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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016273
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】認知機能評価システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20250124BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
A61B10/00 H
A61B5/11 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119437
(22)【出願日】2023-07-21
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、医工連携・人工知能実装研究事業「デュアルタスクによる認知機能障害の早期診断支援システムの研究」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】八木 康史
(72)【発明者】
【氏名】武 淑瓊
(72)【発明者】
【氏名】大倉 史生
(72)【発明者】
【氏名】槇原 靖
(72)【発明者】
【氏名】劉 家慶
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VB31
4C038VB35
4C038VC05
(57)【要約】
【課題】評価対象者の認知機能を精度よく評価できる認知機能評価システムを提供する。
【解決手段】システム100は、動作検出部20、第1動作特徴抽出部2a、第2動作特徴抽出部2b、及び出力部4を含む。動作検出部20は、運動タスクとデュアルタスクとを遂行する評価対象者SJを撮像し、撮像結果から取得される評価対象者SJの複数の関節の三次元座標を示す複数のフレームを時系列に沿って生成する。第1動作特徴抽出部2aは、運動タスクに対応するフレーム群に基づいて、撮像された複数の関節の空間的な位置関係の特徴と、撮像された複数の関節の時間的な変動の特徴とを示す第1動作特徴hsを抽出する。同様に、第2動作特徴抽出部2bは、デュアルタスクに対応するフレーム群に基づいて、第2動作特徴hdを抽出する。出力部4は、第1動作特徴hs及び第2動作特徴hdに基づいて、評価対象者SJの認知機能を示す評価データを出力する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象者の認知機能を評価する認知機能評価システムであって、
運動タスクとデュアルタスクとを遂行する前記評価対象者を撮像し、撮像結果から取得される前記評価対象者の複数の関節の三次元座標を示す複数のフレームを時系列に沿って生成する動作検出部と、
前記複数のフレームに基づいて前記評価対象者の認知機能を評価する評価部と
を備え、
前記評価部は、ニューラルネットワークを構築する機械学習モデルを有し、
前記ニューラルネットワークは、
前記複数のフレームのうち、前記運動タスクに対応する複数のフレームである運動タスクフレーム群に基づいて、前記複数の関節の空間的な位置関係の特徴と、前記複数の関節の時間的な変動の特徴とを示す第1動作特徴を抽出する第1動作特徴抽出部と、
前記複数のフレームのうち、前記デュアルタスクに対応する複数のフレームであるデュアルタスクフレーム群に基づいて、前記複数の関節の空間的な位置関係の特徴と、前記複数の関節の時間的な変動の特徴とを示す第2動作特徴を抽出する第2動作特徴抽出部と、
前記第1動作特徴及び前記第2動作特徴に基づいて、前記評価対象者の認知機能を示す評価データを出力する出力部と
を含み、
前記運動タスクは、第1運動を前記評価対象者に課すタスクを示し、
前記デュアルタスクは、第2運動と知能問題に対する回答とを同時に前記評価対象者に課すタスクを示す、認知機能評価システム。
【請求項2】
前記出力部は、前記評価データとして、前記評価対象者を陽性又は陰性に分類するデータを出力する、請求項1に記載の認知機能評価システム。
【請求項3】
前記出力部は、前記評価データとして、前記評価対象者を、認知症のクラス、又は軽度認知障害と非認知症とを含むクラスに分類するデータを出力するか、あるいは、前記評価対象者を、認知症と軽度認知障害とを含むクラス、又は非認知症のクラスに分類するデータを出力する、請求項2に記載の認知機能評価システム。
【請求項4】
前記ニューラルネットワークのパラメータ値は、陽性を正しく認識できる割合を示す感度と、陰性を正しく認識できる割合を示す特異度との和を最適化する第1損失関数に基づいて決定されている、請求項2又は請求項3に記載の認知機能評価システム。
【請求項5】
前記出力部は、前記第1動作特徴と前記第2動作特徴との差を示す特徴差を取得する取得部を含み、前記第1動作特徴、前記第2動作特徴、及び前記特徴差に基づいて前記評価データを出力する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の認知機能評価システム。
【請求項6】
前記出力部は、前記第1動作特徴と前記第2動作特徴との差を示す特徴差を取得する取得部を含み、前記第1動作特徴、前記第2動作特徴、及び前記特徴差に基づいて前記評価データを出力し、
前記ニューラルネットワークのパラメータ値は、前記第1損失関数と、前記特徴差を最大化する第2損失関数とに基づいて決定されている、請求項4に記載の認知機能評価システム。
【請求項7】
前記第1動作特徴抽出部は、前記複数の関節の空間的な位置関係を示す空間グラフを前記フレームごとに生成して、前記空間グラフを畳み込むとともに、隣り合う前記フレーム間における同一の前記関節の変動を示す時間グラフを生成して、前記時間グラフを畳み込むことにより、前記第1動作特徴を抽出し、
前記第2動作特徴抽出部は、前記複数の関節の空間的な位置関係を示す空間グラフを前記フレームごとに生成して、前記空間グラフを畳み込むとともに、隣り合う前記フレーム間における同一の前記関節の変動を示す時間グラフを生成して、前記時間グラフを畳み込むことにより、前記第2動作特徴を抽出する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の認知機能評価システム。
【請求項8】
前記第1運動と前記第2運動とは、互いに同じ運動を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の認知機能評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認知機能評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
認知機能の低下を早期に発見することは、認知症の進行を遅らせるために重要である。例えば、非特許文献1には、デュアルタスクを利用して認知機能の低下を早期に発見するシステムが開示されている。具体的には、非特許文献1のシステムは、シングルタスクとデュアルタスクとを被験者に遂行させて収集したデータから、認知症に関する12種類の特徴を算出し、機械学習を用いてMMSE(Mini-Mental State Examination)スコアを推定する。
【0003】
詳しくは、非特許文献1のシステムにおいて、シングルタスクは運動タスクであり、足踏みを被験者に課す。デュアルタスクは、運動タスクと認知タスクとを同時に遂行することを被験者に課すタスクである。デュアルタスクの運動タスクは、シングルタスクと同様に、足踏みを被験者に課す。デュアルタスクの認知タスクは、計算問題又は「じゃんけん」に対する回答を被験者に課す。非特許文献1のシステムは、シングルタスクデータ及びデュアルタスクデータのそれぞれから、以下の6種類の特徴を算出する(合計12種類)。
(1)足踏み平均速度
(2)足踏み速度標準偏差
(3)膝角度平均
(4)膝角度標準偏差
(5)認知タスク正答率
(6)認知タスク解答回数平均
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】松浦 拓 他6名、「デュアルタスク歩行解析に基づく高齢者の認知機能スコア推定」、電子情報通信学会、技術研究報告、川崎、Vol.119、No.HCS2019-99、pp.83-88、Mar.2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1のシステムでは、限られた特徴に基づいて認知機能スコアを推定しているため、精度が低い。したがって、改善の余地がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、評価対象者の認知機能をより精度よく評価することができる認知機能評価システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る認知機能評価システムは、評価対象者の認知機能を評価する。当該認知機能評価システムは、動作検出部と、評価部とを備える。前記動作検出部は、運動タスクとデュアルタスクとを遂行する前記評価対象者を撮像し、撮像結果から取得される前記評価対象者の複数の関節の三次元座標を示す複数のフレームを時系列に沿って生成する。前記評価部は、前記複数のフレームに基づいて前記評価対象者の認知機能を評価する。前記評価部は、ニューラルネットワークを構築する機械学習モデルを有する。前記ニューラルネットワークは、第1動作特徴抽出部と、第2動作特徴抽出部と、出力部とを含む。前記第1動作特徴抽出部は、前記複数のフレームのうち、前記運動タスクに対応する複数のフレームである運動タスクフレーム群に基づいて、前記複数の関節の空間的な位置関係の特徴と、前記複数の関節の時間的な変動の特徴とを示す第1動作特徴を抽出する。前記第2動作特徴抽出部は、前記複数のフレームのうち、前記デュアルタスクに対応する複数のフレームであるデュアルタスクフレーム群に基づいて、前記複数の関節の空間的な位置関係の特徴と、前記複数の関節の時間的な変動の特徴とを示す第2動作特徴を抽出する。前記出力部は、前記第1動作特徴及び前記第2動作特徴に基づいて、前記評価対象者の認知機能を示す評価データを出力する。前記運動タスクは、第1運動を前記評価対象者に課すタスクを示す。前記デュアルタスクは、第2運動と知能問題(認知問題)に対する回答とを同時に前記評価対象者に課すタスクを示す。
【0008】
ある実施形態において、前記出力部は、前記評価データとして、前記評価対象者を陽性又は陰性に分類するデータを出力する。
【0009】
ある実施形態において、前記出力部は、前記評価データとして、前記評価対象者を、認知症のクラス、又は軽度認知障害と非認知症とを含むクラスに分類するデータを出力するか、あるいは、前記評価対象者を、認知症と軽度認知障害とを含むクラス、又は非認知症のクラスに分類するデータを出力する。
【0010】
ある実施形態において、前記ニューラルネットワークのパラメータ値は、陽性を正しく認識できる割合を示す感度と、陰性を正しく認識できる割合を示す特異度との和を最適化する第1損失関数に基づいて決定されている。
【0011】
ある実施形態において、前記出力部は、前記第1動作特徴と前記第2動作特徴との差を示す特徴差を取得する取得部を含む。前記出力部は、前記第1動作特徴、前記第2動作特徴、及び前記特徴差に基づいて前記評価データを出力する。
【0012】
ある実施形態において、前記出力部は、前記第1動作特徴と前記第2動作特徴との差を示す特徴差を取得する取得部を含む。前記出力部は、前記第1動作特徴、前記第2動作特徴、及び前記特徴差に基づいて前記評価データを出力する。前記ニューラルネットワークのパラメータ値は、前記第1損失関数と、前記特徴差を最大化する第2損失関数とに基づいて決定されている。
【0013】
ある実施形態において、前記第1動作特徴抽出部は、前記複数の関節の空間的な位置関係を示す空間グラフを前記フレームごとに生成して、前記空間グラフを畳み込むとともに、隣り合う前記フレーム間における同一の前記関節の変動を示す時間グラフを生成して、前記時間グラフを畳み込むことにより、前記第1動作特徴を抽出する。前記第2動作特徴抽出部は、前記複数の関節の空間的な位置関係を示す空間グラフを前記フレームごとに生成して、前記空間グラフを畳み込むとともに、隣り合う前記フレーム間における同一の前記関節の変動を示す時間グラフを生成して、前記時間グラフを畳み込むことにより、前記第2動作特徴を抽出する。
【0014】
ある実施形態において、前記第1運動と前記第2運動とは、互いに同じ運動を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る認知機能評価システムによれば、評価対象者の認知機能をより精度よく評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態1に係る認知機能評価システムを示す図である。
図2】(a)~(d)は、本発明の実施形態1に係る認知機能評価システムに含まれるタスク提示部が評価対象者に提示するタスクの一例を示す図である。
図3】本発明の実施形態1に係る認知機能評価システムに含まれるタスク提示部が評価対象者に提示する知能問題の他例を示す図である。
図4】本発明の実施形態1に係る認知機能評価システムの構成を示すブロック図である。
図5】本発明の実施形態1に係る認知機能評価システムに含まれる機械学習モデルによって構築される第1ニューラルネットワークを示す図である。
図6】機械学習モデルを生成するモデル生成システムを示す図である。
図7】モデル生成システムの構成の一部を示すブロック図である。
図8】本発明の実施形態1に係る認知機能評価システムに含まれる第1ニューラルネットワークの訓練時における評価部の構成を示すブロック図である。
図9】本発明の実施形態2に係る認知機能評価システムに含まれる機械学習モデルによって構築される第2ニューラルネットワークを示す図である。
図10】本発明の実施形態3に係る認知機能評価システムに含まれる第2ニューラルネットワークの訓練時における評価部の構成を示すブロック図である。
図11】本発明の実施形態4に係る認知機能評価システムを示す図である。
図12】本発明の実施形態4に係る認知機能評価システムの構成を示すブロック図である。
図13】本発明の実施形態4に係る認知機能評価システムに含まれる機械学習モデルによって構築される第3ニューラルネットワークを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面(図1図13)を参照して本発明の認知機能評価システムに係る実施形態を説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合がある。また、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0018】
[実施形態1]
まず、図1を参照して、本実施形態の認知機能評価システム100を説明する。図1は、本実施形態の認知機能評価システム100を示す図である。本実施形態の認知機能評価システム100は、評価対象者SJの認知機能を評価する。より詳しくは、本実施形態の認知機能評価システム100は、評価対象者SJを、認知症(Cognitive Impairment)のクラス、又は軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment;MCI)と非認知症とを含むクラスに分類する。あるいは、本実施形態の認知機能評価システム100は、評価対象者SJを、認知症と軽度認知障害とを含むクラス、又は非認知症のクラスに分類する。
【0019】
なお、軽度認知障害は、認知症の前段階であり、正常な状態と認知症の状態との中間の状態を示す。具体的には、軽度認知障害は、記憶力や注意力などの認知機能に低下がみられるものの、日常生活に支障をきたすほどには認知機能が低下していない状態を示す。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の認知機能評価システム100は、タスク提示部10を備える。タスク提示部10は、評価対象者SJに遂行させるタスクを提示する。本実施形態において、タスク提示部10は、例えば液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイのようなディスプレイを有する。タスク提示部10は、評価対象者SJに遂行させるタスクを示す画面をディスプレイに表示させる。ディスプレイは、例えば、評価対象者SJの正面に設置される。
【0021】
評価対象者SJに遂行させるタスクは、運動タスク(シングルタスク)と、デュアルタスクとを含む。本実施形態では、評価対象者SJは、運動タスクと、デュアルタスクとをこの順に連続して遂行する。
【0022】
運動タスクは、第1運動を評価対象者SJに課すタスクを示す。デュアルタスクは、評価対象者SJに運動タスクと知能タスク(又は認知タスク)とを同時に遂行させるタスクを示す。具体的には、デュアルタスクは、第2運動と、知能問題(又は認知問題)に対する回答とを同時に評価対象者SJに課すタスクを示す。第1運動及び第2運動は、例えば、その場足踏み、歩行、走行、又はスキップを含む。第1運動及び第2運動は、互いに同じ運動であってもよく、互いに異なる運動であってもよい。知能問題(又は認知問題)は、例えば、計算問題、位置記憶問題、又はじゃんけん問題を含む。
【0023】
より詳しくは、評価対象者SJは、所定の時間(例えば、20秒)、運動タスク(シングルタスク)を遂行する。その後、評価対象者SJは、所定の時間(例えば、30秒)、デュアルタスクを遂行する。以下、評価対象者SJに運動タスク(シングルタスク)を遂行させる時間を、「運動タスク遂行時間」と記載する場合がある。また、評価対象者SJにデュアルタスクを遂行させる時間を、「デュアルタスク遂行時間」と記載する場合がある。なお、運動タスク遂行時間及びデュアルタスク遂行時間の長さは、任意である。
【0024】
本実施形態では、運動タスク(シングルタスク)によって評価対象者SJに課される運動(第1運動)と、デュアルタスクの運動タスクによって評価対象者SJに課される運動(第2運動)とは、互いに同じ運動を含む。
【0025】
続いて、図1を参照して、本実施形態の認知機能評価システム100を更に説明する。図1に示すように、認知機能評価システム100は、動作検出部20と、評価部40とを更に備える。
【0026】
動作検出部20は、運動タスクとデュアルタスクとを少なくとも1回遂行する評価対象者SJを撮像し、撮像結果から取得される評価対象者SJの複数の関節の三次元座標を示す複数のフレームを時系列に沿って生成する。詳しくは、動作検出部20は、撮像部21と、モーションキャプチャ部22とを有する。なお、本実施形態では、評価対象者SJは、運動タスク及びデュアルタスクを1回遂行する。以下、評価対象者SJに運動タスクとデュアルタスクとを1回遂行させるタスクを、「タスクセット」と記載する場合がある。
【0027】
撮像部21は、評価対象者SJを撮像して撮像画像を生成する。具体的には、撮像部21は、タスクセットを遂行している評価対象者SJを撮像して、動画データ(又はビデオデータ)を生成する。撮像部21は、例えばCCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ、又は測域センサ(レンジセンサ)のようなセンサを有してもよい。撮像部21は、例えば、評価対象者SJの正面に配置される。撮像部21を評価対象者SJの正面に配置することにより、評価対象者SJの全関節を捕捉することができる。
【0028】
モーションキャプチャ部22は、撮像部21の撮像結果(撮像画像)に基づいて、評価対象者SJの全関節のうち、撮像された各関節の三次元座標を示す複数のフレームを時系列に沿って生成する。詳しくは、モーションキャプチャ部22は、撮像画像(動画データ)に基づいて人体骨格モデルを生成する。各フレームは、評価対象者SJの人体骨格モデルを含む。人体骨格モデルは、評価対象者SJの全関節のうち、撮像された各関節(撮像画像に含まれる全関節)を含む。以下、動作検出部20によって生成される複数のフレームを、「連続フレーム」と記載する場合がある。
【0029】
モーションキャプチャ部22は、例えば、プロセッサと、記憶部とを有する。モーションキャプチャ部22は、プロセッサとして、例えば、CPU(Central Processing Unit)、又はMPU(Micro Processing Unit)を有してもよい。記憶部は、プロセッサによって実行されるコンピュータプログラムを記憶する。コンピュータプログラムは、撮像部21の出力から連続フレームを生成するコンピュータプログラムを含む。記憶部は、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)のような半導体メモリを含む。
【0030】
評価部40は、連続フレームに基づいて評価対象者SJの認知機能を評価する。本実施形態では、評価部40は、評価対象者SJを、認知症のクラス、又は軽度認知障害と非認知症とを含むクラスに分類する。あるいは、評価部40は、評価対象者SJを、認知症と軽度認知障害とを含むクラス、又は非認知症のクラスに分類する。詳しくは、評価部40は、機械学習モデルMLを有する。評価部40は、連続フレームを機械学習モデルMLに入力する。機械学習モデルMLは、連続フレームに基づいて、評価対象者SJを、認知症のクラス、又は軽度認知障害と非認知症とを含むクラスに分類する。あるいは、評価部40は、連続フレームに基づいて、評価対象者SJを、認知症と軽度認知障害とを含むクラス、又は非認知症のクラスに分類する。
【0031】
続いて、図2(a)~図2(d)を参照して、タスク提示部10が評価対象者SJに提示するタスクの一例を説明する。図2(a)~図2(d)は、本実施形態の認知機能評価システム100に含まれるタスク提示部10が評価対象者SJに提示するタスクの一例を示す図である。図2(a)~図2(d)に示す例において、評価対象者SJに課す運動(第1運動及び第2運動)は「足踏み」であり、評価対象者SJに課す知能問題(又は認知問題)は「計算問題」である。
【0032】
図2(a)に示すように、タスク提示部10は、まず、評価対象者SJにタスクの開始を知らせる第1通知画面11を表示する。次に、図2(b)に示すように、タスク提示部10は、運動タスク(シングルタスク)を評価対象者SJに提示する。具体的には、タスク提示部10は、評価対象者SJに課す運動(足踏み)を提示する運動提示画面12を表示する。
【0033】
本実施形態では、デュアルタスクにおいて評価対象者SJに課される運動(第2運動)が、運動タスク(シングルタスク)において評価対象者SJに課される運動(第1運動)と同じである。したがって、タスク提示部10は、所定の運動タスク遂行時間が経過した後、知能タスク(認知タスク)を評価対象者SJに提示する画面を表示する。評価対象者SJは、運動タスク(足踏み)を遂行しながら、タスク提示部10が提示する知能タスク(認知タスク)を遂行する。
【0034】
具体的には、図2(c)に示すように、タスク提示部10は、計算問題を提示する問題提示画面13aを表示する。例えば、タスク提示部10は、計算問題として、引き算問題をディスプレイに表示させる。
【0035】
タスク提示部10は、所定のタイミングで計算問題の提示を終了する。具体的には、タスク提示部10は、問題提示画面13aをディスプレイから消去する。タスク提示部10は、問題提示画面13aをディスプレイから消去した後、2つの回答の候補を示す回答候補提示画面13bを表示する。
【0036】
本実施形態の認知機能評価システム100は、左手用の回答スイッチ(図示せず)と、右手用の回答スイッチ(図示せず)とを更に備える。評価対象者SJは、右手用の回答スイッチ又は左手用の回答スイッチを押すことにより、タスク提示部10によって提示される知能問題(又は認知問題)に回答する。具体的には、評価対象者SJは、2つの回答スイッチの一方を押して、2つの回答の候補のうちの一方の回答を選択する。
【0037】
なお、左手用の回答スイッチは、評価対象者SJの左手に持たせてもよいし、評価対象者SJの左側に設置する手摺に固定してもよい。同様に、右手用の回答スイッチは、評価対象者SJの右手に持たせてもよいし、評価対象者SJの右側に設置する手摺に固定してもよい。
【0038】
評価対象者SJが回答を選択すると、次の問題として、今回回答した計算問題とは異なる計算問題がタスク提示部10によって提示される。以降、所定のデュアルタスク遂行時間が経過するまで、計算問題の提示が繰り返される。
【0039】
図2(d)に示すように、タスク提示部10は、所定のデュアルタスク遂行時間が経過した後、評価対象者SJにタスクの終了を知らせる第2通知画面14をディスプレイに表示する。
【0040】
なお、図2(c)に示す例では、計算問題は引き算問題であるが、計算問題は、引き算問題に限定されない。計算問題は、足し算問題であってもよい。あるいは、計算問題は、引き算問題と足し算問題とを含んでもよい。
【0041】
また、タスク提示部10が提示する知能問題(又は認知問題)は計算問題に限定されるものではない。例えば、知能問題(又は認知問題)は、位置記憶問題、又は、じゃんけん問題であってもよい。
【0042】
図3は、本実施形態の認知機能評価システム100に含まれるタスク提示部10が評価対象者SJに提示する知能問題(又は認知問題)の他例を示す図である。図3に示す例において、知能問題(又は認知問題)は、「位置記憶問題」である。図3に示すように、知能問題(又は認知問題)が位置記憶問題である場合、タスク提示部10は、図形を配置可能な4つの領域のうちの1つに図形を配置した問題提示画面13aを表示する。
【0043】
タスク提示部10は、問題提示画面13aをディスプレイから消去した後、図形を配置可能な4つの領域のうちの1つに図形を配置した回答候補提示画面13bを表示する。回答候補提示画面13bには、問題文と共に、2つの回答候補として、「はい」及び「いいえ」が表示される。問題文は、「はい」又は「いいえ」で回答可能な問題を示す。ここでは、図形が配置されていた位置が問題提示画面13aと回答候補提示画面13bとの間で同じであるか否かが評価対象者SJに問われる。
【0044】
評価対象者SJは、図形が配置されていた位置が問題提示画面13aと回答候補提示画面13bとの間で同じであると判断した場合、左手用の回答スイッチを押して、「はい」を選択する。あるいは、評価対象者SJは、図形が配置されていた位置が問題提示画面13aと回答候補提示画面13bとの間で異なると判断した場合、右手用の回答スイッチを押して、「いいえ」を選択する。
【0045】
続いて、「じゃんけん問題」を説明する。知能問題(又は認知問題)が「じゃんけん問題」である場合、例えば、タスク提示部10は、問題提示画面13aにおいて、「グー」、「チョキ」及び「パー」のうちの一つを表示する。そして、回答候補提示画面13bにおいて、「グー」、「チョキ」及び「パー」のうちの一つと、問題文と、「はい」及び「いいえ」とが表示される。回答候補提示画面13bでは、例えば、回答候補提示画面13bに表示されている指のポーズによって、問題提示画面13aに表示されていた指のポーズに勝てるか否かが評価対象者SJに問われる。
【0046】
評価対象者SJは、回答候補提示画面13bに表示されている指のポーズによって、問題提示画面13aに表示されていた指のポーズに勝てると判断した場合に、左手用の回答スイッチを押して、「はい」を選択する。あるい、評価対象者SJは、回答候補提示画面13bに表示されている指のポーズでは、問題提示画面13aに表示されていた指のポーズに負けると判断した場合に、右手用の回答スイッチを押して、「いいえ」を選択する。
【0047】
続いて、図4を参照して、本実施形態の認知機能評価システム100を説明する。図4は、本実施形態の認知機能評価システム100の構成を示すブロック図である。詳しくは、図4は、評価部40の構成を示す。図4に示すように、認知機能評価システム100は、識別情報取得部50を更に備える。また、評価部40は、記憶部41と、処理部42とを有する。
【0048】
認知機能評価システム100を利用する評価対象者SJにはそれぞれ、事前に固有の識別情報が割り当てられる。識別情報取得部50は、各評価対象者SJに割り当てられた識別情報を取得する。識別情報取得部50は、例えば、カードリーダ、キーボード、又はタッチパネルを含む。識別情報取得部50がカードリーダである場合、各評価対象者SJは、カードに担持されている識別情報をカードリーダに読み取らせる。識別情報取得部50が、キーボード又はタッチパネルである場合、各評価対象者SJは、キーボード又はタッチパネルを操作して、自身に割り当てられた識別情報を入力する。
【0049】
記憶部41は、各種コンピュータプログラム及び各種データを記憶する。具体的には、記憶部41は、記憶装置を有する。記憶装置は、例えば、半導体メモリ(半導体記憶装置)を含む。記憶部41は、半導体メモリとして、例えば、RAM及びROMを含んでもよい。記憶部41は、半導体メモリとして、VRAM(Video RAM)を更に含んでもよい。また、記憶部41は、ストレージデバイスを有してもよい。記憶部41は、ストレージデバイスとして、例えば、HDD(Hard Disk Drive)とSSD(Solid State Drive)とのうちの少なくとも一方を含んでもよい。
【0050】
具体的には、記憶部41は、機械学習モデルMLを記憶する。機械学習モデルMLは、動作検出部20から出力される複数のフレーム(連続フレーム)に基づいて評価対象者SJの認知機能を評価するためのコンピュータプログラムである。
【0051】
処理部42は、記憶部41に記憶された各種のコンピュータプログラムを実行することによって、数値計算や情報処理、機器制御のような様々な処理を行う。処理部42は、プロセッサを有する。あるいは、処理部42は、量子コンピュータを有してもよい。プロセッサは、例えば、CPU又はMPUを含む。プロセッサは、GPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよいし、NPU(Neural Network Processing Unit)を含んでもよい。
【0052】
具体的には、処理部42は、識別情報取得部50により識別情報が取得されると、図2(a)~図2(d)及び図3を参照して説明したように、タスク提示部10に各種の画面を表示させる。また、処理部42は、動作検出部20から出力された複数のフレーム(連続フレーム)を機械学習モデルMLに入力する。
【0053】
より詳しくは、処理部42は、動作検出部20から出力された連続フレームから、運動タスク(シングルタスク)の遂行時に取得された連続フレームと、デュアルタスクの遂行時に取得された連続フレームとをそれぞれ抽出して、機械学習モデルMLに入力する。運動タスク(シングルタスク)に対応する連続フレームのフレーム数は、例えば、160フレームである。デュアルタスクに対応する連続フレームのフレーム数は、例えば、260フレームである。以下、動作検出部20から出力された連続フレーム(複数のフレーム)のうち、運動タスク(シングルタスク)に対応する連続フレーム(複数のフレーム)を、「運動タスクフレーム群」と記載する場合がある。また、動作検出部20から出力された連続フレーム(複数のフレーム)のうち、デュアルタスクに対応する連続フレーム(複数のフレーム)を、「デュアルタスクフレーム群」と記載する場合がある。
【0054】
処理部42は、機械学習モデルMLの出力に基づいて、評価対象者SJの認知機能の評価結果を取得する。本実施形態において、評価結果は、認知機能の分類結果を含む。分類結果は、評価対象者SJの認知機能が分類されるクラスを示す。具体的には、評価対象者SJの認知機能が分類されるクラスは、2つのクラスを含む。2つのクラスのうちの一方は、認知症のクラスを示す。2つのクラスのうちの他方は、軽度認知障害と非認知症とを含むクラスを示す。あるいは、2つのクラスのうちの一方は、認知症と軽度認知障害とを含むクラスを示す。2つのクラスのうちの他方は、非認知症のクラスを示す。
【0055】
処理部42は、評価対象者SJの認知機能の評価結果を取得すると、評価対象者SJの認知機能の評価結果を、評価対象者SJに割り当てられた識別情報に関連付けて記憶部41に記憶させる。この結果、記憶部41が、評価対象者SJの認知機能の評価結果の履歴を識別情報に関連付けて記憶する。
【0056】
なお、認知機能評価システム100は、認知機能の評価結果又は認知機能の評価結果の履歴を評価対象者SJに提示する結果提示部を備えてもよい。結果提示部は、例えば、プリンタを含む。あるいは、結果提示部は、通信デバイスを含んでもよい。
【0057】
認知機能評価システム100がプリンタを備える場合、処理部42は、プリンタを制御して、認知機能の評価結果が印字されたシートをプリンタから出力させる。あるいは、処理部42は、認知機能の評価結果の履歴を示す表又はグラフを作成して、認知機能の評価結果の履歴を示す表又はグラフが印字されたシートをプリンタから出力させる。認知機能評価システム100が通信デバイスを備える場合、処理部42は、通信デバイスを制御して、例えば、評価対象者SJによって予め登録されたメールアドレスに、評価対象者SJの認知機能の評価結果を示すメールを送信してもよい。あるいは、処理部42は、認知機能の評価結果の履歴を示す表又はグラフを示すメールを送信してもよい。
【0058】
続いて、図5を参照して、機械学習モデルMLを説明する。図5は、本実施形態の認知機能評価システム100に含まれる機械学習モデルMLによって構築される第1ニューラルネットワークNW1を示す図である。第1ニューラルネットワークNW1は、例えば、ディープラーニングを行うニューラルネットワークである。
【0059】
図5に示すように、機械学習モデルMLは第1ニューラルネットワークNW1を構築する。したがって、評価部40は、第1ニューラルネットワークNW1を含む。第1ニューラルネットワークNW1は、第1動作特徴抽出部2aと、第2動作特徴抽出部2bと、第1変換部3aと、第2変換部3bと、出力部4とを含む。
【0060】
既に説明したように、評価対象者SJはタスクセットを1回遂行する。動作検出部20は、評価対象者SJがタスクセットを1回遂行している間、評価対象者SJを撮像する。この結果、タスクセットを1回遂行している評価対象者SJを示す連続フレームが取得される。処理部42は、連続フレームから、運動タスクフレーム群とデュアルタスクフレーム群とを抽出する。そして、処理部42は、運動タスクフレーム群を第1動作特徴抽出部2aに入力し、デュアルタスクフレーム群を第2動作特徴抽出部2bに入力する。
【0061】
第1動作特徴抽出部2aは、動作検出部20により生成された複数のフレーム(連続フレーム)のうち、運動タスクに対応する複数のフレーム(運動タスクフレーム群)に基づいて、第1動作特徴を抽出する。第1動作特徴は、運動タスクを遂行している評価対象者SJの動作の特徴を示す。詳しくは、第1動作特徴は、撮像された評価対象者SJの各関節(人体骨格モデルの全関節)の空間的な位置関係の特徴と、撮像された評価対象者SJの各関節(人体骨格モデルの全関節)の時間的な変動の特徴とを示す。
【0062】
第2動作特徴抽出部2bは、動作検出部20により生成された複数のフレーム(連続フレーム)のうち、デュアルタスクに対応する複数のフレーム(デュアルタスクフレーム群)に基づいて、第2動作特徴を抽出する。第2動作特徴は、デュアルタスクを遂行している評価対象者SJの動作の特徴を示す。詳しくは、第2動作特徴は、撮像された評価対象者SJの各関節(人体骨格モデルの全関節)の空間的な位置関係の特徴と、撮像された評価対象者SJの各関節(人体骨格モデルの全関節)の時間的な変動の特徴とを示す。
【0063】
具体的には、第1動作特徴抽出部2aは、人体骨格モデルをグラフ構造として捉える。より具体的には、第1動作特徴抽出部2aは、運動タスクフレーム群から、2つのグラフ構造を捉える。詳しくは、第1動作特徴抽出部2aは、撮像された評価対象者SJの各関節(人体骨格モデルの全関節)の空間的(3次元的)な位置関係を示す空間グラフをフレームごとに生成するとともに、隣り合うフレーム間における同一の関節の変動(つまり、関節の時間的な変動)を示す時間グラフを生成する。そして、第1動作特徴抽出部2aは、空間グラフを畳み込むとともに、時間グラフを畳み込むことにより、第1動作特徴を抽出する。つまり、第1動作特徴抽出部2aは、空間グラフを畳み込むことにより、人体骨格モデルの全関節の空間的な位置関係の特徴を抽出する。また、第1動作特徴抽出部2aは、時間グラフを畳み込むことにより、人体骨格モデルの全関節の時間的な変動の特徴を抽出する。第1動作特徴抽出部2aは、例えば、時空間グラフ畳み込みニューラルネットワーク(Spatio-temporal Graph Convolutional Neural Network;ST-GCN)のようなグラフ畳み込みニューラルネットワークを含む。
【0064】
第2動作特徴抽出部2bも、第1動作特徴抽出部2aと同様に、デュアルタスクフレーム群から、2つのグラフ構造を捉える。詳しくは、第2動作特徴抽出部2bは、撮像された評価対象者SJの各関節(人体骨格モデルの全関節)の空間的(3次元的)な位置関係を示す空間グラフをフレームごとに生成するとともに、隣り合うフレーム間における同一の関節の変動(つまり、関節の時間的な変動)を示す時間グラフを生成する。そして、第2動作特徴抽出部2bは、空間グラフを畳み込むとともに、時間グラフを畳み込むことにより、第2動作特徴を抽出する。つまり、第2動作特徴抽出部2bは、空間グラフを畳み込むことにより、人体骨格モデルの全関節の空間的な位置関係の特徴を抽出し、時間グラフを畳み込むことにより、人体骨格モデルの全関節の時間的な変動の特徴を抽出する。第2動作特徴抽出部2bは、例えば、時空間グラフ畳み込みニューラルネットワーク(ST-GCN)のようなグラフ畳み込みニューラルネットワークを含む。
【0065】
例えば、評価対象者SJに課される運動(第1運動及び第2運動)が足踏み(その場足踏み)である場合、第1動作特徴抽出部2aは、3次元人体骨格モデルに含まれる全関節の空間的(3次元的)な位置関係及び時間的な変動から、運動タスクを遂行している評価対象者SJによる足踏み(運動)の時空間的な特徴(第1動作特徴)を抽出する。同様に、第2動作特徴抽出部2bは、3次元人体骨格モデルに含まれる全関節の空間的(3次元的)な位置関係及び時間的な変動から、デュアルタスクを遂行している評価対象者SJによる足踏み(運動)の時空間的な特徴(第2動作特徴)を抽出する。
【0066】
第1動作特徴抽出部2a及び第2動作特徴抽出部2bにより抽出される動作特徴(第1動作特徴及び第2動作特徴)は、高次元のベクトル空間で表される。第1変換部3aは、第1動作特徴(高次元のベクトル空間)を低次元のベクトル空間へ変換する。同様に、第2変換部3bは、第2動作特徴(高次元のベクトル空間)を低次元のベクトル空間へ変換する。つまり、第1変換部3a及び第2変換部3bは、いわゆる埋込を行う。第1変換部3a及び第2変換部3bは、例えば、完全結合層(Fully Connected Layer:FC)を含む。以下、低次元ベクトルへ変換された第1動作特徴を、「第1埋込特徴hs」と記載する場合ある。同様に、低次元ベクトルへ変換された第2動作特徴を、「第2埋込特徴hd」と記載する場合ある。
【0067】
詳しくは、ST-GCNは、GCN(Graph Convolutional Network)と、TCN(Temporal Convolutional Network)とを含む。GCNにより空間的な特徴が抽出され、TCNにより時間的な特徴が抽出される。例えば、t番目のフレームに対するGCNの出力は、以下の式(1)で表すことができる。
【数1】
【0068】
式(1)において、Akは隣接行列を示し、Dkは隣接行列Akの対角行列又は次数行列を示し、xt inはt番目のフレームの特徴を示し、wkは学習可能な重み行列を示し、Mkは隣接行列Akの学習可能な注視領域を示す。
【0069】
TCNは、二次元畳み込みを実施する。TCNのカーネルサイズは、例えば、「75」である。第1変換部3aは、例えば、第1動作特徴(高次元のベクトル空間)を64次元のベクトル空間へ線形変換する。同様に、第2変換部3bは、第2動作特徴(高次元のベクトル空間)を64次元のベクトル空間へ線形変換する。
【0070】
出力部4は、第1動作特徴及び第2動作特徴に基づいて、評価対象者SJの認知機能を示す評価データを出力する。本実施形態では、出力部4は、評価データとして、評価対象者SJを陽性又は陰性に分類するデータを出力する。具体的には、出力部4は、評価データとして、評価対象者SJを、認知症のクラス(陽性)、又は軽度認知障害と非認知症とを含むクラス(陰性)に分類するデータを出力する。あるいは、出力部4は、評価データとして、評価対象者SJを、認知症と軽度認知障害とを含むクラス(陽性)、又は非認知症のクラス(陰性)に分類するデータを出力する。詳しくは、第1ニューラルネットワークNW1の出力部4は、結合部411と、分類部412とを含む。
【0071】
結合部411は、第1埋込特徴hsと第2埋込特徴hdとを結合して、スカラー値sを出力する。結合部411は、例えば、完全結合層(FC)を含む。分類部412は、スカラー値sに基づいて、評価対象者SJの認知機能を陽性又は陰性に分類する。例えば、スカラー値sは、以下の式(2)で表すことができる。
【数2】
【0072】
式(2)において、bはバイアス項を示し、Wは完全結合層(FC)の重み行列を示す。
【0073】
詳しくは、スカラー値sは、陽性のスカラー値s1と、陰性のスカラー値s2とを含む。陽性のスカラー値s1は、陽性を正しく認識できている確率を示す。陰性のスカラー値s2は、陰性を正しく認識できている確率を示す。分類部412は、陽性のスカラー値s1が陰性のスカラー値s2よりも大きい場合、陽性を示す評価データを出力する。一方、分類部412は、陰性のスカラー値s2が陽性のスカラー値s1よりも大きい場合、陰性を示す評価データを出力する。
【0074】
以上、図1図5を参照して説明した実施形態によれば、撮像結果から取得される評価対象者SJの複数の関節の空間的な位置関係の特徴及び時間的な変動の特徴に基づいて、評価対象者SJの認知機能を評価することができる。したがって、限られた特徴に基づいて評価対象者SJの認知機能を評価するシステムと比べて、評価対象者SJの認知機能をより精度よく評価することができる。
【0075】
続いて、図6図8を参照して、第1ニューラルネットワークNW1の訓練方法(学習方法)を説明する。図6は、機械学習モデルMLを生成するモデル生成システム200を示す図である。
【0076】
モデル生成システム200は、第1ニューラルネットワークNW1の訓練に用いられる。具体的には、モデル生成システム200は、訓練データ(学習用データセット)を作成して、第1ニューラルネットワークNW1に訓練データ(学習用データセット)を学習させる。訓練データの作成のために、モデル生成システム200は、各種のデータを収集する。
【0077】
詳しくは、モデル生成システム200は、タスクセットを遂行する複数の被験者から複数の連続データ(説明変数)を収集する。また、モデル生成システム200は、各被験者のラベルデータ(目的変数)を収集する。そして、モデル生成システム200は、複数の連続データ(説明変数)と複数のラベルデータ(目的変数)とを組み合わせて、訓練データ(学習用データセット)を作成する。
【0078】
図6に示すように、モデル生成システム200は、タスク提示部10と、動作検出部20と、評価部40と、識別情報取得部50と、データ収集部70とを備える。
【0079】
タスク提示部10は、図1図5を参照して説明したように、被験者に運動タスク及びデュアルタスクを提示する。動作検出部20は、図1図5を参照して説明したように連続フレーム(運動タスクフレーム群及びデュアルタスクフレーム群)を出力する。識別情報取得部50は、図1図5を参照して説明したように、被験者の識別情報を取得する。
【0080】
データ収集部70は、図1図5を参照して説明したタスクセットを被験者が遂行することによって得られるデータを収集する。具体的には、データ収集部70は、動作検出部20の出力から連続フレーム(運動タスクフレーム群及びデュアルタスクフレーム群)を収集する。なお、データ収集部70が収集するデータには、同一の被験者から得られる複数のデータが含まれていてもよい。
【0081】
続いて、図7を参照して、モデル生成システム200を説明する。図7は、モデル生成システム200の構成の一部を示すブロック図である。詳しくは、図7は、データ収集部70の構成を示す。図7に示すように、データ収集部70は、入力部71と、記憶部72と、処理部73とを備える。データ収集部70は、例えば、サーバである。
【0082】
入力部71は、作業者によって操作されて、処理部73に対して様々な情報を入力する。入力部71は、例えば、キーボード、マウス、及びタッチパネルのような入力機器を含む。例えば、作業者は、入力部71を操作して、教師あり学習又は半教師あり学習で用いるラベルデータ(目的変数)を入力する。この結果、データ収集部70により複数のラベルデータが収集される。
【0083】
具体的には、評価対象者SJを、認知症のクラス、又は軽度認知障害と非認知症とを含むクラスに分類する機械学習モデルML(第1ニューラルネットワークNW1)を生成する場合、ラベルデータは、被験者が認知症のクラス(陽性)であるのか、軽度認知障害と非認知症とを含むクラス(陰性)であるのかを示す。同様に、評価対象者SJを、認知症と軽度認知障害とを含むクラス、又は非認知症のクラスに分類する機械学習モデルML(第1ニューラルネットワークNW1)を生成する場合、ラベルデータは、被験者が認知症と軽度認知障害とを含むクラス(陽性)であるのか、非認知症のクラス(陰性)であるのかを示す。
【0084】
例えば、作業者は、医師による各被験者の確定診断の結果を参照して複数のラベルデータを入力してもよい。具体的には、評価対象者SJを、認知症のクラス、又は軽度認知障害と非認知症とを含むクラスに分類する機械学習モデルML(第1ニューラルネットワークNW1)を生成する場合、確定診断の結果が認知症であった被験者に対して、陽性を示すラベルデータを入力し、確定診断の結果が軽度認知障害又は非認知症であった被験者に対して、陰性を示すラベルデータを入力する。評価対象者SJを、認知症と軽度認知障害とを含むクラス、又は非認知症のクラスに分類する機械学習モデルML(第1ニューラルネットワークNW1)を生成する場合も同様である。
【0085】
記憶部72は、各種コンピュータプログラム及び各種データを記憶する。具体的には、記憶部72は、記憶装置を有する。記憶装置は、例えば、半導体メモリ(半導体記憶装置)を含む。記憶部72は、半導体メモリとして、例えば、RAM及びROMを含んでもよい。記憶部72は、半導体メモリとして、VRAMを更に含んでもよい。また、記憶部72は、ストレージデバイスを有してもよい。記憶部72は、ストレージデバイスとして、例えば、HDDとSSDとのうちの少なくとも一方を含んでもよい。
【0086】
本実施形態において、記憶部72は、訓練データ(学習用データセット)を記憶する。具体的には、記憶部72は、各被験者から取得された連続フレーム(運動タスクフレーム群及びデュアルタスクフレーム群)を、各被験者に割り当てられた識別情報に関連付けて記憶する。記憶部72は更に、入力部71から入力された各被験者のラベルデータを、各被験者の識別情報に関連付けて記憶する。記憶部72は、例えば、訓練データのデータベースを記憶してもよい。なお、同一の被験者から得られる複数のデータは、異なるデータとして管理される。
【0087】
処理部73は、記憶部72に記憶された各種のコンピュータプログラムを実行することによって、数値計算や情報処理、機器制御のような様々な処理を行う。処理部73は、プロセッサを有する。プロセッサは、例えば、CPU又はMPUを含む。
【0088】
具体的には、処理部73は、入力部71から入力されたラベルデータを被験者の識別情報に関連付けて記憶部72に記憶させる。また、処理部73は、図2及び図3を参照して説明したようにタスク提示部10に各種画面を表示させて、動作検出部20の出力から連続フレーム(運動タスクフレーム群及びデュアルタスクフレーム群)を取得し、取得した連続フレームを被験者の識別情報に関連付けて記憶部72に記憶させる。この結果、訓練データが記憶部72に記憶される。
【0089】
処理部73は、記憶部72に記憶された訓練データを評価部40に出力する。本実施形態では、評価部40は、ミニバッチ学習を行う。したがって、処理部73は、ミニバッチ学習用の訓練データを生成して評価部40に出力する。バッチサイズは、例えば「8」に設定される。
【0090】
続いて、図8を参照して、モデル生成システム200を説明する。図8は、本実施形態の認知機能評価システム100に含まれる第1ニューラルネットワークNW1の訓練時における評価部40の構成を示すブロック図である。図8に示すように、評価部40は、入力部43を更に備える。
【0091】
入力部43は、作業者によって操作されて、処理部42に対して様々な情報を入力する。入力部43は、例えば、キーボード、マウス、及びタッチパネルのような入力機器を含む。例えば、作業者は、入力部43を操作して、第1損失関数L1、及び学習率を入力する。例えば、エポック数(学習回数)を「50」に設定する場合、初期の学習率を「0.01」に設定して、エポック13、エポック25、及びエポック37の各時点で学習率を0.1倍してもよい。
【0092】
訓練時(学習時)に、記憶部41は、学習用プログラムTPを記憶する。学習用プログラムTPは、訓練データの中から一定の規則を見出し、その規則を表現するモデル(機械学習モデルML)を生成するためのアルゴリズムを実行するためのプログラムである。
【0093】
処理部42は、第1損失関数L1及び学習率を学習用プログラムTPに与えた後、データ収集部70から取得した訓練データ(ミニバッチ学習用の訓練データ)を用いて、学習用プログラムTPを実行する。訓練データには、各被験者の運動タスクフレーム群、デュアルタスクフレーム群、及びラベルデータが含まれる。この結果、学習用プログラムTPによって構築されるニューラルネットワークが訓練されて、機械学習モデルMLが生成される。具体的には、処理部42は、第1ニューラルネットワークNW1に含まれる複数のパラメータの値(パラメータ値)を、第1損失関数L1を最小値にする値に決定する。例えば、処理部42は、誤差逆伝播学習法のアルゴリズムに基づいて、第1ニューラルネットワークNW1のパラメータ値を決定してもよい。
【0094】
ここで、第1損失関数L1について説明する。第1損失関数L1は、陽性を正しく認識できる割合を示す感度P1と、陰性を正しく認識できる割合を示す特異度P2との和(P1+P2)を最適化する損失関数を示す。処理部42は、第1損失関数L1に基づいて、第1ニューラルネットワークNW1のパラメータ値を決定する。換言すると、第1ニューラルネットワークNW1のパラメータ値は、第1損失関数L1に基づいて決定されている。感度P1は、下記式(3)で表すことができる。特異度P2は、下記式(4)で表すことができる。
感度P1=NTP/NP=NTP/(NTP+NFN)・・・(3)
特異度P2=NTN/NN=NTN/(NFP+NTN)・・・(4)
【0095】
上記の式(3)及び式(4)において、NPは陽性のサンプル数を示し、NNは陰性のサンプル数を示し、NTPは正しく分類された陽性のサンプル数を示し、NTNは正しく分類された陰性のサンプル数を示し、NFPは偽陽性のサンプル数を示し、NFNは偽陰性のサンプル数を示す。
【0096】
具体的には、処理部42は、勾配法によって第1損失関数L1の最小値を探索する。すなわち、処理部42は、第1損失関数L1を偏微分することにより、第1損失関数L1の最小値を探索する。本実施形態では、処理部42は、下記式(5)~式(8)に基づいて勾配を算出する。式(5)は第1損失関数L1を示し、式(6)は、式(5)を偏微分した式である。式(7)は「重み」を示す。
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【0097】
式(5)~式(7)において、NPは、ミニバッチに含まれる陽性のサンプル数を示し、NNは、ミニバッチに含まれる陰性のサンプル数を示す。したがって、重みw(NP、NN)は、ミニバッチに含まれる陽性及び陰性のそれぞれのサンプル数の調和平均を示す。また、SP及びSNはそれぞれ、ミニバッチに含まれる陽性及び陰性の指数を示す。式(8)に示すように、f(si)は、スカラー値sを変数とするシグモイド関数である。なお、siは、i番目のサンプルであることを示す。式(5)及び式(6)において、「f(si)」は、i番目のサンプルが陽性である確率を示し、「1-f(si)」は、i番目のサンプルが陰性である確率を示す。「f(si)」には陽性のスカラー値s1が代入される。「1-f(si)」には陰性のスカラー値s2が代入される。
【0098】
なお、式(5)は、下記式(9)に示す損失関数Lを対数化して、重みw(NP、NN)を付与した式である。
【数7】
【0099】
式(9)は、下記式(10)及び式(11)を含む。式(10)は、スカラー値sを変数とするシグモイド関数を用いて感度P1を緩和する式を示す。式(11)は、スカラー値sを変数とするシグモイド関数を用いて特異度P2を緩和する式を示す。
【数8】
【数9】
【0100】
したがって、上記式(5)は、感度P1と特異度P2との和(P1+P2)を含む損失関数を示し、上記式(6)に基づいて、上記式(5)に示す損失関数の最小値を探索することにより、感度P1と特異度P2との和(P1+P2)を最適化するパラメータ値を決定することができる。更に、上記式(5)によれば、勾配が消失しないので、誤差逆伝播学習法を用いた学習を行うことができる。また、上記式(7)に示す重みを導入することにより、陽性のサンプル数と陰性のサンプル数とが不均衡であっても、その影響を緩和することができる。
【0101】
以上、図6図8を参照して説明したように、第1ニューラルネットワークNW1の訓練方法(学習方法)は、被験者が陽性であるか陰性であるかを示すラベルデータと、運動タスクフレーム群と、デュアルタスクフレーム群とを含む訓練データを第1ニューラルネットワークNW1に入力し、第1損失関数L1に基づいて第1ニューラルネットワークNW1のパラメータ値を調整するステップを含む。この訓練方法によれば、感度P1と特異度P2との和(P1+P2)が最適化されるように第1ニューラルネットワークNW1が訓練される。その結果、第1ニューラルネットワークNW1により、評価対象者SJの認知機能をより一層精度よく評価することが可能になる。
【0102】
なお、本実施形態において、認知機能評価システム100は、評価対象者SJにタスクセットを1回遂行させたが、認知機能評価システム100は、評価対象者SJにタスクセットを2回以上連続で遂行させてもよい。
【0103】
また、本実施形態において、認知機能評価システム100は、評価対象者SJに運動タスク(シングルタスク)とデュアルタスクとをこの順に遂行させたが、運動タスク(シングルタスク)とデュアルタスクとを評価対象者SJに遂行させる順序は入れ替え可能である。
【0104】
また、本実施形態において、認知機能評価システム100は、評価対象者SJに運動タスク(シングルタスク)とデュアルタスクとを遂行させたが、認知機能評価システム100は、評価対象者SJに、知能タスク(シングルタスク)と、運動タスク(シングルタスク)と、デュアルタスクとを含むタスクセットを遂行させてもよい。知能タスク(シングルタスク)は、デュアルタスクの知能タスクと同じ知能問題(又は認知問題)を評価対象者SJに課すタスクであってもよいし、デュアルタスクの知能タスクとは異なる知能問題(又は認知問題)を評価対象者SJに課すタスクであってもよい。知能タスク(シングルタスク)と、運動タスク(シングルタスク)と、デュアルタスクとを評価対象者SJに遂行させる順序は任意である。
【0105】
また、本実施形態の認知機能評価システム100は、評価対象者SJの認知機能を分類したが、認知機能評価システム100は、評価対象者SJの認知機能スコアを判定してもよい。認知機能スコアは、例えば、MMSE(Mini Mental State Examination)スコア又は長谷川式簡易知能評価スケールのような一般的な知能評価スケールである。MMSEスコアを用いた診断では、MMSEスコアが23点以下の場合に認知症の疑いありと判断され、MMSEスコアが23点より高く27点以下である場合に軽度認知障害の疑いありと判断される。また、MMSEスコアが27点より高い場合に非認知症と判断される。この場合、データ収集部70は、ラベルデータとして、各被験者の認知機能スコアを収集する。認知機能スコアは、各被験者に事前にペーパーテスト(例えば、MMSEのペーパーテスト)を実施してもらうことで取得することができる。
【0106】
また、本実施形態では、医師による確定診断の結果に基づいて、陽性を示すラベルデータと、陰性を示すラベルデータとを入力したが、認知機能スコアが閾値以下の被験者に対して、陽性を示すラベルデータを入力し、認知機能スコアが閾値より大きい被験者に対して、陰性を示すラベルデータを入力してもよい。具体的には、評価対象者SJを、認知症のクラス、又は軽度認知障害と非認知症とを含むクラスに分類する機械学習モデルML(第1ニューラルネットワークNW1)を生成する場合、MMSEスコアが23点以下の被験者に対して、陽性を示すラベルデータを入力し、MMSEスコアが23点より大きい被験者に対して、陰性を示すラベルデータを入力してもよい。評価対象者SJを、認知症と軽度認知障害とを含むクラス、又は非認知症のクラスに分類する機械学習モデルML(第1ニューラルネットワークNW1)を生成する場合、MMSEスコアが27点以下の被験者に対して、陽性を示すラベルデータを入力し、MMSEスコアが27点より大きい被験者に対して、陰性を示すラベルデータを入力してもよい。
【0107】
また、本実施形態では、式(5)~式(11)を参照して説明した損失関数(第1損失関数L1)を用いて第1ニューラルネットワークNW1のパラメータ値を決定したが、損失関数は第1損失関数L1に限定されない。損失関数は、平均二乗誤差(MSE)、平均絶対誤差(MAE)、平均二乗誤差の平方根(RMSE)、平均二乗対数誤差(MSLE)、Huber損失、ポアソン損失、ヒンジ損失、及びカルバック-ライブラー情報量(KLD)等の公知の損失関数であってもよい。
【0108】
[実施形態2]
続いて図9を参照して本発明の実施形態2について説明する。但し、実施形態1と異なる事項を説明し、実施形態1と同じ事項についての説明は割愛する。実施形態2は、機械学習モデルMLが第2ニューラルネットワークNW2を構築する点で実施形態1と異なる。
【0109】
図9は、本実施形態の認知機能評価システム100に含まれる機械学習モデルMLによって構築される第2ニューラルネットワークNW2を示す図である。第2ニューラルネットワークNW2は、例えば、ディープラーニングを行うニューラルネットワークである。
【0110】
図9に示すように、機械学習モデルMLは第2ニューラルネットワークNW2を構築する。したがって、評価部40は、第2ニューラルネットワークNW2を含む。第2ニューラルネットワークNW2は、第1動作特徴抽出部2aと、第2動作特徴抽出部2bと、第1変換部3aと、第2変換部3bと、出力部4とを含む。第2ニューラルネットワークNW2の出力部4は、結合部411と、分類部412と、取得部413とを含む。
【0111】
取得部413は、第1動作特徴抽出部2aにより抽出された第1動作特徴と、第2動作特徴抽出部2bにより抽出された第2動作特徴との差を示す特徴差を演算して取得する。出力部4は、第1動作特徴、第2動作特徴、及び特徴差に基づいて評価データを出力する。第1動作特徴と第2動作特徴との差(特徴差)は、デュアルタスク遂行時の評価対象者SJの動作特徴と、運動タスク遂行時の評価対象者SJの動作特徴との差異を示す。
【0112】
具体的には、取得部413は、特徴差として、第1埋込特徴hsと第2埋込特徴hdとの差hcを算出する。以下、第1埋込特徴hsと第2埋込特徴hdとの差hcを、「デュアルタスクコストhc」と記載する場合がある。例えば、取得部413は、以下の式(12)に基づいて、デュアルタスクコストhcを算出してもよい。
hc=第2埋込特徴hd-第1埋込特徴hs・・・(12)
【0113】
結合部411は、第1埋込特徴hsと、第2埋込特徴hdと、デュアルタスクコストhcとを結合して、スカラー値sを出力する。分類部412は、スカラー値sに基づいて、評価対象者SJの認知機能を陽性又は陰性に分類する。例えば、スカラー値sは、以下の式(13)で表すことができる。
【数10】
【0114】
式(13)において、bはバイアス項を示し、Wは完全結合層(FC)の重み行列を示す。
【0115】
以上、図9を参照して本発明の実施形態2を説明した。実施形態2によれば、実施形態1と同様に、限られた特徴に基づいて評価対象者SJの認知機能を評価するシステムと比べて、評価対象者SJの認知機能をより精度よく評価することができる。
【0116】
更に、実施形態2によれば、認知機能評価システム100は、第1動作特徴(第1埋込特徴hs)と第2動作特徴(第2埋込特徴hd)との差(デュアルタスクコストhc)を用いて、評価対象者SJの認知機能を評価することができる。つまり、運動タスク遂行時の評価対象者SJの動作特徴(第1動作特徴)と、デュアルタスク遂行時の評価対象者SJの動作特徴(第2動作特徴)との差異を識別要素として活用して、評価対象者SJの認知機能を評価することができる。この結果、評価対象者SJの認知機能をより一層精度よく評価することができる。
【0117】
具体的には、評価対象者SJの認知機能が低いほど、特徴差(デュアルタスクコストhc)が大きくなる。これは、デュアルタスク遂行時の脳の負担が運動タスク遂行時と比べて大きくなるためである。例えば、運動タスク(シングルタスク)及びデュアルタスクにおいて評価対象者SJに課される運動(第1運動及び第2運動)が足踏みである場合、評価対象者SJの認知機能が低いほど、デュアルタスク遂行時に、運動タスク遂行時と比べて足踏み速度が遅くなったり、身体のバランスが崩れたりする。したがって、運動タスク遂行時の評価対象者SJの動作特徴(第1動作特徴)と、デュアルタスク遂行時の評価対象者SJの動作特徴(第2動作特徴)との差異を識別要素として活用することにより、評価対象者SJの認知機能をより一層精度よく評価することができる。
【0118】
また、運動タスク遂行時の評価対象者SJの動作特徴(第1動作特徴)と、デュアルタスク遂行時の評価対象者SJの動作特徴(第2動作特徴)との差異を識別要素として活用することにより、各評価対象者SJの身体能力の差異(個人差)の影響を抑制して、評価対象者SJの認知機能を評価することができる。
【0119】
[実施形態3]
続いて図9及び図10を参照して本発明の実施形態3について説明する。但し、実施形態1、2と異なる事項を説明し、実施形態1、2と同じ事項についての説明は割愛する。実施形態3は、第2ニューラルネットワークNW2のパラメータ値が実施形態1、2と異なる。具体的には、実施形態3は、第2ニューラルネットワークNW2のパラメータ値の決定方法が実施形態1、2と異なる。つまり、実施形態3は、第2ニューラルネットワークNW2の訓練方法(学習方法)が実施形態1、2と異なる。
【0120】
図10は、本実施形態の認知機能評価システム100に含まれる第2ニューラルネットワークNW2の訓練時における評価部40の構成を示すブロック図である。図10に示すように、実施形態3では、損失関数として、第1損失関数L1と第2損失関数L2とが用いられる。したがって、第2ニューラルネットワークNW2のパラメータ値は、第1損失関数L1と、第2損失関数L2とに基づいて決定される。より具体的には、損失関数として、第1損失関数L1と第2損失関数L2とを組み合わせた第3損失関数Ltが用いられる。第2損失関数L2は、第1動作特徴抽出部2aにより抽出された第1動作特徴と、第2動作特徴抽出部2bにより抽出された第2動作特徴との差(特徴差)を最大化する損失関数を示す。本実施形態では、第2損失関数L2は、デュアルタスクコストhcを最大化する。
【0121】
詳しくは、処理部42は、第3損失関数Lt及び学習率を学習用プログラムTPに与えた後、データ収集部70から取得した訓練データ(ミニバッチ学習用の訓練データ)を用いて、学習用プログラムTPを実行する。訓練データには、各被験者の運動タスクフレーム群、デュアルタスクフレーム群、及びラベルデータが含まれる。この結果、学習用プログラムTPによって構築されるニューラルネットワークが訓練されて、機械学習モデルMLが生成される。具体的には、処理部42は、第2ニューラルネットワークNW2に含まれる複数のパラメータの値(パラメータ値)を、第1損失関数L1を最小値にするとともに、第2損失関数L2を最小値にする値に決定する。例えば、処理部42は、誤差逆伝播学習法のアルゴリズムに基づいて、第2ニューラルネットワークNW2のパラメータ値を決定してもよい。
【0122】
ここで、第2損失関数L2について説明する。第2損失関数L2は、運動タスク遂行時の評価対象者SJの動作特徴(第1動作特徴)と、デュアルタスク遂行時の評価対象者SJの動作特徴(第2動作特徴)との差異を最大化する。本実施形態では、第2損失関数L2は、デュアルタスクコストhcを最大化する。第2損失関数L2は、例えば、以下の式(14)で表される。
【数11】
【0123】
式(14)において、転置行列式Hsの複数の行は第1埋込特徴hsを表し、行列式Hdの複数の行は第2埋込特徴hdを表す。式(14)に示すように、第2ニューラルネットワークNW2のパラメータ値を決定する際に、第2損失関数L2により、第1埋込特徴hs(ベクトル)及び第2埋込特徴hd(ベクトル)に対して直交化制約を課してもよい。つまり、第2損失関数L2により、第1埋込特徴hs(ベクトル)及び第2埋込特徴hd(ベクトル)に対し、それらの内積が「0」になるような制約を課してもよい。この結果、第2損失関数L2により、デュアルタスクコストhcを最大化するパラメータ値が決定される。
【0124】
続いて、第3損失関数Ltを説明する。第3損失関数Ltは、例えば、以下の式(15)で表すことができる。
Lt=L1+αL2・・・(15)
【0125】
式(15)において、αはハイパーパラメータであり、第1損失関数L1と第2損失関数L2とを調和させるための係数である。係数αを適切な値に設定することにより、機械学習モデルML(第2ニューラルネットワークNW2)を最適化することができる。
【0126】
以上、図9及び図10を参照して説明したように、第2ニューラルネットワークNW2の訓練方法(学習方法)は、被験者が陽性であるか陰性であるかを示すラベルデータと、運動タスクフレーム群と、デュアルタスクフレーム群とを含む訓練データを第2ニューラルネットワークNW2に入力し、第1損失関数L1と第2損失関数L2とに基づいて第2ニューラルネットワークNW2のパラメータ値を調整するステップを含む。この訓練方法によれば、感度P1と特異度P2との和(P1+P2)が最適化されるとともに、運動タスク遂行時の評価対象者SJの動作特徴(第1動作特徴)と、デュアルタスク遂行時の評価対象者SJの動作特徴(第2動作特徴)との差異が最大化されるように第2ニューラルネットワークNW2が訓練される。その結果、第2ニューラルネットワークNW2により、評価対象者SJの認知機能をより一層精度よく評価することが可能になる。
【0127】
具体的には、第2損失関数L2により、運動タスク遂行時の評価対象者SJの動作特徴(第1動作特徴)と、デュアルタスク遂行時の評価対象者SJの動作特徴(第2動作特徴)との差異が最大化される。換言すると、運動タスク遂行時の評価対象者SJの動作特徴(第1動作特徴)と、デュアルタスク遂行時の評価対象者SJの動作特徴(第2動作特徴)との差異が強調される。既に説明したように、運動タスク遂行時の評価対象者SJの動作特徴(第1動作特徴)と、デュアルタスク遂行時の評価対象者SJの動作特徴(第2動作特徴)との差異を識別要素として活用することにより、認知機能の評価精度を高めることができる。したがって、運動タスク遂行時の評価対象者SJの動作特徴(第1動作特徴)と、デュアルタスク遂行時の評価対象者SJの動作特徴(第2動作特徴)との差異を強調することで、認知機能の評価精度をより高めることができる。
【0128】
[実施形態4]
続いて図11図13を参照して本発明の実施形態4について説明する。但し、実施形態1~3と異なる事項を説明し、実施形態1~3と同じ事項についての説明は割愛する。実施形態4は、知能問題(又は認知問題)に対する評価対象者SJの回答の特徴が評価対象者SJの認知機能の評価に用いられる点で実施形態1~3と異なる。
【0129】
図11は、本実施形態の認知機能評価システム100を示す図である。図12は、本実施形態の認知機能評価システム100の構成を示すブロック図である。詳しくは、図12は、評価部40の構成を示す。図11及び図12に示すように、本実施形態の認知機能評価システム100は、回答検出部30を更に備える。
【0130】
回答検出部30は、タスクセットを遂行している評価対象者SJによる知能問題(又は認知問題)に対する回答を検出する。回答検出部30は、例えば、左手用の回答スイッチ(図示せず)と、右手用の回答スイッチ(図示せず)とを含む。
【0131】
本実施形態では、回答検出部30は、デュアルタスクを遂行している評価対象者SJによる知能問題(又は認知問題)に対する回答を検出する。処理部42は、動作検出部20から出力された複数のフレーム(連続フレーム)を機械学習モデルMLに入力する。更に、処理部42は、回答検出部30によって検出された回答から特徴を抽出して、抽出した回答の特徴を機械学習モデルMLに入力する。本実施形態において、機械学習モデルMLは、動作検出部20から出力される複数のフレーム(連続フレーム)と、回答検出部30によって検出される回答とに基づいて、評価対象者SJの認知機能を評価する。
【0132】
詳しくは、処理部42は、回答検出部30によって検出された回答に基づき、回答の特徴として、回答速度及び正答率を算出する。回答速度は、評価対象者SJが単位時間当たりに回答した回数を示す。単位時間は、例えば、1秒である。正答率は、回答数と正答数との比を示す。回答数は、評価対象者SJが回答した回数を示す。正答数は、正解の回答数を示す。
【0133】
回答速度は、デュアルタスク遂行時間に対して算出される。すなわち、回答速度は、デュアルタスクの遂行時に評価対象者SJが回答した回数をデュアルタスク遂行時間で除算することによって算出される。同様に、正答率は、デュアルタスクの遂行時に評価対象者SJが回答した回数と、デュアルタスクの遂行時に提示された問題に対して評価対象者SJが正解した回数との比を示す。
【0134】
なお、回答の特徴は、回答速度及び正答率に限定されない。例えば、回答の特徴は、回答速度及び正答率のうちの一方のみであってもよい。あるいは、回答の特徴は、回答速度及び正答率に替えて、又は、回答速度及び正答率に加えて、回答数、正答数、平均回答時間間隔、及び回答時間間隔の標準偏差のうちの少なくとも1つを含んでもよい。ここで、回答時間間隔は、図2(c)及び図3を参照して説明した回答候補提示画面13bがタスク提示部10によって提示されてから評価対象者SJが回答スイッチを押すまでに要した時間間隔を示す。以下、タスクセットを評価対象者SJが遂行することによって取得される回答の特徴を「回答特徴データ」と記載する場合がある。
【0135】
続いて、図13を参照して、機械学習モデルMLを説明する。図13は、本実施形態の認知機能評価システム100に含まれる機械学習モデルMLによって構築される第3ニューラルネットワークNW3を示す図である。第3ニューラルネットワークNW3は、例えば、ディープラーニングを行うニューラルネットワークである。
【0136】
図13に示すように、機械学習モデルMLは第3ニューラルネットワークNW3を構築する。したがって、評価部40は、第3ニューラルネットワークNW3を含む。第3ニューラルネットワークNW3は、第1動作特徴抽出部2aと、第2動作特徴抽出部2bと、第1変換部3aと、第2変換部3bと、出力部4と、畳み込み部5とを含む。
【0137】
畳み込み部5は、回答特徴データを畳み込む。畳み込み部5は、例えば、CNN(Convolutional Neural Network)を含む。出力部4は、第1動作特徴と、第2動作特徴と、知能問題(又は認知問題)に対する評価対象者SJの回答の特徴とに基づいて評価データを出力する。本実施形態では、出力部4は、結合部411と、分類部412と、取得部413とを含む。結合部411は、第1埋込特徴hsと、第2埋込特徴hdと、デュアルタスクコストhcと、畳み込まれた回答特徴データとを結合して、スカラー値sを出力する。
【0138】
第3ニューラルネットワークNW3を訓練する際には、図6及び図7を参照して説明したデータ収集部70が、回答検出部30の出力から回答の特徴を抽出して収集する。したがって、訓練データには、回答特徴データが更に含まれる。
【0139】
具体的には、データ収集部70の処理部73が、入力部71から入力されたラベルデータと、動作検出部20の出力から取得した連続フレーム(運動タスクフレーム群及びデュアルタスクフレーム群)と、回答検出部30の出力から取得した回答特徴データとを被験者の識別情報に関連付けて記憶部72に記憶させる。この結果、訓練データが記憶部72に記憶される。
【0140】
以上、図11図13を参照して本発明の実施形態4を説明した。実施形態4によれば、実施形態1~3と同様に、限られた特徴に基づいて評価対象者SJの認知機能を評価するシステムと比べて、評価対象者SJの認知機能をより精度よく評価することができる。また、実施形態4によれば、評価対象者SJの動作の特徴に加えて、知能問題(又は認知問題)に対する評価対象者SJの回答の特徴を用いて、評価対象者SJの認知機能を評価することができる。したがって、認知機能の評価の精度をより高めることができる。
【0141】
なお、タスクセットに知能タスク(シングルタスク)が含まれる場合、回答検出部30は、知能タスク(シングルタスク)を遂行している評価対象者SJの回答を更に検出してもよい。この場合、回答速度は、知能タスク遂行時間とデュアルタスク遂行時間との合計時間に対して算出される。すなわち、回答速度は、知能タスク(シングルタスク)の遂行時に評価対象者SJが回答した回数と、デュアルタスクの遂行時に評価対象者SJが回答した回数との合計値を、知能タスク遂行時間とデュアルタスク遂行時間との合計時間で除算することによって算出される。知能タスク遂行時間は、評価対象者SJに知能タスク(シングルタスク)を遂行させる時間を示す。知能タスク遂行時間の長さは、任意である。知能タスク遂行時間は、例えば、30秒である。
【0142】
同様に、正答率は、知能タスク(シングルタスク)の遂行時に評価対象者SJが回答した回数と、デュアルタスクの遂行時に評価対象者SJが回答した回数との合計値と、知能タスク(シングルタスク)の遂行時に提示された問題に対して評価対象者SJが正解した回数と、デュアルタスクの遂行時に提示された問題に対して評価対象者SJが正解した回数との合計値との比を示す。
【0143】
また、本実施形態において、第3ニューラルネットワークNW3の出力部4には取得部413が含まれたが、取得部413は省略されてもよい。
【0144】
以上、図面(図1図13)を参照して本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、又は、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
【0145】
図面は、発明の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0146】
例えば、図1図13を参照して説明した実施形態では、出力部4が分類部412を含むが、分類部412は省略されてもよい。この場合、機械学習モデルML(第1ニューラルネットワークNW1、第2ニューラルネットワークNW2、又は第3ニューラルネットワークNW3)からスカラー値sが出力される。評価部40の処理部42は、機械学習モデルMLから出力されたスカラー値sに基づいて、評価対象者SJの認知機能を分類してもよい。
【0147】
また、図1図13を参照して説明した実施形態において、認知機能評価システム100は、評価対象者SJを、認知症のクラス、又は軽度認知障害と非認知症とを含むクラスに分類するか、評価対象者SJを、認知症と軽度認知障害とを含むクラス、又は非認知症のクラスに分類したが、認知機能評価システム100は、評価対象者SJを、認知症のクラス、軽度認知障害のクラス、又は非認知症のクラスに分類してもよい。つまり、図1図13を参照して説明した実施形態において、認知機能評価システム100は、各評価対象者SJの認知機能を2つのクラスに分類したが、認知機能評価システム100は、各評価対象者SJの認知機能を3つのクラスに分類してもよい。
【0148】
また、本実施形態の認知機能評価システム100は、各評価対象者SJの認知機能を2つのクラスに分類したが、認知機能評価システム100は、各評価対象者SJの認知機能を4つ以上のクラスに分類してもよい。例えば、認知機能評価システム100は、各評価対象者SJを、認知症のタイプ別に分類してもよい。認知症のタイプには、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、及び正常圧水頭症等が含まれる。例えば、認知機能評価システム100は、各評価対象者SJの認知機能を、アルツハイマー型認知症のクラスと、レビー小体型認知症のクラスと、軽度認知障害のクラスと、非認知症のクラスとに分類してもよい。この場合、第1ニューラルネットワークNW1、第2ニューラルネットワークNW2、及び第3ニューラルネットワークNW3の訓練時(学習時)に、ラベルデータ(目的関数)として、アルツハイマー型認知症を示すラベルデータと、レビー小体型認知症を示すラベルデータと、軽度認知障害を示すラベルデータと、非認知症を示すラベルデータとが処理部73に入力される。
【0149】
また、図1図13を参照して説明した実施形態において、タスク提示部10はディスプレイを有したが、タスク提示部10は、音声出力器を有してもよい。
【0150】
また、図1図13を参照して説明した実施形態において、認知機能評価システム100は、タスクセットを遂行している評価対象者SJ及び被験者による知能問題(又は認知問題)に対する回答を検出する機器(回答検出部30)として、左手用の回答スイッチと、右手用の回答スイッチとを有したが、回答を検出する機器(回答検出部30)は、回答スイッチに限定されない。例えば、認知機能評価システム100は、回答を検出する機器(回答検出部30)として、視線方向検出装置、又は集音器を有してもよい。
【0151】
視線方向検出装置を用いる場合、例えば、図2(c)及び図3に示す回答候補提示画面13bに対して評価対象者SJ及び被験者が視線を向けた方向に基づいて、評価対象者SJ及び被験者の回答を取得することができる。視線方向検出装置には、公知の視線方向検出技術を採用できる。例えば、視線方向検出装置は、近赤外LED及び撮像装置を含む。近赤外LEDは、評価対象者SJ及び被験者の目に近赤外線を照射する。撮像装置は、評価対象者SJ及び被験者の目を撮像する。処理部42及び処理部73は、撮像装置によって撮像された画像を解析して、評価対象者SJ及び被験者の瞳孔の位置(視線の方向)を検出する。
【0152】
集音器を用いる場合、例えば、図2(c)及び図3に示す回答候補提示画面13bに対して評価対象者SJ及び被験者が発生した音声に基づいて、評価対象者SJ及び被験者の回答を取得することができる。例えば、処理部42及び処理部73は、評価対象者SJ及び被験者が発生した音声を音声認識処理によってテキストデータに変換することにより、評価対象者SJ及び被験者の回答を取得することができる。
【0153】
なお、集音器を用いる場合、認知問題は、2つの回答の候補のうちの一方を評価対象者SJ及び被験者に選択させる問題に限定されない。例えば、評価対象者SJ及び被験者に計算問題の回答を答えさせてもよい。また、集音器を用いる場合、認知問題は、言葉を回答する問題であってもよい。言葉を回答する問題は、例えば、「しりとり問題」、「五十音のうちから任意に選択された音(文字)から始まる言葉(例えば、単語)を挙げていく問題」、あるいは、「アルファベットのうちから任意に選択された文字から始まる言葉(例えば、単語)を挙げていく問題」であってもよい。
【0154】
また、図1図13を参照して説明した実施形態では、データ収集部70を用いて訓練データを生成したが、評価部40が訓練データを生成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明は、認知症や軽度認知障害の診断に利用することができる。
【符号の説明】
【0156】
2a :第1動作特徴抽出部
2b :第2動作特徴抽出部
4 :出力部
20 :動作検出部
40 :評価部
100 :認知機能評価システム
413 :取得部
L1 :第1損失関数
L2 :第2損失関数
ML :機械学習モデル
NW1 :第1ニューラルネットワーク
NW2 :第2ニューラルネットワーク
NW3 :第3ニューラルネットワーク
SJ :評価対象者
hc :デュアルタスクコスト
hd :第2埋込特徴
hs :第1埋込特徴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13