(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018619
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】絶縁キャップ、絶縁キャップの取付用治具及び接続構造
(51)【国際特許分類】
H01R 4/70 20060101AFI20250130BHJP
H02G 15/02 20060101ALI20250130BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
H01R4/70 F
H02G15/02
H01R43/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122493
(22)【出願日】2023-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591086843
【氏名又は名称】古河電工産業電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】桜井 裕士
(72)【発明者】
【氏名】古屋 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 久弥
【テーマコード(参考)】
5E051
5G375
【Fターム(参考)】
5E051AC02
5G375DA20
5G375DA36
(57)【要約】
【課題】電線・ケーブルに接続端子を取り付ける際の作業負担の低減を図る。
【解決手段】導体21を被覆層22で被覆した電線・ケーブル2の接続端部に取り付けられた接続端子3の接続筒部32から電線・ケーブル2の被覆層22に渡って被覆する筒状の絶縁キャップ4であって、被覆層側の端部402の内側に、当該被覆層22に圧接する凸部44を有する。凸部は、突起状、凸条等であってもよく、軸方向の配置も適宜調整可能である。また、分断され凸条とすることもできる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体を被覆層で被覆した電線・ケーブルの接続端部に取り付けられた接続端子の接続筒部から前記電線・ケーブルの被覆層に渡って被覆する筒状の絶縁性を有する絶縁キャップであって、
前記被覆層側の端部の内側に、当該被覆層に圧接する凸部を有することを特徴とする絶縁キャップ。
【請求項2】
前記絶縁キャップの前記被覆層側の端部は、前記接続筒部側より内径が小さいことを特徴とする請求項1に記載の絶縁キャップ。
【請求項3】
前記凸部は、前記被覆層に点接触する突起状であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁キャップ。
【請求項4】
前記凸部は、前記絶縁キャップの内周面の周方向に沿った凸条であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁キャップ。
【請求項5】
前記凸部は、前記絶縁キャップの内周面の周方向に沿った凸条であって、軸方向について前記被覆層側に向かって拡開したテーパ面を有することを特徴とする請求項1に記載の絶縁キャップ。
【請求項6】
前記絶縁キャップの内周面に沿った凸条からなる前記凸部は、周方向について断続的であることを特徴とする請求項4に記載の絶縁キャップ。
【請求項7】
前記凸部は、前記絶縁キャップの中心軸方向に沿った凸条であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁キャップ。
【請求項8】
前記凸部は、前記絶縁キャップの内周面における前記被覆層側の先端に位置することを特徴とする請求項1に記載の絶縁キャップ。
【請求項9】
前記凸部は、前記絶縁キャップの前記被覆層側の先端から径方向内側に延びる支持部によって支持され、前記絶縁キャップが前記電線・ケーブルの外周に装着されることによって前記被覆層に圧接することを特徴とする請求項1に記載の絶縁キャップ。
【請求項10】
導体を被覆層で被覆した電線・ケーブルの接続端部に取り付けられた接続端子の接続筒部から前記電線・ケーブルの被覆層に渡って被覆する筒状の絶縁性を有する絶縁キャップの取付用治具であって、
前記絶縁キャップと前記被覆層との間に挿入される楔状であることを特徴とする絶縁キャップの取付用治具。
【請求項11】
導体を被覆層で被覆した電線・ケーブルの接続端部に取り付けられた接続端子の接続筒部から前記電線・ケーブルの被覆層に渡って被覆する筒状の絶縁性を有する絶縁キャップの取付用治具であって、
前記絶縁キャップと前記被覆層との間に挿入される複数の楔状部と、
前記複数の楔状部を支持し、周方向に不連続とする分断部を有する環状である支持部とを有することを特徴とする絶縁キャップの取付用治具。
【請求項12】
導体を被覆層で被覆した電線・ケーブルの接続端部に取り付けられた接続端子の接続筒部から前記電線・ケーブルの被覆層に渡って被覆する筒状の絶縁性を有する絶縁キャップの取付用治具であって、
周方向に不連続とする分断部を有する環状であって、前記絶縁キャップの外周面上で前記電線・ケーブルの中心側に締め付けを行うことを特徴とする絶縁キャップの取付用治具。
【請求項13】
導体を被覆層で被覆した電線・ケーブルの接続端部と、当該接続端部に取り付けられた接続端子と、当該接続端子の接続筒部から前記電線・ケーブルの被覆層に渡って被覆する筒状の絶縁性を有する絶縁キャップとを有する接続構造であって、
前記絶縁キャップの前記被覆層側の端部の内側に凸部を有し、
前記絶縁キャップの内側における前記凸部の内接円の径が、前記被覆層の外径よりも小さいことを特徴とする接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁キャップ、絶縁キャップの取付用治具及び接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電線・ケーブルの導体を端子台やブレーカー等の盤内の設備等につなぐ際、通常、導体の先端に接続端子を取り付けてから接続が行われる。
電線・ケーブルの導体に接続端子を取り付ける際には、接続端子の接続筒部に導体を挿入し、ダイスで、挿入した電線・ケーブルの導体ごと接続筒部をかしめて電気的、機械的に接続を行っていた。
そして、予め、電線・ケーブルの接続端部より奥側となる退避位置の外周に装着された筒状の絶縁キャップを接続端部側に移動させることによって、かしめられた後の接続端子の接続筒部が筒状の絶縁キャップによって覆われていた(例えば特許文献1,2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6422003号公報
【特許文献2】特開平6-111863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接続端部が下方に垂れ下がった状態の電線・ケーブルに接続端子を取り付ける場合、電線・ケーブルの接続端部に対して、予め、絶縁キャップを電線・ケーブルの接続端部より幾分上方となる位置に退避させておく必要がある。
この場合、絶縁キャップが滑って下方に移動すると、接続端部に接続端子を取り付ける作業の妨げとなるので、絶縁キャップを上方退避位置で粘着テープ等によって留めておくことが行われていた。
【0005】
しかしながら、接続端子を取り付ける作業を行う電線・ケーブルの本数が多くなると、絶縁キャップをテープで留める作業やテープをはがす作業の負担が大きくなる、という問題が生じていた。
【0006】
本発明は、電線・ケーブルに接続端子を取り付ける際の作業負担の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題を解決するために、本発明は、
導体を被覆層で被覆した電線・ケーブルの接続端部に取り付けられた接続端子の接続筒部から前記電線・ケーブルの被覆層に渡って被覆する筒状の絶縁性を有する絶縁キャップであって、
前記被覆層側の端部の内側に、当該被覆層に圧接する凸部を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、
導体を被覆層で被覆した電線・ケーブルの接続端部に取り付けられた接続端子の接続筒部から前記電線・ケーブルの被覆層に渡って被覆する筒状の絶縁性を有する絶縁キャップの取付用治具であって、
前記絶縁キャップと前記被覆層との間に挿入される挿入楔状であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、
導体を被覆層で被覆した電線・ケーブルの接続端部に取り付けられた接続端子の接続筒部から前記電線・ケーブルの被覆層に渡って被覆する筒状の絶縁性を有する絶縁キャップの取付用治具であって、
前記絶縁キャップと前記被覆層との間に挿入される複数の楔状部と、
前記複数の楔状部を支持し、周方向に不連続とする分断部を有する環状である支持部とを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、
導体を被覆層で被覆した電線・ケーブルの接続端部に取り付けられた接続端子の接続筒部から前記電線・ケーブルの被覆層に渡って被覆する筒状の絶縁性を有する絶縁キャップの取付用治具であって、
周方向に不連続とする分断部を有する環状であって、前記絶縁キャップの外周面上で前記電線・ケーブルの中心側に締め付けを行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、
導体を被覆層で被覆した電線・ケーブルの接続端部と、当該接続端部に取り付けられた接続端子と、当該接続端子の接続筒部から前記電線・ケーブルの被覆層に渡って被覆する筒状の絶縁性を有する絶縁キャップとを有する接続構造であって、
前記絶縁キャップの前記被覆層側の端部の内側に凸部を有し、
前記絶縁キャップの内側における前記凸部の内接円の径が、前記被覆層の外径よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電線・ケーブルに接続端子を取り付ける際の作業負担の低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態である電線・ケーブルと接続端子の接続構造の軸方向断面図である。
【
図4】絶縁キャップを保持側端部から見た背面図である。
【
図5】各凸部の軸方向の配置を変更した例を示す軸方向断面図である。
【
図6】各凸部の軸方向の配置を変更した例を示す絶縁キャップの斜視図である。
【
図7】絶縁キャップの保持側端部の先端が被覆層の外周面に摺接する状態を例示した絶縁キャップの部分断面図である。
【
図8】絶縁キャップをディッピング加工によって製造する際に使用する治具の斜視図である。
【
図9】絶縁キャップの製造時の状態を示す部分断面図である。
【
図10】第2実施形態である絶縁キャップの斜視図である。
【
図11】絶縁キャップと電線・ケーブルの軸方向断面図である。
【
図12】
図11のP領域における絶縁キャップの拡大断面図である。
【
図13】凸部の軸方向の配置を変更した例を示す絶縁キャップの斜視図である。
【
図14】絶縁キャップの第二筒部の保持側端部に凹となる切り欠きを設けた例を示す斜視図である。
【
図15】第3実施形態である絶縁キャップの斜視図である。
【
図16】電線・ケーブルに装着された絶縁キャップの軸方向断面図である。
【
図17】第4実施形態である絶縁キャップの斜視図である。
【
図18】絶縁キャップと電線・ケーブルの軸方向断面図である。
【
図19】絶縁キャップの第二筒部の保持側端部に切り欠きを形成して凸部を分断した絶縁キャップの斜視図である。
【
図20】絶縁キャップの第二筒部の保持側端部に形成されたテーパ面に凸部を形成した例を示す絶縁キャップの斜視図である。
【
図21】第5実施形態である絶縁キャップの軸方向断面図である。
【
図23】絶縁キャップの保持側端部の拡大斜視図である。
【
図24】絶縁キャップを電線・ケーブルに装着する場合の凸部の動きを示す軸方向断面図である。
【
図25】絶縁キャップを電線・ケーブルに装着した後の絶縁キャップの軸方向断面図である。
【
図27】絶縁キャップを形成するモールド加工に使用する治具及び金型の軸方向断面図である。
【
図29】第6実施形態である絶縁キャップの取付用治具と絶縁キャップと電線・ケーブルの斜視図である。
【
図30】電線・ケーブルに装着した絶縁キャップの軸方向断面図である。
【
図31】第7実施形態である絶縁キャップの取付用治具と絶縁キャップと電線・ケーブルの斜視図である。
【
図33】電線・ケーブルに装着した絶縁キャップの軸方向断面図である。
【
図34】第8実施形態である絶縁キャップの取付用治具と絶縁キャップと電線・ケーブルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る電線・ケーブルと接続端子の接続構造及びこれに関連する構成について各種の実施の形態を例示して説明する。ただし、以下に述べる各実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の各実施形態や図示例に限定するものではない。
なお、以下の説明において、電線・ケーブルの中心線方向を「軸方向」、中心線回りの円周方向を「周方向」、中心線に直交する方向を「径方向」というものとする。
【0015】
[第1実施形態]
図1は第1実施形態である電線・ケーブル2と接続端子3の接続構造10の軸方向断面図、
図2は電線・ケーブル2に装着された絶縁キャップ4の軸方向断面図、
図3は絶縁キャップ4の斜視図である。
図示のごとく、接続構造10は、電線・ケーブル2の接続端部と、当該接続端部に取り付けられた接続端子3と、当該接続端子3の接続筒部から電線・ケーブル2の被覆層に渡って被覆する筒状の絶縁キャップ4とを有する。
【0016】
[電線・ケーブル]
電線・ケーブル2は、導体21を被覆層22で被覆してなる。
電線・ケーブル2の導体21の材料には、銅又は銅合金、あるいはアルミニウム又はアルミニウム合金が用いられている。導体21は、上記の材料からなる複数の素線が撚り合わされてなる。
被覆層22は、絶縁材料(例えば、架橋ポリエチレン、エチレンプロピレンゴム、ポリ塩化ビニル)からなる。被覆層22は、導体21の外周全体を全長に渡って被覆する。なお、被覆層22は、絶縁層とその外側の保護層との二層で構成されてもよい。
但し、電線・ケーブル2に接続端子3を取り付ける場合には、接続端部において、およそ既定の長さで被覆層22が剥離除去され、既定の長さで導体21が露出した状態とされる。
【0017】
[接続端子]
接続端子3は、電線・ケーブル2の導体21を端子台等の接続目的箇所に電気的に接続するための被接続部31を一端部側に、電線・ケーブル2の導体21が挿入される接続筒部32を他端部側に有する。
【0018】
接続端子3は、銅又は銅合金、あるいはアルミニウム又はアルミニウム合金によって全体が一体的に形成されている。接続端子3は、電線・ケーブル2の導体21と金属材料が一致してもよいし、異種金属であってもよい。例えば、両方が銅又は銅合金、あるいはアルミニウム又はアルミニウム合金であってもよい。また、一方が銅又は銅合金、他方がアルミニウム又はアルミニウム合金であってもよい。
被接続部31は、軸方向に沿って接続筒部32から離隔する方向に延出された矩形の平板状を呈し、その中央にはネジを通して接続目的箇所に締結するための円孔が形成されている。
【0019】
接続筒部32は、内径及び外径が一定な円筒体であって、被接続部31側の端部が閉塞されている。接続筒部32は、内径が電線・ケーブル2の導体21の外径よりわずかに大きく設定されており、導体21を容易に挿入することができる。
導体21が挿入された状態で、接続筒部32は、外部から圧縮又は圧着によりかしめが行われて電線・ケーブル2の導体21と接続端子3との接続が行われる。接続筒部32は、かしめられて導体21と接続された状態において、その外径が電線・ケーブル2の被覆層22の外径よりも大きくなっている。
【0020】
[絶縁キャップ]
絶縁キャップ4は、電線・ケーブル2の接続端部に取り付けられた接続端子3の接続筒部32から電線・ケーブル2の被覆層22に渡って被覆する筒状体である。絶縁キャップ4は、絶縁材料(例えば、ポリ塩化ビニル、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、その他の絶縁樹脂)からなる。
【0021】
絶縁キャップ4は、
図1~
図3に示すように、接続端子3側の第一筒部41と、電線・ケーブル2側の第二筒部42と、これらの間に位置する移行部43とを有する。第一筒部41と移行部43と第二筒部42とは、同心且つ一体的に形成されている。また、絶縁キャップ4は、軸方向の両端部が、いずれも開放されている。
以下、絶縁キャップ4の接続端子3側の端部を「被覆側端部」(符号401)、電線・ケーブル2側の端部を「保持側端部」(符号402)という。後述する他の絶縁キャップ4A~4Fについても同様とする。
【0022】
第一筒部41は、内径及び外径が一定な円筒体である。第一筒部41の内径は、かしめられて導体21と接続された状態の接続端子3の接続筒部32(以下、接続処理後の接続筒部32という)の外接円の外径と等しいか幾分小さい。但し、第一筒部41の内径は、接続処理後の接続筒部32の外接円の外径よりも僅かに大きくしてもよい。また、かしめる前の接続筒部32の外径と等しいかそれより幾分小さくしてもよい。
【0023】
絶縁キャップ4は、全体的に可撓性、弾性を有するので、第一筒部41を接続処理後の接続筒部32に容易に被せることができる。また、第一筒部41の軸方向の長さは、接続筒部32の軸方向の長さと概ね等しいか、幾分長くともよい。
また、第一筒部41の被覆側端部401の先端は、内径及び外径を縮径させて幾分すぼんだ形状としてもよい。
【0024】
第二筒部42は、内径及び外径が一定な円筒体である。第二筒部42は、内径が電線・ケーブル2の被覆層22の外径よりわずかに大きく設定されており、第二筒部42を被覆層22に容易に被せることができる。
【0025】
移行部43は、一端部が第一筒部41に連結され、他端部が第二筒部42に連結されている。
そして、移行部43の一端部は、内径及び外径が第一筒部41に一致し、他端部は内径及び外径が第二筒部42に一致している。移行部43は、一端部から他端部にかけて内径及び外径が漸減している。従って、移行部43は、外周面が外から見た円錐面となり、内周面が内側から見た円錐面となっている。
【0026】
第二筒部42の保持側端部402の近傍であってその内周面には、一つ又は複数(三つ以上が好ましい、ここでは四つを例示)の凸部44が設けられている。
各凸部44は、半球状の突起であり、周方向に均一間隔で同一円周上に配置されている。但し、凸部44の軸方向断面の形状は、被覆層22に向かって突出した形状であればよく、凸部44が半球であることに限定されない。
図4に示すように、四つの凸部44の内接円C1の直径Dは、電線・ケーブル2の被覆層22の外径よりも幾分小さく設定されている。
従って、
図2に示すように、絶縁キャップ4に電線・ケーブル2を通すと、各凸部44の先端部が被覆層22の外周面上に点接触状態で圧接するようになっている。
【0027】
なお、凸部44は、最少で一つでも機能的に成立するが、その場合の内接円は、凸部44の先端部と第二筒部42の内周面との内接円の直径Dが、電線・ケーブル2の被覆層22の外径よりも幾分小さく設定される。
【0028】
[絶縁キャップの装着]
電線・ケーブル2と接続端子3の接続作業に伴う絶縁キャップ4の装着作業について説明する。
例えば、電線・ケーブル2は、接続端部側を下に向けて垂下状態で既に設置されている前提とする。
かかる電線・ケーブル2の接続端部において、被覆層22を所定の長さで除去し、導体21を露出させる。
【0029】
また、これに前後して、絶縁キャップ4の保持側端部402から電線・ケーブル2の接続端部を挿入する。この時、電線・ケーブル2の接続端部に接続端子3を接続する作業の妨げとならないように、
図2に示すように、絶縁キャップ4全体が電線・ケーブル2の接続端部から幾分離隔する位置に絶縁キャップ4を装着する。この位置を絶縁キャップ4の待機位置とする。
この時、電線・ケーブル2の接続端部は下方に向けられており、待機位置にある絶縁キャップ4は、下方への重力荷重を受けるが、四つの凸部44が被覆層22の外周面に圧接した状態にあるので、待機位置を維持し、電線・ケーブル2の接続端部から抜け落ちることが抑制される。
【0030】
そして、電線・ケーブル2の接続端部の導体21を接続端子3の接続筒部32内に挿入する。さらに、接続筒部32を外側から圧縮又は圧着によってかしめ、接続端子3と電線・ケーブル2の導体21とを機械的、電気的に接続する。
その後、各凸部44の圧接による摩擦力に抗して、待機位置にあった絶縁キャップ4を電線・ケーブル2の接続端部側に移動させて、第一筒部41を接続端子3の接続筒部32に被せる。
その結果、絶縁キャップ4は、接続筒部32から電線・ケーブル2の被覆層22に渡って被覆した状態となる。
これにより、電線・ケーブル2、接続端子3及び絶縁キャップ4からなる接続構造10が形成される。
【0031】
[第1実施形態における技術的効果]
上記接続構造10では、絶縁キャップ4の保持側端部402の内側に、被覆層22に圧接する凸部44を有する。
このため、電線・ケーブル2と接続端子3との接続作業において、電線・ケーブル2の接続端部が下方を向いた状態であっても、凸部44が被覆層22をホールドし、絶縁キャップ4が待機位置から滑って下方に移動したり、電線・ケーブル2の接続端部から抜け落ちたりすることを効果的に抑制することができる。
従って、電線・ケーブル2と接続端子3の接続作業の妨げとならず、また、粘着テープによる絶縁キャップ4の仮止めを不要とするので、接続作業が容易となり、作業効率が向上する。
【0032】
また、絶縁キャップ4は、被覆層22側の端部である第二筒部42が、接続筒部32側の第一筒部41より内径が小さくなる構造を有する。
このため、電線・ケーブル2の導体21に接続された接続端子3の接続筒部32に内径が大きな第一筒部41を余裕をもって被せることができ、絶縁キャップ4の取り付け作業が容易となると共に、接続筒部32を良好に被覆することが可能となる。
特に、接続端子3の接続筒部32がかしめされている場合に、外周の断面形状は、円形から変形を生じ得るが、このような変形した接続筒部32であっても、絶縁キャップ4の第一筒部41を容易に被せることができ、接続筒部32を良好に被覆することが可能となる。
【0033】
また、絶縁キャップ4の各凸部44は、被覆層22に点接触する突起状であるため、少ない面積で集中的に圧接するため、ホールド性が高く、電線・ケーブル2に対して絶縁キャップ4を効果的に保持することが可能となる。
【0034】
[凸部の他の配置]
なお、上記各凸部44は、
図5及び
図6に示すように、軸方向について、第二筒部42の内周面における保持側端部402の最も先端側となる位置に形成してもよい。
各凸部44が保持側端部402よりも幾分離隔して設けられている場合、保持側端部402から電線・ケーブル2を挿入した場合に、
図7のように、各凸部44よりも保持側端部402の先端側が電線・ケーブル2の被覆層22の外周面に摺接して摩擦を生じ、装着しにくくなるおそれがあった。
しかしながら、
図5及び
図6のように、第二筒部42の保持側端部402の最も先端側となる位置に各凸部44を設けると、保持側端部402から電線・ケーブル2を挿入した場合に、電線・ケーブル2の被覆層22に摺接する部位がなく、装着を円滑に行うことが可能となる。
【0035】
[絶縁キャップの製造]
上記絶縁キャップ4の製造方法について説明する。絶縁キャップ4は、ディッピング加工によって製造することができる。
図8はディッピング加工に使用する治具Gの斜視図、
図9は絶縁キャップ4の製造時の状態を示す部分断面図である。
【0036】
図8に示すように、絶縁キャップ4の治具Gは、絶縁キャップ4の内部空間と同形状の棒状体である。治具Gは、第一筒部41、第二筒部42、移行部43の内周面に相当する部位を有し、第二筒部42内の凸部44に相当する凹部G1も形成されている。
まず、治具Gの外周面に離型剤を塗布し、例えば、治具Gの第一筒部41の内周面に相当する部位よりも第二筒部42の内周面に相当する部位の方が下側となる向きで治具Gの外周面を絶縁キャップ4の形成材料の樹脂が溶解状態にあるディップ槽に浸す。
その後、ディップ槽から治具Gを引き上げると、
図9に示すように、その外周面に樹脂材料が付着した状態となるので、これを冷却し、治具Gと樹脂材料との間にエアーを吹き込んで離型させて、筒状の樹脂材料を治具Gから剥離させる。そして、樹脂材料の上端部と下端部とをそれぞれ所定の位置でカットし、絶縁キャップ4が完成する。
【0037】
なお、
図2に示す絶縁キャップ4と
図5に示す絶縁キャップ4のように、保持側端部402に対する凸部44の軸方向の位置が異なる場合には、離型後の筒状の樹脂材料に対する保持側端部402を形成するためのカット位置を変えることで適宜調整することが可能である。
【0038】
[第2実施形態]
図10は第2実施形態である絶縁キャップ4Aの斜視図、
図11は電線・ケーブル2に装着された絶縁キャップ4Aの軸方向断面図、
図12は
図11のP領域における絶縁キャップ4Aの拡大断面図である。
この第2実施形態は、前述した絶縁キャップ4と異なる形態の絶縁キャップ4Aを例示する。絶縁キャップ4Aと共に接続構造を構成する電線・ケーブル2及び接続端子3は、前述した接続構造10の電線・ケーブル2及び接続端子3と同一である。
【0039】
この絶縁キャップ4Aは、電線・ケーブル2の被覆層22に圧接する凸部44Aの構造が凸部44と異なり、それ以外の構造は絶縁キャップ4と同一である。従って、絶縁キャップ4Aにおける絶縁キャップ4と同一の構成については、絶縁キャップ4と同一の符号を付する。
絶縁キャップ4Aの凸部44Aは、前述した凸部44のように、被覆層22に点接触する突起状のものと異なり、第二筒部42の内周面の周方向に沿って一周する凸条からなる。
図12に示すように、凸部44Aの軸方向断面の形状は、被覆層22に向かって突出した形状であれば限定はないが、ここでは半円状を例示する。
凸部44Aの最内周部の内径は、被覆層22の外径に等しいか、僅かに小さい。
【0040】
絶縁キャップ4Aの装着手順は、前述した絶縁キャップ4と同一である。
絶縁キャップ4Aは、凸部44Aが円周方向に沿った凸条であるため、被覆層22を全周囲から保持することができ、絶縁キャップ4Aが待機位置から滑って下方に移動したり、電線・ケーブル2の接続端部から抜け落ちたりすることをより効果的に抑制することができる。
従って、絶縁キャップ4Aは、電線・ケーブル2と接続端子3の接続作業の妨げとならず、また、粘着テープを不要として、接続作業をさらに容易とし、さらに作業効率の向上に寄与する。
その他の技術的効果は、絶縁キャップ4と同一である。
【0041】
また、絶縁キャップ4Aの場合も、
図13に示すように、凸部44Aを、軸方向について、第二筒部42の内周面における保持側端部402の最も先端側となる位置に形成してもよい。
絶縁キャップ4Aの場合も、保持側端部402から電線・ケーブル2を挿入した場合に、電線・ケーブル2の被覆層22に摺接する部位がなく、装着を円滑に行うことが可能となる。
【0042】
また、凸条からなる凸部44Aは、連続して一周する構成に限定されず、周方向について断続的であってもよい。例えば、
図14に示すように、絶縁キャップ4Aの第二筒部42の保持側端部402に被覆側端部401側に向かって矩形に凹となる切り欠き45Aを周方向に均一間隔で複数形成することにより、凸条の凸部44Aを切り欠き45Aと同じ数に分断してもよい。
この場合も、凸部44Aは、第二筒部42の保持側端部402の最も先端側となる位置に形成してもよい。
【0043】
このように、連続して一周する凸条の凸部44Aに比べて複数に分断された凸部44Aは、電線・ケーブル2の被覆層22を拘束する力が低減するが、例えば、分断された凸部44Aを支持する分断された第二筒部42の剛性で凸部44Aと被覆層22との間に十分な摩擦力が生じて十分に絶縁キャップ4Aを拘束可能であれば、このような分断構造であっても問題ない。また、凸条の凸部44Aが分断されていれば、絶縁キャップ4Aを電線・ケーブル2を装着したときに、過剰な摩擦力が生じないため、電線・ケーブル2に対して絶縁キャップ4Aを移動させやすく、接続構造を形成する際の作業性が向上する。
【0044】
なお、絶縁キャップ4Aの製造は、治具Gの外周面上に凸条の凸部44Aを形成するための周方向に沿った凹溝を形成する点を除けば、絶縁キャップ4の場合と同じである。
また、分断された凸条の凸部44Aを有する絶縁キャップ4Aの場合には、分断されていない絶縁キャップ4Aを形成した後に、カット処理によって第二筒部42の保持側端部402に矩形の切り欠き45Aを形成すればよい。
【0045】
[第3実施形態]
図15は第3実施形態である絶縁キャップ4Bの斜視図、
図16は電線・ケーブル2に装着された絶縁キャップ4Bの軸方向断面図である。
この第3実施形態は、前述した絶縁キャップ4と異なる形態の絶縁キャップ4Bを例示する。絶縁キャップ4Bと共に接続構造を構成する電線・ケーブル2及び接続端子3は、前述した接続構造10の電線・ケーブル2及び接続端子3と同一である。
【0046】
この絶縁キャップ4Bは、電線・ケーブル2の被覆層22に圧接する凸部44Bの構造が凸部44と異なり、それ以外の構造は絶縁キャップ4と同一である。従って、絶縁キャップ4Bにおける絶縁キャップ4と同一の構成については、絶縁キャップ4と同一の符号を付する。
絶縁キャップ4Bの凸部44Bは、前述した凸部44のように、被覆層22に点接触する突起状のものと異なり、第二筒部42の軸方向に沿った凸条からなる。
凸部44Bの軸垂直断面の形状は、被覆層22に向かって突出した形状であれば限定はないが、ここでは半円状を例示する。また、凸部44Bの長さも限定はないが、例えば、最長で第二筒部42の軸方向長さと等しくしてもよい。
凸部44Bは、周方向に均一間隔で複数設けることが好ましい。ここでは、凸部44Bを四つ設ける場合を例示する。各凸部44Bの最内周部の内接円の直径は、被覆層22の外径より僅かに小さい。
【0047】
絶縁キャップ4Bの装着手順は、前述した絶縁キャップ4と同一である。
絶縁キャップ4Bは、凸部44Bが軸方向に長いので、被覆層22に対して軸方向に長い範囲で圧接するため、ホールド性が高く、電線・ケーブル2に対して絶縁キャップ4Bを効果的に保持することが可能となる
従って、電線・ケーブル2と接続端子3の接続作業の妨げとならず、また、粘着テープを不要として、接続作業がさらに容易となり、さらに作業効率が向上する。
その他の技術的効果は、絶縁キャップ4と同一である。
【0048】
なお、絶縁キャップ4Bの製造は、治具Gの外周面上に凸条の凸部44Bを形成するための軸方向に沿った凹溝を形成する点を除けば、絶縁キャップ4の場合と同じである。
【0049】
[第4実施形態]
図17は第4実施形態である絶縁キャップ4Cの斜視図、
図18は絶縁キャップ4Cと電線・ケーブル2の軸方向断面図である。
この第4実施形態は、前述した絶縁キャップ4と異なる形態の絶縁キャップ4Cを例示する。絶縁キャップ4Cと共に接続構造を構成する電線・ケーブル2及び接続端子3は、前述した接続構造10の電線・ケーブル2及び接続端子3と同一である。
【0050】
この絶縁キャップ4Cは、電線・ケーブル2の被覆層22に圧接する凸部44Cの構造が前述した凸部44Aと似ているが、それ以外の構造は絶縁キャップ4と同一である。従って、絶縁キャップ4Cにおける絶縁キャップ4と同一の構成については、絶縁キャップ4と同一の符号を付する。
絶縁キャップ4Cの凸部44Cは、絶縁キャップ4Cの内周面における保持側端部402の先端に位置し、第二筒部42の内周面において、周方向に沿って一周した凸条からなる。
なお、凸部44Cは、軸方向の断面形状が前述した凸部44Aと異なっている。
【0051】
凸部44Cは、第二筒部42の内周面における保持側端部402の先端部に設けられ、軸方向断面の形状が凸部44Aのように半円形状ではない。凸部44Cの断面形状は、保持側端部402の先端部が先鋭な楔状となっている。これにより、第二筒部42の内周面であって保持側端部402の先端側に、当該先端に向かうにつれて内径が大きくなる拡開した円錐面状のテーパ面441Cが形成された凸条からなる凸部44Cが形成されている。
凸部44Cの最内周部の内径は、被覆層22の外径に等しいか、僅かに小さい。
【0052】
絶縁キャップ4Cの装着手順は、前述した絶縁キャップ4と同一である。
絶縁キャップ4Cは、凸部44Cが円周方向に沿った凸条であるため、被覆層22を全周囲から保持することができ、絶縁キャップ4Cが待機位置から滑って下方に移動したり、電線・ケーブル2の接続端部から抜け落ちたりすることをより効果的に抑制することができる。
従って、電線・ケーブル2と接続端子3の接続作業の妨げとならず、また、粘着テープを不要として、接続作業がさらに容易となり、さらに作業効率が向上する。
さらに、絶縁キャップ4Cの凸部44Cは、テーパ面441Cを有するので、絶縁キャップ4Cの保持側端部402から電線・ケーブル2の挿入を容易に行うことができ、作業性が向上する。
その他の技術的効果は、絶縁キャップ4と同一である。
【0053】
また、凸条からなる凸部44Cも凸部44Aと同様に、連続して一周する構成に限定されず、周方向について断続的であってもよい。例えば、
図19に示すように、絶縁キャップ4Cの第二筒部42の保持側端部402に被覆側端部401側向かって矩形に凹となる切り欠き45Cを周方向に均一間隔で複数形成することにより、凸条の凸部44Cを切り欠き45Cと同じ数に分断してもよい。
上記分断の効果は、前述した凸部44Aの場合と同一である。
【0054】
なお、絶縁キャップ4Cの製造は、治具Gの外周面上に凸条の凸部44Cを形成するための周方向に沿った凹溝を形成する点を除けば、絶縁キャップ4の場合と同じである。
また、分断された凸条の凸部44Cを有する絶縁キャップ4Cの場合には、カット処理を行うことは絶縁キャップ4Aの場合と同じである。
【0055】
また、凸部44Cの場合には、テーパ面441Cの最も接続端子3側の端部が最も内径が小さくなり、内径の最小部で電線・ケーブル2の被覆層22に摺接する構造であったが、これに限定されない。
例えば、
図20に示す絶縁キャップ4Dのように、第二筒部42の保持側端部402に周方向に一周する凸条を形成せず、第二筒部42の保持側端部402の先端に、拡開したテーパ面441Dを形成し、テーパ面441Dの内周面上に径方向内側に突出した複数の突起状の凸部44Dを形成してもよい。この場合、複数の凸部44Dの内接円の直径を電線・ケーブル2の被覆層22の外径よりも幾分小さく設定する。また、各凸部44Dは、被覆層22に点接触する形状とする。
このような凸部44Dを有する絶縁キャップ4Dの場合もテーパ面441Dを有するので、絶縁キャップ4Dの保持側端部402から電線・ケーブル2の挿入を容易に行うことができ、作業性が向上する。また、それ以外の技術的効果は、絶縁キャップ4と同一である。
【0056】
[第5実施形態]
図21は第5実施形態である絶縁キャップ4Eの軸方向断面図、
図22は
図21の一点鎖線円内の拡大断面図、
図23は保持側端部402の拡大斜視図である。
この第5実施形態は、前述した絶縁キャップ4と異なる形態の絶縁キャップ4Eを例示する。絶縁キャップ4Eと共に接続構造を構成する電線・ケーブル2及び接続端子3は、前述した接続構造10の電線・ケーブル2及び接続端子3と同一である。
【0057】
この絶縁キャップ4Eは、電線・ケーブル2の被覆層22に圧接する複数の凸部44Eと、絶縁キャップ4Eにおける被覆層側の先端から径方向内側に延びる複数の支持部46Eとを有する。
また、絶縁キャップ4Eは、前述した絶縁キャップ4と同一の第一筒部41、第二筒部42及び移行部43とを有する。
【0058】
各凸部44Eは、各支持部46Eの先端部に個別に支持されている。
支持部46Eは、
図22に示すように、第二筒部42における保持側端部402側の端面における内縁部から、径方向内側であって、被覆層22側(軸方向の一方であって接続端子3に対する被覆層22側)に向かって延出され、その延出端部に凸部44Eが形成されている。支持部46Eは、薄肉の短冊状を呈している。
なお、支持部46Eは、第二筒部42の内周面における保持側端部402側の先端から延出させてもよい。また、支持部46Eは、径方向内側に向かって延出されていればよく、被覆層22側ではなく、接続端子3側(軸方向の他方であって被覆層22に対する接続端子3側)に向かって延出されてもよい。また、支持部46Eは、径方向内側に向かって延出され、被覆層22側にも接続端子3側にも傾斜してなくともよい。
【0059】
各支持部46Eは、いずれも、径方向内側に向かって延出されているので、
図24に示すように、絶縁キャップ4Eの保持側端部402から電線・ケーブル2が挿入される場合において、電線・ケーブル2の先端部に当接し、保持側端部402の内側であって接続端子3側に折り返される。
さらに、電線・ケーブル2の接続端部より奥側に絶縁キャップ4Eを移動させると、
図25及び
図26に示すように、折り返された支持部46Eの先端部において、凸部44Eは、第二筒部42の内周面と被覆層22の外周面とに挟まれて当該被覆層22に圧接した状態となる。
【0060】
なお、各凸部44Eは、各支持部46Eに対して、当該支持部46Eが接続端子3側を向いた状態で、被覆層22側に向かって凸となる向きで形成されている。
また、各凸部44Eは、半球状の突起であり、凸部44E及び支持部46Eは、それぞれが周方向に均一間隔で同一円周上に配置されている。
さらに、各凸部44Eは、第二筒部42の内周面上で被覆層22側に向かって凸となる向きとなった状態において、各凸部44Eの内接円の径が、被覆層22の外径よりも幾分小さくなるように設定されている。
なお、凸部44Eの軸方向断面の形状は、被覆層22に向かって突出した形状であればよく、凸部44Eが半球であることに限定されない。
【0061】
絶縁キャップ4Eの装着手順は、前述した絶縁キャップ4と同一である。
絶縁キャップ4Eは、保持側端部402側から電線・ケーブル2が挿入されると、凸部44Eが被覆層22側を向き、被覆層22を全周囲から保持することができ、絶縁キャップ4Eが待機位置から滑って下方に移動したり、電線・ケーブル2の接続端部から抜け落ちたりすることをより効果的に抑制することができる。
従って、電線・ケーブル2と接続端子3の接続作業の妨げとならず、また、粘着テープを不要として、接続作業がさらに容易となり、さらに作業効率が向上する。
さらに、各凸部44Eは、支持部46Eに支持されているので、絶縁キャップ4Eを電線・ケーブル2に装着したときに、絶縁キャップ4Eの保持側端部402が内側に引き込まれ難く、電線・ケーブル2と接続端子3の接続作業を円滑に行うことができ、さらに作業効率が向上する。
その他の技術的効果は、絶縁キャップ4と同一である。
【0062】
[絶縁キャップの製造]
上記絶縁キャップ4Eの製造方法について説明する。絶縁キャップ4Eは、モールド加工によって製造することができる。
図27はモールド加工に使用する治具GE及び金型MEの軸方向断面図、
図28は
図27の一点鎖線の円内の拡大斜視図である。
【0063】
図27に示すように、絶縁キャップ4Eの治具GEは、絶縁キャップ4Eの内部空間と同形状の棒状体である。治具GEは、第一筒部41、第二筒部42、移行部43の内周面に相当する部位を有し、各凸部44E及び各支持部46Eに相当する部位はない。
金型MEは、治具GEを挟んで上下に半割された一対の上下の金型からなる構造である。金型MEは、上下の金型を合わせた状態で、治具GEを格納する凹部を有し、さらに、当該治具GEの外周面に対して絶縁キャップ4Eの第一筒部41、第二筒部42、移行部43を形成するための隙間空間が形成されている。
さらに、治具GEは、第二筒部42の内周面に相当する部位の端部から縮径した円錐形状部GE2を有する。金型MEには、円錐形状部GE2に対応する凹部が形成されると共に、各凸部44E及び各支持部46Eを形成するための隙間空間を形成する凹部ME1,ME2が形成されている。
【0064】
各支持部46Eは、治具GEの円錐形状部GE2の外周面に沿って形成されることにより、径方向内側であって被覆層22側に沿った傾斜方向に形成することができる。
各支持部46Eは、径方向内側を向いていれば、軸方向については被覆層22側でなくともよいことを前述したが、各支持部46Eを径方向内側且つ軸方向の被覆層22側となる傾斜方向を向く構造とすることにより、上記治具GEと上記金型MEとによるモールド加工によって容易に製造することが可能である。例えば、各支持部46Eが、径方向内側であって、軸方向について接続端子3側となる傾斜方向を向いている場合には、複雑な構成の金型が必要となり、製造性が低下する。
また、各支持部46Eを上記の向きに形成した場合、金型ME内に樹脂を注入して材料樹脂が硬化した後において、離型性が良く、かかる点からも製造性を向上させることが可能である。
【0065】
[第6実施形態]
図29は第6実施形態である絶縁キャップ4Fの取付用治具GFと絶縁キャップ4Fと電線・ケーブル2の斜視図、
図30はそれらの軸方向断面図である。
この第6実施形態は、絶縁キャップ4Fは、電線・ケーブル2に対する保持構造を有さない。即ち、絶縁キャップ4Fは、前述した絶縁キャップ4から全ての凸部44を除去した構成である。
【0066】
上記絶縁キャップ4Fと電線・ケーブル2と接続端子3とによって接続構造を形成する場合に好適な取付用治具GFについて説明する。
この取付用治具GFは、略直方体状であって、一端側の角部が除去されたテーパ面GF1を有する楔状を呈する。これにより、取付用治具GFは、一端側が先鋭形状となっている。
電線・ケーブル2、接続端子3及び絶縁キャップ4Fからなる接続構造は、前述した電線・ケーブル2、接続端子3及び絶縁キャップ4からなる接続構造と同じ手順で接続が行われる。その際、電線・ケーブル2を絶縁キャップ4Fの保持側端部402から挿入し、当該絶縁キャップ4Fを退避位置に配置する際に、取付用治具GFの先鋭形状となった一端を被覆層22と絶縁キャップ4Fの第二筒部42の保持側端部402との間に挿入する。
これにより、絶縁キャップ4Fの第二筒部42の内周面や取付用治具GFが被覆層22に圧接し、電線・ケーブル2の接続端部を下に向けた状態としても、絶縁キャップ4Fを退避位置に保持することができる。
また、電線・ケーブル2の導体21に接続端子3を取り付けた後には、取付用治具GFを引き抜けば、絶縁キャップ4Fが容易に移動可能となり、接続端子3の接続筒部32を被覆することができる。
【0067】
取付用治具GFは、以上のように、絶縁キャップ4Fが待機位置から下方に移動したり、電線・ケーブル2の接続端部から抜け落ちたりすることを効果的に抑制する。従って、絶縁キャップ4Fが電線・ケーブル2と接続端子3の接続作業の妨げとなることを抑制することができる。
さらに、取付用治具GFは、被覆層22と絶縁キャップ4Fの第二筒部42との隙間に抜き差しするのみで、絶縁キャップ4Fの保持と解除とを行うことができるため、粘着テープを不要として、接続作業が容易となり、作業効率を向上させる。
また、取付用治具GFは、何度でも繰り返し使用することができるので、粘着テープに比して経済性に優れる。
【0068】
なお、取付用治具GFは、被覆層22側の接触面を被覆層22の周面形状に対応する凹状の周面形状としてもよい。
また、取付用治具GFの先鋭となる端部とは逆側の端部に引き抜き用の突起を設けてもよい。
【0069】
なお、取付用治具GFは、被覆層22側の接触面を被覆層22の周面形状に対応する凹状の周面形状としてもよい。
また、取付用治具GFの先鋭となる端部とは逆側の端部に引き抜き用の突起を設けてもよい。
【0070】
[第7実施形態]
図31は第7実施形態である絶縁キャップ4Fの取付用治具GGと絶縁キャップ4Fと電線・ケーブル2の斜視図、
図32は取付用治具GGの斜視図、
図33は電線・ケーブル2に装着した絶縁キャップ4Fの軸方向断面図である。
この第7実施形態は、第6実施形態と同様に、保持構造を有さない絶縁キャップ4Fを対象とする。
【0071】
上記絶縁キャップ4Fと電線・ケーブル2と接続端子3とによって接続構造を形成する場合に好適な取付用治具GGについて説明する。
この取付用治具GGは、周方向の一部不連続となる環状の支持部GG1と、環状の支持部GG1からその中心線方向の一方に沿って延出された複数の楔状部GG2とを有する。取付用治具GGは、可撓性を有する、例えば、樹脂等からなる。
【0072】
環状の支持部GG1は、周方向に不連続とする分断部GG3を有し、軸方向から見た形状が略C字状を呈する。支持部GG1の内径は、被覆層22の外径と等しいか若干大きくともよい。
各楔状部GG2は、支持部GG1側の基端部から軸方向の一方に延出された延出端部に向かうにつれて径方向に薄くなるように形成されている。また、各楔状部GG2の径方向内側面は、支持部GG1の径方向内側面と同一の周面となっている。
【0073】
電線・ケーブル2、接続端子3及び絶縁キャップ4Fからなる接続構造は、前述した電線・ケーブル2、接続端子3及び絶縁キャップ4からなる接続構造と同じ手順で接続が行われる。その際、電線・ケーブル2を絶縁キャップ4Fの保持側端部402から挿入する前に、取付用治具GGの支持部GG1に電線・ケーブル2を挿通させておいてもよい。また、電線・ケーブル2を絶縁キャップ4Fの保持側端部402から挿入後、絶縁キャップ4Fの保持側端部402に対向するように、分断部GG3を押し広げて電線・ケーブル2に取付用治具GGを装着してもよい。いずれの場合も、各楔状部GG2の先端部が、絶縁キャップ4Fの保持側端部402に対向する向きで装着する。
そして、絶縁キャップ4Fを退避位置に配置する際に、取付用治具GGの先鋭形状となった各楔状部GG2の先端を被覆層22と絶縁キャップ4Fの第二筒部42の保持側端部402との間に挿入する。
これにより、取付用治具GGの内周面が被覆層22に圧接し、電線・ケーブル2の接続端部を下に向けた状態としても、絶縁キャップ4Fを退避位置に保持することができる。
また、電線・ケーブル2の導体21に接続端子3を取り付けた後には、取付用治具GGを引き抜き、分断部GG3を押し広げて電線・ケーブル2から除去すれば、絶縁キャップ4Fが容易に移動可能となり、接続端子3の接続筒部32を被覆することができる。
【0074】
取付用治具GGは、以上のように、絶縁キャップ4Fが待機位置から滑って下方に移動したり、電線・ケーブル2の接続端部から抜け落ちたりすることを効果的に抑制する。従って、絶縁キャップ4Fが電線・ケーブル2と接続端子3の接続作業の妨げとなることを抑制することができる。
さらに、取付用治具GGは、被覆層22と絶縁キャップ4の第二筒部42との隙間に抜き差しするのみで、絶縁キャップ4Fの保持と解除とを行うことができるため、粘着テープを不要として、接続作業が容易となり、作業効率を向上させる。
また、取付用治具GGは、何度でも繰り返し使用することができるので、粘着テープに比して経済性に優れる。
【0075】
[第8実施形態]
図34は第8実施形態である絶縁キャップ4Fの取付用治具GHと絶縁キャップ4Fと電線・ケーブル2の斜視図、
図35は取付用治具GHの斜視図である。
この第8実施形態は、第6実施形態と同様に、保持構造を有さない絶縁キャップ4Fを対象とする。
【0076】
上記絶縁キャップ4Fと電線・ケーブル2と接続端子3とによって接続構造を形成する場合に好適な取付用治具GHについて説明する。
この取付用治具GHは、周方向に不連続となる環状の本体部GH1を有する。取付用治具GHは、可撓性を有する、例えば、樹脂等からなる。
環状の本体部GH1は、周方向に不連続とする分断部GH3を有し、軸方向から見た形状が略C字状を呈する。本体部GH1の内径は、絶縁キャップ4の第二筒部42の外径より若干小さい。
【0077】
電線・ケーブル2、接続端子3及び絶縁キャップ4Fからなる接続構造は、前述した電線・ケーブル2、接続端子3及び絶縁キャップ4からなる接続構造と同じ手順で接続が行われる。その際、電線・ケーブル2を絶縁キャップ4Fの保持側端部402から挿入する前に、取付用治具GHの本体部GH1に電線・ケーブル2を挿通させておいてもよい。また、電線・ケーブル2を絶縁キャップ4Fの保持側端部402から挿入後、絶縁キャップ4Fの保持側端部402に対向するように、分断部GH3を押し広げて電線・ケーブル2に取付用治具GHを装着してもよい。
そして、絶縁キャップ4Fを退避位置に配置し、取付用治具GHの分断部GH3を押し広げて絶縁キャップ4の第二筒部42の外周面上に取付用治具GHを配置する。
これにより、絶縁キャップ4Fの第二筒部42が取付用治具GHによって径方向内側に締め付けられ、第二筒部42の内周面が被覆層22に圧接し、電線・ケーブル2の接続端部を下に向けた状態としても、絶縁キャップ4Fを退避位置に保持することができる。
また、電線・ケーブル2の導体21に接続端子3を取り付けた後には、取付用治具GHの分断部GH3を押し広げて電線・ケーブル2から除去すれば、絶縁キャップ4Fが容易に移動可能となり、接続端子3の接続筒部32を被覆することができる。
【0078】
取付用治具GHは、以上のように、絶縁キャップ4Fが待機位置から滑って下方に移動したり、電線・ケーブル2の接続端部から抜け落ちたりすることを効果的に抑制する。従って、絶縁キャップ4Fが電線・ケーブル2と接続端子3の接続作業の妨げとなることを抑制することができる。
さらに、取付用治具GHは、第二筒部42の外周面上に装着又は除去するのみで、絶縁キャップ4Fの保持と解除とを行うことができるため、粘着テープを不要として、接続作業が容易となり、作業効率を向上させる。
また、取付用治具GHは、何度でも繰り返し使用することができるので、粘着テープに比して経済性に優れる。
【0079】
[その他]
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られるものではない。例えば、実施形態において、単一の部材により一体的に形成された構成要素は、複数の部材に分割されて互いに連結又は固着された構成要素に置換してもよい。また、複数の部材が連結されて構成された構成要素は、単一の部材により一体的に形成された構成要素に置換してもよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0080】
2 電線・ケーブル
21 導体
22 被覆層
3 接続端子
4,4A~4F 絶縁キャップ
41 第一筒部
42 第二筒部
43 移行部
44,44A~44E 凸部
45A,45C 切り欠き
46E 支持部
401 被覆側端部
402 保持側端部
441C,441D テーパ面
10 接続構造
31 被接続部
32 接続筒部
G 治具
G1 凹部
GE 治具
GE2 円錐形状部
GF 取付用治具
GF1 テーパ面
GG 取付用治具
GG1 支持部
GG2 楔状部
GG3 分断部
GH 取付用治具
GH1 本体部
GH3 分断部
ME 金型
ME1,ME2 凹部