(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017779
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】導電性高分子組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
C08L 65/00 20060101AFI20250130BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20250130BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20250130BHJP
H01B 1/20 20060101ALI20250130BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20250130BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20250130BHJP
H01B 1/12 20060101ALI20250130BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20250130BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
C08L65/00
C08L29/04 B
C08K3/08
H01B1/20 A
H01B1/22 A
H01B1/00 L
H01B1/12 F
H01B1/00 H
H01B13/00 503B
H01B5/14 A
H01B5/14 Z
H01B13/00 503Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121016
(22)【出願日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】川上 淳一
(72)【発明者】
【氏名】箭野 裕一
【テーマコード(参考)】
4J002
5G301
5G307
5G323
【Fターム(参考)】
4J002BE02X
4J002CE00W
4J002DA076
4J002DF007
4J002EN027
4J002EN037
4J002EN047
4J002EN107
4J002EU047
4J002EU117
4J002FA046
4J002FD116
4J002GQ02
4J002HA06
5G301DA03
5G301DA28
5G301DA42
5G301DD02
5G301DE01
5G307FA01
5G307FA02
5G307FB03
5G307FC02
5G307FC09
5G307FC10
5G307GA05
5G307GC01
5G307GC02
5G323BA05
5G323BB01
5G323BB06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来公知の導電性高分子組成物については、表面抵抗が高いために用途が限定されるという課題があった。本発明は、従来公知の組成物に比べて表面抵抗が低く、安定性に優れた導電性高分子組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】ポリチオフェンとして、例えば、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸を構造単位として含むポリチオフェン(A)を0.01~10質量%含み、分散性金属(B)を0.01~1.0質量%含み、更にポリビニルアルコール(C)を含むことを特徴とする、導電性高分子組成物を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造単位、及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)を0.01~10質量%含み、分散性金属(B)を0.01~1.0質量%含み、更にポリビニルアルコール(C)を前記分散性金属(B)1質量部に対して、0.01~4質量部含むことを特徴とする、導電性高分子組成物。
【化1】
[前記一般式(1)及び(2)において、R
2は、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表す。mは、1~10の整数を表す。nは、0又は1を表す。]
【請求項2】
前記分散性金属(B)が、銀ナノ粒子、銀ナノプレート、銀ナノワイヤー、銅ナノ粒子、銅ナノプレート、及び銅ナノワイヤーからなる群より選択される少なくとも1種の分散性金属である、請求項1に記載の導電性高分子組成物。
【請求項3】
前記分散性金属(B)が、銀ナノワイヤーである、請求項1に記載の導電性高分子組成物。
【請求項4】
前記ポリチオフェン(A)の含有量が、0.1~5質量%である、請求項1に記載の導電性高分子組成物。
【請求項5】
前記分散性金属(B)の含有量が、前記ポリチオフェン(A) 1質量部に対して、0.01~100質量部である、請求項1に記載の導電性高分子組成物。
【請求項6】
アミン化合物(D)を更に含む、請求項1に記載の導電性高分子組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の導電性高分子組成物を、支持体に塗布し、次いで、乾燥させることを特徴とする導電性高分子膜の製造方法。
【請求項8】
下記一般式(1)で表される構造単位、及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)と、分散性金属(B)と、ポリビニルアルコール(C)とを含む導電性高分子膜。
【化2】
[前記一般式(1)及び(2)において、R
2は、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表す。mは、1~10の整数を表す。nは、0又は1を表す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子組成物及びその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、又はポリピロール等に代表されるπ共役系高分子に、電子受容性化合物をドーパントとしてドープした導電性高分子材料が開発されている。上記導電性高分子材料については、例えば、帯電防止剤、コンデンサの固体電解質、導電性塗料、電波遮蔽材、エレクトロクロミック素子、電極材料、熱電変換材料、透明導電膜、化学センサー、及びアクチュエータ等への応用が検討されている。これらの中でも、化学的安定性の面からポリチオフェン系導電性高分子材料が実用上有用である(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
ポリチオフェン系導電性高分子材料としては、例えば、ドーパントとなるポリスチレンスルホン酸(PSS)の水溶液中で3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)を重合させることで得られるPEDOT:PSS水分散体溶液、および水溶性の付与とドーピング作用とを兼ね備えた置換基(スルホ基、スルホネート基等)を、直接又はスペーサを介してポリマー主鎖中に有する、いわゆる自己ドープ型導電性高分子が挙げられる。これらのポリチオフェン系導電性高分子材料の用途として透明電極への展開が検討されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-152667号公報
【特許文献2】特開2008-235645号公報
【特許文献3】特開2009-205924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来公知のポリチオフェン系導電性高分子材料と微小構造金属との混合物からなる透明電極は、高い透明性と低い表面抵抗値を兼ね備えたものである。しかしながら、微小構造金属の酸化に伴い表面抵抗値が増加してしまう点において、改善の余地があった。
【0006】
本発明の一態様は、従来公知の組成物に比べて、表面抵抗値の増加が低減し、低い表面抵抗値を安定的に維持することができる導電性高分子膜を製造可能な導電性高分子組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す導電性高分子組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の一態様は以下に示す通りの導電性高分子組成物に関するものである。
【0009】
[1] 下記一般式(1)で表される構造単位、及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)を0.01~10質量%含み、分散性金属(B)を0.01~1.0質量%含み、更にポリビニルアルコール(C)を前記分散性金属(B)1質量部に対して、0.01~4質量部含むことを特徴とする、導電性高分子組成物。
【0010】
【0011】
[前記一般式(1)及び(2)において、R2は、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表す。mは、1~10の整数を表す。nは、0又は1を表す。]
[2] 前記分散性金属(B)が、銀ナノ粒子、銀ナノプレート、銀ナノワイヤー、銅ナノ粒子、銅ナノプレート、及び銅ナノワイヤーからなる群より選択される少なくとも1種の分散性金属である、[1]に記載の導電性高分子組成物。
【0012】
[3] 前記分散性金属(B)が、銀ナノワイヤーである、[1]又は[2]に記載の導電性高分子組成物。
【0013】
[4] 前記ポリチオフェン(A)の含有量が、0.1~5質量%である、[1]から[3]のいずれかに記載の導電性高分子組成物。
【0014】
[5] 前記分散性金属(B)の含有量が、前記ポリチオフェン(A) 1質量部に対して、0.01~100質量部である、[1]から[4]のいずれかに記載の導電性高分子組成物。
【0015】
[6] アミン化合物(D)を更に含む、[1]から[5]のいずれかに記載の導電性高分子組成物。
【0016】
[7] [1]から[6]のいずれかに記載の導電性高分子組成物を、支持体に塗布し、次いで、乾燥させることを特徴とする導電性高分子膜の製造方法。
【0017】
[8] 下記一般式(1)で表される構造単位、及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)と、分散性金属(B)と、ポリビニルアルコール(C)とを含む導電性高分子膜。
【0018】
【0019】
[前記一般式(1)及び(2)において、R2は、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表す。mは、1~10の整数を表す。nは、0又は1を表す。]
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様は、従来公知の組成物に比べて、表面抵抗値の増加が低減し、低い表面抵抗値を安定的に維持することができる導電性高分子膜を製造可能な導電性高分子組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその両端の数値を含む以上以下の数値範囲を意味する。
【0022】
本発明の一態様に係る導電性高分子組成物は、上記の通り、従来公知の組成物に比べて表面抵抗が低い導電性高分子膜を提供可能である。
【0023】
本発明の一態様に係る導電性高分子組成物は、優れた耐久特性を示すものであり、分散性金属の酸化劣化を著しく抑制できるという点で、顕著な効果を奏するものである。
【0024】
上記導電性高分子組成物を用いて製造される導電性高分子膜は、例えば透明電極及び透明導電膜としての使用が可能となる。
【0025】
本発明の一態様に係る導電性高分子組成物は、下記一般式(1)で表される構造単位、及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)を0.01~10質量%含み、分散性金属(B)を0.01~1.0質量%含み、更にポリビニルアルコール(C)を分散性金属(B)1質量部に対して、0.01~4質量部含むことを特徴とする。
【0026】
【0027】
[上記一般式(1)及び(2)において、R2は、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表す。mは、1~10の整数を表す。nは、0又は1を表す。]
上記一般式(1)及び(2)中、R2は、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表す。
【0028】
上記の炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、n-へキシル基、2-エチルブチル基、又はシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0029】
上記のR2については、優れた耐久特性を示す点で、水素原子、メチル基、エチル基、又はフッ素原子であることが好ましく、水素原子、又はメチル基であることがより好ましい。
【0030】
上記一般式(1)及び(2)中、mは、1~10の整数を表し、優れた耐久特性を示す点で、1~6の整数であることが好ましく、1~4の整数であることがより好ましく、2又は3であることがより好ましい。
【0031】
上記一般式(1)及び(2)中、nは、0又は1を表し、優れた耐久特性を示す点で、1であることが好ましい。
【0032】
上記一般式(2)で表される構造単位は、上記一般式(1)で表される構造単位のドーピング状態を表す。
【0033】
ドーピングにより絶縁体-金属転移を引き起こすドーパントは、アクセプタとドナーとに分けられる。前者は、ドーピングにより導電性ポリマーの高分子鎖の近くに入り主鎖の共役系からπ電子を奪う。結果として、主鎖上に正電荷(正孔、ホール)が注入されるため、p型ドーパントとも呼ばれる。また、後者は、逆に主鎖の共役系に電子を与えることになり、この電子が主鎖の共役系を動くことになるため、n型ドーパントとも呼ばれる。
【0034】
本発明の一態様におけるドーパントは、ポリマー分子内に共有結合で結びついたスルホ基又はスルホナート基であり、p型ドーパントである。このように外部からドーパントを添加することなく導電性を発現するポリマーは自己ドープ型高分子と呼ばれている。
【0035】
上記一般式(1)又は(2)で表される構造単位としては、特に限定するものではないが、具体的には、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸、8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロパンスルホン酸、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-エチル-1-プロパンスルホン酸、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロピル-1-プロパンスルホン酸、又は4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸等が例示される。
【0036】
本発明の一態様に係る、上記一般式(1)で表される構造単位、及び上記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)については、優れた耐久特性を示す点で、上記一般式(1)で表される構造単位、及び上記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を2つ以上繰り返して含むポリチオフェン(A)であることが好ましく、上記一般式(1)で表される構造単位、及び上記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位からなり、当該構造単位を2つ以上繰り返してなるポリチオフェン(A)であることがより好ましい。
【0037】
本発明の一態様においてポリチオフェン(A)の導電率は、特に限定するものではないが、フィルム等の膜状態での導電率(電気伝導度)として、0.01S/cm以上であることが好ましい。
【0038】
なお、本発明の一態様におけるポリチオフェン(A)については、公知情報に基づいて合成したものを用いることができる。
【0039】
本発明の一態様に係る導電性高分子組成物において、前述した一般式(1)で表される構造単位、及び一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)の濃度については、上記の導電性高分子組成物全量を100質量%として、0.01~10質量%の範囲であることを特徴とする。また、当該ポリチオフェン(A)の濃度は、0.1~5質量%の範囲であってもよい。なお、導電率及び操作性に優れる点で、本発明の一態様に係る導電性高分子組成物中のポリチオフェン(A)の濃度は、0.02~7質量%の範囲であることが好ましく、0.03~5質量%の範囲であることがより好ましく、0.03~3質量%の範囲であることがより好ましく、0.03~2質量%の範囲であることがより好ましい。
【0040】
本発明の一態様に係る導電性高分子組成物は、分散性金属(B)を含有し、その濃度が、上記の導電性高分子組成物全量を100質量%として、0.01~1.0質量%あることを特徴とする。この特徴により、導電率の高い塗膜を得ることができる。
【0041】
上記の分散性金属(B)としては、特に限定するものではないが、具体的には、分散性の銀、又は分散性の銅が挙げられる。これらの分散性金属の形状としては特に制限はなく、粒子、フィラー、プレート、ロッド、ピラミッド、キューブ、チューブ、ワイヤー、ファイバー、又はパーティクル等の形状のものを使用することができる。
【0042】
また、上記の分散性金属(B)としては、導電性に優れる点で、銀ナノ粒子、銀ナノプレート、銀ナノワイヤー、銅ナノ粒子、銅ナノプレート、及び銅ナノワイヤーからなる群より選択される少なくとも1種の分散性金属が好ましく、保存安定性の観点から、分散性の銀ナノワイヤーがより好ましい。
【0043】
上記の分散性金属(B)の好ましいサイズについては、その形状によって変動する。例えば、ナノ粒子については、粒子直径が1~1000nmであることが好ましい。ナノワイヤーについては、長さが1~50μmであることが好ましい。ナノファイバーについては、直径が1~100nm、長さが直径の100倍以上であることが好ましい。ナノロッドについては、直径が1~100nm、長さが直径の20~100倍であることが好ましい。ナノキューブについては、一片の長さが1~200nmであることが好ましい。ナノプレートについては、厚みが1~100nm、横幅が厚みの2~20倍であることが好ましい。
【0044】
なお、上記の分散性金属(B)は、水溶媒中又は有機溶媒中に分散しているもの、又は分散し得るものを表す。すなわち、本発明の一態様に係る導電性高分子組成物については、分散性金属(B)のペーストを配合することによって製造することもできるし、分散性金属(B)の分散液を配合することによって製造することもできる。
【0045】
本発明の一態様に係る導電性高分子組成物は、上記の導電性高分子組成物全量を100質量%として、分散性金属(B)を0.01~1.0質量%含むことを特徴とするが、当該含有量については、分散性金属(B)そのものの含有量を表す。すなわち、分散性金属(B)の分散液を利用して本発明の一態様に係る導電性高分子組成物を製造する場合、上記分散液に含まれる溶媒等の成分については、分散性金属(B)の含有量として加味されない。
【0046】
上記分散性金属(B)の含有量については、上記ポリチオフェン(A)との相溶性が高く、高い導電性を維持することができるという点で、上記の導電性高分子組成物全量を100質量%として、0.05~0.9質量%であることが好ましく、0.08~0.8質量%であることがより好ましい。
【0047】
また、上記分散性金属(B)の含有量は、特に限定するものではないが、優れた耐久特性を示す点で、上記のポリチオフェン(A) 1質量部に対して、0.01~100質量部であることが好ましく、0.05~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましい。
【0048】
本発明の一態様に係る導電性高分子組成物は、ポリビニルアルコール(C)を含んでいる。上記の導電性高分子組成物が、分散性金属(B)と共にポリビニルアルコール(C)を含むことで、分散性金属(B)の酸化を効果的に低減できる。分散性金属(B)の酸化は、上記の導電性高分子組成物により得られる導電性高分子膜の表面抵抗値を増大させてしまう。そのため、ポリビニルアルコール(C)によれば、低い表面抵抗値を安定的に維持することができる、すなわち耐久特性に優れた導電性高分子膜を製造可能な導電性高分子組成物を得ることができる。
【0049】
このような耐久特性に優れた導電性高分子膜によれば、超寿命な透明電極等を提供できるため、エネルギー効率の改善に貢献し得る。これにより、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できる。
【0050】
本発明の一態様に係る導電性高分子組成物におけるポリビニルアルコール(C)の濃度(含有量)としては、特に限定するものではないが、優れた耐久特性を示す点で、上記の導電性高分子組成物全量を100質量%として、0.01~10質量%の範囲であることが好ましく、0.01~5.0質量%の範囲であることがより好ましい。
【0051】
また、上記のポリビニルアルコール(C)の含有量は、特に限定するものではないが、優れた耐久特性を示す点で、上記の分散性金属(B) 1質量部に対して、0.01~4質量部であることが好ましく、0.01~2質量部であることがより好ましく、0.01~1.5質量部であることがより好ましく、0.01~1質量部であることがより好ましい。
【0052】
本発明の一態様に係る導電性高分子組成物は、アミン化合物(D)を更に含んでいてもよく、優れた耐久特性を示す点で、含んでいることが好ましい。
【0053】
上記のアミン化合物(D)としては、アンモニア、又は総炭素数が1~16の1級、2級、若しくは3級の有機アミン化合物であることが好ましい。
【0054】
上記の総炭素数が1~16の1級、2級、若しくは3級の有機アミン化合物としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、トリエチルアミン、ノルマル-プロピルアミン、イソプロピルアミン、ノルマルブチルアミン、ヘキシルアミン、モノエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、メチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、3-メチルアミノ-1,2-プロパンジオール、3-ジメチルアミノ-1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジアミン、トリイソブチルアミン、トリイソペンチルアミン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、1、2-ジメチルイミダゾール、ピリジン、ピコリン、又はルチジンを例示することができる。
【0055】
上記のアミン化合物(D)を本発明の一態様に係る導電性高分子組成物に含有させることによって、当該アミン化合物(D)は、上記のポリチオフェン(A)と作用し、アミン化合物(D)の共役酸となり、ポリチオフェン(A)のアンモニウムイオン塩が調製される。上記のアミン化合物(D)の共役酸としては、特に限定するものではないが、例えば、アンモニウムイオン、又は総炭素数が1~16の1級、2級、若しくは3級のアンモニウムイオンを例示することができ、より具体的には、例えば、アンモニウムイオン、メチルアンモニウムイオン、ジメチルアンモニウムイオン、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ノルマル-プロピルアンモニウムイオン、イソプロピルアンモニウムイオン、ノルマルブチルアンモニウムイオン、ヘキシルアンモニウムイオン、2-ヒドロキシエチルアンモニウムイオン、N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムイオン、N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムイオン、ジ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムイオン、N-メチル-N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムイオン、N,N,N-トリ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムイオン、2,3-ジヒドロキシプロピルアンモニウムイオン、N-メチル-N-(2,3-ジヒドロキシプロピル)アンモニウムイオン、N,N-ジメチル-N-(2,3-ジヒドロキシプロピル)アンモニウムイオン、1,4-ブタンジアンモニウムイオン、トリイソブチルアンモニウムイオン、トリイソペンチルアンモニウムイオン、トリイソオクチルアンモニウムイオン、イミダゾールカチオン、N-メチルイミダゾールカチオン、1,2-ジメチルイミダゾールカチオン、ピリジニウムイオン、ピコリニウムイオン、又はルチジニウムイオンを挙げることができる。
【0056】
上記アミン化合物(D)の含有量については、低凝固性の点で、導電性高分子組成物全量を100質量%として、0.01~10質量%であることが好ましく、0.01~5質量%であることがより好ましく、0.01~3質量%であることがより好ましい。
【0057】
本発明の一態様に係る導電性高分子組成物が、上記のアミン化合物(D)を含む場合、上記の一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)については、下記の一般式(1’)で表される構造単位及び一般式(2’)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)として記載することができる。
【0058】
【0059】
[上記一般式(1’)及び一般式(2’)中、R2、m、及びnの定義及び好ましい範囲は、上記一般式(1)及び一般式(2)において示したR2、m、及びnの定義及び好ましい範囲と同義である。Mは、アミン化合物(D)の共役酸を表す。]
本発明の一態様に係る導電性高分子組成物については、上記のポリチオフェン(A)、分散性金属(B)、ポリビニルアルコール(C)、及びアミン化合物(D)に加えて、水を含んでいてもよく、操作性に優れる点で、水を含んでいることが好ましい。
【0060】
当該水については、特に限定するものではないが、例えば、蒸留水、イオン交換水、RO水、又は超純水等が挙げられる。
【0061】
当該水の含有量については、特に限定するものではないが、水を含んだ導電性高分子組成物全体を100質量%として、60~99.9質量%であることが好ましく、80~99.7質量%であることがより好ましく、95~99.5質量%であることがより好ましい。
【0062】
本発明の一態様に係る導電性高分子組成物については、上記のポリチオフェン(A)、分散性金属(B)、ポリビニルアルコール(C)、アミン化合物(D)、及び水に加えて、その他の添加剤(E)を含んでいてもよい。
【0063】
上記のその他の添加剤(E)としては、特に限定するものではないが、例えば、バインダー、界面活性剤、又は有機溶媒等を挙げることができる。なお、当該その他の添加剤(E)については、単独で用いられてもよいし、複数同時に組み合わせて用いられてもよい。
【0064】
上記のバインダーとしては、特に限定するものではないが、例えば、ビニルピロリドン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メチルメタクリレート樹脂、スチレンブタジエン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ポリイミド、又はニトロセルロース若しくはその他のセルロース樹脂等が挙げられる。
【0065】
当該バインダーは、硬化性を有しており、上記の導電性高分子組成物を成膜させる時などにその成膜を補助させることができる。当該バインダーの硬化方法としては、例えば、熱硬化又はUV硬化が挙げられる。
【0066】
上記のバインダーについては、成膜性に優れる点で、ビニルピロリドン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0067】
なお、本発明の一態様に係る導電性高分子組成物が上記のバインダーを含有する場合、上記のバインダーの含有量は、特に限定するものではないが、上記のポリチオフェン(A) 1質量部に対して、1~1,500質量部であることが好ましく、1~1,000質量部であることがより好ましく、1~500質量部であることがより好ましい。
【0068】
上記の界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、高分子型非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、又はアセチレングリコール型界面活性剤等で例示される。
【0069】
上記両性界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、ベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。ベタイン型両性界面活性剤としては特に限定するものではないが、例えば、アルキルジメチルベタイン、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、又はラウリルジヒドロキシエチルベタイン等が挙げられる。
【0070】
上記フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基を有するものが好ましく、特に限定するものではないが、例えば、パーフルオロアルカン、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸、又はパーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0071】
上記シリコーン系界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性ポリジメチルシロキサン、ヒドロキシル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、又はシリコーン変性アクリル化合物等が挙げられる。
【0072】
フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤はレベリング剤として塗膜の平坦性を改善するのに有効である。
【0073】
上記の界面活性剤の具体例としては、オルフィン(登録商標)シリーズ(日信化学工業株式会社製)、アセチレノール(登録商標)シリーズ(川研ファインケミカル株式会社製)、アミゼット(登録商標)シリーズ(川研ファインケミカル株式会社製)、サーフロン(登録商標)シリーズ(AGCセイミケミカル株式会社製)、又はフタージェント(登録商標)シリーズ(株式会社ネオス製)等が挙げられる。
【0074】
なお、本発明の一態様に係る導電性高分子組成物が上記の界面活性剤を含有する場合、上記の界面活性剤の含有量は、特に限定するものではないが、上記のポリチオフェン(A) 1質量部に対して、0.0001~1質量部であることが好ましく、0.001~1質量部であることがより好ましく、0.001~0.1質量部であることがより好ましい。
【0075】
上記の有機溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、アルコールを挙げることができ、より詳しい例として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、ブトキシエタノール、又はエチレングリコール等を挙げることができる。
【0076】
本発明の一態様に係る導電性高分子組成物については、水及び有機溶媒を除いた成分の濃度が、上記の導電性高分子組成物全量を100質量%として、0.1~20質量%の範囲であることが好ましく、0.3~15質量%の範囲であることがより好ましく、0.5~10質量%の範囲であることがより好ましい。
【0077】
本発明の一態様に係る導電性高分子組成物を調製する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、上記のポリチオフェン(A)の溶液又は固体と、分散性金属(B)と、ポリビニルアルコール(C)と、必要に応じて水とを混合する方法が挙げられる。このとき、さらに必要に応じて、上記のアミン化合物(D)、及び/又は添加剤(E)をさらに添加して混合することもできる。なお、各材料はそれぞれ水又は有機溶媒に添加・溶解した後に混合することが好ましいが、材料を添加混合する順番については、特に限定されるものではなく、これらの材料を任意の順で混合することにより本発明の一態様に係る導電性高分子組成物を調製することができる。
【0078】
ここで、混合する際の温度は、特に限定するものではないが、例えば、室温(15~25℃)~加温下で行うことができる。0℃以上100℃以下が好ましい。
【0079】
混合する際の雰囲気は、特に限定するものではないが、大気中でも、不活性ガス中でもよい。
【0080】
また、混合する際には、スターラーチップ又は攪拌羽根等による一般的な混合溶解操作に加えて、超音波照射、ホモジナイズ処理(例えば、メカニカルホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等の使用)を行ってもよい。ホモジナイズ処理する場合には、ポリマーの熱劣化を防ぐため、冷温しながら行うことが好ましい。
【0081】
本発明の一態様に係る導電性高分子組成物の粘度(20℃)は、200mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは100mPa・s以下、さらに好ましくは50mPa・s以下である。
【0082】
本発明の一態様に係る導電性高分子組成物における各成分の濃度は、配合比で調整してもよいし、配合後に濃縮又は希釈により調整してもよい。濃縮の方法は、減圧下に溶媒を留去する方法であっても、限外ろ過膜を利用する方法であってもよい。
【0083】
本発明の一態様に係る導電性高分子膜は、上記のポリチオフェン(A)と、上記の分散性金属(B)と、上記のポリビニルアルコール(C)とを含む。
【0084】
本発明の一態様に係る導電性高分子組成物から導電性高分子膜を形成する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、本発明の一態様に係る導電性高分子組成物を、支持体に塗布し、次いで、乾燥させる方法を挙げることができる。
【0085】
支持体としては、本発明の一態様に係る導電性高分子組成物が塗布可能なものであれば特に限定するものではないが、例えば、高分子基材又は無機基材が挙げられる。高分子基材としては、例えば、熱可塑性樹脂、不織布、紙、又はレジスト膜基板等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリレート、又はポリカーボネート等が挙げられる。不織布としては、例えば、天然繊維、又は合成繊維製のいずれでもよい。紙としては一般的なセルロースを主成分とするものでよい。無機基材としては、ガラス、ガラス繊維、セラミックス、酸化アルミニウム、又は酸化タンタル等が挙げられる。
【0086】
導電性高分子組成物の塗布方法としては、例えば、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ディスペンサ法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷、スクリーン印刷法、又はオフセット印刷法等が挙げられる。
【0087】
塗膜の乾燥温度は、均一な導電性高分子膜が得られる温度及び基材の耐熱温度以下であれば特に限定するものではないが、室温~300℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは室温~250℃の範囲であり、さらに好ましくは室温~200℃の範囲である。
【0088】
乾燥雰囲気は大気中、不活性ガス中、真空中、又は減圧下のいずれであってもよい。導電性高分子膜の劣化抑制の観点からは、窒素、アルゴン等の不活性ガス中が好ましい。
【0089】
得られる導電性高分子膜の膜厚としては特に限定するものではないが、10-3~103μmの範囲が好ましい。より好ましくは10-3~102μmである。
【0090】
本発明の一態様に係る導電性高分子組成物から得られた導電性高分子膜は導電性および耐久特性に優れる。このような導電性高分子膜は、例えば、電極材料、透明電導膜に加え、電波遮蔽材として好適に使用できる。
【実施例0091】
以下に本発明に関する実施例を示す。
【0092】
なお、本実施例で用いた分析機器及び測定方法を以下に列記する。
【0093】
(GC測定)
装置:Shimadzu製、GC-2014
(NMR測定)
装置:VARIAN製、Gemini-200
(表面抵抗率測定)
装置:三菱化学社製ロレスタGP MCP-T600 又は、三菱化学社製ハイレスタUX MCP-HT8000
(膜厚測定)
装置:BRUKER社製 DEKTAK XT。
【0094】
[導電性高分子膜の作製方法]
ポリエステルフィルム(東洋紡製 コスモシャイン A4100)上に、ワイヤーバーコーターを使用して、実施例等で調製した導電性高分子組成物を塗布し、wet膜厚12μmの塗膜を形成させた。ついで、大気下、120℃で2分間、加熱乾燥し、導電性高分子膜を得た。
【0095】
実施例1
公知文献(特開2019-196443号公報)の合成例1及び合成例2に準拠して、ポリ(3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸)(上記一般式(1)で表される構造単位、及び上記一般式(2)で表される構造単位で構成される重合物、すなわち本発明の一態様に係るポリチオフェン(A)に該当するものであって、以下、「PT」という。)を1.2質量%含む水溶液(以下、「水溶液(1)」と記載する。)を合成した。当該PTは、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が6,303であり、鉄イオン、及びナトリウムイオンを、各々10ppm、及び6ppm(対ポリマー)含有していた。
【0096】
26.15gの純水に、上記の水溶液(1) 33.5gと、分散性金属(B)として、0.5質量%銀ナノワイヤーの水分散液(星光PMC製 品名T-AG147) 40gと、ポリビニルアルコール(C)(富士フイルム和光純薬製製品コード163-03045) 0.1gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508、アミン化合物(D)に該当) 0.2gと、オルフィンEXP4200(日信化学工業製) 0.05gとを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェン(A)の固形分濃度が0.40質量%、分散性金属(B)の固形分濃度が0.2質量%、ポリビニルアルコール(C)の固形分濃度が0.1質量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性高分子膜を作製し、室温、大気下で1時間養生の後、表面抵抗値(初期表面抵抗値)を測定した。また、得られた導電性高分子膜について、室温、大気下100時間後の表面抵抗値(試験後の表面抵抗値)を測定した。それぞれの測定結果を表1に示す。
【0097】
実施例2.
26.05gの純水に、上記の水溶液(1) 33.5gと、分散性金属(B)として、0.5質量%銀ナノワイヤーの水分散液(星光PMC製 品名T-AG147) 40gと、ポリビニルアルコール(C)(富士フイルム和光純薬製製品コード163-03045) 0.2gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508、アミン化合物(D)に該当) 0.2gと、オルフィンEXP4200(日信化学工業製) 0.05gとを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェン(A)の固形分濃度が0.40質量%、分散性金属(B)の固形分濃度が0.2質量%、ポリビニルアルコール(C)の固形分濃度が0.2質量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性高分子膜を作製し、初期表面抵抗値、及び試験後の表面抵抗値を測定した。測定結果を表1に示す。
【0098】
実施例3.
25.85gの純水に、上記の水溶液(1) 33.5gと、分散性金属(B)として、0.5質量%銀ナノワイヤーの水分散液(星光PMC製 品名T-AG147) 40gと、ポリビニルアルコール(C)(富士フイルム和光純薬製製品コード163-03045) 0.4gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508、アミン化合物(D)に該当) 0.2gと、オルフィンEXP4200(日信化学工業製) 0.05gとを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェン(A)の固形分濃度が0.40質量%、分散性金属(B)の固形分濃度が0.2質量%、ポリビニルアルコール(C)の固形分濃度が0.4質量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性高分子膜を作製し、初期表面抵抗値、及び試験後の表面抵抗値を測定した。測定結果を表1に示す。
【0099】
実施例4.
15.75gの純水に、上記の水溶液(1) 33.5gと、分散性金属(B)として、0.5質量%銀ナノワイヤーの水分散液(星光PMC製 品名T-AG147) 50gと、ポリビニルアルコール(C)(富士フイルム和光純薬製製品コード163-03045) 0.5gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508、アミン化合物(D)に該当) 0.2gと、オルフィンEXP4200(日信化学工業製) 0.05gとを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェン(A)の固形分濃度が0.40質量%、分散性金属(B)の固形分濃度が0.25質量%、ポリビニルアルコール(C)の固形分濃度が0.5質量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性高分子膜を作製し、初期表面抵抗値、及び試験後の表面抵抗値を測定した。測定結果を表1に示す。
【0100】
比較例1.
26.25gの純水に、上記の水溶液(1) 33.5gと、分散性金属(B)として、0.5質量%銀ナノワイヤーの水分散液(星光PMC製 品名T-AG147) 40gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508) 0.2gと、オルフィンEXP4200(日信化学工業製) 0.05gとを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェン(A)の固形分濃度が0.40質量%、分散性金属(B)の固形分濃度が0.2質量の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性高分子膜を作製し、初期表面抵抗値、及び試験後の表面抵抗値を測定した。測定結果を表2に示す。
【0101】
比較例2.
16.25gの純水に、上記の水溶液(1) 33.5gと、分散性金属(B)として、0.5質量%銀ナノワイヤーの水分散液(星光PMC製 品名T-AG147) 50gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508) 0.2gと、オルフィンEXP4200(日信化学工業製) 0.05gとを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェン(A)の固形分濃度が0.40質量%、分散性金属(B)の固形分濃度が0.25質量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性高分子膜を作製し、初期表面抵抗値、及び試験後の表面抵抗値を測定した。測定結果を表2に示す。
【0102】
比較例3.
25.25gの純水に、上記の水溶液(1) 33.5gと、分散性金属(B)として、0.5質量%銀ナノワイヤーの水分散液(星光PMC製 品名T-AG147) 40gと、ポリビニルアルコール(C)(富士フイルム和光純薬製製品コード163-03045) 1gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508) 0.2gと、オルフィンEXP4200(日信化学工業製) 0.05gとを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェン(A)の固形分濃度が0.40質量%、分散性金属(B)の固形分濃度が0.2質量%、ポリビニルアルコール(C)の固形分濃度が1質量%の導電性高分子組成物が得られた。当該導電性高分子組成物は、ポリビニルアルコール(C)の固形分を、分散性金属(B)の固形分1質量部に対して5質量部含んでいる。得られた混合溶液を用いて上記の方法で導電性高分子膜を作製し、初期表面抵抗値、及び試験後の表面抵抗値を測定した。測定結果を表2に示す。
【0103】
比較例4.
26.05gの純水に、上記の水溶液(1) 33.5gと、分散性金属(B)として、0.5質量%銀ナノワイヤーの水分散液(星光PMC製 品名T-AG147) 40gと、ポリアクリル酸(富士フイルム和光純薬製 製品コード165-18571) 0.2gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508) 0.2gと、オルフィンEXP4200(日信化学工業製) 0.05gとを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェン(A)の固形分濃度が0.40質量%、分散性金属(B)の固形分濃度が0.2質量%、ポリアクリル酸の固形分濃度が0.5質量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性高分子膜を作製し、初期表面抵抗値、及び試験後の表面抵抗値を測定した。測定結果を表2に示す。
【0104】
比較例5.
26.05gの純水に、上記の水溶液(1) 33.5gと、分散性金属(B)として、0.5質量%銀ナノワイヤーの水分散液(星光PMC製 品名T-AG147) 40gと、グァーガム(東京化成工業製、製品コードG0478) 0.2gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508) 0.2gと、オルフィンEXP4200(日信化学工業製) 0.05gとを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェン(A)の固形分濃度が0.40質量%、分散性金属(B)の固形分濃度が0.2質量%、グァーガムの固形分濃度が0.5質量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性高分子膜を作製し、初期表面抵抗値、及び試験後の表面抵抗値を測定した。測定結果を表3に示す。
【0105】
比較例6.
26.05gの純水に、上記の水溶液(1) 33.5gと、分散性金属(B)として、0.5質量%銀ナノワイヤーの水分散液(星光PMC製 品名T-AG147) 40gと、3―グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業製、製品コードG0210) 0.2gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508) 0.2gと、オルフィンEXP4200(日信化学工業製) 0.05gとを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェン(A)の固形分濃度が0.40質量%、分散性金属(B)の固形分濃度が0.2質量%、3―グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランの固形分濃度が0.5質量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性高分子膜を作製し、初期表面抵抗値、及び試験後の表面抵抗値を測定した。測定結果を表3に示す。
【0106】
比較例7.
26.05gの純水に、上記の水溶液(1) 33.5gと、分散性金属(B)として、0.5質量%銀ナノワイヤーの水分散液(星光PMC製 品名T-AG147) 40gと、ヒドロキシプロピルセルロース(東京化成工業製、製品コードH0386) 0.2gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508) 0.2gと、オルフィンEXP4200(日信化学工業製) 0.05gとを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェン(A)の固形分濃度が0.40質量%、分散性金属(B)の固形分濃度が0.2質量%、ヒドロキシプロピルセルロースの固形分濃度が0.5質量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性高分子膜を作製し、初期表面抵抗値、及び試験後の表面抵抗値を測定した。測定結果を表3に示す。
【0107】
比較例8.
66.25gの純水に、上記の水溶液(1) 33.5gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508) 0.2gと、オルフィンEXP4200(日信化学工業製) 0.05gとを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェン(A)の固形分濃度が0.40質量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性高分子膜を作製し、初期表面抵抗値、及び試験後の表面抵抗値を測定した。測定結果を表4に示す。
【0108】
比較例9.
59.95gの純水に、分散性金属(B)として、0.5質量%銀ナノワイヤーの水分散液(星光PMC製 品名T-AG147) 40gと、オルフィンEXP4200(日信化学工業製) 0.05gとを加えて攪拌混合した。その結果、分散性金属(B)の固形分濃度が0.2質量%の導電性組成物が得られた。得られた導電性組成物を用いて上記の方法で導電性膜を作製し、初期表面抵抗値、及び試験後の表面抵抗値を測定した。測定結果を表4に示す。
【0109】
比較例10.
66.05gの純水に、上記の水溶液(1) 33.5gと、ポリビニルアルコール(C)(富士フイルム和光純薬製製品コード163-03045) 0.2gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508) 0.2gと、オルフィンEXP4200(日信化学工業製) 0.05gとを加えて攪拌混合した。その結果、ポリチオフェン(A)の固形分濃度が0.40質量%、ポリビニルアルコール(C)の固形分濃度が0.2質量%の導電性高分子組成物が得られた。得られた導電性高分子組成物を用いて上記の方法で導電性高分子膜を作製し、初期表面抵抗値、及び試験後の表面抵抗値を測定した。測定結果を表4に示す。
【0110】
比較例11.
59.75gの純水に、分散性金属(B)として、0.5質量%銀ナノワイヤーの水分散液(星光PMC製 品名T-AG147)40gと、ポリビニルアルコール(C)(富士フイルム和光純薬製製品コード163-03045) 0.2gと、オルフィンEXP4200(日信化学工業製) 0.05gとを加えて攪拌混合した。その結果、分散性金属(B)の固形分濃度が0.2質量%、ポリビニルアルコール(C)の固形分濃度が0.2質量%の導電性組成物が得られた。得られた導電性組成物を用いて上記の方法で導電性膜を作製し、初期表面抵抗値、及び試験後の表面抵抗値を測定した。測定結果を表4に示す。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
表1から表3に示した通り、ポリチオフェン(A)と分散性金属(B)とポリビニルアルコール(C)とを含む本発明の一態様に係る導電性高分子組成物については、表面抵抗値が低く、安定性に優れる導電性高分子膜を提供することができることが示された。
【0116】
また、表4に示した通り、ポリチオフェン(A)単独、又は有機溶媒分散性金属(B)単独に対してポリビニルアルコール(C)を添加しても低い表面抵抗値が得られなかった。導電性材料同士の導電パスが脆弱になってしまったことが要因と考える。
【0117】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態および各実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明の一態様に係る導電性高分子組成物は、良好な導電性高分子膜を形成し、高い導電率、低い表面抵抗値、及び低い表面抵抗値の優れた安定性を示すことから、帯電防止剤、コンデンサの固体電解質、導電性塗料、電波遮蔽材、エレクトロクロミック素子、電極材料、熱電変換材料、透明導電膜、化学センサー、又はアクチュエータ等への応用が期待できる。