IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 栗田工業株式会社の特許一覧

特開2025-1620冷却塔の状態評価方法および冷却塔システム
<>
  • 特開-冷却塔の状態評価方法および冷却塔システム 図1
  • 特開-冷却塔の状態評価方法および冷却塔システム 図2
  • 特開-冷却塔の状態評価方法および冷却塔システム 図3
  • 特開-冷却塔の状態評価方法および冷却塔システム 図4
  • 特開-冷却塔の状態評価方法および冷却塔システム 図5
  • 特開-冷却塔の状態評価方法および冷却塔システム 図6
  • 特開-冷却塔の状態評価方法および冷却塔システム 図7
  • 特開-冷却塔の状態評価方法および冷却塔システム 図8
  • 特開-冷却塔の状態評価方法および冷却塔システム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001620
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】冷却塔の状態評価方法および冷却塔システム
(51)【国際特許分類】
   F28F 27/00 20060101AFI20241225BHJP
   F28C 1/00 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
F28F27/00 501Z
F28C1/00
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219166
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2023100889
(32)【優先日】2023-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】柏木 章吾
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】大高 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】飯村 晶
(72)【発明者】
【氏名】小川 謙亮
(57)【要約】
【課題】複数のセルで構成される冷却塔において、各セルの状態を評価することで、冷却塔の冷却塔効率を正確に算出する冷却塔の状態評価方法、更に性能低下時には水処理剤を供給するシステムを提供する。
【解決手段】冷却水の温度を低下させるファン52をもつ複数のセル51を備える冷却塔5と、熱交換器6それぞれのファン52の電流値、電力または周波数を測定する第1の測定工程と、冷却塔5の設置環境における、外気温、相対湿度および大気圧を測定する第2の測定工程と、第1及び第2の測定工程と備え、管路53の出口から熱交換器6を通過する前の冷却水の出口温度と、熱交換器6通過後から管路53の入り口までの間の冷却水の入口温度と、複数のセル51における測定値に基づいて、冷却塔効率をセル51ごとに連続的に算出する算出工程とを含む冷却塔の状態評価方法、更に性能低下時には水処理剤を提供する水処理剤添加装置を含む冷却塔システムである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風によって冷却水の一部を蒸発させることで冷却水の温度を低下させるファンをもつ複数のセルと、
前記複数または単一のセルに接続され、前記冷却水が外部循環される構成を有する管路であって、前記管路の入口から前記冷却水が供給され、前記管路の出口から前記冷却水が排出されるような構成を有する前記管路と、を備える冷却塔と、
前記冷却水が前記セルの前記管路の出口から入口に向かう途中の位置に配設され、前記冷却水を加熱する熱交換器と、備え、
前記冷却塔の冷却塔効率を算出する冷却塔の状態評価方法において、
前記管路の出口から前記熱交換器を通過する前の冷却水の出口温度と、前記熱交換器通過後から前記管路の入り口までの間の冷却水の入口温度と、前記複数のセルのそれぞれのファンの電流値、電力または周波数を測定する第1の測定工程と、
前記冷却塔の設置環境における、外気温、相対湿度および大気圧を測定する第2の測定工程と、
前記第1及び第2の測定工程における測定値に基づいて、前記冷却塔効率を前記セルごとに連続的に算出する算出工程と、
を含む、冷却塔の状態評価方法。
【請求項2】
前記冷却塔の状態評価方法は、
前記ファンの稼働を停止した前記セルにおける、自然対流又は隣接する前記セルのファンの稼働により発生した通風量を、前記冷却塔の入口の冷却水の温度と任意の一つの前記セルの冷却水温度とから算出し、前記冷却塔効率を補正する補正工程を有する、
請求項1に記載の冷却塔の状態評価方法。
【請求項3】
前記冷却塔の状態評価方法は、前記冷却塔の各セルの冷却塔効率を、前記セルの予め記録した冷却塔効率と算出した前記冷却塔の冷却塔効率を基に、算出するセル算出工程を有する、請求項2に記載の冷却塔の状態評価方法。
【請求項4】
前記冷却塔の状態評価方法は、
前記セルが稼働を切り替えるたびに、各セルの冷却塔効率を算出して記録する記録工程を有する、
請求項3に記載の冷却塔の状態評価方法。
【請求項5】
送風によって冷却水の一部を蒸発させることで冷却水の温度を低下させるファンをもつ複数のセルと、
前記複数または単一のセルに接続され、前記冷却水が外部循環される構成を有する管路であって、前記管路の入口から前記冷却水が供給され、前記管路の出口から前記冷却水が排出されるような構成を有する前記管路を備える冷却塔と、
前記冷却水が前記セルの前記管路の出口から入口に向かう途中の位置に配設され、前記冷却水を加熱する熱交換器と、を備える冷却塔の状態評価方法であって、
前記冷却塔の状態評価方法は、
前記管路の出口から前記熱交換器を通過する前の冷却水の出口温度と、前記熱交換器通過後から前記管路の入り口までの間の冷却水の入口温度と、前記複数のセルのそれぞれのファンの電流値、電力または周波数を測定する第1の測定工程と、
前記冷却塔の設置環境における、外気温、相対湿度および大気圧を測定する第2の測定工程と、
前記第1及び第2の測定工程における測定値に基づいて、前記冷却塔効率を前記セルごとに連続的に算出する算出工程と、
前記算出工程で算出した前記冷却塔効率に基づいて、前記冷却水に水処理剤を添加する添加工程と、を含む、冷却塔の状態評価方法。
【請求項6】
前記冷却塔の状態評価方法は、
前記添加工程の後に、前記第1及び第2の測定工程における測定値に基づいて前記算出工程により前記冷却塔効率を前記セルごとに連続的に算出する、請求項5に記載の冷却塔の状態評価方法。
【請求項7】
前記冷却塔の状態評価方法は、
前記ファンの稼働を停止した前記セルにおける、自然対流又は隣接する前記セルのファンの稼働により発生した通風量を、前記冷却塔の入口の冷却水の温度と任意の一つの前記セルの冷却水温度とから算出し、前記冷却塔効率を補正する補正工程を有し、
前記添加工程が、前記補正工程で補正された前記冷却塔効率に基づいて、前記冷却水に前記水処理剤を添加する、請求項6に記載の冷却塔の状態評価方法。
【請求項8】
前記冷却塔の状態評価方法は、
前記冷却塔の各セルの冷却塔効率を、前記セルの予め記録した冷却塔効率と算出した前記冷却塔の冷却塔効率を基に、算出するセル算出工程を有し、
前記添加工程が、前記セル算出工程で算出された前記冷却塔効率に基づいて、前記冷却水に前記水処理剤を添加する、請求項6に記載の冷却塔の状態評価方法。
【請求項9】
前記冷却塔の状態評価方法は、
前記添加工程が、前記冷却塔効率が予め定めた設定値より低い場合に前記水処理剤を添加する、
請求項7又は8に記載の冷却塔の状態評価方法。
【請求項10】
前記冷却塔の状態評価方法は、
前記添加工程が、前記冷却塔効率が予め定めた設定値との差により、予め設定する前記水処理剤を添加する、
請求項7又は8に記載の冷却塔の状態評価方法。
【請求項11】
送風によって冷却水の一部を蒸発させることで冷却水の温度を低下させるファンをもつ複数のセルと、
前記複数または単一のセルに接続され、前記冷却水が外部循環される構成を有する管路であって、前記管路の入口から前記冷却水が供給され、前記管路の出口から前記冷却水が排出されるような構成を有する前記管路と、を備える冷却塔と、
前記冷却水が前記セルの前記管路の出口から入口に向かう途中の位置に配設され、前記冷却水を冷却する熱交換器と、を含む、
前記冷却塔の冷却塔効率を算出する冷却塔システムであって、
前記管路の出口から前記熱交換器を通過する前の冷却水の出口温度と、前記熱交換器通過後から前記管路の入り口までの間の冷却水の入口温度と、前記複数のセルのそれぞれのファンの電流値、電力または周波数を測定する第1の測定手段と、
前記冷却塔の設置環境における、外気温、相対湿度および大気圧を測定する第2の測定手段と、
前記第1及び第2の測定手段における測定値に基づいて、前記冷却塔効率を前記セルごとに連続的に算出する算出手段と、を含む、冷却塔システム。
【請求項12】
前記算出手段が、前記ファンの稼働を停止した前記セルにおける、自然対流又は隣接する前記セルのファンの稼働により発生した通風量を、前記冷却塔の入口の冷却水の温度と任意の一つの前記セルの冷却水温度とから算出し、前記冷却塔効率を補正する、請求項11に記載の冷却塔システム。
【請求項13】
前記算出手段が、前記冷却塔の各セルの冷却塔効率を、前記セルの予め記録した冷却塔効率と算出した前記冷却塔の冷却塔効率を基に、算出するセル算出工程を有する、請求項12に記載の冷却塔システム。
【請求項14】
前記算出手段が、前記セルが稼働を切り替えるたびに、各セルの冷却塔効率を算出して記録する、請求項13に記載の冷却塔システム。
【請求項15】
前記冷却塔システムは、
前記算出手段が、第1の測定手段と第2の測定手段に通信手段を介して接続している、
請求項11に記載の冷却塔システム。
【請求項16】
送風によって冷却水の一部を蒸発させることで冷却水の温度を低下させるファンをもつ複数のセルと、
前記複数または単一のセルに接続され、前記冷却水が外部循環される構成を有する管路であって、前記管路の入口から前記冷却水が供給され、前記管路の出口から前記冷却水が排出されるような構成を有する前記管路と、を備える冷却塔と、
前記冷却水が前記セルの前記管路の出口から入口に向かう途中の位置に配設され、前記冷却水を冷却する熱交換器と、を含む、冷却塔システムであって、
前記冷却システムは、
前記管路の出口から前記熱交換器を通過する前の冷却水の出口温度と、前記熱交換器通過後から前記管路の入り口までの間の冷却水の入口温度と、前記複数のセルのそれぞれのファンの電流値、電力または周波数を測定する第1の測定手段と、
前記冷却塔の設置環境における、外気温、相対湿度および大気圧を測定する第2の測定手段と、
前記第1及び第2の測定手段における測定値に基づいて、前記冷却塔効率を前記セルごとに連続的に算出する算出手段と、
前記算出手段で算出した前記冷却塔効率に基づいて、前記冷却水に前記水処理剤を添加する水処理剤添加手段と、
前記水処理剤の添加する量を制御する制御手段と、を含む、冷却塔システム。
【請求項17】
前記冷却塔システムは、
前記添加工程の後に、前記第1及び第2の測定工程における測定値に基づいて前記算出工程により前記冷却塔効率を前記セルごとに連続的に算出する、請求項16に記載の冷却塔システム。
【請求項18】
前記制御手段は、
前記ファンの稼働を停止した前記セルにおける、自然対流又は隣接する前記セルのファンの稼働により発生した通風量を、前記冷却塔の入口の冷却水の温度と任意の一つの前記セルの冷却水温度とから算出し、前記冷却塔効率を補正する前記算出手段を制御する、
請求項17に記載の冷却塔システム。
【請求項19】
前記制御手段は、
前記冷却塔の各セルの冷却塔効率を、前記セルの予め記録した冷却塔効率と算出した前記冷却塔の冷却塔効率を基に、算出するセル算出工程を有する前記算出手段を制御する、請求項17に記載の冷却塔システム。
【請求項20】
前記制御手段は、前記冷却塔効率が予め定めた設定値より低い場合に前記水処理剤を添加する前記添加工程を制御する、
請求項18又は19に記載の冷却塔システム。
【請求項21】
前記制御手段は、前記冷却塔効率が予め定めた設定値との差により、予め設定する前記水処理剤を添加する前記添加工程を制御する、請求項18又は19に記載の冷却塔システム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却塔の状態評価方法および冷却塔システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラント、化学プラント、冷空調プラント等の設備プラントは、大量の熱を発生または回収しながらプラントを操業している。これら大量の熱を制御しながらプラントを継続的に安定して操業するためには、水等の各種流体で構成される冷却水等を冷却塔システムで繰り返し使用して運転している。冷却塔システムにおける冷却塔は、経時的に性能が低下することが知られており、安定的にプラントを運転するためには、その低下程度を常に把握しておくことが望ましい。
従来、冷却塔は複数のセルが、セルごとにファンを有し、セル単独で運転できるように連結された状態で設置され、外気条件や運転負荷に合わせてファンの台数を制御しながら運転されている。各セルは隣接して設置されているものの、日光の当たり具合や周辺環境、給水配管の取り回し等の違いにより、性能の低下度合いが異なることから、セルごとに性能の低下度合いを把握することが望ましい。一方で、これまで、冷却塔システムの性能低下状態の評価は、セル単体の評価を組み入れることなく、セルが連結された冷却塔全体としてまとめて評価されることが多かった。
【0003】
また、開放式冷却塔の場合、経時的な性能低下に加え、冷却塔が汚れ、充填材につまりが生じると、通風量が低下し循環水の気化が妨げられたり、また上部散水槽がつまり、散水が偏り局所的に水量と風量のバランスが崩れ、設計通りの気化量を得られないことがある。
密閉式冷却塔の場合、熱交換チューブが汚れると散水と循環水の熱交換効率が低下する。このように冷却塔が汚れると、汚れる前と同じ水温を得るために必要な冷却塔ファンの稼働時間は長くなりエネルギーロスを引き起こすことになる。また、ファンの稼働が連続となっても所定水温が得られずに送水温度が上昇することがある。送水温度の上昇は冷凍機消費電力の増加という問題が生ずる。
一方、冷却塔の汚れ防止としては、冷却水の電気伝導率を監視することによる冷却水の濃縮に対する自動ブロー制御や、スライム抑制およびスケール抑制のために所定の濃度設定による冷却水への水処理剤の注入等が行われている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載されている冷却塔の状態評価装置は、湿式冷却塔に投入される水の温度と前記湿式冷却塔から吐出される水の温度と大気の湿球温度とに基づいて、前記湿式冷却塔の性能の低下状態を評価する方法であり、個別のセルに関する評価については触れられていない。さらに、この状態評価装置はファンの発停を把握する手段について触れられていないことから、ファンの稼働状態が絶えず変化する冷却塔については正確な冷却塔性能を評価することはできない。
また、仮にファンの発停を考慮に入れる場合であっても、ファンが停止しているセル内での通風はゼロであり、冷却水の温度変化はないと仮定することができる。しかし、実際の冷却塔の運転データから、ファンが停止しているセル内でも通風が発生し、冷却水の温度は低下していることがわかってきた。
【0005】
以上のことから、より正確に冷却塔の状態を把握するためには、各セルについて個別に性能を評価することが望ましく、さらにはファンが停止しているセル内での通風を補正した上で評価することが望ましい。
また、さらに冷却塔の性能低下が判明した際には、冷却水への水処理剤の注入等が行われて速やかに復旧させ、そのうえで、冷却塔の状態を把握して、各セルについて個別に性能を評価することで、安定して、省エネルギーの操業を実施することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-100662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、複数のセルで構成され、各セル内で送風を行うファンを発停しながら稼働する冷却塔において、各セルの状態を連続的に評価することで、冷却塔の性能を正確に算出する冷却塔の状態評価方法を提供することである。
さらに、冷却塔の性能を正確に算出する冷却塔の状態評価方法を適用する冷却システムを提供することである。
また、本発明は、冷却塔の性能が低下した時に、速やかに復旧させるために冷却塔の性能を正確に算出する冷却塔の状態評価方法を提供することである。
さらに、本発明は、冷却塔の性能が低下した時に、速やかに復旧させるために冷却塔の性能を正確に算出する冷却塔の状態評価方法を適用する冷却塔システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、本発明の実施形態の特徴を説明する。
(1)送風によって冷却水の一部を蒸発させることで冷却水の温度を低下させるファンをもつ複数のセルと、前記複数または単一のセルに接続され、前記冷却水が外部循環される構成を有する管路であって、前記管路の入口から前記冷却水が供給され、前記管路の出口から前記冷却水が排出されるような構成を有する前記管路と、を備える冷却塔と、前記冷却水が前記セルの前記管路の出口から入口に向かう途中の位置に配設され、前記冷却水を加熱する熱交換器と、備え、前記冷却塔の冷却塔効率を算出する冷却塔の状態評価方法であって、前記管路の出口から前記熱交換器を通過する前の冷却水の出口温度と、前記熱交換器通過後から前記管路の入り口までの間の冷却水の入口温度と、前記複数のセルのそれぞれのファンの電流値、電力または周波数を測定する第1の測定工程と、前記冷却塔の設置環境における、外気温、相対湿度および大気圧を測定する第2の測定工程と、前記第1及び第2の測定工程における測定値に基づいて、前記冷却塔効率を前記セルごとに連続的に算出する算出工程と、を含む、冷却塔の状態評価方法。
(2)前記冷却塔の状態評価方法は、前記ファンの稼働を停止した前記セルにおける、自然対流又は隣接する前記セルのファンの稼働により発生した通風量を、前記冷却塔の入口の冷却水の温度と任意の一つの前記セルの冷却水温度とから算出し、前記冷却塔効率を補正する補正工程を有する、(1)に記載の冷却塔の状態評価方法。
(3)前記冷却塔の状態評価方法は、前記冷却塔の各セルの冷却塔効率を、前記セルの予め記録した冷却塔効率と算出した前記冷却塔の冷却塔効率を基に、算出するセル算出工程を有する、(2)に記載の冷却塔の状態評価方法。
(4)前記冷却塔の状態評価方法は、前記セルが稼働を切り替えるたびに、各セルの冷却塔効率を算出して記録する記録工程を有する、(3)に記載の冷却塔の状態評価方法。
【0009】
(5)送風によって冷却水の一部を蒸発させることで冷却水の温度を低下させるファンをもつ複数のセルと、
前記複数または単一のセルに接続され、前記冷却水が外部循環される構成を有する管路であって、前記管路の入口から前記冷却水が供給され、前記管路の出口から前記冷却水が排出されるような構成を有する前記管路と、を備える冷却塔と、
前記冷却水が前記セルの前記管路の出口から入口に向かう途中の位置に配設され、前記冷却水を加熱する熱交換器と、を含む冷却塔の状態評価方法であって、
前記冷却塔の状態評価方法は、
前記管路の出口から前記熱交換器を通過する前の冷却水の出口温度と、前記熱交換器通過後から前記管路の入り口までの間の冷却水の入口温度と、前記複数のセルのそれぞれのファンの電流値、電力または周波数を測定する第1の測定工程と、
前記冷却塔の設置環境における、外気温、相対湿度および大気圧を測定する第2の測定工程と、
前記第1及び第2の測定工程における測定値に基づいて、前記冷却塔効率を前記セルごとに連続的に算出する算出工程と、
前記算出工程で算出した前記冷却塔効率に基づいて、前記冷却水に水処理剤を添加する添加工程と、を含む、冷却塔の状態評価方法。
(6)前記冷却塔の状態評価方法は、
前記添加工程の後に、前記第1及び第2の測定工程における測定値に基づいて前記算出工程により前記冷却塔効率を前記セルごとに連続的に算出する、(5)に記載の冷却塔の状態評価方法。
(7)前記冷却塔の状態評価方法は、
前記ファンの稼働を停止した前記セルにおける、自然対流又は隣接する前記セルのファンの稼働により発生した通風量を、前記冷却塔の入口の冷却水の温度と任意の一つの前記セルの冷却水温度とから算出し、前記冷却塔効率を補正する補正工程を有し、
前記添加工程が、前記補正工程で補正された前記冷却塔効率に基づいて、前記冷却水に前記水処理剤を添加する、(6)に記載の冷却塔の状態評価方法。
(8)前記冷却塔の状態評価方法は、
前記冷却塔の各セルの冷却塔効率を、前記セルの予め記録した冷却塔効率と算出した前記冷却塔の冷却塔効率を基に、算出するセル算出工程を有し、
前記添加工程が、前記セル算出工程で算出された前記冷却塔効率に基づいて、前記冷却水に前記水処理剤を添加する、(6)に記載の冷却塔の状態評価方法。
(9)前記冷却塔の状態評価方法は、
前記添加工程が、前記冷却塔効率が予め定めた設定値より低い場合に前記水処理剤を添加する、(7)又は(8)に記載の冷却塔の状態評価方法。
(10)前記冷却塔の状態評価方法は、
前記添加工程が、前記冷却塔効率が予め定めた設定値との差により、予め設定する前記水処理剤を添加する、(7)又は(8)に記載の冷却塔の状態評価方法。
【0010】
(11)送風によって冷却水の一部を蒸発させることで冷却水の温度を低下させるファンをもつ複数のセルと、前記複数または単一のセルに接続され、前記冷却水が外部循環される構成を有する管路であって、前記管路の入口から前記冷却水が供給され、前記管路の出口から前記冷却水が排出されるような構成を有する前記管路と、を備える冷却塔と、前記冷却水が前記セルの前記管路の出口から入口に向かう途中の位置に配設され、前記冷却水を加熱する熱交換器と、を備え、前記冷却塔の冷却塔効率を算出する冷却塔システムであって、前記管路の出口から前記熱交換器を通過する前の冷却水の出口温度と、前記熱交換器通過後から前記管路の入り口までの間の冷却水の入口温度と、前記複数のセルのそれぞれのファンの電流値、電力または周波数を測定する第1の測定手段と、前記冷却塔の設置環境における、外気温、相対湿度および大気圧を測定する第2の測定手段と、前記第1及び第2の測定手段における測定値に基づいて、前記冷却塔効率を前記セルごとに連続的に算出する算出手段と、を含む、冷却塔システム。
(12)前記算出手段が、前記ファンの稼働を停止した前記セルにおける、自然対流又は隣接する前記セルのファンの稼働により発生した通風量を、前記冷却塔の入口の冷却水の温度と任意の一つの前記セルの下部水槽中の冷却水温度とから算出し、前記冷却塔効率を補正する、(11)に記載の冷却塔システム。
(13)前記算出手段が、前記冷却塔の各セルの冷却塔効率を、前記セルの予め記録した冷却塔効率と算出した前記冷却塔の冷却塔効率を基に算出する、(12)に記載の冷却塔システム。
(14)前記算出手段が、前記セルが稼働を切り替えるたびに、各セルの冷却塔効率を算出して記録する、(13)に記載の冷却塔システム。
(15)前記冷却塔システムは、前記算出手段を、第1の測定手段と第2の測定手段に通信手段を介して接続している、(11)に記載の冷却塔システム。
【0011】
(16)送風によって冷却水の一部を蒸発させることで冷却水の温度を低下させるファンをもつ複数のセルと、
前記複数または単一のセルに接続され、前記冷却水が外部循環される構成を有する管路であって、前記管路の入口から前記冷却水が供給され、前記管路の出口から前記冷却水が排出されるような構成を有する前記管路と、を備える冷却塔と、
前記冷却水が前記セルの前記管路の出口から入口に向かう途中の位置に配設され、前記冷却水を冷却する熱交換器と、
前記冷却水に水処理剤を添加する水処理剤添加装置と、を含む、冷却塔システムであって、
前記冷却システムは、
前記管路の出口から前記熱交換器を通過する前の冷却水の出口温度と、前記熱交換器通過後から前記管路の入り口までの間の冷却水の入口温度と、前記複数のセルのそれぞれのファンの電流値、電力または周波数を測定する第1の測定手段と、
前記冷却塔の設置環境における、外気温、相対湿度および大気圧を測定する第2の測定手段と、
前記第1及び第2の測定手段における測定値に基づいて、前記冷却塔効率を前記セルごとに連続的に算出する算出手段と、
前記算出手段で算出した前記冷却塔効率に基づいて、前記冷却水に前記水処理剤を添加する水処理剤添加手段と、を制御する制御手段を含む、冷却塔システム。
(17)前記冷却システムは、前記添加工程の後に、前記第1及び第2の測定工程における測定値に基づいて前記算出工程により前記冷却塔効率を前記セルごとに連続的に算出する、(16)に記載の冷却塔システム。
(18)前記制御手段は、前記ファンの稼働を停止した前記セルにおける、自然対流又は隣接する前記セルのファンの稼働により発生した通風量を、前記冷却塔の入口の冷却水の温度と任意の一つの前記セルの冷却水温度とから算出し、前記冷却塔効率を補正する前記算出手段を制御する、(16)に記載の冷却塔システム。
(19)前記制御手段は、前記冷却塔の各セルの冷却塔効率を、前記セルの予め記録した冷却塔効率と算出した前記冷却塔の冷却塔効率を基に、算出するセル算出工程を有する前記算出手段を制御する、(16)に記載の冷却塔システム。
(20)前記制御手段は、前記冷却塔効率が予め定めた設定値より低い場合に前記水処理剤を添加する前記添加工程を制御する、(18)又は(19)に記載の冷却塔システム。
(21)前記制御手段は、前記冷却塔効率が予め定めた設定値との差により、予め設定する前記水処理剤を添加する前記添加工程を制御する、(18)又は(19)に記載の冷却塔システム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のセルで構成され、各セル内で送風を行うファンが断続的に稼働する冷却塔において、各セルの状態を評価することで、冷却塔の冷却塔効率を正確に算出する冷却塔の状態評価方法であり、これを用いる冷却塔システムを提供することができる。
また、本発明によれば、冷却塔の性能状態に応じて水処理剤を供給し、冷却塔効率の悪化を早期に復旧できる冷却塔の状態評価方法であり、これを用いる冷却塔システムを提供することができる
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の冷却塔の状態評価方法の一実施形態を示す図である。
図2】本発明の冷却塔の状態評価方法の一実施形態を示す図である。
図3】本発明の冷却塔の状態評価方法の一実施形態を説明するフローチャートを示す図である。
図4】本発明の冷却塔の状態評価方法の一実施形態を説明するフローチャートを示す図である。
図5】本発明の冷却塔の状態評価方法の一実施形態を説明するフローチャートを示す図である。
図6】本発明の冷却塔の状態評価方法の一実施形態を説明するフローチャートを示す図である。
図7】本発明の冷却塔の状態評価方法を用いる冷却塔システムの一実施形態を示す図である。
図8】本発明の冷却塔の状態評価方法を用いる冷却塔システムの一実施形態を示す図である。
図9】2月1~28日の間の実験条件(1)、(2)、(3)における冷却塔効率と、ファン稼働台数の変更が生じた期間を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。以下の説明は、本発明における実施の形態の一例であって、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0015】
本発明の冷却塔の状態評価方法は、送風によって冷却水の一部を蒸発させることで冷却水の温度を低下させるファンをもつ複数のセルと、複数または単一のセルに接続され、冷却水が外部循環される構成を有する管路であって、管路の入口から冷却水が供給され、管路の出口から冷却水が排出されるような構成を有する管路と、を備える冷却塔と、冷却水がセルの管路の出口から入口に向かう途中の位置に配設され、冷却水を加熱する熱交換器と、備え、冷却塔の冷却塔効率を算出する冷却塔の状態評価方法において、管路の出口から熱交換器を通過する前の冷却水の出口温度と、熱交換器通過後から管路の入り口までの間の冷却水の入口温度と、複数のセルのそれぞれのファンの電流値、電力または周波数を測定する第1の測定工程と、冷却塔の設置環境における、外気温、相対湿度および大気圧を測定する第2の測定工程と、第1及び第2の測定工程における測定値に基づいて、冷却塔効率をセルごとに連続的に算出する算出工程とを含む。
【0016】
図1は、本発明の冷却塔の状態評価方法の一実施形態を示す図である。
本発明の冷却塔の状態評価方法を実施する冷却塔システムにおける冷却設備3は、制御装置4、冷却塔5、冷却水を循環させる循環ポンプ55、熱交換器6とを備えている。
冷却塔5は、複数のセル511,512,513,…,51n(以下、総称する場合は「セル51」とする。以下、同じ。)を備えている。また、セル51は、ファン521,522,523,…,52nを備えている。また、各セル51は、内部に冷却水と空気との接触効率を増加させる役割を果たす充填材と冷却水と直接的に接触する水槽とを備えている。また、ファン52に送る電気の電流値、電力、又は周波数を測定する電気測定手段541,…,54n、また、冷却水を循環させる管路53には、冷却塔の入口部分の水温を測定する入口温度測定手段(T1)421、冷却塔の出口部分の水温を測定する出口温度測定手段(T2)422、セル51の出口部分の水温を測定するセル出口温度測定手段(T3)423を含む第1の測定手段が設けられている。さらに、冷却塔5の設置環境における外気温、相対湿度、大気圧を測定する環境測定手段424を含む第2の測定手段が設けられている。
【0017】
制御装置4は、ファン52に送る電気量、循環ポンプ55の水量を制御する制御部41を有している。また、制御部41は、電気測定手段54、入口温度測定手段(T1)421、出口温度測定手段(T2)422およびセル出口温度測定手段(T3)423を有する第1の測定手段と、冷却塔5を設置する外気温、相対湿度、大気圧等の環境測定手段424を有する第2の測定手段とが測定する測定値を受信部42を介して、データとして記録するなどの機能を有する。また、受信部42が受信したデータからの測定値を利用して、制御部41が備える算出手段により冷却塔5の状態を冷却効率として算出し、冷却塔の状態を評価する状態評価方法を実施する。さらに、制御装置4は、図示していないが、その他の装置およびシステム、例えば入力装置、インターネット等の通信手段に接続されている。
【0018】
従来の冷却塔の状態評価方法は、ファン52の発停を把握する手段について触れられていないことから、ファン52の稼働状態が絶えず変化する冷却塔5については正確な冷却塔効率を評価することができていなかった。また、仮にファン52の発停を考慮に入れる場合でも、ファン52が停止しているセル51内での通風はゼロであり、冷却水の温度変化はないと仮定していると考えられる。しかし、実際にはファン52が停止しているセル51内でも周囲の大気の対流や隣接セル51のファン52の稼働により通風が発生し、冷却水の温度は低下している。特に、湿球温度が低下する冬季においては、この水温低下を無視して冷却塔効率を算出すると、過大に評価してしまうことが分かってきた。さらに、冷却塔5の設置環境によってはセル51ごとに性能低下度合いが異なることは少なくないため、セル単位で冷却塔5の性能を評価することが望ましい。
【0019】
本発明の冷却塔の状態評価方法は、さらに、算出工程で算出した冷却塔効率に基づいて、冷却水に水処理剤を添加する添加工程を含む。
【0020】
図2は、本発明の冷却塔の状態評価方法の一実施形態を示す図である。
本発明の冷却塔の状態評価方法、冷却水に水処理剤を添加する添加工程を実施する水処理剤添加手段を有している。水処理剤添加手段として、図2に示すように、水処理剤添加装置7を備えている。水処理剤添加装置7は、図示していないが、水処理剤を貯留する水処理剤タンクと、水処理剤を水処理剤タンクから輸送する輸送ポンプを備えている。水処理剤は、固体でも液体でも限定されない。輸送する輸送ポンプは、貯留タンク又は循環経路、補給水経路のいずれかの個所で水処理剤を添加することができる。
添加される水処理剤が固形の水処理剤の場合、冷却塔5、管路53への添加方法は特に問わないが、冷却水中に浸漬させる方法又は水処理剤の一部を冷却水と接触させる方法が望ましい。液体の水処理剤の場合は、チューブポンプを用いる方法、ベローズポンプを用いる方法、輸送ポンプを用いずに重力落下させて添加する方法等のいずれかが好ましい。
【0021】
水処理剤として、スライムコントロール剤とスケール防止剤、をあげることができる。水処理剤の成分は特に問わないが、酸化剤が好ましく、特に、塩素剤であることが望ましい。さらに、遊離型塩素剤は腐食性が高く、冷却塔5を損傷する恐れがあるために、結合型塩素を含むことがより望ましい。
【0022】
スライムコントロール剤とは、レジオネラ属菌等によって送排水施設や設備、配管内などに堆積した汚れで、泥状の粘着物を抑制する水処理剤である。投入間隔は殺菌効果が持続される期間を目安としており、濃度や利用季節により異なる。スライムコントロール剤は、スライムの表面に作用し、レジオネラ属菌の数を減少させて、配管内への付着や増殖を防止する。
また、スケール防止剤とは、送排水施設や設備、配管内などに堆積した水に不溶な酸化物を除去する水処理剤である。配管設備などの内部で結晶化して固着してしまうと、除去することが非常に困難であるため、送排水に問題が生じる。スケール防止剤として、正リン酸、重合リン酸、ホスホン酸等のリン酸塩、アクリル酸ポリマーおよびコポリマー、マレイン酸ポリマーおよびコポリマーをあげることができる。さらに具体的に挙げると、例えば、カルボン酸単位を有する重合体、ホスホン酸 、ポリリン酸塩などを挙げることができる。
【0023】
また、本発明の冷却塔の状態評価方法は、水処理剤を添加する添加工程を制御する制御手段を備えている。制御手段としては、図2に示すように、制御装置4の中の制御部41に設けられている。制御装置4の制御部41は、例えば、プログラムを演算するCPU等の演算手段、プログラムや演算結果を記憶するROM等の記憶手段等を含んで構成されるマイクロコンピュータと電子回路等で構成され、受信部42が受信した測定値を利用して、制御部41が備える算出手段が冷却塔5の状態を評価する状態評価方法を実施する。さらに、制御装置4は、冷却塔5の状態を評価し、冷却塔5の冷却水に添加する水処理剤の種類、添加する量を調整する機能を有する。さらに、制御部41は、水処理剤添加装置7に、冷却塔5、管路53等への水処理剤の添加するように制御する。
【0024】
冷却塔5における冷却水は、冷却塔5における冷却する際の蒸発により冷却水の総量が減少する。また、冷却水は、冷却塔5へ供給する際の飛散によっても減少する。この減少した冷却水の補給とともに、水処理剤も併せて添加される。このように、水処理剤は、常に水処理剤添加装置7によって添加されている。
しかし、冷却水の減少・変動は一様でなく、さらに、経時的な使用によって、冷却塔5の劣化、汚れによるセル51のつまり、熱交換器6の汚れ等による冷却設備3の劣化に伴い冷却塔効率が低下する。したがって、本発明の冷却塔の状態評価方法では、冷却塔5の状態評価方法で算出した冷却塔効率に基づいて、水処理剤の添加する種類、添加する量を決定し、冷却水の変動だけではなく、冷却塔5の劣化・汚れを防止するために水処理剤を添加する添加工程を有している。
【0025】
図3は、本発明の冷却塔の状態評価方法を説明するフローチャートを示す図である。
初めに、JIS B 8609における冷却能力試験方法に準拠して、冷却塔5を構成するセル51の冷却塔効率を算出し、メモリ等の記憶装置(図示せず)を有する制御部41を備える制御装置4に記録する(ステップS1)。なお、冷却塔効率とは、冷却塔5の現在の能力をいい、具体的には、設計能力に対する現在の冷却能力の比をいう。
JIS B 8609における試験方法は、規格に定められた冷却設備3を動作させ、その結果を利用して入口水温と入口空気湿球温度とが標準設計温度のときの水温レンジ及び標準冷却能力を求める方法である。
【0026】
次に、各セル51のファン周波数、電流値、電力のいずれかまたは全てを制御装置4に記録し、同時に、ファン52の稼働の有無を確認する(ステップS2)。ステップS2は、すべてのセル51におけるファン52が稼働しているか、または、稼働していないファン52のあるセル51が少なくとも一つあるかを判断する。
【0027】
少なくとも一つのファン52が稼働していないと判断した場合は、ファン52が停止しているセル内の温度差(T1-T3)から、JIS B 8609の規格に準拠して、冷却塔効率を求める際の応用により、稼働していないセル内の通風量を算出する(ステップS3)。冷却塔効率は、対象とする冷却塔が、ある運転条件において、設計温度差(設計冷却能力を発揮した際の冷却塔入り口出口の温度差)と、「実際の入り口出口温度差」との比から計算される。また、設計温度差は外気の状態によって変化するため、外気温、相対湿度、大気圧を測定し、周辺空気の物理的状態を把握する必要がある。さらに、冷却塔効率は、周囲環境の気象条件だけではなく、セル及び冷却塔周囲における大気の流れである通風量も大きく影響している。これは、ファン52が稼働していなくとも、冷却塔5に設置されたすべてのセル51に冷却水が流れている。また、ファン52が稼働してなくとも、周囲の大気は自然に流れていることからセル内を自然落下もしくはセル内に供えられた充填材を流下する冷却水又は水槽の冷却水を冷却する。さらに、大気の温度によって、例えば、夏の外気温と冬の外気温では、セル51の冷却に与える影響は大きく違ってくる。したがって、ステップS3では、稼働していないセル51における冷却水に与える影響を通風量として算出する。稼働していないセル51が複数ある場合は、同様にして、それぞれのセル51の通風量を算出することができる。
【0028】
次に、本発明の冷却塔の状態評価方法は、算出工程の中に稼働していないセル51の通風量を差し引いて、稼働しているセル51の冷却塔効率を算出することで補正し、稼働している冷却塔の冷却塔効率を連続的に算出する(ステップS4)。ここで、算出されるのは稼働しているファン52を有するセル51の冷却塔効率の平均値である。さらに、ステップS4は、稼働していないセル51における通風量を算出し、冷却塔効率を補正する補正工程を含んでいる。補正は、冷却水の入口温度(T1)、セル出口温度(T3)との差において、稼働していないセル51の冷却塔出口温度(T2)への寄与分を通風量に逆算して求めることができる。
【0029】
従来は、稼働していないセル51も、稼働しているセル51に含めて冷却塔効率を算出していたために、冷却塔5としての冷却塔効率は小さくなる。また、逆に、稼働していないセル51が冷却水温度の低下に与える影響を考慮せずに、稼働しているセル51のみで冷却塔効率を算出すると、冷却塔効率は大きくなる。
したがって、稼働していないセル51における通風量を算出し、記冷却塔効率を補正する補正工程を有しない冷却塔の状態評価方法は、セル51を含む冷却塔効率を正確に算出することができない。
これに対して、本発明の冷却塔の状態評価方法は、稼働していないセル51の冷却塔5の冷却水に対する寄与分を補正工程で補正することで、稼働しているセル51からなる冷却塔5の冷却塔効率を正確に算出することができる。
【0030】
図4は、本発明の冷却塔の状態評価方法を説明するフローチャートを示す図である。
本発明の冷却塔の状態評価方法は、稼働しているセル51からなる冷却塔5の冷却塔効率を算出する(ステップS4)。さらに、本発明の冷却塔の状態評価方法は、算出した冷却塔効率の平均値を予め定める所定の設定値より高いか判定する(ステップS5)。
ステップS5において、冷却塔効率の平均値が、所定の設定値より高いと判定した場合(ステップS5YES)、水処理剤の添加を積極的には実施しないが、冷却水の蒸発及び飛散による減少に伴う水処理剤を、通常の設定濃度となるように添加することがある。水処理剤を添加した後に、冷却塔の状態評価方法を終了することができる(エンド)。
【0031】
一方、冷却塔効率が所定の設定値より低いと判定した場合(ステップS5NO)、冷却塔効率の回復のために水処理剤を通常の設定濃度となるように、添加量を通常より増加して水処理剤を添加する(ステップS6)。ここでは、冷却塔5の状態評価方法で算出した冷却塔効率に基づいて、水処理剤の添加する種類、添加する量を決定し、冷却水の変動だけではなく、冷却塔5の劣化・汚れを防止するために水処理剤を添加する。この場合、通常の場合に比べて増加する添加量、又は添加する水処理剤の種類を予め定めておくことが好ましい。特に、冷却塔効率の閾値と水処理剤の添加量を複数設定しておくことが好ましい。または、通常時の水処理剤に加えて又は代えて、別の水処理剤を添加することも可能である。
別の水処理剤としては、通常使用しているスライムコントロール剤が酸化剤系の場合、増量するのではなく、酸化剤と異なる作用原理である有機系スライムコントロール剤を使用した方がスライムをコントロールする効果が高まることがある。
また、通常使用しているスケール防止剤の場合、スケール析出作用が高いものの、一旦析出したスケールの溶解作用は弱く、スケール溶解には多量のスケール防止剤が必要になる。そのため、異なる析出抑制効果を有するスケール防止剤を添加することで、析出抑制効果を高まることがある。
さらに、水処理剤を添加する添加工程(ステップS6)後に、第1及び第2の測定工程における測定値に基づいて、算出工程により冷却塔効率をセル51ごとに連続的に算出する(ステップS1)に移動する。次に、同様に処理して、算出した冷却塔効率の平均値を予め定める所定の設定値より高いか判定する(ステップS5)に移動する。冷却塔効率の平均値が、所定の設定値より高いと判定した場合(ステップS5YES)、冷却塔の状態評価方法を終了することができる(エンド)。
これにより、冷却塔5の冷却塔効率が低下し、冷却塔5の性能が低下したことが判明した際には、冷却水への水処理剤の注入等が行われて速やかに復旧させ、そのうえで、冷却塔5の状態を把握して、各セル51について個別に性能を評価することで、冷却塔5の性能を安定させて、省エネルギーの操業を継続的に実施することができる。
【0032】
または、水処理剤を添加する添加工程(ステップS6)後に、直接に冷却塔の状態評価方法を終了することができる(エンド)。これは、添加する水処理剤の種類、量によって回復する冷却塔効率を予測することが可能である。また、添加する水処理剤が冷却塔効率に作用する時間が必要である。したがって、添加工程(ステップS6)後に冷却塔の状態評価方法を終了させ、ある程度の時間経過後に必要に応じて改めて冷却塔の状態評価方法を開始することができる。
【0033】
水処理剤を添加する添加処理(ステップS6)において、水処理剤が1種類の場合、冷却塔効率90%以下では水処理剤の添加量を第二段階まで増加させ、通常時の1.5倍にする、または、冷却塔効率80%以下では水処理剤の添加量を第三段階まで増加させ、通常時の2.0倍にする設定をすることができる。なお、添加処理(ステップS6)において、冷却塔効率に関わらず、冷却水の蒸発又は飛散による減少に応じて水処理剤を添加している段階を第一段階としている。
また、水処理剤が2種類の場合、例えば通常的に添加する水処理剤と別の水処理剤を添加する場合がある。冷却塔効率90%以下の場合、1回ごとに冷却水1mあたり200gの別の水処理剤を24時間毎に添加する。24時間毎に別の水処理剤の添加を繰り返すことで冷却塔効率が回復した後に、水処理剤の添加を停止する。また、冷却塔効率80%以下の場合、1回ごとに冷却水1mあたり400gの別の水処理剤を12時間毎に添加する。12時間毎に別の水処理剤の添加を繰り返すことで冷却塔効率が回復した後に、水処理剤の添加を停止する。
また、冷却塔効率90%以下の場合、別の水処理剤の添加量を通常的に添加する水処理剤の0.5倍を追加で添加する、冷却塔効率80%以下の場合、別の水処理剤の添加量を通常的に添加する水処理剤の1.0倍を追加で添加する。
これらによって、冷却塔効率が低くなり冷却塔の性能が低下した時に、冷却塔効率が低くなった状態に応じた水処理剤を速やかに添加することで、冷却塔効率を早期に復旧させることができる。
【0034】
また、本発明の冷却塔の状態評価方法は、セルごとの冷却塔効率を算出することができる。図5は、本発明の冷却塔の状態評価方法を説明するフローチャートを示す図である。
本発明の冷却塔の状態評価方法は、さらに、セル51の予め記録した冷却塔効率と算出した冷却塔5の冷却塔効率を基に冷却塔5の各セル51の冷却塔効率を算出するセル算出工程を有する。
複数セル51を有する冷却塔5においては、それぞれのファン52の運転時間を平均化するように順次稼働セル51を切り替えるような運転方法が採用されることが多い。したがって、冷却塔5の稼働に伴って、連続的に冷却塔効率を算出するのと同時に、ファン52を稼働させている電流値等から稼働しているセル51をモニタリングすることで、各セル51の冷却塔効率もセル評価工程で算出することができる。さらに、算出した各セル51の冷却塔効率を記録する記録工程を設けている。なお、ここでは、稼働していないセル51が1つである冷却塔5で説明する。
【0035】
初めに、制御装置4が、記録された各セル51の冷却塔効率のうち最も過去に記録されたセル51を特定する(ステップS11)。なお、ここでは、特定したセル51をセルAと称する。次に、算出した冷却塔効率及びセルA以外の各セル51の冷却塔効率から、セルAの冷却塔効率を算出し、制御装置4に記録されている冷却塔効率の値を更新する(ステップS12)。これは、稼働している冷却塔5の中で、各セル51の冷却塔効率が既に算出されている。また、最初であっても、冷却塔5の最初の稼働する際にも、各セル51の冷却塔効率が算出されている。したがって、算出された冷却塔5の冷却塔効率と、稼働しているセル51の冷却塔効率から、セルAの寄与分となる冷却塔効率を算出することができる。
【0036】
次に、冷却塔5の各セル51の稼働順序を切り替わるたびに、セル51の冷却塔効率の算出を繰り返すことで、連続的に各セル51の冷却塔効率を算出する(ステップS13)。さらに、各セル51を評価した後に、記録工程により、制御装置4に記録する。したがって、冷却塔5に備えられている各セル51の冷却塔効率を連続的に把握することができる。これにより、各セル51の現在の性能状態を正確に把握することができる。更に性能低下時には水処理剤の供給することにより効率悪化を早期に回復することができる。
【0037】
図6は、本発明の冷却塔の状態評価方法を説明するフローチャートを示す図である。
冷却塔5の各セル51の稼働順序を切り替わるたびに、セル51の冷却塔効率の算出を繰り返すことで、連続的に各セル51の冷却塔効率を算出する(ステップS13)に移動する。さらに、本発明の冷却塔の状態評価方法は、算出した各セル51ごとの冷却塔効率を予め定める所定の設定値より高いか判定する(ステップS14)。
ステップS14において、算出したセル51ごとの冷却塔効率が、所定の設定値より高い高いと判定した場合(ステップS14YES)、水処理剤の添加を積極的には実施しないが、冷却水の蒸発及び飛散による減少に伴う水処理剤を、通常の設定濃度となるように添加することがある。水処理剤を添加した後に、冷却塔の状態評価方法を終了することができる(エンド)。
【0038】
一方、セル51の冷却塔効率が設定値より低いと判定した場合(ステップS14NO)、冷却塔効率の回復のために水処理剤を通常の設定濃度となるように、添加量を通常より増加して水処理剤を添加する(ステップS15)。これにより、冷却塔効率効率の悪化を早期に復旧できる仕組みである。
各セル51ごとの冷却塔効率を予め定める所定の設定値より高いか判定することで、水処理剤の供給の有無に関わらず、セル51の急激な冷却塔効率の低下は故障等の障害であり、また、セル51の連続的な冷却塔効率の低下は、経年劣化であることがわかる。また、セル51の修理、改修の時期を見定めることができる。また、冷却塔5の修理・改修は、費用を抑えるためにセル単位で実施されることが多いが、各セル51の冷却塔効率を把握しておくことで、能力低下が著しいセル51を優先的に修理・改修することができ、費用対効果を最大化することができる。
また、水処理剤を添加した後に、冷却塔の状態評価方法を終了することができる(エンド)。しかし、ここでは、再度、添加工程(ステップS15)の後に、冷却塔効率のうち最も過去に記録されたセル51を特定する(ステップS11)に移動する。次に、同様に処理して、算出した各セルごとの冷却塔効率を予め定める所定の設定値より高いか判定する(ステップS14)。冷却塔効率の平均値が、所定の設定値より高い場合冷却塔効率が高いことで、冷却塔の状態評価方法を終了することができる(エンド)。
これにより、冷却塔5の冷却塔効率が低下し、冷却塔5の性能が低下したことが判明した際には、冷却水への水処理剤の注入等が行われて速やかに復旧させ、そのうえで、冷却塔5の状態を把握して、各セルについて個別に性能を評価することで、冷却塔5の性能を安定させて、省エネルギーの操業を継続的に実施することができる。
【0039】
または、水処理剤を添加する添加工程(ステップS14)後に、直接に冷却塔5の状態評価方法を終了することができる(エンド)。これは、添加する水処理剤の種類、量によって回復する冷却塔効率を予測することが可能である。また、添加する水処理剤が冷却塔効率に作用する時間が必要である。したがって、添加工程(ステップS14)後に冷却塔の状態評価方法を終了させ、ある程度の時間経過後に必要に応じて改めて、冷却塔の状態評価方法を開始することができる。
【0040】
図7は、本発明の冷却塔の状態評価方法を実施するシステムの一実施形態の構成を示す図である。冷却塔5の状態評価方法を実施する冷却塔システム100は、図示していないが、冷却対象物の熱負荷となるボイラー等の熱源と接続している。さらに、冷却塔システム100は、入力装置1、通信手段2、制御装置4、冷却設備3として冷却塔5、循環ポンプ55および熱交換器6、その他に給水ポンプ(図示せず)を備えている。その他に、冷却塔システム100は、通信手段2をウェブに配置することでインターネット23に接続することができる。
【0041】
入力装置1は、冷却設備3を運転するための運転条件をオペレーター8が入力する入力部11を有している。オペレーター8が入力した運転条件、および、冷却設備3等の運転状況を表示する表示部12を備えている。入力装置1は、インターネット23を介さずに直接にLAN回線21を通して制御装置4に接続していてもよい。また、入力装置1は、外部のデータサーバー14とLAN回線、電話回線等で接続し、必要な気象予測情報を得ることができる。また、入力装置1は、LAN回線22を通してインターネット23に接続していることで制御装置4と接続させてもよい。同様に、インターネット23は、多数の中間サーバーに接続していて、例えば、気象予測情報を扱う気象予測サーバー、その他に、演算処理をする演算処理サーバー、自動制御を処理する中間サーバー(図示せず)などに接続することができる。したがって、遠隔地にある冷却塔5に対して、インターネット23から外気温、相対湿度、大気圧のデータを取得し、冷却塔の状態評価方法に用いることができる。さらには、冷却塔5の冷却塔効率を遠隔地から、評価して、冷却塔5を稼働させることができる。
【0042】
制御装置4は、入力装置1からの運転条件の指示を受信し、その受信内容に従って算出して冷却設備3への運転条件を算出する。制御装置4は、算出する受信部42と、運転条件を冷却設備3のファン52、循環ポンプ55に送信する制御部41を備えている。制御装置4における制御部41は、分散制御システム(DCS)として冷却塔システム100の一部を構成する。また、分散制御システム(DCS)を備える制御装置4はインターネット2で入力装置1と接続され、相互に通信することで、効率的な制御を実施することができる。
【0043】
冷却塔システム100の運転制御方法は、オペレーター8が、入力装置1に運転条件を入力し、制御装置4を介して冷却設備3を運転操業する。このときに、冷却設備3における冷却塔5の冷却塔効率を条件にして、冷却設備3におけるファン52の消費電力、循環ポンプ55の消費電力の合計消費電力が最小となる操業条件を見出すことができる。
【0044】
図8は、本発明の冷却塔の状態評価方法を実施するシステムの一実施形態の構成を示す図である。
冷却塔の状態評価方法を実施する冷却塔システム100は、さらに、水処理剤添加装置7を備えている。図8においては、冷却塔5と熱交換器6と接続する管路53に水処理剤を添加している。水処理剤は、直接に冷却塔5の冷却水に添加することもできる。
また、水処理剤添加装置7は制御装置4に接続している。制御装置4は、受信部42で受信した測定手段による測定値を用いて制御部41で、水処理剤を添加することを判定する。制御装置4が、冷却塔5に水処理剤を添加すると判定した場合、制御装置4から水処理剤添加装置7に水処理剤を、図示していない輸送ポンプ等によって冷却塔5等の管路53に添加する指示を送信する。
これによって、冷却塔5が備える各セル51の冷却塔効率を把握しておくことで、能力低下が著しいセル51を修理・改修することができる。
【実施例0045】
以下に本発明の形態とその効果を、具体的な実施例で詳細に説明する。ここで記載する実施例は本発明の形態の一例を示すものであって、下記の実施例を以って本発明の範囲や効果を制限するものではない。
【0046】
実施例は、化学プラントに設置された冷却設備の冷却塔効率を以下の3条件で算出した。
冷却設備は、N台のセルを備える冷却塔、循環ポンプ、熱交換器、および循環する冷却水、外気温・湿度・大気圧を測定する測定手段、データを収集する収集盤を備える制御装置を備えている。また、冷却塔には、ファン、配水管、ファンを稼働する電流の周波数を測定する測定手段、冷却塔に供給する冷却水の温度、排出する冷却水の温度を測定する測定手段とを配置している。
【0047】
実験条件としては、以下の3条件(1)、(2)、(3)である。
(1)従来例;各セルのファン稼働有無を考慮せず、全セルが常時稼働していると仮定して、冷却塔効率を算出する。
(2)比較例:各セルのファン稼働有無を考慮するが、ファンの稼働を停止しているセルにおける水温低下はゼロとして、さらに、算出に用いるセルの台数に含めずに、冷却塔効率を算出する。
(3)実施例:各セルのファン稼働有無及びファンの稼働を停止しているセルの実測水温を基に算出した通風量を考慮して、その寄与分を補正して、冷却塔効率を算出する。
【0048】
なお、冷却設備の運転条件は以下とする。
測定時期:2月1~28日(外気湿球温度-2.6~13.8℃)
運転条件:冷却水温度に従って、ファンの運転台数を調整する。
【0049】
以上の条件により、状況を図9にその結果を示している。
図9は、2月1~28日の間の実験条件(1)、(2)、(3)における冷却塔効率と、冷却塔におけるセルの稼働台数の変更が生じた期間を示している。図9において、網掛けされた部分が冷却塔の所定の台数が稼働した期間であり、網掛けのない部分が所定の台数より1台少ない台数が稼働した期間を表している。
【0050】
図9に示すように、実験条件(1)及び(2)では、セルの稼働台数の変動により冷却塔効率の値が大きく変動している。
一方で、の実験条件(3)では、セルの稼働台数の変動にかかわらず、測定期間を通して冷却塔効率はほぼ一定の値を推移している。
冷却塔は十数年~数十年にわたり長期間使用されるものであり、適切な冷却水処理やメンテナンスが施されている場合、設置後十数年を経た冷却塔であっても多くの場合冷却塔効率の低下幅は20~50%程度に抑えられている。したがって、設置後十数年を経た冷却塔であっても、1か月程度の短期間における冷却塔効率の変化幅は非常に小さいと考えられる。
本実験のデータを取得する期間中において、著しく冷却塔効率を変動させる事象(設備の倒壊や急激なスケール・スライム等の発生、またはそれらの解消)はなかった。
これらの結果から、測定期間を通してほぼ一定の値で推移していたの実験条件(3)により算出された冷却塔効率の数値がその他の実験条件(1)及び(2)と比べて、セルを含む冷却塔の冷却塔効率を正確に算出していることがわかる。
【0051】
次に、実験条件(4)として、以下の条件で冷却塔効率を算出した。
冷却設備は実験条件(1)~(3)と異なるが、実験条件(4)は実験条件(1)~(3)と同様の冷却設備の運転条件にしたがって冷却塔効率を算出し、この冷却塔効率に基づいて水処理剤を添加した。
測定時期:4月初旬~8月初旬(外気湿球温度20.4~32.8℃)
運転条件:算出した冷却塔効率に基づいて、以下に説明するように、予め定めた量の水処理剤を添加した。
【0052】
冷却水系の汚れ付着防止を目的とした水処理剤を200g/m添加している冷却水量62m/hの1セル型の冷却塔に対し、月初に冷却塔効率を測定し、冷却塔効率が90%超の場合は通常通り200g/mとなるように水処理剤を添加し、90%以下の場合には水処理剤濃度を通常の1.5倍である300g/mになるように添加した。
ここで、水処理剤を添加する予め定めた設定値は、冷却塔効率90%である。冷却塔効率が90%より低いと判定した場合、水処理剤の種類と添加する量を設定している。ここでは、冷却水系の汚れ付着防止を目的とした水処理剤と同じ水処理剤を、量として1.5倍と多く添加することとした。
これにより、水処理剤濃度を300g/mに増加させることで冷却塔効率は復旧し、4月初旬から8月初旬の期間内で、冷却塔効率85~92%の間で安定した冷却塔の運転ができた。冷却塔効率の推移を表1に示している。
表1に示すように、冷却水の蒸発・飛散が生じても、実験条件(4)の元で、安定した冷却塔効率を得ることができることがわかった。
【0053】
【表1】
【0054】
これにより、本発明の冷却塔の状態評価方法によって、冷却設備の冷却塔効率を正確に算出できることがわかった。また、本発明の冷却塔システムによって、冷却塔の性能劣化に対して早期復旧が可能であり、安定した冷却塔の操業が可能であることがわかった。
【符号の説明】
【0055】
1 入力装置
11 入力部
12 表示部
2 通信手段
21、22 接続回線
23 インターネット
3 冷却設備
4 制御装置
41 制御部
42 受信部
421 入口温度測定手段(T1)
422 出口温度測定手段(T2)
423 セル出口温度測定手段(T3)
424 環境測定手段
5 冷却塔
51(511、…、51n) セル
52(521、…、52n) ファン
53(531、…、53n) 管路
54(541、…、54n) 電気測定手段
55 循環ポンプ
6 熱交換器
7 水処理剤添加装置
8 オペレーター
100 冷却塔システム

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9