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特開2025-17142化合物、蛍光色素剤、キット、細胞膜の検出方法、及び、染色用材料
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017142
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】化合物、蛍光色素剤、キット、細胞膜の検出方法、及び、染色用材料
(51)【国際特許分類】
   C07D 211/62 20060101AFI20250129BHJP
   C07D 403/14 20060101ALI20250129BHJP
   C07D 295/155 20060101ALI20250129BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20250129BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20250129BHJP
   G01N 1/30 20060101ALI20250129BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
C07D211/62
C07D403/14 CSP
C07D295/155
A61K49/00
C09K11/06
G01N1/30
G01N21/64 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120050
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】504174180
【氏名又は名称】国立大学法人高知大学
(71)【出願人】
【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仁子 陽輔
(72)【発明者】
【氏名】上村 拓巳
(72)【発明者】
【氏名】関 仁望
(72)【発明者】
【氏名】川上 良介
(72)【発明者】
【氏名】村上 正基
(72)【発明者】
【氏名】津田 照子
(72)【発明者】
【氏名】今村 健志
【テーマコード(参考)】
2G043
2G052
4C063
4C085
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA16
2G043CA04
2G043CA06
2G043DA02
2G043EA01
2G043FA01
2G043FA02
2G043FA03
2G043JA01
2G043KA02
2G043LA03
2G052AA33
2G052AD32
2G052AD52
2G052FA09
2G052GA32
2G052JA03
4C063AA05
4C063BB03
4C063CC42
4C063DD06
4C063EE10
4C085HH11
4C085KB56
(57)【要約】      (修正有)
【課題】蛍光色素剤等に好適に用いることができる化合物を提供する。
【解決手段】スクアライン構造、カルボシアニン構造、メロシアニン構造、又は、多環式芳香族構造を有し、かつ、少なくとも1つ以上の下記式(1)で表される構造(1)を有する化合物。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクアライン構造、カルボシアニン構造、メロシアニン構造、又は、多環式芳香族構造を有し、かつ、少なくとも1つ以上の下記式(1)で表される構造(1)を有する化合物。
【化1】
(式(1)中、
は、置換又は非置換の、炭素数4~30のアルキル基、炭素数4~30のアルケニル基、又は、炭素数4~30のアルキニル基である。
は、置換又は非置換の、メチレン基である。Rが複数存在する場合、同一又は異なる。
は、1価のアニオンである。Xが複数存在する場合、各基は同一又は異なる。
は、1価のカチオンである。Yが複数存在する場合、各基は同一又は異なる。
n2は、1~10の整数である。n2が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
は、置換又は非置換の、メチレン基である。Rが複数存在する場合、同一又は異なる。
n3は、1~10の整数である。n3が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
Lは、リンカーを示す。
*は、結合箇所を示す。)
【請求項2】
少なくとも1つのXは、-SO 、又は、-COOである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
少なくとも1つのYは、H、アルカリ金属カチオン、又は、アンモニウムカチオンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
分子中に、上記構造(1)は、1つ又は2つ含まれる、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Lは、置換又は非置換の、炭素数1~20の炭化水素基(一部ヘテロ原子で置換されているものも含む)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
n2は、1~4の整数である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
n3は、1~4の整数である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
前記多環式芳香族構造は、ナフタレン構造、アントラセン構造、フェナンスレン構造、ピレン構造、テトラセン構造、トリフェニレン構造、ペリレン構造、又は、フルオレン構造である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
下記式(2)で表される構造(2)を有する、請求項1に記載の化合物。
【化2】
【化3】
(式(2)中、
は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、炭素数5~12のアリール基、炭素数5~12のヘテロアリール基、ハロゲン原子、又は、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄若しくはハロゲンからなる群より選ばれる原子を1種以上含む親水性置換基である。
n4は、それぞれ独立して、0~4の整数である。n4が2以上の場合、Rは同一又は異なる。
Lは、リンカーを示す。
Rは、上記式(3)で表される構造(3)である。
、R、X、Y、n2、R、n3、*は、それぞれ、式(1)と同様である。)
【請求項10】
下記式(4)で表される構造(4)を有する、請求項1に記載の化合物。
【化4】
【化5】
(式(4)中、
は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、炭素数5~12のアリール基、炭素数5~12のヘテロアリール基、ハロゲン原子、又は、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄若しくはハロゲンからなる群より選ばれる原子を1種以上含む親水性置換基である。
n5は、それぞれ独立して、0~4の整数である。n5が2以上の場合、Rは同一又は異なる。
lは、それぞれ独立して、1~4の整数である。
は、アニオンである。
Lは、リンカーを示す。
Rは、上記式(3)で表される構造(3)である。
、R、X、Y、n2、R、n3、*は、それぞれ、式(1)と同様である。)
【請求項11】
下記式(5)で表される構造(5)を有する、請求項1に記載の化合物。
【化6】
【化7】
(式(5)中、
n6は、1~4の整数である。nが2以上の場合、各基は同一又は異なる。
n7は、0~4の整数である。n2が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
及びRは、それぞれ独立して、置換又は非置換の、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、又は、炭素数2~6のアルキニル基であり、R及びRは、ともに1つの環構造を形成してもよい。
、又はR、少なくとも1つ以上の親水性置換基を含み、前記親水性置換基は、カルボキシル基、水酸基、スルホ基、アミノ基、アミド基、ハロゲン原子、及び、これらの塩である基からなる群より選ばれる。前記親水性置換基が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
mは、1~4の整数である。mが2以上の場合、各基は同一又は異なる。
は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、炭素数5~12のアリール基、炭素数5~12のヘテロアリール基、ハロゲン原子、又は、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄若しくはハロゲンからなる群より選ばれる原子を1種以上含む親水性置換基である。
aは、それぞれ独立して、0~4の整数である。aが2以上の場合、Rは同一又は異なる。
Lは、リンカーを示す。
Rは、上記式(3)で表される構造(3)である。
、R、X、Y、n2、R、n3、*は、それぞれ、式(1)と同様である。)
【請求項12】
下記式(6)で表される構造(6)を有する、請求項1に記載の化合物。
【化8】
【化9】
(式(6)中、
は、置換又は非置換の、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、又は、炭素数2~12のアルキニル基である。
10は、置換又は非置換の、メチレン基である。R10が複数存在する場合、同一又は異なる。
n8は、1~4の整数である。n8が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
n9は、0~4の整数である。n9が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
n10は、0~4の整数である。n10が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、炭素数5~12のアリール基、炭素数5~12のヘテロアリール基、ハロゲン原子、又は、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄若しくはハロゲンからなる群より選ばれる原子を1種以上含む親水性置換基である。
aは、それぞれ独立して、0~4の整数である。aが2以上の場合、Rは同一又は異なる。
及びR11は、それぞれ独立して、置換又は非置換の、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、又は、炭素数2~6のアルキニル基であり、R及びR11は、ともに1つの環構造を形成してもよい。R11は、1つの水素原子が-L-R基に置換されている。
、R、R11、又はその複数において、少なくとも1つ以上の親水性置換基を含み、前記親水性置換基は、カルボキシル基、水酸基、スルホ基、アミノ基、アミド基、ハロゲン原子、及び、これらの塩である基からなる群より選ばれる。前記親水性置換基が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
mは、1~4の整数である。mが2以上の場合、各基は同一又は異なる。
Lは、リンカーを示す。
Rは、上記式(3)で表される構造(3)である。
、R、X、Y、n2、R、n3、*は、それぞれ、式(1)と同様である。)
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物を含む、蛍光色素剤。
【請求項14】
細胞及び/又は組織の形態学検出用である、請求項13に記載の蛍光色素剤。
【請求項15】
生体中の細胞及び/又は組織の形態学検出用である、請求項13に記載の蛍光色素剤。
【請求項16】
生物試料の染色又は可視化用である、請求項13に記載の蛍光色素剤。
【請求項17】
生体組織中の細胞膜の染色又は可視化用である、請求項13に記載の蛍光色素剤。
【請求項18】
蛍光イメージング用である、請求項13に記載の蛍光色素剤。
【請求項19】
in vivo観察用である、請求項13に記載の蛍光色素剤。
【請求項20】
請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物を含む、キット。
【請求項21】
請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物を含む蛍光色素剤で、細胞膜を染色する工程(1)を含む、細胞膜の検出方法。
【請求項22】
前記工程(1)の後に、2種類以上の溶媒中で各々測定した蛍光スペクトルを用いて評価する工程(2)を含む、請求項21に記載の細胞膜の検出方法。
【請求項23】
前記工程(2)は、蛍光イメージングを用いて行われる、請求項22に記載の細胞膜の検出方法。
【請求項24】
請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物を含む、細胞中に存在する、又は、細胞環境をモデルとした脂質二重膜油滴若しくはタンパク質凝集体の染色用材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の検出に用いられる蛍光色素剤、それに用いることが可能な化合物、キット、細胞膜の検出方法、及び、染色用材料等に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞や組織等に検出において、例えば、腫瘍細胞の検出には、種々の染色法が用いられている。例えば、ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色は、病理診断で最も広く使用され、多くの診断法でゴールドスタンダートとされている。しかし、HE染色では、腫瘍細胞の他に正常組織も染色されて光透過性が悪くなるため、組織標本の薄切が必要となる。薄切標本は二次元的な情報しか持たないため、腫瘍細胞の分布範囲を確定するためには、多くの切片の作製と観察が必要となる。また、組織標本の作製は、高度なスキルが必要であり、煩雑で長時間を要するものである。
【0003】
さらに、HE染色では、腫瘍細胞と正常組織の境界が低コントラストで不明瞭となるケースもある。
【0004】
また、蛍光色素、放射性核種、金属粒子等を結合した抗体で特定組織を染色し、高コントラストな腫瘍細胞像を得る方法も知られている。しかし、抗体部分は細胞膜を通過しないため、膜透過性を上げるための処理が必要であり、操作が煩雑である。また、試薬も高価である。
【0005】
一方、染色用の色素を使用せずに光を照射して、異常組織と正常組織のラマン散乱の違いを利用して皮膚疾患を検出する手段も報告されている((たとえば、特許文献1参照))。しかし、ラマン散乱法では、腫瘍の領域を細胞レベルで確定することは困難であると推測される。
【0006】
また、従来の細胞膜(形質膜)を染色できる蛍光プローブは、そのほとんどは培養細胞を用いた in vitro 実験に利用されおり、生体、特にマウスを用いた in vivo 実験に利用された例は現状では極めて少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-201678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、蛍光色素剤等に好適に用いることできる化合物を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、細胞、細胞膜(形質膜)等を簡便に検出するための新たな蛍光色素剤及びキットを提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、細胞、細胞膜(形質膜)等を簡便に検出するための新たな方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、細胞中に存在する、又は、細胞環境をモデルとした脂質二重膜、油滴若しくはタンパク質凝集体等の新たな染色用材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、新規の化合物を新たに創出し、またそれらを含有する蛍光色素剤を、細胞、細胞膜や組織の染色に適用することにより、細胞、細胞膜等が簡便に検出できること等を見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は以下の化合物を提供する。
【0014】
[1]
スクアライン構造、カルボシアニン構造、メロシアニン構造、又は、多環式芳香族構造を有し、かつ、少なくとも1つ以上の下記式(1)で表される構造(1)を有する化合物。
【化1】
(式(1)中、
は、置換又は非置換の、炭素数4~30のアルキル基、炭素数4~30のアルケニル基、又は、炭素数4~30のアルキニル基である。
は、置換又は非置換の、メチレン基である。Rが複数存在する場合、同一又は異なる。
は、1価のアニオンである。Xが複数存在する場合、各基は同一又は異なる。
は、1価のカチオンである。Yが複数存在する場合、各基は同一又は異なる。
n2は、1~10の整数である。n2が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
は、置換又は非置換の、メチレン基である。Rが複数存在する場合、同一又は異なる。
n3は、1~10の整数である。n3が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
Lは、リンカーを示す。
*は、結合箇所を示す。)
【0015】
[2]
少なくとも1つのXは、-SO 、又は、-COOである、[1]に記載の化合物。
【0016】
[3]
少なくとも1つのYは、H、アルカリ金属カチオン、又は、アンモニウムカチオンである、[1]又は[2]に記載の化合物。
【0017】
[4]
分子中に、上記構造(1)は、1つ又は2つ含まれる、[1]~[3]のいずれかに記載の化合物。
【0018】
[5]
Lは、置換又は非置換の、炭素数1~20の炭化水素基(一部ヘテロ原子で置換されているものも含む)である、[1]~[4]のいずれかに記載の化合物。
【0019】
[6]
n2は、1~4の整数である、[1]~[5]のいずれかに記載の化合物。
【0020】
[7]
n3は、1~4の整数である、[1]~[6]のいずれかに記載の化合物。
【0021】
[8]
上記多環式芳香族構造は、ナフタレン構造、アントラセン構造、フェナンスレン構造、ピレン構造、テトラセン構造、トリフェニレン構造、ペリレン構造、又は、フルオレン構造である、[1]~[7]のいずれかに記載の化合物。
【0022】
[9]
下記式(2)で表される構造(2)を有する、[1]~[8]のいずれかに記載の化合物。
【化2】
【化3】
(式(2)中、
は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、炭素数5~12のアリール基、炭素数5~12のヘテロアリール基、ハロゲン原子、又は、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄若しくはハロゲンからなる群より選ばれる原子を1種以上含む親水性置換基である。
n4は、それぞれ独立して、0~4の整数である。n4が2以上の場合、Rは同一又は異なる。
Lは、リンカーを示す。
Rは、上記式(3)で表される構造(3)である。
、R、X、Y、n2、R、n3、*は、それぞれ、式(1)と同様である。)
【0023】
[10]
下記式(4)で表される構造(4)を有する、[1]~[8]のいずれかに記載の化合物。
【化4】
【化5】
(式(4)中、
は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、炭素数5~12のアリール基、炭素数5~12のヘテロアリール基、ハロゲン原子、又は、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄若しくはハロゲンからなる群より選ばれる原子を1種以上含む親水性置換基である。
n5は、それぞれ独立して、0~4の整数である。n5が2以上の場合、Rは同一又は異なる。
lは、それぞれ独立して、1~4の整数である。
は、アニオンである。
Lは、リンカーを示す。
Rは、上記式(3)で表される構造(3)である。
、R、X、Y、n2、R、n3、*は、それぞれ、式(1)と同様である。)
【0024】
[11]
下記式(5)で表される構造(5)を有する、[1]~[8]のいずれかに記載の化合物。
【化6】
【化7】
(式(5)中、
n6は、1~4の整数である。nが2以上の場合、各基は同一又は異なる。
n7は、0~4の整数である。n2が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
及びRは、それぞれ独立して、置換又は非置換の、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、又は、炭素数2~6のアルキニル基であり、R及びRは、ともに1つの環構造を形成してもよい。
、又はR、少なくとも1つ以上の親水性置換基を含み、上記親水性置換基は、カルボキシル基、水酸基、スルホ基、アミノ基、アミド基、ハロゲン原子、及び、これらの塩である基からなる群より選ばれる。上記親水性置換基が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
mは、1~4の整数である。mが2以上の場合、各基は同一又は異なる。
は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、炭素数5~12のアリール基、炭素数5~12のヘテロアリール基、ハロゲン原子、又は、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄若しくはハロゲンからなる群より選ばれる原子を1種以上含む親水性置換基である。
aは、それぞれ独立して、0~4の整数である。aが2以上の場合、Rは同一又は異なる。
Lは、リンカーを示す。
Rは、上記式(3)で表される構造(3)である。
、R、X、Y、n2、R、n3、*は、それぞれ、式(1)と同様である。)
【0025】
[12]
下記式(6)で表される構造(6)を有する、[1]~[8]のいずれかに記載の化合物。
【化8】
【化9】
(式(6)中、
は、置換又は非置換の、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、又は、炭素数2~12のアルキニル基である。
10は、置換又は非置換の、メチレン基である。R10が複数存在する場合、同一又は異なる。
n8は、1~4の整数である。n8が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
n9は、0~4の整数である。n9が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
n10は、0~4の整数である。n10が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、炭素数5~12のアリール基、炭素数5~12のヘテロアリール基、ハロゲン原子、又は、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄若しくはハロゲンからなる群より選ばれる原子を1種以上含む親水性置換基である。
aは、それぞれ独立して、0~4の整数である。aが2以上の場合、Rは同一又は異なる。
及びR11は、それぞれ独立して、置換又は非置換の、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、又は、炭素数2~6のアルキニル基であり、R及びR11は、ともに1つの環構造を形成してもよい。R11は、1つの水素原子が-L-R基に置換されている。
、R、R11、又はその複数において、少なくとも1つ以上の親水性置換基を含み、上記親水性置換基は、カルボキシル基、水酸基、スルホ基、アミノ基、アミド基、ハロゲン原子、及び、これらの塩である基からなる群より選ばれる。上記親水性置換基が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
mは、1~4の整数である。mが2以上の場合、各基は同一又は異なる。
Lは、リンカーを示す。
Rは、上記式(3)で表される構造(3)である。
、R、X、Y、n2、R、n3、*は、それぞれ、式(1)と同様である。)
【0026】
また、本発明は以下の蛍光色素剤等を提供する。
[13]
[1]~[12]のいずれかに記載の化合物を含む、蛍光色素剤。
【0027】
[14]
細胞及び/又は組織の形態学検出用である、[13]に記載の蛍光色素剤。
【0028】
[15]
生体中の細胞及び/又は組織の形態学検出用である、[13]に記載の蛍光色素剤。
【0029】
[16]
生物試料の染色又は可視化用である、[13]に記載の蛍光色素剤。
【0030】
[17]
生体組織中の細胞膜の染色又は可視化用である、[13]に記載の蛍光色素剤。
【0031】
[18]
蛍光イメージング用である、[13]に記載の蛍光色素剤。
【0032】
[19]
in vivo観察用である、[13]に記載の蛍光色素剤。
【0033】
また、本発明は以下のキットを提供する。
【0034】
[20]
[1]~[12]のいずれかに記載の化合物を含む、キット。
【0035】
また、本発明は以下の細胞の検出方法を提供する。
【0036】
[21]
[1]~[12]のいずれかに記載の化合物を含む蛍光色素剤で、細胞膜を染色する工程(1)を含む、細胞膜の検出方法。
【0037】
[22]
上記工程(1)の後に、2種類以上の溶媒中で各々測定した蛍光スペクトルを用いて評価する工程(2)を含む、[21]に記載の細胞膜の検出方法。
【0038】
[23]
上記工程(2)は、蛍光イメージングを用いて行われる、[22]に記載の細胞膜の検出方法。
【0039】
また、本発明は以下の染色用材料を提供する。
【0040】
[24]
[1]~[12]のいずれかに記載の化合物を含む、細胞中に存在する、又は、細胞環境をモデルとした脂質二重膜油滴若しくはタンパク質凝集体の染色用材料。
【発明の効果】
【0041】
本発明の化合物は、蛍光色素剤等に好適に用いることができる。
【0042】
また、本発明の蛍光色素剤及びキットを用いることにより、細胞等を鮮明、簡便かつ迅速に染色することができる。
【0043】
また、本発明の細胞等の検出方法を用いることにより、細胞中に存在する、又は、細胞環境をモデルとした脂質二重膜、油滴若しくはタンパク質凝集体等を鮮明、簡便、好適に染色することができる。
【0044】
また、本発明の染色用材料を用いることにより、細胞中に存在する、又は、細胞環境をモデルとした脂質二重膜、油滴若しくはタンパク質凝集体等を鮮明、簡便かつ迅速に染色することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】実施例における化合物1のH NMRスペクトル測定(500MHz,DMSO-d6)のチャートである。
図2】実施例における化合物2のH NMR測定スペクトル(500MHz,CDCl)のチャートである。
図3】実施例における化合物3のH NMRスペクトル測定(500MHz,CDCl)のチャートである。
図4】実施例における化合物AのH NMRスペクトル測定(500MHz,MeOD)のチャートである。
図5】実施例における化合物5のH NMRスペクトル測定(500MHz,CDCl)のチャートである。
図6】実施例における化合物6のH NMRスペクトル測定(500MHz,DMSO)のチャートである。
図7】実施例における化合物7のH NMRスペクトル測定(500MHz,DMSO)のチャートである。
図8】実施例における化合物8のH NMRスペクトル測定(500MHz,DMSO)のチャートである。
図9】実施例における化合物4のH NMRスペクトル測定(500MHz,MeOD)のチャートである。
図10】実施例における化合物9のH NMRスペクトル測定(500MHz,CDCl)のチャートである。
図11】実施例における化合物BのH NMRスペクトル測定(500MHz,MeOD)のチャートである。
図12】実施例における人工脂質二重膜(リポソーム)存在下における化合物A(左)及び化合物B(右)の吸収スペクトル。 黄:リン酸緩衝液に色素のみを添加した際の吸収スペクトル。赤:DOPCからなるLd phaseを形成するリポソーム存在下における吸収スペクトル。青:SM/CholからなるLo phaseを形成するリポソーム存在下における吸収スペクトル。緑:DPPC/CholからなるLo phaseを形成するリポソーム存在下における吸収スペクトルのチャートである。 化合物A(左)の図では、吸光度の極大値の高い順に、赤、青、緑、黄である。 化合物B(右)の図では、吸光度の極大値の高い順に、赤、青、緑、黄である。 色素濃度:0.4μM、脂質濃度:80μM、使用したリン酸緩衝液(Phosphate Buffer)は濃度20mM、pH=7.2。
図13】実施例における人工脂質二重膜(リポソーム)存在下における化合物A(左)およびB(右)の蛍光スペクトルのチャートである。 黄:リン酸緩衝液に色素のみを添加した際の蛍光スペクトル。赤:DOPCからなるLd phaseを形成するリポソーム存在下における蛍光スペクトル。青:SM/CholからなるLo phaseを形成するリポソーム存在下における蛍光スペクトル。緑:DPPC/CholからなるLo phaseを形成するリポソーム存在下における蛍光スペクトル。 化合物A(左)の図では、発光強度の極大値の高い順に、青、赤、緑、黄である。 化合物B(右)の図では、発光強度の極大値の高い順に、赤、青、緑、黄である。 色素濃度:0.4μM、脂質濃度:80μM、励起波長:630nm、使用したリン酸緩衝液(Phosphate Buffer)は濃度20mM、pH=7.2。
図14】実施例における化合物11a及び11bの混合物のH NMRスペクトル(500MHz,CDCl)のチャートである。
図15】実施例における化合物12のH NMRスペクトル(500MHz,CDCl)のチャートである。
図16】実施例における化合物13のH NMRスペクトル(500MHz,DMSO-d6)のチャートである。
図17】実施例における化合物CのH NMRスペクトル(500MHz,DMSO-d6)のチャートである。
図18】実施例における化合物14a及び14bの混合物のH NMRスペクトル(500MHz,CDCl)のチャートである。
図19】実施例における化合物15のH NMRスペクトル(500MHz,CDCl)のチャートである。
図20】実施例における化合物16のH NMRスペクトル(500MHz,DMSO-d6)のチャートである。
図21】実施例における化合物21のH NMRスペクトル(500MHz,DMSO-d6)のチャートである。
図22】実施例におけるDMSO中における化合物C(赤)及びD(緑)の吸収(実線)・蛍光(点線)スペクトルのチャートである。 吸収スペクトル(実線)の図では、極大値が相対的に長波長側である実線が、赤である。 蛍光スペクトル(点線)の図では、極大値が相対的に長波長側である点線が、緑である。 色素濃度:10μM(吸収スペクトル)、5μM(蛍光スペクトル)。励起波長:400nm。
図23】実施例における20mMリン酸緩衝液中における化合物C(赤)及びD(緑)の蛍光スペクトル。 蛍光スペクトルの極大値が相対的に長波長側である線が、緑である。 色素濃度:5μM。励起波長:400nm。
図24】実施例における人工脂質二重膜(リポソーム)存在下における化合物Cの蛍光スペクトルのチャートである。 緑:SM/CholからなるLophaseを形成するリポソーム存在下における蛍光スペクトル。赤:DOPCからなるLdphaseを形成するリポソーム存在下における蛍光スペクトル。黄:DOPC/CholからなるLdphaseを形成するリポソーム存在下における蛍光スペクトル。 発光強度の極大値の高い順に、緑、黄色、赤である。 脂質濃度:200μM、色素濃度:2μM。励起波長:400nm。
図25】実施例における人工脂質二重膜(リポソーム)存在下における化合物Dの蛍光スペクトルのチャートである。 緑:SM/CholからなるLophaseを形成するリポソーム存在下における蛍光スペクトル。赤:DOPCからなるLdphaseを形成するリポソーム存在下における蛍光スペクトル。黄:DOPC/CholからなるLdphaseを形成するリポソーム存在下における蛍光スペクトル。 発光強度の極大値の高い順に、赤、緑、黄色である。 脂質濃度:200μM、色素濃度:2μM。励起波長:400nm。
図26】実施例における生体マウスの組織の多光子蛍光イメージング画像である。スクアラインをコア構造に有する色素であり、頭蓋骨の骨髄を染色し、観察している画像である。骨髄組織の膜や、骨髄中の血管を走る血球細胞の膜が染色されていることが分かる。
図27】実施例における生体マウスの組織の多光子蛍光イメージング画像である。カルボシアニンをコア構造に有する色素で、皮膚組織を染色し、観察している画像である。皮膚組織中の細胞の細胞膜が観察される。
図28】実施例における生体マウスの組織の多光子蛍光イメージング画像である。ピレンをコア構造に有する色素であり、皮膚組織を染色し、レシオメトリック法による画像解析をしたものである。
図29】実施例における生体マウスの組織の多光子蛍光イメージング画像である。ピレンをコア構造に有する色素であり、皮膚組織を染色し、レシオメトリック法による画像解析をしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0047】
〔化合物〕
本発明の化合物は、スクアライン構造、カルボシアニン構造、メロシアニン構造、又は、多環式芳香族構造((以下、「コア構造」ともいう))を有し、かつ、少なくとも1つ以上の下記式(1)で表される構造(1)(以下、「側鎖構造(1)」ともいう)を有する化合物(以下、「化合物(1)」ともいう)である。
【化10】
(式(1)中、
は、置換又は非置換の、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、又は、炭素数2~30のアルキニル基である。
は、置換又は非置換の、メチレン基である。Rが複数存在する場合、同一又は異なる。
は、1価のアニオンである。Xが複数存在する場合、各基は同一又は異なる。
は、1価のカチオンである。Yが複数存在する場合、各基は同一又は異なる。
n2は、1~10の整数である。n2が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
は、置換又は非置換の、メチレン基である。Rが複数存在する場合、同一又は異なる。
n3は、1~10の整数である。n3が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
Lは、リンカーを示す。
*は、結合箇所を示す。)
【0048】
上記化合物(1)は、ソルバトクロミズム(solvatochromism)を呈する化合物であり得、例えば、蛍光色素剤等に好適に用いることができる。なお、本明細書におけるソルバトクロミズムを呈する化合物とは、その化合物の周囲の極性(疎水性)の変化によって、その吸収極大波長若しくは蛍光極大波長、又はその両方が変化する化合物を表す。
【0049】
上記化合物(1)は、当該分子中に、コア構造として、スクアライン構造、カルボシアニン構造、メロシアニン構造、又は、多環式芳香族構造を有する。上記各構造は、主として、蛍光発光の中心的作用を有する部位である。
【0050】
上記コア構造としてのスクアライン構造、カルボシアニン構造、メロシアニン構造、及び、多環式芳香族構造は、上記側鎖構造(1)を有する限り、公知の各構造を有することができる。
【0051】
上記多環式芳香族構造は、例えば、ナフタレン構造、アントラセン構造、フェナンスレン構造、ピレン構造、テトラセン構造、トリフェニレン構造、ペリレン構造、又は、フルオレン構造等をあげることができる。
【0052】
上記化合物(1)は、当該分子中において、少なくとも1つ以上の上記側鎖構造(1)が、そのリンカー部位Lを介して上記コア構造に結合している。
【0053】
上記化合物(1)は、少なくとも1つ以上の下記式(1)で表される構造(1)(側鎖構造(1))を有する。
【化11】
(式(1)中、
は、置換又は非置換の、炭素数4~30のアルキル基、炭素数430のアルケニル基、又は、炭素数4~30のアルキニル基である。
は、置換又は非置換の、メチレン基である。Rが複数存在する場合、同一又は異なる。
は、1価のアニオンである。Xが複数存在する場合、各基は同一又は異なる。
は、1価のカチオンである。Yが複数存在する場合、各基は同一又は異なる。
n2は、1~10の整数である。n2が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
は、置換又は非置換の、メチレン基である。Rが複数存在する場合、同一又は異なる。
n3は、1~10の整数である。n3が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
Lは、リンカーを示す。
*は、結合箇所を示す。)
【0054】
上記化合物(1)は、適宜、当該構造の一部又は全部が置換された置換体、水和物等の溶媒和物等の誘導体も含む。
【0055】
上記式(1)において、Rは、置換又は非置換の、炭素数4~30のアルキル基、炭素数4~30のアルケニル基、又は、炭素数4~30のアルキニル基である。
【0056】
上記Rで表される炭素数4~30のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基があげられ、例えば、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカニル基、n-ウンデカニル基、n-ドデカニル基等をあげることができる。
【0057】
上記Rで表される炭素数4~30のアルケニル基としては直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基があげられる。また、上記アルケニル基において、その一部が炭素炭素二重結合であるものを含む。
【0058】
上記Rで表される炭素数4~30のアルキニル基としては直鎖状又は分岐鎖状のアルキニル基があげられる。また、上記アルキニル基において、その一部が炭素炭素三重結合であるものを含む。
【0059】
また、上記Rで表されるアルキル基等の置換基として、例えば、カルボキシル基、水酸基、スルホ基、アミノ基、アミド基、ハロゲン原子、及び、これらの塩等をあげることができる。置換基が複数存在する場合、これらは単独で置換されていてもよく、また2種以上を組み合わせて置換されていてもよい。
【0060】
上記式(1)において、例えば、使用目的や用途に応じて、少なくとも1つのRは、置換又は非置換の、炭素数が8~20の直鎖アルキル構造を含むことが好ましい。
【0061】
上記式(1)において、Rは、置換又は非置換の、メチレン基である。Rが複数存在する場合、同一又は異なる。
【0062】
また、上記Rで表されるメチレン基の置換基として、例えば、カルボキシル基、水酸基、スルホ基、アミノ基、アミド基、ハロゲン原子、及び、これらの塩である基等をあげることができる。置換基が複数存在する場合、これらは単独で置換されていてもよく、また2種以上を組み合わせて置換されていてもよい。
【0063】
上記式(1)において、n2は、1~10の整数である。n2が2以上の場合、各基は同一又は異なる。上記n2は、1~4である場合を好適な例としてあげることができる。
【0064】
上記式(1)において、Xは、1価のアニオンである。Xが複数存在する場合、各基は同一又は異なる。Xは、公知の1価のアニオンを適宜用いることができる。
【0065】
上記Xで表される、1価のアニオンは、例えば、-SO 、又は、-COO等をあげることができる。上記式(1)において、少なくとも1つのXは、-SO 、又は、-COOであることが好ましい。
【0066】
上記式(1)において、Yは、1価のカチオンである。Yが複数存在する場合、各基は同一又は異なる。Yは、公知の1価のカチオンを適宜用いることができる。
【0067】
上記Yで表される、1価のカチオンは、例えば、H、アルカリ金属カチオン、又は、アンモニウムカチオン等をあげることができる。上記式(1)において、少なくとも1つのYは、H、アルカリ金属カチオン、又は、アンモニウムカチオンであることが好ましい。
【0068】
上記式(1)において、Rは、置換又は非置換の、メチレン基である。Rが複数存在する場合、同一又は異なる。
【0069】
上記Rで表される、置換又は非置換の、メチレン基は、上記Rにおける、置換又は非置換の、メチレン基等をあげることができる。
【0070】
上記式(1)において、n3は、1~10の整数である。n3が2以上の場合、各基は同一又は異なる。上記n3は、1~4である場合を好適な例としてあげることができる。
【0071】
上記式(1)において、Lは、リンカーを示す。
【0072】
Lは、例えば、置換又は非置換の、炭素数1~20の炭化水素基(一部ヘテロ原子で置換されているものも含む)である。
【0073】
上記Lで表される、置換又は非置換の、炭素数1~20の炭化水素基は、上記Rにおける基のうち、置換又は非置換の、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、及び、炭素数2~20のアルキニル基等をあげることができる。また、上記炭化水素基は一部ヘテロ原子で置換されているものも含み、例えば、トリアゾール環等を含むものをあげることができる。
【0074】
上記式(1)において、*は、結合箇所を示す。上記結合は、例えば、共有結合である。
【0075】
上記式(1)において、上記構造(1)は、使用目的や用途に応じて、例えば、1~4つ等含み得るが、1つ又は2つ含まれることが好ましい。
【0076】
上記化合物(1)は、下記式(2)で表される構造(2)を有する化合物((以下、「化合物(2)」ともいう))であることが好ましい。
【化12】
【化13】
(式(2)中、
は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、炭素数5~12のアリール基、炭素数5~12のヘテロアリール基、ハロゲン原子、又は、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄若しくはハロゲンからなる群より選ばれる原子を1種以上含む親水性置換基である。
n4は、それぞれ独立して、0~4の整数である。n4が2以上の場合、Rは同一又は異なる。
Lは、リンカーを示す。
Rは、上記式(3)で表される構造(3)(以下、「側鎖構造(3)」ともいう)である。
、R、X、Y、n2、R、n3、*は、それぞれ、式(1)と同様である。)
【0077】
上記化合物(2)は、スクアライン構造をコア構造として含む化合物である。上記化合物(2)における各基に関する事項は、下記の他、適宜本明細書中記載を参酌する。
【0078】
上記化合物(2)は、当該分子中において、少なくとも1つ以上の上記側鎖構造(3)が、そのリンカー部位Lを介して上記コア構造に結合している。
【0079】
上記式(2)において、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、炭素数5~12のアリール基、炭素数5~12のヘテロアリール基、ハロゲン原子、又は、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄若しくはハロゲンからなる群より選ばれる原子を1種以上含む親水性置換基である。
【0080】
上記Rで表される炭素数1~12のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基があげられ、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカニル基、n-ウンデカニル基、n-ドデカニル基等をあげることができる。
【0081】
上記Rで表される炭素数2~12のアルケニル基としては直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基があげられ、例えば、ビニル基、アリル基等をあげることができる。
【0082】
上記Rで表される炭素数2~12のアルキニル基としては直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基があげられ、例えば、エチニル基、プロパルギル基等をあげることができる。
【0083】
上記Rで表される炭素数5~12のアリール基としては、炭素数5~12の芳香族炭化水素基等があげられ、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、メチルナフチル、アントラシル、又はインデニル等をあげることができる。
【0084】
上記Rで表される炭素数5~12のヘテロアリール基としては、炭素数5~12の芳香族炭化水素基等があげられ、芳香環中の1つ以上の炭素原子が窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の原資に置換されたもの等あげることができる。例えば、ピロリル基、ピリジニル基、イミダゾリル基、チエニル基、フラニル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基等をあげることができる。
【0085】
上記Rで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子をあげることができる。
【0086】
上記Rで表される親水性置換基は、例えば、カルボキシル基、水酸基、スルホ基、アミド基、ハロゲン原子、及び、これらの塩である基からなる群より選ばれる。上記親水性置換基が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
【0087】
上記式(2)において、Rは、それぞれ独立して、例えば、メチル基、エチル基、又は、水酸基である場合を好適な例としてあげることができる。
【0088】
上記式(2)において、n4は、それぞれ独立して、0~4の整数である。n4が2以上の場合、Rは同一又は異なる。また、Rは、環中の任意の環上でありうる。
【0089】
上記式(2)において、Lは、リンカーを示す。Lは、式(1)と同様である。
【0090】
上記式(2)において、Rは、上記式(3)で表される構造(3)である。
【0091】
上記式(2)及び(3)において、R、R、X、Y、n2、R、n3、*は、それぞれ、式(1)等と同様である。
【0092】
上記化合物(1)は、下記式(4)で表される構造(4)を有する化合物((以下、「化合物(4)」ともいう))であることが好ましい。
【化14】
【化15】
(式(4)中、
は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、炭素数5~12のアリール基、炭素数5~12のヘテロアリール基、ハロゲン原子、又は、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄若しくはハロゲンからなる群より選ばれる原子を1種以上含む親水性置換基である。
n5は、それぞれ独立して、0~4の整数である。n5が2以上の場合、Rは同一又は異なる。
lは、それぞれ独立して、1~4の整数である。
は、アニオンである。
Lは、リンカーを示す。
Rは、上記式(3)で表される構造(3)である。
、R、X、Y、n2、R、n3、*は、それぞれ、式(1)と同様である。)
【0093】
上記化合物(4)は、カルボシアニン構造をコア構造として含む化合物である。上記化合物(4)における各基に関する事項は、下記の他、適宜本明細書中記載を参酌する。
【0094】
上記化合物(4)は、当該分子中において、少なくとも1つ以上の上記側鎖構造(3)が、そのリンカー部位Lを介して上記コア構造に結合している。
【0095】
上記式(4)において、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、炭素数5~12のアリール基、炭素数5~12のヘテロアリール基、ハロゲン原子、又は、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄若しくはハロゲンからなる群より選ばれる原子を1種以上含む親水性置換基である。
【0096】
は、例えば、上記式(2)における上記Rと同様の基を用いることができる。
【0097】
n5は、それぞれ独立して、0~4の整数である。n5が2以上の場合、Rは同一又は異なる。また、Rは、環中の任意の環上でありうる。
【0098】
上記式(4)において、lは、それぞれ独立して、1~4の整数である。上記lは、1又は2を好適な例としてあげることができる。
【0099】
上記式(4)において、上記式(3)で表される構造(3)は、上記化合物(2)の側鎖構造(3)と同様である。
【0100】
上記式(4)及び(3)において、R、R、X、Y、n2、R、n3、*、L、Zは、それぞれ、式(1)等と同様である。
【0101】
上記化合物(1)は、下記式(5)で表される構造(5)を有する化合物((以下、「化合物(5)」ともいう))であることが好ましい。
【化16】
【化17】
(式(5)中、
n6は、1~4の整数である。nが2以上の場合、各基は同一又は異なる。
n7は、0~4の整数である。n2が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
及びRは、それぞれ独立して、置換又は非置換の、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、又は、炭素数2~6のアルキニル基であり、R及びRは、ともに1つの環構造を形成してもよい。
、又はR、少なくとも1つ以上の親水性置換基を含み、上記親水性置換基は、カルボキシル基、水酸基、スルホ基、アミノ基、アミド基、ハロゲン原子、及び、これらの塩である基からなる群より選ばれる。上記親水性置換基が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
mは、1~4の整数である。mが2以上の場合、各基は同一又は異なる。
は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、炭素数5~12のアリール基、炭素数5~12のヘテロアリール基、ハロゲン原子、又は、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄若しくはハロゲンからなる群より選ばれる原子を1種以上含む親水性置換基である。
aは、それぞれ独立して、0~4の整数である。aが2以上の場合、Rは同一又は異なる。
Lは、リンカーを示す。
Rは、上記式(3)で表される構造(3)である。
、R、X、Y、n2、R、n3、*は、それぞれ、式(1)と同様である。)
【0102】
上記化合物(5)は、ピレン構造をコア構造として含む化合物である。上記化合物(5)における各基に関する事項は、下記の他、適宜本明細書中記載を参酌する。
【0103】
上記化合物(5)は、当該分子中において、少なくとも1つ以上の上記側鎖構造(3)が、そのリンカー部位Lを介して上記コア構造に結合している。
【0104】
上記式(5)において、n6は、1~4の整数である。n6が2以上の場合、各基は同一又は異なる。また、当該基(側鎖構造を含む基)は、環中の任意の環上でありうる。
【0105】
上記式(5)において、n6は、1~4の整数である。nが2以上の場合、各基は同一又は異なる。
【0106】
上記式(5)において、n7は、0~4の整数である。n2が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
【0107】
上記式(5)において、R及びRは、それぞれ独立して、置換又は非置換の、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、又は、炭素数2~6のアルキニル基であり、R及びRは、ともに1つの環構造を形成してもよい。
【0108】
上記式(5)において、上記R及びRは、ともに1つの環構造を形成してもよい。上記R及びRがともに1つの環構造を形成する場合、上記環構造は、例えば、ピロリジン環構造、イミダゾリジン環構造、オキサゾリジン環構造、ピペリジン環構造、ピペラジン環構造、モルホリン環構造等があげられる。また、上記環構造上に上記親水性置換基を有していてもよい。
【0109】
上記式(5)において、R、又はR、少なくとも1つ以上の親水性置換基を含み、上記親水性置換基は、カルボキシル基、水酸基、スルホ基、アミノ基、アミド基、ハロゲン原子、及び、これらの塩である基からなる群より選ばれる。上記親水性置換基が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
【0110】
また、上記式(5)において、例えば、少なくとも1組のR及びRは、ともに1つのピロリジン環、又は、ピペリジン環を形成していることが好ましい。
【0111】
上記式(5)において、mは、1~4の整数である。mが2以上の場合、各基は同一又は異なる。また、当該基は、環中の任意の環上でありうる。
【0112】
上記式(5)において、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、炭素数5~12のアリール基、炭素数5~12のヘテロアリール基、ハロゲン原子、又は、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄若しくはハロゲンからなる群より選ばれる原子を1種以上含む親水性置換基である。
【0113】
は、例えば、上記式(2)における上記Rと同様の基を用いることができる。
【0114】
上記式(5)において、aは、それぞれ独立して、0~4の整数である。aが2以上の場合、Rは同一又は異なる。また、Rは、環中の任意の環上でありうる。
【0115】
Rは、上記式(3)で表される構造(3)である。
【0116】
上記式(5)において、上記式(3)で表される構造(3)は、上記化合物(2)の側鎖構造(3)と同様である。
【0117】
上記式(5)及び(3)において、R、R、X、Y、n2、R、n3、*、Lは、それぞれ、式(1)等と同様である。
【0118】
上記化合物(1)は、下記式(6)で表される構造(6)を有する化合物((以下、「化合物(6)」ともいう))であることが好ましい。
【化18】
【化19】
(式(6)中、
は、置換又は非置換の、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、又は、炭素数2~12のアルキニル基である。
10は、置換又は非置換の、メチレン基である。R10が複数存在する場合、同一又は異なる。
n8は、1~4の整数である。n8が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
n9は、0~4の整数である。n9が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
n10は、0~4の整数である。n10が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、炭素数5~12のアリール基、炭素数5~12のヘテロアリール基、ハロゲン原子、又は、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄若しくはハロゲンからなる群より選ばれる原子を1種以上含む親水性置換基である。
aは、それぞれ独立して、0~4の整数である。aが2以上の場合、Rは同一又は異なる。
及びR11は、それぞれ独立して、置換又は非置換の、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、又は、炭素数2~6のアルキニル基であり、R及びR11は、ともに1つの環構造を形成してもよい。R11は、1つの水素原子が-L-R基に置換されている。
、R、R11、又はその複数において、少なくとも1つ以上の親水性置換基を含み、上記親水性置換基は、カルボキシル基、水酸基、スルホ基、アミノ基、アミド基、ハロゲン原子、及び、これらの塩である基からなる群より選ばれる。上記親水性置換基が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
mは、1~4の整数である。mが2以上の場合、各基は同一又は異なる。
Lは、リンカーを示す。
Rは、上記式(3)で表される構造(3)である。
、R、X、Y、n2、R、n3、*は、それぞれ、式(1)と同様である。)
【0119】
上記化合物(6)は、ピレン構造をコア構造として含む化合物である。上記化合物(6)における各基に関する事項は、下記の他、適宜本明細書中記載を参酌する。
【0120】
上記化合物(6)は、当該分子中において、少なくとも1つ以上の上記側鎖構造(3)が、そのリンカー部位Lを介して上記コア構造に結合している。
【0121】
上記式(6)において、Rは、置換又は非置換の、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、又は、炭素数2~12のアルキニル基である。
【0122】
上記Rで表される炭素数1~12のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基があげられ、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカニル基、n-ウンデカニル基、n-ドデカニル基等をあげることができる。
【0123】
上記Rで表される炭素数2~12のアルケニル基としては直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基があげられ、例えば、ビニル基、アリル基等をあげることができる。
【0124】
上記Rで表される炭素数2~12のアルキニル基としては直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基があげられ、例えば、エチニル基、プロパルギル基等をあげることができる。
【0125】
また、上記Rで表されるアルキル基等の置換基として、例えば、カルボキシル基、水酸基、スルホ基、アミド基、ハロゲン原子、及び、これらの塩である基等をあげることができる。置換基が複数存在する場合、これらは単独で置換されていてもよく、また2種以上を組み合わせて置換されていてもよい。
【0126】
上記Rで表される親水性置換基は、水溶性を向上させ、細胞膜及び細胞内への分散を促進する観点、又は経皮吸収性を向上させる観点から、例えば、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄若しくはハロゲンからなる群より選ばれる原子を1種以上含む基であることが好ましい。中でも、生体分子との反応を抑える観点から、上記親水性置換基は、例えば、カルボニル基(アルデヒド基を除く)を含むことが好ましい。
【0127】
上記式(6)において、例えば、少なくとも1つのRは、メチル基、エチル基、n-ピロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、エチニル基、プロパルギル基、又は、炭素数1~4のアルキル基で置換又は非置換の1,2,3-トリアゾール若しくは1,2,4-トリアゾール基であることが好ましい。
【0128】
上記式(6)において、R10は、置換又は非置換の、メチレン基である。R10が複数存在する場合、同一又は異なる。
【0129】
上記R10で表される、置換又は非置換の、メチレン基は、上記式(1)の上記Rにおける、置換又は非置換の、メチレン基等をあげることができる。
【0130】
上記式(6)において、n8は、1~4の整数である。n8が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
【0131】
上記式(6)において、n9は、0~4の整数である。n9が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
【0132】
上記式(6)において、n10は、0~4の整数である。n10が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
【0133】
上記式(6)において、R及びR11は、それぞれ独立して、置換又は非置換の、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、又は、炭素数2~6のアルキニル基であり、R及びR11は、ともに1つの環構造を形成してもよい。R11は、1つの水素原子が-L-R基に置換されている。
【0134】
上記式(6)において、上記R及びR11は、ともに1つの環構造を形成してもよい。上記R及びR11がともに1つの環構造を形成する場合、上記環構造は、例えば、ピロリジン環構造、イミダゾリジン環構造、オキサゾリジン環構造、ピペリジン環構造、ピペラジン環構造、モルホリン環構造等があげられる。また、上記環構造上に上記親水性置換基を有していてもよい。また、この場合も、1つの水素原子が-L-R基に置換されている。
【0135】
上記式(6)において、R、R、R11、又はその複数において、少なくとも1つ以上の親水性置換基を含み、上記親水性置換基は、カルボキシル基、水酸基、スルホ基、アミド基、ハロゲン原子、及び、これらの塩である基からなる群より選ばれる。上記親水性置換基が2以上の場合、各基は同一又は異なる。
【0136】
上記式(6)において、mは、1~4の整数である。mが2以上の場合、各基は同一又は異なる。また、当該基(側鎖構造を含む基)は、環中の任意の環上でありうる。
【0137】
上記式(6)において、上記式(3)で表される構造(3)は、上記化合物(2)の側鎖構造(3)と同様である。
【0138】
上記式(6)において、R、R、X、Y、n2、R、n3、*、R、aは、それぞれ、式(1)、式(5)等と同様である。
【0139】
また、上記化合物(1)の吸収極大波長は、例えば、25℃の20mMリン酸緩衝液(pH7.4)中において、例えば、300~1200nmの間にあるものが好ましい。上記化合物の吸収極大波長は、使用目的や用途に応じて、例えば、300nm、310nm、320nm、330nm、340nm、350nm、360nm、370nm、380nm、390nm、400nm、410nm、420nm、430nm、440nm、450nm、460nm、470nm、480nm、490nm、500nm、510nm、520nm、530nm、540nm、550nm、600nm、650nm、700
nm、750nm、800nm、900nm、1000nm、1100nm、及び1200nmからなる群より選ばれるいずれか2つの数値の間の範囲内であるものが好適な例としてあげることができる。
【0140】
また、上記化合物がソルバトクロミズムを呈する化合物の場合、上記化合物の25℃のメタノール中での蛍光極大波長をλMet、25℃のn-ヘプタン中での蛍光極大波長をλHepとしたとき、化合物のλMetとλHepの差は、例えば50nm以上、60nm以上、70nm以上、80nm以上、90nm以上、100nm以上、又は110nm以上であるものが好ましい。λMetとλHepの差が大きいほど、例えば、腫瘍組織を健常組織に対して高コントラストで検出しやすくなり、又は、がん細胞を正常細胞に対して高コントラストで検出しやすくなり、好ましい。また、化合物のλMetとλHepの差は、300nm以下、200nm以下又は150nm以下であり得る。
【0141】
また、上記化合物の二光子吸収極大波長は、25℃の20mMリン酸緩衝液(pH7.4)中において、例えば、600~1600nmの間にあることが好ましい。なかでも、900nmより長波長であるとより好ましい。このような化合物は、組織中の生体物質によって吸収されにくい波長の光で励起することができるため、二光子顕微鏡観察での使用に適する。
【0142】
また、上記化合物は、水溶性に優れる。上記化合物は、例えば、水に対しての濃度は、1nM~100mMであるものが好ましい。上記化合物の水に対しての濃度は、使用目的や用途に応じて、下限値としては、例えば、1nM、2nM、3nM、5nM、10nM、15nM、20nM、30nM、50nM、100nM、200nM、300nM、500nM、700nM、1μM、2μM、3μM、5μM、10μM、15μM、20μM、30μM、50μM、100μM、200μM、300μM、500μM、700μM、800μM、1mM、2mM、3mM、5mM、10mM、20mM、30mM、50mM、80mM、又は、100mM等とすることが可能である。上記化合物の水に対しての濃度は、使用目的や用途に応じて、上限値としては、例えば、100mM、80mM、50mM、30mM、20mM、10mM、5mM、3mM、2mM、1mM、700μM、500μM、300μM、200μM、100μM、50μM、30μM、20μM、15μM、10μM、5μM、3μM、2μM、1μM、700nM、500nM、300nM、200nM、100nM、50nM、30nM、20nM、又は、10nM等とすることが可能である。上記の上限値と下限値はいずれの組み合わせであってもよい。複数種の化合物を併用する場合は、化合物の濃度はその合計量である。また、細胞及び/又は組織のイメージングに使用する際は、上記化合物の水に対しての濃度は、上記数値範囲内となるように用いることが好ましい。
【0143】
また、上記化合物は、皮膚等の組織イメージングの場合には、例えば、水に対しての濃度は、100μM~1mMであるものが好ましい。上記用途の場合の上記化合物の水に対しての濃度は、使用目的や用途に応じて、下限値としては、例えば、100μM、200μM、300μM、500μM、700μM、又は、800μM等とすることが可能である。上記化合物の水に対しての濃度は、使用目的や用途に応じて、上限値としては、例えば、1mM、700μM、500μM、300μM、200μM、100μM、50μM、30μM、20μM、15μM、10μM、5μM、3μM、2μM、1μM、700nM、500nM、300nM、又は、200nM等とすることが可能である。上記の上限値と下限値はいずれの組み合わせであってもよい。複数種の化合物を併用する場合は、化合物の濃度はその合計量である。また、組織のイメージングに使用する際は、上記化合物の水に対しての濃度は、上記数値範囲内となるように用いることが好ましい。
【0144】
また、上記化合物は、細胞イメージングの場合には、例えば、水に対しての濃度は、1nM~100μMであるものが好ましい。上記用途の場合の上記化合物の水に対しての濃度は、使用目的や用途に応じて、下限値としては、例えば、1nM、2nM、3nM、5nM、10nM、15nM、20nM、30nM、50nM、100nM、200nM、300nM、500nM、700nM、1μM、2μM、3μM、5μM、10μM、15μM、20μM、30μM、又は、50μM等とすることが可能である。上記化合物の水に対しての濃度は、使用目的や用途に応じて、上限値としては、例えば、100mM、80mM、50mM、30mM、20mM、10mM、5mM、3mM、2mM、1mM、700μM、500μM、300μM、200μM、100μM、50μM、30μM、20μM、15μM、10μM、5μM、3μM、2μM、1μM、700nM、500nM、300nM、200nM、100nM、50nM、30nM、20nM、又は、10nM等とすることが可能である。上記の上限値と下限値はいずれの組み合わせであってもよい。複数種の化合物を併用する場合は、化合物の濃度はその合計量である。また、細胞のイメージングに使用する際は、上記化合物の水に対しての濃度は、上記数値範囲内となるように用いることが好ましい。
【0145】
また、上記化合物の分子量は、例えば、3000以下であり、2800以下、2600以下、2500以下、2400以下、2200以下、2000以下、1800以下、1500以下、1300以下、1000、900以下、800以下、700以下、650以下、600以下、500以下とすることができ得る。また、下限値は、100以上、150以上等とすることができ得る。
【0146】
また、本発明において、上記化合物には、分子内の小部分の化学変化によって生成する誘導体も含み、簡易な構造置換体、付加体、水和物等を含み、また類縁体とよばれるものも含む。
〔化合物の製造方法〕
本発明の化合物は、本発明に記載の手法以外に、公知の手法を適宜用いて製造してもよい。
【0147】
例えば、上記化合物(2)、化合物(4)~化合物(6)にそれぞれ相当する、下記化合物A~化合物Dの場合、実施例に記載の各スキーム1~5のように合成することができる。
【0148】
〔蛍光色素剤〕
本発明の蛍光色素剤は、上記化合物を含む。
【0149】
本発明の蛍光色素剤を用いることにより、細胞膜(ないし細胞)や生体組織等を簡便かつ迅速に染色することができる。
【0150】
上記蛍光色素剤は、例えば、生体に由来する組織中の細胞(例えば、腫瘍細胞等)及び/又は組織(例えば、皮膚組織等)の検出に用いられる。
【0151】
上記蛍光色素剤は、例えば、細胞及び/又は組織の形態学検出用に用いられる。例えば、腫瘍細胞の形態学検出用や、皮膚癌細胞の形態学検出用に好適に用いることができる。また、上記蛍光色素剤は、例えば、生体中の細胞及び/又は組織の形態学検出に好適に用いられる。
【0152】
上記蛍光色素剤は、例えば、生物試料の染色又は可視化用に用いられる。また、上記蛍光色素剤は、例えば、生体組織中の細胞膜の染色又は可視化用に好適に用いられる。
【0153】
上記蛍光色素剤は、例えば、蛍光イメージング用に用いられる。
【0154】
上記蛍光色素剤は、例えば、in vivo観察用に用いられる。上記蛍光色素剤は、in vivo観察において特に好適に用いることができ、従来には見られない鮮明なイメージング等を、簡易かつ迅速に行うことができ得る。上記蛍光色素剤は、水溶性に優れた上記化合物を用いるため、従来非常に困難であった生体そのものに、例えば静脈注射等で導入することにより、血管内で析出する等の不具合を起こすことなく、in vivo観察を行うことができる。
【0155】
上記蛍光色素剤は、例えば、経皮吸収用に用いられる。上記蛍光色素剤は、高い皮膚組織浸透性を有しており、経皮吸収させて観察する系において特に好適に用いることができ、従来には見られない鮮明なイメージング等を、簡易かつ迅速に行うことができ得る。
【0156】
また、上記蛍光色素剤は、例えば、静脈注射用等の血管投与用や経口投与用等に用いられる。上記蛍光色素剤は、高い水溶性を有しており、体内投与させて観察する系において特に好適に用いることができ、従来には見られない鮮明なイメージング等を、簡易かつ迅速に行うことができ得る。
【0157】
本発明の蛍光色素剤が適用される組織や細胞は、動物・植物、生細胞・死細胞等を問わず、例えば、生体由来又は人工合成や培養したもの等、特に限定されない。
【0158】
上記生体は、多細胞動物であれば特に限定されず、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
【0159】
上記組織は、例えば、皮膚、脳、脊髄、食道、胃、小腸、大腸、十二指腸、直腸、肝臓、膵臓、胆嚢、膀胱、腎臓、心臓、脾臓、胸腺、前立腺、子宮、卵巣、精巣、乳房、肺、気管支、眼球、鼻、副鼻腔、口腔、咽頭、唾液腺、甲状腺、副甲状腺、副腎、筋肉、骨髄、血管、神経、リンパ節、腹膜、横隔膜、血液等をあげることができる。一実施形態では、本発明の蛍光色素剤が適用される組織は、皮膚であり、例えば、表皮若しくは真皮、又はそれら両方の組み合わせである。
【0160】
本発明の蛍光色素剤は、例えば、摘出、切除、穿刺、採血等の外科的処置によって生体から分離された組織、又は便、尿、汗その他の体液等から得られた組織等に適用することができる。
【0161】
本明細書において、生体に由来する組織には、生体から分離された組織の他に、生体そのもの、又は、生体の一部であって、生体から分離されていない組織等が包含される。
【0162】
一実施形態では、組織の形態は、検出方法によって適宜選択され得るが、例えば、臓器若しくは器官そのもの、又はそれらの薄切切片若しくは三次元断片等であってもよい。
【0163】
組織等は、その形態によっては、例えば、ホルマリン等による固定処理、パラフィン包埋、脱パラフィン処理、脱水処理、透明化処理等の処理を経ていてもよい。
【0164】
一実施形態では、腫瘍細胞は、皮膚の腫瘍に由来する細胞である。そのような腫瘍細胞としては、例えば、汗腺系腫瘍(乳房外パジェット病、乳房パジェット病、エクリン汗孔癌、微小嚢胞性付属器癌、皮膚粘液癌等)、悪性黒色腫、表皮・毛包系腫瘍(基底細胞癌、有棘細胞癌、日光角化症、ボーエン病、白板症、ケラトアカントーマ等)、神経系腫瘍(メルケル細胞癌、悪性末梢神経鞘腫瘍等)、間葉系腫瘍(隆起性皮膚線維肉腫、孤立性線維性腫瘍、筋肉系腫瘍、脂肪肉腫、血管肉腫、カポジ肉腫、紡錘細胞血管内皮腫、異系線維黄色腫、類上皮肉腫、滑膜肉腫、未分化多形細胞肉腫等)の細胞等をあげることができる。
【0165】
本発明の蛍光色素剤において、上記化合物は、組織等に適用可能なものであれば特に限定されない。
【0166】
一実施形態では、上記化合物は、細胞膜及び細胞内及び分泌物に分布し得るものであり、さらに特定の実施形態では、上記化合物は、細胞膜に挿入され得るものである。
【0167】
上記分泌物としては、例えば、胆汁、ホルモン、消化酵素、エクソソームやアミロイド、インスリン等をあげることができる。
【0168】
一実施形態では、上記化合物は、細胞膜において強い蛍光異方性を示す。
【0169】
一実施形態では、上記化合物は、細胞膜及び/又は細胞内に比べて、細胞外で蛍光強度が低くなる性質を有する。特定の実施形態では、上記化合物は、細胞外では実質的に蛍光が観察されない。特に限定されないが、例えば、上記化合物の細胞外の蛍光強度は、細胞内の蛍光強度の50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下又は1%以下であり得る。ここで、細胞内外の蛍光強度の比較は、本発明の対象となる組織由来の細胞を、当該化合物を励起し得る波長の光で励起したうえで、蛍光極大波長の光を検出できる条件で蛍光顕微鏡画像を取得し、細胞内と細胞外の蛍光の平均シグナル強度を比較することによって行われる。
【0170】
また、本発明の蛍光色素剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0171】
また、本発明の蛍光色素剤は、上記化合物の他、公知の蛍光色素剤に使用される他の成分等を適宜組み合わせて用いることができる。
【0172】
上記他の成分として、例えば、pH緩衝剤、界面活性剤、塩、溶媒、化合物(1)とは別の色素組成物等のいずれか1種単独又は2種以上の組み合わせを含んでいてもよい。
【0173】
pH緩衝剤としては、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン;グッド緩衝剤(HEPES、MOPS等);及び、クエン酸、酢酸、乳酸、シュウ酸、フタル酸、イミダゾール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、グリシン、ホウ酸、リン酸、又は炭酸を含むpH緩衝剤;からなる群より選ばれる1種単独又は2種以上の組み合わせ等をあげることができる。
【0174】
溶媒としては、例えば、水、エタノール、メタノール、2-プロパノール、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、1,2-ジクロロエタン、リン酸緩衝液からなる群より選ばれる1種単独又は2種以上の組み合わせ等をあげることができる。中でも、例えば、水、水溶液、リン酸緩衝液等を好適なものとして例示することができる。
【0175】
上記蛍光色素剤は、溶液にする場合、例えば、上記蛍光色素剤全体に対して、化合物(1)の濃度は、1μM~1mMとすることが好ましく、使用目的や用途に応じて、2μM~800μM、3μM~700μM、5μM~600μM、10μM~500μM、30μM~450μM、50μM~400μM、100μM~350μM、200μM~300μMであってもよい。複数種の化合物(1)を併用する場合は、化合物(1)の濃度はその合計量である。上記蛍光色素剤は、高い水溶性を有することにより、従来には見られない鮮明なイメージング等を、簡易かつ迅速に行うことができ得る。
【0176】
上記蛍光色素剤は、固体の場合、例えば、上記蛍光色素剤全体に対して、化合物(1)は、0.1質量%~100質量%とすることが好ましく、使用目的や用途に応じて、1質量%~95質量%、3質量%~90質量%、5質量%~85質量%、10質量%~80質量%、15質量%~75質量%、20質量%~70質量%、30質量%~60質量%、40質量%~50質量%であってもよい。複数種の化合物(1)併用する場合は、化合物(1)の量は、その合計量である。上記蛍光色素剤は、高い水溶性を有することにより、従来には見られない鮮明なイメージング等を、簡易かつ迅速に行うことができ得る。
【0177】
化合物(1)とは別の色素組成物としては、化合物(1)による細胞の検出を妨害するものでなければ特に限定されない。例えば、プロピジウムイオダイド(PI)、エチジウムブロマイド、アクリジンオレンジ、DAPI、Hoechst等の核染色色素は、上記化合物の染色を妨げにくく、好適に用いることができる。また、化合物(1)とは別の色素組成物として、例えば、ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色、アザン染色、マッソン・トリクローム染色、エラスチカ・ワンギーソン染色、鍍銀染色、ビクトリア青染色、PAM染色、PTAH染色、ズダンIII染色、オイル赤O染色、PAS染色、アルシアン青染色、トルイジン青染色、コロイド鉄染色、ムチカルミン染色、コンゴー赤染色、ダイロン染色、グリメリウス染色、フォンタナ・マッソン染色、コッサ染色、ベルリン青染色、ボディアン染色、クリューバー・バレラ染色、ギムザ染色等の各種組織染色に用いられる色素組成物を用いることができる。これらの別の色素組成物は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0178】
また、本発明の蛍光色素剤は、粉末等の固体であっても、液体であってもよい。
【0179】
本発明の蛍光色素剤で組織を染色すると、例えば、細胞内脂質膜の各部位に化合物(1)が分布し得るが、脂質膜の相(組成)に応じて蛍光波長がシフトし得、蛍光色の変化が生じ得る。そのため、検出する蛍光の波長を適切に選択することにより、例えば、細胞内脂質膜の組成の変化や相状態の変化等が高コントラストで検出され得る。
【0180】
また、本発明の蛍光色素剤で組織を染色すると、例えば、腫瘍細胞及び正常組織の細胞の両方に化合物(1)が分布し得るが、腫瘍細胞における化合物(1)の蛍光波長が、正常組織の細胞における蛍光波長からシフトし得る。そのため、検出する蛍光の波長を適切に選択することにより、腫瘍細胞が正常組織と高コントラストで検出され得る。そして、本発明の蛍光色素剤は、腫瘍、特に悪性腫瘍の検査又は診断に使用することができ得る。
【0181】
また、本発明の蛍光色素剤は、生体に適用される場合、例えば、腫瘍、特に悪性腫瘍の診断に使用することができる。さらに、本発明の蛍光色素剤は、生体の腫瘍、特に癌の除去範囲を特定するため、又は、腫瘍の取り残しの有無を確認するために、当該除去処置の前、処置時、又は処置後に生体に適用されてもよい。
【0182】
本発明の蛍光色素剤は、例えば、臨床検査、基礎研究等に使用される試薬の他、医薬品、医薬部外品であり得る。
【0183】
〔染色用材料〕
本発明の染色用材料は、細胞中に存在する、又は、細胞環境をモデルとした脂質二重膜、油滴若しくはタンパク質凝集体の染色用であり、上記化合物を含む。
【0184】
本発明の染色用材料は、例えば、アミロイド等のタンパク質凝集体を好適に染色することが可能である。
【0185】
上記染色用材料は、上述の化合物(1)ないし蛍光色素剤の欄に記載の事項を適宜準用することができる。
【0186】
上記染色用材料は、上記化合物及びこれらの塩以外の成分については、使用目的や用途に応じて、新規又は公知の手段を適宜用いることができる。
【0187】
〔キット〕
本発明のキットは、上記化合物を含む。
【0188】
本発明のキットを用いることにより、細胞等を簡便かつ迅速に染色することができる。特に、
【0189】
上記キットに含まれる構成は、例えば、上記蛍光色素剤の項の記載を適宜同様に採用することができ得る。
【0190】
上記キットは、例えば、上記化合物に、染色又は組織標本作製のための試薬や器具と組み合わせたものにすることもできる。
【0191】
また、一実施形態では、キットは、染色液調製用の試薬を含む。さらに特定の実施形態では、染色液調製用試薬は、例えば、上記のpH緩衝剤、界面活性剤、塩、溶媒及び別の色素組成物からなる群より選ばれる1種単独又は2種以上の混合物を含み得る
【0192】
〔細胞・細胞膜の検出方法〕
本発明の細胞膜の検出方法は、上記化合物を含む蛍光色素剤で、細胞を染色する工程(1)を含む。
【0193】
また、本発明の細胞の検出方法は、上記化合物を含む蛍光色素剤で、細胞を染色する工程(1’)を含む。本明細書において、上記工程(1’)に関しても、上記工程(1)に関する事項を適宜同様に採用することができ得る。
【0194】
また、本発明の細胞の検出方法を用いることにより、細胞等を簡便に検出することができる。
【0195】
上記工程(1)における蛍光色素剤としては、上述の蛍光色素剤を適宜同様に採用することができ得る。
【0196】
また、上述の蛍光色素剤の項等における各構成の記載を適宜同様に採用することができ得る。
【0197】
上記工程(1)における細胞膜を染色する工程は、公知の細胞染色工程に用いられる材料や手法等を適宜用いることができる。
【0198】
また、本発明の細胞の検出方法は、上記工程(1)の後に、2種類以上の溶媒中で各々測定した蛍光スペクトルを用いて評価する工程(2)を含むことができる。
【0199】
本発明の蛍光色素剤は、上述のソルバトクロミズムを呈する化合物である場合、その化合物ないし蛍光色素剤の周囲の極性(疎水性)の変化によって、その吸収極大波長若しくは蛍光極大波長、又はその両方が変化する。上記工程(2)においては、このような蛍光色素剤を用いる工程を採用することから、2種類以上の溶媒中で各々測定した蛍光スペクトルを用いて、例えば、細胞膜(ないし細胞等)及び/又は組織の形態学検出や生物試料の染色又は可視化等の評価を簡便に行うことができ得る。
【0200】
上記工程(2)における蛍光スペクトルを用いて評価する工程は、公知の化合物や組織等の物質の蛍光スペクトルを測定する手法を適宜用いることができる。
【0201】
また、上記工程(2)において用いられ得る溶媒としては、例えば、例えば、水、エタノール、メタノール、2-プロパノール、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、1,2-ジクロロエタンからなる群より選ばれる1種単独又は2種以上の組み合わせ等をあげることができる。
【0202】
また、上記工程(2)は、例えば、蛍光イメージングを用いて行われることが好ましい。例えば、2光子蛍光イメージングも好適に用いることができ得る。
【0203】
また、一実施形態では、本発明の方法は、臓器若しくは器官そのもの又はそれらの三次元断片である組織に適用される。当該実施形態では、染色の前に組織を透明化する工程を含むことが好ましい。組織の透明化法には、例えばTDE法、LUCID法、CLARITY法、PACT/PARS法、CUBIC法、3DISCO法、Scale法、ScaleS法、SeeDB法、FocusClear法、Clear法、BABB法、iDISCO法、uDISCO法等をあげることができる。これらの透明化法は、例えば、Cell Chem.Biol.2016,Vol.23,137-157、Laser Photonics Rev.2019,Vol.13,1800292に記載されている。
【0204】
一実施形態では、本発明の方法は、生体そのもの、又は、生体の一部であって生体から分離されていない組織等に適用される。
【0205】
本発明の方法は、水溶性に優れた上記化合物を含む蛍光色素剤を用いるため、従来非常に困難であった生体そのものに、例えば静脈注射等で導入することにより、血管内で析出する等の不具合を起こすことなく、in vivo観察を行うことができる。
【0206】
一実施形態として、本発明の方法は、薄切切片に適用される。薄切切片は、任意選択で、通常臨床検査で使用される固定、脱水、脱アルコール、パラフィン浸透、パラフィン包埋、脱パラフィン、浸水、上記の各種組織染色法を用いた染色等の処理を経てもよい。
【0207】
上記染色は、通常は組織等に上記化合物を含有する染色液を接触させることによって行う。染色液中の上記化合物の濃度は、染色液の全量に対して、例えば、0.001mg/mL以上、0.01mg/mL以上、0.1mg/mL以上、0.2mg/mL以上、0.3mg/mL以上、0.4mg/mL以上、0.5mg/mL以上、0.6mg/mL以上、0.7mg/mL以上、0.8mg/mL以上、0.9mg/mL以上又は1mg/mL以上に調整される。
【0208】
また、染色液中の上記化合物の濃度は、染色液の全量に対して、例えば、500mg/mL以下、200mg/mL以下、100mg/mL以下、50mg/mL以下、20mg/mL以下、10mg/mL以下、5mg/mL以下又は2mg/mL以下に調整される。
【0209】
染色時の温度としては、特に限定されないが、例えば、0~80℃、4~50℃、20~45℃、又は25~40℃であり、好ましくは35℃~42℃である。
【0210】
組織等に染色液を接触させる時間は、例えば、1分以上、10分以上、20分以上、1時間以上、2時間以上、1日以上又は2日以上であり、例えば、14日以下又は7日以下である。
【0211】
一実施形態では、組織等に染色液を接触させる時間は、0~40℃で、例えば、12時間以下、6時間以下であり、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下、さらに好ましくは30分以下、さらにより好ましくは10分以下であり、また、例えば、1分以上、2分以上、5分以上又10分以上であり得る。
【0212】
上記化合物を含有する染色液で染色された組織等は、そのまま細胞及び/又は組織の形態学検出や腫瘍細胞の検出等に用いることができるが、任意選択で、検出の前に他の色素組成物による染色等の処理を経てもよい。
【0213】
本発明の方法は、さらに腫瘍細胞等を検出する工程を含み得る。腫瘍細胞の検出は、例えば、上記化合物を適切な波長の光で励起し、放出される蛍光を検出することによって行われる。検出には、例えば共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いることができ、切片の厚さによっては二光子顕微鏡等の多光子励起が可能なものが用いられる。例えば、上記化合物として1-アセチル-6-ピペリジルピレン(PK)を用いた場合は、実施例に示されるように二光子顕微鏡による測定に適する。
【0214】
一実施形態では、腫瘍細胞等の細胞は、当該腫瘍細胞と正常組織の細胞の間でコントラストが得られるような、1つの特定の波長を含む蛍光を選択し、その蛍光強度を測定することによって検出される。
【0215】
別の実施形態では、腫瘍細胞等の細胞の検出は、多波長測定によって行われる。即ち、細胞は、2以上の異なる特定の波長を含む蛍光を検出し、各々の蛍光強度を統合することによって検出される。
【0216】
一実施形態として、上記化合物として実施例における化合物C及び化合物Dを用いた場合、検出される蛍光は、例えば、350~750nm、550nm~700nm、600nm~700nm、650~750nmの範囲から選択される1又は2以上の波長を含む。
【0217】
本発明の検出方法によって、上述の蛍光色素剤の項に記載したように、腫瘍等の細胞の検査、診断又は腫瘍の除去範囲の特定を行うことができる。
【0218】
また、ソルバトクロミズムを活用した画像解析として、マージに加え、レシオメトリック解析(異なる2つの波長の蛍光を検出し、それらの蛍光強度の比をとる方法)も有効である。
【0219】
また、上記蛍光イメージングのほか、蛍光寿命イメージング等も適宜使用可能である。
【実施例0220】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0221】
H-NMR分析)
実施例におけるH-NMR分析は、核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製:JMN-LA500)を用いて測定した。各化合物において得られた結果を図1~11、14~21に示す。
【0222】
(紫外可視吸収スペクトル測定・蛍光スペクトル測定)
紫外可視吸収スペクトル測定は、それぞれ分光蛍光光度計装置(日本分光株式会社製:V670)を用いて測定した。蛍光スペクトル測定は、それぞれ分光蛍光光度計装置(日本分光株式会社製:FP6600)を用いて測定した。
【0223】
(化合物Aの合成)
化合物Aの合成は、下記のスキームのように行った。
【化20】
スキーム1.化合物Aの合成経路
【0224】
【化21】
スキーム2.化合物4の合成経路
【0225】
〔実施例1〕
化合物1の合成
二口ナスフラスコに4-ペンチン-1-オール(1mL,10.8mmol)を加え、フラスコ内をアルゴン雰囲気にした。続いて脱水ジクロロメタン(54mL)を加え、溶液を-78℃まで冷却した。冷却した溶液にトリフルオロメタンスルホン酸無水物(3.56mL,21.6mmol)、脱水ピリジン(1.74mL,21.6mmol)を加え-78℃で2時間攪拌した後、室温で一晩攪拌させた。反応溶液をろ過し、ジクロロメタンに溶解しない不純物を除去した。その後ろ液を減圧濃縮し、ショートシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:ヘキサン=1:4)で単離精製を行った。その結果、目的物である化合物1を無色~薄褐色の液体状化合物として得た(722mg,31%、図1)。
H NMR(500MHz,DMSO)δ 4.28ppm(t,2H,J=6.3Hz),2.87ppm(t,1H,J=2.8Hz),2.23ppm(td,2H,J=2.8Hz,6.3Hz),1.81ppm(quin,2H,J=6.3Hz).
【0226】
〔実施例2〕
化合物2の合成
二口ナスフラスコに2,3,3-トリメチルインドレニン(257μL,1.6mmol)を加え、フラスコ内をアルゴン雰囲気にした。続いて脱水ジクロロエタン(8mL)、得られた化合物1(519mg,2.4mmol)を加え70℃で一晩攪拌した。反応溶液を減圧濃縮した後、中圧分取カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=100:0~96:4)で単離精製を行った。その結果、目的物である化合物2を褐色の液体状化合物として得た(420mg,70%、図2)。
H NMR(500MHz,CDCl)δ 7.73-7.69ppm(m,1H),7.60-7.52ppm(m,3H),4.70ppm(t,2H,J=7.6Hz),2.92ppm(s,3H),2.40ppm(td,2H,J=6.6Hz,2.5Hz),2.17ppm(quin,2H,J=6.6Hz),2.11ppm(t,1H,J=2.5Hz),1.59ppm(s,6H).
【0227】
〔実施例3〕
化合物3の合成
ナスフラスコに得られた化合物2(420mg,1.12mmol)、3,4-ジエトキシ-3-シクロブテン-1,2-ジオン(75μL,0.51mmol)、1-ブタノール(10mL)、ピリジン(10mL)を加え120℃で一晩加熱還流した。エバポレーターで減圧濃縮を行い、ナスフラスコを真空管に繋ぎ、残留する溶媒を除去した。ナスフラスコ内に残った固形物にメタノールを加えてろ過し、ろ物を熱メタノール、熱ヘキサンで洗浄した。その結果、目的物である化合物3を緑色の粉末状固体として得た(150mg,50%、図3)。
H NMR(500MHz,CDCl)δ 7.35ppm(d,2H,J=7.3Hz),7.31ppm(t,2H,J=7.5Hz,7.9Hz),7.15ppm(t,2H,J=7.3Hz,7.5Hz),7.10ppm(d,2H,J=7.9Hz),5.96ppm(s,2H),4.14ppm(br,4H),2.34ppm(td,4H,J=6.6Hz,2.6Hz),2.14ppm(br,2H),2.04ppm(quin,4H,J=6.6Hz),1.77ppm(br,12H).
【0228】
〔実施例4〕
化合物Aの合成
マイクロチューブに硫酸銅五水和物(7mg,0.028mmol)、アスコルビン酸ナトリウム(0.039mmol)、水(300μL)を加え、溶液がオレンジ色になるまで攪拌した。続いて、ナスフラスコに得られた化合物3(30mg,0.057mmol)、得られた化合物4(52mg,0.125mmol)、ジメチルホルムアミド(1mL)、マイクロチューブ内の水溶液をすべて加え、90℃で40分攪拌した。コンビニエバポを用いて反応溶媒を濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィー(水:メタノール=1:1~1:3)で単離精製を行った。その結果、目的物である化合物Aを青色固体として得た(14mg,17%、図4)。H NMRスペクトルが煩雑で、正確な帰属は行えなかった。トリアゾール環に由来するピークとスクアライン骨格特有のピークの存在により反応が進行していると判断し、質量分析によって目的物であることを確認している。また、化合物Aは、リン酸緩衝液(20mM,pH=7.2)にも高い溶解性(>5mg/mL)を示した。
H NMR(500MHz,MeOD)δ 7.89ppm(s,2H),7.43ppm(d,2H,J=7.5Hz),7.34ppm(t,2H,J=7.8Hz),7.20-7.15ppm(m,4H),5.95ppm(s,2H),4.45ppm(q,4H,J=6.3Hz),4.19ppm(br,4H,),3.47-3.40ppm(m,4H),3.21ppm(t,2H,J=7.8Hz),3.16ppm(t,2H,J=7.1Hz),2.97ppm(t,2H,J=7.8Hz),2.93-2.86ppm(m,6H),2.80-2.74ppm(m,4H),2.45ppm(t,2H,J=7.1Hz),2.35ppm(t,2H,J=7.1Hz),2.25-2.05ppm(m,12H),2.02-1.93ppm(m,4H),1.73ppm(s,12H),1.67-1.60ppm,(m,2H),1.55-1.40ppm(m,6H),1.34-1.17ppm(m,60H),0.86ppm(quin,10H,J=7.1Hz).
MS-ESI(m/z):[M]2- calculated for 681.3929(C741101010),found 681.3898.
【0229】
〔実施例5〕
化合物5の合成
ナスフラスコにヨウ化ナトリウム(6.7g,44.8mmol)を加え、アルゴン雰囲気にした。4-ブロモブタン酸tert-ブチル(5g,22.4mmol)、アセトン(56mL)を加えて室温で二時間攪拌した。反応溶液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で一回洗浄し、硫酸ナトリウムで残留する水分を除去した。その結果、目的物である化合物5を黄色液体として得た(5.7g,94%、図5)。
H NMR(500MHz,CDCl)δ 3.12ppm(t,2H,J=6.9Hz),2.31ppm(t,2H,J=7.2Hz),2.04ppm(quin,2HJ=6.9Hz,7.2Hz),1.41ppm(s,9H,).
【0230】
〔実施例6〕
化合物6の合成
ナスフラスコに得られた化合物5(1g,3.7mmol)、アジ化ナトリウム(600mg,9.3mmol)、ジメチルホルムアミド(12mL)を加え、80℃で一時間攪拌した。反応溶液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。得られた有機相を多量の水で三回洗浄し、硫酸ナトリウムで残留する水分を除去した。その結果、目的物である化合物6を無色透明の液体として得た(677mg,quant、図6)。
H NMR(500MHz,DMSO)δ 3.29ppm(t,2H,J=6.9Hz),2.23ppm(t,2H,J=7.2Hz)1.69ppm(quin,2H,J=6.9Hz,7.2Hz),1.36ppm,(s,9H).
【0231】
化合物7の合成
ナスフラスコに得られた化合物6(667mg,3.65mmol)、ジクロロメタン(7.3mL)を加え、氷浴にて冷却した。トリフルオロ酢酸(7.3mL)を加え、0℃で一時間攪拌した。反応溶液にトルエン(20mL)を加え、エバポレーターで減圧濃縮した。その結果、目的物である化合物7を無色透明の液体として得た(504mg,quant、図7)。
H NMR(500MHz,DMSO)δ 3.30ppm(t,2H,J=6.9Hz),2.25ppm(t,2H,J=7.2Hz),1.70ppm(quin,2H,J=6.9Hz,7.2Hz).
【0232】
化合物8の合成
ナスフラスコにドデシルアミン(2g,10.8mmol)、1,3-プロパンスルトン(1.6g,12.9mmol)、アセトン(30mL)を加え60℃で一晩攪拌した。減圧濃縮後、残留物を酢酸とアセトンの両方で数回洗浄し、未反応のドデシルアミンとプロパンサルトンを除去した。この洗浄後、得られた生成物を、最小量のメタノールを加えたアセトンから再結晶させた。その結果、目的物である化合物8を白色粉末として得た(2g,60%、図8)。
H NMR(500MHz,DMSO)δ 2.95ppm(t,2H,J=6.9Hz),2.88ppm(t,2H,J=7.6Hz),2.55ppm,(t,2H,J=6.9Hz),1.89-1.82ppm(m,2H),1.51-1.44ppm(m,2H),1.28-1.16ppm(m,18H),0.82ppm(t,3H,J=6.8Hz).
【0233】
化合物4の合成
ナスフラスコに化合物7(50mg,0.39mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(132μL,0.77mmol)を加え、アルゴン雰囲気にした。脱水ジメチルホルムアミド(9.5mL)を加え、室温で五分攪拌した後、化合物8(125mg,0.41mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(132μL,0.77mmol)を溶解させた脱水ジメチルホルムアミド(9.5mL)溶液を加え、室温で一晩攪拌させた。反応溶液をろ過することで、未反応の化合物8を除去し、コンビニエバポでジメチルホルムアミドを除去した。その後ナスフラスコに飽和食塩水を加え、酢酸エチルで抽出した。硫酸マグネシウムで得られた有機相に残留する水分を除去した。最後に中圧分取シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=100:0~90:10)で単離精製を行った。その結果、目的物である化合物4を褐色の粘性固体として得た(41mg,25%、図9)。
H NMR(500MHz,MeOD)δ 3.53-3.48ppm(m,2H),3.40-3.31ppm(m,4H),2.87-2.80ppm(m,2H)2.51-2.45ppm(m,2H),2.06-1.96ppm(m,2H),1.92-1.83ppm(m,2H),1.67-1.48ppm(m,2H),1.38-1.21ppm(m,18H),0.88ppm(t,3H,J=6.7Hz).
【0234】
(化合物Bの合成)
化合物Bの合成は、下記のスキームのように行った。
【化22】
スキーム3.化合物Bの合成経路
【0235】
〔実施例10〕
化合物9の合成
ナスフラスコに化合物2(200mg,0.53mmol)、マロンアルデヒドジアニリド塩酸塩(69mg,0.27mmol)、酢酸ナトリウム(44mg,0.53mmol)、無水酢酸(2.7mL)を加え、100℃で三時間攪拌した。反応溶液に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機相を1M過塩素酸水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで残留する水分を除去した。その後中圧分取シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=100:0~95:5)で単離精製を行った。その結果、目的物である化合物9を青色固体として得た(65mg,21%、図10)。
H NMR(500MHz,CDCl)δ 7.97ppm(t,2H,J=13.1Hz),7.50ppm(d,2H,8.1Hz),7.40-7.27ppm(m,6H),7.22ppm(t,2H,J=7.3Hz),7.17ppm(d,2H,J=8.5Hz),7.08ppm(t,1H,J=7.8Hz),4.17ppm(brs,4H),2.42-2.34ppm(m,4H),2.22ppm(t,2H,J=2.5Hz),2.08-1.98ppm(m,4H),1.72ppm(s,12H).
【0236】
〔実施例11〕
化合物Bの合成
マイクロチューブに硫酸銅五水和物(8mg,0.032mmol)、アスコルビン酸ナトリウム(0.044mmol)、水(375μL)を加え、溶液がオレンジ色になるまで攪拌した。続いて、ナスフラスコに化合物3(38mg,0.064mmol)、化合物4(59mg,0.141mmol)、ジメチルホルムアミド(1.25mL)、マイクロチューブ内の水溶液をすべて加え、90℃で40分攪拌した。コンビニエバポを用いて反応溶媒を濃縮し、ジクロロメタン:メタノール=1:1の混合溶媒を用いてセライトろ過を行った。ろ液を濃縮し、サイズ排除カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=1:1)で単離精製を行った。その結果、目的物である化合物Bを青色固体として得た(40mg,41%、図11)。質量分析によって目的物であることを確認している。また、化合物Bは、リン酸緩衝液(20mM,pH=7.2)にも高い溶解性(>5mg/mL)を示した。
H NMR(500MHz,MeOD)δ 8.20ppm(br,2H),8.15-7.84ppm(br,2H),7.45ppm(d,2H,J=6.9Hz),7.37ppm(t,2H,J=7.8Hz),7.30-7.19ppm(m,4H),6.61ppm(br,1H),6.28ppm(br,2H),4.46ppm(br,4H),4.18ppm(br,4H),3.41ppm(br,4H),3.20ppm,(br,2H),2.97-2.69ppm(m,8H),2.50-2.32ppm(m,4H),2.17ppm(br,8H),1.97ppm(br,4H),1.68ppm(s,12H),1.47ppm(br,4H),1.21ppm,(br,38H),0.88-0.83ppm(m,6H).
MS-ESI(m/z):[M] calculated for 1321.8190(C7311310),found 13218164.
【0237】
〔実施例12〕
人工脂質二重膜存在下における化合物A及び化合物Bの吸収・蛍光スペクトル挙動
二種類の秩序相(Lo phase,脂質:スフィンゴミエリン-コレステロール(SM/Chol)、ジパルミトイルホスファチジルコリン-コレステロール(DPPC/Chol))、および非秩序相(Ld phase,脂質:ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC))を形成する三種類のリポソームを作製した。それらのリポソームが分散されているリン酸緩衝液に対し、脂質:色素のモル比が200:1となるよう色素を添加し、37℃で30分間インキュベートした後、吸収蛍光スペクトルを測定した。得られた結果を表1~2、図12~13に示す。
【0238】
【表1】
【0239】
【表2】
【0240】
(化合物Cの合成)
化合物Cの合成は、下記のスキームのように行った。
【化23】
スキーム4.化合物Cの合成経路
【0241】
〔実施例13〕
(化合物11a及び化合物11bの合成)
二口ナスフラスコに1-ブロモピレン(2.00g,7.11mmol)を加え、フラスコ内をアルゴン雰囲気にした。脱水ジクロロメタン(36mL)を加え、氷浴にて冷却した。この溶液に対し塩化アルミニウム(1.04g,7.82mmol)を加えて15分攪拌し、さらにプロピオン酸クロリド(0.744mL,8.53mmol)を滴下し室温にて12時間攪拌した。水を加えて反応を停止し、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで残留した水分を除去した。有機層を減圧濃縮した後、中圧分取シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=75:25→70:30)にて分離精製を行った。その結果、目的物である11aと11bの混合物を黄色固体として得た(1.64g,68%、図14)。
H NMR(500MHz,CDCl,TMS):δ 8.96-8.05(m,8H),3.27-3.22(m,2H),1.38-1.34(m,3H).
【0242】
〔実施例14〕
化合物12の合成
二口ナスフラスコに化合物11aと化合物11bの混合物(1.53g,4.54mmol)、炭酸セシウム(4.40g,13.6mmol)、酢酸パラジウム(II)(101mg,0.450mmol)、RuPhos(424mg,0.910mmol)、撹拌子を加え、還流管装着後、フラスコ内をアルゴン雰囲気にした。4-ピペリジンカルボン酸エチル(1.05mL,6.81mmol)とアルゴンバブリングをしたトルエン(23mL)を加え、100°Cのオイルバス中で20時間加熱攪拌した。反応溶液に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで残留した水分を除去した。有機層を減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=80:20)にて分離精製を行った。その結果、目的物である12を黄色固体として得た(164.2mg,17%、図15)。
H NMR(500MHz,CDCl,TMS):δ 8.75(d,J=9.5Hz,1H),8.48(d,J=9.1Hz,1H),8.28(d,J=8.1Hz,1H),8.16(d,J=8.1Hz,1H),8.10(dd,J=8.4,9.5Hz,2H),8.04(d,J=9.1Hz,1H),7.75(d,J=8.4Hz,1H),4.23(q,J=7.2Hz,2H),3.56-3.53(m,2H),3.25(q,J=7.2Hz,2H),3.00(m,2H),2.57(m,1H),2.23-2.17(m,4H),1.38-1.31(m,6H).
【0243】
〔実施例15〕
化合物13の合成
ナスフラスコに化合物12(53.3mg,0.129mmol)を加えた。同フラスコに水酸化カリウムの0.25Mエタノール溶液(2.58mL)を加え、40°Cオイルバス中で21時間攪拌した。その後、希塩酸を滴下して反応を停止させ、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで残留した水分を除去した。有機層を減圧濃縮した後、中圧分取シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン→ジクロロメタン:メタノール=88:12)にて分離精製を行った。その結果、目的物である13を黄色固体として得た(25.2mg,58%、図16)。
H NMR(500MHz,DMSO-d6):δ 8.57(d,J=9.3Hz,1H),8.45(d,J=8.1Hz,1H),8.40(d,J=9.3Hz,1H),8.26(d,J=8.2Hz,1H),8.25(d,J=8.2Hz,1H),8.18(d,J=7.9Hz,1H),8.16(d,J=7.9Hz,1H),7.83(d,J=8.1Hz,1H),3.45(t,2H),3.25(q,J=7.2Hz,2H),2.95(m,2H),2.10-1.90(m,4H),1.19(t,J=7.2Hz,3H).
【0244】
〔実施例16〕
化合物Cの合成
ナスフラスコに化合物13(87.4mg,0.23mmol)、comu(102.8mg,0.24mmol)を加え、フラスコ内をアルゴン雰囲気にした。脱水DMF(5.6mL)、DIEPA(78.2μL,0.46mmol)を加え、室温中で45分間撹拌した。続いて、別の二口ナスフラスコにC12Sul(73.6mg,0.24mmol)を加えてフラスコ内をアルゴン雰囲気にし、脱水DMF(6mL)、DIEPA(78.2μL,0.46mmol)を加えて室温中で撹拌した。この溶液を化合物13が入ったナスフラスコに加え、室温中で27.5時間撹拌した。反応溶液を減圧濃縮し、中圧分取シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン→ジクロロメタン:メタノール=92:8)にて分離精製を行った。その結果、目的物である16を黄色固体として得た(148.9mg,81%、図17)。また、化合物Cは、リン酸緩衝液(20mM,pH=7.2)にも高い溶解性(>5mg/mL)を示した。
※C12Sul:K.Sakai,et.al.Colloids Surf.A Physicochem.Eng.Asp.2009,333,26-31.
H NMR(500MHz,DMSO-d6):δ 8.56(d,J=9.5Hz,1H),8.43(d,J=9.3Hz,1H),8.41(d,J=8.2Hz,1H),8.24(dd,J=8.4Hz,8.2Hz,2H),8.18(brs,1H),8.15(d,J=9.5Hz,1H),7.84(d,J=8.4Hz,1H),3.47(brs,4H),3.37-3.18(m,8H),3.12-3.01(m,7H),2.07-2.05(m,2H),1.88-1.80(m,4H),1.55(brs,1H),1.46(m,2H),1.24-1.18(m,35H), 0.83- 0.78 (m, 3H).
HRMS(ESI)Calcd for C4053:673.3681,Found:673.3659([M]).
【0245】
(化合物Dの合成)
化合物Dの合成は、下記のスキームのように行った。
【化24】
スキーム5.化合物Dの合成経路
【0246】
〔実施例17〕
化合物14a及び化合物14bの合成
二口ナスフラスコに1-ブロモピレン(1.00g,3.56mmol)を加え、フラスコ内をアルゴン雰囲気にした。脱水ジクロロメタン(15mL)を加え、氷浴にて冷却した。この溶液に対し塩化アルミニウム(1.19g,8.89mmol)を加えて20分攪拌し、さらにコハク酸モノエチルクリド(1.25mL,8.89mmol)を滴下し室温にて13時間攪拌した。氷浴にて冷却しながら水を加えて反応を停止し、反応溶液を水と飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで残留した水分を除去した。有機層を減圧濃縮した後、中圧分取シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=70:30→60:40)にて分離精製を行った。その結果、目的物である化合物14aと化合物14bの混合物を黄色固体として得た(824.4mg,57%、図18)。
H NMR(500MHz,CDCl,TMS):δ 8.99-8.05(m,8H),4.24-4.19(m,2H),3.55-3.52(m,2H),2.94-2.91(m,2H),1.32-1.25(m,3H).
【0247】
〔実施例18〕
化合物15の合成
二口ナスフラスコに化合物14aと化合物14bの混合物(785.5mg,1.92mmol)、炭酸セシウム(875.8mg,2.69mmol)、酢酸パラジウム(II)(21.6mg,0.096mmol)、RuPhos(89.6mg,0.19mmol)を加え、還流管を装着しフラスコ内をアルゴン雰囲気にした。アルゴンバブリングをしたトルエン(9.5mL)を加え、100°Cのオイルバス中で20分加熱攪拌し、さらにピペリジン(0.23mL,2.30mmol)を滴下して22.5時間加熱還流した。反応溶液をろ過し、得られたろ液を減圧濃縮した後、ジクロロメタンを加えた。その溶液を水と飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで残留した水分を除去した。有機層を減圧濃縮した後、中圧分取シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=60:40→50:50)にて分離精製を行った。さらに、目的物である15とその異性体を分離するため、リサイクルGPCにて異性体分離を行った。その結果、目的物である15を黄色固体として得た(255.0mg,32%、図19)。
H NMR(500MHz,CDCl,TMS):δ 8.79(d,J=9.4Hz,1H),8.51(d,J=9.2Hz,1H),8.36(d,J=8.1Hz,1H),8.16(d,J=8.1Hz,1H),8.10(dd,J=8.3,9.4Hz,2H),8.04(d,J=9.2Hz,1H),7.76(d,J=8.3Hz,1H),4.20(q,J=7.2Hz,2H),3.54(t,J=6.6Hz,2H),3.22(brs,4H),2.90(t,J=6.6Hz,2H),1.95-1.91(m,4H),1.72(brs,2H),1.29(t,J=7.2Hz,3H).
【0248】
〔実施例19〕
化合物16の合成
ナスフラスコにエタノールに溶かした0.25M水酸化カリウム溶液(6mL)、化合物15(82.6mg,0.20mmol)、水2滴を加えて40°Cオイルバス中で6時間攪拌した。その後、希塩酸を滴下して反応を停止させ、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで残留した水分を除去した。有機層を減圧濃縮した後、中圧分取シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン→ジクロロメタン:メタノール=90:10)にて分離精製を行った。その結果、目的物である16を黄色固体として得た(quant.、図20)。
H NMR(500MHz,DMSO-d6):δ 8.59(d,J=9.2Hz,1H),8.48(d,J=8.1Hz,1H),8.41(d,J=9.2Hz,1H),8.26(dd,J=8.2Hz,8.2Hz,2H),8.17(dd,J=9.2Hz,9.3Hz,2H),7.83(d,J=8.1Hz,1H),3.43(t,J=6.2Hz,2H),3.13(brs,4H),2.70(t,J=6.2Hz,2H),1.86-1.84(m,4H),1.64(brs,2H).
【0249】
〔実施例20〕
化合物Dの合成
ナスフラスコに得られた化合物16(56.1mg,0.15mmol)、comu(68.5mg,0.16mmol)を加え、フラスコ内をアルゴン雰囲気にした。脱水DMF(3.5mL)、DIEPA(51.0μL,0.30mmol)を加え、室温中で30分間撹拌した。続いて、別の二口ナスフラスコにC12Sul(52.1mg,0.17mmol)を加えてフラスコ内をアルゴン雰囲気にし、脱水DMF(3.8mL)、DIEPA(51.0μL,0.30mmol)を加えて室温中で撹拌した。この溶液を化合物16が入ったナスフラスコに加え、室温中で25時間撹拌した。反応溶液を減圧濃縮し、中圧分取シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン→ジクロロメタン:メタノール=90:10)にて分離精製を行った。その結果、目的物である6を黄色固体として得た(100.6mg,83%、図21)。また、化合物Dは、リン酸緩衝液(20mM,pH=7.2)にも高い溶解性(>5mg/mL)を示した。
※C12Sul:K.Sakai,et.al.Colloids Surf.A Physicochem.Eng.Asp.2009,333,26-31.
H NMR(500MHz,DMSO-d6):δ 8.55-8.52(m,1H),8.45-8.41(m,2H),8.24-8.22(m,2H),8.15(d,J=9.2Hz,1H),8.11-8.09(brs,1H),7.82(d,J=8.1Hz,1H),3.91(brs,2H),3.44(brs,1H),3.37(brs,2H),3.29(brs,2H),3.23-3.20(m,2H),3.13-3.05(brs,12H),2.82-2.81(brs,2H),2.44-2.33(brs,6H),1.86-1.85(m,6H),1.75(brs,1H),1.66(m,2H),1.53(brs,1H),1.40(brs,1H),1.21-1.17(m,22H),0.81-0.79(m,3H);HRMS(ESI)Calcd for C4053:673.3681,Found:673.3667([M]).
【0250】
〔実施例21〕
化合物C及び化合物Dの有機溶媒中での吸収・蛍光スペクトル挙動
表3、図22に、DMSO中における化合物C及び化合物Dの吸収(実線)・蛍光(点線)スペクトル測定をした結果を示す。色素濃度:10μM(吸収スペクトル)、5μM(蛍光スペクトル)。励起波長:400nm。
【0251】
【表3】
【0252】
〔実施例22〕
化合物C及び化合物Dの有リン酸緩衝溶液中での蛍光スペクトル挙動
表4、図23に、20mMリン酸緩衝液中における化合物C及び化合物Dの蛍光スペクトル測定をした結果を示す。色素濃度:5μM。励起波長:400nm。
【0253】
【表4】
【0254】
〔実施例23〕
人工脂質二重膜存在下における化合物C及び化合物Dの蛍光挙動
秩序相(Lo phase,脂質:スフィンゴミエリン-コレステロール(SM/Chol))、および非秩序相(Ld phase,脂質:ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC),ジオレオイルホスファチジルコリン-コレステロール(DOPC/Chol))を形成する3種類のリポソームを作製した。それらのリポソームが分散されているリン酸緩衝液に対し、脂質:色素のモル比が100:1となるよう色素を添加し、蛍光スペクトルを測定した。得られた結果を表5、図24~25に示す。
【0255】
【表5】
【0256】
〔実施例24〕
化合物A~化合物Dを用いた生体マウス組織の経皮的染色と蛍光イメージング
各実施例で得られた化合物A~化合物Dを用いた生体マウス皮膚組織の経皮的染色と蛍光イメージングを行った。より詳細には、実施例における化合物A~化合物Dにより染色した生体マウス組織の多光子蛍光イメージング(化合物A~化合物Dの濃度10mg/mLの水溶液をマウスの静脈に投与。励起波長:化合物Aの場合は1100nm、化合物B~Dの場合は920nm)を行った。なお、本発明の化合物A~化合物Dはいずれも高い水溶性を有することから、このようにマウスの静脈に10mg/mLの水溶液を投与することが可能であった。
【0257】
顕微鏡観察には、二光子顕微鏡A1R MP+(NIKON)を用いた。測定において、化合物Aについては励起のためのレーザー光源として960nmを用いた。スキャンは試料の深さ200μmまで行われた。三次元再構成像は、得られたデータを付属のソフトウェアで処理することによって得られた。
【0258】
マウス個体を麻酔し、後趾を上記染色液に室温で2~3時間浸漬もしくは血中投与することによって、十分に染色することができた。
【0259】
得られた結果を、化合物A:図26、化合物B:図27、化合物C:図28、化合物D:図29にそれぞれ示す。
【0260】
図26図29に示されるように、化合物A~化合物Dはいずれにおいても、マウス組織を構成する各細胞の膜を強力に染色し、個々の細胞の境界を区別するとともに組織構造を明瞭に描出できることが認められた。また、化合物C、Dの場合は、蛍光ソルバトクロミズムを示し、レシオメトリック解析が可能になった。
図1
図2
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