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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018768
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20250130BHJP
   C23C 14/04 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
C23C14/24 G
C23C14/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122761
(22)【出願日】2023-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 康信
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029CA01
4K029DA03
4K029HA01
4K029HA04
(57)【要約】
【課題】基板とマスクをアライメントして成膜を行う成膜装置において、基板に当接する部材と、基板との位置関係を好適に制御する。
【解決手段】基板への成膜が行われるチャンバと、チャンバ内に配置され、基板の外縁を支持する基板支持部と、チャンバ内に配置され、基板と平行になるようにマスクを支持するマスク支持部と、チャンバ内に、基板を介してマスクとは反対側に配置される第1の部材であって、基板に当接可能な第1の部材と、基板と、マスクと、の面内での相対位置を調整するとともに、基板と、マスクと、の距離を調整する、第1のアライメント手段と、第1の部材と、基板およびマスクの少なくとも一方と、の面内での相対位置を調整するとともに、第1の部材と、基板およびマスクの少なくとも一方と、の距離を調整する、第2のアライメント手段を備える成膜装置を用いる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板への成膜が行われるチャンバと、
前記チャンバ内に配置され、前記基板の外縁を支持する基板支持部と、
前記チャンバ内に配置され、前記基板と平行になるようにマスクを支持するマスク支持部と、
前記チャンバ内に、前記基板を介して前記マスクとは反対側に配置される第1の部材であって、前記基板に当接可能な第1の部材と、
前記基板と、前記マスクと、の面内での相対位置を調整するとともに、前記基板と、前記マスクと、の距離を調整する、第1のアライメント手段と、
前記第1の部材と、前記基板および前記マスクの少なくとも一方と、の面内での相対位置を調整するとともに、前記第1の部材と、前記基板および前記マスクの少なくとも一方と、の距離を調整する、第2のアライメント手段と、
を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記第1の部材は、前記基板に当接して前記基板の熱上昇を抑制する冷却板である
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記第1の部材は、前記基板を介して前記マスクを引き寄せるマグネットである
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記第1の部材は、前記基板を前記マスクの方向に押し付ける押圧部材である
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記第2のアライメント手段は、前記チャンバに前記基板が搬入される前に、前記第1の部材と、前記マスクと、の面内での相対位置および距離を調整する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記第2のアライメント手段は、前記チャンバに前記基板が搬入された後に、前記第1の部材と、前記基板と、の面内での相対位置および距離を調整する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記第2のアライメント手段は、前記第1のアライメント手段により前記基板と前記マスクの面内での相対位置および距離が調整された後に、前記第1の部材と、前記基板と、の面内での相対位置および距離を調整する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記第1のアライメント手段は、前記基板と前記マスクの面内での相対位置および距離を大まかに調整するラフアライメントと、前記基板と前記マスクの面内での相対位置および距離を高精度に調整するファインアライメントと、の二段階アライメントを行う
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記第2のアライメント手段は、前記ラフアライメントの後、かつ、前記ファインアライメントの前に、前記第1の部材と、前記基板と、の面内での相対位置および距離を調整する
ことを特徴とする請求項8に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記第2のアライメント手段は、前記ラフアライメントおよび前記ファインアライメントの後に、前記第1の部材と、前記基板と、の面内での相対位置および距離を調整する
ことを特徴とする請求項8に記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL表示装置等に用いるパネルの大型化が進んでおり、パネル製造に用いる基板も大型化している。そのため、成膜チャンバ内で基板に蒸発材料を付着させてパネルを製造する際に、基板中央部の自重による撓みが大きくなっている。
【0003】
そこで特許文献1では、基板の自重による撓みを低減させるために、基板とマスクを位置合わせした後に、基板の被成膜面は反対側の面から、冷却板を基板に押し当てるように当接させている。これにより、基板をマスクに密着させつつ、成膜時の基板の温度上昇を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6351918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1の方法においては、基板と冷却板の位置関係の調整は行われない。ここで、成膜チャンバ内に基板を搬入する際の搬送精度には限界があるため、基板とマスクの位置合わせが良好に行われた場合であっても、基板と冷却板との位置関係が良好であることまでは保証されない。仮に、基板ごとの冷却板との間の位置関係のばらつきが大きくなると、基板に冷却板を押し当てる際の当接位置がばらつき、基板とマスクの位置関係に影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
また、マスクが金属材料を含む場合、マスクと接する面とは反対側の面からマグネットを基板に当接させることにより、マスクを基板の側に引き寄せて、基板とマスクの密着性を高める場合がある。しかし、基板ごとにマグネットとの間の位置関係のばらつきが大きくなると、冷却板の場合と同様に、基板とマスクの位置関係に影響を及ぼすおそれがある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、基板とマスクをアライメントして成膜を行う成膜装置において、基板に当接する部材と、基板との位置関係を好適に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
基板への成膜が行われるチャンバと、
前記チャンバ内に配置され、前記基板の外縁を支持する基板支持部と、
前記チャンバ内に配置され、前記基板と平行になるようにマスクを支持するマスク支持部と、
前記チャンバ内に、前記基板を介して前記マスクとは反対側に配置される第1の部材であって、前記基板に当接可能な第1の部材と、
前記基板と、前記マスクと、の面内での相対位置を調整するとともに、前記基板と、前記マスクと、の距離を調整する、第1のアライメント手段と、
前記第1の部材と、前記基板および前記マスクの少なくとも一方と、の面内での相対位
置を調整するとともに、前記第1の部材と、前記基板および前記マスクの少なくとも一方と、の距離を調整する、第2のアライメント手段と、
を備えることを特徴とする成膜装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板とマスクをアライメントして成膜を行う成膜装置において、基板に当接する部材と、基板との位置関係を好適に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】電子デバイスの製造ラインの一部の模式図
図2】実施形態に係る成膜装置の概略図
図3】アライメントに関わる構成を示す斜視図
図4】アライメントと成膜に関するフローチャート
図5】実施形態1におけるアライメントの様子を示す要部の断面図
図6】実施形態1におけるアライメントの様子を示す要部の断面図の続き
図7】実施形態1における成膜の様子を示す要部の断面図
図8】実施形態2におけるアライメントの様子を示す要部の断面図
図9】実施形態3におけるアライメントの様子を示す要部の断面図
図10】有機EL表示装置の製造に関する説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが 、これらの複数
の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に 組み合わせら
れてもよい。
【0012】
本発明は、マスクとアライメントされた基板等の成膜対象物の表面に、蒸着等により成膜材料の薄膜を形成する成膜装置に好適である。本発明は、アライメント装置、成膜装置、アライメント方法、成膜方法として捉えられる。本発明はまた、電子デバイスの製造装置やその制御方法、電子デバイスの製造方法としても捉えられる。本発明はまた、制御方法や製造方法をコンピュータに実行させるプログラムや、当該プログラムを格納した記憶媒体としても捉えられる。記憶媒体は、コンピュータにより読み取り可能な非一時的な記憶媒体であってもよい。
【0013】
本発明における基板の材料としては、ガラス、樹脂、金属、シリコンなど任意のものを利用できる。成膜材料としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物)など任意のものを利用できる。以下の説明における「基板」とは、基板材料の表面に既に1つ以上の成膜が行われたものを含む。本発明の技術は、典型的には、電子デバイスや光学部材の製造装置に適用される。特に、有機EL素子を備える有機ELディスプレイ、それを用いた有機EL表示装置などの有機電子デバイスに好適である。本発明はまた、薄膜太陽電池、有機CMOSイメージセンサにも利用できる。
【0014】
[実施形態1]
本発明の第1の実施形態における装置の構成および処理の流れについて説明する。
【0015】
<電子デバイスの製造ライン>
図1は、本発明の成膜装置が適用可能な電子デバイスの製造ラインの構成の一部を示す模式図である。図1の製造ラインは例えば、有機EL表示装置の表示パネルの製造に用い
られるもので、基板100が成膜ユニット301に順次搬送され、成膜される。
【0016】
成膜ユニット301には、搬送室302の周囲に、基板100に対する成膜処理が行われる複数の成膜室303a~303dと、使用前後のマスクが収納されるマスク格納室305とが配置されている。搬送室302には、基板100を搬送する搬送ロボット302aが配置されている。搬送ロボット302aは、基板100を保持するハンドと、ハンドを水平方向に移動する多関節アームとを含む。成膜ユニット301は、搬送ロボット302aの周囲を取り囲むように複数の成膜室303a~303dが配置されたクラスタ型の構成である。なお、成膜室303a~303dを総称する場合、或いは、区別しない場合は成膜室303と表記する。
【0017】
基板100の搬送方向(矢印方向)で、成膜ユニット301の上流側、下流側には、それぞれ、バッファ室306、旋回室307、受渡室308が配置されている。製造過程において、各室は真空状態に維持される。なお、図1においては成膜ユニット301を1つしか図示していないが、本実施形態に係る製造ラインは複数の成膜ユニット301を有しており、複数の成膜ユニット301が、バッファ室306、旋回室307、受渡室308で構成される連結装置で連結された構成を有する。なお、連結装置の構成はこれには限定されず、例えばバッファ室306又は受渡室308のみで構成されていてもよい。
【0018】
搬送ロボット302aは、上流側の受渡室308から搬送室302への基板100の搬入、成膜室303間での基板100の搬送、マスク格納室305と成膜室303との間でのマスクの搬送、及び、搬送室302から下流側のバッファ室306への基板100の搬出、を行う。
【0019】
バッファ室306は、製造ラインの稼働状況に応じて基板100を一時的に格納するための室である。バッファ室306には、カセットとも呼ばれる基板収納棚と、昇降機構とが設けられる。基板収納棚は、複数枚の基板100を基板100の被処理面(被成膜面)が重力方向下方を向く水平状態を保ったまま収納可能な多段構造を有する。昇降機構は、基板100が搬入又は搬出される段を搬送位置に合わせるために、基板収納棚を昇降させる。これにより、バッファ室306には複数の基板100を一時的に収容し、滞留させることができる。
【0020】
旋回室307は基板100の向きを変更する装置を備えている。本実施形態では、旋回室307は、旋回室307に設けられた搬送ロボットによって基板100の向きを180度回転させる。旋回室307に設けられた搬送ロボットが、バッファ室306で受け取った基板100を支持した状態で180度旋回し受渡室308に引き渡すことで、バッファ室306内と受渡室308とで基板の前端と後端が入れ替わる。これにより、成膜室303に基板100を搬入する際の向きが、各成膜ユニット301で同じ向きになるため、基板Sに対する成膜のスキャン方向やマスクの向きを各成膜ユニット301において一致させることができる。このような構成とすることで、各成膜ユニット301においてマスク格納室305にマスクを設置する向きを揃えることができ、マスクの管理が簡易化されユーザビリティを高めることができる。
【0021】
製造ラインの制御系は、ホストコンピュータとしてライン全体を制御する上位装置300と、各構成を制御する制御装置14a~14d、309、310とを含み、これらは有線又は無線の通信回線300aを介して通信可能である。制御装置14a~14dは、成膜室303a~303dに対応して設けられ、後述する成膜装置1を制御する。なお、制御装置14a~14dを総称する場合、或いは、区別しない場合は制御装置14と表記する。
【0022】
制御装置309は搬送ロボット302aを制御する。制御装置310は旋回室307の装置を制御する。上位装置300は、基板100に関する情報や搬送タイミング等の指示を各制御装置14、309、310に送信し、各制御装置14、309、310は受信した指示に基づき各構成を制御する。
【0023】
<成膜装置の概要>
図2は成膜装置1の概略図である。成膜室303に設けられる成膜装置1は、基板100に蒸着物質を成膜する装置であり、マスク101を用いて所定のパターンの蒸着物質の薄膜を形成する。なお、成膜方法は蒸着には限定されず、スパッタ等の各種成膜方法を適用可能である。図において矢印Zは上下方向(重力方向)を示し、矢印X及び矢印Yは互いに直交する水平方向を示す。また、左右対称に現れる部材については、一方の符号を省略する場合がある。
【0024】
成膜装置1は、内部を真空に保持可能な箱型の真空チャンバ3(単にチャンバとも呼ぶ)を有する。真空チャンバ3の内部空間3aは、真空雰囲気か、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持されている。本実施形態では、真空チャンバ3は不図示の真空ポンプに接続されている。なお、本明細書において「真空」とは、大気圧より低い圧力の気体で満たされた状態、換言すれば減圧状態をいう。真空チャンバ3の内部空間3aには、基板100を水平姿勢で支持する基板支持ユニット6、マスク101を基板100と平行になるように支持するマスク台5、成膜源(蒸着源)としての成膜ユニット4、プレートユニット9が配置される。
【0025】
マスク101(マスク支持部)は、基板100上に形成する薄膜パターンに対応する開口パターンをもつメタルマスクであり、マスク台5の上に載置されている。なお、マスク台5は、マスク101を所定の位置に固定する他の形態の手段に置換可能である。例えば、マスク101をクランプ保持する機構や、マスク101を吸着保持する機構でもよい。マスク101としては、枠状のマスクフレームに数μm~数十μm程度の厚さのマスク箔が溶接固定された構造を有するマスクを用いることができる。基板100とマスク101とが平行な状態になった後、両者の面内位置が相対的に調整される。その後、基板100とマスク101が重ね合わされた状態で、成膜処理が行われる。
【0026】
プレートユニット9(第1の部材))は、冷却プレート10(冷却板)と、マグネットを含む磁石プレート11を備える。磁石プレート11は冷却プレート10の上方に、冷却プレート10に対してZ方向に変位可能に設けられている。プレートユニット9は、基板100を介してマスク101とは反対側に配置される。すなわちプレートユニット9は、基板100の被成膜面とは反対側の面に配置される。プレートユニット9がZ方向に変位することにより、冷却プレート10は基板100に当接可能である。
【0027】
冷却プレート10は、成膜時に基板100と当接して熱上昇を抑制する機能を有する。冷却プレート10としては、水冷機構等を備えて積極的に基板100を冷却する部材や、熱伝導により基板100の熱を奪う板状部材を利用できる。磁石プレート11は、磁力によってマスク101を引き寄せるマスク支持手段として機能する板状部材である。磁石プレート11のマグネットが、基板100の上面から冷却プレート10および基板100を介してマスク101に磁力を及ぼすことで、基板100とマスク101の密着性が向上し、パターンに応じた成膜の精度が向上する。
【0028】
なお、冷却プレート10と磁石プレート11のいずれか一方のみが配置され、他方が省略されてもよい。その場合、配置された一方の部材が、第1の部材である。例えば、基板100の熱上昇が限定的な場合は冷却プレート10を設けなくてもよい。また、物理的保持機構や静電チャック等によりマスク101を力で保持できる場合は磁石プレート11を
設けなくてもよい。また、冷却プレート10と磁石プレート11は、一体として移動しなくてもよい。
【0029】
さらにプレートユニット9は、マスク101とのアライメントが行われた後に基板100を下方に押さえ付けて、基板100とマスク101の密着度を高める押圧部材としての機能を有する。すなわち、押圧部材が第1の部材だと考えることもできる。なお、プレートユニット9が冷却プレート10のみを有する場合、冷却プレート10が押圧部材として機能する。またプレートユニット9が磁石プレート11のみを有する場合、磁石プレート11が押圧部材として機能する。また、プレートユニット9が、冷却プレート10と磁石プレート11のいずれも有さず、押圧部材としてのみ機能する構成を取ることもできる。
【0030】
成膜ユニット4は、材料を収容する容器、容器を加熱するヒータ、シャッタ、蒸発源の駆動機構、蒸発レートモニタなどから構成され、蒸着物質を基板100に蒸着する蒸発源である。成膜ユニット4は、鉛直方向においてマスク台5の下に配置される。成膜ユニット4は、基板100から見て、マスク101と同じ側に配置される。成膜ユニット4は、マスク101を介して基板100に成膜を行う。
【0031】
<アライメント装置>
成膜装置1は、基板100とマスク101とのアライメントを行うアライメント装置2を備える。アライメント装置2は、基板支持ユニット6、基板位置調整ユニット20、基板距離調整ユニット22、プレート位置調整ユニット13、プレート距離調整ユニット19、第1計測ユニット7、第2計測ユニット8を備える。以下、アライメント装置の各構成について説明する。
【0032】
(基板支持ユニット)
アライメント装置2は、基板100の外縁を支持する基板支持ユニット6(基板支持部)を備える。基板支持ユニット6は、支持軸R1に支えられた枠状の基板支持ベース61を備え、基板支持ベース61からは、基板内側へ向かうように複数の載置部62が突出している。載置部62は「受け爪」とも呼ばれる。搬送ロボット302aにより真空チャンバ3に基板100が搬入されてくると、複数の載置部62が基板100の周縁部の辺を受けて支持する。載置部62は、例えばフィンガ状の板状部材で構成することができる。載置部62として板バネを用いた場合、板バネの弾性力により基板100をプレートユニット9に対して押し付けることができる。
【0033】
基板支持ユニット6には、複数の載置部62に対応する複数のクランプ部63が設けられる。クランプアクチュエータがクランプ部63を載置部62に向けてZ方向に上下させることで、基板100をクランプ状態と開放状態の間で切り替えることができる。クランプ状態においては、載置部62とクランプ部63が基板100を挟持することで、基板100が固定される。
【0034】
(基板位置調整ユニット・基板距離調整ユニット)
アライメント装置2は、基板支持ユニット6により周縁部が支持された基板100と、マスク101と、の相対位置を調整する基板位置調整ユニット20を備える。基板位置調整ユニット20は、基板支持ユニット6をX-Y平面上で変位することにより、マスク101に対する基板100の面内での相対位置を調整する。基板位置調整ユニット20は、基板支持ユニット6を、X方向およびY方向に移動させるとともに、Z方向の軸周りに回転させる。本実施形態のアライメントでは、マスク101の位置を固定して基板100を変位するが、マスク101を変位させてもよいし、基板100とマスク101の両方を変位させてもよい。
【0035】
一例として、基板位置調整ユニット20は、真空チャンバ3の上壁部30上に固定された固定プレートと、固定プレート上に配置されたXY移動およびθ回転を行うアクチュエータと、アクチュエータの動きに応じて変位する可動プレートを有する構成でもよい。本実施形態では、基板位置調整ユニット20の可動プレートには第1昇降プレート220が接続され、第1昇降プレート220により基板距離調整ユニット22が支持されている。
【0036】
基板距離調整ユニット22は、例えばアクチュエータとボールねじを備えたロッド状の直動機構であり、第1昇降プレート220をZ方向に上昇および下降させることが可能である。すなわち、基板距離調整ユニット22によるZ方向の駆動力が、第1昇降プレート220を介して基板支持ユニット6に伝達されることで、基板100が上昇および下降する。その結果、基板100とマスク101が接近または離間する。また、基板位置調整ユニット20によるXY移動およびθ回転が、第1昇降プレート220を介して基板支持ユニット6に伝達されることで、基板100が面内位置調整される。なお、本実施形態では、マスク台5の位置を固定し、基板支持ユニット6のZ方向の距離を調整するが、これには限定されない。マスク台5の側を移動させて調整してもよいし、基板支持ユニット6とマスク台5の両方を移動させてもよい。
【0037】
なお、位置調整および距離調整が可能であれば、基板位置調整ユニット20および基板距離調整ユニット22としてどのような構成を採用してもよい。例えば磁力により基板を浮上させる基板キャリアを設けてもよい。基板位置調整ユニット20と基板距離調整ユニット22を合わせて、基板100とマスク101の面内の相対位置の調整と、面の法線方向における距離の調整と、を行う第1のアライメント手段と総称することができる。
【0038】
(プレート位置調整ユニット・プレート距離調整ユニット)
プレート位置調整ユニット13は、プレートユニット9をXY面内で位置調整することにより、プレートユニット9と、基板100(またはマスク101)との面内の位置関係を調整する機構である。プレート位置調整ユニット13として例えば、基板位置調整ユニット20と同様に、XY移動およびθ回転を行うアクチュエータを備える駆動機構を用いることができる。プレート位置調整ユニット13によるXY移動およびθ回転が、支持軸R2を介してプレートユニット9に伝達されることで、プレートユニット9の面内位置が変位する。その結果、冷却プレート10および磁石プレート11と、基板100(またはマスク101)のアライメントが実施される。
【0039】
プレート距離調整ユニット19は、例えばアクチュエータとボールねじを備えたロッド状の直動機構であり、第2昇降プレート230をZ方向に上昇および下降させることが可能である。すなわち、プレート距離調整ユニット19によるZ方向の駆動力が、第2昇降プレート230を介してプレートユニット9に伝達されることで、プレートユニット9が上昇および下降する。その結果、冷却プレート10および磁石プレート11と、基板100が接近または離間する。例えば、成膜の前に基板100に冷却プレート10を押し当てるときは、プレート位置調整ユニット13により基板100と冷却プレート10のアライメントを行った後、プレート距離調整ユニット19により基板100と冷却プレート10を接近させる。なお、本実施形態はプレートユニット9を上下動させる構成には限定されず、基板支持ユニット6を上下動させる構成でもよいし、プレートユニット9と基板支持ユニット6の両方を上下動させてもよい。プレート位置調整ユニット13とプレート距離調整ユニット19を合わせて、基板100及び/又はマスク101と、冷却プレート10及び/又は磁石プレート11と、の面内の相対位置の調整と、面の法線方向における距離の調整と、を行う第2のアライメント手段と総称することができる。
【0040】
(計測ユニット)
アライメント装置2は、基板支持ユニット6により周縁部が支持された基板100とマ
スク101の位置ずれを計測する計測ユニット(第1計測ユニット7及び第2計測ユニット8)を備える。図2に加えて図5を参照して説明する。図5は第1計測ユニット7及び第2計測ユニット8の説明図であり、基板100とマスク101の位置ずれの計測態様を示している。本実施形態の第1計測ユニット7及び第2計測ユニット8はいずれも画像を撮像する撮像装置(カメラ)である。第1計測ユニット7及び第2計測ユニット8は、上壁部30の上方に配置され、上壁部30に形成された窓部を介して真空チャンバ3内の画像を撮像可能である。
【0041】
図3に示すように、基板100には基板ラフアライメントマーク100a及び基板ファインアライメントマーク100bが形成されており、マスク101にはマスクラフアライメントマーク101a及びマスクファインマーク101bが形成されている。以下、基板ラフアライメントマーク100aを基板ラフマーク100aと呼び、基板ファインアライメントマーク100bを基板ファインマーク100bと呼び、両者をまとめて基板マークと呼ぶことがある。また、マスクラフアライメントマーク101aをマスクラフマーク101aと呼び、マスクファインアライメントマーク101bをマスクファインマーク101bと呼び、両者をまとめてマスクマークと呼ぶことがある。
【0042】
基板ラフマーク100aは、基板100の短辺中央部に形成されている。基板ファインマーク100bは、基板100の四隅に形成されている。マスクラフマーク101aは、基板ラフマーク100aに対応してマスク101の短辺中央部に形成されている。また、マスクファインマーク101bは基板ファインマーク100bに対応してマスク101の四隅に形成されている。
【0043】
第1計測ユニット7は、相対的に視野が広いが低い解像度を有する低倍率CCDカメラであり、基板100とマスク101との大まかな位置ずれを計測する。図3では、基板100の全体を1つの第1計測ユニット7でまとめて撮像する構成を示したが、これに限定はされず、各短辺に1つずつ、合計2つの第1計測ユニット7を設けてもよい。
【0044】
第2計測ユニット8は、対応する基板ファインマーク100bとマスクファインマーク101bの各組(ここでは4組)を撮像するように、4つ設けられている(第2計測ユニット8a~8d)。第2計測ユニット8は、相対的に視野が狭いが高い解像度を有する高倍率CCDカメラである。なお、第1計測ユニットおよび第2計測ユニット8の構成はこれに限定されない。例えば、ラフアライメントとファインアライメントそれぞれに用いるカメラの数や位置は、基板のサイズや求めるアライメント精度に応じて適宜決定できる。カメラの種類についても、CCDカメラに限らず、CMOSカメラやその他の撮像手段を使用してよい。
【0045】
本実施形態では、第1計測ユニット7の計測結果に基づいて基板100とマスク101との大まかな位置調整を行った後、第2計測ユニット8の計測結果に基づいて基板100とマスク101との精密な位置調整を行う。
【0046】
<制御装置>
制御装置14は、処理部141、記憶部142、入出力インタフェースとしてのI/O143、通信部144、表示部145及び入力部146を備える。処理部141は、CPU等のプロセッサであり、記憶部142に記憶されたプログラムを実行して成膜装置1を制御する。記憶部142は、ROM、RAM、HDD等の記憶デバイスであり、処理部141が実行するプログラムの他、各種の制御情報を記憶する。I/O143は、処理部141と外部デバイスとの間の信号を送受信する。
【0047】
通信部144は通信回線300aを介して上位装置300又は他の制御装置14、30
9、310等と通信を行う通信デバイスであり、処理部141は通信部144を介して上位装置300から情報を受信し、或いは、上位装置300へ情報を送信する。表示部145は、例えば液晶ディスプレイであり、各種情報を表示する。入力部146は、例えばキーボードやポインティングデバイスであり、ユーザからの各種入力を受け付ける。なお、制御装置14、309、310や上位装置300の全部又は一部がPLCやASIC、FPGAで構成されてもよい。
【0048】
<処理フロー>
実施形態1の処理フローについて説明する。本実施形態では、プレートユニット9と基板100の間でアライメントが行われ、アライメントのタイミングはラフアライメントの実施後である。
【0049】
図4のフローチャートは、真空チャンバ3への基板100の搬入が開始された時点で開始される。ステップS101において、フィンガに基板100を載置した搬送ロボット302aが真空チャンバ3に進入し、基板支持ユニット6の載置部62に基板100を載置する。図5(a)は、S101の時点の真空チャンバ3の断面図であり、説明に必要な構成部材のみ示している。
【0050】
ステップS102において、図5(b)に示すように、基板100とマスク101のラフアライメントが行われる。このとき、搬送ロボット302aが真空チャンバ3から退避した後、基板支持ユニット6のクランプ部63が下降し、載置部62との間で基板100を挟持する。そして、基板距離調整ユニット22が基板支持ユニット6を下降させて、基板100とマスク101の距離をラフアライメント距離S1とする。そして、第1計測ユニット7が基板ラフマーク100aとマスクラフマーク101aを撮像して画像を得る。制御装置14は、画像中の基板ラフマーク100aとマスクラフマーク101aの位置関係(距離や角度)が所定の範囲内かどうかを判定し、所定の範囲外であれば、基板位置調整ユニット20に基板100の面内位置を調整させる。そして、位置関係が所定の範囲内となったらラフアライメント完了とする。
【0051】
ステップS103において、本実施形態に特徴的な、プレートユニット9と基板100のアライメントが行われる。プレートユニット9には冷却プレート10と磁石プレート11が含まれているので、ステップS103では、冷却プレート10と基板100のアライメントが行われるとも言えるし、磁石プレート11と基板100のアライメントが行われるとも言える。また、ステップS103の時点では基板100とマスク101の大まかな位置合わせが済んでいることを踏まえると、本ステップでは、プレートユニット9とマスク101のアライメントが行われるとも言えるし、冷却プレート10とマスク101のアライメントが行われるとも言えるし、磁石プレート11とマスク101のアライメントが行われるとも言える。また、プレートユニット9が、基板100をマスク101に向かって押し付ける押圧部材としても機能し得ることを踏まえると、本ステップでは、押圧部材と基板100のアライメントが行われるとも言えるし、押圧部材とマスク101のアライメントが行われるとも言える。
【0052】
本ステップS103においては、図6(a)に示すように、まずプレート距離調整ユニット19が駆動してプレートユニット9を下降させて、プレートユニット9の下面と基板100との距離を所定のプレートアライメント距離S2まで近づける。そして、第1計測ユニット7がプレートユニット9と基板100を撮像して画像を得る。制御装置14は、画像中のプレートユニット9と基板100を解析し、両者が所定の位置関係の範囲内にあるかどうかを判断する。なお、画像解析の際には、プレートユニット9に設けておいたマークと、基板ラフマークの位置を比較してもよいし、プレートユニット9と基板100各々の形状に基づいて判断を行ってもよい。また、第1計測ユニット7ではなく、第2計測
ユニット8により撮像してもよい。位置関係が所定の範囲外であれば、プレート位置調整ユニット13にプレートユニット9の面内位置を調整させる。そして、位置関係が所定の範囲内となったらプレートユニット9のアライメント完了とする。
【0053】
ステップS104において、図6(b)に示すように、基板100とマスク101の高精度なファインアライメントが行われる。まず基板距離調整ユニット22は、基板支持ユニット6を下降させて、基板100とマスク101の距離をファインアライメント距離S3まで近づける。そして第2計測ユニット8が基板ファインマーク100bとマスクファインマーク101bを撮像して画像を得る。制御装置14は、画像中の基板ファインマーク100bとマスクファインマーク101bの位置関係(距離や角度)が所定の範囲内かどうかを判定し、所定の範囲外であれば、基板位置調整ユニット20に基板100の面内位置を調整させる。そして、位置関係が所定の範囲内となったらファインアライメント完了とする。
【0054】
ステップS105において、図7(a)に示すように、プレートユニット9の押圧により基板100とマスク101が密着される。まず、基板距離調整ユニット22が、基板支持ユニット6をさらに下降させて、基板100の下面とマスク101の上面が同じ高さに来るようにして、基板100とマスク101が密着させる。そして、クランプ部63が上昇して、基板100の端部をクランプ状態から解放状態に移行させる。そして、プレート距離調整ユニット19がプレートユニット9を下降させて、基板100をマスク101に向かって押し付ける。このとき、基板端部のクランプが解除されているため、基板100の撓みや波打ちは基板端部に向かって逃げていき、基板100の平面度が向上する。
【0055】
ステップS106において、図7(b)に示すように、成膜処理が実行される。このとき制御装置14は、成膜源である成膜ユニット4のヒータに電流を流して蒸着材料を加熱する。これにより成膜ユニット4から気化した蒸着材料が飛翔して、マスク101を介して基板100の被成膜面に付着する。これにより、マスクパターンに応じた薄膜が形成される。
【0056】
本フローにおいては、ファインアライメントが完了した後に、プレートユニット9が基板100を固定しているため、基板100とマスク101が精度良く位置合わせ済みであり、かつ、基板100とマスクの密着状態が安定する。また、プレートユニット9に含まれている冷却プレート10により基板100の温度上昇が抑制され、成膜の安定に寄与する。またプレートユニット9に含まれている磁石プレート11がマスクを引き寄せているので、基板100とマスク101の密着状態が安定する。さらに、ステップS103においてプレートユニット9と基板100が位置合わせ済みであるため、基板100をプレートユニット9で精度良く固定できるとともに、プレートユニット9の押し当て時の位置ずれ等を引き起こすことがない。
【0057】
[実施形態2]
続いて、本発明の実施形態2について説明する。実施形態1と同様の構成と処理については説明を省略する。
【0058】
本実施形態では、図8に示すように、真空チャンバ3に基板が搬入される前に、プレートユニット9とマスク101のアライメントが行われる。プレートユニット9には冷却プレート10と磁石プレート11が含まれているので、本実施形態では、冷却プレート10とマスク101のアライメントが行われるとも言えるし、磁石プレート11とマスク101のアライメントが行われるとも言える。また、プレートユニット9が、基板100をマスク101に向かって押し付ける押圧部材としても機能し得ることを踏まえると、本実施形態では、押圧部材とマスク101のアライメントが行われるとも言える。
【0059】
本実施形態では、基板100の搬入前にプレートユニット9とマスク101のアライメントが行われている。なお、基板100は、後続の工程において、ラフアライメントおよびファインアライメントによってマスク101に位置合わせされるので、結果としてプレートユニット9と、基板100及びマスク101の位置関係が好適な範囲内に収まることになる。
【0060】
[実施形態3]
続いて、本発明の実施形態3について説明する。上記各実施形態と同様の構成と処理については説明を省略する。
【0061】
本実施形態では、図9に示すように、基板100とマスク101のファインアライメントが行われる前に、プレートユニット9とマスク101のアライメントが行われる。すなわち、基板100がファインアライメント距離S3に到達した後、プレート距離調整ユニット19がプレートユニット9を下降させて、基板100に近づける。そして制御装置14が、第2計測ユニット8の撮像画像に基づいて、プレートユニット9と基板100の位置関係が所定の範囲内になるまで、プレート位置調整ユニット13を用いてプレートユニット9を面内位置調整する。
【0062】
なお、プレートユニット9には冷却プレート10と磁石プレート11が含まれているので、本実施形態では、冷却プレート10と基板100のアライメントが行われるとも言えるし、磁石プレート11と基板100のアライメントが行われるとも言える。また、プレートユニット9が、基板100をマスク101に向かって押し付ける押圧部材としても機能し得ることを踏まえると、本実施形態では、押圧部材と基板100のアライメントが行われるとも言える。また、基板100とマスク101がラフアライメント済みであることを考慮すると、本実施形態では、プレートユニット9(または、冷却プレート10、磁石プレート11、押圧部材のいずれか)と、マスク101とのアライメントが行われていると考えてもよい。
【0063】
[その他の実施形態]
本発明は、様々な変形例を取ることができる。例えば、基板100とマスク101のアライメントは、二段階アライメントではなく、一段階のアライメントであってもよい。一段階アライメントの場合、プレートユニット9の位置調整のタイミングは、プレートユニット9が基板100を押圧する前であれば、いつでも構わない。例えば、基板搬入前、基板搬入後、基板とマスクのアライメント前、基板とマスクのアライメント後、のいずれのタイミングであってもよい。
【0064】
また、上記実施形態では冷却プレート10と磁石プレート11が一体として変位したが、別々であってもよい。その場合、基板100に近い側のプレートと、基板100との間で位置調整することが好ましい。また、プレートユニット9が、冷却プレート10と磁石プレート11のいずれか一方のみ備える構成でもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、基板100またはマスク101に対して、プレートユニット9を移動させる構成としたが、これに限定されない。基板100またはマスク101を、プレートユニット9に対して移動させる構成であってもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、基板100とマスク101のアライメントに用いるカメラ(第1計測ユニット7または第2計測ユニット8)を用いてプレートユニット9を撮像したが、これに限定されない。例えば、真空チャンバ3の上部に、プレートユニット9のアライメント用のカメラを配置してもよい。また、エンコーダ等の計測機器によって、プレー
トユニット9の位置情報を取得してもよい。
【0067】
以上述べたように、本発明の各実施形態によれば、例えば搬送ロボット302aの精度の問題により基板100のチャンバ内での位置が一定とならない場合であっても、基板100及び/又はマスク101と、冷却プレート10及び/又は磁石プレート11との位置関係を好適な範囲に収めることができる。その結果、冷却プレート10及び/又は磁石プレート11によって、基板100をマスク101に密着させたときに、基板100とマスク101の位置関係がずれる可能性を低減できる。
【0068】
<電子デバイスの製造方法>
次に、本実施例の成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成を示し、有機EL表示装置の製造方法を例示する。
【0069】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。図10(a)は有機EL表示装置180の全体図、図10(b)は1画素の断面構造を表している。
【0070】
図10(a)に示すように、有機EL表示装置50の表示領域51には、発光素子を複数備える画素52がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域51において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施例に係る有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子52R、第2発光素子52G、第3発光素子52Bの組み合わせにより画素52が構成されている。画素52は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組み合わせで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0071】
図10(b)は、図10(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素52は、複数の発光素子からなり、各発光素子は、基板53上に、第1電極(陽極)54と、正孔輸送層55と、発光層56R、56G、56Bのいずれかと、電子輸送層57と、第2電極(陰極)58と、を有している。これらのうち、正孔輸送層55、発光層56R、56G、56B、電子輸送層57が有機層に当たる。また、本実施例では、発光層56Rは赤色を発する有機EL層、発光層56Gは緑色を発する有機EL層、発光層56Bは青色を発する有機EL層である。発光層56R、56G、56Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。
【0072】
また、第1電極54は、発光素子毎に分離して形成されている。正孔輸送層55と電子輸送層57と第2電極58は、複数の発光素子52R、52G、52Bで共通に形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極54と第2電極58とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極54間に絶縁層59が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層40が設けられている。
【0073】
図10(b)では正孔輸送層55や電子輸送層57は一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によっては、正孔ブロック層や電子ブロック層を備える複数の層で形成されてもよい。また、第1電極54と正孔輸送層55との間には第1電極54から正孔輸送層55への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、第2電極58と電子輸送層57の間にも電子注入層が形成することもできる。
【0074】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
【0075】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)及び第1電極54が形成された基板53を準備する。
【0076】
第1電極54が形成された基板53の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極54が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層59を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0077】
絶縁層59がパターニングされた基板53を第1の有機材料成膜装置に搬入し、基板支持台及び静電チャックにて基板を保持し、正孔輸送層55を、表示領域の第1電極54の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層55は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層55は表示領域51よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0078】
次に、正孔輸送層55までが形成された基板53を第2の有機材料成膜装置に搬入し、基板支持台及び静電チャックで保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板53の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層56Rを成膜する。
【0079】
発光層56Rの成膜と同様に、第3の有機材料成膜装置により緑色を発する発光層56Gを成膜し、さらに第4の有機材料成膜装置により青色を発する発光層156Bを成膜する。発光層56R、56G、56Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域51の全体に電子輸送層57を成膜する。電子輸送層57は、3色の発光層56R、56G、56Bに共通の層として形成される。
【0080】
電子輸送層57まで形成された基板を金属性蒸着材料成膜装置で移動させて第2電極58を成膜する。
【0081】
その後プラズマCVD装置に移動して保護層40を成膜して、有機EL表示装置50が完成する。
【0082】
絶縁層59がパターニングされた基板53を成膜装置に搬入してから保護層40の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本実施例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気又は不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【符号の説明】
【0083】
3:真空チャンバ、5:マスク台、6:基板支持ユニット、9:プレートユニット、10:冷却プレート、11:磁石プレート、13:プレート位置調整ユニット、19:プレート距離調整ユニット、20:基板位置調整ユニット、22:基板距離調整ユニット、62:載置部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10