(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001809
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】栽培装置および栽培方法
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20241226BHJP
【FI】
A01G31/00 617
A01G31/00 612
A01G31/00 601B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101509
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003285
【氏名又は名称】千代田化工建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 睦
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314MA33
2B314MA39
2B314MA42
2B314NC06
2B314NC49
2B314PA02
2B314PA17
2B314PB15
2B314PB43
2B314PB54
2B314PC04
2B314PC22
2B314PD21
2B314PD45
2B314PD47
2B314PD51
2B314PD52
2B314PD54
2B314PD66
(57)【要約】
【課題】植物の根に対して養液、水、及び酸素を適切に供給しつつ、培地への根の侵入を防止する。
【解決手段】栽培装置1は、植物2が成長可能なスペースを画定し、酸素および二酸化炭素を含むガスが満たされる栽培容器3と、栽培容器3内の下部に設置された固形培地11と、固形培地11に供給される水を貯留する貯水タンク51と、固形培地11に供給される養液を貯留する養液タンク71と、固形培地11の上面に重なるように配置されたメッシュシート12と、を備え、メッシュシート12の目開きの平均は10μm以下であり、メッシュシート12上に植物の植え付け部が設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を栽培するための栽培装置であって、
前記植物が成長可能なスペースを画定し、酸素および二酸化炭素を含むガスが満たされる栽培容器と、
前記栽培容器内の下部に設置された固形培地と、
前記固形培地に供給される水を貯留する貯水タンクと、
前記固形培地に供給される養液を貯留する養液タンクと、
前記固形培地の上面に重なるように設置されたメッシュシートと、
を備え、
前記メッシュシートの目開きの平均は10μm以下であり、
前記メッシュシート上に前記植物の植え付け部が設けられる、栽培装置。
【請求項2】
前記栽培容器における前記固形培地の上方に設けられた熱伝導部材と、
前記熱伝導部材の少なくとも一部を覆うように設けられた吸水性部材と、
前記熱伝導部材を冷却する冷却装置と、
前記吸水性部材に吸収された水を前記貯水タンクに回収するための水回収チューブと、
を更に備える、請求項1に記載の栽培装置。
【請求項3】
前記栽培容器に設けられ、前記熱伝導部材に向けて前記栽培容器内の前記ガスを送風する内部ファンを更に備える、請求項2に記載の栽培装置。
【請求項4】
前記吸水性部材は、重ねられた複数の吸水性シートを含み、
前記水回収チューブの先端部は、前記複数の吸水性シートのうち互いに隣接する一対の吸水性シートの間に挟み込まれるように配置される、請求項2に記載の栽培装置。
【請求項5】
前記水回収チューブの先端部には、吸水性のキャップ部材が取り付けられ、
前記キャップ部材は、前記吸水性部材に当接するように配置される、請求項2または請求項4に記載の栽培装置。
【請求項6】
前記熱伝導部材は、複数のフィンを有するヒートシンクを含み、
前記吸水性部材は、吸水性シートを含み、
前記吸水性シートは、前記複数のフィンが貫通した状態で前記ヒートシンクに取り付けられる、請求項2に記載の栽培装置。
【請求項7】
前記冷却装置は、冷却面および加熱面を有するペルチェ素子を含み、
前記ヒートシンクは、前記ペルチェ素子の前記冷却面に当接する、請求項6に記載の栽培装置。
【請求項8】
前記水回収チューブには、気液分離器が設けられ、
前記気液分離器によって分離された水が前記貯水タンクに供給される、請求項2に記載の栽培装置。
【請求項9】
前記栽培容器の上部に設置された照明装置と、
前記メッシュシートの上方を覆うように設けられた反射シートと、
を更に備える、請求項1に記載の栽培装置。
【請求項10】
前記メッシュシートの上面に設置された含水率センサと、
前記貯水タンクの水を前記固形培地に供給するための水供給チューブと、
前記水供給チューブによって前記貯水タンクの水を送るための水供給ポンプと、
前記含水率センサの検出結果に基づき、前記水供給ポンプの動作を制御する水供給ポンプ制御装置と、
を更に備える、請求項1に記載の栽培装置。
【請求項11】
前記固形培地に設置された電気伝導率センサと、
前記養液タンクの養液を前記固形培地に供給するための養液供給チューブと、
前記養液供給チューブによって前記養液タンクの養液を送るための養液供給ポンプと、
前記電気伝導率センサの検出結果に基づき、前記養液供給ポンプの動作を制御する養液供給ポンプ制御装置と、
を更に備える、請求項1に記載の栽培装置。
【請求項12】
第1のメッシュシートである前記メッシュシートの上方に設置された第2のメッシュシートを更に備え、
前記第2のメッシュシートの目開きの平均は10μm以下であり、
前記第1のメッシュシートおよび前記第2のメッシュシートの間に前記植物の植え付け部が設けられる、請求項1に記載の栽培装置。
【請求項13】
植物を栽培するための栽培装置を用いた栽培方法であって、
前記栽培装置は、
前記植物が成長可能なスペースを画定し、酸素および二酸化炭素を含むガスが満たされる栽培容器と、
前記栽培容器内の下部に設置された固形培地と、
前記固形培地に供給される水を貯留する貯水タンクと、
前記固形培地に供給される養液を貯留する養液タンクと、
前記固形培地の上面に重なるように設置されたメッシュシートと、
を備え、
前記メッシュシートの目開きの平均は10μm以下であり、
前記メッシュシート上に前記植物が植え付けられる、栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜等の植物を栽培するための栽培装置および栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土を使用することなく植物を栽培する水耕栽培は、栽培される植物の根から栄養素が吸収される効率が高く、また、病害虫の発生が少ないなどの利点がある。水耕栽培は、屋内における植物の栽培や、都市部での農業のような比較的限られたスペースにおける植物の栽培に適している。
【0003】
従来、水耕栽培用の装置として、植物を植え付ける切目が貫通形成された培地と、養液タンクに貯留された養液の上方に培地を支持するフロートと、養液を培地に供給する毛細管給水体とを備え、毛細管給水体は、上端が切目に挿入された状態で培地に垂下されるものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、所定の重力が作用する地上での植物の栽培を前提としているため、水耕栽培装置における液体(すなわち、養液や水)は、重力の作用によって装置下部に留まり、その液面の制御も容易である。
【0006】
一方、宇宙空間のような微小重力環境において植物の栽培を行う場合、地上のような重力は作用しないため、水耕栽培装置において液体を適切に配置する(例えば、装置下部に留まらせる)ことは容易ではない。そのため、微小重力環境では、植物の根に対して養液や水を適切に供給することが難しくなる。また、微小重力環境では、養液や水が植物の根の周辺に留まることにより、液中の酸素の欠乏による根腐れ等が生じ得る。
【0007】
そこで、吸水性の培地を用いて液体を所望の位置に留めることが考えられるが、その場合でも液体の偏り(すなわち、根の周辺における養液や水の偏在)が生じると、酸素の欠乏による根腐れ等を防止できない。また、培地に植物の根が侵入すると、培地を再利用することが難しくなる。特に、宇宙空間のように栽培用の資材の供給が容易でない場所では、培地等の資材を繰り返し利用できることが望ましい。
【0008】
本発明は、以上の背景に鑑み、植物の根に対して養液、水、及び酸素を適切に供給しつつ、培地への根の侵入を防止することができる栽培装置および栽培方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、植物(2)を栽培するための栽培装置(1)であって、前記植物が成長可能なスペースを画定し、酸素および二酸化炭素を含むガスが満たされる栽培容器(3)と、前記栽培容器内の下部に設置された固形培地(11)と、前記固形培地に供給される水を貯留する貯水タンク(51)と、前記固形培地に供給される養液を貯留する養液タンク(71)と、前記固形培地の上面に重なるように設置されたメッシュシート(12)と、を備え、前記メッシュシートの目開きの平均は10μm以下であり、前記メッシュシート上に前記植物の植え付け部が設けられる構成とする。
【0010】
この態様によれば、植物の根に対して養液、水、及び酸素を適切に供給しつつ、メッシュシートによって培地への根の侵入を防止することができる。
【0011】
上記の態様において、前記栽培容器における前記固形培地の上方に設けられた熱伝導部材(32)と、前記熱伝導部材の少なくとも一部を覆うように設けられた吸水性部材(35、36)と、前記熱伝導部材を冷却する冷却装置(31)と、前記吸水性部材に吸収された水を前記貯水タンクに回収するための水回収チューブ(41)と、を更に備えるとよい。
【0012】
この態様によれば、植物の蒸散等によって栽培容器内のガスに拡散された水分を貯水タンクに回収し、それを固形培地に供給する(すなわち、栽培容器内の水をリサイクルする)ことができる。
【0013】
上記の態様において、前記栽培容器に設けられ、前記熱伝導部材に向けて前記栽培容器内の前記ガスを送風する内部ファン(26)を更に備えるとよい。
【0014】
この態様によれば、植物の蒸散等によって栽培容器内のガスに拡散された水分を、より効果的に貯水タンクに回収することができる。
【0015】
上記の態様において、前記吸水性部材は、重ねられた複数の吸水性シート(35、36)を含み、前記水回収チューブの先端部(41A)は、前記複数の吸水性シートのうち互いに隣接する一対の吸水性シート(35、36)の間に挟み込まれるように配置されるとよい。
【0016】
この態様によれば、吸水性部材に吸収された水を水回収チューブによって安定的に回収することができる。
【0017】
上記の態様において、前記水回収チューブの先端部には、吸水性のキャップ部材(42)が取り付けられ、前記キャップ部材は、前記吸水性部材に当接するように配置されるとよい。
【0018】
この態様によれば、吸水性部材に吸収された水を水回収チューブの先端部から安定的に吸い出することができる。
【0019】
上記の態様において、前記熱伝導部材は、複数のフィンを有するヒートシンク(32B)を含み、前記吸水性部材は、吸水性シート(35、36)を含み、前記吸水性シートは、前記複数のフィンが貫通した状態で前記ヒートシンクに取り付けられるとよい。
【0020】
この態様によれば、植物の蒸散等によって栽培容器内のガスに拡散された水分を、簡易な構成により凝縮させ、それを回収することができる。
【0021】
上記の態様において、前記冷却装置は、冷却面(31A)および加熱面(31B)を有するペルチェ素子(31)を含み、前記ヒートシンクは、前記ペルチェ素子の前記冷却面に当接するとよい。
【0022】
この態様によれば、植物の蒸散等によって栽培容器内のガスに拡散された水分を、簡易な構成により凝縮させることができる。
【0023】
上記の態様において、前記水回収チューブには、気液分離器(54)が設けられ、前記気液分離器によって分離された水が前記貯水タンクに供給されるとよい。
【0024】
この態様によれば、貯水タンクに回収される水にガスが混入することを効果的に防止することができる。
【0025】
上記の態様において、前記栽培容器の上部に設置された照明装置(21)と、前記メッシュシートの上方を覆うように設けられた反射シート(22)と、を更に備えるとよい。
【0026】
この態様によれば、屋内等の太陽光を利用できない環境においても照明装置によって植物に光を照射することができ、また、反射シートにより根に光が照射されることを防止することができる。また、根に光が照射されないことで、藻類の増殖を抑えて、植物の成長を妨げないという効果も得られる。
【0027】
上記の態様において、前記メッシュシートの上面に設置された含水率センサ(17)と、前記貯水タンクの水を前記固形培地に供給するための水供給チューブ(67)と、前記水供給チューブによって前記貯水タンクの水を送るための水供給ポンプ(68)と、前記含水率センサの検出結果に基づき、前記水供給ポンプの動作を制御する水供給ポンプ制御装置(85)と、を更に備えるとよい。
【0028】
この態様によれば、植物に対して水を適切に供給することができる。
【0029】
上記の態様において、前記固形培地に設置された電気伝導率センサ(16)と、前記養液タンクの養液を前記固形培地に供給するための養液供給チューブ(72)と、前記養液供給チューブによって前記養液タンクの養液を送るための養液供給ポンプ(73)と、前記電気伝導率センサの検出結果に基づき、前記養液供給ポンプの動作を制御する養液供給ポンプ制御装置(85)と、を更に備えるとよい。
【0030】
この態様によれば、植物の根に対して養液を適切に供給することができる。
【0031】
上記の態様において、第1のメッシュシート(112A)である前記メッシュシートの上方に設置された第2のメッシュシート(112B)を更に備え、前記第2のメッシュシートの目開きの平均は10μm以下であり、前記第1のメッシュシートおよび前記第2のメッシュシートの間に前記植物の植え付け部が設けられるとよい。
【0032】
この態様によれば、植物が根菜類であっても、植物の根に対して養液、水、及び酸素を適切に供給しつつ、第1メッシュシートによって培地への根の侵入を防止することができ、また、第1のメッシュシート及び第2メッシュシートによって、根域(すなわち、根の拡がり)を適切な範囲に制限することができる。
【0033】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、植物(2)を栽培するための栽培装置(1)を用いた栽培方法であって、前記栽培装置は、前記植物が成長可能なスペースを画定し、酸素および二酸化炭素を含むガスが満たされる栽培容器(3)と、前記栽培容器内の下部に設置された固形培地(11)と、前記固形培地に供給される水を貯留する貯水タンク(51)と、前記固形培地に供給される養液を貯留する養液タンク(71)と、前記固形培地の上面に重なるように設置されたメッシュシート(12)と、を備え、前記メッシュシートの目開きの平均は10μm以下であり、前記メッシュシート上に前記植物が植え付けられる構成とする。
【0034】
この態様によれば、植物の根に対して養液、水、及び酸素を適切に供給しつつ、メッシュシートによって培地への根の侵入を防止することができる。
【発明の効果】
【0035】
以上の態様によれば、植物の根に対して養液、水、及び酸素を適切に供給しつつ、培地への根の侵入を防止することができることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】第1実施形態に係る栽培装置の全体構成を示す模式図
【
図2】
図1に示した種苗保持具の構成例を示す説明図
【
図3】
図1に示した水耕栽培装置における水回収装置の詳細を示す部分断面図
【
図4】
図1に示した水耕栽培装置における水回収装置の詳細を示す分解斜視図
【
図5】
図1に示した水回収用チューブの先端部を示す断面図
【
図6】
図1に示した気液分離器の概略構成を示す断面図
【
図8】第2実施形態に係る栽培装置の全体構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して、実施形態に係る栽培装置および栽培方法について説明する。
【0038】
(第1実施形態)
図1に示すように、栽培装置1は、複数の植物2が成長可能なスペースを画定する栽培容器3を備える。栽培容器3は、略直方体形状をなし、上壁5、下壁6、左壁7、右壁8、前壁9、及び後壁(図示せず)を含む。栽培容器3は、主として合成樹脂製の部材によって構成されるが、これに限らず他の材質(例えば、金属製の部材)が用いられてもよい。栽培容器3の形状は、略直方体形状に限定されず、他の形状(例えば、円柱形状や多角柱形状など)であってもよい。
【0039】
栽培装置1で栽培される植物2は、特に限定されないが、栽培装置1では、例えば、野菜、果物、草、木、藻類、コケ類、及び花(観賞用、食用花含む)といった植物を栽培することが可能である。植物2としては、葉物野菜、根菜類、及び花がより好ましく、特にリーフレタス、ハーブ、トマト、及び花などの栽培に栽培装置1を好適に用いることができる。
図1では、植物2として2株の野菜を示しているが、栽培容器3で栽培される植物2の数は、栽培密度を考慮して適宜変更することが可能である。
【0040】
栽培容器3の内部スペースは、空気と同様の組成を有するガスによって満たされる。そのガスには、適切な濃度の酸素および二酸化炭素が少なくとも含まれる。栽培容器3は、その内部環境を急激に変動させないように適度の気密性を有する。ただし、栽培容器3は、完全に密封される必要はない。また、栽培容器3の内部の温度は、図示しない温度調節器によって植物2の生育適温(例えば、15~30℃)に調整される。
【0041】
なお、本明細書で用いる栽培装置1に関する上下、前後、及び左右の方向は、説明の便宜上定められたものである。例えば、栽培装置1が、宇宙空間等の微小重力環境において使用される場合には、本明細書に記載された方向には限定されない。
【0042】
栽培容器3内の下部(ここでは、下壁6の上面)には、固形培地11が設置されている。固形培地11は、略直方体形状をなすロックウールを含む。ロックウールは、微生物等を含まない人造鉱物繊維であるため、固形培地11として好適である。ただし、固形培地11としては、他の公知の材料が用いられてもよい。
【0043】
栽培容器3には、固形培地11の上面に重なるようにメッシュシート12が設置されている。メッシュシート12は、概ね水平方向に拡がるように配置される。メッシュシート12は、公知の手法により親水性を付与された親水性プラスチックの糸を織り込む(例えば、平織や綾織とする)ことにより形成される。親水性プラスチックの糸の線径は、50μm以下とするとよい。平面視において、メッシュシート12には、略矩形をなす複数の開口が格子状に形成される。メッシュシート12の目開きの平均は、10μm以下とするとよい。また、メッシュシート12は、円形または不定形の複数の開口を有してもよく、その場合、それらの開口の円相当径の平均を10μm以下とするとよい。
【0044】
植物2の根2Aの太さは、その種類、生育環境、及び成長段階などによっても異なるが、メッシュシート12の目開き(または開口の円相当径)は、根2Aにおける根毛の径(例えば、10~15μm)以下に設定されるとよい。これにより、植物2の根2Aがメッシュシート12を貫通して固形培地11内に侵入することを防止することができる。
【0045】
メッシュシート12の開口の大きさを適切に調整する(例えば、10μm以下とする)ことにより、メッシュシート12に毛細管現象を生じさせる(すなわち、毛細管現象を有するメッシュシート12を形成する)ことができる。これにより、メッシュシート12は、下方の固形培地11から毛細管現象により養液や水を吸い上げ、それを植物2の根2Aに供給することができる。このような構成により、栽培装置1では、植物2の根2Aの周辺に養液や水が滞留することはなく、酸素の欠乏による根腐れ等が生じ得ることを防止できる。
【0046】
栽培容器3において、メッシュシート12の上面には、各植物2の種苗を植え付ける(すなわち、種植えまたは苗の定植を行う)ための植え付け部が設けられる。本実施形態では、各植物2の植え付け部として、種植え用の種苗保持具15が用いられる。各種植え用の種苗保持具15は、種又は苗の位置を固定する機能を有する。なお、種苗保持具15は、固形培地11と同じ材料によって形成されてもよい。ここでは、各種植え用の種苗保持具15は、各辺が15mmの長さを有するキューブ状をなす。なお、各植物2の植え付け部は、メッシュシート12の上面において各植物に割り当てられた植え付け位置であってもよい(すなわち、種植え用の種苗保持具15が省略されてもよい。)。その場合、各植物2の種または苗は、メッシュシート12の上面においてそれらに割り当てられた植え付け位置にそれぞれ配置される。
【0047】
種苗保持具15は、例えば
図2に示すように、上層15A、下層15B、及びそれらの間に介在する接着層15Cを含む。ここでは、上層15Aは毛細管現象を持たない合成スポンジ(例えば、ポリウレタン等の合成樹脂を含む)により形成される。また、下層15Bは毛細管現象を持つロックウールにより形成される。接着層15Cには、水に溶出し難い公知の接着剤が用いられる。
【0048】
上層15Aの内部には、漏斗状の凹み115が形成されている。凹み115は、すり鉢状(すなわち、逆円錐台状)をなす上部スペース115Aと、それに連なる円柱状をなす下部スペース115Bとを含む。下部スペース115Bの内径は、植物の種Sの外径(例えば、最小径)と同一又は僅かに小さくに設定されるとよい。植物の種Sは、凹み115の上部スペース115Aから投入され、その下部スペース115B内に収まる。これにより、植物の種Sは、下層15Bの上面に載置された状態となる。
【0049】
種が植え付けられた種苗保持具15は、反射シート22に開けたΦ20mm程度の孔の中に挿入され、底面がメッシュシート12に接するまで押し込まれ、合成スポンジの反力で反射シート22に保持される(
図1参照)。
【0050】
上記の通り種苗保持具15を構成させることで、照明装置21からの光を合成スポンジからなる上層15Aで遮断してロックウールからなる下層15B上で藻類が増殖することを防ぐことができ、また、メッシュシート12を介して毛細管現象を持つロックウールからなる下層15Bに養液を吸収させ、種や根に養液を供給することができる。
【0051】
固形培地11内の適所には、ECセンサ16(すなわち、電気伝導率センサ)が設置されている。ECセンサ16は、固形培地11に浸透した液体の電気伝導度を測定することが可能である。ECセンサ16の測定結果に基づき、固形培地11に対する養液の供給(すなわち、固形培地11における肥料濃度)が制御される。なお、ECセンサ16は、温度や体積水分率を測定する機能を有してもよい。
【0052】
メッシュシート12の上面には、含水率センサ17が設置されている。含水率センサ17は、メッシュシート12(延いては固形培地11)の水分量を測定することが可能である。含水率センサ17の測定結果に基づき、固形培地11に対する水の供給が制御される。
【0053】
栽培容器3内の右壁8には、CO2センサ18が設置されている。CO2センサ18は、栽培容器3内のガスに含まれる二酸化炭素濃度を測定することが可能である。CO2センサ18の測定結果に基づき、栽培容器3内のガスに対する二酸化炭素の供給が制御される。栽培容器3内のガスの二酸化炭素濃度を適切に調節することで、植物2の収穫量や品質を向上させることができる。
【0054】
栽培容器3内の上部(ここでは、上壁5の下面)には、太陽光に加えて(または、太陽光に代えて)植物2に光を照射するための照明装置21が設置されている。照明装置21は、植物2の光合成に必要な波長を有する光を発する光源(例えば、LED)を有する。なお、照明装置21は、栽培容器3の外に設置されてもよい。その場合、照明装置21からの光は、栽培容器3に設けられた光透過性の壁を通して植物2に照射され得る。
【0055】
栽培容器3には、メッシュシート12の上方を覆うように反射シート22が設けられている。反射シート22は、メッシュシート12に対して所定の間隔をおいて(すなわち、メッシュシート12との間にガス層が形成された状態で)、メッシュシート12と概ね平行に配置される。反射シート22の少なくとも上面は、光の反射率の高い材料(例えば、金属や樹脂)によって形成される。照明装置21からの光は、反射シート22の上面で反射されることにより、植物2の成長に必要な光が有効利用される。なお、栽培容器3の内面(例えば、左壁7、右壁8、前壁9、及び後壁の内面)は、反射シート22と同様に高い光反射率を有するとよい。
【0056】
また、反射シート22において、植え付け部(ここでは、種植え用の種苗保持具15)に対応する位置には、植物2の成長(すなわち、上方への伸長)を許容するための貫通孔22Aが形成されている。本実施形態では、各種苗保持具15は、対応する貫通孔22Aに嵌め込まれた状態で支持される。
【0057】
栽培容器3には、容器内のガス中の水分を凝縮させることにより、水を回収する水回収装置25が設けられている。本実施形態では、水回収装置25は、植物2や固形培地11の上方(ここでは、照明装置21と反射シート22との間のスペース)に配置され、栽培容器3の前壁9に取り付けられている。また、栽培容器3には、水回収装置25に向けて栽培容器3内のガスを送風する内部ファン26が設置されている。本実施形態では、内部ファン26は、栽培容器3の左壁7に取り付けられている。水回収装置25は、植物2の蒸散等によって栽培容器3内のガスに拡散された水分を、内部ファン26の送風によってより効果的に回収することが可能となる。
【0058】
水回収装置25は、
図3および
図4にも示すように、略平板状をなすペルチェ素子31(冷却装置の一例)と、内側ヒートシンク32(熱伝導部材の一例)および外側ヒートシンク33と、外側ヒートシンク33に取り付けられた外部ファン34とを含む。
【0059】
ペルチェ素子31は、前壁9に形成された矩形の開口9Aに嵌め込まれた状態で固定される。ペルチェ素子31において、通電によって冷却される冷却面31A(すなわち、内面)には、内側ヒートシンク32のベース32Aの底面(すなわち、前面)が熱伝達可能な態様で当接する。また、ペルチェ素子31において、通電によって加熱される加熱面31B(すなわち、外面)には、外側ヒートシンク33のベース33Aの底面(すなわち、後面)が熱伝達可能な態様で当接する。なお、冷却面31Aとベース32Aの底面との間および加熱面31Bとベース33Aの底面との間には、他の公知の熱伝導部材(例えば、熱伝導用グリス)を介在させてもよい。
【0060】
内側ヒートシンク32は、ペルチェ素子31の内側に取り付けられる。内側ヒートシンク32は、ベース32Aと、ベース32Aの後面から後方(すなわち、栽培容器3の内側)に向けて突設された複数のフィン32Bとを有する。複数のフィン32Bは、互いに所定の間隔を置いて配置されている。内側ヒートシンク32は、ペルチェ素子31による冷却(すなわち、冷却面31Aへの放熱)によって、栽培容器3内のガスに含まれる水分が凝縮(すなわち、結露)する温度まで冷却される。
【0061】
また、水回収装置25は、内側ヒートシンク32の一部(ここでは、後面)を覆うように設けられた吸水性シート35、36(吸水性部材の一例)を含む。吸水性シート35、36は、前後方向に重なるように配置され、
図3に示すように、それぞれ複数のフィン32Bが貫通した状態で内側ヒートシンク32に取り付けられている。つまり、吸水性シート35、36には、内側ヒートシンク32の対応するフィン32Bがそれぞれ貫通する貫通孔35A、36Aがそれぞれ形成される。吸水性シート35、36は、前後方向から見て、少なくとも内側ヒートシンク32のベース32Aの後面と同一か、またはそれよりも大きなサイズを有するとよい。
【0062】
吸水性シート35、36は、特に限定されないが、例えば合成繊維によって形成される。吸水性シート35、36としては、例えば、極細の合成繊維(例えば、8μm以下の直径を有する繊維)から構成されたマイクロファイバーを用いることができる。吸水性シート35、36の枚数は、適宜変更可能である。
【0063】
外側ヒートシンク33は、ペルチェ素子31の外側に取り付けられる。外側ヒートシンク33は、ベース33Aと、ベース33Aの前面から前方(すなわち、栽培容器3の外側)に向けて突設された複数のフィン33Bとを有する。複数のフィン33Bは、互いに所定の間隔を置いて配置されている。
【0064】
外部ファン34は、外側ヒートシンク33の後部(すなわち、フィン33Bの先端部)に取り付けられ、フィン33Bに向けて外気(すなわち、栽培容器3の外部のガス)を送風する。この送風により、外側ヒートシンク33の温度が過度に上昇することが回避される。
【0065】
水回収装置25には、吸水性シート35、36に吸収された水を、後に詳述する貯水タンク51に回収するための水回収チューブ41が付設される。
図3に示すように、水回収チューブ41の先端部41Aは、互いに隣接する(ここでは、前後方向に重なる)一対の吸水性シート35、36の間に挟み込まれるように配置される。これにより、吸水性シート35、36に吸収された水を水回収チューブによって安定的に回収することができる。
【0066】
図5に示すように、水回収チューブ41の先端部には、吸水性のキャップ部材42が取り付けられる。キャップ部材42は、有底の円筒状をなし、毛細管現象を有する素材(プラスチック繊維、スポンジ、ロックウール、軽石、セラミック、マイクロファイバー、及びその他無機素材等)によって形成されることが好ましい。これにより、水を吸収しつつ、カビの発生を抑制し植物の生育に好適な環境を維持することができる。ただし、本実施形態では、キャップ部材42は、吸水性シート35、36と同一の部材(ここでは、マイクロファイバー)によって形成されている。キャップ部材42の形状は、少なくとも水回収チューブ41の先端(すなわち、上流端)の開口を覆うことが可能な限り、種々の変更が可能である。水回収チューブ41は、キャップ部材42が取り付けられた状態で、吸水性シート35、36の間に配置される。なお、キャップ部材42は、少なくとも吸水性シート35、36に当接した状態であればよい。これにより、吸水性シート35、36に吸収された水を水回収チューブ41の先端から安定的に吸い出することができる。なお、水回収装置25が、1枚の吸水性シートのみを含む場合には、当該吸水性シートの一部(例えば、縁部)を水回収チューブ41の先端部41A(ここでは、キャップ部材42)の周囲に巻き付けた構成とすることができる。
【0067】
栽培装置1は、栽培容器3(ここでは、右壁8の外面側)に取り付けられた装置収容ケース45(
図1参照)を有する。装置収容ケース45は、植物2の栽培に必要な機器(電子機器を含む)や器具などを収容可能である。
【0068】
装置収容ケース45には、固形培地11に供給される水を貯留する貯水タンク51が収容される。貯水タンク51には、水回収チューブ41の後端(すなわち、下流端)が接続されている。これにより、吸水性シート35、36から水回収チューブ41によって吸い上げられた水が、貯水タンク51に回収される。
【0069】
装置収容ケース45において、水回収チューブ41の中間部には、水回収ポンプ53が設置されている。水回収ポンプ53は、水回収チューブ41内の水を貯水タンク51に向けて移送する。また、水回収チューブ41における水回収ポンプ53の下流側には、気液分離器54が設置されている。気液分離器54は、水回収チューブ41内のガスと水とを気液分離し、分離した水のみを貯水タンク51に送る。
【0070】
気液分離器54は、
図6に示すように、筐体61と、筐体61内に設置された親水フィルタ62および疎水フィルタ63とを有する。
図7中に矢印で示すように、水回収チューブ41の上流部41Bを流れる流体(水およびガスを含む)は、筐体61の入口部61Aから筐体61内の親水フィルタ62および疎水フィルタ63の間に導入される。筐体61内に導入された流体に含まれる水は、親水フィルタ62を通過して、筐体61の出口部61Bから水回収チューブ41の下流部41Cに排出される。一方、流体に含まれるガスは、疎水フィルタ63を通過して、筐体61のガス排出部66から外部に排出(すなわち、排気)される。
【0071】
また、貯水タンク51には、貯留された水を固形培地11に供給するための水供給チューブ67(
図1参照)の上流端が接続されている。水供給チューブ67の下流部は、右壁8を貫通してその先端(すなわち、下流端)が固形培地11に接続されている。水供給チューブ67の中間部には、水供給ポンプ68が設置されている。水供給ポンプ68は、貯水タンク51内の水を固形培地11に向けて移送する。水供給ポンプ68の動作は、含水率センサ17の測定結果(すなわち、検出値)に基づき制御される。
【0072】
装置収容ケース45には、固形培地11に供給される養液を貯留する養液タンク71が収容される。養液タンク71には、養液供給チューブ72の上流端が接続されている。養液供給チューブ72の下流部は、右壁8を貫通してその先端(すなわち、下流端)が固形培地11に接続されている。養液供給チューブ72の中間部には、養液供給ポンプ73が設置されている。養液供給ポンプ73は、養液タンク71内の養液を固形培地11に向けて移送する。養液供給ポンプ73の動作は、ECセンサ16の測定結果(すなわち、検出値)に基づき制御される。
【0073】
固形培地11に供給される養液としては、水耕栽培等に用いられる公知の養液を用いることができる。
【0074】
装置収容ケース45には、栽培容器3に二酸化炭素を供給するためのCO2ボンベ81が収容される。CO2ボンベ81には、CO2供給チューブ82の上流端が接続されている。CO2供給チューブ82の下流部は、右壁8を貫通してその先端(すなわち、下流端)が栽培容器3内に位置する。CO2供給チューブ82には、CO2の流量を調整するためのバルブ83が設置されている。バルブ83の動作は、CO2センサ18の測定結果(すなわち、検出値)に基づき制御される。
【0075】
装置収容ケース45には、植物2の栽培を制御するための制御装置85(水供給ポンプ制御装置、養液供給ポンプ制御装置の一例)が収容される。制御装置85は、ECセンサ16、含水率センサ17、及びCO2センサ18による測定結果を取得することにより、水回収ポンプ53、水供給ポンプ68、養液供給ポンプ73、及びバルブ83などの動作を制御することができる。また、内部ファン26、外部ファン34、及びペルチェ素子31の動作が、制御装置85によって制御されてもよい。また、栽培装置1では、それら複数の制御対象に対して個別に制御装置が設けられてもよい。
【0076】
上記栽培装置1では、植物2による蒸散や、固形培地11及びメッシュシート12からの蒸発などによってガス中に拡散した水分によって、栽培容器3内の湿度が徐々に上昇する。そこで、水回収装置25では、ペルチェ素子31によって内側ヒートシンク32を冷却することにより、ガスに含まれる水分を内側ヒートシンク32の表面に凝縮させ、さらにその凝縮した水を吸水性シート35、36に吸収させる。吸水性シート35、36に吸収された水は、水回収チューブ41によって吸い出され、気液分離器54において水に混入したガスが取り除かれた後、貯水タンク51に移送される。貯水タンク51に回収された水は、再び固形培地11に供給される。
【0077】
このような構成により、栽培装置1では、ガス中に拡散した水分を有効にリサイクルすることができ、貯水タンク51への水の補給量を軽減することが可能である。
【0078】
また、栽培装置1において、所定の栽培期間が経過した植物2は収穫される。植物2の収穫では、例えば
図7(A)に示すように、植物2の葉や茎などの可食部が根2Aと分離された後、
図7(B)に示すように、根2Aがそれぞれメッシュシート12から分離されて廃棄される。これにより、栽培装置1では、固形培地11を次の植物の栽培に再利用することが可能である。
【0079】
(第2実施形態)
次に、
図8を参照して、第2実施形態に係る栽培装置1について説明する。
図8では、第1実施形態に係る栽培装置1と同様の構成要素については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。また、第2実施形態に関し、以下で特に言及しない事項については、第1実施形態の場合と同様とする。
【0080】
第2実施形態に係る栽培容器3では、植物2として、従来の水耕栽培には適さない根菜(例えば、ジャガイモ、里芋、山芋、蓮根、人参、大根、及びごぼうなど)を栽培することが可能である。
【0081】
図8に示すように、第2実施形態に係る栽培装置1には、固形培地11の上面に重なるように第1のメッシュシート112Aが設置されている。さらに、栽培装置1には、第1のメッシュシート112Aの上面に重なるように第2のメッシュシート112Bが設置されている。第1のメッシュシート112Aおよび第2のメッシュシート112Bは、上述のメッシュシート12と同様の構成を有する。
【0082】
また、第2実施形態に係る栽培装置1では、第2のメッシュシート112Bと反射シート22との間のスペースに合成樹脂製のスポンジ123が設置されてもよい。スポンジ123において、植え付け部に対応する位置には、植物2の成長(すなわち、上方への伸長)を許容するための貫通孔123Aが形成されている。貫通孔123Aは、平面視において反射シート22の貫通孔22Aと重なる位置に配置される。
【0083】
上記構成を有する栽培装置1では、植物2としての根菜の地下茎102A等は、第1のメッシュシート112Aおよび第2のメッシュシート112Bの間で成長し、その成長に応じて第1のメッシュシート112Aと第2のメッシュシート112Bとの間隙が拡がる。このとき、地下茎102Aを含む根2Aは、養液や水を含む第1のメッシュシート112Aおよび第2のメッシュシート112Bで囲まれるため、植物2に対して養液や水が適切に供給される。なお、第2のメッシュシート112Bと反射シート22との間のスペースにスポンジ123を設置することにより、第1のメッシュシート112Aおよび第2のメッシュシート112Bを植物2の根2Aに密着させた状態を容易に維持することができるという利点がある。
【0084】
このような栽培装置1及びそれを用いた栽培方法によれば、植物の根に対して養液、水、及び酸素を適切に供給しつつ、培地への根の侵入を防止することができる。また、栽培装置1及びそれを用いた栽培方法は、屋内における植物の栽培や、都市部での農業のような比較的限られたスペースにおける植物の栽培に用いることができる。特に、栽培装置1及びそれを用いた栽培方法は、宇宙空間のような微小重力環境において植物を栽培するのに適する。
【実施例0085】
(実施例)
実施例として、上述の第1実施形態に係る栽培装置1(
図1参照)と概ね同様の構成を有する栽培装置を用いて植物(ここでは、4株のフリルレタス)を育成し、その成長の度合を評価した。
【0086】
実施例の栽培装置では、縦358mm、横400mm、及び高さ100mmのサイズの外形を有する栽培容器を使用した。栽培容器の下部には、固形培地として厚さ20mmのロックウール(以下、「ロックウール培地」という。)を敷き詰めた。また、ロックウール培地の上にメッシュシートを載置し、更に、その上方に厚さ10mmの空気層ができるように反射シートを設置した。反射シートにおいて、各フリルレタスの植え付け部に対応する位置には、それぞれ直径20mmの貫通孔を形成した。各貫通孔の中には、種植え用の種苗保持具として、各辺の長さが15mmのロックウール(以下、「キューブ状ロックウール」という。)をそれぞれ設置した。各キューブ状ロックウール内には、それぞれフリルレタスの種子を入れた。メッシュシートの上面には含水率センサを設置し、これによりメッシュシートの水分を測定しつつ、水分が不足する場合は水供給ポンプが作動して、貯水タンクから水が自動で供給されるようにした。また、ロックウール内にECセンサを設置し、ロックウール培地内上の肥料濃度を測定しつつ、肥料が不足する場合は、養液タンクから手動で養液を供給した。
【0087】
養液としては、大塚A処方2倍希釈液(OATアグリオ株式会社製、OATハウス1号のA処方の2倍希釈液)を用いた。
【0088】
実施例の栽培容器内の環境条件は、以下の通りである。
・温度:23~24℃
・湿度:60±20%
・CO2濃度:400~500ppm
・光強度(光合成光量子束密度):200μmol・m2/s
・風速:約0.5m/s
・栽培期間:45日間
【0089】
(比較例1)ロックウール栽培
比較例1として、上記実施例と同様の栽培装置において、メッシュシートを用いずに固形培地のみを設置して植物を育成し、その成長の度合を評価した。ロックウール培地の底面から養液が染み出す程度まで養液を充填した。ロックウール培地の体積水分率は50~60%程度であった。比較例1における栽培容器内の環境条件は、上述の実施例の場合と同様である。
【0090】
(比較例2)エアレーション栽培
比較例2として、上記実施例と同様の栽培装置において、メッシュシート、反射シート、及び固形培地を用いずに、エアレーション栽培(水耕栽培)により植物を育成し、その成長の度合を評価した。比較例2では、栽培容器の上壁において、各フリルレタスの植え付け部に対応する位置にそれぞれ直径20mmの貫通孔を形成した。各貫通孔の中には、種植え用の種苗保持具として、各辺の長さが15mmのキューブ状のポリウレタンスポンジをそれぞれ設置した。各ポリウレタンスポンジ内には、それぞれフリルレタスの種子を入れた。各ポリウレタンスポンジは、その少なくとも下部が養液の液面に接するか、または液中に浸るように配置した。エアーポンプを用いてエアレーションを実施し、溶液中の溶存酸素量を適切に調整した。比較例2における栽培容器内の環境条件は、上述の実施例の場合と同様である。
【0091】
なお、比較例1のロックウール栽培、比較例2のエアレーション栽培については、従来、地上におけるフリルレタス等の栽培に用いられている栽培方法である。一方、比較例1、2の栽培方法は、所定の重力が作用する地上での植物の栽培を前提としているため、宇宙空間などの微小重力下で採用することは難しい。
【0092】
上述の実施例、比較例1、及び比較例2について、フリルレタスの栽培結果を表1に示す。
【0093】
【0094】
フリルレタスの栽培結果によれば、実施例、比較例1、及び比較例2のいずれの栽培方法でも問題なくフリルレタスの成長を確認ができた。各株(No.1~4)の収穫直後の重量(FWg)には、ばらつきはあるものの、それらの合計重量にはほとんど差は見られなかった。結果として、実施例による栽培装置および栽培方法は、従来、地上におけるフリルレタス等の栽培に用いられている栽培方法と同様にフリルレタスの栽培に適していることを確認できた。
【0095】
以上で具体的な実施例を含めた実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。上述の実施形態(各実施例を含む)に示した栽培装置および栽培方法の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも当業者であれば本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。