(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016373
(43)【公開日】2025-01-31
(54)【発明の名称】プロパン選択吸着材
(51)【国際特許分類】
B01J 20/18 20060101AFI20250124BHJP
C01B 39/02 20060101ALI20250124BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20250124BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
B01J20/18 B
C01B39/02
B01J20/28 Z
B01D53/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024114703
(22)【出願日】2024-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2023118820
(32)【優先日】2023-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【弁理士】
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】中澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】中尾 圭太
(72)【発明者】
【氏名】窪田 好浩
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 怜史
【テーマコード(参考)】
4D012
4G066
4G073
【Fターム(参考)】
4D012BA02
4D012CA07
4D012CB05
4D012CE03
4D012CF03
4D012CF04
4D012CF10
4D012CG02
4D012CG05
4G066AA31B
4G066AA61B
4G066BA25
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4G066BA38
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4G073BA04
4G073BA05
4G073BA56
4G073BA63
4G073BA80
4G073CZ25
4G073GA01
4G073GA12
4G073GA14
4G073GA19
4G073GB05
4G073UA06
4G073UB38
(57)【要約】
【課題】
工業的なプロパン吸着材として適用可能であり、なおかつ、プロパン-プロピレン混合ガスから、効率的なプロパンの選択吸着を期待し得るプロパン吸着材、これを用いたプロパンの選択的吸着方法、及びプロピレンの精製方法の少なくともいずれかを提供する。
【解決手段】
アルミナに対するシリカのモル比が1000以上であるベータ型ゼオライトを含み、前記ベータ型ゼオライトは、29Si-DDMAS-NMRで測定されるスペクトルにおいて、化学シフト-120ppm以上-90ppm以下の範囲にピークトップを有する各ピークの合計面積に対する、化学シフト-120ppm以上-108ppm以下の範囲にピークトップを有する各ピークの合計面積の比率が98%以上である、プロパン選択吸着材。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナに対するシリカのモル比が1000以上であるベータ型ゼオライトを含み、前記ベータ型ゼオライトは、29Si-DDMAS-NMRで測定されるスペクトルにおいて、化学シフト-120ppm以上-90ppm以下の範囲にピークトップを有する各ピークの合計面積に対する、化学シフト-120ppm以上-108ppm以下の範囲にピークトップを有する各ピークの合計面積の比率が98%以上である、プロパン選択吸着材。
【請求項2】
前記ベータ型ゼオライトは、酸化物換算のアルカリ金属の含有量が200質量ppm以下である、請求項1に記載のプロパン選択吸着材。
【請求項3】
前記ベータ型ゼオライトは、プロピレンの吸着平衡定数K2に対するプロパンの吸着平衡定数K1の比率が、2.00以上である、請求項1に記載のプロパン選択吸着材。
【請求項4】
前記ベータ型ゼオライトがフッ素を含有する、請求項1に記載のプロパン選択吸着材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載のプロパン選択吸着材に含まれる前記ベータ型ゼオライトと、プロパン及びプロピレンを含む混合ガスと、を接触させることを含む、プロパンの選択的吸着方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一つに記載のプロパン選択吸着材に含まれる前記ベータ型ゼオライトと、プロパン及びプロピレンを含む混合ガスと、を接触させることを含む、プロピレンの精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ベータ型ゼオライトを含むプロパン選択吸着材、プロパンの選択的吸着方法、及びプロピレンの精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレンは石油化学における重要な基礎原料であり、工業的に、プロパンとプロピレンを含む混合ガス(以下、「プロパン-プロピレン混合ガス」ともいう)を精製することで製造されている。従来の精製方法と比べてエネルギー効率に優れたプロピレンの精製方法として、プロパン吸着材によりプロパン-プロピレン混合ガス中のプロパンを吸着し、これを精留する精製方法が検討されている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
このような精製方法におけるプロパン吸着材として、金属有機構造体であるZIF-8(非特許文献2)や、STT型ゼオライト(非特許文献3)が使用されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Adsorption News,日本吸着学会,Vol.34,No.1(通巻No.132)(2020)13-19
【非特許文献2】Langmuir,29(2013)8592-8600
【非特許文献3】Microporous and Mesoporous Materials,236(2016)100-108
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献2で使用されたZIF-8等の金属有機構造体は高価である。これに加え、ZIF-8は耐熱性が低いため、頻繁な交換が必要となる。そのため、金属有機構造体をプロパン吸着材とする精製方法は非常に高コストであり、工業的な適用が困難であった。
【0006】
一方、非特許文献4のSTT型ゼオライトは、プロパンの吸着速度が遅く、特にプロパン含有量が少ないプロパン-プロピレン混合ガスからのプロパン吸着に長時間を要し、なおかつ、微量のプロパンを含むプロパン-プロピレン混合ガスからのプロパンの選択除去効率が非常に低く、実用的な時間での精製が困難であった。
【0007】
これらに鑑み、本開示は、工業的なプロパン吸着材として適用可能であり、なおかつ、プロパン-プロピレン混合ガスから、効率的なプロパンの選択吸着を期待し得るプロパン吸着材、これを用いたプロパンの選択的吸着方法、及びプロピレンの精製方法の少なくともいずれかを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示では、プロパンを含むプロパン-プロピレン混合ガスからプロパンを選択吸着しうる吸着材について、金属有機構造体と比較して安価な材料であるゼオライトに着目して検討した。その結果、特定の組成を有し、なおかつ、特定のNMRスペクトルを示すゼオライトが、プロパンの選択的な吸着材として機能し得ることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は特許請求の範囲に記載のとおりであり、また、本開示の要旨は以下のとおりである。
[1] アルミナに対するシリカのモル比が1000以上であるベータ型ゼオライトを含み、前記ベータ型ゼオライトは、29Si-DDMAS-NMRで測定されるスペクトルにおいて、化学シフト-120ppm以上-90ppm以下の範囲にピークトップを有する各ピークの合計面積に対する、化学シフト-120ppm以上-108ppm以下の範囲にピークトップを有する各ピークの合計面積の比率が98%以上である、プロパン選択吸着材。
[2] 前記ベータ型ゼオライトは、酸化物換算のアルカリ金属の含有量が200質量ppm以下である、[1]に記載のプロパン選択吸着材。
[3] 前記ベータ型ゼオライトは、プロピレンの吸着平衡定数K2に対するプロパンの吸着平衡定数K1の比率が、2.00以上である、[1]又は[2]に記載のプロパン選択吸着材。
[4] 前記ベータ型ゼオライトがフッ素を含有する、[1]から[3]のいずれか一つに記載のプロパン選択吸着材。
[5] [1]から[4]のいずれか一つに記載のプロパン選択吸着材に含まれる前記ベータ型ゼオライトと、プロパン及びプロピレンを含む混合ガスと、を接触させることを含む、プロパンの選択的吸着方法。
[6] [1]から[4]のいずれか一つに記載のプロパン選択吸着材に含まれる前記ベータ型ゼオライトと、プロパン及びプロピレンを含む混合ガスと、を接触させることを含む、プロピレンの精製方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示により、工業的なプロパン吸着材として適用可能であり、なおかつ、プロパン-プロピレン混合ガスから、効率的なプロパンの選択吸着を期待し得るプロパン吸着材、これを用いたプロパンの選択的吸着方法、及びプロピレンの精製方法の少なくともいずれかを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施例1及び比較例1、2の吸着材(ゼオライト)のNMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本明細書における各用語の意味について説明する。
【0013】
本明細書において、「ゼオライト」とは、骨格原子(以下、「T原子」ともいう。)が酸素(O)を介した規則的構造を有し、T原子が金属原子及び半金属原子の少なくともいずれかのみからなる化合物である。金属原子としては、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)及びスズ(Sn)からなる群から選ばれる1種以上が例示でき、アルミニウムが好ましい。半金属原子としては、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)及びテルル(Te)からなる群から選ばれる少なくとも1種が例示でき、ケイ素が好ましい。
【0014】
「ゼオライト類似物質」とは、T原子が酸素を介した規則的構造を有する化合物であり、T原子に少なくとも金属及び半金属以外の原子を含む化合物である。ゼオライト類似物質として、アルミノフォスフェート(AlPO)やシリコアルミノフォスフェート(SAPO)など、T原子としてリン(P)を含む複合リン化合物が例示できる。「ゼオライト類似物質」は、T原子が金属原子及び半金属原子の少なくともいずれかのみからなる「ゼオライト」とは区別される。
【0015】
本明細書において、「結晶性アルミノシリケート」とは、T原子がアルミニウム(Al)とケイ素(Si)からなるゼオライトである。「結晶性アルミノシリケート」は、T原子がアルミニウム(Al)とケイ素(Si)からなるゼオライトであり、T原子が実質的にケイ素(Si)のみからなるゼオライト(すなわち、結晶性シリケート)とは区別される。また、「結晶性アルミノシリケート」は、その粉末X線回折(以下、「XRD」ともいう。)パターンにおいて、結晶性のXRDピークを示し、結晶性のXRDピークを示さない「非晶質アルミノシリケート」とは区別される。
【0016】
本明細書において、「結晶性シリケート」とは、T原子が実質的にケイ素(Si)のみからなるゼオライトである。T原子が実質的にケイ素(Si)のみからなるとは、ケイ素(Si)のみからなることだけを意味するものでなく、ケイ素(Si)に加えて、製造原料(例えば、シリカ源)に含まれ得る不可避的不純物中の金属原子及び/又は半金属原子(例えば、アルミニウム)が含まれることを許容するものである。より具体的には、本明細書における結晶性シリケートは、T原子がケイ素のみからなるゼオライトと、T原子がアルミニウムとケイ素のみからなり、且つ、アルミナに対するシリカのモル比(以下、「SiO2/Al2O3モル比」ともいう。)が2000以上であるゼオライトを指す。なお、「結晶性シリケート」は、その粉末X線回折(以下、「XRD」ともいう。)パターンにおいて、結晶性のXRDピークを示し、結晶性のXRDピークを示さない「非晶質シリケート」とは区別される。
【0017】
本明細書において、「結晶性アルミノボロシリケート」とは、T原子がアルミニウム(Al)とケイ素(Si)とホウ素(B)からなるゼオライトである。「結晶性アルミノボロシリケート」は、T原子がアルミニウム(Al)とケイ素(Si)とホウ素(B)からなるゼオライトであり、T原子が実質的にケイ素(Si)とホウ素(B)のみからなるゼオライト(すなわち、結晶性ボロシリケート)とは区別される。また、「結晶性アルミノボロシリケート」は、その粉末X線回折(以下、「XRD」ともいう。)パターンにおいて、結晶性のXRDピークを示し、結晶性のXRDピークを示さない「非晶質アルミノボロシリケート」とは区別される。
【0018】
本明細書において、「結晶性ボロシリケート」とは、T原子が実質的にケイ素(Si)とホウ素(B)のみからなるゼオライトである。T原子が実質的にケイ素(Si)とホウ素(B)のみからなるとは、ケイ素(Si)とホウ素(B)のみからなることだけを意味するものでなく、ケイ素(Si)とホウ素(B)に加えて、製造原料(例えば、シリカ源)に含まれ得る不可避的不純物中の金属原子及び/又は半金属原子(例えば、アルミニウム)が含まれることを許容するものである。より具体的には、本明細書における結晶性ボロシリケートは、T原子がケイ素とホウ素のみからなるゼオライトと、T原子がアルミニウムとケイ素とホウ素のみからなり、且つ、アルミナに対するシリカのモル比(以下、「SiO2/Al2O3モル比」ともいう。)が2000以上であるゼオライトを指す。なお、「結晶性ボロシリケート」は、その粉末X線回折(以下、「XRD」ともいう。)パターンにおいて、結晶性のXRDピークを示し、結晶性のXRDピークを示さない「非晶質ボロシリケート」とは区別される。
【0019】
本明細書において、ゼオライトにおける「規則的構造」とは、国際ゼオライト学会(International Zeolite AssociationのStructure Commissionが定めている骨格コード(以下、単に「骨格コード」ともいう。)で特定される骨格構造、及び国際ゼオライト学会のホームページ「http://www.iza-structure.org/databases/」に記載される連晶構造を有する骨格構造である。例えば、「MFI型ゼオライト」は骨格コード「MFI」で特定される骨格構造を有するゼオライトである。また、例えば「ベータ型ゼオライト」はベータ連晶ファミリー(Intergrowth Family Beta)に属するゼオライトであり、典型的には参考材料(Reference Material)の「Zeolite Beta」と同様の約60%の多形体Beta_Aと約40%の多形体Beta_Bからなる連晶体から構成される骨格構造(連晶構造)を有するゼオライトである。なお、本願で言及するベータ型ゼオライトの連晶体比率は断りがない限り上記「Zeolite Beta」と同様である。また、参考材料(Reference Material)の「Zeolite Beta」は、国際ゼオライト学会ホームページ中の「https://asia.iza-structure.org/IZA-SC/DO_structures/DO_material_rm.php?IFN=Beta」に記載されている。各ゼオライトの骨格構造又は連晶構造は、例えば、国際ゼオライト学会のホームページのZeolite Framework Typesに記載されたXRDパターン(以下、「参照パターン」ともいう。)との対比によって同定することができる。
【0020】
本明細書において、XRDパターンは以下の条件のXRD測定より得られるものが挙げられる。
加速電流・電圧 : 40mA・40kV
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : 連続スキャン
スキャン条件 : 40°/分
測定範囲 : 2θ=3°から43°
発散縦制限スリット: 10mm
発散/入射スリット: 1°
受光スリット : open
検出器 : D/teX Ultra
Niフィルター使用
【0021】
結晶性のXRDピークは、一般的な解析ソフト(例えば、IGOR Pro 8、WaveMetrics社製や、SmartLab StudioII、リガク社製)を使用したXRDパターンの解析においてピークトップの2θが特定され検出されるピークである。特に限定されるものではないが、XRDピークの半値幅(半値全幅)としては、2θ=0.50°以下を例示できる。
【0022】
本明細書において、「層状シリケート」とは、ケイ素の四面体が2次元に連なるケイ酸シートが積み重なって形成される結晶性物質である。層状シリケートは、ゼオライトとは骨格構造(結晶構造)が異なっており、特定の骨格構造(結晶構造)を有する層状シリケートには名称が付されている。層状シリケートの名称としては、例えば、IEZ-1、IEZ-2、及びZIF-8を挙げることができる。層状シリケートの骨格構造は、例えば、非特許文献(Chem. Commun., 2007, 5188-5190)に記載されたXRDパターンとの対比によって同定することができる。
【0023】
本明細書において、「金属有機構造体」とは、金属イオンと有機化合物との配位結合によって形成される多孔性物質であり、ゼオライトとは異なる骨格構造(結晶構造)を有する。金属有機構造体としては、例えば、ZIF-8を挙げることができる。
【0024】
以下、本開示の一実施形態について説明する。本開示には、本明細書で開示した各構成及びパラメータは任意の組合せを含むものとし、また、本明細書で開示した値の上限及び下限は任意の組合せを含むものとする。
【0025】
本実施形態のプロパン選択吸着材は、ベータ型ゼオライトを含む。
【0026】
本実施形態のプロパン選択吸着材に含有されるベータ型ゼオライト(以下、「本実施形態に係るベータ型ゼオライト」ともいう)は、SiO2/Al2O3モル比が1000以上である。SiO2/Al2O3モル比が1000未満の場合、含まれるAlの対カチオンの量が多く、該対カチオンがプロピレンに対し強く相互作用する事により吸着特性がプロパンよりもプロピレンが選択的となり、プロパン-プロピレン混合ガスから効率的にプロパンを選択吸着することができない。SiO2/Al2O3モル比は、1000以上であればよいが、プロパンをより効率的に選択吸着させる観点から、1500以上、2000以上、3000以上、10000以上又は20000以上、また500000以下、300000以下又は200000以下が好ましい。前述したSiO2/Al2O3モル比の上限及び下限は、任意の組み合わせでよく、その範囲としては、1500以上500000以下、2000以上300000以下、3000以上200000以下、10000以上200000以下、又は20000以上200000以下が挙げられる。
【0027】
本実施形態に係るベータ型ゼオライトは、SiO2/Al2O3モル比が1000以上であれば、その骨格構造を構成するT原子について特に限定されるものではないが、プロパンをより効率的に選択吸着させる観点からは、T原子がアルミニウムとケイ素からなる結晶性アルミノシリケート、T原子が実質的にケイ素のみからなる結晶性シリケート、T原子がアルミニウムとケイ素とホウ素からなる結晶性アルミノボロシリケート、又は、T原子が実質的にケイ素(Si)とホウ素(B)のみからなる結晶性ボロシリケートであることが好ましく、結晶性シリケート又は結晶性ボロシリケートであることがより好ましい。
【0028】
本実施形態に係るベータ型ゼオライトがT原子としてホウ素(B)を含む場合、酸化ホウ素B2O3に対するシリカのモル比(以下、「SiO2/B2O3モル比」ともいう)は、プロパンをより効率的に選択吸着させる観点から、500以下、200以下又は150以下、また、10以上、20以上又は30以上であることが好ましい。前述したSiO2/B2O3モル比の上限及び下限の組み合わせは、プロパンをより効率的に選択吸着させる観点からは、10以上500以下、20以上200以下又は30以上150以下であることが好ましい。
【0029】
本実施形態に係るベータ型ゼオライトは、29Si-DDMAS(Dipolar Decoupling - Magic Angle Spinning)-NMRで測定されるスペクトルにおいて、化学シフト-120ppm以上-90ppm以下の範囲にピークトップを有する各ピーク(以下、「ピークQAll」ともいう)の合計面積(以下、「面積S」ともいう)に対する、化学シフト-120ppm以上-108ppm以下の範囲にピークトップを有する各ピーク(以下、「ピークQ4
(0Al)」ともいう)の合計面積(以下、「面積SQ4(0Al)」ともいう)の比率(以下、「Q4(0Al)比率」ともいう)が98%以上である。ベータ型ゼオライトのQ4(0Al)比率が98%未満の場合、Al由来のカウンターカチオンや欠陥サイトのOHなど、プロピレンと強く相互作用する成分が多く含まれることになるため、プロパン-プロピレン混合ガスから効率的にプロパンを選択吸着することができない。
【0030】
本実施形態においてQ4(0Al)比率は以下の式(1)によって求めることができる。
Q4(0Al)比率=面積SQ4(0Al)/面積S×100 ・・・(1)
上記式(1)において、面積SQ4(0Al)はピークQ4
(0Al)の合計面積[cm2]を表し、面積SはピークQAllの合計面積[cm2]を表し、Q4(0Al)比率は面積Sに対する面積SQ4(0Al)の比率[%]を表す。
【0031】
ここで、29Si-DDMAS-NMRは、ゼオライト骨格構造中のケイ素原子のまわりの局所構造を解析する手段として知られている(例えば、小野嘉夫、八嶋建明編、「ゼオライトの科学と工学」、p.61~67(講談社出版、2000年発行))。29Si-DDMAS-NMRにより測定されるスペクトルの化学シフトには、ケイ素原子の縮重度Qi(i=0~4)が反映されており、29Si-DDMAS-NMRにより測定されるスペクトルからは、ケイ素原子とT原子の酸素を介した結合状態を知ることができる。なお、縮重度Qiにおけるiは、SiO4四面体に含まれる4個の酸素原子のうちのT原子に架橋する酸素の数を表す。すなわち、縮重度Qiは、SiO4四面体に含まれる4個の酸素原子のうちi個の酸素原子が隣接するT原子に共有されていることを意味し、例えば、縮重度Q4の結合様式は、Si(OT)4で表記することができる。
【0032】
縮重度がQ4であるケイ素の中でも、SiO4四面体中の4個の酸素原子すべてが隣接するケイ素と結合しているSiO4四面体中のケイ素(以下、「Si(OSi)4で表されるケイ素」ともいう)は、29Si-DDMAS-NMRで測定されるスペクトルの化学シフト-120ppm以上-108ppm以下の範囲にピークトップを有するピーク(つまり、ピークQ4
(0Al))に帰属する。一方、SiO4四面体中の4個の酸素原子の中の少なくとも1つがケイ素以外のT原子(例えば、アルミニウム)と結合しているSiO4四面体中のケイ素や、SiO4四面体中の4個の酸素原子の中の少なくとも一つがT原子と結合することなく水酸基(-OH)となっているSiO4四面体中のケイ素は、29Si-DDMAS-NMRで測定されるスペクトルの-108ppm超-90ppm以下の範囲にピークトップを有するピークに帰属する。このため、Q4(0Al)比率は、ゼオライトの骨格構造を構成するケイ素のうち、Si(OSi)4で表されるケイ素の割合を示す指標と言える。
【0033】
ベータ型ゼオライトの29Si-DDMAS-NMR測定は、一般的な固体核磁気共鳴装置(例えば、AVANCE III 600、Bruker社製)を使用して行うことができる。29Si-DDMAS-NMRによる測定条件には、例えば、以下の条件を用いることができる。
1H共鳴周波数 :600MHz
29Si共鳴周波数 :119.2MHz
ローター回転速度 :10kHz
繰り返し時間 :30.0秒
積算回数 :2048回
【0034】
ピークQAllの合計面積である面積Sは、29Si-DDMAS-NMR測定で測定されるスペクトルからピークQAllを分離し、分離したピークQAllの面積(積分値)を合計することで求めることができる。また、ピークQ4
(0Al)の合計面積である面積SQ4(0Al)は、29Si-DDMAS-NMR測定で測定されるスペクトルからピークQ4
(0Al)を分離し、分離したピークQ4
(0Al)の面積(積分値)を合計することで求めることができる。
【0035】
29Si-DDMAS-NMR測定で測定されるスペクトル(以下、「測定スペクトル」ともいう。)からピークAllやピークQ4
(0Al)を分離するには、従来公知のピーク分離方法(ピークフィッティング)を用いることができる。例えば、ピークAllやピークQ4
(0Al)の分離には、ピークを表す関数を仮定した最小二乗法を用いることができる。ピークを表す関数としては、ガウス関数、ローレンツ関数、ガウス分布とローレンツ分布の混合関数(Gauss-Lorentz)、及びVoigt関数が挙げられる。最小二乗法によるピーク分離は、標準的なNMRデータ処理ソフト(ソフト名:ALICE2、JEOL社)を使用して行ってもよい。また、ピーク分離を再結合して得られるスペクトル(以下、「計算スペクトル」ともいう。)の測定スペクトルに対する相対誤差が、任意の点(ppm)に対して5%未満となるようにピークを分離すればよい。
【0036】
なお、面積SQ4(0Al)は、ピークQ4
(0Al)それぞれの面積の合計値であるが、ピークQ4
(0Al)が1つのピークである場合には、その1つのピーク面積を面積SQ4(0Al)とすればよい。同様に、面積Sは、ピークQAllそれぞれの面積の合計値であるが、ピークQAllが1つのピークである場合には、その1つのピーク面積を面積Sとすればよい。
【0037】
本実施形態に係るベータ型ゼオライトは、SiO2/Al2O3モル比が1000以上であり、Q4(0Al)比率が98%以上であればよく、その他の構成については特に限定されるものではないが、プロパンをより効率的に選択吸着させる観点から、酸化物換算のアルカリ金属の含有量が、500質量ppm以下であることが好ましく、200質量ppm以下であることがより好ましい。酸化物換算のアルカリ金属の含有量の下限は、0質量ppm以上であることが例示できる。酸化物換算のアルカリ金属の含有量の範囲は、プロパンをより効率的に選択吸着させる観点からは、0質量ppm以上500質量ppm以下であることが好ましく、0質量ppm以上200質量ppm以下であることがより好ましい。
【0038】
なお、前述したアルカリ金属の含有量(酸化物換算のアルカリ金属の含有量)は、ベータ型ゼオライトに含まれるアルカリ金属をアルカリ金属酸化物として換算した質量を、ベータ型ゼオライトの質量で除すことにより求めることができる。ベータ型ゼオライトに2種以上のアルカリ金属が含まれる場合、前述した酸化物換算のアルカリ金属の含有量は、それぞれのアルカリ金属(酸化物換算のアルカリ金属の含有量)の含有量の合計量を意味する。また、酸化物換算のアルカリ金属の含有量が0質量ppmであるとは、ベータ型ゼオライトにアルカリ金属が含まれていないことを意味する。
【0039】
本実施形態に係るベータ型ゼオライトは、後述するように、フッ化物法で製造されることが好ましい。このため、本実施形態に係るベータ型ゼオライトは、フッ素(F)を含有していてもよい。フッ素(F)は、例えば、細孔及びイオン交換サイトの少なくともいずれか等、ベータ型ゼオライトの骨格外に担持されていてもよい。
【0040】
本実施形態に係るベータ型ゼオライトのBET比表面積は、特に限定されるものではないが、プロパンをより効率的に選択吸着させる観点から、300m2/g以上3000m2/g以下であることが好ましく、400m2/g以上2000m2/g以下であることがより好ましく、400m2/g以上1000m2/g以下が更に好ましい。なお、BET比表面積は、一般的な窒素ガス吸着法により測定することができ、例えば、-196℃における窒素ガスの吸着結果にBET法を適用することにより求めることができる。
【0041】
本実施形態に係るベータ型ゼオライトの細孔容積は、特に限定されるものではないが、プロパンをより効率的に選択吸着させる観点から、0.15cm3/g以上0.50cm3/g以下であることが好ましく、0.20cm3/g以上0.40cm3/g以下であることがより好ましい。なお、細孔容積は、一般的な窒素ガス吸着法により測定することができ、例えば、-196℃における窒素ガスの吸着結果にt-plot法を適用することにより求めることができる。
【0042】
本実施形態に係るベータ型ゼオライトは、特に限定されるものではないが、プロパンをより効率的に選択吸着させる観点から、プロピレンの吸着平衡定数K2に対する、プロパンの吸着平衡定数K1の比率(以下、「K1/K2」ともいう)が、2.00以上であることが好ましく、2.50以上であることが好ましい。ベータ型ゼオライトのK1/K2は高いほど好ましいが、例えば、30以下又は10以下が挙げられる。本実施形態に係るベータ型ゼオライトのK1/K2の範囲は、プロパンをより効率的に選択吸着させる観点から、2.00以上30以下、更には2.50以上10以下が好ましい。
【0043】
プロパンの吸着平衡定数K1は、25℃でプロパンの吸着試験を行い、その測定結果(吸着量q1と圧力p1)を、縦軸1/q1、横軸1/p1のグラフにプロット(ラングミュアプロット)し、下記式(2)で表されるラングミュア吸着等温式で近似することで求められる定数である。また、プロピレンの吸着平衡定数K2は、25℃でプロピレンの吸着試験を行い、その測定結果(吸着量q2と圧力p2)を、縦軸1/q2、横軸1/p2のグラフにプロット(ラングミュアプロット)し、下記式(3)で表されるラングミュア吸着等温式で近似することで求められる吸着平衡定数である。近似の方法としては最小二乗法を挙げることができる。吸着平衡定数K1や吸着平衡定数K2を求めるためのプロパン吸着試験やプロピレン吸着試験は、一般的な吸着装置(装置名:BELSORP Max、マイクロトラック・ベル社製)を用いて行うことができる。試験ガスには、10体積%以上100体積%以下のプロパンや、10体積%以上100体積%以下のプロピレンを用いることができる。なお、プロパンの吸着試験やプロピレンの吸着試験には、前処理したベータ型ゼオライトを用いることが好ましく、前処理としては、400℃、12時間の減圧加熱処理(2Pa以下)を挙げることができる。
【0044】
1/q1=(1/Q1)×(1/K1)×(1/p1)+(1/Q1) ・・・(2)
上記式(2)において、q1はプロパンの吸着量[mol/kg]を表し、Q1はプロパンの飽和吸着量[mol/kg]を表し、p1は圧力[kPa]を表し、K1はプロパンの吸着平衡定数[kPa-1]を表す。
【0045】
1/q2=(1/Q2)×(1/K2)×(1/p2)+(1/Q2) ・・・(3)
上記式(3)において、q2はプロピレンの吸着量[mol/kg]を表し、Q2はプロピレンの飽和吸着量[mol/kg]を表し、p2は圧力[kPa]を表し、K2はプロピレンの吸着平衡定数[kPa-1]を表す。
【0046】
本実施形態に係るベータ型ゼオライトは、特に限定されるものではないが、プロパンをより効率的に選択吸着させる観点から、プロパンの有効吸着量が40[mL(STP)/g]以上であることが好ましく、42[mL(STP)/g]以上であることがより好ましく、50[mL(STP)/g]以上であることがよりさらに好ましい。なお、本実施形態おいて、プロパンの有効吸着量は、プロパンの吸着平衡定数K1を求めるため用いるラングミュア吸着等温式(近似直線)における、圧力0.1kPaから10kPaまでのプロパン吸着量の変化量とすることができる。ベータ型ゼオライトのプロパンの有効吸着量は高いほど好ましいが、例えば、200[mL(STP)/g]以下、又は100[mL(STP)/g]以下が挙げられる。本実施形態に係るベータ型ゼオライトのプロパンの有効吸着量は、プロパンをより効率的に選択吸着させる観点から、40[mL(STP)/g]以上200[mL(STP)/g]以下、更には42[mL(STP)/g]以上200[mL(STP)/g]以下であることが好ましく、更には50[mL(STP)/g]以上100[mL(STP)/g]以下がより好ましい。
【0047】
本実施形態のプロパン選択吸着材は、前述したベータ型ゼオライトのみにより構成されていてもよいが、ベータ型ゼオライト以外の他の物質を含んでいてもよい。ベータ型ゼオライト以外の他の物質としては、例えば、バインダー、成形助剤及び水の群から選ばれる1以上を挙げることができる。
【0048】
バインダーは、有機バインダーであってもよく、無機バインダーであってもよく、これらの両方のバインダーであってもよい。有機バインダーとしては、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシエチルメチルセルロース、デンプン、コーンスターチ、糖蜜、乳糖、ゼラチン、デキストリン、アラビアゴム、アルギン酸、アクリル酸、ポリエチレングリコール及びポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種を例示することができる。無機バインダーとしては、粘土、シリカ、アルミナ及びジルコニアからなる群から選ばれる少なくとも1種を例示することができる。プロピレンの吸着量を抑制する観点からは、バインダーは、デンプン、アクリル酸、シリカ、アルミナ及びジルコニアの群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、シリカであることがより好ましい。
【0049】
本実施形態のプロパン選択吸着材におけるバインダーの含有量は、例えば、プロパン選択吸着材100質量%に対して、5質量%以上70質量%以下とすることができる。
【0050】
成形助剤としては、カルボキシルメチルセルロース(以下、「CMC」ともいう。)、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース及びセルロースナノファイバーの群から選ばれる1以上などの水溶性又は非水溶性セルロース;グアーガム及びヒドロキシプロピルグアーガムの少なくともいずれかなどのグアーガム誘導体;バイオガムに属するキサンタンガム、ウエランガム及びジェランガムの群から選ばれる1以上などの多糖類;ポリエチレンイミン誘導体;ポリビニルビニリドン(以下、「PVP」ともいう。);グリセリン、ポリビニルアルコール及びエチレングリコール誘導体の群から選ばれる1以上などのアルコール類;カチオン系、アニオン系、又はノニオン系界面活性剤;水性ウレタン;ポリアクリル酸誘導体などが例示でき、これらは、1種単独のみならず、2種以上が含有されていてもよい。CMCとしては、ナトリウム型カルボキシメチルセルロースであってもよい。好ましい成形助剤としては、CMC及びヒドロキシプロピルセルロースの少なくともいずれかが挙げられる。
【0051】
本実施形態のプロパン選択吸着材における成形助剤の含有量は、例えば、プロパン選択吸着材100質量%に対して、0.1質量%以上10質量%以下とすることができる。
【0052】
本実施形態のプロパン選択吸着材における水の含有量は、例えば、プロパン選択吸着材100質量%に対して、0.1質量%以上40質量%以下とすることができる。
【0053】
本実施形態のプロパン選択吸着材に、前述したベータ型ゼオライトに加えてバインダーが含有されることで、本実施形態のプロパン選択吸着材を所定の形状に成形しやすくなる。また、本実施形態のプロパン選択吸着材に、前述したベータ型ゼオライトとバインダーに加え、成形助剤や水が含有されることで、成形性が向上する。成形体の形態であるプロパン選択吸着材は、例えば、前述したベータ型ゼオライトとバインダー(必要に応じて成形助剤や水)の混合物を所定の形状に成形し、これを焼成することにより製造することができる。成形体の形状は、特に限定されるものではないが、球状、略球状、楕円状、円柱状、多面体状及び不定形からなる群から選ばれる少なくとも1種を例示することができる。
【0054】
成形体の大きさは、プロパンをより効率的に選択吸着させたり、プロパンとプロピレンを含む混合ガス(プロパン-プロピレン混合ガス)を流通させるときの圧力損失を低減させたりする観点から、0.1mm以上4.0mm以下のメジアン径であることが好ましく、0.3mm以上2.0mm以下のメジアン径であることがより好ましい。なお、メジアン径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%となる粒径(d50)を指す。
【0055】
次に、本実施形態に係るベータ型ゼオライトの製造方法について説明する。
【0056】
本実施形態に係るベータ型ゼオライトは、SiO2/Al2O3モル比が1000以上となり、且つ、Q4(0Al)比率が98%以上となれば、どのような製造方法で製造されてもよいが、鉱化剤としてフッ素化合物を用いるフッ化物法で製造することが好ましい。鉱化剤としてフッ素化合物(フッ素イオン(F-))を用いるフッ化物法は、鉱化剤として水酸化物(水酸化物イオン(OH-))を用いる一般的な製造方法と比較して、ベータ型ゼオライトのQ4(0Al)比率をより高めることができる。このため、フッ化物法を用いることで、Q4(0Al)比率が98%以上であるベータ型ゼオライトが製造されやすくなる。なお、鉱化剤とは、原料組成物の結晶化を促進する物質である。
【0057】
フッ化物法を用いた本実施形態に係るベータ型ゼオライトの製造方法について、以下説明する。なお、本実施形態に係るベータ型ゼオライトの製造方法は、以下に説明するフッ化物法に限定されるものではない。
【0058】
フッ化物法を用いた本実施形態に係るベータ型ゼオライトの製造方法は、少なくとも、シリカ源、構造指向剤源、フッ素源、及び水を含む組成物(以下、「原料組成物」ともいう。)を結晶化する結晶化工程を含む。
【0059】
原料組成物に含まれるシリカ源は、ケイ素(Si)を含む化合物であり、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、非晶質シリカ、珪酸ナトリウム、テトラエチルオルトシリケート(以下、「TEOS」ともいう。)、アルミノシリケートゲル、及び非晶質アルミノシリケートからなる群から選ばれる1種以上が例示できる。不純物量が少ない点から、シリカ源はTEOSが好ましい。
【0060】
原料組成物に含まれる構造指向剤源は、ベータ型ゼオライトを指向する物質であればよく、特に限定されるものではないが、テトラエチルアンモニウムカチオンを例示することができる。構造指向剤源は、塩の形態であってもよく、水酸化物、塩化物、及び臭化物からなる群から選ばれる1種以上の塩の形態を例示することができる。より具体的な構造指向剤源としては、テトラエチルアンモニウム水酸化物、テトラエチルアンモニウム塩化物、及びテトラエチルアンモニウム臭化物からなる群から選ばれる1種以上を例示することができる。
【0061】
原料組成物に含まれるフッ素源は、フッ素(F)を含む化合物であり、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化珪素、フルオロ珪酸アンモニウム、及びフルオロ珪酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種以上が例示できる。
【0062】
ここで、Q4(0Al)比率が98%以上であるベータ型ゼオライトを製造するには、前述した通り、鉱化剤として作用する水酸化物イオン(OH-)が原料組成物に実質的に含まれていないことが好ましい。このため、原料組成物に含有する各原料として水酸化物を用いる場合には、フッ素源としてフッ化水素酸を用いることが好ましい。フッ素源としてフッ化水素酸を用いることで、フッ化水素酸から発生する水素イオン(H+)が、水酸化物から発生する水酸化物イオン(OH-)と反応し、原料組成物における水酸化物イオン(OH-)の量を低減することができる。なお、水酸化物イオン(OH-)が実質的に含まれないとは、原料組成物における水酸化物イオン(OH-)が十分小さく、原料組成物に含まれる水酸化物イオン(OH-)が水素イオン(H+)でちょうど中和されているような状態を意味し、原料組成物の調製時の秤量精度にもよるが、例えば、25℃におけるpHが6以上9以下であるときに、水酸化物イオン(OH-)が実質的に含まれないと言える。より具体的には、原料組成物における水酸化物イオン(OH-)の含有量が0μmol/L以上10μmol/L以下であることが例示できる。
【0063】
原料組成物に含まれる水は、例えば、蒸留水、脱イオン水、純水、又はこれらの2種以上を用いることができる。なお、原料組成物に含まれる水以外の原料が、水和物、構造水、溶媒などの水を含むものである場合、水以外の原料に含まれる水を、原料組成物に含有される水とみなすことができる。
【0064】
原料組成物は、上述した、シリカ源、構造指向剤源、フッ素源、及び水のみにより構成されていてもよいが、これら以外の他の原料を含んでいてもよい。このような他の原料としては、例えば、アルミニウム源やアルカリ源やホウ素源を挙げることができる。
【0065】
アルミニウム源は、アルミニウム(Al)を含む化合物であり、アルミニウムイソプロポキシド、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、擬ベーマイト、アルミナゾル及び非晶質アルミノシリケートの群から選ばれる1以上が例示できる。なお、非晶質アルミノシリケートなどのアルミニウム(Al)とケイ素(Si)を含む物質は、アルミナ源として用いられるだけでなく、前述したシリカ源として用いることができる。
【0066】
アルカリ源は、アルカリ金属元素を含む化合物であり、ナトリウム、カリウム、セシウム及びルビジウムからなる群から選ばれる1以上のアルカリ金属元素を含む化合物を例示することができる。アルカリ源は、例えば、アルカリ金属元素を含む水酸化物、炭酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物及び硫酸塩からなる群から選択される1以上の塩の形態であってもよい。原料組成物には、アルカリ源が含まれてもよいが、本実施形態のプロパン選択吸着材がより効率的にプロパンを選択吸着しやすくなる観点から、アルカリ源が実質的に含まれていないことが好ましい。なお、アルカリ金属が実質的に含まれないとは、原料組成物におけるアルカリ金属が検出下限値以下であることを意味し、測定装置の検出能力にもよるが、原料組成物におけるアルカリ金属の含有量が0ppm以上500ppm以下であることが例示できる。
【0067】
ホウ素源は、ホウ素を含む化合物であり、ホウ酸、酸化ホウ素及びホウ酸ナトリウムの群から選ばれる1以上が例示できる。なお、ホウ酸は、原料組成物中で水素イオン(H+)を生成するため、原料組成物における水酸化物イオン(OH-)の量を低減することができる。このため、原料組成物に含有する各原料として水酸化物を用いる場合には、ホウ素源としてホウ酸を用いることが好ましい。なお、ホウ酸は、不純物となり得る金属イオンが含まれにくく、また、水への溶解度が高いことから、他のホウ素源と比較して、原料組成物の組成を調製しやすい。
【0068】
原料組成物の組成は、SiO2/Al2O3モル比が1000以上であり、且つ、Q4(0Al)比率が98%以上であるベータ型ゼオライトが製造できれば、特に限定されるものではないが、好ましい原料組成物の組成の一例としては、以下のモル組成を挙げることができる。なお、以下の組成における各比率はモル比であり、Siはケイ素(mol)、Alはアルミニウム(mol)、H2Oは水(mol)、Mはアルカリ金属元素(mol)、Fはフッ素(mol)、SDAは有機構造指向剤(mol)、OHは水酸化物イオン(mol)、Bはホウ素(mol)を表す。
Al/Si比 =0以上、好ましくは0.00001以上、かつ、
0.002未満、好ましくは0.0015以下
SDA/Si比 =0以上、好ましくは0.1以上、かつ、
2.0以下、好ましくは1.5以下
M/Si比 =0以上、好ましくは0.001以上、かつ、
1.0以下、好ましくは0.3以下
H2O/Si比 =4以上、好ましくは6以上、かつ、
100以下、好ましくは50以下
F/Si比 =0以上、好ましくは0.3以上、かつ、
3.0以下、好ましくは2.0以下
OH/Si比 =0以上、好ましくは0.001以上、かつ、
1.0以下、好ましくは0.3以下
B/Si比 =0以上、好ましくは0.01以上、かつ、
0.10以下、好ましくは0.05以下
【0069】
原料組成物は、上述した、シリカ源、構造指向剤源、フッ素源、水、及び必要に応じて含有される他の原料を混合することで得ることができる。原料組成物に含まれる原料の混合は、加熱しながら混合が行われてもよい。混合時の加熱温度は、特に限定されるものではないが、例えば、20℃以上80℃以下を例示することができる。また、原料組成物に含まれる各原料の混合は、全ての成分を同時に混合してもよいが、一部の原料のみを予め予備混合して予備混合物を取得しておき、得られた予備混合物と残りの原料を混合して、原料組成物を取得してもよい。
【0070】
原料組成物の結晶化処理は、ベータ型ゼオライトが得られるように原料組成物を結晶化できるものであればよく、その処理方法は特に限定されるものではない。好ましい結晶化処理の方法としては、原料組成物を水熱処理する方法が挙げられる。水熱処理は、原料組成物を密閉耐圧容器に入れ、これを加熱すればよい。水熱処理条件としては、例えば、以下の条件を挙げることができる。
処理温度 :110℃以上、130℃以上又は150℃以上、かつ
210℃以下、200℃以下又は190℃以下
処理時間 :8時間以上、10時間以上、又は15時間以上、かつ
500時間以下又は300時間以下
処理圧力 :自生圧
【0071】
原料組成物の結晶化処理は、ベータ型ゼオライトが製造されやすくなるため、原料組成物に種晶を添加した上で行うことが好ましい。種晶は、ベータ型ゼオライトの結晶化を促進させる機能を有するゼオライトであり、例えば、ベータ型ゼオライトを用いることができる。種晶として用いられるベータ型ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比は、製造されるベータ型ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比が1000以上となり、且つ、Q4(0Al)比率が98%以上となれば、特に限定されるものではないが、1500以上500000以下であることが好ましく、2000以上300000以下であることがより好ましく、3000以上200000以下であることがよりさらに好ましく、10000以上200000以下であることが特に好ましく、20000以上200000以下であることが最も好ましい。種晶の添加量は、例えは、原料組成物(種晶を含まない)に含まれるシリカ源に対し、0.0001質量倍以上1質量倍以下とすることができ、0.001質量倍以上0.1質量倍以下とすることもできる。
【0072】
本実施形態に係るベータ型ゼオライトの製造方法は、上述した結晶化工程に加え、洗浄工程、乾燥工程、及びSDA除去工程からなる群から選択される1以上の工程を含むものであってもよい。
【0073】
洗浄工程は、結晶化して得られたベータ型ゼオライトを洗浄する工程である。例えば、洗浄工程では、結晶化して得られたベータ型ゼオライトを純水で洗浄すればよい。
【0074】
乾燥工程は、結晶化して得られたベータ型ゼオライト、又は洗浄処理したベータ型ゼオライトから水分を除去する工程である。乾燥処理の条件は、ベータ型ゼオライトから水分を除去することができれば特に限定されるものではない。乾燥温度については、50℃以上200℃以下であることを例示することができる。また、乾燥時間については、1時間以上30時間以下であることを例示することができる。また、乾燥時の雰囲気については、大気であることを例示することができる。
【0075】
SDA除去工程は、結晶化して得られたベータ型ゼオライト、洗浄処理したベータ型ゼオライト、又は乾燥処理したベータ型ゼオライトに含まれるSDA(有機構造指向剤)を除去する工程である。通常、SDAを用いて結晶化させたベータ型ゼオライトは、その細孔内にSDAを含有している。SDA除去工程が含まれることにより、ベータ型ゼオライトに含まれるSDAを除去することができる。
【0076】
SDA除去処理は、SDAが除去されれば任意の条件で行うことができる。SDAの除去方法としては、例えば、酸性水溶液を用いた液相処理、レジンなどを用いた交換処理、及び熱処理(熱分解)からなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。製造効率の観点から、SDA除去処理は、熱処理(熱分解)であることが好ましい。熱処理(熱分解)の条件は、SDAが除去されれば特に限定されるものではない。熱処理温度については、500℃以上900℃以下であることを例示することができる。また、熱処理時間については、1時間以上10時間以下であることを例示することができる。また、熱処理時の雰囲気については、大気であることを例示することができる。
【0077】
上述した工程を含む製造方法により、本実施形態に係るベータ型ゼオライトを製造することができる。製造されるベータ型ゼオライトは、本実施形態のプロパン選択吸着材として用いることができる。また、製造されるベータ型ゼオライトを、必要に応じて、ベータ型ゼオライト以外の他の物質(バインダーや成形助剤や水)と混合して、得られた混合物を成形及び焼成し、成形体の形態のプロパン選択吸着材としてもよい。
【0078】
以上説明した本実施形態のプロパン選択吸着材は、プロピレンよりもプロパンを吸着しやすいため、プロパンとプロピレンを含む混合ガス(プロパン-プロピレン混合ガス)からプロパンを効率的に選択吸着することができる。このため、本実施形態のプロパン選択吸着材は、プロパン-プロピレン混合ガスからプロパンを選択的に吸着してプロピレンを精製する精製方法に用いることもできる。
【0079】
本実施形態のプロパン選択吸着材によるプロパンの選択的な吸着は、プロパン-プロピレン混合ガスと、本実施形態に係るベータ型ゼオライトとを接触させることで行うことができる。本実施形態に係るベータ型ゼオライトとプロパン-プロピレン混合ガスとを接触させる方法は、特に限定されないが、本実施形態のプロパン選択吸着材を固定床流通式反応管に充填し、これにプロパン-プロピレン混合ガスを流通させる方法や、本実施形態のプロパン選択吸着材を、プロパン-プロピレン混合ガス中に放置する方法を例示することができる。
【0080】
本実施形態に係るベータ型ゼオライトに接触させるプロパン-プロピレン混合ガスは、プロパンとプロピレンのみにより構成されていてもよいが、プロパンとプロピレン以外の他の成分を含むものであってもよい。プロパンとプロピレン以外の他の成分としては、例えば、窒素、酸素、ヘリウム、二酸化炭素及びアルゴンの群から選ばれる1以上を挙げることができる。
【0081】
プロパン-プロピレン混合ガスにおいて、プロパンとプロピレンの含有割合は、特に限定されるものではなく、例えば、混合ガス100体積%に対し、プロパンとプロピレンが合計で10体積%以上100体積%以下とすることができる。また、プロパン-プロピレン混合ガスにおけるプロパンとプロピレンの含有比率についても特に限定されるものではなく、例えば、プロパン-プロピレン混合ガス中のプロピレンの比率が、プロパン1体積部に対して、4体積部以上999体積部以下とすることができる。本実施形態のプロパン選択吸着材は、特に、プロパンが微量にしか含まれないプロパン-プロピレン混合ガスであっても、プロパンの選択的な吸着を期待し得るため、プロパン-プロピレン混合ガス中のプロピレンの比率が、プロパン1体積部に対して、19体積部以上999体積部以下であってもよい。
【0082】
本実施形態のプロパン選択吸着材によるプロパンの選択的な吸着は、本実施形態に係るベータ型ゼオライトとプロパン-プロピレン混合ガスとを接触させれば進行するため、ベータ型ゼオライトと混合流体の接触条件については特に限定されない。一例としては、ベータ型ゼオライトとプロパン-プロピレン混合ガスの接触温度は、10℃以上200℃以下とすることができる。また、ベータ型ゼオライトとプロパン-プロピレン混合ガスの接触させる雰囲気の圧力は、例えば、0.01MPa以上1MPa以下とすることができる。なお、ベータ型ゼオライトとプロパン-プロピレン混合ガスの接触時間については、吸着させたいプロパンの量に応じて適宜設定することができる。
【0083】
本実施形態のプロパン選択吸着材が、プロパンを選択的に吸着できる理由は明らかになっていないが、本実施形態に係るベータ型ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比が1000以上であり、且つ、Q4(0Al)比率が98%以上であることで、当該ベータ型ゼオライトがプロピレンよりもプロパンと相互作用しやすなり、プロパンがプロピレンよりも吸着されやすくなったものと推察される。
【実施例0084】
以下、実施例において本開示をさらに詳細に説明する。しかしながら、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0085】
(結晶相の同定)
一般的な粉末X線回折装置(装置名:Ultima IV Protectus、リガク社製)を使用し、試料のXRD測定をした。測定条件は以下のとおりである。
加速電流・電圧 : 40mA・40kV
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : 連続スキャン
スキャン条件 : 40°/分
測定範囲 : 2θ=3°から43°
発散縦制限スリット: 10mm
発散/入射スリット: 1°
受光スリット : open
検出器 : D/teX Ultra
Niフィルター使用
【0086】
得られたXRDパターンを、測定装置付随の解析プログラム(商品名:IGOR Pro 8、WaveMetrics社製)を使用し、ベースラインの補正、及び、補正後の各XRDピークの検出及び強度解析を行った。補正後のXRDパターンと、国際ゼオライト学会のホームページ「http://www.iza-structure.org/databases/」のZeolite Framework Typesに記載のXRDパターン(参照パターン)とを比較することで、試料の骨格構造を同定した。なお、層状シリケートについては、非特許文献(Chem. Commun., 2007, 5188-5190)に記載されたXRDパターンとの対比することで骨格構造を同定した。
【0087】
(29Si DDMAS NMR測定)
一般的な固体核磁気共鳴装置(装置名:AVANCE III 600、Bruker社製)を使用し、試料の29Si DDMAS NMRスペクトル測定をした。測定条件は以下のとおりである。
1H共鳴周波数 :600MHz
29Si共鳴周波数 :119.2MHz
ローター回転速度 :10kHz
繰り返し時間 :30.0秒
積算回数 :2048回
【0088】
得られた29Si DDMAS NMRスペクトルについて、-120ppm以上-108ppm以下にピークトップが存在するピークをQ4(0Al)(Si(OSi)4)(ピークQ4
(0Al))と帰属し、当該ピークの面積SQ4(0Al)とした。また、-120ppm以上-90ppm以下にピークトップが存在する各ピーク(ピークQAll)の面積の合計を面積Sとした。
【0089】
ピークフィッティングは標準的なNMRデータ処理ソフト(ソフト名:ALICE2、JEOL社)を使用して、ガウス分布およびローレンツ分布の混合関数を用いた最小二乗法により行った。ピークフィッティングにより得られた各ピークについて面積分を行い、面積SQ4(0Al)及び面積Sを求めた。求めた面積SQ4(0Al)及び面積Sを、上記式(1)に代入し、Q4(0Al)比率を算出した。なお、Q4(0Al)以外のピークが検出されない場合はQ4(0Al)比率を100%とした。
【0090】
(組成分析)
フッ化水素酸(HF濃度:48質量%)、硝酸(HNO3濃度:60質量%)及び純水を混合して得られた酸溶液(HF:0.96質量%、HNO3:1.2質量%)10mLに、固体試料2mgを溶解して試料溶液を調製した。一般的なICP装置(装置名:OPTIMA5300DV、PerkinElmer社製)を使用して、当該試料溶液を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)で測定した。得られたSi、Al、Na、K、及びBの測定値から、それらを酸化物(SiO2、Al2O3、Na2O、K2O、及びB2O3)として換算した換算値を算出し、算出した換算値から、固体試料のSiO2/Al2O3モル比、SiO2/B2O3モル比、Na2O含有量[質量ppm]及びK2O含有量[質量ppm]を求めた。
【0091】
(BET比表面積及び細孔容積の測定)
一般的な吸着装置(装置名:BELSORP Max、マイクロトラック・ベル社製)を用いて、試料に対する窒素のガス吸着量を測定した。窒素ガスの吸着等温線に対して、BET法を適用することにより、試料のBET値(BET比表面積[m2/g])を求めた。また、窒素ガスの吸着等温線に対して、t-plot法を適用することにより、細孔容積を求めた。t-plot法は窒素吸着装置付属の解析ソフト(製品名:BEL Master(version 7)、マイクロトラック・ベル社製)を使用した。なお、窒素ガス吸着は、通常の定容量法を用いた。測定条件は、以下に示す通りである。
使用ガス :99.999%窒素
測定温度 :-196℃
前処理 :400℃、12時間の減圧加熱処理(2Pa以下)
【0092】
(プロパンの吸着評価)
一般的な吸着装置(装置名:BELSORP Max、マイクロトラック・ベル社製)を用いて、試料に対するプロパンのガス吸着量[mL(STP)/g]を測定した。測定により得られたプロパンガスの等温線の測定圧力0.1kPa以上40kPa以下の領域についてラングミュアプロットを実施し、上記式(2)で表されるラングミュア吸着等温式で近似し、吸着平衡定数K1[kPa-1]、及び飽和吸着量Q1[mol/kg]を求めた。得られた等温式(近似直線)より、測定圧力0.1kPaから10kPaにおける吸着量の変化量を算出し、この変化量をプロパン有効吸着量[mL(STP)/g]とした。なお、プロパンガス吸着は、通常の定容量法を用いた。測定条件は、以下に示す通りであり、試料には下記条件(前処理条件)で前処理された試料を用いた。
使用ガス :99.9%プロパン
測定温度 :25℃
前処理 :400℃、12時間の減圧加熱処理(2Pa以下)
【0093】
(プロピレンの吸着評価)
一般的な吸着装置(装置名:BELSORP Max、マイクロトラック・ベル社製)を用いて、試料に対するプロピレンのガス吸着量[mL(STP)/g]を測定した。測定により得られたプロピレンガスの等温線の測定圧力0.1kPa以上40kPa以下の領域についてラングミュアプロットを実施し、上記式(3)で表されるラングミュア吸着等温式で近似し、吸着平衡定数K2[kPa-1]、及び飽和吸着量Q2[mol/kg]を求めた。なお、プロピレンガス吸着は、通常の定容量法を用いた。測定条件は、以下に示す通りであり、試料には下記条件(前処理条件)で前処理された試料を用いた。
使用ガス :99.95%プロピレン
測定温度 :25℃
前処理 :400℃、12時間の減圧加熱処理(2Pa以下)
【0094】
実施例1
TEOS(純度99%以上、キシダ化学社製)及びテトラエチルアンモニウム(以下、「TEA」ともいう。)水酸化物35質量%水溶液(Aldrich社製)を混合し、60℃のホットプレート上で90分間混合した。次に純水、フッ化水素酸(HF濃度:46質量%、富士フィルム和光純薬社製)を加えよく混合し、以下のモル組成を有する原料組成物を得た。
Al/Si比<0.001(検出下限以下)
B/Si比<0.001(検出下限以下)
TEA/Si比 = 0.56
Na/Si比 < 0.01(検出下限以下)
K/Si比 < 0.01(検出下限以下)
H2O/Si比 = 7.5
F/Si比 = 0.56
OH/Si比 < 0.01(検出下限以下)
【0095】
原料組成物にTEOSの0.01質量倍の種結晶(ベータ型ゼオライト、SiO2/Al2O3モル比:115000)を加え、内容積23mLのPTFE内筒ステンレス製オートクレーブに密閉し、20rpmで回転させながら150℃で168時間熱処理した。熱処理後の生成物を固液分離し、得られた固形分の50質量倍の純水で洗浄した。洗浄後の固形分を大気中、80℃で24時間乾燥した後、大気中、550℃、6時間で焼成し、ゼオライトを得、本実施例の吸着材とした。
【0096】
得られたゼオライトはSiO
2/Al
2O
3モル比が115000、Q4(0Al)比率が100%、Na
2O含有量が8.0質量ppm、K
2O含有量が1.8質量ppm、BET値が559m
2/g及び細孔容積が0.22cm
3/gであるベータ型ゼオライト(結晶性シリケート(最大の細孔:酸素12員環))であった。
図1に本実施例の吸着材(ベータ型ゼオライト)のNMRスペクトルを示す。なお、原料組成物におけるAl/Siは特定できなかった(検出限界以下であった)のに対し、得られたベータ型ゼオライトのSiO
2/Al
2O
3モル比は特定できているが、これは、シリカ源(TEOS)に不可避的不純物として含まれるアルミニウムや種結晶に含まれるアルミニウムが、原料組成物の結晶化(つまり、原料組成物の濃縮)によって検出できるようになったことが原因と考えられた。
【0097】
実施例2
TEOS及びTEA水酸化物35質量%水溶液の混合時にホウ酸(富士フィルム和光純薬社製)を追加で混合し、以下のモル組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例1と同様な方法でゼオライトを得、本実施例の吸着材とした。
Al/Si比<0.001(検出下限以下)
B/Si比 = 0.02
TEA/Si比 = 0.56
Na/Si比 < 0.01(検出下限以下)
K/Si比 < 0.01(検出下限以下)
H2O/Si比 = 7.5
F/Si比 = 0.56
OH/Si比 < 0.01(検出下限以下)
【0098】
得られたゼオライトはSiO2/Al2O3モル比が24900、SiO2/B2O3モル比が140、Q4(0Al)比率が100%、Na2O含有量が170質量ppm、K2O含有量が9.7質量ppm、BET値が501m2/g、及び細孔容積が0.21cm3/gであるベータ型ゼオライト(結晶性ボロシリケート(最大の細孔:酸素12員環))であった。なお、原料組成物におけるAl/Siは特定できなかった(検出限界以下であった)のに対し、得られたベータ型ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比は特定できているが、これは、シリカ源(TEOS)に不可避的不純物として含まれるアルミニウムや種結晶に含まれるアルミニウムが、原料組成物の結晶化(つまり、原料組成物の濃縮)によって検出できるようになったことが原因と考えられる。
【0099】
比較例1
テトラプロピルアンモニウム(以下、「TPA」ともいう。)水酸化物水溶液(Aldrich社製、濃度:1.03mmol/g、K2O含有量:3500質量ppm)、フュームドシリカ(Cabot社製、Cab-O-Sil M5)を混合し、内容積23mLの密閉容器に密閉して80℃、2時間で撹拌し、以下のモル組成を有する原料組成物を得た。
Al/Si比<0.001(検出下限以下)
B/Si比<0.001(検出下限以下)
TPA/Si比 = 0.24
Na/Si比 < 0.01(検出下限以下)
K/Si比 = 0.02
H2O/Si比 = 10.2
F/Si比 < 0.01(検出下限以下)
OH/Si比 = 0.26
【0100】
原料組成物を、種結晶を加えずに、内容積23mLのPTFE内筒ステンレス製オートクレーブに密閉し、20rpmで回転させながら135℃で21時間熱処理した。熱処理後の生成物を固液分離し、得られた固形分の50質量倍の純水で洗浄した。洗浄後の固形分を大気中、100℃で24時間乾燥した後、大気中、600℃、6時間で焼成し、ゼオライトを得、本比較例の吸着材とした。
【0101】
得られたゼオライトはSiO
2/Al
2O
3モル比が3340、Q4(0Al)比率が97.7%、Na
2O含有量が1100質量ppm、K
2O含有量が9670質量ppm、BET値が262m
2/g及び細孔容積が0.119cm
3/gであるMFI型ゼオライト(結晶性シリケート(最大の細孔:酸素10員環))であった。
図1に本比較例の吸着材(MFI型ゼオライト)のNMRスペクトルを示す。なお、原料組成物におけるAl/Siは特定できなかった(検出限界以下であった)のに対し、得られたMFI型ゼオライトのSiO
2/Al
2O
3モル比は特定できているが、これは、シリカ源(フュームドシリカ)に不可避的不純物として含まれるアルミニウムが、原料組成物の結晶化(つまり、原料組成物の濃縮)によって検出できるようになったことが原因と考えられた。
【0102】
比較例2
TEOS及びTEA水酸化物35質量%水溶液とともに、非晶質水酸化アルミニウム(Aldrich社製)を混合し、以下のモル組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例1と同様の方法でゼオライトを得、本比較例の吸着材とした。
Al/Si比 = 0.0167
B/Si比<0.001(検出下限以下)
TEA/Si比 = 0.56
Na/Si比 < 0.01(検出下限以下)
K/Si比 < 0.01(検出下限以下)
H2O/Si比 = 7.5
F/Si比 = 0.56
OH/Si比 < 0.01(検出下限以下)
【0103】
得られたゼオライトはSiO
2/Al
2O
3モル比が135、Q4(0Al)比率が94.4%、Na
2O含有量が83.3質量ppm、K
2O含有量が8.3質量ppm、BET値が526m
2/g及び細孔容積が0.21cm
3/gであるベータ型ゼオライト(結晶性アルミノシリケート(最大の細孔:酸素12員環))であった。
図1に本比較例の吸着材(ベータ型ゼオライト)のNMRスペクトルを示す。
【0104】
比較例3
コロイダルシリカ(製品名:Ludox AS-40、Aldrich社製)、(1-アダマンチル)トリメチルアンモニウム(以下、「ATMA」ともいう。)水酸化物25質量%水溶液(SACHEM社製)及びフッ化水素酸46質量%水溶液(富士フィルム和光純薬社製)を混合して25℃で24時間撹拌し、以下のモル組成を有する原料組成物を得た。
Al/Si比<0.001(検出下限以下)
B/Si比<0.001(検出下限以下)
ATMA/Si比 = 1.10
Na/Si比 < 0.01(検出下限以下)
K/Si比 < 0.01(検出下限以下)
H2O/Si比 = 5.3
F/Si比 = 1.10
OH/Si比 < 0.01(検出下限以下)
【0105】
原料組成物を内容積23mLのPTFE内筒ステンレス製オートクレーブに密閉し、5rpmで回転させながら175℃で144時間熱処理した。熱処理後の生成物を固液分離し、得られた固形分の50質量倍の純水で洗浄した。洗浄後の固形分を大気中、80℃で24時間乾燥した後、大気中、600℃、10時間で焼成し、ゼオライトを得、本比較例の吸着材とした。
【0106】
得られたゼオライトはSiO2/Al2O3モル比が5570、Q4(0Al)比率が91.0%、Na2O含有量が150質量ppm、K2O含有量が8.6質量ppm、BET値が663m2/g及び細孔容積が0.24cm3/gであるCHA型ゼオライト(結晶性シリケート(最大の細孔:酸素8員環))であった。なお、原料組成物におけるAl/Siは特定できなかった(検出限界以下であった)のに対し、得られたCHA型ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比は特定できているが、これは、シリカ源(コロイダルシリカ)に不可避的不純物として含まれるアルミニウムが、原料組成物の結晶化(つまり、原料組成物の濃縮)によって検出できるようになったことが原因と考えられた。
【0107】
比較例4
TEOS(純度99%以上、キシダ化学社製)、ATMA水酸化物25質量%水溶液(SACHEM社製)を混合し、60℃のホットプレート上で90分間混合した。次に、フッ化水素酸46質量%水溶液(富士フィルム和光純薬社製)を加え混合し、以下のモル組成を有する原料組成物を得た。
Al/Si比<0.001(検出下限以下)
B/Si比<0.001(検出下限以下)
ATMA/Si比 = 0.50
Na/Si比 < 0.01(検出下限以下)
K/Si比 < 0.01(検出下限以下)
H2O/Si比 = 10
F/Si比 = 0.50
OH/Si比 < 0.01(検出下限以下)
【0108】
原料組成物を内容積23mLのPTFE内筒ステンレス製オートクレーブに密閉し、60rpmで回転させながら150℃で360時間熱処理した。熱処理後の生成物を固液分離し、得られた固形分の50質量倍の純水で洗浄した。洗浄後の固形分を大気中、100℃で24時間乾燥した後、大気中、600℃、6時間で焼成し、ゼオライトを得、本比較例の吸着材とした。
【0109】
得られたゼオライトはSiO2/Al2O3モル比が40900、Q4(0Al)比率が93.1%、Na2O含有量が18.4質量ppm及びK2O含有量が8.2質量ppmであるSTT型ゼオライト(結晶性シリケート(最大の細孔:酸素9員環))であった。なお、原料組成物におけるAl/Siは特定できなかった(検出限界以下であった)のに対し、得られたSTT型ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比は特定できているが、これは、シリカ源(TEOS)に不可避的不純物として含まれるアルミニウムが、原料組成物の結晶化(つまり、原料組成物の濃縮)によって検出できるようになったことが原因と考えられた。
【0110】
比較例5
TEOS及びTEA水酸化物35質量%水溶液とともに、非晶質水酸化アルミニウム(Aldrich社製)を混合し、以下のモル組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例1と同様の方法でゼオライトを得、本比較例の吸着材とした。
Al/Si比 = 0.002
B/Si比<0.001(検出下限以下)
TEA/Si比 = 0.56
Na/Si比 < 0.01(検出下限以下)
K/Si比 < 0.01(検出下限以下)
H2O/Si比 = 7.5
F/Si比 = 0.56
OH/Si比 < 0.01(検出下限以下)
【0111】
得られたゼオライトはSiO2/Al2O3モル比が940、Q4(0Al)比率が100%、Na2O含有量が14質量ppm、K2O含有量が9質量ppm、BET値が490m2/g及び細孔容積が0.20cm3/gであるベータ型ゼオライト(結晶性アルミノシリケート(最大の細孔:酸素12員環))であった。
【0112】
比較例6
ベータ型ゼオライト(製品名:HSZ(登録商標)-990HOA、東ソー社製)を本比較例の吸着材とした。本ゼオライトはSiO2/Al2O3モル比が1700、Q4(0Al)比率が73.7%、Na2O含有量が1質量ppm未満(検出下限以下)及びK2O含有量が1質量ppm以下(検出下限以下)、BET値が462m2/g及び細孔容積が0.22cm3/gであるベータ型ゼオライト(結晶性アルミノシリケート(最大の細孔:酸素12員環))であった。
【0113】
比較例7
MFI型ゼオライト(製品名:HSZ(登録商標)-893HOA、東ソー社製)を本比較例の吸着材とした。本ゼオライトはSiO2/Al2O3モル比が2120、Q4(0Al)比率が99.0%、Na2O含有量が14.6質量ppm及びK2O含有量が1質量ppm以下(検出下限以下)であるMFI型ゼオライト(結晶性シリケート(最大の細孔:酸素10員環))あった。
【0114】
比較例8
コロイダルシリカ(製品名:SH-3、扶桑化学工業社製)、ATMA水酸化物25質量%水溶液(SACHEM社製)、48%水酸化ナトリウム水溶液を混合し、以下のモル組成を有する原料組成物を得た。
Al/Si比 < 0.001(検出下限以下)
B/Si比 < 0.001(検出下限以下)
ATMA/Si比 = 0.20
Na/Si比 = 0.20
K/Si比 < 0.01(検出下限以下)
H2O/Si比 = 40
F/Si比 < 0.01(検出下限以下)
OH/Si比 =0.40
【0115】
原料組成物を内容積80mLのステンレス製オートクレーブに密閉し、20rpmで回転させながら170℃で60時間熱処理した。熱処理後の生成物を固液分離し、得られた固形分の50質量倍の純水で洗浄した。洗浄後の固形分を大気中、110℃で24時間乾燥した後、20体積%の水蒸気濃度下で750℃、2時間で焼成し、ゼオライトを得、本比較例の吸着材とした。
【0116】
得られたゼオライトはSiO2/Al2O3モル比が2250、Q4(0Al)比率が97.8%、Na2O含有量が163000質量ppm、K2O含有量が480質量ppm、BET値が232m2/g及び細孔容積が0.08cm3/gであるAFI型ゼオライト(結晶性シリケート(最大の細孔:酸素12員環))であった。なお、原料組成物におけるAl/Siは特定できなかった(検出限界以下であった)のに対し、得られたAFI型ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比は特定できているが、これは、シリカ源(フュームドシリカ)に不可避的不純物として含まれるアルミニウムが、原料組成物の結晶化(つまり、原料組成物の濃縮)によって検出できるようになったことが原因と考えられた。
【0117】
比較例9
フュームドシリカ(Cabot社製、Cab-O-Sil M5)9.3g、26質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液16.4g及び水9.8gを混合し、1時間撹拌した。得られた原料組成物を内容積125mLのPTFE内筒ステンレス製オートクレーブに密閉し、静置条件で170℃で15日間熱処理した。熱処理後の生成物を固液分離し、純水で洗浄した。洗浄後の固形分を大気中、100℃で12時間乾燥した。得られた生成物は、層状シリケートPLS-1(以下、単に「PLS-1」ともいう)であった。
【0118】
該PLS-1の0.50gに対し、0.3mol/L塩酸25.1g及びジクロロジメチルシラン0.17gを混合し、得られた原料組成物を内容積23mLのPTFE内筒ステンレス製オートクレーブに密閉し、静置条件で170℃で24時間熱処理した。熱処理後の生成物を固液分離し、純水で洗浄した。洗浄後の固形分を大気中、80℃で20時間乾燥し、生成物を得、これを本比較例の吸着材とした。
【0119】
得られた生成物は、層状シリケートIEZ-1(以下、単に「IEZ-1」ともいう)であった。該IEZ-1は、SiO2/Al2O3モル比が38700、Q4(0Al)比率が85.1%、Na2O含有量が31.0質量ppm及びK2O含有量が47.1質量ppmであった。
【0120】
比較例10
比較例9で得られたIEZ-1を大気中、500℃、6時間で焼成して、焼成物を得、これを本比較例の吸着材とした。得られた焼成物は、層状シリケートIEZ-2(以下、単に「IEZ-2」ともいう)であった。該IEZ-2は、SiO2/Al2O3モル比が38700、Q4(0Al)比率が77.4%、Na2O含有量が31.0質量ppm、K2O含有量が47.1質量ppm以下(検出下限以下)であった。
【0121】
比較例11
非特許文献2に記載される、ZIF-8の骨格構造を有する金属有機構造体(ACS Materials社製)を本比較例の吸着材とした。
【0122】
実施例及び比較例の吸着材をプロパン・プロピレン吸着評価した結果を下表に示す。なお、下記表1において、K
1/K
2は、吸着平衡定数K
1を吸着平衡定数K
2で除した値である。
【表1】
※比較例11では、測定圧力0.1kPa以上15kPa未満の領域でラングミュアプロットが適用できなかったため、15kPa以上40kPa以下の領域で解析を行った。
【0123】
表1より、実施例1~2の吸着材は比較例1~3及び比較例5~11の吸着材よりK1/K2が大きいことがわかる。K1/K2は、プロピレンに対してプロパンをどの程度吸着しやすいかを表す指標であり、K1/K2が1.00以上であることでプロピレンよりもプロパンを吸着しやすいことを意味し、K1/K2が1.00より大きくなるほどプロパンがプロピレンよりもさらに吸着しやすくなることを意味する。このため、K1/K2が1.00以上であり、且つ、比較例1~3及び比較例5~11よりもK1/K2が大きい実施例1~2は、比較例1~3及び比較例5~11と比較して、プロピレンよりもプロパンをさらに吸着しやすいことが理解できる。また、実施例1~2の吸着材は比較例1~3及び比較例5~11の吸着材よりプロパン有効吸着量が大きいことも理解できる。