(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025155337
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】止水カバー付グロメット及び止水カバー付ハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/22 20060101AFI20251006BHJP
【FI】
H02G3/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059124
(22)【出願日】2024-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】古田 高之
【テーマコード(参考)】
5G363
【Fターム(参考)】
5G363AA01
5G363BA02
5G363CB08
(57)【要約】
【課題】外部から侵入した水の内部への侵入を抑制できる止水カバー付グロメット及び止水カバー付ハーネスを提供することを目的とする。
【解決手段】止水カバー付グロメット1は、車体パネルPに取り付ける止水カバー10と、ハーネスWHを配索させる筒状のグロメット20とを備え、グロメット20の一端には設けられた、止水カバー10に装着されるとともに、車体パネルPに取り付けられるパネル取付部50に、固定孔P2を介して車体パネルPに固定され、車体パネルPと対向する対向部51が備えられている。対向部51の中央部分には、車体パネルPに固定された状態において、車体パネルPに当接して止水するインナーリップ53とが備えられ、対向部51の両端部分には、高さ方向Hに窪ませた第一溝部54と、第一溝部54の後端側LBで第一溝部54に沿って、車体パネルPに対して当接する当接部56がインナーリップ53に向けて設けられている。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルが有する挿通孔に挿通させるワイヤーハーネスを内部に配索させる筒状のグロメットと、
前記グロメットの一端部分を内側に装着するとともに、前記パネルに取り付ける止水カバーとを備え、
前記グロメットの一端には、前記止水カバーに装着されるとともに、前記パネルに対して取り付けられる取付部が設けられ、
前記取付部に、前記パネルを板厚方向に貫通させた固定孔を介して前記パネルに固定されるとともに、前記パネルと対向する平板状の対向部が備えられ、
前記ワイヤーハーネスの配索方向及び前記板厚方向に交差する方向を幅方向とし、
前記対向部における前記幅方向の中央部分には、
前記固定孔に固定される固定部と、
前記固定部を前記固定孔に固定された状態において、前記パネルに向けて突出するとともに、前記パネルに当接して止水する止水部とが備えられ
前記対向部における前記幅方向の両端部分には、
前記板厚方向に窪ませた溝部と、
前記溝部の前記挿通孔の側と反対側で前記溝部に沿うとともに、前記パネルに取り付けた状態において、前記パネルに対して当接する当接部とが前記止水部に向けて設けられた
止水カバー付グロメット。
【請求項2】
前記止水部は、前記板厚方向から視て、前記幅方向及び前記配索方向に沿って設けられるとともに、前記パネルに取り付けた状態において、閉鎖空間を形成し、
前記溝部における前記幅方向の中央側端部は、前記閉鎖空間に挿通した
請求項1に記載の止水カバー付グロメット。
【請求項3】
前記溝部を第一溝部とし、
前記当接部の前記挿通孔の側に、前記当接部に沿って、前記板厚方向に向けて窪ませた第二溝部が設けられた
請求項2に記載の止水カバー付グロメット。
【請求項4】
前記第二溝部における前記幅方向の中央側端部は、前記第一溝部における前記幅方向の中央側端部よりも、前記幅方向の端部側に配置された
請求項3に記載の止水カバー付グロメット。
【請求項5】
前記当接部は、前記溝部の一部を形成する
請求項2に記載の止水カバー付グロメット。
【請求項6】
前記溝部及び前記当接部は、前記幅方向に向かうに伴い前記配索方向に湾曲した
請求項5に記載の止水カバー付グロメット。
【請求項7】
前記対向部における前記幅方向の両端部分には、前記パネルと反対側に向けて突出するとともに、前記取付部が前記止水カバーに装着された状態において、前記止水カバーが当接する止水カバー側リブが設けられた
請求項1に記載の止水カバー付グロメット。
【請求項8】
前記止水カバー側リブは、前記当接部に対応して設けられた
請求項7に記載の止水カバー付グロメット。
【請求項9】
請求項1に記載の止水カバー付グロメットと、
前記グロメットに挿通されたワイヤーハーネスとが備えられた
止水カバー付ハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、車両に配索されるワイヤーハーネスを保護する止水カバー付グロメット及び止水カバー付ハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されている電装品を電気的に接続しているワイヤーハーネスは、二次元的又は三次元的に配索されている。このように配索されているワイヤーハーネスは、例えば、床パネルやドアパネルなどのパネルに設けた挿通孔に挿通させる際に、挿通孔の外縁とワイヤーハーネスとが干渉しないようにグロメットを用いて保護することがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、ワイヤーハーネスを挿通させるグロメットの端部に備えられた、断面略三角形状の取付部をパネルに取り付け、止水カバーで覆う止水カバー付グロメットが開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている止水カバー付グロメットでは、断面略三角形状の取付部の一面と、止水カバーとパネルとの境界部分、すなわち、取付部におけるワイヤーハーネスの配索方向と直交する幅方向の端部には、隙間が形成されやすく、外部から侵入した水が内部に伝わるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、外部から侵入した水の内部への侵入を抑制できる止水カバー付グロメット及び止水カバー付ハーネスを提供することを目的とする。
【0007】
この発明は、パネルが有する挿通孔に挿通させるワイヤーハーネスを内部に配索させる筒状のグロメットと、前記グロメットの一端部分を内側に装着するとともに、前記パネルに取り付ける止水カバーとを備え、前記グロメットの一端には、前記止水カバーに装着されるとともに、前記パネルに対して取り付けられる取付部が設けられ、前記取付部に、前記パネルを板厚方向に貫通させた固定孔を介して前記パネルに固定されるとともに、前記パネルと対向する平板状の対向部が備えられ、前記ワイヤーハーネスの配索方向及び前記板厚方向に交差する方向を幅方向とし、前記対向部における前記幅方向の中央部分には、前記固定孔に固定される固定部と、前記固定部を前記固定孔に固定された状態において、前記パネルに向けて突出するとともに、前記パネルに当接して止水する止水部とが備えられ、前記対向部における前記幅方向の両端部分には、前記板厚方向に窪ませた溝部と、前記溝部の前記挿通孔の側と反対側で前記溝部に沿うとともに、前記パネルに取り付けた状態において、前記パネルに対して当接する当接部とが前記止水部に向けて設けられた止水カバー付グロメットであることを特徴とする。
またこの発明は、上述の止水カバー付グロメットと、前記グロメットに挿通されたワイヤーハーネスとが備えられた止水カバー付ハーネスであることを特徴とする。
【0008】
前記当接部は、前記溝部と一体である場合や、前記溝部に対して前記挿通孔の側と反対側に所定の間隔を隔てて設けられている場合を含む。すなわち、前記当接部は、前記溝部の一部を形成している場合や、前記溝部と別体として設けられている場合を含む。
【0009】
この発明によれば、外部から侵入した水の内部への侵入を抑制できる。
詳述すると、内部にワイヤーハーネスを配索させる筒状のグロメットの一端に設けられた取付部は、止水カバーに装着されるとともに、パネルと対向する平板状の対向部を備えている。また、対向部における幅方向の中央部分には、固定孔に固定される固定部と、パネルに向けて突出するとともに、パネルと当接して止水する止水部が備えられている。
【0010】
そして、対向部における幅方向の両端部分には、止水部まで板厚方向に向けて窪ませた溝部と、溝部の挿通孔の側と反対側において、溝部に沿うとともに、パネルに取り付けた状態において、パネルに対して当接する当接部とが止水部に向けて設けられている。このため、パネルと対向する対向部における幅方向の端部から侵入した水を溝部に案内できるとともに、挿通孔の側と反対側への水が伝わることを当接部で抑制できる。したがって、幅方向の両端部分を介して外部から侵入した水が内側に侵入することも抑制できる。
なお、溝部に沿って幅方向の中央側に向けて流れた水は止水部で止水されるため、幅方向の中央部分から水が内側に侵入することも抑制できる。
【0011】
この発明の態様として、前記止水部は、前記板厚方向から視て、前記幅方向及び前記配索方向に沿って設けられるとともに、前記パネルに取り付けた状態において、閉鎖空間を形成し、前記溝部における前記幅方向の中央側端部は、前記閉鎖空間に挿通してもよい。
【0012】
前記止水部は、例えば、前記幅方向及び前記配索方向に平行となる場合のみならず、前記幅方向及び前記配索方向に対して傾いているあるいは前記止水部の一部が湾曲している場合も含む。なお、前記閉鎖空間は、前記止水部のみで形成されている場合の他、前記止水部と他の構成とで形成されていてもよい。
【0013】
この発明によると、溝部が、止水部が形成する閉鎖空間に挿通しているため、溝部に入り込んだ水を閉鎖空間に案内することができる。したがって、挿通孔の側と反対側に水が侵入することをより確実に抑制できる。
【0014】
またこの発明の態様として、前記溝部を第一溝部とし、前記当接部の前記挿通孔の側に、前記当接部に沿って、前記板厚方向に向けて窪ませた第二溝部が設けられてもよい。
この発明により、水が当接部を越え、当接部の挿通孔の側と反対側に水が侵入した場合であっても、水が挿通孔の側と反対側に流れるのを第二溝部で抑制できる。したがって、挿通孔の側と反対側に水が侵入することをより確実に抑制できる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記第二溝部における前記幅方向の中央側端部は、前記第一溝部における前記幅方向の中央側端部よりも、前記幅方向の端部側に配置されてもよい。
この発明により、第一溝部に沿った第二溝部は閉鎖空間と挿通していないため、第一溝部が挿通する閉鎖空間から水が第二溝部に流れることを防止できる。したがって、第一溝部から止水部に案内された水が、第二溝部を介して挿通孔の側と反対側に水が侵入することを防止できる。
【0016】
このように構成された止水カバー付グロメットは、対向部における幅方向の両端部分から入り込んだ水を、第一溝部を介して、止水部が形成する第一溝部よりも広範な閉鎖空間に案内できるとともに、閉鎖空間に案内されずに当接部を越えた水を第二溝部で堰き止めることができる。さらに、閉鎖空間に案内された水が、第二溝部を介して挿通孔の側と反対側に水が侵入することを防止できる。
【0017】
この発明の態様として、前記当接部は、前記溝部の一部を形成してもよい。
この発明により、対向部の主面から当接部の先端までの高さよりも、溝底から当接部の先端までの高さの方が長いため、溝部に入り込んだ水が挿通孔の側と反対側に侵入することをより抑制できる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記溝部及び前記当接部は、前記幅方向に向かうに伴い前記配索方向に湾曲してもよい。
この発明によると、溝部の経路を長くすることで、侵入した水が反対側に侵入することをより抑制できる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記対向部における前記幅方向の両端部分には、前記パネルと反対側に向けて突出するとともに、前記取付部が前記止水カバーに装着された状態において、前記止水カバーが当接する止水カバー側リブが設けられてもよい。
【0020】
この発明により、止水カバーが装着された取付部をパネルに取り付けた状態において、止水カバーが対向部に設けられた止水カバー側リブをパネルの側に向けて押圧することができる。このため、当接部がパネルに向けて押し付けられ、当接部をパネルに対してより強く当接させることができる。したがって、当接部による止水性を向上させることができ、当接部よりも挿通孔の側と反対側に水が侵入することをより確実に抑制できる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記止水カバー側リブは、前記当接部に対応して設けられてもよい。
この発明により、止水カバーを装着により、当接部をパネルに確実に当接させることができる。したがって、当接部による止水性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、外部から侵入した水の内部への侵入を抑制できる止水カバー付グロメット及び止水カバー付ハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】止水カバー付ワイヤーハーネスの概略斜視図。
【
図10】パネルに取り付けた止水カバー付ワイヤーハーネスの説明図。
【
図11】パネルに取り付けた止水カバー付ワイヤーハーネスの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の一実施形態を、以下
図1乃至
図11とともに説明する。
図1は止水カバー付ワイヤーハーネス2の概略斜視図を示し、
図2は止水カバー付グロメット1の概略分解斜視図を示す。
図3は止水カバー10の説明図を示し、
図4はグロメット20の説明図を示し、
図5乃至
図8はパネル取付部50の説明図を示し、
図9はインナーベース60及びインナーカバー70の説明図を示す。
図10及び
図11は車体パネルPに取り付けた状態の止水カバー付ワイヤーハーネス2の説明図を示す。
【0025】
図3乃至
図11について詳述する。
図3(a)は止水カバー10の概略平面図を示し、
図3(b)は
図3(a)におけるA-A矢視断面図を示す。
図4(a)はグロメット20の概略側面図を示し、
図4(b)はグロメット20を後端側LBから視た概略正面図を示す。なお、
図1乃至
図11において、グロメット20の他端側については図示省略する。
【0026】
図5(a)はパネル取付部50の概略底面図を示し、
図5(b)は
図4(b)におけるB-B矢視断面図を示し、
図6(a)は
図5(a)におけるC-C矢視断面図を示し、
図6(b)は
図5(a)におけるD-D矢視断面図を示す。
図7(a)は
図6(a)において点線の円で囲んだ箇所の拡大断面図を示し、
図7(b)は
図6(b)において点線の円で囲んだ箇所の拡大断面図を示す。
図8(a)は
図5(a)において点線の円で囲んだ箇所の拡大底面図を示し、
図8(b)は
図5(a)において点線の円で囲んだ箇所の拡大断面図を示す。なお、
図8(b)は
図5(a)におけるE-E矢視断面に対応している。
図9(a)はインナーベース60の概略平面図を示し、
図9(b)は
図9(a)におけるF-F矢視断面を示し、
図9(c)はインナーカバー70のF-F矢視断面に対応する断面図を示す。
【0027】
図10(a)は車体パネルPに取り付けた止水カバー付ワイヤーハーネス2におけるC-C矢視断面図に対応する概略断面図を示し、
図10(b)は
図10(a)において点線の円で囲んだ箇所の拡大断面図を示す。
図11(a)は、車体パネルPに止水カバー付ワイヤーハーネス2を取り付けた状態におけるパネル取付部50に対して水Dの侵入経路を模式的に表したパネル取付部50の底面図を示す。
図11(b)は
図11(a)において点線の円で囲んだ箇所の拡大図を示す。
なお、
図10及び
図11において、パネル取付部50の内部の構造を明確にするため、ハーネスWHの図示を省略する。
【0028】
ここで、
図1中における上下方向を高さ方向Hとし、高さ方向Hと直交するとともにパネル取付部50に配索されたハーネスWHの延出方向を配索方向Lとする。そして、配索方向L及び高さ方向Hと直交する方向を幅方向Wとする。また、
図1において、配索方向Lに沿って左方を先端側LAとし、右方を後端側LBとし、高さ方向Hに沿って下方を下方側HDとし、上方を上方側HUとする。上述の方向は、
図2乃至
図11において対応する方向を同様とする。
【0029】
止水カバー付グロメット1は、
図1及び
図2に示すように、車体パネルPを高さ方向Hに貫通させた挿通孔P1を覆う止水カバー10と、内部にハーネスWHを挿通させるグロメット20とで構成されている。また、グロメット20における一方側の端部に収容されたインナー30が備えられている。
【0030】
車体パネルPは、車両のボディを構成するパネルであり、
図2に示すように、グロメット20を挿通できるように高さ方向Hに貫通させた挿通孔P1と、グロメット20の一端を固定するための高さ方向Hに貫通させた固定孔P2とが設けられている。なお、車体パネルPの下方側HDが車体外部で、車体パネルPの上方側HU側が車体内部である。
【0031】
ハーネスWHは、導体を絶縁被膜で囲繞した被覆電線を束ねたワイヤーハーネスであり、車体パネルPの内外に搭載された電装品同士を電気的に接続している。本実施形態において、ハーネスWHは、被覆電線を束ねたワイヤーハーネスとしているが、通信ケーブルを含んでもよいし、複数の通信ケーブルのみで構成されていてもよい。
【0032】
止水カバー10は、
図1及び
図2に示すように、挿通孔P1よりも拡径の円盤状で構成された円盤部11と、円盤部11における後端側LBの端部近傍から上方側HUに向けて突出する突出面部12とを備えている。
【0033】
円盤部11は、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、平面視において挿通孔P1よりも一回り大きな平面視略円盤状の上面部111と、上面部111の外縁よりも内側から下方側HDに向けて突出する係止突出部112とが備えられている。
【0034】
上面部111は、上方側HUに上面を有する平面視略円盤状の有底筒状体であり、後端側LBの端部近傍には、
図3(b)に示すように、挿通孔P1を挿通したグロメット20を通すことができるように突出面部12が上方側HUに延出している。
また、上面部111の外縁部分には、グロメットスクリュVを用いて止水カバー10を車体パネルPにボルト固定するためのボルト孔113が三個設けられている。
【0035】
そして、上面部111における係止突出部112の外側には、可撓性の高い樹脂製のリング板が組み付けられている(図示省略)。上面部111に組付けられたゴム製のリング板には、下方側HDに向けて突出する止水カバーリップ114が設けられている。
【0036】
上面部111から下方側HDに突出する係止突出部112は、上面部111の外縁よりも内側から下方側HDに向けて突出する平面視円弧状の板状体であり、挿通孔P1の先端側LAの外周縁に係止できるように構成されている。
【0037】
突出面部12は、上面部111における後端側LBの端部近傍から上方側HUに向けて延出している。詳述すると、突出面部12は、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、円盤部11の上面から連続して上方側HUに延出する円弧面部121と、円弧面部121から後端側LBに延出する角状面部122とで構成されている。
【0038】
円弧面部121は、
図3(b)に示すように、幅方向Wに直交する断面において、上方側HUに向けて凸状となる断面略円弧状に形成されており、グロメット20を挿通できる空間が下方側HDに形成されている。
【0039】
角状面部122は、上方側HUに角が形成される逆V字状の上面であり、断面略円弧状に形成された円弧面部121の後端側LB端部から後端側LBに向けて連続して突出している。なお、角状面部122の頂点部分は、角取されている(
図2参照)。
【0040】
グロメット20は、車体パネルPの内外を挿通するハーネスWHを保護する外装部材であり、両端を車体パネルPに固定できる筒状のグロメット本体21を備えている。グロメット本体21は、長尺状に形成された円筒状の円筒本体40と、円筒本体40の一端側に設けられ、車体パネルPに対して取り付けられるパネル取付部50とを備えている(
図2参照)。なお、円筒本体40における他端側には、車体パネルPとは他のパネルに対して取り付けられる他の取付部が備えられている(図示省略)。
【0041】
円筒本体40は、ハーネスWHを内部に挿通可能な筒状体であり、
図4(a)に示すように、パネル取付部50との連結部分が湾曲可能な蛇腹構造で構成されている。このため、グロメット20は、パネル取付部50を車体パネルPに取り付けた状態において、円筒本体40を所望の方向に湾曲することができる。
【0042】
パネル取付部50は、
図4(b)に示すように、円筒本体40と連結した先端側LAに底面を有する断面三角形状の有底筒状体であり、止水カバー10を装着できるとともに、インナー30を介して車体パネルPに取り付けることができる。なお、止水カバー付グロメット1を車体パネルPに取り付けた状態において、パネル取付部50は角状面部122の下方側HDに配置されることとなる。このため、パネル取付部50は、角状面部122と車体パネルPとに挟まれるように配置される。
【0043】
詳述すると、パネル取付部50は、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、配索方向Lから視て略二等辺三角形をしている。また、パネル取付部50は、車体パネルPに取り付けた状態において車体パネルPに対向する対向部51と、対向部51における幅方向Wの両端から上方側HUに延出する一対の傾斜側壁部52とで構成されている。
【0044】
対向部51は、幅方向Wの両端部分の板厚が幅方向Wの中央部分よりも厚くなっている、平面視長方形状の平板である(
図5(a)及び
図6(b)参照)。そして、対向部51における中央部分には、高さ方向Hに貫通した貫通孔511が設けられ、対向部51における先端側LAの端部には係止突部512が設けられている(
図4(a)参照)。
【0045】
貫通孔511は、固定孔P2と同形状の長孔である。詳述すると、貫通孔511は、高さ方向Hから視て、幅方向Wに沿った長軸と、配索方向Lに沿った短軸とを有する略長円状をした長孔である。
【0046】
係止突部512は、対向部51における先端側LAの外縁から下方側HDに向けてわずかに突出した突片である。なお、貫通孔511の中心から係止突部512までの長さは、固定孔P2の中心から挿通孔P1の後端側LBの内縁までの長さと等しい。このため、パネル取付部50を車体パネルPに取り付けた際に、貫通孔511の位置が固定孔P2の位置と一致するとともに、係止突部512は挿通孔P1の後端側LBの内縁に係止される。
【0047】
また、対向部51の下方側HDの主面である対向底面51aには、
図5(a)に示すように、下方側HDに向けて突出する複数のインナーリップ53と、上方側HUに窪ませて形成された第一溝部54と第二溝部55とが設けられている。
【0048】
インナーリップ53は、対向底面51aにおける幅方向Wの中央部分において、所定の範囲を囲うように対向底面51aから突出している。詳述すると、インナーリップ53は、
図5(a)に示すように、互いに連結する、幅方向Wに延びる幅側リップ531と、配索方向Lに延びる配索側リップ532とで構成されている。
【0049】
幅側リップ531は、
図6(a)及び
図7(a)に示すように、下方側HDに向かうに伴い配索方向Lの一方側又は他方側に向けて傾斜するように対向底面51aから下方側HDに向けて突設した、可撓性を有する突片である。このように構成された幅側リップ531は、貫通孔511を中心として、配索方向Lに所定の間隔を隔てて複数設けられている。幅側リップ531は、対向底面51aにおける幅方向Wの両端部分の端面よりもわずかに下方側HDに突出している。
なお、幅側リップ531は、対向底面51aにおける幅方向Wの両端部分の端面と略同じ高さであってもよい。
【0050】
配索側リップ532は、
図6(b)及び
図7(b)に示すように、下方側HDに向かうに伴い幅方向Wの外側に向けて傾斜するように対向底面51aから下方側HDに向けて突設した、可撓性を有する突片である。なお配索側リップ532は、幅側リップ531と同じ長さだけ対向底面51aから突出している。
【0051】
このように構成された配索側リップ532は、配索方向Lに所定の間隔を隔てて設けられた複数の幅側リップ531における幅方向Wの端部を連結するように設けられている。すなわち、複数設けられた幅側リップ531と配索側リップ532とは、底面視において、複数のインナーリップ53を構成している(
図5(a)参照)。このように、幅側リップ531と配索側リップ532とで構成された複数のインナーリップ53は、対向底面51aに格子状となるように配置されている。ここで、止水カバー付グロメット1を車体パネルPに装着した状態において、インナーリップ53が形成する空間を閉鎖空間Sとする。なお、中央部分に設けられたインナーリップ53の中心には、貫通孔511が配置されている。
【0052】
第一溝部54は、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、インナーリップ53が形成された箇所に比べて板厚が厚い、対向底面51aにおける幅方向Wの両端部分において、対向底面51aを窪ませて形成された溝である。
詳述すると、第一溝部54は、
図8(a)に示すように、底面視において幅方向Wの内側に向かうに伴い先端側LAに向けて蛇行した溝である。そして、第一溝部54における幅方向Wの内側端部は、インナーリップ53及び対向底面51aが幅方向Wの外側に形成する閉鎖空間Sに連通している。なお、第一溝部54における幅方向Wの外側端部は、対向部51における幅方向Wの外縁よりも内側に配置されている。
【0053】
また、第一溝部54における後端側LBの壁部は、
図8(b)に示すように、溝底から下方側HDに向かうに伴い後端側LBに向けて傾斜している。一方で、第一溝部54における先端側LAの壁部は、溝底と直交するように高さ方向Hに沿っている。
【0054】
第二溝部55は、第一溝部54と同様に、対向底面51aにおける幅方向Wの両端部分において、対向底面51aを窪ませて形成された溝であり、第一溝部54に沿って設けられている。詳述すると、第二溝部55は、
図8(a)に示すように、底面視において幅方向Wの内側に向かうに伴い第一溝部54に沿って先端側LAに向けて蛇行した溝である。
【0055】
第二溝部55における幅方向Wの内側端部は、第一溝部54と異なり、閉鎖空間Sに連通していない。すなわち、第二溝部55における幅方向Wの内側端部は、第一溝部54が連通する閉鎖空間Sの幅方向Wの外側に配置されている。なお、第二溝部55における幅方向Wの外側端部は、第一溝部54と同様に、対向部51における幅方向Wの外縁よりも内側に配置されている。
【0056】
また、第二溝部55における先端側LAの壁部、すなわち第一溝部54の側の壁部は、
図8(b)に示すように、溝底から下方側HDに向かうに伴い第一溝部54の側に向けて傾斜している。一方で、第二溝部55における後端側LBの壁部は、溝底と直交するように形成されている。
【0057】
このように構成された第一溝部54と第二溝部55との間には、
図8(b)に示すように、第一溝部54及び第二溝部55の溝底から下方側HDに向けて突出する当接部56が設けられている。
詳述すると、当接部56は、第一溝部54と第二溝部55とを配索方向Lに仕切る壁であり、下方側HDに向かうに伴い先細りするように構成されている。したがって、当接部56は車体パネルPに押し付けられた際に、先端部分が変形しやすくなっている。なお、当接部56の先端部分は、対向底面51aにおける幅方向Wの両端部分と面一となるように構成されている。
【0058】
一方で、対向部51の上方側HUの主面である対向上面51bには、上方側HUに突設する押圧リブ57が設けられている(
図5(a)参照)。
押圧リブ57は、平面視直線状に形成されたリブであり、
図7(a)に示すように、長手方向と直交し、押圧リブ57とインナーリップ53とを横断する横断断面において、上方側HUに向かうに伴い先細り形状となっている。より具体的には、押圧リブ57は、基端側が緩やかに湾曲し、中央部分から急激に立ち上がるとともに、先端部分が緩やかに湾曲する、断面湾曲形状をしている。なお、押圧リブ57の基端部分の幅は、インナーリップ53の幅よりも大きい。
【0059】
また、押圧リブ57は、
図7(a)及び
図7(b)に示すように、長手方向と直交する断面において、基端部分(下方側HDとの連結部分)の中心が、幅側リップ531及び配索側リップ532における基端部分(上方側HUとの連結部分)の中心と一致している。
【0060】
このように構成された押圧リブ57は、幅方向Wに延びる幅側リブ571と、配索方向Lに延びる配索側リブ572とを備えている(
図5(b)参照)。
幅側リブ571は、幅側リップ531に対応するように設けられている。具体的には、幅側リブ571は、幅方向Wに延びる幅側リップ531における直線部分の中央部分に対応して対向上面51bから上方側HUに設けられている。
【0061】
一方で、配索側リブ572は、配索側リップ532に対応するように設けられている。具体的には、配索側リブ572は、配索方向Lに延びる配索側リップ532における直線部分の中央部分の上方側HUに設けられている。すなわち、配索側リブ572は、幅側リブ571における幅方向Wの両端と連結していない。
【0062】
傾斜側壁部52は、対向部51における幅方向Wの両端から幅方向Wの内側に向けて傾斜しながら延出する側壁である。すなわち、一対の傾斜側壁部52は、対向部51における幅方向Wの中央の上方側HUで連結している。なお、一対の傾斜側壁部52の連結部分は角取されている。
【0063】
傾斜側壁部52には、幅方向Wに沿って上方側HUに向けて突出する突出部521が、配索方向Lに所定の間隔を隔てて三つ設けられている。
突出部521は、後端側LBから視て上方側HUに凸状となるとともに、先端部分が角取りされた略逆V字形状をしており(
図4(b)参照)、止水カバー付グロメット1を車体パネルPに固定した状態において、角状面部122の内面と当接する。
【0064】
このように構成された突出部521は、先端側LAから後端側LBに向かうに伴い突出高さが順に高くなっている。なお、配索方向Lに三つ並んだ突出部521のうち、真ん中に配置された突出部521は、当接部56に対応する位置、より具体的には、当接部56のやや後端側LBに設けられている(
図8(b)参照)。
また、一対の傾斜側壁部52の連結部分には、グロメット20を挿通させたハーネスWHをテープ固定するためのハーネス固定部522が配索方向Lに沿って延出している(
図4(a)参照)。
【0065】
インナー30は、断面三角形状に形成されたパネル取付部50の内部に収容できるように断面略三角形状の筒状体であり、円筒本体40よりも剛性の高い樹脂材で構成されている。詳述すると、インナー30は、収容状態において、対向部51に配置されるインナーベース60と、インナーベース60の上方側HUに組み付けるインナーカバー70とで構成されている(
図2参照)。
【0066】
インナーベース60は、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、インナー30における底面である底面部61と、底面部61における中央から下方側HDに突出する固定部62と、底面部61から上方側HUに立設する一対の立設部63とで構成されている。
【0067】
底面部61は、対向部51よりも一回り小さい、平面視方形状の平板である。
固定部62は、底面部61における中央部分から下方側HDに向けて突出するアンカーであり、貫通孔511を挿通するとともに、固定孔P2に対して係止固定できるように構成されている。
【0068】
立設部63は、インナーカバー70と係止固定される被係止部である。詳しくは、立設部63は、幅方向Wに所定の間隔を隔てて立設する一対の立壁631と、立壁631における幅方向Wの外側に設けられた補強リブ632と、立壁631における幅方向Wの外側に並列配置された係止壁633とで構成されている。
【0069】
立壁631は、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、幅方向Wの中央よりも幅方向Wの両外側において、底面部61から上方側HUに立設する壁であり、底面部61における先端側LAの端部から後端側LBの端部近傍にわたって設けられている。
【0070】
補強リブ632は、立壁631における幅方向Wの外側の端面と底面部61とを連結するリブであり、配索方向Lに所定の間隔を隔てて四個設けられている。なお、補強リブ632は、配索方向Lから視て、傾斜側壁部52と同じ角度で傾斜する斜辺を幅方向Wの外側に有する略直角台形形状をしている。
【0071】
係止壁633は、配索方向Lに四個設けられた補強リブ632を配索方向Lに連結する板状体であり、台形形状の補強リブ632における斜辺部分の幅方向Wの内側端部に設けられている。なお、係止壁633と底面部61との間には隙間が設けられている。
【0072】
インナーカバー70は、
図9(c)に示すように、後端側LBから視て上方側HUに凸状となるとともに、先端部分が角取りされた略逆V字形状のインナー側壁71と、インナー側壁71から下方側HDに向けて突出する一対の係止部72とで構成されている。
【0073】
インナー側壁71は、傾斜側壁部52と同じ傾斜角で傾斜しており、インナー30をパネル取付部50に収容させた状態において傾斜側壁部52の内面と当接する。
係止部72は、インナー側壁71の裏面側から下方側HDに突出する係止片であり、立壁631と係止壁633との間に挿入させて係止壁633に係止できるように構成されている。
【0074】
このように構成されたインナーベース60及びインナーカバー70は、係止部72を係止壁633に係止することでインナー30を構成する。そして、固定部62をパネル取付部50における貫通孔511に挿通させることより、インナーベース60及びインナーカバー70で構成されたインナー30をパネル取付部50に収容することができる。すなわち、グロメット本体21にインナー30を取り付けたグロメット20となる。
【0075】
そして、パネル取付部50に収容されたインナー30及び円筒本体40にハーネスWHを挿通させるとともに、ハーネス固定部522にハーネスWHをテープ固定することで、グロメット20にハーネスWHを取り付けることができる。これにより、グロメット20と、グロメット本体21に挿通されたハーネスWHとが備えられた止水カバー付ハーネス3を製造することができる。
【0076】
また、グロメット20にハーネスWHが取り付けられた止水カバー付ハーネス3は、円筒本体40を挿通孔P1に挿通させるとともに、貫通孔511に挿通させた固定部62を上方側HUから固定孔P2に係止固定することができる。この際、係止突部512が挿通孔P1の後端側LBの外縁に係止されることとなる。このように、パネル取付部50を車体パネルPに取り付けた状態において、挿通孔P1を円盤部11で覆うように止水カバー10を車体パネルPにボルト固定する。
【0077】
具体的には、突出面部12に対してパネル取付部50が対応するように止水カバー10を配置し、係止突出部112を挿通孔P1に挿入させて係止させる。そして、ボルト孔113にタッピングボルト(図示省略)を挿通させてグロメットスクリュVに対してボルト固定する。これにより、止水カバー付グロメット1にハーネスWHを挿通させた止水カバー付ワイヤーハーネス2を車体パネルPに装着させることができる(
図1参照)。
【0078】
このように車体パネルPに装着された止水カバー付ワイヤーハーネス2では、パネル取付部50が下方側HDに押し付けられることとなり、後端側LBに向けて水が侵入することを抑制できる。
詳述すると、止水カバー付ワイヤーハーネス2が車体パネルPに装着されることで、対向部51を下方側HDに押し付ける外力Fがインナー30に作用する。これにより、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、底面部61が押圧リブ57を下方側HDに押し付けることとなる。
【0079】
このように押圧リブ57が下方側HDに押し付けられることで、押圧リブ57の直下に設けられたインナーリップ53に対して効率よく下方側HDの外力Fを作用させることができる。これにより、インナーリップ53が変形して車体パネルPに当接するように車体パネルPにインナーリップ53を押し付けることができる。このため、固定孔P2から侵入した水Dが、車体パネルPに当接したインナーリップ53によって堰き止められ、後端側LBに流れることを抑制できる(
図10(b)参照)。同様に、挿通孔P1における幅方向Wの中央部分から侵入した水Dも、先端側LAにおいて幅方向Wに沿って設けられた幅側リップ531によって堰き止められるため、後端側LBに流れることを抑制できる。
【0080】
また、挿通孔P1から後端側LBに向けて侵入し、対向部51における幅方向Wの両端部分を伝って流れる水Dは、
図11(a)及び
図11(b)に示すように、配索方向Lの中央部分において、対向底面51aを高さ方向Hに窪ませた第一溝部54に流れ込むこととなる。
【0081】
ここで、止水カバー10が車体パネルPに対してボルト固定されることにより、突出面部12には下方側HDへの締結力が伝搬して作用する。このため、突出面部12の下方側HDに配置されたパネル取付部50は、突出面部12によって下方側HDに押し込まれる。これにより、突出面部12と当接する突出部521に下方側HDへの締結力が伝搬して作用し、対向底面51aの幅方向Wの両端側とともに、第一溝部54の後端側LBの壁部を形成している当接部56が車体パネルPに押し付けられる。このため、第一溝部54に流れ込んだ水Dは、当接部56によって後端側LBに流れることが堰き止められる。したがって、水Dが後端側LBに流れることを抑制できる。
【0082】
さらにまた、第一溝部54に流れ込んだ水Dは、
図11(b)に示すように、幅方向Wの内側に向けて蛇行している第一溝部54に沿って閉鎖空間Sに流れ込むこととなるが、閉鎖空間Sを形成するインナーリップ53は押圧リブ57によって車体パネルPに押圧されている。このため、閉鎖空間Sから水Dが後端側LBに流れることを抑制できる。
【0083】
仮に、水Dが当接部56から後端側LBに漏出した場合であっても、第一溝部54に沿って設けられた第二溝部55に水Dが流れ込むため、水Dが後端側LBに流れることをより確実に抑制できる。なお、第一溝部54に沿った第二溝部55は、閉鎖空間Sと連通していないため、閉鎖空間Sに流れ込んだ水Dが第二溝部55に流れ込むことはない。
【0084】
このように構成された止水カバー付グロメット1は、車体パネルPが有する挿通孔P1に挿通させるハーネスWHを内部に配索させる筒状のグロメット20と、グロメット20の一端部分を内側に装着するとともに、車体パネルPに取り付ける止水カバー10とを備えている。そして、グロメット20の一端には、止水カバー10に装着されるとともに、車体パネルPに対して取り付けられるパネル取付部50が設けられている。パネル取付部50には、車体パネルPを高さ方向Hに貫通させた固定孔P2を介して車体パネルPに固定されるとともに、車体パネルPと対向する平板状の対向部51が備えられている。また、対向部51における幅方向Wの中央部分には、固定孔P2に固定される、パネル取付部50に収容されたインナー30を介して固定部62が備えられる。また、固定部62を固定孔P2に固定された状態において、対向部51には、車体パネルPに向けて突出するとともに、車体パネルPに当接して止水するインナーリップ53とが備えられている。そして、対向部51における幅方向Wの両端部分には、高さ方向Hに窪ませた第一溝部54と、第一溝部54の挿通孔P1の側と反対側で第一溝部54に沿うとともに、車体パネルPに取り付けた状態において、車体パネルPに対して当接する当接部56がインナーリップ53に向けて設けられている。
なお、止水カバー付ワイヤーハーネス2は、止水カバー付グロメット1と、グロメット20に挿通されたハーネスWHとが備えられている。
【0085】
このように構成された止水カバー付グロメット1及び止水カバー付ワイヤーハーネス2は、外部から侵入した水Dの内部への侵入を抑制できる。
詳述すると、内部にハーネスWHを配索させる筒状のグロメット20の一端に設けられたパネル取付部50は、止水カバー10に装着されるとともに、車体パネルPと対向する平板状の対向部51を備えている。また、対向部51における幅方向Wの中央部分には、固定孔P2に固定される固定部62と、車体パネルPに向けて突出するとともに、車体パネルPと当接して止水するインナーリップ53が備えられている。
【0086】
そして、対向部51における幅方向Wの両端部分には、インナーリップ53まで高さ方向Hに向けて窪ませた第一溝部54と、第一溝部54の挿通孔P1の側と反対側において、第一溝部54に沿うとともに、車体パネルPに取り付けた状態において、車体パネルPに対して当接する当接部56とインナーリップ53に向けて設けられている。このため、車体パネルPと対向する対向部51における幅方向Wの端部から侵入した水Dを第一溝部54に案内できるとともに、挿通孔P1の側と反対側へ水Dが伝わることを当接部56で抑制できる。したがって、幅方向Wの両端部分を介して外部から侵入した水Dが内側に侵入することも抑制できる。
なお、第一溝部54に沿って幅方向Wの中央側に向けて流れた水Dはインナーリップ53で止水されるため、幅方向Wの中央部分から水Dが内側に侵入することも抑制できる。
【0087】
また、インナーリップ53は、高さ方向Hから視て、幅方向W及び配索方向Lに沿って設けられているとともに、車体パネルPに取り付けた状態において、閉鎖空間Sを形成し、第一溝部54における幅方向Wの中央側端部は、インナーリップ53が形成する閉鎖空間Sに挿通している。
【0088】
このように第一溝部54が、インナーリップ53が形成する閉鎖空間Sに挿通しているため、第一溝部54に入り込んだ水Dを閉鎖空間Sに案内することができる。したがって、後端側LBに水Dが侵入することをより確実に抑制できる。
【0089】
さらにまた、当接部56の挿通孔P1の側(後端側LB)に、当接部56に沿って、高さ方向Hに向けて窪ませた第二溝部55が設けられている。これにより、水Dが当接部56を越え、当接部56の後端側LBに水Dが侵入した場合であっても、水Dが後端側LBに流れるのを第二溝部55で抑制できる。したがって、後端側LBに水Dが侵入することをより確実に抑制できる。
【0090】
また、第二溝部55における幅方向Wの中央側端部は、第一溝部54における幅方向Wの中央側端部よりも、幅方向Wの端部側に配置されている。すなわち、第一溝部54に沿った第二溝部55は閉鎖空間Sと挿通していない。このため、第一溝部54が挿通する閉鎖空間Sから水Dが第二溝部55に流れることを防止できる。したがって、第一溝部54からインナーリップ53に案内された水Dが、第二溝部55を介して後端側LBに水Dが侵入することを防止できる。
【0091】
このように構成された止水カバー付グロメット1及び止水カバー付ワイヤーハーネス2は、対向部51における幅方向Wの両端部分から入り込んだ水Dを、第一溝部54を介して、インナーリップ53が形成する第一溝部54よりも広範な閉鎖空間Sに案内できるとともに、閉鎖空間Sに案内されずに当接部56を越えた水Dを第二溝部55で堰き止めることができる。さらに、閉鎖空間Sに案内された水Dが、第二溝部55を介して後端側LBに水Dが侵入することを防止できる。
【0092】
また、当接部56は、第一溝部54の一部を形成していることにより、対向部51の主面(対向底面51a)から当接部56の先端までの高さよりも、溝底から当接部56の先端までの高さの方が長い。このため、第一溝部54に入り込んだ水Dが挿通孔P1の側と反対側に侵入することをより抑制できる。
【0093】
さらにまた、第一溝部54及び当接部56は、幅方向Wに向かうに伴い配索方向Lに湾曲していることにより、第一溝部54の経路を長くすることができる。したがって、侵入した水Dが後端側LBに侵入することをより抑制できる。
【0094】
また、対向部51における幅方向Wの両端部分には、車体パネルPと反対側に向けて突出するとともに、パネル取付部50が止水カバー10に装着された状態において、止水カバー10が当接する突出部521が設けられている。
【0095】
これにより、止水カバー10が装着されたパネル取付部50を車体パネルPに取り付けた状態において、止水カバー10が対向部51に設けられた突出部521を下方側HDに向けて押圧することができる。このため、当接部56が車体パネルPに向けて押し付けられ、当接部56を車体パネルPに対してより強く当接させることができる。したがって、当接部56による止水性を向上させることができ、当接部56よりも挿通孔P1の側と反対側に水Dが侵入することをより確実に抑制できる。
【0096】
また、突出部521は、当接部56に対応して設けられていることにより、止水カバー10を装着により、当接部56を車体パネルPに確実に当接させることができる。したがって、当接部56による止水性をより向上させることができる。
【0097】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、この発明のパネルは、車体パネルPに対応し、以下同様に、
ワイヤーハーネスは、ハーネスWHに対応し、
グロメットは、グロメット20に対応し、
止水カバーは、止水カバー10に対応し、
取付部は、パネル取付部50に対応し、
板厚方向は、高さ方向Hに対応し、
固定孔は、固定孔P2に対応し、
対向部は、対向部51に対応し、
配索方向は、配索方向Lに対応し、
幅方向は、幅方向Wに対応し、
固定部は、固定部62に対応し、
止水部は、インナーリップ53に対応し、
溝部は、第一溝部54に対応し、
当接部は、当接部56に対応し、
止水カバー付グロメットは、止水カバー付グロメット1に対応し、
第二溝部は、第二溝部55に対応し、
止水カバー側リブは、突出部521に対応し、
止水カバー付ハーネスは、止水カバー付ワイヤーハーネス2に対応するが、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0098】
例えば、本実施形態において、当接部56は第一溝部54及び第二溝部55の一部を構成する壁部であるが、これに限らず、例えば、第一溝部54の後端側LBに所定の間隔を隔てて設けられた凸部としてもよい。すなわち、当接部56は、第一溝部54の一部を形成している場合のみならず、第一溝部54と別体として設けられてもよい。
【0099】
また、本実施形態において、幅側リップ531及び配索側リップ532は、幅方向W及び配索方向Lに沿っている。より具体的には、一部分が湾曲しているものを含んでいる。しかしながら、幅側リップ531及び配索側リップ532は、水Dの後端側LBへの移動を抑制できるように、閉鎖した閉鎖空間Sを形成していればよく、その形状については特に限定されない。
【符号の説明】
【0100】
1…止水カバー付グロメット
2…止水カバー付ワイヤーハーネス
10…止水カバー
20…グロメット
50…パネル取付部
51…対向部
53…インナーリップ
54…第一溝部
55…第二溝部
56…当接部
62…固定部
521…突出部
H…高さ方向
L…配索方向
P…車体パネル
W…幅方向
P2…固定孔
WH…ハーネス