(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018444
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】スライドドア給電装置
(51)【国際特許分類】
H02G 11/00 20060101AFI20250130BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
H02G11/00
B60R16/02 620C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122141
(22)【出願日】2023-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】川村 幸大
(72)【発明者】
【氏名】竿谷 尚志
【テーマコード(参考)】
5G371
【Fターム(参考)】
5G371AA01
5G371BA01
5G371CA03
(57)【要約】
【課題】電気ケーブルが外装部材からはみ出ることを防止できるスライドドア給電装置を提供する。
【解決手段】車体側保持部3とスライドドア側保持部4との一方に、これら各部3,4の間における外装部材5の前後方向Xの移動を規制する規制部38と、規制部38で規制された外装部材5が車体側保持部3とスライドドア側保持部4のうち他方に向かって延出する延出開口部39と、前後方向Xと直交する上下方向Zに電気ケーブル2を支持するケーブル支持部36とが備えられ、ケーブル支持部36は車体側保持部3及びスライドドア側保持部4において、規制部38よりも延出開口部39の反対側である車体内側Iに配置された。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体からスライドドアに組み込まれた電装部品に対して給電を行なうスライドドア給電装置であって、
前記車体と前記スライドドアの間に架け渡される帯状の電気ケーブルと、
前記電気ケーブルの少なくとも一部を収容する外装部材と、
前記電気ケーブルの端部側をそれぞれ保持する一対の保持部とが備えられ、
一対の前記保持部は、
前記車体に固定されて前記電気ケーブルの一端側を保持する車体側保持部と、
前記スライドドアに固定されて前記電気ケーブルの他端側を保持するスライドドア側保持部とがあり、
帯状の前記電気ケーブルは、幅方向が上下方向に向くように配置され、
帯状の前記電気ケーブルの少なくとも一部を収容する前記外装部材に、下方に向かって開口するとともに、長手方向に沿うスリットが設けられ、
一対の前記保持部の少なくとも一方に、
前記車体側保持部と前記スライドドア側保持部との間における前記外装部材の前記長手方向の位置を少なくとも規制する規制部と、
前記規制部で規制された前記外装部材が他方の前記保持部に向かって前記保持部から延出する延出開口部と、
前記長手方向と直交する前記上下方向に前記電気ケーブルの下端を支持する支持部とが備えられるとともに、
前記支持部は、前記保持部において、前記規制部よりも、前記延出開口部の反対側に配置された
スライドドア給電装置。
【請求項2】
前記支持部は、前記外装部材の端部より前記反対側に配置された
請求項1に記載のスライドドア給電装置。
【請求項3】
前記支持部は、前記外装部材の端部より前記規制部の側に配置されるとともに、前記スリットから前記外装部材の内部に侵入可能な凸状に形成された
請求項1に記載のスライドドア給電装置。
【請求項4】
前記支持部は、
前記外装部材の端部より前記反対側に配置された第1支持部と、
前記外装部材の端部より前記規制部の側に配置されるとともに、前記スリットから前記外装部材の内部に侵入可能な凸状に形成された第2支持部とが設けられた
請求項1に記載のスライドドア給電装置。
【請求項5】
前記支持部より前記反対側に、
前記電気ケーブルの上方移動を規制するケーブル規制部が設けられた
請求項1乃至請求項4のうちいずれかに記載のスライドドア給電装置。
【請求項6】
帯状の前記電気ケーブルは、厚み方向に複数積層され、
積層された複数の前記電気ケーブルは、前記支持部によって支持された
請求項5に記載のスライドドア給電装置。
【請求項7】
帯状の前記電気ケーブルは、厚み方向に複数積層され、
積層された複数の前記電気ケーブルは、前記支持部によって支持された
請求項1乃至請求項4のうちいずれかに記載のスライドドア給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スライドドアに組み込まれた電装部品に対して給電を行うスライドドア給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のスライドドアには、パワーウインドウ用モーターやオーディオ用スピーカー等の電装部品が組み込まれており、これらの電装部品に対して給電を行うスライドドア給電装置が存在している。
【0003】
このようなスライドドア給電装置は、車体とスライドドアの間に架け渡される電気ケーブルと、車体に固定されて電気ケーブルの一端側を保持する車体側保持部と、スライドドアに固定されて電気ケーブルの他端側を保持するスライドドア側保持部とを有している。
【0004】
上述のようなスライドドア給電装置は、車体側保持部とスライドドア側保持部との間において、電気ケーブルが垂れ下がることがあり、その状態でスライドドアが動作することによって、車体などと接触して異音が発生したり、電気ケーブル自体が損傷してしまったりという問題があった。そのため、特許文献1では、電気ケーブルの垂れ下がりを抑制できるスライドドア給電装置を開示している。
【0005】
特許文献1のスライドドア給電装置は、車体側保持部もしくはスライドドア側保持部における、電気ケーブルをスライドドアの動きに追従させて屈曲させることのできる開口部において電気ケーブルを斜め上方へ向けることで、電気ケーブルの垂れ下がりを抑制している。
【0006】
しかしながら、車体側保持部とスライドドア側保持部との間において、電気ケーブルは外装部材で囲繞されている。そのため、特許文献1で開示の構成では、電気ケーブルを囲繞する外装部材ごと斜め上方へ向けることになる。
【0007】
なお、外装部材には、内部に電気ケーブルを収容するため、長手方向に沿うとともに、下方に開口するスリットが設けられている。そのため、電気ケーブルと外装部材とが相対的に移動し、斜め上方へ向けられた外装部材から電気ケーブルが垂れ下がるようにはみ出すおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、架け渡された電気ケーブルが外装部材からはみ出ることを防止できるスライドドア給電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、車体からスライドドアに組み込まれた電装部品に対して給電を行なうスライドドア給電装置であって、前記車体と前記スライドドアの間に架け渡される帯状の電気ケーブルと、前記電気ケーブルの少なくとも一部を収容する外装部材と、前記電気ケーブルの端部側をそれぞれ保持する一対の保持部とが備えられ、一対の前記保持部は、前記車体に固定されて前記電気ケーブルの一端側を保持する車体側保持部と、前記スライドドアに固定されて前記電気ケーブルの他端側を保持するスライドドア側保持部とがあり、帯状の前記電気ケーブルは、幅方向が上下方向に向くように配置され、帯状の前記電気ケーブルの少なくとも一部を収容する前記外装部材に、下方に向かって開口するとともに、長手方向に沿うスリットが設けられ、一対の前記保持部の少なくとも一方に、前記車体側保持部と前記スライドドア側保持部との間における前記外装部材の前記長手方向の位置を少なくとも規制する規制部と、前記規制部で規制された前記外装部材が他方の前記保持部に向かって前記保持部から延出する延出開口部と、前記長手方向と直交する前記上下方向に前記電気ケーブルの下端を支持する支持部とが備えられるとともに、前記支持部は、前記保持部において、前記規制部よりも、前記延出開口部の反対側に配置されたことを特徴とする。
【0011】
上記規制部は、前記車体側保持部と前記スライドドア側保持部との間における前記外装部材の前記長手方向の位置を少なくとも規制できればどのような構造であってもよく、また規制だけでなく、固定であってもよい。
【0012】
この発明により、架け渡された前記電気ケーブルが前記外装部材からはみ出ることを防止することができる。
詳述すると、前記車体と前記スライドドアの間に架け渡され、端部側のそれぞれが一対の前記保持部で保持される帯状の前記電気ケーブルは、幅方向が上下方向に向くように配置される。そして、その少なくとも一部は、下方に向かって開口するとともに、前記長手方向に沿う前記スリットが設けられた前記外装部材に収容される。
【0013】
そのため、前記スライドドアの動作によって、一対の前記保持部を構成する前記車体側保持部と前記スライドドア側保持部との間における前記長手方向の位置が前記規制部によって少なくとも規制された前記外装部材の下方に向かって開口する前記スリットより、垂れ下がった帯状の前記電気ケーブルが前記外装部材からはみ出るおそれがある。
【0014】
しかしながら、前記外装部材を規制する前記規制部よりも、前記外装部材が他方の前記保持部に向かって前記保持部から延出する前記延出開口部の反対側に配置された前記支持部によって前記長手方向と直交する前記上下方向に前記電気ケーブルの下端が支持される。そのため、前記外装部材にその一部が収容された前記電気ケーブルであっても、前記支持部によって支持され、帯状の前記電気ケーブルの垂れ下がりを防止し、前記規制部によって規制された前記外装部材の前記スリットより、前記電気ケーブルがはみ出ることを防止できる。したがって、前記外装部材からはみ出た前記電気ケーブルが、前記車体などと接触して異音が発生したり、前記電気ケーブル自体が損傷してしまったりという不具合の発生を防止することができる。
【0015】
この発明の態様として、前記支持部は、前記外装部材の端部より前記反対側に配置されてもよい。
この発明により、前記外装部材の端部から延出される前記電気ケーブルを、簡易な構造の前記支持部で容易に支持することができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記支持部は、前記外装部材の端部より前記規制部の側に配置されるとともに、前記スリットから前記外装部材の内部に侵入可能な凸状に形成されてもよい。
この発明により、前記外装部材の内部に収容された前記電気ケーブルを、スリットから内部に侵入する凸状の前記支持部で支持することができる。そのため、前記電気ケーブルを前記支持部で支持する箇所の選択肢が増え、汎用性が向上する。
【0017】
さらに、凸状に形成された前記支持部が、前記電気ケーブルを下方から支持している。そのため、前記延出開口部において、前記延出開口部の底面と前記電気ケーブルの下端とが、前記上下方向に沿って互いに接触しない間隔を隔てることができる。したがって、前記スライドドアの動作によって前記電気ケーブルが屈曲する際に、前記延出開口部の底面と前記電気ケーブルとが摺動することによる異音の発生を防止することができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記支持部は、前記外装部材の端部より前記反対側に配置された第1支持部と、前記外装部材の端部より前記規制部の側に配置されるとともに、前記スリットから前記外装部材の内部に侵入可能な凸状に形成された第2支持部とが設けられてもよい。
【0019】
この発明により、前記外装部材の端部から延出される前記電気ケーブルを、簡易な構造の前記第1支持部で容易に支持することができるとともに、前記外装部材の内部に収容された前記電気ケーブルを、スリットから内部に侵入する凸状の前記第2支持部で支持することができる。そのため、長手方向に間隔を隔てて二カ所で前記電気ケーブルを支持でき、帯状の前記電気ケーブルの垂れ下がりや、前記規制部によって規制された前記外装部材のスリットより、前記電気ケーブルがはみ出ることをより確実に防止することができる。
【0020】
さらに、凸状に形成された前記第2支持部が、前記電気ケーブルを下方から支持しているため、前記延出開口部において、前記延出開口部の底面と前記電気ケーブルの下端とが、前記上下方向に沿って互いに接触しない間隔を隔てることができる。そのため、前記スライドドアの動作によって前記電気ケーブルが屈曲する際に、前記延出開口部の底面と前記電気ケーブルとが摺動することによる異音の発生を防止することができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記支持部より前記反対側に、前記電気ケーブルの上方移動を規制するケーブル規制部が設けられてもよい。
この発明により、架け渡された前記電気ケーブルが前記外装部材からはみ出ることをさらに確実に防止することができる。
【0022】
詳述すると、前記支持部により支持された前記電気ケーブルが垂れ下がろうとすると、前記支持部を支点として、前記反対側の前記電気ケーブルは上方に浮き上がるように移動する。これに対し、前記電気ケーブルの上方移動を規制するケーブル規制部が前記支持部により前記反対側に設けられている。そのため、前記電気ケーブルの上方移動を前記ケーブル規制部により規制でき、前記支持部により支持された前記電気ケーブルの垂れ下がりを前記支持部と協働して防止することができる。したがって、架け渡された電気ケーブルが外装部材からはみ出ることをさらに確実に防止することができる。
【0023】
またこの発明の態様として、帯状の前記電気ケーブルは、厚み方向に複数積層され、積層された複数の前記電気ケーブルは、前記支持部によって支持されてもよい。
この発明により、複数の電装部品に対する給電において簡易な構造で回路数を増大させることができる。また、積層された複数の前記電気ケーブルが前記支持部によって支持されている。そのため、積層された複数の前記電気ケーブルの全体、あるいはその一部の前記電気ケーブルの垂れ下がりを防止し、前記規制部によって規制された前記外装部材のスリットより、前記電気ケーブルがはみ出ることを防止できる。
【発明の効果】
【0024】
この発明により、架け渡された電気ケーブルが外装部材からはみ出ることを防止できるスライドドア給電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図5】ケーブルホルダーを斜め上方側から視た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明の一実施形態を、以下図面とともに説明する。
図1はスライドドア給電装置1の概略斜視図を示す。なお、
図1においては、電気ケーブル2が見えるように外装部材5の一部を切り欠いた状態としている。
図2は車体側保持部3を前方斜め上方側から視た概略斜視図を示し、
図3は車体側保持部3の概略分解斜視図を示し、
図4は電気ケーブル2の説明図を示し、
図5はケーブルホルダー30の斜視図を示している。
図6、
図7及び
図8はケーブルホルダー30の説明図を示し、
図9は車体側保持部3の概略平面図を示し、
図10は車体側保持部3の説明図を示す。
【0027】
図4乃至
図10について詳述する。
図4(a)は電気ケーブル2の概略平面図を示し、
図4(b)は
図4(a)におけるA-A矢視断面図を示す。なお、
図4においては、コネクタユニット6から延出する中継ケーブル71以降の構成を省略して示している。
図5はケーブルホルダー30を前方斜め上方側から視た概略斜視図を示す。
図6はケーブルホルダー30の概略平面図を示し、
図7は
図6におけるa部の概略拡大平面図を示す。
図8(a)は
図7におけるB-B矢視断面図を示し、
図8(b)は
図7におけるC-C矢視断面図を示し、
図8(c)は
図7におけるD-D矢視断面図を示す。
図9は、ケーブルホルダー30に電気ケーブル2を固定した状態の概略平面図を示し、
図10(a)は
図9におけるE-E矢視断面図を示し、
図10(b)は
図9におけるF-F矢視断面図を示し、
図10(c)は
図9におけるG-G矢視断面図を示す。
【0028】
本明細書においては、全ての図面で車体100の方向を示している。詳しくは、矢印Fが車体前側を示し、矢印Bが車体後側を示し、矢印Eが車体外側を示し、矢印Iが車体内側を示している。そして、矢印Uが上方側を示し、矢印Dが下方側を示している。加えて、前後方向をX、左右方向をY、上下方向をZとして説明する。
【0029】
図1に示すように、本願発明にかかるスライドドア給電装置1は、車体100からスライドドア200に組み込まれた電装部品に対して給電を行うものである。スライドドア給電装置1は、電気ケーブル2と、車体側保持部3と、スライドドア側保持部4とを有している。また、電気ケーブル2には、外装部材5が外装されている。
【0030】
電気ケーブル2は、
図4に示すように、車体100とスライドドア200の間に架け渡される。電気ケーブル2は、平行に並べた帯状の導電体をシート状の絶縁体で挟み込んだ、いわゆるフレキシブルフラットケーブルを複数枚重ね合わせたものである。なお、本実施形態では、全てのフレキシブルフラットケーブルが等しい幅(上下方向Zに沿った長さ)で形成されている。
【0031】
上述のような電気ケーブル2は、左右方向Yに沿って連結された、複数のコネクタ61で構成されたコネクタユニット6(
図2参照)に接続されている。また、電気ケーブル2を構成する複数のフレキシブルフラットケーブルの下方側Dの端面が、全て上下方向Zに沿って一致するように積層されている。
【0032】
車体側保持部3は、
図2に示すように、車体100に固定されて電気ケーブル2の一端側を保持する。車体側保持部3は、車体100のフロアパネル101に固定されるケーブルホルダー30を有している。本実施形態にかかるスライドドア給電装置1においては、電気ケーブル2がコネクタユニット6から延出した中継ケーブル71を介して、他の電装部品と接続するコネクタ(図示省略)に接続される。
【0033】
スライドドア側保持部4は、スライドドア200に固定されて電気ケーブル2の他端側を保持する。スライドドア側保持部4は、スライドドア200のインナーパネル201に固定されるスライドドア側ケーブルホルダー40を有している。スライドドア側ケーブルホルダー40には、電気ケーブル2とスライドドア200側の電装ケーブルとを接続するコネクタユニット(図示省略)が取り付けられている。本実施形態にかかるスライドドア給電装置1においては、電装ケーブル(図示省略)がコネクタユニット(図示省略)から延出したスライドドア側中継ケーブル72を介して、他の電装部品と接続するコネクタ(図示省略)に接続される。
【0034】
スライドドア側ケーブルホルダー40には、スライドドア側ケーブル挿通部41とスライドドア側コネクタユニット収容部42が車体100の前後方向Xに並べて設けられている(
図1参照)。また、スライドドア側ケーブルホルダー40には、スライドドア側ケーブル挿通部41に案内される電気ケーブル2等を挟み込むようにスライドドア側ケーブル曲げ形状規制部43,44が設けられている(
図1参照)。
【0035】
スライドドア側ケーブル挿通部41は、電気ケーブル2及び外装部材5が挿通されるケーブル挿通路(図示省略)が設けられた部位を指す。そして、スライドドア側コネクタユニット収容部42は、コネクタユニット(図示省略)が収容されるコネクタユニット収容空間(図示省略)が設けられた部位を指す。また、スライドドア側ケーブル曲げ形状規制部43は、スライドドア200が全閉状態となる際に、かかるスライドドア200によって車体前側Fに引かれた電気ケーブル2の曲げ形状を規制する部位を指す。そして、スライドドア側ケーブル曲げ形状規制部44は、スライドドア200が全開状態となる際に、かかるスライドドア200によって車体後側Bに引かれた電気ケーブル2の曲げ形状を規制する部位を指す。
【0036】
次に、外装部材5について詳しく説明する。
図2から
図4に示すように、外装部材5は、一体的に形成されたゴム板5a,5bが水平方向(前後方向X及び左右方向Yで規定される方向)に重なるように配置され、各ゴム板5a,5bには、長手方向に対して垂直に交差する凹凸部50が設けられている。なお、ゴム板5a,5bで構成される外装部材5は、例えば、天然ゴムや、EPMやEPDMといった合成ゴム、さらにはウレタンゴムやシリコンゴムなどの樹脂系エラストマーといった、熱硬化性エラストマーで構成されている。より詳しくは、各ゴム板5a,5bには、長手方向に対して垂直に交差する山形部分51と谷形部分52とが交互に設けられている。なお、外装部材5の下端縁においては、ゴム板5a,5bが前後方向Xに所定の間隔を隔てるように形成されている。換言すると、外装部材5には、下端縁において、外装部材5の長手方向に沿ったスリット5cが形成されている。(
図4(b)参照)
【0037】
山形部分51は、外装部材5における外側に向かって突出した部位を指す。山形部分51は、外装部材5の長手方向に対して垂直に延びており、高さ寸法が一定の凸条形状とされている。また、谷形部分52は、隣り合う二つの山形部分51の間の部位を指す。そのため、谷形部分52も、外装部材5の長手方向に対して垂直に延びており、深さ寸法(図示省略)が一定の凹溝形状とされている。さらに、外装部材5の末端部分には、台形部分53が形成されている。台形部分53も、長手方向に対して垂直に延びており、高さ寸法が一定の凸条形状とされている。但し、台形部分53は、山形部分51よりも長手方向の幅寸法(図示省略)が大きく形成されている。なお、外装部材5における車体側保持部3に配置される左右方向Yの端部を、端部54とする。
【0038】
次に、車体側保持部3のケーブルホルダー30について詳しく説明する。
図5から
図7に示すように、ケーブルホルダー30には、ケーブル挿通部31とコネクタユニット収容部32が車体100の左右方向Yに並べて設けられている。また、ケーブルホルダー30には、ケーブル挿通部31に案内される電気ケーブル2等を挟み込むようにケーブル曲げ形状規制部33,34が設けられている。
【0039】
ケーブル挿通部31は、電気ケーブル2及び外装部材5が挿通される部位を指す。換言すると、ケーブル挿通部31は、電気ケーブル2及び外装部材5が挿通されるケーブル挿通路31Pが設けられた部位を指す。ケーブル挿通路31Pは、上方側Uに向かって開放されており、組立作業においては、この開放端から電気ケーブル2及び外装部材5が嵌め込まれる(
図3参照)。
【0040】
図5から
図7に示すように、ケーブル挿通部31は、ケーブルホルダー30における前後方向Xの中央部分に設けられている。ケーブル挿通部31は、一対の側板部311と、各側板部311の下方側Dの端部同士をつなぐ第一底板部312とを有している。それぞれの側板部311には、対向する側板部311に向かって突出する嵌合部35が設けられている。また、第一底板部312には、上方側Uに突出するケーブル支持部36が設けられている。
【0041】
加えて、ケーブル挿通部31には、一対の側板部311のそれぞれに沿うようにして車体100の上下方向Zに沿って結束バンド91(
図2及び
図9参照)を挿通する挿通孔31hが計四つ形成されている。そのため、電気ケーブル2及び外装部材5は、ケーブル挿通路31Pに挿通された状態で、結束バンド91によって巻き留められる。こうして、ケーブルホルダー30は、電気ケーブル2及び外装部材5がガタついたり位置がズレたり、あるいはケーブル挿通路31Pから引き出されたりすることを防止している。
【0042】
さらに加えて、ケーブル挿通部31には、ケーブル挿通路31Pよりも車体前側Fの第一上板部313ならびに前板部314を介して第一フロアパネル取付部315が設けられている。第一フロアパネル取付部315には、車体100の上下方向Zに固定用ボルト81(
図9参照)を挿通する挿通孔31iが形成されている。また、ケーブル挿通部31には、ケーブル挿通路31Pよりも車体後側Bの第二上板部316ならびに後板部317を介して第二フロアパネル取付部318が設けられている。第二フロアパネル取付部318にも、車体100の上下方向Zに固定用ボルト82(
図9参照)を挿通する挿通孔31jが形成されている。第二フロアパネル取付部318の先端部分には、別途のコネクタ(図示省略)を係止するための係止構造319が設けられている。
【0043】
コネクタユニット収容部32は、コネクタユニット6が収容される部位を指す。換言すると、コネクタユニット収容部32は、コネクタユニット6が収容されるコネクタユニット収容空間32Sが設けられた部位を指す。コネクタユニット収容空間32Sは、上方側Uに向かって開放されており、組立作業においては、この開放端からコネクタユニット6が入れられ、固定される(
図3参照)。
【0044】
なお、コネクタユニット6は、複数のフレキシブルフラットケーブルの端部が接続されたコネクタ61を左右方向Yに積層することで一体に構成している。そして、コネクタユニット6は、コネクタユニット収容部32に収容される。このように構成されたコネクタユニット6では、それぞれのフレキシブルフラットケーブルの端部に接続されたコネクタ61を左右方向Yに沿って積層している。そのため、コネクタユニット6から延出する複数のフレキシブルフラットケーブルの下方側Dの端面が、上下方向Zにおいて一致することとなる。
【0045】
図5から
図7に示すように、コネクタユニット収容部32は、ケーブルホルダー30における左右方向Yの車体内側Iに設けられている。コネクタユニット収容部32は、一対の収容側板部321と、各収容側板部321の下方側Dの端部同士をつなぐ第二底板部322とを有している。また、コネクタユニット収容部32は、前述の側板部311に対して垂直に交わり、収容側板部321及び第二底板部322につながる左壁部323と、この左壁部323に対向するとともに車体後側Bの収容側板部321及び第二底板部322につながる右壁部324とを有している。
【0046】
加えて、コネクタユニット収容部32には、第二底板部322を車体内側Iの端部から左右方向Yの中途部まで切り欠いたノッチ部32nが設けられている。また、コネクタユニット収容部32には、左壁部323に沿うようにして、車体100の上下方向Zに結束バンド92(
図2及び
図9参照)を挿通する挿通孔32hが形成されている。そのため、コネクタユニット6は、コネクタユニット収容空間32Sに収められた状態で、結束バンド92によって巻き留められる。なお、結束バンド92は、ケーブルホルダー30に対してコネクタユニット6を含んだ電気ケーブル2がガタついたり位置がズレたり、あるいはケーブル挿通路31Pから引き出されたりすることを規制するケーブル規制部37として機能している。
【0047】
さらに加えて、コネクタユニット収容部32には、第二底板部322における車体前側Fの一部に車体内側Iに向かって延設された中継ケーブル支持部325が設けられている。中継ケーブル支持部325には、その先端部分(右端部分)に上方側Uへ変位する段差が形成されており、車体100の上下方向Zに結束バンド93(
図2及び
図9参照)を挿通する挿通孔32iが形成されている。そのため、中継ケーブル71は、中継ケーブル支持部325に支持された状態で、結束バンド93によって巻き留められる。こうして、ケーブルホルダー30は、中継ケーブル71がガタついたり位置がズレたり、あるいは中継ケーブル支持部325から外れ落ちたりすることを防止している。
【0048】
ケーブル曲げ形状規制部33,34は、スライドドア200の移動によって変形する電気ケーブル2の曲げ形状を規制する部位を指す。詳しく説明すると、ケーブル曲げ形状規制部33は、スライドドア200が全閉状態となる際に、かかるスライドドア200によって車体前側Fに引かれた電気ケーブル2の曲げ形状を規制する部位を指す。ケーブル曲げ形状規制部34は、スライドドア200が全開状態となる際に、かかるスライドドア200によって車体後側Bに引かれた電気ケーブル2の曲げ形状を規制する部位を指す。なお、ケーブル曲げ形状規制部33,34によって形成された、車体外側Eに向かうにつれて徐々に拡がる平面視漏斗形状の空間を、延出開口部39とする(
図6及び
図7参照)。
【0049】
図5から
図7に示すように、ケーブル曲げ形状規制部33は、ケーブルホルダー30における左右方向Yの車体外側Eに設けられている。より詳しくは、ケーブル曲げ形状規制部33は、ケーブル挿通部31に設けられたケーブル挿通路31Pよりも車体前側Fかつ車体外側Eの端部に設けられている。ケーブル曲げ形状規制部33は、上下方向Zに沿う中心軸に対して一定半径となる円弧状に形成されており、側板部311から車体前側Fに向かって湾曲する第一円弧面33sに沿って電気ケーブル2が巻き掛かることとなる。こうして、ケーブルホルダー30は、スライドドア200を全閉状態とした際に、電気ケーブル2が局所的に曲げられることを防止し、ひいては電気ケーブル2に大きな負荷が作用することを防止している。
【0050】
他方、
図5から
図7に示すように、ケーブル曲げ形状規制部34も、ケーブルホルダー30における左右方向Yの車体外側Eに設けられている。より詳しくは、ケーブル曲げ形状規制部34は、ケーブル挿通部31に設けられたケーブル挿通路31Pよりも車体後側Bかつ車体外側Eの端部に設けられている。ケーブル曲げ形状規制部34は、上下方向Zに沿う中心軸に対して一定半径となる円弧状に形成されており、側板部311から車体後側Bに向かって湾曲する第二円弧面34sに沿って電気ケーブル2が巻き掛かることとなる。こうして、ケーブルホルダー30は、スライドドア200を全開状態とした際に、電気ケーブル2が局所的に曲げられることを防止し、ひいては電気ケーブル2に大きな負荷が作用することを防止している。
【0051】
次に、ケーブル挿通路31Pにおける嵌合部35について説明する。
図6及び
図7に示すように、ケーブル挿通路31Pを構成するそれぞれの側板部311には、対向する側板部311に向かって突出する嵌合部35が設けられている。
【0052】
嵌合部35は、それぞれの側板部311から対向する側板部311に向かって突出する一対の突起である。そして、一対の嵌合部35は左右方向Yに所定の間隔を隔てて計二つが設けられている。
【0053】
嵌合部35の厚さ寸法は、外装部材5の谷形部分52における幅寸法よりも小さく、嵌合部35の高さ寸法は、谷形部分52における深さ寸法よりも小さく形成されている。そのため、ケーブル挿通路31Pに電気ケーブル2及び外装部材5を嵌め込んでいくと、嵌合部35と外装部材5の谷形部分52とが嵌合することとなる。
【0054】
このように、谷形部分52が嵌合する嵌合部35と、谷形部分52が嵌合部35を嵌合する外装部材5を巻き留める結束バンド91とは、協働してケーブルホルダー30に対して外装部材5の前後方向X及び上下方向Zへの移動を規制する。なお、嵌合部35は、ケーブルホルダー30に対する外装部材5の前後方向Xに沿った位置を少なくとも規制する規制部38として機能することができる。
【0055】
次に、ケーブル挿通路31Pにおけるケーブル支持部36について詳しく説明する。
図6から
図8に示すように、ケーブル挿通路31Pを構成する第一底板部312には、上方側Uに突出するケーブル支持部36が設けられている。
【0056】
ケーブル支持部36は、第一底板部312において左右方向Yに所定の間隔を隔てて計二つが設けられている。そして、二つのケーブル支持部36のうち、ケーブル挿通路31Pの車体内側Iに設けられた方を第一ケーブル支持部361とし、ケーブル挿通路31Pの車体外側Eに設けられた方を第二ケーブル支持部362としている。
【0057】
第一ケーブル支持部361は、
図5、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、第一底板部312から左右方向Yに所定の長さを有するとともに、上方側Uに向かって所定の高さで突出する直方体である。なお、第二ケーブル支持部362の前後方向Xの長さは、電気ケーブル2の前後方向Xの長さよりも長くなるように形成されている。
【0058】
第二ケーブル支持部362は、
図6、
図7及び
図8(c)に示すように、第一底板部312から上方側Uに突出する下部体362aと、下部体362aから上方側Uに突出する上部体362bとで一体に構成されている。
【0059】
下部体362aは、第一底板部312における前後方向Xの中央部分から上方側Uに所定の高さで突出し、左右方向Yに所定の長さを有するとともに、前後方向Xに所定の長さを有する直方体である。
【0060】
上部体362bは、下部体362aの上方側Uの端部における、前後方向Xの中央部分から上方側Uに、第一ケーブル支持部361の上方側Uの端部と略等しい高さまで突出する直方体である。
【0061】
なお、上部体362bの前後方向Xの長さは、下部体362aの前後方向Xの長さよりも短く、具体的には外装部材5におけるスリット5cと略等しくなるように形成されている。したがって、下部体362aと上部体362bとで一体に構成された第二ケーブル支持部362は、断面形状が凸型となっている。
【0062】
このように構成された二つのケーブル支持部36を有する車体側保持部3のケーブル挿通路31Pに対し、外装部材5及び電気ケーブル2を配索すると、左右方向Yに所定の間隔を隔てて設けられた第一ケーブル支持部361と第二ケーブル支持部362との間に外装部材5の端部54が配置される。そして、ケーブル挿通路31Pに配索された電気ケーブル2の下方側Dの端部と、第一ケーブル支持部361及び第二ケーブル支持部362の上方側Uの端部とが当接する。これにより電気ケーブル2を下方側Dから支持することができる。
【0063】
詳しく説明すると、二つのケーブル支持部36のうち、より車体内側Iに設けられた第一ケーブル支持部361は、電気ケーブル2の端部において、コネクタユニット6に接続するために外装部材5から露出した部分を支持することとなる。さらに、第一ケーブル支持部361の前後方向Xに沿った長さが、電気ケーブル2の前後方向Xに沿った長さよりも長くなるように形成されているため、より確実な支持とすることができる。
【0064】
加えて、第一ケーブル支持部361に加えて第二ケーブル支持部362が設けられているため、左右方向Yに間隔を隔てて二カ所で電気ケーブル2を支持できる。そのため、帯状の電気ケーブル2の垂れ下がりや、規制部38によって規制された外装部材5のスリット5cより、電気ケーブル2がはみ出ることをより確実に防止することができる。
【0065】
また、第二ケーブル支持部362における上部体362bの前後方向Xに沿った長さが、外装部材5のスリット5cと略等しく形成されているため、上部体362bをスリット5cから内部に挿入することができる(
図10(c)参照)。これにより、外装部材5に収容された電気ケーブル2であっても、第一ケーブル支持部361と同様に、電気ケーブル2を下方側Dから直接支持することができる。
【0066】
さらに、上述のケーブル支持部36が、車体側保持部3において、スライドドア側保持部4に向けて電気ケーブル2が延出する延出開口部39の車体内側Iかつ外装部材5を位置規制する嵌合部35及び結束バンド91よりも車体内側Iに設けられている。換言すると、ケーブル支持部36が、車体側保持部3において電気ケーブル2の前後方向Xに沿った移動を規制している箇所に設けられている。そのため、ケーブル支持部36に対して電気ケーブル2が相対移動することを防止でき、より確実な支持とすることができる。
【0067】
さらに加えて、ケーブル支持部36で支持された電気ケーブル2が垂れ下がろうとすると、ケーブル支持部36を支点として、ケーブル支持部36より車体内側Iの電気ケーブル2は上方側Uに浮き上がるように移動する。これに対し、電気ケーブル2が接続されるコネクタユニット6が結束バンド92によって巻き留められているため、結束バンド92を、コネクタユニット6を含めた電気ケーブル2の上方側Uへの移動を規制できるケーブル規制部37として機能させることができる。したがって、ケーブル支持部36により支持された電気ケーブル2の垂れ下がりをケーブル支持部36と協働して防止することができる。
【0068】
以上のように、本実施形態にかかるスライドドア給電装置1は、車体100からスライドドア200に組み込まれた電装部品に対して給電を行うものである。スライドドア給電装置1は、車体100とスライドドア200の間に架け渡される帯状の電気ケーブル2と、電気ケーブル2の一部を収容する外装部材5と、電気ケーブル2の端部側をそれぞれ保持する一対の保持部(3,4)とが備えられている。一対の保持部(3,4)は、車体100に固定されて電気ケーブル2の一端側を保持する車体側保持部3と、スライドドア200に固定されて電気ケーブル2の他端側を保持するスライドドア側保持部4とが備えられている。帯状の電気ケーブル2は、幅方向が上下方向Zに向くように配置され、帯状の電気ケーブル2の一部を収容する外装部材5に、下方に向かって開口するとともに、長手方向に沿うスリット5cが設けられている。そして、一対の保持部(3,4)の一方に、車体側保持部3とスライドドア側保持部4との間における外装部材5の左右方向Yの位置を規制する規制部38が設けられている。そして、規制部38で規制された外装部材5がスライドドア側保持部4に向かって車体側保持部3から延出する延出開口部39と、左右方向Yと直交する上下方向Zに電気ケーブル2の下方側Dの端部を支持するケーブル支持部36とが備えられている。そして、ケーブル支持部36は、車体側保持部3において、規制部38よりも、延出開口部39の反対側である車体内側Iに配置されている。
【0069】
このようなスライドドア給電装置1によれば、架け渡された電気ケーブル2が外装部材5からはみ出ることを防止できる。
詳述すると、本願発明にかかるスライドドア給電装置1は、車体100とスライドドア200の間に架け渡され、端部側のそれぞれが一対の保持部(車体側保持部3,スライドドア側保持部4)で保持される帯状の電気ケーブル2を有している。そして、電気ケーブル2は、幅方向が上下方向Zに向くように配置されるとともに、その一部は、下方側Dに向かって開口するとともに、左右方向Yに沿うスリット5cが設けられた外装部材5に収容される。
【0070】
そのため、スライドドア200のスライド動作によって、一対の保持部(車体側保持部3,スライドドア側保持部4)を構成する車体側保持部3とスライドドア側保持部4との間における長手方向の位置が規制部38によって規制された外装部材5の下方に向かって開口するスリット5cより、垂れ下がった帯状の電気ケーブル2が外装部材5からはみ出るおそれがある。
【0071】
しかしながら、外装部材5を規制する規制部38よりも、外装部材5がスライドドア側保持部4に向かって車体側保持部3から延出する延出開口部39の反対側である車体内側Iに配置されたケーブル支持部36によって、左右方向Yと直交する上下方向Zに電気ケーブル2の下方側Dの端部が支持される。そのため、外装部材5にその一部が収容された電気ケーブル2であっても、ケーブル支持部36によって支持され、帯状の電気ケーブル2の垂れ下がりを防止し、規制部38によって規制された外装部材5のスリット5cより、電気ケーブル2がはみ出ることを防止できる。したがって、外装部材5からはみ出た電気ケーブル2が、車体100などと接触して異音が発生したり、電気ケーブル2自体が損傷してしまったりという不具合の発生を防止することができる。
【0072】
また、ケーブル支持部36は、外装部材5の端部より反対側である車体内側Iに配置された第一ケーブル支持部361と、外装部材5の端部54より規制部38が配置された車体外側Eの側に配置されるとともに、スリット5cから外装部材5の内部に侵入可能な凸状に形成された第二ケーブル支持部362とが設けられている。
【0073】
このようなスライドドア給電装置1によれば、外装部材5の端部54から延出される電気ケーブル2を、簡易な構造の第一ケーブル支持部361で容易に支持することができる。さらに、外装部材5の内部に収容された電気ケーブル2を、スリット5cから内部に侵入する凸状の第二ケーブル支持部362で支持することができる。そのため、左右方向Yに間隔を隔てて二カ所で電気ケーブル2を支持でき、帯状の電気ケーブル2の垂れ下がりや、規制部38によって規制された外装部材5のスリット5cより、電気ケーブル2がはみ出ることをより確実に防止することができる。
【0074】
さらに、凸状に形成された第二ケーブル支持部362が、電気ケーブル2を下方側Dから支持している。そのため、延出開口部39において、底面と電気ケーブル2の下方側Dの端部とが、上下方向Zに沿って互いに接触しない間隔を隔てることができる。したがって、スライドドア200の動作によって電気ケーブル2が屈曲する際に、延出開口部39における底面と電気ケーブル2の下方側Dの端部とが摺動することによる異音の発生を防止することができる。
【0075】
また、ケーブル支持部36より反対側である車体内側Iに、電気ケーブル2の上方移動を規制するケーブル規制部37が設けられているため、架け渡された電気ケーブル2が外装部材5のスリット5cからはみ出ることをさらに確実に防止することができる。
【0076】
詳述すると、ケーブル支持部36により支持された電気ケーブル2が垂れ下がろうとすると、ケーブル支持部36を支点として、反対側の電気ケーブル2は上方側Uに浮き上がるように移動する。これに対し、電気ケーブル2の上方移動を規制するケーブル規制部37がケーブル支持部36より反対側である車体内側Iに設けられている。そのため、電気ケーブル2の上方側Uへの移動をケーブル規制部37により規制でき、ケーブル支持部36により支持された電気ケーブル2の垂れ下がりをケーブル支持部36と協働して防止することができる。したがって、架け渡された電気ケーブル2が外装部材5のスリット5cからはみ出ることをさらに確実に防止することができる。
【0077】
また、帯状の電気ケーブル2は、厚み方向に複数積層され、積層された複数の電気ケーブル2は、ケーブル支持部36によって支持されているため、複数の電装部品に対する給電において簡易な構造で回路数を増大させることができる。また、積層された複数の電気ケーブル2がケーブル支持部36によって支持されている。そのため、積層された複数の電気ケーブル2の全体、あるいはその一部の電気ケーブル2の垂れ下がりを防止し、規制部38によって規制された外装部材5のスリット5cより、電気ケーブル2がはみ出ることを防止できる。
【0078】
本願発明の構成と前述の実施形態との対応において、
車体は車体100に対応し、以下同様に、
スライドドアはスライドドア200に対応し、
スライドドア給電装置はスライドドア給電装置1に対応し、
電気ケーブルは電気ケーブル2に対応し、
外装部材は外装部材5に対応し、
保持部は車体側保持部3,スライドドア側保持部4に対応し、
車体側保持部は車体側保持部3に対応し、
スライドドア側保持部はスライドドア側保持部4に対応し、
スリットはスリット5cに対応し、
上下方向は上下方向Zに対応し、
長手方向は左右方向Yに対応し、
規制部は規制部38に対応し、
延出開口部は延出開口部39に対応し、
支持部はケーブル支持部36に対応し、
第1支持部は第一ケーブル支持部361に対応し、
第2支持部は第二ケーブル支持部362に対応し、
ケーブル規制部は、結束バンド92に対応するも、この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0079】
例えば、前述の実施形態にかかるスライドドア給電装置1においては、規制部38、延出開口部39、及びケーブル支持部36が車体側保持部3に設けられている。しかしながら、上述のような構成が、スライドドア側保持部4にも設けられていてもよいし、上述のような構成が、車体側保持部3の代わりにスライドドア側保持部4に設けられていてもよい。
上述のような構成が、車体側保持部3の代わりにスライドドア側保持部4に設けられた場合でも、前述の実施形態にかかるスライドドア給電装置1と同様の効果を奏することができる。
【0080】
また、車体側保持部3及びスライドドア側保持部4の両方に設けられている場合には、電気ケーブル2の移動規制及び支持を、車体側保持部3及びスライドドア側保持部4の双方で行うことができる。そのため、架け渡された電気ケーブル2が外装部材5のスリット5cからはみ出ることをより確実に防止することができる。
なお、上述のような構成をスライドドア側保持部4に設ける場合において、
車体側保持部3の延出開口部39は、スライドドア側保持部4のスライドドア側ケーブル曲げ形状規制部43,44との間に対応する。
【0081】
また、前述の実施形態にかかるスライドドア給電装置1においては、ケーブル支持部36は、第一ケーブル支持部361と第二ケーブル支持部362との二つが備えられている。しかしながら、スライドドア給電装置1において、外装部材5の端部54より反対側である車体内側Iに配置された第一ケーブル支持部361のみを設けてもよい。その場合であっても、より簡易な構造の第一ケーブル支持部361で電気ケーブル2を容易に支持することができる。
【0082】
また、スライドドア給電装置1において、外装部材5の端部54より規制部38の側に配置されるとともに、スリット5cから外装部材5の内部に侵入可能な凸状に形成された第二ケーブル支持部362のみを設けてもよい。その場合であっても、外装部材5の内部に収容された電気ケーブル2を、スリット5cから内部に侵入する凸状の第二ケーブル支持部362で支持することができる。そのため、電気ケーブル2を第二ケーブル支持部362で支持する箇所の選択肢が増え、汎用性が向上する。
【0083】
さらに、凸状に形成された第二ケーブル支持部362が、電気ケーブル2を下方側Dから支持している。そのため、延出開口部39において、底面と電気ケーブル2の下方側Dの端部とが、上下方向Zに沿って互いに接触しない間隔を隔てることができる。したがって、スライドドア200の動作によって電気ケーブル2が屈曲する際に、延出開口部39における底面と電気ケーブル2の下方側Dの端部とが摺動することによる異音の発生を防止することができる。
【0084】
さらに、前述の実施形態にかかるスライドドア給電装置1においては、第一ケーブル支持部361はケーブル挿通路31Pの第一底板部312の一部を上下方向Zに突出させることで形成されている。しかしながら、第二ケーブル支持部362よりも車体内側Iの第一底板部312及び第二底板部322の全体が、第二ケーブル支持部362の上端と等しい高さまで隆起していてもよい。
【0085】
さらに、前述の実施形態にかかるスライドドア給電装置1においては、ケーブル支持部36を構成する第一ケーブル支持部361と、第二ケーブル支持部362の上部体362bとは、断面略四角形状に形成されている。しかしながら、電気ケーブル2を下方側Dから支持できれば特に形状に限定はない。
【0086】
例えば、
図11(a)に示すように、第一ケーブル支持部361及び第二ケーブル支持部362の上部体362bの代わりに、上方側Uに突出する垂直部材363aと、垂直部材363aの上方側Uの端部から、前後方向Xの一方側に延出する水平部材363bとで構成された断面逆L字形状のケーブル支持体363としてもよい。ケーブル支持体363に対して電気ケーブル2を収容した外装部材5を載置すると、ケーブル支持体363は外装部材5のスリット5cから外装部材5の内部に侵入する。そして、外装部材5の内部において、谷形部分52の下方側Dの端部と、水平部材363bの前後方向Xの一方側の端部とが係止される。したがって、外装部材5によってケーブル支持体365を保持することができるため、外装部材5のスリット5cからケーブル支持体363が意図せず脱落することを防止できる。
【0087】
また、第一ケーブル支持部361及び第二ケーブル支持部362の上部体362bの代わりに、上方側Uに突出する垂直部材364aと、垂直部材364aの上方側Uの端部から前後方向Xの両側に延出する水平部材364bと、水平部材364bの前後方向Xの両端部から上方側Uに立設する一対の立設部364cとで構成された断面略T字形状のケーブル支持体364としてもよい(
図11(b)参照)。
【0088】
さらには、第一ケーブル支持部361及び第二ケーブル支持部362の上部体362bの代わりに、上方側Uに突出する垂直部材365aと、垂直部材365aの上方側Uの端部から前後方向Xの両側に延出し、垂直部材365aから離間するにつれて上方側Uへと湾曲した湾曲部材365bとで構成された断面略Y字形状のケーブル支持体365としてもよい(
図11(c)参照)。
【0089】
これらのケーブル支持体364、365とした場合でも、上述のケーブル支持体363と同様に、外装部材5の谷形部分52の下方側Dの端部と、水平部材364b及び湾曲部材365bの前後方向Xの端部とが係止される。しかしながら、水平部材364b及び湾曲部材365bが前後方向Xの両側へと延出しているため、外装部材5の谷形部分52の下方側Dの端部と水平部材364b及び湾曲部材365bの前後方向Xの端部とを二箇所で係止させることができる。したがって、外装部材5のスリット5cからケーブル支持体364,365が意図せず脱落することをより確実に防止できる。さらに、一対の立設部364c及び湾曲部材365bによって電気ケーブル2の前後方向Xへの移動を規制できるため、上下方向Zの支持に加えて、より確実に電気ケーブル2を支持することができる。
【0090】
さらに、前述の実施形態にかかるスライドドア給電装置1においては、ケーブル規制部37は、コネクタユニット6を巻き留める結束バンド92で構成されている。しかしながら、ケーブル支持部36よりも車体内側Iにおいて電気ケーブル2の上方側Uへの移動を規制できればこの構成に限定されない。例えば、コネクタユニット収容部32の一対の収容側板部321のうち、車体後側Bに配置された収容側板部321からケーブル挿通路31Pに向けて突出する突出部としてもよいし、コネクタユニット収容空間32Sを覆う蓋としてもよい。
【0091】
さらに、前述の実施形態にかかるスライドドア給電装置1においては、電気ケーブル2が複数枚のフレキシブルフラットケーブルを重ね合わせたものであるとされているが、電気ケーブル2はフレキシブルフラットケーブルに限定されず、例えば被覆電線を幅方向に複数並列配置し一体化した帯状電線であってもよい。
【0092】
さらにまた、前述の実施形態にかかるスライドドア給電装置1においては、電気ケーブル2が全て等しい幅を有するフレキシブルフラットケーブルを積層することで構成されているが、異なる幅を有するフレキシブルフラットケーブルを積層して構成してもよい。この場合であっても、異なる幅のフレキシブルフラットケーブルの下方側Dの端部を上下方向Zに一致させて電気ケーブル2を構成するとより好ましい。また、複数のフレキシブルフラットケーブルにおいて、フレキシブルフラットケーブル同士の間にグリスを塗布することで一体化してもよい。
【符号の説明】
【0093】
1…スライドドア給電装置
2…電気ケーブル
3…車体側保持部
4…スライドドア側保持部
5…外装部材
5c…スリット
35…嵌合部
36…ケーブル支持部
39…延出開口部
91…結束バンド
100…車体
200…スライドドア
361…第一ケーブル支持部
362…第二ケーブル支持部