(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018325
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】積層シートとその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20250130BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20250130BHJP
B44C 1/17 20060101ALN20250130BHJP
【FI】
B32B27/00 M
C09J7/38
B44C1/17 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121925
(22)【出願日】2023-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】小池 弘
(72)【発明者】
【氏名】竹内 亮平
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 民雄
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 康介
【テーマコード(参考)】
3B005
4F100
4J004
【Fターム(参考)】
3B005EA01
3B005EB01
3B005EB03
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4F100AK01A
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4J004AA09
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4J004FA01
(57)【要約】
【課題】貼着面を備える積層シートの作製が容易で、貼着面に可視情報が明りょうに印字できる、積層シート、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】合成紙基材及び自己吸着層を含む貼着シートと、剥離シートと、を備える積層シートであって、前記自己吸着層と前記剥離シートは直接接しており、前記剥離シートは前記自己吸着層側の表面にシリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂を含む剥離剤層を有しておらず、前記自己吸着層は前記剥離シート側の表面に可視情報を有するように構成される、積層シート。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成紙基材及び自己吸着層を含む貼着シートと、剥離シートと、を備える積層シートであって、前記自己吸着層と前記剥離シートは直接接しており、前記剥離シートは前記自己吸着層側の表面にシリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂を含む剥離剤層を有しておらず、前記自己吸着層は前記剥離シート側の表面に可視情報を有するように構成される、積層シート。
【請求項2】
前記自己吸着層は発泡層である、請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記発泡層はエチレン-酢酸ビニル共重合体又は(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む、請求項2に記載の積層シート。
【請求項4】
前記剥離シートがポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂からなる熱可塑性樹脂シートである、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層シート。
【請求項5】
合成紙基材及び自己吸着層を含む貼着シートを作製する工程、
剥離シートの、シリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂を含む剥離剤層を有していない表面に可視情報を印刷する工程、
前記剥離シートの可視情報印刷面が、前記貼着シートの前記自己吸着層に対向するように、前記剥離シートと前記貼着シートを貼合して可視情報を自己吸着層に転写する工程、を含む積層シートの製造方法。
【請求項6】
前記貼着シートを作製する工程が、
前記合成紙基材の表面に、自己吸着層形成用組成物を塗工する工程と、
前記自己吸着層形成用組成物を発泡させた後に架橋させる工程と、を含む、
請求項5に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層シートとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、窓ガラス等の平滑な透明部材の被着体に対して貼着させる、貼着面を備えた積層シートが広く使用されている(特許文献1を参照)。
【0003】
ここで、積層シートの貼着面を透明部材に貼着した場合は、積層シートの正面だけでなく、透明部材を介して積層シートの裏面、すなわち貼着面も視認できる。そのため、貼着面に設けた吸着層、粘着層、又は接着剤層等に対して、文字や絵柄等の可視情報を印刷するニーズがある。
【0004】
また、このような貼着面を備える積層シートの製造方法には、例えば、基材の表面に予め印刷を施した後、透明性の高い接着剤の層(接着層)を設ける方法がある。しかし、印刷する絵柄を変更する場合、後工程で接着剤の塗布を中断しなければならず、少量多品種生産に対応したオンデマンド印刷等には向かない。また、特許文献1に記載の吸着シートの様に、不透明な接着層を有する積層シートには適用できない。
【0005】
一方、接着層に直接印刷をする場合、接着層のタック(べたつき、粘着性)により積層シートが印刷装置の中で貼り付いてしまう等の問題が生じる。この問題に対し、例えば、接着層の表面に微細構造を設ける(特許文献2)、UV硬化性樹脂を用いる(特許文献3)などが提案されている。
【0006】
また、接着層の表面ではなく、基材と接着層の間に着色剤を含む感圧接着性のインクを用いてパターン形成する方法(特許文献4)などが提案されている。
【0007】
更にその他の方法として、予め剥離シートに加飾用の印刷を行い、これを接着層に貼り合わせることにより接着層の表面に印刷部分を転写すること(特許文献5)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2018/151274号
【特許文献2】特開2021-95547号
【特許文献3】特開2017-62430号
【特許文献4】特開平4-85383号
【特許文献5】特許第5752292号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献2乃至4に記載の方法では、貼着面を備えた積層シートの作製工程が複雑になってしまう。また、特許文献4に記載の方法では、使用できる印刷用のインクが限定されてしまうため、多様な用途の印刷に適した対応を行うことは難しい。また、特許文献5に記載の方法は、例えば、剥離加工層のように、剥離シートの表面に対して、シリコーン系樹脂やフッ素系樹脂等を含む剥離剤を含む薄膜の層(剥離剤層)が形成されてしまう。そのため、剥離シートに印刷を施す場合に、剥離シートと印刷層の間に形成された剥離剤層が邪魔をして、剥離シートの表面に明りょうな印刷を行うことが難しい。
【0010】
本発明は上記課題を解決することを目的としている。すなわち、本発明の目的は、貼着面を備える積層シートの作製が容易で、多様な用途の印刷に適し、更に、剥離シートの表面に明りょうな印刷を行うことによって、(後に転写される)貼着面において可視情報が明りょうに確認できる、積層シート、及びその製造方法を提供することである。
【0011】
本発明者等は、合成紙の基材(合成紙基材)及び自己吸着層を含む貼着シートと、剥離シートと、を含む積層シートであって、合成紙基材、自己吸着層、及び剥離シートがこの順に配置され、剥離シートがシリコーン系樹脂やフッ素系樹脂を備えた剥離剤層を有さないことを特徴とする、積層シートを開発した。また、当該積層シートを用いることによって、剥離シートに印刷された可視情報が明りょうかつ容易に、自己吸着層の貼着面に転写できることを見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下に示す種々の具体的態様を提供する。
[1]合成紙基材及び自己吸着層を含む貼着シートと、剥離シートと、を備える積層シートであって、前記自己吸着層と前記剥離シートは直接接しており、前記剥離シートは前記自己吸着層側の表面にシリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂を含む剥離剤層を有しておらず、前記自己吸着層は前記剥離シート側の表面に可視情報を有するように構成される、積層シート。
ここで「可視情報」とは情報の種類、すなわち肉眼で見て把握できる視覚的な情報であることを意味し、本発明の積層シートは、自己吸着層表に有する可視情報が、剥離シートに覆われて視認できない外観であってもよい。
【0013】
[2]前記自己吸着層は発泡層である、上記[1]に記載の積層シート。
【0014】
[3]前記発泡層はエチレン-酢酸ビニル共重合体又は(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む、上記 [2]に記載の積層シート。
【0015】
[4]前記剥離シートがポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂からなる熱可塑性樹脂シートである、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の積層シート。
【0016】
[5]合成紙基材及び自己吸着層を含む貼着シートを作製する工程、
剥離シートの、シリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂を含む剥離剤層を有していない表面に可視情報を印刷する工程、
前記剥離シートの可視情報印刷面が、前記貼着シートの前記自己吸着層に対向するように、前記剥離シートと前記貼着シートを貼合して可視情報を自己吸着層に転写する工程、を含む積層シートの製造方法。
【0017】
[6]前記貼着シートを作製する工程が、
前記合成紙基材の表面に、自己吸着層形成用組成物を塗工する工程と、
前記自己吸着層形成用組成物を発泡させた後に架橋させる工程と、を含む、
上記[5]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、貼着面を備える積層シートの作製が容易で、多様な用途の印刷に適し、更に、剥離シートの表面に明りょうな印刷を行うことによって、(後に転写される)貼着面において可視情報が明りょうに確認できる、積層シート、及びその製造方法を提供することができる。また、可視情報の迅速な変更も可能となるため、オンデマンド印刷などの少量多品種生産に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る積層シートを製造する方法の一例を説明するフローチャートである。
【
図2】本発明に係る剥離シートに印刷される可視情報の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0021】
(積層シート)
本発明の積層シートは、合成紙基材及び自己吸着層を含む貼着シートと、及び剥離シートと、を備える。ここで、自己吸着層と剥離シートは直接接しており、剥離シートは自己吸着層側の表面にシリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂を含む剥離剤層を有していない。また、自己吸着層は剥離シート側の表面に可視情報を有するように構成される。吸着性の観点から、自己吸着層は発泡層であることが好ましい。同様の観点から、自己吸着層はエチレン-酢酸ビニル共重合体又は(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含むことが好ましい。剥離性及び接着性の観点から、剥離シートはポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂からなる熱可塑性樹脂シートであることが好ましい。
【0022】
このような積層シートは、使用時に剥離シートを剥離して、例えば、窓ガラス等の透明な被着体に貼着シートを貼付した場合に、自己吸着層の表面、すなわち貼着面に記された可視情報を被着体を介して視認することができる。
【0023】
また、本発明の積層シートの製造方法は、例えば、合成紙基材及び自己吸着層を含む貼着シートを作製する工程、剥離シートの、シリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂を含む剥離剤層(以下、単に「剥離剤層」と称することがある)を有していない表面に可視情報を印刷する工程、剥離シートの可視情報印刷面が、貼着シートの自己吸着層に対向するように、剥離シートと貼着シートを貼合する工程、を含む。貼着シートを作製する工程は、生産性の観点から、合成紙基材の表面に、自己吸着層形成用組成物を塗工する工程と、自己吸着層形成用組成物を発泡させた後に架橋させる工程と、を含むのが好ましい。
【0024】
このような方法で積層シートを製造することにより、剥離シートに印刷された可視情報が、これに接する自己吸着層表面に明りょうに転写され、自己吸着層に可視情報を有する貼着シートが容易に作製できる。以下に、積層シートを構成する各層の材料及び形成方法を説明する。
【0025】
なお以下の説明において、「(メタ)アクリル」の記載は、アクリルとメタクリルの両方を示す。同様に「(メタ)アクリロイル」の記載はアクリロイルとメタクリロイルの両方を示し、「(メタ)アクリレート」の記載はアクリレートとメタクリレートの両方を示す。
【0026】
また重合体が「単量体単位を含む」とは、「重合体中にその単量体由来の繰り返し単位が含まれている」ことを意味する。
【0027】
<貼着シート>
貼着シートは、合成紙基材、及び自己吸着層を備える。貼着シートは、合成紙基材の上に任意の層を介して自己吸着層を形成してもよいし、合成紙基材の上に直接自己吸着層を形成してもよい。自己吸着層は、例えば、自己吸着層形成用の所定の組成物を発泡させた後に、架橋させることによって形成される。
【0028】
<合成紙基材>
本発明における基材は、合成紙基材を用いる。かかる合成紙基材としては、熱可塑性樹脂を含む基材であれば特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂と、無機微細粉末及び/又は有機フィラーと、を含む配合物をフィルム化したもので構成することができる。合成紙基材は、熱可塑性樹脂を含む多孔質シートであってもよい。また、合成紙基材は、上記の熱可塑性樹脂と、フィラーの他に、任意にその他の添加物を含む配合物をフィルム化してなる基材を用いることが好ましい。なお、配合物のフィルム化には、既知の成形法を用いることができる。合成紙基材としては、例えば、国際公開第2018/051984号に記載の合成紙等を使用することができる。
【0029】
合成紙基材は、その厚みが、20~900μmであることが好ましく、より好ましくは30~800μmである。合成紙基材の厚みを20μm以上とすることで、本発明の積層シート全体の機械的強度を向上させることができ、ひいては大面積のポスターなどを形成することが可能となる。合成紙基材の厚みを900μm以下とすることで、本発明の積層シート全体のコシが強くなりすぎることを防止し、かつ自重を軽くして貼着使用時の脱落防止を図ることができる。
【0030】
<自己吸着層>
本発明の積層体において、貼着シートの一部を構成する自己吸着層は、例えば、自己吸着層形成用の所定の組成物を発泡させた後に、架橋させることによって形成される。自己吸着層は、被着体への吸着性の観点から、発泡層であることが好ましい。発泡層の接着様式は、糊接着ではなく、微細な空孔を利用した被着体への吸着である。発泡層は、従来の糊接着を採用した貼着シートに比べて貼り直しが容易であり、例えば、壁紙、ポスター、ステッカーといった用途に好適に使用される。また糊粘着の場合、これに積層される剥離シートは、貼着シート使用時に容易に手で剥離できるよう、表面にシリコーン系樹脂やフッ素系樹脂などを含む剥離剤層を設ける必要がある場合が多い。一方、発泡層である自己吸着層は、これに積層する剥離シート表面に剥離剤層を必要としない。剥離剤層を有さない剥離シートは表面への印刷が可能であるため、後述するように、剥離シート表面に可視情報を印刷し、これを自己吸着層に転写することが可能である。
【0031】
<<発泡層用組成物>>
本発明に係る自己吸着層が発泡層である場合、該層の形成に用いられる自己吸着層形成用組成物を「発泡層用組成物」と称する。発泡層は、発泡層用組成物を架橋及び発泡することにより形成することができる。発泡層用組成物は、以下に述べる各成分を含み、任意に溶媒をさらに含有する。
【0032】
本発明に係る発泡層としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む樹脂組成物からなる層であることが好ましい。
【0033】
エチレン-酢酸ビニル共重合体は、エチレンと酢酸ビニルを任意の割合で混合して重合する事により得られる。エチレン-酢酸ビニル共重合体に含まれる酢酸ビニル単量体単位の含有量が多い場合は、エチレン単量体単位の含有量が増えるにつれて吸着力が増し、エチレン単量体単位の含有量が多い場合は、酢酸ビニル単量体単位の含有量が増えると吸着力が増加する。エチレン-酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル単量体単位の割合は、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましく、85質量%以下であることが特に好ましく、一方10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましい。共重合体における酢酸ビニル単量体単位の割合が10質量%以上、99質量%以下であれば、積層シートの自着力を十分に確保することができる。
【0034】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、その繰り返し単位を構成する単量体として、(メタ)アクリル酸エステルの他に、α,β-不飽和カルボン酸、アルケニル芳香族化合物、シアン化ビニル化合物、オレフィン系化合物などを挙げることができる。これらの単量体は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0035】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、積層シートの柔軟性を高め、自着力を良好に確保する観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が1~14の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下、「C1-14(メタ)アクリル酸アルキルエステル」と略記する場合がある。)がより好ましい。
【0036】
なお、C1-14(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸n-ヘプチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸n-ドデシルが挙げられる。これらの中でも、自着力およびコストの観点で、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2-エチルヘキシルが好ましい。
【0037】
α,β-不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸等のα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のα,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸またはその酸無水物などを挙げることができる。これらの中でも、後述する架橋剤との反応性、重合体ラテックスの安定性、およびコストの観点で、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
【0038】
アルケニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、α-クロロスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、などが挙げられる。これらの中でも、重合性やコストの観点で、スチレンが好ましい。
【0039】
シアン化ビニル化合物としては、例えばアクリロニトリル;α-クロロアクリロニトリル、α-ブロモアクリロニトリルなどのα-ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリル、α-エチルアクリロニトリルなどのα-アルキルアクリロニトリル;などが挙げられる。これらの中でも、発泡層用組成物の凝集力を向上し、発泡層の破壊強度を高める観点から、アクリロニトリルが好ましい。
【0040】
また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体はN-メチロール基を有していてもよい。具体的には、(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する単量体のいずれかが、N-メチロール基を有していてもよい。N-メチロール基を有する単量体を使用することにより、後述するゲル分率を所定の上限値以下とし易くなり、結果として適切な自着力を有し、且つ、平滑性に優れた自己吸着層を作製し易くなる。N-メチロール基を有する単量体としては、例えばN-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお上述した単量体はいずれも、単独で使用してもよいし複数種併用してもよい。
【0041】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合は、共重合体に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、85質量%以上であることが特に好ましく、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、92質量%以下であることが更に好ましい。共重合体における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合が60質量%以上であれば、積層シートの自着力を十分に確保することができる。一方、重合体における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合が99質量%以下であれば、積層シートの自着力が過度に高まることがなく、積層シートの被着体への樹脂残りを抑制することができる。
【0042】
本発明の発泡層は、特に(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有する樹脂組成物からなる層とすることにより、後述する各種印刷インクを用いた可視情報の転写が良好に行われるため好ましい。
【0043】
<<共重合体の特性>>
[ガラス転移温度]
共重合体のガラス転移温度は、-10℃以下であることが好ましく、-13℃以下であることがより好ましく、-17℃以下であることが更に好ましく、-20℃以下であることが特に好ましい。重合体のガラス転移温度が-10℃以下であれば、積層シートの自着力を十分に確保しつつ、積層シートが被着体と良好に密着することで被着体と積層シートの層間に水分が侵入するのを防ぐことができる。そのため、積層シートの耐水性を高めることができる。
【0044】
また、重合体のガラス転移温度の下限値は、特に限定されないが、積層シートの被着体への樹脂残りを十分に抑制する観点から、-40℃以上であることが好ましい。なお、重合体のガラス転移温度は、本明細書の実施例に記載された方法を用いて測定することができる。
【0045】
[ゲル分率]
共重合体のゲル分率は、95質量%以下であることが好ましく、93質量%以下であることがより好ましい。ゲル分率が95質量%以下であれば、適切な自着力を有し、且つ、平滑性に優れた発泡層及び積層シートを作製することができる。また、重合体のゲル分率の下限値は、特に限定されないが、例えば、50質量%以上とすることができ、70質量%以上とすることができる。なお、重合体のゲル分率は、本明細書の実施例に記載された方法を用いて測定することができる。
【0046】
<<共重合体の調製方法>>
共重合体を得る際の重合方法は、特に限定されず、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合などのいずれであってもよく、これら以外の方法でもよい。重合に用いる重合開始剤、乳化剤、分散剤等の種類や量にも特に制限はない。重合に際して、単量体、重合開始剤、乳化剤、分散剤等の添加方法にも特に制限はない。また、重合温度や圧力、撹拌条件等にも制限はない。
【0047】
なお、共重合体は、固体状で用いることもできるが、乳化重合で得たラテックスや、共重合体を後乳化して得たラテックスなど、共重合体を含むラテックス(共重合体ラテックス)の状態で使用すると、架橋剤やワックス剤等と混合する上で操作が容易であり、また、得られる発泡層用組成物を発泡させるにも都合がよい。
【0048】
<<架橋剤>>
本発明の自己吸着層は、シリコーン系樹脂またはフッ素系樹脂を含む剥離剤層を有さない剥離シートからの、適度な剥離性を有する点から、該層に含まれるエチレン-酢酸ビニル共重合体及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体は架橋されていることが好ましい。
【0049】
架橋剤としては、例えば、カルボジイミド系架橋剤;エポキシ系架橋剤;オキサゾリン系架橋剤;トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート、ジフェニルメタントリイソシアネート等の多官能性イソシアネート系架橋剤;金属塩系架橋剤;金属キレート系架橋剤;過酸化物系架橋剤;などが挙げられる。中でも、エポキシ系架橋剤が好ましく用いられ、2以上のエポキシ基を一分子内に有する化合物がより好ましく用いられる。そして、エポキシ系架橋剤としては、脂肪酸ポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0050】
発泡層用組成物中の架橋剤の配合量は、上述した共重合体100質量部当たり、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることが更に好ましく、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。架橋剤の配合量が上述した範囲内であることにより、強度や弾性を適度に保った発泡層を得ることができる。そのため、発泡層にかけられた圧力が解放された際、潰された発泡層中の発泡セルは、もとの形状に回復することができる。そして、積層シートの自着力を確保すると共に、積層シートの被着体への樹脂残りを十分に抑制することができる。
【0051】
<<ワックス剤>>
本発明の発泡層用組成物は、さらにワックス剤を含有していてもよい。ワックス剤は、これを含む発泡層の吸着力を調整する効果を有する。ワックス剤が配合された発泡層用組成物を発泡および硬化して発泡層を形成することで、発泡層の連泡構造および弾力性が改善するためと推察されるが、当該発泡層を備える積層シートの加熱加圧後のエア抜け性を優れたものとすることができる。
【0052】
ワックス剤としては、天然ワックス、合成ワックス、およびこれらの混合物が挙げられるが、いずれにせよ脂肪酸エステルを含有するものが好ましい。中でも炭素数16以上である高級脂肪酸と、炭素数30以上の高級アルコールからなる脂肪酸エステルを含有するものが好ましい。
【0053】
ワックス剤中の脂肪酸エステルの含有量は、ワックス剤全体を100質量%として、50質量%超100質量%以下(即ち主成分)であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることが好ましく、80質量%以上100質量%以下であることが更に好ましく、90質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。なお、ワックス剤は、一種の脂肪酸エステルを含んでいてもよく、二種以上の脂肪酸エステルを含んでいてもよい。
【0054】
発泡層用組成物における、ワックス剤の配合量は、上述した共重合体100質量部当たり、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、1.5質量部以上であることが更に好ましく、10質量部以下であることが好ましく、7質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることが更に好ましい。ワックス剤の配合量が、共重合体100質量部当たり0.5質量部以上であれば、積層シートの加熱加圧後のエア抜け性を一層高めることができる。一方、ワックス剤の配合量が、共重合体100質量部当たり10質量部以下であれば、得られる積層シートに良好な自着力を付与することができ、また積層シートの加熱加圧後のエア抜け性を一層高めることができる。
【0055】
<<溶媒>>
発泡層用組成物が任意に含みうる溶媒としては、特に限定されないが、水が好ましい。ここで、溶媒として水を用いる場合、発泡層用組成物に含まれる水は、例えば、重合体ラテックス由来の水とすることができる。
【0056】
<<その他の成分>>
発泡層用組成物は、任意に、発泡層および積層シートの製造工程における加工性向上や、得られる発泡層および積層シートの性能向上のために、各種添加剤を含有することができる。このような添加剤としては、例えば、国際公開第2018/051984号に記載されているものを使用することができる。
【0057】
<<発泡層の特性>>
本発明の積層シートにおける発泡層は、上述した発泡層用組成物を架橋及び発泡することで形成される。
【0058】
発泡層の密度としては、特に限定されないが、0.1g/cm3以上1.0g/cm3以下であることが好ましく、0.3g/cm3以上0.8g/cm3以下であることがより好ましく、0.5g/cm3以上0.7g/cm3以下であることが更に好ましい。発泡層の密度が0.1g/cm3以上であれば、発泡層の強度が確保され、1.0g/cm3以下であれば、積層シートの加熱加圧後のエア抜け性を一層高めつつ、被着体への樹脂残りを十分に抑制することができる。なお、発泡層の密度は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて算出することができる。
【0059】
また、発泡層の厚みは、0.03mm以上であることが好ましく、0.05mm以上であることがより好ましく、0.1mm以上であることが更に好ましく、3mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましく、0.5mm以下であることが更に好ましく、0.2mm以下であることが特に好ましい。発泡層の厚みが0.03mm以上であれば、発泡層及び積層シートの機械強度を十分に確保することができる。一方、発泡層の厚みが3mm以下であれば、積層シートの加熱加圧後のエア抜け性を一層高めることができる。また、繰り返しの貼り付け性(リワーク性能)に優れた積層シートを得ることができる。
【0060】
<剥離シート>
本発明における剥離シートは、自己吸着層と直接接しており、自己吸着層側の表面にシリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂を含む剥離剤層を有していないことを特徴とする。
【0061】
剥離シートは、貼着シートの自己吸着層の表面に可視情報を転写すると同時に、貼着シートが目的とする被着体以外に吸着することを防止するために、自己吸着層の表面に積層するものである。剥離シートは、貼着シートを使用するまで自己吸着層に積層されて該層を保護するものであり、貼着シートを使用する際には自己吸着層と分離されて通常は破棄されるものである。従って剥離シートは、積層シートの移送時や印刷等の二次加工時には容易に剥がれず、貼着シートの使用時には手で容易に剥がれることが望まれる。
【0062】
かかる観点から、本発明の積層シートにおいて、JIS K6854-2:1999に基づき測定される自己吸着層と剥離シート間のはく離接着強さは5~30N/mであることが好ましく、5~20N/mであることがより好ましく、5~15N/mであることが更に好ましく、5~12N/mであることが特に好ましい。はく離接着強さが5N/m以上であれば、積層シートに印刷等の二次加工を行う際に貼着シートと剥離シートが容易に浮き剥がれてしまうことが無く、又はく離接着強さが30N/m以下であれば、両者を容易に手で剥がすことが出来る。
【0063】
剥離シートは熱可塑性樹脂からなるシートであることが好ましく、自己吸着層に含まれる熱可塑性樹脂との相溶性が低い樹脂からなるシートが好ましい。例えば自己吸着層が(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含む場合、剥離シートとしてはポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂のようなポリオレフィン系樹脂、又はポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂からなる熱可塑性樹脂シートであることが好ましい。特に(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む自己吸着層と貼り合わせた際の、剥離接着強さが良好である点からは、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂のような極性の無いポリオレフィン系樹脂からなるシートであることが好ましく、自己吸着層への貼合面が比較的平滑であるシートであることが好ましい。
【0064】
更なる試行錯誤の結果から、上記の剥離シートの表面の粗さを、JIS B0601:2001に規定される算術平均粗さRaが好ましくは0.01~1μm、より好ましくは0.02~0.5μm、更に好ましくは0.03~0.3μmの範囲内のものを用いた場合に、望まれるはく離接着強さを達成しうる剥離シートが得られやすいことが判明した。
【0065】
一方、本発明の積層シートを構成する剥離シートの、積層シートの印刷等の二次加工時に容易に剥がれないようにする因子として、引張応力に対するその伸びにくさ/伸びやすさが挙げられる。本発明の積層シートを構成する貼着シート及び剥離シートを伸びにくいものとするために、両者の引張弾性率は、それぞれ100~5000MPaであることが好ましく、200~4000MPaであることがより好ましい。
【0066】
本発明の積層シートは、合成紙基材の上に印刷されてラベルやPOP等の様態で用いることができる。
【0067】
合成紙基材表面への印刷時のカール抑制には、貼着シートと剥離シートの引張弾性率が同程度であることが好ましい。具体的には積層シートを構成する貼着シートと剥離シートの、JIS K7161-1:2014に基づき測定されるそれぞれの引張弾性率の比が0.1~10の範囲内であることが好ましい。同引張弾性率比は0.2~5の範囲内であることがより好ましく、0.3~3であることが更に好ましい。同範囲内であれば、片伸びによる積層シートの浮き剥がれが発生しにくい。
【0068】
<可視情報>
本発明に係る積層シートは、自己吸着層の剥離シート側の表面に可視情報を有する。可視情報は、特に貼着シートを透明な被着体に貼付することにより、自己吸着層側から被着体を通して視認することができる。
【0069】
ここで、可視情報は、肉眼で見て把握できるように視覚的な情報であれば特に限定されないが、本発明に係る積層シートを製造した者、又は積層シートの表面に印刷を施した者の製造元、製造国等が示された情報を含むことができる。例えば、合成紙基材、及び剥離シートを不透明にすることにより、使用時に剥離シートを剥がす際、積層シートの製造元を確認することで積層シートの模造品と区別可能な手段として、可視情報を用いてもよい。
【0070】
(積層シートの製法)
以下、本発明の積層シートを製造する方法の一例について説明する。
【0071】
本発明の積層シートは、例えば合成紙基材及び自己吸着層を有する貼着シートを作製する工程(以下、「貼着シート作製工程」と称する)、剥離シートの、シリコーン系樹脂またはフッ素系樹脂を含む剥離剤層を有していない表面に可視情報を印刷する工程(以下、「可視情報印刷工程」と称する)、及び前記剥離シートの可視情報印刷面が、前記貼着シートの自己吸着層に対向するよう、前記剥離シートと前記貼着シートを貼合する工程(以下、「印刷面貼合工程」と称する)、を含む方法にて製造される。
【0072】
貼着シート作製工程の後、可視情報印刷工程及び印刷面貼合工程は、様々なタイミングで行うことができる。本発明の積層シート製造方法として、具体的には例えば以下の方法が挙げられる。
【0073】
方法1)長尺の剥離シートにおけるシリコーン系樹脂またはフッ素系樹脂を含む剥離剤層を有していない面に可視情報を印刷し、巻き取っておく。貼着シート作製工程の後、可視情報印刷済みの剥離シートを巻出して、剥離シートの可視情報印刷面が貼着シートの自己吸着層に接するように積層し、両者を圧着ロールを介して挟圧して貼合し、本発明の積層シートを得る。
【0074】
方法2)貼着シート作製工程の後、可視情報印刷前の剥離シートを、貼着シートの自己吸着面に積層し、両者を圧着ロールを介して挟圧して貼合する。この時、剥離シートにおける、シリコーン系樹脂またはフッ素系樹脂を含む剥離剤層を有していない面が、貼着シートの自己吸着層に対向するように積層する。次いで、剥離シートを貼着シートから一旦剥離し、剥離シートにおけるシリコーン系樹脂またはフッ素系樹脂を含む剥離剤層を有していない面に、可視情報を印刷した後、当該印刷面が自己吸着層に対向するように貼着シートに再貼合し、本発明の積層シートを得る。
【0075】
方法3)貼着シート作製工程の後、可視情報印刷前の剥離シートを、貼着シートの自己吸着面に積層し、両者を圧着ロールを介して挟圧して貼合する。この時、剥離シートにおける、シリコーン系樹脂またはフッ素系樹脂を含む剥離剤層を有していない面が、貼着シートの自己吸着層に対向するように積層する。次いでこれを裁断し、所望のサイズに加工する。加工済みの積層体から剥離シートを剥離し、そのシリコーン系樹脂またはフッ素系樹脂を含む剥離剤層を有していない面に、可視情報を印刷した後、当該印刷面が自己吸着層に対向するように貼着シートに再貼合し、本発明の積層シートを得る。
【0076】
上記いずれの方法においても、剥離シートに印刷した可視情報が、貼着シートの自己吸着層に転写され、自己吸着層表面に可視情報を有する貼着シート及びこれを含む積層シートが得られる。可視情報の印刷には、乾燥速度が速いインキが好ましく、例えばUV硬化型インキや、グラビアインキに代表される低沸点溶剤の蒸発により乾燥固化するインキが好ましい。中でも、UV硬化型インキとしてはアクリル系インキ、グラビアインキとしてはウレタン系インキを使用すると、前記発泡層がエチレン-酢酸ビニル共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む樹脂組成物からなる層である場合に、可視情報の転写性が良好であるため好ましい。特に発泡層が(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む樹脂組成物からなる層である場合に、これらのインキを使用すると転写性が極めて良好である。
【0077】
剥離シートに可視情報を印刷する際の手法は特に限定されないが、代表的な例としては、UVインキを使用する場合はオフセット印刷、フレキソ印刷、凸版印刷、インクジェット印刷などの印刷方式があげられる。また、低沸点溶剤の蒸発により乾燥するインキを用いる場合はグラビア印刷、凸版印刷などの手法があげられる。
製造効率の点からは、上記方法1が最も好ましい。
【0078】
図1に、本発明の積層シートを製造する方法またはその一部である方法S10(以下、「製造方法S10」と略記することがある。)の一例を説明するフローチャートを示す。
図1に示すように、製造方法S10は、組成物作製工程S1と、発泡工程S2と、シート化工程S3、剥離シート積層工程S4とをこの順に含む。このうち、工程S1~S3は前述の「貼着シート作製工程」に相当し、工程S4は前述の方法1における「印刷面貼合工程」、または方法2及び3における可視情報印刷前の剥離シートを、貼着シートに貼合する工程に相当する。以下、各工程について説明する。
【0079】
<組成物作成工程S1>
組成物作製工程S1は自己吸着層形成用組成物を調製する工程であり、具体的には自己吸着層が発泡層である場合の、発泡層用組成物を作製する工程である。
【0080】
具体的には、組成物作製工程S1においては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステル共重合体、架橋剤、ワックス剤などを含み、所望により用いられる溶媒及びその他の添加剤を、任意の方法で混合することにより、発泡層用組成物を作製することができる。
【0081】
例えば、発泡層用組成物の調製に重合体ラテックスを用いる場合には、この重合体ラテックスに、架橋剤、ワックス剤及びその他の添加剤などを添加して既知の方法で混合すればよい。
【0082】
なお、発泡層用組成物の調製に溶媒を使用せず、固形状の重合体を用いる場合には、固形状の重合体と、架橋剤と、ワックス剤やその他の添加剤などを既知の方法(例えば、既知のロール、ヘンシェルミキサー、ニーダー等を使用)で混合すればよい。
【0083】
ここで、溶媒を含む発泡層用組成物(例えば、エマルション又はディスパージョンの形態をとる。)の粘度は、1,000mPa・s以上10,000mPa・s以下とするのが好ましく、2,000mPa・s以上10,000mPa・s以下とするのがより好ましく、3,500mPa・s以上5,500mPa・s以下とするのが更に好ましい。発泡層用組成物の粘度が1,000mPa・s以上であれば、発泡層用組成物から形成される発泡体を基材上にコーティングして発泡層を形成する際に液ダレが生じて厚みの制御が困難になるのを防止することができる。一方、発泡層用組成物の粘度が10,000mPa・s以下であれば、発泡層を形成する際に機械発泡による発泡倍率の制御が困難になることもない。
【0084】
なお、発泡層用組成物の粘度は、本明細書の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0085】
<発泡工程S2>
発泡工程S2は、発泡層用組成物を発泡させ、発泡層用組成物の発泡体を得る工程である。
【0086】
具体的には、発泡工程S2においては、上記組成物作製工程S1で作製した発泡層用組成物を発泡させることにより、未固化(未架橋)状態の発泡体を得ることができる。ここで、発泡層用組成物がエマルション又はディスパージョンの形態である場合には、発泡エマルション又は発泡ディスパージョンが得られる。
【0087】
発泡の方法としては、通常、機械発泡を採用する。発泡倍率は、適宜、調整すればよいが、通常1.2倍以上5倍以下、好ましくは1.5倍以上4倍以下である。機械発泡の方法は、特に限定されないが、発泡層用組成物のエマルジョン又はディスパージョン中に一定量の空気を混入しオークスミキサー、ホイッパー等により連続的又はバッチ式に撹拌することにより行うことができる。こうして得られた発泡エマルジョン又は発泡ディスパージョンはクリーム状になる。
【0088】
上記機械発泡により細孔を形成することで、更に後述のシート化工程S3を経て、エア抜け性に優れた発泡層が得られる。なお、発泡倍率が、1.2倍以上であると、エア抜け性が低下するのを防止することができ、5倍以下であると、発泡層の強度が低下するのを防止することができる。
【0089】
<シート化工程S3>
シート化工程S3は、発泡体をシート状に成形した後、発泡体の架橋反応を行うことで、発泡層を作製する工程である。
【0090】
シート化工程S3において、上記発泡工程S2で作製した発泡体をシート状に成形する方法は特に限定されない。好適な方法としては、例えば、所望の合成紙基材の上に発泡体をコーティングしてシート状に成形する方法が挙げられる。このように、所望の合成紙基材上へ発泡体のコーティングを行い、架橋反応を進行させれば、合成紙基材上に直接発泡層が設けられた積層シートを得ることができる。
【0091】
発泡体を合成紙基材の上へコーティングする方法としては、アプリケーター、バーコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、スクリーンコーター、ドクターナイフコーター、コンマナイフコーター等の一般に知られているコーティング装置が使用することができる。
【0092】
合成紙基材等の上で、シート状にコーティングされた発泡体を架橋する方法としては、発泡体を加熱乾燥する方法が好ましい。加熱乾燥の方法としては、合成紙基材等の上にコーティングされた発泡体を乾燥、架橋させることができる方法であれば特に限定されず、既知の乾燥炉(例えば、熱風循環型のオーブン、熱油循環熱風チャンバー、遠赤外線ヒーターチャンバー)を使用することができる。乾燥温度は、例えば60℃以上180℃以下とすることができる。また、乾燥を一定温度で実施するのではなく、乾燥初期には低温で内部から乾燥させ、乾燥後期に、より高温で十分乾燥させるような多段階乾燥を行うことが好ましい。
【0093】
なお、発泡層の性状(密度、厚み、硬度等)は、例えば、気泡の混入比率、発泡層用組成物の組成、固形分濃度、乾燥及び架橋の条件等を変更することにより、調整することができる。
【0094】
<剥離シート積層工程S4>
剥離シート積層工程S4は、自己吸着層(発泡層)上に、剥離シートのシリコーン系樹脂またはフッ素系樹脂を含む剥離剤層を有していない面が接するように積層する工程である。具体的には、上記シート化工程S3において、コーティングによりシート状に成形された吸着層を加熱乾燥した後、長尺の剥離シートを巻出し、合成紙基材上の自己吸着層と剥離シートの該当面が接するように積層し、次いで両者を圧着ロールを介して挟圧して貼合する。
【0095】
前述の方法1の場合、ここで使用する剥離シートには、製造方法S10外の「可視情報印刷工程」にて予め可視情報の印刷を施しておくことにより、工程S4にて本発明の積層シートが得られる。
【0096】
前述の方法2の場合、工程S4にて貼着シートと剥離シートを一旦貼合した後、剥離シートを剥離する。引き続きオンラインで、またはオフラインで剥離シート表面に可視情報を印刷した後、貼着シートの自己吸着層に再貼合することで、本発明の積層シートが得られる。
【0097】
剥離シート積層工程S4、またはこれに続く剥離シートの剥離・再貼合工程(方法2の場合)により得られた積層シートは、通常、巻取機によって巻き取られ、プレス裁断、スリッター等により裁断されて使いやすいサイズに加工される。
【0098】
なお前述の方法3の場合、上述の工程S4にて貼着シートと、可視情報印刷前の剥離シートを貼合した後、巻取機にて巻き取り、裁断し、所望のサイズに加工した積層体から、剥離シートを剥離しする。剥離した剥離シートの表面に可視情報を印刷した後、貼着シートの自己吸着層に再貼合することにより、本発明の積層シートが得られる。
【0099】
なお本発明における「積層シート」は、裁断前の長尺のものも、裁断により所望のサイズに加工されたものも含む。
【0100】
<積層シートの用途>
本発明の積層シートは、その合成紙基材面に、たとえば、オフセット印刷、シール印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、グラビア印刷、レーザープリンター、熱転写プリンター、インクジェットプリンター等による印刷を施すことができる。
【0101】
合成紙基材面に印刷を施した積層シートは、剥離シートから剥がした貼着シートを被着体に貼付することにより、例えば販売促進カード、いわゆるPOPカード(ポスター、ステッカー、ディスプレイ等)、園芸用POP(差しラベル等)、ロード・サイン(葬式・住宅展示場所等)、表示板(立ち入り禁止、林道作業等の)等の屋外での用途に、有利に使用することが可能である。本発明の積層シートは、その貼着シートの自己吸着層表面にも可視情報が記載されているため、特に透明な被着体に貼付することにより、吸着層側の可視情報が被着体を通して視認可能であるため好ましい。
【0102】
なお本発明の積層シートは、例えば自己吸着層表面に製造者名や製品名を記載しておくことにより、シート自体の真贋判定にも利用できる。
【0103】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0104】
また、複数種類の単量体を重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される単量体単位の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。そして、実施例及び比較例において、重合体のガラス転移温度及びゲル分率、発泡層用組成物の粘度、並びに発泡層の密度、ならびに、積層シートにおける可視情報の転写性及び貼着シートの吸着性は、以下の方法で評価した。
【0105】
<重合体のガラス転移温度>
自己吸着性発泡層(以下、単に「発泡層」と称す)の材料として用いる重合体のガラス転移温度(Tg)を、以下の方法で測定した。重合体を含む重合体ラテックスを厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に250μmのアプリケーターで塗布し、常温下で24時間乾燥させて、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成されたフィルムを得た。このポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成されたフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム以外)をサンプルとして、JIS K 7121に準じて、測定温度-50℃以上160℃以下、昇温速度10℃/分の条件で、示差走査熱量分析計(日立ハイテクサイエンス社製 DSC7000X)を用いてガラス転移温度(℃)を測定した。
【0106】
<重合体のゲル分率>
発泡層の材料として用いる重合体のゲル分率を、以下の方法で測定した。重合体を厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に250μmのアプリケーターで塗布し、常温下で24時間乾燥させて、樹脂フィルムを得た。このフィルムをサンプルとして、所定量(X)(約500mg)を精秤し、これを酢酸エチル100ml中に常温で3日間浸漬した後、不溶分を200メッシュの金網で濾過し、15時間常温下で風乾し、その後100℃で2時間乾燥させ、常温下で冷却した後に試料の重量(Y)を測定した。X及びYを次式に代入することにより、ゲル分率を算出した。 ゲル分率(%)=(Y)/(X)×100
【0107】
<発泡層用組成物の粘度>
B型粘度計(リオン社製、「VISCOTESTER VT-06」)を用いて、23℃で発泡層用組成物の粘度を測定した。
【0108】
<発泡層の密度>
貼着シートを作製後、20cm×20cmのサイズに切り出した試験片を用意した。切り出した試験片の質量:Xgを精秤し、また、20cm×20cmに切り出した基材の質量:Ygを精秤した。その後、作製した貼着シート及び基材の厚みを厚み計にてそれぞれ計測し、貼着シートの厚みから基材の厚みを差し引くことで、発泡層の厚み:Tcmを得た。このとき、厚みの値は6点測定した際の平均値より算出した。測定したX、Y、及びTの値を次式に代入することにより、発泡層の密度を算出した。 密度(g/cm3)=(X-Y)/(T×20×20)
【0109】
<可視情報の転写性>
積層シートを作製し、室温にて1週間保持した。次いで積層シートから剥離シートを剥がし、貼着シートの発泡層表面をガラス板に貼りつけた。発泡層に転写された可視情報を、ガラス板越しに目視観察して評価した。剥離シート表面から発泡層表面へのインキの転写が十分でなく、可視情報の色味が薄い場合には、発泡層表面に対する目視角度によっては、可視情報が視認できない場合がある。
【0110】
<貼着シートの吸着性>
評価において、ガラス板に貼着した貼着シートをそのまま1週間室温で放置した後、貼着シートの吸着状態を観察し評価した。
【0111】
(実施例1)
<剥離シートの準備>
片面にコロナ放電表面処理を施した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学社製、FOS60)のコロナ放電処理面に、グラビア印刷機(オリエント総業社製)にてウレタン系グラビアインキ(東洋インキ社製、リオアルファS R92H 墨AN)を使用して
図2に示す図柄を全面印刷した。100℃のオーブンで5秒間乾燥して可視情報を有する剥離シートを得た。印刷版から剥離シートへのインキ転移性は良好で、インキは剥離シート表面で弾かれることなく、鮮明な図柄が印刷された。
【0112】
<重合体の調製>
脱イオン水27.0部に、アクリル酸エチル64部、アクリル酸2-エチルヘキシル12部、アクリル酸n-ブチル12部、アクリロニトリル9部、スチレン2部及びアクリル酸1部からなる単量体混合物、ならびに、ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム0.4部(花王社製、ラテムルE-118B)を混合、撹拌して、単量体乳化物を得た。
【0113】
次いで、上記とは別に、還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口、及び撹拌機を備えたガラス製反応容器を準備し、このガラス製反応容器に、脱イオン水43.0部およびポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム0.2部を入れ、撹拌しながら、温度を80℃に昇温させた。そして、80℃を維持した状態で、脱イオン水5.7部に溶解させた過硫酸アンモニウム0.3部を添加し、続いて、上記にて得られた単量体乳化物を、4時間かけて徐々に添加した。添加終了後、さらに4時間撹拌を継続した後、冷却して反応を終了させ、反応混合物を得た。この時の重合転化率は、ほぼ100%(98%以上)であり、得られた反応混合物を、5%アンモニア水にてpH5.0に調整し、ポリオキシエチレンラウリルエーテル2.5部(花王社製、:エマルゲン120)を添加後、濃縮を行い、固形分濃度55%の重合体ラテックスを得た。得られた重合体ラテックスに含まれる重合体のガラス転移温度は-26℃、ゲル分率は91%であった。
【0114】
<発泡層用組成物の調製>
混合容器に、固形分換算で100部の上記重合体ラテックス(即ち、重合体ラテックスに含まれる重合体が55部)、3部(重合体100部当たり5.5部)のエポキシ系架橋剤〔脂肪酸ポリグリシジルエーテル(ジャパンコーティングレジン社製、リカボンド EX-8)〕、2部(重合体100部当たり3.6部)のワックス剤(炭素数が16以上34以下の脂肪酸部分を有する脂肪酸エステルを含有)、及び4部の整泡剤〔ステアリン酸アンモニウム(サンノプコ社製、ノプコDC-100A)〕をこの順に添加した。最後に増粘剤〔ポリアクリル酸ナトリウム(東亞合成社製、アロンA-20L)〕を添加して、粘度を4250mPa・sに調整することによって発泡層用組成物を得た。
【0115】
<合成紙基材の準備>
プロピレン単独重合体(日本ポリケム社製、ノバテックPP:MA4)74%、高密度ポリエチレン(日本ポリケム社製、ノバテックHD:HJ360)10%及び炭酸カルシウム(備北粉化工業社製、ソフトン1800)16%を、250℃で溶融混練した後、250℃に設定したダイに供給しシート状に押し出し、冷却ロールで冷却して無延伸シートを得た。得られた無延伸シートを、135℃に加熱して縦方向に4倍の倍率で延伸して基材層(b)とした。
【0116】
次に、プロピレン単独重合体(日本ポリケム社製、ノバテックPP:EA8)52%、高密度ポリエチレン(日本ポリケム社製、ノバテックHD:HJ360)3%及び炭酸カルシウム(備北粉化工業社製、ソフトン1800)45%を、それぞれ別々の押し出し機にて250℃で溶融混練した後、250℃に設定したダイに供給しシート状に押し出し、表面層(a)、裏面層(c)として上記基材層(b)の両側に積層し、60℃まで冷却して、3層構造の積層フィルム(a/b/c)を得た。
【0117】
そして、得られた3層構造の積層フィルムを、再び180℃まで加熱してテンターで横方向に9倍の倍率で延伸した。その後、160℃でアニーリング処理した後、60℃まで冷却し、耳部をスリットして、多層樹脂延伸フィルムからなる合成紙基材を得た。
【0118】
<積層シートの作製>
上記の通り得られた発泡層用組成物を泡立て器で撹拌し、発泡倍率が1.6倍になるように泡立て、更に撹拌速度を落として5分間撹拌を続行した。
【0119】
発泡済みの発泡層用組成物(発泡体)を、上述した合成紙基材の上に、0.3mmのアプリケーターを用いてコーティングした。これを乾燥炉に入れ、80℃で1.33分間、120℃で1.33分間、140℃で1.33分間保持して、乾燥及び架橋を実施し、発泡層を形成して貼着シートを作製した。次いで先に作成した剥離シートを、印刷面が貼着シートの発泡層と接する様に積層して積層シートを得た。なお、乾燥後の発泡層の厚みは0.133mmであった。
【0120】
<評価>
得られた積層シートから剥離シートを剥がし、貼着シートの発泡層表面をガラス板に貼り付けた。前述した方法にて〈可視情報の転写性〉を評価したところ、ガラス板越しに目視観察した可視情報は、どの角度から見ても明確に読み取ることができた。また前述した方法にて<貼着シートの吸着性>を評価したところ、浮きや剥がれは発生せず、貼り付け時と同様に、貼着シートはガラス板に密着していた。
【0121】
(実施例2)
実施例1において下記発泡層用組成物を用いた以外は実施例1と同様の手法で、積層シートを得た。
【0122】
<重合体の調製>
単量体としてアクリル酸エチル46.9部、アクリル酸ブチル45.8部、アクリロニトリル5.9部、及びNメチロールアクリルアミド1.4部を使用した以外は、実施例1と同様に重合体ラテックスを得た 。得られた重合体ラテックスに含まれる重合体のガラス転移温度は-25.9℃、ゲル分率は43.1%であった。
【0123】
<発泡層用組成物の調製>
混合容器に、固形分換算で100部の上記重合体ラテックス(重合体ラテックスに含まれる重合体は55部)、固形分換算で3.6部のカルボジイミド系架橋剤(DIC社製、DICNAL HX)、及び固形分換算で4.2部の酸化チタン水分散体(DIC社製、DISOERSE WHITE HG-701)を添加し、高速分散機で攪拌した。次に攪拌を継続しながら、固形分換算で2部の増粘剤(カルボン酸変性アクリル酸エステル重合体。東亜合成社製、アロンB-300K)、及び固形分換算で4.1部の整泡剤[アルキルベタイン両性化物・脂肪酸アルカノールアミド混合物(DIC社製、DICNAL M-20)/スルホン酸型アニオン界面活性剤(DIC社製、DICNAL M-40)の1/1混合物)をこの順に添加し、均一に混合後、150メッシュのステンレスふるいで濾過した。最後に、アンモニアを添加して粘度が4,500mPa・sとなるように調整して発泡層用組成物を得た。
【0124】
<評価>
得られた積層シートから剥離シートを剥がし、貼着シートの発泡層表面をガラス板に貼り付けた。前述した方法にて〈可視情報の転写性〉を評価したところ、ガラス板越しに目視観察した可視情報は、どの角度から見ても明確に読み取ることができた。また前述した方法にて<貼着シートの吸着性>を評価したところ、浮きや剥がれは発生せず、貼り付け時と同様に、貼着シートはガラス板に密着していた。
【0125】
(実施例3)
実施例1と同様に作成した貼着シートの発泡層表面に、仮剥離シートとして、片面にコロナ放電表面処理を施した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製 FOS60)の表面処理された表面を積層した。
【0126】
次いで、貼り合わせ加工機を使用して、貼着シートから仮剥離シートを剥がし、以下の方法にて作製した剥離シートを、その印刷面が発泡層と対向するように貼着シートに積層し、積層シートを得た。
【0127】
<剥離シートの準備>
片面にコロナ放電表面処理を施した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学社製、FOS60)のコロナ放電処理面に、フレキソ印刷機(太陽機械社製)にてアクリル系UV硬化型インキ(T&K YOKA社製、UVフレキソ500藍)を使用して
図2に示す図柄を全面印刷した。メタルハライドランプを使用して70mJ/cm
2の照射量でUV照射し、インキを硬化させて可視情報を有する剥離シートを得た。印刷版から剥離シートへのインキ転移性は良好で、インキは剥離シート表面で弾かれることなく、鮮明な図柄が印刷された。
【0128】
<評価>
得られた積層シートから剥離シートを剥がし、貼着シートの発泡層表面をガラス板に貼り付けた。前述した方法にて〈可視情報の転写性〉を評価したところ、ガラス板越しに目視観察した可視情報は、どの角度から見ても明確に読み取ることができた。また前述した方法にて<貼着シートの吸着性>を評価したところ、浮きや剥がれは発生せず、貼り付け時と同様に、貼着シートはガラス板に密着していた。
【0129】
(実施例4)
下記手法にて作製した剥離シートを使用した以外は、実施例3と同様に積層シートを得た。
【0130】
<剥離シートの準備>
片面にコロナ放電表面処理を施した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学社製、FOS60)のコロナ放電処理面に、レタープレス印刷機(三起機械製)にてアクリル系UV硬化型インキ(T&K YOKA社製、UV161藍)を使用して
図2に示す図柄を全面印刷した。メタルハライドランプを使用して30mJ/cm
2の照射量にてUV照射し、インキを硬化して可視情報を有する剥離シートを得た。
【0131】
(比較例1)
片面にコロナ放電表面処理を施した二軸延伸ポリプロピレンフィルムの代わりに、シリコンコートフィルム(王子エフテックス社製、60RL-01)を使用した以外は、実施例1と同様に剥離シートを作製した。シリコンコートフィルムの表面でインキが弾かれたため、印刷版から剥離シートへのインキ転移は十分に行われず、印刷された図柄は不鮮明であった。
【0132】
得られた剥離シートを用いて実施例1と同様に積層シートを作製した。
【0133】
<評価>
得られた積層シートから剥離シートを剥がし、貼着シートの発泡層表面をガラス板に貼り付けた。前述した方法にて〈可視情報の転写性〉を評価したところ、ガラス板越しに目視観察した可視情報は、殆ど読み取れなかった。また前述した方法にて<貼着シートの吸着性>を評価したところ、浮きや剥がれは発生せず、貼り付け時と同様に、貼着シートはガラス板に密着していた。
【符号の説明】
【0134】
S1 組成物作製工程
S2 発泡工程
S3 シート化工程
S4 剥離シート積層工程