(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018500
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】光ファイバセンシングシステム、測定装置、および事象検出方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/80 20130101AFI20250130BHJP
H04J 14/00 20060101ALI20250130BHJP
G01V 1/00 20240101ALI20250130BHJP
G01V 8/16 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
H04B10/80
H04J14/00
G01V1/00 A
G01V8/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122237
(22)【出願日】2023-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】忠隈 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】高坂 繁弘
(72)【発明者】
【氏名】望月 洋人
【テーマコード(参考)】
2G105
5K102
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB01
2G105CC02
2G105DD03
2G105EE01
2G105GG01
2G105HH01
2G105HH04
2G105JJ03
2G105JJ05
2G105KK06
5K102AA11
5K102AA15
5K102AB00
5K102AD00
5K102AH01
5K102AH02
5K102AH23
5K102AK00
5K102LA21
5K102MH03
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5K102MH15
5K102MH22
5K102PA00
5K102PB01
5K102PH03
5K102PH31
5K102PH49
5K102PH50
5K102RD26
(57)【要約】
【課題】より簡易な構成でより高感度な光ファイバセンシングシステム、測定装置、および事象検出方法を提供すること。
【解決手段】光ファイバセンシングシステムは、クラッド領域内に複数のコア領域を有し、所定波長における光のコア間クロストークが-40dB/km以上であるマルチコアファイバと、前記マルチコアファイバの第1端側から、前記複数のコア領域のうちの第1コア領域に、前記所定波長を有するパルス状の励起光を入力する励起光発生部と、前記複数のコア領域のうちの前記第1コア領域以外のコア領域である第2コア領域から、前記第1端側にて出力された、前記励起光により発生する後方散乱光を受光する受光部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッド領域内に複数のコア領域を有し、所定波長における光のコア間クロストークが-40dB/km以上であるマルチコアファイバと、
前記マルチコアファイバの第1端側から、前記複数のコア領域のうちの第1コア領域に、前記所定波長を有するパルス状の励起光を入力する励起光発生部と、
前記複数のコア領域のうちの前記第1コア領域以外のコア領域である第2コア領域から、前記第1端側にて出力された、前記励起光により発生する後方散乱光を受光する受光部と、
を備える光ファイバセンシングシステム。
【請求項2】
前記励起光のスペクトル線幅が1MHz以下である
請求項1に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項3】
前記複数のコア領域のコアピッチが15μm以上25μm以下である
請求項1に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項4】
前記受光部が受光した後方散乱光の特徴量に基づいて、前記マルチコアファイバに発生した変形を検出し、または前記変形の発生位置もしくは時間変化を判定する判定部をさらに備える
請求項1に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項5】
前記判定部は、前記受光した後方散乱光の特徴量のうちの光強度に基づいて、前記変形を検出し、または前記変形の発生位置もしくは時間変化を判定する
請求項4に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項6】
前記判定部は、前記光強度の時間変化に対する微分値に基づいて、前記変形の発生位置または時間変化を判定する
請求項5に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項7】
前記マルチコアファイバの前記第1端側とは反対側の第2端側から前記第2コア領域に前記後方散乱光と波長が同じプローブ光を入力するプローブ光源をさらに備える
請求項1に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項8】
前記マルチコアファイバは、複数の前記第2コア領域を有し、
前記複数の第2コア領域のそれぞれからの前記後方散乱光をそれぞれ受光する複数の前記受光部を備える
請求項1に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項9】
前記マルチコアファイバは、前記コア間クロストークが-30dB/km以上である
請求項1に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項10】
測定対象物の近傍に設けられたマルチコアファイバであってクラッド領域内に複数のコア領域を有し、所定波長における光のコア間クロストークが-40dB/km以上であるマルチコアファイバの第1端側から、前記複数のコア領域のうちの第1コア領域に前記所定波長を有するパルス状の励起光を入力した場合に、前記複数のコア領域のうちの前記第1コア領域以外のコア領域である第2コア領域から前記第1端側にて出力された、前記励起光により発生する後方散乱光を受光する受光部と、
前記受光部が受光した後方散乱光の特徴量に基づいて、前記測定対象物に発生した、前記マルチコアファイバの変形を引き起こす事象を検出し、または前記事象の発生位置もしくは時間変化を判定する判定部と、
を備える測定装置。
【請求項11】
さらに、前記事象の種類を判別する判別部を備える
請求項10に記載の測定装置。
【請求項12】
前記マルチコアファイバは、前記コア間クロストークが-30dB/km以上である
請求項10に記載の測定装置。
【請求項13】
測定対象物の近傍に設けられたマルチコアファイバであってクラッド領域内に複数のコア領域を有し、所定波長における光のコア間クロストークが-40dB/km以上であるマルチコアファイバの第1端側から、前記複数のコア領域のうちの第1コア領域に前記所定波長を有するパルス状の励起光を入力し、
前記複数のコア領域のうちの前記第1コア領域以外のコア領域である第2コア領域から前記第1端側にて出力された、前記励起光により発生する後方散乱光を受光し、
前記受光した後方散乱光の特徴量に基づいて、前記測定対象物に発生した、前記マルチコアファイバの変形を引き起こす事象を検出し、または前記事象の発生位置もしくは時間時間変化を判定する
事象検出方法。
【請求項14】
さらに、前記事象の種類を判別する
請求項13に記載の事象検出方法。
【請求項15】
前記マルチコアファイバは、前記コア間クロストークが-30dB/km以上である
請求項13に記載の事象検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバセンシングシステム、測定装置、および事象検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを用いた音響・振動測定方法として、光ファイバ中を伝搬する光により光ファイバ中で発生するブリユアン後方散乱光やレイリー後方散乱光を観測することにより、光ファイバ長手方向での振動の変化を観測する手法が開発されている(非特許文献1~4)。
【0003】
また、光ファイバによる歪や振動の測定手法として、FBG(ファイバブラッググレーティング)を用いた方法も提案されている(非特許文献5)。
【0004】
また、光ファイバ通信網の通信容量拡大のため、従来のシングルコア型光ファイバとは異なり、1本の光ファイバのクラッド領域内に複数のコア領域を有するマルチコアファイバが開発されている。(非特許文献6)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】H. Ohno, H. Naruse, M. Kihara, and A. Shimada, “Industrial Applications of the BOTDR Optical Fiber Strain Sensor”Optical Fiber Technology 7, 45-64 2001.
【非特許文献2】Y. Mizuno, W. Zou, Z. He,and K. Hotate, “Proposal of Brillouin optical correlation-domain reflectometry (BOCDR)” OPTICS EXPRESS Vol. 16, No. 16 12148-12153 2008.
【非特許文献3】K. Hotate, T. Hasegawa, ”Measurement of Brillouin Gain Spectrum Distribution along an Optical Fiber Using a Correlation-Based Technique-Proposal, Experiment and Simulation“, IEICE TRANS. ELECTRON., Vol.,E83-C, No.3 405-412 2000.
【非特許文献4】K. Nishiguchi “Phase unwrapping for fiber-optic distributed acoustic sensing” Proceedings of the 47th ISCIE International Symposium on Stochastic Systems Theory and Its Applications Honolulu, Dec. 5-8, 2015
【非特許文献5】斉藤崇紀、中村賢一、腰原勝、古川浩、“高性能FBGセンサモニタ”一般社団法人 電子情報通信学会 信学技報 OFT2011-42(2011-10)
【非特許文献6】小柴正則“マルチコア光ファイバーの種類とその設計指針” 光学 40巻6号(2011)264 8-12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光ファイバを用いた音響・振動測定方法に用いる装置には、複雑な装置構成が必要な場合がある。たとえば、ブリユアン散乱光を検出する方式の装置(ブリユアンOTDR(BOTDR)等)では、装置から送信する光パルスの波長から周波数にして約10GHzだけ波長が離れたブリユアン散乱光を検出する。そのために、受光部では帯域が10GHz以上の高速フォトダイオードやその信号を処理する高周波回路が必要になる。その結果、このような装置は、装置コストが高くなり、対費用効果が見込める大型システム(例えば、数十kmレベルの長距離光線路)への適用がほとんどであり、1km以下のような短距離、小規模なシステムへの導入事例は少ない。
【0007】
そこで、より簡易な構成でより高感度光ファイバセンシング技術が求められている。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、より簡易な構成でより高感度な光ファイバセンシングシステム、測定装置、および事象検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様は、クラッド領域内に複数のコア領域を有し、所定波長における光のコア間クロストークが-40dB/km以上であるマルチコアファイバと、前記マルチコアファイバの第1端側から、前記複数のコア領域のうちの第1コア領域に、前記所定波長を有するパルス状の励起光を入力する励起光発生部と、前記複数のコア領域のうちの前記第1コア領域以外のコア領域である第2コア領域から、前記第1端側にて出力された、前記励起光により発生する後方散乱光を受光する受光部と、を備える光ファイバセンシングシステムである。
【0010】
前記励起光のスペクトル線幅が1MHz以下でもよい。
【0011】
記複数のコア領域のコアピッチが15μm以上25μm以下でもよい。
【0012】
前記光ファイバセンシングシステムは、前記受光部が受光した後方散乱光の特徴量に基づいて、前記マルチコアファイバに発生した変形を検出し、または前記変形の発生位置もしくは時間変化を判定する判定部をさらに備えてもよい。
【0013】
記判定部は、前記受光した後方散乱光の特徴量のうちの光強度に基づいて、前記変形を検出し、または前記変形の発生位置もしくは時間変化を判定してもよい。
【0014】
前記判定部は、前記光強度の時間微分値に基づいて、前記変形の発生位置または時間変化を判定してもよい。
【0015】
前記光ファイバセンシングシステムは、前記マルチコアファイバの前記第1端側とは反対側の第2端側から前記第2コア領域に前記後方散乱光と波長が同じプローブ光を入力するプローブ光源をさらに備えてもよい。
【0016】
前記マルチコアファイバは、複数の前記第2コア領域を有し、前記複数の第2コア領域のそれぞれからの前記後方散乱光をそれぞれ受光する複数の前記受光部を備えてもよい。
【0017】
前記マルチコアファイバは、前記コア間クロストークが-30dB/km以上でもよい。
【0018】
本発明の一態様は、測定対象物の近傍に設けられたマルチコアファイバであってクラッド領域内に複数のコア領域を有し、所定波長における光のコア間クロストークが-40dB/km以上であるマルチコアファイバの第1端側から、前記複数のコア領域のうちの第1コア領域に前記所定波長を有するパルス状の励起光を入力した場合に、前記複数のコア領域のうちの前記第1コア領域以外のコア領域である第2コア領域から前記第1端側にて出力された、前記励起光により発生する後方散乱光を受光する受光部と、前記受光部が受光した後方散乱光の特徴量に基づいて、前記測定対象物に発生した、前記マルチコアファイバの変形を引き起こす事象を検出し、または前記事象の発生位置もしくは時間変化を判定する判定部と、を備える測定装置である。
【0019】
前記測定装置は、さらに、前記事象の種類を判別する判別部を備えてもよい。
【0020】
前記マルチコアファイバは、前記コア間クロストークが-30dB/km以上でもよい。
【0021】
本発明の一態様は、測定対象物の近傍に設けられたマルチコアファイバであってクラッド領域内に複数のコア領域を有し、所定波長における光のコア間クロストークが-40dB/km以上であるマルチコアファイバの第1端側から、前記複数のコア領域のうちの第1コア領域に前記所定波長を有するパルス状の励起光を入力し、前記複数のコア領域のうちの前記第1コア領域以外のコア領域である第2コア領域から前記第1端側にて出力された、前記励起光により発生する後方散乱光を受光し、前記受光した後方散乱光の特徴量に基づいて、前記測定対象物に発生した、前記マルチコアファイバの変形を引き起こす事象を検出し、または前記事象の発生位置もしくは時間時間変化を判定する事象検出方法である。
【0022】
前記事象検出方法において、さらに、前記事象の種類を判別してもよい。
【0023】
前記マルチコアファイバは、前記コア間クロストークが-30dB/km以上でもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、より簡易な構成でより高感度な光ファイバセンシングシステム、測定装置、および事象検出方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る光ファイバセンシングシステムの模式的な構成図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すマルチコアファイバの特性の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、データ処理部のデータ処理により得られる波形データの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す波形を時間微分した波形データを示す図である。
【
図6】
図6は、
図1に示す測定装置において得られるデータの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態2に係る光ファイバセンシングシステムの模式的な構成図である。
【
図8】
図8は、実施形態3に係る光ファイバセンシングシステムの模式的な構成図である。
【
図9】
図9は、実施形態4に係る光ファイバセンシングシステムの模式的な構成図である。
【
図11】
図11は、マルチコアファイバの態様を示す模式的な断面図である。
【
図12】
図12は、マルチコアファイバの態様を示す模式的な断面図である。
【
図13】
図13は、光ファイバセンシングシステムの第1適用形態の模式的な構成図である。
【
図14】
図14は、光ファイバセンシングシステムの第2適用形態の模式的な構成図である。
【
図15】
図15は、光ファイバセンシングシステムの第3適用形態の模式的な構成図である。
【
図16】
図16は、光ファイバセンシングシステムの第4適用形態の模式的な構成図である。
【
図17】
図17は、光ファイバセンシングシステムの第5適用形態の模式的な構成図である。
【
図18】
図18は、実施形態5に係る光ファイバセンシングシステムの模式的な構成図である。
【
図19】
図19は、制御部が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、図面を参照して実施形態について説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0027】
(実施形態1)
[光ファイバセンシングシステムの構成]
図1は、実施形態1に係る光ファイバセンシングシステムの模式的な構成図である。光ファイバセンシングシステム1000は、光ファイバ部100と、接続ケーブル200と、測定装置300とを備えている。
【0028】
光ファイバ部100は、マルチコアファイバ10と、光結合部20と、4本のシングルコア光ファイバ30とを備えている。マルチコアファイバ10は、クラッド領域11内に、コア領域12a、12bを含む4つのコア領域12を有している。4つのコア領域12は複数のコア領域の一例である。
【0029】
マルチコアファイバ10は、結合型マルチコアファイバである。結合型マルチコアファイバは、所定波長におけるコア間クロストークが-40dB/km以上、好ましくは-30dB/km以上の、比較的コア間クロストークが高い光ファイバである。このようなマルチコアファイバ10では、第1端13側から4つのコア領域12のうちの一つのコア領域に光を入力すると、当該光の一部はクロストークによって他のコア領域に結合し、当該他のコア領域を第2端14に向かって伝搬する。なお、所定波長は、たとえば1.55μm帯のような光通信で使用される波長であるが、特に限定はされない。ここで、或るコア領域と他のコア領域とのコア間クロストークとは、或るコア領域の第1端から第1光強度の光を入力して、他の一端で他のコア領域から第2強度の光が出力された場合、第1強度に対する第2強度の比として定義される量である。
【0030】
コア領域12のコア径やクラッド領域11に対する比屈折率は、特に限定されないが、所定波長をシングルモード伝搬するように設定されることが好ましい。また、コア領域12のコアピッチ(隣接するコア領域の中心間距離)は、所定波長におけるコア間クロストークが所望値以上となるように設定されるが、たとえば15μm以上25μm以下である。
【0031】
シングルコア光ファイバ30は、たとえば光通信に使用される標準シングルモード光ファイバであり、クラッド領域内に1つのコア領域を有している。光結合部20は、マルチコアファイバ10の第1端13とシングルコア光ファイバ30との間に配置されている。光結合部20は、4本のシングルコア光ファイバ30のそれぞれのコア領域とマルチコアファイバ10の4つのコア領域12のそれぞれとを光学的に結合している。たとえば、光結合部20は、シングルコア光ファイバ30のうちシングルコア光ファイバ31aとマルチコアファイバ10のコア領域12aとを光学的に結合しており、シングルコア光ファイバ31bとコア領域12bとを光学的に結合している。
【0032】
光結合部20は、たとえば、マルチコアファイバ10が有するコア領域12の数と同数のシングルコア光ファイバを束ねて、マルチコアファイバ10に接着剤で接続することによって構成できる(たとえば、渡辺健吾、齋藤恒聡、椎野雅人、“19コアMCF用ファイババンドル型ファンアウトの開発” 一般社団法人 電子情報通信学会 信学技報 OCS2014-35(2014-08))。また、光結合部20は、たとえば、マルチコアファイバ10が有するコア領域12の数と同数のシングルコア光ファイバから出力する光をレンズで集光し、マルチコアファイバ10の各コア領域12に結合させる空間結合型の構成でもよい(たとえば、小林哲也、鳥取祐作、坪谷博、皆川洋介、初鹿野圭、“空間光学系マルチコアファイバ結合デバイスとその拡張性” 一般社団法人 電子情報通信学会 信学技報 OCS2013-104,OFT2013-61,OPE2013-211(2014-02))。
【0033】
接続ケーブル200は、2本のシングルコア光ファイバ201、202を有する。シングルコア光ファイバ201は、シングルコア光ファイバ31aと測定装置300の光入出力部301とを光学的に接続している。シングルコア光ファイバ202は、シングルコア光ファイバ31bと測定装置300の光入出力部302とを光学的に接続している。シングルコア光ファイバ201、202は、たとえば光通信に使用される標準シングルモード光ファイバである。
【0034】
図2は、
図1に示す測定装置300の模式的な構成図である。測定装置300は、光入出力部301、302と、測定部310と、制御部320とを備えている。
【0035】
測定部310は、光源311と、パルス信号発生器312と、フォトディテクタ313と、A/D変換器314とを備えている。光源311とパルス信号発生器312とは励起光発生部315を構成する。光源311は、たとえば半導体レーザ装置やファイバレーザ装置を備えている。光源311は、パルス信号発生器312から出力されたパルス状の電気信号に基づいて、電気信号と同期したタイミングでパルス状のレーザ光である励起光を周期的に出力する。励起光は光入出力部301から測定装置300の外部に出力される。
【0036】
なお、光源311は、レーザ装置の駆動電力がパルス状であるいわゆる直接変調方式でパルス状の励起光を出力する構成でもよい。また、光源311は、光源311がレーザ装置と光変調器とを備えており、レーザ装置が出力した連続波のレーザ光を、パルス状の電気信号(変調信号)を印加した光変調器でパルス状のレーザ光にして出力する、いわゆる外部変調方式の構成でもよい。光変調器は、たとえばLiNbO3変調器や、AO変調器、EA変調器等であり、特に限定はされない。
【0037】
フォトディテクタ313は、たとえばフォトダイオードを備える。フォトディテクタ313は、測定装置300の光入出力部301から入力された光を受け付け、その光の強度に対応した電流信号を出力する。A/D変換器314は、フォトディテクタ313が出力したアナログ信号としての電流信号を受け付け、デジタル信号に変換して制御部320に出力する。フォトディテクタ313は受光部の一例である。
【0038】
制御部320は、ハードウェアとしてはたとえばプロセッサ、メモリ、および入出力インターフェイスなどの周辺装置を備えている。プロセッサは、たとえばCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)などであり、制御部320が実現する機能のための各種演算処理を行うものである。メモリは、たとえばROM(Read Only Memory)で構成される部分と、たとえばRAM(Random Access Memory)で構成される部分とを備えている。ROMは、プロセッサが演算処理を行うために使用する各種プログラムやデータ等が格納される。RAMは、プロセッサが演算処理を行う際の作業スペースやプロセッサの演算処理の結果等を記憶する等のために使用される。制御部320は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体を備えていてもよい。制御部320の機能は、たとえばプロセッサがメモリから読み出したプログラムを実行することによってハードウェアとソフトウェアとが協働して実現される。また、制御部320はFPGA(Field Programmable Gate Array)を含んで構成されてもよい。
【0039】
制御部320は、機能部として受信部321と、データ処理部322と、判定部323とを備えている。受信部321は、パルス信号発生器312からトリガー信号を受け取る。このトリガー信号は、光源311に出力されるパルス状の電気信号と同期しており、データ処理部322におけるデータ処理の同期のために用いられる。データ処理部322は、A/D変換器314からのデジタル信号を受け付け、デジタル信号に含まれる情報のデータをデータ処理する。判定部323は、後に詳述するように、データ処理部322のデータ処理結果に基づいて、マルチコアファイバ10に発生した変形を検出し、または変形の発生位置もしくは時間変化を判定する。なお、変形の時間変化の判定により、変形の発生時間も判定できる。
【0040】
[光ファイバセンシングシステムの動作]
つぎに、光ファイバセンシングシステム1000の動作について説明する。まず、励起光発生部315では、パルス信号発生器312は、パルス状の電気信号を光源311に出力する。光源311は、パルス信号発生器312から出力された電気信号に基づいて、電気信号と同期したタイミングで、所定波長を有するパルス状の励起光を出力する。
【0041】
励起光は、光入出力部301、シングルコア光ファイバ201、シングルコア光ファイバ31a、光結合部20を経由して、マルチコアファイバ10の第1端13側からコア領域12aに入力する。すなわち、励起光発生部315は、第1端13側からコア領域12aに励起光を入力する。コア領域12aは第1コア領域の一例である。
【0042】
励起光は、マルチコアファイバ10を伝搬するうちに、クロストークによってその一部がコア領域12a以外の他のコア領域12に結合し、当該他のコア領域12を第2端14側に伝搬する。
【0043】
励起光は、コア領域12内の長手方向の各位置でレイリー散乱光などの後方散乱光を発生させる。コア領域12内で発生した後方散乱光は、第2端14側から第1端13側に伝搬する。なお、このような後方散乱光も、マルチコアファイバ10を伝搬するうちに、クロストークによってその一部が他のコア領域12に結合する。
【0044】
後方散乱光の一部は、第1端13側にてコア領域12bから出力される。コア領域12bは第1コア領域以外のコア領域である第2コア領域の一例である。出力された後方散乱光は、光結合部20、シングルコア光ファイバ31b、シングルコア光ファイバ202、光入出力部302を経由して測定装置300に入力する。さらに、フォトディテクタ313は、入力された後方散乱光を受け付け、その後方散乱光の強度に対応した電流信号を出力する。A/D変換器314は、フォトディテクタ313が出力したアナログ信号としての電流信号を受け付け、デジタル信号に変換して制御部320に出力する。
【0045】
制御部320において、データ処理部322は、A/D変換器314からのデジタル信号を受け付け、デジタル信号に含まれる情報のデータをデータ処理する。たとえば、データ処理部322は、デジタル信号に含まれる情報としての後方散乱光の光強度を、デジタル信号の取得時刻と対応させて2次元データを生成する。光強度は、後方散乱光を特徴づける特徴量の一例である。さらに、データ処理部322は、デジタル信号の取得時刻の、基準時刻からの時間差に基づいて、取得時刻を、そのデジタル信号に対応する後方散乱光がマルチコアファイバ10で発生した位置(マルチコアファイバ10の第1端13からの距離)に変換する。これにより、データ処理部322は、測定部310が受光した後方散乱光の、マルチコアファイバ10における発生位置(距離)と、そこで発生した後方散乱光の光強度とが対応付けられた2次元データを生成する。すなわち測定装置300はOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)と同様に動作する。データ処理部322は、生成した2次元データを、2次元データの時間的なデータ列として記憶する。
【0046】
なお、励起光は、パルス信号発生器312から出力されたパルス状の電気信号と同期しているが、電気信号は、マルチコアファイバ10の長さに応じた繰り返し周期を有している。具体的には、繰返し周期は、励起光が励起光発生部315から出力してからマルチコアファイバ10の第2端14まで到達し、その後第2端14で発生した後方散乱光がフォトディテクタ313に到達するまでの時間以上に設定されている。このように設定することによって、マルチコアファイバ10内を複数の励起光が伝搬している状態ではなく、1つの励起光のみが伝搬している状態で、その1つの励起光により発生した後方散乱光を受光できる。
【0047】
また、データ処理部322は、パルス信号発生器312からのトリガー信号によって、パルス信号発生器312から出力されたパルス状の電気信号と同期したタイミングでデータ処理を行う。これにより、データ処理部322は、マルチコアファイバ10の長さに応じた時間的に連続したデジタル信号列を、トリガー信号の周期で繰り返し処理することができる。
【0048】
ここで、マルチコアファイバ10が変形すると、クロストークの度合が変化するので、励起光の他のコア領域への結合の強さも変化する。マルチコアファイバ10の変形は、たとえば、マルチコアファイバ10に外力が作用して発生する変形や振動、マルチコアファイバ10に音響波が伝搬することによる微細な振動、またはマルチコアファイバ10の温度変化による膨張、収縮などが含まれる。
【0049】
図3は、
図1に示すマルチコアファイバ10の特性の一例を示す図である。
図3は、マルチコアファイバ10の第1端13側からコア領域12aに試験光を入力した場合に、各コア領域12から出力した試験光を第2端14側で受光した場合の光強度の時間変化を示す。なお、試験光源は単一縦モード発振半導体レーザであり、試験光のスペクトル線幅は1MHz以下である。また、
図3の凡例における「Core2」とは、コア領域12aから出力した試験光を示し、「Core1」、「Core3」、「Core4」は、コア領域12a以外のコア領域12から出力した試験光を示している。また、「SUM」は、コア領域12aを含む全てのコア領域12から出力した試験光の合計を示している。
【0050】
そして、
図3(a)はマルチコアファイバ10に外力が作用しない状態で置かれている場合を示し、
図3(b)はマルチコアファイバ10に指で触れて振動させた場合を示している。
図3(a)、(b)に示すように、マルチコアファイバ10に外力が作用しない状態ではいずれの光強度も時間変化しない。一方、マルチコアファイバ10が振動している状態では、「Core1」、「Core2」、「Core3」、「Core4」はいずれも時間的に変動するものの「SUM」は時間的に殆ど変動しないことが分かる。
図3(a)、(b)は、マルチコアファイバ10が振動している状態では、振動が発生している場所において、試験光を入力したコア領域から他のコア領域への光の結合状態が変化し、コア間クロストークが変化することを示している。マルチコアファイバ10のような結合型マルチコアファイバは、振動などの変形に対して敏感に反応する光ファイバと言える。
【0051】
図4は、データ処理部322のデータ処理により得られる波形データの一例を示す図である。この波形データはマルチコアファイバ10からの後方散乱光の時間変化を示したものである。すなわち、当該時間変化はマルチコアファイバ10の長手方向におけるファイバ各地点からの後方散乱光の分布を示すことになる。なお、縦軸は第1端13を基準とした第2端14への距離を表している。縦軸は後方散乱光の光強度を示している。
【0052】
そして、
図4(a)はマルチコアファイバ10に外力が作用しない状態で置かれている場合を示し、
図4(b)はマルチコアファイバ10における第1端13からの距離が約260mの位置を指で触れてマルチコアファイバ10を振動させた場合を示している。さらに
図4(c)は
図4(b)の一部を縦軸方向に拡大した図である。なお、
図4の凡例における「Core1」が、コア領域12bから出力された後方散乱光を受光した場合を示し、「Core3」、「Core4」は、コア領域12a、12b以外のコア領域12から出力された後方散乱光を受光した場合を示している。
【0053】
図4に示すように、後方散乱光の光強度は振動発生位置で急激に変化し、当該位置より遠方では光強度は変動することが分かる。
【0054】
そこで、判定部323は、
図4に例示するようなデータ処理部322のデータ処理結果に基づいて、マルチコアファイバ10に発生した変形を検出し、または変形の発生位置もしくは時間変化を判定する。判定部323は、たとえば光強度が急激に変化した場合に、振動が発生したことを検知する。また、判定部323は、たとえば光強度が時間的に急激に変化した位置を振動が発生した位置と判定する。また、判定部323は、たとえば光強度の変化量の時間変化から振動の時間変化を判定し、さらに振動の発生時間を判定してもよい。判定部323は、後方散乱光の特徴量のうちの光強度に基づいて、マルチコアファイバ10に発生した変形を検知し、または変形の発生位置もしくは時間変化を判定する判定部の一例である。なお、判定部323は、判定した結果を記憶してもよいし、制御部320が表示機能や外部機器との通信機能を備えている場合は、判定した結果を表示したり外部機器に送信したりしてもよい。
【0055】
以上のように構成された光ファイバセンシングシステム1000では、結合型マルチコアファイバのコア間クロストーク特性を利用しているので、高感度に振動などのマルチコアファイバ10の変形を測定できる。また、光ファイバセンシングシステム1000では、後方散乱光のフォトディテクタ313への到達時間がマルチコアファイバ10における位置(第1端13からの距離)に比例することから、マルチコアファイバ10の長手方向での変形の分布を容易に測定することができる。また、光ファイバセンシングシステム1000では、励起光を入力するコア領域12aと、受光する後方散乱光が出力されるコア領域12bとを別々にしているので、励起光と後方散乱光とを分離するための光部品(光サーキュレータや光スイッチ)が不要である。そのため、光ファイバセンシングシステム1000は簡易な構成とできる。
【0056】
また、パルス状の励起光を周期的に出力する場合、励起光がOFF状態(励起光の光強度がゼロの場合)には理想的には後方散乱光が発生しないが、現実的には励起光がOFF状態でも微弱な背景光が時間的に連続的に存在している。この場合、背景光による後方散乱光がノイズとなり、受光部での信号ノイズ比(SNR)を劣化させることが知られている。しかし光ファイバセンシングシステム1000では、励起光を入力するコア領域12aと受光する後方散乱光が出力されるコア領域12bとを別々にしているので、背景光による後方散乱光が励起光による後方散乱光と重畳して受光部に入力することが抑制される。そのため、光ファイバセンシングシステム1000ではSNRの劣化が抑制される。
【0057】
なお、本発明者の鋭意検討によれば、試験光や励起光のスペクトル線幅が1nm以上のように広い場合、
図3、4のような後方散乱光の強度変動が顕著には発生しないことが確認された。このことから、励起光の干渉性(コヒーレンス性)が、マルチコアファイバ10に変形が発生している状態でのコア間クロストークの変化に大きく影響を受けること、高いコヒーレンス性(狭いスペクトル線幅)を有する励起光を使用すれば、変形検出の感度を向上させることができること、がわかった。そのため、励起光のスペクトル線幅はたとえば1MHz以下であることが好ましい。光源311としては、たとえば単一縦モード発振動作が可能なDFB(Distributed FeedBack)半導体レーザやファイバレーザが好ましい。
【0058】
また、データ処理部322は、後方散乱光の光強度の時間変化に対して微分値を得るようにデータ処理を行ってもよい。
図5は、
図4に示す波形を距離方向(横軸)に対して微分した波形データを示す図である。
図5に示すように、後方散乱光の光強度の距離方向に対する微分の波形データでは、振動の発生位置がピークとして現れる。当該距離方向に対する微分は、時間変化に対する微分と対応している。したがって、判定部323は、後方散乱光の光強度の距離方向の微分値に基づいて変形の発生位置を特定すれば、より高精度に変形の発生位置または時間変化を特定することができる。
【0059】
図6は、
図1に示す測定装置300において得られるデータの一例を示す図である。
図6では、マルチコアファイバ10の長さが1100mであり、そのうちの第1端13からの距離が1085mから1095mまでの範囲のデータを、500秒間にわたって連続的に繰り返し測定した結果示している。
【0060】
図6(a)は、はマルチコアファイバ10に外力が作用しない状態で置かれている場合を示し、色の濃淡は後方散乱光の光強度を示している。
図6(a)の場合は、示された位置範囲、時間範囲において光強度が一様であり、マルチコアファイバ10に変形が発生していないことが分かる。
【0061】
図6(b)は、第1端13からの距離が約1090mの位置を指で触れた場合を示し、色の濃淡は後方散乱光の光強度を示している。
図6(b)の場合は、横軸が約110秒の位置から、距離が約1090mから遠方において色が淡くなっている部分が表れている。これは距離が約1090mの位置でマルチコアファイバ10に振動が発生していることを示している。
【0062】
図6(c)は、
図6(c)の2次元データの時間軸(横軸)方向の微分を示し、色の濃淡は微分係数の大きさを示している。
図6(c)の場合は、振動の発生時間が110秒からであることをより明確に特定できる。
【0063】
(実施形態2)
図7は、実施形態2に係る光ファイバセンシングシステムの模式的な構成図である。この光ファイバセンシングシステム1000Aは、
図1に示す光ファイバセンシングシステム1000の光ファイバ部100を光ファイバ部100Aに置き換え、プローブ光源400と接続ケーブル500とを追加した構成を有する。
【0064】
光ファイバ部100Aは、光ファイバ部100に光結合部40と4本のシングルコア光ファイバ50とを追加した構成を有する。シングルコア光ファイバ50は、たとえば光通信に使用される標準シングルモード光ファイバであり、クラッド領域内に1つのコア領域を有している。光結合部40は、マルチコアファイバ10の第2端14とシングルコア光ファイバ50との間に配置されている。光結合部40は、4本のシングルコア光ファイバ50のそれぞれのコア領域とマルチコアファイバ10の4つのコア領域12のそれぞれとを光学的に結合している。具体的には、光結合部40は、シングルコア光ファイバ50のうちシングルコア光ファイバ51aとマルチコアファイバ10のコア領域12bとを光学的に結合している。光結合部40は、たとえば、光結合部20と同様に、シングルコア光ファイバを束ねたりレンズを用いたりして構成できる。
【0065】
プローブ光源400は、後方散乱光と同じ波長(たとえば励起光と同じ波長)の、連続波のプローブ光を出力する。接続ケーブル500は、たとえば光通信に使用される標準シングルモード光ファイバであり、シングルコア光ファイバ51aとプローブ光源400とを光学的に接続している。これにより、プローブ光源400は、マルチコアファイバ10の第1端13側とは反対側の第2端14側から第2コア領域であるコア領域12bに後方散乱光と波長が同じプローブ光を入力する。プローブ光の強度は、光ファイバ部100において不要な非線形光学現象が発生しない程度であることが好ましい。プローブ光の強度は、たとえば0dBm~-10dBm程度である。
【0066】
コア領域12bに入力されたプローブ光は、後方散乱光と同じ方向、すなわち第2端14側から第1端13側に向かって伝搬するとともに、後方散乱光を光増幅する。これにより、測定装置300のフォトディテクタ313で受光される後方散乱光の光強度はより高くなる。
【0067】
以上のように構成された光ファイバセンシングシステム1000Aは、実施形態1に係る光ファイバセンシングシステム1000と同様に簡易な構成であり、かつより光強度が高い後方散乱光を受光できるので、より高感度に振動などの変形を測定できる。
【0068】
(実施形態3)
図8は、実施形態3に係る光ファイバセンシングシステムの模式的な構成図である。この光ファイバセンシングシステム1000Bは、
図1に示す光ファイバセンシングシステム1000の測定装置300を測定装置300Bに置き換えた構成を有する。なお、
図8では光ファイバ部100および接続ケーブル200は図示を省略している。
【0069】
測定装置300Bは、測定装置300の測定部310を測定部310Bに置き換えた構成を有する。測定部310Bは、測定部310の光源311を光源311Bに置き換え、光カプラ316、317、光変調器318を追加した構成を有する。光源311Bとパルス信号発生器312と光変調器318とは励起光発生部315Bを構成する。
【0070】
光源311は、たとえば半導体レーザ装置やファイバレーザ装置を備えており、連続波のレーザ光を出力する。光カプラ316は、光源311から出力されたレーザ光を2分岐し、2つのレーザ光のそれぞれを光変調器318と光カプラ317のそれぞれに出力する。光変調器318は、パルス信号発生器312から出力されたパルス状の電気信号に基づいて、入力された連続波のレーザ光から、電気信号と同期したタイミングでパルス状のレーザ光である励起光を生成し、周期的に出力する。励起光は光入出力部301から測定装置300Bの外部に出力され、マルチコアファイバ10のコア領域12aに出力される。
【0071】
一方、マルチコアファイバ10のコア領域12bから出力されて、光入出力部302から測定装置300Bに入力された後方散乱光は、光カプラ317に入力される。光カプラ317は、この後方散乱光と、光カプラ316から入力されたレーザ光(局発光光とも呼ばれる)とを合波した光(合波光)をフォトディテクタ313に出力する。フォトディテクタ313は、入力された合波光の強度に対応した電流信号を出力する。A/D変換器314は、フォトディテクタ313が出力したアナログ信号としての電流信号を受け付け、デジタル信号に変換して制御部320に出力する。
【0072】
制御部320において、データ処理部322は、A/D変換器314からのデジタル信号を受け付け、デジタル信号に含まれる情報のデータをデータ処理する。たとえば、データ処理部322は、合波光の光強度を表す連続的なデジタル信号を、パルス信号発生器312からの同期信号に同期させて、励起パルス光の繰り返し周期と一致した一定の時間間隔(すなわち一定のデータ量)毎に2次元的並び替えることで2次元データを生成する。合波光の光強度は、後方散乱光の光強度の情報と、後方散乱光と局発光光との位相差の情報とを含む。後方散乱光の光強度の情報と、後方散乱光と局発光光との位相差の情報とは、後方散乱光を特徴づける特徴量の一例である。さらに、データ処理部322は、パルス信号発生器312からの同期信号の発生タイミングを原点として、データの取得時刻を、そのデジタル信号に対応する後方散乱光がマルチコアファイバ10で発生した位置(マルチコアファイバ10の第1端13からの距離)に変換する。これにより、データ処理部322は、測定部310が受光した後方散乱光の、マルチコアファイバ10における発生位置(距離)と、そこで発生した後方散乱光の光強度とが対応付けられた2次元データを生成する。すなわち測定装置300はコヒーレントOTDRと同様に動作する。そして、判定部323は、データ処理部322のデータ処理結果に基づいて、マルチコアファイバ10に発生した変形を検知し、または発生位置もしくは時間変化を判定する。
【0073】
以上のように構成された光ファイバセンシングシステム1000Bは、実施形態1に係る光ファイバセンシングシステム1000と同様に簡易な構成であり、かつ後方散乱光の位相情報を用いることによって、より高感度に振動などの変形を測定できる。
【0074】
(実施形態4)
図9は、実施形態4に係る光ファイバセンシングシステムの模式的な構成図である。この光ファイバセンシングシステム1000Cは、
図1に示す光ファイバセンシングシステム1000の接続ケーブル200を接続ケーブル200Cに置き換え、測定装置300を測定装置300Cに置き換えた構成を有する。
【0075】
接続ケーブル200Cは、接続ケーブル200が有する2本のシングルコア光ファイバ201、202に加え、2本のシングルコア光ファイバ203、204を有する。シングルコア光ファイバ203は、シングルコア光ファイバ30のうちのシングルコア光ファイバ31cと測定装置300Cの光入出力部303とを光学的に接続している。また、シングルコア光ファイバ31cは光結合部20によってマルチコアファイバ10のコア領域12のうちのコア領域12cに光学的に接続している。また、シングルコア光ファイバ204は、シングルコア光ファイバ30のうちのシングルコア光ファイバ31dと測定装置300Cの光入出力部304とを光学的に接続している。また、シングルコア光ファイバ31dは光結合部20によってマルチコアファイバ10のコア領域12のうちのコア領域12dに光学的に接続している。コア領域12c、12dは第2コア領域の一例である。すなわち、マルチコアファイバ10は、複数の第2コア領域として、コア領域12b、12c、12dを有する。
【0076】
図10は、
図9に示す測定装置300Cの模式的な構成図である。測定装置300Cは、測定装置300の測定部310を測定部310Cに置き換え、光入出力部303、304を追加した構成を有する。測定部310Cは、測定部310にフォトディテクタ313a、313bと、A/D変換器314a、314bとを追加した構成を有する。
【0077】
フォトディテクタ313aは、光入出力部303から入力された、第1端13側でコア領域12cから出力された後方散乱光を受け付け、その光強度に対応した電流信号を出力する。A/D変換器314aは、フォトディテクタ313aが出力したアナログ信号としての電流信号を受け付け、デジタル信号に変換して制御部320に出力する。フォトディテクタ313bは、光入出力部304から入力された、第1端13側でコア領域12dから出力された後方散乱光を受け付け、その後方散乱光の光強度に対応した電流信号を出力する。A/D変換器314bは、フォトディテクタ313bが出力したアナログ信号としての電流信号を受け付け、デジタル信号に変換して制御部320に出力する。フォトディテクタ313、313a、313bは複数の受光部の一例である。
【0078】
制御部320において、データ処理部322は、A/D変換器314、314a、314bからの各デジタル信号を受け付け、各デジタル信号に含まれる情報のデータをデータ処理する。たとえば、データ処理部322は、各デジタル信号に含まれる情報としての各後方散乱光の光強度の二乗和を算出し、当該二乗和とデジタル信号の取得時刻と対応させて2次元データを生成する。さらに、データ処理部322は、デジタル信号の取得時刻の、基準時刻からの時間差に基づいて、取得時刻を、そのデジタル信号に対応する後方散乱光がマルチコアファイバ10で発生した位置(マルチコアファイバ10の第1端13からの距離)に変換する。これにより、データ処理部322は、測定部310Cが受光した後方散乱光の、マルチコアファイバ10における発生位置(距離)と、そこで発生した後方散乱光の光強度に基づく二乗和とが対応付けられた2次元データを生成する。
【0079】
判定部323は、データ処理部322のデータ処理結果に基づいて、マルチコアファイバ10に発生した変形を検知し、または変形の発生位置もしくは時間変化を特定する。この場合、前記二乗和は、マルチコアファイバ10に発生する変形に対して、各後方散乱光の個別の光強度よりも敏感に変化する。その結果、光ファイバセンシングシステム1000Cでは、簡易な構成でより高感度に振動などの変形を測定できる。
【0080】
なお、本実施形態では、データ処理部322は、各後方散乱光の光強度の二乗和を算出しているが、当該二乗和に換えて、分散値や偏差値を算出してもよい。これらの二乗和や分散値や偏差値などの統計値も、後方散乱光を特徴づける特徴量の一例である。
【0081】
(マルチコアファイバの態様)
図11、12は、光ファイバセンシングシステムにおいて使用されるマルチコアファイバの態様を示す模式的な断面図である。上記実施形態の説明では、マルチコアファイバ10がクラッド領域11とコア領域12とを備えることを説明したが、マルチコアファイバ10は、
図11(a)に示すようにクラッド領域11の周囲を囲むように、タイトバッファ構造の被覆15が設けられていてもよい。また、
図11(b)に示すように、マルチコアファイバ10が光ファイバケーブル600Aを構成していてもよい。光ファイバケーブル600Aは、樹脂などからなるテンションメンバ601の周囲を取り囲むように複数のマルチコアファイバ10が配置され、さらに複数のマルチコアファイバ10の周囲を取り囲むように被覆602が設けられた構成を有する。たとえば、複数のマルチコアファイバ10のうちの少なくとも1本が光ファイバセンシングシステムのマルチコアファイバとして使用される。なお、複数のマルチコアファイバ10のうち1本以上をマルチコアファイバ10以外の光ファイバに置き換えてもよい。
【0082】
また、
図12(a)に示すように、マルチコアファイバ10が複合ケーブル600Bを構成していてもよい。複合ケーブル600Bは、2本のマルチコアファイバ10と、3本の電力線603と、1本のアース線604との周囲を取り囲むように内部被覆605が設けられた構成を有する。さらに、複合ケーブル600Bでは、内部被覆605を取り囲むように複数のテンションメンバ606が配置され、複数のテンションメンバ606を取り囲むようにブレイド607が設けられている。たとえば、2本のマルチコアファイバ10のうちの少なくとも1本が光ファイバセンシングシステムのマルチコアファイバとして使用される。なお、2本のマルチコアファイバ10のうち1本をマルチコアファイバ10以外の光ファイバに置き換えてもよい。
【0083】
また、
図12(b)に示すように、マルチコアファイバ10が光ファイバケーブル600Cを構成していてもよい。光ファイバケーブル600Cは、複数の光ファイバテープ心線608が、スロット材609に設けられたスロット610に収容された構成を有する。また、光ファイバケーブル600Cでは、スロット材609の中心にはテンションメンバ611が設けられており、スロット材609の周囲を含むように外部被覆612、613が設けられている。たとえば、光ファイバテープ心線608を構成する少なくとも1本のマルチコアファイバ10が光ファイバセンシングシステムのマルチコアファイバとして使用される。
【0084】
(光ファイバセンシングシステムの適用形態)
つぎに、光ファイバセンシングシステムの適用形態について説明する。以下に説明する適用形態では、測定装置300は、測定対象物の近傍に設けられたマルチコアファイバ10での第1端13側から、コア領域12aにパルス状の励起光を入力した場合に、コア領域12bから第1端13側にて出力された後方散乱光を受光する受光部(フォトディテクタ313)と、受光部が受光した後方散乱光の特徴量に基づいて、測定対象物に発生した、マルチコアファイバ10の変形を引き起こす事象を検知し、または事象の発生位置もしくは時間変化を判定する判定部と、を備え、事象検出方法を実行する測定装置として機能する。
【0085】
図13は、光ファイバセンシングシステムの第1適用形態の模式的な構成図である。第1適用形態では、光ファイバセンシングシステム1000の光ファイバ部100が有するマルチコアファイバ10は、鉄道などの線路10001に沿って敷設される。このように適用した光ファイバセンシングシステム1000によって、たとえば、線路10001の周辺で発生する振動を検出したり、振動の発生位置や時間変化を判定したりすることができる。また、光ファイバセンシングシステム1000により、線路10001上を通過する列車により発生する振動や、線路10001へ侵入した人や動物(鹿やイノシシなど)がいた場合に発生する振動や、崩落などにより線路10001の周辺から線路10001へ流入した落石や土砂などにより発生する振動を検出したり、振動の発生位置や時間変化を判定したりすることができる。線路10001は、マルチコアファイバ10が近傍に設けられる測定対象物の一例である。また線路10001に発生する振動は、マルチコアファイバ10の変形を引き起こす事象の一例である。
【0086】
図14は、光ファイバセンシングシステムの第2適用形態の模式的な構成図である。第2適用形態では、光ファイバセンシングシステム1000は、
図14(a)に示すように、地面10002に設けられた自動車などが通行する道路10003に対して適用される。道路10003は図面と垂直方向に延びている。道路10003に沿って延びる、樹脂などからなる保護体2000が、地面10002に埋設されている。
【0087】
図14(b)に示すように、光ファイバセンシングシステム1000の光ファイバ部100が有するマルチコアファイバ10は、保護体2000の長手方向に沿って収容されている。
図14(c)は、
図14(b)のA-A線断面図を示している。保護体2000は、本体2010と、蓋2020と、スペーサ2030と、接続部材2040と、支持部材2050と、取付部材2060とを有している。本体2010は、図面に垂直方向である保護体2000の長手方向に延びた底壁2011と、図面左右方向である底壁2011の幅方向両端から図面上下方向である高さ方向の上側に延びた二つの側壁2012とを有している。本体2010は底壁2011に対して図面上方向で開口している。蓋2020は、図面と垂直方向に延びており、本体2010の開口を覆っている。スペーサ2030は、図面と垂直方向に延びており、本体2010と蓋2020との間に介在している。接続部材2040は、図面と垂直方向に延びるように側壁2012に設けられており、蓋2020やスペーサ2030を支持している。支持部材2050は、図面と垂直方向に延びるように側壁2012に設けられており、マルチコアファイバ10を支持している。取付部材2060は、マルチコアファイバ10を支持部材2050に固定している。なお、保護体2000には、マルチコアファイバ10の他に通信ケーブルや電力ケーブルが収容されていてもよい。
【0088】
このように適用した光ファイバセンシングシステム1000によって、たとえば、自動車が道路10003を通過したときに発生する振動を検出したり、振動の発生位置や時間変化を判定したりすることができる。具体的には、自動車が通過して道路10003が振動すると、その振動が地面10002を伝搬し、さらに保護体2000を経由してマルチコアファイバ10に伝搬する。光ファイバセンシングシステム1000は当該伝搬した振動を検出したり、振動の発生位置や時間変化を判定したりする。また、光ファイバセンシングシステム1000により、道路10003へ侵入した人や動物がいた場合に発生する振動や、崩落などによって道路10003の周辺から道路10003へ流入した落石や土砂などにより発生する振動や、道路10003や道路10003の周囲での工事などにより発生する振動を検出したり、振動の発生位置や時間変化を判定したりすることができる。道路10003は、マルチコアファイバ10が近傍に設けられる測定対象物の一例である。また道路10003に発生する振動は、マルチコアファイバ10の変形を引き起こす事象の一例である。
【0089】
図15は、光ファイバセンシングシステムの第3適用形態の模式的な構成図である。第3適用形態では、光ファイバセンシングシステム1000の光ファイバ部100が有するマルチコアファイバ10は、海10004における海底10005に敷設された保護体3000に収容される。保護体3000は内部に海水10006が侵入しないように水密に構成されている。たとえば、船舶や海洋生物の移動により水中音響波が発生すると、水中音響波は海中を伝搬し、保護体3000を振動させる。保護体3000はさらに光ファイバ部100のマルチコアファイバ10に伝搬する。したがって、このように適用した光ファイバセンシングシステム1000によれば、船舶や海洋生物の移動を検知したり、移動の発生位置を判定したりすることができる。また、光ファイバセンシングシステム1000によれば、地中を伝搬して海底1005に達した地震波を検知したり、地震波の時間変化を判定したりすることができる。海10004や海底10005は、マルチコアファイバ10が近傍に設けられる測定対象物の一例である。また、船舶や海洋生物の移動や地震波は、マルチコアファイバ10の変形を引き起こす事象の一例である。
【0090】
図16は、光ファイバセンシングシステムの第4適用形態の模式的な構成図である。第4適用形態では、光ファイバセンシングシステム1000の光ファイバ部100が有するマルチコアファイバ10は、電柱10007間に掛け渡されている。光ファイバ部100は、通信ケーブルなどの架空ケーブルに含まれていてもよい。このように適用した光ファイバセンシングシステム1000よれば、光ファイバ部100を振動させる風や、電柱10007や電柱10007の周囲で発生した振動を検知したり、これらの発生位置や時間変化を判定したりすることができる。電柱10007や電柱10007の周囲は、マルチコアファイバ10が近傍に設けられる測定対象物の一例である。また、風や振動は、マルチコアファイバ10の変形を引き起こす事象の一例である。
【0091】
図17は、光ファイバセンシングシステムの第5適用形態の模式的な構成図である。第5適用形態では、光ファイバセンシングシステム1000の光ファイバ部100が有するマルチコアファイバ10は、橋梁10008の主桁に沿って設けられている。このように適用した光ファイバセンシングシステム1000よれば、橋梁10008に発生した振動を検知したり、振動の発生位置や時間変化を判定したりすることができる。なお、橋梁10008に発生する振動は、車両や歩行者などの移動体が橋梁10008を通過することや、風や地震などの自然現象によって発生する。橋梁10008は、マルチコアファイバ10が近傍に設けられる測定対象物の一例である。また、振動は、マルチコアファイバ10の変形を引き起こす事象の一例である。
【0092】
(実施形態5)
本発明の実施形態に係る光ファイバセンシングシステムは、マルチコアファイバが近傍に設けられた測定対象物に発生した、マルチコアファイバの変形を引き起こす事象を検出し、または前記事象の発生位置もしくは時間変化を判定する機能に加え、事象の種類を判別する機能を有するように構成されていてもよい。
【0093】
図18は、実施形態5に係る光ファイバセンシングシステムにおける測定装置の模式的な構成図である。この光ファイバセンシングシステム1000Dは、
図1に示す光ファイバセンシングシステム1000の測定装置300を測定装置300Dに置き換えた構成を有する。なお、
図18では光ファイバ部100および接続ケーブル200は図示を省略している。
【0094】
測定装置300Dは、測定装置300の制御部320を制御部320Dに置き換えた構成を有する。制御部320Dは、制御部320に判別部324を追加した構成を有する。判別部324は、たとえばメモリに記憶された判別手段を用いて、データ処理部322が生成したデータから、マルチコアファイバ10が近傍に設けられた測定対象物に発生した、マルチコアファイバ10の変形を引き起こす事象の種類を判別する。
【0095】
判別手段は、データ処理部322が生成したデータと、そのデータに対応する事象とを対応づけることができる様々な分類手法を用いたものとして構成できる。たとえば、判別手段は、教師データを用いた学習済モデルを含んで構成される。この場合、教師データは、たとえば、ラベルとしての既知の事象と、当該事象によって発生した後方散乱光に基づいてデータ処理部322が生成したデータ(後方散乱光の特徴量を含むデータ)とが紐づけられたデータセットである。また、学習済モデルは様々な手法で作成できる。たとえば、学習済モデルは、データセットを構成するデータを
図6に示すような画像データとして、たとえば畳み込みニューラルネットワークを代表とするディープラーニングの手法のような画像認識の手法を用いて作成できる。
【0096】
また、本発明の実施形態に係る光ファイバセンシングシステムは、制御部が学習機能を備えていてもよい。
図19は、実施形態5における制御部320Dが学習機能を備えている場合に制御部が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0097】
まず、データ処理部322がデータを生成する(ステップS1)。つづいて、判別部324が事象判別を行う(ステップS2)。判別された事象とデータとが紐づけられたデータセットはメモリや記録媒体にデータベースとして蓄積される。つづいて、判別部324は、データベースに基づいて機械学習を行う(ステップS3)。つづいて、判別部324は、機械学習の結果に基づき、学習済みモデルを更新または蓄積する(ステップS4)。なお、更新は、新たなデータに対応した過去のデータの一部等を削除する処理であり、蓄積は、過去のデータを削除することなく新たなデータを追加する処理である。
【0098】
なお、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。たとえば、上述した第1~第5適用形態に、実施形態1~5のいずれの光ファイバセンシングシステムを適用できる。また、実施形態2のようにプローブ光源を備える構成と、実施形態3のように後方散乱光の位相情報を用いる構成と、実施形態4のような複数のコア領域からの後方散乱光を受光する構成とのうちの2つ以上を適宜組み合わせてもよい。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0099】
10 :マルチコアファイバ
11 :クラッド領域
12、12a、12b、12c、12d:コア領域
13 :第1端
14 :第2端
15、602:被覆
20、40 :光結合部
30、31a、31b、31c、31d、50、51a、201、202、203、204:シングルコア光ファイバ
100、100A:光ファイバ部
200、200C、500:接続ケーブル
300、300B、300C、300D:測定装置
301、302、303、304:光入出力部
310、310B、310C:測定部
311、311B:光源
312 :パルス信号発生器
313、313a、313b:フォトディテクタ
314、314a、314b:A/D変換器
315、315B:励起光発生部
316、317:光カプラ
318 :光変調器
320、320D:制御部
321 :受信部
322 :データ処理部
323 :判定部
324 :判別部
400 :プローブ光源
600A、600C:光ファイバケーブル
600B :複合ケーブル
601、606、611:テンションメンバ
603 :電力線
604 :アース線
605 :内部被覆
607 :ブレイド
608 :光ファイバテープ心線
609 :スロット材
610 :スロット
612、613:外部被覆
1000、1000A、1000B、1000C、1000D:光ファイバセンシングシステム
2000、3000:保護体
2010 :本体
2011 :底壁
2012 :側壁
2020 :蓋
2030 :スペーサ
2040 :接続部材
2050 :支持部材
2060 :取付部材
10001 :線路
10002 :地面
10003 :道路
10004 :海
10005 :海底
10006 :海水
10007 :電柱
10008 :橋梁