒としてベンゾニトリルを混合する、<1>~<4>のいずれか1つに記載のフタロシアニン化合物の製造方法。
<6> 上記一般式(1)で表されるフタロニトリル化合物と、上記金属化合物と、上記一般式(5)で表される化合物とを混合して得られる混合液100質量%に対する水の含有量が、0.05質量%未満である、<1>~<5>のいずれか1つに記載のフタロシアニン化合物の製造方法。
【0015】
<7> 130℃以上170℃以下に加熱する工程をさらに含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載のフタロシアニン化合物の製造方法。
<8> 上記フタロシアニン化合物が、下記一般式(3)で表されるフタロシアニン化合物である、<1>~<7>のいずれか1つに記載のフタロシアニン化合物の製造方法。
【0016】
【化4】

【0017】
一般式(3)中、Mは、金属原子又は金属原子の酸化物を表し、
11、Z12、Z13、Z14、Z15、Z16、Z17、Z18、Z19、Z20、Z21、Z22、Z23、Z24、Z25、及びZ26は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のアリールチオ基、又は一般式(4)で表される置換基を表す。
ただし、Z11、Z12、Z13、Z14、Z15、Z16、Z17、Z18、Z19、Z20、Z21、Z22、Z23、Z24、Z25、及びZ26のうち、少なくとも1つが、下記一般式(4)で表される置換基である。
【0018】
【化5】

【0019】
一般式(4)中、Lは置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のアリーレン基を表し、Rは置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。
<9>
一般式(3)におけるMが、亜鉛、マグネシウム、又はオキシバナジウム(V=O)である、<8>に記載のフタロシアニン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本開示の一実施形態によれば、エステル側鎖を有するフタロシアニン化合物の高純度に得ることができるフタロシアニン化合物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示のフタロシアニン化合物の製造方法の一例である実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本開示において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、1つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、一般式(1)で表されるフタロニトリル化合物と、金属化合物と、下記一般式(5)で表される化合物とを混合する工程で得られる「混合液」とは、上記一般式(1)で表されるフタロニトリル化合物と、金属化合物と、上記一般式(5)で表される化合物とが混合され、環化反応が生じる前の液を指す。
「反応液」とは、一般式(1)で表されるフタロニトリル化合物等を含む液が、経時により、又は、加熱等のエネルギー付与により、環化反応が進行している状態の液を指す。
【0022】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において、「工程」という語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0023】
[フタロシアニン化合物の製造方法]
本開示のフタロシアニン化合物の製造方法(以下、本開示の製造方法ともいう)は、下記一般式(1)で表されるフタロニトリル化合物と、金属化合物と、下記一般式(5)で表される化合物とを混合する工程(以下、混合工程ともいう)を含む。
【化6】

【0024】
一般式(1)中、Z、Z、Z、及びZは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のアリールチオ基、又は一般式(2)で表される置換基を表す。但し、Z、Z、Z、及びZの少なくとも1つは下記一般式(2)で表される置換基である。
【0025】
【化7】
【0026】
一般式(2)中、Lは置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のアリーレン基を表し、Rは置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。
【0027】
【化8】
【0028】
一般式(5)中、Rは一般式(2)におけるRと同じである。
【0029】
本開示の製造方法により、高純度でフタロシアニン化合物が得られる作用機構は明確ではないが以下のように推測される。
フタロニトリルを原料としたフタロシアニン化反応において、求核性の成分を共存させることでフタロニトリルのニトリル基への付加が起こり、活性なイミノエステルが生じ、これによる反応加速、即ち、活性中間体を経由することによる反応加速が起きることが考えられる。しかし、目的のフタロシアニン化合物がエステル基を有する場合、共存させた求核成分がエステル基へも付加反応を起こすことにより、意図しない副生成物が生じる場合がある。
本開示の製造方法では、一般式(1)で表されるフタロニトリル化合物(特定化合物(1)とも称する)と、金属化合物と、一般式(5)で表される化合物(特定アルコール(5)とも称する)とを混合する。特定化合物(1)に結合しているエステル側鎖が有する置換基Rと同じ置換基Rを有する特定アルコール(5)を求核性の成分として共存することで、異なる構造の求核性成分を共存させる場合と比較し、エステル側鎖のエステル交換反応が起きても同一構造となることで、副生成物が生じないと推定している。
このため、高純度、且つ、短時間でのフタロシアニン化合物の製造が達成されると考えられる。
【0030】
(特定化合物(1):一般式(1)で表されるフタロニトリル化合物)
一般式(1)におけるZ、Z、Z、及びZは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のアリールチオ基、又は一般式(2)で表される置換基を表す。但し、Z、Z、Z、及びZの少なくとも1つは下記一般式(2)で表される置換基である。
【0031】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、ヨウ素原子、臭素原子、塩素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数1~12のアルコキシ基が好ましい。
アリールオキシ基としては、炭素数6~18のアリールオキシ基が好ましい。
アルキルチオ基としては、炭素数1~12のアルキルチオ基が好ましい。
アリールチオ基としては、炭素数6~18のアリールチオ基が好ましい。
アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、及びアリールチオ基が置換基を有する場合の置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、等)、アルキル基(直鎖、分岐鎖及び環状のいずれでもよい。)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、シリル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、複素環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、複素環チオ基、ホスホリル基、アシル基、カルボキシ基、又はスルホ基が挙げられ、原材料の入手の容易性の観点から、アルキル基、フェノキシカルボニル基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、フェニル基、アルケニル基、又はアルコキシ基が好ましく、アルキル基、フェノキシカルボニル基、又はアルコキシ基がより好ましく、アルキル基、又はアルコキシ基が更に好ましく、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数1~6のアルコキシ基が特に好ましい。
【0032】
以下、Z、Z、Z、及びZを、Z、~Zと略称することがある。
~Zとしては、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換の炭素数1~12のアルコキシ基等が好ましい。また、Z~Zのうち少なくとも1つは、下記式(2)で表される置換基であり、Z~Zのうち、Z~Zの全てが式(2)で表される置換基であってもよいが、Z~Zのうち、いずれか3つが式(2)で表される置換基であることが好ましく、いずれか2つが式(2)で表される置換基であることがより好ましい。いずれか1つが式(2)で表される置換基であることも好ましい。
~Zとしては、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一般式(2)で表される置換基が好ましい。
【0033】
より具体的には、一般式(1)におけるZ及びZが水素原子、又は、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子であり、且つ、Z及びZが式(2)で表される構造、Z、Z及びZが水素原子、又は、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子であり、且つ、Zが式(2)で表される構造が好ましい例として挙げられる。
一般式(1)で表されるフタロニトリル化合物の好ましい例としては、下記一般式(1A)で表される化合物、又は、一般式(1B)で表される化合物が挙げられる。
【0034】
【化9】
【0035】
上記一般式(1A)、又は、一般式(1B)中、Xは、各々独立に水素原子又はハロゲン原子を表し、L及びRは、それぞれ、既述の一般式(2)におけるL及びRと同じである。
【0036】
一般式(2)中、Lは置換若しくは無置換のアルキレン、又は置換若しくは無置換のアリーレン基を表し、無置換のアルキレン基、又は無置換のアリーレン基が好ましい。
Rは置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、置換若しくは無置換の炭素数1~6のアルキル基、又は置換若しくは無置換の炭素数6~12のアリール基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基、アルコキシ置換アルキル基、アリル基、フェニル基などがより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
【0037】
(特定アルコール(5):一般式(5)で表される化合物)
一般式(5)で表される化合物(特定アルコール(5))は、特定化合物(1)が有するエステル側鎖における末端基であるRと同じ置換基Rを有するアルコールである。
一般式(5)中、Rは一般式(2)におけるRと同じであり、好ましい例も同じである。
【0038】
特定アルコール(5)の含有量は、特定化合物(1)と、金属化合物と、特定アルコール(5)とを混合して得られる混合液100質量%に対し、0.01質量%~10質量%であることが好ましく、上記混合液100質量%に対し、0.40質量%~5.00質量%であることがより好ましい。
特定アルコール(5)の含有量が上記範囲であることで、得られるフタロシアニン化合物の純度がより向上し、収率がより良好となる。
なお、特定化合物(1)と、金属化合物と、特定アルコール(5)とを混合して得られる、環化反応前の混合液を、単に「混合液」とも称する。
【0039】
特定アルコール(5)の含有量は、特定化合物(1)1当量に対して、0.05当量以上が好ましく、0.09当量以上がより好ましく、0.10当量以上が更に好ましい。また、特定アルコール(5)は、特定化合物(1)1当量に対して、2.0当量以下が好ましく、1.2当量以下がより好ましく、1.0当量未満が更に好ましく、0.7当量以下が特に好ましい。
特定アルコール(5)の特定化合物(1)に対する含有量が、上記範囲であることで、収率がより向上し、得られるフタロシアニン化合物の純度もより優れる。
混合液中の特定アルコール(5)の含有量は、仕込み量により算出することができる。
また、混合液を、例えば、ガスクロマトグラフィにより分析することで測定できる。
【0040】
(金属化合物)
金属化合物には特に制限はなく、フタロシアニン化合物の中心金属を形成しうる金属の化合物であればよい。例えば、銅、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、バナジウム、鉄、ニッケル、コバルト、パラジウム、チタン、インジウム等含む金属化合物が挙げられる。なかでも、反応性の低い金属化合物、例えば、亜鉛化合物、マグネシウム化合物、酸化バナジウム化合物等を用いた場合に、本開示の製造方法により得られる効果が著しいと考えられる。
金属化合物としては、具体的には、ヨウ化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ヨウ化銅、塩化銅、臭化銅、酢酸銅、ステアリン酸銅、塩化アルミニウム、フッ化アルミニウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、酸化バナジウム(V)等が挙げられ、環化反応の効率がより良好という観点からは、ヨウ化亜鉛、ステアリン酸亜鉛等が好ましい。
【0041】
例えば、金属化合物として、ヨウ化亜鉛、又は、ステアリン酸亜鉛を用いることにより、反応の進行と共に生成するヨウ素、ステアリン酸等が、平面構造のフタロシアニン分子間に存在するか、又は、Z軸に配位することで、溶媒がフタロシアニン分子間に入りこむことができ、溶解性が向上することため、未反応原料を、生成したフタロシアニン化合物の反応液から析出する結晶に取り込ませず、環化反応の効率の向上に作用すると推定している。
金属化合物は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよいが、得られるフタロシアニン化合物の純度の観点からは、金属化合物を2種以上用いる場合、中心金属を構成する金属原子は同じ種類であることが好ましい。
混合する工程における金属化合物の添加量は、上記一般式(1)で表されるフタロニトリル化合物1当量に対して、0.20当量~0.5当量が好ましく、収率の観点からは、0.25当量%~0.3当量がより好ましい。
【0042】
特定化合物(1)と、金属化合物と、特定アルコール(5)とを混合し、混合する工程の後、経時により、又は加熱などのエネルギー付与により、特定化合物の環化反応が進行し、目的とするフタロシアニン化合物を得る。特定化合物(1)と、金属化合物と、特定アルコール(5)とを混合して得られる混合液は、さらに反応溶媒を含んでいてもよい。
反応溶媒としては、特定化合物(1)との反応性が低いか、又は、反応性を示さない不活性な溶媒を挙げることができる。具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1-クロロナフタレン、1-メチルナフタレン、及びベンゾニトリル等の不活性溶媒;
ピリジン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、N,N-ジメチルアセトフェノン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
なかでも、原料である特定化合物(1)の溶解性、反応温度の上昇に対応可能であるとの点で、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼン、クロロナフタレン、メチルナフタレン、ピリジン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン等が好ましく、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、メシチレン等がより好ましく、ベンゾニトリルがさらに好ましい。
即ち、上記混合液は、反応溶媒としてベンゾニトリルを含むことが好ましい。
反応溶媒としてベンゾニトリルを用いる利点として、特定化合物(1)の溶解性が良好であることに加え、金属化合物に配位して金属化合物の溶解性を助けることができる点、特定化合物(1)と金属化合物との配位を阻害しない、適当な配位力を有することなどが挙げられる。
【0043】
混合工程により得られる混合液100質量%に対する水の含有量は、0.05質量%未満であることが好ましい。
本発明者らの検討によれば、環化反応に供する混合液における水の含有量が0.05質量%未満であることにより、環化反応における特定化合物(1)のエステル側鎖の、水に起因する加水分解反応が抑制され、エステル側鎖が加水分解した副生成物である所望されないフタロシアニン化合物の生成が抑制され、得られるフタロシアニン化合物の純度向上に寄与すると考えられる。さらに、水の含有量が少ないことで、特定化合物(1)が有するニトリルの加水分解反応が抑制され、環化反応がより効率よく進み、延いては、目的とするフタロシアニン化合物の収率向上に寄与していると推定している。
混合液における水の含有量は、0.05質量%未満であることが好ましく、0.04質量%未満がより好ましく、0.03質量%未満であることがより好ましく、水の含有量は検出限界以下であってもよい。
混合液中の水の含有量、即ち、含水率は、カールフィッシャー水分測定により分析することができる。詳細な測定方法は後述する実施例に記載する。
【0044】
環化反応に供する混合液は、濃度、即ち、溶媒として機能する特定アルコール(5)及び所望により含まれる反応溶媒の合計量に対する特定化合物(1)及び金属化合物の合計量がより高い方が、環化反応に必要な各成分同士の接触頻度を向上させることができ、反応進行に有利であるが、濃度が高すぎると混合液の粘性が上昇し、流動性が低下するため、反対に反応速度が低下することがある。
このため、混合液の粘度は適切に設定することが好ましい。
【0045】
特定化合物(1)の使用量に対する、溶媒の使用量の比は、質量基準で、1.0倍~3.0倍であることが好ましく、2.0倍~3.0倍であることがより好ましく、2.0倍~2.5倍であることが更に好ましい。
【0046】
本開示の製造方法は、130℃~170℃に加熱する工程をさらに含むことが好ましい。
130℃~170℃に加熱する工程を含むことにより、フタロニトリル化合物の環化反応が進行し、目的とするフタロシアニン化合物が、効率よく得られる。
本開示においては、既述の如く、加熱により環化反応が開始し、さらに、反応が進行している状態の液を「反応液」と称し、原料を混合した状態であって、加熱(昇温)による環化反応開始前の「混合液」と区別している。なお、フタロシアニン環化反応が進行する温度まで昇温する直前の液も「混合液」に包含される。
【0047】
一般に、反応温度は高い方が、活性化エネルギーを超えて反応を加速できること、反応原料の溶解度が向上すること、反応液の粘度が低下し、流動性が向上するため、反応液に含まれる各成分同士の接触頻度が向上するため好ましい。
このような観点からは、加熱条件としては、温度は130℃以上とすることが好ましく、135℃以上とすることがより好ましく、140℃以上とすることがさらに好ましい。
加熱する工程における温度が170℃を大きく超えた場合、加熱により反応が進行して生成される反応生成物の分解が生じる場合がある。このため、環化反応及び得られるフタロシアニン化合物の純度の観点からは、加熱する工程における温度は170℃以下とすることがより好ましく、165℃以下とすることがさらに好ましい。
ここで、加熱する工程における上記温度は、環境温度であってもよく、混合液(加熱により環化反応が進行した反応液も含む)の液温であってもよい。
【0048】
加熱方法は、特に限定されるものではなく、加熱装置(ヒーター等)などを使用することにより行うことができる。加熱装置は、温度調整機能を有するものを用いることができる。本開示において、加熱条件における温度は、液の温度であることが好ましい。
混合液を加熱することで、混合液に含まれる各成分の反応が進行する。反応性の観点から、加熱する工程の処理時間は、例えば、3時間~168時間であることが好ましく、12時間~96時間であることがより好ましい。
【0049】
(その他の工程)
本開示の製造方法は、上記混合液及び加熱する好適に加え、その他の工程を含んでいてもよい。
その他の工程としては、加熱する工程において反応させた反応液の冷却を行う冷却工程が挙げられる。
冷却工程における冷却方法は、特に限定されるものではなく、冷却装置(送風機等)などを用いて行ってもよく、放冷により行ってもよい。
冷却温度は、特に限定されるものではなく、例えば、0℃~30℃とすることができる。なお、本開示において、冷却温度とは、冷却が行われる環境温度を指す。
冷却後、ろ過等を行っても溶媒を除去してもよい。
【0050】
環化反応に用い得る反応容器には特に制限はなく、公知の反応容器を用いることができる。反応温度以下の沸点を持つ溶媒、原料等を用いる場合には、オートクレーブなどの耐圧容器、密閉容器を使用することができる。
本開示の製造方法は、不活性雰囲気下において行われることが好ましい。
【0051】
本開示の製造方法で得られるフタロシアニン化合物は、下記一般式(3)で表されるフタロシアニン化合物であることが好ましい。
【0052】
【化10】
【0053】
一般式(3)中、Mは、亜鉛、マグネシウム、又は酸化バナジウム(V=O)を表し、Z11、Z12、Z13、Z14、Z15、Z16、Z17、Z18、Z19、Z20、Z21、Z22、Z23、Z24、Z25、及びZ26(以下、Z11~Z26と記載することがある)は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のアリールチオ基、又は一般式(4)で表される置換基を表す。
ただし、Z11~Z26のうち、少なくとも1つが、下記一般式(4)で表される置換基である。
【0054】
【化11】

【0055】
一般式(4)中、Lは置換若しくは無置換のアルキレン、又は置換若しくは無置換のアリーレン基を表し、Rは置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは又は無置換のアリール基を表す。
上記一般式(3)におけるZ11~Z26は、それぞれ独立に、既述の特定化合物(1)の一般式(1)におけるZ~Zと同じであり、好ましい態様も同じである。
上記一般式(4)におけるL及びRは、既述の一般式(2)におけるL及びRと同じであり、好ましい例も同じである。
【0056】
一般式(3)で表される化合物は、下記一般式(3A)又は一般式(3B)で表される化合物であることが好ましい。
【0057】
【化12】

【0058】
一般式(3A)及び一般式(3B)におけるXは、水素原子又はロゲン原子を表し、水素原子又はフッ素原子が好ましい。
一般式(3A)及び一般式(3B)におけるMは、上記一般式(3)におけるMと同じである。
一般式(3A)及び一般式(3B)におけるL及びRは、上記一般式(4)におけるL及びRと同じである。
【0059】
以下、構造とそれぞれの置換基とを明示することにより、一般式(3)で表される化合物の例示化合物を記載するが、一般式(3)で表される例示化合物は、以下の例に限定されないことはいうまでもない。
【0060】
【化13】

【0061】
【化14】
【0062】
本開示の製造方法により得られるフタロシアニン化合物は、種々の用途に使用することができる。
得られたフタロシアニン化合物の用途としては、色材として、インクジェット用インク、感熱転写記録用シート、印刷用インク、塗料等の用途が挙げられる。
【実施例0063】
以下、実施例に基づいて本開示を詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施例に制限されず、以下の実施例に記載された内容(例えば、原材料、条件及び方法)は本開示の目的の範囲内において適宜変更されてもよい。以下の説明において特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0064】
<実施例1>
1L(リットル)の三口フラスコに、ベンゾニトリル129mL、3,6-ジフルオロ-4,5-ジ([4-フェノキシカルボニル]フェノキシ)-1,2-フタロニトリル60gを加え、内温130℃まで加温し、ベンゾニトリル30mLを減圧留去した。
内温を25℃まで冷却し、ヨウ化亜鉛(II)8.46g、フェノール0.96g、及びベンゾニトリル0.96mLを加え、混合した。(混合工程)
得られた混合液から0.5gをサンプリングし、カールフィッシャー水分計(京都電子工業(株)製)を用いて水分量を測定した。その結果、混合液の含水率は、0.01%であった。
その後、混合液を加熱し、内温を145℃まで昇温させて、48時間反応させた。(加熱する工程)
【0065】
反応液を70℃まで冷却し、メタノール255mLを滴下した。内温を25℃まで冷却し、析出している結晶をろ過し、メタノール210mLでかけ洗いを行い、例示化合物1のウェット晶109gを得た。
得られたウェット晶全量を1000mLの三口フラスコに入れ、メタノール359mLを加え、1時間還流加熱条件下で撹拌した後に、内温を25℃まで冷却後、結晶をろ過し、メタノール60mLでかけ洗いを行い、得られた結晶を80℃で乾燥することで、例示化合物3A-3の緑色粉末43gを得た。
収率82%であった。
緑色粉末をHPLCで分析したところ、純度は95.2%であった。
化合物の純度は、得られたフタロシアニン化合物をN-メチル-2-ピロリドンに溶解させ、高速液体クロマトグラフィ(High Performance Liquid Chromatography(HPLC)、装置名:島津製作所製LC-2010A、溶離液:水/THF)を用いて、測定波長254nmの面積率から求めた。
【0066】
<実施例2~実施例8>
実施例1において用いた特定化合物(1)、即ち、フタロニトリル化合物と、特定アルコール(5)とを、下記表1に記載の化合物に変えた以外は、実施例1と同様にしてフタロシアニン化合物を得た。
実施例1と同様にして測定した混合液の含水率、収率、及び得られたフタロシアニン化合物の純度を表2に併記した。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
本開示の製造方法である実施例1~実施例8で得られたフタロシアニン化合物は、いずれも、収率が良好であり、特に得られたフタロシアニン化合物の純度が高かった。
【0070】
<実施例9~実施例19>
実施例1において用いた一般式(5)で表される化合物の含有量、用いる金属化合物、溶媒を表3~表4に記載の如く変更し、混合液の加熱条件を表4に記載の条件に変更した以外は、実施例1と同様にしてフタロシアニン化合物を得た。
実施例1と同様にして測定した混合液の含水率、収率、及び得られたフタロシアニン化合物の純度を表4に併記した。
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
本開示の製造方法である実施例9~実施例19によれば、いずれも、収率が良好であり、得られたフタロシアニン化合物の純度が高かった。
【0074】
<比較例1>
特開2022-133059号公報の実施例1の記載を参考にしてフタロシアニン化合物を合成した。具体的には、特開2022-133059号公報の段落〔0072〕を参考に、フタロニトリル中間体(1)を合成した。得られたフタロニトリル中間体(1)を用い、表5~表6に記載の条件で、環化反応させた。
反応液を70℃まで冷却し、メタノール255mLを滴下した。内温を25℃まで冷却し、析出している結晶をろ過し、メタノール210mLでかけ洗いを行い、フタロシアニン化合物を得た。
【0075】
<比較例2>
実施例1で用いた一般式(5)で表される化合物に代えて、比較アルコールであるエタノールを用いた以外は、実施例1と同様にして、フタロシアニン化合物を得た。
実施例1と同様にして測定した混合液の含水率、収率、及び得られたフタロシアニン化合物の純度を表6に併記した。
【0076】
【表5】
【0077】
【表6】
【0078】
同じフタロニトリル化合物を出発物質として用いても、一般式(5)で表される化合物を用いず、混合液の含水率が多い比較例1の方法で得たフタロシアニン化合物は、実施例に対し、純度が低いことが分かる。また、一般式(5)で表される化合物に代えて、末端の置換基がフタロニトリル化合物とは異なる比較アルコールを用いた比較例2の製造方法で得たフタロシアニン化合物も、実施例に対し、純度が低いことが分かる。これは、環化反応において、フタロシアニン化合物が有するエステル側鎖が加水分解、又は、加溶媒分解され、副反応が生じたためと考えられる。
【0079】
実施例及び比較例の対比より、一般式(1)で表されるフタロニトリル化合物と、金属化合物と、一般式(5)で表される化合物とを混合する工程を含む各実施例の製造方法で得られたフタロシアニン化合物は高純度であることが分かる。