(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017063
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】パスタ粉砕物を配合したパスタの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20250129BHJP
【FI】
A23L7/109 E
A23L7/109 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119939
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】下宮 豪介
(72)【発明者】
【氏名】新海 陽介
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA06
4B046LB03
4B046LC01
4B046LC17
4B046LE02
4B046LE16
4B046LG29
4B046LG60
4B046LP02
4B046LP03
4B046LP22
4B046LP34
4B046LP42
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来の乾燥パスタの煮崩れのない外観を維持しながらも、滑らかさや風味を感じやすい乾燥パスタを提供することを課題とする。
【解決手段】下記工程(1)粉砕物用乾燥パスタを粉砕し、D50が220μm以下、かつ、損傷澱粉が7~22質量%の乾燥パスタ粉砕物を得る工程、(2)工程(1)で得られた乾燥パスタ粉砕物と小麦粉砕物を混合する工程であって、前記乾燥パスタ粉砕物の量が、前記乾燥パスタ粉砕物と前記小麦粉砕物との合計に対して4~32質量%である、前記工程、及び(3)工程(2)で得られた混合物を用いて乾燥パスタを製造する工程を含む、乾燥パスタの製造方法により上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程
(1)粉砕物用乾燥パスタを粉砕し、D50が220μm以下、かつ、損傷澱粉が7~22質量%の乾燥パスタ粉砕物を得る工程、
(2)工程(1)で得られた乾燥パスタ粉砕物と小麦粉砕物を混合する工程であって、前記乾燥パスタ粉砕物の量が、前記乾燥パスタ粉砕物と前記小麦粉砕物との合計に対して4~32質量%である、前記工程、及び
(3)工程(2)で得られた混合物を用いて乾燥パスタを製造する工程を含む、乾燥パスタの製造方法。
【請求項2】
前記小麦粉砕物が、デュラム小麦粉砕物である、請求項1に記載の乾燥パスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパスタ粉砕物を配合したパスタの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パスタは主にデュラムセモリナを用いて製造される。デュラムセモリナはデュラム小麦の製粉工程において得られる比較的粒度の粗い状態の胚乳の粉砕物を指し、一般的には目開き約300μmの篩を抜けない程度の粗さのものをいう。このセモリナの粒度の粗さが、パスタの煮崩れがない良い外観にするために重要である。一方で、前記のような粗い粒度分布のデュラムセモリナを使用したパスタは、その粒子の大きさが原因で滑らかさが感じられず、また粒子が大きいことで損傷澱粉が少なくなり、損傷澱粉の少なさが原因で風味を感じにくいという課題がある。そこで煮崩れのない外観を維持しながらも、滑らかさや風味を感じやすいパスタの製造方法が求められていた。
麺類に使用する原料によって麺類を改質する方法について、例えば特許文献1にはパスタの製造に用いる穀粉を含有する原料に所定量の乾熱処理したデュラムふすまを混合することでふすま特有の穀物臭が抑えられた、食感がなめらかであり、かつ、粒感の少ない、食物繊維等の栄養成分に富むパスタを提供出来ることが開示されている。しかしながら特許文献1ではパスタ粉砕品を混合することについては検討されていない。また特許文献2には、乾燥パスタ粉砕物を5~80重量%含有する穀粉原料を用いて製麺することにより、硬さと粘弾性に富んだ食感と、自然な黄色みと豊かな風味を有する麺類(具体的には中華麺)を提供出来ることが開示されている。しかしながら、特許文献2では乾燥パスタ粉砕物の粒子径や損傷澱粉の量についての記載はない。
煮崩れのない外観を維持しながらも、滑らかさや風味を感じやすいパスタの製造方法についてさらなる改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-129712
【特許文献2】特開2002-291430
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、従来の乾燥パスタの煮崩れのない外観や滑らかさを維持しながら、風味を感じやすい乾燥パスタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、工程(1)粉砕物用乾燥パスタを粉砕し、D50が220μm以下、かつ、損傷澱粉が7~22質量%の乾燥パスタ粉砕物を得る工程、(2)工程(1)で得られた乾燥パスタ粉砕物と小麦粉砕物を混合する工程であって、前記乾燥パスタ粉砕物の量が、前記乾燥パスタ粉砕物と前記小麦粉砕物との合計に対して4~32質量%である、前記工程、及び(3)工程(2)で得られた混合物を用いて乾燥パスタを製造する工程を含む、乾燥パスタの製造方法により、従来の乾燥パスタの煮崩れのない外観や滑らかさを維持しながらも、風味を感じやすい乾燥パスタを提供することが出来ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]下記工程
(1)粉砕物用乾燥パスタを粉砕し、D50が220μm以下、かつ、損傷澱粉が7~22質量%の乾燥パスタ粉砕物を得る工程、
(2)工程(1)で得られた乾燥パスタ粉砕物と小麦粉砕物を混合する工程であって、前記乾燥パスタ粉砕物の量が、前記乾燥パスタ粉砕物と前記小麦粉粉砕物との合計に対して4~32質量%である、前記工程、及び
(3)工程(2)で得られた混合物を用いて乾燥パスタを製造する工程を含む、乾燥パスタの製造方法。
[2]前記小麦粉砕物が、デュラム小麦粉砕物である、請求項1に記載の乾燥パスタの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来の乾燥パスタの煮崩れのない外観を維持しながらも、滑らかさや風味を感じやすい乾燥パスタを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(乾燥パスタの製造方法)
本発明の乾燥パスタの製造方法は、工程(1)粉砕物用乾燥パスタを粉砕し、D50が220μm以下、かつ、損傷澱粉が7~22質量%の乾燥パスタ粉砕物を得る工程、(2)工程(1)で得られた乾燥パスタ粉砕物と小麦粉砕物を混合する工程であって、前記乾燥パスタ粉砕物の量が、前記乾燥パスタ粉砕物と前記小麦粉砕物との合計に対して4~32質量%である、前記工程、及び(3)工程(2)で得られた混合物を用いて乾燥パスタを製造する工程を含む。
【0008】
(乾燥パスタ粉砕物及び乾燥パスタ粉砕物を得る工程)
乾燥パスタ粉砕物を得るための乾燥パスタ(以下、「粉砕物用乾燥パスタ」という)は、従来公知の方法で製造されたものでよく、穀粉原料に加水をした後混合し、減圧下で押出成型した後乾燥することによって得られる乾燥パスタが挙げられる。ここで乾燥パスタ粉砕物を得るための乾燥パスタの穀粉原料としては、デュラム小麦粉砕物であるデュラムセモリナあるいはファリナの他、強力粉等の小麦粉等を挙げることができ、好ましくはデュラムセモリナである。
粉砕物用乾燥パスタは常法で製造及び乾燥されていればその形状は制限されず、例えば市販の製品以外にも乾燥後に麺の端を切った切断片、U字型の切断片等も使用することができる。
前記粉砕物用乾燥パスタを粉砕機等で粉砕することにより、乾燥パスタ粉砕物を得ることができる。粉砕前に加湿をすることで、粉砕後の目的の損傷澱粉量とD50に調整する。損傷澱粉は粉砕時の熱や物理的な衝撃によって発生する。一般的に、粒度を細かくしようとすると、粉砕時の物理的な衝撃が大きくなることで熱が発生しやすくなり、損傷澱粉も多くなるが、加湿をすることで粉砕時の熱が気化熱に代わり、熱による澱粉の損傷を防ぐことができる。例えば、粒度は同じだが損傷澱粉量が異なる各段階の乾燥パスタ粉砕物を調製する際には、粉砕前の粉砕物用乾燥パスタへの段階的な加湿により、水分含量を増やしたパスタ(水分含量10~37質量%)を粉砕する手法が挙げられる。粉砕機は、目的の損傷澱粉量とD50に粉砕できれば特に制限されず、一般的な乾麺の粉砕機であるハンマーミルやピンミル、ロールいずれも選択できるが、粒度を小さく、かつ損傷澱粉量を少なく粉砕する必要があることから、比較的損傷澱粉を少なく、かつ粒度を小さく粉砕できる気流粉砕機が好ましい。
乾燥パスタ粉砕物のD50が小さいほど、乾燥パスタ粉砕物入り乾燥パスタの食感が滑らかであり、好ましい。乾燥パスタ粉砕物のD50は220μm以下であり、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。製造コストの観点から乾燥パスタ粉砕物のD50は好ましくは50μm以上であり、より好ましくは100μm以上、さらに好ましくは150μm以上である。乾燥パスタ粉砕物のD50が220μm以下であることにより食感の滑らかさが維持される。
また、乾燥パスタ粉砕物の損傷澱粉量は7~22質量%であり、好ましくは8~17質量%、より好ましくは9~15質量%、更に好ましくは10~13質量%である。乾燥パスタ粉砕物の損傷澱粉量が本願所定の範囲にあれば、従来の乾燥パスタの煮崩れのない外観を維持しながら甘みなどの良好な風味を感じやすい乾燥パスタを提供することができる。後述するように損傷澱粉量が少ないと甘みを感じにくくなる傾向があり、損傷澱粉量が多いと茹で時の煮崩れ量が多くなり外観が不適となる傾向にある。
【0009】
(D50)
本発明における粒度分布及び粒径は湿式で測定した体積基準であり、D50(平均粒径、50%積算粒子径、メディアン径とも称される)は粒子径積算分布曲線において粒子の小さい方から積算した積算50%における粒径を表す。体積基準の粒子径の測定は、公知のレーザー回折・散乱法で測定することができ、その様な装置として、具体的には例えば粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、MT3000)等を使用することができる。
【0010】
(損傷澱粉)
本発明における損傷澱粉とは、粉砕時の熱や衝撃で損傷を受けた生澱粉のことである。一般的に、粉砕物のD50が小さいほど粉砕物に大きな物理的衝撃が加わっているため、損傷澱粉量が多い傾向にある。また、損傷を受けた澱粉粒は損傷を受けていない澱粉粒に比べて、酵素による影響を受けやすい。このため、損傷澱粉量が多いほど、口腔内での唾液中の酵素によって澱粉から糖への分解が進みやすく、甘さを感じやすくなる。また、損傷澱粉は損傷を受けていない澱粉に比べて、加熱時に吸水して膨潤しやすく、麺表面の煮崩れに繋がり、外観に悪影響を及ぼす。
このような損傷澱粉の量は、AACC法によれば、物理的な損傷を受けた生澱粉がα-アミラーゼによって分解され易いことを利用して測定することができる。具体的には、損傷澱粉を含む穀粉等を一定条件下でα-アミラーゼ処理することにより産生してきたマルトースを定量し、計算により、損傷澱粉量として換算されるものである。損傷澱粉の量は、AACC法76-31.01に従って測定されてもよい。測定には市販されている測定キットを用いて測定することができ、例えばMegaZyme製のStarch Damage Assay Kit等が挙げられる。
【0011】
(小麦粉砕物)
小麦粉砕物を得るための小麦穀粒は公知のものであればよく、具体的には、食用に使用される品種又は銘柄の小麦穀粒であれば産地を問わずいずれも好適に使用でき、例えば、ダーク・ノーザン・スプリング(DNS)、ハード・レッド・ウインター(HRW)、ハード・レッド・スプリング(HRS)、No.1カナダ・ウェスタン・レッド・スプリング(1CW)、ウエスタン・ホワイト(WW)、プライム・ハード(PH)、オーストラリア・スタンダード・ホワイト(ASW)、デュラム小麦、きたほなみ、ゆめちから、ミナミノカオリ、シロガネコムギ、バーミュード、アルルカン、アパシェ等が挙げられる。好ましくはデュラム小麦である。単独の品種又は2種以上の異なる品種を配合したものでもよい。
小麦穀粒を粉砕する手法としては特に限定されず、ロール式粉砕、衝撃式粉砕、臼式粉砕等の公知の粉砕方法を採用することができる。
小麦粉砕物の性質は特に限定されないが、好ましくは水分が10~16質量%、より好ましくは水分が11~15.5質量%、更に好ましくは水分が12~14.5質量%である。
小麦粉砕物は好ましくは灰分が0.30~1.00質量%であり、より好ましくは灰分が0.40~0.80質量%、更に好ましくは灰分が0.50~0.70質量%である。
小麦粉砕物は好ましくは蛋白質量が8.0~15.0質量%、より好ましくは蛋白質量が10~15.0質量%、更に好ましくは蛋白質量が12.0~15.0質量%である。
小麦粉砕物は好ましくはD50が50~400μm、より好ましくはD50が50~350μm、更に好ましくはD50が50~300μmである。
小麦粉砕物は好ましくは損傷澱粉量が2~10質量%、より好ましくは損傷澱粉量が3~8質量%、更に好ましくは損傷澱粉量が4~6質量%である。
【0012】
(乾燥パスタ粉砕物と小麦粉砕物を混合する工程)
乾燥パスタ粉砕物と小麦粉砕物を混合する工程は公知の方法によって行うことができる。例えばミキサーなどを使用して行うことができる。乾燥パスタ粉砕物と小麦粉砕物を混合する工程において、任意に加水しても良い。
乾燥パスタ粉砕物の小麦粉砕物への配合量は、乾燥パスタ粉砕物と前記小麦粉砕物との合計に対して4~32質量%であることが食感とグルテン形成の観点から好ましい。より好ましくは10~30質量%、更に好ましくは15~25質量%である。
配合量が本願所定の範囲の場合には従来の乾燥パスタの煮崩れのない外観を維持しながらも、滑らかさや風味を感じやすい乾燥パスタを提供することができる。配合量が4質量%より少なくなるにつれて風味の改善効果が十分でない傾向にあり、また配合量が35質量%より多くなるにつれて、加水混合時にパスタ粉砕物の存在のグルテンの形成阻害への影響が大きくなる傾向にあり、茹でパスタの煮崩れが起こりやすくなる傾向にある。
【0013】
(乾燥パスタ粉砕物と小麦粉砕物の混合物を用いて乾燥パスタを製造する工程)
乾燥パスタ粉砕物と小麦粉砕物の混合物を用いて乾燥パスタを製造する工程は、穀粉原料を用いて乾燥パスタを製造する従来公知の方法に従うものとし、特に限定されない。例えば乾燥パスタ粉砕物と小麦粉砕物の混合と同時に加水混合し、または乾燥パスタ粉砕物と小麦粉砕物の混合物に加水混合してそぼろ状の粗生地を得たのち、前記粗生地を減圧下で押出成型した後水分量14質量部以下になるまで調湿乾燥することによって得ることができる。乾燥パスタの製造及び乾燥の条件は従来公知の方法に従うものとし、特に制限されない。
乾燥パスタ粉砕物と小麦粉砕物の混合物以外に、大豆蛋白質、卵黄粉、卵白粉、全卵粉、脱脂粉乳等の小麦蛋白以外の蛋白質素材;動物油脂、植物油脂、硬化油脂、粉末油脂等の油脂類;かんすい、ミネラル等の無機塩類、食物繊維;膨張剤;乳化剤;糖類;甘味料;香辛料;調味料;ビタミン類;色素;香料;デキストリン等の澱粉分解物などの副原料を本発明の効果を損なわない範囲内で使用することができる。
本発明において、乾燥パスタの形状としてスパゲッティ、バーミセリー、スパゲッティーニ、フェデリーニ、カッペリーニ、ズイーテ、パッパルデーレ、ラザニエッテリッチェ、タリアテッレ、スベルチーニ、リングイーネ、ブカティーニなどのロングパスタ、マカロニ、マニケ、リガトーニ、カバタッピ、スピラーレ、ルオーテ、ルマキーネ、カペレッティ、フンギーニ、ペンネ、コンキリエ、ファルファッレ、フジッリなどのショートパスタが例としてあげられるがこれらに限定されない。
【実施例0014】
以下本発明を具体的に説明する為に実施例を示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0015】
<製造例1 乾燥パスタ粉砕物の製造>
市販の乾燥パスタであるオーマイスパゲッティ1.7mm(ニップン社製)に対し、参考文献(The Effect of Flour Particle Size on Baking Quality and Other Flour Attributes. (Y.Kurimoto, D.R.Shelton, Cereal Foods World 1988: Vol 33 429-433)を参考にパスタを水に浸漬し、その浸漬時間を調整することで、水分含量10、13、15、17、20、25、30、35%の水分含量が異なる粉砕物用乾燥パスタを調製した。前記水分含量の異なる粉砕物用乾燥パスタを気流粉砕機の回転数と試料の供給速度、粉砕回数を調節することで目的のD50と損傷澱粉量になるように粉砕し、いずれの粉砕物もアルミトレーの上に拡げて水分値10%になるまで40℃の恒温槽で風乾し、表1、2に示した乾燥パスタ粉砕物A~Jを得た。
【0016】
【0017】
【0018】
<製造例2 乾燥パスタ粉砕物入り乾燥パスタの製造>
製造例1で製造した乾燥パスタ粉砕物と小麦粉砕物(デュラム小麦粉砕物、ニップン社製。D50:300μm、損傷澱粉量7.2%)及び水を配合表1に従って配合し、ミキサー(スズキ麺工社製)に投入し、13分間ミキシングしてそぼろ状の粗生地を得た。前記粗生地を押出機(イタルパスタ社製)で押出圧10MPaで押出し、直径1.7mm、長さ250mmのスパゲッティ状麺線を得た。前記スパゲティ状麺線を恒温恒湿槽で平均湿度75%、平均温度80℃で乾燥し、乾燥パスタ粉砕物入り乾燥パスタ(水分含量11質量%)を得た。
【0019】
【0020】
<評価例1 乾燥パスタ粉砕物入り乾燥パスタの官能評価>
得られた乾燥パスタ粉砕物入り乾燥パスタを、麺線の質量の約15倍の茹で水(DL-リンゴ酸(富士フイルム和光純薬社製)でpHを5.5~6.0に調整)で8分間茹でて湯切りし、茹でパスタを得た。得られた茹でパスタを10名の熟練パネラーにより、以下の評価基準表1に従って評価した。
【0021】
【0022】
<試験例1 乾燥パスタ粉砕物のD50の検討>
表3に示すD50になるように製造例1に従って乾燥パスタ粉砕物を製造し、各粒度の乾燥パスタ粉砕物を配合して製造例2に従って製造した乾燥パスタ粉砕物入り乾燥パスタを、それぞれ評価例1に従って評価した結果を表3に示す。また、対照例として、乾燥パスタ粉砕物は配合せず、製造例2に従って製造した乾燥パスタを評価基準とし、外観を4点、滑らかさ、風味を3点として評価した(対照例1)。
乾燥パスタ粉砕物の損傷澱粉量が同じ場合は、乾燥パスタ粉砕物のD50が大きくなるほど滑らかさ、風味の評価が低くなり(実施例1~4)、250μm以上で不適となった(比較例1)。そのため、乾燥パスタ粉砕物のD50は220μm以下が好ましいと考えられた。
また、参考例1では、D50が300μm、損傷澱粉量7.2%の小麦粉砕物Aを85質量%と、D50が101μm、損傷澱粉量10.0%の小麦粉砕物Bを15質量%混合した原料で製造例2に従って乾燥パスタを製造し、評価した。参考例1のように小麦粉砕物のみで製造した乾燥パスタは許容範囲であったが、参考例1の小麦粉砕物Bと同程度のD50及び損傷澱粉である乾燥パスタ粉砕物Bを混合した実施例2の風味に比べ劣っていた。この結果から、D50が220μm以下の乾燥パスタ粉砕物を混合することで乾燥パスタの滑らかさと風味が向上することが確認できた。
【0023】
表3
*小麦粉砕物AのD50は300μm、損傷澱粉量は7.2%である。
**小麦粉砕物BのD50は101μm、損傷澱粉量は10.0%である。
【0024】
<試験例2 乾燥パスタ粉砕物の損傷澱粉量の検討>
D50が同じで損傷澱粉量が異なる乾燥パスタ粉砕物を製造例1に従って製造し、製造例2に従って乾燥パスタ粉砕物入り乾燥パスタを製造し、評価例1に従って評価を行った結果を表4に示す。
乾燥パスタ粉砕物の損傷澱粉量が多くなるほど煮崩れにより外観評価が下がり(実施例5~8)、25%以上では、外観が不適であった(比較例3)。また、風味は損傷澱粉量が少なくなるほど甘みが不足して評価は下がり(実施例5~8)、5%以下では、甘み不足で不適であった(比較例2)。そのため、乾燥パスタ粉砕物の損傷澱粉量は7~22%が好ましいと考えられた。
【0025】
表4
*小麦粉砕物のD50は100μm、損傷澱粉量は10.2%である。
【0026】
<試験例3 乾燥パスタ粉砕物の配合量の検討>
製造例1に従って製造した乾燥パスタ粉砕物Bを使用して、配合量を表3に記載の通りに変更した以外は製造例2に従って乾燥パスタ粉砕物入り乾燥パスタを製造し、評価例1に従って評価した結果を表5に示す。
乾燥パスタ粉砕物の配合割合が多いほど風味がよくなったが(実施例9~14)、2質量%以下の配合では参考例1と変わらず風味の改良効果は見られなかった(比較例4)。外観は、配合割合が多いほど評価が下がり、35質量%以上の配合で不適であった(比較例5)。そのため、乾燥パスタ粉砕物の配合量は4質量%以上32質量%以下が好ましいと考えられた。
【0027】
表5
*小麦粉砕物のD50は100μm、損傷澱粉量は10.2%である。