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特開2025-163587画像読取装置、用紙斜行防止装置及び画像形成装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025163587
(43)【公開日】2025-10-29
(54)【発明の名称】画像読取装置、用紙斜行防止装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20251022BHJP
   B65H 9/00 20060101ALI20251022BHJP
   B65H 9/06 20060101ALI20251022BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20251022BHJP
【FI】
H04N1/00 567K
B65H9/00 J
B65H9/06
B65H9/00 B
G03G15/00 107
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024067004
(22)【出願日】2024-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 浩司
【テーマコード(参考)】
3F102
【Fターム(参考)】
3F102AA01
3F102AA14
3F102AB01
3F102BA02
3F102BB02
3F102DA06
3F102EA03
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、原稿を搬送させながら原稿の傾きを補正することができる画像読取装置を提供する。
【解決手段】第1画像読取部131や第2画像読取部135などの画像読取部へ原稿Doなどの原稿を搬送するADF100などの画像読取装置であって、1枚に分離後の原稿をプルアウトローラ123などの次の原稿搬送部材まで搬送する搬送経路部BCなどの搬送経路上に、原稿の搬送方向Xなどの搬送方向に対して傾いた回転支点を設けた傾き補正部材10などの傾き補正部材を、前記搬送方向と直交する方向に複数有する画像読取装置である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像読取部へ原稿を搬送する画像読取装置であって、
1枚に分離後の原稿を次の原稿搬送部材まで搬送する搬送経路上に、搬送方向に対して傾いた回転支点を設けた傾き補正部材を、前記搬送方向と直交する方向に複数有する画像読取装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像読取装置において、
前記傾き補正部材を、前記搬送方向と直交する方向に複数列有することを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
請求項1記載の画像読取装置において、
前記傾き補正部材は、前記原稿が前記搬送方向と直交する方向の面を有する前記傾き補正部材に接触したときに、前記傾き補正部材による前記原稿の傾き補正を行わない退避位置を占めるように回転可能に構成されており、
前記傾き補正部材の前記退避位置への回転を防止するロック機構を有することを特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
用紙の斜行を防止する用紙斜行防止装置であって、
1枚に分離後の用紙を次の用紙搬送部材まで搬送する搬送経路上に、搬送方向に対して傾いた回転支点を設けた傾き補正部材を、前記搬送方向と直交する方向に複数有する用紙斜行防止装置。
【請求項5】
請求項4記載の用紙斜行防止装置において、
前記傾き補正部材を、前記搬送方向と直交する方向に複数列有することを特徴とする用紙斜行防止装置。
【請求項6】
請求項4記載の用紙斜行防止装置において、
前記傾き補正部材は、前記用紙が前記搬送方向と直交する方向の面を有する前記傾き補正部材に接触したときに、前記傾き補正部材による前記用紙の傾き補正を行わない退避位置を占めるように回転可能に構成されており、
前記傾き補正部材の前記退避位置への回転を防止するロック機構を有することを特徴とする用紙斜行防止装置。
【請求項7】
請求項1記載の画像読取装置及び/又は請求項4記載の用紙斜行防止装置を具備することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置、用紙斜行防止装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像読取装置では、原稿の傾きを規制するため、搬送路上に傾き補正手段を設ける技術が考えられ既に知られている(例えば、特許文献1~3参照)。
特許文献1には、原稿のスキューを防止する目的で、搬送路上に突出/退避自在に設けられた幅方向規制手段を有する構成が開示されている。
【0003】
特許文献2には、狭い幅の原稿と広い幅の原稿とが交互に交じり合っている場合の原稿の斜行を防止する目的で、呼び込みローラよりも原稿の送り出し方向の下流側に該原稿の側辺を案内するガイド部材を設ける構成が開示されている。
【0004】
特許文献3には、狭い幅の原稿と広い幅の原稿とが交互に交じり合っている場合の原稿の斜行を防止する目的で、原稿の搬送方向と直交する方向に移動して原稿の斜行を搬送方向と平行な方向に矯正する斜行矯正部材を有する構成が開示されている。
【0005】
上記した従来の画像読取装置では、本発明とは確かに補正部材により原稿の傾きを補正するという点では似ている点がある。しかしながら、装置の構成が複雑になるという問題は解消できていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、原稿を搬送させながら原稿の傾きを補正することができる画像読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、画像読取部へ原稿を搬送する画像読取装置であって、1枚に分離後の原稿を次の原稿搬送部材まで搬送する搬送経路上に、搬送方向に対して傾いた回転支点を設けた傾き補正部材を、前記搬送方向と直交する方向に複数有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な構成で、原稿を搬送させながら原稿の傾きを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る複写機の概略構成図である。
図2図1の複写機が備えるADFの詳細な構成図である。
図3図2のADFの制御系のブロック図である。
図4】実施例1の要部構成を示す平面図である。
図5】実施例1の要部構成を拡大して示す平面図である。
図6】実施例1の要部を拡大して示す側面図である。
図7】実施例1の細部構成及び動作を示す拡大側面図である。
図8】実施例2を説明する平面図である。
図9】実施例3の要部構成を示す平面図である。
図10】実施例3の細部構成及び動作を示す拡大側面図である。
図11】実施例3の動作を説明する平面図である。
図12】実施例3の細部構成及び動作を示す拡大側面図である。
図13】実施例3の動作を説明する平面図である。
図14】(a)~(c)は実施例3の動作過程を説明する側面図である。
図15】実施例4の要部構成を示す平面図である。
図16】実施例4の要部を拡大して示す平面図である。
図17】実施例4の要部を拡大して示す側面図である。
図18】実施例4の細部構成及び動作を示す拡大側面図である。
図19】実施例5を説明する平面図である。
図20】実施例6の要部構成を示す平面図である。
図21】実施例6の細部構成及び動作を示す拡大側面図である。
図22】実施例6を説明する平面図である。
図23】実施例6の細部構成及び動作を示す拡大側面図である。
図24】実施例6の動作を説明する平面図である。
図25】(a)~(c)は実施例6の動作過程を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照して実施例を含む本発明の実施の形態を詳細に説明する。各実施形態、各実施例等に亘り、同一の機能及び形状等を有する構成要素(部材や構成部品)等については、混同の虞がない限り一度説明した後では同一符号を付すことによりその説明を省略する。
【0011】
図1を参照して本発明の実施形態に係る画像形成装置としての複写機1の概略構成を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る複写機の概略構成図である。図1に示すように、複写機1は、画像読取装置としての機能を有する自動原稿搬送装置(以下、「ADF」:Auto Document Feederともいう)100と、給紙部2と、画像形成部3とを備えている。
【0012】
ADF100は、スキャナ部4の上に配設され、スキャナ部4に重なる状態の閉じ姿勢と、スキャナ部4から立ち上がった開いた姿勢とを取り得るようにヒンジによってスキャナ部4に対して開閉自在に取り付けられている。
【0013】
ADF100は、シートスルー読取方式(自動搬送モード)と、原稿固定読取方式(圧板モード)のいずれにも対応可能なものである。シートスルー読取方式は、原稿(例えば後述の図2参照)をADF100で搬送しながら、原稿Dの画像情報を読み取る。原稿固定読取方式は、読取対象の原稿をスキャナ部4のコンタクトガラス5(後述の図2参照)上に載置して、コンタクトガラス5に沿って第1画像読取部131(後述の図2参照)をコンタクトガラス5に沿って移動させながら画像を読み取る。
【0014】
本複写機1は、ユーザ操作を受け付ける操作パネルを有している。この操作パネルの操作により、上述したシートスルー読取方式で原稿を読み取る自動搬送モード(ADFモード)、上述した原稿固定読取方式で原稿を読み取る圧板モードなどの動作モードが任意に設定できる。
【0015】
給紙部2は、給紙サイズの異なる記録紙等の用紙を収納する給紙カセット21,22と、これら給紙カセット21,22よりも大容量の記録紙を収納して連続的に搬送可能である大容量給紙トレイ23と、各給紙カセット21,22又は大容量給紙トレイ23に収納された用紙を画像形成部3の画像形成位置まで搬送する各種ローラからなる給紙手段24とを有している。
【0016】
画像形成部3は、露光装置31と、感光体ドラム32と、現像装置33と、転写ベルト34と、定着装置35とを備えている。画像形成部3は、ADF100内部の画像読取部により読み取られた原稿の画像データに基づいて、露光装置31により感光体ドラム32に露光して感光体ドラム32に潜像を形成し、現像装置33により感光体ドラム32に異なる色のトナーを供給して現像するようになっている。そして、画像形成部3では、転写ベルト34により感光体ドラム32に現像をされた像を給紙部2から供給された用紙に転写した後、定着装置35により用紙に転写されたトナー画像のトナーを溶融して用紙にカラー画像を定着するようになっている。
【0017】
図2図3を参照して複写機が備える第2画像読取部があるタイプのADF100の詳細な構成を説明する。図2は、複写機が備える第2画像読取部があるタイプのADFの詳細な構成図、図3は、ADFの制御系のブロック図である。
【0018】
ADF100は、図2に示すように、原稿束がセットされる原稿セット部Aと、原稿セット部Aにセットされた原稿束から一枚ごとに原稿を分離して給送する分離給送部Bと、給送された原稿を一次突当整合するとともに整合後の原稿を引き出し搬送するレジスト部Cと、搬送される原稿をターンさせて、原稿面を第1画像読取部131による読取り側(図中の下方)に向けて搬送するターン部Dと、原稿の表面画像をコンタクトガラスの下方から第1画像読取部131により読み取る第1読取搬送部Eと、表面画像が読み取られた後の原稿の裏面画像を第2画像読取部135により読み取る第2読取搬送部Fと、表裏の画像の読み取りが完了した原稿を機外に排出する排紙部Gと、排出された原稿を積載保持するスタック部Hとを備える。
【0019】
また、ADF100は、図3に示すように、上記各部における駆動を行う各種モータ101~106と、これら各モータによる一連の動作を制御するコントローラ150とを備える。コントローラ150は、I/F(インターフェイス)108を介して複写機1の全体制御を行う本体制御部90に接続されている。また、本体制御部90には、I/F107を介して、ユーザが各種操作を行う操作部91が接続されている。
【0020】
原稿セット部Aには、読み取りを行う原稿束110がセットされる。原稿束110がセットされるのは、可動原稿テーブル111を含む原稿テーブル112上である。原稿テーブル112上には、原稿束110が原稿面を上向きの状態でセットされる。このとき、原稿束110の幅方向は、図示しないサイドガイドによって搬送方向と直交する方向に位置決めされる。また、原稿束110のセットは、セットフィラー113およびセットセンサ114によって検知され、原稿束110がセットされたことを示す情報が、コントローラ150からI/F108を介して本体制御部90に送信される。
【0021】
さらに、原稿テーブル112に設けられた原稿長さ検知センサ115,116により、原稿束110の搬送方向長さの概略が判定される。なお、原稿長さ検知センサ115,116としては、例えば、反射型センサまたは原稿1枚でも検知可能なアクチェータタイプのセンサが用いられる。また、原稿長さ検知センサ115,116の配置は、少なくとも同一原稿サイズの縦か横かを判断可能な配置としておく必要がある。
【0022】
可動原稿テーブル111は、底板上昇モータ105により図2中のa,b方向に上下動可能な構成となっている。原稿テーブル112上に原稿束110がセットされていないとき、可動原稿テーブル111は下降した状態であり、この状態は底板HPセンサ117により検知される。コントローラ150は、原稿テーブル112上に原稿束110がセットされたことが前記セットフィラー113およびセットセンサ114により検知されると、底板上昇モータ105を正転させて原稿束110の最上面が分離給送部Bのピックアップローラ118と接触するように、可動原稿テーブル111を上昇させる。ピックアップローラ118は、ピックアップモータ101によりカム機構の作用で図2中のc,d方向に動作するとともに、可動原稿テーブル111が上昇して可動原稿テーブル111上の原稿束110上面によって押されることで図2中のc方向に上昇するので、給紙適正位置センサ119によりピックアップローラ118の上限を検知可能となっている。
【0023】
ユーザにより操作部91のプリントキーが押下され、本体制御部90からI/F108を介してコントローラ150に原稿給紙信号が送信されると、ピックアップローラ118は給紙モータ102の正転によりコロが回転駆動し、原稿テーブル112上の数枚(理想的には1枚)の原稿をピックアップする。ピックアップローラ118の回転方向は、可動原稿テーブル111上の最上位の原稿を給紙ベルト120の給紙口に搬送する方向である。
【0024】
給紙ベルト120は、給紙モータ102の正転により給紙方向に駆動される。また、リバースローラ121は、給紙モータ102の正転により給紙と逆方向に回転駆動される。これにより、ピックアップローラ118によりピックアップされた最上位の原稿とその下の原稿とを分離して、最上位の原稿のみを給紙できる構成となっている。
さらに詳しく説明すると、リバースローラ121は、給紙ベルト120と所定圧で接し、給紙ベルト120と直接または原稿1枚を介して接している状態では、給紙ベルト120の回転につられて反時計方向に連れ回りする。
一方、原稿が2枚以上給紙ベルト120とリバースローラ121の間に進入したときは、連れ回り力がトルクリミッタのトルクよりも低くなるように設定されており、リバースローラ121は本来の駆動方向である時計方向に回転し、余分な原稿を押し戻す働きをする。これにより、原稿の重送が防止される。
【0025】
給紙ベルト120とリバースローラ121との作用により1枚に分離された原稿は、給紙ベルト120によってレジスト部C側へと送られ、突き当てセンサ122によって先端が検知された後、さらに進んで停止しているプルアウトローラ123に突き当たる。その後、原稿は、突き当てセンサ122の検知から所定量定められた距離送られ、プルアウトローラ123に所定量撓みを持って押し当てられた状態で給紙モータ102を停止させることによって、給紙ベルト120の駆動が停止する。このとき、ピックアップモータ101を回転させることでピックアップローラ118を原稿上面から退避させ、原稿を給紙ベルト120の搬送力のみで送ることにより、原稿先端は、プルアウトローラ123の上下ローラ対のニップに進入し、先端の整合(スキュー補正)が行われる。
【0026】
プルアウトローラ123は、前記スキュー補正機能を有するとともに、分離後にスキュー補正された原稿を中間ローラ124まで搬送するためのローラであり、給紙モータ102の逆転により駆動される。また、給紙モータ102の逆転時には、プルアウトローラ123と中間ローラ124は駆動されるが、ピックアップローラ118と給紙ベルト120は駆動されない。
【0027】
原稿幅センサ125は図2の奥行き方向に複数個並べて設けられ、プルアウトローラ123により搬送された原稿の搬送方向と直交する幅方向のサイズを検知する。また、原稿の搬送方向の長さは、原稿の先端後端を突き当てセンサ122で読み取ることにより、モータパルスから原稿の長さが検知される。
【0028】
プルアウトローラ123及び中間ローラ124の駆動によりレジスト部Cからターン部Dに原稿が搬送される際には、レジスト部Cでの搬送速度を第1読取搬送部Eでの搬送速度よりも高速に設定して、原稿を画像読取部へ送り込む処理時間の短縮が図られている。原稿の先端が読取入口センサ126により検出されると、読取入口ローラ127の上下ローラ対のニップに原稿の先端が進入する前に、原稿搬送速度を読取搬送速度と同速にするために減速を開始すると同時に、読取モータ103を正転駆動して読取入口ローラ127、読取出口ローラ128、CIS(Contack Image Sensor)出口ローラ129を駆動する。コントローラ150は、原稿の先端をレジストセンサ130にて検知すると、所定の搬送距離をかけて原稿の搬送速度を減速し、第1画像読取部131の手前で原稿を一時停止させるとともに、本体制御部90にI/F108を介してレジスト位置停止信号を送信する。
【0029】
続いて、本体制御部90からI/F108を介してコントローラ150に読取開始信号が送信されると、コントローラ150は、レジスト位置で停止していた原稿を、第1画像読取部131の位置に原稿先端が到達するまでに所定の搬送速度に立ち上がるように増速して搬送させる。このとき、読取モータ103のパルスカウントにより原稿先端の位置が検出され、原稿先端が第1画像読取部131に到達するタイミングで、本体制御部90に対して原稿の表面の副走査方向(原稿の搬送方向と同じ方向)の有効画像領域を示すゲート信号が送信される。このゲート信号は、原稿後端が第1画像読取部131を抜けるまで継続して送信される。 そして、原稿が読取入口ローラ127および読取出口ローラ128の駆動により搬送される間に、第1画像読取部131によって原稿の表面画像が読み取られる。
【0030】
片面原稿読取りの場合には、第1読取搬送部Eの第1画像読取部131による表面画像の読み取りが終了した原稿は、第2読取搬送部Fをそのまま通過して排紙部Gへと搬送される。この際、コントローラ150は、排紙センサ132により原稿の先端を検知すると、排紙モータ104を正転駆動して排紙ローラ133を反時計方向に回転させる。また、コントローラ150は、排紙センサ132による原稿の先端検知からの排紙モータ104のパルスカウントにより、原稿後端が排紙ローラ133の上下ローラ対のニップから抜ける直前に、排紙モータ104の駆動速度を減速させて、スタック部Hの排紙トレイ134上に排出される原稿が飛び出さないように制御する。
【0031】
一方、両面原稿読取りの場合には、排紙センサ132にて原稿先端を検知してから読取モータ103のパルスカウントにより搬送中の原稿先端の位置が検出され、第2読取搬送部Fの第2画像読取部135の位置に原稿先端が到達するタイミングで、コントローラ150から第2画像読取部135に対して、原稿の裏面の副走査方向の有効画像領域を示すゲート信号が送信される。このゲート信号は、原稿後端が第2画像読取部135を抜けるまで継続して送信される。そして、原稿が読取出口ローラ128およびCIS出口ローラ129の駆動により搬送される間に、原稿流し読み方式(シートスルー読取)で、第2画像読取部135によって原稿の裏面画像が読み取られる。なお、第2画像読取部135と対向配置される第2読取ローラ136は、第2画像読取部135における原稿の浮きを抑えると同時に、第2画像読取部135におけるシェーディングデータを取得するための基準白部を兼ねるものである。
【0032】
なお、図2に示したADF100では、分離給送部Bの具体例としてピックアップローラ118と、給紙ベルト120と、リバースローラ121とで説明したが、この具体例に限らない。すなわち、以下説明する実施例では、ニップ面積が大きく比較的原稿の傾きを補正しにくい給紙ベルト120に代えて、給送ローラ120Aを用いた例であってもよい。以下の実施例では、給紙ベルト120に代えて給送ローラ120Aを用いた実施例で説明する。
給送ローラ120Aは、給紙モータ102の正転により給紙方向に駆動される。また、リバースローラ121は、給紙モータ102の正転により給紙と逆方向に回転駆動される。これにより、ピックアップローラ118によりピックアップされた最上位の原稿とその下の原稿とを分離して、最上位の原稿のみを給送できる構成となっている。
【0033】
(実施例1)
図4図7を参照して本発明に係る実施例1について説明する。実施例1の要部構成は、図2に示すように、ADF100の分離給送部Bとレジスト部Cとの間の搬送経路部BCに配設されている。以下、ADF100の搬送経路部BCに配設されている実施例1の要部構成である傾き補正部材について説明する。
図4は、実施例1の傾き補正部材周りの構成を示す平面図、図5は、図4に示した傾き補正部材の回転軸を補足して示す拡大平面図である。図6は、傾き補正部材の要部構成及び動作を示す側面図、図7は、図4図6の傾き補正部材の細部構成及び動作を示す拡大側面図である。なお、図4及び図5では、図示の簡明化を図るため搬送ガイド板上19a、搬送ガイド板下19b及びこの周りの細部の図示を省略している。図6及び図7では、傾き補正部材や回転軸を設けるための搬送ガイド板上19a、搬送ガイド板下19bの細部構成を簡略化ないし省略している。
【0034】
図4に示すように、ADF100の分離給送部Bとレジスト部Cとの間の搬送経路部BCには、実施例1の傾き補正部材10が原稿Doの搬送方向Xを中心として線対象となる位置に複数配置されている。実施例1では、傾き補正部材10は、原稿Doのサイズに対応して搬送方向Xを中心として、図4の紙面の上下に2個ずつそれぞれ配置されているものとして説明する。傾き補正部材10は、図4の紙面において最上部に配置されているもの以外は破線で示す。
傾き補正部材10は、搬送されてくる原稿Doの先端部と接触するため、接触耐久性が良好な樹脂等で一体的に形成されている。傾き補正部材10は、所定の厚さをもった薄板状の部材であり、搬送方向Xに比較的長く形成された内側面10aと、内側面10aに対し直交するように短く形成された外周面10bとを有する。
【0035】
傾き補正部材10は、高さ方向Zに延び、その下端部には円柱ないし円筒状の回転軸11(図5参照)が固定されている。傾き補正部材10の回転軸11は、原稿Doの搬送方向Xに対して傾斜して傾き補正部材10に固定されている。図6に示すように、傾き補正部材10と共に回転軸11を回転可能に支持する軸受部材(図示せず)が搬送ガイド板下19bに設けられている。これにより、傾き補正部材10は、回転軸11と共に所定の角度範囲内で、回動可能ないし揺動可能になっている。
【0036】
図7では、傾き補正部材10を内側面10aから見た図で示しているが、回転軸11は便宜的に真横から見た図として描いており、図6及び図7に示すように、回転軸11の長さ方向は傾き補正部材10の内側面10aに対して直交する方向に設定されている。
なお、傾き補正部材10の回転軸11は、搬送ガイド板下19b側に設けることに限らず、搬送ガイド板内側の部品に設ける軸支持穴(図示せず)によって回転可能に支持してもよい。
【0037】
傾き補正部材10の内側面10aは、図4及び図5の平面図に示すように、搬送方向Xを中心として搬送方向Xの上流側から下流側にかけて一定の角度で傾斜して形成されていて、搬送方向Xに対して20°~40°範囲の角度αに傾斜した形状で形成されている。つまり、傾き補正部材10は、搬送方向Xの下流側に行くにつれて先細りとなる角度形状に形成されている。図4に矢印で示すように、搬送方向Xを中心として配置された実線で示す傾き補正部材10の内側面10aで原稿Doの傾きを補正することを表している。
【0038】
傾き補正部材10には、図7のみに示すように、付勢手段ないし付勢部材としてのねじりコイルバネ12が設けられている。ねじりコイルバネ12は、傾き補正部材10の回転軸11に巻き付けられており、ねじりコイルバネ12の一端12aは傾き補正部材10に引っ掛け係止され、ねじりコイルバネ12の他端12bは搬送ガイド板下12b側に引っ掛け係止されている。このように傾き補正部材10に設けられたねじりコイルバネ12の付勢力12Fによって、傾き補正部材10には、回転軸11を回転中心として図7において矢印で示す時計回りに回転する向きの習性が常に付与されている。ねじりコイルバネ12は、傾き補正部材10に対して回転軸11を回転中心として図7において矢印で示す時計回りに回転する向きの習性を常に与える付勢部材としての機能を有する。
【0039】
一方、ねじりコイルバネ12の付勢力によって傾き補正部材10が時計回りに回転しようとするのに対して、傾き補正部材10が図7に実線で示すように起立姿勢を保持することができるように、傾き補正部材10の外周面10bの上部を突当てるストッパー部材13を搬送ガイド板上19a(図7に図示せず)に設けている。ストッパー部材13は、ねじりコイルバネ12の付勢力12Fに抗して傾き補正部材10を起立姿勢を保持することができるように、傾き補正部材10の時計回りの回転を規制する回転規制部材である。
【0040】
図7に示すように、原稿Do(の先端コーナ部)が搬送方向Xと直交する方向から傾き補正部材10の外周面10bに接触した場合には、原稿Doの搬送力が傾き補正部材10に働いているねじりコイルバネ12の付勢力に抗して作用することにより、傾き補正部材10は図7に破線で示すように反時計回りに回転して退避状態となる退避位置を占める。
以下、図4に示すように、原稿Doの搬送方向Xの上流側から下流側に搬送される原稿Doを平面視で見て、原稿Doの先端部における上コーナ部Doaが下コーナ部Dobよりも先に搬送されるように原稿Doが傾いて搬送される場合について述べる。原稿Doの先端コーナ部が傾き補正部材10に対し搬送方向Xと直交する向きから接触した場合、つまり原稿Doの先端コーナ部が傾き補正部材10の内側面10aに接触することによっては、傾き補正部材10を回転軸11の回りに働く力は小さく無視してもよい程に設定されている。
【0041】
傾き補正部材10は、上述した通り、内側面10aが搬送されてくる原稿Doに接触して原稿Doの傾きを補正する図6図7等に実線で示した起立位置と、原稿Doの搬送に支障とならない図6図7等に破線で示した退避位置との間で変位自在に構成されている。
【0042】
実施例1の動作を説明する。図2のADF100の原稿テーブル112にセットされた原稿束110はピックアップローラ118によって搬送され、給送ローラ120Aとリバースローラ121の協働作用で1枚の原稿Doに分離されて搬送方向Xに搬送される。1枚に分離された原稿Doは、分離搬送部Bとレジスト部Cとの間の搬送経路部BCで図4に示したように傾いて搬送されることがある。
【0043】
図4で説明したように、原稿Doの搬送方向Xの上流側から下流側に搬送される原稿Doを平面視で見て、原稿Doの先端部における上コーナ部Doaが下コーナ部Dobよりも先に搬送されるように傾いた状態の1枚の原稿Doについて述べる。図4に示す状態の1枚の原稿Doが、傾き補正部材10の内側面10aに接触した場合(図6図7参照)には、回転軸11の回転方向には殆ど力が働かず、傾き補正部材10が破線で示すように退避しない。この状態で、略不動状態にある傾き補正部材10の内側面10aによって、原稿Doの先端部における上コーナ部Doaが押し付けられるように傾き補正力を受けることで、この過程で1枚の原稿Doの傾きが補正されることとなる。原稿Doの傾きを補正した後、傾き補正部材10はねじりコイルバネ12の付勢力によって元の状態の起立位置に復帰し、次に1枚に分離されて搬送されてくる原稿の傾き補正に備えられる。
【0044】
また、図6に示すように原稿Doが殆ど傾いていない状態で搬送方向Xの下流側に搬送されている場合(図4を参照して説明したように、原稿Doが傾き補正部材10の内側面10aに接触して原稿Doの傾きが補正された場合を含む)には、原稿Doが傾き補正部材10に対し搬送方向Xと直交する向きから外周面10bに接触した場合には、原稿Doの搬送力によって傾き補正部材10がねじりコイルバネ12の付勢力に抗して回転軸11の周りに回転して原稿Doの通過に支障とならない退避位置を占めた状態で原稿Doが通過する。その後、傾き補正部材10はねじりコイルバネ12の付勢力によって起立位置を占めた状態に復帰し、次に1枚に分離して搬送されてくる原稿の傾き補正に備えられる。
【0045】
実施例1によれば、上記した簡易な構成で、原稿を搬送させながら原稿の傾きを補正することができる、という効果を奏する。
【0046】
(実施例2)
図8を参照して本発明に係る実施例2について説明する。図8は、実施例1の傾き補正部材を原稿サイズ列ごとに複数列設けた平面図である。
図8に示すように、原稿Doのサイズごとに配置した複数の実施例1の傾き補正部材10について説明する。図8に示す複数(例えば8個)の傾き補正部材10-1~10-8としては、実施例1の傾き補正部材10と比較して、原稿サイズ(原稿位置が異なる場合も含む)ごとに配置したことのみ相違し、傾き補正部材の仕様、形状は実施例1と同じものである(この内容を明確にするために、図8に示す実施例2では傾き補正部材10-1~10-8としている)。
【0047】
図8において、原稿Doの搬送方向Xの中心線に対して上下対象の位置に配置された一対の傾き補正部材10-1、10-2は例えばA5版の原稿サイズに対応して、一対の傾き補正部材10-3、10-4は例えばA4版の原稿サイズに対応して、一対の傾き補正部材10-5、10-6は例えばB4版の原稿サイズに対応して、一対の傾き補正部材10-7、10-8は例えばA3版の原稿サイズに対応して、それぞれ配置されているものとする。
【0048】
このように配置された8個の傾き補正部材10-1~10-8において、例えばA5版の原稿サイズに対応して原稿Doの傾き補正が傾き補正部材10-1、10-2の内側面10aで実施されたときには、外周面10bに対して直交する原稿Doの接触・搬送力によって補正部材10-1、10-2が退避状態となることで、傾き補正がなされたA5版の原稿Doが問題なく搬送され通過する。同様にして、例えばA4版の原稿サイズに対応して原稿Doの傾き補正が傾き補正部材10-3、10-4で実施されたときには、外周面10bに対して直交する原稿Doの接触・搬送力によって傾き補正部材10-3、10-4が退避状態となることで、傾き補正がなされたA4版の原稿Doが問題なく搬送され通過する。他の傾き補正部材10-5、10-6や10-7、10-8で傾き補正がなされたときでも同様である。
【0049】
以上述べた実施例2によれば、傾き補正部材を複数列とすることで用紙サイズ、原稿位置が異なる場合も傾き補正ができる。原稿セットが正確でなくとも原稿傾きを低減することができ、ユーザの画像読取装置の使いやすさが向上する、という効果を奏する。
【0050】
(実施例3)
図9図14を参照して本発明に係る実施例3について説明する。図9は、実施例3の要部構成(傾き補正部材、ロック機構)を示す簡略的な拡大平面図、図10は、実施例3の要部構成及び動作を示す簡略的な側面図である。図11は、実施例3の動作例1を示す簡略的な拡大平面図、図12は、実施例3の動作例1を示す簡略的な側面図である。図13は、実施例3の動作例2を示す簡略的な拡大平面図、図14の(a)~(c)は、図13に示した動作例2の動作過程を示す簡略的な側面図である。
なお、図9図11に示す実施例3の傾き補正部材10Aの回転軸11は、実施例1の傾き補正部材10の回転軸11と同様に便宜的に真横から見た状態で示している。
【0051】
実施例3は、図4図7に示した実施例1と比較して、傾き補正部材10に代えて、ロック機構60を有する傾き補正部材10Aを備えている点が主に相違する。傾き補正部材10Aは、図9図10に示すように、傾き補正部材10Aの図における後端上部に傾き補正部材10Aの後端よりも更に後側に突出した位置にロック機構60の一部を設けている。
【0052】
ロック機構60は、回転支点となるロック回転軸61を有し、図9図10に示すように、ロック回転軸61が起立状態にある補正部材10Aの上部に設けられている。ロック機構60は、ロック回転軸61と、一端部がロック回転軸61に固定され、他端部が補正部材10Aの内側面10aの下方に延びて形成されたロックアーム63と、ロックアーム63の他端部に形成された鉤形状ないしL形状のロック爪62とから主に構成されている。
【0053】
図9及び図10を始めとして、原稿がロック機構60に接触しない例を示す図11及び図12、原稿がロック機構60に接触した例を示す図13及び図14において、ロック機構60を構成するロック回転軸61、ロック爪62及びロックアーム63等は、実際には傾き補正部材10Aを示す各図において内側面10aの奥側に配置しているが、図を見やすくするために敢えて内側面10a側に配置しているように図示している。
【0054】
次に、実施例3の動作例1について説明する。図11図12に示すように、原稿Doがロック機構60に接触しない場合には、ロック機構60は、通常、ロック機構60の自重で図12に示す向き及び状態で静止し、ロック機構60のロック爪62が搬送ガイド板下19bに形成されたロック穴(図示せず)に係合してロック状態にある。
このような状態の補正部材10A及びロック機構60において、図11に示すように、搬送方向Xに搬送される原稿Do(例えば図4に示したと同様の原稿Doである)が傾いた状態で搬送される際、原稿Doが図11に示す補正部材10Aに最初に接触することにより、補正部材10Aが図12に破線で示す反時計回りに回転しようとしても、上述したようにロック爪62が搬送ガイド板下19bに形成されたロック穴(図示せず)に係合してロック状態にあることから、補正部材10Aは図10に示した破線状態に退避せず、退避位置を占めることはない。
【0055】
こうして、図4と同様に傾いた状態の1枚の原稿Doが、傾き補正部材10Aの内側面10aに接触した場合(図11図12参照)には、回転軸11の回転方向には殆ど力が働かず、傾き補正部材10Aが破線で示すように退避しない。この状態で原稿Doの傾きを、原稿Doが傾き補正部材10Aの内側面10aに接触して補正することとなり、この過程で1枚の原稿Doの傾きが補正されることとなる。原稿Doの傾きを補正した後、傾き補正部材10Aはねじりコイルバネ12の付勢力によって元の起立位置に復帰し、次に1枚に分離して搬送されてくる原稿の傾き補正に備えられる。
【0056】
実施例3の動作例2について説明する。図13図14に示すように、搬送される原稿Doが最初にロック機構60に接触する場合には、図14(a)においてロックアーム63のロック爪62が搬送ガイド板下19bの上記ロック穴(図示せず)に係合してロック状態にある。この状態で、図14(b)に示すように、原稿Doが搬送方向Xから搬送されてくると、原稿Doの搬送力がロックアーム63に伝達されることで、搬送ガイド板下19bとロック爪62との係止状態の解除がなされ、ロックアーム63はロック回転軸61の回りに実線矢印で示す時計回りに回転することとなる。
【0057】
このようにロック爪62と搬送ガイド板下19bとの係止状態の解除がなされると共に、ロックアーム63がロック回転軸61の回りに時計回りに回転した直後に、原稿Doの先端の更なる搬送によって、傾き補正部材10Aの外周面10bに接触することで、傾き補正部材10Aが回転軸11を中心として実線矢印で示す反時計回りに回転する。そして、傾き補正部材10Aは図11に示した破線状態と同様に退避して退避位置を占めることとなる。
【0058】
このように、動作例2では、原稿Doが搬送方向Xに対し直交した向きから傾き補正部材10Aの外周面10bに接触しなければ退避状態にしないようにすることで、原稿傾きの補正力を高めることができる。
【0059】
以上述べた実施例3によれば、ロック機構によって、原稿が搬送方向に対して直交した向きから確実にロック機構に接触しないと退避しないようにすることで、原稿傾きの補正力が高まる、という効果を奏する。
【0060】
(実施例4)
図15図18を参照して本発明に係る実施例4について説明する。実施例4の要部構成は、図1に示した複写機1の3つの給紙手段24に配設された用紙斜行防止装置として機能する傾き補正部材について説明する。
図15は、実施例4の傾き補正部材周りの構成を示す平面図、図16は、図15に示した傾き補正部材の回転軸を補足して示す拡大平面図である。図17は、傾き補正部材の要部構成及び動作を示す側面図、図18は、図15図16の傾き補正部材の細部構成及び動作を示す拡大側面図である。
なお、図15では、図示の簡明化を図るため搬送ガイド板上79a、搬送ガイド板下79b及びこの周りの細部の図示を省略している。図16及び図17では、傾き補正部材や回転軸を設けるための搬送ガイド板上79a、搬送ガイド板下79bの細部構成を簡略化ないし省略している。
【0061】
実施例4は、実施例1と比較して、ADF100の搬送経路部BCに配設されていた傾き補正部材10が3つの給紙手段24の各搬送経路部Kの少なくとも1つに配設されている点が主に相違する。また、実施例4は、実施例1と比較して、搬送されるシート状記録媒体として原稿Doに代えて用紙Pが用いられる点、ピックアップローラ118に代えてピックアップローラ70が用いられる点、給送ローラ120Aに代えて給送ローラ71が用いられる点、リバースローラ121に代えて分離ローラ72が用いられる点、プルアウトローラ123に代えて送りローラ73が用いられる点が相違する。
【0062】
実施例4の構成は、上記相違点を含め、原稿Doの先端部における上コーナ部Doaに代えて、用紙Pの先端部における上コーナ部Paと読み替え、原稿Doの先端部における下コーナ部Dobに代えて、用紙Pの先端部における下コーナ部Pbと読み替えれば、当業者であれば容易に理解して実施できるので、重複説明を避ける上からこれ以上の説明を省略する。
【0063】
実施例4の動作を説明する。図1の複写機1の給紙手段24にセットされた用紙束Pは図15のピックアップローラ70によって搬送され、給送ローラ71と分離ローラ72の協働作用で1枚の用紙Pに分離されて搬送方向Xに搬送される。1枚に分離された用紙Pは、搬送経路部Kで図15に示したように傾いて搬送されることがある。
【0064】
図15に示すように、用紙Pの搬送方向Xの上流側から下流側に搬送される用紙Pを平面視で見て、用紙Pの先端部における上コーナ部Paが下コーナ部Pbよりも先に搬送されるように傾いた状態の1枚の用紙Pについて述べる。図15に示す状態の1枚の用紙Pが、傾き補正部材10の内側面10aに接触した場合(図17参照)には、回転軸11の回転方向には殆ど力が働かず、傾き補正部材10が破線で示すように退避しない。この状態で、略不動状態にある傾き補正部材10の内側面10aによって、用紙Pの先端部における上コーナ部Paが押し付けられるように傾き補正力を受けることで、この過程で1枚の用紙Pの傾きが補正されることとなる。用紙Pの傾きを補正した後、傾き補正部材10はねじりコイルバネ12の付勢力によって元の状態の起立位置に復帰し、次に1枚に分離されて搬送されてくる用紙の傾き補正に備えられる。
【0065】
また、図17に示すように用紙Pが殆ど傾いていない状態で搬送方向Xの下流側に搬送されている場合(図15を参照して説明したように、用紙Pが傾き補正部材10の内側面10aに接触して用紙Pの傾きが補正された場合を含む)には、用紙Pが傾き補正部材10に対し搬送方向Xと直交する向きから外周面10bに接触した場合には、用紙Pの搬送力によって傾き補正部材10がねじりコイルバネ12の付勢力に抗して回転軸11の周りに回転して用紙Pの通過に支障とならない退避位置を占めた状態で用紙Pが通過する。その後、傾き補正部材10はねじりコイルバネ12の付勢力によって起立位置を占めた状態に復帰し、次に1枚に分離して搬送されてくる用紙の傾き補正に備えられる。
【0066】
実施例4によれば、上記した簡易な構成で、用紙を搬送させながら用紙の傾きを補正することができる、という効果を奏する。
【0067】
(実施例5)
図19を参照して本発明に係る実施例5について説明する。図19は、実施例4の傾き補正部材を用紙サイズ列ごとに複数列設けた平面図である。
実施例5は、実施例2で説明した原稿サイズごとに配置した複数の傾き補正部材10に代えて、用紙サイズごとに配置した複数の傾き補正部材10について説明したものであり、実施例2の内容から容易に理解して実施できるので、これ以上の説明を省略する。
【0068】
以上述べた実施例5によれば、傾き補正部材を複数列とすることで用紙サイズ、用紙位置が異なる場合も傾き補正ができる。用紙のセットが正確でなくとも用紙傾きを低減することができ、ユーザの画像形成装置や給紙装置の使いやすさが向上する、という効果を奏する。
【0069】
(実施例6)
図20図25を参照して本発明に係る実施例6について説明する。図20は、実施例6の要部構成(傾き補正部材、ロック機構)を示す簡略的な拡大平面図、図21は、実施例6の要部構成及び動作を示す簡略的な側面図である。図22は、実施例6の動作例1を示す簡略的な拡大平面図、図23は、実施例6の動作例1を示す簡略的な側面図である。図24は、実施例6の動作例2を示す簡略的な拡大平面図、図25の(a)~(c)は、図24に示した動作例2の動作過程を示す簡略的な側面図である。
図20図22に示す実施例6の傾き補正部材10Aの回転軸11は、実施例6の傾き補正部材10の回転軸11と同様に便宜的に真横から見た状態で示している。
【0070】
実施例6は、図15図18に示した実施例3と比較して、傾き補正部材10に代えて、ロック機構60を有する傾き補正部材10Aを備えている点が主に相違する。傾き補正部材10Aは、図20図21に示すように、傾き補正部材10Aの図における後端上部に傾き補正部材10Aの後端よりも更に後側に突出した位置にロック機構60の一部を設けている。
【0071】
次に、実施例6の動作例1について説明する。図22図23に示すように、用紙Pがロック機構60に接触しない場合には、ロック機構60は、通常、ロック機構60の自重で図23に示す向き及び状態で静止し、ロック機構60のロック爪62が搬送ガイド板下79bに形成されたロック穴(図示せず)に係合してロック状態にある。
このような状態の補正部材10A及びロック機構60において、図22に示すように、搬送方向Xに搬送される用紙P(例えば図15に示したと同様の用紙Pである)が傾いた状態で搬送される際、用紙Pが図22に示す補正部材10Aに最初に接触することにより、補正部材10Aが図23に破線で示す反時計回りに回転しようとしても、上述したようにロック爪62が搬送ガイド板下79bに形成されたロック穴(図示せず)に係合してロック状態にあることから、補正部材10Aは図10に示した破線状態に退避せず、退避位置を占めることはない。
【0072】
こうして、図4と同様に傾いた状態の1枚の用紙Pが、傾き補正部材10Aの内側面10aに接触した場合(図22図23参照)には、回転軸11の回転方向には殆ど力が働かず、傾き補正部材10Aが破線で示すように退避しない。この状態で用紙Pの傾きを、用紙Pが傾き補正部材10Aの内側面10aに接触して補正することとなり、この過程で1枚の用紙Pの傾きが補正されることとなる。用紙Pの傾きを補正した後、傾き補正部材10Aはねじりコイルバネ12の付勢力によって元の起立位置に復帰し、次に1枚に分離して搬送されてくる用紙の傾き補正に備えられる。
【0073】
実施例6の動作例2について説明する。図24図25に示すように、搬送される用紙Pが最初にロック機構60に接触する場合には、図25(a)においてロックアーム63のロック爪62が搬送ガイド板下79bの上記ロック穴(図示せず)に係合してロック状態にある。この状態で、図25(b)に示すように、用紙Pが搬送方向Xから搬送されてくると、用紙Pの搬送力がロックアーム63に伝達されることで、搬送ガイド板下79bとロック爪62との係止状態の解除がなされ、ロックアーム63はロック回転軸61の回りに実線矢印で示す時計回りに回転することとなる。
【0074】
このようにロック爪62と搬送ガイド板下79bとの係止状態の解除がなされると共に、ロックアーム63がロック回転軸61の回りに時計回りに回転した直後に、用紙Pの先端の更なる搬送によって、傾き補正部材10Aの外周面10bに接触することで、傾き補正部材10Aが回転軸11を中心として実線矢印で示す反時計回りに回転する。そして、補正部材10Aは図21に示した破線状態と同様に退避して退避位置を占めることとなる。
このように、動作例2では、用紙Pが搬送方向Xに対し直交した向きから傾き補正部材10Aの外周面10bに接触しなければ退避状態にしないようにすることで、用紙傾きの補正力を高めることができる。
【0075】
以上述べた実施例6によれば、ロック機構によって、用紙が搬送方向に対して直交した向きから確実にロック機構に接触しないと退避しないようにすることで、用紙傾きの補正力が高まる、という効果を奏する。
【0076】
実施例1~6には、実質的に以下の態様及び効果が記載されていたと言える。
即ち、第1の態様は、第1画像読取部131や第2画像読取部135などの画像読取部へ原稿を搬送するADF100などの画像読取装置であって、1枚に分離後の原稿をプルアウトローラ123などの次の原稿搬送部材まで搬送する搬送経路部BCなどの搬送経路上に、原稿の搬送方向Xなどの搬送方向に対して傾いた回転支点を設けた傾き補正部材10などの傾き補正部材を、前記搬送方向と直交する方向に複数有する画像読取装置である。
【0077】
かかる構成により、第1の態様によれば、簡易な構成で、原稿を搬送させながら原稿の傾きを補正することができる。
【0078】
第2の態様は、第1の態様において、前記傾き補正部材を、前記搬送方向と直交する方向に複数列有する。
かかる構成により、第2の態様によれば、傾き補正部材を複数列とすることで原稿サイズ、原稿位置が異なる場合も傾き補正ができる。原稿セットが正確でなくとも原稿傾きを低減することができ、ユーザの画像読取装置の使いやすさが向上する。
【0079】
第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記傾き補正部材は、前記原稿が前記搬送方向と直交する方向の面である外周面10bなどの面を有する傾き補正部材10Aなどの傾き補正部材に接触したときに、前記傾き補正部材による前記原稿の傾き補正を行わない退避位置を占めるように回転可能に構成されており、前記傾き補正部材の前記退避位置への回転を防止するロック機構60などのロック機構を有する。
かかる構成により、第3の態様によれば、ロック機構によって、原稿が搬送方向に対して直交した向きから確実にロック機構に接触しないと退避しないようにすることで、原稿傾きの補正力が高まる。
【0080】
第4の態様は、用紙Pなどの用紙の斜行を防止する用紙斜行防止装置であって、1枚に分離後の用紙を次の送りローラ73などの用紙搬送部材まで搬送する搬送経路Kなどの搬送経路上に、用紙の搬送方向Xなどの搬送方向に対して傾いた回転支点を設けた傾き補正部材10などの傾き補正部材を、前記搬送方向と直交する方向に複数有する用紙斜行防止装置である。
かかる構成により、第4の態様によれば、簡易な構成で、用紙を搬送させながら用紙の傾きを補正することができる。
【0081】
第5の態様は、第4の態様において、前記傾き補正部材を、前記搬送方向と直交する方向に複数列有する。
かかる構成により、第5の態様によれば、傾き補正部材を複数列とすることで用紙サイズ、用紙位置が異なる場合も傾き補正ができる。用紙セットが正確でなくとも用紙傾きを低減することができ、ユーザの用紙斜行防止装置を備えた画像形成装置の使いやすさが向上する。
【0082】
第6の態様は、第4又は第5の態様において、前記傾き補正部材は、前記用紙が前記搬送方向と直交する方向の面である外周面10bなどの面を有する傾き補正部材10Aなどの前記傾き補正部材に接触したときに、前記傾き補正部材による前記用紙の傾き補正を行わない退避位置を占めるように回転可能に構成されており、前記傾き補正部材の前記退避位置への回転を防止するロック機構を有することを特徴とする用紙斜行防止装置。
かかる構成により、第6の態様によれば、ロック機構によって、用紙が搬送方向に対して直交した向きから確実にロック機構に接触しないと退避しないようにすることで、用紙傾きの補正力が高まる。
【0083】
第7の態様は、第1~第3の何れか1つに記載の画像読取装置及び/又は第4~第6の何れか1つに記載の用紙斜行防止装置を具備することを特徴とする画像形成装置である。
かかる構成により、第7の態様によれば、第1~第3の何れか1つに記載の画像読取装置及び/又は第4~第6の何れか1つに記載の用紙斜行防止装置を具備する画像形成装置において前記効果を奏する。
【0084】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、上記実施形態や実施例、或いは変形例等に記載した技術事項を適宜組み合わせたものであってもよい。
【0085】
本発明の実施の形態に適宜記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0086】
1 複写機(画像形成装置の一例)
2 給紙部
3 画像形成部
4 スキャナ部
5 コンタクトガラス
10、10A 傾き補正部材
10a 内側面
10b 外周面
11 回転軸
12 ねじりコイルバネ
13 ストッパ部材
19 搬送ガイド板
19a 搬送ガイド板上
19b 搬送ガイド板下
24 給紙手段(用紙斜行防止装置の一例)
31 露光装置
32 感光体ドラム
33 現像装置
34 転写ベルト
35 定着装置
60 ロック機構
61 ロック回転軸
62 ロック爪
63 ロックアーム
64 ロック爪
70 ピックアップローラ
71 給送ローラ
72 分離ローラ
73 送りローラ(用紙搬送部材の一例)
79a 搬送ガイド板上
79b 搬送ガイド板下
100 ADF(画像読取装置の一例)
B 分離給送部
BC 搬送経路部
C レジスト部
Do 原稿
K 搬送経路部
P 用紙
X 原稿、用紙の搬送方向
Y 前後・奥行方向
Z 高さ方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0087】
【特許文献1】特開2000-016600号公報
【特許文献2】特開2007-084185号公報
【特許文献3】特開2006-270560号公報
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