(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016014
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】成形物の製造方法及び接着性成形物
(51)【国際特許分類】
C08J 5/00 20060101AFI20250124BHJP
C08L 27/18 20060101ALI20250124BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20250124BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20250124BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20250124BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20250124BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
C08J5/00 CEW
C08L27/18
C08J5/04
B32B27/30 D
B05D7/24 301E
B05D3/02 Z
B05D3/00 D
B05D3/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119004
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】結城 創太
(72)【発明者】
【氏名】寺田 達也
【テーマコード(参考)】
4D075
4F071
4F072
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
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4J002HA06
(57)【要約】
【課題】ポリテトラフルオロエチレン及び特定のテトラフルオロエチレン系ポリマーを含み、ポリテトラフルオロエチレンのフィブリル構造に基づく繊維状の表面物性及び接着性を備え、クラックが生じにくく耐熱性、耐候性、電気特性等に優れる緻密な成形物の製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリテトラフルオロエチレンの粒子と、熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、液状媒体とを含む分散液を配置し、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度超の温度域にて加熱して、前記ポリテトラフルオロエチレン及び前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む成形物を得る、成形物の製造方法であって、
前記加熱後に、少なくとも前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度以下まで、5℃/分未満の降温速度で降温させる、製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラフルオロエチレンの粒子と、熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、液状媒体とを含む分散液を配置し、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度超の温度域にて加熱して、前記ポリテトラフルオロエチレン及び前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む成形物を得る、成形物の製造方法であって、
前記加熱後に、少なくとも前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度以下まで、5℃/分未満の降温速度で降温させる、製造方法。
【請求項2】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度が、230~320℃である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、カルボニル基含有基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマーである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ポリテトラフルオロエチレンの粒子の平均粒子径が0.01~10μmであり、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の平均粒子径が0.05~50μmであり、前者の平均粒子径が後者の平均粒子径以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記分散液における前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレンの粒子に対して、5質量%以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記加熱後に、少なくとも[前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度-10℃]まで、前記5℃/分未満の降温速度を維持する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記分散液が、さらに界面活性剤を含有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記分散液が、さらに無機フィラーを含有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記液状媒体が、水、アミド、ケトンおよびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記分散液を基材の表面に塗布して配置し、基材層と、ポリマー層とを有する積層体を形成する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
前記ポリマー層の厚さが25μm以上である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記分散液を繊維基材に含浸させて配置し、繊維基材にポリマーが含浸した含浸基材を形成する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
ポリテトラフルオロエチレンと、熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーとを含む接着性成形物であって、実質的にその全表面が、繊維状の表面物性を有する接着性成形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形物の製造方法に関する。詳細には、本発明は、ポリテトラフルオロエチレン及び熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーを含む、積層体やプリプレグ等の成形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)のコポリマー(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー(FEP)等のテトラフルオロエチレン系ポリマーは、離型性、電気特性、撥水撥油性、耐薬品性、耐候性、耐熱性等の物性に優れており、その物性を活用して、種々の産業用途に利用されている。
テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子が液状分散媒中に分散した分散液は、各種基材の表面に塗布すれば、その表面にテトラフルオロエチレン系ポリマーの物性を付与できるため、有用である。
特許文献1には、テトラフルオロエチレンに基づく単位及び酸素含有極性基を有する第1のポリマーのパウダーと、フルオロオレフィンに基づく単位を含む第2のポリマーのパウダーとを含み、第1のポリマーと第2のポリマーを所定含有量比で含む分散液が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で提案される分散液より得られる成形物は、ポリテトラフルオロエチレンのフィブリル構造に基づく繊維状の表面物性及び接着性を備える。本発明者らは、特許文献1で提案される分散液より得られる成形物の性状及び物性に関し、より詳細に検討した結果、成形物の表面に局所的に熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーが露出したり偏在した部位が発生する場合があり、成形物の繊維状の表面物性には改善の余地があることを知見した。
そこで、本発明者らは、ポリテトラフルオロエチレンの粒子及び熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と液状分散媒とを含む分散液の基材表面への塗工、及びポリマー焼成の工程に着目して検討した。その結果、ポリマー焼成後の降温状態、具体的には降温速度を特定条件に制御すると、ポリテトラフルオロエチレンのフィブリル構造に基づく繊維状の表面物性及び接着性を備え、かつ厚い層を形成してもクラックが生じにくく、耐熱性、耐候性、電気特性等に優れる緻密な成形物が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明の目的は、ポリテトラフルオロエチレン及び特定のテトラフルオロエチレン系ポリマーを含み、ポリテトラフルオロエチレンのフィブリル構造に基づく繊維状の表面物性及び接着性を備え、クラックが生じにくく耐熱性、耐候性、電気特性等に優れる緻密な成形物を形成できる製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記の態様を有する。
〔1〕 ポリテトラフルオロエチレンの粒子と、熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、液状媒体とを含む分散液を配置し、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度超の温度域にて加熱して、前記ポリテトラフルオロエチレン及び前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む成形物を得る、成形物の製造方法であって、前記加熱後に、少なくとも前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度以下まで、5℃/分未満の降温速度で降温させる、製造方法。
〔2〕 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度が、230~320℃である、〔1〕の製造方法。
〔3〕 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、カルボニル基含有基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマーである、〔1〕又は〔2〕の製造方法。
〔4〕 前記ポリテトラフルオロエチレンの粒子の平均粒子径が0.01~10μmであり、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の平均粒子径が0.05~50μmであり、前者の平均粒子径が後者の平均粒子径以下である、〔1〕~〔3〕のいずれかの製造方法。
〔5〕 前記分散液における前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレンの粒子に対して、5質量%以上である、〔1〕~〔4〕のいずれかの製造方法。
〔6〕 前記加熱後に、少なくとも[前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度-10℃]まで、前記5℃/分未満の降温速度を維持する、〔1〕~〔5〕のいずれかの製造方法。
〔7〕 前記分散液が、さらに界面活性剤を含有する、〔1〕~〔6〕のいずれかの製造方法。
〔8〕 前記分散液が、さらに無機フィラーを含有する、〔1〕~〔7〕のいずれかの製造方法。
〔9〕 前記液状媒体が、水、アミド、ケトンおよびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、〔1〕~〔8〕のいずれかの製造方法。
〔10〕 前記分散液を基材の表面に塗布して配置し、基材層と、ポリマー層とを有する積層体を形成する、〔1〕~〔9〕のいずれかの製造方法。
〔11〕 前記ポリマー層の厚さが25μm以上である、〔10〕の製造方法。
〔12〕 前記分散液を繊維基材に含浸させて配置し、繊維基材にポリマーが含浸した含浸基材を形成する、〔1〕~〔9〕のいずれかの製造方法。
〔13〕 ポリテトラフルオロエチレンと、熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーとを含む接着性成形物であって、実質的にその全表面が、繊維状の表面物性を有する接着性成形物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ポリテトラフルオロエチレン及び熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーを含み、ポリテトラフルオロエチレンのフィブリル構造に基づく繊維状の表面物性及び接着性を備え、クラックが生じにくく耐熱性、耐候性、電気特性等に優れる緻密な成形物を形成できる、製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の用語は、以下の意味を有する。
「平均粒子径(D50)」は、レーザー回折・散乱法によって求められる、粒子又はフィラーの体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、粒子又はフィラーの集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
粒子又はフィラーのD50は、粒子を水中に分散させ、レーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA-920測定器)を用いたレーザー回折・散乱法により分析して求められる。
粒子又はフィラーの「D90」は、上記D50と同様にして測定される、粒子又はフィラーの体積基準累積90%径である。
「溶融温度」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定したポリマーの融解ピークの最大値に対応する温度である。
「ガラス転移温度(Tg)」は、動的粘弾性測定(DMA)法でポリマーを分析して測定される値である。
「粘度」は、B型粘度計を用いて、25℃で回転数が30rpmの条件下で分散液を測定して求められる。測定を3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
「チキソ比」とは、分散液の、回転数が30rpmの条件で測定される粘度η1を、回転数が60rpmの条件で測定される粘度η2で除して算出される値である。それぞれの粘度の測定は、3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
ポリマーにおける「単位」とは、モノマーの重合により形成された前記モノマーに基づく原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。以下、モノマーaに基づく単位を、単に「モノマーa単位」とも記す。
【0008】
本発明の製造方法(以下、「本法」とも記す。)は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の粒子(以下、「PTFE粒子」とも記す。)と、熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、「Fポリマー」とも記す。)の粒子(以下、「F粒子」とも記す。)と、液状媒体とを含む分散液(以下、「本分散液」とも記す。)を配置し、前記Fポリマーの溶融温度超の温度域にて加熱して、前記PTFE及び前記Fポリマーを含む成形物を得る、成形物の製造方法であって、前記加熱後に、少なくとも前記Fポリマーの溶融温度以下まで、5℃/分未満の降温速度で降温させる、製造方法である。
本法によれば、PTFE及びFポリマーを含み、PTFEのフィブリル構造に基づく繊維状の表面物性及び接着性を備え、クラックが生じにくく耐熱性、耐候性、電気特性等に優れる緻密な成形物を形成できる。その理由は必ずしも明確ではないが、以下の様に考えられる。
【0009】
本法では、本分散液を配置して形成した塗工層を所定の温度域で加熱して、液状媒体を除去し、PTFE粒子及びFポリマー粒子を焼成してPTFE及びFポリマーを含む成形物を得る際に、加熱後に、少なくともFポリマーの溶融温度以下まで、5℃/分未満の降温速度で降温させる。すなわち、ポリマー焼成後の降温速度が所定の範囲で制御されることで降温が緩やかとなり、溶融したFポリマーが流動又は軟化した状態が保持されるため、急激な固化が抑制されやすくなる。かかる急激な固化の抑制によってPTFEとFポリマーの相互作用が促進されやすくなり、Fポリマーが成形物の表面にブリードアウトして、局所的に露出したり偏在したりすることが妨げられると推測される。その結果、表面にFポリマーがブリードアウトすることなく、緻密なPTFEの繊維状の表面物性を有する成形物が得られたと考えられる。
このように、本法で得られる成形物は表面全体においてPTFEのフィブリル構造に基づく繊維状の表面物性を有すると共に接着性を備え、また、緻密でクラックが生じにくく耐熱性、耐候性、電気特性等に優れる。さらにPTFEの物性に基づく、成形物表面における低摩擦性も保持されやすい。
そのため本法は、成形物にFポリマーを充分に含有させ、上記した物性に加えて、曲げ性等の力学的物性を高めたい場合に特に有用である。
【0010】
本発明において、Fポリマーは、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」とも記す。)に基づく単位(以下、「TFE単位」とも記す。)を含む、熱溶融性のポリマーである。ここで、熱溶融性のポリマーとは、荷重49Nの条件下、溶融流れ速度が1~1000g/10分となる温度が存在するポリマーを意味する。
Fポリマーの溶融温度は、230℃以上が好ましく、260℃以上がさらに好ましい。Fポリマーの溶融温度は、320℃以下が好ましく、315℃以下がより好ましい。この場合、本法で用いる本分散液が加工性に優れやすく、また、本分散液から形成されるポリマー層等の成形物が耐熱性に優れやすい。
Fポリマーは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0011】
Fポリマーのガラス転移温度は、60℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。Fポリマーのガラス転移温度は、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。
Fポリマーのフッ素含有量は、70質量%以上が好ましく、72~76質量%がより好ましい。
Fポリマーの表面張力は、16~26mN/mが好ましい。なお、Fポリマーの表面張力は、Fポリマーで作製された平板上に、JIS K 6768に規定されているぬれ張力試験用混合液(和光純薬社製)の液滴を載置して測定できる。
【0012】
Fポリマーは、TFE単位とエチレンに基づく単位とを含むポリマー(ETFE)、TFE単位とプロピレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)に基づく単位(PAVE単位)とを含むポリマー(PFA)、TFE単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく単位とを含むポリマー(FEP)が好ましく、PFA及びFEPがより好ましく、PFAがさらに好ましい。これらのポリマーは、さらに他のコモノマーに基づく単位を含んでいてもよい。
PAVEは、CF2=CFOCF3、CF2=CFOCF2CF3及びCF2=CFOCF2CF2CF3(以下、「PPVE」とも記す。)が好ましく、PPVEがより好ましい。
【0013】
Fポリマーの少なくとも1種は、酸素含有極性基を有するのが好ましく、水酸基含有基又はカルボニル基含有基を有するのがより好ましく、カルボニル基含有基を有するのがさらに好ましい。
この場合、本法で用いる本分散液が分散性に優れやすい。また、かかる分散液から形成されるポリマー層等の成形物が、耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率及び低誘電正接)等の物性に優れやすい。
水酸基含有基は、アルコール性水酸基を含有する基が好ましく、-CF2CH2OH及び-C(CF3)2OHがより好ましい。
カルボニル基含有基は、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、イソシアネート基、カルバメート基(-OC(O)NH2)、酸無水物残基(-C(O)OC(O)-)、イミド残基(-C(O)NHC(O)-等)、ホルミル基、ハロゲノホルミル基、ウレタン基(-NHC(O)O-)、カルバモイル基(-C(O)-NH2)、ウレイド基(-NH-C(O)-NH2)、オキサモイル基(-NH-C(O)-C(O)-NH2)及びカーボネート基(-OC(O)O-)が好ましく、酸無水物残基がより好ましい。
Fポリマーが酸素含有極性基を有する場合、Fポリマーにおける酸素含有極性基の数は、主鎖の炭素数1×106個あたり、50~5000個が好ましく、100~3000個がより好ましい。なお、Fポリマーにおける酸素含有極性基の数は、ポリマーの組成又は国際公開第2020/145133号に記載の方法によって定量できる。
【0014】
酸素含有極性基は、Fポリマー中のモノマーに基づく単位に含まれていてもよく、Fポリマーの主鎖の末端基に含まれていてもよく、前者が好ましい。後者の態様としては、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端基として酸素含有極性基を有するFポリマー、Fポリマーをプラズマ処理や電離線処理して得られるFポリマーが挙げられる。
【0015】
熱溶融性のFポリマーとしては、TFE単位及びPAVE単位を含み全単位に対してPAVE単位を2.0~5.0モル%含む、酸素含有極性基を有さないポリマー(1)か、又は、TFE単位及びPAVE単位を含む、酸素含有極性基を有するポリマー(2)が好ましい。かかるFポリマーを使用すれば、比較的小さい半径を有する球晶が形成されやすい。このため、本分散液より形成される成形物の接着性がより向上しやすい。
【0016】
ポリマー(1)は、TFE単位及びPAVE単位のみからなり、全単位に対してPAVE単位を2.5モル%超5.0モル%以下含有するのがより好ましい。なお、ポリマー(1)が酸素含有極性基を有さないとは、ポリマー主鎖を構成する炭素原子数の1×106個あたりに対して、ポリマーが有する酸素含有極性基の数が50個未満であることを意味する。上記酸素含有極性基の数の下限は1個である。
ポリマー(1)は、ポリマー鎖の末端基として酸素含有極性基を生じない、重合開始剤や連鎖移動剤等を使用して製造してもよく、酸素含有極性基を有するFポリマー(重合開始剤に由来する酸素含有極性基をポリマー主鎖の末端基に有するFポリマー等)をフッ素化処理して製造してもよい。フッ素化処理の方法としては、フッ素ガスを使用する方法(特開2019-194314号公報等を参照)が挙げられる。
【0017】
ポリマー(2)は、TFE単位及びPAVE単位を含む、カルボニル基含有基を有するFポリマーであるのが好ましく、TFE単位、PAVE単位及びカルボニル基含有基を有するモノマーに基づく単位を含み、全単位に対して、これらの単位をこの順に、90~99モル%、0.99~9.97モル%、0.01~3モル%含むポリマーであるのがさらに好ましい。かかるFポリマーの具体例としては、国際公開第2018/16644号に記載されるポリマーが挙げられる。
カルボニル基含有基を有するモノマーは、無水イタコン酸、無水シトラコン酸及び5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」とも記す。)が好ましく、NAHがより好ましい。
【0018】
F粒子の平均粒子径(D50)は、0.05μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1.0μm以上がさらに好ましい。F粒子のD50は、50μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、6μm以下がさらに好ましい。
また、F粒子のD90は、6~9μmであるのが好ましい。
この場合、本発明で用いる本分散液が分散性と加工性に優れやすい。また、本分散液から形成されるポリマー層等の成形物が、耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率及び低誘電正接)、接着性に優れ、さらに耐折り曲げ性等の力学的特性に優れやすい。
F粒子の比表面積は、1~25m2/gが好ましい。
F粒子は、熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーを、乾式ジェットミル等により機械的粉砕処理した破砕粒子であってもよい。
【0019】
F粒子は、Fポリマーを含む粒子であり、Fポリマーからなるのが好ましい。
F粒子は、溶融温度が230~320℃である、ポリマー(2)であるFポリマーの粒子であるのがより好ましい。この場合、F粒子の凝集が抑制されやすい。
F粒子は、Fポリマー以外の樹脂や無機化合物を含んでいてもよく、FポリマーをコアとしFポリマー以外の樹脂又は無機化合物をシェルとするコア-シェル構造を形成していてもよく、FポリマーをシェルとしFポリマー以外の樹脂又は無機化合物をコアとするコア-シェル構造を形成していてもよい。ここで、Fポリマー以外の樹脂としては、芳香族ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、マレイミドが挙げられ、無機化合物としては、シリカ、窒化ホウ素が挙げられる。
F粒子は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0020】
本発明において、PTFEは非熱溶融性であっても熱溶融性であってもよく、非熱溶融性であるのが好ましい。
本分散液が含有するPTFE粒子の平均粒子径(D50)は、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。PTFE粒子のD50は10μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。
【0021】
本分散液においては、特にPTFE粒子の平均粒子径(D50)が0.01~1μmであり、F粒子の平均粒子径(D50)が0.05~10μmであり、PTFE粒子のD50がF粒子のD50以下であるのが好ましい。この場合、本法により本分散液から、PTFEのフィブリル構造に基づく繊維状の表面物性及び接着性を備え、クラックが生じにくく耐熱性、耐候性、電気特性等に優れる緻密な成形物が得られやすい。
【0022】
本分散液におけるF粒子の含有量は、PTFE粒子に対して5質量%以上であるのが好ましい。F粒子の含有量は、PTFE粒子に対して35質量%以下であるのが好ましく、25質量%以下がより好ましい。
また、本分散液において、PTFEの粒子とF粒子との合計量に対する、PTFEの粒子の含有量が、75~95質量%であるのが好ましい。
本分散液を構成するF粒子として、溶融温度が230~320℃であり、酸素含有極性基を有する、ポリマー(2)である粒子がより好ましい。この場合、F粒子による凝集抑制作用と、非熱溶融性のPTFEのフィブリル化による保持作用とがバランスし、本法で用いる本分散液の分散性が向上しやすい。また、それから形成されるポリマー層等の成形物において、成形物表面にPTFEのフィブリル構造に基づく繊維状の表面物性を備えやすく、クラックが生じにくく耐熱性、耐候性、電気特性等に優れる緻密な成形物が得られやすい。また、得られる成形物の耐折り曲げ性が向上し、PTFEの電気特性も高度に発現されやすくなる。
【0023】
本分散液を構成する液状媒体は、大気圧下、25℃にて液体であり、沸点が50~240℃である化合物が好ましい。液状媒体は1種類を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種の液状媒体を用いる場合、2種の液状媒体は、互いに相溶するのが好ましい。
液状媒体は、水、アミド、ケトン及びエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
アミドとしては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンが挙げられる。
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-へプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンが挙げられる。
エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンが挙げられる。
本法においては、液状媒体として水か、水の含有量が80質量%以上である、水と水溶性である上記したアミド、ケトン、エステルとの混合物を用いるのが好ましく、水を用いるのがより好ましい。
本分散液における液状媒体の含有量は、15質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましい。液状媒体の含有量は、65質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0024】
本分散液はさらに界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としてはノニオン性界面活性剤が好ましい。ノニオン性界面活性剤としては、グリコール系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤が挙げられる。
中でも、親水部位に水酸基を有するノニオン性界面活性剤が好ましく、親水部位としてポリオキシアルキレン構造を、疎水部位としてポリジメチルシロキサン構造を有する、ポリオキシアルキレン変性ジメチルシロキサンがより好ましい。
ノニオン性界面活性剤は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ネオス社製の「フタージェント」シリーズ、AGCセイミケミカル社製の「サーフロン」シリーズ、DIC社製の「メガファック」シリーズ、ダイキン工業社製の「ユニダイン」シリーズ、ビックケミー・ジャパン社製の「BYK-347」、「BYK-349」、「BYK-378」、「BYK-3450」、「BYK-3451」、「BYK-3455」、「BYK-3456」、信越化学工業社製の「KF-6011」、「KF-6043」、ダウケミカル社製の「Tergitol」シリーズ(「Tergitol TMN-100X」等。)が挙げられる。
本分散液が界面活性剤を含有する場合、その含有量は、本分散液全体に対して0.01~10質量%が好ましい。
【0025】
本分散液は、無機フィラーをさらに含有していてもよい。この場合、本分散液から形成される塗膜(ポリマー層)等の成形物が、電気特性と低線膨張性とに優れやすい。
無機フィラーの形状に特に制限はなく、例えば球状、針状(繊維状)、板状のいずれであってもよい。
無機フィラーとしては、例えば石英粉、シリカ、ウォラストナイト、タルク、窒化ケイ素、炭化ケイ素、雲母等のケイ素化合物;窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の窒素化合物;酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化バナジウム、酸化銅、酸化鉄、酸化銀等の金属酸化物;炭素繊維;グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ等の炭素同素体;銀、銅等の金属;が挙げられる。
無機フィラーは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機フィラーのD50は、0.1~20μmが好ましい。
無機フィラーの表面は、シランカップリング剤で表面処理されていてもよい。
本分散液が無機フィラーを含む場合、その含有量は、本分散液全体に対して1~25質量%が好ましい。
【0026】
本分散液は、PTFE及びFポリマーとは異なる他の樹脂をさらに含んでいてもよい。かかる他の樹脂は、本分散液に非中空状の粒子として含まれていてもよく、本分散液を構成する液状媒体に溶解又は分散して含まれていてもよい。
他の樹脂としては、液晶性の芳香族ポリエステル等のポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂が挙げられる。
他の樹脂としては、芳香族ポリマーが好ましく、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミック酸、芳香族ポリアミドイミド及び芳香族ポリアミドイミドの前駆体からなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族イミドポリマーがより好ましい。芳香族ポリマーは本分散液中で、液状媒体に溶解したワニスとして含まれるのが好ましい。
本分散液が他の樹脂をさらに含む場合、F粒子に対する他の樹脂の含有量は、1~25質量%が好ましい。
【0027】
本分散液は、さらに、チキソ性付与剤、粘度調節剤、消泡剤、脱水剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、難燃剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0028】
本分散液の粘度は、10mPa・s以上が好ましく、100mPa・s以上がより好ましい。本分散液の粘度は、10000mPa・s以下が好ましく、3000mPa・s以下がより好ましい。この場合、本分散液は塗工性に優れ、任意の厚さを有する塗膜(ポリマー層)等の成形物を形成しやすい。また、かかる範囲の粘度範囲にある本分散液は、それから形成される成形物において、Fポリマーの物性が高度に発現しやすい。
本分散液のチキソ比は、1.0~3.0が好ましい。この場合、本分散液は、塗工性及び均質性に優れ、より緻密な成形物を生成しやすい。
【0029】
本分散液は、PTFE粒子とF粒子と液状媒体と、必要に応じて界面活性剤、無機フィラー、他の樹脂、添加剤等を混合することで得られる。本分散液は、PTFE粒子とF粒子と液状媒体を一括で混合して得ても、複数回に分割して混合して得てもよい。
界面活性剤、無機フィラー、他の樹脂、添加剤をさらに混合する場合の混合順序には特に限定はなく、PTFE粒子又はF粒子と予め混合してから液状媒体と混合してもよく、液状媒体に予め添加してからPTFE粒子及びF粒子と混合してもよく、PTFE粒子及びF粒子への液状媒体の添加に際して混合してもよい。
また、PTFE粒子と液状媒体と必要に応じ界面活性剤等をさらに含む分散液と、F粒子と液状媒体と必要に応じ界面活性剤等をさらに含む分散液とを各々調製し、これらを混合して本分散液を得てもよい。
本分散液を得るための混合の装置としては、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー及びプラネタリーミキサー等のブレードを備えた撹拌装置、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル及びアジテーターミル等のメディアを備えた粉砕装置、マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、超音波ホモジナイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー、薄膜旋回型高速ミキサー、自転公転撹拌機及びV型ミキサー等の他の機構を備えた分散装置が挙げられる。
【0030】
本法の具体的な態様の一つとしては、本分散液を基材の表面に塗布して配置し、ポリマー層とを有する積層体を形成する態様が挙げられる。換言すれば、かかる態様は、本分散液を基材の表面に塗布して配置し、基材層と、成形物としてポリマー層とを有する積層体を形成する態様である。
本分散液の基材表面への塗布の方法としては、塗布法、液滴吐出法、浸漬法が挙げられ、ロールコート法、ナイフコート法、バーコート法、ダイコート法又はスプレー法が好ましい。基材に本分散液を塗布し、基材の表面に本分散液からなる塗工層をまず形成する。
【0031】
基材としては耐熱性基材が好ましい。耐熱性基材としては、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン、それらの合金等の金属箔等の金属基板;ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶性ポリエステル等の液晶性ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等の、Fポリマー以外のテトラフルオロエチレン系ポリマー等の耐熱性樹脂のフィルム;プリプレグ基板(繊維強化樹脂基板の前駆体)、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等のセラミックス基板;ガラス基板が挙げられる。
中でも、耐熱性基材が、ポリイミド、液晶性ポリマー及びポリテトラフルオロエチレンのいずれかの樹脂のフィルムであるのが好ましく、ポリイミドフィルムがより好ましい。
【0032】
基材の形状としては、平面状、曲面状、凹凸状が挙げられる。また、基材の形状は、箔状、板状、膜状、繊維状のいずれであってもよい。
基材の表面の十点平均粗さは、0.01~0.05μmが好ましい。
基材の表面は、シランカップリング剤により表面処理されていてもよく、プラズマ処理されていてもよい。
【0033】
前記塗工層を有する基材を加熱して、本分散液を構成する液状媒体を除去する。液状媒体の除去に際する加熱は、100~200℃にて、0.1~30分間で行うのが好ましい。この際の加熱において、液状媒体は完全に除去する必要はなく、PTFE粒子及びF粒子のパッキングにより形成される層が自立膜を維持できる程度まで除去すればよい。また、加熱に際しては、空気を吹き付け、風乾によって分散媒の除去を促してもよい。
次いで、Fポリマーの溶融温度超の温度域にて加熱してFポリマーを焼成し、基材の表面にFポリマーを含むポリマー層(以下、「F層」とも記す。)を有する積層体を得る。Fポリマーの焼成に際しての加熱は、具体的には340~400℃で、0.1~30分間行うのが好ましい。
上記した各加熱における加熱装置としては、オーブン、通風乾燥炉が挙げられる。装置における熱源は、接触式の熱源(熱風、熱板等)であってもよく、非接触式の熱源(赤外線等)であってもよい。
本法において、各加熱は、常圧(大気圧)下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。
また、各加熱における雰囲気は、空気雰囲気、不活性ガス(ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等)雰囲気のいずれであってもよい。
【0034】
本法では、前記Fポリマーの焼成のための加熱後に、少なくともFポリマーの溶融温度以下まで、5℃/分未満の降温速度で降温させ、基材からなる基材層と及びF層を備えた積層体を得る。
降温速度は1℃/分以上が好ましい。また、上述した想定機構をより促進して、本発明の効果をより奏する観点から、前記加熱後に少なくとも[Fポリマーの溶融温度-10℃]まで、5℃/分未満の降温速度を維持することが好ましく、[Fポリマーの溶融温度-60℃]まで、5℃/分未満の降温速度を維持することがより好ましく、Fポリマーのガラス転位温度まで、5℃/分未満の降温速度を維持することがさらに好ましい。
降温速度の制御は、例えば、加熱装置として上述したオーブン、通風乾燥炉に付随する温度制御機能を用いることで行える。
例えば、少なくとも[Fポリマーの溶融温度-10℃]まで、5℃/分未満の降温速度を維持した後は、特に降温温度の制御をすることなく、そのまま空気中で放冷するか、又は水冷等の適宜の冷却を行えば、積層体が得られる。
また、より具体的には、[Fポリマーの溶融温度-10℃]から[Fポリマーの溶融温度-60℃]までの間も、5℃/分未満の降温速度を維持することが好ましい。
【0035】
F層は、基材への本分散液の配置、加熱、及び上記した特定の降温の各工程を経て形成される。これらの一連の工程は2回以上繰り返してもよい。
また、基材の表面に本分散液を塗布して塗工層を得、加熱により液状媒体を除去した段階で、さらにその表面に本分散液を塗布し、次いでFポリマーの焼成のための加熱を行った後に、少なくともFポリマーの溶融温度以下まで、5℃/分未満の降温速度で降温させてF層を形成してもよい。
あるいは、基材の表面に本分散液を塗布して塗工層を得、加熱によりF層を形成し、さらに前記F層の表面に本分散液を塗布して塗工層を形成して、加熱により2層目のF層を形成し、かかる2層目のF層形成の加熱後に、少なくともFポリマーの溶融温度以下まで、5℃/分未満の降温速度で降温させてF層を形成してもよい。
【0036】
本分散液は、基材の一方の表面にのみ配置してもよく、基材の両面に配置してもよい。前者の場合、基材と、かかる基材の片方の表面にF層を有する積層体が得られ、後者の場合、基材と、かかる基材の両方の表面にF層を有する積層体が得られる。
積層体の好適な具体例としては、金属箔と、その金属箔の少なくとも一方の表面にF層を有する金属張積層体、ポリイミドフィルムと、そのポリイミドフィルムの両方の表面にF層を有する多層フィルムが挙げられる。
【0037】
本法で得られるF層の表面は、PTFEのフィブリル構造に基づく繊維状の表面物性を備えやすい。
F層の厚さは、25μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましい。F層の厚さは、300μm以下が好ましい。
F層の誘電率は2.4以下であるのが好ましく、2.0以下であるのがより好ましい。また、誘電率は1.0超であるのが好ましい。F層の誘電正接は、0.0022以下であるのが好ましく、0.0020以下であるのがより好ましい。また、誘電正接は、0.0010超であるのが好ましい。F層の熱伝導率は1W/m・K以上であるのが好ましく、3W/m・K以上がより好ましい。なお、F層の熱伝導率とは、F層の面内方向における熱伝導率を意味する。
【0038】
F層の線膨張係数は、100ppm/℃以下が好ましく、80ppm/℃以下がより好ましい。F層の線膨張係数の下限は、30ppm/℃である。なお、線膨張係数は、JIS C 6471:1995に規定される測定方法に従って、25℃以上260℃以下の範囲における、試験片の線膨張係数を測定した値を意味する。
F層と基材層との剥離強度は、10N/cm以上が好ましく、15N/cm以上がより好ましい。上記剥離強度は、100N/cm以下が好ましい。
なお、かかる積層体から基材層を分離すれば、PTFEのフィブリル構造に基づく繊維状の表面物性を有する、PTFE及びFポリマーを含むフィルム又はシートを得られる。
【0039】
本法の具体的な他の態様の一つは、本分散液を繊維基材に含浸させて配置し、繊維基材にポリマーが含浸した含浸基材を形成する態様が挙げられる。換言すれば、かかる態様は、本分散液を繊維基材に含浸させて配置し、成形物としてプリプレグを形成する態様である。なお、本明細書において「プリプレグ」の語は、ポリマー強化繊維基材、繊維強化フィルム、含浸織布等とも称される、繊維基材にポリマーが含浸した含浸基材の各種の態様を、成形物としての位置付けで包含する意味で用いる。
繊維基材は、強化繊維からなる基材であるのが好ましい。強化繊維としては、炭素繊維、黒鉛繊維、ガラス繊維、シリコンカーバイト繊維、シリコンナイトライド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維等の無機繊維;アルミニウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維等の金属繊維;芳香族ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維等の有機繊維が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、強化繊維は、本分散液から形成されるポリマー層との接着性を高める観点から、シランカップリング剤等で表面処理が施されていてもよい。
中でも、ガラス繊維、アラミド繊維および炭素繊維が好ましく、電気絶縁性の観点からは、JIS R 3410で定められる電気絶縁用Eガラスヤーンより構成される平織のガラス繊維織布が特に好ましい。
【0040】
繊維基材はシート状であるのが好ましい。例えば、複数の強化繊維からなる強化繊維束を織成してなるクロス、複数の強化繊維が一方向に引き揃えられた基材、それらを積み重ねたもの等が挙げられる。強化繊維は、強化繊維シートの長さ方向の全長又は幅方向の全幅に亘り連続している必要はなく、途中で分断されていてもよい。
強化繊維としては、長さが10mm以上の連続した長繊維が好ましい。強化繊維は、強化繊維シートの長さ方向の全長又は幅方向の全幅に亘り連続している必要はなく、途中で分断されていてもよい。
【0041】
本分散液を繊維基材に含浸させる方法としては、本分散液中に繊維基材を浸漬する方法、本分散液を繊維基材に塗布する方法が挙げられる。前者の方法における浸漬回数、及び後者の方法における塗布回数は、それぞれ1回であっても、2回以上であってもよい。
本分散液が含浸された繊維基材を乾燥して、液状媒体の少なくとも一部を除去する。乾燥は、例えば、80~120℃で行える。
次いで、Fポリマーの溶融温度超の温度域にて加熱してFポリマーを焼成し、繊維基材の表面及び内部にFポリマーを含むポリマー層を有するプリプレグを得る。Fポリマーの焼成に際しての加熱は、具体的には340~400℃で、0.1~30分間行うのが好ましい。プリプレグにおいては、F粒子に由来するFポリマーは、プリプレグの形状が保持される限り、充分に溶融されていなくてもよい。そのようなプリプレグは成形材料として使用でき、加熱及び加圧により成形体を製造できる。
なお、本分散液が含浸された繊維基材の乾燥と加熱によるFポリマーの焼成は、一段階で実施してもよい。
【0042】
かかるFポリマーの焼成のための加熱後に、少なくともFポリマーの溶融温度以下まで、5℃/分未満の降温速度で降温させて、プリプレグを得る。
降温速度は5℃/分以上が好ましい。また、上述した想定機構をより促進して、本発明の効果をより奏する観点から、前記加熱後に少なくとも[Fポリマーの溶融温度-10℃]まで、5℃/分未満の降温速度を維持することが好ましく、[Fポリマーの溶融温度-60℃]まで、5℃/分未満の降温速度を維持することがより好ましく、Fポリマーのガラス転位温度まで、5℃/分未満の降温速度を維持することがさらに好ましい。
降温速度の制御は、例えば、加熱装置として上述したオーブン、通風乾燥炉に付随する温度制御機能を用いることで行える。
例えば、少なくとも[Fポリマーの溶融温度-10℃]まで、5℃/分未満の降温速度を維持した後は、特に降温温度の制御をすることなく、そのまま空気中で放冷するか、又は水冷等の適宜の冷却を行えば、プリプレグが得られる。
また、より具体的には、[Fポリマーの溶融温度-10℃]から[Fポリマーの溶融温度-60℃]までの間も、5℃/分未満の降温速度を維持することが好ましい。
プリプレグにおける、PTFEとFポリマーの総含有量は30~80質量%であることが好ましい。
【0043】
本法で得られる成形物としてのプリプレグは、本分散液を繊維基材に含浸させて配置、加熱、及び上記した特定の降温の各工程を経て形成される。これらの一連の工程は2回以上繰り返してもよい。
また、繊維基材に本分散液を含浸するか、繊維基材の表面に本分散液を塗布して配置し、液状媒体を乾燥により除去した段階で、さらに本分散液を含浸又は塗布して配置して乾燥し、次いでFポリマーの焼成のための加熱を行った後に、少なくともFポリマーの溶融温度以下まで、5℃/分未満の降温速度で降温させてプリプレグを形成してもよい。
あるいは、繊維基材に本分散液を配置し、加熱によりFポリマーを焼成し、さらに前記繊維基材に本分散液を配置して、加熱により再度Fポリマーを焼成し、かかる2度目のFポリマー焼成のための加熱後に、少なくともFポリマーの溶融温度以下まで、5℃/分未満の降温速度で降温させてプリプレグを形成してもよい。
【0044】
本法で得られるプリプレグは、その表面がPTFEに基づく繊維状(ファブリック状)の表面物性を有し表面平滑性が高く、またポリマー層と繊維基材の接着性、耐折り曲げ性等に優れる。かかるプリプレグと金属箔を熱圧着させて得られる樹脂付金属箔は、剥離強度が高く、反りにくいため、プリント基板材料として好適に使用できる。
また、本分散液を含浸させた繊維基材を、槽、配管、容器等の成形品である基材の内壁面の一部に配置し、基材を加熱し、加熱後に本法により特定の降温速度で冷却すれば、成形品である基材の内壁にPTFE及びFポリマーを含む繊維基材層を形成できる。この方法によれば、槽、配管、容器等の成形品の内壁面のライニング方法としても有用である。
【0045】
プリプレグの厚みは、1~3000μmが好ましい。プリント基板用途の場合、プリプレグの厚みは、3~2000μmがより好ましく、5~1000μmがさらに好ましい。
プリプレグの誘電率、誘電正接、熱伝導率、線膨張係数の好適範囲は、上記したF層にて上述した範囲と同様である。
【0046】
本法により形成される成形物、例えば積層体、プリプレグ、フィルム又はシートは、アンテナ部品、プリント基板、航空機用部品、自動車用部品、スポーツ用具、食品工業用品、放熱部品等として有用である。
具体的には、電線被覆材(航空機用電線、平角線、FFC(Flexible flat cable)等)、電気自動車等のモーター等に使用されるエナメル線被覆材、発電用被覆材、電気絶縁性テープ、石油掘削用絶縁テープ、石油輸送ホース、水素タンク、プリント基板用材料、分離膜(精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜、イオン交換膜、透析膜、気体分離膜等)、電極バインダー(リチウム二次電池用、燃料電池用等)、燃料電池用キャリアフィルム、半導体製造工程用テープ基材フィルム(ダイシングテープ、ピックアップテープ等)、半導体モールディング用離型フィルム、液晶アンテナ、反射板、伝送路、COF(Chip on film)用ベースフィルム、半導体製造工程用静電チャック、ディスプレイ製造工程用静電チャック、コピーロール、家具、自動車ダッシュボート、家電製品等のカバー、摺動部材(荷重軸受、ヨー軸受、すべり軸、バルブ、ベアリング、ブッシュ、シール、スラストワッシャ、ウェアリング、ピストン、スライドスイッチ、歯車、カム、ベルトコンベア、食品搬送用ベルト等)、テンションロープ、ウェアパッド、ウェアストリップ、チューブランプ、試験ソケット、ウェハーガイド、遠心ポンプの摩耗部品、薬品及び水供給ポンプ、工具(シャベル、やすり、きり、のこぎり等)、ボイラー、ホッパー、パイプ、オーブン、焼き型、シュート、ラケットのガット、ダイス、便器、コンテナ被覆材、パワーデバイス用実装放熱基板、無線通信デバイスの放熱部材、トランジスタ、サイリスタ、整流器、トランス、パワーMOS FET、CPU、放熱フィン、金属放熱板、風車や風力発電設備や航空機等のブレード、パソコンやディスプレイの筐体、電子デバイス材料、自動車の内外装、低酸素下で加熱処理する加工機や真空オーブン、プラズマ処理装置などのシール材、スパッタや各種ドライエッチング装置等の処理ユニット内の放熱部品、電磁波シールドとして有用である。
【0047】
本法で形成される成形物、例えば積層体、プリプレグ、フィルム又はシートは、フレキシブルプリント配線基板、リジッドプリント配線基板等の電子基板材料、保護フィルムや放熱基板、特に自動車向けの放熱基板として有用である。
【0048】
本発明はまた、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と、熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマー(Fポリマー)とを含む接着性成形物であって、実質的にその全表面が、繊維状の表面物性を有する接着性成形物(以下、「本接着性成形物」とも記す。)である。ここで、「全表面が、繊維状の表面物性を有する」とは、かかる接着性成形物表面の任意の10点を電子顕微鏡(SEM)で観察した場合に、その全ての箇所で、PTFEに基づく繊維状(ファブリック状)の表面が形成されており、かかる表面に基づく物性を有することを意味する。
本接着性成形物におけるFポリマー、PTFEの詳細は、上記したFポリマー及びPTFEと同様である。
本接着性成形物は、本法により形成するのが好ましい。本接着性成形物の具体例としては、上述した、成形物としてポリマー層とを有する積層体や、プリプレグが挙げられる。
本接着性成形物は、全表面が、繊維状の表面物性を有することにより、PTFEの表面摩擦係数と同等の表面摩擦係数を有し、PTFEに基づく低摩擦性を保持しやすい。
なお、PTFEの表面摩擦係数は、JIS K 7125に準拠し、室温でクロムメッキ処理鋼板と接触させて測定される動摩擦係数を意味する。
【0049】
以上、本法及び本接着性成形物について説明したが、本発明は、前述した実施形態の構成に限定されない。例えば、本法は、上記実施形態の構成において、他の任意の工程を追加で有してもよいし、同様の作用を生じる任意の工程と置換されていてよい。
【実施例0050】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
1.各成分の準備
[熱溶融性Fポリマーの粒子]
F粒子1:TFE単位、NAH単位及びPPVE単位を、この順に97.9モル%、0.1モル%、2.0モル%含み、カルボニル基含有基を主鎖炭素数1×106個あたり1000個有するテトラフルオロエチレン系ポリマー(溶融温度:300℃)の粒子(D50:2.4μm、Tg:85℃、比表面積:9m2/g)
[PTFE粒子を含む水分散液]
PTFE分散液:非溶融加工性PTFEの粒子(D50:0.3μm)を50質量%含む、PTFEの水分散液
[界面活性剤]
界面活性剤1:主鎖にポリシロキサン鎖を有し、側鎖にポリエチレンオキシド基を有するノニオン性界面活性剤
【0051】
2.分散液の製造例
[製造例1]
(1)自転公転ミキサーを用いて、F粒子1と界面活性剤1と水とを混合し、F粒子1の含有量が33質量%、界面活性剤1の含有量が3質量%である分散液aを調製した。
(2)次いで、PTFE分散液と分散液aとを混合し、PTFE粒子及びF粒子1が水中に分散した、PTFE粒子に対するF粒子1の質量比が0.2である分散液1を得た。
[製造例2]
PTFE分散液と、例1(1)で得た分散液aとを混合し、PTFE粒子及びF粒子1が水中に分散した、PTFE粒子に対するF粒子1の質量比が0.33である分散液2を得た。
【0052】
3.積層体の製造例と評価
[例1]
製造例1で得た分散液1を銅箔(厚さ18μm)の表面に塗工して塗工層を形成し、かかる塗工層を炉温100℃の通風乾燥炉に10分間で通過させて乾燥した。次いで、不活性ガス雰囲気下、炉温380℃の遠赤外線炉で10分間加熱してF粒子1を溶融焼成して銅箔の表面にポリマー層を形成した後、3℃/分の降温速度で275℃まで降温し、さらに25℃まで放冷して、銅箔と、銅箔表面にPTFEとFポリマー1を含むポリマー層(厚さ25μm)が形成された積層体1(樹脂付銅箔)を得た。
積層体1のポリマー層表面の任意の10点をSEM画像(倍率:30000倍)で観察して、下記の評価基準に従って評価したところ「A」であった。また、ポリマー層表面は、PTFEに由来する繊維状表面を形成しており、その表面摩擦係数は、PTFE単独層の値と同等であった。
<成形物層表面のSEM画像観察評価>
A:任意の10点にてFポリマー1の偏在(島状に存在する部分)が確認されない
B:任意の10点のいずれかでFポリマー1の偏在が確認される
【0053】
[例2]
例1において、銅箔の表面にポリマー層を形成した後の降温速度を350℃までは3℃/分とし、以降は5℃/分超として25℃まで放冷した以外は例1と同様にして積層体2を得た。
積層体2のポリマー層表面の任意の10点をSEM画像(倍率:30000倍)で観察して、下記の評価基準に従って評価したところ「B」であった。また、かかるポリマー層の表面の表面摩擦係数は、PTFE単独層と比べ大きかった。
また積層体1におけるポリマー層と銅箔の剥離強度は、10N/cm以上であった。
【0054】
4.プリプレグの製造例と評価
[例3]
製造例1で得た分散液1をガラス繊維織布に含浸させて含浸層を形成し、かかる含浸層を炉温100℃の通風乾燥炉に10分間で通過させて乾燥した。次いで、不活性ガス雰囲気下、炉温380℃の遠赤外線炉で10分間加熱してF粒子1を溶融焼成した後、3℃/分の降温速度で275℃まで降温し、さらに25℃まで放冷した。このガラス繊維織布への分散液1の含浸、乾燥、焼成、降温の操作を同じ条件にて計4回繰り返した。その後、さらにPTFE分散液を含浸させて100℃で10分間乾燥し、不活性ガス雰囲気下、380℃で10分間加熱後、5℃/分の降温速度で275℃まで降温し、さらに室温まで放冷した。これにより、ガラス繊維織布にPTFEとFポリマー1とを含むポリマー層が形成されたプリプレグ1を得た。
プリプレグ1の表面をSEM画像(倍率:30000倍)で観察したところ、PTFEに由来する繊維状表面を形成しており、その表面摩擦係数は、PTFEの表面摩擦係数の値と同等であった。
【0055】
[例4]
例3において、降温速度を350℃までは3℃/分とし、以降は5℃/分超として25℃まで放冷した以外は例3と同様にしてプリプレグ2を得た。
プリプレグ1の折り曲げ性は、プリプレグ2のそれより優れていた。
本法により得られる積層体、プリプレグ等の成形物は、PTFEに基づく表面物性及びFポリマーの物性を高度に発現して、クラックが生じにくく緻密であり、接着性、耐熱性、電気特性等に優れるため、プリント基板等の各種用途に有効に使用できる。