(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016236
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】積層体の剥離方法
(51)【国際特許分類】
B32B 43/00 20060101AFI20250124BHJP
【FI】
B32B43/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119376
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】ZACROS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】味戸 恵理美
(72)【発明者】
【氏名】樫岡 雅大
(72)【発明者】
【氏名】野村 雪乃
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB10
4F100AK01A
4F100AK05A
4F100AK42B
4F100AK46A
4F100AK63B
4F100AK63C
4F100BA03
4F100BA15A
4F100EC18
4F100EJ01
4F100EJ33
4F100YY00
(57)【要約】
【課題】大規模な設備を要することなく、効率的に樹脂積層体から各樹脂を分離することができる積層体の剥離方法を提供する。
【解決手段】樹脂層が複数積層されてなる樹脂積層体から前記樹脂層を剥離する積層体の剥離方法であって、前記樹脂積層体に貫通孔を形成する工程と、前記貫通孔が形成された前記樹脂積層体を剥離液に浸漬する工程と、を有する、積層体の剥離方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層が複数積層されてなる樹脂積層体から前記樹脂層を剥離する積層体の剥離方法であって、
前記樹脂積層体に貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔が形成された前記樹脂積層体を剥離液に浸漬する工程と、を有する、
積層体の剥離方法。
【請求項2】
前記貫通孔の密度が1個/cm2以上である、
請求項1に記載の積層体の剥離方法。
【請求項3】
前記貫通孔の孔径が100μm以上500μm以下である、
請求項1に記載の積層体の剥離方法。
【請求項4】
前記樹脂積層体の面積が0.1cm2以上20cm2以下である、
請求項1に記載の積層体の剥離方法。
【請求項5】
前記剥離液は、アルカリ性無機化合物とアルコールの混合液である、
請求項1に記載の積層体の剥離方法。
【請求項6】
前記剥離液の温度が40℃以上80℃以下である、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の積層体の剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、接着剤によってラミネートされた積層フィルムを剥離溶液に浸漬して各層に単離する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層フィルムから単層フィルムを単離する方法では、積層フィルムを剥離溶液に浸漬する際に、積層フィルムを撹拌または超音波振動させる等の大規模な設備を要する。また、積層フィルムを剥離溶液に浸漬してから各単層フィルムが単離されるまである程度の時間がかかる。
【0005】
本発明の課題は、大規模な設備を要することなく、樹脂層が複数積層された樹脂積層体から効率的に各樹脂層を分離することができる積層体の剥離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る積層体の剥離方法は、樹脂層が複数積層されてなる樹脂積層体から前記樹脂層を剥離する積層体の剥離方法であって、前記樹脂積層体に貫通孔を形成する工程と、前記貫通孔が形成された前記樹脂積層体を剥離液に浸漬する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、大規模な設備を要することなく、樹脂層が複数積層された樹脂積層体から効率的に各樹脂層を分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】樹脂積層体を剥離液に浸漬した状態を示す図である。
【
図5】樹脂積層体から各樹脂層が剥離した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態(以下、実施形態という)について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、各図において、各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。
【0010】
本実施形態に係る積層体の剥離方法は、樹脂積層体から樹脂層を剥離する方法である。樹脂積層体は、樹脂層が複数積層されたものである。「樹脂層を剥離する」とは、樹脂積層体に物理的な外力を加えることなく樹脂積層体から各樹脂層が自然に剥がれることを示す。
【0011】
樹脂積層体100の形状は、特に限定されない。樹脂積層体100の形状は、例えば、三角形、四角形、多角形、円形等の平面視で規則的な形状でもよく、また平面視で不規則な形状でもよい。
【0012】
樹脂積層体100の大きさ(面積)は、特に限定されないが、好ましくは0.1cm2以上20cm2以下であり、より好ましくは0.15cm2以上15cm2以下、さらに好ましくは0.2cm2以上10cm2以下である。
【0013】
樹脂積層体の各樹脂層を構成する樹脂は1種類の樹脂でもよいし複数種類の樹脂でよい。
【0014】
本実施形態では、樹脂積層体100が、第1の樹脂層10、第2の樹脂層30、及び第3の樹脂層60で構成されている(
図1、
図2)。
【0015】
第1の樹脂層10、第2の樹脂層30、及び第3の樹脂層60を構成する各樹脂の成分は、特に限定されない。樹脂の成分は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)等が挙げられる。
【0016】
第1の樹脂層10、第2の樹脂層30、及び第3の樹脂層60は、一部の樹脂層または全ての樹脂層に異種の樹脂が用いられた複合マテリアルを構成するものでもよい。例えば、第1の樹脂層10がポリエチレン(PE)樹脂で構成され、第2の樹脂層30がポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂で構成され、第3の樹脂層60がポリアミド(PA)樹脂で構成されていてもよい。
【0017】
また、第1の樹脂層10、第2の樹脂層30、及び第3の樹脂層60は、全ての樹脂層に同種の樹脂が用いられたモノマテリアルであってもよい。例えば、第1の樹脂層10、第2の樹脂層30、及び第3の樹脂層60の全てがポリエチレン(PE)樹脂で構成されたものでもよい。
【0018】
さらに、第1の樹脂層10、第2の樹脂層30、及び第3の樹脂層60が全て同種の樹脂で構成されている場合、同種の樹脂は各樹脂層で物性が異なっていてもよい。例えば、第1の樹脂層10が直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂、第2の樹脂層30が中密度ポリエチレン(MDPE)樹脂、第3の樹脂層60が高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂でそれぞれ構成されたものでもよい。
【0019】
第1の樹脂層10、第2の樹脂層30、及び第3の樹脂層60の各厚みは、特に限定されない。例えば、第1の樹脂層10の厚みは、60~100μmであり、好ましくは70~90μm、より好ましくは75~85μmである。第2の樹脂層30の厚みは、5~45μmであり、好ましくは15~35μm、より好ましくは20~30μmである。第3の樹脂層60の厚みは、5~45μmであり、好ましくは15~35μm、より好ましくは20~30μmである。
【0020】
樹脂積層体100では、第1の樹脂層10と第2の樹脂層30の間に第1の接着剤層20が形成され、第1の樹脂層10と第2の樹脂層30は、第1の接着剤層20を介して接着されている。また、第2の樹脂層30と第3の樹脂層60の間には第2の接着剤層40が形成され、第2の樹脂層30と第3の樹脂層60は、第2の接着剤層40を介して接着されている。
【0021】
第1の接着剤層20および第2の接着剤層40を構成する接着剤の種類は、特に限定されない。接着剤の種類としては、例えば、二液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤等が挙げられる。また、ポリエチレンなどの溶融樹脂を接着剤として使用することもできる。
【0022】
接着剤層の形成態様は、特に限定されず、例えば、サンドイッチラミネート法、ドライラミネート法等により接着剤層を形成することができる。
【0023】
樹脂積層体100は、その他に、印刷層、バリア層、アンカーコート層、機能層、表面コート層等が積層されていてもよい。
【0024】
樹脂積層体100では、例えば、印刷層50が、インキ材を第3の樹脂層60の第2の樹脂層30側の表面に印刷塗布して形成される。これにより、樹脂積層体100の第3の樹脂層60側から印刷層が視認可能となる(
図2)。印刷層は、通常のインキビヒクルの1種ないし2種以上を主成分とすることができる。
【0025】
印刷層は、さらに、任意に可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤等の添加剤の1種ないし2種以上が任意に添加されている。印刷層は、さらに、染料・顔料等の着色剤が添加され、溶媒、希釈剤等で十分に混練して調製したインキ組成物によって形成することができる。
【0026】
また、該インキ組成物を使用し、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷等の印刷方式を使用し、文字、図形、記号、模様等からなる所望の印刷模様を形成することができる。
【0027】
また、バリア層(図示せず)は、例えば、第2の樹脂層30の第3の樹脂層60側の表面に金属箔を積層したり、第2の樹脂層30を金属または金属酸化物を蒸着した蒸着フィルムとすることができる。
【0028】
蒸着フィルムとしては、アルミニウムなどの金属蒸着層や、アルミナまたはシリカなどの無機蒸着層を有するポリエチレンテレフタレートフィルムあるいは、アルミニウムなどの金属蒸着層や、アルミナまたはシリカなどの無機蒸着層を有するポリプロピレンフィルム等を用いることができる。
【0029】
金属箔としては、アルミニウム箔等を挙げることができ、その厚みを5μm以上20μm以下とすることができる。
【0030】
本実施形態に係る積層体の剥離方法は、貫通孔形成工程および浸漬工程を有する。
【0031】
貫通孔形成工程では、樹脂積層体100に貫通孔Hを形成する。貫通孔Hの形成態様は、特に限定されず、例えば、樹脂積層体100の厚み方向に金属製の針を突き刺すことで、樹脂積層体100に貫通孔Hを形成する。
【0032】
貫通孔Hの形状は、特に限定されない。貫通孔Hの形状は、例えば、円形、楕円形、三角形、四角形、五角形以上の多角形等であり、好ましくは円形である。
【0033】
貫通孔Hの形状が円形の場合、貫通孔の孔径は100μm以上500μm以下であることが好ましく、より好ましくは110μm以上490μm以下、さらに好ましくは120μm以上480μm以下である。
【0034】
貫通孔Hの密度は、特に限定されないが、好ましくは1個/cm2以上であり、より好ましくは2個/cm2以上、さらに好ましくは3個/cm2以上である。なお、貫通孔Hの密度の上限は、特に制限されないが、実施可能な上限は300個/cm2以下であり、好ましくは200個/cm2以下、より好ましくは100個/cm2以下である。
【0035】
樹脂積層体100に3個以上の貫通孔Hを形成する場合、貫通孔Hの配置態様は、特に限定されない。例えば、25個の貫通孔Hを樹脂積層体100の縦横等間隔に(規則的に)配置してもよい(
図1)。また、25個の貫通孔Hを樹脂積層体100にランダムに(不規則に)配置してもよい(図示せず)。なお、後述の剥離液が貫通孔Hから樹脂積層体100の各層間に均一に浸透する観点から、貫通孔Hは規則的に配置することが好ましい。
【0036】
浸漬工程では、貫通孔Hが形成された樹脂積層体100を剥離液に浸漬する。樹脂積層体100を剥離液に浸漬する態様は特に限定されない。本実施形態では、例えば、浸漬浴70に入れた剥離液80に樹脂積層体100を浸漬させる(
図4)。
【0037】
剥離液の成分は、特に限定されず、例えば、無機溶媒、無機溶液、有機溶媒、有機溶液、無機化合物と有機溶媒の混合液、無機化合物と有機溶液の混合液、無機溶媒と有機溶媒の混合液、無機溶媒と有機溶液の混合液、無機溶液と有機溶媒の混合液、無機溶液と有機溶液の混合液等が挙げられる。これらの中でも、無機化合物と有機溶媒の混合液、無機化合物と有機溶液の混合液が好ましい。
【0038】
無機化合物と有機溶媒の混合液としては、例えば、アルカリ性無機化合物とアルコールの混合液であり、好ましくは水酸化カリウムとメタノールの混合液、水酸化ナトリウムとメタノールの混合液である。
【0039】
また、無機化合物と有機溶液の混合液としては、例えば、アルカリ性無機化合物とアルコール溶液の混合液であり、好ましくは水酸化カリウムとメタノールとN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の混合液である。なお、剥離液における毒性を低減する観点から、NMPを含まない剥離液(水酸化カリウムとメタノールの混合液、水酸化ナトリウムとメタノールの混合液等)が好ましい。
【0040】
剥離液の温度は、特に限定されない。剥離液の温度は、例えば、室温以上であり、好ましくは30℃以上90℃以下であり、より好ましくは40℃以上80℃以下である。
【0041】
なお、浸漬工程では、任意に、剥離液を撹拌することまたは剥離液に超音波振動を与えること等の物理的処理を付加してもよい。
【0042】
本実施形態の積層体の剥離方法では、上述のように、貫通孔形成工程と浸漬工程を有することで、貫通孔Hが形成された樹脂積層体100が剥離液80に浸漬されると、樹脂積層体100から第1の樹脂層10、第2の樹脂層30および第3の樹脂層60が剥離する(
図4、
図5)。そのため、本実施形態の積層体の剥離方法によれば、大規模な設備(撹拌、超音波振動等)を用いずに、樹脂積層体から各樹脂を分離(単離)することができる。
【0043】
また、本実施形態の積層体の剥離方法では、剥離液80に浸漬される樹脂積層体100に貫通孔Hが形成されているため、剥離液80が貫通孔Hを通じて樹脂積層体100の各樹脂層間に浸透しやすくなる。これにより、樹脂積層体を剥離液に浸漬してから各樹脂層が剥離するまでの時間を短縮することができる。そのため、本実施形態の積層体の剥離方法によれば、効率的に樹脂積層体から各樹脂を分離(単離)することができる。
【0044】
また、本実施形態の積層体の剥離方法では、上述のように、剥離液80が貫通孔Hを通じて樹脂積層体100の各樹脂層間に浸透しやすくなるため、樹脂層間の結合が強い場合でも、各樹脂層を単離することができる。そのため、樹脂積層体が複合マテリアルであるか、またはモノマテリアルであるかに拘わらず、樹脂積層体から各樹脂を分離(単離)することができる。
【0045】
さらに、本実施形態の積層体の剥離方法によれば、上述のように、樹脂積層体100から各樹脂を単離することができるため、各樹脂の分別が容易になる。これにより、樹脂積層体100を構成する各樹脂の再利用が可能になる。
【0046】
本実施形態の積層体の剥離方法では、上述のように、貫通孔Hの密度が1個/cm2以上であると、貫通孔Hを通じて樹脂積層体100の各樹脂層間に浸透する剥離液80の量が増大する。そのため、樹脂積層体を剥離液に浸漬してから各樹脂層が剥離するまでの時間をさらに短縮することができるので、より効率的に樹脂積層体から各樹脂を分離(単離)することができる。
【0047】
本実施形態の積層体の剥離方法では、上述のように、貫通孔Hの孔径を100μm以上500μm以下にすることで、毛細管現象により剥離液80が貫通孔H内に進入しやすくなる。そのため、樹脂積層体100の各樹脂層間に浸透する剥離液80の量がさらに増大するので、剥離液80が樹脂積層体100の各樹脂層間にさらに浸透しやすくなる。そのため、樹脂積層体からの各樹脂のより効率的な分離(単離)が可能になる。
【0048】
本実施形態の積層体の剥離方法では、上述のように、樹脂積層体100の面積が0.1cm2以上20cm2以下であると、貫通孔形成工程において樹脂積層体に貫通孔を形成する作業が容易になる。また、浸漬工程において樹脂積層体を剥離液に浸漬する作業が容易になる。さらに、浸漬工程で樹脂積層体から剥離(分離)した各樹脂の分別(単離)が容易になる。
【0049】
本実施形態の積層体の剥離方法では、上述のように、剥離液80がアルカリ性無機化合物とアルコールの混合液であることで、樹脂積層体を構成する樹脂層間に接着剤層や金属蒸着層等の樹脂以外の層が存在する場合でも、これらの樹脂以外の層が溶解しやすくなる。そのため、樹脂層間の接着による結合を容易に解くことができるので、樹脂積層体からの各樹脂の分離(単離)が容易になる。
【0050】
また、このように剥離液がアルカリ性無機化合物とアルコールの混合液であることで、樹脂積層体を構成する樹脂層間に印刷層等のインクや顔料が含まれる着色層が存在する場合でも、これらの着色層が溶解しやすくなる。これにより、樹脂積層体から各樹脂層が剥離する際に着側層のインクや顔料の除去(脱墨)が可能になるため、樹脂積層体から各樹脂をきれいに(リサイクル可能)に分離(単離)することができる。
【0051】
本実施形態の積層体の剥離方法では、上述のように、剥離液の温度が40℃以上80℃以下であることで、樹脂積層体を構成する樹脂層間に存在する樹脂以外の層(接着剤層、金属蒸着層、着色層等)を溶解する速度が増大する。そのため、樹脂積層体を剥離液に浸漬してから各樹脂層が剥離するまでの時間をさらに短縮することができるので、樹脂積層体からの各樹脂のさらに効率的な分離(単離)が可能になる。
【0052】
なお、本実施形態の積層体の剥離方法では、上述のように、撹拌や超音波振動等を用いなくても、樹脂積層体から各樹脂を分離(単離)することができるが、撹拌や超音波振動等の物理的処理を付加することで、樹脂積層体を剥離液に浸漬してから各樹脂層が剥離するまでの時間をさらに短縮できることが期待できる。
【実施例0053】
以下、本発明について、さらに実施例により具体的に説明する。実施例、比較例の評価は、以下の試験により行った。
【0054】
[樹脂積層体(試験体)]
試験体として、積層体CM(複合マテリアル)および積層体MM(3層モノマテリアル)を用意した。積層体CMは、(ポリアミド(PA)樹脂層/印刷層)15μm/接着剤層2μm/(アルミ蒸着層/ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層)12μm/接着剤層2μm/直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂層100μmの3層複合マテリアルである。なお、接着剤はウレタン硬化物である。また、積層体MMは、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂層25μm/接着剤層2μm/直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂層25μm/接着剤層2μm/直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂層80μmの樹脂層が3層のモノマテリアルである。積層体CMおよび積層体MMに、それぞれ貫通孔を形成した。
【0055】
[剥離液]
試験体を浸漬する剥離液として、溶液1、溶液2、及び溶液3を用意した。溶液1は、水酸化カリウム(KOH)とメタノール(MeOH)の混合液である。溶液2は、水酸化ナトリウム(NaOH)とメタノール(MeOH)の混合液である。溶液3は、水酸化カリウム(KOH)とメタノール(MeOH)とメタノールとN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の混合液である。
【0056】
[浸漬試験]
樹脂積層体(試験体)を剥離液に浸漬して、ピンセットなどを使用せずに自然に各樹脂層が剥離するか確認した。剥離の評価は、以下の基準で行った。
A:120分以内に3層に分離した
B:120分以内に1層が溶解し、2層が分離した
C:120分以内に各層に分離できなかった
【0057】
以下、実施例および比較例を列挙する。
【0058】
[実施例1]
樹脂積層体(試験体)としてサイズ10mm×10mm、孔密度25個/cm2、孔径130μmの積層体CMを、剥離液として60℃の溶液1に浸漬し、各樹脂層が剥離するまでの時間から剥離性を判定した。実施例1の条件と結果を表1に示す。
【0059】
[実施例2]
孔密度25個/cm2を9個/cm2に変更した以外は、実施例1と同様の条件で判定した。実施例2の条件と結果を表1に示す。
【0060】
[実施例3]
孔密度25個/cm2を5個/cm2に変更した以外は、実施例1と同様の条件で判定した。実施例3の条件と結果を表1に示す。
【0061】
[実施例4]
孔密度25個/cm2を49個/cm2に変更した以外は、実施例1と同様の条件で判定した。実施例4の条件と結果を表1に示す。
【0062】
[実施例5]
孔密度25個/cm2を81個/cm2に変更した以外は、実施例1と同様の条件で判定した。実施例5の条件と結果を表1に示す。
【0063】
[実施例6]
サイズ10mm×10mmを30mm×30mmに変更した以外は、実施例1と同様の条件で判定した。実施例6の条件と結果を表1に示す。
【0064】
[実施例7]
サイズ10mm×10mmを5mm×5mmに変更し、孔密度25個/cm2を4個/cm2に変更した以外は、実施例1と同様の条件で判定した。実施例7の条件と結果を表1に示す。
【0065】
[実施例8]
孔密度25個/cm2を20個/cm2に変更した以外は、実施例7と同様の条件で判定した。実施例8の条件と結果を表1に示す。
【0066】
[実施例9]
孔密度25個/cm2を36個/cm2に変更した以外は、実施例7と同様の条件で判定した。実施例8の条件と結果を表1に示す。
【0067】
[実施例10]
剥離液として溶液1を溶液2に変更した以外は、実施例1と同様の条件で判定した。実施例10の条件と結果を表1に示す。
【0068】
[実施例11]
サイズ10mm×10mmを30mm×30mmに変更した以外は、実施例10と同様の条件で判定した。実施例11の条件と結果を表1に示す。
【0069】
[実施例12]
孔径130μmを470μmに変更した以外は、実施例1と同様の条件で判定した。実施例12の条件と結果を表1に示す。
【0070】
[実施例13]
剥離液として溶液1を溶液3に変更した以外は、実施例1と同様の条件で判定した。実施例13の条件と結果を表1に示す。
【0071】
[実施例14]
樹脂積層体(試験体)として積層体CMをMMに変更した以外は、実施例1と同様の条件で判定した。実施例14の条件と結果を表2に示す。
【0072】
[実施例15]
樹脂積層体(試験体)として積層体CMをMMに変更した以外は、実施例7と同様の条件で判定した。実施例15の条件と結果を表2に示す。
【0073】
[実施例16]
樹脂積層体(試験体)として積層体CMを体MMに変更した以外は、実施例9と同様の条件で判定した。実施例16の条件と結果を表2に示す。
【0074】
[実施例17]
剥離液として溶液1を溶液2に変更した以外は、実施例15と同様の条件で判定した。実施例17の条件と結果を表2に示す。
【0075】
[比較例1]
樹脂積層体(試験体)に貫通孔を形成しなかった以外は、実施例1と同様の条件で判定した。比較例1の条件と結果を表1に示す。
【0076】
[比較例2]
樹脂積層体(試験体)に貫通孔を形成しなかった以外は、実施例7と同様の条件で判定した。比較例2の条件と結果を表1に示す。
【0077】
[比較例3]
樹脂積層体(試験体)に貫通孔を形成しなかった以外は、実施例14と同様の条件で判定した。比較例3の条件と結果を表2に示す。
【0078】
【0079】
【0080】
表1、表2から、貫通孔が形成された樹脂積層体(試験体)を剥離液に浸漬した場合、いずれも120分以内に、樹脂積層体から各樹脂層が分離(単離)できることが判った(実施例1~14)。
【0081】
また、複合マテリアルより相対的に剥がれにくい傾向があるモノマテリアルであっても、複合マテリアルと同等に樹脂積層体から各樹脂層が分離(単離)できることが判った(実施例14~17)。
【0082】
一方、貫通孔を形成しなかった樹脂積層体(試験体)を剥離液に浸漬した場合、120分を経過しても、樹脂積層体から各樹脂を分離(単離)することはできなかった(比較例1~3)。
【0083】
以上に開示された実施形態は、例えば、以下の態様を含む。
(付記1)
樹脂層が複数積層されてなる樹脂積層体から前記樹脂層を剥離する積層体の剥離方法であって、
前記樹脂積層体に貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔が形成された前記樹脂積層体を剥離液に浸漬する工程と、を有する、
積層体の剥離方法。
(付記2)
前記貫通孔の密度が1個/cm2以上である、
付記1に記載の積層体の剥離方法。
(付記3)
前記貫通孔の孔径が100μm以上500μm以下である、
付記1または2に記載の積層体の剥離方法。
(付記4)
前記樹脂積層体の面積が0.1cm2以上20cm2以下である、
付記1乃至3のいずれかに記載の積層体の剥離方法。
(付記5)
前記剥離液は、アルカリ性無機化合物とアルコールの混合液である、
付記1乃至4のいずれかに記載の積層体の剥離方法。
(付記6)
前記剥離液の温度が40℃以上80℃以下である、
付記1乃至5のいずれかに記載の積層体。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。