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特開2025-16032無線通信システム、測定装置、無線通信方法、および無線通信用プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016032
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】無線通信システム、測定装置、無線通信方法、および無線通信用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20250124BHJP
   H04B 17/24 20150101ALI20250124BHJP
   H04B 17/391 20150101ALI20250124BHJP
   G01S 13/46 20060101ALI20250124BHJP
   G01S 5/02 20100101ALI20250124BHJP
【FI】
G06N20/00 130
H04B17/24
H04B17/391
G01S13/46
G01S5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119037
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大槻 信也
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
(72)【発明者】
【氏名】牟田 修
【テーマコード(参考)】
5J062
5J070
【Fターム(参考)】
5J062BB05
5J062CC11
5J062EE01
5J062GG02
5J070AB15
5J070AC01
5J070AD05
5J070AE09
5J070AF01
5J070AH19
5J070AK22
5J070BD02
(57)【要約】
【課題】伝搬チャネル情報(CSI)から対象エリア内の物体の位置を座標として判定し、対象エリア内で局所的に大きな検出誤差が発生することを抑制できる無線通信システムを提供する。
【解決手段】本開示の無線通信システムは、送信機と、受信機と、無線捕捉装置と、測定装置とを備える。測定装置は、複数の測定領域に分割された対象エリアにおいて、測定領域の1つに物体を配置した場合の教師用CSIを、複数の測定領域のすべてについて測定する。複数の測定領域のそれぞれが、対象エリアを分割するように定められた複数の判定領域のいずれに属するかを特定する。教師用CSIと、判定領域のラベルとを対応付けた教師データから学習モデルを作成する。教師用CSIと、該測定において物体が配置された位置座標とを対応付けた教師データから回帰関数を作成する。学習モデルと回帰関数を用いて新たに入力されるCSIから物体の物体の位置座標を判定する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機と受信機の間で送受信される無線フレームに含まれる伝搬チャネル情報に基づき対象エリアに配置された物体の位置を検出する無線通信システムであって、
前記送信機と、
前記受信機と、
前記無線フレームを捕捉する無線捕捉装置と、
前記無線捕捉装置が捕捉した無線フレームに基づき伝搬チャネル情報を測定する測定装置と、
を備え、
前記測定装置は、
複数の測定領域に分割された前記対象エリアにおいて、前記測定領域の1つに物体を配置した場合の教師用伝搬チャネル情報を、前記複数の測定領域のすべてについて測定する教師データ測定処理と、
前記複数の測定領域のそれぞれが、前記対象エリアを分割するように定められた複数の判定領域のいずれに属するかを特定する処理と、
前記教師用伝搬チャネル情報と、前記判定領域のラベルとを対応付けた第1の教師データを作成する処理と、
前記教師用伝搬チャネル情報と、該測定において物体が配置された位置座標とを対応付けた第2の教師データを作成する処理と、
入力される伝搬チャネル情報から物体の位置を前記判定領域のラベルとして判定する学習モデルを前記第1の教師データを用いて作成する処理と、
入力される伝搬チャネル情報から物体の位置を座標として判定する回帰関数を前記第2の教師データを用いて前記判定領域ごとに作成する処理と、
前記学習モデルを用いて、新たに入力される伝搬チャネル情報から物体の位置を前記判定領域のラベルとして判定するラベル判定処理と、
判定されたラベルが示す判定領域に対応する回帰関数を用いて、前記新たに入力される伝搬チャネル情報から物体の位置座標を判定する座標判定処理と、
を実行するように構成される、無線通信システム。
【請求項2】
前記複数の測定領域のそれぞれは、複数の配置点を含み、
前記教師データ測定処理は、前記複数の測定領域ごとに、前記教師用伝搬チャネル情報を、前記配置点のすべてについて測定する処理を含む、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記複数の判定領域は、前記対象エリアを囲む壁側に配置される壁側領域と、前記壁側領域の内側に配置される内側領域とを含み、前記壁側領域は前記内側領域よりも小さく設定される、請求項1または2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記複数の判定領域は、前記送信機が有するアンテナと前記受信機が有するアンテナとを結ぶ直線が通過する通過領域と、通過しない非通過領域とを含み、前記非通過領域は、前記通過領域よりも小さく設定される、請求項1または2に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記測定装置は、
前記教師データ測定処理において物体が配置された位置座標に物体を配置した場合の伝搬チャネル情報を、前記複数の測定領域のすべてについて測定し、確認用の伝搬チャネル情報とする処理と、
前記学習モデルを用いて、前記確認用の伝搬チャネル情報から物体の位置を前記判定領域のラベルとして判定する処理と、
判定されたラベルが示す判定領域に対応する回帰関数を用いて、前記確認用の伝搬チャネル情報から物体の位置座標を判定する処理と、
判定された物体の位置座標を、対応する測定において物体が配置された位置座標と比較し、検出誤差を前記複数の測定領域のすべてについて算出する処理と、
算出された前記検出誤差を前記複数の測定領域のすべてについて平均化し、前記対象エリア全体における平均誤差を求める処理と、
算出された前記検出誤差を前記判定領域ごとに平均化し、前記判定領域ごとの平均誤差を求める処理と、
前記判定領域ごとの平均誤差を前記対象エリア全体における平均誤差と比較する処理と、
前記比較に基づき、前記判定領域ごとの平均誤差がそれぞれ規定値以下である場合に、
前記対象エリアを分割する前記複数の判定領域および該判定領域に対応する前記回帰関数を前記ラベル判定処理および前記座標判定処理において採用する処理と、
をさらに実行するように構成される、請求項1または2に記載の無線通信システム。
【請求項6】
送信機と受信機の間で送受信される無線フレームに含まれる伝搬チャネル情報を測定し対象エリアに配置された物体の位置を検出する測定装置であって、
複数の測定領域に分割された前記対象エリアにおいて、前記測定領域の1つに物体を配置した場合の教師用伝搬チャネル情報を、前記複数の測定領域のすべてについて測定する教師データ測定処理と、
前記複数の測定領域のそれぞれが、前記対象エリアを分割するように定められた複数の判定領域のいずれに属するかを特定する処理と、
前記教師用伝搬チャネル情報と、前記判定領域のラベルとを対応付けた第1の教師データを作成する処理と、
前記教師用伝搬チャネル情報と、該測定において物体が配置された位置座標とを対応付けた第2の教師データを作成する処理と、
入力される伝搬チャネル情報から物体の位置を前記判定領域のラベルとして判定する学習モデルを前記第1の教師データを用いて作成する処理と、
入力される伝搬チャネル情報から物体の位置を座標として判定する回帰関数を前記第2の教師データを用いて前記判定領域ごとに作成する処理と、
前記学習モデルを用いて、新たに入力される伝搬チャネル情報から物体の位置を前記判定領域のラベルとして判定するラベル判定処理と、
判定されたラベルが示す判定領域に対応する回帰関数を用いて、前記新たに入力される伝搬チャネル情報から物体の位置座標を判定する座標判定処理と、
を実行するように構成される、測定装置。
【請求項7】
送信機と受信機の間で送受信される無線フレームに含まれる伝搬チャネル情報に基づき対象エリアに配置された物体の位置を検出する無線通信方法であって、
前記無線フレームに基づき前記伝搬チャネル情報を測定する測定装置が、
複数の測定領域に分割された前記対象エリアにおいて、前記測定領域の1つに物体を配置した場合の教師用伝搬チャネル情報を、前記複数の測定領域のすべてについて測定することと、
前記複数の測定領域のそれぞれが、前記対象エリアを分割するように定められた複数の判定領域のいずれに属するかを特定することと、
前記教師用伝搬チャネル情報と、前記判定領域のラベルとを対応付けた第1の教師データを作成することと、
前記教師用伝搬チャネル情報と、該測定において物体が配置された位置座標とを対応付けた第2の教師データを作成することと、
入力される伝搬チャネル情報から物体の位置を前記判定領域のラベルとして判定する学習モデルを前記第1の教師データを用いて作成することと、
入力される伝搬チャネル情報から物体の位置を座標として判定する回帰関数を前記第2の教師データを用いて前記判定領域ごとに作成することと、
前記学習モデルを用いて、新たに入力される伝搬チャネル情報から物体の位置を前記判定領域のラベルとして判定することと、
判定されたラベルが示す判定領域に対応する回帰関数を用いて、前記新たに入力される伝搬チャネル情報から物体の位置座標を判定することと、
を含む、無線通信方法。
【請求項8】
送信機と受信機の間で送受信される無線フレームに含まれる伝搬チャネル情報を測定し対象エリアに配置された物体の位置を検出する測定装置に実行させる無線通信用プログラムであって、
測定装置に、
複数の測定領域に分割された前記対象エリアにおいて、前記測定領域の1つに物体を配置した場合の教師用伝搬チャネル情報を、前記複数の測定領域のすべてについて測定する教師データ測定処理と、
前記複数の測定領域のそれぞれが、前記対象エリアを分割するように定められた複数の判定領域のいずれに属するかを特定する処理と、
前記教師用伝搬チャネル情報と、前記判定領域のラベルとを対応付けた第1の教師データを作成する処理と、
前記教師用伝搬チャネル情報と、該測定において物体が配置された位置座標とを対応付けた第2の教師データを作成する処理と、
入力される伝搬チャネル情報から物体の位置を前記判定領域のラベルとして判定する学習モデルを前記第1の教師データを用いて作成する処理と、
入力される伝搬チャネル情報から物体の位置を座標として判定する回帰関数を前記第2の教師データを用いて前記判定領域ごとに作成する処理と、
前記学習モデルを用いて、新たに入力される伝搬チャネル情報から物体の位置を前記判定領域のラベルとして判定するラベル判定処理と、
判定されたラベルが示す判定領域に対応する回帰関数を用いて、前記新たに入力される伝搬チャネル情報から物体の位置座標を判定する座標判定処理と、
を実行させるプログラムを含む、無線通信用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線装置間で通信される無線信号の伝搬路情報から、対象エリア内の物体の位置を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、伝搬チャネル情報(Channel State Information、以下CSI)測定手段と学習モデル生成手段とを備え、CSI測定手段から新たに入力するCSIを学習モデルに入力し、対象エリア内の物体の有無を検出する技術が開示されている。
【0003】
一方、非特許文献1では、CSIから対象エリア内の物体の位置を検出する技術が開示されている。そこでは物体をある位置に配置した場合のCSIと、該物体の位置座標とを教師データとする機械学習を行う。これにより、取得したCSIから物体の位置座標を判定する回帰関数を作成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-034878号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“Rui Zhou、 et al.、 “Device-Free Presence Detection and Localization With SVM and CSI Fingerprinting”、 IEEE SENSORS JOURNAL、 VOL. 17、 NO. 23、 DECEMBER 1、 2017.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、物体の位置を検出する上述の方法においては、対象エリア内で局所的に大きな検出誤差が発生することが知られる。
【0007】
本開示は上述の問題を解決するため、伝搬チャネル情報から対象エリア内の物体の位置を座標として判定し、対象エリア内で局所的に大きな検出誤差が発生することを抑制できる無線通信システムを提供することを第一の目的とする。
【0008】
また本開示は、伝搬チャネル情報から対象エリア内の物体の位置を座標として判定し、対象エリア内で局所的に大きな検出誤差が発生することを抑制できる測定装置を提供することを第二の目的とする。
【0009】
また本開示は、伝搬チャネル情報から対象エリア内の物体の位置を座標として判定し、対象エリア内で局所的に大きな検出誤差が発生することを抑制できる無線通信方法を提供することを第三の目的とする。
【0010】
また本開示は、伝搬チャネル情報から対象エリア内の物体の位置を座標として判定し、対象エリア内で局所的に大きな検出誤差が発生することを抑制できる無線通信用プログラムを提供することを第四の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の第一の態様は、
送信機と受信機の間で送受信される無線フレームに含まれる伝搬チャネル情報に基づき対象エリアに配置された物体の位置を検出する無線通信システムであって、
前記送信機と、
前記受信機と、
前記無線フレームを捕捉する無線捕捉装置と、
前記無線捕捉装置が捕捉した無線フレームに基づき伝搬チャネル情報を測定する測定装置と、
を備え、
前記測定装置は、
複数の測定領域に分割された前記対象エリアにおいて、前記測定領域の1つに物体を配置した場合の教師用伝搬チャネル情報を、前記複数の測定領域のすべてについて測定する教師データ測定処理と、
前記複数の測定領域のそれぞれが、前記対象エリアを分割するように定められた複数の判定領域のいずれに属するかを特定する処理と、
前記教師用伝搬チャネル情報と、前記判定領域のラベルとを対応付けた第1の教師データを作成する処理と、
前記教師用伝搬チャネル情報と、該測定において物体が配置された位置座標とを対応付けた第2の教師データを作成する処理と、
入力される伝搬チャネル情報から物体の位置を前記判定領域のラベルとして判定する学習モデルを前記第1の教師データを用いて作成する処理と、
入力される伝搬チャネル情報から物体の位置を座標として判定する回帰関数を前記第2の教師データを用いて前記判定領域ごとに作成する処理と、
前記学習モデルを用いて、新たに入力される伝搬チャネル情報から物体の位置を前記判定領域のラベルとして判定するラベル判定処理と、
判定されたラベルが示す判定領域に対応する回帰関数を用いて、前記新たに入力される伝搬チャネル情報から物体の位置座標を判定する座標判定処理と、
を実行するように構成されることが好ましい。
【0012】
また、第二の態様は、
送信機と受信機の間で送受信される無線フレームに含まれる伝搬チャネル情報を測定し対象エリアに配置された物体の位置を検出する測定装置であって、
複数の測定領域に分割された前記対象エリアにおいて、前記測定領域の1つに物体を配置した場合の教師用伝搬チャネル情報を、前記複数の測定領域のすべてについて測定する教師データ測定処理と、
前記複数の測定領域のそれぞれが、前記対象エリアを分割するように定められた複数の判定領域のいずれに属するかを特定する処理と、
前記教師用伝搬チャネル情報と、前記判定領域のラベルとを対応付けた第1の教師データを作成する処理と、
前記教師用伝搬チャネル情報と、該測定において物体が配置された位置座標とを対応付けた第2の教師データを作成する処理と、
入力される伝搬チャネル情報から物体の位置を前記判定領域のラベルとして判定する学習モデルを前記第1の教師データを用いて作成する処理と、
入力される伝搬チャネル情報から物体の位置を座標として判定する回帰関数を前記第2の教師データを用いて前記判定領域ごとに作成する処理と、
前記学習モデルを用いて、新たに入力される伝搬チャネル情報から物体の位置を前記判定領域のラベルとして判定するラベル判定処理と、
判定されたラベルが示す判定領域に対応する回帰関数を用いて、前記新たに入力される伝搬チャネル情報から物体の位置座標を判定する座標判定処理と、
を実行するように構成されることが好ましい。
【0013】
また、第三の態様は、
送信機と受信機の間で送受信される無線フレームに含まれる伝搬チャネル情報に基づき対象エリアに配置された物体の位置を検出する無線通信方法であって、
前記無線フレームに基づき前記伝搬チャネル情報を測定する測定装置が、
複数の測定領域に分割された前記対象エリアにおいて、前記測定領域の1つに物体を配置した場合の教師用伝搬チャネル情報を、前記複数の測定領域のすべてについて測定することと、
前記複数の測定領域のそれぞれが、前記対象エリアを分割するように定められた複数の判定領域のいずれに属するかを特定することと、
前記教師用伝搬チャネル情報と、前記判定領域のラベルとを対応付けた第1の教師データを作成することと、
前記教師用伝搬チャネル情報と、該測定において物体が配置された位置座標とを対応付けた第2の教師データを作成することと、
入力される伝搬チャネル情報から物体の位置を前記判定領域のラベルとして判定する学習モデルを前記第1の教師データを用いて作成することと、
入力される伝搬チャネル情報から物体の位置を座標として判定する回帰関数を前記第2の教師データを用いて前記判定領域ごとに作成することと、
前記学習モデルを用いて、新たに入力される伝搬チャネル情報から物体の位置を前記判定領域のラベルとして判定することと、
判定されたラベルが示す判定領域に対応する回帰関数を用いて、前記新たに入力される伝搬チャネル情報から物体の位置座標を判定することと、
を含むことが好ましい。
【0014】
また、第四の態様は、
送信機と受信機の間で送受信される無線フレームに含まれる伝搬チャネル情報を測定し対象エリアに配置された物体の位置を検出する測定装置に実行させる無線通信用プログラムであって、
測定装置に、
複数の測定領域に分割された前記対象エリアにおいて、前記測定領域の1つに物体を配置した場合の教師用伝搬チャネル情報を、前記複数の測定領域のすべてについて測定する教師データ測定処理と、
前記複数の測定領域のそれぞれが、前記対象エリアを分割するように定められた複数の判定領域のいずれに属するかを特定する処理と、
前記教師用伝搬チャネル情報と、前記判定領域のラベルとを対応付けた第1の教師データを作成する処理と、
前記教師用伝搬チャネル情報と、該測定において物体が配置された位置座標とを対応付けた第2の教師データを作成する処理と、
入力される伝搬チャネル情報から物体の位置を前記判定領域のラベルとして判定する学習モデルを前記第1の教師データを用いて作成する処理と、
入力される伝搬チャネル情報から物体の位置を座標として判定する回帰関数を前記第2の教師データを用いて前記判定領域ごとに作成する処理と、
前記学習モデルを用いて、新たに入力される伝搬チャネル情報から物体の位置を前記判定領域のラベルとして判定するラベル判定処理と、
判定されたラベルが示す判定領域に対応する回帰関数を用いて、前記新たに入力される伝搬チャネル情報から物体の位置座標を判定する座標判定処理と、
を実行させるプログラムを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本開示の第一から第四の態様によれば、伝搬チャネル情報から対象エリア内の物体の位置を座標として判定し、対象エリア内で局所的に大きな検出誤差が発生することを抑制できる無線通信システム、測定装置、無線通信方法、および無線通信用プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の実施の形態1に係る無線通信システムの構成例である。
図2】従来の無線通信システムにおける物体の位置の検出方法を示す図である。
図3】従来の無線通信システムにおける物体の位置の検出方法を示す図である。
図4】従来の無線通信システムにおける、中央部のみで最適化された回帰関数を採用した場合の位置検出結果である。
図5】従来の無線通信システムにおける、中央部のみで最適化された回帰関数を採用した場合の位置検出結果である。
図6】本開示の実施の形態1に係る、学習モデルと回帰関数の作成方法を説明する図である。
図7】本開示の実施の形態1に係る、学習モデルと回帰関数の作成方法を説明する図である。
図8】本開示の実施の形態1に係る、学習モデルと回帰関数の作成方法を説明する図である。
図9】本開示の実施の形態1に係る、学習モデルと回帰関数の作成方法を説明する図である。
図10】本開示の実施の形態1に係る、測定装置による物体の位置の判定方法を説明する図である。
図11】本開示の実施の形態1に係る、測定装置による物体の位置の判定方法を説明する図である。
図12】本開示の実施の形態1に係る、位置検出結果を説明する図である。
図13】本開示の実施の形態1に係る、位置検出結果を説明する図である。
図14】本開示の実施の形態1に係る、位置検出結果を説明する図である。
図15】本開示の実施の形態1に係る、測定装置の構成例を示すブロック図である。
図16】本開示の実施の形態1に係る、CSIの例を示す図である。
図17】本開示の実施の形態1に係る、作成部の構成例を示すブロック図である。
図18】本開示の実施の形態1に係る、記憶部が記憶するデータの例である。
図19】本開示の実施の形態1に係る、判定領域の配置に対する第1の変形例である。
図20】本開示の実施の形態1に係る、判定領域の配置に対する第1の変形例である。
図21】本開示の実施の形態1に係る、判定領域の配置に対する第2の変形例である。
図22】本開示の実施の形態1に係る、判定領域の配置に対する第2の変形例である。
図23】本開示の実施の形態2に係る、判定領域の配置を決定するために測定装置が実行する処理のフローチャートである。
図24】本開示の実施の形態2に係る、作成部の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の実施の形態について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0018】
実施の形態1
図1は、本開示の実施の形態1に係る無線通信システム100の構成例である。
【0019】
無線LAN送信機(以下、送信機と称する)110は、無線LAN規格のIEEE802.11ac/axに基づく無線LAN通信を行う。送信機110は1以上のアンテナ111(1)、111(2)、・・・111(n)を備える。送信機110はこれらのアンテナを同時に使用して、1以上の無線LAN受信機(以下、受信機と称する)120との間で通信を行う。なお、送信機110のアンテナ111が1つの場合は、受信機は2以上のアンテナを有する。ただし通常は、送信機110は2以上のアンテナ111を有している。
【0020】
送信機110は、受信機120に対し既知のフレームを含む無線信号を送信する。送信機110から受信機120に送信される無線信号は、対象エリア10に存在する物体の影響を受ける。
【0021】
受信機120は、1以上のアンテナを用いて送信機110からの無線信号を受信する。受信機120は、受信した無線信号に基づき、既知のフレームとの差分を計算し、圧縮された伝搬チャネル情報を導出する。圧縮された伝搬チャネル情報(Channel State Information、CSI)とは、無線伝搬路の情報のことである。無線伝搬路の情報は、送信機110のアンテナ111と受信機120のアンテナとの間の伝搬路におけるOFDMのサブキャリアごとの振幅情報、位相情報、さらに各アンテナ間の相対値の情報を含む。また、SNR(Signal-to-Noise Ratio)の情報を含んでいてもよい。
【0022】
さらに、受信機120は、圧縮されたCSIをCompressed Beamforming Report(CBFR)等の無線フレームに格納して送信機110のアンテナ111にフィードバックする。
【0023】
無線捕捉装置130は、受信機120から送信機110へフィードバックされる無線フレームを捕捉する。さらに、捕捉した無線フレームを測定装置140に出力する。
【0024】
測定装置140は、受け付けた無線フレームからIEEE802.11ac/axの規格に基づき、圧縮されたCSIを測定する。さらに、圧縮されたCSIに基づき、物体の位置座標を判定する。なお、ここでの座標は2次元座標に限らず、3次元座標でもよい。
【0025】
このように、対象エリア10内に配置された物体は、圧縮されたCSIを用いて測定される。圧縮されたCSIを含む無線フレームを、無線捕捉装置130が捕捉し、測定装置140が解析することで、物体の位置を検出することができる。
【0026】
なお、無線捕捉装置130は、送信機110または受信機120に内蔵されていてもよい。さらに、測定装置140と無線捕捉装置130は一体になっていてもよい。
【0027】
なお、無線捕捉装置130が捕捉する無線フレームは、受信機120から送信機110へフィードバックされる無線フレームに限らずともよい。送信機110と受信機120の間で送受信される無線信号に含まれる無線フレームであって、圧縮されたCSIが抽出可能であれば、無線フレームの種類は限定されない。
【0028】
〈比較例〉
ここでは、従来技術において、対象エリア10内で局所的に大きな検出誤差が発生する理由を示す。なお、大きな検出誤差は特に対象エリア10壁側で発生しやすいことから、その場合を例に説明する。図2図3は、従来の無線通信システム200における物体の位置の検出方法を示す図である。ここでは、図2に示すように無線通信システム200が2台の受信機120を備えているとし、それぞれを受信機120(1)、受信機120(2)と表記する。
【0029】
従来の無線通信システム200においても、対象エリア10内に配置された物体は、送信機110と受信機120(1)の間、または送信機110と受信機120(2)の間で送受信される、圧縮されたCSIを用いて測定される。また、物体をある位置に配置した場合のCSIと、該物体の位置座標とを教師データとする機械学習を行う。これにより、新たに入力されるCSIから物体の位置座標を判定する回帰関数を作成することができる。すなわち従来の無線通信システム200では、物体の位置を連続的な2次元座標として判定することができる。図3は、対象エリアにおいて物体の位置を示すための2次元座標の一例である。
【0030】
ここで、通常の場合、送信機110と受信機120は屋内に置かれている場合がほとんどである。従来の無線通信システム200においても、送信機110と2台の受信機120は屋内に配置され、四方を壁50(1)、50(2)、50(3)、50(4)に囲まれている。以降では、壁50(1)、50(2)、50(3)、50(4)を特に区別する必要が無い場合には、壁50と表記する。
【0031】
ここで、対象エリア10の中央部で物体を測定する無線信号にとって、壁50からの反射の影響は当方的であり、特定の壁50からの反射波の影響を強く受けることはない。一方、対象エリア10の外周部で物体を測定する無線信号は、四方の壁50(1)、50(2)、50(3)、50(4)のうち特定の壁50に近いことから、特定の壁50からの反射の影響を強く受ける。このように対象エリアの外周部と中央部では、無線信号に対する反射波の影響が異なることが、局所的に大きな検出誤差が発生する理由となる。
【0032】
具体的には、このような環境の無線信号を用いて作成された回帰関数は、中央部のみで最適化された回帰関数、外周部のみで最適化された回帰関数、または中央部と外周部のどちらにもある程度最適化された回帰関数のいずれかになる。
【0033】
図4および図5は、従来の無線通信システム200における、中央部のみで最適化された回帰関数を採用した場合の位置検出結果である。図4は、累積分布関数(Cumulative Distribution Function:CDF)として示された検出誤差である。平均誤差は、外周部において2.03 m、中央部において0.82 mであり、対象エリア10全体として1.44 mであった。また図5は、対象エリア10における検出誤差の分布を示す3次元図である。図5から、中央部の平均誤差は外周部に比べて小さいことが明らかである。
【0034】
このように、従来の無線通信システム200においては、物体の配置された位置によって検出誤差に大きな差が生じる。なお、中央部と外周部のどちらにもある程度最適化された回帰関数を使用した場合は、中央部と外周部における誤差の分布が解消されることも期待できる。しかしながら、中央部における平均誤差は、図4および図5に示した値よりも大きくなる。
【0035】
図6から図9は、本開示の実施の形態1に係る、学習モデルと回帰関数の作成方法を説明する図である。まず、対象エリア10を複数の測定領域11に分割する。図6の例では、対象エリア10は32個の測定領域11に分割されている。なお、分割数の値は一例であって、限定されない。
【0036】
さらに、それぞれの測定領域11内に、1以上の配置点12を定める。図7の例では、それぞれの測定領域11内に、9個の配置点12が定められている。測定装置140は、複数の測定領域11ごとに、教師用CSIを、配置点12のすべてについて測定する処理(以下、教師データ測定処理と称する)を実行する。
【0037】
ここで、複数の測定領域11のそれぞれは、対象エリア10を分割するように定められた複数の判定領域13のいずれに属する。図8の例において、外周部に位置する1-9番、16番、17番、および24-32番の測定領域11は、それぞれが個々のラベルを有する判定領域13に属する。一方、中央部に位置する10-15番、および18-23番の測定領域11は、まとめて1つのラベルを有する判定領域13に属する。なお、ここで示した判定領域13の配置は一例であってこれに限定されない。
【0038】
図9は、測定領域11の番号と、判定領域13のラベルの対応関係を示す図である。外周部に位置する1-9番、16番、17番、および24-32番の測定領域11は、それぞれラベル“A”-“I”、“K”、“L”、“M”-“U”の判定領域13に属する。一方、中央部に位置する10-15番、および18-23番の測定領域11は、まとめてラベル“J”の判定領域13に属する。
【0039】
さらに、測定装置140は、教師用CSIと、判定領域13のラベルとして示された該測定における物体の配置位置とを対応付けた第1の教師データを作成する処理(以下、第1教師データ作成処理と称する)を実行する。さらに、新たに入力されるCSIから物体の位置をラベルとして判定する学習モデル60を第1の教師データを用いて作成する処理(以下、学習モデル作成処理と称する)を実行する。学習モデル60の作成方法としては、ランダムフォレスト、SVM(Support Vector Machine)、K-近傍法、ニューラルネットワーク等の公知の方法が挙げられる。
【0040】
さらに、測定装置140は、教師用CSIと、該測定において物体が配置された位置座標とを対応付けた第2の教師データを作成する処理(以下、第2教師データ作成処理と称する)を実行する。さらに、新たに入力されたCSIから物体の位置を座標として判定する回帰関数70を、第2の教師データを用いて判定領域13ごとに作成する処理(以下、回帰関数作成処理と称する)を実行する。回帰関数70の作成方法としては、非特許文献1に記載された方法が挙げられる。
【0041】
図10および図11は、本開示の実施の形態1に係る、測定装置140による物体の位置の判定方法を説明する図である。ここでは、図10に示すように、対象エリア10がラベル“A”から“E”までの5つの判定領域13に分割されている場合を示す。測定装置140は、学習モデル60を用いて、新たに入力されるCSIから物体の位置を判定領域13のラベルとして判定する処理(以下、ラベル判定処理と称する)を実行する。これにより、対象エリア10における物体の位置をまずは大まかに把握することができる。
【0042】
さらに、測定装置140は、判定されたラベルが示す判定領域13に対応する回帰関数70を用いて、新たに入力されるCSIから物体の位置座標を判定する処理(以下、座標判定処理と称する)を実行する。図11の例においては、ラベル“A”から“E”の判定領域13に対応する、fAからfEまでの回帰関数70がそれぞれ作成されている。座標判定処理においては、ラベル判定処理で判定されたラベルに基づき、対応する回帰関数を用いて位置座標の判定を実施する。各々の判定領域13に対応する回帰関数70を用いることにより、局所的に大きな検出誤差が発生することを防ぐことができる。
【0043】
図12から図14は、本開示の実施の形態1に係る、位置検出結果を説明する図である。判定領域13のうち、壁側に配置される壁側領域については、図12に示すように、4分割、6分割、10分割、18分割とした。一方、壁側領域の内側に配置される内側領域については、図13に示すように、2分割で統一した。図14は、CDFとして示された対象エリア10全体における検出誤差である。平均誤差は、壁側領域を4分割した場合に1.140 m、6分割した場合に0.879 m、10分割した場合に0.809 m、18分割した場合に0.627 mであった。従来技術において、対象エリア10全体における平均誤差が1.44 mであったことは上述の通りである。本開示において、検出誤差が改善されていることは明らかである。本開示では、局所的に大きな検出誤差が発生することを防ぐことにより、対象エリア10全体における平均誤差も改善することができる。
【0044】
図15は、本開示の実施の形態1に係る、測定装置140の構成例を示すブロック図である。抽出部41は、無線捕捉装置130から出力された無線フレームから、圧縮されたCSIを取り出す。前処理部42は、圧縮されたCSIに対して後述の前処理を行う。さらに、前処理部42は、前処理を施したCSIを、該CSIが教師用CSIである場合には作成部43に出力する。一方、該CSIが物体の位置検出のために測定されたCSIである場合には、ラベル判定部44に出力する。
【0045】
作成部43は、前処理部42から受け付けた教師用CSIに基づき、上述の第1教師データ作成処理、第2教師データ作成処理、学習モデル作成処理、および回帰関数作成処理を実行する。さらに、作成した学習モデル60および回帰関数70をラベル判定部44および位置判定部45にそれぞれ出力する。
【0046】
ラベル判定部44は、作成部43から受け付けた学習モデル60に基づき、上述のラベル判定処理を実行する。また、判定されたラベルを位置判定部45に出力する。位置判定部45は、作成部43から受け付けた回帰関数70に基づき、上述の座標判定処理を実行する。
【0047】
図16は、本開示の実施の形態1に係る、CSIの例を示す図である。送信機110のアンテナ数(iとする)と受信機120のアンテナ数(jとする)の組合せと、該組合せに応じて得られる圧縮されたCSIの数と種類が示されている。ここで、φijは、送信機110のアンテナ111と受信機120のアンテナ間における無線信号の位相差である。また、Ψijは送信機110のアンテナ111と受信機120のアンテナ間における無線信号の振幅比の絶対値を逆正接で示した値である。
【0048】
前処理部42が行う前処理とは、例えばφijおよびΨijからコサインとサインを求め、ベクトルを作成することが挙げられる。またはφijおよびΨijからCSI行列を作成し、CSI行列から相関行列を作成してもよい。加えて、相関行列に対してサブキャリア平均を求めてもよい。また、φijおよびΨijからSNRを抽出してもよい。さらにはこれらのパラメータに対して移動平均を求めてもよい。もしくは、φijおよびΨijに前処理を施さずにそのまま出力してもよい。
【0049】
図17は、本開示の実施の形態1に係る、作成部43の構成例を示すブロック図である。教師データ作成部431は、前処理部42から受け付けた教師用CSIと、該CSIの測定における物体の座標(x、y)に基づき、該座標が複数の測定領域11および複数の判定領域13のいずれに属するかを特定する。さらに教師データ作成部431は、第1教師データ作成処理および第2教師データ作成処理を実行する。さらに、作成した第1の教師データ、第2の教師データ、測定領域11の番号、および判定領域13のラベルの情報を記憶部432に出力する。
【0050】
記憶部432は教師データ作成部431から受け付けたデータを記憶する。記憶部432は教師用CSIと判定領域13のラベルの情報とを、学習モデル作成部434に出力する。また、教師用CSIと物体の座標(x、y)とを、回帰関数作成部435に出力する。
【0051】
学習モデル作成部434は、学習モデル作成処理を実行し、学習モデル60を作成する。また、回帰関数作成部435は回帰関数作成処理を実行し、回帰関数70を作成する。
【0052】
図18は、本開示の実施の形態1に係る、記憶部432が記憶するデータの例である。各々の配置点12に対して実施された教師用CSIの測定について、CSI、物体の座標(x1、y1)、測定領域11の番号、判定領域13のラベルが記憶されている。CSIは、たとえばcosφij、sinφij、cosΨij、sinΨijといったベクトルである。
【0053】
なお、測定装置140が行う処理は、CPUとメモリを備え、メモリにプログラムを記憶したコンピュータを用いて、通信用プログラムで実行するようにしてもよい。もしくはFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路を用いて、通信用プログラムで実行するようにしてもよい。尚、通信用プログラムは、記憶媒体に記録して提供されてもよいし、ネットワークを通して提供されてもよい。この点は以下の全ての実施の形態においても共通である。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によれば、伝搬チャネル情報から対象エリア内の物体の位置を座標として判定し、対象エリア内で局所的に大きな検出誤差が発生することを抑制できる無線通信システム、測定装置、無線通信方法、および無線通信用プログラムを提供できる。
【0055】
なお、判定領域13の配置が図8の例に限定されないことは上述の通りである。以下では、判定領域13の配置に対する変形例を複数示す。
【0056】
〈変形例2〉
図19図20は、本開示の実施の形態1に係る、判定領域13の配置に対する第1の変形例である。ここでは、壁50からの距離に応じて判定領域13の配置を決定している。図19に示すように、1-9番、16番、17番、および24-32番の測定領域11は、それぞれが個々のラベルを有する判定領域13に属する。これらの測定領域11は、壁50(1)、50(2)、50(3)、50(4)のいずれか1つと特に近接する壁側領域であって、特に近接する壁50との距離が互いにほぼ等しいと言えるからである。
【0057】
一方、中央部の10-12番、および21-23番の測定領域11は、まとめて1つのラベルを有する判定領域13に属する。これらの測定領域11は、壁50(1)、50(2)、50(4)との距離が互いにほぼ等しいと言えるためである。
【0058】
同様に、中央部の13-15番、および18-20番の測定領域11は、まとめて1つの1つのラベルを有する判定領域13に属する。これらの測定領域11は、壁50(2)、50(3)、50(4)との距離が互いにほぼ等しいと言えるためである。
【0059】
図20図19で説明した方法で決定された判定領域13のラベルと、測定領域11の番号の対応関係を示す図である。図の見方は図9と同様であるため説明は省略する。
【0060】
〈変形例3〉
図21図22は、本開示の実施の形態1に係る、判定領域13の配置に対する第2の変形例である。ここでは、図21に示すように、送信機110が有するアンテナ111のそれぞれと受信機120が有するアンテナとを直線81、82、83、84で結ぶ。その上で、直線81、82、83、84が通過しない判定領域13(以下、非通過領域と称する)が、直線81、82、83、84が通過する判定領域13(以下、通過領域と称する)よりも、小さくなるように判定領域13を設定している。
【0061】
例えば、25-27番の測定領域11は、まとめて1つの判定領域13に分類される。また、17-21番の測定領域11もまとめて1つの判定領域13に分類される。これらはともに直線81が通過する測定領域11である。なお、直線81、82、83が通過する測定領域11についても同様である。
【0062】
一方、1-5番および28-32番の測定領域11は、それぞれが個々の判定領域13に分類される。これらの測定領域11は、直線81、82、83、84がいずれも通過しない領域である。
【0063】
図22図21で説明した方法で決定された判定領域13のラベルと、測定領域11の番号の対応関係を示す図である。図の見方は図9と同様であるため説明は省略する。
【0064】
実施の形態2
本実施形態では、検出誤差の実績に基づき判定領域13の配置を決定する。なお、以降では、実施の形態1からの変更点を説明する。
【0065】
図23は、本開示の実施の形態2に係る、判定領域13の配置を決定するために測定装置140が実行する処理のフローチャートである。まず、処理を開始する。つぎに、判定領域13の配置を決定する(ステップS01)。ここでは、複数の判定領域13のそれぞれに“A”、“B”、“C”、…とラベル付けがされているとする。
【0066】
次に教師データ測定処理において物体が配置された位置座標に物体を配置した場合のCSIを、複数の測定領域11のすべてについて測定し、確認用のCSIとする(ステップS02)。さらに、学習モデル60と回帰関数70を用いて、確認用のCSIに対するラベル判定処理と座標判定処理をそれぞれ実行する(ステップS03)。
【0067】
さらに、判定された物体の位置座標を、対応する測定において物体が配置された位置座標と比較し、検出誤差を複数の測定領域11のすべてについて算出する(ステップS04)。さらに、算出された検出誤差を複数の測定領域11のすべてについて平均化し、対象エリア10全体における平均誤差を求める(ステップS05)。
【0068】
さらに、ラベル“A”の判定領域13における平均誤差を求める(ステップS06)。そこでは、ラベル“A”の判定領域13に含まれる測定領域11に対して検出誤差を平均化する。次に、ラベル“A”の判定領域13における平均誤差と、対象エリア10全体における平均誤差の差を算出する(ステップS07)。
【0069】
次に、求めた差が正の符号を有する閾値以下であるか否かを計算する(ステップS08)。差が閾値以下である場合は、ステップS01で決定されたラベル“A”の判定領域13、およびそれに対応する回帰関数70を採用する(ステップS09)。さらに、ステップS06からS09までをすべての判定領域13に対して実行する。一方、差が閾値より大きい場合も、ステップS06からS09までをすべての判定領域13に対して実行する。
【0070】
すべての判定領域13に対してステップS06からS09までが実行された場合は、判定領域13と、対応する回帰関数70がすべて決定されたか否かを判定する(ステップS10)。決定されている場合は処理を終了する。一方、未決定の判定領域13およびそれに対応する回帰関数が存在する場合は、該判定領域13に対してのみ、ステップS01以降を再帰的に実行する(ステップS11)。
【0071】
なお、ステップS07において、ラベル“A”の判定領域13における平均誤差と、対象エリア10全体における平均誤差の差を算出することを説明した。しかしながら、ラベル“A”の判定領域13における平均誤差と、対象エリア10全体における平均誤差を比較できる量であれば差に限らずともよい。例えば、対象エリア10全体における平均誤差に対するラベル“A”の判定領域13における平均誤差の比率でもよい。その場合、ステップS08における閾値は1以上であればよい。
【0072】
図24は、本開示の実施の形態2に係る、作成部43の構成例を示すブロック図である。本実施形態の作成部43は、実施の形態1の構成例に対して、ラベル判定部436、位置判定部437、誤差計算部438、および平均誤差計算部439をさらに備える。ラベル判定部436は、測定された確認用のCSIに対してラベル判定処理を行う。位置判定部437は、測定された確認用のCSIに対して座標判定処理を行う。誤差計算部438は、各々の測定領域11における検出誤差を算出する。平均誤差計算部439は、対象エリア10全体における平均誤差、および判定領域13ごとの平均誤差を算出する。
【0073】
以上説明したように、本実施形態では、検出誤差の実績に基づき判定領域13の配置を決定する。これにより、検出誤差が小さくなるまで判定領域13を分割し、配置を決定することができ、実施の形態1よりも検出精度を向上させることが可能となる。
【0074】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。
【符号の説明】
【0075】
10 対象エリア、11 測定領域、12 配置点、13 判定領域、41 抽出部、42 前処理部、43 作成部、44 ラベル判定部、45 位置判定部、50 壁、60 学習モデル、70 回帰関数、81、82、83、84 直線、100 無線通信システム、110 送信機、111 アンテナ、120 受信機、130 無線捕捉装置、140 測定装置、200 従来の無線通信システム、431 教師データ作成部、432 記憶部、434 学習モデル作成部、435 回帰関数作成部、436 ラベル判定部、437 位置判定部、438 誤差計算部、439 平均誤差計算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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