(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025156931
(43)【公開日】2025-10-15
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス組立体
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20251007BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20251007BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20251007BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H02G3/30
B60R16/02 620J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059706
(22)【出願日】2024-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】大囿 政裕
(72)【発明者】
【氏名】三浦 俊亮
【テーマコード(参考)】
5G309
5G363
【Fターム(参考)】
5G309AA02
5G363BA02
5G363DA13
5G363DA16
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】丸電線群を保護可能なワイヤハーネスの構成を簡素化する。
【解決手段】ワイヤハーネス組立体1は、フラットケーブル3と、丸電線群6と、を備える。丸電線群6は、複数の丸電線7からなる。フラットケーブル3の厚み方向一側に丸電線群6が配置される。フラットケーブル3の長手方向は、丸電線7の長手方向と略平行である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラットケーブルと、
複数の丸電線からなる丸電線群と、
を備え、
前記フラットケーブルの厚み方向一側に前記丸電線群が配置され、
前記フラットケーブルの長手方向は、前記丸電線の長手方向と略平行であることを特徴とするワイヤハーネス組立体。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネス組立体であって、
前記フラットケーブルは、前記丸電線群を挟んで向かい合うように対をなして配置されることを特徴とするワイヤハーネス組立体。
【請求項3】
請求項1に記載のワイヤハーネス組立体であって、
前記フラットケーブルを前記丸電線群に固定するフラットケーブル固定部を有することを特徴とするワイヤハーネス組立体。
【請求項4】
請求項3に記載のワイヤハーネス組立体であって、
前記フラットケーブルは、前記丸電線群を挟んで向かい合うように対をなして配置され、
前記フラットケーブル固定部が、対で配置される前記フラットケーブルの外周に配置されていることを特徴とするワイヤハーネス組立体。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のワイヤハーネス組立体であって、
前記フラットケーブル固定部は、
前記フラットケーブルの外側に巻かれるバンド部と、
穴に引っ掛けて固定可能なアンカー部と、
を備えることを特徴とするワイヤハーネス組立体。
【請求項6】
請求項1に記載のワイヤハーネス組立体であって、
前記フラットケーブルは、前記丸電線群を挟んで向かい合うように対をなして配置され、
対をなす前記フラットケーブルの間から前記丸電線群が前記フラットケーブルの長手方向と異なる方向に延びる分岐部を備えることを特徴とするワイヤハーネス組立体。
【請求項7】
請求項6に記載のワイヤハーネス組立体であって、
前記分岐部は、幹線の長手方向中途部から枝線が分岐するように構成され、
前記幹線は、前記フラットケーブルを含み、
前記枝線は、前記丸電線から構成されることを特徴とするワイヤハーネス組立体。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のワイヤハーネス組立体であって、
車両に用いられ、
前記フラットケーブルが備える導電体は、互いに異なる複数の車種の間、同一の車種において互いに仕様が異なる複数の型番の間、又は、同一の車種において互いに異なる複数のグレードの間で、共通の電気回路を構成することを特徴とするワイヤハーネス組立体。
【請求項9】
請求項7に記載のワイヤハーネス組立体であって、
前記フラットケーブルを前記丸電線群に固定するフラットケーブル固定部が、前記枝線が前記幹線に対して向きを異ならせて延びる始端部を挟んで両側に配置されていることを特徴とするワイヤハーネス組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネス組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネス組立体は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示される自動車用ワイヤハーネスの配索構造は、被覆丸電線群を備える。このワイヤハーネスは、偏平な導電材を絶縁材で被覆した、帯状で可撓性を有するフラットケーブルを備える。ワイヤハーネスが3次元状に配索される領域では、被覆丸電線群の外周面にフラットケーブルが螺旋状に巻き付けられる。これにより、フラットケーブルを被覆丸電線群の結束用外装材として用いるとともに、フラットケーブル自体の3次元配索が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1は、被覆丸電線群に対してフラットケーブルを螺旋状に巻き付ける構成となっている。そのため、経路の長さに対して必要なフラットケーブルの長さが過剰に増大し、コストが増加する原因となる。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、丸電線群を保護可能なワイヤハーネスの構成を簡素化することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成のワイヤハーネス組立体が提供される。即ち、ワイヤハーネス組立体は、フラットケーブルと、丸電線群と、を備える。前記丸電線群は、複数の丸電線からなる。前記フラットケーブルの厚み方向一側に前記丸電線群が配置される。前記フラットケーブルの長手方向は、前記丸電線の長手方向と略平行である。
【0009】
これにより、フラットケーブルが外装材としても機能するワイヤハーネス組立体を、従来よりも短いフラットケーブルの長さで得ることができる。従って、コストを低減できる。また、フラットケーブルの長手方向と丸電線の長手方向が略平行となっているので、フラットケーブルを丸電線群に沿わせて配置する工程が簡素化される。従って、ワイヤハーネス組立体の組立作業が簡単になるとともに、ロボットを用いた自動化にも適合し易い。
【0010】
前記のワイヤハーネス組立体においては、前記フラットケーブルは、前記丸電線群を挟んで向かい合うように対をなして配置されることが好ましい。
【0011】
これにより、丸電線群の周囲を広範囲にわたって保護することができる。また、丸電線群を構成する丸電線の数が増大した場合でも、1対のフラットケーブルの間の距離が増大することで吸収することができる。従って、丸電線の数の自由度を高めることができ、仕様変更等による電線の増加に容易に対応することができる。
【0012】
前記のワイヤハーネス組立体においては、前記フラットケーブルを前記丸電線群に固定するフラットケーブル固定部を有することが好ましい。
【0013】
これにより、フラットケーブルの丸電線群に対する位置がズレないように固定することができる。
【0014】
前記のワイヤハーネス組立体においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記フラットケーブルは、前記丸電線群を挟んで向かい合うように対をなして配置される。前記フラットケーブル固定部が、対で配置される前記フラットケーブルの外周に配置されている。
【0015】
これにより、対をなして配置される複数のフラットケーブルを、丸電線群に一度に固定することができる。この結果、構成の簡素化を実現できる。
【0016】
前記のワイヤハーネス組立体においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記フラットケーブル固定部は、バンド部と、アンカー部と、を備える。前記バンド部は、前記フラットケーブルの外側に巻かれる。前記アンカー部は、穴に引っ掛けて固定可能である。
【0017】
これにより、簡素な構造で、ワイヤハーネス組立体を適宜の部材に固定することができる。
【0018】
前記のワイヤハーネス組立体においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記フラットケーブルは、前記丸電線群を挟んで向かい合うように対をなして配置される。前記ワイヤハーネス組立体は、対をなす前記フラットケーブルの間から前記丸電線群が前記フラットケーブルの長手方向と異なる方向に延びる分岐部を備える。
【0019】
これにより、簡単な構成で分岐状のワイヤハーネスを実現することができる。
【0020】
前記のワイヤハーネス組立体においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記分岐部は、幹線の長手方向中途部から枝線が分岐するように構成される。前記幹線は、前記フラットケーブルを含む。前記枝線は、前記丸電線から構成される。
【0021】
枝線にフラットケーブルが含まれないように構成することにより、予め複数の電線がまとめて備わっている構成のフラットケーブルを枝線に用いるよりも、回路設計の自由度を高めることができる。従って、バリエーションが必要な回路設計に柔軟に対応することができる。
【0022】
前記のワイヤハーネス組立体においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ワイヤハーネス組立体は車両に用いられる。前記フラットケーブルが備える導電体は、互いに異なる複数の車種の間、同一の車種において互いに仕様が異なる複数の型番の間、又は、同一の車種において互いに異なる複数のグレードの間で、共通の電気回路を構成する。
【0023】
これにより、設計工数を減らすことができるとともに、コンパクトなフラットケーブルの利点を複数のバリエーションに活かすことができる。
【0024】
前記のワイヤハーネス組立体においては、前記フラットケーブルを前記丸電線群に固定するフラットケーブル固定部が、前記枝線が前記幹線に対して向きを異ならせて延びる始端部を挟んで両側に配置されていることが好ましい。
【0025】
これにより、分岐部の形状を良好に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス組立体の全体的な構成を示す斜視図。
【
図3】第2実施形態のワイヤハーネス組立体を示す断面図。
【
図4】第3実施形態のワイヤハーネス組立体を示す断面図。
【
図5】第4実施形態のワイヤハーネス組立体を示す斜視図。
【
図6】第5実施形態のワイヤハーネス組立体を示す斜視図。
【
図7】第6実施形態のワイヤハーネス組立体において、固定部材によりフラットケーブルを丸電線群に固定する作業を説明する斜視図。
【
図8】第7実施形態のワイヤハーネス組立体を示す断面図。
【
図9】第8実施形態のワイヤハーネス組立体を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、ワイヤハーネス組立体1の全体的な構成を示す全体図である。
図2は、
図1のA-A断面図である。
図1においては、フラットケーブル3及び丸電線7の構成を詳細に示す便宜のため、ワイヤハーネスを切断して長手方向途中部を取り出した状態が示されている。
【0028】
図1及び
図2に示す第1実施形態のワイヤハーネス組立体1は、例えば乗用車に設けられ、車載機器等に電気的に接続される。ワイヤハーネス組立体1は、1対のフラットケーブル3,3と、丸電線群6と、を備える。ワイヤハーネス組立体1は細長く形成され、その長手方向両端部にはコネクタ部10が配置されている。
図1において、コネクタ部10は鎖線で簡略的に示されている。ワイヤハーネス組立体1は、コネクタ部10を介して、装置又は他のワイヤハーネスに電気的に接続される。
【0029】
1対のフラットケーブル3,3のそれぞれは、細長いシート状に形成されている。それぞれのフラットケーブル3を長手方向に垂直な平面で切った断面は、実質的に扁平な矩形状である。フラットケーブル3は、幅方向に並べて複数配置された断面矩形状の導電体4を、絶縁材5で被覆した公知の構成である。それぞれのフラットケーブル3は可撓性を有している。2つのフラットケーブル3は、互いに厚み方向の間隔をあけて配置される。
【0030】
2つのフラットケーブル3,3は、一側の面同士が厚み方向で向かい合うように配置される。2つのフラットケーブル3,3の間に丸電線群6が配置されている。
【0031】
丸電線群6は、複数の丸電線7により構成されている。丸電線7は、断面形状が実質的に円形状である導電体8を、絶縁材9で被覆した公知の構成である。それぞれの丸電線7の長手方向は、フラットケーブル3の長手方向(言い換えれば、導電体4の長手方向)と略平行である。ただし、フラットケーブル3と、丸電線7と、の両方又は何れかに、多少のよじれ、ねじれ等がある場合も略平行に含まれる。
【0032】
丸電線群6は、フラットケーブル3の導電体4が並ぶ方向に沿って丸電線7が並ぶ列を少なくとも1つ有している。丸電線群6の全体的な断面形状は、フラットケーブル3の幅方向に細長い扁平状である。
【0033】
本実施形態のワイヤハーネス組立体1は、上記のように全体的な断面形状が扁平であるので、上下方向に狭い空間、例えば車両のフロアロッカー部に配索するのに適している。また、ワイヤハーネス組立体1が扁平状に形成されていることで、例えば、フラットケーブル3の幅方向に沿う向きの折れ線に従って曲げることが容易になる。折れ線はフラットケーブル3の幅方向に対して斜めに設定することもでき、これによりワイヤハーネスを様々な方向に曲げることができる。
図1及び
図2には丸電線7が3列で並べられている構成が例示されているが、丸電線7の列の数は任意である。
【0034】
丸電線群6及び1対のフラットケーブル3,3の外側に、フラットケーブル固定部2が配置されている。フラットケーブル固定部2は、ワイヤハーネス組立体1の長手方向途中部に、複数配置される。フラットケーブル固定部2は、例えば公知の粘着テープを、1対のフラットケーブル3,3の外側の面に巻き付けることで構成される。粘着テープの締付けにより、フラットケーブル3,3が丸電線群6に固定される。これにより、丸電線群6及びフラットケーブル3,3がばらけることを防止できる。
【0035】
本実施形態では、従来技術と同様に、丸電線群6の外装材の機能をフラットケーブル3,3が担う。フラットケーブル3が有する絶縁材5は適宜の耐摩耗性を有しているため、フラットケーブル3の導電体4を保護すると同時に、内側の丸電線群6を良好に保護することができる。特別な構成の外装材が不要となるため、コストの低減が容易であり、外装材の在庫管理も不要となる。
【0036】
フラットケーブル3は、例えば合成樹脂製の特別な外装材と比較して、一般的に形状が簡素であり、寸法精度も高い。従って、フラットケーブル3は、ロボットの先端部に配置された吸盤等で安定的に保持することができる。従って、ロボットを用いた自動ピッキング又は丸電線群6への取付け作業に対する適合性が高い。
【0037】
本実施形態では、従来技術と異なり、丸電線群6をフラットケーブル3の長手方向に略平行に配置している。従って、本実施形態では、前述の従来技術の構成よりも比較的に短いフラットケーブル3を用いるだけで良い。そのため、コストを削減することができる。フラットケーブル3の導電体4の向きと丸電線群6の導電体8の向きが略平行であるため、ワイヤハーネスの端末部分での導電体群を全体としてコンパクトな空間に収めることができる。従って、例えば、フラットケーブル3の導電体4と、丸電線群6の導電体8とを、1つのコネクタ部10に接続するレイアウトも容易である。加えて、本実施形態のように丸電線群6の長手方向にフラットケーブル3を沿わせる配置は、従来技術のようにフラットケーブルを螺旋状に巻き付ける構成と比較して、組立作業の簡素化が容易であり、また、ロボット等による自動化を適用し易い。
【0038】
本実施形態のワイヤハーネス組立体1は、丸電線群6を構成する丸電線7の数が増えたとしても、
図3に示す第2実施形態で示すように、2つのフラットケーブル3,3の間の距離を大きくすることで柔軟に収容することができる。従って、例えば車種グレードの変更に伴う電線の増減に容易に対応することができる。
【0039】
以上に説明したように、第1実施形態及び第2実施形態のワイヤハーネス組立体1は、フラットケーブル3,3と、丸電線群6と、を備える。丸電線群6は、複数の丸電線7からなる。フラットケーブル3の厚み方向一側に丸電線群6が配置されている。フラットケーブル3,3の長手方向は、丸電線7の長手方向と略平行である。
【0040】
これにより、フラットケーブル3が外装材としても機能するワイヤハーネス組立体1を、従来よりも短いフラットケーブル3の長さで得ることができる。従って、コストを低減できる。また、フラットケーブル3の長手方向と丸電線7の長手方向が略平行となっているので、フラットケーブル3を丸電線群6に沿わせて配置する工程が簡素化される。従って、ワイヤハーネス組立体1の組立作業が簡単になるとともに、ロボットを用いた自動化にも適合し易い。
【0041】
第1実施形態及び第2実施形態のワイヤハーネス組立体1において、フラットケーブル3,3は、丸電線群6を挟んで向かい合うように対をなして配置される。
【0042】
これにより、丸電線群6の周囲を広範囲にわたって保護することができる。また、丸電線群6を構成する丸電線7の数が増大した場合でも、1対のフラットケーブル3の間の距離が増大することで吸収することができる。従って、丸電線7の数の自由度を高めることができ、車種変更等による電線の増加に容易に対応することができる。
【0043】
第1実施形態及び第2実施形態のワイヤハーネス組立体1は、フラットケーブル3を丸電線群6に固定するフラットケーブル固定部2を有する。
【0044】
これにより、フラットケーブル3,3の丸電線群6に対する位置がズレないように固定することができる。
【0045】
第1実施形態及び第2実施形態のワイヤハーネス組立体1において、フラットケーブル固定部2は、丸電線群6を挟んで向かい合うように対をなして配置されるフラットケーブル3,3の外周に配置される。
【0046】
これにより、対をなして配置される複数のフラットケーブル3,3を、丸電線群6に一度に固定することができる。この結果、構成の簡素化を実現できる。
【0047】
続いて、第3実施形態を説明する。
【0048】
図4に示す第3実施形態は、フラットケーブル3,3として、第1実施形態よりも導電体4の数が少ないものを用いている。収容される丸電線7の数は、第1実施形態と等しい。
【0049】
本実施形態では、フラットケーブル3の幅が短いため、丸電線7が並べられる列の端部で、フラットケーブル3の導電体4が曲げられていない。このため、フラットケーブル3,3の負荷を低減し、耐久性を良好とすることができる。また、ワイヤハーネスの曲げ易さも良好である。
【0050】
次に、第4実施形態を説明する。
【0051】
図5に示す第4実施形態は、丸電線群6の一側にだけフラットケーブル3が配置されている。フラットケーブル固定部2は、フラットケーブル3の外側の面に巻かれるとともに、丸電線群6の外側の面にも直接巻かれる。それ以外の構成は第1実施形態と同様である。
【0052】
次に、第5実施形態を説明する。
【0053】
図6に示す第5実施形態のワイヤハーネス組立体1は、車体に固定可能な固定部材11を備える。固定部材11は例えば合成樹脂により構成され、プレート部12と、アンカー部13と、を備える。プレート部12とアンカー部13とは、互いに一体的に形成されている。
【0054】
プレート部12は、細長い板状に形成されている。プレート部12の長手方向中央部に、アンカー部13が配置されている。
【0055】
プレート部12は、テープ止め部として機能する。プレート部12のうちアンカー部13を挟んだ両側の部分に粘着テープを巻き付け、更にフラットケーブル3,3の外周に巻き付けることで、固定部材11をフラットケーブル3に固定することができる。この構成で、粘着テープは、実質的にフラットケーブル固定部2を兼ねる。
【0056】
アンカー部13は、固定部材11を車体パネル等に固定するための部位である。アンカー部13は、例えば車体パネルに形成された小さい取付穴に差し込むことにより、引っ掛かって固定することが可能である。アンカー部13としては、例えば、複数の爪部からなる公知の構成を採用することができる。
【0057】
プレート部12は、テープ巻きに代えて、例えば超音波溶着によって固定されても良い。
【0058】
次に、第6実施形態を説明する。
【0059】
図7に示す第6実施形態のワイヤハーネス組立体1は、公知のバンドクランプ型の固定部材15を備える。この固定部材15は、フラットケーブル3,3を丸電線群6に固定するフラットケーブル固定部としての機能も有する。
【0060】
固定部材15は、本体部16と、アンカー部17と、バンド部18と、を備える。固定部材15は合成樹脂から構成されており、本体部16、アンカー部17及びバンド部18は互いに一体的に形成されている。
【0061】
本体部16には、貫通状の差込孔19が形成される。差込孔19には、バンド部18に形成されている凹凸に引っ掛かることが可能な図略のロック部が形成されている。
【0062】
アンカー部17は、本体部16から突出するように設けられている。アンカー部17の構成は前述のアンカー部13と実質的に同一であるので、説明を省略する。
【0063】
バンド部18は、細長く形成されており、その長手方向一端が本体部16に接続されている。バンド部18は可撓性を有しており、その先端を、前述の差込孔19に差し込むことができる。
【0064】
1対のフラットケーブル3,3のそれぞれにおいて、絶縁材5には2つの貫通孔20が形成されている。それぞれの貫通孔20は、フラットケーブル3(言い換えれば、絶縁材5)の幅方向両端部に配置されている。貫通孔20は、丸電線群6を挟んで向かい合う1対のフラットケーブル3,3で互いに位置が対応するように配置される。
【0065】
この構成で、バンド部18は、
図7の鎖線で示すように、丸電線群6の外側を周回しつつ4つの貫通孔20を通過する。バンド部18は、最終的に差込孔19に差し込まれ、抜けないようにロックされる。
【0066】
この構成においても、前述の第5実施形態と同様に、ワイヤハーネス組立体1を車体パネル等に適切に固定することができる。貫通孔20を省略し、第1実施形態のフラットケーブル固定部2の粘着テープと同様に、1対のフラットケーブル3,3の外側にバンド部18が巻き付けられても良い。
【0067】
以上に説明したように、本実施形態のワイヤハーネス組立体1は、フラットケーブル3,3を丸電線群6に固定するバンドクランプ型の固定部材15を備える。この固定部材15は、バンド部18と、アンカー部17と、を備える。バンド部18は、フラットケーブル3の外側に巻かれる。アンカー部17は、穴に引っ掛けて固定可能である。
【0068】
これにより、簡素な構成で、ワイヤハーネス組立体1を車体パネル等に適切に固定することができる。
【0069】
次に、第7実施形態を説明する。
【0070】
図8に示す第7実施形態のワイヤハーネス組立体1では、1列に並べられた丸電線7からなる丸電線群6を挟むように1対のフラットケーブル3,3が配置されている。1対のフラットケーブル3,3の幅方向端部同士が、糸25により縫い合わされている。縫い合わせ部分は、フラットケーブル3の長手方向に沿って延びる。
【0071】
この構成は、前述のフラットケーブル固定部2が適用された構成と比較して、内部の丸電線群6を強固に保護することができる。
【0072】
次に、第8実施形態を説明する。
【0073】
図9に示す第8実施形態のワイヤハーネス組立体1は、分岐部31を備える。分岐部31においては、実質的に直線状に配置されて1対で向かい合うフラットケーブル3,3の間から、一部の丸電線7がフラットケーブル3,3の長手方向と異なる方向に延びている。これらの丸電線7は、フラットケーブル3,3の間の位置で適宜曲げられて、フラットケーブル3の幅方向外側に外れるように斜めに延びる。
【0074】
ワイヤハーネス組立体1に接続される車載機器は任意であるが、本実施形態では、ワイヤハーネス組立体1が、乗用車に複数備えられる統合ECU51,52の間を接続している。ECUは、Electronic Control Unitの略称である。統合ECUとは、単一の車載機器ではなく多くの車載機器を制御可能なECUをいう。統合ECUを用いることで、乗用車に設けられるECUの数を減らし、省スペース等を実現することができる。2つの統合ECU51,52の間を接続する電線群は、一般的に電線の数が多いことから、幹線36と呼ぶ。幹線36は、フラットケーブル3,3及び丸電線群6から構成される。上記の分岐部31において幹線36から分岐する電線群を枝線37と呼ぶ。枝線37は、丸電線群6のみから構成される。枝線37の向きは任意であり、例えば幹線36に垂直とすることもできる。
【0075】
本実施形態では、フラットケーブル3,3を、互いに異なる複数の車種の間で共通の回路である幹線36に含まれるように配置している。言い換えれば、枝線37にはフラットケーブル3が含まれない。このように構成することで、コンパクトなフラットケーブル3の利点を複数の車種に活かすことができる。一方で、枝線37は丸電線群6だけで構成されるので、車種に応じて様々な補器53が車両に選択的に設けられる状況に柔軟に対応することができる。複数の車種で共通となるようにフラットケーブル3,3の経路を設計し、それをベースにして車種固有の丸電線群6の経路を設計する手法が可能になるので、設計の共通化が容易になり、設計工数を減らすことができる。生産数量が大きい共通部分に対し、上述のようにロボットを用いた自動製造に好適なフラットケーブル3が用いられることにより、全体としての生産効率を向上することができる。フラットケーブル3の導電体4を共通の電気回路とする手法は、互いに異なる複数の車種の間だけでなく、同一の車種において互いに仕様が異なる複数の型番の間、又は、同一の車種において互いに異なる複数のグレードの間で適用されても良い。
【0076】
分岐部31を挟んで幹線36の長手方向両側に、前述のフラットケーブル固定部2がそれぞれ配置されている。枝線37が幹線36に対して向きを異ならせて延びる始端部38は、2つのフラットケーブル固定部2の間に位置している。これにより、枝線37の始端部38の位置がズレないように固定することができる。枝線37において、丸電線群6の周囲にテープ巻き等による固定が施されても良い。
【0077】
以上に説明したように、本実施形態のワイヤハーネス組立体1は、分岐部31を備える。この分岐部31においては、対をなすフラットケーブル3,3の間から丸電線群6がフラットケーブル3の長手方向と異なる方向に延びる。
【0078】
これにより、簡単な構成で分岐状のワイヤハーネスを実現することができる。
【0079】
本実施形態のワイヤハーネス組立体1において、分岐部31は、幹線36の中途部から枝線37が分岐するように構成される。幹線36は、フラットケーブル3,3を含む。枝線37は、丸電線群6から構成される。
【0080】
枝線37にフラットケーブル3が含まれないように構成することにより、予め複数の電線がまとめて備わっている構成のフラットケーブル3を枝線37に用いるよりも、回路設計の自由度を高めることができる。従って、バリエーションが必要な回路設計に用意に対応することができる。
【0081】
また、本実施形態のワイヤハーネス組立体1は、車両に用いられる。このワイヤハーネス組立体1において、フラットケーブル3が備える導電体4は、互いに異なる複数の車種の間で共通の電気回路を構成する。
【0082】
これにより、複数の車種の設計工数を全体として減らすことができるとともに、コンパクトなフラットケーブル3の利点を複数の車種に活かすことができる。
【0083】
また、本実施形態のワイヤハーネス組立体1において、フラットケーブル固定部2,2は、枝線37が幹線36に対して向きを異ならせて延びる始端部38を挟んで両側に配置されている。
【0084】
これにより、分岐部31の形状を良好に保持することができる。
【0085】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。変更は単独で行われても良いし、複数の変更が任意に組み合わせて行われても良い。
【0086】
粘着テープ及びバンドクランプによるフラットケーブル固定部2に代えて、例えば溶着又は接着により、丸電線群6とフラットケーブル3とを互いに固定することができる。固定の方法は任意であるが、例えば、接着剤、ホットメルト、加熱、紫外線、レーザー等を挙げることができる。ワイヤハーネス組立体1が、丸電線群6だけを固定する固定部を備えても良い。同様に、第5実施形態の固定部材11をフラットケーブル3に対して、接着剤、ホットメルト、加熱、紫外線、レーザー等を用いて固定することもできる。
【0087】
フラットケーブル3が丸電線群6の一側にのみ設けられる第4実施形態の構成は、第5、第6及び第8実施形態のうち何れかと組み合わせることもできる。
【0088】
例えば第1実施形態において、対をなすフラットケーブル3のうち少なくとも一側が複数であっても良い。例えば、フラットケーブル3を一側に2枚、反対側にも2枚、厚み方向に重ねて配置することができる。
【0089】
フラットケーブル3を45°で折り返すように曲げ、この曲げ部に沿うように丸電線群6を曲げて、垂直の曲げ部をワイヤハーネス組立体1に形成することもできる。曲げ部の角度は垂直に限らず任意である。
【0090】
丸電線群6とフラットケーブル3が、更に外側に配置された外装材によって覆われても良い。
【符号の説明】
【0091】
1 ワイヤハーネス組立体
2 フラットケーブル固定部
3 フラットケーブル
6 丸電線群
7 丸電線
17 アンカー部
31 分岐部
36 幹線
37 枝線
38 始端部