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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025156944
(43)【公開日】2025-10-15
(54)【発明の名称】ドライ洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20251007BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20251007BHJP
   B08B 7/00 20060101ALI20251007BHJP
   B08B 5/00 20060101ALI20251007BHJP
【FI】
H01L21/304 645Z
H01L21/205
B08B7/00
B08B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059724
(22)【出願日】2024-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】511058523
【氏名又は名称】株式会社メープル
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山岡 優哉
(72)【発明者】
【氏名】金井 俊介
(72)【発明者】
【氏名】此島 栄次
(72)【発明者】
【氏名】中谷 拓也
【テーマコード(参考)】
3B116
5F045
5F157
【Fターム(参考)】
3B116AA47
3B116AB51
3B116BB82
3B116BB88
5F045AB14
5F045EB06
5F157BG13
5F157BG14
5F157BG22
5F157BG76
5F157BG82
5F157BG85
5F157CC21
5F157CE55
5F157CF34
5F157CF42
5F157CF90
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】本発明は、洗浄装置及び洗浄方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の洗浄装置は、外上部炉壁体と外底部炉壁体を備えた外壁体と、内上部炉壁体と内底部炉壁体を備えた内壁体を具備した洗浄装置であり、外上部炉壁体と内上部炉壁体が上下に移動自在に設けられ、外上部炉壁体の内側であって内上部炉壁体の外側に加熱源を備え、外壁体の内側の空間であって内壁体の外側の空間にパージガスを供給するパージガス供給手段と、内壁体の内側の空間にエッチングガスを供給するエッチングガス供給手段を備え、外上部炉壁体を外底部炉壁体に接触させて外上部炉壁体を外底部炉壁体に一体化し、外上部炉壁体と外底部炉壁体で構成される外壁体の内側に密閉空間を形成可能、内上部炉壁体を内底部炉壁体に接触させて内上部炉壁体を内底部炉壁体に一体化し、内上部炉壁体と内底部炉壁体で構成される内壁体の内側に密閉空間を形成可能とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外上部炉壁体と外底部炉壁体を備えた外壁体と、内上部炉壁体と内底部炉壁体を備えた内壁体を具備した2重構造の壁体を備えた洗浄装置であって、
前記外上部炉壁体と前記外底部炉壁体が上下に相対移動自在に設けられ、
前記内上部炉壁体と前記内底部炉壁体が上下に相対移動自在に設けられ、
前記外壁体の内側であって前記内壁体の外側に加熱手段を備え、
前記外壁体の内側の空間であって前記内壁体の外側の空間にパージガスを供給する第1ガス供給手段および前記外壁体の内側の空間からパージガスを排気する第1ガス排気手段と、
前記内壁体の内側の空間にパージガスとエッチングガスの少なくとも一方のガスを供給する第2ガス供給手段および前記内壁体の内側の空間からガスを排気する第2ガス排気手段を備え、
前記外上部炉壁体を前記外底部炉壁体に接触させて前記外上部炉壁体を前記外底部炉壁体に一体化し、前記外上部炉壁体と前記外底部炉壁体で構成される前記外壁体の内側に密閉空間を形成可能であり、
前記内上部炉壁体を前記内底部炉壁体に接触させて前記内上部炉壁体を前記内底部炉壁体に一体化し、前記内上部炉壁体と前記内底部炉壁体で構成される前記内壁体の内側に密閉空間を形成可能としたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記第1ガス排気手段が、前記外壁体の内側の空間であって前記内壁体の外側の空間から前記パージガスを前記外壁体の外側に排気する手段であり、
前記第2ガス排気手段が、前記内壁体の内側の空間から前記ガスを前記外壁体の外側に排気する手段である請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記外壁体の一部に前記第1ガス供給手段に接続するためのパージガス供給口を備え、
前記外壁体の底壁部と前記内壁体の底壁部を貫通して前記内壁体の内側空間に連通した給排気用のガスノズルを備えた、請求項1または請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記外底部炉壁体の底壁部を貫通して前記内底部炉壁体を支持した支柱部材が設けられ、
前記支柱部材及び前記内底部炉壁体が上下方向に移動自在に支持された、請求項1または請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記外底部炉壁体を貫通した前記支柱部材の下部を前記外底部炉壁体の外部で支持するベース部材が設けられ、前記ベース部材に前記支柱部材と前記内底部炉壁体を上下移動させる直動装置を備えた、請求項4に記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記外上部炉壁体の内側であって前記内上部炉壁体の外側に第1の加熱手段を備え、
前記外底部炉壁体の内側であって前記内底部炉壁体の外側に第2の加熱手段を備えた、請求項1または請求項2に記載の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライ洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物半導体薄膜を形成する気相成長装置では、原料ガスを供給する流路内に基板を設置し、基板上に化合物半導体を成長する。
気相成長装置において流路を形成する部材には、”デポ”と呼ばれる反応副生成物が付着する。この反応副生成物が流路内に付着した状態で化合物半導体を再度成長すると、反応副生成物が流路内壁から脱離し、反応副生成物が成長中の化合物半導体に取り込まれてしまい、ピットなどと呼ばれる欠陥を形成する。例えば、気相成長装置が窒化ガリウム等の半導体層を堆積する装置である場合、流路内には窒化ガリウムなどの反応副生成物が生成する場合がある。
そのため、気相成長装置において流路を構成する部材(以下反応炉部材と記載)は、化合物半導体の成長毎に洗浄することが望ましい。
【0003】
従来、この種の反応炉部材を洗浄する装置として、以下の特許文献1、2に記載の技術が知られている。
特許文献1には、ドーム部に洗浄対象物を収容し、ドーム部を断熱材で覆い、断熱材の内側に設けた加熱手段でドーム部全体を所望の温度に加熱する構成の洗浄装置が記載されている。この洗浄装置は、ドーム部内に塩素ガスを導入する機構を有し、洗浄対象物に付着している反応副生成物を加熱状態でエッチングすることにより洗浄する機能を有している。
特許文献2には、被処理物を収容した真空容器にハロゲン系ガスを導入して加熱し、被処理物の付着物を除去するとともに、真空容器の内部に別途洗浄液を導入して洗浄液により真空容器の内部を洗浄するドライ洗浄装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6679413号公報
【特許文献2】特開2012-186311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載された従来技術では、洗浄対象物に付着した反応副生成物をエッチングにより除去する際、洗浄装置内への塩化物付着を防止するため、ドーム部の外側あるいは真空炉の外側に電気ヒータを配置したホットウォール構造を採用している。
電気ヒータに通電することでドーム部全体あるいは真空容器の全体を目的の温度に加熱しながら反応生成物をエッチングすることにより、装置内で塩化物の不要な付着を防止できる。
しかしながら、ドーム部全体あるいは真空容器全体を加熱するホットウォール構造を採用すると、装置全体の加熱および冷却のための時間がかかり、洗浄に要する処理時間が長くなってしまう問題がある。
【0006】
処理時間を短縮するためには、洗浄炉を水冷するコールドウォール構造を適用することが好ましい。しかしながら、洗浄炉をコールドウォール構造にすると、洗浄時に発生する反応生成物としての塩化物(塩化ガリウム等)を洗浄炉内に付着残留させてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みなされたものであって、洗浄時間短縮のためのコールドウォール構造を採用可能としながら、塩化物が洗浄炉内に付着することのない構成を採用した洗浄装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の各態様を採用した。
(1)本発明に係る一形態の洗浄装置は、外上部炉壁体と外底部炉壁体を備えた外壁体と、内上部炉壁体と内底部炉壁体を備えた内壁体を具備した2重構造の壁体を備えた洗浄装置であって、前記外上部炉壁体と前記外底部炉壁体が上下に相対移動自在に設けられ、前記内上部炉壁体と前記内底部炉壁体が上下に相対移動自在に設けられ、前記外壁体の内側であって前記内壁体の外側に加熱手段を備え、前記外壁体の内側の空間であって前記内壁体の外側の空間にパージガスを供給する第1ガス供給手段および前記外壁体の内側の空間からパージガスを排気する第1ガス排気手段と、記内壁体の内側の空間にパージガスとエッチングガスの少なくとも一方のガスを供給する第2ガス供給手段および前記内壁体の内側の空間からガスを排気する第2ガス排気手段を備え、前記外上部炉壁体を前記外底部炉壁体に接触させて前記外上部炉壁体を前記外底部炉壁体に一体化し、前記外上部炉壁体と前記外底部炉壁体で構成される前記外壁体の内側に密閉空間を形成可能であり、前記内上部炉壁体を前記内底部炉壁体に接触させて前記内上部炉壁体を前記内底部炉壁体に一体化し、前記内上部炉壁体と前記内底部炉壁体で構成される前記内壁体の内側に密閉空間を形成可能としたことを特徴とする。
【0009】
外上部炉壁体と外底部炉壁体を相対移動させて一体化して外壁体を構成し、外壁体の内側空間にパージガスを供給することで外壁体の内側空間をパージガスで満たすことができる。内上部炉壁体と内底部炉壁体を相対移動させて一体化して内壁体を構成し、内壁体の内側にエッチングガスを供給することで内壁体の内側空間をエッチングガスで満たすことができる。よって、内壁体の内側に反応炉部材などの洗浄対象物を収容しておくことで洗浄対象物に付着している反応副生成物をエッチングにより洗浄することが可能となる。
【0010】
加熱手段を外壁体の内側であって、内壁体の外側に設置したため、内壁体の内側に洗浄対象物を収容し、内壁体の内側をエッチングのために適切な温度に加熱することで洗浄対象物を洗浄可能となる。加熱手段は外壁体とその内部空間全体ではなく内壁体とその内部空間をエッチングに必要な温度に加熱できればよい。このため、外壁体の外側に加熱手段を設けて外壁体とその内側を含めた全体を加熱して洗浄し、洗浄後に全体を冷却する必要のあった従来装置に比べ、洗浄開始から洗浄終了し、次の洗浄対象物に交換して洗浄開始するまでの1バッチあたりの所要時間を短縮できる。
本形態の洗浄装置は、内壁体のみをホットウォール構造とし、外壁体はコールドウォール構造とできるので、洗浄対象物からの塩化物付着の問題を回避しつつ洗浄時間を短縮できる洗浄装置の提供が可能となる。
【0011】
洗浄対象物を洗浄する際、外上部炉壁体及び内上部炉壁体に対し外底部炉壁体と内底部炉壁体を離間させておき、内上部炉壁体と内底部炉壁体の間に洗浄対象物を挿入した後、外上部炉壁体と外底部炉壁体を一体化し、それらの内部にパージガスを満たすことができる。
ここで、内上部炉壁体と内底部炉壁体を一体化せずにこれらの間の空間を開放しておくと、内上部炉壁体と内底部炉壁体の間の空間をパージガスで素早く満たすことができる。
この後、内上部炉壁体と内底部炉壁体を一体化して内上部炉壁体と内底部炉壁体が囲む空間にエッチングガスを満たし、洗浄対象物を洗浄することができる。
洗浄処理終了後、外上部炉壁体及び外底部炉壁体を一体化したまま、内上部炉壁体と内底部炉壁体間の空間を開放することで加熱状態の内上部炉壁体と内底部炉壁体を素早く冷却できる。
この冷却時間短縮効果により、1バッチあたりの所要時間を短縮できる。
【0012】
(2)本発明に係る一形態の洗浄装置において、前記第1ガス排気手段が、前記外壁体の内側の空間であって前記内壁体の外側の空間から前記パージガスを前記外壁体の外側に排気する手段であり、前記第2ガス排気手段が、前記内壁体の内側の空間から前記ガスを前記外壁体の外側に排気する手段であることが好ましい。
【0013】
第1ガス排気手段と第2ガス排気手段を有することにより、パージガスの排出とエッチングガスの排出を短時間で実施できるようになり、洗浄工程全体の時間短縮に寄与する。
【0014】
(3)本発明に係る一形態の洗浄装置は、前記外壁体の一部に前記第1ガス供給手段に接続するためのパージガス供給口を備え、前記外壁体の底壁部と前記内壁体の底壁部を貫通して前記内壁体の内側空間に連通した給排気用のガスノズルを備えたことが好ましい。
【0015】
パージガス供給口から外壁体の内部空間にパージガスを供給することができ、ガスノズルから内壁体の内側空間にパージガスとエッチングガスの少なくとも一方を供給することができる。
また、外壁体の底壁部と前記内壁体の底壁部を貫通するガスノズルであれば、外底部炉壁体と内底部炉壁体が上下移動する構成を採用したとして、ガスノズルがこれらの上下移動の支障とならない。
【0016】
(4)本発明に係る一形態の洗浄装置は、前記外底部炉壁体の底壁部を貫通して前記内底部炉壁体を支持した支柱部材が設けられ、前記支柱部材及び前記内底部炉壁体が上下方向に移動自在に支持されたことが好ましい。
【0017】
支柱部材と内底部炉壁体を上下移動自在に構成することにより、外上部炉壁体及び内上部炉壁体と外底部炉壁体及び内底部炉壁体を一体化する場合、内上部炉壁体と内底部炉壁体を外上部炉壁体及び外底部炉壁体と別個に移動できる。
このため、外上部炉壁体及び外底部炉壁体を一体化した後、内上部炉壁体と内底部炉壁体の内側空間を開放状態とすることができる。
内上部炉壁体と内底部炉壁体を開放状態のまま外上部炉壁体及び外底部炉壁体の内側空間にパージガスを供給することにより、内上部炉壁体と内底部炉壁体の内側空間に短時間でパージガスを満たすことができる。
内上部炉壁体と内底部炉壁体の内側空間をパージガスで満たした後、内上部炉壁体と内底部炉壁体を一体化し、内上部炉壁体と内底部炉壁体の内側空間にエッチングガスを供給することでエッチングを実施できる。
【0018】
(5)本発明に係る(4)に記載の洗浄装置において、前記外底部炉壁体を貫通した前記支柱部材の下部を前記外底部炉壁体の外部で支持するベース部材が設けられ、前記ベース部材に前記支柱部材と前記内底部炉壁体を上下移動させる直動装置を備えたことが好ましい。
【0019】
内底部炉壁体を上下方向に移動させる機構として、ベース部材とエアシリンダなどの直動装置を備えた構成を採用できる。直動装置により内底部炉壁体の上下移動調節ができるので、内底部炉壁体と内上部炉壁体を確実に一体化し、それらの内側を密閉空間とすることができ、該密閉空間にエッチングガスを供給して洗浄ができる。
また、外上部炉壁体及び外底部炉壁体とは別に内底部炉壁体と内上部炉壁体を上下移動できるので、エッチング後に内底部炉壁体と内上部炉壁体の間隔をあけてこれらの間にパージガスを導入し、内底部炉壁体と内上部炉壁体の冷却及びこれらの間の空間の冷却を早めることができる。
【0020】
(6)本発明に係る一形態の洗浄装置は、前記外上部炉壁体の内側であって前記内上部炉壁体の外側に第1の加熱手段を備え、前記外底部炉壁体の内側であって前記内底部炉壁体の外側に第2の加熱手段を備えたことが好ましい。
【0021】
内上部炉壁体の外側に設けた第1の加熱手段と内底部炉壁体の外側に設けた第2の加熱手段により、内上部炉壁体及び内底部炉壁体とそれらの間の空間をエッチングに望ましい温度に加熱し、効率良く温度制御することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、外上部炉壁体と外底部炉壁体を一体化して外壁体を構成し、外壁体の内側空間にパージガスを供給することで外壁体の内側空間をパージガスで満たすことができる。内上部炉壁体と内底部炉壁体を一体化して内壁体を構成し、内壁体の内側空間にエッチングガスを供給することで内壁体の内側空間をエッチングガスで満たすことができる。よって、内壁体の内側に反応炉部材などの洗浄対象物を設置しておくことでエッチングによる洗浄対象物の洗浄が可能となる。
【0023】
加熱手段を外壁体の内側であって、内壁体の外側に設置したため、内壁体の内側に洗浄対象物を収容し、内壁体の内側をエッチングのために適切な温度に加熱することで洗浄可能となる。加熱手段は外壁体とその内部空間全体ではなく内壁体とその内部空間をエッチングに必要な温度に加熱できればよい。このため、外壁体を含めてその全体を加熱する必要のあった従来装置に比較すると少ない熱エネルギーの投入でエッチングが可能となる。
また、エッチング後に冷却して洗浄対象物を入れ替える場合、内壁体とその内側空間を冷却すると良いので外壁体を含めた全体を加熱し冷却していた従来装置に比較し、加熱時間と冷却時間を短縮できる。
本形態の洗浄装置は、内壁体のみをホットウォール構造とし、外壁体はコールドウォール構造としたことと等価となるので、洗浄対象物からの塩化物付着の問題を回避しつつ処理時間を短縮できる洗浄装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係る洗浄装置を示す断面図。
図2】同洗浄装置と同洗浄装置に接続される配管系を示す略構成図。
図3】同洗浄装置において外上部炉壁体及び内上部炉壁体を外底部炉壁体及び内底部炉壁体に対し上昇させて離間した状態を示す断面図。
図4】同洗浄装置において外上部炉壁体及び内上部炉壁体を外底部炉壁体及び内底部炉壁体に対し離間させ、上下の炉壁体間に洗浄対象物を挿入した状態を示す断面図。
図5】同洗浄装置において外上部炉壁体を下降させて外底部炉壁体に一体化し、内上部炉壁体を内底部炉壁体に対し離間状態とし、内上部炉壁体と内底部炉壁体の間に洗浄対象物を収容した状態を示す断面図。
図6】同洗浄装置において内上部炉壁体と内底部炉壁体を一体化し、内上部炉壁体と内底部炉壁体で閉じた空間内に洗浄対象物を収容し、洗浄している状態を示す断面図。
図7図6に示す洗浄装置の状態と該洗浄装置に接続された配管系との接続関係を示す略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の第1実施形態に係る洗浄装置について説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下に示す実施形態の説明に用いる図面は、各部を見やすくするために、縮尺を適宜変更して示している。
【0026】
本発明の第1実施形態に係る洗浄装置1は、図1に示すように、外上部炉壁体2と外底部炉壁体3を備えた外壁体5と、内上部炉壁体6と内底部炉壁体7を備えた内壁体8を具備した2重構造の壁体を備えた洗浄装置である。
外上部炉壁体2は天井部2Aと周壁部2Bを有する。外底部炉壁体3は、底壁部3Aと周壁部3Bを有する。外上部炉壁体2と外底部炉壁体3は、一例としてステンレス鋼板を用いたチャンバー構造体からなる。内上部炉壁体6と内底部炉壁体7は、一例としてグラファイトなどの耐熱材料からなる。
天井部2Aと底壁部3Aは、一例として平面視同一形状を有し、周壁部2Bと周壁部3Bは、一例として平面視同一形状を有することが好ましい。天井部2Aが例えば平面視円形状である場合は底壁部3Aも平面視円形状に形成され、天井部2Aが例えば平面視矩形状である場合は底壁部3Aも平面視矩形状に形成されることが好ましい。
例えば、天井部2Aが平面視円形状の場合、周壁部2Bは円筒状に形成され、底壁部3Aが平面視円形状の場合、周壁部3Bは円筒状に形成されることが好ましい。例えば、天井部2Aが平面矩形状の場合、周壁部2Bは矩形筒状に形成され、底壁部3Aが平面視矩形状の場合、周壁部3Bは矩形筒状に形成されることが好ましい。
【0027】
このため、外上部炉壁体2と外底部炉壁体3は、図1に示すように周壁部2Bの底面と周壁部3Bの上面を位置合わせして接触させ、一体化した場合、外上部炉壁体2と外底部炉壁体3から密閉構造の外壁体5が形成される。同時に、内底部炉壁体7と内上部炉壁体6の外側であって外壁体5の内側に密閉空間Aが区画される。外上部炉壁体2は外底部炉壁体3に一体化することで密閉空間Aを形成可能に設けられている。
【0028】
なお、図1では略しているが周壁部2Bの底面側と周壁部3Bの上面側にはそれぞれシール部材やシール機構などが配置され、周壁部2Bの底面と周壁部3Bの上面を突き合わせた場合、突合せ部分を気密にシールできるように構成されている。また、図1では記載を略しているが、外上部炉壁体2の周囲には、外上部炉壁体2を上下方向に移動自在に支持する上下移動機構が設けられ、外上部炉壁体2は図1に示した姿勢を維持したまま上下移動自在に支持されている。同様に外底部炉壁体3の周囲にも外底部炉壁体3を上下方向に移動自在に支持する上下移動機構が設けられている。本実施形態において外底部炉壁体3は外上部炉壁体2の下降とともに同期して下降できるように支持されている。外上部炉壁体2と外底部炉壁体3は上下方向に相対移動自在に設けられている。
図面では略しているが、外上部炉壁体2と外底部炉壁体3と後述するベース部材13など、洗浄装置1の全体は、図示略の雰囲気制御ボックス内に設置されており、雰囲気制御ボックスの内部空間は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に調整できるように構成されている。また、外上部炉壁体2と外底部炉壁体3については、図示略の水冷機構が設けられたコールドウォール構造とされている。
【0029】
外上部炉壁体2の天井部下面側には、吊り下げ支持用のハンガー部材10が設けられ、このハンガー部材10により、内上部炉壁体6が吊り下げ支持されている。ハンガー部材10は、石英ロッドなどの耐熱材料からなる。
内上部炉壁体6は、天井部6Aと周壁部6Bを有する。天井部6Aは天井部2Aと同様に平面視円形状あるいは平面視矩形状に形成されていることが好ましい。天井部2Aの場合と同様に天井部6Aが平面視円形の場合、周壁部6Bが円筒状であり、天井部6Aが平面視矩形状の場合、周壁部6Bは矩形筒状に形成されることが好ましい。
内上部炉壁体6において天井部6Aの外径(あるいは横幅)は、外上部炉壁体2の天井部2Aの外径(あるいは横幅)より小さく形成されている。内上部炉壁体6において周壁部6Bの高さは外上部炉壁体2の周壁部2Bの高さより小さく形成されている。
【0030】
図1に示す例において天井部6Aは、周壁部2Bの高さの半分程度の位置に吊り下げられ、周壁部6Bの下端は周壁部2Bの下端より若干下方に位置するように吊り下げられている。
外上部炉壁体2の天井部2Aより下方であって、内上部炉壁体6の周囲(外側)に加熱ヒータなどの第1の加熱手段11が設けられている。一例として第1の加熱手段11は、天井部6Aの上面側を覆う位置と周壁部6Bの周面側を覆う位置に設置された加熱ヒータなどの加熱源からなる。加熱源の一例として赤外線ランプヒータを適用することができる。
【0031】
外底部炉壁体3において周壁部3Bは、図1の例では外上部炉壁体2の周壁部2Bと同等程度の高さに形成されている。外底部炉壁体3において底壁部3Aの下方に底壁部3Aと同等程度の大きさのベース部材13が配置されている。外底部炉壁体3において周壁部3Bの高さは図1に示す例に限らず、ベース部材13の大きさも図1に示す例に限らないが、図1では一例として示している。
ベース部材13の中央部に透孔13aが形成され、この透孔13aを貫通して上下方向に延びるガスノズル15が設置されている。このガスノズル15は、底壁部3Aの中央に形成された透孔3aを貫通して外底部炉壁体3の内部側に延出されている。
ベース部材13の上面においてガスノズル15の貫通位置を周回りに囲むように複数の支柱部材16が配置されている。支柱部材16は例えば石英などの耐熱材料からなる。これら支柱部材16は、底壁部3Aに形成された透孔3bを挿通して外底部炉壁体3の内部側に延出されている。
【0032】
外底部炉壁体3の内側において、複数の支柱部材16に支持されて板状の内底部炉壁体7が設置されている。内底部炉壁体7は、前述した内上部炉壁体6の天井部6Aと同じ平面視形状を有することが好ましい。内底部炉壁体7は、支柱部材16に支持されて外底部炉壁体3の内部に水平支持されている。また、内底部炉壁体7は、複数の支柱部材16に支持されて図1に示す状態では周壁部3Bの高さの半分程度の位置に水平に支持されている。
ベース部材13において支柱部材16を設けた位置の下面側に支柱部材16の支持力調整用のエアシリンダ(直動装置)17が設けられている。支柱部材16はベース部材13に形成した透孔を上下方向に挿通するように配置され、エアシリンダ17により上下方向移動自在に支持されている。支柱部材16はその下部を外底部炉壁体3の外部においてベース部材13で支持されるとともに、エアシリンダ17により移動自在に支持される。
エアシリンダ17は支柱部材16を介し内底部炉壁体7を若干上下移動させることができ、内上部炉壁体6に対する内底部炉壁体7の上下位置を微調節できる。これにより、内上部炉壁体6と内底部炉壁体7の密着を確実とするか、密着状態の内上部炉壁体6と内底部炉壁体7を離間する機能を有する。内上部炉壁体6の周壁部下面と内底部炉壁体7の周縁部を密着すると、内上部炉壁体6と内底部炉壁体7が囲む空間を後述する図6に示す密閉空間Bとすることができる。
【0033】
ベース部材13と底壁部3Aの間であって、透孔3bの底部側開口を囲む位置に、ステンレス鋼などの金属材料からなる筒形の蛇腹部材18が配置されている。この蛇腹部材18は、上端部で透孔3bの底部側開口周縁部を囲むように、下端部でベース部材13の上面に一体化するように設けられている。蛇腹部材18を設けることで透孔3bの底部側開口を気密に閉じることができる。蛇腹部材18は上下方向に若干距離のみ伸縮自在に構成されている。
【0034】
ガスノズル15は、内管15Aと外管15Bを有する2重管構造を有し、内管15Aは内底部炉壁体7を貫通して内底部炉壁体7よりも上方位置まで延出されている。図1の状態では内管15Aの上端が外底部炉壁体3の上面開口位置より若干上方の位置まで延出されている。外管15Bは内管15Aの外周面を囲むとともに、内管15Aの上端より若干低い位置まで延出されている。内底部炉壁体7においてその中央に透孔が形成され、この透孔を挿通して外管15Bと内管15Aが前述の高さ位置まで延出されている。
ガスノズル15の外管15Bが内底部炉壁体7を貫通した部分において、内底部炉壁体7の下面側に外向きのフランジ部15aが形成されている。このフランジ部15aは内底部炉壁体7の底部に接触されている。内管15Aの上端部周回りに複数の噴出口15bが形成され、外管15Bの上端部周回りに複数の排気口15cが形成されている。
【0035】
ガスノズル15において内管15Aの底部側は後述するパージガスあるいはエッチングガスを供給できるガス供給源30(図2参照)に接続されている。ガス供給源30からのパージガスあるいはエッチングガスの供給により、内管15Aの噴出口15bからパージガスあるいはエッチングガスを噴出できるようになっている。
ガスノズル15において外管15Bの底部側は後述するガス排気管28を介しドライポンプP(図2参照)に接続され、ドライポンプPは後述する排気処理設備35に接続されている。この構成により、外管15Bの排気口15cから排気口15c周りのガスを吸引し、このガスをガス排気管28を介し排気処理設備35に送ることができるようになっている。ガスノズル15は、噴出口15bからガスを供給し、排気口15cからガスを排気するので、ガスの給排気用として設けられている。
【0036】
ガスノズル15において外管15Bの上端部に、図示は略しているが円盤状の洗浄対象物支持体が設けられている。この洗浄対象物支持体に支持された状態で図1に示す第1の洗浄対象物20が設置される。また、内底部炉壁体7の上に第2の洗浄対象物21が設置される。第1の洗浄対象物20は、一例として、化合物半導体薄膜を形成するための気相成長装置に設けられる流路を構成するための天井板(反応炉部材)である。第2の洗浄対象物21は、一例として、同流路を構成するためのサセプタカバー(反応炉部材)である。第1の洗浄対象物20と第2の洗浄対象物21の設置位置は、図1に示す位置と上下逆転した位置であってもよい。
また、この例では、一例としてガスノズル15の周囲に第1の洗浄対象物20と第2の洗浄対象物21を設置しているが、洗浄対象物として他の反応炉部材を設置してもよい。
【0037】
外底部炉壁体3の底壁部3Aより上方であって、内底部炉壁体7の下方に第2の加熱手段22が設けられている。第2の加熱手段22は、内底部炉壁体7の底面側をカバー可能な位置に設置されている。
【0038】
図1に示す洗浄装置1に対し、図2に概要を示すようにパージガス供給管25、パージガス排気管26、ガス供給管27、ガス排気管28が接続されている。
パージガス供給管25の一端は、図1に示す外上部炉壁体2の天井部2Aに形成されているパージガス供給口2aに接続され、パージガス供給管25の他端は、パージガス供給源29に接続されている。この構成により、パージガス供給源29からパージガス供給口2aを介し外上部炉壁体2の内側空間にパージガスを供給できるようになっている。パージガス供給源29とパージガス供給管25により、第1ガス供給手段24が構成されている。
ガス供給管27の一端は、先に説明したように図1に示すガスノズル15の内管15Aに接続され、ガス供給管27の他端はガス供給源30に接続されている。
この構成により、ガス供給源30からガス供給管27とガスノズル15を介し内上部炉壁体6と内底部炉壁体7の間の空間にエッチングガスまたはパージガスを供給できるようになっている。ガス供給源30とガス供給管27とガスノズル15の内管15Aにより第2ガス供給手段34が構成されている。
なお、ガス供給源30は、不活性ガスなどのパージガスを供給する機能とエッチングガスを供給する機能の両方を備えており、必要に応じガス供給管27とを介しパージガスとエッチングガスのどちらか一方か、両方のガスを所定の比率とした混合ガスを供給できるように構成されている。
【0039】
パージガス排気管(第1ガス排気手段)26の一端は、外上部炉壁体2の周壁部2Bを貫通して外上部炉壁体2の内側空間に接続され、他端は圧力調整弁31を介しドライポンプPの入力側に接続されている。パージガス排気管26において外上部炉壁体2と圧力調整弁31との間の部分にパージガス排気計測用の圧力計32が組み込まれている。圧力計32と圧力調整弁31は制御用配線で接続され、圧力計32が計測する圧力値に応じて圧力調整弁31の開度を調整できるようになっている。なお、圧力計32と圧力調整弁31が無線通信手段で接続されていてもよく、圧力計32が計測する圧力値に応じて圧力調整弁31がその開度を調整可能な構成でもよい。
【0040】
ガス排気管28の一端はガスノズル15の外管15Bに接続され、他端は圧力調整弁33を介しドライポンプPの入力側に接続されている。ドライポンプPの排気側は排気処理設備35に接続されている。ガス排気管28とガスノズル15の外管15Bにより、第2ガス排気手段38が構成されている。
ガス排気管28において外底部炉壁体3と圧力調整弁33との間の部分にエッチングガス排気用あるいはパージガス排気用の圧力計36が組み込まれている。圧力計36と圧力調整弁33は制御用配線で接続されており、圧力計36が計測する圧力値に応じて圧力調整弁33の開度を調整できるようになっている。なお、圧力計36と圧力調整弁33が無線通信手段で接続されていてもよく、圧力計36が計測する圧力値に応じて圧力調整弁33がその開度を調整可能な構成でもよい。
【0041】
(洗浄対象物の処理)
(1)洗浄装置の初期状態
図1は本実施形態に係る洗浄装置1における初期状態を示している。
図1に示す初期状態とする前に、図3に示すように内上部炉壁体6と内底部炉壁体7の間に充分な間隔があくように外上部炉壁体2を外底部炉壁体3の上方に移動させておく。この状態で図4に示すように洗浄対象物20を内上部炉壁体6と内底部炉壁体7の間に収容する。なお、本段落以降の動作説明に用いる図3図7では、図1に示したガスノズル15の記載を略し、外上部炉壁体2、外底部炉壁体3、内上部炉壁体6、内底部炉壁体7を示しつつ、それらの位置関係を中心に記載している。また、説明の簡略化のために洗浄対象物20のみを記載し、洗浄対象物21の記載は略している。また、洗浄対象物20を支持している部材についても記載を略している。
図3図7では、便宜的にガスノズル15の記載を略しているが、洗浄時にガスノズル15を利用して給排気するのは勿論である。
【0042】
図4に示す状態から、図5に示すように外上部炉壁体2を下降させて外上部炉壁体2の周壁部2Bと外底部炉壁体3の周壁部3Bを接触させて一体化する。両者を一体化することで密閉構造の外壁体5を構成する。
周壁部2Bの下面と周壁部3Bの上面を接触させて密着することにより、外上部炉壁体2と外底部炉壁体3で囲まれる内側空間を密閉空間Aとすることができる。なお、内上部炉壁体6の周壁部6Bと内底部炉壁体7の間に所定の隙間をあけておくこととする。図5に示す状態は図1に示す状態と同等であるが、前述の如く図5ではガスノズル15の記載を略している。
図1図5に示す状態では、内上部炉壁体6の周壁部6Bの間に洗浄対象物20を収容した状態で、内上部炉壁体6の周壁部6Bと内底部炉壁体7が互いに接させていない。この状態で内上部炉壁体6と内底部炉壁体7の間の内側空間は密閉空間Aに連通し、両方の空間は互いに連通した空間となっている。
【0043】
(2)パージガスガスの供給
初期状態の洗浄装置1に対して、パージガス供給源29およびガス供給源30からそれぞれNガスあるいはアルゴンガスなどの不活性ガスをパージガスとして供給する。この状態では、圧力計32と圧力計36をそれぞれ圧力調整弁31および圧力調整弁33を用いて、同じ圧力指示値となるように圧力制御する。
【0044】
(3)内上部炉壁体6と内底部炉壁体7の閉動作
パージガス供給の手順後、エッチングに適した圧力へ炉内を減圧調整する。密閉空間Aの圧力(リアクタ内の圧力)が徐々に減少するように、圧力計32と圧力計36が同じ圧力設定値となるように圧力制御を行う。その後、図6に示すように外上部炉壁体2と外底部炉壁体3を一緒に下降させて内上部炉壁体6の周壁部6Bを内底部炉壁体7に接触させ一体化する。内上部炉壁体6と内底部炉壁体7の一体化により内壁体8を構成する。
ここで複数のエアシリンダ17の動作により内底部炉壁体7の上下位置を微調整し、周壁部6Bの下端と内底部炉壁体7の周縁部を確実に一体化して両者の隙間を閉じることが好ましい。内上部炉壁体6の周壁部6Bと内底部炉壁体7の周縁部を密着させることで、両者の間に密閉空間Bを形成することができる。
パージガス排気用の圧力計32とエッチングガス排気用の圧力計36をそれぞれパージガス排気用の圧力調整弁31およびエッチングガス排気用の圧力調整弁33を用いて、両者が同じ圧力を表示するよう圧力制御を続行する。
【0045】
(4)圧力調整
前述の手順後、圧力計32の表示値が、圧力計36の表示値に比べ若干高くなるように圧力調整弁31の開度調整によって圧力調整を行う。
この時の圧力計32の表示値は、ホットセル構造の従来装置の許容圧力から最適値が求められる。例えば、ホットセルの許容圧力の1/2程度が適切であると考えられる。本実施形態においては、内上部炉壁体6と内底部炉壁体7がホットセルを構成するので、内上部炉壁体6と内底部炉壁体7が構成するホットセルの許容圧力に対し、1/2程度の圧力が適切である。一例として、内上部炉壁体6と内底部炉壁体7が構成するホットセルの許容圧力が10~20kPaの場合、安全率を約2として、5~10kPa程度に設定することが好ましい。
【0046】
(5)エッチングガス供給
前述の手順後、ガス供給源30から供給されているパージガスの一部をエッチングガスに置き換える。つまり、(2)~(4)の手順でガス供給源30から供給されているガス総流量を変更せずに、ガス流量を一定に保つように設定したままエッチングガスの割合を増加し、パージガス量を減少させる。エッチングガスは、HCl、Clなどの塩素系のガスを用いることができる。
【0047】
第1の加熱手段11と第2の加熱手段22を用いて密閉空間Bを1000℃程度のエッチングに望ましい温度になるように温度調整する。これに対し、外上部炉壁体2と外底部炉壁体3については、それより低い温度でも良いので、外上部炉壁体2と外底部炉壁体3に図示略の冷却機構などを設けたコールドウォール構造にすることができる。
ここで、すでに密閉空間Bにエッチングガスを導入していることから、洗浄対象物20、21に付着していた窒化ガリウムなどの反応副生成物をエッチングにより除去することができる。
圧力計32の表示値が、圧力計36の表示値に比べ高くなるように圧力制御を行うと、密閉空間Bよりも密閉空間Aを高い圧力状態を維持できる。例えば、密閉空間Bを4~8kPa程度とする場合、密閉空間Aを9~18kPa程度の高い圧力とすることができる。
これにより、エッチングガスが密閉空間Bから密閉空間Aに漏れ出ない状態を維持しつつ、エッチングによる洗浄処理を実施できる。このため、エッチングガスの漏れ出しにより密閉空間Aを構成する外上部炉壁体2と外底部炉壁体3の内面側に反応副生成物の構成元素が出ることはない。このため、外上部炉壁体2と外底部炉壁体3の内面側に反応副生成物の構成元素に起因する化合物の不要な析出などを引き起こすことなく洗浄処理ができる。洗浄対象物20に反応副生成物として窒化ガリウムが付着している場合、ガリウムを含むエッチングガスが漏れ出た場合、温度の低い領域に、塩化ガリウムが析出する可能性がある。
【0048】
反応副生成物が塩化ガリウムの場合、その沸点は201℃である。よって、内上部炉壁体6と内底部炉壁体7が構成する内壁体8の内側空間はこの沸点を超える充分高い温度に加熱する必要がある。
前述のように高温に加熱しながら密閉空間Bの圧力を密閉空間Aの圧力より低くなるように圧力制御し、密閉空間Bからのガスの漏れ出しを防止しつつ、エッチングガスによる洗浄作業を行うことが好ましい。
【0049】
(6)エッチングガスの排気
洗浄対象物20、21のエッチング完了後、(5)の手順とは逆に、ガス供給源30から供給されているガス総流量を変更せずにエッチングガスの供給量を減少させ、パージガスガスの供給量を増加する。その後、炉内に残留しているエッチングガスを完全に除去するまでパージ状態を保持する。
【0050】
(7)圧力調整
(4)の手順とは逆に、圧力計32と圧力計36をそれぞれ圧力調整弁31および圧力調整弁33を用いて、同じ圧力表示値となるようにパージガスの圧力を制御する。
【0051】
(8)ホットセルの開動作
(7)に記載の圧力調整の手順後、圧力計32の表示値が、圧力計36の表示値と同じ設定値になるように、圧力設定値を徐々に減少させ、圧力調整弁31の開度を調整する。
その後、内上部炉壁体6と内底部炉壁体7の間に隙間ができるように両者の上下間隔をあける操作を行う。例えば、直動装置17の動作により図5に示すように内底部炉壁体7を下降させる操作を行う。また、第1の加熱手段11と第2の加熱手段22による加熱を停止する。
以上のように内上部炉壁体6と内底部炉壁体7の間に隙間ができると、密閉空間Bが開放されて密閉空間Aと連通するので、内上部炉壁体6と内底部炉壁体7を素早く冷却することができ、冷却時間を短縮できる。また、ガス供給源29、30からパージガスを供給可能な最大供給圧で供給することで内上部炉壁体6と内底部炉壁体7の冷却時間を更に短縮することができる。
【0052】
(9)圧力調整
内上部炉壁体6と内底部炉壁体7の間にある洗浄対象物20を洗浄装置1の外へ搬出するために、外壁体5の内部圧力(リアクタの内部圧力)を大気圧とする。この時、圧力計32、36の圧力表示値は同じ値とし、減圧状態から徐々に圧力が増加するように、それぞれの圧力調整弁31、33の開度を調整し、大気圧へ調整する。
【0053】
(10)次の洗浄作業
大気圧への調整後、外上部炉壁体2と内上部炉壁体6を図4に示すように上昇させて外底部炉壁体3と内底部炉壁体7から離間し、これらの温度が所定の温度まで下がったならば、図4に示す状態に戻るので、洗浄後の洗浄対象物20を取り出すことができる。
ここで、次の洗浄対象物を準備し、以降同様の手順を繰り返すことにより洗浄対象物を順次洗浄することができる。内上部炉壁体6と内底部炉壁体7の温度が200℃程度まで低下したならば、搬送ロボットなどを利用し、洗浄対象物の交換を実施することが好ましい。
【0054】
以上説明したように洗浄対象物20、21を洗浄処理する場合、第1の加熱手段11と第2の加熱手段22により、内上部炉壁体6と内底部炉壁体7の内側の密閉空間Bのみをエッチングに望ましい温度に加熱するとエッチングによる洗浄処理を実施できる。
従来のこの種の装置では、装置全体をエッチングに望ましい温度に加熱する必要があったが、そのような従来装置と比較し、内上部炉壁体6と内底部炉壁体7の冷却完了に必要な時間に対応する冷却時間で次の洗浄処理操作に移ることができる。
また、エッチング完了後、エッチングガスを密閉空間Bから排除した後、内上部炉壁体6と内底部炉壁体7の隙間を開けて前述のように素早い冷却を実施し、冷却時間を短縮できる。
これらにより、洗浄対象物20の洗浄開始から洗浄終了、次の洗浄対象物への交換までの1バッチ当たりの所要時間を大幅に短縮できる。
【0055】
例えば、本願出願人は、特許文献1に記載されている洗浄装置を生産している。
この装置であると、洗浄対象物を収容し、各種ガスの導入、ドーム部全体の加熱、洗浄処理、洗浄処理終了後の各種ガスの排気と降温により、次の洗浄対象物を搬入できる初期状態とするまでの1バッチ当たりの所要時間が15時間必要となる。
これに対し、図1図7を基に説明した洗浄装置1を用いて同等の処理条件(エッチング時間、エッチング温度、エッチングガス種同等条件)による洗浄対象物の洗浄処理を実施した場合、1バッチあたりの所要時間を5.5時間に短縮できる。
このことから、図1図7を基に説明した洗浄装置1を用いて上述のように洗浄することで、洗浄処理1バッチ当たりの所要時間を特許文献1に記載の洗浄装置に対し、半分以下程度に大幅に短縮することができる。
【符号の説明】
【0056】
A、B…密閉空間、1…洗浄装置、2…外上部炉壁体、2a…パージガス供給口、
3…外底部炉壁体、5…外壁体、6…内上部炉壁体、7…内底部炉壁体、
8…内壁体、11…加熱手段、13…ベース部材、
15…ガスノズル、15A…内管、15B…外管、
16…支柱部材、17…直動装置、18…蛇腹部材、20…第1の洗浄対象物、
21…第2の洗浄対象物、22…加熱手段、24…第1ガス供給手段、
25…パージガス供給管、26…パージガス排気管(第1ガス排気手段)、
27…ガス供給管、28…ガス排気管、29…パージガス供給源、30…ガス供給源、
31…圧力調整弁、32…圧力計、34…第2ガス供給手段、
P…ドライポンプ、36…圧力計、38…第2ガス排気手段。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7