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特開2025-154971ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法、硬化性樹脂組成物の製造方法、硬化性樹脂組成物、及びポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025154971
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法、硬化性樹脂組成物の製造方法、硬化性樹脂組成物、及びポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20251002BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
C08G73/10
C08F290/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024058292
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】小泉 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】野越 啓介
(72)【発明者】
【氏名】野崎 敦靖
【テーマコード(参考)】
4J043
4J127
【Fターム(参考)】
4J043PA02
4J043PA11
4J043PA19
4J043PB23
4J043PC085
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA05
4J043RA24
4J043SA06
4J043SB01
4J043TA22
4J043TB01
4J043UA131
4J043UA132
4J043UB121
4J043UB122
4J043XA02
4J043XA19
4J043XB09
4J043YB07
4J043YB19
4J043ZA12
4J043ZA34
4J043ZB02
4J043ZB03
4J043ZB50
4J127AA03
4J127BA041
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB221
4J127BC031
4J127BC131
4J127BD261
4J127BE241
4J127BE24Y
4J127BF451
4J127BF531
4J127BG051
4J127BG121
4J127BG171
4J127BG17Y
4J127BG251
4J127CB281
4J127CC131
4J127DA21
4J127DA25
4J127DA28
4J127EA13
4J127FA37
4J127FA41
(57)【要約】
【課題】 破断伸びに優れ、かつ、PCT特性に優れる膜を形成することができる硬化性樹脂組成物に好適に用い得るポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法を提供する。
【解決手段】明細書に記載の一般式(1)又は(2)で表されるジカルボン酸化合物に対して、硫黄元素を含まない塩素化剤を反応させて明細書に記載の一般式(1)’又は(2)’で表されるジカルボン酸塩化物を得る工程、上記ジカルボン酸塩化物にジアミンを反応させる工程、イオン交換樹脂によって処理する工程、をこの順に含む、ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)又は(2)で表されるジカルボン酸化合物に対して、硫黄元素を含まない塩素化剤を反応させて下記一般式(1)’又は(2)’で表されるジカルボン酸塩化物を得る工程、
前記ジカルボン酸塩化物にジアミンを反応させる工程、
イオン交換樹脂によって処理する工程、
をこの順に含む、ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法。
【化1】
(一般式(1)、(2)中、
は4価の有機基を表し、Yは3価の有機基を表し、Z~Zはそれぞれ独立に酸素原子、又は-NR-を表し、R~Rは、それぞれ独立に水素原子、又は1価の有機基を表し、R及びRの少なくとも1つは、エチレン性不飽和結合を有する基であり、Rは、エチレン性不飽和結合を有する基である。Rは水素原子又は1価の有機基を表し、RはR、R、又はRと結合して環を形成しても良い。)
【化2】
(一般式(1)’、(2)’において、X、Y、Z、Z、Z、R、R、及び、Rは、一般式(1)、(2)におけるX、Y、Z、Z、Z、R、R、及び、Rと同様である。)
【請求項2】
前記硫黄元素を含まない塩素化剤が、塩化オキサリル、三塩化リン、五塩化リン、及び二塩化フェニルホスホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(1)、(1)’、(2)、及び(2)’のR、R、及びRが、それぞれ独立に下記式(3)で表される基を表す、請求項1に記載のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法。
【化3】
(式(3)中、Aは(q+1)価の有機基を表し、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又は、脂肪族炭化水素基を表し、qは1~4の整数を表し、*は他の構造との結合部位を表す。)
【請求項4】
前記一般式(1)、及び(1)’の-Z-R及び-Z-Rのうちの一方が、エチレン性不飽和結合を有する基であり、他方が、下記式(4)で表される基を表す、請求項1に記載のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法。
【化4】
(式(4)中、
及びZはそれぞれ独立に、1価の有機基を表し、*は他の構造との結合部位を表す。Z及びZは結合して環を形成していても良い。)
【請求項5】
前記式(4)で表される基が下記式(5)で表される基である、請求項4に記載のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法。
【化5】
式(5)中、
Cyは窒素含有ヘテロ環又は芳香族環を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
【請求項6】
前記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体中に含まれる硫黄元素の含有量が、前記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の全質量に対して0.5質量%未満である、請求項1に記載のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法。
【請求項7】
前記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の重量平均分子量が、5,000~50,000である、請求項1に記載のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法。
【請求項8】
(1)請求項1~7のいずれか1項に記載の方法で製造される、ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体
(2)溶剤
(3)重合開始剤
を混合する硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
(1)請求項1~7のいずれか1項に記載の方法で製造される、ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体
(2)溶剤
(3)重合開始剤
を含む硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
下記一般式(11)又は(12)で表される繰り返し単位を有する、ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体であって、
前記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体中に含まれる硫黄元素の含有量が、前記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の全質量に対して5ppm未満であり、
前記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体中に含まれる塩化物イオンの含有量が、前記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の全質量に対して3ppm未満である、
ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体。
【化6】
一般式(11)、一般式(12)中、
115は4価の有機基を表し、R117は3価の有機基を表し、
~Aは、それぞれ独立に、酸素原子又は-NRz1-を表し、R111、R116は、それぞれ独立に、2価の有機基を表し、R113、R114、及びR118は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、Rz1は水素原子又は1価の有機基を表す。
113及びR114の少なくとも1つは、エチレン性不飽和結合を有する基であり、R118は、エチレン性不飽和結合を有する基である。Rz1は水素原子又は1価の有機基を表し、Rz1はR113、R114、又はR118と結合して環を形成しても良い。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法、硬化性樹脂組成物の製造方法、硬化性樹脂組成物、及びポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド、ポリアミドイミドなどの樹脂は、様々な分野で活用されている。これらの樹脂は、例えば、半導体デバイスや航空宇宙分野などで活用されている。
【0003】
特許文献1には、ポリイミド前駆体を含有する樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/52885号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、樹脂を含む組成物(樹脂組成物)を用いて形成した膜を半導体デバイスなどに用いる場合、上記膜には、破断伸びに優れることが求められる傾向がある。また、電子機器関連の環境系信頼性試験の試験方法として、プレッシャークッカー試験(PCT: Pressure Cooker Test)が知られているが、かかる試験において配線の腐食や、樹脂膜に異常、異物が発生し難い(「PCT特性」に優れるともいう)ことが求められる。すなわち、破断伸びに優れ、かつ、PCT特性に優れる膜を形成することができる樹脂組成物が求められる。
【0006】
本発明は、破断伸びに優れ、かつ、PCT特性に優れる膜を形成することができる硬化性樹脂組成物に好適に用い得るポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法を含む硬化性樹脂組成物の製造方法、硬化性樹脂組成物、及びポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の代表的な実施態様の例を以下に示す。
【0008】
[1]
下記一般式(1)又は(2)で表されるジカルボン酸化合物に対して、硫黄元素を含まない塩素化剤を反応させて下記一般式(1)’又は(2)’で表されるジカルボン酸塩化物を得る工程、
上記ジカルボン酸塩化物にジアミンを反応させる工程、
イオン交換樹脂によって処理する工程、
をこの順に含む、ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法。
【0009】
【化1】
【0010】
(一般式(1)、(2)中、
は4価の有機基を表し、Yは3価の有機基を表し、Z~Zはそれぞれ独立に酸素原子、又は-NR-を表し、R~Rは、それぞれ独立に水素原子、又は1価の有機基を表し、R及びRの少なくとも1つは、エチレン性不飽和結合を有する基であり、Rは、エチレン性不飽和結合を有する基である。Rは水素原子又は1価の有機基を表し、RはR、R、又はRと結合して環を形成しても良い。)
【0011】
【化2】
【0012】
(一般式(1)’、(2)’において、X、Y、Z、Z、Z、R、R、及び、Rは、一般式(1)、(2)におけるX、Y、Z、Z、Z、R、R、及び、Rと同様である。)
【0013】
[2]
上記硫黄元素を含まない塩素化剤が、塩化オキサリル、三塩化リン、五塩化リン、及び二塩化フェニルホスホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1つである、[1]に記載のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法。
[3]
上記一般式(1)、(1)’、(2)、及び(2)’のR、R、及びRが、それぞれ独立に下記式(3)で表される基を表す、[1]又は[2]に記載のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法。
【0014】
【化3】
【0015】
(式(3)中、Aは(q+1)価の有機基を表し、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又は、脂肪族炭化水素基を表し、qは1~4の整数を表し、*は他の構造との結合部位を表す。)
【0016】
[4]
上記一般式(1)、及び(1)’の-Z-R及び-Z-Rのうちの一方が、エチレン性不飽和結合を有する基であり、他方が、下記式(4)で表される基を表す、[1]~[3]のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法。
【0017】
【化4】
【0018】
(式(4)中、
及びZはそれぞれ独立に、1価の有機基を表し、*は他の構造との結合部位を表す。Z及びZは結合して環を形成していても良い。)
【0019】
[5]
上記式(4)で表される基が下記式(5)で表される基である、[4]に記載のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法。
【0020】
【化5】
【0021】
式(5)中、
Cyは窒素含有ヘテロ環又は芳香族環を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
【0022】
[6]
上記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体中に含まれる硫黄元素の含有量が、上記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の全質量に対して0.5質量%未満である、[1]~[5]のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法。
[7]
上記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の重量平均分子量が、5,000~50,000である、[1]~[6]のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法。
【0023】
[8]
(1)[1]~[7]のいずれか1項に記載の方法で製造される、ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体
(2)溶剤
(3)重合開始剤
を混合する硬化性樹脂組成物の製造方法。
【0024】
[9]
(1)[1]~[7]のいずれか1項に記載の方法で製造される、ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体
(2)溶剤
(3)重合開始剤
を含む硬化性樹脂組成物。
[10]
下記一般式(11)又は(12)で表される繰り返し単位を有する、ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体であって、
上記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体中に含まれる硫黄元素の含有量が、上記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の全質量に対して5ppm未満であり、
上記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体中に含まれる塩化物イオンの含有量が、上記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の全質量に対して3ppm未満である、
ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体。
【0025】
【化6】
【0026】
一般式(11)、一般式(12)中、
115は4価の有機基を表し、R117は3価の有機基を表し、
~Aは、それぞれ独立に、酸素原子又は-NRz1-を表し、R111、R116は、それぞれ独立に、2価の有機基を表し、R113、R114、及びR118は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、Rz1は水素原子又は1価の有機基を表す。
113及びR114の少なくとも1つは、エチレン性不飽和結合を有する基であり、R118は、エチレン性不飽和結合を有する基である。Rz1は水素原子又は1価の有機基を表し、Rz1はR113、R114、又はR118と結合して環を形成しても良い。)
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、破断伸びに優れ、かつ、PCT特性に優れる膜を形成することができる硬化性樹脂組成物に好適に用い得るポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法を含む硬化性樹脂組成物の製造方法、硬化性樹脂組成物、及びポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の主要な実施形態について説明する。しかしながら、本発明は、明示した実施形態に限られるものではない。
本明細書において「~」という記号を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、その工程の所期の作用が達成できる限りにおいて、他の工程と明確に区別できない工程も含む意味である。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有しない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた露光も含む。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV:Extreme Ultraviolet)、X線、電子線等の活性光線又は放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方、又は、いずれかを意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」の両方、又は、いずれかを意味し、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方、又は、いずれかを意味する。
本明細書において、構造式中のMeはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。また本明細書において、固形分濃度とは、組成物の総質量に対する、溶剤を除く他の成分の質量百分率である。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に述べない限り、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法を用いて測定した値であり、ポリスチレン換算値として定義される。本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC-8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてガードカラムHZ-L、TSKgel Super HZM-M、TSKgel Super HZ4000、TSKgel Super HZ3000、及び、TSKgel Super HZ2000(以上、東ソー(株)製)を直列に連結して用いることによって求めることができる。それらの分子量は特に述べない限り、溶離液としてNMP(N-メチル-2-ピロリドン)を用いて測定したものとする。ただし、溶解性が低い場合など、溶離液としてNMPが適していない場合にはTHF(テトラヒドロフラン)を用いることもできる。また、GPC測定における検出は特に述べない限り、UV線(紫外線)の波長254nm検出器を使用したものとする。
本明細書において、積層体を構成する各層の位置関係について、「上」又は「下」と記載したときには、注目している複数の層のうち基準となる層の上側又は下側に他の層があればよい。すなわち、基準となる層と上記他の層の間に、更に第3の層や要素が介在していてもよく、基準となる層と上記他の層は接している必要はない。特に断らない限り、基材に対し層が積み重なっていく方向を「上」と称し、又は、樹脂組成物層(「樹脂層」という場合もある。)がある場合には、基材から樹脂組成物層へ向かう方向を「上」と称し、その反対方向を「下」と称する。なお、このような上下方向の設定は、本明細書中における便宜のためであり、実際の態様においては、本明細書における「上」方向は、鉛直上向きと異なることもありうる。
本明細書において、特段の記載がない限り、組成物は、組成物に含まれる各成分として、その成分に該当する2種以上の化合物を含んでもよい。また、特段の記載がない限り、組成物における各成分の含有量とは、その成分に該当する全ての化合物の合計含有量を意味する。
本明細書において、特に述べない限り、温度は23℃、気圧は101,325Pa(1気圧)、相対湿度は50%RHである。
本明細書における「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0029】
[ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法]
まず、本発明のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法について説明する。
本発明のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法は、
下記一般式(1)又は(2)で表されるジカルボン酸化合物に対して、硫黄元素を含まない塩素化剤を反応させて下記一般式(1)’又は(2)’で表されるジカルボン酸塩化物を得る工程、
上記ジカルボン酸塩化物にジアミンを反応させる工程、
イオン交換樹脂によって処理する工程、
をこの順に含む、ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法である。
【0030】
【化7】
【0031】
(一般式(1)、(2)中、
は4価の有機基を表し、Yは3価の有機基を表し、Z~Zはそれぞれ独立に酸素原子、又は-NR-を表し、R~Rは、それぞれ独立に水素原子、又は1価の有機基を表し、R及びRの少なくとも1つは、エチレン性不飽和結合を有する基であり、Rは、エチレン性不飽和結合を有する基である。Rは水素原子又は1価の有機基を表し、RはR、R、又はRと結合して環を形成しても良い。)
【0032】
【化8】
【0033】
(一般式(1)’、(2)’において、X、Y、Z、Z、Z、R、R、及び、Rは、一般式(1)、(2)におけるX、Y、Z、Z、Z、R、R、及び、Rと同様である。)
【0034】
本発明のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法により得られる樹脂を硬化性樹脂組成物に適用した場合に、破断伸びに優れ、かつ、PCT特性に優れる膜を形成することができるという効果を奏する。本発明により上記効果が得られるメカニズムは明らかになっていないが、本発明者は以下のように推定している。ただし、本発明は以下の推定メカニズムによって何ら制限されない。
硬化性樹脂組成物に使用される樹脂(ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体)中の不純物が残存することにより上記効果に影響を及すことがある。本発明者らは、樹脂中の中でも硫黄原子、塩素原子(塩化物イオン)の含有量を低減させることに着目した。
本発明のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法において、上記一般式(1)又は(2)で表されるジカルボン酸化合物に対して、硫黄元素を含まない塩素化剤を反応させて上記一般式(1)’又は(2)’で表されるジカルボン酸塩化物を得ている。一般的に、ジカルボン酸化合物の活性化において塩化チオニルを用いられている。このように塩化チオニルを用いると、副生成物として硫黄原子を含む酸性不純物、及び極性の高い副生成物が生成され易い。
本発明では、塩化チオニルに代えて、硫黄元素を含まない塩素化剤を用いることにより、硫黄元素を有する上記のような不純物、及び副生成物の産出を抑制することができる。
また、本発明のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法は、上記ジカルボン酸塩化物にジアミンを反応させる工程とともに、イオン交換樹脂によって処理する工程を有している。イオン交換樹脂によって処理することにより、反応系に残存する塩化物イオンを低減させることが可能となる。
上述のように、硫黄元素を有する不純物、及び副生成物の産出を抑制することができ、さらに反応系に残存する塩化物イオンを低減させることができるため、異物の発生を抑制でき、上記の製造方法により得られる樹脂を硬化性樹脂組成物に適用した場合に、PCT特性に優れる膜を形成することができると考えられる。
また、上述のように、硫黄元素を有する不純物、及び副生成物の産出を抑制することにより、硬化膜中での不必要な架橋反応を抑制することができるため、上記の製造方法により得られる樹脂を硬化性樹脂組成物に適用した場合に、破断伸びに優れる膜を形成することができると考えられる。
このように得られるポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体において、硫黄元素及び塩化物イオンを低減させることができ、上記の製造方法により得られる樹脂を硬化性樹脂組成物に適用した場合に、破断伸びに優れ、かつ、PCT特性に優れる膜を形成することができると考えられる。
【0035】
本発明のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法に含まれる各工程について詳細に説明する。
[一般式(1)又は(2)で表されるジカルボン酸化合物に対して、硫黄元素を含まない塩素化剤を反応させて下記一般式(1)’又は(2)’で表されるジカルボン酸塩化物を得る工程](「工程1」ともいう)
一般式(1)、(2)中、Xは4価の有機基を表し、Yは3価の有機基を表し、Z~Zはそれぞれ独立に酸素原子、又は-NR-を表し、R~Rは、それぞれ独立に水素原子、又は1価の有機基を表し、R及びRの少なくとも1つは、エチレン性不飽和結合を有するであり、Rは、エチレン性不飽和結合を有する基である。Rは水素原子又は1価の有機基を表し、RはR、R、又はRと結合して環を形成しても良い。
【0036】
~Zは、それぞれ独立に、酸素原子又は-NR-を表し、酸素原子が好ましい。
は水素原子又は1価の有機基を表す。
1価の有機基としては、後述のR~Rの1価の有機基を挙げることができ、好ましい範囲も同様である。
はR、R、又はRと結合して環を形成しても良い。形成される環は特に限定されず、単環であっても良く、多環であっても良い。また芳香環であっても、非芳香族環(例えば非芳香族ヘテロ環であても良い。)
【0037】
は、4価の有機基を表す。4価の有機基としては、芳香環を含む4価の有機基が好ましく、下記式(5)又は式(6)で表される基がより好ましい。
式(5)又は式(6)中、*はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表す。
【0038】
【化9】
【0039】
式(5)中、R112は単結合又は2価の連結基であり、単結合、又は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-CO-、及び-NHCO-、ならびに、これらの組み合わせから選択される基であることが好ましく、単結合、または、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキレン基、-O-、及び-CO-から選択される基であることがより好ましく、-CH-、-C(CF-、-C(CH-、-O-、及び-CO-からなる群より選択される2価の基であることが更に好ましい。
【0040】
は、具体的には、テトラカルボン酸二無水物から無水物基の除去後に残存するテトラカルボン酸残基などが挙げられる。一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物は、Xに該当する構造として、テトラカルボン酸二無水物残基を、1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
テトラカルボン酸二無水物は、下記式(O)で表されることが好ましい。
【0041】
【化10】
【0042】
式(O)中、R115は、4価の有機基を表す。R115の好ましい範囲は一般式(1)におけるXと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0043】
テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3-ジフェニルヘキサフルオロプロパン-3,3,4,4-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,8,9,10-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ならびに、これらの炭素数1~6のアルキル及び炭素数1~6のアルコキシ誘導体が挙げられる。
【0044】
また、国際公開第2017/038598号の段落0038に記載のテトラカルボン酸二無水物(DAA-1)~(DAA-5)も好ましい例として挙げられる。
【0045】
~Rは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。1価の有機基としては、アルキル基(直鎖、分岐、又は環状)、アルケニル基(直鎖又は分岐)、芳香族基、又はポリアルキレンオキシ基を含むことが好ましい。
1価の有機基の炭素数は特に限定されないが、例えば1~30である。
また、R及びRの少なくとも1つがエチレン性不飽和結合を有する基を有し、両方がエチレン性不飽和結合を有する基を有することがより好ましい。R及びRの少なくとも一方が2以上のエチレン性不飽和結合を有する基を有することも好ましい。
はエチレン性不飽和結合を有する基を有する。Rが2以上のエチレン性不飽和結合を有する基を有することも好ましい。
エチレン性不飽和結合を有する基は、重合性基であり、ラジカル重合性基である、
エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、アリル基、イソアリル基、2-メチルアリル基、ビニル基と直接結合した芳香環を有する基(例えば、ビニルフェニル基など)、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロイルオキシ基、下記式(3)で表される基などが挙げられ、下記式(3)で表される基が好ましい。
【0046】
【化11】
【0047】
式(3)中、Aは(q+1)価の有機基を表し、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又は、脂肪族炭化水素基を表し、qは1~4の整数を表す。*は他の構造との結合部位を表す。
【0048】
Aは、(q+1)価の有機基を表す。qが1の場合の2価の連結基について以下に記載する。
2価の連結基としては、炭素数2~12のアルキレン基、-CHCH(OH)CH-、シクロアルキレン基又はポリアルキレンオキシ基を表す。
2価の連結基の例は、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、ドデカメチレン基等のアルキレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基、-CHCH(OH)CH-、ポリアルキレンオキシ基が挙げられ、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基、-CHCH(OH)CH-、シクロヘキシル基、ポリアルキレンオキシ基がより好ましく、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基、又はポリアルキレンオキシ基が更に好ましい。
(q+1)価の有機基(qが2以上)は、2価の連結基から(q-1)個の水素原子を除いてなる基である。
【0049】
qは1~4の整数を表し、1~2の整数を表すことが好ましく、1を表すことがより好ましい。
【0050】
本発明において、ポリアルキレンオキシ基とは、アルキレンオキシ基が2以上直接結合した基をいう。ポリアルキレンオキシ基に含まれる複数のアルキレンオキシ基におけるアルキレン基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
ポリアルキレンオキシ基が、アルキレン基が異なる複数種のアルキレンオキシ基を含む場合、ポリアルキレンオキシ基におけるアルキレンオキシ基の配列は、ランダムな配列であってもよいし、ブロックを有する配列であってもよいし、交互等のパターンを有する配列であってもよい。
上記アルキレン基の炭素数(アルキレン基が置換基を有する場合、置換基の炭素数を含む)は、2以上であることが好ましく、2~10であることがより好ましく、2~6であることがより好ましく、2~5であることが更に好ましく、2~4であることが一層好ましく、2又は3であることがより更に好ましく、2であることが特に好ましい。
また、上記アルキレン基は、置換基を有していてもよい。好ましい置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。
また、ポリアルキレンオキシ基に含まれるアルキレンオキシ基の数(ポリアルキレンオキシ基の繰り返し数)は、2~20が好ましく、2~10がより好ましく、2~6が更に好ましい。
ポリアルキレンオキシ基としては、溶剤溶解性及び耐溶剤性の観点からは、ポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、ポリトリメチレンオキシ基、ポリテトラメチレンオキシ基、又は、複数のエチレンオキシ基と複数のプロピレンオキシ基とが結合した基が好ましく、ポリエチレンオキシ基又はポリプロピレンオキシ基がより好ましく、ポリエチレンオキシ基が更に好ましい。上記複数のエチレンオキシ基と複数のプロピレンオキシ基とが結合した基において、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基とはランダムに配列していてもよいし、ブロックを形成して配列していてもよいし、交互等のパターン状に配列していてもよい。これらの基におけるエチレンオキシ基等の繰り返し数の好ましい態様は上述の通りである。
【0051】
及びRの少なくとも一つが、酸分解性基等の極性変換基であってもよい。酸分解性基としては、酸の作用で分解して、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基等のアルカリ可溶性基を生じるものであれば特に限定されないが、アセタール基、ケタール基、シリル基、シリルエーテル基、第三級アルキルエステル基等が好ましく、露光感度の観点からは、アセタール基又はケタール基がより好ましい。
酸分解性基の具体例としては、tert-ブトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、エトキシエチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、トリメチルシリル基、tert-ブトキシカルボニルメチル基、トリメチルシリルエーテル基などが挙げられる。露光感度の観点からは、エトキシエチル基、又は、テトラヒドロフラニル基が好ましい。
~Rの脂肪族炭化水素基は特に限定されないが、例えばアルキル基を挙げることができる。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基を挙げることができる。
脂肪族炭化水素基の炭素数は特に限定されないが、例えば、炭素数1~10が好ましく、炭素数1~6がより好ましく、炭素数1~3はさらに好ましい。脂肪族炭化水素基はさらに置換基を有していても良い。
~Rは、水素原子又は脂肪族炭化水素基を表すことが好ましい。
【0052】
上記一般式(1)の-Z-R、-Z-Rの少なくとも1つは、下記式(4)で表される基を表すことが好ましい。
【0053】
【化12】
【0054】
(式(4)中、
及びZはそれぞれ独立に、1価の有機基を表し、*は他の構造との結合部位を表す。Z及びZは結合して環を形成していても良い。)
【0055】
及びZの1価の有機基は、1価の有機基としては、上述のR、Rの1価の有機基を挙げることができ、好ましい範囲も同様である。
及びZの1価の有機基は、アルキル基、又はアルケニル基であることが好ましい。
アルキル基は、直鎖状、分岐上、又は環状であっても良い。アルキル基の炭素数は特に限定されないが、1~20であることが好ましく、1~12であることがより好ましい。
アルケニル基は、直鎖状、又は分岐上であっても良い。アルケニル基の炭素数は特に限定されないが、2~20であることが好ましく、2~12であることがより好ましい。
及びZは結合して環を形成していても良い。形成される環は特に限定されず、単環であっても良く、多環であっても良い。また芳香環であっても、非芳香族環(例えば非芳香族ヘテロ環であても良い。)
【0056】
上記式(4)で表される基は下記式(5)で表される基であることが好ましい。
【0057】
【化13】
【0058】
式(5)中、
Cyは窒素含有ヘテロ環又は芳香族環を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
【0059】
Cyの窒素含有ヘテロ環は単環であっても多環であってもよい。窒素含有ヘテロ環における炭素数は特に限定されないが、例えば3~20であり、好ましくは3~15であり、より好ましくは3~10である。
窒素含有ヘテロ環は、窒素(窒素原子)以外のヘテロ原子を有していても良い。
窒素含有ヘテロ環としては、例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環等を挙げることができる。
Cyの芳香族環は単環であっても多環であってもよい。芳香族環における炭素数は特に限定されないが、例えば5~20であり、好ましくは5~15であり、より好ましくは5~10である。
芳香族環としては、例えば、ピリジン環、インドール環等を挙げることができる。
【0060】
一般式(2)中、Yは、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族基、環状の脂肪族基、及び芳香族基、複素芳香族基、又は単結合若しくは連結基によりこれらを2以上連結した基が例示され、炭素数2~20の直鎖の脂肪族基、炭素数3~20の分岐の脂肪族基、炭素数3~20の環状の脂肪族基、炭素数6~20の芳香族基、又は、単結合若しくは連結基によりこれらを2以上組み合わせた基が好ましく、炭素数6~20の芳香族基、又は、単結合若しくは連結基により炭素数6~20の芳香族基を2以上組み合わせた基がより好ましい。
上記連結基としては、-O-、-C(=O)-、アルキレン基、アリーレン基、又はこれらを2以上結合した連結基が好ましく、-O-、アルキレン基、アリーレン基、又はこれらを2以上結合した連結基がより好ましい。
上記アルキレン基としては、炭素数1~20のアルキレン基が好ましく、炭素数1~10のアルキレン基がより好ましく、炭素数1~4のアルキレン基が更に好ましい。
上記アリーレン基としては、フェニレン基又はナフチレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましく、1,3-フェニレン基又は1,4-フェニレン基が更に好ましい。
【0061】
また、Yは少なくとも1つのカルボキシ基がハロゲン化されていてもよいトリカルボン酸化合物から誘導されることが好ましい。上記ハロゲン化としては、塩素化が好ましい。
本発明において、カルボキシ基を3つ有する化合物をトリカルボン酸化合物という。
上記トリカルボン酸化合物の3つのカルボキシ基のうち2つのカルボキシ基は酸無水物化されていてもよい。
これらのトリカルボン酸化合物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
【0062】
具体的には、トリカルボン酸化合物としては、炭素数2~20の直鎖の脂肪族基、炭素数3~20の分岐の脂肪族基、炭素数3~20の環状の脂肪族基、炭素数6~20の芳香族基、又は、単結合若しくは連結基によりこれらを2以上組み合わせた基を含むトリカルボン酸化合物が好ましく、炭素数6~20の芳香族基、又は、単結合若しくは連結基により炭素数6~20の芳香族基を2以上組み合わせた基を含むトリカルボン酸化合物がより好ましい。
【0063】
また、トリカルボン酸化合物の具体例としては、1,2,3-プロパントリカルボン酸、1,3,5-ペンタントリカルボン酸、クエン酸、トリメリット酸、2,3,6-ナフタレントリカルボン酸、フタル酸(又は、無水フタル酸)と安息香酸とが単結合、-O-、-CH-、-C(CH-、-C(CF-、又はフェニレン基で連結された化合物等が挙げられる。
これらの化合物は、2つのカルボキシ基が無水物化した化合物(例えば、トリメリット酸無水物)であってもよいし、少なくとも1つのカルボキシ基がハロゲン化した化合物(例えば、無水トリメリット酸クロリド)であってもよい。
【0064】
一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物の合成方法は特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。また、テトラカルボン酸二無水物から無水物基の除去することにより得ることもできる。テトラカルボン酸二無水物から無水物基の除去する方法は特に限定されず、公知の方法を使用することができる。
一般式(2)で表されるジカルボン酸化合物の合成方法は特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。また、トリカルボン酸化合物から誘導することにより得ることもできる。トリカルボン酸化合物の3つのカルボキシ基のうち2つのカルボキシ基は酸無水物化されるものも用いることができる。
【0065】
一般式(1)又は(2)で表されるジカルボン酸化合物は、1種で用いても良く、2種以上でも用いても良い。
好ましい一態様として、一般式(1)で表されるジカルボン酸化合物は1種で用いても良く、2種以上で用いても良い。
また、好ましい一態様として、一般式(2)で表されるジカルボン酸化合物は1種で用いても良く、2種以上で用いても良い。
【0066】
硫黄元素を含まない塩素化剤(以下、「塩素化剤A」ともいう)は、特に限定されないが、塩化オキサリル、三塩化リン、五塩化リン、及び二塩化フェニルホスホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
塩素化剤Aの使用量は、一般式(1)又は(2)で表されるジカルボン酸化合物1モル(複数有する場合は総量)に対して、1.00~3.00倍モルが好ましく、1.01~1.50倍モルがより好ましく、1.02~1.04倍モルがさらに好ましい。
【0067】
工程1は、溶剤存在下で行うことが好ましい。有機溶剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。
有機溶剤としては、原料に応じて適宜定めることができるが、ピリジン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム、又はダイグライムともいう)、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、プロピオン酸エチル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等が例示される。
【0068】
一般式(1)又は(2)で表されるジカルボン酸化合物と塩素化剤Aを反応させる温度は、特に限定されないが、例えば、-10~10℃が挙げられる。
また、反応時間は特に限定されないが、例えば、0.5~4時間が挙げられる。
上記温度で反応させた後に、必要に応じて更に加熱して、反応容器を攪拌させても良い。
更に加熱する温度は、例えば、10~60℃が挙げられ、攪拌時間は、例えば、1~4時間が挙げられる。
【0069】
工程1により、上記一般式(1)’又は(2)’で表されるジカルボン酸塩化物を得られる。
一般式(1)’、(2)’において、X、Y、Z、Z、Z、R、R、及びRは、一般式(1)、(2)におけるX、Y、Z、Z、Z、R、R、及びRと同様である。
【0070】
上記一般式(1)、(1)’、(2)、及び(2)’のR、R、及びRは、それぞれ独立に上記式(3)で表される基を表すことが好ましい。
上記一般式(1)、及び(1)’の-Z-R及び-Z-Rのうちの一方が、エチレン性不飽和結合を有する基であり、他方が、上記式(4)で表される基を表すことが好ましい。
【0071】
[ジカルボン酸塩化物にジアミンを反応させる工程(以下、「工程2」ともいう)]
ジカルボン酸塩化物は上述の通りである。
ジアミンは、特に限定されないが、例えば、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン又は1,6-ジアミノヘキサン;
1,2-又は1,3-ジアミノシクロペンタン、1,2-、1,3-又は1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,2-、1,3-又は1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス-(3-アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルシクロヘキシルメタン及びイソホロンジアミン;
m-又はp-フェニレンジアミン、ジアミノトルエン、4,4’-又は3,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(「4,4’-オキシジアニリン」ともいう)、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-又は3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-又は3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-又は3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-又は3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノパラテルフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)-10-ヒドロアントラセン、3,3’,4,4’-テトラアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルエーテル、1,4-ジアミノアントラキノン、1,5-ジアミノアントラキノン、3,3-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,4-及び2,5-ジアミノクメン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、アセトグアナミン、2,3,5,6-テトラメチル-p-フェニレンジアミン、2,4,6-トリメチル-m-フェニレンジアミン、ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p-アミノフェニル)オクタメチルペンタシロキサン、2,7-ジアミノフルオレン、2,5-ジアミノピリジン、1,2-ビス(4-アミノフェニル)エタン、ジアミノベンズアニリド、ジアミノ安息香酸のエステル、1,5-ジアミノナフタレン、ジアミノベンゾトリフルオライド、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)オクタフルオロブタン、1,5-ビス(4-アミノフェニル)デカフルオロペンタン、1,7-ビス(4-アミノフェニル)テトラデカフルオロヘプタン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(2-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、p-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノ-3-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノ-3-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2’,5,5’,6,6’-ヘキサフルオロトリジン及び4,4’-ジアミノクアテルフェニルから選ばれる少なくとも1種のジアミンが挙げられる。
【0072】
また、国際公開第2017/038598号の段落0030~0031に記載のジアミン(DA-1)~(DA-18)も好ましい。
【0073】
また、国際公開第2017/038598号の段落0032~0034に記載の2つ以上のアルキレングリコール単位を主鎖にもつジアミンも好ましく用いられる。
【0074】
ジアミンの使用量は、ジカルボン酸塩化物1モル(複数有する場合は総量)に対して、0.7~1.1倍モルが好ましく、0.8~1.0倍モルがより好ましく、0.85~0.95倍モルがさらに好ましい。
【0075】
工程2は、溶剤存在下で行うことが好ましい。有機溶剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。
有機溶剤としては、原料に応じて適宜定めることができるが、上記工程1に記載の有機溶剤を挙げることができる。
【0076】
ジカルボン酸塩化物とジアミンを反応させる温度は、特に限定されないが、例えば、-10~10℃が挙げられる。
また、反応時間は特に限定されないが、例えば、0.5~6時間が挙げられる。
上記温度で反応させた後に、必要に応じて更に加熱して、反応容器を攪拌させても良い。
更に加熱する温度は、例えば、10~60℃が挙げられ、攪拌時間は、例えば、1~6時間が挙げられる。
【0077】
工程2では、反応に際し、塩基性化合物を添加することが好ましい。塩基性化合物は1種でもよいし、2種以上でもよい。
塩基性化合物は、原料に応じて適宜定めることができるが、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、N-メチルモルホリン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン等が例示される。
本発明のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法は、工程2の後に、固体を析出する工程を含んでいてもよい。具体的には、反応液を必要に応じて濾別した後、水、脂肪族低級アルコール、又はその混合液等の貧溶媒に、得られた重合体成分を投入し、重合体成分を析出させることで、固体として析出させ、乾燥させることで前駆体を得ることができる。精製度を向上させるために、前駆体等を再溶解、再沈析出、乾燥等の操作を繰返してもよい。
【0078】
[イオン交換樹脂によって処理する工程(「工程3」ともいう)]
工程3は、具体的には、工程2における反応系(溶液)中に、イオン交換樹脂を添加する工程を表す。
また、工程2に更に上記析出工程を行い得られた前駆体を溶剤にて溶解させて、得られる溶液にイオン交換樹脂を添加していても良い。
溶剤は特に限定されないが、上記工程1における溶剤、テトラヒドロフラン(THF)等を用いることができる。イオン交換樹脂により処理することにより、前駆体中の塩化物イオンの量を低減させることができる。
【0079】
イオン交換樹脂は、特に限定されないが、両性イオン交換樹脂、又は陰イオン交換樹脂を用いることができる。
両性イオン交換樹脂は、例えば、MB-1、MB-2、MB-4、EG-4A-HG、EG-5A-HG、ESP-1、ESP-2(全て、オルガノ株式会社製)を挙げることができる。
陰イオン交換樹脂は、例えば、アンバーリストTM B20-HG・DRY、アンバーリストA21、アンバーリストHPR4780、アンバーリストIRA67、アンバーリストIRA96SB、アンバーリストIRA98、AMBERJETTMUP6040、アンバージェットシリーズ(全て、オルガノ株式会社製)、ダイヤイオンTMシリーズ(三菱化学株式会社製)、ReliteTM JA450(三菱化学株式会社製)、アンバーライト IRA96SB(オルガノ株式会社製)を挙げることができる。
【0080】
下記に記載のオルガノ株式会社製の製品も使用することができる。
https://ier.organo.co.jp/product/material.html#product1
【0081】
また、下記に記載の三菱化学株式会社製の製品も使用することができる。
https://www.m-chemical.co.jp/products/departments/mcc/ion/product/1200472_7274.html
【0082】
イオン交換樹脂の使用量は特に限定されず、適宜選択することができる。
イオン交換樹脂の使用量は、得られる樹脂の収量と同量以上が好ましい。
【0083】
本発明のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法は、工程3の後に、固体を析出する工程を含んでいてもよい。具体的には、反応液中に共存しているイオン交換樹脂を濾別した後、水、脂肪族低級アルコール、又はその混合液等の貧溶媒に、得られた重合体成分を投入し、重合体成分を析出させることで、固体として析出させ、乾燥させることでポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体を得ることができる。精製度を向上させるために、ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体等を再溶解、再沈析出、乾燥等の操作を繰返してもよい。
【0084】
工程3により、反応系に存在する塩化物イオンを低減させることができる。
ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体における塩化物イオン量は、ハロゲンフリーの観点で900ppm以下が好ましく、腐食防止の観点から100ppm以下がより好ましく、10ppm以下がさらに好ましく、3ppm未満が特に好ましい。
【0085】
上記前駆体における塩化物イオン量は、以下のように、残存塩素元素量として測定した。
【0086】
[燃焼イオンクロマトグラフィーによる樹脂(前駆体)中の残存塩素元素量の定量]
試料約50mgを試料ボードに乗性、重量測定後以下の条件で燃焼イオンクログラフィーによる測定を行った。
試料燃焼温度:900℃(inlet)/1000℃(outlet)
吸収液条件:約0.01% Haq. +2ppm KHPO aq. (内部標準)
吸収液量:5mL
カラム:Dionex IonPac AS22
溶離液:4.5mmol/L NaCO + 1.4mmol/L NaHCO
流量:1.2mL/min
カラム温度:35℃
吸収液注入量:100uL
濃度補正:定容チェック
測定は2回実施し、各試料中の塩素元素量を定量して、平均値を用いた。
【0087】
ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)は、2,000~500,000が好ましく、5,000~100,000がより好ましく、5,000~50,000がより好ましく、10,000~50,000が更に好ましい。また、数平均分子量(Mn)は、800~250,000が好ましく、2,000~50,000がより好ましく、4,000~25,000が更に好ましい。
ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の分子量の分散度は、1.5以上が好ましく、1.8以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましい。ポリアミドイミド前駆体の分子量の分散度の上限値は特に定めるものではないが、例えば、7.0以下が好ましく、6.5以下がより好ましく、6.0以下が更に好ましい。
【0088】
ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体中に含まれる硫黄元素の含有量が、上記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の全質量に対して0.5質量%未満であることが好ましい。
【0089】
上記前駆体における硫黄元素の含有量は、以下のように測定した。
【0090】
[燃焼イオンクロマトグラフィーによる樹脂(前駆体)中の硫黄元素の定量]
試料約50mgを試料ボードに乗性、重量測定後以下の条件で燃焼イオンクログラフィーによる測定を行った。
試料燃焼温度:900℃(inlet)/1000℃(outlet)
吸収液条件:約0.01% Haq. +2ppm KHPO aq. (内部標準)
吸収液量:5mL
カラム:Dionex IonPac AS22
溶離液:4.5mmol/L NaCO + 1.4mmol/L NaHCO
流量:1.2mL/min
カラム温度:35℃
吸収液注入量:100uL
濃度補正:定容チェック
測定は2回実施し、各試料中の硫黄元素量を定量して、平均値を用いた。
【0091】
ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体中に含まれる硫黄元素の含有量は、金属配線の腐食防止の観点から100ppm以下がより好ましく、10ppm以下がさらに好ましく、5ppm未満が特に好ましい。
【0092】
本発明は、以下の硬化性樹脂組成物の製造方法に関する。
(1)上記のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法により製造される、ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体
(2)溶剤
(3)重合開始剤
を混合する硬化性樹脂組成物の製造方法。
(1)上記のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法により製造される、ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体(以下、「特定樹脂」ともいう)は上述の通りである。
(2)溶剤、(3)重合開始剤については後述する。
(1)特定樹脂、(2)溶剤、及び(3)重合開始剤を混合する方法は特に限定されない。また、(1)特定樹脂、(2)溶剤、及び(3)重合開始剤に加えて、必要により後述の成分を混合しても良い。
【0093】
本発明は、以下の硬化性樹脂組成物に関する。
(1)上記のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法により製造される、ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体
(2)溶剤
(3)重合開始剤
を含む硬化性樹脂組成物。
【0094】
(1)上記のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法により製造される、ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体(以下、「特定樹脂」、「樹脂(1)」ともいう)は上述の通りである。
(2)溶剤、(3)重合開始剤については後述する。
【0095】
好ましい一態様として、特定樹脂は、後述の一般式(11)又は(12)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0096】
好ましい一態様として、特定樹脂は、後述の一般式(11)又は(12)で表される繰り返し単位を有する、ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体であって、
上記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体中に含まれる硫黄元素の含有量が、上記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の全質量に対して5ppm未満であり、
上記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体中に含まれる塩化物イオンの含有量が、上記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の全質量に対して3ppm未満である、
ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体であることが好ましい。
上記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体中に含まれる硫黄元素の含有量の測定方法、及び上記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体中に含まれる塩化物イオンの含有量の測定方法は、それぞれ上述の通りである。
【0097】
なお、上記の硬化性樹脂組成物の製造方法における硬化性樹脂組成物、及び上記の(1)特定樹脂、(2)溶剤、及び(3)重合開始剤を含む硬化性樹脂組成物を纏めて、「本発明の硬化性樹脂組成物」、又は「本発明の樹脂組成物」ともいう。
【0098】
ポリイミド前駆体とは、外部刺激により化学構造の変化を生じてポリイミドとなる樹脂をいい、熱により化学構造の変化を生じてポリイミドとなる樹脂が好ましく、熱により閉環反応を生じて環構造が形成されることによりポリイミドとなる樹脂がより好ましい。
なお、本発明の樹脂組成物中のポリイミド前駆体から生じたポリイミドは、有機溶剤を主成分とする現像液に対して不溶であることが好ましい。
ポリアミドイミド前駆体とは、外部刺激により化学構造の変化を生じてポリアミドイミドとなる樹脂をいい、熱により化学構造の変化を生じてポリアミドイミドとなる樹脂が好ましく、熱により閉環反応を生じて環構造が形成されることによりポリアミドイミドとなる樹脂がより好ましい。
なお、本発明の樹脂組成物中のポリアミドイミド前駆体から生じたポリアミドイミドは、有機溶剤を主成分とする現像液に対して不溶であることが好ましい。
【0099】
特定樹脂がラジカル重合性基を有する場合、本発明の樹脂組成物は、ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。さらに必要に応じて、増感剤を含むことができる。このような本発明の樹脂組成物からは、例えば、ネガ型感光膜が形成される。
また、特定樹脂は、酸分解性基等の極性変換基を有していてもよい。特定樹脂が酸分解性基を有する場合、樹脂組成物は、光酸発生剤を含むことが好ましい。このような本発明の樹脂組成物からは、例えば、化学増幅型であるポジ型感光膜又はネガ型感光膜が形成される。
本発明の樹脂組成物は、ネガ型感光性樹脂組成物(ネガ型感光膜を形成できる樹脂組成物)であってもよいし、ポジ型感光性樹脂組成物(ポジ型感光膜を形成できる樹脂組成物)であってもよいが、ネガ型感光性樹脂組成物であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、例えば、半導体デバイスの絶縁膜、再配線層用層間絶縁膜、ストレスバッファ膜等の形成に用いることができ、再配線層用層間絶縁膜の形成に用いられることが好ましい。
【0100】
特定樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2,000~500,000が好ましく、5,000~100,000がより好ましく、5,000~50,000がより好ましく、10,000~50,000が更に好ましい。また、数平均分子量(Mn)は、800~250,000が好ましく、2,000~50,000がより好ましく、4,000~25,000が更に好ましい。
ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の分子量の分散度は、1.5以上が好ましく、1.8以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましい。ポリアミドイミド前駆体の分子量の分散度の上限値は特に定めるものではないが、例えば、7.0以下が好ましく、6.5以下がより好ましく、6.0以下が更に好ましい。
本発明の樹脂組成物が複数種の特定樹脂を含む場合、少なくとも1種の特定樹脂の重量平均分子量、数平均分子量、及び、分散度が上記範囲であることが好ましい。また、上記複数種の特定樹脂を1つの樹脂として算出した重量平均分子量、数平均分子量、及び、分散度が、それぞれ、上記範囲内であることも好ましい。
【0101】
本発明の樹脂組成物における特定樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以上であることが一層好ましい。また、本発明の樹脂組成物における樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、99.5質量%以下であることが好ましく、99質量%以下であることがより好ましく、98質量%以下であることが更に好ましく、97質量%以下であることが一層好ましく、95質量%以下であることがより一層好ましい。
本発明の樹脂組成物は、特定樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0102】
本発明の樹脂組成物は、少なくとも2種の樹脂を含むことも好ましい。
具体的には、本発明の樹脂組成物は、特定樹脂と、他の樹脂とを合計で2種以上含んでもよいし、特定樹脂を2種以上含んでいてもよいが、特定樹脂を2種以上含むことが好ましい。
【0103】
<(2)溶剤>
本発明の樹脂組成物は、溶剤を含む。
溶剤は、公知の溶剤を任意に使用できる。溶剤は有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、エステル類、エーテル類、ケトン類、環状炭化水素類、スルホキシド類、アミド類、ウレア類、アルコール類などの化合物が挙げられる。
【0104】
エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸へキシル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、アルキルオキシ酢酸アルキル(例えば、アルキルオキシ酢酸メチル、アルキルオキシ酢酸エチル、アルキルオキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3-アルキルオキシプロピオン酸メチル、3-アルキルオキシプロピオン酸エチル等(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等))、2-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、2-アルキルオキシプロピオン酸メチル、2-アルキルオキシプロピオン酸エチル、2-アルキルオキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル))、2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸メチル及び2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸エチル(例えば、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等が好適なものとして挙げられる。
【0105】
エーテル類として、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が好適なものとして挙げられる。
【0106】
ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、3-メチルシクロヘキサノン、レボグルコセノン、ジヒドロレボグルコセノン等が好適なものとして挙げられる。
【0107】
環状炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族炭化水素類、リモネン等の環式テルペン類が好適なものとして挙げられる。
【0108】
スルホキシド類として、例えば、ジメチルスルホキシドが好適なものとして挙げられる。
【0109】
アミド類として、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、N-ホルミルモルホリン、N-アセチルモルホリン等が好適なものとして挙げられる。
【0110】
ウレア類として、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が好適なものとして挙げられる。
【0111】
アルコール類として、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n-アミルアルコール、メチルアミルアルコール、および、ダイアセトンアルコール等が挙げられる。
【0112】
溶剤は、塗布面性状の改良などの観点から、2種以上を混合する形態も好ましい。
【0113】
本発明では、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、トルエン、ジメチルスルホキシド、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコールメチルエーテル、及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、レボグルコセノン、ジヒドロレボグルコセノンから選択される1種の溶剤、又は、2種以上で構成される混合溶剤が好ましい。ジメチルスルホキシドとγ-ブチロラクトンとの併用、ジメチルスルホキシドとγ-バレロラクトンとの併用、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミドとγ-ブチロラクトンとの併用、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミドとγ-ブチロラクトンとジメチルスルホキシドとの併用、又は、N-メチル-2-ピロリドンと乳酸エチルとの併用が特に好ましい。これらの併用された溶剤に、更にトルエンを溶剤の全質量に対して1~10質量%程度添加する態様も、本発明の好ましい態様の1つである。
特に、樹脂組成物の保存安定性等の観点からは、溶剤としてγ-バレロラクトンを含む態様も、本発明の好ましい態様の1つである。このような態様において、溶剤の全質量に対するγ-バレロラクトンの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。また、上記含有量の上限は、特に限定されず100質量%であってもよい。上記含有量は、樹脂組成物に含まれる特定樹脂などの成分の溶解度等を考慮して決定すればよい。
また、ジメチルスルホキシドとγ-ブチロラクトンとを併用する場合、溶剤の全質量に対して、60~90質量%のγ-ブチロラクトンと10~40質量%のジメチルスルホキシドとを含むことが好ましく、70~90質量%のγ-ブチロラクトンと10~30質量%のジメチルスルホキシドとを含むことがより好ましく、75~85質量%のγ-ブチロラクトンと15~25質量%のジメチルスルホキシドとを含むことが更に好ましい。
【0114】
溶剤の含有量は、塗布性の観点から、本発明の樹脂組成物の全固形分濃度が5~80質量%になる量とすることが好ましく、5~75質量%となる量にすることがより好ましく、10~70質量%となる量にすることが更に好ましく、20~70質量%となるようにすることが一層好ましい。溶剤含有量は、塗膜の所望の厚さと塗布方法に応じて調節すればよい。溶剤を2種以上含有する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0115】
〔(3)重合開始剤〕
本発明の樹脂組成物は、重合開始剤を含む。重合開始剤は熱重合開始剤であっても光重合開始剤であってもよいが、特に光重合開始剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光ラジカル重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有する光ラジカル重合開始剤が好ましい。また、光励起された増感剤と作用し、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよい。
【0116】
光ラジカル重合開始剤は、波長約240~800nm(好ましくは330~500nm)の範囲内で少なくとも約50L・mol-1・cm-1のモル吸光係数を有する化合物を、少なくとも1種含有していることが好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶剤を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0117】
光ラジカル重合開始剤としては、公知の化合物を任意に使用できる。例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物、トリハロメチル基を有する化合物など)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、アミノアセトフェノンなどのα-アミノケトン化合物、ヒドロキシアセトフェノンなどのα-ヒドロキシケトン化合物、アゾ系化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、有機ホウ素化合物、鉄アレーン錯体などが挙げられる。これらの詳細については、特開2016-027357号公報の段落0165~0182、国際公開第2015/199219号の段落0138~0151の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、特開2014-130173号公報の段落0065~0111、特許第6301489号公報に記載された化合物、MATERIAL STAGE 37~60p,vol.19,No.3,2019に記載されたパーオキサイド系光重合開始剤、国際公開第2018/221177号に記載の光重合開始剤、国際公開第2018/110179号に記載の光重合開始剤、特開2019-043864号公報に記載の光重合開始剤、特開2019-044030号公報に記載の光重合開始剤、特開2019-167313号公報に記載の過酸化物系開始剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0118】
ケトン化合物としては、例えば、特開2015-087611号公報の段落0087に記載の化合物が例示され、この内容は本明細書に組み込まれる。市販品では、カヤキュア-DETX-S(日本化薬(株)製)も好適に用いられる。
【0119】
本発明の一実施態様において、光ラジカル重合開始剤としては、ヒドロキシアセトフェノン化合物、アミノアセトフェノン化合物、及び、アシルホスフィン化合物を好適に用いることができる。より具体的には、例えば、特開平10-291969号公報に記載のアミノアセトフェノン系開始剤、特許第4225898号に記載のアシルホスフィンオキシド系開始剤を用いることができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0120】
α-ヒドロキシケトン系開始剤としては、Omnirad 184、Omnirad 1173、Omnirad 2959、Omnirad 127(以上、IGM Resins B.V.社製)、IRGACURE 184(IRGACUREは登録商標)、DAROCUR 1173、IRGACURE 500、IRGACURE-2959、IRGACURE 127(以上、BASF社製)を用いることができる。
【0121】
α-アミノケトン系開始剤としては、Omnirad 907、Omnirad 369、Omnirad 369E、Omnirad 379EG(以上、IGM Resins B.V.社製)、IRGACURE 907、IRGACURE 369、及び、IRGACURE 379(以上、BASF社製)を用いることができる。
【0122】
アミノアセトフェノン系開始剤、アシルホスフィンオキシド系開始剤、メタロセン化合物としては、例えば、国際公開第2021/112189号の段落0161~0163に記載の化合物も好適に使用することができる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0123】
光ラジカル重合開始剤として、より好ましくはオキシム化合物が挙げられる。オキシム化合物を用いることにより、露光ラチチュードをより効果的に向上させることが可能になる。オキシム化合物は、露光ラチチュード(露光マージン)が広く、かつ、光硬化促進剤としても働くため、特に好ましい。
【0124】
オキシム化合物の具体例としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)に記載の化合物、特開2000-066385号公報に記載の化合物、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2017-019766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開第2015/152153号に記載の化合物、国際公開第2017/051680号に記載の化合物、特開2017-198865号公報に記載の化合物、国際公開第2017/164127号の段落番号0025~0038に記載の化合物、国際公開第2013/167515号に記載の化合物などが挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0125】
好ましいオキシム化合物としては、例えば、下記の構造の化合物や、3-(ベンゾイルオキシ(イミノ))ブタン-2-オン、3-(アセトキシ(イミノ))ブタン-2-オン、3-(プロピオニルオキシ(イミノ))ブタン-2-オン、2-(アセトキシ(イミノ))ペンタン-3-オン、2-(アセトキシ(イミノ))-1-フェニルプロパン-1-オン、2-(ベンゾイルオキシ(イミノ))-1-フェニルプロパン-1-オン、3-((4-トルエンスルホニルオキシ)イミノ)ブタン-2-オン、及び2-(エトキシカルボニルオキシ(イミノ))-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。樹脂組成物においては、特に光ラジカル重合開始剤としてオキシム化合物を用いることが好ましい。光ラジカル重合開始剤としてのオキシム化合物は、分子内に>C=N-O-C(=O)-の連結基を有する。
【0126】
【化14】
【0127】
オキシム化合物の市販品としては、IRGACURE OXE 01、IRGACURE OXE 02、IRGACURE OXE 03、IRGACURE OXE 04(以上、BASF社製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-014052号公報に記載の光ラジカル重合開始剤2)、TR-PBG-304、TR-PBG-305(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカアークルズNCI-730、NCI-831及びアデカアークルズNCI-930((株)ADEKA製)、DFI-091(ダイトーケミックス(株)製)、SpeedCure PDO(SARTOMER ARKEMA製)が挙げられる。また、下記の構造のオキシム化合物を用いることもできる。
【0128】
【化15】
【0129】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、国際公開第2021/112189号の段落0169~0171に記載のフルオレン環を有するオキシム化合物、カルバゾール環の少なくとも1つのベンゼン環がナフタレン環となった骨格を有するオキシム化合物、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。
また、国際公開第2021/020359号に記載の段落0208~0210に記載のニトロ基を有するオキシム化合物、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物、カルバゾール骨格にヒドロキシ基を有する置換基が結合したオキシム化合物を用いることもできる。これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0130】
光重合開始剤としては、芳香族環に電子求引性基が導入された芳香族環基ArOX1を有するオキシム化合物(以下、オキシム化合物OXともいう)を用いることもできる。上記芳香族環基ArOX1が有する電子求引性基としては、アシル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基が挙げられ、アシル基およびニトロ基が好ましく、耐光性に優れた膜を形成しやすいという理由からアシル基であることがより好ましく、ベンゾイル基であることが更に好ましい。ベンゾイル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、複素環オキシ基、アルケニル基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アシル基またはアミノ基であることが好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基またはアミノ基であることがより好ましく、アルコキシ基、アルキルスルファニル基またはアミノ基であることが更に好ましい。
【0131】
オキシム化合物OXは、式(OX1)で表される化合物および式(OX2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、式(OX2)で表される化合物であることがより好ましい。
【0132】
【化16】
【0133】
式中、RX1は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、複素環オキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、ホスフィノイル基、カルバモイル基またはスルファモイル基を表し、
X2は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、複素環オキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシルオキシ基またはアミノ基を表し、
X3~RX14は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表す。
ただし、RX10~RX14のうち少なくとも一つは、電子求引性基である。
【0134】
上記式において、RX12が電子求引性基であり、RX10、RX11、RX13、RX14は水素原子であることが好ましい。
【0135】
オキシム化合物OXの具体例としては、特許第4600600号公報の段落番号0083~0105に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0136】
特に好ましいオキシム化合物としては、特開2007-269779号公報に示される特定置換基を有するオキシム化合物や、特開2009-191061号公報に示されるチオアリール基を有するオキシム化合物などが挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0137】
光ラジカル重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム塩化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物及びその誘導体、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体及びその塩、ハロメチルオキサジアゾール化合物、3-アリール置換クマリン化合物からなる群より選択される化合物が好ましい。
【0138】
また、光ラジカル重合開始剤は、トリハロメチルトリアジン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム塩化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物であり、トリハロメチルトリアジン化合物、α-アミノケトン化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、ベンゾフェノン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物がより好ましく、メタロセン化合物又はオキシム化合物が更に好ましい。
【0139】
光ラジカル重合開始剤としては、国際公開第2021/020359号に記載の段落0175~0179に記載の化合物、国際公開第2015/125469号の段落0048~0055に記載の化合物を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0140】
光ラジカル重合開始剤としては、2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤を用いてもよい。そのような光ラジカル重合開始剤を用いることにより、光ラジカル重合開始剤の1分子から2つ以上のラジカルが発生するため、良好な感度が得られる。また、非対称構造の化合物を用いた場合においては、結晶性が低下して溶剤などへの溶解性が向上して、経時で析出しにくくなり、樹脂組成物の経時安定性を向上させることができる。2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤の具体例としては、特表2010-527339号公報、特表2011-524436号公報、国際公開第2015/004565号、特表2016-532675号公報の段落番号0407~0412、国際公開第2017/033680号の段落番号0039~0055に記載されているオキシム化合物の2量体、特表2013-522445号公報に記載されている化合物(E)および化合物(G)、国際公開第2016/034963号に記載されているCmpd1~7、特表2017-523465号公報の段落番号0007に記載されているオキシムエステル類光開始剤、特開2017-167399号公報の段落番号0020~0033に記載されている光開始剤、特開2017-151342号公報の段落番号0017~0026に記載されている光重合開始剤(A)、特許第6469669号公報に記載されているオキシムエステル光開始剤などが挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0141】
樹脂組成物が光重合開始剤を含む場合、その含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し0.1~30質量%が好ましく、0.1~20質量%がより好ましく、0.5~15質量%が更に好ましく、1.0~10質量%が更により好ましい。光重合開始剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。光重合開始剤を2種以上含有する場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
なお、光重合開始剤は熱重合開始剤としても機能する場合があるため、オーブンやホットプレート等の加熱によって光重合開始剤による架橋を更に進行させられる場合がある。
【0142】
<重合性化合物>
本発明の樹脂組成物は、樹脂(1)とは異なる化合物である重合性化合物を含むことが好ましい。
重合性化合物としては、ラジカル架橋剤、又は、他の架橋剤が挙げられる。
【0143】
〔ラジカル架橋剤〕
本発明の樹脂組成物は、ラジカル架橋剤を含むことが好ましい。
ラジカル架橋剤は、ラジカル重合性基を有する化合物である。ラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和結合を含む基が好ましい。上記エチレン性不飽和結合を含む基としては、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基、(メタ)アクリルアミド基などが挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルフェニル基が好ましく、反応性の観点からは、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
【0144】
ラジカル架橋剤は、エチレン性不飽和結合を1個以上有する化合物であることが好ましいが、2個以上有する化合物であることがより好ましい。ラジカル架橋剤は、エチレン性不飽和結合を3個以上有していてもよい。
上記エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物としては、エチレン性不飽和結合を2~15個有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合を2~10個有する化合物がより好ましく、2~6個有する化合物が更に好ましい。
得られるパターン(硬化物)の膜強度の観点からは、本発明の樹脂組成物は、エチレン性不飽和結合を2個有する化合物と、上記エチレン性不飽和結合を3個以上有する化合物とを含むことも好ましい。
【0145】
ラジカル架橋剤の分子量は、2,000以下が好ましく、1,500以下がより好ましく、900以下が更に好ましい。ラジカル架橋剤の分子量の下限は、100以上が好ましい。
【0146】
ラジカル架橋剤の具体例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)やそのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル、及び不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類である。また、ヒドロキシ基やアミノ基、スルファニル基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能若しくは多官能イソシアネート類又はエポキシ類との付加反応物や、単官能若しくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更に、ハロゲノ基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等のビニルベンゼン誘導体、ビニルエーテル、アリルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。具体例としては、特開2016-027357号公報の段落0113~0122の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0147】
ラジカル架橋剤は、常圧下で100℃以上の沸点を持つ化合物も好ましい。常圧下で100℃以上の沸点を持つ化合物としては、国際公開第2021/112189号公報の段落0203に記載の化合物等が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0148】
上述以外の好ましいラジカル架橋剤としては、国際公開第2021/112189号公報の段落0204~0208に記載のラジカル重合性化合物等が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0149】
ラジカル架橋剤としては、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては KAYARAD D-330(日本化薬(株)製))、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては KAYARAD D-320(日本化薬(株)製)、A-TMMT(新中村化学工業(株)製))、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD D-310(日本化薬(株)製))、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)、A-DPH(新中村化学工業社製))、及びこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール残基又はプロピレングリコール残基を介して結合している構造が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。
【0150】
ラジカル架橋剤の市販品としては、例えばエチレンオキシ鎖を4個有する4官能アクリレートであるSR-494、エチレンオキシ鎖を4個有する2官能メタクリレートであるSR-209、231、239(以上、サートマー社製)、ペンチレンオキシ鎖を6個有する6官能アクリレートであるDPCA-60、イソブチレンオキシ鎖を3個有する3官能アクリレートであるTPA-330(以上、日本化薬(株)製)、ウレタンオリゴマーであるUAS-10、UAB-140(以上、日本製紙社製)、NKエステルM-40G、NKエステル4G、NKエステルM-9300、NKエステルA-9300、UA-7200(以上、新中村化学工業社製)、DPHA-40H(日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600(以上、共栄社化学社製)、ブレンマーPME400(日油(株)製)などが挙げられる。
【0151】
ラジカル架橋剤としては、特公昭48-041708号公報、特開昭51-037193号公報、特公平02-032293号公報、特公平02-016765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58-049860号公報、特公昭56-017654号公報、特公昭62-039417号公報、特公昭62-039418号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。ラジカル架橋剤として、特開昭63-277653号公報、特開昭63-260909号公報、特開平01-105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する化合物を用いることもできる。
【0152】
ラジカル架橋剤は、カルボキシ基、リン酸基等の酸基を有するラジカル架橋剤であってもよい。酸基を有するラジカル架橋剤は、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルが好ましく、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシ基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせたラジカル架橋剤がより好ましい。特に好ましくは、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシ基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせたラジカル架橋剤において、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールである化合物である。市販品としては、例えば、東亞合成(株)製の多塩基酸変性アクリルオリゴマーとして、M-510、M-520などが挙げられる。
【0153】
酸基を有するラジカル架橋剤の酸価は、0.1~300mgKOH/gが好ましく、1~100mgKOH/gがより好ましい。ラジカル架橋剤の酸価が上記範囲であれば、製造上の取扱性に優れ、現像性に優れる。また、重合性が良好である。上記酸価は、JIS K 0070:1992の記載に準拠して測定される。
【0154】
ラジカル架橋剤としては、ウレア結合、及び、ウレタン結合からなる群より選ばれた少なくとも一方を有するラジカル架橋剤(以下、「架橋剤U」ともいう。)も好ましい。
本発明において、ウレア結合とは、*-NR-C(=O)-NR-*で表される結合であり、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、*はそれぞれ、炭素原子との結合部位を表す。
本発明において、ウレタン結合とは*-O-C(=O)-NR-*で表される結合であり、Rは水素原子又は1価の有機基を表し、*はそれぞれ、炭素原子との結合部位を表す。
樹脂組成物が架橋剤Uを含むことにより、耐薬品性、解像性等が向上する場合が有る。
上記効果が得られるメカニズムは不明だが、例えば、加熱等による硬化時に架橋剤Uの一部が熱分解することにより、アミンなどが発生し、上記アミン等がポリイミド前駆体等の環化樹脂の前駆体の環化を促進すると考えられる。
架橋剤Uはウレア結合又はウレタン結合を1つのみ有してもよいし、1以上のウレア結合と1以上のウレタン結合とを有してもよいし、ウレタン結合を有さず2以上のウレア結合を有してもよいし、ウレア結合を有さず2以上のウレタン結合を有してもよい。
架橋剤Uにおけるウレア結合及びウレタン結合の合計数は、1以上であり、1~10であることが好ましく、1~4であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましい。
架橋剤Uがウレタン結合を有しない場合、架橋剤Uにおけるウレア結合の数は1以上であり、1~10であることが好ましく、1~4であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましい。
架橋剤Uがウレア結合を有しない場合、架橋剤Uにおけるウレタン結合の数は1以上であり、1~10であることが好ましく、1~4であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましい。
【0155】
架橋剤Uにおけるラジカル重合性基は、特に限定されないが、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルフェニル基、マレイミド基等が挙げられ、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルフェニル基、又は、マレイミド基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。
架橋剤Uがラジカル重合性基を2以上有する場合、それぞれのラジカル重合性基の構造は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
架橋剤Uにおけるラジカル重合性基の数は、1つのみであってもよいし、2以上であってもよく、1~10が好ましく、1~6が更に好ましく、1~4が特に好ましい。
架橋剤Uにおけるラジカル重合性基価(ラジカル重合性基1モル当たりの化合物の質量)は、150~400g/molであることが好ましい。
上記ラジカル重合性基価の下限は、硬化物の耐薬品性の観点より、200g/mol以上であることがより好ましく、210g/mol以上であることが更に好ましく、220g/mol以上であることが一層好ましく、230g/mol以上であることがより一層好ましく、240g/mol以上であることがより更に好ましく、250g/mol以上であることが特に好ましい。
上記ラジカル重合性基価の上限は、現像性の観点より、350g/mol以下であることがより好ましく、330g/mol以下であることが更に好ましく、300g/mol以下であることが特に好ましい。
中でも、架橋剤Uの重合性基価は、210~400g/molであることが好ましく、220~400g/molであることがより好ましい。
【0156】
架橋剤Uは、例えば下記式(U-1)で表される構造であることが好ましい。
【0157】
【化17】
【0158】
式(U-1)中、RU1は水素原子又は1価の有機基であり、Aは-O-又は-NR-であり、Rは水素原子又は1価の有機基であり、ZU1はm価の有機基であり、ZU2はn+1価の有機基であり、Xはラジカル重合性基であり、nは1以上の整数であり、mは1以上の整数である。
【0159】
U1は水素原子、アルキル基又は芳香族炭化水素基が好ましく、水素原子がより好ましい。
は水素原子、アルキル基又は芳香族炭化水素基が好ましく、水素原子がより好ましい。
U1は炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-NR-、若しくは、これらが2以上結合した基が好ましく、炭化水素基、又は、炭化水素基と、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、及び、-NR-からなる群より選ばれた少なくとも1種の基とが結合した基がより好ましい。
上記炭化水素基としては、炭素数20以下の炭化水素基が好ましく、18以下の炭化水素基がより好ましく、16以下の炭化水素基が更に好ましい。上記炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は、これらの結合により表される基などが挙げられる。Rは水素原子又は1価の有機基を表し、水素原子又は炭化水素基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることが更に好ましい。
U2は炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-NR-、若しくは、これらが2以上結合した基が好ましく、炭化水素基、又は、炭化水素基と、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、及び、-NR-からなる群より選ばれた少なくとも1種の基とが結合した基がより好ましい。
上記炭化水素基としては、ZU1において挙げられたものと同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
Xは特に限定されないが、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルフェニル基、マレイミド基等が挙げられ、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルフェニル基、又は、マレイミド基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。
nは1~10の整数であることが好ましく、1~4の整数であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましく、1であることが特に好ましい。
mは1~10の整数であることが好ましく、1~4の整数であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましい。
【0160】
架橋剤Uは、ヒドロキシ基、アルキレンオキシ基、アミド基及びシアノ基の少なくとも1つを有することも好ましい。
得られる硬化膜の耐薬品性の観点から、ヒドロキシ基は、アルコール性ヒドロキシ基であってもフェノール性ヒドロキシ基であってもよいが、アルコール性ヒドロキシ基であることが好ましい。
得られる硬化膜の耐薬品性の観点から、アルキレンオキシ基としては、炭素数2~20のアルキレンオキシ基が好ましく、炭素数2~10のアルキレンオキシ基がより好ましく、炭素数2~4のアルキレンオキシ基が更に好ましく、エチレン基又はプロピレン基が更により好ましく、エチレン基が特に好ましい。
アルキレンオキシ基は、ポリアルキレンオキシ基として架橋剤Uに含まれてもよい。この場合のアルキレンオキシ基の繰返し数は、2~10であることが好ましく、2~6であることがより好ましい。
アミド基は、-C(=O)-NR-により表される結合をいう。Rは上述の通りである。架橋剤Uがアミド基を有する場合、架橋剤Uは、例えば、R-C(=O)-NR-*で表される基、又は、*-C(=O)-NR-Rで表される基として含むことができる。Rは水素原子又は1価の置換基を表し、水素原子又は炭化水素基であることが好ましく、水素原子、アルキル基又は芳香族炭化水素基であることがより好ましい。
架橋剤Uは、ヒドロキシ基、アルキレンオキシ基(ただし、ポリアルキレンオキシ基を構成する場合は、ポリアルキレンオキシ基)、アミド基及びシアノ基からなる群より選ばれた構造を、分子内に2以上有してもよいが、分子内に1つのみ有する態様も好ましい。
上記ヒドロキシ基、アルキレンオキシ基、アミド基及びシアノ基は架橋剤Uのいずれの位置に存在してもよいが、耐薬品性の観点からは、架橋剤Uは、上記ヒドロキシ基、アルキレンオキシ基、アミド基及びシアノ基からなる群より選ばれた少なくとも1つと、架橋剤Uに含まれる少なくとも1つのラジカル重合性基とが、ウレア結合又はウレタン結合を含む連結基(以下、「連結基L2-1」ともいう。)により連結されていることも好ましい。
特に、架橋剤Uがラジカル重合性基を1つのみ含む場合、架橋剤Uに含まれるラジカル重合性基と、ヒドロキシ基、アルキレンオキシ基、アミド基及びシアノ基からなる群より選ばれた少なくとも1つとが、ウレア結合又はウレタン結合を含む連結基(以下、「連結基L2-2」ともいう。)により連結されていることが好ましい。
架橋剤Uがアルキレンオキシ基(ただし、ポリアルキレンオキシ基を構成する場合は、ポリアルキレンオキシ基)を含み、かつ、上記連結基L2-1又は上記連結基L2-2を有する場合、アルキレンオキシ基(ただし、ポリアルキレンオキシ基を構成する場合は、ポリアルキレンオキシ基)の連結基L2-1又は連結基L2-2とは反対の側に結合する構造は、特に限定されないが、炭化水素基、ラジカル重合性基又はこれらの組み合わせにより表される基が好ましい。上記炭化水素基としては、炭素数20以下の炭化水素基が好ましく、18以下の炭化水素基がより好ましく、16以下の炭化水素基が更に好ましい。上記炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は、これらの結合により表される基などが挙げられる。また、ラジカル重合性基の好ましい態様は上述の架橋剤Uにおけるラジカル重合性基の好ましい態様と同様である。
架橋剤Uがアミド基を含み、かつ、上記連結基L2-1又は上記連結基L2-2を有する場合、アミド基の連結基L2-1又は連結基L2-2とは反対の側に結合する構造は、特に限定されないが、炭化水素基、ラジカル重合性基又はこれらの組み合わせにより表される基が好ましい。上記炭化水素基としては、炭素数20以下の炭化水素基が好ましく、18以下の炭化水素基がより好ましく、16以下の炭化水素基が更に好ましい。また、上記炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は、これらの結合により表される基などが挙げられる。ラジカル重合性基の好ましい態様は上述の架橋剤Uにおけるラジカル重合性基の好ましい態様と同様である。また、上記態様において、アミド基の炭素原子側が連結基L2-1又は連結基L2-2と結合してもよいし、アミド基の窒素原子側が連結基L2-1又は連結基L2-2と結合してもよい。
これらの中でも、基材との密着性、耐薬品性、及び、Cuボイド抑制の観点からは、架橋剤Uはヒドロキシ基を有することが好ましい。
【0161】
架橋剤Uは、特定樹脂との相溶性等の観点より、芳香族基を含むことが好ましい。
上記芳香族基は、架橋剤Uに含まれるウレア結合又はウレタン結合と直接結合することが好ましい。架橋剤Uがウレア結合又はウレタン結合を2以上含む場合、ウレア結合又はウレタン結合のうち1つと、芳香族基とが直接結合することが好ましい。
芳香族基は、芳香族炭化水素基であっても、芳香族ヘテロ環基であってもよく、これらが縮合環を形成した構造でもよいが、芳香族炭化水素基であることが好ましい。
上記芳香族炭化水素基としては、炭素数6~30の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6~20の芳香族炭化水素基がより好ましく、ベンゼン環構造から2以上の水素原子を除いた基が更に好ましい。
上記芳香族ヘテロ環基としては、5員環又は6員環の芳香族ヘテロ環基が好ましい。このような芳香族ヘテロ環基における芳香族ヘテロ環としては、ピロール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、フラン、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン等が挙げられる。これらの環は、例えば、インドール、ベンゾイミダゾールのように更に他の環と縮合していてもよい。
上記芳香族ヘテロ環基に含まれるヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子が好ましい。
上記芳香族基は、例えば、2以上のラジカル重合性基を連結し、ウレア結合又はウレタン結合を含む連結基、又は、上述のヒドロキシ基、アルキレンオキシ基、アミド基及びシアノ基からなる群より選ばれた少なくとも1つと、架橋剤Uに含まれる少なくとも1つのラジカル重合性基とを連結する連結基に含まれることが好ましい。
【0162】
架橋剤Uにおけるウレア結合又はウレタン結合とラジカル重合性基との間の原子数(連結鎖長)は、特に限定されないが、30以下であることが好ましく、2~20であることがより好ましく、2~10であることが更に好ましい。
架橋剤Uがウレア結合又はウレタン結合を合計で2以上含む場合、ラジカル重合性基を2以上含む場合、又は、ウレア結合若しくはウレタン結合を2以上含み、かつ、ラジカル重合性基を2以上含む場合、ウレア結合又はウレタン結合とラジカル重合性基の間の原子数(連結鎖長)のうち、最小のものが上記範囲内であればよい。
本明細書において、「ウレア結合又はウレタン結合と重合性基との間の原子数(連結鎖長)」とは、連結対象の2つの原子または原子群の間を結ぶ経路上の原子鎖のうち、これらの連結対象を最短(最小原子数)で結ぶものをいう。例えば、下記式で表される構造において、ウレア結合とラジカル重合性基(メタクリロイルオキシ基)との間の原子数(連結鎖長)は2である。
【0163】
【化18】
【0164】
〔対称軸〕
架橋剤Uは対称軸を有しない構造の化合物であることも好ましい。
架橋剤Uが対称軸を有しないとは、化合物全体を回転させることにより元の分子と同一の分子を生じる軸を有さず、左右非対称の化合物である事をいう。また、架橋剤Uの構造式を紙面上に表記した場合において、架橋剤Uが対称軸を有しないとは、架橋剤Uの構造式を、対称軸を有する形に表記することができないことをいう。
架橋剤Uが対称軸を有しないことにより、組成物膜中では架橋剤U同士の凝集が抑制されると考えられる。
【0165】
〔分子量〕
架橋剤Uの分子量は、100~2,000であることが好ましく、150~1500であることが好ましく、200~900であることがより好ましい。
【0166】
架橋剤Uの製造方法は特に限定されないが、例えば、ラジカル重合性化合物とイソシアネート基とを有する化合物と、ヒドロキシ基又はアミノ基の少なくとも一方を有する化合物とを反応することにより得ることができる。
【0167】
架橋剤Uの具体例を以下に示すが、架橋剤Uはこれに限定されるものではない。
【0168】
【化19】
【0169】
【化20】
【0170】
【化21】
【0171】
樹脂組成物は、パターンの解像性と膜の伸縮性の観点から、2官能のメタアクリレート又はアクリレートを用いることが好ましい。
具体的な化合物としては、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、PEG(ポリエチレングリコール)200ジアクリレート、PEG200ジメタクリレート、PEG600ジアクリレート、PEG600ジメタクリレート、ポリテトラエチレングリコールジアクリレート、ポリテトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジメタクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジメタクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキシド)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジメタクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキシド)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジメタクリレート、2-ヒドロキシー3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸変性ジメタクリレート、その他ウレタン結合を有する2官能アクリレート、ウレタン結合を有する2官能メタクリレートを使用することができる。これらは必要に応じ、2種以上を混合し使用することができる。
なお、例えばPEG200ジアクリレートとは、ポリエチレングリコールジアクリレートであって、ポリエチレングリコール鎖の式量が200程度のものをいう。
本発明の樹脂組成物は、パターン(硬化物)の反り抑制の観点から、ラジカル架橋剤として、単官能ラジカル架橋剤を好ましく用いることができる。単官能ラジカル架橋剤としては、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等のN-ビニル化合物類、アリルグリシジルエーテル等が好ましく用いられる。単官能ラジカル架橋剤としては、露光前の揮発を抑制するため、常圧下で100℃以上の沸点を持つ化合物も好ましい。
その他、2官能以上のラジカル架橋剤としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物類が挙げられる。
【0172】
ラジカル架橋剤を含有する場合、ラジカル架橋剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0質量%超60質量%以下であることが好ましい。下限は5質量%以上がより好ましい。上限は、50質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。
【0173】
ラジカル架橋剤は1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を併用する場合にはその合計量が上記の範囲となることが好ましい。
【0174】
〔他の架橋剤〕
本発明の樹脂組成物は、上述したラジカル架橋剤とは異なる、他の架橋剤を含むことも好ましい。
他の架橋剤とは、上述したラジカル架橋剤以外の架橋剤をいい、上述の光酸発生剤、又は、光塩基発生剤の感光により、組成物中の他の化合物又はその反応生成物との間で共有結合を形成する反応が促進される基を分子内に複数個有する化合物であることが好ましく、組成物中の他の化合物又はその反応生成物との間で共有結合を形成する反応が酸又は塩基の作用によって促進される基を分子内に複数個有する化合物が好ましい。
上記酸又は塩基は、露光工程において、光酸発生剤又は光塩基発生剤から発生する酸又は塩基であることが好ましい。
他の架橋剤としては、アシルオキシメチル基、メチロール基、エチロール基及びアルコキシメチル基からなる群より選ばれた少なくとも1種の基を有する化合物が好ましく、アシルオキシメチル基、メチロール基、エチロール基及びアルコキシメチル基からなる群より選ばれた少なくとも1種の基が窒素原子に直接結合した構造を有する化合物がより好ましい。
他の架橋剤としては、例えば、メラミン、グリコールウリル、尿素、アルキレン尿素、ベンゾグアナミンなどのアミノ基含有化合物にホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドとアルコールを反応させ、上記アミノ基の水素原子をアシルオキシメチル基、メチロール基、エチロール基又はアルコキシメチル基で置換した構造を有する化合物が挙げられる。これらの化合物の製造方法は特に限定されず、上記方法により製造された化合物と同様の構造を有する化合物であればよい。これらの化合物のメチロール基同士が自己縮合してなるオリゴマーであってもよい。
上記のアミノ基含有化合物として、メラミンを用いた架橋剤をメラミン系架橋剤、グリコールウリル、尿素又はアルキレン尿素を用いた架橋剤を尿素系架橋剤、アルキレン尿素を用いた架橋剤をアルキレン尿素系架橋剤、ベンゾグアナミンを用いた架橋剤をベンゾグアナミン系架橋剤という。
これらの中でも、本発明の樹脂組成物は、尿素系架橋剤及びメラミン系架橋剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、後述するグリコールウリル系架橋剤及びメラミン系架橋剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことがより好ましい。
【0175】
本発明におけるアルコキシメチル基及びアシルオキシメチル基の少なくとも1つを含有する化合物としては、アルコキシメチル基又はアシルオキシメチル基が、直接芳香族基や下記ウレア構造の窒素原子上に、又は、トリアジン上に置換した化合物を構造例として挙げることができる。
上記化合物が有するアルコキシメチル基又はアシルオキシメチル基は、炭素数2~5が好ましく、炭素数2又は3が好ましく、炭素数2がより好ましい。
上記化合物が有するアルコキシメチル基及びアシルオキシメチル基の総数は1~10が好ましく、2~8がより好ましく、3~6が特に好ましい。
上記化合物の分子量は1500以下が好ましく、180~1200よりが好ましい。
【0176】
【化22】
【0177】
100は、アルキル基又はアシル基を表す。
101及びR102は、それぞれ独立に、一価の有機基を表し、互いに結合して環を形成してもよい。
【0178】
アルコキシメチル基又はアシルオキシメチル基が直接芳香族基に置換した化合物としては、例えば下記一般式の様な化合物を挙げることができる。
【0179】
【化23】
【0180】
式中、Xは単結合又は2価の有機基を示し、個々のR104はそれぞれ独立にアルキル基又はアシル基を示し、R103は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、又は、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基(例えば、酸の作用により脱離する基、-C(RCOORで表される基(Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、Rは酸の作用により脱離する基を表す。))を示す。
105は各々独立にアルキル基又はアルケニル基を示し、a、b及びcは各々独立に1~3であり、dは0~4であり、eは0~3であり、fは0~3であり、a+dは5以下であり、b+eは4以下であり、c+fは4以下である。
酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基、酸の作用により脱離する基、-C(RCOORで表される基におけるRについては、例えば、-C(R36)(R37)(R38)、-C(R36)(R37)(OR39)、-C(R01)(R02)(OR39)等を挙げることができる。
式中、R36~R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
上記アルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~5のアルキル基がより好ましい。
上記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよい。
上記シクロアルキル基としては、炭素数3~12のシクロアルキル基が好ましく、炭素数3~8のシクロアルキル基がより好ましい。
上記シクロアルキル基は単環構造であってもよいし、縮合環等の多環構造であってもよい。
上記アリール基は炭素数6~30の芳香族炭化水素基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
上記アラルキル基としては、炭素数7~20のアラルキル基が好ましく、炭素数7~16のアラルキル基がより好ましい。
上記アラルキル基はアルキル基により置換されたアリール基を意図しており、これらのアルキル基及びアリール基の好ましい態様は、上述のアルキル基及びアリール基の好ましい態様と同様である。
上記アルケニル基は炭素数3~20のアルケニル基が好ましく、炭素数3~16のアルケニル基がより好ましい。
これらの基は、公知の置換基を更に有していてもよい。
【0181】
01及びR02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
【0182】
酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基、または酸の作用により脱離する基としては好ましくは、第3級アルキルエステル基、アセタール基、クミルエステル基、エノールエステル基等である。更に好ましくは、第3級アルキルエステル基、アセタール基である。
【0183】
また、アシルオキシメチル基、メチロール基、エチロール基及びアルコキシメチル基からなる群より選ばれた少なくとも1種の基を有する化合物としては、ウレア結合及びウレタン結合からなる群より選ばれた少なくとも一方の基を有する化合物も好ましい。上記化合物の好ましい態様は、重合性基がラジカル重合性基ではなくアシルオキシメチル基、メチロール基、エチロール基及びアルコキシメチル基からなる群より選ばれた少なくとも1種の基である以外は、上述の架橋剤Uの好ましい態様と同様である。
【0184】
アシルオキシメチル基、メチロール基及びエチロール基からなる群より選ばれた少なくとも1種の基を有する化合物としては具体的に以下の構造を挙げることができる。アシルオキシメチル基を有する化合物は下記化合物のアルコキシメチル基をアシルオキシメチル基に変更した化合物を挙げることができる。アルコキシメチル基又はアシルオキシメチルを分子内に有する化合物としては以下の様な化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0185】
【化24】
【0186】
【化25】
【0187】
【化26】
【0188】
アルコキシメチル基及びアシルオキシメチル基の少なくとも1つを含有する化合物は、市販のものを用いても、公知の方法により合成したものを用いてもよい。
耐熱性の観点で、アルコキシメチル基又はアシルオキシメチル基が、直接芳香環やトリアジン環上に置換した化合物が好ましい。
【0189】
メラミン系架橋剤の具体例としては、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサブトキシブチルメラミンなどが挙げられる。
【0190】
尿素系架橋剤の具体例としては、例えば、モノヒドロキシメチル化グリコールウリル、ジヒドロキシメチル化グリコールウリル、トリヒドロキシメチル化グリコールウリル、テトラヒドロキシメチル化グリコールウリル、モノメトキシメチル化グリコールウリル、ジメトキシメチル化グリコールウリル、トリメトキシメチル化グリコールウリル、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、モノエトキシメチル化グリコールウリル、ジエトキシメチル化グリコールウリル、トリエトキシメチル化グリコールウリル、テトラエトキシメチル化グリコールウリル、モノプロポキシメチル化グリコールウリル、ジプロポキシメチル化グリコールウリル、トリプロポキシメチル化グリコールウリル、テトラプロポキシメチル化グリコールウリル、モノブトキシメチル化グリコールウリル、ジブトキシメチル化グリコールウリル、トリブトキシメチル化グリコールウリル、又は、テトラブトキシメチル化グリコールウリルなどのグリコールウリル系架橋剤、
ビスメトキシメチル尿素、ビスエトキシメチル尿素、ビスプロポキシメチル尿素、ビスブトキシメチル尿素等の尿素系架橋剤、
モノヒドロキシメチル化エチレン尿素又はジヒドロキシメチル化エチレン尿素、モノメトキシメチル化エチレン尿素、ジメトキシメチル化エチレン尿素、モノエトキシメチル化エチレン尿素、ジエトキシメチル化エチレン尿素、モノプロポキシメチル化エチレン尿素、ジプロポキシメチル化エチレン尿素、モノブトキシメチル化エチレン尿素、又は、ジブトキシメチル化エチレン尿素などのエチレン尿素系架橋剤、
モノヒドロキシメチル化プロピレン尿素、ジヒドロキシメチル化プロピレン尿素、モノメトキシメチル化プロピレン尿素、ジメトキシメチル化プロピレン尿素、モノエトキシメチル化プロピレン尿素、ジエトキシメチル化プロピレン尿素、モノプロポキシメチル化プロピレン尿素、ジプロポキシメチル化プロピレン尿素、モノブトキシメチル化プロピレン尿素、又は、ジブトキシメチル化プロピレン尿素などのプロピレン尿素系架橋剤、
1,3-ジ(メトキシメチル)4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリジノン、1,3-ジ(メトキシメチル)-4,5-ジメトキシ-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0191】
ベンゾグアナミン系架橋剤の具体例としては、例えばモノヒドロキシメチル化ベンゾグアナミン、ジヒドロキシメチル化ベンゾグアナミン、トリヒドロキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラヒドロキシメチル化ベンゾグアナミン、モノメトキシメチル化ベンゾグアナミン、ジメトキシメチル化ベンゾグアナミン、トリメトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラメトキシメチル化ベンゾグアナミン、モノエトキシメチル化ベンゾグアナミン、ジエトキシメチル化ベンゾグアナミン、トリエトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラエトキシメチル化ベンゾグアナミン、モノプロポキシメチル化ベンゾグアナミン、ジプロポキシメチル化ベンゾグアナミン、トリプロポキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラプロポキシメチル化ベンゾグアナミン、モノブトキシメチル化ベンゾグアナミン、ジブトキシメチル化ベンゾグアナミン、トリブトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラブトキシメチル化ベンゾグアナミンなどが挙げられる。
【0192】
その他、メチロール基及びアルコキシメチル基からなる群より選ばれた少なくとも1種の基を有する化合物としては、芳香環(好ましくはベンゼン環)にメチロール基及びアルコキシメチル基からなる群より選ばれた少なくとも1種の基が直接結合した化合物も好適に用いられる。
このような化合物の具体例としては、ベンゼンジメタノール、ビス(ヒドロキシメチル)クレゾール、ビス(ヒドロキシメチル)ジメトキシベンゼン、ビス(ヒドロキシメチル)ジフェニルエーテル、ビス(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン、ヒドロキシメチル安息香酸ヒドロキシメチルフェニル、ビス(ヒドロキシメチル)ビフェニル、ジメチルビス(ヒドロキシメチル)ビフェニル、ビス(メトキシメチル)ベンゼン、ビス(メトキシメチル)クレゾール、ビス(メトキシメチル)ジメトキシベンゼン、ビス(メトキシメチル)ジフェニルエーテル、ビス(メトキシメチル)ベンゾフェノン、メトキシメチル安息香酸メトキシメチルフェニル、ビス(メトキシメチル)ビフェニル、ジメチルビス(メトキシメチル)ビフェニル、4,4’,4’’-エチリデントリス[2,6-ビス(メトキシメチル)フェノール]、5,5’-[2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス[2-ヒドロキシ-1,3-ベンゼンジメタノール]、3,3’,5,5’-テトラキス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジオール等が挙げられる。
【0193】
他の架橋剤としては市販品を用いてもよく、好適な市販品としては、46DMOC、46DMOEP(以上、旭有機材工業社製)、DML-PC、DML-PEP、DML-OC、DML-OEP、DML-34X、DML-PTBP、DML-PCHP、DML-OCHP、DML-PFP、DML-PSBP、DML-POP、DML-MBOC、DML-MBPC、DML-MTrisPC、DML-BisOC-Z、DML-BisOCHP-Z、DML-BPC、DMLBisOC-P、DMOM-PC、DMOM-PTBP、DMOM-MBPC、TriML-P、TriML-35XL、TML-HQ、TML-BP、TML-pp-BPF、TML-BPE、TML-BPA、TML-BPAF、TML-BPAP、TMOM-BP、TMOM-BPE、TMOM-BPA、TMOM-BPAF、TMOM-BPAP、HML-TPPHBA、HML-TPHAP、HMOM-TPPHBA、HMOM-TPHAP(以上、本州化学工業社製)、ニカラック(登録商標、以下同様)MX-290、ニカラックMX-280、ニカラックMX-270、ニカラックMX-279、ニカラックMW-100LM、ニカラックMX-750LM(以上、三和ケミカル社製)などが挙げられる。
【0194】
本発明の樹脂組成物は、他の架橋剤として、エポキシ化合物、オキセタン化合物、及び、ベンゾオキサジン化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことも好ましい。
【0195】
-エポキシ化合物(エポキシ基を有する化合物)-
エポキシ化合物としては、一分子中にエポキシ基を2以上有する化合物であることが好ましい。エポキシ基は、200℃以下で架橋反応し、かつ、架橋に由来する脱水反応が起こらないため膜収縮が起きにくい。このため、エポキシ化合物を含有することは、樹脂組成物の低温硬化及び反りの抑制に効果的である。
【0196】
エポキシ化合物は、ポリエチレンオキサイド基を含有することが好ましい。これにより、より弾性率が低下し、反りを抑制することができる。ポリエチレンオキサイド基は、エチレンオキサイドの繰返し単位数が2以上のものを意味し、繰返し単位数が2~15であることが好ましい。
【0197】
エポキシ化合物の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ブチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等のアルキレングリコール型エポキシ樹脂又は多価アルコール炭化水素型エポキシ樹脂;ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコール型エポキシ樹脂;ポリメチル(グリシジロキシプロピル)シロキサン等のエポキシ基含有シリコーンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。具体的には、エピクロン(登録商標、以下同様)850-S、エピクロンHP-4032、エピクロンHP-7200、エピクロンHP-820、エピクロンHP-4700、エピクロンHP-4770、エピクロンEXA-830LVP、エピクロンEXA-8183、エピクロンEXA-8169、エピクロンN-660、エピクロンN-665-EXP-S、エピクロンN-740(以上商品名、DIC(株)製)、リカレジン(登録商標、以下同様)BEO-20E、リカレジンBEO-60E、リカレジンHBE-100、リカレジンDME-100、リカレジンL-200(以上商品名、新日本理化(株)製)、EP-4003S、EP-4000S、EP-4088S、EP-3950S(以上商品名、(株)ADEKA製)、セロキサイド(登録商標、以下同様)2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2000、EHPE3150、エポリード(登録商標、以下同様)GT401、エポリードPB4700、エポリードPB3600(以上商品名、(株)ダイセル製)、NC-3000、NC-3000-L、NC-3000-H、NC-3000-FH-75M、NC-3100、CER-3000-L、NC-2000-L、XD-1000、NC-7000L、NC-7300L、EPPN-501H、EPPN-501HY、EPPN-502H、EOCN-1020、EOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S、CER-1020、EPPN-201、BREN-S、BREN-10S(以上商品名、日本化薬(株)製)などが挙げられる。また以下の化合物も好適に用いられる。
【0198】
【化27】
【0199】
式中nは1~5の整数、mは1~20の整数である。
【0200】
上記構造の中でも、耐熱性と伸度向上を両立する点から、nは1~2、mは3~7であることが好ましい。
【0201】
-オキセタン化合物(オキセタニル基を有する化合物)-
オキセタン化合物としては、一分子中にオキセタン環を2つ以上有する化合物、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルメチル)オキセタン、1,4-ベンゼンジカルボン酸-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]エステル等を挙げることができる。具体的な例としては、東亞合成(株)製のアロンオキセタンシリーズ(例えば、OXT-121、OXT-221)が好適に使用することができ、これらは単独で、又は2種以上混合してもよい。
【0202】
-ベンゾオキサジン化合物(ベンゾオキサゾリル基を有する化合物)-
ベンゾオキサジン化合物は、開環付加反応に由来する架橋反応のため、硬化時に脱ガスが発生せず、更に熱収縮を小さくして反りの発生が抑えられることから好ましい。
【0203】
ベンゾオキサジン化合物の好ましい例としては、P-d型ベンゾオキサジン、F-a型ベンゾオキサジン(以上、商品名、四国化成工業社製)、ポリヒドロキシスチレン樹脂のベンゾオキサジン付加物、フェノールノボラック型ジヒドロベンゾオキサジン化合物が挙げられる。これらは単独で用いるか、又は2種以上混合してもよい。
【0204】
他の架橋剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し0.1~30質量%であることが好ましく、0.1~20質量%であることがより好ましく、0.5~15質量%であることが更に好ましく、1.0~10質量%であることが特に好ましい。他の架橋剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。他の架橋剤を2種以上含有する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0205】
〔増感剤〕
本発明の樹脂組成物は、増感剤を含んでいてもよい。増感剤は、特定の活性放射線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感剤は、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤などと接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用が生じる。これにより、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤は化学変化を起こして分解し、ラジカル、酸又は塩基を生成する。
使用可能な増感剤として、ベンゾフェノン系、ミヒラーズケトン系、クマリン系、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリフェニルメタン系、アントラキノン系、アントラセン系、アントラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ペンゾピラン系、インジゴ系等の化合物を使用することができる。
増感剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,5-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)シクロペンタン、2,6-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p-ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p-ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2-(p-ジメチルアミノフェニルビフェニレン)-ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3-ビス(4’-ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3’-カルボニル-ビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-アセチル-7-ジメチルアミノクマリン、3-エトキシカルボニル-7-ジメチルアミノクマリン、3-ベンジロキシカルボニル-7-ジメチルアミノクマリン、3-メトキシカルボニル-7-ジエチルアミノクマリン、3-エトキシカルボニル-7-ジエチルアミノクマリン(7-(ジエチルアミノ)クマリン-3-カルボン酸エチル)、N-フェニル-N’-エチルエタノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン、N-p-トリルジエタノールアミン、N-フェニルエタノールアミン、4-モルホリノベンゾフェノン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、2-メルカプトベンズイミダゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ナフト(1,2-d)チアゾール、2-(p-ジメチルアミノベンゾイル)スチレン、ジフェニルアセトアミド、ベンズアニリド、N-メチルアセトアニリド、3‘,4’-ジメチルアセトアニリド等が挙げられる。
また、他の増感色素を用いてもよい。
増感色素の詳細については、特開2016-027357号公報の段落0161~0163の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0206】
樹脂組成物が増感剤を含む場合、増感剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、0.01~20質量%が好ましく、0.1~15質量%がより好ましく、0.5~10質量%が更に好ましい。増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0207】
〔連鎖移動剤〕
本発明の樹脂組成物は、連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤は、例えば高分子辞典第三版(高分子学会編、2005年)683-684頁に定義されている。連鎖移動剤としては、例えば、分子内に-S-S-、-SO-S-、-N-O-、SH、PH、SiH、及びGeHを有する化合物群、RAFT(Reversible Addition Fragmentation chain Transfer)重合に用いられるチオカルボニルチオ基を有するジチオベンゾアート、トリチオカルボナート、ジチオカルバマート、キサンタート化合物等が用いられる。これらは、低活性のラジカルに水素を供与して、ラジカルを生成するか、若しくは、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成しうる。特に、チオール化合物を好ましく用いることができる。
【0208】
また、連鎖移動剤は、国際公開第2015/199219号の段落0152~0153に記載の化合物を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0209】
樹脂組成物が連鎖移動剤を有する場合、連鎖移動剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分100質量部に対し、0.01~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、0.5~5質量部が更に好ましい。連鎖移動剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。連鎖移動剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0210】
<塩基発生剤>
本発明の樹脂組成物は、塩基発生剤を含んでもよい。ここで、塩基発生剤とは、物理的または化学的な作用によって塩基を発生することができる化合物である。好ましい塩基発生剤としては、熱塩基発生剤および光塩基発生剤が挙げられる。
特に、樹脂組成物が環化樹脂の前駆体を含む場合、樹脂組成物は塩基発生剤を含むことが好ましい。樹脂組成物が熱塩基発生剤を含有することによって、例えば加熱により前駆体の環化反応を促進でき、硬化物の機械特性や耐薬品性が良好なものとなり、例えば半導体パッケージ中に含まれる再配線層用層間絶縁膜としての性能が良好となる。
塩基発生剤としては、イオン型塩基発生剤でもよく、非イオン型塩基発生剤でもよい。塩基発生剤から発生する塩基としては、例えば、2級アミン、3級アミンが挙げられる。
塩基発生剤は特に限定されず、公知の塩基発生剤を用いることができる。公知の塩基発生剤としては、例えば、カルバモイルオキシム化合物、カルバモイルヒドロキシルアミン化合物、カルバミン酸化合物、ホルムアミド化合物、アセトアミド化合物、カルバメート化合物、ベンジルカルバメート化合物、ニトロベンジルカルバメート化合物、スルホンアミド化合物、イミダゾール誘導体化合物、アミンイミド化合物、ピリジン誘導体化合物、α-アミノアセトフェノン誘導体化合物、4級アンモニウム塩誘導体化合物、イミニウム塩、ピリジニウム塩、α-ラクトン環誘導体化合物、アミンイミド化合物、フタルイミド誘導体化合物、アシルオキシイミノ化合物等が挙げられる。
非イオン型塩基発生剤の具体的な化合物としては、式(B1)、式(B2)、又は式(B3)で表される化合物が挙げられる。
【0211】
【化28】
【0212】
式(B1)及び式(B2)中、Rb、Rb及びRbはそれぞれ独立に、第三級アミン構造を有しない有機基、ハロゲン原子又は水素原子を表す。ただし、Rb及びRbが同時に水素原子となることはない。また、Rb、Rb及びRbはいずれもカルボキシ基を有することはない。なお、本明細書において第三級アミン構造とは、3価の窒素原子の3つの結合手がいずれも炭化水素基の炭素原子と共有結合している構造を指す。したがって、3価の窒素原子と結合した炭素原子が、カルボニル基を構成する炭素原子である場合、すなわち窒素原子とともにアミド基を形成する場合、第三級アミン構造ではない。
【0213】
式(B1)及び式(B2)中、Rb、Rb及びRbは、これらのうち少なくとも1つが環状構造を含むことが好ましく、少なくとも2つが環状構造を含むことがより好ましい。環状構造としては、単環及び縮合環のいずれであってもよく、単環又は単環が2つ縮合した縮合環が好ましい。単環は、5員環又は6員環が好ましく、6員環がより好ましい。単環は、シクロヘキサン環及びベンゼン環が好ましく、シクロヘキサン環がより好ましい。
【0214】
より具体的にRb及びRbは、水素原子、アルキル基(炭素数1~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10が更に好ましい)、又はアリールアルキル基(炭素数7~25が好ましく、7~19がより好ましく、7~12が更に好ましい)であることが好ましい。これらの基は、置換基を有していてもよい。RbとRbとは互いに結合して環を形成していてもよい。形成される環としては、4~7員の含窒素複素環が好ましい。Rb及びRbは、置換基を有してもよい直鎖、分岐、又は環状のアルキル基(炭素数1~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)であることが好ましく、置換基を有してもよいシクロアルキル基(炭素数3~24が好ましく、3~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)であることがより好ましく、置換基を有してもよいシクロヘキシル基が更に好ましい。
【0215】
Rbとしては、アルキル基(炭素数1~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~24が好ましく、2~12がより好ましく、2~6が更に好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~12が更に好ましい)、アリールアルケニル基(炭素数8~24が好ましく、8~20がより好ましく、8~16が更に好ましい)、アルコキシル基(炭素数1~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アリールオキシ基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~12が更に好ましい)、又はアリールアルキルオキシ基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~12が更に好ましい)が挙げられる。中でも、シクロアルキル基(炭素数3~24が好ましく、3~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アリールアルケニル基、アリールアルキルオキシ基が好ましい。Rbは更に置換基を有していてもよい。
【0216】
式(B1)で表される化合物は、下記式(B1-1)又は下記式(B1-2)で表される化合物であることが好ましい。
【0217】
【化29】
【0218】
式中、Rb11及びRb12、並びに、Rb31及びRb32は、それぞれ、式(B1)におけるRb及びRbと同じである。
Rb13はアルキル基(炭素数1~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~12が更に好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~12が更に好ましい)であり、置換基を有していてもよい。中でも、Rb13はアリールアルキル基が好ましい。
【0219】
Rb33及びRb34は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~8がより好ましく、1~3が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~8がより好ましく、2~3が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10が更に好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11が更に好ましい)であり、水素原子が好ましい。
【0220】
Rb35は、アルキル基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、3~8が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~10がより好ましく、3~8が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~12が更に好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~12が更に好ましい)であり、アリール基が好ましい。
【0221】
式(B1-1)で表される化合物は、式(B1-1a)で表される化合物であることが好ましい。
【0222】
【化30】
【0223】
Rb11及びRb12は式(B1-1)におけるRb11及びRb12と同義である。
Rb15及びRb16は水素原子、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10が更に好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11が更に好ましい)であり、水素原子又はメチル基が好ましい。
Rb17はアルキル基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、3~8が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~10がより好ましく、3~8が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~12が更に好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~12が更に好ましい)であり、中でもアリール基が好ましい。
【0224】
【化31】
【0225】
式(B3)において、Lは、隣接する酸素原子と炭素原子を連結する連結鎖の経路上に飽和炭化水素基を有する2価の炭化水素基であって、連結鎖の経路上の原子数が3以上である炭化水素基を表す。また、RN1およびRN2は、それぞれ独立に1価の有機基を表す。
【0226】
本明細書において、「連結鎖」とは、連結対象の2つの原子または原子群の間を結ぶ経路上の原子鎖のうち、これらの連結対象を最短(最小原子数)で結ぶものをいう。例えば、下記式で表される化合物において、Lは、フェニレンエチレン基から構成され、飽和炭化水素基としてエチレン基を有し、連結鎖は4つの炭素原子から構成されており、連結鎖の経路上の原子数(つまり、連結鎖を構成する原子の数であり、以下、「連結鎖長」あるいは「連結鎖の長さ」ともいう。)は4である。
【0227】
【化32】
【0228】
式(B3)におけるL中の炭素数(連結鎖中の炭素原子以外の炭素原子も含む)は、3~24であることが好ましい。上限は、12以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましく、8以下であることが特に好ましい。下限は、4以上であることがより好ましい。上記分子内環化反応を速やかに進行させる観点から、Lの連結鎖長の上限は、12以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、6以下であることがさらに好ましく、5以下であることが特に好ましい。特に、Lの連結鎖長は、4または5であることが好ましく、4であることが最も好ましい。塩基発生剤の具体的な好ましい化合物としては、例えば、国際公開第2020/066416号の段落番号0102~0168に記載の化合物、国際公開第2018/038002号の段落番号0143~0177に記載の化合物も挙げられる。
【0229】
また、塩基発生剤は下記式(N1)で表される化合物を含むことも好ましい。
【0230】
【化33】
【0231】
式(N1)中、RN1およびRN2はそれぞれ独立に1価の有機基を表し、RC1は水素原子または保護基を表し、Lは2価の連結基を表す。
【0232】
Lは2価の連結基であり、2価の有機基であることが好ましい。連結基の連結鎖長は1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。上限としては、12以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましい。連結鎖長とは、式中の2つのカルボニル基の間において最短の道程となる原子配列に存在する原子の数である。
【0233】
式(N1)中、RN1およびRN2はそれぞれ独立に1価の有機基(炭素数1~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12がさらに好ましい)を表し、炭化水素基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~10がさらに好ましい)であることが好ましく、具体的には、脂肪族炭化水素基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~10がさらに好ましい)または芳香族炭化水素基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)を挙げることができ、脂肪族炭化水素基が好ましい。RN1およびRN2として、脂肪族炭化水素基を用いると、発生する塩基の塩基性が高く好ましい。なお、脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、また、脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基が脂肪族炭化水素鎖中や芳香環中、置換基中に酸素原子を有していてもよい。特に、脂肪族炭化水素基が炭化水素鎖中に酸素原子を有している態様が例示される。
【0234】
N1およびRN2を構成する脂肪族炭化水素基としては、直鎖または分岐の鎖状アルキル基、環状アルキル基、鎖状アルキル基と環状アルキル基との組み合わせを含む基、酸素原子を鎖中に有するアルキル基が挙げられる。直鎖または分岐の鎖状アルキル基は、炭素数1~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12がさらに好ましい。直鎖または分岐の鎖状アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ターシャリーペンチル基、イソヘキシル基等が挙げられる。
環状アルキル基は、炭素数3~12が好ましく、3~6がより好ましい。環状アルキル基は、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
鎖状アルキル基と環状アルキル基との組み合わせを含む基は、炭素数4~24が好ましく、4~18がより好ましく、4~12がさらに好ましい。鎖状アルキル基と環状アルキル基との組み合わせを含む基は、例えば、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルプロピル基、メチルシクロヘキシルメチル基、エチルシクロヘキシルエチル基等が挙げられる。
酸素原子を鎖中に有するアルキル基は、炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~4がさらに好ましい。酸素原子を鎖中に有するアルキル基は、鎖状でも環状でもよく、直鎖でも分岐でもよい。
なかでも、後述する分解生成塩基の沸点を高める観点で、RN1およびRN2は炭素数5~12のアルキル基が好ましい。ただし、金属(例えば銅)の層と積層する際の密着性を重視する処方においては、環状のアルキル基を有する基や炭素数1~8のアルキル基であることが好ましい。
【0235】
N1およびRN2は互いに連結して環状構造を形成していてもよい。環状構造は、鎖中に酸素原子等を有していてもよい。また、RN1およびRN2が形成する環状構造は、単環であっても、縮合環であってもよいが、単環が好ましい。形成される環状構造としては、式(N1)中の窒素原子を含有する5員環または6員環が好ましく、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピロリン環、ピロリジン環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環、ピぺリジン環、ピペラジン環、モルホリン環などが挙げられ、ピロリン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環が好ましく挙げられる。
【0236】
C1は水素原子または保護基を表し、水素原子が好ましい。
保護基としては、酸または塩基の作用により分解する保護基が好ましく、酸で分解する保護基が好ましく挙げられる。
保護基の具体例としては、鎖状もしくは環状のアルキル基または鎖中に酸素原子を有する鎖状もしくは環状のアルキル基が挙げられる。鎖状もしくは環状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。鎖中に酸素原子を有する鎖状のアルキル基としては、アルキルオキシアルキル基が挙げられ、メチルオキシメチル(MOM)基、エチルオキシエチル(EE)基等が好ましい。鎖中に酸素原子を有する環状のアルキル基としては、エポキシ基、グリシジル基、オキセタニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル(THP)基等が挙げられる。
【0237】
式(N1)中、Lを構成する2価の連結基は、特に限定されないが、炭化水素基が好ましく、脂肪族炭化水素基がより好ましい。炭化水素基は、置換基を有していてもよく、炭化水素鎖の中に炭素原子以外の原子を有していてもよい。2価の連結基は、鎖中に酸素原子を有していてもよい2価の炭化水素連結基であることがより好ましく、鎖中に酸素原子を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、または鎖中に酸素原子を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基と2価の芳香族炭化水素基との組み合わせを含む基が更に好ましく、鎖中に酸素原子を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基が更により好ましい。これらの基は、酸素原子を有していなくてもよい。
2価の炭化水素連結基は、炭素数1~24が好ましく、2~12がより好ましく、2~6がさらに好ましい。2価の脂肪族炭化水素基は、炭素数1~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~4がさらに好ましい。2価の芳香族炭化水素基は、炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい。2価の脂肪族炭化水素基と2価の芳香族炭化水素基との組み合わせを含む基(例えば、アリーレンアルキル基)は、炭素数7~22が好ましく、7~18がより好ましく、7~10がさらに好ましい。
【0238】
連結基Lは、具体的には、直鎖または分岐の鎖状アルキレン基、環状アルキレン基、鎖状アルキレン基と環状アルキレン基との組み合わせを含む基、酸素原子を鎖中に有するアルキレン基、直鎖または分岐の鎖状のアルケニレン基、環状のアルケニレン基、アリーレン基、アリーレンアルキレン基が好ましい。
直鎖または分岐の鎖状アルキレン基は、炭素数1~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~4がさらに好ましい。
環状アルキレン基は、炭素数3~12が好ましく、3~6がより好ましい。
鎖状アルキレン基と環状アルキレン基との組み合わせを含む基は、炭素数4~24が好ましく、4~12がより好ましく、4~6がさらに好ましい。
酸素原子を鎖中に有するアルキレン基は、鎖状でも環状でもよく、直鎖でも分岐でもよい。酸素原子を鎖中に有するアルキレン基は、炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい。
【0239】
直鎖または分岐の鎖状のアルケニレン基は、炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい。直鎖または分岐の鎖状のアルケニレン基は、C=C結合の数は1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい。
環状のアルケニレン基は、炭素数3~12が好ましく、3~6がより好ましい。環状のアルケニレン基は、C=C結合の数は1~6が好ましく、1~4がより好ましく、1~2がさらに好ましい。
アリーレン基は、炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい。
アリーレンアルキレン基は、炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい。
中でも、鎖状アルキレン基、環状アルキレン基、酸素原子を鎖中に有するアルキレン基、鎖状のアルケニレン基、アリーレン基、アリーレンアルキレン基が好ましく、1,2-エチレン基、プロパンジイル基(特に1,3-プロパンジイル基)、シクロヘキサンジイル基(特に1,2-シクロヘキサンジイル基)、ビニレン基(特にシスビニレン基)、フェニレン基(1,2-フェニレン基)、フェニレンメチレン基(特に1,2-フェニレンメチレン基)、エチレンオキシエチレン基(特に1,2-エチレンオキシ-1,2-エチレン基)がより好ましい。
【0240】
塩基発生剤としては、下記の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0241】
【化34】
【0242】
非イオン型塩基発生剤の分子量は、800以下が好ましく、600以下がより好ましく、500以下が更に好ましい。下限は、100以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上が更に好ましい。
【0243】
イオン型塩基発生剤の具体的な好ましい化合物としては、例えば、国際公開第2018/038002号の段落番号0148~0163に記載の化合物が挙げられる。
【0244】
アンモニウム塩の具体例としては、下記の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0245】
【化35】
【0246】
イミニウム塩の具体例としては、下記の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0247】
【化36】
【0248】
樹脂組成物が塩基発生剤を含む場合、塩基発生剤の含有量は、樹脂組成物中の樹脂100質量部に対し、0.1~50質量部が好ましい。下限は、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上が更に好ましい。上限は、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下が更に好ましく、10質量部以下が一層好ましく、5質量部以下がより一層好ましく、4質量部以下が特に好ましい。
塩基発生剤は、1種又は2種以上を用いることができる。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0249】
<金属接着性改良剤>
本発明の樹脂組成物は、電極や配線などに用いられる金属材料との接着性を向上させる観点から、金属接着性改良剤を含むことが好ましい。金属接着性改良剤としては、アルコキシシリル基を有するシランカップリング剤、アルミニウム系接着助剤、チタン系接着助剤、スルホンアミド構造を有する化合物及びチオウレア構造を有する化合物、リン酸誘導体化合物、βケトエステル化合物、アミノ化合物等が挙げられる。
【0250】
〔シランカップリング剤〕
シランカップリング剤としては、例えば、国際公開第2021/112189号の段落0316に記載の化合物、特開2018-173573の段落0067~0078に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、特開2011-128358号公報の段落0050~0058に記載のように異なる2種以上のシランカップリング剤を用いることも好ましい。シランカップリング剤は、下記化合物を用いることも好ましい。以下の式中、Meはメチル基を、Etはエチル基を表す。
【0251】
【化37】
【0252】
他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物が挙げられる。これらは1種単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0253】
〔アルミニウム系接着助剤〕
アルミニウム系接着助剤としては、例えば、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等を挙げることができる。
【0254】
その他の金属接着性改良剤としては、特開2014-186186号公報の段落0046~0049に記載の化合物、特開2013-072935号公報の段落0032~0043に記載のスルフィド系化合物を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0255】
金属接着性改良剤の含有量は特定樹脂100質量部に対して、0.01~30質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、0.5~5質量部が更に好ましい。上記下限値以上とすることでパターンと金属層との接着性が良好となり、上記上限値以下とすることでパターンの耐熱性、機械特性が良好となる。金属接着性改良剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。2種以上用いる場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0256】
<マイグレーション抑制剤>
本発明の樹脂組成物は、マイグレーション抑制剤を更に含むことが好ましい。マイグレーション抑制剤を含むことにより、例えば、樹脂組成物を金属層(又は金属配線)に適用して膜を形成した際に、金属層(又は金属配線)由来の金属イオンが膜内へ移動することを効果的に抑制することができる。
【0257】
マイグレーション抑制剤としては、特に制限はないが、複素環(ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、2H-ピラン環及び6H-ピラン環、トリアジン環)を有する化合物、チオ尿素類及びスルファニル基を有する化合物、ヒンダードフェノール系化合物、サリチル酸誘導体系化合物、ヒドラジド誘導体系化合物が挙げられる。特に、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール等のトリアゾール系化合物、1H-テトラゾール、5-フェニルテトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール等のテトラゾール系化合物が好ましく使用できる。
【0258】
マイグレーション抑制剤としては、ハロゲンイオンなどの陰イオンを捕捉するイオントラップ剤を使用することもできる。
【0259】
その他のマイグレーション抑制剤としては、例えば、その他のマイグレーション抑制剤としては、特開2013-015701号公報の段落0094に記載の防錆剤、特開2009-283711号公報の段落0073~0076に記載の化合物、特開2011-059656号公報の段落0052に記載の化合物、特開2012-194520号公報の段落0114、0116及び0118に記載の化合物、国際公開第2015/199219号の段落0166に記載の化合物などを使用することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0260】
マイグレーション抑制剤の具体例としては、下記化合物を挙げることができる。
【0261】
【化38】
【0262】
本発明の樹脂組成物がマイグレーション抑制剤を有する場合、マイグレーション抑制剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.01~5.0質量%であることが好ましく、0.05~2.0質量%であることがより好ましく、0.1~1.0質量%であることが更に好ましい。
【0263】
マイグレーション抑制剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。マイグレーション抑制剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0264】
<重合禁止剤>
本発明の樹脂組成物は、重合禁止剤を含むことが好ましい。重合禁止剤としてはフェノール系化合物、キノン系化合物、アミノ系化合物、N-オキシルフリーラジカル化合物系化合物、ニトロ系化合物、ニトロソ系化合物、ヘテロ芳香環系化合物、金属化合物などが挙げられる。
【0265】
重合禁止剤の具体的な化合物としては、国際公開第2021/112189の段落0310に記載の化合物、p-ヒドロキノン、o-ヒドロキノン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルフリーラジカル、フェノキサジン等が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0266】
本発明の樹脂組成物が重合禁止剤を有する場合、重合禁止剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.01~20質量%であることが好ましく、0.02~15質量%であることがより好ましく、0.05~10質量%であることが更に好ましい。
【0267】
重合禁止剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。重合禁止剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0268】
<その他の添加剤>
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果が得られる範囲で、必要に応じて、各種の添加物、例えば、界面活性剤、高級脂肪酸誘導体、熱重合開始剤、無機粒子、紫外線吸収剤、有機チタン化合物、酸化防止剤、凝集防止剤、フェノール系化合物、他の高分子化合物、可塑剤及びその他の助剤類(例えば、消泡剤、難燃剤など)等を含んでいてもよい。これらの成分を適宜含有させることにより、膜物性などの性質を調整することができる。これらの成分は、例えば、特開2012-003225号公報の段落番号0183以降(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の段落番号0237)の記載、特開2008-250074号公報の段落番号0101~0104、0107~0109等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。これらの添加剤を配合する場合、その合計含有量は本発明の樹脂組成物の固形分の3質量%以下とすることが好ましい。
【0269】
〔界面活性剤〕
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、炭化水素系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。界面活性剤はノニオン型界面活性剤であってもよく、カチオン型界面活性剤であってもよく、アニオン型界面活性剤であってもよい。
【0270】
本発明の感光性樹脂組成物に界面活性剤を含有させることで、塗布液組成物を調製したときの液特性(特に、流動性)がより向上し、塗布厚の均一性や省液性をより改善することができる。即ち、界面活性剤を含有する塗布液を用いて膜形成する場合、被塗布面と塗布液との界面張力が低下して、被塗布面への濡れ性が改善され、被塗布面への塗布性が向上する。このため、厚みムラが小さい均一な膜の形成をより好適に行うことができる。
【0271】
フッ素系界面活性剤としては、国際公開第2021/112189号の段落0328に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができ、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0272】
【化39】
【0273】
上記化合物の重量平均分子量は、3,000~50,000であることが好ましく、5,000~30,000であることがより好ましい。
フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体をフッ素系界面活性剤として用いることもできる。具体例としては、特開2010-164965号公報の段落0050~0090および段落0289~0295に記載された化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、市販品としては、例えばDIC(株)製のメガファックRS-101、RS-102、RS-718K等が挙げられる。
【0274】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3~40質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましく、7~25質量%が特に好ましい。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、組成物中における溶解性も良好である。
【0275】
シリコーン系界面活性剤、炭化水素系界面活性剤、ノニオン型界面活性剤、カチオン型界面活性剤、アニオン型界面活性剤としては、それぞれ、国際公開第2021/112189号の段落0329~0334に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0276】
界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
界面活性剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.001~2.0質量%が好ましく、0.005~1.0質量%がより好ましい。
【0277】
〔高級脂肪酸誘導体〕
本発明の樹脂組成物は、酸素に起因する重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体を添加して、塗布後の乾燥の過程で本発明の樹脂組成物の表面に偏在させてもよい。
【0278】
また、高級脂肪酸誘導体は、国際公開第2015/199219号の段落0155に記載の化合物を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0279】
樹脂組成物が高級脂肪酸誘導体を有する場合、高級脂肪酸誘導体の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.1~10質量%であることが好ましい。高級脂肪酸誘導体は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。高級脂肪酸誘導体が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0280】
〔熱重合開始剤〕
熱重合開始剤としては、例えば、熱ラジカル重合開始剤が挙げられる。熱ラジカル重合開始剤は、熱のエネルギーによってラジカルを発生し、重合性を有する化合物の重合反応を開始又は促進させる化合物である。熱ラジカル重合開始剤を添加することによって樹脂及び重合性化合物の重合反応を進行させることもできるので、より耐溶剤性を向上できる。また、光重合開始剤も熱により重合を開始する機能を有する場合があり、熱重合開始剤として添加することができる場合がある。
【0281】
熱ラジカル重合開始剤として、具体的には、特開2008-063554号公報の段落0074~0118に記載されている化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0282】
熱重合開始剤を含む場合、その含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し0.1~30質量%であることが好ましく、0.1~20質量%であることがより好ましく、0.5~15質量%であることが更に好ましい。熱重合開始剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。熱重合開始剤を2種以上含有する場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0283】
〔無機粒子〕
無機粒子として、具体的には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、ガラス等が挙げられる。
【0284】
無機粒子の平均粒子径は、0.01~2.0μmが好ましく、0.02~1.5μmがより好ましく、0.03~1.0μmがさらに好ましく、0.04~0.5μmが特に好ましい。
無機粒子の上記平均粒子径は、一次粒子径であり、また体積平均粒子径である。体積平均粒子径は、例えば、Nanotrac WAVE II EX-150(日機装社製)による動的光散乱法で測定できる。
上記測定が困難である場合は、遠心沈降光透過法、X線透過法、レーザー回折・散乱法で測定することもできる。
【0285】
〔紫外線吸収剤〕
紫外線吸収剤としては、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、トリアジン系などの紫外線吸収剤が挙げられる。
紫外線吸収剤の具体例としては、国際公開第2021/112189号の段落0341~0342に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0286】
紫外線吸収剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物が紫外線吸収剤を含む場合、紫外線吸収剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分質量に対して、0.001質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下であることがより好ましい。
【0287】
〔有機チタン化合物〕
樹脂組成物が有機チタン化合物を含有することにより、低温で硬化した場合であっても耐薬品性に優れる樹脂層を形成できる。
【0288】
使用可能な有機チタン化合物としては、チタン原子に有機基が共有結合又はイオン結合を介して結合しているものが挙げられる。
有機チタン化合物の具体例を、以下のI)~VII)に示す:
I)チタンキレート化合物:樹脂組成物の保存安定性がよく、良好な硬化パターンが得られることから、アルコキシ基を2個以上有するチタンキレート化合物がより好ましい。具体的な例は、チタニウムビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキサイド、チタニウムジ(n-ブトキサイド)ビス(2,4-ペンタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(2,4-ペンタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)等である。
II)テトラアルコキシチタン化合物:例えば、チタニウムテトラ(n-ブトキサイド)、チタニウムテトラエトキサイド、チタニウムテトラ(2-エチルヘキソキサイド)、チタニウムテトライソブトキサイド、チタニウムテトライソプロポキサイド、チタニウムテトラメトキサイド、チタニウムテトラメトキシプロポキサイド、チタニウムテトラメチルフェノキサイド、チタニウムテトラ(n-ノニロキサイド)、チタニウムテトラ(n-プロポキサイド)、チタニウムテトラステアリロキサイド、チタニウムテトラキス[ビス{2,2-(アリロキシメチル)ブトキサイド}]等である。
III)チタノセン化合物:例えば、ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリメトキサイド、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロフェニル)チタニウム、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム等である。
IV)モノアルコキシチタン化合物:例えば、チタニウムトリス(ジオクチルホスフェート)イソプロポキサイド、チタニウムトリス(ドデシルベンゼンスルホネート)イソプロポキサイド等である。
V)チタニウムオキサイド化合物:例えば、チタニウムオキサイドビス(ペンタンジオネート)、チタニウムオキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、フタロシアニンチタニウムオキサイド等である。
VI)チタニウムテトラアセチルアセトネート化合物:例えば、チタニウムテトラアセチルアセトネート等である。
VII)チタネートカップリング剤:例えば、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート等である。
【0289】
なかでも、有機チタン化合物としては、より良好な耐薬品性の観点から、上記I)チタンキレート化合物、II)テトラアルコキシチタン化合物、及びIII)チタノセン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。特に、チタニウムジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムテトラ(n-ブトキサイド)、及びビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウムが好ましい。
【0290】
有機チタン化合物を含む場合、その含有量は、特定樹脂100質量部に対し、0.05~10質量部であることが好ましく、0.1~2質量部であることがより好ましい。含有量が0.05質量部以上である場合、得られる硬化パターンの耐熱性及び耐薬品性がより良好となり、10質量部以下である場合、組成物の保存安定性により優れる。
【0291】
〔酸化防止剤〕
添加剤として酸化防止剤を含有することで、硬化後の膜の伸度特性や、金属材料との密着性を向上させることができる。酸化防止剤としては、フェノール化合物、亜リン酸エステル化合物、チオエーテル化合物などが挙げられる。酸化防止剤の具体例としては、国際公開第2021/112189号の段落0348~0357に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0292】
酸化防止剤の含有量は、特定樹脂100質量部に対し、0.1~10質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。添加量を0.1質量部以上とすることにより、高温高湿環境下においても伸度特性や金属材料に対する密着性向上の効果が得られやすく、また10質量部以下とすることにより、例えば感光剤との相互作用により、樹脂組成物の感度が向上する。酸化防止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0293】
〔凝集防止剤〕
凝集防止剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0294】
凝集防止剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物が凝集防止剤を含む場合、凝集防止剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分質量に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0295】
〔フェノール系化合物〕
フェノール系化合物としては、Bis-Z、BisP-EZ、TekP-4HBPA、TrisP-HAP、TrisP-PA、BisOCHP-Z、BisP-MZ、BisP-PZ、BisP-IPZ、BisOCP-IPZ、BisP-CP、BisRS-2P、BisRS-3P、BisP-OCHP、メチレントリス-FR-CR、BisRS-26X(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、BIP-PC、BIR-PC、BIR-PTBP、BIR-BIPC-F(以上、商品名、旭有機材(株)製)等が挙げられる。
【0296】
フェノール系化合物は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物がフェノール系化合物を含む場合、フェノール系化合物の含有量は、樹脂組成物の全固形分質量に対して、0.01質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0297】
〔他の高分子化合物〕
他の高分子化合物としては、シロキサン樹脂、(メタ)アクリル酸を共重合した(メタ)アクリルポリマー、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂およびそれらの共重合体などが挙げられる。他の高分子化合物はメチロール基、アルコキシメチル基、エポキシ基などの架橋基が導入された変性体であってもよい。
【0298】
他の高分子化合物は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物が他の高分子化合物を含む場合、他の高分子化合物の含有量は、樹脂組成物の全固形分質量に対して、0.01質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0299】
<樹脂組成物の特性>
本発明の樹脂組成物の粘度は、樹脂組成物の固形分濃度により調整できる。塗布膜厚の観点から、1,000mm/s~12,000mm/sが好ましく、2,000mm/s~10,000mm/sがより好ましく、2,500mm/s~8,000mm/sが更に好ましい。上記範囲であれば、均一性の高い塗布膜を得ることが容易になる。1,000mm/s以上であれば、例えば再配線用絶縁膜として必要とされる膜厚で塗布することが容易であり、12,000mm/s以下であれば、塗布面状に優れた塗膜が得られる。
【0300】
<樹脂組成物の含有物質についての制限>
本発明の樹脂組成物の含水率は、2.0質量%未満であることが好ましく、1.5質量%未満であることがより好ましく、1.0質量%未満であることが更に好ましい。2.0%未満であれば、樹脂組成物の保存安定性が向上する。
水分の含有量を維持する方法としては、保管条件における湿度の調整、保管時の収容容器の空隙率低減などが挙げられる。
【0301】
本発明の樹脂組成物の金属含有量は、絶縁性の観点から、5質量ppm(parts per million)未満が好ましく、1質量ppm未満がより好ましく、0.5質量ppm未満が更に好ましい。金属としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、銅、クロム、ニッケルなどが挙げられるが、有機化合物と金属との錯体として含まれる金属は除く。金属を複数含む場合は、これらの金属の合計が上記範囲であることが好ましい。
【0302】
また、本発明の樹脂組成物に意図せずに含まれる金属不純物を低減する方法としては、本発明の樹脂組成物を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、本発明の樹脂組成物を構成する原料に対してフィルターろ過を行う、装置内をポリテトラフルオロエチレン等でライニングしてコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法を挙げることができる。
【0303】
本発明の樹脂組成物の収容容器としては従来公知の収容容器を用いることができる。収容容器としては、原材料や本発明の樹脂組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成された多層ボトルや、6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0304】
<樹脂組成物の硬化物>
本発明の樹脂組成物を硬化することにより、樹脂組成物の硬化物を得ることができる。
本発明の硬化物は、樹脂組成物を硬化してなる硬化物である。
樹脂組成物の硬化は加熱によるものであることが好ましく、加熱温度が120℃~400℃がより好ましく、140℃~380℃が更に好ましく、170℃~350℃が特に好ましい。樹脂組成物の硬化物の形態は、特に限定されず、フィルム状、棒状、球状、ペレット状など、用途に合わせて選択することができる。本発明において、硬化物は、フィルム状であることが好ましい。樹脂組成物のパターン加工によって、壁面への保護膜の形成、導通のためのビアホール形成、インピーダンスや静電容量あるいは内部応力の調整、放熱機能付与など、用途にあわせて、硬化物の形状を選択することもできる。硬化物(硬化物からなる膜)の膜厚は、0.5μm以上150μm以下であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物を硬化した際の収縮率は、50%以下が好ましく、45%以下がより好ましく、40%以下が更に好ましい。ここで、収縮率は、樹脂組成物の硬化前後の体積変化の百分率を指し、下記の式より算出することができる。
収縮率[%]=100-(硬化後の体積÷硬化前の体積)×100
【0305】
<樹脂組成物の硬化物の特性>
本発明の樹脂組成物の硬化物のイミド化反応率は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。70%以上であれば、機械特性に優れた硬化物となる場合がある。
本発明の樹脂組成物の硬化物の破断伸びは、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上が更に好ましい。
本発明の樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、180℃以上であることが好ましく、210℃以上であることがより好ましく、230℃以上であることがさらに好ましい。
【0306】
<樹脂組成物の調製>
本発明の樹脂組成物は、上記各成分を混合して調製することができる。混合方法は特に限定はなく、従来公知の方法で行うことができる。
混合方法としては、撹拌羽による混合、ボールミルによる混合、タンクを回転させる混合などが挙げられる。
混合中の温度は10~30℃が好ましく、15~25℃がより好ましい。
【0307】
本発明の樹脂組成物中のゴミや微粒子等の異物を除去する目的で、フィルターを用いたろ過を行うことが好ましい。フィルター孔径は、例えば5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.5μm以下が更に好ましく、0.1μm以下が更により好ましい。フィルターの材質は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン又はナイロンが好ましい。フィルターの材質がポリエチレンである場合はHDPE(高密度ポリエチレン)であることがより好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルターろ過工程では、複数種のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種のフィルターを使用する場合は、孔径又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。接続態様としては、例えば、1段目として孔径1μmのHDPEフィルターを、2段目として孔径0.2μmのHDPEフィルターを、直列に接続した態様が挙げられる。また、各種材料を複数回ろ過してもよい。複数回ろ過する場合は、循環ろ過であってもよい。また、加圧してろ過を行ってもよい。加圧してろ過を行う場合、加圧する圧力は例えば0.01MPa以上1.0MPa以下が好ましく、0.03MPa以上0.9MPa以下がより好ましく、0.05MPa以上0.7MPa以下が更に好ましく、0.05MPa以上0.5MPa以下が更により好ましい。
フィルターを用いたろ過の他、吸着材を用いた不純物の除去処理を行ってもよい。フィルターろ過と吸着材を用いた不純物除去処理とを組み合わせてもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができる。例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機系吸着材、活性炭などの有機系吸着材が挙げられる。
フィルターを用いたろ過後、ボトルに充填した樹脂組成物を減圧下に置き、脱気する工程を施しても良い。
【0308】
(硬化物の製造方法)
本発明の硬化物の製造方法は、樹脂組成物を基材上に適用して膜を形成する膜形成工程を含むことが好ましい。
硬化物の製造方法は、上記膜形成工程、膜形成工程により形成された膜を選択的に露光する露光工程、及び、露光工程により露光された膜を現像液を用いて現像してパターンを形成する現像工程を含むことがより好ましい。
硬化物の製造方法は、上記膜形成工程、上記露光工程、上記現像工程、並びに、現像工程により得られたパターンを加熱する加熱工程及び現像工程により得られたパターンを露光する現像後露光工程の少なくとも一方を含むことが特に好ましい。
また、硬化物の製造方法は、上記膜形成工程、及び、上記膜を加熱する工程を含むことも好ましい。
以下、各工程の詳細について説明する。
【0309】
<膜形成工程>
本発明の樹脂組成物は、基材上に適用して膜を形成する膜形成工程に用いることができる。
本発明の硬化物の製造方法は、樹脂組成物を基材上に適用して膜を形成する膜形成工程を含むことが好ましい。
【0310】
〔基材〕
基材の種類は、用途に応じて適宜定めることができ、特に限定されない。基材としては、例えば、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの半導体作製基材、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基材(例えば、金属から形成された基材、及び、金属層が例えばめっきや蒸着等により形成された基材のいずれであってもよい)、紙、SOG(Spin On Glass)、TFT(薄膜トランジスタ)アレイ基材、モールド基材、プラズマディスプレイパネル(PDP)の電極板などが挙げられる。基材は、特に、半導体作製基材が好ましく、シリコン基材、Cu基材およびモールド基材がより好ましい。
これらの基材にはヘキサメチルジシラザン(HMDS)等による密着層や酸化層などの層が表面に設けられていてもよい。
基材の形状は特に限定されず、円形状であってもよく、矩形状であってもよい。
基材のサイズは、円形状であれば、例えば直径が100~450mmが好ましく、200~450mmがより好ましい。矩形状であれば、例えば短辺の長さが100~1000mmが好ましく、200~700mmがより好ましい。
基材としては、例えば板状、好ましくはパネル状の基材(基板)が用いられる。
【0311】
樹脂層(例えば、硬化物からなる層)の表面や金属層の表面に樹脂組成物を適用して膜を形成する場合は、樹脂層や金属層が基材となる。
【0312】
樹脂組成物を基材上に適用する手段としては、塗布が好ましい。
適用する手段としては、具体的には、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スプレーコート法、スピンコート法、スリットコート法、インクジェット法などが挙げられる。膜の厚さの均一性の観点から、スピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法、又は、インクジェット法が好ましく、膜の厚さの均一性の観点および生産性の観点からスピンコート法およびスリットコート法がより好ましい。適用する手段に応じて樹脂組成物の固形分濃度や塗布条件を調整することで、所望の厚さの膜を得ることができる。また、基材の形状によっても塗布方法を適宜選択でき、ウエハ等の円形基材であればスピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法等が好ましく、矩形基材であればスリットコート法、スプレーコート法、インクジェット法等が好ましい。スピンコート法の場合は、例えば、500~3,500rpmの回転数で、10秒~3分程度適用することができる。
また、あらかじめ仮支持体上に上記付与方法によって付与して形成した塗膜を、基材上に転写する方法を適用することもできる。
転写方法に関しては特開2006-023696号公報の段落0023、0036~0051や、特開2006-047592号公報の段落0096~0108に記載の作製方法を好適に用いることができる。
また、基材の端部において余分な膜の除去を行なう工程を行なってもよい。このような工程の例には、エッジビードリンス(EBR)、バックリンスなどが挙げられる。
樹脂組成物を基材に塗布する前に基材を種々の溶剤を塗布し、基材の濡れ性を向上させた後に樹脂組成物を塗布するプリウェット工程を採用しても良い。
【0313】
<乾燥工程>
上記膜は、膜形成工程(層形成工程)の後に、溶剤を除去するため、形成された膜(層)を乾燥する工程(乾燥工程)に供されてもよい。
すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、膜形成工程により形成された膜を乾燥する乾燥工程を含んでもよい。
上記乾燥工程は膜形成工程の後、露光工程の前に行われることが好ましい。
乾燥工程における膜の乾燥温度は50~150℃が好ましく、70℃~130℃がより好ましく、90℃~110℃が更に好ましい。また、減圧により乾燥を行っても良い。乾燥時間としては、30秒~20分が例示され、1分~10分が好ましく、2分~7分がより好ましい。
【0314】
<露光工程>
上記膜は、膜を選択的に露光する露光工程に供されてもよい。
硬化物の製造方法は、膜形成工程により形成された膜を選択的に露光する露光工程を含んでもよい。
選択的に露光するとは、膜の一部を露光することを意味している。また、選択的に露光することにより、膜には露光された領域(露光部)と露光されていない領域(非露光部)が形成される。
露光量は、本発明の樹脂組成物を硬化できる限り特に限定されないが、例えば、波長365nmでの露光エネルギー換算で50~10,000mJ/cmが好ましく、200~8,000mJ/cmがより好ましい。
【0315】
露光波長は、190~1,000nmの範囲で適宜定めることができ、240~550nmが好ましい。
【0316】
露光波長は、光源との関係でいうと、(1)半導体レーザー(波長 830nm、532nm、488nm、405nm、375nm、355nm etc.)、(2)メタルハライドランプ、(3)高圧水銀灯、g線(波長 436nm)、h線(波長 405nm)、i線(波長 365nm)、ブロード(g,h,i線の3波長)、(4)エキシマレーザー、KrFエキシマレーザー(波長 248nm)、ArFエキシマレーザー(波長 193nm)、Fエキシマレーザー(波長 157nm)、(5)極紫外線;EUV(波長 13.6nm)、(6)電子線、(7)YAGレーザーの第二高調波532nm、第三高調波355nm等が挙げられる。本発明の樹脂組成物については、特に高圧水銀灯による露光が好ましく、露光感度の観点で、i線による露光がより好ましい。
露光の方式は特に限定されず、本発明の樹脂組成物からなる膜の少なくとも一部が露光される方式であればよいが、フォトマスクを使用した露光、レーザーダイレクトイメージング法による露光等が挙げられる。
【0317】
<露光後加熱工程>
上記膜は、露光後に加熱する工程(露光後加熱工程)に供されてもよい。
すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、露光工程により露光された膜を加熱する露光後加熱工程を含んでもよい。
露光後加熱工程は、露光工程後、現像工程前に行うことができる。
露光後加熱工程における加熱温度は、50℃~140℃が好ましく、60℃~120℃がより好ましい。
露光後加熱工程における加熱時間は、30秒間~300分間が好ましく、1分間~10分間がより好ましい。
露光後加熱工程における昇温速度は、加熱開始時の温度から最高加熱温度まで1~12℃/分が好ましく、2~10℃/分がより好ましく、3~10℃/分が更に好ましい。
また、昇温速度は加熱途中で適宜変更してもよい。
露光後加熱工程における加熱手段としては、特に限定されず、公知のホットプレート、オーブン、赤外線ヒーター等を用いることができる。
また、加熱に際し、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを流す等により、低酸素濃度の雰囲気下で行うことも好ましい。
【0318】
<現像工程>
露光後の上記膜は、現像液を用いて現像してパターンを形成する現像工程に供されてもよい。
すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、露光工程により露光された膜を現像液を用いて現像してパターンを形成する現像工程を含んでもよい。
現像を行うことにより、膜の露光部及び非露光部のうち一方が除去され、パターンが形成される。
ここで、膜の非露光部が現像工程により除去される現像をネガ型現像といい、膜の露光部が現像工程により除去される現像をポジ型現像という。
【0319】
〔現像液〕
現像工程において用いられる現像液としては、アルカリ水溶液、又は、有機溶剤を含む現像液が挙げられる。
【0320】
現像液がアルカリ水溶液である場合、アルカリ水溶液が含みうる塩基性化合物としては、無機アルカリ類、第一級アミン類、第二級アミン類、第三級アミン類、第四級アンモニウム塩が挙げられ、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドドキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラペンチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリアミルアンモニウムヒドロキシド、ジブチルジペンチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジンが好ましく、より好ましくはTMAHである。現像液における塩基性化合物の含有量は、現像液全質量中0.01~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.3~3質量%が更に好ましい。
【0321】
現像液が有機溶剤を含む場合、有機溶剤としては、国際公開第2021/112189号の段落0387に記載の化合物を用いることができる。この内容は本明細書に組み込まれる。また、アルコール類として、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、オクタノール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルイソブチルカルビノール、トリエチレングリコール等、アミド類として、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等も好適に挙げられる。
【0322】
現像液が有機溶剤を含む場合、有機溶剤は1種又は、2種以上を混合して使用することができる。本発明では特にシクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、及び、シクロヘキサノンよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む現像液が好ましく、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン及びジメチルスルホキシドよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む現像液がより好ましく、シクロペンタノンを含む現像液が特に好ましい。
【0323】
現像液が有機溶剤を含む場合、現像液の全質量に対する有機溶剤の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。また、上記含有量は、100質量%であってもよい。
【0324】
現像液が有機溶剤を含む場合、現像液は塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方を更に含んでもよい。現像液中の塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方がパターンに浸透することにより、パターンの破断伸び等の性能が向上する場合がある。
【0325】
塩基性化合物としては、硬化後の膜に残存した場合の信頼性(硬化物を更に加熱した場合の基材との密着性)の観点からは、有機塩基が好ましい。
塩基性化合物としては、アミノ基を有する塩基性化合物が好ましく、1級アミン、2級アミン、3級アミン、アンモニウム塩、3級アミドなどが好ましいが、イミド化反応を促進する為には、1級アミン、2級アミン、3級アミン又はアンモニウム塩が好ましく、2級アミン、3級アミン又はアンモニウム塩がより好ましく、2級アミン又は3級アミンが更に好ましく、3級アミンが特に好ましい。
塩基性化合物としては、硬化物の機械特性(破断伸び)の観点からは、硬化膜(得られる硬化物)中に残存しにくいものが好ましく、環化の促進の観点からは、気化等により、加熱前に残存量が減少しにくいものであることが好ましい。
したがって、塩基性化合物の沸点は、常圧(101,325Pa)で30℃~350℃が好ましく、80℃~270℃がより好ましく、100℃~230℃が更に好ましい。
塩基性化合物の沸点は、現像液に含まれる有機溶剤の沸点から20℃を減算した温度よりも高いことが好ましく、現像液に含まれる有機溶剤の沸点よりも高いことがより好ましい。
例えば、有機溶剤の沸点が100℃である場合、使用される塩基性化合物は、沸点が80℃以上が好ましく、沸点が100℃以上がより好ましい。
現像液は塩基性化合物を1種のみ含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0326】
塩基性化合物の具体例としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ヘキシルアミン、ドデシルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘキシルメチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、アニリン、N-メチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、ピリジン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、DBU(ジアザビシクロウンデセン)、DABCO(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、エチレンジアミン、ブタンジアミン、1,5-ジアミノペンタン、N-メチルヘキシルアミン、N-メチルジシクロヘキシルアミン、トリオクチルアミン、N-エチルエチレンジアミン、N,N―ジエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラブチルー1,6-ヘキサンジアミン、スペルミジン、ジアミノシクロヘキサン、ビス(2-メトキシエチル)アミン、ピペリジン、メチルピペリジン、ジメチルピペリジン、ピペラジン、トロパン、N-フェニルベンジルアミン、1,2-ジアニリノエタン、2-アミノエタノール、トルイジン、アミノフェノール、ヘキシルアニリン、フェニレンジアミン、フェニルエチルアミン、ジベンジルアミン、ピロール、N-メチルピロール、N,N,N,Nテトラメチルエチレンジアミン、N,N,N,N-テトラメチルー1,3-プロパンジアミン等が挙げられる。
【0327】
塩基発生剤の好ましい態様は、上述の組成物に含まれる塩基発生剤の好ましい態様と同様である。特に、塩基発生剤は熱塩基発生剤であることが好ましい。
【0328】
現像液が塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方を含む場合、塩基性化合物又は塩基発生剤の含有量は、現像液の全質量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。上記含有量の下限は特に限定されないが、例えば0.1質量%以上が好ましい。
塩基性化合物又は塩基発生剤が現像液が用いられる環境で固体である場合、塩基性化合物又は塩基発生剤の含有量は、現像液の全固形分に対して、70~100質量%であることも好ましい。
現像液は塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方を1種のみ含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方が2種以上である場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0329】
現像液は、他の成分を更に含んでもよい。
他の成分としては、例えば、公知の界面活性剤や公知の消泡剤等が挙げられる。
【0330】
〔現像液の供給方法〕
現像液の供給方法は、所望のパターンを形成できれば特に制限は無く、膜が形成された基材を現像液に浸漬する方法、基材上に形成された膜にノズルを用いて現像液を供給するパドル現像、または、現像液を連続供給する方法がある。ノズルの種類は特に制限は無く、ストレートノズル、シャワーノズル、スプレーノズル等が挙げられる。
現像液の浸透性、非画像部の除去性、製造上の効率の観点から、現像液をストレートノズルで供給する方法、又はスプレーノズルにて連続供給する方法が好ましく、画像部への現像液の浸透性の観点からは、スプレーノズルで供給する方法がより好ましい。
また、現像液をストレートノズルにて連続供給後、基材をスピンし現像液を基材上から除去し、スピン乾燥後に再度ストレートノズルにて連続供給後、基材をスピンし現像液を基材上から除去する工程を採用してもよく、この工程を複数回繰り返しても良い。
現像工程における現像液の供給方法としては、現像液が連続的に基材に供給され続ける工程、基材上で現像液が略静止状態で保たれる工程、基材上で現像液を超音波等で振動させる工程及びそれらを組み合わせた工程などが挙げられる。
【0331】
現像時間としては、10秒~10分間が好ましく、20秒~5分間がより好ましい。現像時の現像液の温度は、特に定めるものではないが、10~45℃が好ましく、18℃~30℃がより好ましい。
【0332】
現像工程において、現像液を用いた処理の後、更に、リンス液によるパターンの洗浄(リンス)を行ってもよい。また、パターン上に接する現像液が乾燥しきらないうちにリンス液を供給するなどの方法を採用しても良い。
【0333】
〔リンス液〕
現像液がアルカリ水溶液である場合、リンス液としては、例えば水を用いることができる。現像液が有機溶剤を含む現像液である場合、リンス液としては、例えば、現像液に含まれる溶剤とは異なる溶剤(例えば、水、現像液に含まれる有機溶剤とは異なる有機溶剤)を用いることができる。
【0334】
リンス液が有機溶剤を含む場合の有機溶剤としては、上述の現像液が有機溶剤を含む場合において例示した有機溶剤と同様の有機溶剤が挙げられる。
リンス液に含まれる有機溶剤は、現像液に含まれる有機溶剤とは異なる有機溶剤であることが好ましく、現像液に含まれる有機溶剤よりも、パターンの溶解度が小さい有機溶剤がより好ましい。
【0335】
リンス液が有機溶剤を含む場合、有機溶剤は1種又は、2種以上を混合して使用することができる。有機溶剤は、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、シクロヘキサノン、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、PGMEが好ましく、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、PGMEA、PGMEがより好ましく、シクロヘキサノン、PGMEAがさらに好ましい。
【0336】
リンス液が有機溶剤を含む場合、リンス液の全質量に対し、有機溶剤は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。また、リンス液の全質量に対し、有機溶剤は100質量%であってもよい。
【0337】
リンス液は塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方を含んでもよい。
特に限定されないが、現像液が有機溶剤を含む場合、リンス液が有機溶剤と塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方とを含む態様も、本発明の好ましい態様の一つである。
リンス液に含まれる塩基性化合物及び塩基発生剤としては、上述の現像液が有機溶剤を含む場合に含まれてもよい塩基性化合物及び塩基発生剤として例示された化合物が挙げられ、好ましい態様も同様である。
リンス液に含まれる塩基性化合物及び塩基発生剤は、リンス液における溶剤への溶解度等を考慮して選択すればよい。
【0338】
リンス液が塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方を含む場合、塩基性化合物又は塩基発生剤の含有量はリンス液の全質量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。上記含有量の下限は特に限定されないが、例えば0.1質量%以上が好ましい。
塩基性化合物又は塩基発生剤がリンス液が用いられる環境で固体である場合、塩基性化合物又は塩基発生剤の含有量は、リンス液の全固形分に対して、70~100質量%であることも好ましい。
リンス液が塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方を含む場合、リンス液は塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方を1種のみ含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方が2種以上である場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0339】
リンス液は、他の成分を更に含んでもよい。
他の成分としては、例えば、公知の界面活性剤や公知の消泡剤等が挙げられる。
【0340】
〔リンス液の供給方法〕
リンス液の供給方法は、所望のパターンを形成できれば特に制限は無く、基材をリンス液に浸漬する方法、基材に液盛りによりリンス液を供給する方法、基材にリンス液をシャワーで供給する方法、基材上にストレートノズル等の手段によりリンス液を連続供給する方法がある。
リンス液の浸透性、非画像部の除去性、製造上の効率の観点から、リンス液をシャワーノズル、ストレートノズル、スプレーノズルなどで供給する方法があり、スプレーノズルにて連続供給する方法が好ましく、画像部へのリンス液の浸透性の観点からは、スプレーノズルで供給する方法がより好ましい。ノズルの種類は特に制限は無く、ストレートノズル、シャワーノズル、スプレーノズル等が挙げられる。
すなわち、リンス工程は、リンス液を上記露光後の膜に対してストレートノズルにより供給、又は、連続供給する工程であることが好ましく、リンス液をスプレーノズルにより供給する工程であることがより好ましい。
リンス工程におけるリンス液の供給方法としては、リンス液が連続的に基材に供給され続ける工程、基材上でリンス液が略静止状態で保たれる工程、基材上でリンス液を超音波等で振動させる工程及びそれらを組み合わせた工程などが採用可能である。
【0341】
リンス時間としては、10秒~10分間が好ましく、20秒~5分間がより好ましい。リンス時のリンス液の温度は、特に定めるものではないが、10~45℃が好ましく、18℃~30℃がより好ましい。
【0342】
現像工程において、現像液を用いた処理の後、又は、リンス液によるパターンの洗浄の後に、処理液とパターンとを接触させる工程を含んでもよい。また、パターン上に接する現像液又はリンス液が乾燥しきらないうちに処理液を供給するなどの方法を採用しても良い。
【0343】
上記処理液としては、水及び有機溶剤の少なくとも一方と、塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方とを含む処理液が挙げられる。
上記有機溶剤、及び、塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方の好ましい態様は、上述のリンス液において用いられる有機溶剤、及び、塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方の好ましい態様と同様である。
処理液のパターンへの供給方法は、上述のリンス液の供給方法と同様の方法を用いることができ、好ましい態様も同様である。
【0344】
処理液における塩基性化合物又は塩基発生剤の含有量は、処理液の全質量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。上記含有量の下限は特に限定されないが、例えば0.1質量%以上であることが好ましい。
また、塩基性化合物又は塩基発生剤が処理液が用いられる環境で固体である場合、塩基性化合物又は塩基発生剤の含有量は、処理液の全固形分に対して、70~100質量%であることも好ましい。
処理液が塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方を含む場合、処理液は塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方を1種のみ含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。塩基性化合物及び塩基発生剤の少なくとも一方が2種以上である場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0345】
<加熱工程>
現像工程により得られたパターン(リンス工程を行う場合は、リンス後のパターン)は、上記現像により得られたパターンを加熱する加熱工程に供されてもよい。
すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、現像工程により得られたパターンを加熱する加熱工程を含んでもよい。
また、本発明の硬化物の製造方法は、現像工程を行わずに他の方法で得られたパターン、又は、膜形成工程により得られた膜を加熱する加熱工程を含んでもよい。
加熱工程において、ポリイミド前駆体等の樹脂は環化してポリイミド等の樹脂となる。
また、特定樹脂、又は特定樹脂以外の架橋剤における未反応の架橋性基の架橋なども進行する。
加熱工程における加熱温度(最高加熱温度)としては、50~450℃が好ましく、150~350℃がより好ましく、150~250℃が更に好ましく、160~250℃が一層好ましく、160~230℃が特に好ましい。
【0346】
加熱工程は、加熱により、上記塩基発生剤から発生した塩基等の作用により、上記パターン内で上記ポリイミド前駆体の環化反応を促進する工程であることが好ましい。
【0347】
加熱工程における加熱は、加熱開始時の温度から最高加熱温度まで1~12℃/分の昇温速度で行うことが好ましい。上記昇温速度は2~10℃/分がより好ましく、3~10℃/分が更に好ましい。昇温速度を1℃/分以上とすることにより、生産性を確保しつつ、酸又は溶剤の過剰な揮発を防止することができ、昇温速度を12℃/分以下とすることにより、硬化物の残存応力を緩和することができる。
加えて、急速加熱可能なオーブンの場合、加熱開始時の温度から最高加熱温度まで1~8℃/秒の昇温速度で行うことが好ましく、2~7℃/秒がより好ましく、3~6℃/秒が更に好ましい。
【0348】
加熱開始時の温度は、20℃~150℃が好ましく、20℃~130℃がより好ましく、25℃~120℃が更に好ましい。加熱開始時の温度は、最高加熱温度まで加熱する工程を開始する際の温度のことをいう。例えば、本発明の樹脂組成物を基材の上に適用した後、乾燥させる場合、この乾燥後の膜(層)の温度であり、例えば、樹脂組成物に含まれる溶剤の沸点よりも、30~200℃低い温度から昇温させることが好ましい。
【0349】
加熱時間(最高加熱温度での加熱時間)は、5~360分が好ましく、10~300分がより好ましく、15~240分が更に好ましい。
【0350】
特に多層の積層体を形成する場合、層間の密着性の観点から、加熱温度は30℃以上であることが好ましく、80℃以上がより好ましく、100℃以上が更に好ましく、120℃以上が特に好ましい。
上記加熱温度の上限は、350℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、240℃以下が更に好ましい。
【0351】
加熱は段階的に行ってもよい。例として、25℃から120℃まで3℃/分で昇温し、120℃にて60分保持し、120℃から180℃まで2℃/分で昇温し、180℃にて120分保持する、といった工程を行ってもよい。また、米国特許第9159547号明細書に記載のように紫外線を照射しながら処理することも好ましい。このような前処理工程により膜の特性を向上させることが可能である。前処理工程は10秒間~2時間程度の短い時間で行うとよく、15秒~30分間がより好ましい。前処理は2段階以上のステップとしてもよく、例えば100~150℃の範囲で1段階目の前処理工程を行い、その後に150~200℃の範囲で2段階目の前処理工程を行ってもよい。
更に、加熱後冷却してもよく、この場合の冷却速度としては、1~5℃/分であることが好ましい。
【0352】
加熱工程は、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを流す、減圧下で行う等により、低酸素濃度の雰囲気で行うことが特定樹脂の分解を防ぐ観点で好ましい。酸素濃度は、50ppm(体積比)以下が好ましく、20ppm(体積比)以下がより好ましい。
加熱工程における加熱手段としては、特に限定されないが、例えばホットプレート、赤外炉、電熱式オーブン、熱風式オーブン、赤外線オーブンなどが挙げられる。
【0353】
<現像後露光工程>
現像工程により得られたパターン(リンス工程を行う場合は、リンス後のパターン)は、上記加熱工程に代えて、又は、上記加熱工程に加えて、現像工程後のパターンを露光する現像後露光工程に供されてもよい。
すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、現像工程により得られたパターンを露光する現像後露光工程を含んでもよい。本発明の硬化物の製造方法は、加熱工程及び現像後露光工程を含んでもよいし、加熱工程及び現像後露光工程の一方のみを含んでもよい。
現像後露光工程においては、例えば、光塩基発生剤の感光によってポリイミド前駆体等の環化が進行する反応や、光酸発生剤の感光によって酸分解性基の脱離が進行する反応などを促進することができる。
現像後露光工程においては、現像工程において得られたパターンの少なくとも一部が露光されればよいが、上記パターンの全部が露光されることが好ましい。
現像後露光工程における露光量は、感光性化合物が感度を有する波長における露光エネルギー換算で、50~20,000mJ/cmが好ましく、100~15,000mJ/cmがより好ましい。
現像後露光工程は、例えば、上述の露光工程における光源を用いて行うことができ、ブロードバンド光を用いることが好ましい。
【0354】
<金属層形成工程>
現像工程により得られたパターン(加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方に供されたものが好ましい)は、パターン上に金属層を形成する金属層形成工程に供されてもよい。
すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、現像工程により得られたパターン(加熱工程及び現像後露光工程少なくとも一方に供されたものが好ましい)上に金属層を形成する金属層形成工程を含むことが好ましい。
【0355】
金属層としては、特に限定なく、既存の金属種を使用することができ、銅、アルミニウム、ニッケル、バナジウム、チタン、クロム、コバルト、金、タングステン、錫、銀及びこれらの金属を含む合金が例示され、銅及びアルミニウムがより好ましく、銅が更に好ましい。
【0356】
金属層の形成方法は、特に限定なく、既存の方法を適用することができる。例えば、特開2007-157879号公報、特表2001-521288号公報、特開2004-214501号公報、特開2004-101850号公報、米国特許第7888181B2、米国特許第9177926B2に記載された方法を使用することができる。例えば、フォトリソグラフィ、PVD(物理蒸着法)、CVD(化学気相成長法)、リフトオフ、電解めっき、無電解めっき、エッチング、印刷、及びこれらを組み合わせた方法などが考えられる。より具体的には、スパッタリング、フォトリソグラフィ及びエッチングを組み合わせたパターニング方法、フォトリソグラフィと電解めっきを組み合わせたパターニング方法が挙げられる。めっきの好ましい態様としては、硫酸銅やシアン化銅めっき液を用いた電解めっきが挙げられる。
【0357】
金属層の厚さとしては、最も厚肉の部分で、0.01~50μmが好ましく、1~10μmがより好ましい。
【0358】
<用途>
本発明の硬化物の製造方法、又は、硬化物の適用可能な分野としては、電子デバイスの絶縁膜、再配線層用層間絶縁膜、ストレスバッファ膜などが挙げられる。そのほか、封止フィルム、基板材料(フレキシブルプリント基板のベースフィルムやカバーレイ、層間絶縁膜)、又は上記のような実装用途の絶縁膜をエッチングでパターン形成することなどが挙げられる。これらの用途については、例えば、サイエンス&テクノロジー(株)「ポリイミドの高機能化と応用技術」2008年4月、柿本雅明/監修、CMCテクニカルライブラリー「ポリイミド材料の基礎と開発」2011年11月発行、日本ポリイミド・芳香族系高分子研究会/編「最新ポリイミド 基礎と応用」エヌ・ティー・エス,2010年8月等を参照することができる。
【0359】
本発明の硬化物の製造方法、又は、本発明の硬化物は、オフセット版面又はスクリーン版面などの版面の製造、成形部品のエッチングへの使用、エレクトロニクス、特に、マイクロエレクトロニクスにおける保護ラッカー及び誘電層の製造などにも用いることもできる。
【0360】
(積層体、及び、積層体の製造方法)
本発明の積層体とは、本発明の硬化物からなる層を複数層有する構造体をいう。
積層体は、硬化物からなる層を2層以上含む積層体であり、3層以上積層した積層体としてもよい。
上記積層体に含まれる2層以上の上記硬化物からなる層のうち、少なくとも1つが本発明の硬化物からなる層であり、硬化物の収縮、又は、上記収縮に伴う硬化物の変形等を抑制する観点からは、上記積層体に含まれる全ての硬化物からなる層が本発明の硬化物からなる層であることも好ましい。
【0361】
すなわち、本発明の積層体の製造方法は、本発明の硬化物の製造方法を含むことが好ましく、本発明の硬化物の製造方法を複数回繰り返すことを含むことがより好ましい。
【0362】
本発明の積層体は、硬化物からなる層を2層以上含み、上記硬化物からなる層同士のいずれかの間に金属層を含む態様が好ましい。上記金属層は、上記金属層形成工程により形成されることが好ましい。
すなわち、本発明の積層体の製造方法は、複数回行われる硬化物の製造方法の間に、硬化物からなる層上に金属層を形成する金属層形成工程を更に含むことが好ましい。金属層形成工程の好ましい態様は上述の通りである。
上記積層体としては、例えば、第一の硬化物からなる層、金属層、第二の硬化物からなる層の3つの層がこの順に積層された層構造を少なくとも含む積層体が好ましいものとして挙げられる。
上記第一の硬化物からなる層及び上記第二の硬化物からなる層は、いずれも本発明の硬化物からなる層であることが好ましい。上記第一の硬化物からなる層の形成に用いられる本発明の樹脂組成物と、上記第二の硬化物からなる層の形成に用いられる本発明の樹脂組成物とは、組成が同一の組成物であってもよいし、組成が異なる組成物であってもよい。本発明の積層体における金属層は、再配線層などの金属配線として好ましく用いられる。
【0363】
<積層工程>
本発明の積層体の製造方法は、積層工程を含むことが好ましい。
積層工程とは、パターン(樹脂層)又は金属層の表面に、再度、(a)膜形成工程(層形成工程)、(b)露光工程、(c)現像工程、(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方を、この順に行うことを含む一連の工程である。ただし、(a)膜形成工程および(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方を繰り返す態様であってもよい。また、(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方の後には(e)金属層形成工程を含んでもよい。積層工程には、更に、上記乾燥工程等を適宜含んでいてもよいことは言うまでもない。
【0364】
積層工程後、更に積層工程を行う場合には、上記露光工程後、上記加熱工程の後、又は、上記金属層形成工程後に、更に、表面活性化処理工程を行ってもよい。表面活性化処理としては、プラズマ処理が例示される。表面活性化処理の詳細については後述する。
【0365】
上記積層工程は、2~20回行うことが好ましく、2~9回行うことがより好ましい。
例えば、樹脂層/金属層/樹脂層/金属層/樹脂層/金属層のように、樹脂層を2層以上20層以下とする構成が好ましく、2層以上9層以下とする構成が更に好ましい。
上記各層はそれぞれ、組成、形状、膜厚等が同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0366】
本発明では特に、金属層を設けた後、更に、上記金属層を覆うように、上記本発明の樹脂組成物の硬化物(樹脂層)を形成する態様が好ましい。具体的には、(a)膜形成工程、(b)露光工程、(c)現像工程、(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方、(e)金属層形成工程、の順序で繰り返す態様、又は、(a)膜形成工程、(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方、(e)金属層形成工程の順序で繰り返す態様が挙げられる。本発明の樹脂組成物層(樹脂層)を積層する積層工程と、金属層形成工程を交互に行うことにより、本発明の樹脂組成物層(樹脂層)と金属層を交互に積層することができる。
【0367】
(表面活性化処理工程)
本発明の積層体の製造方法は、上記金属層および樹脂組成物層の少なくとも一部を表面活性化処理する、表面活性化処理工程を含むことが好ましい。
表面活性化処理工程は、通常、金属層形成工程の後に行うが、上記現像工程の後(好ましくは、加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方の後)、樹脂組成物層に表面活性化処理工程を行ってから、金属層形成工程を行ってもよい。
表面活性化処理は、金属層の少なくとも一部のみに行ってもよいし、露光後の樹脂組成物層の少なくとも一部のみに行ってもよいし、金属層および露光後の樹脂組成物層の両方について、それぞれ、少なくとも一部に行ってもよい。表面活性化処理は、金属層の少なくとも一部について行うことが好ましく、金属層のうち、表面に樹脂組成物層を形成する領域の一部または全部に表面活性化処理を行うことが好ましい。このように、金属層の表面に表面活性化処理を行うことにより、その表面に設けられる樹脂組成物層(膜)との密着性を向上させることができる。
表面活性化処理は、露光後の樹脂組成物層(樹脂層)の一部または全部についても行うことが好ましい。このように、樹脂組成物層の表面に表面活性化処理を行うことにより、表面活性化処理した表面に設けられる金属層や樹脂層との密着性を向上させることができる。特にネガ型現像を行う場合など、樹脂組成物層が硬化されている場合には、表面処理によるダメージを受けにくく、密着性が向上しやすい。
表面活性化処理は、例えば、国際公開第第2021/112189号の段落0415に記載の方法により実施することができる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0368】
(半導体デバイス及びその製造方法)
本発明は、本発明の硬化物、又は、積層体を含む半導体デバイスも開示する。
また、本発明は、本発明の硬化物の製造方法、又は、積層体の製造方法を含む半導体デバイスの製造方法も開示する。
本発明の樹脂組成物を再配線層用層間絶縁膜の形成に用いた半導体デバイスの具体例としては、特開2016-027357号公報の段落0213~0218の記載及び図1の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0369】
また、本発明は、以下のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体(以下、「特定樹脂A」ともいう)にも関する。
下記一般式(11)又は(12)で表される繰り返し単位を有する、ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体であって、
上記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体中に含まれる硫黄元素の含有量が、上記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の全質量に対して5ppm未満であり、
上記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体中に含まれる塩化物イオンの含有量が、上記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の全質量に対して3ppm未満である、
ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体。
【0370】
【化40】
【0371】
一般式(11)、一般式(12)中、
115は4価の有機基を表し、R117は3価の有機基を表し、
~Aは、それぞれ独立に、酸素原子又は-NRz1-を表し、R111、R116は、それぞれ独立に、2価の有機基を表し、R113、R114、及びR118は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、Rz1は水素原子又は1価の有機基を表す。
113及びR114の少なくとも1つは、エチレン性不飽和結合を有する基であり、R118は、エチレン性不飽和結合を有する基である。Rz1は水素原子又は1価の有機基を表し、Rz1はR113、R114、又はR118と結合して環を形成しても良い。)
【0372】
115の4価の有機基は、上記のXとしての4価の有機基と同様であり、好ましい態様も同様である。
117の3価の有機基は、上記のYとしての3価の有機基と同様であり、好ましい態様も同様である。
z1の1価の有機基は、上記のZ~ZとしてのRにおける1価の有機基と同様であり、好ましい態様も同様である。
z1はR113、R114、又はR118と結合して環を形成しても良い。形成される環は特に限定されず、単環であっても良く、多環であっても良い。また芳香環であっても、非芳香族環(例えば非芳香族ヘテロ環であても良い。)
【0373】
113、R114、及びR118は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。1価の有機基としては、アルキル基(直鎖、分岐、又は環状)、アルケニル基(直鎖又は分岐)、芳香族基、又はポリアルキレンオキシ基を含むことが好ましい。
1価の有機基の炭素数は特に限定されないが、例えば1~30である。
また、R113及びR114の少なくとも1つがエチレン性不飽和結合を有する基を有し、両方がエチレン性不飽和結合を有する基を有することがより好ましい。R113及びR114の少なくとも一方が2以上のエチレン性不飽和結合を有する基を有することも好ましい。
118はエチレン性不飽和結合を有する基を有する。R118が2以上のエチレン性不飽和結合を有する基を有することも好ましい。
エチレン性不飽和結合を有する基は、重合性基であり、ラジカル重合性基である、
エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、アリル基、イソアリル基、2-メチルアリル基、ビニル基と直接結合した芳香環を有する基(例えば、ビニルフェニル基など)、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロイルオキシ基、上記式(3)で表される基などが挙げられ、上記式(3)で表される基が好ましい。
【0374】
113及びR114の少なくとも一つが、酸分解性基等の極性変換基であってもよい。酸分解性基としては、酸の作用で分解して、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基等のアルカリ可溶性基を生じるものであれば特に限定されないが、アセタール基、ケタール基、シリル基、シリルエーテル基、第三級アルキルエステル基等が好ましく、露光感度の観点からは、アセタール基又はケタール基がより好ましい。
酸分解性基の具体例としては、上述の通りである。
【0375】
111、R116は、それぞれ独立に、2価の有機基を表す。
2価の有機基としては、直鎖又は分岐の脂肪族基、環状の脂肪族基及び芳香族基を含む基が例示され、炭素数2~20の直鎖又は分岐の脂肪族基、炭素数3~20の環状の脂肪族基、炭素数3~20の芳香族基、又は、これらの組み合わせからなる基が好ましく、炭素数6~20の芳香族基を含む基がより好ましい。上記直鎖又は分岐の脂肪族基は鎖中の炭化水素基がヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、上記環状の脂肪族基および芳香族基は環員の炭化水素基がヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。R111、R116の例としては、-Ar-および-Ar-L-Ar-で表される基が挙げられ、-Ar-L-Ar-で表される基が好ましい。但し、Arは、それぞれ独立に、芳香族基であり、Lは、単結合、又は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-CO-、若しくは-NHCO-、あるいは、上記の2つ以上の組み合わせからなる基である。
【0376】
111、R116は、ジアミンから誘導されることが好ましい。ポリイミド前駆体の製造に用いられるジアミンとしては、直鎖又は分岐の脂肪族、環状の脂肪族又は芳香族ジアミンなどが挙げられる。ジアミンは、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
具体的には、R111、R116は、炭素数2~20の直鎖又は分岐の脂肪族基、炭素数3~20の環状の脂肪族基、炭素数3~20の芳香族基、又は、これらの組み合わせからなる基を含むジアミンであることが好ましく、炭素数6~20の芳香族基を含むジアミンであることがより好ましい。上記直鎖又は分岐の脂肪族基は鎖中の炭化水素基がヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく上記環状の脂肪族基および芳香族基は環員の炭化水素基がヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。芳香族基を含む基の例としては、下記が挙げられる。
【0377】
【化41】
【0378】
式中、Aは単結合又は2価の連結基を表し、単結合、又は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-NHCO-、又は、これらの組み合わせから選択される基であることが好ましく、単結合、又は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキレン基、-O-、若しくは、-C(=O)-から選択される基であることがより好ましく、-CH-、-O-、-C(CF-、又は、-C(CH-であることが更に好ましい。
式中、*は他の構造との結合部位を表す。
【0379】
ジアミンは、特に限定されないが、上記工程2におけるジアミンと同様のものが挙げられる。
【0380】
111、R116は、得られる有機膜の柔軟性の観点から、-Ar-L-Ar-で表されることが好ましい。但し、Arは、それぞれ独立に、芳香族基であり、Lは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-CO-、又は-NHCO-、あるいは、上記の2つ以上の組み合わせからなる基である。Arは、フェニレン基が好ましく、Lは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1又は2の脂肪族炭化水素基、-O-、又は-CO-が好ましい。ここでの脂肪族炭化水素基は、アルキレン基が好ましい。
【0381】
また、R111、R116は、i線透過率の観点から、下記式(51)又は式(61)で表される2価の有機基であることが好ましい。特に、i線透過率、入手のし易さの観点から、式(61)で表される2価の有機基であることがより好ましい。
式(51)
【0382】
【化42】
【0383】
式(51)中、R50~R57は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は1価の有機基であり、R50~R57の少なくとも1つは、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であり、*はそれぞれ独立に、式(2)中の窒素原子との結合部位を表す。
50~R57の1価の有機基としては、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~6)の無置換のアルキル基、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~6)のフッ化アルキル基等が挙げられる。
【0384】
【化43】
【0385】
式(61)中、R58及びR59は、それぞれ独立に、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基であり、*はそれぞれ独立に、式(2)中の窒素原子との結合部位を表す。
式(51)又は式(61)の構造を与えるジアミンとしては、2,2’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(フルオロ)-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0386】
上記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体中に含まれる硫黄元素の含有量は、上記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の全質量に対して5ppm未満である。
硫黄元素の含有量の測定方法は、上述の通りである。
上記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体中に含まれる塩化物イオンの含有量が、上記ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の全質量に対して3ppm未満である。塩化物イオンの含有量の測定方法は上述の通りである。
上述の通り、上記前駆体における塩化物イオン量は、残存塩素元素量として測定した。
【0387】
特定樹脂Aは、上記のポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法により製造されることが好ましい。特定樹脂Aは、上記の特定樹脂であることが好ましい。
【0388】
上記一般式(11)の-A-R114、-A-R113の少なくとも1つは、上記式(4)で表される基を表すことが好ましい。
上記式(4)で表される基は上記式(5)で表される基であることが好ましい。
【0389】
上記一般式(11)、及び(12)のR113、R114、及びR118は、それぞれ独立に上記式(3)で表される基を表すことが好ましい。
上記一般式(11)の-A-R114及び-A-R113のうちの一方が、エチレン性不飽和結合を有する基であり、他方が、上記式(4)で表される基を表すことが好ましい。
【0390】
ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)は、2,000~500,000が好ましく、5,000~100,000がより好ましく、5,000~50,000がより好ましく、10,000~50,000が更に好ましい。また、数平均分子量(Mn)は、800~250,000が好ましく、2,000~50,000がより好ましく、4,000~25,000が更に好ましい。
ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の分子量の分散度は、1.5以上が好ましく、1.8以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましい。ポリアミドイミド前駆体の分子量の分散度の上限値は特に定めるものではないが、例えば、7.0以下が好ましく、6.5以下がより好ましく、6.0以下が更に好ましい。
【実施例0391】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。「部」、「%」は特に述べない限り、質量基準である。
【0392】
<ポリイミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体(特定樹脂)の合成例>
合成例1(A-1の合成)
酸無水物1としてODPA、側鎖成分1としてHEMA、ジアミンとしてODAをそれぞれ用いて、A-1を合成した。
A-1の合成方法の詳細を以下に示す。
【0393】
21.18g(68.1ミリモル)の4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)と、18.12g(139ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と、0.038gのヒドロキノンと、23.93g(30.3ミリモル)のピリジンと、76.7gのダイグライムを混合し60℃の温度で3時間攪拌し、25℃まで冷却した。
続いて、上記反応液を0℃まで冷却した後、ダイグライム59.35gに溶解させた塩化オキサリル18.16g(141ミリモル)を60分かけて滴下し、30℃まで昇温した後1.5時間攪拌した。
続いて、0℃まで冷却し、4,4’-オキシジアニリン(ODA)12.27g(61.2ミリモル)をNMP92.46g中に溶解させたものを、1時間かけて滴下した後1時間攪拌した。続いてエタノール12.55g(272ミリモル)を加え、混合物を1時間攪拌し、4Lの水の中でポリイミド前駆体樹脂を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体樹脂混合物を500rpmの速度で15分攪拌した。
【0394】
ポリイミド前駆体樹脂を濾過して取得し、これを真空乾燥させた後、THF300gに溶解させ、次いで、イオン交換樹脂としてR-1を50g加え25℃で4時間攪拌し、イオン交換処理を行った。イオン交換樹脂を濾過にて除去し、THF溶液を水4Lに沈殿させ、ポリイミド前駆体樹脂を濾過した。
次いで得られたポリイミド前駆体樹脂を減圧下、45℃で2日間乾燥しポリイミド前駆体(A-1)を得た。得られたポリイミド前駆体(A-1)の数平均分子量(Mn)は7300、重量平均分子量(Mw)は、22000であった。
ポリイミド前駆体(A-1)の構造は下記式(A-1)により表される構造である。
【0395】
【化44】
【0396】
合成例2(A-2の合成)
酸無水物1としてODPA、酸無水物2としてBPDA、側鎖成分1としてHEMA、ジアミンとしてODAをそれぞれ用いて、A-2を合成した。
A-2の合成方法の詳細を以下に示す。
【0397】
合成例1の21.18g(68.1ミリモル)の4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)を10.7g(34.4ミリモル)の4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)と10.15g(34.4ミリモル)の3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物(BPDA)に変更した以外は合成例1と同様の方法でポリイミド前駆体A-2を合成した。
得られたポリイミド前駆体(A-1)の数平均分子量(Mn)は8000、重量平均分子量(Mw)は、27000であった。
ポリイミド前駆体(A-2)の構造は下記式(A-2)により表される構造である。
【0398】
【化45】
【0399】
合成例3(A-3の合成)
側鎖成分1としてHEMA、側鎖成分2としてピロリジン、ジアミンとしてBAPPをそれぞれ用いて、A-3を合成した。
A-3の合成方法の詳細を以下に示す。
【0400】
合成例1の18.12g(139ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートを13.6g(104.3ミリモル)とピロリジン2.47g(34.7ミリモル)に変更し、4,4’-オキシジアニリンを25.49g(62.1ミリモル)の2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)に変更した以外は合成例1と同様の方法でA-3を合成した。
得られたポリイミド前駆体(A-3)の数平均分子量(Mn)は9000、重量平均分子量(Mw)は、24000であった。
ポリイミド前駆体(A-3)の構造は下記式(A-3)により表される構造である。
【0401】
【化46】
【0402】
合成例4(A-4の合成)
酸無水物1としてODPA、酸無水物2としてBPDA、側鎖成分1としてHEMA、ジアミンとしてODAをそれぞれ用いて、A-4を合成した。
A-4の合成方法の詳細を以下に示す。
【0403】
4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)と10.15g(34.4ミリモル)の3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物(BPDA)と、18.12g(139ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と、0.038gのヒドロキノンと、23.93g(30.3ミリモル)のピリジンと、76.7gのダイグライムを混合し60℃の温度で3時間攪拌し、25℃まで冷却した。続いて、上記反応液を-10℃まで冷却した後、ダイグライム59.35gに溶解させた塩化チオニル16.77g(141ミリモル)を60分かけて滴下し、1時間攪拌した。
【0404】
続いて、4,4’-オキシジアニリン(ODA)12.27g(61.2ミリモル)をNMP92.46g中に溶解させたものを、1時間かけて滴下した後1時間攪拌した。続いてエタノール12.55g(272ミリモル)を加え、混合物を1時間攪拌し、4Lの水の中でポリイミド前駆体樹脂を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体樹脂混合物を500rpmの速度で15分攪拌した。ポリイミド前駆体樹脂を濾過して取得し、これを真空乾燥させた後、THF300gに溶解させ、次いで、イオン交換樹脂として、R-1を加え25℃で4時間攪拌し、イオン交換処理をジ行った。イオン交換樹脂を濾過にて除去し、THF溶液を水4Lに沈殿させ、ポリイミド前駆体樹脂を濾過した。次いで得られたポリイミド前駆体樹脂を減圧下、45℃で2日間乾燥しポリイミド前駆体(A-4)を得た。
得られたポリイミド前駆体(A-4)の数平均分子量(Mn)は8000で、重量平均分子量(Mw)は、24000であった。
A-4の構造は下記式(A-4)により表される構造である。
【0405】
【化47】
【0406】
合成例5(A-5の合成)
A-5の合成方法の詳細を以下に示す。
合成例2のイオン交換樹脂R-1による処理を実施しないこと以外は合成例2と同様の方法でA-5を合成した。
得られたポリイミド前駆体(A-5)の数平均分子量(Mn)は7500、重量平均分子量(Mw)は、26000であった。
ポリイミド前駆体(A-5)の構造は下記式(A-5)により表される構造である。
【0407】
【化48】
【0408】
合成例6(A-6の合成)
酸無水物1としてTMA、側鎖成分1としてHEMA、ジアミンとしてODAをそれぞれ用いて、A-6を合成した。
A-6の合成方法の詳細を以下に示す。
【0409】
合成例1の21.18g(68.1ミリモル)の4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)を13.08g(68.1ミリモル)のトリメリット酸無水物(TMA)に、18.12g(139ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を9.04g(69.5ミリモル)に変更した以外は合成例1と同様の方法でA-6を合成した。
得られたポリアミドイミド前駆体(A-6)の数平均分子量(Mn)は5110、重量平均分子量(Mw)は、15400であった。
ポリアミドイミド前駆体(A-6)の構造は下記式(A-6)により表される構造である。
【0410】
【化49】
【0411】
合成例7(A-7の合成)
A-7の合成方法の詳細を以下に示す。
合成例1のイオン交換樹脂R-1による処理をイオン交換樹脂R-2に変更したこと以外は合成例2と同様の方法でA-7を合成した。
得られたポリイミド前駆体(A-7)の数平均分子量(Mn)は7200、重量平均分子量(Mw)は、23000であった。
ポリイミド前駆体(A-7)の構造は下記式(A-7)により表される構造である。
【0412】
【化50】
【0413】
合成例8(A-8の合成)
A-8の合成方法の詳細を以下に示す。
合成例2のイオン交換樹脂R-1による処理をイオン交換樹脂R-3に変更したこと以外は合成例2と同様の方法でA-8を合成した。
得られたポリイミド前駆体(A-8)の数平均分子量(Mn)は7280、重量平均分子量(Mw)は、24570であった。
ポリイミド前駆体(A-8)の構造は下記式(A-8)により表される構造である。
【0414】
【化51】
【0415】
合成例9(A-9の合成)
A-9の合成方法の詳細を以下に示す。
合成例1のイオン交換樹脂R-1による処理をイオン交換樹脂R-4に変更したこと以外は合成例1と同様の方法でA-9を合成した。
得られたポリイミド前駆体(A-9)の数平均分子量(Mn)は6716、重量平均分子量(Mw)は、20680であった。
ポリイミド前駆体(A-9)の構造は下記式(A-9)により表される構造である。
【0416】
【化52】
【0417】
合成例10(A-10の合成)
側鎖成分1としてHEMA、側鎖成分2としてピロリジンをそれぞれ用いて、A-10を合成した。
A-10の合成方法の詳細を以下に示す。
【0418】
合成例2の18.12g(139ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートを13.6g(104.3ミリモル)とピロリジン2.47g(34.7ミリモル)に変更したこと以外は合成例2と同様の方法でA-10を合成した。
得られたポリイミド前駆体(A-10)の数平均分子量(Mn)は7600、重量平均分子量(Mw)は、25650であった。
ポリイミド前駆体(A-10)の構造は下記式(A-10)により表される構造である。
【0419】
【化53】
【0420】
なお、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法を用いて測定した値であり、ポリスチレン換算値とした。Mw及びMnは、HLC-8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてガードカラムHZ-L、TSKgel Super HZM-M、TSKgel Super HZ4000、TSKgel Super HZ3000、及び、TSKgel Super HZ2000(以上、東ソー(株)製)を直列に連結して用い、数値を求めた。溶離液としてNMP(N-メチル-2-ピロリドン)を用いた。GPC測定における検出は、UV線(紫外線)の波長254nm検出器を使用した。
【0421】
各実施例及び比較例では、上記合成例1~10にて合成された前駆体A-1~A-10を使用した。
前駆体A-1~A-10の合成において使用された「酸無水物1」、「酸無水物2」、「側鎖成分1」、「側鎖成分2」、「ジアミン」、「塩素化剤」及び「イオン交換樹脂」について表1に記載する。
また、合成された前駆体A-1~A-10における「Mn」、「Mw」も表1に記載する。
【0422】
上記前駆体における塩化物イオン量は、以下のように、残存塩素元素量として測定した。
【0423】
[燃焼イオンクロマトグラフィーによる樹脂(前駆体)中の残存塩素元素量の定量]
試料(上記前駆体)50mgを試料ボードに乗性、重量測定後以下の条件で燃焼イオンクログラフィーによる測定を行った。
試料燃焼温度:900℃(inlet)/1000℃(outlet)
吸収液条件:約0.01% Haq. +2ppm KHPO aq. (内部標準)
吸収液量:5mL
カラム:Dionex IonPac AS22
溶離液:4.5mmol/L NaCO + 1.4mmol/L NaHCO
流量:1.2mL/min
カラム温度:35℃
吸収液注入量:100uL
濃度補正:定容チェック
測定は2回実施し、各試料中の塩素元素量を定量して、平均値を用いた。
【0424】
上記前駆体における塩化物イオン量について表1に記載する。
【0425】
上記前駆体における硫黄元素の含有量は、以下のように測定した。
【0426】
[燃焼イオンクロマトグラフィーによる樹脂(前駆体)中の硫黄元素の定量]
試料(上記前駆体)50mgを試料ボードに乗性、重量測定後以下の条件で燃焼イオンクログラフィー)による測定を行った。
試料燃焼温度:900℃(inlet)/1000℃(outlet)
吸収液条件:約0.01% Haq. +2ppm KHPO aq. (内部標準)
吸収液量:5mL
カラム:Dionex IonPac AS22
溶離液:4.5mmol/L NaCO + 1.4mmol/L NaHCO
流量:1.2mL/min
カラム温度:35℃
吸収液注入量:100uL
濃度補正:定容チェック
測定は2回実施し、各試料中の硫黄元素量を定量して、平均値を用いた。
【0427】
上記前駆体における硫黄元素量について表1に記載する。
【0428】
【表1】
【0429】
表1におけるイオン交換樹脂は以下の通りである。
R-1: MB-1(両性イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製))
R-2: AMBERJETTM UP6040(陰イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製))
R-3: アンバーリストTM B20-HG・DRY(陰イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製))
R-4: アンバーライト IRA96SB(陰イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製))
【0430】
<実施例及び比較例>
下記表2に記載の成分(前駆体とその他成分)を混合し、各樹脂組成物を得た。その他成分は各成分を下記表2に記載の量(質量%)で用いた。下記表2には、各樹脂組成物の全固形分に対する樹脂の含有率(質量%)及びその他成分の含有率(質量%)を記載した。表2においては、各樹脂組成物における各成分の全固形分に対する含有率(質量%)を「%」と記載した。
各樹脂組成物における固形分濃度は、35質量%である、
溶剤の「比率」は、全溶剤量に対する各溶剤の質量比率(質量%)である。
得られた樹脂組成物を、細孔の幅が20.0μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターを用いて加圧ろ過した。
表中、「前駆体」の欄における「-」の記載は該当する化合物を樹脂の合成の際に使用していないことを示している。また、前駆体以外の各成分の欄における「-」の記載は該当する成分を樹脂組成物が含有していないことを示している。
【0431】
【表2】
【0432】
上記表に記載した各成分の詳細は下記の通りである。
【0433】
<重合性化合物>
重合性化合物として、使用したものを以下に示す。
【0434】
【化54】
【0435】
<重合開始剤>
重合開始剤として、使用したものを以下に示す。
C-1:IRGACURE OXE 01(BASF社製)
C-2:IRGACURE OXE 02(BASF社製)
【0436】
<塩基発生剤>
塩基発生剤として、使用したものを以下に示す。
【0437】
【化55】
【0438】
<マイグレーション抑制剤>
マイグレーション抑制剤として、使用したものを以下に示す。
【0439】
【化56】
【0440】
<金属接着性改良剤>
金属接着性改良剤として、使用したものを以下に示す。
【0441】
【化57】
【0442】
<重合禁止剤>
重合禁止剤として、使用したものを以下に示す。
【0443】
【化58】
【0444】
<溶剤>
溶剤としては、例えば以下に示すものを使用することができ、実施例では以下に示すものから選択して使用した。
DMSO:ジメチルスルホキシド
GBL:γ-ブチロラクトン
NMP:N-メチルピロリドン
【0445】
<評価>
以下のように評価を行い、結果を上記表2に記載した。
【0446】
〔信頼性評価基板作製方法〕
各実施例及び比較例において調製した樹脂組成物及び比較用組成物を、それぞれ、ウォルツ社製TEG(test elementary group)基板SIPOS-TEG SI06の表面にスピンコート法により適用して、100℃で300秒間乾燥した。膜厚は得られる硬化物の膜厚が10μmとなる膜厚とした。その後、TEG基板評価用のフォトマスクを載置し、400mJ/cmのブロードバンド光を照射した。露光後、シクロペンタノンを用いて現像し、PGMEAでリンスした、次いで、光洋サーモシステム社製クリーンオーブンCLH-2でN雰囲気下で5℃/minの昇温速度で230℃、180分間で加熱し、信頼性評価基板を作製した。
【0447】
〔PCT試験〕
各実施例及び比較例において、それぞれ、平山製作所製HAST装置 PC-422R8Dを用いて、上記信頼性評価基板を使用し、121℃、100%RH(相対湿度)、250時間の条件でPCT試験を実施した。試験後の光学顕微鏡にて基板を観察し、異物の発生や配線腐食が発生していないか目視にて観察を行った。
【0448】
〔破断伸びの測定〕
<評価>
各実施例及び比較例において調製した樹脂組成物及び比較用組成物を、それぞれ、シリコンウエハ上にスピンコート法により適用し、樹脂組成物層を形成した。上記樹脂組成物層が塗布形成されたシリコンウエハをホットプレート上で、100℃で5分間乾燥し、シリコンウエハ上に20μmの均一な厚さの樹脂組成物層を形成した。シリコンウェハ上の樹脂組成物層に、短冊サンプル評価用のフォトマスクを載置し、400mJ/cmのブロードバンド光を照射した。得られたシリコンウエハ上の樹脂組成物層をシクロペンタノンを用いて現像し、PGMEAでリンスした。その後、光洋サーモシステム社製クリーンオーブンCLH-2でN雰囲気下で5℃/minの昇温速度で230℃、180分間で加熱して硬化膜を得た。
上記硬化物を3質量%フッ化水素酸溶液に浸漬し、シリコンウエハから硬化物を剥離した。
剥離した硬化膜を、打ち抜き機を用いて打ち抜いて、試料幅3mm、試料長30mmの試験片を作製した。得られた試験片を、引張り試験機(テンシロン)を用いて、クロスヘッドスピード300mm/分で、25℃、65%RH(相対湿度)の環境下にて、JIS-K6251に準拠して試験片の長手方向の破断伸び率を測定した。評価は各5回ずつ実施し、試験片が破断した時の伸び率(破断伸び率)について、その算術平均値を指標値として用いた。
上記指標値を下記評価基準に従って評価し、評価結果は表の「破断伸び」の欄に記載した。上記指標値が大きいほど、得られる硬化膜の膜強度(破断伸び)に優れるといえる。
(評価基準)
A:上記指標値が70%以上であった。
B:上記指標値が60%以上70%未満であった。
C:上記指標値が50%以上60%未満であった。
D:上記指標値が50%未満であった。
【0449】
以上の結果から、本発明の実施例では、破断伸びに優れ、かつ、PCT特性に優れる膜を形成できる樹脂組成物を提供することができることが分かった。
また、本発明の実施例では、上記樹脂組成物に好適に適用することができる、ポリアミド前駆体又はポリアミドイミド前駆体の製造方法を提供することができることが分かった。