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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001560
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】セメント含有造粒物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28C 5/12 20060101AFI20241225BHJP
   B28C 7/04 20060101ALI20241225BHJP
   C04B 18/167 20230101ALI20241225BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20241225BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
B28C5/12
B28C7/04
C04B18/167
C04B24/26 D
C04B28/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101209
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000167233
【氏名又は名称】光洋機械産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】平尾 孝典
(72)【発明者】
【氏名】千坂 修
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼下 太志
(72)【発明者】
【氏名】今井 義
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼崎 綾信
【テーマコード(参考)】
4G056
4G112
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056AA23
4G056CB32
4G056CC04
4G112MD01
4G112PA30
4G112PB31
4G112PE01
4G112PE02
(57)【要約】
【課題】コンクリート等のセメント含有組成物を有効利用して、良好に造粒された造粒物を安全に製造することができる、セメント含有造粒物の製造方法を提供する。
【解決手段】容器及び前記容器内で回転して前記容器に対して相対的に回転運動する撹拌羽根を有する撹拌装置の中に、セメント及び水を含有するセメント含有組成物を入れ、さらに前記撹拌装置の中に吸水性樹脂を入れかつ硬化促進剤は入れずに、前記撹拌羽根を回転させて前記セメント含有組成物及び前記吸水性樹脂を撹拌させてセメント含有造粒物を得る、セメント含有造粒物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器及び前記容器内で回転して前記容器に対して相対的に回転運動する撹拌羽根を有する撹拌装置の中に、セメント及び水を含有するセメント含有組成物を入れ、さらに前記撹拌装置の中に吸水性樹脂を入れかつ硬化促進剤は入れずに、前記撹拌羽根を回転させて前記セメント含有組成物及び前記吸水性樹脂を撹拌させてセメント含有造粒物を得る、セメント含有造粒物の製造方法。
【請求項2】
前記セメント含有組成物は、コンクリート、モルタル、及びセメントスラリーからなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載のセメント含有造粒物の製造方法。
【請求項3】
前記コンクリートは、コンクリート製造工場で排出される脱水ケーキであるか、又は使用されずに残ったコンクリートである、請求項2に記載のセメント含有造粒物の製造方法。
【請求項4】
前記撹拌装置の中に、前記吸水性樹脂を包装体に収納することなくそのまま入れる、請求項1~3のいずれか1項に記載のセメント含有造粒物の製造方法。
【請求項5】
前記セメント含有組成物の固形分100質量部に対する前記吸水性樹脂の添加量は0.3質量部以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のセメント含有造粒物の製造方法。
【請求項6】
前記撹拌装置は、強制二軸型ミキサー又はパン型ミキサーである、請求項1~3のいずれか1項に記載のセメント含有造粒物の製造方法。
【請求項7】
前記セメント含有造粒物の粒径は30mm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のセメント含有造粒物の製造方法。
【請求項8】
前記吸水性樹脂はポリ(メタ)アクリル酸系重合体である、請求項1~3のいずれか1項に記載のセメント含有造粒物の製造方法。
【請求項9】
前記セメント含有組成物を前記撹拌装置に入れ、さらに前記撹拌羽根を回転させた後に、前記吸水性樹脂を入れる、請求項1~3のいずれか1項に記載のセメント含有造粒物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント含有造粒物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント及び水を含有するセメント含有組成物は、さらに混合する材料によって、コンクリート(セメント、粗骨材、細骨材、水)、モルタル(セメント、細骨材、水)、又はセメントスラリーもしくはセメントペースト(セメント、水)に区別される。これらセメント含有組成物には、さらに混和剤又は混和材も材料として混合されることがある。
【0003】
建設現場等、様々な場所で、用途に応じ、セメント含有組成物は使用されている。
しかし、例えば使用されずに残ったコンクリート(所謂、残コン、戻りコン)は、フレッシュな生コンクリート(所謂、生コン)と同じ品質で未使用であるにもかかわらず、廃棄されている。また、生コン製造工場などの濁水処理設備で排出される脱水ケーキも、セメントや細骨材で構成されており、コンクリート等と成分が同じであるにもかかわらず、廃棄されている。
したがって、これらの廃棄物を再びコンリート材料として再利用することは、バージン材料の使用量削減による環境負荷低減につながるとともに、廃棄物の削減にも貢献することにもなる。
【0004】
特許文献1には、廃棄するコンクリート(残コン、戻りコン)に対し、生コン取り扱い装置洗浄時の沈澱分級した固形物、セメントの急結促進剤、高吸水性ポリマーを混合し、粒状に硬化させる技術が記載されている。また、特許文献1には、急結促進剤は硬化促進剤ともいわれると記載されている。
特許文献2には、残コンに水溶紙で袋状にした梱包材に封入した粉末状又は顆粒状の吸水性高分子体を添加する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献11】特開2017-149611号公報
【特許文献22】実用新案登録第3147832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術によると、廃棄する生コンクリートを粒状化するために、装置を洗浄した際の洗浄水を沈澱分級する設備が必要となってしまう。
また、特許文献1では、生コンクリートに対して硬化促進剤(急結促進剤)及び高吸水性ポリマーを添加し、油圧ショベルで撹拌しているため、撹拌が不十分となり、均質な造粒物を得ることができない可能性が高い。
また、特許文献1には、吸水性ポリマーとして、イオン性吸水性ポリマー、中性吸水性ポリマーを使用しても良いと記載されているが、その添加量は記載されていない。
特許文献1には、硬化促進剤(急結促進剤)1~5kgを対象物1mに対して添加すると記載されているが、例示されるアルミン酸カルシウムは急結性が高く、油圧ショベルに付着するとコンクリート等が除去しづらくなる。アルミン酸ナトリウムは劇物に指定されており取り扱いが危険である。更に、硬化促進剤(急結促進剤)(アルミン酸ナトリウムなど)を使用すると、短時間でセメント等が硬化する為、短時間で成形する必要があり、均質な品質の造粒物を作ることが難しくなる。
【0007】
特許文献2の技術によると、水溶性袋に吸水性高分子体を封入して残コンに投入した場合、残コン全体に均一に吸水性高分子体を分散させることが難しく、水溶性袋を投入した残コンの水分に対し、部分的に大量の吸水性高分子体が投入されることになる。吸水性高分子体は吸水すると膨潤するが、少量の水を大量の吸水性高分子体で取り合った場合、複数の吸水性高分子体の粒子自体が大きなゴム状の塊を形成してしまい、撹拌しても残コン全体に均一に混合することが困難となってしまう。
また、特許文献2では、アジテータ車(重力式ミキサー)によって残コンと吸水性高分子体とを撹拌しているため、この点においても残コンと吸水性高分子体の撹拌が不十分となる。また、アジテータ車のドラムは入口と出口が同じ上部の開放口だけになるため、新たなコンクリート製造時に、前の処理で用いた薬剤がコンタミするおそれがある。また、残コンは廃棄物であること、コンクリートの配合は一律ではなく目標とする強度や流動性に応じて変化させることから、性状は一定ではない。水溶性袋単位での吸水性高分子体の添加は、吸水性高分子体の過不足を調整することが困難であり、得られる処理物の品質が一定にならない課題を抱えている。
【0008】
本発明は、コンクリート等のセメント含有組成物を有効利用して、良好に造粒された造粒物を安全に製造することができる、セメント含有造粒物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の〔1〕~〔9〕を提供する。
〔1〕容器及び前記容器内で回転して前記容器に対して相対的に回転運動する撹拌羽根を有する撹拌装置の中に、セメント及び水を含有するセメント含有組成物を入れ、さらに前記撹拌装置の中に吸水性樹脂を入れかつ硬化促進剤(急結促進剤)は入れずに、前記撹拌羽根を回転させて前記セメント含有組成物及び前記吸水性樹脂を撹拌させてセメント含有造粒物を得る、セメント含有造粒物の製造方法。
〔2〕前記セメント含有組成物は、コンクリート、モルタル、及びセメントスラリーからなる群から選択される1種又は2種以上である、上記〔1〕に記載のセメント含有造粒物の製造方法。
〔3〕前記コンクリートは、コンクリート製造工場で排出される脱水ケーキであるか、又は使用されずに残ったコンクリートである、上記〔2〕に記載のセメント含有造粒物の製造方法。
〔4〕前記撹拌装置の中に、前記吸水性樹脂を包装体に収納することなくそのまま入れる、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のセメント含有造粒物の製造方法。
〔5〕前記セメント含有組成物の固形分100質量部に対する前記吸水性樹脂の添加量は0.3質量部以上である、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のセメント含有造粒物の製造方法。
〔6〕前記撹拌装置は、強制二軸型ミキサー又はパン型ミキサーである、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のセメント含有造粒物の製造方法。
〔7〕前記セメント含有造粒物の粒径は30mm以下である、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のセメント含有造粒物の製造方法。
〔8〕前記吸水性樹脂はポリ(メタ)アクリル酸系重合体である、上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のセメント含有造粒物の製造方法。
〔9〕前記セメント含有組成物を前記撹拌装置に入れ、さらに前記撹拌羽根を回転させた後に、前記吸水性樹脂を入れる、上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載のセメント含有造粒物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コンクリート等のセメント含有組成物を有効利用して、良好に造粒された造粒物を安全に製造することができる、セメント含有造粒物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
なお、本明細書において、「固形分」とは、溶媒(水等)を除いた成分を意味し、「固形分濃度」とは、組成物等から溶媒(水等)を除いた成分の濃度を意味する。
本発明において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0012】
本発明に係るセメント含有造粒物の製造方法は、容器及び前記容器内で回転して前記容器に対して相対的に回転運動する撹拌羽根を有する撹拌装置の中に、セメント及び水を含有するセメント含有組成物を入れ、さらに前記撹拌装置の中に吸水性樹脂を入れかつ硬化促進剤(急結促進剤)は入れずに、前記撹拌羽根を回転させて前記セメント含有組成物及び前記吸水性樹脂を撹拌させてセメント含有造粒物(以下、単に「造粒物」ということがある。)を得る、セメント含有造粒物の製造方法である。
【0013】
本発明によれば、コンクリート等のセメント含有組成物を有効利用して、セメント含有造粒物を得ることができる。また、本発明によれば、硬化促進剤(急結促進剤)を用いないため、造粒物を安全に製造することができると共に、薬剤コストの削減を図ることもできる。さらに、本発明によれば、上記撹拌装置を用いるため、良好に造粒された造粒物を製造することができる。また、アジテータ車の回転ドラムは入口と出口が同じ上部の開放口だけになるため、造粒物の製造後におけるドラム洗浄に手間がかかると共に、洗浄がしづらいために、多量の洗浄水が必要となり、結果として汚れた大量の排水が排出されることになる。これに対し、プラネタリ型ミキサーは上部が大きく解放されており、下部から排水が排出可能なことから、洗浄が容易であり、効率よく洗浄することができ、洗浄排水量も減らすことが可能である。
【0014】
[セメント含有組成物]
セメント含有組成物としては、コンクリート、モルタル、及びセメントを含む濁水を沈澱分離し、脱水処理した脱水ケーキを撹拌してスラリー化したセメントスラリーからなる群から選択される1種又は2種以上が好ましい。
当該セメント含有組成物は、骨材を含有していても含有していなくてもよい。
なお、本実施形態において、骨材、細骨材、粗骨材、コンクリート、及びモルタルは、以下を意味する。
・骨材:コンクリートの体積の50~80%(たとえば約70%)を占める材料であり川砂、山砂等がある。
・細骨材:全体の85%以上が粒径5mm以下の骨材。
・粗骨材:全体の85%以上が粒径5mm以上の骨材。
・コンクリート:セメントと細骨材、粗骨材、水、混和剤、混和材を含むもの。
・モルタル:セメント、細骨材、水を含むもの。
【0015】
セメント含有組成物は、バージン材料ではなく、建設現場等で使用されなかったり、コンクリート製造工場などの濁水処理設備で排出されたりしたセメント含有組成物であることが好ましい。これにより、産業廃棄物の削減が図られる。
当該セメント含有組成物は、好ましくは、使用されずに残ったコンクリート(所謂、残コン、戻りコン)及びコンクリート製造工場などの濁水処理設備で排出される脱水ケーキからなる群から選択される少なくとも1種である。
コンクリートは、例えばコンクリート製造工場で排出される脱水ケーキであるか、又は使用されずに残ったコンクリートである。
【0016】
[吸水性樹脂]
吸水性樹脂は、JIS K7223(1996)及びJIS K7224(1996)で定義される、「水を高度に吸収して、膨潤する樹脂で、架橋構造の親水性物質で水と接触することにより吸水し、一度吸水すると圧力をかけても離水しにくい特徴を持っている」ものである。すなわち、吸水量が多く、保水性に優れた樹脂である。
【0017】
吸水性樹脂の種類は、合成樹脂系及び天然物由来系のいずれでもよく、特に限定されるものではないが、より好ましくは合成樹脂系である。合成樹脂系は、吸水倍率が高く、組成が一定であるために均質な造粒体を製造し易く、また、天然系吸水体と比較して一定の粒度を有するために撹拌時における飛散が少なく、腐敗して臭気が発生することが抑制され、体積変化に起因して処理済の残コンの内部に空隙ができることが抑制される、といった利点を有する。
【0018】
吸水性樹脂の種類は、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体の架橋物、ポリアルキレンイミンの架橋物、ポリオキシアルキレンの架橋物、ポリマレイン酸の架橋物、及びこれらを構成する単量体のいずれかを含む共重合体の架橋物等が挙げられる。
ポリ(メタ)アクリル酸系重合体としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ(メタ)アクリルアミド、及びこれらを構成する単量体のいずれかを含む共重合体等が挙げられる。
ポリ(メタ)アクリル酸系重合体としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアルキレンイミン、ポリオキシアルキレン、ポリマレイン酸、及びこれらを構成する単量体のいずれかを含む共重合体等が挙げられる。
【0019】
ポリ(メタ)アクリル酸塩を構成する単量体としては、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム等が挙げられる。
ポリ(メタ)アクリル酸エステルを構成する単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル等が挙げられる。
ポリアルキレンイミンを構成する単量体としては、エチレンイミン、メチルエチレンイミン等が挙げられる。
ポリオキシアルキレンを構成する単量体としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が挙げられる。
前記共重合体を構成する他の単量体としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、N-エチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン等が挙げられる。
【0020】
吸水性樹脂は、1種単独で用いてもよく、あるいはまた、2種以上を併用してもよい。入手容易性及び高い吸水能等の観点から、ポリアクリル酸-ポリアクリル酸ソーダ共重合体の架橋物、ポリアクリルアミド-ポリアクリル酸共重合体の架橋物、ポリアクリル酸の架橋物又はポリアクリル酸ナトリウムの架橋物が好適に用いられ、ポリアクリル酸-ポリアクリル酸ソーダ共重合体の架橋物、又はポリアクリルアミド-ポリアクリル酸共重合体の架橋物が特に好ましい。
【0021】
セメント含有組成物中に含まれる水分は、セメントや骨材に吸水されており自由な状態にはないため、吸水性樹脂の添加量を水分に対して決めることは難しい。本発明者らは、セメント含有組成物の固形分100質量部に対する前記吸水性樹脂の添加量を特定範囲に規定することにより、適切な改質が可能であることを見出した。
すなわち、セメント含有組成物の固形分100質量部に対する前記吸水性樹脂の添加量は、好ましくは0.3質量部以上である。0.3質量部以上であると、吸水性樹脂による吸水効果が良好に発現し、造粒物を容易に製造することができる。また、当該添加量の上限値には特に制限はないが、コスト低減の観点から、好ましくは3.0質量部以下である。また、3.0質量部以下であると、水分に対する吸水性樹脂の割合が少ないため、コンクリートとの混合が容易であり、部分的に吸水性樹脂の塊ができてしまうことが防止され、均一な分散が可能である。また、3.0質量部以下であると、コストを抑えることができる。
当該観点から、セメント含有組成物の固形分100質量部に対する前記吸水性樹脂の添加量は、より好ましくは0.3~3.0質量部、さらに好ましくは0.5~2.0質量部である。
【0022】
撹拌装置の中に、前記吸水性樹脂を包装体に収納することなくそのまま入れるのが好ましい。これにより、吸水性樹脂を迅速に撹拌させることができるとともに、必要な添加量を調整して添加することができる。
【0023】
[撹拌装置]
撹拌装置は、容器及び前記容器内で回転して前記容器に対して相対的に回転運動する撹拌羽根を有する。
ここで、アジテータ車は、ドラムの内壁に撹拌羽根が固定されており、ドラムの回転に伴い撹拌羽根も回転運動するが、当該撹拌羽根はドラム(容器)に対して相対的に回転運動しないため、本発明における撹拌装置には含まれない。
本発明の撹拌装置は、アジテータ車(重力式)とは異なり、撹拌羽根が容器に対して相対的に回転運動し、強制練りを行うため、吸水性樹脂をセメント含有組成物に迅速かつ均質に混ぜることができる。これにより、多量の吸水性樹脂が偏在することがなく、装置内の全体にわたり、良好に造粒された造粒物が製造され、また吸水性樹脂の偏在に起因して造粒物が生じることが防止される。
【0024】
また、吸水性樹脂をセメント含有組成物に迅速かつ均質に混ぜることにより、分散していない大量の吸水性樹脂が1か所で吸水作用を起こし、塊状になってしまい、吸水能力を失ってしまう状態を防ぐことができるため、セメント含有組成物の固形分100質量部に対する前記吸水性樹脂の添加量を多量にすることができる。このように多量の吸水性樹脂を均一に添加することにより、残コンやセメントペーストの含有する水分が多く、大量の吸水性樹脂を必要とした場合も、良好に造粒物を製造することができる。
【0025】
撹拌装置としては、連続式及びバッチ式のいずれを用いてもよい。
連続式の撹拌装置としては、吸水性樹脂をセメント含有組成物に迅速かつ均質に混ぜる観点から、好ましくは強制二軸型ミキサー、パドル型ミキサーであり、より好ましくは強制二軸型ミキサーである。
バッチ式の撹拌装置としては、吸水性樹脂をセメント含有組成物に迅速かつ均質に混ぜる観点から、好ましくはパン型ミキサー、強制二軸型ミキサーであり、より好ましくはパン型ミキサーである。パン型ミキサーとしては、好ましくはプラネタリ型ミキサーである。
【0026】
プラネタリ型ミキサーの「ギヤボックス回転数(自転)/ブレード回転数」(以下、「自転/公転比」ということがある。)は、好ましくは0.1~1.0、より好ましくは0.3~0.5である。
【0027】
[硬化促進剤]
前記撹拌装置の中に、前記セメント含有組成物を入れ、さらに当該撹拌装置の中に吸水性樹脂を入れる際には、硬化促進剤(急結促進剤)は入れない。このように硬化促進剤(急結促進剤)を撹拌装置の中には添加しないため、造粒物を安全に製造することができるとともに、薬剤コストの削減を図ることもできる。
造粒物を安全に製造する観点から、セメント含有組成物を撹拌装置の中に入れる前においても、セメント含有組成物に硬化促進剤(急結促進剤)を添加することも行わない。
なお、安全に造粒物の製造を実施することができる程度であれば、建設現場等で使用されなかったり濁水処理設備で排出されたりしたセメント含有組成物中に、既に硬化促進剤(急結促進剤)が含有していてもよい。ただし、硬化促進剤(急結促進剤)が含有していないセメント含有組成物を、本発明に係るセメント含有造粒物の製造方法に供することが好ましい。
ここで、硬化促進剤とは、JIS A0203:2014に規定されているとおり、セメントの水和を早め、初期材齢の強度発現を大きくするために用いる混和剤を意味する。硬化促進剤は、典型的にはアルミン酸カルシウム水和物を形成してセメントの水和反応を促進させる能力を有する材料である。硬化促進剤としては、たとえば、カルシウムアルミネート、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム等が挙げられる。
【0028】
[セメント含有造粒物]
セメント含有造粒物の粒径は、好ましくは30mm以下である。30mm以下であると、骨材が脆くなることが防止され、割れ難くなるとともに、密実になり易いために硬度が高くなる。当該観点から、セメント含有造粒物の粒径は、より好ましくは10mm以下である。
なお、セメント含有造粒物の粒径は、ノギスを用いて測定することができる。
セメント含有造粒物の形状は、再び骨材として再利用した場合の混合物の流動性の観点から、好ましくは球状である。
なお、セメント含有造粒物の形状は、目視により確認することができる。
【0029】
[製造方法の好適例]
セメント含有組成物を前記撹拌装置に入れ、さらに前記撹拌羽根を回転させた後に、前記吸水性樹脂を入れることが好ましい。これにより、吸水性樹脂とセメント含有組成物とを迅速に撹拌することができる。
撹拌時間は、吸水性樹脂をセメント含有組成物に迅速かつ均質に混ぜる観点から、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上、さらに好ましくは2分以上である。
【実施例0030】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0031】
[原料等]
原料等として、以下を使用した。
(1)吸水性樹脂1
ポリアクリレート系吸水性樹脂
平均粒径:350μm
外観:白色粒状
【0032】
(2)凝集剤1
ポリアクリルアミド-ポリアクリル酸塩共重合物
栗田工業(株)製「クリサットC-333L」
外観:白色乳状
【0033】
(3)セメント
普通ポルトランドセメント
(4)砂
豊浦珪砂
【0034】
[実施例1~4及び比較例1~3]
500mLビーカー内に水51g、セメント29g、砂200gを投入し、スパーテルにて十分撹拌して、セメント含有組成物1(セメントスラリー1)を作成した。
当該セメント含有組成物1に、表1に示す種類及び配合量の添加剤を添加し、スパーテルで1分撹拌して、評価対象物を得た。
なお、スパーテルは、容器内で回転して容器に対して相対的に回転運動する撹拌羽根を模擬している。すなわち、ビーカー及びスパーテルは、容器及び容器内で回転して容器に対して相対的に回転運動する撹拌羽根を有する撹拌装置を模擬している。
得られた評価対象物の粒径を篩法にて測定し、下記の基準に基づいて判定した。その結果を表1に示す。
◎:評価対象物が、粒径10mm未満の造粒物であった。
〇:評価対象物が、粒径10mm以上30mm以下の造粒物であった。
△:評価対象物が、粒径30mm超の造粒物であった。
×:評価対象物が、スラリー状又は曳糸性の造粒物であった。
【0035】
[比較例4]
角材(5mm角、長さ150mm)を500mLビーカー内の2か所に接着して、アジテータ模擬装置を得た。
実施例1と同様にして得られたセメント含有組成物1(セメントスラリー1)を、当該アジテータ模擬装置内に即座に入れ替えた。
アジテータ模擬装置のビーカーを45°傾けた状態で、当該セメント含有組成物1に、実施例1と同一種類の添加剤を同一配合量添加し、ビーカーを1分回転させて、評価対象物を得た。
なお、ビーカーは、ビーカーの底面(円形)の中心をとおりかつ底面と直交する線を回転軸として、回転速度3rpmにて回転させた。
【0036】
[実施例5~7及び比較例5]
500mLビーカー内に水260g、セメント114g、砂381gを投入し、スパーテルにて十分撹拌して、セメント含有組成物2(セメントスラリー2)を作成した。
当該セメント含有組成物2に、表2に示す種類及び配合量の添加剤を添加し、スパーテルで1分撹拌して、評価対象物を得た。得られた評価対象物の粒径を篩法にて測定し、実施例1と同様の基準に基づいて判定した。その結果を表2に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
[評価結果]
実施例1~4及び実施例5~7は、セメント含有組成物に対して添加剤として吸水性樹脂を添加し、かつ容器(ビーカー)及び前記容器(ビーカー)内で回転して前記容器(ビーカー)に対して相対的に回転運動する撹拌羽根に相当する部材(スパーテル)を有する撹拌装置を用いて撹拌したため、造粒物を得ることができた。
一方、比較例1~3及び比較例5は、セメント含有組成物に対して添加剤として凝集剤を添加したため、得られた評価対象物が曳糸性を有するという不都合が生じた。
比較例4は、アジテータを模擬した撹拌装置を用いて撹拌したため、セメント含有組成物と吸水性樹脂が十分に撹拌されず、セメント含有組成物上で吸水性樹脂が一部の水のみを吸って塊状になってしまったことから造粒作用は起こらなかった。
【0040】
[実施例8]
下記表3に示す原料を下記表3に示す配合量にて配合して、セメント含有組成物を得た。
当該セメント含有組成物20kgを、表4に示す仕様のパン型ミキサーに投入後、薬剤として吸水性樹脂1を当該セメント含有組成物の固形分100質量部に対して0.4質量部の割合にて投入した。次いで、当該ミキサーを60Hzにて2分間運転した。
得られた対象物の粒径をノギスで測定し、5つの造粒物の算術平均値を粒径とし、下記の基準に基づいて判定した。その結果を表5に示す。
◎:評価対象物が、粒径10mm未満の造粒物であった。
〇:評価対象物が、粒径10mm以上30mm以下の造粒物であった。
×:評価対象物が、造粒しなかった、又は、粗大な塊状になった。
【0041】
[実施例9~10及び比較例6~8]
表4に示す種類のミキサーを用い、薬剤の添加量を表5に示すとおりにしたこと以外は実施例8と同様にして対象物を得た。
得られた対象物について、実施例8と同様の評価を行った。その結果を表5に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】
[評価結果]
実施例8~10は、セメント含有組成物に対して添加剤として吸水性樹脂を添加し、かつ容器及び当該容器内で回転して当該容器に対して相対的に回転運動する撹拌羽根に相当する部材を有する撹拌装置を用いて撹拌したため、造粒物を得ることができた。
一方、比較例6~8は、セメント含有組成物に対して添加剤として吸水性樹脂を添加しなかったため、造粒物を得ることができなかった。
【0046】
[参考例1~3]
生コン工場から排出されたスラッジケーキ10kgを下記表6に示すミキサーに投入し、水を加えて含水率が40質量%となるように調整した。次いで、当該ミキサーを60Hzにて10分間運転した。
得られた対象物を目視し、下記の基準に基づいて判定した。その結果を表6に示す。
〇:解泥しかつ均一であった。
△:解泥したが不均一であった。
×:解泥しなかった。
【0047】
【表6】
【0048】
[評価結果]
表6に示すとおり、プラネタリ型ミキサー、二軸型ミキサー、パン型ミキサーの順に、解泥能力が優れていた。