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特開2025-15921アンテナの配置を決定する方法、装置、及びプログラム、並びに物体検出システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025015921
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】アンテナの配置を決定する方法、装置、及びプログラム、並びに物体検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/12 20060101AFI20250124BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
G01V3/12 A
H01Q21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118826
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大槻 信也
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
(72)【発明者】
【氏名】牟田 修
【テーマコード(参考)】
2G105
5J021
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB11
2G105DD02
2G105EE02
2G105HH04
5J021AA05
5J021HA05
(57)【要約】
【課題】高い精度での物体検出を可能とするアンテナ配置を少ない負荷で決定できるようにする。
【解決手段】本開示の方法は、複数のアンテナ4を有するAP(第一の無線装置)とSTA(第二の無線装置)6とを用いて物体を検出するシステムにおけるアンテナの配置を決定する方法である。本開示の方法によれば、まず、物体の検出を行う対象領域が複数の小領域に仮想的に分割される。次に、アンテナ4を配置可能な位置の中からアンテナ4の位置候補の組み合わせが選択される。そして、STA6の位置とアンテナ4の位置候補との間の電波の経路上にある小領域の数に基づいてスコアが計算される。最後に、スコアが最大となるアンテナ4の位置候補の組み合わせがアンテナ4を配置する位置の組み合わせに決定される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナを有する第一の無線装置と、前記第一の無線装置と無線通信を行う第二の無線装置とを用いて物体を検出するシステムにおける前記複数のアンテナの配置を決定するアンテナ配置決定方法であって、
前記物体の検出を行う対象領域を複数の小領域に仮想的に分割することと、
前記複数のアンテナを配置可能な位置の中から前記複数のアンテナの位置候補の組み合わせを選択することと、
前記第二の無線装置の位置と前記複数のアンテナの位置候補との間の電波の経路上にある小領域の数に基づいてスコアを計算することと、
前記スコアが最大となる前記複数のアンテナの位置候補の組み合わせを前記複数のアンテナを配置する位置の組み合わせに決定することと、を含む
ことを特徴とするアンテナ配置決定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ配置決定方法において、
前記スコアを計算することは、前記第二の無線装置の位置と前記複数のアンテナの位置候補との間の電波の経路毎にカウントされた経路上の小領域の合計数に基づいてスコアを計算することを含む
ことを特徴とするアンテナ配置決定方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアンテナ配置決定方法において、
前記スコアを計算することは、前記第二の無線装置の位置と前記複数のアンテナの位置候補との間の直接波の経路上にある小領域の数に基づいてスコアを計算することを含む
ことを特徴とするアンテナ配置決定方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のアンテナ配置決定方法において、
前記スコアを計算することは、前記第二の無線装置の位置と前記複数のアンテナの位置候補との間の直接波の経路上にある小領域の数と、前記第二の無線装置の位置と前記複数のアンテナの位置候補との間の反射波の経路上にある小領域の数とに基づいてスコアを計算することを含む
ことを特徴とするアンテナ配置決定方法。
【請求項5】
請求項4に記載のアンテナ配置決定方法において、
前記第二の無線装置の位置と前記複数のアンテナの位置候補との間での前記反射波の反射回数に応じて前記スコアを補正すること、をさらに含む
ことを特徴とするアンテナ配置決定方法。
【請求項6】
複数のアンテナを有する第一の無線装置と、前記第一の無線装置と無線通信を行う第二の無線装置とを用いて物体を検出するシステムにおける前記複数のアンテナの配置を決定するアンテナ配置決定装置であって、
前記物体の検出を行う対象領域を複数の小領域に仮想的に分割する処理と、
前記複数のアンテナを配置可能な位置の中から前記複数のアンテナの位置候補の組み合わせを選択する処理と、
前記第二の無線装置の位置と前記複数のアンテナの位置候補との間の電波の経路上にある小領域の数に基づいてスコアを計算する処理と、
前記スコアが最大となる前記複数のアンテナの位置候補の組み合わせを前記複数のアンテナを配置する位置の組み合わせに決定する処理と、を実行するように構成されている
ことを特徴とするアンテナ配置決定装置。
【請求項7】
複数のアンテナを有する第一の無線装置と、前記第一の無線装置と無線通信を行う第二の無線装置とを用いて物体を検出するシステムにおける前記複数のアンテナの配置を決定するためのプログラムであって、
前記物体の検出を行う対象領域を複数の小領域に仮想的に分割する処理と、
前記複数のアンテナを配置可能な位置の中から前記複数のアンテナの位置候補の組み合わせを選択する処理と、
前記第二の無線装置の位置と前記複数のアンテナの位置候補との間の電波の経路上にある小領域の数に基づいてスコアを計算する処理と、
前記スコアが最大となる前記複数のアンテナの位置候補の組み合わせを前記複数のアンテナを配置する位置の組み合わせに決定する処理と、をコンピュータに実行させるように構成されている
ことを特徴とするアンテナ配置決定プログラム。
【請求項8】
対象領域内の物体を検出する物体検出システムであって、
複数のアンテナを有する第一の無線装置と、
前記第一の無線装置と無線通信を行う第二の無線装置と
請求項6に記載のアンテナ配置決定装置と、を備え、
前記複数のアンテナは前記第二の無線装置の位置に対して前記アンテナ配置決定装置で決定された位置に配置されている、
ことを特徴とする物体検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電波を利用して物体を検出するシステムにおけるアンテナの配置を決定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
Wi-Fi等の電波を利用して物体の位置を推定する方法として、検出領域内の物体により変化するマルチパス波の状態(CSI:Chanel State Information)に基づき物体の検出を行う方法が知られている。例えば、特許文献1には、物体の位置をラベルにして対応するCSIとともに教師データを作成し、その教師データを用いた機械学習により学習モデルを生成し、その学習モデルにCSIを入力して対象領域内の物体を検出する方法が提案されている。
【0003】
図10及び図11は特許文献1に開示されている従来方法の適用例を示す。この適用例では、物体の検出を行う対象領域は縦に八分割、横に四分割されて合計三十二の小領域に分割されている。そして、前述の従来方法にて1番から32番までのどの小領域に物体が存在するかが推定される。なお、この適用例では、無線方式としてIEEE802.11ac以降(ac/ax/be等)の規格の無線LANが利用されている。また、一つのアクセスポイント(AP)と一つの端末(STA)との間のCSIが物体検出に利用されている。APは四つのアンテナを備えている。STAが具備するアンテナ数は一つである。
【0004】
この適用例では、アンテナを配置する位置として、対象領域の周囲に丸数字で示す1番から12番までの十二の位置候補が設定されている。これら十二の位置後方の中から選択された四つの位置にアンテナが配置される。物体の検出精度は四つのアンテナの位置の組み合わせによって変化する。この適用例では、四つのアンテナの位置の組み合わせ全495通りについて、計算機を用いたシミュレーションにより検出精度が計算された。図10は検出精度が高いアンテナの配置上位10通りを示し、図11は検出精度が低いアンテナの配置下位10通りを示している。
【0005】
上記の適用例によれば、アンテナの位置候補の全ての組み合わせの間で検出精度が比較されるので、高い精度で物体を検出可能なアンテナ配置を決定することができる。しかし、膨大な数のアンテナの配置パターンの全てについて、レイトレース等のシミュレーションや実物での実験を行うとなると、それに要する負荷は非常に大きなものとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-034878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたものである。本開示は、高い精度での物体検出を可能とするアンテナ配置を少ない負荷で決定することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は上記目的を達成するための方法を提供する。本開示の方法は複数のアンテナを有する第一の無線装置と、第一の無線装置と無線通信を行う第二の無線装置とを用いて物体を検出するシステムにおけるアンテナの配置を決定する方法である。本開示の方法は以下の第一乃至第四のステップを含む。第一のステップは、物体の検出を行う対象領域を複数の小領域に仮想的に分割するステップである。第二のステップは、アンテナを配置可能な位置の中からアンテナの位置候補の組み合わせを選択するステップである。第三のステップは、第二の無線装置の位置と各アンテナの位置候補との間の電波の経路上にある小領域の数に基づいてスコアを計算するステップである。第四のステップは、スコアが最大となるアンテナの位置候補の組み合わせをアンテナの配置位置の組み合わせに決定するステップである。
【0009】
本開示は上記目的を達成するための装置を提供する。本開示の装置は複数のアンテナを有する第一の無線装置と、第一の無線装置と無線通信を行う第二の無線装置とを用いて物体を検出するシステムにおけるアンテナの配置を決定する装置である。本開示の装置は以下の第一乃至第四の処理を実行するように構成されている。第一の処理は、物体の検出を行う対象領域を複数の小領域に仮想的に分割する処理である。第二の処理は、アンテナを配置可能な位置の中からアンテナの位置候補の組み合わせを選択する処理である。第三の処理は、第二の無線装置の位置と各アンテナの位置候補との間の電波の経路上にある小領域の数に基づいてスコアを計算する処理である。第四の処理は、スコアが最大となるアンテナの位置候補の組み合わせをアンテナの配置位置の組み合わせに決定する処理である。
【0010】
また、本開示は上記目的を達成するためのプログラムを提供する。本開示のプログラムは複数のアンテナを有する第一の無線装置と、第一の無線装置と無線通信を行う第二の無線装置とを用いて物体を検出するシステムにおけるアンテナの配置を決定するためのプログラムである。本開示のプログラムは以下の第一乃至第四の処理をコンピュータに実行させるように構成されている。第一の処理は、物体の検出を行う対象領域を複数の小領域に仮想的に分割する処理である。第二の処理は、アンテナを配置可能な位置の中からアンテナの位置候補の組み合わせを選択する処理である。第三の処理は、第二の無線装置の位置と各アンテナの位置候補との間の電波の経路上にある小領域の数に基づいてスコアを計算する処理である。第四の処理は、スコアが最大となるアンテナの位置候補の組み合わせをアンテナの配置位置の組み合わせに決定する処理である。
【0011】
さらに、本開示は上記のアンテナ配置決定装置を用いたシステムを提供する。本開示のシステムは対象領域内の物体を検出するシステムである。本開示のシステムは複数のアンテナを有する第一の無線装置と、第一の無線装置と無線通信を行う第二の無線装置と、上記のアンテナ配置決定装置とを備える。本開示のシステムでは、アンテナは第二の無線装置の位置に対して上記のアンテナ配置決定装置で決定された位置に配置されている。
【発明の効果】
【0012】
本開示の技術では、第二の無線装置の位置と各アンテナの位置候補との間の電波の経路上にある小領域の数がカウントされる。そして、その数に基づき計算されるスコアを最大とするアンテナの位置候補の組み合わせがアンテナの配置位置の組み合わせとして決定される。このような方法によれば、高い精度での物体検出が可能なアンテナ配置を少ない負荷で決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】アンテナ配置決定装置の実施形態を説明する図である。
図2】アンテナ配置決定方法の第一実施形態の概要を説明する図である。
図3】アンテナ配置決定方法の第一実施形態の効果を説明するである。
図4】アンテナ配置決定方法の第一実施形態の詳細を示すフロー図である。
図5】アンテナ配置決定方法の第二実施形態の概要を説明する図である。
図6】アンテナ配置決定方法の第二実施形態の効果を説明するである。
図7】アンテナ配置決定方法の第二実施形態の詳細を示すフロー図である。
図8】アンテナ配置決定方法の第三実施形態の概要を説明する図である。
図9】アンテナ配置決定方法の第三実施形態の詳細を示すフロー図である。
図10】シミュレーションによる検出率の評価について説明する図である。
図11】シミュレーションによる検出率の評価について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.アンテナ配置決定装置
まず、アンテナ配置決定装置の実施形態について図1を用いて説明する。アンテナ配置決定装置10は、第一の無線装置としてのアクセスポイント(AP)2と、AP2と無線通信を行う第二の無線装置としての端末(STA)6とともに物体検出システムを構成する。物体検出は、例えば、物体の検出を行う対象領域TA内の電波の状態を表すCSIに基づいて行われる。AP2が有する複数のアンテナ4は、STA6の位置に対してアンテナ配置決定装置10で決定された位置に配置される。
【0015】
アンテナ配置決定装置10は、入出力インタフェース11、プロセッサ12、プログラムメモリ13、及び情報メモリ15を備えるコンピュータである。プロセッサ12、プログラムメモリ13、及び情報メモリ15の各個数はそれぞれ複数でもよい。
【0016】
プロセッサ12は、CPU、RISC、DSP、FPGA、ASIC、PLD、又は別の処理ユニットであってもよいし、それらの二つ以上の組合せであってもよいし、アンテナ配置決定装置10のための専用プロセッサであってもよい。また、プロセッサ12はプログラムメモリ13及び情報メモリ15と通信可能に結合されてもよいし、プログラムメモリ13及び情報メモリ15を内蔵してもよい。
【0017】
プログラムメモリ13には、プロセッサ12で実行可能な複数のインストラクション14が記憶されている。それら複数のインストラクション14で構成されるプログラムはコンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体に記憶してもよいし、ネットワークを介して提供されてもよい。インストラクション14がプロセッサ12で実行されることによって、アンテナ配置決定装置10によってアンテナ配置決定方法が実施される。情報メモリ15にはアンテナ配置決定方法の実施に必要な各種情報が記憶される。
【0018】
入出力インタフェース11には、アンテナ配置の決定のための条件が入力される。入力される条件には、対象領域TAの形状と小領域への分割数、AP2のアンテナ4の数、アンテナ4を配置可能な位置、STA6の配置位置が含まれる。図1に示す例では、対象領域TAは縦に1番から32番までの三十二個の小領域に仮想的に分割されている。AP2のアンテナ4の数は四つであり、アンテナ4の位置候補としては丸数字で示す1番から12番までの十二の位置候補が設定されている。STA6は対象領域TAの外側で16番と17番の小領域の間に配置されている。
【0019】
インストラクション14は、入出力インタフェース11に入力された条件に基づいて、アンテナ配置を決定するための処理をプロセッサ12に実行させる。アンテナ配置決定装置10により実施されるアンテナ配置決定方法には、好ましい幾つかの実施形態が存在する。以下、アンテナ配置決定方法の実施形態について具体的に説明する。
【0020】
2.アンテナ配置決定方法
2-1.第一実施形態
図2はアンテナ配置決定方法の第一実施形態の概要を説明する図である。図2に示す例では、アンテナ4は5番から8番の位置候補に配置されている。
【0021】
第一実施形態では、アンテナ4とSTA6との間の電波の直接波が通過した小領域数がカウントされる。具体的には、各アンテナ4とSTA6とが直線で結ばれ、その直線が通っている小領域の数がカウントされる。図2に示す例では、数字が「0」となっている小領域は直接波が通過しない領域であり、数字が「1」となっている小領域は直接波が通過する領域である。対象領域を構成する全小領域の数値の合計値は、対応するアンテナ4の位置候補の組み合わせ(アンテナ4の配置パターンともいう)のスコアS1として算出される。図2に示す例では、5番、6番、7番、及び8番の位置候補の組み合わせのスコアS1は22点である。
【0022】
第一実施形態では、495通りのアンテナ4の位置候補の全ての組み合わせについて上記の処理が行われてスコアS1が算出される。そして、495通りのアンテナ4の位置候補の組み合わせのうちで、スコアS1が最大となる位置候補の組み合わせが実際にアンテナ4を配置する位置の組み合わせとして決定される。
【0023】
図3はスコアS1の値と物体の検出率との関係を示すグラフである。物体の検出率は実際の実験結果である。このグラフからは、全体としてスコアS1の値が大きいほど検出率が改善する傾向であることがわかる。つまり、スコアS1の値と検出精度との間には図3中に矢印線で示すような相関が存在する。そのような相関を根拠としてスコアS1が最大となる位置候補の組み合わせが選択される。このような方法によれば、シミュレーションや実験を行う場合に比較して非常に少ない負荷で、高い精度で物体を検出できるアンテナ配置を決定することができる。
【0024】
図4はアンテナ配置決定方法の第一実施形態の詳細を示すフロー図である。第一実施形態では、アンテナ配置決定装置10はこのフロー図に従って処理を実行する。なお、フロー図においてNareaは小領域の数を示し、Npはアンテナ4の配置パターンの数を示している。図2に示す例の場合、Narea=32、Np=495である。
【0025】
ステップS101は、ステップS102からステップS103までの処理を含む繰り返し処理である。1番からNp番までのアンテナ4の配置パターン毎にステップS102からステップS103までの処理が繰り返し実行される。
【0026】
ステップS102では、全てのアンテナ4とSTA6が直線で結ばれる。
【0027】
ステップS103は、ステップS104からステップS105までの処理を含む繰り返し処理である。1番からNarea番までの小領域毎にステップS104からステップS105までの処理が繰り返し実行される、
【0028】
ステップS104では、ステップS103で着目されている小領域上に直線が通っているかどうか判定される。当該小領域上に直線が通っていないのであれば、ステップS105の処理はスキップされ、当該小領域上に直線が通っていれば、ステップS105の処理は実行される。
【0029】
ステップS105では、スコアS1(i)に1の数値が加算される。スコアS1(i)は1番からNarea番までのうちのi番目の配置パターンのスコアを意味し、その初期値はゼロである。
【0030】
ステップS106は、ステップS101の条件の成立を受けて実行されるステップである。このステップでは、スコアS1(i)を最大にするアンテナ配置パターンが選択される。そのようなアンテナ配置パターンが複数存在する場合には、それら全てのアンテナ配置パターンが選択される。
【0031】
ステップS107では、ステップS106で選択されたアンテナ配置パターンが出力される。これにより、アンテナ配置決定装置10によるアンテナ配置決定方法は完了する。
【0032】
2-2.第二実施形態
図5はアンテナ配置決定方法の第二実施形態の概要を説明する図である。図5に示す例では、アンテナ4は5番から8番の位置候補に配置されている。
【0033】
第二実施形態では、アンテナ4とSTA6との間の直接波の経路毎にカウントされた経路上の小領域の合計数が計算される。具体的には、各アンテナ4とSTA6とが直線で結ばれ、その直線が通っている小領域の数の総和が計算される。図5に示す例では、数字が「0」となっている小領域は直接波が通過しない領域である。そして、数字が「1」となっている小領域は一本の直接波が通過する領域であり、数字が「2」となっている小領域は二本の直接波が通過する領域である。対象領域を構成する全小領域の数値の合計値は、対応するアンテナ4の位置候補の組み合わせ、すなわち、アンテナ4の配置パターンのスコアS2として算出される。図5に示す例では、5番、6番、7番、及び8番の位置候補の組み合わせのスコアS2は34点である。
【0034】
第一実施形態では、495通りのアンテナ4の位置候補の全ての組み合わせについて上記の処理が行われてスコアS2が算出される。そして、495通りのアンテナ4の位置候補の組み合わせのうちで、スコアS2が最大となる位置候補の組み合わせが実際にアンテナ4を配置する位置の組み合わせとして決定される。
【0035】
図6はスコアS2の値と物体の検出率との関係を示すグラフである。物体の検出率は実際の実験結果である。このグラフからは、全体としてスコアS2の値が大きいほど検出率が改善する傾向であることがわかる。つまり、スコアS2の値と検出精度との間には図6中に矢印線で示すような相関が存在する。そのような相関を根拠としてスコアS2が最大となる位置候補の組み合わせが選択される。このような方法によれば、シミュレーションや実験を行う場合に比較して非常に少ない負荷で、高い精度で物体を検出できるアンテナ配置を決定することができる。
【0036】
図7はアンテナ配置決定方法の第二実施形態の詳細を示すフロー図である。第二実施形態では、アンテナ配置決定装置10はこのフロー図に従って処理を実行する。なお、フロー図においてNareaは小領域の数を示し、Npはアンテナ4の配置パターンの数を示し、Nantはアンテナ4の数を示している。図7に示す例の場合、Narea=32、Np=495、Nant=4である。
【0037】
ステップS201は、ステップS202の処理を繰り返す繰り返し処理である。1番からNp番までのアンテナ4の配置パターン毎にステップS202の処理が繰り返し実行される。
【0038】
ステップS202は、ステップS203からステップS204までの処理を含む繰り返し処理である。1番からNant番までのアンテナ4毎にステップS203からステップS204までの処理が繰り返し実行される。
【0039】
ステップS203では、1番からNant番までのうちのj番目のアンテナ4とSTA6が直線で結ばれる。
【0040】
ステップS204は、ステップS205からステップS206までの処理を含む繰り返し処理である。1番からNarea番までの小領域毎にステップS205からステップS206までの処理が繰り返し実行される、
【0041】
ステップS205では、ステップS204で着目されている小領域上に直線が通っているかどうか判定される。当該小領域上に直線が通っていないのであれば、ステップS206の処理はスキップされ、当該小領域上に直線が通っていれば、ステップS206の処理は実行される。
【0042】
ステップS206では、スコアS2(i)に1の数値が加算される。スコアS2(i)は1番からNarea番までのうちのi番目の配置パターンのスコアを意味し、その初期値はゼロである。
【0043】
ステップS207は、ステップS201の条件の成立を受けて実行されるステップである。このステップでは、スコアS2(i)を最大にするアンテナ配置パターンが選択される。そのようなアンテナ配置パターンが複数存在する場合には、それら全てのアンテナ配置パターンが選択される。
【0044】
ステップS208では、ステップS207で選択されたアンテナ配置パターンが出力される。これにより、アンテナ配置決定装置10によるアンテナ配置決定方法は完了する。
【0045】
2-3.第三実施形態
図8はアンテナ配置決定方法の第三実施形態の概要を説明する図である。第三実施形態では、物体の検出に影響する電波として直接波だけでなく反射波も考慮される。ここでは最大反射2回までの場合を想定し、直接波(k=1)、1回反射波(k=2)、2回反射波(k=3)の各場合においてイメージング法により電波が通過するエリアを決定する方法を記載している。
【0046】
イメージング法では、直接波用の中央の対象領域の左右に1回反射波用の対象領域を記載する。その際に小領域の配置(小領域の番号の配置)を左右反転させる。また、1回反射波用の対象領域の右もしくは左に2回反射波用の対象領域を記載する。この場合はさらに小領域の配置を左右反転させる。そして、各対象領域に対応するSTAを記載し、中央の対象領域に設定されているアンテナの位置候補から各対象領域のSTAまでを直線で結合する。一例として、図8では5番の位置候補と各対象領域のSTAとを結ぶ直線が引かれている。実線が直接波であり、点線が1回反射波であり、破線が2回反射波である。なお、図8に示す例では電波は左右の壁で反射するため対象領域を左右に展開しているが、電波が上下の壁で反転する場合は対象領域を上下に配置して上下反転させる。
【0047】
第三実施形態では、それぞれの直線が通る小領域の数がカウントされる。図8に示す例では、直接波(k=1)は25番、26番、27番、22番、21番、20番、19番、18番、及び17番の合計九つの小領域を通過している。スコアS3の計算では、直接波が通過した小領域の数に直接波用の係数Aを乗算して得られる値がスコアS3に加算される。なお、直接波用の係数Aの値は1としてよい。
【0048】
左の1回反射波(k=2)は25番、26番、27番、28番、29番、19番、18番、及び17番の合計八つの小領域を通過している。右の1回反射波(k=2)は25番、24番、23番、22番、11番、12番、5番、4番、3番、2番、15番、及び16番の合計十二の小領域を通過している。スコアS3の計算では、1回反射波が通過した小領域の数に1回反射波用の係数Aを乗算して得られる値がスコアS3に加算される。なお、1回反射波用の係数Aの値は直接波用の係数Aの値よりも小さい。
【0049】
左の2回反射波(k=3)は25番、26番、23番、22番、21番、12番、13番、4番、3番、2番、15番、及び16番の合計十二の小領域を通過している。右の2回反射波(k=3)は25番、24番、23番、10番、6番、5番、12番、13番、20番、19番、30番、31番、32番、及び17番の合計十四の小領域を通過している。スコアS3の計算では、2回反射波が通過した小領域の数に2回反射波用の係数Aを乗算して得られる値がスコアS3に加算される。なお、2回反射波用の係数Aの値は1回反射波用の係数Aの値よりも小さい。
【0050】
以上のような計算がアンテナ4の他の三つの位置候補についても行われて、アンテナ4の位置候補の組み合わせ、すなわち、アンテナ4の配置パターンのスコアS3が算出される。そして、495通りのアンテナ4の位置候補の組み合わせのうちで、スコアS3が最大となる位置候補の組み合わせが実際にアンテナ4を配置する位置の組み合わせとして決定される。第三実施形態の方法によれば、直接波だけでなく反射波も考慮することで、より高い精度で物体を検出できるアンテナ配置を決定することができる。
【0051】
図8に示す例では、一回反射波と二回反射波を考慮しているが、一回反射波のみを考慮することでもよいし、三回反射波を含むより多くの反射波を考慮してもよい。各反射波の係数Aの値ついては、例えば壁の材質に応じて決定してもよい。また、左右で同じ値を用いてもよいし、左右で壁の材質が異なる場合は異なる値としてもよい。また、反射波が同じ小領域を重複して通過する場合、重複してカウントするのではなく1回通過とカウントしてもよい。例えば、図8に示す例では左右の1回反射波は25番の小領域を通過しているが、2回とカウントするのではなく1回とカウントしてもよい。
【0052】
図9はアンテナ配置決定方法の第三実施形態の詳細を示すフロー図である。第三実施形態では、アンテナ配置決定装置10はこのフロー図に従って処理を実行する。なお、フロー図においてNareaは小領域の数を示し、Npはアンテナ4の配置パターンの数を示し、Nantはアンテナ4の数を示し、Nkは電波の反射回数を示している。図9に示す例の場合、Narea=32、Np=495、Nant=4、Nk=3である。
【0053】
ステップS301は、ステップS302の処理を繰り返す繰り返し処理である。1番からNp番までのアンテナ4の配置パターン毎にステップS302の処理が繰り返し実行される。
【0054】
ステップS302は、ステップS303の処理を繰り返す繰り返し処理である。1番からNant番までのアンテナ4毎にステップS303の処理が繰り返し実行される。
【0055】
ステップS303は、ステップS304からステップS305までの処理を含む繰り返し処理である。ステップS304からステップS305までの処理がNk回繰り返し実行される。
【0056】
ステップS304では、1番からNant番までのうちのj番目のアンテナ4とSTA6が壁で(k-1)回反射した電波を示す直線で結ばれる。
【0057】
ステップS305は、ステップS306の処理を繰り返す繰り返し処理である。ステップS304で引かれたJ本の直線のそれぞれについてステップS306の処理が繰り返し実行される。
【0058】
ステップS306は、ステップS307からステップS308までの処理を含む繰り返し処理である。1番からNarea番までの小領域毎にステップS307からステップS308までの処理が繰り返し実行される、
【0059】
ステップS307では、ステップS306で着目されている小領域上に直線が通っているかどうか判定される。当該小領域上に直線が通っていないのであれば、ステップS308の処理はスキップされ、当該小領域上に直線が通っていれば、ステップS308の処理は実行される。
【0060】
ステップS308では、スコアS3(i)に1×Aの数値が加算される。スコアS3(i)は1番からNarea番までのうちのi番目の配置パターンのスコアを意味し、その初期値はゼロである。
【0061】
ステップS309は、ステップS301の条件の成立を受けて実行されるステップである。このステップでは、スコアS3(i)を最大にするアンテナ配置パターンが選択される。そのようなアンテナ配置パターンが複数存在する場合には、それら全てのアンテナ配置パターンが選択される。
【0062】
ステップS310では、ステップS309で選択されたアンテナ配置パターンが出力される。これにより、アンテナ配置決定装置10によるアンテナ配置決定方法は完了する。
【符号の説明】
【0063】
2 AP(第一の無線装置)
4 アンテナ
6 STA(第二の無線装置)
10 アンテナ配置決定装置
図1
図2
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図11