(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025154924
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】混合物、組成物、及び化合物
(51)【国際特許分類】
C09B 67/20 20060101AFI20251002BHJP
C09B 67/46 20060101ALI20251002BHJP
C09B 47/18 20060101ALI20251002BHJP
C07D 487/22 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
C09B67/20 G
C09B67/46 A CSP
C09B67/20 L
C09B47/18
C07D487/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024058214
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 優介
(72)【発明者】
【氏名】藤江 賀彦
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フタロシアニン化合物を含み、経時安定性及び耐光性が良好な混合物、上記混合物を含む組成物、及び新規フタロシアニン化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを含む、混合物。前記混合物と、水、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の溶媒と、を含む、組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを含む、
混合物。
【化1】
一般式(1)中、A
1は置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表し、複数のA
1はすべて同一である。
Xは水素原子又はハロゲン原子を表す。
Mは金属原子又は金属原子の酸化物を表す。
【化2】
一般式(2)中、A
1は置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表し、複数のA
1はすべて同一であり、一般式(2)におけるA
1は、一般式(1)におけるA
1と同じである。
A
2は水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表す。但し、A
1とA
2とは、互いに異なる。
Xは水素原子又はハロゲン原子を表し、一般式(1)におけるXと同じである。
Mは金属原子又は金属原子の酸化物を表し、一般式(1)におけるMと同じである。
【請求項2】
前記一般式(1)及び一般式(2)におけるA1が、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル置換フェニル基、及び、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル置換フェニル基から選択される置換基である、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
前記一般式(1)及び一般式(2)におけるA
1が、下記一般式(1p)で表される置換基である、請求項1又は請求項2に記載の混合物。
【化3】
一般式(1p)中、R
1は、置換若しくは無置換の炭素数1~8のアルキル基、又は、置換若しくは無置換の炭素数6~10のアリール基を表す。
【請求項4】
前記一般式(2)におけるA2が、置換基を有してもよいカルボキシ置換フェニル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル置換フェニル基、及び、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル置換フェニル基から選択される置換基である、請求項1又は請求項2に記載の混合物。
【請求項5】
前記一般式(2)におけるA
2が、下記一般式(2p)で表される置換基である、請求項1又は請求項2に記載の混合物。
【化4】
一般式(2p)中、R
2は、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1~8のアルキル基、又は、置換若しくは無置換の炭素数6~10のアリール基を表す。但し、一般式(2)におけるR
2と、一般式(1)におけるR
1とは互いに異なる。
【請求項6】
前記一般式(1)で表される化合物と、前記一般式(2)で表される化合物との含有比率が、質量比で90:10~99.9:0.1の範囲である請求項1又は請求項2に記載の混合物。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の混合物と、溶媒と、を含む、組成物。
【請求項8】
前記溶媒が、水、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、2-ブタノン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,2-ヘキサンジオール、及びアジピン酸ジイソプロピルから選択される少なくとも1種を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
さらに、分散剤を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
さらに、界面活性剤を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
下記一般式(2A)で表される化合物。
【化5】
一般式(2A)中、R
1は、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表し、複数のR
1はすべて同じである。R
2は水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表す。但し、R
1とR
2とは、互いに異なる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、混合物、組成物、及び化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
フタロシアニン化合物は、色素化合物として有用であり、種々の化合物が知られている。
近赤外線に吸収を有する新規フタロシアニン化合物が提案されており(特許文献1参照)、例えば、光記録媒体として有用であることが記載されている。また、フタロシアニン色素としては、溶解性基又はその前駆体が異なるフタロニトリル、および、フタル酸誘導体から選ばれる少なくとも2種類と、金属誘導体と、を反応させて得たフタロシアニン色素が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-345861号公報
【特許文献2】特開2003-12952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のフタロシアニン化合物は、経時による析出、凝集等の抑制という観点からは、改良の余地がある。
また、特許文献2に記載のフタロシアニン色素は、色素化合物としての耐光性に改良の余地がある。
【0005】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、フタロシアニン化合物を含み、経時安定性及び耐光性が良好な混合物及び上記混合物を含む組成物を提供することである。
本開示の別の一実施形態が解決しようとする課題は、エステル側鎖を有する新規なフタロシアニン化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の態様を含む。
<1>
下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを含む、
混合物。
【0007】
【0008】
一般式(1)中、A1は置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表し、複数のA1はすべて同一である。
Xは水素原子又はハロゲン原子を表す。
Mは金属原子又は金属原子の酸化物を表す。
【0009】
【0010】
一般式(2)中、A1は置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表し、複数のA1はすべて同一であり、一般式(2)におけるA1は、一般式(1)におけるA1と同じである。
A2は水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表す。但し、A1とA2とは、互いに異なる。
Xは水素原子又はハロゲン原子を表し、一般式(1)におけるXと同じである。
Mは金属原子又は金属原子の酸化物を表し、一般式(1)におけるMと同じである。
【0011】
<2>
上記一般式(1)及び一般式(2)におけるA1が、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル置換フェニル基、及び、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル置換フェニル基から選択される置換基である、<1>に記載の混合物。
<3>
上記一般式(1)及び一般式(2)におけるA1が、下記一般式(1p)で表される置換基である、<1>又は<2>に記載の混合物。
【0012】
【0013】
上記一般式(1p)中、R1は、置換若しくは無置換の炭素数1~8のアルキル基、又は、置換若しくは無置換の炭素数6~10のアリール基を表す。
<4>
上記一般式(2)におけるA2が、置換基を有してもよいカルボキシ置換フェニル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル置換フェニル基、及び、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル置換フェニル基から選択される置換基である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の混合物。
<5>
上記一般式(2)におけるA2が、下記一般式(2p)で表される置換基である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の混合物。
【0014】
【0015】
上記一般式(2p)中、R2は、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1~8のアルキル基、又は、置換若しくは無置換の炭素数6~10のアリール基を表す。但し、一般式(2)におけるR2と、一般式(1)におけるR1とは互いに異なる。
<6>
上記一般式(1)で表される化合物と、上記一般式(2)で表される化合物との含有比率が、質量比で90:10~99.9:0.1の範囲である<1>~<5>のいずれか1つに記載の混合物。
【0016】
<7>
<1>~<6>のいずれか1つに記載の混合物と、溶媒とを含む、組成物。
<8>
上記溶媒が、水、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、2-ブタノン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,2-ヘキサンジオール、及びアジピン酸ジイソプロピルから選択される少なくとも1種を含む、<7>に記載の組成物。
<9>
さらに、分散剤を含む、<7>又は<8>に記載の組成物。
<10>
さらに、界面活性剤を含む、<7>~<9>のいずれか1つに記載の組成物。
【0017】
<11>
下記一般式(2A)で表される化合物。
【0018】
【0019】
一般式(2A)中、R1は、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表し、複数のR1はすべて同じである。R2は水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表す。但し、R1とR2とは、互いに異なる。
【発明の効果】
【0020】
本開示の一実施形態によれば、フタロシアニン化合物を含み、経時安定性及び耐光性が良好な混合物及び上記混合物を含む組成物を提供することができる。
本開示の別の一実施形態によれば、エステル側鎖を有する新規なフタロシアニン化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】例示化合物2-13のMALDI-TOFMS質量分析により得たスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の混合物、組成物、及び化合物の一例である実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本開示において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、1つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0023】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
混合物又は組成物中の各成分の量について言及する場合、混合物又は組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、混合物又は組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において、「工程」という語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0024】
本開示において、「置換基S」と称する置換基群は、下記に示す置換基群を意味する。
(置換基S)
置換基Sとしては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、等)、アルキル基(直鎖、分岐鎖及び環状のいずれでもよい。)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、シリル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、複素環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、複素環チオ基、ホスホリル基、アシル基、カルボキシ基、又はスルホ基が挙げられる。これらの各基は、更に置換基を有していてもよい。
【0025】
[混合物]
本開示の混合物は、下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを含む。
【0026】
【0027】
一般式(1)中、A1は置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表し、複数のA1はすべて同一である。Xは水素原子又はハロゲン原子を表す。Mは金属原子又は金属原子の酸化物を表す。
【0028】
【0029】
一般式(2)中、A1は置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表し、複数のA1はすべて同一であり、一般式(2)におけるA1は、一般式(1)におけるA1と同じである。A2は水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表す。但し、A1とA2とは、互いに異なる。Xは水素原子またはハロゲン原子を表し、一般式(1)におけるXと同じである。Mは金属原子又は金属原子の酸化物を表し、一般式(1)におけるMと同じである。
【0030】
(一般式(1)で表される化合物)
一般式(1)で表される化合物は、フタロシアニン化合物であり、優れた色相を有する化合物として有用である。
一般式(1)中、A1は置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表す。
A1がアルキル基を表す場合のアルキル基としては、例えば、炭素数1~10のアルキル基が好ましく挙げられる。アルキル基が置換基を有する場合の置換基としては、特に制限されないが、例えば、置換基Sから選択された置換基が挙げられ、中でも、アルコキシ基、又は、ハロゲン原子が好ましい。
A1がアリール基を表す場合のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基が好ましく挙げられる。
アリール基が置換基を有する場合の置換基としては、特に制限されないが、例えば、置換基Sから選択された置換基が挙げられ、中でも、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、又は、アリールオキシカルボニル基が好ましく、アルコキシカルボニル基、又は、アリールオキシカルボニル基がより好ましい。アリール基がフェニル基である場合、これら置換基の置換位置は、フェニル基のオルト位でも、メタ位でも、パラ位でもよく、パラ位であることが好ましい。また、置換基の数は、1つでもよいし、複数であってもよい。
【0031】
なかでも、一般式(1)中、A1は、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル置換フェニル基、及び、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル置換フェニル基から選択される置換基であることが好ましい。置換基を有してもよいアルコキシカルボニル置換フェニル基、又は、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル置換フェニル基における、アルコキシカルボニル基、又はアリールオキシカルボニル基のフェニル基に対する置換位置は、フェニル基のオルト位でも、メタ位でも、パラ位でもよく、混合物における凝集抑制効果の観点からは、パラ位であることが好ましい。
本開示の効果に、より優れるという観点からは、一般式(1)中、A1は、下記一般式(1p)で表される置換基であることがより好ましい。
【0032】
【0033】
上記一般式(1p)中、R1は、置換若しくは無置換の炭素数1~8のアルキル基又は置換若しくは無置換の炭素数6~10のアリール基を表し、耐光性の観点から、炭素数1~5の無置換のアルキル基、フェニル基又はハロゲン原子で置換されたフェニル基が好ましい。
一般式(1)において、複数存在するA1はすべて同一である。
【0034】
一般式(1)中、Xは水素原子又はハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられる。
Xとしては、フタロシアニン化合物の色相及び色価の観点から、水素原子又はフッ素原子が好ましい。
【0035】
Mは金属原子又は金属原子の酸化物を表す。金属原子としては、フタロシアニン化合物の中心原子となり得る金属であれば特に限定されない。なかでも、フタロシアニン化合物の色相、及び耐光性等の観点からは、Cu、Zn、Mg、Al、又はV=Oが好ましく、Cu又はZnがより好ましく、Znがさらに好ましい。
【0036】
(一般式(1)で表される化合物の例)
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例を、骨格と置換基とを明示することで列記する。下記例示化合物は、本開示の一般式(1)で表される化合物の一例であり、本開示の一般式(1)で表される化合物は、以下に記載の例示化合物に限定されないことはいうまでもない。
【0037】
【0038】
【0039】
(一般式(2)で表される化合物)
一般式(2)で表される化合物は、既述の一般式(1)で表される化合物と同じフタロシアニン骨格を有し、優れた色相を有する化合物として有用である。
ここで、一般式(2)で表される化合物におけるA1は、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基を表し、一般式(1)のA1と同じである。一般式(2)で表される化合物において複数存在するA1はすべて同じである。
即ち、本開示の効果により優れるという観点からは、一般式(2)中、A1は、既述の上記一般式(1p)で表される置換基であることがより好ましい。
一般式(2)において、A2は水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。但し、A1とA2とは互いに異なる。
【0040】
一般式(2)のA2におけるアルキル基としては、例えば、炭素数1~10のアルキル基が好ましく挙げられる。アルキル基に置換する置換基としては、特に制限されないが、例えば、置換基Sから選択された置換基が挙げられ、中でも、カルボキシ基、アルコキシ基、又はハロゲン原子が好ましい。
一般式(2)のA2におけるアリール基としては、例えば、フェニル基、又はナフチル基が挙げられ、フェニル基が好ましく挙げられる。
アリール基に置換する置換基としては、特に制限されないが、例えば、置換基Sから選択された置換基が挙げられ、中でも、アルキル基、ハロゲン原子、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、又はアリールオキシカルボニル基が好ましく、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、又はアリールオキシカルボニル基がより好ましい。
アリール基がフェニル基である場合、これら置換基の置換位置は、フェニル基のオルト位でも、メタ位でも、パラ位でもよく、パラ位であることが好ましい。また、置換基の数は、1つでもよいし、複数であってもよい。
【0041】
一般式(2)中、A2は、水素原子、置換基を有してもよいカルボキシ置換フェニル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル置換フェニル基、及び、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル置換フェニル基から選択される置換基であることが好ましい。置換基を有してもよいカルボキシ置換フェニル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル置換フェニル基、又は置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル置換フェニル基における、カルボキシ置換フェニル基、アルコキシカルボニル基、又はアリールオキシカルボニル基のフェニル基に対する置換位置は、フェニル基のオルト位でも、メタ位でも、パラ位でもよく、耐光性の観点からは、パラ位であることが好ましい。
本開示の効果に、より優れるという観点からは、一般式(1)中、A2は、下記一般式(2p)で表される置換基であることがより好ましい。
【0042】
【0043】
上記一般式(2p)中、R2は、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1~8のアルキル基、又は、置換若しくは無置換の炭素数6~10のアリール基を表し、凝集抑制効果の観点から、水素原子、炭素数1~5の無置換のアルキル基、フェニル基、又は、ハロゲン原子で置換されたフェニル基等が好ましい。但し、一般式(2)におけるR2と、一般式(1)におけるR1とは互いに異なる。
【0044】
一般式(2)中、Xは水素原子又はハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
Xとしては、フタロシアニン化合物の色相および色価の観点から、水素原子又はフッ素原子が好ましい。
【0045】
Mは金属原子又は金属原子の酸化物を表す。金属原子としては、フタロシアニン化合物の中心原子となり得る金属であれば特に限定されない。なかでも、フタロシアニン化合物の色相、耐光性等の観点からは、Cu、Zn、Mg、Al、又はV=Oが好ましく、Cu又はZnがより好ましく、Znがさらに好ましい。
【0046】
一般式(2)におけるA1、X、及びMは、それぞれ混合物において併用される一般式(1)で表される化合物と同じである。
即ち、本開示の混合物に含まれる一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とは、一般式(2)における置換基とA2が異なる以外は、同じ骨格を有する化合物である。
【0047】
(一般式(2)で表される化合物の例)
以下に、一般式(2)で表される化合物の具体例を、骨格と置換基とを明示することで列記する。下記例示化合物は、本開示の一般式(2)で表される化合物の一例で有り、本開示の一般式(2)で表される化合物は、以下に記載の例示化合物に限定されないことはいうまでもない。
【0048】
【0049】
【0050】
本開示の混合物における一般式(1)で表される化合物と、一般式(2)で表される化合物との含有比率が質量比で80:20から99.9:0.1であることが好ましく、90:10から99.9:0.1であることがより好ましく、90:10から99.8:0.2であることがさらに好ましい。
【0051】
本開示の混合物において、フタロシアニン化合物の析出、又は凝集が抑制される作用機構は明確ではないが、以下のように推測される。
フタロシアニン化合物は、優れた色相を実現できる化合物であるが、例えば、共存する溶媒との溶解性により、顔料としての挙動を示す場合があり、また、染料としての挙動を示す場合がある。
一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物の溶解性が低い溶媒と共存する場合、フタロシアニン化合物は顔料として媒体中に分散された状態で存在する。ここで、一般式(1)で表される化合物と、類似の構造を有し、特定の置換基のみが異なる一般式(2)で表される化合物が共存することで、顔料表面に存在する類似構造であって、同一ではない構造のフタロシアニン化合物の存在が、顔料粒子同士の凝集を妨げ、経時における凝集を防ぐ効果が得られると推測している。また、一般式(2)で表される化合物は、一般式(1)で表される化合物に対し、1つの置換基以外がすべて同一であることから、顔料中における色素の配列を阻害することがなく、高い耐光性が保持されると推測している。
一方、一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物の溶解性が高い溶媒と共存する場合、フタロシアニン化合物は溶媒に溶解した染料の状態で存在する。既述のように、フタロシアニン化合物は、強い会合形成力により、優れた色相や耐久性を有する化合物であるが、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とが共存する、即ち、類似構造を有し、一部の置換基が異なるフタロシアニンが含まれることにより、過剰会合を起こし析出やすいフタロシアニン染料同士の相互作用を阻害し、経時における沈降を防ぐ効果が得られると推測している。また、一般式(2)で表される化合物は、一般式(1)で表される化合物に対し、1つの置換基以外がすべて同一であることから、耐光性向上に寄与している会合形成を過度に阻害することがなく、高い耐光性が保持されると推測している。
なお、この作用は推定であり、本開示の解釈に影響を与えるものではない。
【0052】
本開示の混合物は、種々の用途に使用することができる。例えば、色材として、色素組成物、インクジェットインク、感熱転写記録用シート、印刷用インク、塗料、着色樹脂成型体等に、好適に使用することができる。
例えば、着色樹脂成型体の製造に本開示の混合物を適用する場合、色材としての本開示の混合物を樹脂基材と混練し、混練物を公知の成型方法(例えば、押し出し法、又は金型成型法)により成型体とすることにより、本開示の混合物により着色された着色樹脂成型体を得ることができる。
【0053】
[組成物]
本開示の混合物の好ましい用途として、組成物が挙げられる。
本開示の組成物は、既述の本開示の混合物と、溶媒とを含む。
本開示の組成物における「溶媒」との語は、必ずしも混合物に含まれる一般式(1)で表される化合物、及び一般式(2)で表される化合物が完全に溶解しなくても、化合物の一部が溶解し、溶解されない化合物が分散している状態の媒体、すなわち分散媒も包含する意味で用いられる。
【0054】
(溶媒)
本開示の組成物は、本開示の混合物を含み、さらに、溶媒を含む。
本開示における溶媒としては、上記一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物を、溶解又は分散状態で含むことができれば、特に制限はない。
溶媒としては、水、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、2-ブタノン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,2-ヘキサンジオール、アジピン酸ジイソプロピルから選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0055】
溶媒としては、上記一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物を組成物において顔料として含有する場合には、例えば、水、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、1,2-ヘキサンジオール等を挙げることができる。
また、上記一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物を組成物において、染料として含有する場合には、溶解性の観点から、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、2-ブタノン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、フタル酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、N,N-ジエチルドデカンアミド等を挙げることができる。
本開示の組成物における溶媒は、1種であっても複数混合していてもよい。
【0056】
本開示の組成物は、本開示の混合物及び溶媒に加え、他の成分を含有することができる。
(分散剤)
本開示の組成物は、成分の凝集を抑制し、経時安定性をより向上させる観点から、さらに分散剤を含むことが好ましい。
【0057】
分散剤の種類は、組成物においてフタロシアニン化合物が顔料の状態で分散し、安定してその状態を保つことができれば特に種類を問わない。例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性等の分散剤を使用することができる。
【0058】
成分の凝集を抑制し、経時安定性をより向上させる観点から、分散剤は、ポリマー分散剤であることが好ましい。本開示において、ポリマー分散剤とは、重量平均分子量が500以上の分散剤を意味する。
【0059】
分散剤としては、変性アクリル系共重合体、アクリル系共重合体、ポリウレタン、ポリエステル、高分子共重合体のアルキルアンモニウム塩又はリン酸エステル塩、カチオン性櫛型グラフトポリマー等を挙げることができる。
【0060】
成分の凝集を抑制し、経時安定性をより向上させる観点から、分散剤の重量平均分子量は、1,000~100,000であることが好ましく、5,000~50,000であることがより好ましく、10,000~45,000であることが更に好ましい。
本開示において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値を採用している。
ある態様では、GPCによる測定は、測定装置として、HLC(登録商標)-8220GPC〔東ソー株式会社製〕を用い、カラムとして、TSKgel(登録商標) Super HZ2000〔4.6mmID×15cm、東ソー株式会社製〕、TSKgel(登録商標) Super HZ4000〔4.6mmID×15cm、東ソー株式会社製〕、及びTSKgel(登録商標) Super HZ-H〔4.6mmID×15cm、東ソー株式会社製〕の3本を直列に接続し、溶離液としてNMP(N-メチルピロリドン)を用いる。
測定条件としては、試料濃度を0.3質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μL、及び測定温度を40℃とし、検出器として、示差屈折率(RI:Refractive Index)検出器を用いる。検量線は、東ソー株式会社製の「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F-80」、「F-20」、「F-4」、「F-2」、「A-5000」、及び「A-1000」の6サンプルから作製する。
【0061】
成分の凝集を抑制し、経時安定性をより向上させる観点から、組成物の総質量に対する分散剤の含有率は、1質量%~20質量%であることが好ましく、5質量%~15質量%であることがより好ましく、8質量%~13質量%であることが更に好ましい。
んでもよい。
【0062】
(界面活性剤)
本開示の組成物は、さらに界面活性剤を含むことが好ましい。
本開示の組成物が界面活性剤を含むことにより、組成物の表面張力を調整することができ、得られた組成物のハンドリング性がより良好となる。
界面活性剤としては、ノニオン、カチオン又はアニオン界面活性剤が挙げられる。なお、本開示の組成物を例えば、インクジェット記録用インクとして用いる場合には、インクの表面張力は、25℃において、25~70mPa・sが好ましく、25~60mN/mがより好ましい。
界面活性剤を含むことにより、本開示の組成物の目的に応じた表面張力の調整が可能となる。
界面活性剤の例としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤等が好ましい。
また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。
界面活性剤としては、N,N-ジメチル-N-アルキルアミンオキシドの如きアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。
界面活性剤は、組成物の使用目的に応じて選択すればよく、例えば、特開昭59-157,636号の第(37)~(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。
本開示の組成物において、界面活性剤は、組成物の目的とする物性に対し、適宜、種類と含有量を選択すればよい。
【0063】
(その他の成分)
本開示の組成物は、上記好ましい任意の成分に加え、組成物の使用目的に応じて種々の成分を含むことができる。
【0064】
[一般式(2A)で表される化合物]
本開示の化合物は、下記一般式(2A)で表される化合物である。
下記化合物は、新規化合物である。
【0065】
【0066】
一般式(2A)中、R1は、置換若しくは無置換の炭素数1~8のアルキル基、又は、置換若しくは無置換の炭素数6~10のアリール基を表し、複数のR1はすべて同じである。R2は水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1~8のアルキル基、又は、置換若しくは無置換の炭素数6~10のアリール基を表す。但し、R1とR2とは、互いに異なる。
一般式(2A)で表される化合物は、一般式(2)の好ましい態様である。
【0067】
一般式(2A)で表される化合物を、公知のエステル側鎖を有するフッ化亜鉛フタロシアニン化合物と併用することで、経時安定性に寄与することが見出された。
上記一般式(2A)で表される化合物は、本開示の混合物に含まれる一般式(2)で表される化合物の最適な例といえる。
上記一般式(2A)で表される化合物の合成方法は、後述の実施例において説明する。
【実施例0068】
〔例示化合物の合成例〕
1.例示化合物2-1の合成
下記スキームに従い、例示化合物2-1を合成した。
【0069】
【0070】
100mLのナスフラスコに、ヨウ化亜鉛(0.17g)、3,6-ジフルオロ-4,5-ビス(4-メトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリル(1.00g)、及びベンゾニトリル(10mL)を入れ混合し、160℃で5時間、反応させた。
ナスフラスコ内を室温(25℃)まで冷却し、メタノール10mLを滴下し、析出した固体をろ取した。
100mLのナスフラスコにベンゾニトリル10mLと水1mLと硫酸100mgを混合し、上記得られた固体を加え、150℃で48時間攪拌した。ナスフラスコ内を室温(25℃)まで冷却し、メタノール10mLを滴下し、析出した固体をろ取した。得られた固体から500mgを取り分け、リサイクル分取HPLC(カラム:JAIGEL-ODS-AP-50L、移動相:水/THF)で精製し、回収分画を減圧濃縮することで、化合物2-1(125.2mg)を固体として得た。(MALDI-TOFMS:1907([M+1]+))。
【0071】
2.例示化合物2-3の合成
100mLのナスフラスコに、ヨウ化亜鉛(0.16g)、3,6-ジフルオロ-4,5-ビス(4-エトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリル(1.00g)、及びベンゾニトリル(10mL)を入れ混合し、160℃で5時間、反応させた。ナスフラスコ内を室温(25℃)まで冷却し、メタノール10mLを滴下し、析出した固体をろ取した。
100mLのナスフラスコにベンゾニトリル10mLと水1mLと硫酸100mgを混合し、上記得られた固体を加え、150℃で48時間攪拌した。ナスフラスコ内を室温(25℃)まで冷却し、メタノール10mLを滴下し、析出した固体をろ取した。得られた固体から500mgを取り分け、リサイクル分取HPLC(カラム:JAIGEL-ODS-AP-50L、移動相:水/THF)で精製し、回収分画を減圧濃縮することで、化合物2-3(125.7mg)を固体として得た。(MALDI-TOFMS:1861([M+1]+))。
【0072】
3.例示化合物2-11の合成
100mLのナスフラスコに、ヨウ化亜鉛(0.14g)、3,6-ジフルオロ-4,5-ビス(4-ブトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリル(1.00g)、及びベンゾニトリル(10mL)を入れ混合し、160℃で5時間、反応させた。ナスフラスコ内を室温(25℃)まで冷却し、メタノール10mLを滴下し、析出した固体をろ取した。
100mLのナスフラスコにベンゾニトリル10mLとメタノール1mLと硫酸100mgを混合し、上記得られた固体を加え、150℃で48時間攪拌した。ナスフラスコ内を室温(25℃)まで冷却し、メタノール10mLを滴下し、析出した固体をろ取した。得られた固体から500mgを取り分け、リサイクル分取HPLC(カラム:JAIGEL-ODS-AP-50L、移動相:水/THF)で精製し、回収分画を減圧濃縮することで、化合物2-11(112.1mg)を固体として得た。(MALDI-TOFMS:2071([M+1]+))。
【0073】
4.例示化合物2-13の合成
100mLのナスフラスコに、ヨウ化亜鉛(0.13g)、3,6-ジフルオロ-4,5-ビス(4-フェノキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリル(1.00g)、及びベンゾニトリル(10mL)を入れ混合し、160℃で5時間、反応させた。ナスフラスコ内を室温(25℃)まで冷却し、メタノール10mLを滴下し、析出した固体をろ取した。
100mLのナスフラスコにベンゾニトリル10mLと水1mLと硫酸100mgを混合し、上記得られた固体を加え、150℃で48時間攪拌した。ナスフラスコ内を室温(25℃)まで冷却し、メタノール10mLを滴下し、析出した固体をろ取した。得られた固体から500mgを取り分け、リサイクル分取HPLC(カラム:JAIGEL-ODS-AP-50L、移動相:水/THF)で精製し、回収分画を減圧濃縮することで、化合物2-13(133.4mg)を固体として得た。(MALDI-TOFMS:2341([M+1]+))。
図1は、上記合成例で得た例示化合物2-13のMALDI-TOFMS質量分析により得られたスペクトルである。MALDI-TOFMSの条件については後述する。
【0074】
5.例示化合物2-14の合成
100mLのナスフラスコに、ヨウ化亜鉛(0.13g)、3,6-ジフルオロ-4,5-ビス(4-フェノキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリル(1.00g)、及びベンゾニトリル(10mL)を入れ混合し、160℃で5時間、反応させた。ナスフラスコ内を室温(25℃)まで冷却し、メタノール10mLを滴下し、析出した固体をろ取した。
100mLのナスフラスコにベンゾニトリル10mLとメタノール1mLと硫酸100mgを混合し、上記得られた固体を加え、150℃で48時間攪拌した。ナスフラスコ内を室温(25℃)まで冷却し、メタノール10mLを滴下し、析出した固体をろ取した。得られた固体から500mgを取り分け、リサイクル分取HPLC(カラム:JAIGEL-ODS-AP-50L、移動相:水/THF)で精製し、回収分画を減圧濃縮することで、化合物2-14(112.7mg)を固体として得た。(MALDI-TOFMS:2355([M+1]+))。
【0075】
6.例示化合物2-18の合成
100mLのナスフラスコに、ヨウ化亜鉛(0.18g)、4,5-ビス(4-メトキシカルボニルフェノキシ)フタロニトリル(1.00g)、及びベンゾニトリル(10mL)を入れ混合し、160℃で5時間、反応させた。
ナスフラスコ内を室温(25℃)まで冷却し、メタノール10mLを滴下し、析出した固体をろ取した。
100mLのナスフラスコにベンゾニトリル10mLと水1mLと硫酸100mgを混合し、上記得られた固体を加え、150℃で48時間攪拌した。ナスフラスコ内を室温(25℃)まで冷却し、メタノール10mLを滴下し、析出した固体をろ取した。得られた固体から500mgを取り分け、リサイクル分取HPLC(カラム:JAIGEL-ODS-AP-50L、移動相:水/THF)で精製し、回収分画を減圧濃縮することで、化合物2-18(102.8mg)を固体として得た。(MALDI-TOFMS:1763([M+1]+))。
【0076】
7.例示化合物2-20の合成
100mLのナスフラスコに、ヨウ化亜鉛(0.12g)、3,6-ジフルオロ-4,5-ビス(4-(4-クロロフェノキシカルボニル)フェノキシ)フタロニトリル(1.00g)、及びベンゾニトリル(10mL)を入れ混合し、160℃で5時間、反応させた。ナスフラスコ内を室温(25℃)まで冷却し、メタノール10mLを滴下し、析出した固体をろ取した。
100mLのナスフラスコにベンゾニトリル10mLと水1mLと硫酸100mgを混合し、上記得られた固体を加え、150℃で48時間攪拌した。ナスフラスコ内を室温(25℃)まで冷却し、メタノール10mLを滴下し、析出した固体をろ取した。得られた固体から500mgを取り分け、リサイクル分取HPLC(カラム:JAIGEL-ODS-AP-50L、移動相:水/THF)で精製し、回収分画を減圧濃縮することで、化合物2-20(118.5mg)を固体として得た。(MALDI-TOFMS:2435([M+1]+))。
【0077】
8.例示化合物2-27の合成
200mlの三口フラスコにテトラフルオロフタロニトリル(10g)、1-ブタノール(75ml)、及びテトラヒドロフラン(10ml)を加えて溶かし、内温-7℃~-3℃にて水酸化カリウム3.3gを3回に分けて30分かけて加え、その後30分攪拌した。反応液を濃縮した後、得られた残留物に水(40mL)を加え、酢酸エチルで3回抽出した抽出液を併せて無水硫酸ナトリウムで乾燥し、無水硫酸ナトリウムを濾別した後、ろ液を濃縮した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、3,4,6-トリフルオロ-5-ブトキシフタロニトリルを10.3g得た。
【0078】
100mlの三口フラスコに3,4,6-トリフルオロ-5-ブトキシフタロニトリル(10g)、フッ化カリウム(2.5g)及びアセトン(45ml)を加え、室温で攪拌し溶解した。その後冷却し、内温-11℃~-9℃にて3-メトキシ-1-プロパノール
(5.0g)を滴下し、その後徐々に室温に戻しながら7時間攪拌を続けた。反応液の不溶物を濾別し、ろ液を濃縮した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、3,6-ジフルオロ-4-メトキシプロピルオキシ-5-ブトキシフタロニトリルを9.2g得た。
【0079】
300mlの三口フラスコにテトラフルオロフタロニトリル(10g)、及びアセトン(40mL)を加えて、内温を-11℃に冷却して攪拌した。ここへ、1-ブタノール(8.2g)とテトラヒドロフラン(100ml)とカリウム-t-ブトキシド(11.6g)を攪拌して調整した溶液を、内温-10℃~-7℃にて滴下し、攪拌した。その後、徐々に25℃に昇温しながら、さらに6時間攪拌し、得られた反応液にトルエン(100mLを添加して液量が約三分の一になるまで濃縮し、得られた残留物に水(50ml)と飽和食塩水(50mL)とを添加して分液を行った。続けて、トルエン溶液層に水(50mL)と飽和食塩水(50mL)とを添加して洗浄する操作を3回行い、トルエン溶液層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、無水硫酸ナトリウムを濾別後、濃縮した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して、3,6-ジフルオロ-4,5-ブトキシフタロニトリルを8.9g得た。
【0080】
100mLのナスフラスコに、ヨウ化亜鉛(0.25g)、3,6-ジフルオロ-4-メトキシプロピルオキシ-5-ブトキシフタロニトリル(0.26g)、3,6-ジフルオロ-4,5-ブトキシフタロニトリル(1.00g)及びベンゾニトリル(10mL)を入れ混合し、160℃で5時間、反応させた。ナスフラスコ内を室温(25℃)まで冷却し、メタノール10mLを滴下し、析出した固体をろ取した。
得られた固体から500mgを取り分け、リサイクル分取HPLC(カラム:JAIGEL-ODS-AP-50L、移動相:水/THF)で精製し、回収分画を減圧濃縮することで、化合物2-27(178.4mg)を固体として得た。(MALDI-TOFMS:1313([M+1]+))。
【0081】
上記例示化合物(2-1)、(2-3)、(2-11)、(2-13)、(2-14)、(2-18)及び(2-20)は、いずれも、上記一般式(2A)で表される新規化合物である。
上記の合成例で得られた例示化合物(2-1)、(2-3)、(2-11)、(2-13)、(2-14)、(2-18)及び(2-20)は、以下の方法により、その構造を確認した。
<MALDI-TOFMS条件>
上記で合成した化合物を、それぞれTHFに溶解(又は分散)させ、マトリックスはジトラノールを用いて試料溶液を作成した。試料溶液を、ターゲットプレート上に乗せ、風乾後、測定を行った。
装置:Bruker社製UltrafleXtreme,
測定モード:リフレクター, Posi.&Nega
【0082】
以下、実施例に基づいて本開示を詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施例に制限されず、以下の実施例に記載された内容(例えば、原材料、条件及び方法)は本開示の目的の範囲内において適宜変更されてもよい。以下の説明において特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0083】
<実施例1~実施例8、比較例1、比較例2>
実施例1~実施例8、比較例1、比較例2は、一般式(1)で表される化合物である例示化合物1、及び一般式(2)で表される化合物である例示化合物2を、それぞれ、顔料として用いた組成物に係る実施例である。
例示化合物の構造は、既述の通りである。
比較例2で用いた比較化合物*1は、特開2003-12952号公報の段落〔0053〕〔表4〕に記載の化合物40である。
【0084】
1.顔料分散液の調製
表1に記載の種類と含有量で、例示化合物1又は比較化合物と、例示化合物2とを秤量した。例示化合物1は、一般式(1)で表される化合物であり、例示化合物2は、一般式(2)で表される化合物である。
例示化合物1及び例示化合物2と、特開2016-141792号公報に記載の[合成例1]を参照して合成した23質量部のアクリル樹脂(分散剤、平均分子量23,000)と、34質量部の5質量%水酸化ナトリウム水溶液と、7質量部のイソプロピルアルコールと、75質量部のイオン交換水と、をステンレス容器に仕込んだ。次いで、ニッカトー社製直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントコンディショナーで2時間分散することで、顔料分散液を得た。
【0085】
得られた顔料分散液と、ポリウレタン樹脂(ハイドラン(登録商標)AP-40F(DIC(株)製))及びイオン交換水を混合し、顔料含有率10質量%、ポリウレタン樹脂不揮発分含有率2質量%の水性顔料分散液を製造した。着色組成物の色素含有量は、4質量%であった。
【0086】
得られた水性顔料分散液に、下記成分を下記含有量にて混合し、各実施例及び比較例の着色組成物を得た。
(着色組成物の組成)
・顔料分散液 40質量部
・1,2-ヘキサンジオール 5質量部
・グリセリン 10質量部
・サーフィノール465(界面活性剤、エアプロダクツ・アンド・ケミカルズ社製) 1質量部
・イオン交換水 44質量部
【0087】
2.評価
2-1.経時安定性
オーブンにより45℃とした環境において、実施例1~実施例8及び比較例1、2の各着色組成物を7日間保存した。
保存前後の着色組成物1の粘度を測定し、粘度増加割合(保存後の粘度-保存前の粘度)/保存前の粘度×100を求め、下記評価基準に基づいて、評価した。
なお、各着色組成物の粘度は、東機産業製の粘度計RE85L(ローター:1°34’×R24、測定範囲0.6~1200mPa・s)を使用し、25℃に温度調整を施した状態で測定した。
(評価基準)
A:粘度増加割合が、10%以下であった。
B:粘度増加割合が、10%超であった。
なお、ここで、組成物の経時安定性が良好であることは、即ち、組成物に含まれる混合物の経時安定性が良好であることを意味する。
【0088】
2-2.耐光性
インクジェットプリンター(富士フイルム(株)製、商品名:マテリアルプリンターDMP-2850)により、実施例1~実施例8、比較例1、2の各着色組成物を用いて、OKトップコート紙(王子製紙社製)上に画像を形成した。
上記画像に、ウエザーメーター(アトラス社製、Ci65)を用いて、キセノン光(10万ルクス)を168時間照射し、キセノン光の照射後の反射濃度を、反射濃度計(エックスライト社製、商品名:X-Rite i1Pro)を用いて測定した。
なお、キセノン光の照射前の画像の反射濃度は1.0±0.2に設定した。
キセノン光の照射前後での化合物残存率(%)を下記式から算出し、下記評価基準に基づいて、評価した。なお、化合物残存率(%)が高いほど、画像に含まれるフタロシアニン化合物が耐光性に優れていることを示す。
化合物残存率(%)=(キセノン光の照射後のベタ画像の反射濃度)/(キセノン光の照射前のベタ画像の反射濃度=1.0)×100
(評価基準)
A:化合物残存率が80%以上であった。
B:化合物残存率が70%以上、80%未満であった。
C:化合物残存率が70%未満であった。
【0089】
なお、表1,表2において、「-」とは、当該成分が含まれないことを意味する。
【0090】
【0091】
表1に明らかなように、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物をと含む実施例1~実施例8の組成物(着色組成物)は、経時安定性、耐光性がいずれも良好であった。他方、一般式(1)で表される化合物のみを含み、一般式(2)で表される化合物を含まない比較例1の組成物は、経時安定性が低く、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物のいずれも含まず、公知のフタロシアニン化合物を含む比較例2は、耐光性が低かった。
【0092】
<実施例9~実施例11、比較例3、比較例4>
実施例9~実施例11、比較例3、比較例4は、上記した例示化合物1及び例示化合物2を、それぞれ、染料として用いた組成物に係る実施例である。
例示化合物の構造は、既述の通りである。
比較例2で用いた比較化合物*2は、特開2003-12952号公報の段落〔0053〕〔表4〕に記載の化合物40である。
【0093】
1.染料含有組成物の調製
以下の成分を攪拌溶解し、着色組成物を得た。
・例示化合物1 表2に記載の種類及び含有量、
・例示化合物2 表2に記載の種類及び含有量
・フタル酸ジエチル 30質量部
・アジピン酸ジイソプロピル 44質量部
・N,N-ジエチルドデカンアミド 20質量部
【0094】
2.着色組成物の評価
2-1.経時安定性
オーブンにより45℃とした環境において、実施例9~実施例11、比較例3及び比較例4の各着色組成物を7日間保存した。
保存前後の着色組成物の粘度を測定し、粘度増加割合(保存後の粘度-保存前の粘度)/保存前の粘度×100を求め、下記評価基準に基づいて、評価した。
なお、着色組成物の粘度は、東機産業製の粘度計RE85L(ローター:1°34’×R24、測定範囲0.6~1200mPa・s)を使用し、25℃に温度調整を施した状態で測定した。
(評価基準)
A:粘度増加割合が、10%以下であった。
B:粘度増加割合が、10%超であった。
【0095】
2-2.耐光性
インクジェットプリンター(富士フイルム(株)製、商品名:マテリアルプリンターDMP-2850)により、実施例10~実施例12、比較例3及び比較例4の各着色組成物を用いて、OKトップコート紙(王子製紙社製)上に画像を形成した。
上記画像に、ウエザーメーター(アトラス社製、Ci65)を用いて、キセノン光(10万ルクス)を48時間照射し、キセノン光の照射後の反射濃度を、反射濃度計(エックスライト社製、商品名:X-Rite i1Pro)を用いて測定した。なお、キセノン光の照射前の画像の反射濃度は1.0±0.2に設定した。
キセノン光の照射前後での化合物残存率(%)を下記式から算出し、下記評価基準に基づいて、評価した。なお、化合物残存率(%)が高いほど、画像に含まれるフタロシアニン化合物が耐光性に優れていることを示す。
化合物残存率(%)=(キセノン光の照射後のベタ画像の反射濃度)/(キセノン光の照射前のベタ画像の反射濃度=1.0)×100
(評価基準)
A:化合物残存率が80%以上であった。
B:化合物残存率が70%以上、80%未満であった。
C:化合物残存率が70%未満であった。
【0096】
【0097】
表2に明らかなように、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物を染料として含む実施例9~実施例11の組成物は、経時安定性、耐光性がいずれも良好であった。他方、一般式(1)で表される化合物のみを含み、一般式(2)で表される化合物を含まない比較例3の組成物は、経時安定性が低く、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物のいずれも含まず、公知のフタロシアニン化合物を含む比較例4は、耐光性が低かった。