(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025156007
(43)【公開日】2025-10-14
(54)【発明の名称】採取装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/497 20060101AFI20251002BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20251002BHJP
A01K 29/00 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
G01N33/497 C
G01N33/48 N
A01K29/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025039343
(22)【出願日】2025-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2024053651
(32)【優先日】2024-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和5年度、農林水産省、みどりの食料システム戦略実現技術開発・実証事業のうち農林水産研究の推進(委託プロジェクト研究)(畜産からのGHG排出削減のための技術開発)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 知之
(72)【発明者】
【氏名】及川 康平
(72)【発明者】
【氏名】神谷 裕子
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA29
2G045CB23
2G045DB01
(57)【要約】
【課題】複数の動物個体の呼気サンプルについて、個体毎のサンプリング時間の差を小さくし、より好適なサンプリングを実現する。
【解決手段】複数の哺乳動物個体の呼気ガスを、個体毎に区別して採取する採取装置(1)であって、哺乳動物の呼気ガスを採取する複数の採取部(11)と、上記呼気ガスを採取する採取部を切り替える切替部(12)と、上記採取部における哺乳動物の存在又は非存在を検出する検出部(13)と、を備え、上記検出部は、上記採取部における哺乳動物の存在を、当該哺乳動物の個体情報と紐付けして検出し、上記切替部は、所定の期間内における、哺乳動物個体毎の呼気ガスの累積採取時間に基づいて、哺乳動物個体間で上記呼気ガスの累積採取時間の差が小さくなるように、上記呼気ガスを採取する採取部を選択する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の哺乳動物個体の呼気ガスを、個体毎に区別して採取する採取装置であって、
哺乳動物の呼気ガスを採取する複数の採取部と、
上記呼気ガスを採取する採取部を切り替える切替部と、
上記採取部における哺乳動物の存在又は非存在を検出する検出部と、
を備え、
上記検出部は、上記採取部における哺乳動物の存在を、当該哺乳動物の個体情報と紐付けして検出し、
上記切替部は、所定の期間内における、哺乳動物個体毎の呼気ガスの累積採取時間に基づいて、哺乳動物個体間で上記呼気ガスの累積採取時間の差が小さくなるように、上記呼気ガスを採取する採取部を選択する、
採取装置。
【請求項2】
上記複数の採取部と、上記複数の哺乳動物個体とが、1対1に対応する、
請求項1に記載の採取装置。
【請求項3】
上記検出部が、上記複数の採取部のうち2以上の採取部における哺乳動物の存在を検出した場合に、
上記切替部は、上記呼気ガスの累積採取時間がより短い哺乳動物が存在する採取部を、上記呼気ガスを採取する採取部として選択する、
請求項1又は2に記載の採取装置。
【請求項4】
上記切替部は、上記呼気ガスの累積採取時間がより短い哺乳動物が存在する採取部を、当該哺乳動物が採取部に存在した回数に基づき決定する、
請求項3に記載の採取装置。
【請求項5】
上記複数の採取部で採取された呼気ガスを分析する分析部を更に備える、
請求項1に記載の採取装置。
【請求項6】
上記哺乳動物の呼気ガスの連続採取時間が、所定の閾値に達した時点で、上記検出部が、上記複数の採取部のうち2以上の採取部における哺乳動物の存在を検出した場合に、
上記切替部は、上記哺乳動物の存在が検出された上記2以上の採取部のうち、上記呼気ガスの累積採取時間が最小である採取部を、上記呼気ガスを採取する採取部として選択する、
請求項1に記載の採取装置。
【請求項7】
上記哺乳動物の存在が検出された上記2以上の採取部のうち、上記呼気ガスの累積採取時間が最小である採取部が複数存在する場合に、
上記切替部は、所定の優先順に基づいて、上記呼気ガスを採取する採取部を選択する、請求項3に記載の採取装置。
【請求項8】
上記検出部が、1の上記採取部のみにおける哺乳動物の存在を検出した場合に、
上記切替部は、上記1の採取部を、上記呼気ガスを採取する採取部として選択する、
請求項1に記載の採取装置。
【請求項9】
上記検出部が、上記複数の採取部の何れにも哺乳動物の存在を検出しない場合に、
上記分析部は、上記複数の採取部で採取されたバックグラウンドガスを分析する、
請求項5に記載の採取装置。
【請求項10】
上記切替部における選択結果に基づいて、上記複数の採取部と上記分析部における分析結果とを紐付ける紐付け部を更に備える、
請求項5又は9に記載の採取装置。
【請求項11】
上記紐付け部における紐付け結果に基づいて、採取された上記呼気ガスにおける所定の分析値を採取部毎に算出する算出部を更に備える、
請求項10に記載の採取装置。
【請求項12】
上記算出部は、上記検出部における検出結果に更に基づいて、上記所定の分析値を、上記採取部毎に上記哺乳動物が存在した時間に応じて算出する、
請求項11に記載の採取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の生物体のサンプルを生物体毎にサンプリングする際に、サンプリング対象を更新する技術が知られている。例えば、非特許文献1には、複数のウシからサンプリングされるガスの流路を自動切替する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】気候変動緩和コンソーシアム,ウシルーメン発酵由来メタン排出量推定マニュアル,2023年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に開示されている技術においては、サンプリングを開始した個体が途中でサンプリング場所から離れても、サンプリングは一定時間継続する。また、当該技術においては、複数の個体が同時にサンプリング場所に存在した場合、個体毎のサンプリングデータ量に関係なく一定順序でサンプリングする。そのため、一部の個体で他の個体に比してサンプリングデータの不足が生じ得るという問題があった。
【0005】
本発明の一態様は、複数の生物体のサンプルについて、サンプリングデータ量の生物体間におけるばらつきを抑制し、より好適なサンプリングを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る採取装置は、複数の哺乳動物個体の呼気ガスを、個体毎に区別して採取する採取装置であって、哺乳動物の呼気ガスを採取する複数の採取部と、上記呼気ガスを採取する採取部を切り替える切替部と、上記採取部における哺乳動物の存在又は非存在を検出する検出部と、を備え、上記検出部は、上記採取部における哺乳動物の存在を、当該哺乳動物の個体情報と紐付けして検出し、上記切替部は、所定の期間内における、哺乳動物個体毎の呼気ガスの累積採取時間に基づいて、哺乳動物個体間で上記呼気ガスの累積採取時間の差が小さくなるように、上記呼気ガスを採取する採取部を選択する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、複数の生物体のサンプルについて、サンプリングデータ量の生物体間におけるばらつきを抑制し、より好適なサンプリングを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る採取装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る採取方法の流れの一例を示すフロー図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る呼気ガスの分析方法の流れの一例を示すフロー図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る採取装置の構成例を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る採取装置の構成例を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る採取装置における結果の一例を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る採取装置の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0010】
(採取装置1の概要)
牛などの反芻動物の消化管内発酵由来のメタンは、わが国の農業分野における温室効果ガスの排出源の1つとなっており、その削減技術の開発・普及は喫緊の課題である。近年では、育種改良による削減の可能性が注目されている。
【0011】
育種改良方策を策定し、実行に移すためのキーテクノロジーとなる、多頭数、現場レベルでのメタン排出量測定法については、例えば、牛の呼気の一部を採取することにより推定する公知技術である、スニファー法によっている。
【0012】
スニファー法は、1日のうちスポットで測定した、呼気中のメタン/二酸化炭素濃度比と、体重等の情報から、1日のメタン排出量を推定する方法である。一例として、肉用牛の肥育時のCH4排出量は、以下の各式を用いて算出される。
CH4排出量(L/day)=CH4/CO2比×(HP/4.9)×RQ
ここで、
RQ=1.074-0.003283×粗飼料給与割合(%)+0.6478×MEI/BW0.75
HP=[(MEI-BW0.75×MEm)×0.48+BW0.75×MEm]×1000
MEI=TDN×DMI×3.62
MEm(黒毛和種牛の例):0.1108(雌), 0.1124(去勢雄)
なお、
HP:熱発生量(heat production) (kcal/day)
BW:体重(body weight) (kg)
MEI:代謝エネルギー摂取量(metabolizable energy) (Mcal/day)
MEm:維持の代謝エネルギー要求量(metabolizable energy for maintenance) (Mcal/BW0.75kg)
TDN:可消化養分総量(total digestible energy) (% DM basis)
DMI:乾物摂取量(dry matter intake) (kg/day)
である。
【0013】
しかしながら、現状では搾乳ロボットでの測定以外は1頭毎に測定する必要があり、多頭数での測定が実現できれば、低メタン産生牛の育種改良速度が格段に早まるものと期待される。また、スニファー法による農場レベルで実施可能な簡易測定システムは、育種的な活用だけでなく、これまで不可能であった農場レベルでの飼料のメタン産生能評価やメタン排出削減資材の削減効果評価にも活用可能な技術となる可能性がある。
【0014】
なお、ガス分析機器は高価なものが多いため、多頭数を測定する際に用いるガス分析機器の台数は少ない方が、コスト削減の観点からも望ましい。
【0015】
採取装置1は、複数の哺乳動物個体の呼気ガスを、個体毎に区別して採取する装置である。本実施形態に係る哺乳動物は、例えば、反芻動物であってもよい。当該反芻動物の具体例としては、ウシ、ヒツジ、ヤギなどが挙げられ、また、とりわけウシについては、肉牛、乳牛などが挙げられる。また、本実施形態に係る哺乳動物は、例えば、家畜などの飼育可能な哺乳動物であってもよい。
【0016】
(採取装置1によるサンプル採取の一例)
採取装置1は、一例として、複数の採取部を切り替えながら、所定の期間内で連続的に、呼気ガスなどのサンプル採取を行う。
【0017】
例えば、複数の採取部のうち少なくとも1の採取部に哺乳動物が存在する場合は、哺乳動物が存在する採取部からサンプルを採取する。また、例えば、何れの採取部にも哺乳動物が存在しない場合は、哺乳動物が存在しない採取部の何れかからサンプルを採取する。哺乳動物が存在しない採取部からは、例えば、バックグラウンドのサンプルが採取される。哺乳動物が存在しない採取部からのサンプル採取は、ブランク状態(哺乳動物が存在しない状態)における累積採取時間が最小の採取部からサンプルを採取する。
【0018】
また、例えば、複数(N個:Nは自然数)の採取部のうち、2以上(2以上N以下の自然数個)の採取部に哺乳動物が存在する場合は、累積採取時間が最小の哺乳動物が存在する採取部からサンプルを採取する。各哺乳動物からのサンプルの累積採取時間が最小であるか否かは、例えば、対象とする哺乳動物が採取部に存在した回数が最小であるか否かで判断する。累積採取時間が最小の哺乳動物が存在する採取部が2以上ある場合は、例えば、所定の優先順に従って、サンプルを採取する採取部を選択する。
【0019】
(採取装置1の構成)
採取装置1の構成例について、
図1を参照して説明する。
図1は、採取装置1の構成例を示すブロック図である。採取装置1は、例えば、
図1に示すように、制御部10と、記憶部20と、入出力部30と、を備えている。
【0020】
(制御部10)
制御部10は、採取装置1の各部を統括して制御する。制御部10は、例えば、
図1に示すように、採取部11と、切替部12と、検出部13と、分析部14と、を備えている。ここで、制御部10は、採取部11を複数備えている。なお、採取装置1は、例えば、
図1に示すように、更に紐付け部15と算出部16とを備える構成としてもよい。
【0021】
(採取部11)
採取部11は、哺乳動物の呼気ガスを採取する。採取部11は、例えば、飼槽などの飼料を入れた箱に、箱の内部から採取される呼気ガスの流路である採取管を取り付けたものであってもよい。このとき、採取部11は、例えば、上述の採取管に接続されたポンプを用いて、呼気ガスを採取してもよい。ここで、採取部11は、例えば、哺乳動物が採取部11内において、頭部を入れて飼料を摂取する際に、当該哺乳動物の呼気ガスを採取してもよい。
【0022】
採取部11は、例えば、当該哺乳動物が開閉可能なドアを備えていてもよい。採取部11が備える上述のドアは、例えば、当該採取部11において哺乳動物が存在するときのみ開放されてもよい。
【0023】
例えば、複数の採取部11と、複数の哺乳動物個体とが、1対1に対応してもよい。ここで、採取部11は、例えば、対応する哺乳動物個体のみが開閉可能なドアを備えていてもよい。換言すれば、各々の採取部11は、例えば、対応する哺乳動物個体のみから呼気ガスの採取が可能となっていてもよい。
【0024】
(切替部12)
切替部12は、呼気ガスを採取する採取部11を切り替える。切替部12は、例えば、複数の採取部11の各々から採取される呼気ガスの流路の各々に設置された弁を備えていてもよい。切替部12が備える上述の弁は、例えば、電磁弁であってもよい。切替部12が備える電磁弁は、例えば、通電時に開放されるものであってもよい。また、切替部12は、例えば、電磁弁を保護するために、当該電磁弁への連続通電時間に上限値を設定してもよい。
【0025】
例えば、切替部12は、複数の採取部11のうち、切替部12が選択した採取部11における呼気ガスの流路に設置された弁のみを開放することにより、呼気ガスを採取する採取部11を切り替えてもよい。
【0026】
ここで、切替部12は、所定の期間内における、哺乳動物個体毎の呼気ガスの累積採取時間に基づいて、哺乳動物個体間で呼気ガスの累積採取時間の差が小さくなるように、呼気ガスを採取する採取部11を選択する。所定の期間は、例えば、飼槽などで構成される採取部11に飼料を給与する時点を含んでいてもよい。哺乳動物個体毎の呼気ガスの累積採取時間は、例えば、所定の時点以降の、哺乳動物個体毎の呼気ガスの採取時間の累計値であってもよい。
【0027】
なお、切替部12における選択結果は、例えば、タイムスタンプとともに記録されたデータであってもよい。このとき、切替部12における選択結果は、例えば、切替部12が選択した採取部11が所定の時間間隔毎に記録されたデータであってもよい。
【0028】
切替部12が呼気ガスを採取する採取部11を選択する方法の詳細については、
図2を参照して後述する。また、切替部12における選択結果の一例については、
図6を参照して後述する。
【0029】
(検出部13)
検出部13は、採取部11における哺乳動物の存在を、当該哺乳動物の個体情報と紐付けして検出する。検出部13は、例えば、採取部11が備えるドアの開閉を検出するセンサであってもよい。検出部13の具体例としては、ドアフィーダが挙げられる。ここで、検出部13は、例えば、採取部11が備えるドアの開放を検出することにより、当該採取部11における哺乳動物の存在を検出してもよい。
【0030】
例えば、複数の哺乳動物個体の各々に、検出部13が識別可能なデバイスが取り付けられていてもよい。ここで、哺乳動物個体に取り付けられた上述のデバイスは、例えば、当該哺乳動物の個体情報と紐付けられていてもよい。換言すれば、検出部13は、例えば、上述のデバイスが取り付けられた哺乳動物個体が、複数の哺乳動物個体のうちどの個体に該当するかを、当該デバイスを介して識別してもよい。
【0031】
また、採取部11は、例えば、検出部13が上述のように個体を識別した結果に基づき、当該採取部11が備える上述のドアを開放可能にするか否かを決定してもよい。
【0032】
なお、検出部13における検出結果は、例えば、タイムスタンプとともに記録されたデータであってもよい。このとき、検出部13における検出結果は、例えば、検出部13が採取部11における哺乳動物の存在を検出した結果が、所定の時間間隔毎に記録されたデータであってもよい。
【0033】
検出部13における検出結果の一例については、
図6を参照して後述する。
【0034】
(分析部14)
分析部14は、複数の採取部11で採取された呼気ガスを分析する。分析部14は、例えば、複数の採取部11のうち切替部12が選択した採取部11のみから採取された呼気ガスを分析してもよい。ここで、分析部14は、例えば、呼気ガスにおける分析対象となるガス成分の濃度を測定することにより、当該呼気ガスを分析してもよい。分析部14による分析対象となるガス成分の具体例としては、メタン、二酸化炭素などが挙げられる。
【0035】
なお、分析部14における分析結果は、例えば、タイムスタンプとともに記録されたデータであってもよい。このとき、分析部14における分析結果は、例えば、分析部14が呼気ガスを分析した結果が、所定の時間間隔毎に記録されたデータであってもよい。
【0036】
また、例えば、検出部13が、複数の採取部11の何れにも哺乳動物の存在を検出しない場合に、分析部14は、複数の採取部11で採取されたバックグラウンドガスを分析してもよい。バックグラウンドガスは、上述したバックグラウンドのサンプルに相当する。
【0037】
ここで、例えば、検出部13が、複数の採取部11の何れにも哺乳動物の存在を検出しない場合に、切替部12は、バックグラウンドガスの累積採取時間が最小である採取部11を、バックグラウンドガスを採取する採取部11として選択してもよい。また、例えば、検出部13が、複数の採取部11の何れにも哺乳動物の存在を検出しない場合であって、且つ、バックグラウンドガスの累積採取時間が最小である採取部11が複数存在する場合に、切替部12は、所定の優先順に基づいて、バックグラウンドガスを採取する採取部11を選択してもよい。
【0038】
例えば、分析部14における分析結果は、バックグラウンド分をキャンセルしない呼気ガスの分析結果であってもよく、また、バックグラウンドガスにおける分析結果を用いてバックグラウンド分をキャンセルするように補正した呼気ガスの分析結果であってもよい。
【0039】
ここで、一例として、分析部14が呼気ガスの分析結果についてバックグラウンド分をキャンセルするように補正する場合について説明する。この場合、例えば、分析部14は、バックグラウンドガスを分析した所定の期間であるバックグラウンド分析期間について、当該呼気ガスを分析する直前のバックグラウンド分析期間及び当該呼気ガスを分析した直後のバックグラウンド分析期間におけるバックグラウンドガスの分析結果を用いて、当該呼気ガスの分析結果を補正してもよい。ここで、例えば、バックグラウンド分析期間と当該呼気ガスを分析した期間である呼気ガス分析期間との間は、分析対象となるガスが切り替わるのに伴いガス濃度が安定するまでの期間である所定の切替え期間を有してもよい。また、例えば、分析部14は、バックグラウンド分析期間におけるバックグラウンドガスの濃度の平均値であるバックグラウンド平均値を用いて、呼気ガスの分析結果を補正してもよい。
【0040】
具体例として、以下では、バックグラウンド分析期間が3分間であって、所定の切替え期間が1分間である場合について説明する。この場合のもとで、例えば、複数の採取部11の何れにも哺乳動物の存在を検出しない期間である非検出期間が5分間(所定の切替え期間1分+バックグラウンド分析期間3分+所定の切替え期間1分)以上連続した場合に、分析部14は、当該バックグラウンド分析期間におけるバックグラウンドガスの分析結果を用いてもよい。
【0041】
例えば、哺乳動物個体A(以下では個体Aとも称し、他の哺乳動物個体についても同様に称する)が採取部11から退場し、非検出期間40分間が経過してから、個体Bが採取部11に入場した場合、分析部14は、個体Aの退場後1分時点から4分時点までの3分間、及び個体Bの入場前4分時点から1分時点の3分間におけるバックグラウンドガスの分析結果を用いてもよい。
【0042】
また、例えば、個体Aが採取部11から退場し、非検出期間4分間が経過してから、個体Bが採取部11に入場した場合、分析部14は、当該非検出期間におけるバックグラウンドガスの分析結果を呼気ガスの分析結果の補正に用いなくてもよい。
【0043】
また、例えば、個体Aが採取部11から退場し、非検出期間40分間が経過してから、個体Bが採取部11に入場後、採取部11から退場し、非検出期間40分間が更に経過してから、個体Cが採取部11に入場した場合、分析部14は、個体Bの呼気ガスの分析結果の補正に、個体Bの入場前及び退場後のバックグラウンド分析期間におけるバックグラウンド平均値を用いてもよい。
【0044】
また、例えば、個体Aが採取部11から退場し、非検出期間40分間が経過してから、個体Bが採取部11に入場後、採取部11から退場し、引続き個体Cが採取部11に入場後、採取部11から退場し、非検出期間40分間が更に経過した場合、分析部14は、個体Cの呼気ガスの分析結果の補正に、個体Bの入場前及び個体Cの退場後のバックグラウンド分析期間におけるバックグラウンド平均値を用いてもよい。
【0045】
分析部14における分析結果の一例については、
図6を参照して後述する。
【0046】
(紐付け部15)
紐付け部15は、切替部12における選択結果に基づいて、複数の採取部11と分析部14における分析結果とを紐付ける。例えば、紐付け部15は、切替部12における選択結果と分析部14における分析結果とを、両者に記録されているタイムスタンプを用いて同期させることにより、所定の時間毎における、切替部12が選択した採取部11と分析結果とを紐付けてもよい。換言すれば、紐付け部15における紐付け結果は、例えば、所定の時間毎における、切替部12が選択した採取部11と、当該採取部11で採取されたガスを分析部14が分析した結果と、を紐付けた結果であってもよい。ここで、当該採取部11で採取されたガスは、例えば、当該採取部11で採取された呼気ガスであってもよく、また、当該採取部11で採取されたバックグラウンドガスであってもよい。
【0047】
また、例えば、切替部12が選択する採取部11が切り替わる時点から所定の経過時間が経過した時点で、分析部14が何れの採取部11で採取されたガスを分析するかが切り替わってもよい。このとき、例えば、紐付け部15は、当該所定の経過時間に応じて、複数の採取部11と分析部14における分析結果とを紐付けてもよい。ここで、例えば、紐付け部15は、切替部12における選択結果と、当該選択結果に記録された時刻から所定の経過時間が経過した時点の分析部14における分析結果と、を同期させることにより、選択結果と分析結果とを紐付けてもよい。
【0048】
また、例えば、紐付け部15は、検出部13における検出結果に更に基づいて、複数の採取部11と分析部14における分析結果とを紐付けてもよい。例えば、紐付け部15は、切替部12が選択する採取部11が、哺乳動物の存在を検出しない採取部11から哺乳動物の存在を検出した採取部11となった場合に、当該哺乳動物の存在を検出した採取部11となった時点と、分析部14における分析結果がバックグランドガスにおける分析値から呼気ガスにおける分析値に切り替わった時点と、を同期させることにより、選択結果と分析結果とを紐付けてもよい。なお、切替部12が選択する採取部11が、哺乳動物の存在を検出しない採取部11から哺乳動物の存在を検出した採取部11となった場合は、例えば、切替部12が選択する採取部11を、検出部13が哺乳動物の存在を検出した採取部11に新たに切り替えた場合であってもよく、また、切替部12が選択する採取部11で、検出部13が新たに哺乳動物の存在を検出した場合であってもよい。
【0049】
また、例えば、切替部12が所定の優先順に基づいて選択する採取部11を切り替える場合、紐付け部15は、分析部14における分析結果も当該所定の優先順で切り替わるものとして、採取部11と分析結果とを紐付けてもよい。
【0050】
(算出部16)
算出部16は、紐付け部15における紐付け結果に基づいて、採取された呼気ガスにおける所定の分析値を採取部11毎に算出する。例えば、算出部16は、切替部12が選択した採取部11で採取された呼気ガスについて、当該呼気ガスにおける所定の分析値を採取部毎に算出してもよい。
【0051】
例えば、算出部16は、検出部13における検出結果に更に基づいて、所定の分析値を、採取部11毎に哺乳動物が存在した時間に応じて算出してもよい。所定の分析値の具体例としては、所定の連続した時間帯におけるメタン/二酸化炭素濃度比の平均値が挙げられる。ここで、所定の連続した時間帯は、例えば、採取部11に哺乳動物が存在した時間帯であってもよい。換言すれば、所定の連続した時間帯は、例えば、検出部13が採取部11における哺乳動物の存在を連続して検出した時間帯であってもよい。
【0052】
例えば、算出部16は、検出部13が採取部11における哺乳動物の存在を連続して検出した時間帯を算出してもよい。その上で、例えば、算出部16は、当該時間帯におけるメタン/二酸化炭素濃度比の平均値を算出してもよい。
【0053】
また、例えば、分析部14における分析結果が、バックグラウンド分をキャンセルしない呼気ガスの分析結果である場合、算出部16は、バックグラウンドガスにおける分析結果を用いて、バックグラウンド分をキャンセルするように、呼気ガスにおける分析結果を補正してもよい。その上で、例えば、算出部16は、上述したように所定の分析値を算出してもよい。
【0054】
ここで、一例として、上述した分析部14に代えて算出部16が呼気ガスの分析結果についてバックグラウンド分をキャンセルするように補正する場合について説明する。この場合、例えば、算出部16は、バックグラウンド分析期間について、当該呼気ガスを分析する直前のバックグラウンド分析期間及び当該呼気ガスを分析した直後のバックグラウンド分析期間におけるバックグラウンドガスの分析結果を用いて、当該呼気ガスの分析結果を補正してもよい。ここで、例えば、バックグラウンド分析期間と呼気ガス分析期間との間は、所定の切替え期間を有してもよい。また、例えば、算出部16は、バックグラウンド分析期間におけるバックグラウンド平均値を用いて、呼気ガスの分析結果を補正してもよい。
【0055】
算出部16における算出結果の一例については、
図6を参照して後述する。
【0056】
(記憶部20)
記憶部20には、制御部10が参照する各種のデータ、及び制御部10によって生成された各種のデータが格納される。記憶部20に格納されるデータの具体例としては、採取部11毎の呼気ガスの累積採取時間に関するデータ、採取部11毎の呼気ガスの連続採取時間に関するデータ、呼気ガスの分析結果に関するデータ、採取部11が備えるドアの開閉状況に関するデータ、採取部11の選択結果に関するデータ、採取部11における哺乳動物の存在を検出した検出結果に関するデータ、採取部11と分析結果との紐付け結果に関するデータ、呼気ガスにおける所定の分析値の算出結果に関するデータ、などが挙げられる。なお、採取部11が備えるドアの開閉状況に関するデータは、例えば、複数の採取部11が備えるドアそれぞれについて、所定の時間毎(一例として1秒毎)のドアの開閉状態が記録されたデータであってもよい。
【0057】
(入出力部30)
入出力部30は、キーボード、マウス、ディスプレイ、プリンタ、タッチパネル等の入出力装置の少なくとも何れかを備えて構成される。或いは、入出力部30には、キーボード、マウス、ディスプレイ、プリンタ、タッチパネル等の入出力機器が接続される構成としてもよい。当該構成の場合、入出力部30は、接続された入力機器から採取装置1に対する各種の情報の入力を受け付ける。また、入出力部30は、制御部10の制御の下、接続された出力機器に各種の情報を出力する。入出力部30としては、例えばUSB(Universal Serial Bus)などのインタフェースが挙げられる。
【0058】
(採取方法S1の流れ)
採取装置1が実行する採取方法S1の流れについて、
図2を参照して説明する。
図2は、採取方法S1の流れの一例を示すフロー図である。
【0059】
例えば、以下の各ステップにおいて説明するように、検出部13が、複数の採取部11のうち2以上の採取部11における哺乳動物の存在を検出した場合に、切替部12は、呼気ガスの累積採取時間がより短い哺乳動物が存在する採取部11を、呼気ガスを採取する採取部11として選択してもよい。
【0060】
(ステップS11)
ステップS11において、検出部13は、例えば、採取部11における哺乳動物個体の存在を検出する。検出部13は、例えば、所定の時間毎に、採取部11における哺乳動物個体の存在を検出してもよい。ここで、当該所定の時間は、例えば、1秒間であってもよい。
【0061】
なお、例えば、検出部13が、1の採取部11のみにおける哺乳動物の存在を検出した場合に、切替部12は、哺乳動物が存在する採取部11を、呼気ガスを採取する採取部11として選択してもよい。
【0062】
(ステップS12)
ステップS12において、採取部11は、例えば、呼気ガスの連続採取時間が閾値Xを下回るか、を判定する。ここで、閾値Xは、採取部11における呼気ガスの連続採取時間の上限値である。
【0063】
例えば、切替部12が備える電磁弁を保護するために、当該電磁弁への連続通電時間、即ち、採取部11における呼気ガスの連続採取時間に、上限値を設定してもよい。連続採取時間が閾値Xを下回る場合(ステップS12:YES)、処理はステップS13へ進む。連続採取時間が閾値Xを下回らない場合(ステップS12:NO)、処理はステップS28へ進む。
【0064】
(ステップS13)
ステップS13において、切替部12は、例えば、哺乳動物個体の存在が検出された採取部11で呼気ガスを採取中かを判定する。当該採取部11で呼気ガスを採取中である場合(ステップS13:YES)、処理はステップS14へ進む。当該採取部11で呼気ガスを採取中ではない場合(ステップS13:NO)、処理はステップS24へ進む。
【0065】
(ステップS14)
ステップS14において、検出部13は、例えば、呼気ガスを採取中の採取部11において、引続き哺乳動物個体の存在を検出するか、を判定する。引続き哺乳動物個体の存在を検出する場合(ステップS14:YES)、処理はステップS15へ進む。引続き哺乳動物個体の存在を検出しない場合(ステップS14:NO)、処理はステップS21へ進む。
【0066】
(ステップS15)
ステップS15において、切替部12は、例えば、複数の採取部11のうち、呼気ガスの累積採取時間が最大または最小となる採取部11を、それぞれ確認する。
【0067】
ここで、例えば、哺乳動物が採取部11に連続して存在する1回あたりの時間が一定であると仮定するとき、当該採取部11における呼気ガスの累積採取時間が大きくなるほど、当該哺乳動物が採取部11に存在した累積回数も大きくなる。このとき、切替部12は、例えば、呼気ガスの累積採取時間がより短い哺乳動物が存在する採取部11を、当該哺乳動物が採取部11に存在した回数に基づき決定してもよい。
【0068】
(ステップS16)
ステップS16において、切替部12は、例えば、「呼気ガスを採取中の採取部11は累積採取時間が最大である、かつ、検出部13が、新たに呼気ガスの累積採取時間が最小の採取部11で哺乳動物個体の存在を検出する」との条件が成立するか、を判定する。条件が成立する場合(ステップS16:YES)、処理はステップS17へ進む。条件が成立しない場合(ステップS16:NO)、処理はステップS18へ進む。
【0069】
(ステップS17)
ステップS17において、切替部12は、例えば、呼気ガスの累積採取時間が最小の採取部11を選択する。
【0070】
(ステップS18~S20)
例えば、以下のステップS18~S20において説明するように、哺乳動物の呼気ガスの連続採取時間が、所定の閾値に達した時点で、検出部13が、複数の採取部11のうち2以上の採取部11における哺乳動物の存在を検出した場合に、切替部12は、哺乳動物の存在が検出された2以上の採取部11のうち、呼気ガスの累積採取時間が最小である採取部11を、呼気ガスを採取する採取部11として選択してもよい。
【0071】
(ステップS18)
ステップS18において、切替部12は、例えば、呼気ガスの連続採取時間は閾値Yを上回るか、を判定する。ここで、閾値Yは、1の採取部11における呼気ガスの連続採取時間の最小値である。
【0072】
ステップS18において、閾値Yを上回る場合(ステップS18:YES)、処理はステップS19へ進む。閾値Yを上回らない場合(ステップS18:NO)、処理はステップS11へ進む。
【0073】
(ステップS19)
ステップS19において、検出部13は、例えば、呼気ガスを採取中の採取部11ではない、他の採取部11で哺乳動物個体の存在を検出したか、を判定する。他の採取部11で哺乳動物個体の存在を検出した場合(ステップS19:YES)、処理はステップS20へ進む。他の採取部11で哺乳動物個体の存在を検出しない場合(ステップS19:NO)、処理はステップS11へ進む。
【0074】
(ステップS20)
ステップS20において、切替部12は、例えば、哺乳動物個体の存在が検出される採取部11のうち、呼気ガスの累積採取時間がより短い採取部11を選択する。
【0075】
なお、哺乳動物の存在が検出された2以上の採取部11のうち、呼気ガスの累積採取時間が最小である採取部11が複数存在する場合に、切替部12は、例えば、所定の優先順に基づいて、呼気ガスを採取する採取部11を選択してもよい。このとき、例えば、複数の採取部11のそれぞれに、1、2、3、・・・などの優先順を予め付与し、呼気ガスの累積採取時間が最小である採取部11が複数存在する場合に、切替部12は、より小さい優先順が付与された採取部11を、呼気ガスを採取する採取部11として選択してもよい。
【0076】
(ステップS21)
ステップS21において、切替部12は、例えば、哺乳動物個体が採取部11に連続して存在しない時間は閾値Zを上回るか、を判定する。ここで、閾値Zは、採取部11における、哺乳動物個体の存在が検出されなくなってからの、呼気ガスの連続採取時間の最小値である。
【0077】
例えば、検出部13が備えるセンサの感度により、採取部11に哺乳動物個体が存在していても、センサが当該個体の存在を一時的に検出できなくなることがある。このようなことを防ぐために、例えば、センサによって個体の存在を検出できないと判定されても、その後呼気ガスの連続採取時間が閾値Zを上回るまで、当該採取部11は呼気ガスを採取してもよい。
【0078】
ステップS21において、閾値Zを上回る場合(ステップS21:YES)、処理はステップS22へ進む。閾値Zを上回らない場合(ステップS21:NO)、処理はステップS11へ進む。
【0079】
(ステップS22)
ステップS22において、検出部13は、例えば、複数の採取部11のすべてにおいて哺乳動物個体の存在を検出しないか、を判定する。複数の採取部11のすべてにおいて哺乳動物個体の存在を検出しない場合(ステップS22:YES)、処理はステップS11へ進む。複数の採取部11の何れかにおいて哺乳動物個体の存在を検出する場合(ステップS22:NO)、処理はステップS23へ進む。
【0080】
ここで、例えば、採取部11において哺乳動物個体の存在が検出されない状態では、当該採取部11はバックグラウンドガスを採取してもよい。
【0081】
(ステップS23)
ステップS23において、切替部12は、例えば、哺乳動物個体の存在が検出される採取部11のうち、呼気ガスの累積採取時間がより短い採取部11を選択する。
【0082】
(ステップS24)
ステップS24において、検出部13は、例えば、複数の採取部11のすべてにおいて哺乳動物個体の存在を検出しないか、を判定する。複数の採取部11のすべてにおいて哺乳動物個体の存在を検出しない場合(ステップS24:YES)、処理はステップS25へ進む。複数の採取部11の何れかにおいて哺乳動物個体の存在を検出する場合(ステップS24:NO)、処理はステップS27へ進む。
【0083】
(ステップS25)
ステップS25において、採取部11は、例えば、バックグラウンドガスの連続採取時間が閾値Yを上回るか、を判定する。閾値Yを上回る場合(ステップS25:YES)、処理はステップS26へ進む。閾値Yを上回らない場合(ステップS25:NO)、処理はステップS11へ進む。
【0084】
(ステップS26)
ステップS26において、切替部12は、例えば、バックグラウンドガスの累積採取時間がより短い採取部11を選択する。
【0085】
(ステップS27)
ステップS27において、切替部12は、例えば、哺乳動物個体の存在が検出される採取部11のうち、呼気ガスの累積採取時間がより短い採取部11を選択する。
【0086】
(ステップS28)
ステップS28において、採取部11は、例えば、呼気ガスの採取を再スタートする。ここで、採取部11は、例えば、採取部11に関するプログラムをリセットし、切替部12が備える電磁弁への通電を一時中断することにより、呼気ガスの採取を再スタートさせてもよい。
【0087】
(呼気ガスの分析方法S2の流れ)
採取装置1が実行する呼気ガスの分析方法S2の流れについて、
図3を参照して説明する。
図3は、呼気ガスの分析方法S2の流れの一例を示すフロー図である。
【0088】
(ステップS31)
ステップS31において、紐付け部15は、例えば、切替部12における選択結果に基づいて、複数の採取部11と分析部14における分析結果とを紐付ける。
【0089】
(ステップS32)
ステップS32において、算出部16は、例えば、紐付け部15における紐付け結果に基づいて、採取された呼気ガスにおける所定の分析値を採取部11毎に算出する。
【0090】
(ステップS33)
ステップS33において、算出部16は、例えば、検出部13における検出結果に更に基づいて、所定の分析値を、採取部11毎に哺乳動物が存在した時間に応じて算出する。
【0091】
(呼気ガス採取時における採取装置1の構成例)
図4は、哺乳動物個体からの呼気ガス採取時における採取装置1の構成例を示す図である。
図4に示す例において、群飼い施設は、飼槽A~Dを備える。ここで、飼槽A~Dは、採取部11A~11Dにそれぞれ該当し、哺乳動物個体A~Dとそれぞれ1対1に対応する。当該哺乳動物個体A~Dは、採取装置1における呼気ガスの採取対象である。上述の飼槽A~Dは、それぞれドアを備えており、飼槽A~Dが備えるドアには、ドアフィーダDFA~DFDがそれぞれ取り付けられている。また、飼槽A~Dには、ドア開閉検知センサである検出部13A~13Dがそれぞれ取り付けられている。
【0092】
図4に示す例において、個体Bは、対応する飼槽Bのドアを開けている。このとき、検出部13Bは、飼槽Bにおけるドアの開放を検出する。ここで、切替部12は、呼気ガス切替アルゴリズムを含む制御プログラムPを実行し、個体Bの呼気ガスGを採取する飼槽Bを選択する。このとき、分析部14は、切替部12における選択の結果採取された個体Bの呼気ガスGを分析する。
【0093】
(採取部の選択に関する採取装置1の構成例)
図5は、複数の採取部11の選択に関する採取装置1の構成例を示す図である。
図5に例示する採取装置1において、複数の採取部11である飼槽1~5と、分析部14である1台のガス分析計とは、呼気ガスの流路であるチューブを介して接続されている。飼槽1~5には、検出部13であるセンサ1~5がそれぞれ取り付けられている。センサ1~5は、切替部12を構成するマイコンと接続されている。飼槽1~5に接続されているチューブのそれぞれにおいてガスの流路を開閉するために、切替部12を構成する電磁弁SV0~SV4がそれぞれ設置されている。切替部12の内部において、電磁弁SV0~SV4は、対応するリレーR0~R4の作動による通電に伴い、チューブ上の設置箇所におけるガスの流路を開放する。上述のマイコンは、リレーR0~R4のうち何れを作動させるかを切り替えるスイッチを介して、リレーR0~R4と接続されている。また、上述のマイコンは、例えば、飼槽1~5から、呼気ガスを採取する採取部を選択してもよい。
【0094】
(採取装置1における結果の一例)
図6は、採取装置1における結果の一例を示す図である。
図6における例では、切替部12における選択結果(測定飼槽名)及び検出部13における検出結果(測定状態)を含む結果データRE、分析部14における分析結果データAR、並びに算出部16における算出結果データCRが示されている。
【0095】
結果データREは、例えば、
図6に示すように、所定の時刻毎(
図6における例では1秒毎)における測定飼槽名及び測定状態を示すデータであってもよい。換言すれば、例えば、結果データREは、
図6に示すように、切替部12が選択した採取部11における哺乳動物(
図6における例では牛)の存在又は非存在を所定の時刻毎に示すデータであってもよい。
【0096】
分析結果データARは、例えば、
図6に示すように、所定の時刻毎における分析結果を示すデータであってもよい。換言すれば、例えば、分析結果データARは、
図6に示すように、分析対象となるガス成分(
図6における例ではメタン及び二酸化炭素)を分析部14が分析した結果を所定の時刻毎に示すデータであってもよい。
【0097】
算出結果データCRは、例えば、
図6に示すように、紐付け部15における紐付け結果、及び検出部13における検出結果に基づいて算出したデータである。なお、上述した紐付け結果及び検出結果は、例えば、何れも所定の時刻毎に示されるデータであってもよい。
【0098】
図6における例では、検出部13が哺乳動物の存在を検出し始めた時刻(飼槽訪問時刻)、検出部13が当該哺乳動物の存在を検出しなくなった時刻(退出時刻)、切替部12における選択結果(測定飼槽名)、及び所定の分析値(平均メタン/二酸化炭素濃度比)を含む算出結果データCRが示されている。ここで、算出結果データCRに含まれる所定の分析値は、例えば、飼槽訪問時刻から退出時刻までの間の時間帯における平均メタン/二酸化炭素濃度比を採取部11毎に算出した結果であってもよい。
【0099】
(採取装置1の効果)
以上のように、採取装置1は、複数の哺乳動物個体の呼気ガスを、個体毎に区別して採取する採取装置であって、哺乳動物の呼気ガスを採取する複数の採取部と、上記呼気ガスを採取する採取部を切り替える切替部と、上記採取部における哺乳動物の存在又は非存在を検出する検出部と、を備え、上記検出部は、上記採取部における哺乳動物の存在を、当該哺乳動物の個体情報と紐付けして検出し、上記切替部は、所定の期間内における、哺乳動物個体毎の呼気ガスの累積採取時間に基づいて、哺乳動物個体間で上記呼気ガスの累積採取時間の差が小さくなるように、上記呼気ガスを採取する採取部を選択する。これにより、複数の生物体のサンプルについて、サンプリングデータ量の生物体間におけるばらつきを抑制し、より好適なサンプリングを実現することができる。
【0100】
〔ソフトウェアによる実現例〕
採取装置1(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部10に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0101】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0102】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0103】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0104】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0105】
〔まとめ〕
本発明の態様A1に係る採取装置は、複数の哺乳動物個体の呼気ガスを、個体毎に区別して採取する採取装置であって、哺乳動物の呼気ガスを採取する複数の採取部と、上記呼気ガスを採取する採取部を切り替える切替部と、上記採取部における哺乳動物の存在又は非存在を検出する検出部と、を備え、上記検出部は、上記採取部における哺乳動物の存在を、当該哺乳動物の個体情報と紐付けして検出し、上記切替部は、所定の期間内における、哺乳動物個体毎の呼気ガスの累積採取時間に基づいて、哺乳動物個体間で上記呼気ガスの累積採取時間の差が小さくなるように、上記呼気ガスを採取する採取部を選択する。これにより、複数の生物体のサンプルについて、サンプリングデータ量の生物体間におけるばらつきを抑制し、より好適なサンプリングを実現することができる。
【0106】
本発明の態様A2に係る採取装置は、上記態様A1において、上記複数の採取部と、上記複数の哺乳動物個体とが、1対1に対応する。これにより、哺乳動物個体毎に呼気ガスを採取することができる。
【0107】
本発明の態様A3に係る採取装置は、上記態様A1又はA2において、上記検出部が、上記複数の採取部のうち2以上の採取部における哺乳動物の存在を検出した場合に、上記切替部は、上記呼気ガスの累積採取時間がより短い哺乳動物が存在する採取部を、上記呼気ガスを採取する採取部として選択する。これにより、呼気ガスの累積採取時間における個体間の差をより小さくすることができる。
【0108】
本発明の態様A4に係る採取装置は、上記態様A3において、上記切替部は、上記呼気ガスの累積採取時間がより短い哺乳動物が存在する採取部を、当該哺乳動物が採取部に存在した回数に基づき決定する。これにより、呼気ガスの累積採取時間を、より簡易に決定することができる。
【0109】
本発明の態様A5に係る採取装置は、上記態様A1~A4の何れかにおいて、上記複数の採取部で採取された呼気ガスを分析する分析部を更に備える。これにより、採取された呼気ガスを分析することができる。
【0110】
本発明の態様A6に係る採取装置は、上記態様A1~A5の何れかにおいて、上記哺乳動物の呼気ガスの連続採取時間が、所定の閾値に達した時点で、上記検出部が、上記複数の採取部のうち2以上の採取部における哺乳動物の存在を検出した場合に、上記切替部は、上記哺乳動物の存在が検出された上記2以上の採取部のうち、上記呼気ガスの累積採取時間が最小である採取部を、上記呼気ガスを採取する採取部として選択する。これにより、呼気ガスの累積採取時間における個体間の差をより小さくすることができる。
【0111】
本発明の態様A7に係る採取装置は、上記態様A1~A6の何れかにおいて、上記哺乳動物の存在が検出された上記2以上の採取部のうち、上記呼気ガスの累積採取時間が最小である採取部が複数存在する場合に、上記切替部は、所定の優先順に基づいて、上記呼気ガスを採取する採取部を選択する。これにより、呼気ガスを採取する採取部を、所定の優先順に基づき決定することができる。
【0112】
本発明の態様A8に係る採取装置は、上記態様A1~A5の何れかにおいて、上記検出部が、1の上記採取部のみにおける哺乳動物の存在を検出した場合に、上記切替部は、上記1の採取部を、上記呼気ガスを採取する採取部として選択する。これにより、呼気ガスを採取する採取部の選択を要しない場合において、哺乳動物の呼気ガスを採取することができる。
【0113】
本発明の態様A9に係る採取装置は、上記態様A5において、上記検出部が、上記複数の採取部の何れにも哺乳動物の存在を検出しない場合に、上記分析部は、上記複数の採取部で採取されたバックグラウンドガスを分析する。これにより、バックグラウンド分をキャンセルするように呼気ガスの分析結果を補正することができる。
【0114】
本発明の態様A10に係る採取装置は、上記態様A5又はA9において、上記切替部における選択結果に基づいて、上記複数の採取部と上記分析部における分析結果とを紐付ける紐付け部を更に備える。これにより、呼気ガスを採取した採取部と、当該呼気ガスを分析した分析結果と、を紐付けることができる。
【0115】
本発明の態様A11に係る採取装置は、上記態様A10において、上記紐付け部における紐付け結果に基づいて、採取された上記呼気ガスにおける所定の分析値を採取部毎に算出する算出部を更に備える。これにより、呼気ガスにおける所定の分析値を採取部毎に算出することができる。
【0116】
本発明の態様A12に係る採取装置は、上記態様A11において、上記算出部は、上記検出部における検出結果に更に基づいて、上記所定の分析値を、上記採取部毎に上記哺乳動物が存在した時間に応じて算出する。これにより、採取部毎に上記哺乳動物が存在した時間における所定の分析値を算出することができる。
【0117】
本発明の態様B1に係る採取方法は、哺乳動物の呼気ガスを採取する複数の採取部を用いて、複数の哺乳動物個体の呼気ガスを、個体毎に区別して採取する採取方法であって、上記呼気ガスを採取する採取部を切り替える切替処理と、上記採取部における哺乳動物の存在又は非存在を検出する検出処理と、を含み、上記検出処理では、上記採取部における哺乳動物の存在を、当該哺乳動物の個体情報と紐付けして検出し、上記切替処理では、所定の期間内における、哺乳動物個体毎の呼気ガスの累積採取時間に基づいて、哺乳動物個体間で上記呼気ガスの累積採取時間の差が小さくなるように、上記呼気ガスを採取する採取部を選択する。これにより、態様A1と同様の効果を奏する。
【0118】
本発明の態様B2に係る採取方法は、上記態様B1において、上記複数の採取部と、上記複数の哺乳動物個体とが、1対1に対応する。これにより、態様A2と同様の効果を奏する。
【0119】
本発明の態様B3に係る採取方法は、上記態様B1又はB2において、上記複数の採取部のうち2以上の採取部における哺乳動物の存在が検出された場合に、上記切替処理では、上記呼気ガスの累積採取時間がより短い哺乳動物が存在する採取部を、上記呼気ガスを採取する採取部として選択する。これにより、態様A3と同様の効果を奏する。
【0120】
本発明の態様B4に係る採取方法は、上記態様B3において、上記切替処理では、上記呼気ガスの累積採取時間がより短い哺乳動物が存在する採取部を、当該哺乳動物が採取部に存在した回数に基づき決定する。これにより、態様A4と同様の効果を奏する。
【0121】
本発明の態様B5に係る呼気ガスの分析方法は、上記態様B1~B4の何れかに係る採取方法によって上記複数の採取部で採取された呼気ガスを分析する分析処理を含む。これにより、態様A5と同様の効果を奏する。
【0122】
本発明の態様B6に係る採取方法は、上記態様B1~B5の何れかにおいて、上記哺乳動物の呼気ガスの連続採取時間が、所定の閾値に達した時点で、上記複数の採取部のうち2以上の採取部における哺乳動物の存在が検出された場合に、上記切替処理では、上記哺乳動物の存在が検出された上記2以上の採取部のうち、上記呼気ガスの累積採取時間が最小である採取部を、上記呼気ガスを採取する採取部として選択する。これにより、態様A6と同様の効果を奏する。
【0123】
本発明の態様B7に係る採取方法は、上記態様B1~B6の何れかにおいて、上記哺乳動物の存在が検出された上記2以上の採取部のうち、上記呼気ガスの累積採取時間が最小である採取部が複数存在する場合に、上記切替処理では、所定の優先順に基づいて、上記呼気ガスを採取する採取部を選択する。これにより、態様A7と同様の効果を奏する。
【0124】
本発明の態様B8に係る採取方法は、上記態様B1~B5の何れかにおいて、1の上記採取部のみにおける哺乳動物の存在が検出された場合に、上記切替処理では、上記1の採取部を、上記呼気ガスを採取する採取部として選択する。これにより、態様A8と同様の効果を奏する。
【0125】
本発明の態様B9に係る呼気ガスの分析方法は、上記態様B5において、上記複数の採取部の何れにも哺乳動物の存在が検出されない場合に、上記分析処理では、上記複数の採取部で採取されたバックグラウンドガスを分析する。これにより、態様A9と同様の効果を奏する。
【0126】
本発明の態様B10に係る呼気ガスの分析方法は、上記態様B5又はB9において、上記切替処理における選択結果に基づいて、上記複数の採取部と上記分析処理における分析結果とを紐付ける紐付け処理を更に含む。これにより、態様A10と同様の効果を奏する。
【0127】
本発明の態様B11に係る呼気ガスの分析方法は、上記態様B10において、上記紐付け処理における紐付け結果に基づいて、採取された上記呼気ガスにおける所定の分析値を採取部毎に算出する算出処理を更に含む。これにより、態様A11と同様の効果を奏する。
【0128】
本発明の態様B12に係る呼気ガスの分析方法は、上記態様B11において、上記算出処理では、上記検出処理における検出結果に更に基づいて、上記所定の分析値を、上記採取部毎に上記哺乳動物が存在した時間に応じて算出する。これにより、態様A12と同様の効果を奏する。
【0129】
本発明の態様B13に係る採取方法は、哺乳動物の呼気ガスを採取する複数の採取部を用いて、複数の哺乳動物個体の呼気ガスを、個体毎に区別して採取する採取方法であって、所定の期間内における、哺乳動物個体毎の呼気ガスの累積採取時間に基づいて、哺乳動物個体間で上記呼気ガスの累積採取時間の差が小さくなるように、哺乳動物の上記呼気ガスを採取する採取部を選択する切替処理を含む。これにより、態様A1と同様の効果を奏する。
【0130】
本発明の態様B14に係る呼気ガスの分析方法は、上記態様B13に係る採取方法によって上記複数の採取部で採取された呼気ガスを分析する分析処理を含む。これにより、態様A5と同様の効果を奏する。
【0131】
本発明の態様B15に係る呼気ガスの分析方法は、上記態様B14において、上記切替処理における選択結果に基づいて、上記複数の採取部と上記分析処理における分析結果とを紐付ける紐付け処理を更に含む。これにより、態様A10と同様の効果を奏する。
【0132】
本発明の態様C1に係るプログラムは、哺乳動物の呼気ガスを採取する複数の採取部を用いて、複数の哺乳動物個体の呼気ガスを、個体毎に区別して採取する採取方法であって、上記呼気ガスを採取する採取部を切り替える切替処理と、上記採取部における哺乳動物の存在又は非存在を検出する検出処理と、を含み、上記検出処理では、上記採取部における哺乳動物の存在を、当該哺乳動物の個体情報と紐付けして検出し、上記切替処理では、所定の期間内における、哺乳動物個体毎の呼気ガスの累積採取時間に基づいて、哺乳動物個体間で上記呼気ガスの累積採取時間の差が小さくなるように、上記呼気ガスを採取する採取部を選択する、採取方法を、コンピュータに実行させる。これにより、態様A1と同様の効果を奏する。
【0133】
本発明の態様C2に係るプログラムは、上記態様C1において、上記複数の採取部と、上記複数の哺乳動物個体とが、1対1に対応する。これにより、態様A2と同様の効果を奏する。
【0134】
本発明の態様C3に係るプログラムは、上記態様C1又はC2において、上記複数の採取部のうち2以上の採取部における哺乳動物の存在が検出された場合に、上記呼気ガスの累積採取時間がより短い哺乳動物が存在する採取部を、上記呼気ガスを採取する採取部として選択する上記切替処理を、コンピュータに実行させる。これにより、態様A3と同様の効果を奏する。
【0135】
本発明の態様C4に係るプログラムは、上記態様C3において、上記呼気ガスの累積採取時間がより短い哺乳動物が存在する採取部を、当該哺乳動物が採取部に存在した回数に基づき決定する上記切替処理を、コンピュータに実行させる。これにより、態様A4と同様の効果を奏する。
【0136】
本発明の態様C5に係るプログラムは、上記態様C1~C4の何れかにおいて、上記哺乳動物の呼気ガスの連続採取時間が、所定の閾値に達した時点で、上記複数の採取部のうち2以上の採取部における哺乳動物の存在が検出された場合に、上記哺乳動物の存在が検出された上記2以上の採取部のうち、上記呼気ガスの累積採取時間が最小である採取部を、上記呼気ガスを採取する採取部として選択する上記切替処理を、コンピュータに実行させる。これにより、態様A6と同様の効果を奏する。
【0137】
本発明の態様C6に係るプログラムは、上記態様C1~C5の何れかにおいて、上記哺乳動物の存在が検出された上記2以上の採取部のうち、上記呼気ガスの累積採取時間が最小である採取部が複数存在する場合に、所定の優先順に基づいて、上記呼気ガスを採取する採取部を選択する上記切替処理を、コンピュータに実行させる。これにより、態様A7と同様の効果を奏する。
【0138】
本発明の態様C7に係るプログラムは、上記態様C1~C4の何れかにおいて、1の上記採取部のみにおける哺乳動物の存在が検出された場合に、上記1の採取部を、上記呼気ガスを採取する採取部として選択する上記切替処理を、コンピュータに実行させる。これにより、態様A8と同様の効果を奏する。
【0139】
本発明の態様C8に係るプログラムは、上記態様C1~C7の何れかにおいて、上記複数の採取部で採取された呼気ガスを分析する分析部を更に用いて、上記切替処理における選択結果に基づいて、上記複数の採取部と上記分析部における分析結果とを紐付ける紐付け処理を、更にコンピュータに実行させる。これにより、態様A5及びA10と同様の効果を奏する。
【0140】
本発明の態様C9に係るプログラムは、上記態様C8において、上記紐付け処理における紐付け結果に基づいて、採取された上記呼気ガスにおける所定の分析値を採取部毎に算出する算出処理を、更にコンピュータに実行させる。これにより、態様A11と同様の効果を奏する。
【0141】
本発明の態様C10に係るプログラムは、上記態様C9において、上記検出処理における検出結果に更に基づいて、上記所定の分析値を、上記採取部毎に上記哺乳動物が存在した時間に応じて算出する上記算出処理を、コンピュータに実行させる。これにより、態様A12と同様の効果を奏する。
【0142】
本発明の態様C11に係るプログラムは、哺乳動物の呼気ガスを採取する複数の採取部と、上記呼気ガスを採取する採取部を切り替える切替部と、を用いて、複数の哺乳動物個体の呼気ガスを、個体毎に区別して採取する採取装置の動作を制御するプログラムであって、所定の期間内における、哺乳動物個体毎の呼気ガスの累積採取時間に基づいて、哺乳動物個体間で上記呼気ガスの累積採取時間の差が小さくなるように、哺乳動物の上記呼気ガスを採取する採取部を選択する上記切替部の動作を、コンピュータに実行させる。これにより、態様A1と同様の効果を奏する。
【0143】
本発明の態様C12に係るプログラムは、上記態様C11において、上記複数の採取部で採取された呼気ガスを分析する分析部と、上記切替部における選択結果に基づいて、上記複数の採取部と上記分析部における分析結果とを紐付ける紐付け部と、を更に用いて、上記紐付け部の動作を、更にコンピュータに実行させる。これにより、態様A5及びA10と同様の効果を奏する。
【0144】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0145】
本発明の一実施例について、以下に説明する。
【0146】
(採取装置1の実施例)
以下、採取装置1の一実施例について、
図7を参照して説明する。
【0147】
採取装置1を評価するために、先行技術と、累積採取(測定)時間の個体間差を比較する実験を実施した。
【0148】
4頭のウシ(肉牛)A~Dの各個体の呼気ガスを、採取装置1及び先行技術のそれぞれを用いて測定した。ここで、ウシA~Dは、上述した
図4に例示する個体A~Dにそれぞれ相当する。連続測定時間は何れも24時間とした。また、測定開始後、概ね1時間及び概ね7時間のそれぞれの時点において、ウシA~Dの各個体に飼料を給与した。
【0149】
採取装置1の実施例においては、採取方法S1のアルゴリズムを用いて呼気ガスを採取する採取部を切り替えることにより、ウシA~Dの各個体の呼気ガスを測定した。
【0150】
先行技術による切替方法においては、所定時間毎に、ウシA→B→C→D→A→・・・の順で呼気ガスを採取する採取部を切り替えて、ウシA~Dの各個体の呼気ガスを測定した。但し、上記の切り替えにおいて、新たに切り替えようとする採取部にウシが存在しないときは、当該採取部における呼気ガスの採取をスキップした。
【0151】
図7は、採取装置1の実施例である本発明による切替方法について、先行技術による切替方法(参考例)と比較した図である。
図7に示す例では、ウシA~Dについて、呼気ガスの測定(採取)開始後の累積測定時間を、個体毎に経時的に示している。なお、
図7に示す例では、実施形態で上述した例と同様に、呼気ガスの分析結果におけるバックグラウンド分をキャンセルするよう補正した。
【0152】
図7に示す先行技術による切替方法(参考例)において、測定開始後24時間経過時点の、個体毎の呼気ガスの累積測定時間は、それぞれ以下の通りであった。
ウシA:105分
ウシB:98分
ウシC:75分
ウシD:50分
また、以上のウシA~Dにおける結果について、
平均:82分
変動係数(CV:Coefficient of Variance):30%
であった。
【0153】
図7に示す採取装置1の実施例(本発明の切替)において、測定開始後24時間経過時点の、個体毎の呼気ガスの累積測定時間は、それぞれ以下の通りであった。
ウシA:111分
ウシB:100分
ウシC:82分
ウシD:66分
また、以上のウシA~Dにおける結果について、
平均:90分
変動係数(CV:Coefficient of Variance):22%
であった。
【0154】
以上に示すように、先行技術による切替方法において呼気ガスの累積測定時間が短かったウシについて、採取装置1の実施例では累積測定時間が増えたことが確認された。また、採取装置1の実施例では、呼気ガスの累積測定時間における個体間の差の度合いを示す、変動係数の値がより小さくなった。