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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025155238
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】超純水製造装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20230101AFI20251006BHJP
【FI】
C02F1/00 S
C02F1/00 K
C02F1/00 V
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024058944
(22)【出願日】2024-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】恒吉 研志
(72)【発明者】
【氏名】栩内 優仁
(57)【要約】
【課題】 後段システムやユースポインでの使用水量に応じて、送水ポンプの稼働電力を調整して、送水量を制御可能な純水製造装置の制御方法を提供する。
【解決手段】 循環水の水量を20m/hに固定し、送水ポンプ32A,32B,32Cの設計最大吐出量が60m/hで、サブシステムでの一次純水W2の使用量が80m/hの場合、ポンプの稼働台数は1.67≦2(台)となる。そこで、送水ポンプの稼働台数を2台として、送水ポンプ32A,32Bを稼働する。この際、送水ポンプ32A,32Bの出力をインバータ制御により83%として運転して100m/hの一次純水W2を製造する。そして、コントロール弁55により80m/hをサブタンク37に送水し、余剰分の20m/hを被処理水タンク31に連通する循環路54に送水する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水の貯留槽と、この貯留槽に貯留された被処理水を送水する3系列以上の送水ポンプと、前記送水ポンプの後段に設けられた一以上の水処理装置とを備え、該水処理装置により製造された純水を、後段システム又はユ-スポイントに送水する送水路と、この送水路から分岐した余剰分の純水を貯留槽に返送する循環路とを有する純水装置の制御方法であって、
前記後段システム又はユ-スポイントの純水の要求量に応じて、送水ポンプの稼働台数の制御及び/または前記送水ポンプの出力の制御を行う、純水製造装置の制御方法。
【請求項2】
前記循環路に循環させる水量が前記送水ポンプの設計最大吐出量の総和の20%以下となるように送水ポンプの稼働台数の制御及び/または前記送水ポンプの出力の制御を行う、請求項1に記載の純水製造装置の制御方法。
【請求項3】
前記送水ポンプの出力の制御が、該送水ポンプの設計最大吐出量の60~100%である、請求項2に記載の純水製造装置の制御方法。
【請求項4】
前記ポンプの稼働台数を、純水の送水量を1台あたりのポンプの設計最大吐出量で除した値を、切り上げて自然数とした台数となるように制御する、請求項3に記載の純水製造装置の制御方法。
【請求項5】
前記一次純水装置で製造される純水の送水路に薬注装置を供え、該一次純水装置で製造される純水の送水量に応じて、前記薬注装置からの薬品の添加量の調整を行う、請求項1~4のいずれか1項に記載の純水製造装置の制御方法。
【請求項6】
前記一次純水装置で製造される純水を後段システムに送水し、該後段システムの送水量に応じて、前記後段システムの調整運転を行う、請求項1~4のいずれか1項に記載の純水製造装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体、液晶等の電子産業分野で利用される超純水を製造するのに好適な純水製造装置の制御方法に関し、特に後段システムやユースポインでの使用水量に応じて送水量を制御可能な純水製造装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体等の電子産業分野で用いられている超純水は、例えば、図6に示すような超純水製造装置により製造される。図6において、超純水製造装置1は、前処理装置2、一次純水装置(純水製造装置)3、及び二次純水製造装置(サブシステム)4といった3段の装置で構成されている。
【0003】
前処理装置2は、凝集処理装置21と除濁UF膜装置22とからなり、この前処理装置2では、原水Wの凝集沈殿、膜ろ過などによる前処理が施され、主に懸濁物質が除去される。
【0004】
一次純水装置3は、前処理水(被処理水)W1を貯留する被処理水タンク31と、この前処理水W1を送水する送水ポンプ32と、逆浸透膜装置33と、膜式脱気装置34と、紫外線酸化装置35と、電気脱イオン装置36とを有する。この一次純水装置3では、逆浸透膜装置33により前処理水W1中の微粒子・イオン類を除去し、膜式脱気装置34で溶存酸素を低減し、紫外線酸化装置35で有機物(TOC成分)を分解する。続いて電気脱イオン装置36により金属イオン、炭酸イオン、有機酸類などを除去して一次純水(純水)W2を製造する。製造された一次純水W2は、サブシステム4に供給するためのサブタンク37に貯水される。
【0005】
超純水製造の最終工程を担うサブシステム(二次純水装置)4は、サブタンク37から一次純水W2を送給するポンプ41と、この一次純水W2を処理する紫外線酸化装置42と膜式脱気装置43と非再生型混床式イオン交換装置44と膜濾過装置としての限外濾過(UF)膜45とで構成され、さらに必要に応じRO膜分離装置等が設けられている場合もある。このサブシステム4では、紫外線酸化装置42により一次純水W2中に含まれる微量の有機物(TOC成分)を酸化分解し脱気した後、続いて非再生型混床式イオン交換装置44で処理することで残留した炭酸イオン、有機酸類、アニオン性物質、さらには金属イオンやカチオン性物質をイオン交換によって除去する。そして、限外濾過(UF)膜45で微粒子を除去して超純水W3とし、これをユースポイント5に供給する。
【0006】
上述したような超純水製造装置1における一次純水製造装置3は、図7に示すように複数系列(図7においては3系列)の送水ポンプ32A,32B,32Cを有するのが一般的であり、この送水ポンプの後段には送水ポンプ後段の一次純水装置、すなわち図6に示す一次純水装置3では、逆浸透膜装置と膜式脱気装置と紫外線酸化装置と電気脱イオン装置とからなる水処理装置30が配置されている。なお、51は、逆浸透膜の被処理水のpH調整剤などの薬注装置である。そして、水処理装置30に接続した送水路52は、サブタンク37に連通する供給路53と被処理水タンク31に連通する循環路54とに分岐していて、この分岐部には流量調整部としてのコントロール弁55が設けられている。
【0007】
そして、サブシステム4に一次純水W2を安定して供給するために、送水ポンプ32A,32B,32Cを設計最大吐出量で駆動して一次純水W2を過剰量に製造し、供給路53からサブタンク37にサブシステム4の必要量を送給し、余剰分はコントロール弁55によりで循環路54から被処理水タンク31に返送して循環する制御を行っている。
【0008】
図7に示すようにサブシステム4での一次純水W2の使用量(要求量)が140m/h、送水ポンプ32A,32B,32Cの設計最大吐出量が60m/hの場合、送水ポンプ32A,32B,32Cを設計最大吐出量で運転して180m/hの一次純水W2を製造する。そして、コントロール弁55により140m/hをサブタンク37に送水し、余剰分の40m/hを被処理水タンク31に連通する循環路54に送水し、サブシステム4での一次純水W2の使用量に応じて、返送する一次純水W2の量を増減させていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したような従来の超純水製造装置の制御方法では、送水ポンプ32A,32B,32Cを設計最大吐出量で運転しているので、例えば、図8に示すようにサブシステム4での一次純水W2の使用量が100m/hと大幅に低下した場合には、80m/hの水量を循環路54から返送することになる。すなわち、必要以上の一次純水W2を製造している。そのため、送水ポンプ32A,32B,32Cや紫外線酸化装置、電気脱イオン装置などの装置が余剰に稼働しており、エネルギーの削減の余地が大きい、という問題がある。特に、超純水製造装置1においてポンプの消費電力は約6割程度を占めることから、送水ポンプ32A,32B,32Cの消費電力削減できれば、省エネルギーに対する貢献が大きい。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、後段システムやユースポインでの使用水量に応じて、送水ポンプの稼働電力を調整して、送水量を制御可能な純水製造装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的に鑑み本発明は、被処理水の貯留槽と、この貯留槽に貯留された被処理水を送水する3系列以上の送水ポンプと、前記送水ポンプの後段に設けられた一以上の水処理装置とを備え、該水処理装置により製造された純水を、後段システム又はユ-スポイントに送水する送水路と、この送水路から分岐した余剰分の純水を貯留槽に返送する循環路とを有する純水装置の制御方法であって、前記後段システム又はユ-スポイントの純水の要求量に応じて、送水ポンプの稼働台数の制御及び/または前記送水ポンプの出力の制御を行う、純水製造装置の制御方法を提供する(発明1)。
【0012】
かかる発明(発明1)によれば、後段システム又はユ-スポイントの純水の要求量の増減に応じて、送水ポンプの稼働台数の制御を行い、この稼働台数に基づき必要に応じ送水ポンプの出力の制御を行う。これにより、循環路から貯留槽に返送する純水が過剰となることを抑制し、過度なポンプの消費エネルギーを削減することができる。
【0013】
上記発明(発明1)においては、前記循環路に循環させる水量が前記送水ポンプの設計最大吐出量の総和の20%以下となるように送水ポンプの稼働台数の制御及び/または前記送水ポンプの出力の制御を行う、ことが好ましい(発明2)。
【0014】
かかる発明(発明2)によれば、過度に純水を製造することを抑制し、純粋製造装置及びポンプの消費エネルギーを効率的に削減することができる。
【0015】
上記発明(発明2)においては、前記送水ポンプの出力の制御が、該送水ポンプの設計最大吐出量の60~100%である、ことが好ましい(発明3)。
【0016】
かかる発明(発明3)によれば、後段システム又はユ-スポイントに送水する純水の幅広い流量変動に対応して、送水量を調整することができる。
【0017】
上記発明(発明3)においては、前記ポンプの稼働台数を、純水の送水量を1台あたりのポンプの設計最大吐出量で除した値を、切り上げて自然数とした台数となるように制御する、ことが好ましい(発明4)。
【0018】
かかる発明(発明4)によれば、後段システム又はユ-スポイントに送水する純水の流量変動に対応して、適正に送水量を調整することができる。
【0019】
上記発明(発明1~4)においては、前記一次純水装置で製造される純水の送水路に薬注装置を供え、該一次純水装置で製造される純水の送水量に応じて、前記薬注装置からの薬品の添加量の調整を行う、ことが好ましい(発明5)。
【0020】
かかる発明(発明5)によれば、水処理装置で製造される純水が減ることで、添加する薬品量の削減によるコスト低減を図ることができる。
【0021】
上記発明(発明1~4)においては、前記一次純水装置で製造される純水を後段システムに送水し、該後段システムの送水量に応じて、前記後段システムの調整運転を行う、ことが好ましい(発明6)。
【0022】
かかる発明(発明6)によれば、水処理装置で製造される純水が減ることで、水処理装置の運転による省エネルギー化を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、送水ポンプを3系列以上有し、製造した純水を、後段システム又はユ-スポイントに送水するとともに、余剰分の純水を貯留槽に返送する純水装置の送水ポンプの稼働台数の制御及び/または前記送水ポンプの出力の制御を、後段システム又はユ-スポイントの純水の要求量に応じて行うものであるので、循環路から貯留槽に返送する純水が過剰となることを抑制し、過度なポンプの消費エネルギーを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第一の実施形態に係る純水製造装置の制御方法を適用可能な純水製造装置を示すフロー図である。
図2】本発明の第二の実施形態に係る純水製造装置の制御方法を示すフロー図である。
図3】前記第二の実施形態に係る純水製造装置の制御方法示すフロー図である。
図4】前記第三の実施形態に係る純水製造装置の制御方法示すフロー図である。
図5】前記第三の実施形態に係る純水製造装置の制御方法示すフロー図である。
図6】本発明の純水製造装置の制御方法を適用可能な超純水製造装置を示すフロー図である。
図7】従来の純水製造装置の制御方法を示すフロー図である。
図8】従来の純水製造装置の制御方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の純水製造装置の制御方法について添付図面を参照して説明する。
【0026】
〔第一の実施形態〕
(純水製造装置)333
図1は、本発明の純水製造装置の制御方法を適用可能な純水装置を概略的にしており、基本的な構成は前述した図7と同じであるので、同一の構成には同一の符号を付している。図1において、一次純水装置3は、前処理水(被処理水)W1を貯留する被処理水タンク31と、ヘッダー管で接続された複数系列(n系列:nは正の整数)の送水ポンプ32A・・・・32nとを有する。これら送水ポンプ32A~32nは、出力制御手段としてのインバータを備えており、この送水ポンプ32Aの後段には該送水ポンプの後段の複数の水処理装置、本実施例においては逆浸透膜装置と膜式脱気装置と紫外線酸化装置と電気脱イオン装置とからなる水処理装置30が配置されている。この水処理装置30には、例えば逆浸透膜の被処理水のpHを調整するpH調整剤などの薬注装置51が付設されている。また、水処理装置30には、送水路52が接続されている。この送水路52はサブタンク37に連通する供給路53と被処理水タンク31に連通する循環路54とに分岐していて、この分岐部には流量調整部としてのコントロール弁55が設けられている。さらに、循環路54には流量計56に設けられているとともに、送水路52にも流量計57が設けられている。
【0027】
そして、これら流量計56、流量計57は、図示しない制御手段に情報通信可能となっていて、この制御手段は流量計56、流量計57の計測値に基づいて、送水ポンプ32A~32nの運転・停止、及び送水ポンプ32A~32nの出力を送水ポンプの設計最大吐出量に対して60~100%の範囲内でインバータ制御可能となっているとともに、所定の循環水量及び使用水量となるようにコントロール弁55を制御可能となっている。
【0028】
(純水製造装置の制御方法)
上述したような純水製造装置において、送水ポンプ32A~32nの送水量と、一次純水の使用水量と、循環水量とは下記式(1)となる。
送水量(m/h)=使用水量x(m/h)+循環水量y(m/h)
=x+y(m/h) ・・・(1)
【0029】
ここで、循環水量y(m/h)は、送水ポンプ32A~32nの設計最大吐出量の総和の20%以下となるように設定することが好ましく、この循環水量は固定値としても変動値としてもよい。ここで、設計最大吐出量の総和とは、送水ポンプ1台あたりの設計最大吐出量(m/h)×送水ポンプの台数(n)である。
【0030】
そして、送水ポンプの稼働台数を下記式(2)を満たす最小自然数となるように制御する。
稼働台数≧送水量(m/h)/送水ポンプの設計最大吐出量(m/h)・・・(2)
【0031】
上記式(2)の算出結果に基づき、送水ポンプ32A~32nの稼働台数を切り替えることにより、循環水の水量が送水ポンプ1台あたりの設計最大吐出量以下とすることができる。さらに、稼働する送水ポンプの出力を送水ポンプの設計最大吐出量の60~100%の範囲内でインバータ制御することで、循環水の水量をさらに削減することができ、循環水量が常に一定値となるようにすることができる。そして、所定の循環水量及び使用水量となるようにコントロール弁55を制御すればよい。
【0032】
このような制御を行うことにより、送水ポンプ32A~32nの稼働に伴うエネルギーを削減することができるのみならず、薬注装置51からの薬注量を削減することができ、さらに水処理装置30の運転エネルギーも抑制することができる。
【0033】
〔第二の実施形態〕
(純水製造装置)
図2及び図3は、本発明の第二の実施形態を示しており、前述した図1に示す実施形態において、送水ポンプを32A、32B、32Cの3台構成とし、送水ポンプ32A~32Cの出力をインバータ制御しない具体例である。
【0034】
図2は、循環水の水量を20m/hに固定し、送水ポンプ32A,32B,32Cの設計最大吐出量が60m/hで、サブシステムでの一次純水W2の使用量(要求量)が最大値の160m/hの場合である。ここで、ポンプの稼働台数は(160+20(m/h))/60(m/h)=3(台)となるので、送水ポンプ32A,32B,32Cを設計最大吐出量で運転し、水処理装置30でこれを処理して180m/hの一次純水W2を製造する。そして、コントロール弁55により160m/hをサブタンク37に送水し、余剰分の20m/hを被処理水タンク31に連通する循環路54に送水する。
【0035】
そして、図3に示すようにサブシステムでの一次純水W2の使用量が100m/hと大幅に低下したときには、循環路54からの循環水を20m/hの固定値としているので、ポンプの稼働台数は(100+20(m/h))/60(m/h)=2(台)となる。そこで、送水ポンプの稼働台数を2台、すなわち送水ポンプ32Cを停止して、送水ポンプ32A,32Bを設計最大吐出量で運転し、水処理装置30でこれを処理して120m/hの一次純水W2を製造する。そして、コントロール弁55により100m/hをサブタンク37に送水し、余剰分の20m/hを被処理水タンク31に連通する循環路54に送水する。なお、本実施形態おいては、循環水量+使用水量を送水ポンプの設計最大吐出量で除した値が、正の整数とならなかった場合には、循環水量をその分増加させてやればよい。
【0036】
本実施形態によれば、送水ポンプの稼働台数を決定し、これに基づき送水ポンプの発停を制御しているので、図7図8に示す従来例よりも純水製造装置の運転エネルギーを削減し、循環水量を削減することができる。さらに、水処理装置30で処理する水量が低減するので、薬注装置51から注入する薬液Mの量を削減することができる。
【0037】
〔第三の実施形態〕
(純水製造装置)
図4及び図5は、本発明の第三の実施形態を示しており、前述した図2に示す実施形態において、送水ポンプ32A~32Cの出力をインバータ制御する具体例である。
【0038】
図4は、循環水の水量を20m/hに固定し、送水ポンプ32A,32B,32Cの設計最大吐出量が60m/hで、サブシステムでの一次純水W2の使用量(要求量)が80m/hの場合である。ここで、ポンプの稼働台数は(80+20(m/h))/60(m/h)=1.67≦2(台)となる。そこで、送水ポンプの稼働台数を2台、すなわち送水ポンプ32Cを停止して、送水ポンプ32A,32Bを稼働する。この際、送水ポンプ32A,32Bを設計最大吐出量(100%)で運転すると120m/hの一次純水W2を製造することになり、循環水の水量を40m/hにしなければならないが、本実施形態においては、送水ポンプ32A,32Bの出力をインバータ制御により83%として運転し、水処理装置30でこれを処理して100m/hの一次純水W2を製造する。そして、コントロール弁55により80m/hをサブタンク37に送水し、余剰分の20m/hを被処理水タンク31に連通する循環路54に送水する。これにより循環水の水量を増やすことなく、一次純水W2を送水することができる。
【0039】
そして、図5に示すようにサブシステムでの一次純水W2の使用量が30m/hと大幅に低下したときには、循環路54からの循環水量が20m/hであれば、ポンプの稼働台数は(30+20(m/h))/60(m/h)=0.67≦1(台)となる。そこで、送水ポンプの稼働台数を1台、すなわち送水ポンプ32B,32Cを停止して、送水ポンプ32Aのみを稼働する。この際、送水ポンプ32Aを設計最大吐出量(100%)で運転すると60m/hの一次純水W2を製造することになり、循環水の水量を30m/hにしなければならないが、本実施形態においては、送水32Aの出力をインバータ制御により83%として運転し、水処理装置30でこれを処理して50m/hの一次純水W2を製造する。そして、コントロール弁55により30m/hをサブタンク37に送水し、余剰分の20m/hを被処理水タンク31に連通する循環路54に送水する。これにより循環水の水量を増やすことなく、一次純水W2の送水を継続することができる。
【0040】
本実施形態によれば、送水ポンプの稼働台数を決定し、これに基づき送水ポンプの発停を制御し、続いて送水ポンプの出力をインバータ制御しているので、図7図8に示す従来例よりも純水製造装置の運転エネルギーを削減し、循環水量が少ないまま運転することができる。さらに、水処理装置30で処理する水量が低減するので、薬注装置51から注入する薬液Mの量を削減することができる。
【0041】
以上、本発明について、上記の各実施形態に基づき説明してきたが、本発明は前記実施形態に限らず種々の変形実施が可能である。例えば、本発明を適用可能な純水製造装置3としては、3系列以上の送水ポンプを有し、この送水ポンプの後段に一以上の水処理装置を有し、該水処理装置により製造された純水を、後段システム又はユ-スポイントに送水する送水路と、この送水路から分岐した余剰分の純水を貯留槽に返送する循環路とを有するものであれば、特に制限はない。また、送水ポンプの後段の水処理装置としては、特に制限はなく、逆浸透膜、紫外線酸化装置、脱気膜、電気脱イオン装置、再生式イオン交換装置、非再生式イオン交換装置などから選ばれた1種又は2種により構成することができる。さらに、超純水製造装置のサブシステムに一次純水W2を供給する場合に限らず、一次純水W2をユースポイントに供給する場合にも適用することができる。
【実施例0042】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0043】
〔実施例1〕
図2に示す第2の実施形態のようにインバータ制御を行わずに送水ポンプ32A~32Cの発停のみで送水量を制御した場合の一次純水W2の送水量、循環水量、使用水量、稼働ポンプの台数及び削減消費電力量を表1に示す。なお、送水ポンプ1台当たりのし右飛電力は10kWhである。
【0044】
【表1】
【0045】
〔比較例1〕
図7に示す従来例のように常時第3の送水ポンプ32A~32Cを設計最大吐出量で運転した場合の一次純水W2の送水量、循環水量、使用水量、稼働ポンプの台数及び削減消費電力量を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
票1及び表2からあきらかなとおり、実施例1の純水製造装置の制御方法によれば、比較例1の純水製造装置の制御方法と比べて、ポンプの稼働台数の制御により消費電力量を削減することができ、循環水量も減少させることができることがわかる。
【符号の説明】
【0048】
1 超純水製造装置
2 前処理装置
21 凝集処理装置
22 除濁UF膜装置
3 一次純水装置(純水製造装置)
30 水処理装置
31 被処理水タンク
32 送水ポンプ
32A,32B,32C 送水ポンプ
33 逆浸透膜装置
34 膜式脱気装置
35 紫外線酸化装置
36 電気脱イオン装置
37 サブタンク
4 二次純水製造装置(サブシステム)
41 ポンプ
42 紫外線酸化装置
43 膜式脱気装置
44 非再生型混床式イオン交換装置
45 限外濾過(UF)膜
5 ユースポイント(UP)
51 薬注装置
52 送水路
53 供給路
54 循環路
55 コントロール弁
56 流量計
57 流量計
W 原水
W1 前処理水(被処理水)
W2 一次純水
W3 超純水(二次純水)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2025-07-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次純水装置と、前記一次純水装置の後段に配置されたサブシステムとを備える超純水製造装置の制御方法であって、
前記一次純水装置は、被処理水の貯留槽と、この貯留槽に貯留された被処理水を送水する3系列以上の送水ポンプと、前記送水ポンプの後段に設けられた一以上の水処理装置と、該水処理装置により製造された一次純水を、前記サブシステムに送水する送水路と、この送水路から分岐した余剰分の一次純水を前記貯留槽に返送する循環路とを備え
前記サブシステムの一次純水の要求量に応じて、前記送水ポンプの稼働台数の制御及び/または前記送水ポンプの出力の制御を行う、純水製造装置の制御方法。
【請求項2】
前記循環路に循環させる水量が前記送水ポンプの設計最大吐出量の総和の20%以下となるように前記送水ポンプの稼働台数の制御及び/または前記送水ポンプの出力の制御を行う、請求項1に記載の純水製造装置の制御方法。
【請求項3】
前記送水ポンプの出力の制御が、該送水ポンプの設計最大吐出量の60~100%である、請求項2に記載の純水製造装置の制御方法。
【請求項4】
前記送水ポンプの稼働台数を、一次純水の送水量を1台あたりの前記送水ポンプの設計最大吐出量で除した値を、切り上げて自然数とした台数となるように制御する、請求項3に記載の純水製造装置の制御方法。
【請求項5】
前記一次純水装置は、該一次純水装置で製造される一次純水の前記送水路に薬注装置を備え、該一次純水装置で製造される一次純水の送水量に応じて、前記薬注装置からの薬品の添加量の調整を行う、請求項1~4のいずれか1項に記載の純水製造装置の制御方法。
【請求項6】
前記水処理装置は、逆浸透膜装置と膜式脱気装置と紫外線酸化装置と電気脱イオン装置とからなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の超純水製造装置の制御方法。