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特開2025-18300成膜装置、マスク、成膜方法及び電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018300
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】成膜装置、マスク、成膜方法及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20250130BHJP
   H10K 71/16 20230101ALI20250130BHJP
   H10K 59/12 20230101ALI20250130BHJP
   C23C 16/04 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
C23C14/04 A
H10K71/16
H10K59/12
C23C16/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121888
(22)【出願日】2023-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長岡 健
(72)【発明者】
【氏名】市原 正浩
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
4K030
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC33
3K107CC45
3K107FF15
3K107GG04
3K107GG33
3K107GG54
4K029AA06
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA62
4K029BC07
4K029BD01
4K029CA01
4K029DA03
4K029DA10
4K029DA12
4K029DB06
4K029EA08
4K029HA02
4K029HA03
4K029HA04
4K029JA01
4K029JA06
4K029KA01
4K029KA09
4K030BB14
4K030CA04
4K030CA12
4K030DA05
4K030GA02
4K030GA12
4K030KA11
4K030LA18
(57)【要約】
【課題】マスクが剛性の低い部分を含む場合であっても、基板とマスクとの密着性を向上可能な技術を提供する。
【解決手段】マスクを介して基板に成膜する成膜装置であって、前記マスクは、所定のパターンが形成されたパターン部と、前記パターン部を支持するフレーム部と、前記パターン部に設けられた磁性体と、を有し、前記成膜装置は、前記基板を介して前記マスクと対向して配置され、前記磁性体を吸着する磁気吸着手段を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクを介して基板に成膜する成膜装置であって、
前記マスクは、
所定のパターンが形成されたパターン部と、
前記パターン部を支持するフレーム部と、
前記パターン部に設けられた磁性体と、を有し、
前記成膜装置は
前記基板を介して前記マスクと対向して配置され、前記磁性体を吸着する磁気吸着手段を有する、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記パターン部は、
複数の開口部が形成されたパターン領域と、
前記パターン領域を囲う周縁領域と、を有し、
前記磁性体は、
前記パターン領域と前記周縁領域とのうち、前記周縁領域に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記周縁領域の第1の周縁部に第1の磁性体が設けられ、
第1の方向で、前記第1の周縁部に対向した前記周縁領域の第2の周縁部に第2の磁性体が設けられる、
ことを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記磁気吸着手段は、
前記第1の方向で前記第1の磁性体の外側に配置され、前記第1の磁性体を吸着する第1の吸着部と、
前記第1の方向で前記第2の磁性体の外側に配置され、前記第2の磁性体を吸着する第2の吸着部と、を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記磁気吸着手段は、
前記第1の吸着部と前記第2の吸着部との間に開口部を有する、
ことを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記磁気吸着手段は、
マグネットであり、
前記開口部は、
前記マグネットの厚み方向に貫通した部分又は窪んだ部分である、
ことを特徴とする請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記パターン部は、
前記マスクの平面視で矩形に形成され、
前記第1の周縁部及び前記第2の周縁部は、
前記矩形に形成されたパターン部の側辺に沿った部分であり、
前記第1の磁性体及び前記第2の磁性体は、
前記側辺に沿って設けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記マスクは、
複数の前記パターン部を有し、
前記フレーム部は、
前記複数の前記パターン部の各パターン部を囲む格子状、又はストライプ状に形成されている、
ことを特徴とする請求項7に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記磁性体は、
前記第1の方向と交差する第2の方向で、前記パターン部の第1の周縁部と第2の周縁部との間の第3の周縁部に第3の磁性体が設けられ、
前記第2の方向で、前記パターン部の第1の周縁部と第2の周縁部との間の前記第3の周縁部と対向する第4の周縁部に第4の磁性体が設けられ、
前記磁気吸着手段は、
前記第2の方向で、前記第3の磁性体の外側に配置され、前記第3の磁性体を吸着する第3の吸着部と、
前記第2の方向で、前記第4の磁性体の外側に配置され、前記第4の磁性体を吸着する第4の吸着部と、を有する、
ことを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記パターン部は、
前記フレーム部よりも厚みの薄い部分である、
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記基板は、半導体ウエハである、
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項12】
前記マスクは、非磁性体である、
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項13】
前記マスクは、シリコン製である、
ことを特徴とする請求項12に記載の成膜装置。
【請求項14】
基板に蒸着物質を成膜する成膜手段を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項15】
基板に所定のパターンを成膜する成膜装置で用いられるマスクであって、
前記マスクは、
所定のパターンが形成されたパターン部と、
前記基板を介して配置された成膜装置の磁気吸着手段により吸着される前記パターン部に設けられた磁性体と、
前記パターン部を支持するフレーム部と、を有する、
ことを特徴とするマスク。
【請求項16】
マスクを介して基板に成膜する成膜方法であって、
前記マスクは、
所定のパターンが形成されたパターン部と、
前記パターン部を支持するフレーム部と、
前記パターン部に設けられた磁性体と、を有し、
前記成膜方法は
前記基板を介して前記マスクと対向して配置され、前記磁性体を吸着する磁気吸着工程を有する、
ことを特徴とする成膜方法。
【請求項17】
請求項1に記載の成膜装置によって基板に成膜する成膜工程を含む、
ことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置、マスク、成膜方法及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板とマスクとのアライメントを行い、その後、マスクを介して基板に対して成膜を行う技術が知られている。成膜は、アライメントが行われた基板とマスクとを互いに密着した状態で行われる。基板とマスクとを密着させるために、磁力を利用した技術が知られている。例えば、基板をマスクとマグネットプレートとの間に配置してマスクとマグネットプレートとの間の磁力により基板とマスクとが密着する(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/222009号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板にパターンを形成するためのマスクのパターン部は、パターン部を支持するフレーム部よりも剛性が低い場合がある。マスクが剛性の低い部分を含む場合、基板とマスクとの密着性が低下することがある。
【0005】
本発明は、マスクが剛性の低い部分を含む場合であっても、基板とマスクとの密着性を向上可能な技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
マスクを介して基板に成膜する成膜装置であって、
前記マスクは、
所定のパターンが形成されたパターン部と、
前記パターン部を支持するフレーム部と、
前記パターン部に設けられた磁性体と、を有し、
前記成膜装置は
前記基板を介して前記マスクと対向して配置され、前記磁性体を吸着する磁気吸着手段を有する、
ことを特徴とする成膜装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、マスクが剛性の低い部分を含む場合であっても、基板とマスクとの密着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電子デバイスの製造ラインの一部の模式図。
図2】本発明の一実施形態に係る成膜装置の概略図。
図3】磁気吸着部、基板、マスクの斜視図。
図4】(A)は図3のA-A線断面図、(B)は図4(A)のB方向矢視図。
図5図2の一部拡大図。
図6】(A)及び(B)は、図2の成膜装置の動作説明図。
図7】(A)及び(B)は、図2の成膜装置の動作説明図。
図8】(A)及び(B)は、図2の成膜装置の動作説明図。
図9】(A)及び(B)は、図2の成膜装置の動作説明図。
図10】(A)及び(B)は、図2の成膜装置の動作説明図。
図11】(A)~(C)は、磁性体の配置例を示す平面図。
図12】マスクの斜視図及び一部拡大図。
図13】磁気吸着部の構成例を示す図。
図14】(A)は有機EL表示装置の全体図、(B)は1画素の断面構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第一実施形態>
<電子デバイスの製造ライン>
図1は、本発明の成膜装置が適用可能な電子デバイスの製造ライン100の構成の一部を示す模式図である。各図において、矢印X及びYは互いに直交する水平方向を示し、矢印Zは上下方向(重力方向)を示す。図1の製造ラインは、例えば、有機EL表示装置の発光素子の製造に用いられる。製造ライン100は、平面視で八角形の形状を有する搬送室102を備える。搬送室102には搬送路101aから基板2が搬入され、また、成膜済みの基板2は搬送室102から搬送路101bへ搬出される。
【0011】
搬送室102の周囲には、基板2に対する成膜処理が行われる複数の成膜装置1が配置されている。各成膜装置1には搬送室103が隣接して配置されている。平面視で八角形の形状を有する搬送室103の周囲には、マスク3が収納される格納室104が配置されている。
【0012】
搬送室102には、基板2を搬送する搬送ユニット105が配置されている。本実施形態の搬送ユニット105は、水平多関節型のロボットであり、そのハンド部に基板2を水平姿勢で搭載して搬送する。搬送ユニット105は、搬送路101aから搬入される基板2を成膜装置1へ搬送する搬入動作と、成膜装置1で成膜済みの基板2を成膜室1から搬送路101bへ搬送する搬出動作とを行う。
【0013】
各搬送室103には、マスク3を搬送する搬送ユニット106が配置されている。本実施形態の搬送ユニット106は、水平多関節型のロボットであり、そのハンド部にマスク3を水平姿勢で搭載して搬送する。搬送ユニット106は、格納室104から成膜装置1へマスク3を搬送する動作、成膜装置1から格納室104へマスク3を搬送する動作を行う。
【0014】
<成膜装置>
図2は、本発明の一実施形態に係る成膜装置1の概略図である。成膜装置1は、基板2に蒸着物質を成膜する装置であり、マスク3を用いて所定のパターンの蒸着物質の薄膜を形成する。成膜装置1で成膜が行われる基板2の材質は、ガラス、樹脂、金属等の材料を適宜選択可能である。特に本実施形態では、基板2は、例えば、TFT(Thin Film Transistor)が形成されたガラス基板や半導体素子が形成された半導体ウエハ(シリコンウエハ)である。
【0015】
蒸着物質としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの物質である。成膜装置1は、例えば表示装置(フラットパネルディスプレイなど)や薄膜太陽電池、有機光電変換素子(有機薄膜撮像素子)等の電子デバイスや、光学部材等を製造する製造装置に適用可能であり、特に、有機ELパネルを製造する製造装置に適用可能である。以下の説明においては成膜装置1が真空蒸着によって基板2に成膜を行う例について説明するが、本発明はこれに限定はされず、スパッタやCVD、ALD等の各種成膜方法を適用可能である。
【0016】
成膜装置1は、箱型の真空チャンバ10を有する。真空チャンバ10の内部空間は、真空雰囲気か、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持されている。本実施形態では、真空チャンバ10は不図示の真空ポンプに接続されている。真空チャンバ10の内部空間には、蒸着ユニット17が配置されている。蒸着ユニット17は、蒸着物資を上方に放出する蒸着源を備える。蒸着ユニット17の上方には蒸着物質の放出の規制と規制解除を行うシャッタ17aが配置されている。シャッタ17aは不図示の開閉機構により開閉される。図2はシャッタ17aが閉状態の場合を示しており、蒸着ユニット17による蒸着物質の放出が規制される。蒸着ユニット17の上方には、また、防着板10bが配置されている。防着板10bは、真空チャンバ10の内部空間の上部に配置される以下の構成に、蒸着物質が不必要に付着することを防止する。
【0017】
真空チャンバ10の内部空間には、基板2を水平姿勢で支持する基板支持プレート11が設けられている。本実施形態の場合、基板支持プレート11は静電チャックであり、その下面に静電気力により基板2を吸着し、保持する。基板支持プレート11上には冷却プレート12が固定されている。冷却プレート12は例えば水冷機構等を備えており、基板支持プレート11を介して成膜時に基板2を冷却する。
【0018】
基板支持プレート11と冷却プレート12とは、支持部13aを介してZ方向に変位可能に磁気吸着部13に吊り下げられている。磁気吸着部13は、磁力によってマスク3を引き寄せる部材である。磁気吸着部13は、基板2を介してマスクと対向した位置に配置されている。成膜時に基板2は、磁気吸着部13とマスク3との間に磁力によって挟まれるので、基板2とマスク3の密着性を向上することができる。
【0019】
成膜装置1は、成膜時にマスク3を支持するマスク支持ユニット14を備える。マスク支持ユニット14は、本実施形態の場合、搬送ユニット121と基板支持プレート11との間の基板2の移載動作も行う。マスク支持ユニット14は、X方向に離間した一対の支持部材14aを備える。各支持部材14aは対応するアクチュエータ14bにより昇降される。本実施形態ではアクチュエータ14bを支持部材14a毎に設けたが、一対の支持部材14aを一つのアクチュエータ14bで昇降してもよい。アクチュエータ14bは例えば電動シリンダや、電動ボールねじ機構である。支持部材14aは、その下端部に爪部F1を備えている。基板2やマスク3は、その周縁部が爪部F1上に載置される。図2の例ではマスク3が爪部F1上に載置されている。一対の支持部材14aは同期的に昇降され、基板2やマスク3を昇降する。爪部F1はマスク3を解除可能に保持する機構を有していてもよい。
【0020】
成膜装置1は、基板2とマスク3とのアライメントを行うアライメントユニット15を備える。アライメントユニット15は、駆動機構150と、複数の計測ユニットSRとを備える。駆動機構150は、距離調整ユニット151と、支持軸152と、架台153と、位置調整ユニット154と、を備える。
【0021】
距離調整ユニット151は、支持軸152をZ方向に昇降する機構であり、例えば、電動シリンダや、電動ボールねじ機構を備える。支持軸152の下端部には磁気吸着部13が固定されており、支持軸152の昇降によって、磁気吸着部13を介して基板支持プレート11が昇降される。基板支持プレート11を昇降することで、基板2とマスク3との距離を調整し、基板支持プレート11に支持された基板2とマスク3とを基板2の厚み方向(Z方向)に接近及び離隔(離間)させる。換言すれば、距離調整ユニット151は、基板2とマスク3とを重ね合わせる方向に接近させたり、その逆方向に離隔させたりする。なお、距離調整ユニット151によって調整する「距離」はいわゆる垂直距離(又は鉛直距離)であり、距離調整ユニット151は、基板2の垂直位置を調整するユニットであるとも言える。距離調整ユニット151は、架台153を介して位置調整ユニット154に搭載されている。
【0022】
位置調整ユニット154は、基板支持プレート11をX-Y平面上で変位することにより、マスク3に対する基板2の相対位置を調整する。すなわち、位置調整ユニット150は、マスク3と基板2の水平位置を調整するユニットであるとも言える。位置調整ユニット80は、基板支持プレート11をX方向、Y方向及びZ方向の軸周りの回転方向(θ方向)に変位することができる。本実施形態では、マスク3の位置を固定し、基板2を変位してこれらの相対位置を調整するが、マスク3を変位させて調整してもよく、或いは、基板2とマスク3の双方を変位させてもよい。
【0023】
位置調整ユニット154は、固定プレート154aと、可動プレート154bとを備える。固定プレート154aと、可動プレート154bは矩形の枠状のプレートであり、固定プレート154aは真空チャンバ10の上壁部10a上に固定されている。固定プレート154aと、可動プレート154bとの間には、固定プレート154aに対して可動プレート154bをX方向、Y方向、及び、Z方向の軸周りの回転方向に変位させるアクチュエータが設けられている。
【0024】
可動プレート154b上には、フレーム状の架台153が搭載されており、架台153には距離調整ユニット151が支持されている。可動プレート84bが変位すると、架台153及び距離調整ユニット151が一体的に変位する。これにより基板2をX方向、Y方向、及び、Z方向の軸周りの回転方向に変位させることができる。上壁部10aには、支持軸152、支持部材14a及び14bが通過する開口部が形成されている。これらの開口部は不図示のシール部材(ベローズ等)によってシールされ、真空チャンバ10内の気密性が維持される。
【0025】
計測ユニットSRは、基板2とマスク3の位置ずれを計測する。本実施形態の計測ユニットSRは画像を撮像する撮像装置(カメラ)である。計測ユニットSRは、上壁部20に配置され、真空チャンバ10内の画像を撮像可能である。基板2とマスク3にはそれぞれアライメントマーク(不図示)が形成されている。計測ユニットSRは、基板2とマスク3の各アライメントマークを撮影する。各アライメントマークの位置により基板2とマスク3との位置ずれ量を演算し、位置調整ユニット154によって位置ずれ量を解消するように基板2とマスク3との相対位置を調整する。
【0026】
制御装置16は、成膜装置1の全体を制御する。制御装置16は、処理部160、記憶部161、入出力インタフェース(I/O)162及び通信部163を備える。処理部160は、CPUに代表されるプロセッサであり、記憶部162に記憶されたプログラムを実行して成膜装置1を制御する。記憶部161は、ROM、RAM、HDD等の記憶デバイスであり、処理部160が実行するプログラムの他、各種の制御情報を記憶する。I/O162は、処理部160と外部デバイスとの間の信号を送受信するインタフェースである。通信部163は通信回線を介して上位装置又は他の制御装置等と通信を行う通信デバイスである。
【0027】
<磁気吸着部、基板、マスクの構成例>
図3は、本実施形態における磁気吸着部13、基板2、マスク3の例を示す。磁気吸着部13は、円形の磁石プレートである。なお、磁気吸着部13は、例えば、電磁石などでもよい。磁気吸着部13は、複数の開口部130を有する。本実施形態では、各開口部130は、磁気吸着部13の厚み方向に貫通している。複数の開口部130は、後述するマスク3のフレーム部31に対応した形状である。すなわち、本実施形態では、磁気吸着部13は、格子状に形成されている。
【0028】
基板2は、円形のシリコンウエハであり、成膜等の後、複数のチップ2aとして基板2から切り出される。図示の例ではチップ2a毎に、成膜装置1によって所定色(例えば赤、青又は緑)の複数の画素のマトリックス状のパターンが形成されることが想定されている。
【0029】
マスク3は、基板2と同様に円形の部材である。マスク3は、例えば、シリコン(Si)等の非磁性材料からなる。シリコン製のマスク3を用いることで、半導体製造技術の応用により、開口部303を微細で精密に形成することができる。
【0030】
マスク3は、所定のパターンが形成されたパターン部30と、パターン部30を支持するフレーム部31とを有する。マスク3には、複数のパターン部30が形成されている。本実施形態では、フレーム部31は、複数のパターン部30の各パターン部30を囲む格子状に形成されている。フレーム部31は、例えば、上述した基板2から切り出されるチップ2aの形状に基づいて所定の形状に形成されていてもよい。換言すると、フレーム部31は、基板2のスクライブラインに合わせた形状であってもよい。
【0031】
マスク3について、図4(A)及び図4(B)も参照して説明する。図4(A)は、図3のA-A線断面図に相当する図である。図4(A)に示すように、フレーム部31は相対的に厚肉の厚肉部であり、パターン部30は相対的に薄肉の薄肉部である。フレーム部31は、パターン部30よりも剛性が高い。これにより、マスク3の全体の剛性を大きく低下させることなく、パターン部30を薄く形成することができる。
【0032】
パターン部30には、磁性体32が形成されている。磁性体32は、磁性材料の薄膜でもよい。磁性材料は、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などでもよい。パターン部30に磁性体32が形成されていることで、マスク3が非磁性体であるシリコン製であっても、磁気吸着部13の磁力によって、成膜時にマスク3と基板2とを密着させることができる。また、上述したようにパターン部30は、相対的に薄肉の薄肉部でもある。パターン部30は、換言すると、フレーム部よりも剛性が低い部分でもある。マスク3の剛性の低い部分は、弛みやすく、マスク3と基板2との密着性が低下しやすい部分でもある。したがって、パターン部30に磁性体32を設けることで、基板2とマスク3との密着性を向上させることができる。基板2とマスク3との密着性を高めることで、開口部303を通過する蒸着物質を、基板101の目的とする部位に的確に成膜することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、磁性体32は、マスク3の下面S2側に設けられている例を示したが、これに限らない。磁性体32は、例えば、マスク3の上面S1側に設けられていてもよい。あるいは、磁性体32は、マスク3の下面S2側及び上面S1側の両方に設けられていてもよい。マスク3の下面S2とは、マスク3の蒸着ユニット17側の面であり、マスク3の基板2側とは反対側の面でもある。マスク3の上面S1は、マスク3の基板2側の面である。
【0034】
図4(B)は、本実施形態におけるパターン部30の平面視図を示す。図4(B)は、図4(A)のB方向矢視図に相当し、複数のパターン部30の各パターン部30の一例を示す図でもある。図4(B)に示すように、パターン部30は、マスク3の平面視で矩形に形成されている。パターン部30は、パターン領域300と、パターン領域300を囲う周縁領域301とを含む。パターン領域300には、基板2に蒸着される蒸着物質が通過する複数の開口部(貫通孔)303が形成されている。開口部303の配置によって基板2上の成膜パターンが規定される。複数の開口部303は、マトリックス状のパターンを形成している。パターン領域300は、換言すると、複数の開口部303が集合している部分でもある。
【0035】
本実施形態では、周縁領域301のうち、X方向の周縁部301aに磁性体32aが設けられている。磁性体32aは、周縁部301aに沿って形成されている。また、この周縁部301aに対向した周縁部301bにも磁性体32bが設けられている。磁性体32bは、周縁部301bに沿って形成されている。周縁部301a及び301bは、換言すると、パターン部30の側辺部分でもある。周縁領域301の対向する2か所に磁性体32を設けることで、後述する図5のように磁気吸着部13により、パターン部30に張力をかけることができる。したがって、マスク3がパターン部30のように剛性の低い部分を有する場合であってもマスク3と基板2との密着性を更に高めることができる。
【0036】
図5を参照して、磁気吸着部13の磁力により、マスク3を基板2と密着させる場合について説明する。図5は、図2の一部拡大図でもある。図5は、基板2が基板支持プレート11に支持されており、マスク3が磁気吸着部13の磁力によって基板2に密着される際の状況を示している。本実施形態では、上述したように磁気吸着部13は、フレーム部31の形状に対応した開口部130を有する。すなわち、磁気吸着部13は、マスク3の周縁領域301に設けられた磁性体32aと磁性体32bとの間に開口部130を有しているとも言える。磁気吸着部13は、磁性体32aの外側に配置され、磁性体32aを吸着する吸着部分130aと、磁性体32bの外側に配置され、磁性体32bを吸着する吸着部分130bと、を含む。これにより、パターン部30の周縁領域301に設けられた磁性体30a及び磁性体30bは、例えば、磁気吸着部13の磁力により、図中に示す矢印の方向(D1、D2)に引き寄せられる。このように、磁気吸着部13がパターン部30の形状に対応した開口部130を有することで、磁気吸着部13は、パターン部30に張力をかけながら基板2とマスク3を密着させることができる。
【0037】
<制御例>
制御ユニット9の処理部90が実行する成膜装置1の制御例について説明する。図6(A)~図10(B)は成膜装置1の動作説明図であり、基板2の搬入から、成膜し、搬出するまでの例を示す。
【0038】
図6(A)は基板2を真空チャンバ10内に搬入した状態を示す。基板2は搬送ロボット105により基板支持プレート11の下方に搬送される。基板支持プレート11の下面の基板吸着面11aは水平である。次にマスク支持ユニット14によって搬送ロボット105から基板支持プレート11へ基板2を移載する。図6(B)は、その動作を示している。支持部材14aを上昇することにより、基板2の周縁が爪部F1に載置され、基板2は搬送ロボット105から上昇し、かつ、基板支持プレート11の基板吸着面11aに押し付けられる。基板支持プレート11の静電チャックを作動して基板2を吸着し、保持する。
【0039】
続いてマスク3を真空チャンバ10内に搬入する。図7(A)は、マスク3を真空チャンバ10内に搬入した状態を示す。マスク3は、搬送ロボット106によって格納室104から真空チャンバ10内に搬入される。マスク3は、基板2の真下に位置する。次に、マスク3を搬送ロボット106からマスク支持ユニット14に移載し、アライメント位置に位置させる。図7(B)は、その動作を示している。支持部材14aを上昇することにより、マスク3の周縁が爪部F1に載置され、マスク3は搬送ロボット106から上昇する。マスク3は支持部材14aに支持された状態となり、かつ、更に上昇することでアライメント位置に位置する。本実施形態ではマスク3を上昇してアライメント位置に位置させるが、基板2を降下して基板2をアライメント位置に位置させる構成でもよい。
【0040】
次にアライメント動作を行う。図8(A)に示すように計測ユニットSRにより、基板2のアライメントマークとマスク3のアライメントマークの相対位置が計測される。計測結果(基板2とマスク3の位置ずれ量)が許容範囲内であればアライメント動作を終了する。計測結果が許容範囲外であれば、計測結果に基づいて位置ずれ量を許容範囲内に収めるための制御量(基板2の変位量)が設定される。
【0041】
「位置ずれ量」とは、位置ずれの距離と方向(X、Y、θ)で定義される。設定された制御量に基づいて、図8(B)に示すように位置調整ユニット80が作動される。これにより、基板支持プレート11がX-Y平面上で変位され、マスク3に対する基板2の相対位置が調整される。
【0042】
計測結果が許容範囲内であるか否かの判定は、例えば、アライメントマーク間の距離をそれぞれ算出し、その距離の平均値や二乗和を、予め設定された閾値と比較することで行うことができる。
【0043】
相対位置の調整後、再度、計測ユニットSRにより、基板2のアライメントマークとマスク3のアライメントマークの相対位置が計測される。計測結果が許容範囲内であればアライメント動作を終了する。計測結果が許容範囲外であれば、マスク3に対する基板2の相対位置が再度調整される。以降、計測結果が許容範囲内となるまで、計測と相対位置調整が繰り返される。
【0044】
次に、成膜動作を行う。まず、基板2をマスク3と重ね合わせる。図9(A)はその動作を示している。基板支持プレート11を降下させると、基板2はマスク3上に載置され、基板2は基板2の被処理面の全体がマスク3と接触する。磁気吸着部13が冷却プレート12上に当接し、上から順に磁気吸着部13、冷却プレート12、基板支持プレート11、基板2及びマスク3が密着した状態になる。磁気吸着部13の磁力によりマスク3を引き寄せ、マスク3と基板2とを全体的に密着させることができる。マスク3のパターン部30には、磁性体32(図4及び図5参照)が形成されているため、磁気吸着力を得られる。このように本実施形態によれば、マスク3が剛性の低い部分を有する場合であっても、基板2とマスク3との密着性を向上することができる。パターン部30の周縁領域301に設けられた磁性体32が、開口部130を有する磁気吸着部13に引き寄せられる(図5参照)。すなわち、パターン部30に張力が働くことで、基板2とマスク3との密着性をさらに高めることができる。また、このようにパターン部30に張力をかけることで、フレーム部31に張力をかける場合と比べて、パターン部30の変形や破損を防ぐこともできる。また、このようにパターン部30に磁性体32が設けられていることで、マスク3が非磁性体であっても、基板2とマスク3を密着させることもできる。
【0045】
以上により成膜の準備が整い、次に図9(B)に示すように、シャッタ17aを開状態とし、蒸着ユニット17から蒸着物質を放出する。蒸着物質はマスク3を介して基板2に蒸着される。
【0046】
こうした成膜が完了すると、マスク3及び基板2をそれぞれ搬出する動作を行う。図10(A)はマスク3を搬出する動作を示している。まず、磁気吸着部13を上昇し、基板2とマスク3とが離間される。搬送ロボット106のハンド部をマスク3の下方に進入させた後、マスク支持ユニット14の支持部材14aを降下して、マスク3を支持部材14aから搬送ロボット106へ移載する。搬送ロボット106は、マスク3を格納室104へ搬送する。
【0047】
続いて成膜済みの基板2を搬出する。マスク支持ユニット14の支持部材14aを上昇して、基板2を爪部F1によって下側から支持する。基板2に対する基板支持ユニット3の吸着を解除して基板2が支持部材14aに移載される。搬送ロボット105のハンド部を基板2の下方に進入させた後、図10(B)に示すようにマスク支持ユニット14の支持部材14aを降下して、基板2を支持部材14aから搬送ロボット105へ移載する。搬送ロボット105は、基板2を搬送路101bへ搬送する。以上により基板2の搬入から、成膜し、搬出するまでの動作が完了する。
【0048】
<第二実施形態>
第1実施形態では、磁性体32は、パターン部30の周縁領域のX方向において対向している周縁部301a及び周縁部301bに設けられた例を示した。パターン部30に設けられる磁性体32の配置は、これに限られない。図11(A)~(C)は、磁性体の配置例を示す図である。図11(A)~(C)は、パターン部30の平面視図でもある。
【0049】
図11(A)は、パターン領域300を囲う周縁領域301において、Y方向の周縁部301cに磁性体32cが設けられ、周縁部301cに対向する周縁部301dに磁性体32dが設けられた例を示す。このように、周縁領域301において、磁性体32が配置される方向は、X方向又はY方向のどちらであってもよい。
【0050】
図11(B)は、各周縁部32a~32dに磁性体32が設けられている例を示す。パターン部30の周縁領域301において、X方向の周縁部301aに磁性体32aが設けられ、周縁部301aと対向する周縁部301bに磁性体32bが設けられている。さらに、X方向と交差するY方向の周縁部301cに磁性体32cが設けられ、周縁部301cと対向する周縁部301dに磁性体32dが設けられている。このように、パターン領域300を囲う4方向に磁性体32を設けることで、パターン部30に働く張力を高めることができる。磁性体32は、例えば、図11(C)に示すように、パターン領域300の外周を囲うように周縁領域301に設けられていてよい。このように磁性体32を周縁領域301に設けても、パターン部30に働く張力を高めることができる。
【0051】
なお、第1実施形態及び本実施形態では、磁性体32が、パターン領域300に沿って直線状に形成されている例を示したが、これに限らない。磁性体32は、例えば、湾曲した形状で周縁領域301に設けられてもよい。また、磁性体32の幅や厚みは、適宜設計可能である。また、磁性体32が設けられる位置は、適宜設計可能である。周縁領域301において、磁性体32が設けられる位置は、例えば、パターン領域300の形状やパターン部30の形状、フレーム部31の形状などに基づいて決められていてもよい。磁性体32が設けられる位置は、例えば、パターン部30の大きさ(面積)によって決められてもよい。あるいは、パターン部30のアスペクト比などに基づいて決められてもよい。
【0052】
<第三実施形態>
第1実施形態では、複数のパターン部30の各パターン部30を囲む格子状にフレーム部31が形成されている例を説明した。マスク3のパターン部30及びフレーム部31の形状は、これに限られない。図12は、パターン部30’を囲うフレーム部31’がストライプ状に形成されている例を示す。また、図12は、パターン部30’の拡大した図も示す。
【0053】
図12に示すように、フレーム部31’の形状は、ストライプ状に形成されていてもよい。また、パターン部30’は、周縁領域301’のY方向の周縁部301c’に磁性体32c’が設けられており、周縁部301c’に対向するに周縁部301d’に磁性体32d’が設けられている。なお、上述したように、磁性体32は、X方向に対向する周縁部301a’及び周縁部301b’に設けられてもよい。パターン領域300を囲うように、磁性体32が設けられていてもよい。このような、フレーム部31’及びパターン部30’のマスク3であっても、マスク3と基板2との密着性を高めることができる。
【0054】
<第四実施形態>
第1実施形態では、磁気吸着部13に形成された複数の開口部130が、貫通している例を説明した。磁気吸着部13の複数の開口部130は、これに限られない。図13に示すように、磁気吸着部13の開口部130’は、凹部であってもよい。凹部は、磁気吸着部13の厚み方向に窪んだ部分である。このような磁気吸着部13の形状であっても、磁気吸着部13は、磁力によりマスク3に形成された磁性体32を吸着し、パターン部30に張力をかけることができる。
【0055】
<第五実施形態>
次に、電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。
【0056】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。図14(A)は有機EL表示装置50の全体図、図14(B)は1画素の断面構造を示す図である。
【0057】
図14(A)に示すように、有機EL表示装置50の表示領域51には、発光素子を複数備える画素52がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。
【0058】
なお、ここでいう画素とは、表示領域51において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。カラー有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子52R、第2発光素子52G、第3発光素子52Bの複数の画素(全体の画素と区別するため副画素と呼ぶ)の組み合わせにより画素52が構成されている。画素52は、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子の3種類の副画素の組み合わせで構成されることが多いが、これに限定はされない。画素52は少なくとも1種類の副画素を含めばよく、2種類以上の副画素を含むことが好ましく、3種類以上の副画素を含むことがより好ましい。画素52を構成する副画素としては、例えば、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子と黄色(Y)発光素子の4種類の副画素の組み合わせでもよい。
【0059】
図14(B)は、図14(A)のA-B線における部分断面模式図である。画素52は、基板53上に、第1の電極(陽極)54と、正孔輸送層55と、赤色層56R・緑色層56G・青色層56Bのいずれかと、電子輸送層57と、第2の電極(陰極)58と、を備える有機EL素子で構成される複数の副画素を有している。これらのうち、正孔輸送層55、赤色層56R、緑色層56G、青色層56B、電子輸送層57が有機層に当たる。赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。
【0060】
また、第1の電極54は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層55と電子輸送層57と第2の電極58は、複数の発光素子52R、52G、52Bにわたって共通で形成されていてもよいし、発光素子ごとに形成されていてもよい。すなわち、図14(B)に示すように正孔輸送層55が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成された上に赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bが副画素領域ごとに分離して形成され、さらにその上に電子輸送層57と第2の電極58が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成されていてもよい。
【0061】
なお、近接した第1の電極54の間でのショートを防ぐために、第1の電極54間に絶縁層59が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層60が設けられている。
【0062】
図14(B)では正孔輸送層55や電子輸送層57が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を有する複数の層で形成されてもよい。また、第1の電極54と正孔輸送層55との間には第1の電極54から正孔輸送層55への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成してもよい。同様に、第2の電極58と電子輸送層57の間にも電子注入層を形成してもよい。
【0063】
赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bのそれぞれは、単一の発光層で形成されていてもよいし、複数の層を積層することで形成されていてもよい。例えば、赤色層56Rを2層で構成し、上側の層を赤色の発光層で形成し、下側の層を正孔輸送層又は電子ブロック層で形成してもよい。あるいは、下側の層を赤色の発光層で形成し、上側の層を電子輸送層又は正孔ブロック層で形成してもよい。このように発光層の下側又は上側に層を設けることで、発光層における発光位置を調整し、光路長を調整することによって、発光素子の色純度を向上させる効果がある。
【0064】
なお、ここでは赤色層56Rの例を示したが、緑色層56Gや青色層56Bでも同様の構造を採用してもよい。また、積層数は2層以上としてもよい。さらに、発光層と電子ブロック層のように異なる材料の層が積層されてもよいし、例えば発光層を2層以上積層するなど、同じ材料の層が積層されてもよい。
【0065】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。ここでは、赤色層56Rが下側層56R1と上側層56R2の2層からなり、緑色層56Gと青色層56Bは単一の発光層からなる場合を想定する。成膜装置1が配置される6つの成膜室を想定する。
【0066】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)及び第1の電極54が形成された基板53を準備する。なお、基板53の材質は特に限定はされず、ガラス、プラスチック、金属などで構成することができる。本実施形態においては、基板53として、ガラス基板上にポリイミドのフィルムが積層された基板を用いる。
【0067】
第1の電極54が形成された基板53の上にアクリル又はポリイミド等の樹脂層をバーコートやスピンコートでコートし、樹脂層をリソグラフィ法により、第1の電極54が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層59を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。なお、本実施形態では、絶縁層59の形成までは大型基板に対して処理が行われ、絶縁層59の形成後に、基板53を分割する分割工程が実行される。
【0068】
絶縁層59がパターニングされた基板53を第1の成膜室に搬入し、正孔輸送層55を、表示領域の第1の電極54の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層55は、最終的に1つ1つの有機EL表示装置のパネル部分となる表示領域51ごとに開口が形成されたマスクを用いて成膜される。
【0069】
次に、正孔輸送層55までが形成された基板53を第2の成膜室に搬入する。基板53とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、正孔輸送層55の上の、基板53の赤色を発する素子を配置する部分(赤色の副画素を形成する領域)に、赤色層56Rを成膜する。ここで、第2の成膜室で用いるマスクは、有機EL表示装置の副画素となる基板53上における複数の領域のうち、赤色の副画素となる複数の領域にのみ開口が形成された高精細マスクである。これにより、赤色発光層を含む赤色層56Rは、基板53上の複数の副画素となる領域のうちの赤色の副画素となる領域のみに成膜される。換言すれば、赤色層56Rは、基板53上の複数の副画素となる領域のうちの青色の副画素となる領域や緑色の副画素となる領域には成膜されずに、赤色の副画素となる領域に選択的に成膜される。
【0070】
赤色層56Rの成膜と同様に、第3の成膜室において緑色層56Gを成膜し、さらに第4の成膜室において青色層56Bを成膜する。赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bの成膜が完了した後、第5の成膜室において表示領域51の全体に電子輸送層57を成膜する。電子輸送層57は、3色の層56R、56G、56Bに共通の層として形成される。
【0071】
電子輸送層57までが形成された基板を第6の成膜室に移動し、第2の電極58を成膜する。本実施形態では、第1の成膜室~第6の成膜室では真空蒸着によって各層の成膜を行う。しかし、本発明はこれに限定はされず、例えば第6の成膜室における第2の電極58の成膜はスパッタによって成膜するようにしてもよい。その後、第2の電極58までが形成された基板を封止装置に移動してプラズマCVDによって保護層60を成膜して(封止工程)、有機EL表示装置50が完成する。なお、ここでは保護層60をCVD法によって形成するものとしたが、これに限定はされず、ALD法やインクジェット法によって形成してもよい。
【0072】
ここで、第1の成膜室~第6の成膜室での成膜は、形成されるそれぞれの層のパターンに対応した開口が形成されたマスクを用いて成膜される。成膜の際には、基板53とマスクとの相対的な位置調整(アライメント)を行った後に、マスクの上に基板53を載置して成膜が行われる。
【0073】
<他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0074】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0075】
1 成膜装置、2 基板、3 マスク、13 磁気吸着部、30 パターン部、31 フレーム部、32 磁性体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14