(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016213
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】超音波画像処理装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/06 20060101AFI20250124BHJP
【FI】
A61B8/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119345
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 惇
(72)【発明者】
【氏名】田中 智彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲也
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DE04
4C601DE05
4C601EE04
4C601JB34
4C601KK02
4C601KK05
4C601KK31
4C601KK47
(57)【要約】
【課題】ドプラ信号のパワー又はドプラ信号が示す速度と、ドプラ画像における画素値と、の関係を示す適正なガンマカーブを自動設定可能とする。
【解決手段】ドプラ信号処理部30は、ドプラ信号のパワー分布を表す対象パワー分布情報を取得する。質感パラメータ特定部32は、対象パワー分布情報を学習モデル34に入力する。学習済みの学習モデル34は、対象パワー分布情報に適した質感パラメータを出力する。質感パラメータは、ガンマカーブの特徴を示すパラメータである。適正ガンマカーブ決定部40は、対象パワー分布情報に適した質感パラメータに基づいて、対象パワー分布情報に適したて適正ガンマカーブを決定する。画像形成部18は、対象パワー分布情報及び適正ガンマカーブに基づいて、パワードプラ画像を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して超音波を送受信することで得られたドプラ信号のパワー分布を表すパワー分布情報と、前記ドプラ信号のパワーとドプラ画像における画素値との関係を示す、当該パワー分布情報に適したガンマカーブを表す質感パラメータと、の組み合わせを学習データとして用いて、パワー分布情報が入力された際に、当該パワー分布情報に適した前記質感パラメータを予測して出力するように学習された学習モデルに対して、処理対象である対象パワー分布情報を入力することで、前記対象パワー分布情報に適した前記質感パラメータを特定する質感パラメータ特定部と、
特定された前記質感パラメータに基づいて、前記対象パワー分布情報に適した前記ガンマカーブである適正ガンマカーブを決定する適正ガンマカーブ決定部と、
前記対象パワー分布情報、及び、前記適正ガンマカーブに基づいて、ドプラ信号のパワーが示されたドプラ画像を形成するドプラ画像形成部と、
を備えることを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項2】
前記パワー分布情報と、ユーザが設定した前記ガンマカーブを表す前記質感パラメータとの組み合わせを学習データとして用いて、パワー分布情報が入力された際に、前記ユーザに適した前記質感パラメータを予測して出力するように前記学習モデルを学習させる学習処理部と、
をさらに備え、
前記質感パラメータ特定部は、前記学習モデルに対して、前記対象パワー分布情報を入力することで、前記ユーザに適した前記質感パラメータを特定し、
前記適正ガンマカーブ決定部は、特定された前記質感パラメータに基づいて、前記ユーザに適した前記適正ガンマカーブを決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波画像処理装置。
【請求項3】
前記学習処理部は、メモリに予め記憶されている、前記パワー分布情報と前記質感パラメータとの複数の組み合わせを前記ユーザに提示し、前記ユーザに選択された、前記パワー分布情報と、前記質感パラメータとの組み合わせを学習データとして用いて、前記学習モデルを学習する、
ことを特徴とする請求項2に記載の超音波画像処理装置。
【請求項4】
前記適正ガンマカーブ決定部は、メモリに予め記憶されている複数種類の前記ガンマカーブの中から、前記質感パラメータ特定部により特定された前記質感パラメータに基づいて演算された前記ガンマカーブに基づいて前記適正ガンマカーブを選択する、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波画像処理装置。
【請求項5】
前記適正ガンマカーブ決定部は、決定した前記適正ガンマカーブをユーザに通知する、
する、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波画像処理装置。
【請求項6】
被検体に対して超音波を送受信することで得られたドプラ信号が示す速度分布を表す速度分布情報と、前記ドプラ信号が示す速度とドプラ画像における画素値との関係を示すガンマカーブを表す質感パラメータと、の組み合わせを学習データとして用いて、速度分布情報が入力された際に、当該速度分布情報に適した前記質感パラメータを予測して出力するように学習された学習モデルに対して、処理対象である対象速度分布情報を入力することで、前記対象速度分布情報に適した前記質感パラメータを特定する質感パラメータ特定部と、
特定された前記質感パラメータに基づいて、前記対象速度分布情報に適した前記ガンマカーブである適正ガンマカーブを決定する適正ガンマカーブ決定部と、
前記対象速度分布情報、及び、前記適正ガンマカーブに基づいて、被検体の血流又は組織の速度が示されたドプラ画像を形成するドプラ画像形成部と、
を備えることを特徴とする超音波画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、超音波画像処理装置の改良を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体に向けて超音波が送受波され、それにより得られた受信信号に基づいて超音波断層画像を形成し、形成された超音波断層画像(すなわちBモード画像)をディスプレイに表示する超音波診断装置が知られている。そのような超音波診断装置においては、被検体からの受信波におけるドプラ効果を利用して受信信号からドプラ信号を形成し、ドプラ信号に基づいてドプラ画像を形成することが行われている。ドプラ画像としては、被検体内の血流の速度及び向きが色で示されたカラードプラ画像、及び、ドプラ信号のパワーが輝度又は色で表現されたパワードプラ画像がある。ドプラ画像は、超音波断層画像に重畳して表示されるのが一般的である。
【0003】
ここで、ドプラ信号には、血流を表す血流信号の他、被検体組織(例えば心臓壁など)の動きを表す信号成分が含まれ得る。このような信号成分は、クラッタ信号と呼ばれる。一般的に、クラッタ信号は、ドプラ画像において、血流信号の視認性を低下させるノイズ成分となる。したがって、従来、クラッタ信号を抑制する技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、クラッタ信号と血流信号との物理的な違いを表すパラメータ(例えばIQ信号のパケット方向の振幅など)である特徴量に基づいて、超音波の受信信号においてクラッタ信号と血流信号を判別し、判別結果に基づいてクラッタ信号を抑制する抑制マップを生成し、抑制マップを受信信号に適用することで、クラッタ信号を抑制する超音波撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、ドプラ画像には、ドプラ信号のパワーを色又は輝度で表現する画像(パワードプラ画像)、又は、ドプラ信号が示す被検体の血流や組織の速度を色で表現する画像(カラードプラ画像)が含まれる。したがって、ドプラ画像を形成する際には、ドプラ信号のパワー又はドプラ信号が示す速度と、ドプラ画像における画素値との関係を示すガンマカーブを用いて、ドプラ信号のパワー又はドプラ信号が示す速度が画素値に変換される。
【0007】
図8は、ガンマカーブの第1の例を示す図である。
図8において、横軸はドプラ信号のパワー値、縦軸は頻度又は画素値を表す。一点鎖線のグラフは、ドプラ信号に含まれるクラッタ信号のパワー値及び頻度を示し、細実線のグラフは、ドプラ信号に含まれる血流信号のパワー値及び頻度を示す。一般的に、クラッタ信号のパワー値は小さく、血流信号のパワー値は大きいため、クラッタ信号と血流信号は
図8のように分布する。
【0008】
図8における太実線のグラフが、パワー値と画素値との関係を示すガンマカーブである。
図8に示されるようなガンマカーブによれば、クラッタ抑制カットオフよりも小さいパワー値は、そのパワー値に関わらず、最小画素値PV
minに変換され、血流信号カットオフよりも大きいパワー値は、そのパワー値に関わらず、最大画素値PV
maxに変換される。すなわち、クラッタ抑制カットオフよりも小さいパワー領域におけるパワー値の違いは画素値では表現されず、血流信号カットオフよりも大きいパワー領域におけるパワー値の違いも画素値では表現されない。
【0009】
一方、
図8のガンマカーブによれば、クラッタ抑制カットオフと血流信号カットオフとの間であるダイナミックレンジに含まれるパワー値は、そのパワー値に応じた画素値に変換される。すなわち、クラッタ抑制カットオフと血流信号カットオフとの間のパワー値は、パワー値の違いが画素値で表現される。このことを、パワー値が階調表現される、ということもある。なお、
図8の例では、ダイナミックレンジ内のガンマカーブは、点A(パワー値,画素値)=(クラッタ抑制カットオフ,PV
min)と、点B(パワー値,画素値)=(血流信号カットオフ,PV
max)とを結ぶ直線となっているが、点Aと点Bを結ぶ曲線であってもよい。
【0010】
ガンマカーブは、ユーザによって設定可能となっている。特に、クラッタ抑制カットオフ及び信号抑制カットオフは、ユーザによって設定可能となっている。ここで、ドプラ信号(より詳しくは、クラッタ信号及び血流信号のパワー分布)に応じて、適切なガンマカーブを設定しないと、適切なドプラ画像(この場合はパワードプラ画像)を得ることができない、という問題がある。
【0011】
例えば、
図8に示すように、血流信号の大部分が血流信号カットオフよりも大きくなるようにガンマカーブを設定してしまうと、血流信号の大部分が全て最大画素値PV
maxで表現されてしまい、パワードプラ画像において血流信号のパワー値をうまく階調表現することができなくなってしまう。また、
図9に示すように、ダイナミックレンジ内にクラッタ信号が多く含まれるようにクラッタ抑制カットオフを設定してしまうと、パワードプラ画像においてクラッタ信号が顕著に現れ、血流信号の視認性が低下してしまう。
【0012】
なお、
図8及び
図9では、横軸がパワー値であり、ドプラ画像としてパワードプラ画像を形成する場合のガンマカーブが示されていたが、
図8及び
図9において、横軸がドプラ信号が示す速度(換言すればドプラ周波数)であり、ドプラ画像としてカラードプラ画像を形成する場合であっても、上記と同様の問題が生じ得る。
【0013】
本明細書で開示される超音波画像処理装置の目的は、ドプラ信号のパワー又はドプラ信号が示す速度と、ドプラ画像における画素値と、の関係を示す適正なガンマカーブを自動設定可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本明細書で開示される超音波画像処理装置は、被検体に対して超音波を送受信することで得られたドプラ信号のパワー分布を表すパワー分布情報と、前記ドプラ信号のパワーとドプラ画像における画素値との関係を示す、当該パワー分布情報に適したガンマカーブを表す質感パラメータと、の組み合わせを学習データとして用いて、パワー分布情報が入力された際に、当該パワー分布情報に適した前記質感パラメータを予測して出力するように学習された学習モデルに対して、処理対象である対象パワー分布情報を入力することで、前記対象パワー分布情報に適した前記質感パラメータを特定する質感パラメータ特定部と、特定された前記質感パラメータに基づいて、前記対象パワー分布情報に適した前記ガンマカーブである適正ガンマカーブを決定する適正ガンマカーブ決定部と、前記対象パワー分布情報、及び、前記適正ガンマカーブに基づいて、ドプラ信号のパワーが示されたドプラ画像を形成するドプラ画像形成部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
前記パワー分布情報と、ユーザが設定した前記ガンマカーブを表す前記質感パラメータとの組み合わせを学習データとして用いて、パワー分布情報が入力された際に、前記ユーザに適した前記質感パラメータを予測して出力するように前記学習モデルを学習させる学習処理部と、をさらに備え、前記質感パラメータ特定部は、前記学習モデルに対して、前記対象パワー分布情報を入力することで、前記ユーザに適した前記質感パラメータを特定し、前記適正ガンマカーブ決定部は、特定された前記質感パラメータに基づいて、前記ユーザに適した前記適正ガンマカーブを決定するとよい。
【0016】
前記学習処理部は、メモリに予め記憶されている、前記パワー分布情報と前記質感パラメータとの複数の組み合わせを前記ユーザに提示し、前記ユーザに選択された、前記パワー分布情報と、前記質感パラメータとの組み合わせを学習データとして用いて、前記学習モデルを学習するとよい。
【0017】
前記適正ガンマカーブ決定部は、メモリに予め記憶されている複数種類の前記ガンマカーブの中から、前記質感パラメータ特定部により特定された前記質感パラメータに基づいて演算された前記ガンマカーブに基づいて前記適正ガンマカーブを選択するとよい。
【0018】
前記適正ガンマカーブ決定部は、決定した前記適正ガンマカーブをユーザに通知するとよい。
【0019】
また、本明細書で開示される超音波画像処理装置は、被検体に対して超音波を送受信することで得られたドプラ信号が示す速度分布を表す速度分布情報と、前記ドプラ信号が示す速度とドプラ画像における画素値との関係を示すガンマカーブを表す質感パラメータと、の組み合わせを学習データとして用いて、速度分布情報が入力された際に、当該速度分布情報に適した前記質感パラメータを予測して出力するように学習された学習モデルに対して、処理対象である対象速度分布情報を入力することで、前記対象速度分布情報に適した前記質感パラメータを特定する質感パラメータ特定部と、特定された前記質感パラメータに基づいて、前記対象速度分布情報に適した前記ガンマカーブである適正ガンマカーブを決定する適正ガンマカーブ決定部と、前記対象速度分布情報、及び、前記適正ガンマカーブに基づいて、被検体の血流又は組織の速度が示されたドプラ画像を形成するドプラ画像形成部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本明細書で開示される超音波画像処理装置によれば、ドプラ信号のパワー又はドプラ信号が示す速度と、ドプラ画像における画素値と、の関係を示す適正なガンマカーブを自動設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態に係る超音波診断装置の構成概略図である。
【
図2】パワー分布情報及びガンマカーブを示す図である。
【
図4】学習モデルの学習処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】適正ガンマカーブの決定方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本実施形態に係る超音波画像処理装置としての超音波診断装置10の構成概略図である。超音波診断装置10は、病院などの医療機関に設置され、超音波検査時に使用される医用装置である。
【0023】
超音波診断装置10は、被検体に対して超音波ビームを走査し、それにより得られた受信信号に基づいて超音波画像を生成する装置である。特に、超音波診断装置10は、受信信号に基づいて、走査面からの反射波の振幅強度が輝度に変換された超音波断層画像(Bモード画像)、及び、送信波と受信波の周波数の差分(ドプラシフト)に基づいて形成されるドプラ画像を形成することもできる。なお、本明細書において、ドプラ画像とは、被検体の血流や組織の運動速度が色で示されたカラードプラ画像、及び、ドプラ信号の強度が色又は輝度で表されたパワードプラ画像を含む概念である。
【0024】
超音波プローブ12は、被検体に対して超音波の送受波を行う装置である。超音波プローブ12は、被検体に対して超音波の送受波を行う複数の振動素子からなる振動素子アレイを有する。
【0025】
送受信部14は、制御部28(後述)からの制御によって、超音波プローブ12(詳しくは振動素子アレイの各振動素子)に対して送信信号を送信する。これにより、各振動素子から被検体に向けて超音波が送信される。
【0026】
また、送受信部14は、被検体からの反射波を受信した各振動素子から受信信号を受信する。送受信部14は、加算器及び各振動素子に対応した複数の遅延器を有しており、当該加算器及び複数の遅延器により、各振動素子からの受信信号の位相を揃えて加算する整相加算処理を行う。これにより、被検体からの反射波の信号強度及び周波数を示す情報が被検体の深度方向に並ぶ受信ビーム信号が形成される。
【0027】
信号処理部16は、送受信部14からの受信ビーム信号に対して、バンドパスフィルタを適用するフィルタ処理や検波処理などを含む各種信号処理を実行する。
【0028】
画像形成部18は、信号処理部16において信号処理された受信ビーム信号に基づいて、超音波断層画像(Bモード画像)を形成する。また、画像形成部18は、後述のドプラ信号処理部30により得られたドプラ信号、及び、後述の適正ガンマカーブ決定部40により決定されたガンマカーブに基づいて、ドプラ画像を形成する。
【0029】
表示制御部20は、画像形成部18で形成された超音波断層画像及びドプラ画像、並びに、その他の種々の情報をディスプレイ22に表示させる制御を行う。表示部としてのディスプレイ22は、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)などから構成される表示器である。
【0030】
入力インターフェース24は、例えばボタン、トラックボール、タッチパネルなどから構成される。入力インターフェース24は、ユーザの命令を超音波診断装置10に入力するために用いられる。
【0031】
メモリ26は、(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、eMMC(embedded Multi Media Card)、あるいはROM(Read Only Memory)などを含んで構成される。メモリ26には、超音波診断装置10の各部を動作させるための超音波診断プログラムが記憶される。なお、超音波診断プログラムは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ又はCD-ROMなどのコンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体に格納することもできる。超音波診断装置10は、そのような記憶媒体から超音波診断プログラムを読み取って実行することができる。
【0032】
また、
図1に示すように、メモリ26には、学習モデル34、学習データ候補DB(DataBase)38、ガンマカーブDB42が記憶される。これらの詳細については後述する。
【0033】
制御部28は、汎用的なプロセッサ(例えばCPU(Central Processing Unit)など)、及び、専用のプロセッサ(例えばGPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、あるいは、プログラマブル論理デバイスなど)の少なくとも1つを含んで構成される。制御部28としては、1つの処理装置によるものではなく、物理的に離れた位置に存在する複数の処理装置の協働により構成されるものであってもよい。制御部28は、メモリ26に記憶された超音波診断プログラムに従って、超音波診断装置10の各部を制御する。
【0034】
ドプラ信号処理部30は、公知のドプラ処理により、ドプラシフト(被検体に送信された超音波の送信周波数と、受信ビーム信号の周波数との差分)を示すドプラ信号を形成する。また、ドプラ信号処理部30は、ドプラ信号を周波数方向に積分することで、ドプラ信号のパワーを演算する。さらに、ドプラ信号処理部30は、ウォールフィルタ(ローカットフィルタ)を施して、ドプラ信号に含まれる被検体の体動などの低周波の信号成分を低減させる。本実施形態では、ドプラ信号処理部30は、ドプラ信号のパワーを演算し、後述する質感パラメータ特定部32や、適正ガンマカーブ決定部40は、ドプラ信号のパワー分布に基づいて処理を行うものとする。
【0035】
質感パラメータ特定部32は、ドプラ信号のパワー分布を示すパワー分布情報に基づいて、当該パワー分布情報に適した質感パラメータを特定する。
【0036】
ドプラ信号のパワー分布とは、例えば、
図2に示すような、横軸がパワー値、縦軸が頻度を示す2次元空間における、クラッタ信号CS及び血流信号BFのグラフであってよい。また、ドプラ信号のパワー分布は、パワー値に対する頻度が示されている情報であればどのような情報であってもよい。例えば、ドプラ信号のパワー分布は、ドプラ信号をフィルタ処理してクラッタ成分を抑制した血流パワー分布情報などであってもよい。また、ドプラ信号のパワー分布は、パワードプラ画像そのものであってもよい。
【0037】
質感パラメータとは、ガンマカーブGC(
図2参照)の特徴を示すパラメータである。上述の通り、ガンマカーブGCとは、ドプラ信号(本実施形態ではパワー値)とドプラ画像(本実施形態ではパワードプラ画像)における画素値との関係を示す情報である。本実施形態では、質感パラメータは、ガンマカーブGCにより規定されるダイナミックレンジDに含まれるクラッタ信号CS(
図2におけるダイナミックレンジD内のクラッタ信号CSの積分値)の、血流信号BF(
図2における血流信号BF全体の積分値)に対する割合を示すパラメータ、及び、血流信号BFのうち、どこまでの範囲をダイナミックレンジDに含めるかを示すパラメータ(換言すれば血流信号カットオフBFC)を含んで構成される。
【0038】
質感パラメータ特定部32は、学習モデル34を用いて、質感パラメータを特定する。ここで、学習モデル34及び学習処理部36による学習モデル34の学習方法について説明する。
【0039】
学習モデル34は、例えば、CNN(Convolutional Neural Network)などから構成される。学習モデル34としては、CNNに限られず、以下に説明する機能を発揮する限りにおいてどのようなモデルであってもよい。学習モデル34は、パワー分布情報と、当該パワー分布情報に適したガンマカーブを表す質感パラメータと、の組み合わせを学習データとして用いて、パワー分布情報が入力された際に、当該パワー分布情報に適した質感パラメータを予測して出力するように学習される。
【0040】
学習モデル34は、超音波診断装置10以外の装置によって学習され、学習済みの学習モデル34がメモリ26に記憶されてもよい。しかしながら、超音波診断装置10が設置される施設(例えば病院など)毎に、適切な(換言すれば好みの)ガンマカーブが異なる場合が考えられる。したがって、本実施形態に係る超音波診断装置10は、学習処理部36を有しており、学習処理部36が学習モデル34の学習処理を実行する。これにより、超音波診断装置10毎に、互いに異なる学習済み学習モデル34を用いて、当該超音波診断装置10に適した質感パラメータを出力することができるようになる。また、各超音波診断装置10における学習処理の負荷あるいは学習に学習データの量を低減させるべく、超音波診断装置10以外の装置によって学習モデル34を事前学習しておき、学習処理部36が当該学習モデル34を再学習するファインチューニングを行ってもよい。
【0041】
学習モデル34の学習に用いられる学習データは、パワー分布情報と、当該パワー分布情報に対する適切な(例えば過去にユーザが手動設定した)ガンマカーブを表す質感パラメータとの組み合わせである。学習処理部36は、
図3に示すように、学習データに含まれるパワー分布情報を学習モデル34に入力する。学習モデル34は、入力されたパワー分布情報に適した質感パラメータを予測して出力する。学習処理部36は、学習モデル34が出力した質感パラメータと、学習データに含まれる質感パラメータとの差分に基づいて、当該差分が小さくなるように、学習モデル34のパラメータを調整する。このような処理を繰り返すことがで、学習モデル34が学習される。十分に学習された学習モデル34は、入力されたパワー分布情報に基づいて、当該パワー分布情報に適した質感パラメータを高精度に出力できるようになる。
【0042】
上述のように、超音波診断装置10の学習処理部36が学習モデル34を学習させることで、学習済みの学習モデル34は、当該超音波診断装置10(換言すれば、ある施設)に適した質感パラメータを出力することができるようになるが、複数のユーザ(例えば医師や技師など)が同じ超音波診断装置10を使用する場合、ユーザ毎に適した質感パラメータが異なる(換言すれば、ユーザ毎にガンマカーブの好みが異なる)場合も考えられる。したがって、学習モデル34は、超音波診断装置10を使用するユーザに適した質感パラメータを予測して出力するように学習されるとよい。
【0043】
具体的には、学習処理部36は、パワー分布情報と、超音波診断装置10のユーザが設定したガンマカーブを表す質感パラメータとの組み合わせを学習データとして用いる。さらに、学習データに当該ユーザを示すユーザ情報(例えばユーザIDなど)が含まれていていてもよい。この場合、学習処理部36は、パワー分布情報及びユーザ情報を学習モデル34に入力する。学習モデル34は、入力されたパワー分布情報、及び、入力されたユーザ情報が示すユーザに適した質感パラメータを予測して出力する。学習処理部36は、学習モデル34が出力した質感パラメータと、学習データに含まれる、当該ユーザが設定したガンマカーブを表す質感パラメータとの差分に基づいて、当該差分が小さくなるように、学習モデル34のパラメータを調整する。このように学習された学習モデル34は、入力されたパワー分布情報及びユーザ情報に基づいて、当該パワー分布情報及び当該ユーザ情報が示すユーザに適した質感パラメータを高精度に出力できるようになる。
【0044】
あるいは、ユーザ毎に、互いに異なる学習モデル34が用意されてもよい。この場合、メモリ26には、複数のユーザに対応した複数の学習モデル34が記憶される。学習処理部36は、パワー分布情報と、超音波診断装置10のユーザが設定したガンマカーブを表す質感パラメータとの組み合わせを、当該ユーザに対応する学習モデル34を学習させるための学習データとして用いる。
【0045】
学習処理部36による学習モデル34の学習のための十分な量の学習データを得ることが困難である、あるいは、十分な量の学習データを得るのにかなり時間がかかってしまう場合が考えられる。したがって、学習データとして用いることができる、パワー分布情報と質感パラメータとの組み合わせ(以後、「学習データ候補」と記載する)を予め複数用意しておき、複数の学習データ候補の中から、ユーザに所望の学習データを選択させるとよい。以下、
図4に示すフローチャートに従って、学習データ候補の中から選択された学習データを用いた学習モデル34の学習処理の流れについて説明する。
【0046】
本実施形態では、複数の学習データ候補は、学習データ候補DB38に予め記憶されている。ステップS10において、複数の学習データ候補は、ユーザに提示される。本実施形態では、ユーザからの指示に応じて、
図5に示すように、表示制御部20が、複数の学習データ候補が表示された、学習データの選択画面をディスプレイ22に表示させる。
図5の例では、学習データ候補のパワー分布情報としてパワードプラ画像が表示され、当該パワー分布情報に適した質感パラメータが当該パワードプラ画像の下に(関連付けて)表示される。
図5の例では、2つの学習データ候補が表示されているが、もちろん、表示制御部20は、それ以上の数の学習データ候補をディスプレイ22に表示してもよい。1画面で表示しきれなければ、表示制御部20は、ユーザ操作に応じて、画面を切り替えるなどして、複数の学習データ候補を表示させることができる。
【0047】
ステップS12において、ユーザは、学習データの選択画面から、所望の学習データを選択する。このとき、ユーザによって選択された学習データは、当該ユーザに適した質感パラメータを含む学習データとみなすことができる。
【0048】
ステップS14において、学習処理部36は、学習データの選択画面にてユーザに選択された、パワー分布情報としてのパワードプラ画像、及び、当該パワードプラ画像に関連付けられた質感パラメータとの組み合わせを学習データとする。
【0049】
ステップS16において、学習処理部36は、ステップS14で特定した学習データを用いて、学習モデル34を学習させる。なお、ユーザ毎に学習モデル34が設けられる場合には、ステップS16の後、学習モデル34とユーザとを関連付ける処理が行われる。
【0050】
図4に示されたフローチャートは繰り返し実行されてよい。これにより、十分に学習された学習モデル34は、入力されたパワー分布情報及びユーザ情報に基づいて、当該パワー分布情報及び当該ユーザ情報が示すユーザに適した質感パラメータを高精度に出力できるようになる。
【0051】
なお、
図4及び
図5の例では、学習データ候補には、パワー分布情報としてパワードプラ画像を含んでいたが、学習データ候補に含まれるパワー分布情報は、
図2に示されるクラッタ信号CS及び血流信号BFのグラフや、上述の血流パワー分布情報であってもよい。
【0052】
図6に示すように、質感パラメータ特定部32は、上述のような学習処理にて十分に学習された学習モデル34に対して、処理対象のパワー分布情報を入力する。本明細書では、処理対象のパワー分布情報を対象パワー分布情報と呼ぶ。対象パワー分布情報も、
図2に示されるクラッタ信号CS及び血流信号BFのグラフ、上述の血流パワー分布情報、あるいは、ドプラパワー画像であってよい。学習済みの学習モデル34は、対象パワー分布情報に適した質感パラメータを出力する。質感パラメータ特定部32は、学習モデル34の出力に基づいて、対象パワー分布情報に適した質感パラメータを特定する。
【0053】
上述のように、パワー分布情報と、ユーザ情報と、質感パラメータを含む学習データを用いて学習モデル34が学習されている場合、質感パラメータ特定部32は、対象パワー分布情報と、現在超音波診断装置10を使用しているユーザを示すユーザ情報を学習済みの学習モデル34に入力してもよい。なお、ユーザ情報は、制御部28が当該ユーザを認証(例えばユーザIDとパスワードの入力による)することで取得することができる。これにより、質感パラメータ特定部32は、学習モデル34の出力に基づいて、当該ユーザに適した質感パラメータを特定することができる。
【0054】
また、ユーザ毎に互いに異なる学習モデル34が用意されている場合、質感パラメータ特定部32は、現在超音波診断装置10を使用しているユーザを示すユーザ情報に基づいいて、対象パワー分布情報を入力する学習モデル34を特定する。そして、質感パラメータ特定部32は、特定した学習モデル34に対象パワー分布情報を入力し、学習モデル34の出力に基づいて、当該ユーザに適した質感パラメータを特定する。
【0055】
適正ガンマカーブ決定部40は、質感パラメータ特定部32が特定した、対象パワー分布情報に適した質感パラメータに基づいて、対象パワー分布情報に適したガンマカーブを決定する。本明細書では、対象パワー分布情報に適したガンマカーブを適正ガンマカーブと呼ぶ。上述の通り、質感パラメータは、ガンマカーブの特徴を示すパラメータであるから、適正ガンマカーブ決定部40は、対象パワー分布情報に適した質感パラメータに基づいて、適正ガンマカーブを決定することができる。
【0056】
上述の通り、本実施形態では、質感パラメータは、ガンマカーブGCにより規定されるダイナミックレンジDに含まれるクラッタ信号CS(
図2におけるダイナミックレンジD内のクラッタ信号CSの積分値)の、血流信号BF(
図2における血流信号BF全体の積分値)に対する割合を示すパラメータ、及び、血流信号BFのうち、どこまでの範囲をダイナミックレンジDに含めるかを示すパラメータ(換言すれば血流信号カットオフBFC)を含んで構成されるため、当該質感パラメータから適正ガンマカーブを決定する方法を説明する。
【0057】
図2を参照し、ガンマカーブGCは、血流信号カットオフBFC及びクラッタ信号カットオフCSCによって決定される。したがって、適正ガンマカーブ決定部40は、質感パラメータに基づいて、血流信号カットオフBFC及びクラッタ信号カットオフCSCを決定することによって適正ガンマカーブを決定する。
【0058】
まず、血流信号カットオフBFCについては、質感パラメータに血流信号カットオフBFCが含まれているため、適正ガンマカーブ決定部40は、質感パラメータから血流信号カットオフBFCを直接決定することができる。
【0059】
また、質感パラメータは、対象パワー分布情報における血流信号BF全体に対する、ダイナミックレンジD内に含まれるクラッタ信号CSの割合を含む。ダイナミックレンジD内に含まれるクラッタ信号CSは、クラッタ信号CS全体のうちの、クラッタ信号カットオフCSCよりも大きいパワー値を有する部分である。したがって、適正ガンマカーブ決定部40は、対象パワー分布情報における血流信号BF全体に対する、クラッタ信号CS全体のうちの、クラッタ信号カットオフCSCよりも大きいパワー値を有する部分の割合が、質感パラメータが示す割合となるように、クラッタ信号カットオフCSCを決定する。
【0060】
適正ガンマカーブ決定部40は、クラッタ信号カットオフCSCよりも小さいパワー値に対する画素値を最小画素値PVmin(例えば輝度値0)とし、血流信号カットオフBFCよりも大きいパワー値に対する画素値を最大画素値PVmax(例えば最高輝度)とし、クラッタ信号カットオフCSCと血流信号カットオフBFCとの間のパワー値、換言すればダイナミックレンジDに含まれるパワー値に対する画素値を当該パワー値に応じた画素値となるように適正ガンマカーブを決定する。本実施形態では、ダイナミックレンジD内の適正ガンマカーブは点A(パワー値,画素値)=(クラッタ抑制カットオフ,PVmin)と、点B(パワー値,画素値)=(血流信号カットオフ,PVmax)とを結ぶ直線としている。
【0061】
上述のように、学習モデル34が、ユーザに適した質感パラメータを予測して出力するように学習されている場合、適正ガンマカーブ決定部40は、質感パラメータ特定部32が特定した質感パラメータに基づいて、ユーザに適した適正ガンマカーブを決定することができる。
【0062】
メモリ26において、複数種類のガンマカーブが予め登録されたガンマカーブDB42が記憶されている場合がある。このような超音波診断装置10においては、ガンマカーブDB42に登録されているガンマカーブのみを設定可能となっている場合がある。この場合、適正ガンマカーブ決定部40が決定した適正ガンマカーブが、ガンマカーブDB42に登録されていない場合が有り得る。したがって、この場合は、適正ガンマカーブ決定部40は、ガンマカーブDB42に記憶されている複数種類のガンマカーブの中から、質感パラメータ特定部32により特定された質感パラメータに基づいて演算されたガンマカーブに基づいて適正ガンマカーブを選択するとよい。例えば、適正ガンマカーブ決定部40は、ガンマカーブDB42に登録されている複数種類のガンマカーブのうち、適正ガンマカーブ決定部40が質感パラメータに基づいて得たガンマカーブに最も類似するガンマカーブを適正ガンマカーブとするとよい。ガンマカーブの類似度は、例えば、両ガンマカーブ間におけるクラッタ信号カットオフCSCの差、及び、血流信号カットオフBFCの差に応じて演算することができる。
【0063】
ドプラ画像形成部としての画像形成部18は、対象パワー分布情報、及び、適正ガンマカーブ決定部40が決定した適正ガンマカーブに基づいて、パワードプラ画像を形成する。この様に形成されたパワードプラ画像は、血流信号BFが適切に階調表現され、且つ、クラッタ信号CSの影響が低減された画像となり得る。適正ガンマカーブ決定部40は、決定した適正ガンマカーブをユーザに通知するとよい。適正ガンマカーブをユーザに通知する、とは、
図2に示すようなガンマカーブGCのグラフをユーザに提示してもよいし、決定した適正ガンマカーブに基づいて形成されたドプラ画像をユーザに提示してもよい。
【0064】
適正ガンマカーブ決定部40は、決定した適正ガンマカーブをユーザに通知するとよい。例えば、適正ガンマカーブ決定部40は、ポップアップの形で
図2に示すようなガンマカーブGCのグラフをユーザに提示する。特に、適正ガンマカーブ決定部40は、同様の場面(例えば同様の断面を表示させた場合、あるいは、同様の検査内容の場合)において以前決定したガンマカーブと、決定した適正ガンマカーブとが互いに異なる場合に、決定した適正ガンマカーブをユーザに通知するとよい。この場合、画像形成部18は、適正ガンマカーブが通知されたユーザの指示を待って、ドプラ画像を形成するとよい。
【0065】
上述の実施形態では、ドプラ画像としてパワードプラ画像を形成する場合における処理を説明したが、ドプラ画像としてカラードプラ画像を形成する場合においても、本発明を適用することができる。
【0066】
その場合、ガンマカーブは、ドプラ信号が示す速度とカラードプラ画像における画素値との関係を示すものとなる。そして、学習モデル34は、ドプラ信号が示す速度分布(ドプラ信号の周波数分布と言ってもよい)を表す速度分布情報と、ガンマカーブを表す質感パラメータと、の組み合わせを学習データとして用いて、速度分布情報が入力された際に、当該速度分布情報に適した質感パラメータを予測して出力するように学習される。
【0067】
質感パラメータ特定部32は、処理対象の速度分布情報である対象速度分布情報を学習済みの学習モデル34に入力することで、対象速度分布情報に適した質感パラメータを特定する。
【0068】
適正ガンマカーブ決定部40は、質感パラメータ特定部32により特定された質感パラメータに基づいて、対象速度分布情報に適した適正ガンマカーブを決定する。この場合における適正ガンマカーブの決定方法も上述と同じ方法を採用することができる。
【0069】
そして、ドプラ画像形成部としての画像形成部18は、対象速度分布情報、及び、決定された適正ガンマカーブに基づいて、被検体の血流又は組織の速度が示されたカラードプラ画像を形成する。
【0070】
また、上述の実施形態では、ドプラ信号全体のパワー分布を示すパワー分布情報、あるいは、ドプラ信号全体が示す速度分布を表す速度分布情報に適した適正ガンマカーブに基づいて、ドプラ画像全体の画素値を適正化していたが、ドプラ画像の部分の画素値を最適化するようにしてもよい。
【0071】
この場合、画像形成部18は、ガンマカーブ調整前のドプラ画像を形成し、表示制御部20が当該ドプラ画像をディスプレイ22に表示させる。ユーザは、例えばカーソルなどを用いて、ドプラ画像のうち、最適化したい部分を指定する。当該部分を最適化部分と呼ぶ。その上で、質感パラメータ特定部32は、ドプラ信号のうち、最適化部分に対応する部分のみを学習モデル34に入力し、学習モデル34の出力に基づいて質感パラメータを特定する。適正ガンマカーブ決定部40は、特定された質感パラメータに基づいて、最適化部分用の適正ガンマカーブである部分適正ガンマカーブを決定する。画像形成部18は、最適化部分について、決定した部分適正ガンマカーブを用いて、ドプラ画像を形成する。最適化部分以外の部分については、所定の(例えばユーザが指定した)ガンマカーブを用いてもよいし、上述の実施形態のように、ドプラ信号全体に係るパワー分布情報又は速度分布情報に基づいて決定された適正ガンマカーブを用いてもよい。
【0072】
また、最適化部分の決定をユーザ指示によらず、超音波診断装置10が自動で行ってもよい。例えば、画像形成部18が形成した超音波断層画像(Bモード画像)を既知の技術を用いて解析することで血管位置を自動検出し、血管位置を含む所定領域を最適化部分として自動設定するようにしてもよい。
【0073】
本実施形態に係る超音波診断装置10の構成は以上の通りである。なお、超音波診断装置10が有する、送受信部14、信号処理部16、画像形成部18、表示制御部20、ドプラ信号処理部30、質感パラメータ特定部32、学習処理部36、及び、適正ガンマカーブ決定部40は、プロセッサによって構成される。プロセッサとは、汎用的な処理装置(例えばCPU(Central Processing Unit)など)、及び、専用の処理装置(例えばGPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、あるいは、プログラマブル論理デバイスなど)の少なくとも1つを含んで構成される。プロセッサとしては、1つの処理装置によるものではなく、物理的に離れた位置に存在する複数の処理装置の協働により構成されるものであってもよい。また、上記の各部は、プロセッサなどのハードウェアとソフトウエアとの協働により実現されてもよい。
【0074】
以下、
図7に示すフローチャートに従って、適正ガンマカーブの決定処理の流れを説明する。
図7に示すフローチャートの開始時点に置いて、学習モデル34は十分に学習済みであるとする。
【0075】
ステップS20において、ドプラ信号処理部30は、送受信部14からの受信ビームデータに対してドプラ処理を実行することにより、処理対象のドプラ信号を形成する。ここでは、ドプラ信号処理部30は、ドプラ信号のパワーを演算する。これにより対象パワー分布情報が取得される。
【0076】
ステップS22において、質感パラメータ特定部32は、ステップS10で取得した対象パワー分布情報を学習モデル34に入力する。
【0077】
ステップS24に置いて、学習モデル34は、入力された対象パワー分布情報に適した質感パラメータを予測して出力する。質感パラメータ特定部32は、学習モデル34の出力に基づいて、対象パワー分布情報に適した質感パラメータを特定する。
【0078】
ステップS26において、適正ガンマカーブ決定部40は、ステップS24で特定された質感パラメータに基づいて、対象パワー分布情報に適した適正ガンマカーブを決定する。
【0079】
ステップS28において、画像形成部18は、対象パワー分布情報、及び、ステップS26で決定された適正ガンマカーブに基づいて、パワードプラ画像を形成する。
【0080】
以上、本発明に係る実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0081】
例えば、上述の実施形態では、超音波診断装置10が超音波画像処理装置であったが、超音波画像処理装置としては、超音波診断装置10には限られない。例えば、超音波画像処理装置は、パーソナルコンピュータなどであってもよい。その場合、超音波画像処理装置には、画像形成部18、表示制御部20、ディスプレイ22、入力インターフェース24、メモリ26、制御部28、ドプラ信号処理部30、質感パラメータ特定部32、学習処理部36、及び適正ガンマカーブ決定部40の機能が設けられる。超音波画像処理装置は、超音波診断装置から受信ビームデータを受信して、上記各部が処理を実行することができる。
【符号の説明】
【0082】
10 超音波診断装置、12 超音波プローブ、14 送受信部、16 信号処理部、18 画像形成部、20 表示制御部、22 ディスプレイ、24 入力インターフェース、26 メモリ、28 制御部、30 ドプラ信号処理部、32 質感パラメータ特定部、34 学習モデル、36 学習処理部、38 学習データ候補DB、40 適正ガンマカーブ決定部、42 ガンマカーブDB。