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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018895
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】センサ付きボルト及び締結方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20250130BHJP
【FI】
G01L5/00 103D
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024020558
(22)【出願日】2024-02-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2023120895
(32)【優先日】2023-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520185546
【氏名又は名称】ユニタイトシステムズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000241485
【氏名又は名称】豊田通商株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 富美久
(72)【発明者】
【氏名】畑田 豊
(72)【発明者】
【氏名】宮田 勝治
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 俊行
(72)【発明者】
【氏名】小室 雅司
(72)【発明者】
【氏名】藤川 浩
(72)【発明者】
【氏名】西脇 正哲
(72)【発明者】
【氏名】野崎 貢
(72)【発明者】
【氏名】町田 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 章之
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA06
2F051AB09
(57)【要約】
【課題】強度を向上するセンサ付きボルト等を提供する。
【解決手段】対象物の締結に用いられるセンサ付きボルトは、ねじが形成されたねじ部分と、ねじが形成されていない非ねじ部分とを含むボルト軸と、前記ボルト軸に取り付けられ、前記ボルト軸の歪みを検出するセンサとを備え、前記ボルト軸は、前記非ねじ部分の外周面から窪み且つ前記センサを収容する凹部を、前記非ねじ部分の外周面に含み、前記凹部の位置での前記ボルト軸の断面積は、前記ねじ部分での前記ボルト軸の有効断面積以上の大きさを有する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の締結に用いられるセンサ付きボルトであって、
ねじが形成されたねじ部分と、ねじが形成されていない非ねじ部分とを含むボルト軸と、
前記ボルト軸に取り付けられ、前記ボルト軸の歪みを検出するセンサとを備え、
前記ボルト軸は、前記非ねじ部分の外周面から窪み且つ前記センサを収容する凹部を、前記非ねじ部分の外周面に含み、
前記凹部の位置での前記ボルト軸の断面積は、前記ねじ部分での前記ボルト軸の有効断面積以上の大きさを有する
センサ付きボルト。
【請求項2】
前記凹部の位置での前記ボルト軸の径は、前記ねじ部分での前記ボルト軸の有効径以上の大きさを有する
請求項1に記載のセンサ付きボルト。
【請求項3】
前記凹部の位置での前記ボルト軸の径は、前記凹部の底部と前記ボルト軸の中心軸との間の最小距離を半径とする直径である
請求項2に記載のセンサ付きボルト。
【請求項4】
前記凹部は、前記ボルト軸の中心軸を中心とする周方向に延びる円筒状の溝である
請求項1に記載のセンサ付きボルト。
【請求項5】
前記センサは、シート状の端子と、前記端子と接続される2つ以上のシート状のひずみゲージと、前記端子と接続される電線とを含み、
前記ボルト軸は、前記端子及び前記2つ以上のひずみゲージを収容する前記凹部としての第1凹部と、前記第1凹部から前記ボルト軸の軸方向に延び且つ前記電線を収容する第2凹部とを含み、
前記第2凹部の位置での前記ボルト軸の断面積は、前記ねじ部分での前記ボルト軸の有効断面積以上の大きさを有する
請求項1から4のいずれか一項に記載のセンサ付きボルト。
【請求項6】
前記第2凹部の位置での前記ボルト軸の径は、前記ねじ部分での前記ボルト軸の有効径以上の大きさを有する
請求項5に記載のセンサ付きボルト。
【請求項7】
前記第1凹部は、前記ボルト軸の中心軸を中心とする周方向に延び、
前記周方向での前記第2凹部の幅は、前記周方向及び前記ボルト軸の軸方向での前記第1凹部の幅及び長さよりも小さい
請求項5に記載のセンサ付きボルト。
【請求項8】
前記ボルト軸の端部に接続され且つ前記非ねじ部分と隣り合うボルト頭部をさらに備え、
前記ボルト頭部は、前記凹部に連通し且つ前記ボルト軸の軸方向に前記ボルト頭部を貫通する穴を含み、
前記センサが含む電線が、前記穴を通って外部に引き出されている
請求項1に記載のセンサ付きボルト。
【請求項9】
前記ねじ部分に螺合するナットと前記対象物との間に介在して前記ボルト軸に配置される座金をさらに備え、
前記座金は、前記ボルト軸から前記座金の周縁に延びる第3凹部を、前記ナット又は前記対象物に対向する表面に含み、
前記センサが含む電線が、前記第3凹部を通って外部に引き出されている
請求項1に記載のセンサ付きボルト。
【請求項10】
前記センサと接続される無線通信器をさらに備え、
前記無線通信器は、
前記センサに電圧を印加する電池と、
前記無線通信器と無線通信接続された機器に、前記センサの検出結果を出力するアンテナとを含む
請求項1に記載のセンサ付きボルト。
【請求項11】
請求項10に記載のセンサ付きボルトを用いて対象物を締結する締結方法であって、
それぞれが前記センサ付きボルトである1つ以上の第2ボルトであって、前記凹部の形成を含む前記センサを取り付けるための加工を受けた加工部分をそれぞれ含む1つ以上の第2ボルトに弾性域での強度試験を実施することと、
前記加工部分及び前記センサを含まず且つ前記加工部分を除いて前記第2ボルトと同じ構造、形状及びサイズを有する複数の第1ボルトと、前記1つ以上の第2ボルトとを、前記対象物の複数の締結穴にセットすることと、
前記複数の第1ボルト及び前記1つ以上の第2ボルトを、所定のトルクで締め付けることと、
締結後の前記1つ以上の第2ボルトに1つ以上の前記無線通信器を取り付けることと、
前記1つ以上の無線通信器と、前記センサの検出結果を出力する処理装置との無線通信接続を確立することと、
前記処理装置を介して、締結後の前記1つ以上の第2ボルトの締結力を監視することを含む
締結方法。
【請求項12】
前記強度試験を実施することは、前記第2ボルトに軸方向に沿う所定の引張力を与えたときに前記センサから得られる伸縮量に基づいて、少なくとも軸方向の引張力に対する強度について、前記第2ボルトが前記第1ボルトと同等の強度を満たすか否かを判定することを含み、
前記対象物の複数の締結穴へセットすることは、前記第1ボルトと同等の強度を満たす前記第2ボルトを使用することを含む
請求項11に記載の締結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサ付きボルト、及び、センサ付きボルトを用いた締結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部材の接合にボルトが用いられる場合がある。例えば、特許文献1は、ボルト接合が用いられた建造物の応力を計測するシステムを開示する。建造物の構造体に利用され、雄ねじ体及び雌ねじ体を有するねじ部材に、ねじ部材に生じるひずみを検知するセンサ部が設けられる。センサ部は、有線又は無線で情報収集装置に接続され、情報収集装置は、センサ部の計測情報を蓄積し、計測情報に基づいて建造物の異常判断を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6418457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ねじ部材は、センサ部を配置するために、ねじ部材の頭部内及び軸部内に形成された軸方向に延びる収容空間を有するため、その強度が低下し得る。所望の強度を得るためには、ねじ部材のサイズアップが必要になるため、コストが上昇する。また、このねじ部材を、既設の対象物の締結部分に適用しようとした場合、既設のねじよりも強度が低いため、既設のねじをこのねじ部材に置き換えると対象物の締結強度の低下を来す。対象物の締結強度を維持するためには、既設のねじをそのままの状態とした上で、このねじ部材を追加することが必要になると想定されるが、通常、既設の対象物において、新たにこのねじ部材を追加することは困難であると考えられる。本開示は、強度を向上するセンサ付きボルト及び当該センサ付きボルトを用いた締結方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るセンサ付きボルトは、対象物の締結に用いられるセンサ付きボルトであって、ねじが形成されたねじ部分と、ねじが形成されていない非ねじ部分とを含むボルト軸と、前記ボルト軸に取り付けられ、前記ボルト軸の歪みを検出するセンサとを備え、前記ボルト軸は、前記非ねじ部分の外周面から窪み且つ前記センサを収容する凹部を、前記非ねじ部分の外周面に含み、前記凹部の位置での前記ボルト軸の断面積は、前記ねじ部分での前記ボルト軸の有効断面積以上の大きさを有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、例示的な実施の形態に係るボルトセットにより締結される対象物の一例を示す斜視図である。
図2A図2Aは、図1の第1ボルトの構成の一例を示す側面図である。
図2B図2Bは、図1の第1ボルトの構成の一例を示す平面図である。
図3図3は、図2A及び図2Bの第1ボルトが製造者から出荷される際に収納されるケースの一例を示す斜視図である。
図4A図4Aは、図1の第2ボルトの構成の一例を示す断面側面図である。
図4B図4Bは、図1の第2ボルトの構成の一例を示す平面図である。
図5図5は、無線通信器が取り付けられた状態の図4Aの第2ボルトの構成の一例を示す側面図である。
図6図6は、1つのボルトセットを用いた締結方法の流れの一例を示すフローチャートである。
図7図7は、2つの部材の接合前の状態の一例を示す側面図である。
図8図8は、図7のフランジにおける第1ボルト及び第2ボルトの配置状態の一例を示す平面図である。
図9図9は、1つのボルトセットを用いた締結方法の変形例の流れを示すフローチャートである。
図10A図10Aは、変形例1に係る第2ボルトの構成の一例を示す側面図である。
図10B図10Bは、変形例1に係る第2ボルトの構成の一例を示す側面図である。
図11図11は、図10Bの第2ボルトの雄ねじ及びその周辺部分の拡大図である。
図12図12は、変形例2に係る第1ボルトの構成の一例を示す側面図である。
図13図13は、変形例2に係る第1ボルトによる締結状態の一例を示す側面図である。
図14A図14Aは、変形例2に係る第2ボルトの構成の一例を示す側面図である。
図14B図14Bは、変形例2に係る第2ボルトの構成の一例を示す側面図である。
図15図15は、変形例2に係る第2ボルトによる締結状態の一例を示す側面図である。
図16図16は、1つのボルトセットを用いた変形例3に係る締結方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下において、本開示の例示的な実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。添付の図面における各図は、模式的な図であり、必ずしも厳密に図示されたものでない。各図において、実質的に同一の構成要素に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。本明細書及び請求項では、「装置」とは、1つの装置を意味し得るだけでなく、複数の装置を含むシステムも意味し得る。
【0008】
図1は、例示的な実施の形態に係るボルトセット1により締結される対象物Tの一例を示す斜視図である。図1では、部材T1及びT2の本体T1a及びT2aの内側が見えるように、本体T1a及びT2aの一部が切り欠かれて描かれている。図1に示すように、対象物Tは、ボルト接合される2つの部材T1及びT2を含む。対象物Tは、ボルト接合される部分を含めば、いかなるものでもよい。限定されないが、本実施の形態では、対象物Tは、建造物又は構造物の柱、梁又は壁等の構造体である。部材T1及びT2は、構造体を形成する部材である。図1では、部材T1及びT2は、円筒状の柱の一部分である。第1部材T1は、円筒状の本体T1aと、本体T1aの端部のフランジT1bとを含む。第2部材T2は、円筒状の本体T2aと、本体T2aの端部のフランジT2bとを含む。限定されないが、本実施の形態では、フランジT1bは、本体T1aから径方向内側に延びる内フランジであり、フランジT2bは、本体T2aから径方向内側に延びる内フランジである。フランジT1bの形状及び寸法は、フランジT2bと同じである。
【0009】
ボルトセット1は、複数の第1ボルト100と、1つ以上の第2ボルト200とを含む。限定されないが、本実施の形態では、ボルトセット1は、複数の第2ボルト200を含み、第2ボルト200の数量は、第1ボルト100の数量よりも少ない。図1では、複数の第1ボルト100の一部の図示が省略され、複数の第2ボルト200の一部の図示が省略されている。
【0010】
1つのボルトセット1がボルト接合の対象とする部分は、1つの接合部分、1つの接合部分の一部、1つの部材、1つの構造体、及び、1つの対象物T全体のいずれであってもよい。限定されないが、本実施の形態では、1つのボルトセット1がボルト接合の対象とする部分は、1つの接合部分である。1つのボルトセット1は、接合部分として、フランジT1bとフランジT2bとを接合する。
【0011】
円環状のフランジT1b及びT2bにはそれぞれ、円形の内周縁に沿って配列された複数の締結穴T1c及びT2cが形成されている。複数の締結穴T1cの数量と複数の締結穴T2cの数量とは同じであり、複数の締結穴T1cのピッチと複数の締結穴T2cのピッチとは同じである。図1では、複数の締結穴T1cの一部の図示が省略され、複数の締結穴T2cの一部の図示が省略されている。
【0012】
部材T1及びT2は、フランジT1b及びT2bを重ね合わせるように配置され、本体T1a及びT2aの円筒軸方向に、各締結穴T1cが各締結穴T2cと一列に並ぶように位置合わせされる。
【0013】
複数の第1ボルト100及び複数の第2ボルト200はそれぞれ、締結穴T1c及びT2cのペアに通され、ナット300を取り付けられ締め付けられて、フランジT1b及びT2bを締結する。フランジT1b及びT2bの円形の内周縁に沿う方向で、第2ボルト200同士の間に1つ以上の第1ボルト100が位置するように、複数の第1ボルト100及び複数の第2ボルト200は配置される。
【0014】
図2A及び図2Bはそれぞれ、図1の第1ボルト100の構成の一例を示す側面図及び平面図である。限定されないが、本実施の形態では、図2A及び図2Bに示すように、第1ボルト100は、磁性を有する金属製の六角ボルトである。第1ボルト100は、軸部101と、軸部101の一方の端部に配置された頭部102とを一体に含む。第1ボルト100は、軸部101と頭部102とを含むものであればよい。軸部101は、円柱形状を有し、頭部102から直線状に延びる。頭部102は、六角柱の形状を有し、軸部101よりも径方向に大きい。軸部101の軸方向の長さLは、呼び長さとも称され、軸部101の直径DAは、軸部101の外径でもあり、軸径とも称される。頭部102の六角形状の表面102aの対辺間の距離DBは、二面幅とも称され、軸部101の軸方向の頭部102の厚さHは、頭高とも称される。表面102aは、軸部101と反対側の頭部102の表面である。
【0015】
軸部101は、外周面に雄ねじ101aを含む。本実施の形態では、雄ねじ101aは、軸部101の軸方向の全体にわたって外周面に形成されているが、軸部101の軸方向の一部にわたって外周面に形成されてもよい。雄ねじ101aの外径は、軸径DAでもあり、呼び径とも称される。
【0016】
頭部102は、第1ボルト100の製造者の識別記号を示す表示IDと、第1ボルト100の機械的性質を示す表示とを含む。限定されないが、本実施の形態では、機械的性質を示す表示は、第1ボルト100の強度区分を示す表示Sと、第1ボルト100の材料を示す表示Mとを含む。例えば、表示ID、S及びMは、頭部102の表面102aに配置されてもよい。
【0017】
図3は、図2A及び図2Bの第1ボルト100が製造者から出荷される際に収納されるケース400の一例を示す斜視図である。図3に示すように、ケース400は、その外表面に第1ボルト100のロット番号を示す表示LNを含む。ケース400には、同じロット番号の複数の第1ボルト100が収納される。限定されないが、本実施の形態では、ロット番号は、生産ラインを表す記号PLと、生産年月日を表す記号YMDと、第1ボルト100に施された表面処理を表す記号STとを含む。
【0018】
限定されないが、本実施の形態では、1つのボルトセット1に含まれる複数の第1ボルト100は、形状及びサイズのうちの1つ以上で互いに同じであるという第1条件を満たす。本実施の形態では、第1条件の全ての要素で互いに同じである。第1ボルト100の形状は、軸部101と頭部102とを組み合わせて形成される形状である。第1ボルト100のサイズは、軸部101の軸径DA、軸部101の呼び長さL、頭部102の二面幅DB、及び頭部102の頭高Hを含む。さらに、1つのボルトセット1に含まれる複数の第1ボルト100は、雄ねじ101aの軸方向の長さであるねじ長で互いに同じであるという第2条件を満たす。
【0019】
ここで、本明細書及び請求項において、「2つのことが互いに『同じ』である」とは、「2つのことが互いに完全に同一である場合」と、「2つのことが互いに同一であるとみなせる実質的に同一である場合」とを含む。例えば、2つのことの差異が公差又は製造誤差に起因する場合は、2つのことが同じである。例えば、2つのことが同一の範疇内又は同一の範囲内に収まる場合は、2つのことが同じである。
【0020】
1つのボルトセット1に含まれる複数の第1ボルト100は、ねじの呼び、ボルト規格、雄ねじ101aのねじ山のピッチ、ボルトの強度区分、及びボルトの材料のうちの1つ以上で互いに同じであるという第3条件を満たす。本実施の形態では、1つのボルトセット1に含まれる複数の第1ボルト100は、第3条件の全ての要素で互いに同じである。ねじの呼びは、ねじの規格を表す記号と、当該記号に続く呼び径を表す数字とを組み合わせて表される。ねじの規格は、メートルねじ、インチねじ及び管用ねじを含む。メートルねじの規格は、記号「M」で表される。インチねじの規格は、記号「UNC」又は「UNF」で表される。管用ねじの規格は、記号「R」、「Rc」、「Rp」、「G(A)」、「G(B)」又は「G」で表される。呼び径は、メートル法でのミリメートル等の単位、又は、ヤードポンド法でのインチ等の単位で表される。例えば、呼び径32mmのメートルねじの呼びは、「M32」と表される。ボルト規格の例は、JIS規格のような国家規格、ボルトに関連する団体若しくは協会等により設定された規格、及び、ボルトの製造元によって設定された規格等を含み得る。
【0021】
1つのボルトセット1に含まれる複数の第1ボルト100は、製造元、型式、品番、及び製造ロットのうちの1つ以上で互いに同じであるという第4条件を満たす。本実施の形態では、1つのボルトセット1に含まれる複数の第1ボルト100は、第4条件の全ての要素で互いに同じである。ボルトの型式、ボルトの品番及びボルトの製造ロットは、製造元により設定され得る。
【0022】
図4A及び図4Bはそれぞれ、図1の第2ボルト200の構成の一例を示す断面側面図及び平面図である。図4A及び図4Bに示すように、第2ボルト200は、ボルト部分210とセンサ220とを含む。限定されないが、本実施の形態では、ボルト部分210は、磁性を有する金属製の六角ボルトである。センサ220は、ボルト部分210に取り付けられ、ボルト部分210の歪みを検出する。
【0023】
ボルト部分210は、軸部211と、軸部211の端部に配置された頭部212とを一体に含む。軸部211は、円柱形状を有し、頭部212から直線状に延びる。頭部212は、六角柱の形状を有し、軸部211よりも径方向に大きい。軸部211は、外周面に雄ねじ211aを含む。本実施の形態では、雄ねじ211aは、軸部211の軸方向の全体にわたって外周面に形成されているが、軸部211の軸方向の一部にわたって外周面に形成されてもよい。
【0024】
同じボルトセット1に含まれる複数の第2ボルト200のボルト部分210と複数の第1ボルト100とは、形状及びサイズのうちの1つ以上で互いに同じであるという第5条件を満たす。本実施の形態では、第5条件の全ての要素で互いに同じである。第5条件は、第1条件に類似する。つまり、同じボルトセット1に含まれる複数の第2ボルト200のボルト部分210と複数の第1ボルト100とは、軸部と頭部とを組み合わせて形成される形状、軸部の軸径DA、軸部の呼び長さL、頭部の二面幅DB、及び頭部の頭高Hで互いに同じである。
【0025】
さらに、同じボルトセット1に含まれる複数の第2ボルト200のボルト部分210と複数の第1ボルト100とは、雄ねじのねじ長で互いに同じであるという第6条件を満たしてもよく、本実施の形態では、第6条件を満たす。第6条件は、第2条件に類似する。
【0026】
さらに、同じボルトセット1に含まれる複数の第2ボルト200のボルト部分210と複数の第1ボルト100とは、ねじの呼び、ボルト規格、雄ねじ101aのねじ山のピッチ、ボルトの強度区分、及びボルトの材料のうちの1つ以上で互いに同じであるという第7条件を満たしてもよく、本実施の形態では、第7条件の全ての要素で互いに同じである。第7条件は、第3条件に類似する。
【0027】
同じボルトセット1に含まれる複数の第2ボルト200のボルト部分210と複数の第1ボルト100とは、製造元、型式、品番、及び製造ロットのうちの1つ以上で互いに同じであるという第8条件を満たしてもよく、本実施の形態では、第8条件の全ての要素で互いに同じである。第8条件は、第4条件に類似する。
【0028】
よって、本実施の形態では、ボルト部分210は、ボルト部分210と同じボルトセット1に含まれる第1ボルト100を収納するケース400から取り出された第1ボルト100である。このため、ボルト部分210は、第1ボルト100と同じ構造、機能、強度及び特性を有する。頭部212の表面212aには、表示ID、S及びMが配置され得る。表面212aは、軸部211と反対側の頭部212の表面である。
【0029】
ボルト部分210は、センサ220をボルト部分210に取り付けるための加工を受けた1つ以上の加工部分213を含む。限定されないが、本実施の形態では、加工は、機械加工である。さらに、ボルト部分210は、2つの加工部分213を含む。2つの加工部分213は、軸部211の中心軸である軸心211bに関して互いに反対側の位置に配置される。
【0030】
各加工部分213は、軸部211に形成された凹部213aと、頭部212に形成された穴213bとを含む。凹部213aは、センサ220が含むセンサ素子221を収めることができる形状を有し、本実施の形態では、溝状の形状を有する。加工部分213は、ボルト部分210の強度への影響を抑えるような形状を有する。凹部213aは、センサ素子221が軸部211から径方向外側に突出しないようなサイズであって、センサ素子221を少なくとも収容できるサイズを有する。
【0031】
各凹部213aは、センサ素子221が収まるように、頭部212と軸部211との接続部分から軸部211の先端に向かって、軸部211の外周面上を軸部211の軸方向に延びる。各凹部213aは、軸部211の外周面から窪み、具体的には、雄ねじ211aに対して窪む。各凹部213aは、軸部211の軸方向の長さの一部にわたって延びる。各凹部213aは、頭部212の表面212b上にまで延びてもよい。この場合、各凹部213aは、軸部211の径方向に、軸部211から表面212bの外縁まで延びてもよい。
【0032】
各穴213bは、軸部211の軸方向に延びて頭部212を貫通する。穴213bはそれぞれ、頭部212と軸部211との接続部分で凹部213aと連通するように配置される。
【0033】
例えば、1つの加工部分213の凹部213a及び穴213bは、頭部212から軸部211に向かってドリルにより切削する加工をボルト部分210に施すことによって一緒に形成され得る。よって、ボルト部分210は、ケース400から取り出された第1ボルト100を加工することによって、生成され得る。
【0034】
第2ボルト200は2つのセンサ220を含む。各センサ220は、ボルト部分210の軸部211の外周面に埋め込まれるセンサ素子221と、センサ素子221から延びる電線222とを含む。電線222の先端には、コネクタ222aが取り付けられている。センサ素子221は、凹部213a内に配置される。センサ素子221は、凹部213a内に収まり、軸部211の軸方向に延びる。電線222は、軸部211から表面212aに向かって穴213b内に通されて、表面212aで穴213bの外部に延びる。センサ素子221は、電線222と接続された機器に、検出結果を示す信号を出力する。
【0035】
センサ素子221は、軸部211の歪みを検出する。センサ素子221は、軸部211の歪みの方向及び歪み量のうちのいずれか又は両方を検出する。センサ素子221の例は、ひずみゲージ、圧電素子等を含み得る。このようなセンサ素子221は、軸部211の伸縮、捩じれ又はこれらの両方を検出できる。軸部211の伸縮量に基づき、ボルト部分210が締め付けられているトルクである締結トルク、軸部211に軸方向に作用する引張力である軸力、又はこれらの両方の検出が可能である。軸部211の捩じれ量及び捩じれ方向に基づき、軸部211の捩じれが軸部211の軸力に与える影響を考慮した軸部211の軸力の検出が可能である。例えば、軸部211の捩じれが与える影響をキャンセルした軸部211の軸力の検出が可能である。軸部211の伸縮量、捩じれ量及び捩じれ方向に基づき、軸部211に生じる応力の検出が可能である。
【0036】
本実施の形態では、軸部211の軸方向に延びる溝状の凹部213aにセンサ素子221が配置されるが、これに限定されない。例えば、凹部213aは、軸部211の軸方向に延びる部分の代わりに又は当該部分に加えて、軸部211の周方向に延びる部分を含んでもよい。軸部211の周方向に延びる部分は、溝状の形状を有してもよい。これにより、センサ素子221は、軸部211の周方向に延び、軸部211の周方向の捩じれを効果的に検出できる。
【0037】
図5は、無線通信器500が取り付けられた状態の図4Aの第2ボルト200の構成の一例を示す側面図である。図1及び図5に示すように、ボルトセット1は、1つ以上の無線通信器500をさらに含む。1つ以上の無線通信器500は、第2ボルト200のうちの1つ以上に着脱可能に取り付けられ、当該第2ボルト200のセンサ220と接続される。限定されないが、本実施の形態では、ボルトセット1は、第2ボルト200と同じ数量の複数の無線通信器500を含み、各第2ボルト200に無線通信器500が取り付けられる。
【0038】
各無線通信器500は、部材T1及びT2から離れた位置に配置された処理装置2と無線通信を介して接続される。各無線通信器500は、センサ220から検出結果を示す信号を受信し、当該検出結果を示す信号を処理装置2に送信する。処理装置2の例は、電子回路基板、電子制御ユニット、マイクロコンピュータ、ノートブックパーソナルコンピュータ、デスクトップパーソナルコンピュータ、ワークステーション、スマートデバイス、その他の電子機器、及び、その他の端末装置等を含み得る。スマートデバイスの例は、スマートフォン、スマートウォッチ、及び、タブレット端末等を含み得る。処理装置2は、処理回路を含む。処理回路は、プロセッサ及びメモリを含むコンピュータシステムを含んでもよい。
【0039】
無線通信器500は、筐体501と、取付部502と、アンテナ503と、回路504と、電池505と、コネクタ506とを含む。取付部502は、筐体501をボルト部分210に取り付ける。取付部502は、磁力、接着、貼付け、吸着及びクランプの1つ以上の組み合わせを用いて取り付ける構造を有してもよい。限定されないが、本実施の形態では、取付部502は、磁力を用いて取り付ける構造を有し、永久磁石502aを含む。取付部502は、電磁石を含んでもよい。
【0040】
電池505は、筐体501内に収容され、無線通信器500の各構成要素に電力を供給する。電池505は、蓄積電力を放電する一次電池、又は、電力の充電及び放電が可能である二次電池を含む。
【0041】
2つのコネクタ506が配置され、2つのコネクタ506は、2つのセンサ220の電線222のコネクタ222aと接続される。各コネクタ506は、電線222のコネクタ222aと接続されることで、センサ220と無線通信器500との接続を確立する。1つ又は3つ以上のコネクタ506が、センサ220の1つ又は3つ以上のコネクタ222aと接続されるように配置されてもよい。
【0042】
回路504は、2つのセンサ220から検出結果を示す信号を受信し、受信した検出結果に基づく信号を、アンテナ503を介して外部へ送信する。回路504は、受信信号を増幅する回路、受信信号を変換する回路、及び無線通信のための通信回路のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0043】
アンテナ503は、無線通信器500と無線通信接続が確立された機器に対して、信号を送受信する。
【0044】
無線通信器500は、取付部502をボルト部分210の頭部212の表面212aに接触させるように、頭部212に取り付けられる。さらに、各コネクタ506が、センサ220の各電線222のコネクタ222aと接続されることで、無線通信器500は、2つのセンサ220と接続される。
【0045】
図6を参照しつつ、1つのボルトセット1を用いた締結方法の一例を説明する。図6は、1つのボルトセット1を用いた締結方法の流れの一例を示すフローチャートである。以下において、2つの部材T1及びT2のフランジT1b及びT2bを、1つのボルトセット1を用いて接合する例を説明する。
【0046】
ステップS101では、図7に示すように、作業者は、接合対象の部材T1及びT2を接合するために、フランジT1b及びT2bを重ね合わせ且つ複数の締結穴T1cと複数の締結穴T2cとを位置合わせした状態で、部材T1及びT2を配置する。これにより、部材T1及びT2の状態が、接合されるべき状態にセットされる。図7は、2つの部材T1及びT2の接合前の状態の一例を示す側面図である。
【0047】
次いで、ステップS102では、作業者は、複数の第1ボルト100及び複数の第2ボルト200をそれぞれ、位置合わせされた締結穴T1c及びT2cのペアに挿入する。このとき、フランジT1b及びT2bの円形の内周縁に沿う方向で、第2ボルト200同士の間に複数の第1ボルト100が位置するように、複数の第1ボルト100及び複数の第2ボルト200は配置される。
【0048】
図7では、第2ボルト200の数量に対する第1ボルト100の数量の割合は9である。図8は、図7のフランジT1b及びT2bにおける第1ボルト100及び第2ボルト200の配置状態の一例を示す平面図である。例えば、図8では、第2ボルト200の数量が6であり、第1ボルト100の数量が54である。フランジT1bの円形の内周縁に沿う方向で、第2ボルト200同士の間に配置される第1ボルト100の数量は、9である。この例のように、第2ボルト200同士の間に配置される第1ボルト100の数量が均等となるように第2ボルト200を配置することが好ましい。図7は、当該図を見やすくするために、第1ボルト100及び第2ボルト200の数量、並びに、締結穴T1c及びT2cの数量が、図8よりも少なく描かれている。
【0049】
次いで、ステップS103では、作業者は、第1ボルト100及び第2ボルト200のそれぞれに、ナット300を取り付け、各ナット300を仮締め付けする。つまり、作業者は、第1ボルト100及び第2ボルト200を一次締結する。一次締結では、各ナット300は、第1ボルト100及び第2ボルト200に予め設定される規定トルクよりも小さいトルクで締め付けられる。規定トルクは、適正な締結のために第1ボルト100及び第2ボルト200を締め付けるトルクである。本実施の形態では、ナット300が規定トルクで締め付けられるが、第1ボルト100及び第2ボルト200自体が規定トルクで締め付けられてもよい。本実施の形態では、第1ボルト100及び第2ボルト200は、同じ構造、機能、強度及び特性を有するため、第1ボルト100及び第2ボルト200の規定トルクは同じである。これにより、部材T1及びT2の状態は、接合されるべき状態に維持される。
【0050】
限定されないが、本実施の形態では、第1ボルト100及び第2ボルト200に使用されるナット300の全ては、第1ボルト100の第1条件から第4条件と同様の条件を満たし、各条件に含まれる全ての要素で互いに同じである。第1ボルト100及び第2ボルト200の規定トルクが同じであることは、ナット300が第1ボルト100と同様の強度及び特性を有することにも起因する。
【0051】
次いで、ステップS104では、作業者は、各第2ボルト200のボルト部分210の頭部212に、無線通信器500を取り付ける。図5に示すように、取付部502が永久磁石502aを含むため、作業者は、無線通信器500を、磁性を有する頭部212の表面212aに載置するだけで、無線通信器500を頭部212に設置できる。さらに、作業者は、第2ボルト200の2つの電線222のコネクタ222aを無線通信器500の2つのコネクタ506に接続する。さらに、作業者は、無線通信器500の電源をON状態にする。
【0052】
次いで、ステップS105では、作業者は、処理装置2を操作して、処理装置2と各無線通信器500との無線通信接続を確立する。図7に示すように、本実施の形態では、処理装置2は、送受信器3と有線通信、無線通信又はこれらの組み合わせを介して接続されている。処理装置2は、送受信器3と各無線通信器500との無線通信接続を確立する。送受信器3は、通信機器であり、さらに、ワイヤレス電力伝送機能を有してもよい。図7の例では、送受信器3は、部材T1の本体T1aの内側、又は、部材T2の本体T2aの内側に配置され、有線通信を介して処理装置2と接続される。各無線通信器500は、処理装置2との情報の送受信を行うことができ、処理装置2又は送受信器3からの電力の受給を行うことができてもよい。
【0053】
処理装置2と送受信器3との間の通信は、いかなる有線通信又は無線通信であってもよく、いかなる有線通信及び無線通信の組み合わせであってもよい。無線通信器500と送受信器3との間の無線通信は、いかなる無線通信であってもよい。
【0054】
例えば、無線通信の例は、WiFi(Wireless Fidelity)等の無線LAN(ローカル
エリアネットワーク:Local Area Network)、モバイル通信網等を利用する無線WAN(広域ネットワーク:Wide Area Network)、衛星通信、ブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)及びZigBee(登録商標)等の近距離無線通信、又は、これらの2つ以上の組み合わせを含み得る。モバイル通信網は、第4世代移動通信システム及び第5世代移動通信システム等を用いるものであってもよい。本実施の形態では、無線通信器500と送受信器3との間の無線通信は、近距離無線通信である。
【0055】
次いで、ステップS106では、作業者は、処理装置2の出力結果を確認しつつ、第1ボルト100及び第2ボルト200のナット300の全てを、規定トルクで締め付ける。つまり、作業者は、第1ボルト100及び第2ボルト200を二次締結する。処理装置2は、各センサ220から受信する信号を用いて、各第2ボルト200の締結状態を表す締結状態情報を出力する。第2ボルト200の締結状態情報の例は、第2ボルト200のボルト部分210の歪み量、伸び量、軸力、締結トルク、又は、これらの2つ以上の組み合わせを含む。
【0056】
ボルト部分210の歪み量及び伸び量は、軸部211の歪み量及び伸び量であってもよい。ボルト部分210の軸力は、軸部211に作用する引張力であってもよい。ボルト部分210の締結トルクは、ナット300が締め付けられたトルクであってもよい。締結トルクは、ボルト部分210の歪み量、伸び量及び軸力の1つ以上を用いて推定されてもよい。例えば、作業者は、処理装置2によって出力されるボルト部分210の締結トルクを確認することで、ナット300が規定トルクで締め付けられているか否かを確認できる。
【0057】
本実施の形態では、処理装置2は、締結状態情報として、第2ボルト200の締結力を少なくとも出力する。第2ボルト200の締結力は、第2ボルト200が締結対象物であるフランジT1b及びT2bを押さえ込む力であり、ナット300と共にフランジT1b及びT2bを挟み込む力を表す。第2ボルト200の締結力は、ボルト部分210の軸力及び締結トルクの一方又は両方を含む。本明細書及び請求項では、「ボルトの締結力」は、「ボルトの締結トルク」、「ボルトの軸力」、又はこれらの両方を含む。
【0058】
処理装置2は、ディスプレイ等を用いた表示機能を有し、出力結果を表示してもよい。センサ220の検出結果からボルト部分210の歪み量、伸び量、軸力又は締結トルクへの変換は、無線通信器500の回路504及び処理装置2のいずれによって行われてもよい。例えば、ナット300がトルクレンチ又はインパクトレンチによって規定トルクで締め付けられても、締め付け後の締結力等の締結状態を確認することができない。作業者は、処理装置2の出力結果により、第2ボルト200の締結状態を確認できる。
【0059】
次いで、ステップS107では、第1ボルト100及び第2ボルト200のナット300の全ての締め付けを完了後、作業者は、処理装置2の出力結果により、全ての第2ボルト200の締結力を確認する。締結力が予め設定された目標締結力よりも小さい第2ボルト200がある場合(ステップS107でYes)、ステップS108に進み、締結力が目標締結力よりも小さい第2ボルト200がない場合(ステップS107でNo)、作業者は、フランジT1b及びT2bの接合作業を終了する。目標締結力は、第2ボルト200に予め設定され且つ適正な締結などの目標の締結に要求される締結力である。目標締結力は、目標軸力、目標締結トルク、又は、これらの両方を含む。目標締結トルクは、規定トルクと同じであってもよいが、異なっていてもよい。
【0060】
ステップS108では、作業者は、処理装置2の出力結果を確認しつつ、第1ボルト100及び第2ボルト200の少なくとも一部のナット300を、規定トルクで再度締め付ける。本実施の形態では、再締め付けの対象は、第1ボルト100及び第2ボルト200の全てである。例えば、第1ボルト100及び第2ボルト200の一部を再度締め付ける場合、再締め付けの対象は、締結力が目標締結力よりも小さい第2ボルト200と、当該第2ボルト200の周囲の第1ボルト100とを含んでもよい。
【0061】
次いで、作業者は、ステップS107に戻り、処理装置2の出力結果により、全ての第2ボルト200の締結力を確認し、ステップS107以降を繰り返す。
【0062】
ステップS101からS108によって、作業者が、第2ボルト200の締結力が目標締結力を満たすように確認しつつ、第1ボルト100及び第2ボルト200を締結するため、第1ボルト100及び第2ボルト200の全てが、規定の範囲内の締結力で締結される。さらに、第1ボルト100と第2ボルト200のボルト部分210とは、構造、機能、強度及び特性の1つ以上で同じであるため、フランジT1b及びT2bの全体が均等な締結力で締結され得る。ステップS103とステップS104との順序は、上記例に限定されず、例えば、ステップS104の後にステップS103が実施されてもよい。
【0063】
ステップS107において、締結力が予め設定された目標範囲内にあるか否かが判断されてもよい。締結力が目標範囲外にある場合(ステップS107でYes)、ステップS108において、作業者は、締結力が目標範囲の上限を超える第2ボルト200のナット300と、当該第2ボルト200の周囲の第1ボルト100のナット300とを緩めてもよい。さらに、作業者は、緩めたナット300と、締結力が目標範囲の下限を下回る第2ボルト200のナット300と、当該第2ボルト200の周囲の第1ボルト100のナット300とを少なくとも、規定トルクで再度締め付けてもよい。又は、作業者は、第1ボルト100及び第2ボルト200の全てのナット300を、規定トルクで再度締め付けてもよい。これにより、第1ボルト100及び第2ボルト200の締結力の均等化が可能である。目標範囲の下限は、目標締結力であってもよい。
【0064】
図9を参照しつつ、1つのボルトセット1を用いた締結方法の変形例を説明する。図9は、1つのボルトセット1を用いた締結方法の変形例の流れを示すフローチャートである。以下において、2つの部材T1及びT2のフランジT1b及びT2bを、1つのボルトセット1を用いて接合する例を説明する。
【0065】
ステップS201からS206はそれぞれ、図6のステップS101からS106と同じである。
【0066】
ステップS207では、第1ボルト100及び第2ボルト200のナット300の全ての締め付けを完了後、作業者は、処理装置2の出力結果により、全ての第2ボルト200の締結力を確認する。締結力が目標締結力よりも小さい第2ボルト200がある場合(ステップS207でYes)、ステップS208に進み、締結力が目標締結力よりも小さい第2ボルト200がない場合(ステップS207でNo)、作業者は、フランジT1b及びT2bの接合作業を終了する。
【0067】
ステップS208では、作業者は、第1ボルト100及び第2ボルト200の再締め付けトルクを設定する指令を、処理装置2に入力する。再締め付けトルクは、第1ボルト100及び第2ボルト200を再度締め付ける場合に、第1ボルト100及び第2ボルト200を締め付けるトルクである。処理装置2は、締結力が目標締結力以上である第2ボルト200の締結力を用いて、再締め付けトルクを決定する。処理装置2は、再締め付けトルクの決定のために、目標締結力以上である第2ボルト200の締結力の統計値を用いる。統計値の例は、目標締結力以上である第2ボルト200の締結力の平均値、最大値、中央値及び最頻値等を含み得る。処理装置2は、算出した統計値を実現するためにナット300を締め付けるのに要するトルクを算出し、算出したトルクを再締め付けトルクに決定する。例えば、締結力の平均値は、目標締結力以上である第2ボルト200の締結力の全ての平均値であってもよく、目標締結力以上である第2ボルト200の締結力から抽出された一部の平均値であってもよい。
【0068】
例えば、目標締結力以上である第2ボルト200の締結力うち、予め設定された締結力の上限値を超える締結力は、統計値の算出対象から除外されてもよい。処理装置2は、作業者により処理装置2に入力される指令、処理装置2の制御プログラム、又はこれらの両方に従って、除外対象の締結力を決定してもよい。
【0069】
次いで、ステップS209では、作業者は、処理装置2の出力結果を確認しつつ、第1ボルト100及び第2ボルト200の少なくとも一部のナット300を、再締め付けトルクで再度締め付ける。本実施の形態では、再締め付けの対象は、第1ボルト100及び第2ボルト200の全てである。例えば、第1ボルト100及び第2ボルト200の一部を再度締め付ける場合、再締め付けの対象は、締結力が目標締結力よりも小さい第2ボルト200と、当該第2ボルト200の周囲の第1ボルト100とであってもよい。
【0070】
次いで、作業者は、ステップS207に戻り、処理装置2の出力結果により、全ての第2ボルト200の締結力を確認し、ステップS207以降を繰り返す。
【0071】
ステップS201からS209によって、目標締結力を満たす第2ボルト200の締結状態に対応した再締め付けトルクで、第1ボルト100及び第2ボルト200が再締結されるため、第1ボルト100及び第2ボルト200の全てが、規定の範囲内の締結力で締結される。さらに、第1ボルト100と第2ボルト200のボルト部分210とは、構造、機能、強度及び特性の1つ以上で同じであるため、フランジT1b及びT2bの全体が均等な力で締結され得る。
【0072】
ステップS207において、締結力が予め設定された目標範囲内にあるか否かが判断されてもよい。締結力が目標範囲外にある場合(ステップS207でYes)、ステップS209において、作業者は、締結力が目標範囲の上限を超える第2ボルト200のナット300と、当該第2ボルト200の周囲の第1ボルト100のナット300とを緩めてもよい。作業者は、緩めたナット300と、締結力が目標範囲の下限を下回る第2ボルト200のナット300と、当該第2ボルト200の周囲の第1ボルト100のナット300とを少なくとも、再締め付けトルクで再度締め付けてもよい。又は、作業者は、第1ボルト100及び第2ボルト200の全てのナット300を、再締め付けトルクで再度締め付けてもよい。これにより、第1ボルト100及び第2ボルト200の締結力の均等化が可能である。目標範囲の下限は、目標締結力であってもよい。
【0073】
[変形例1]
本開示のボルトセット1には、第1ボルト100と、変形例1に係る第2ボルト200Aとの適用も可能である。第2ボルト200Aは、実施の形態に係る第2ボルト200と同様に、第1ボルト100を加工して得られるが、加工部分の構造及びセンサの構造に関して、実施の形態に係る第2ボルト200と異なる。以下、本変形例に係る第2ボルト200Aについて、実施の形態と異なる点を中心に説明し、実施の形態と同様の点の説明を適宜省略する。
【0074】
図10A及び図10Bは、変形例1に係る第2ボルト200Aの構成の一例を示す側面図である。図10Bは、図10Aに対して、ボルト部分210Aの軸部211Aの中心軸211Adを中心に90°回転した方向から第2ボルト200Aを視た図である。図11は、図10Bの第2ボルト200Aの雄ねじ211Aa及びその周辺部分の拡大図である。図10A図10B及び図11に示すように、第2ボルト200Aは、ボルト部分210Aとセンサ220Aとを含む。ボルト部分210Aは、実施の形態と同様に、六角ボルトである。ボルト部分210Aは、軸部211Aと頭部212Aとを含む。軸部211Aは、頭部212Aから直線状に延びる。
【0075】
軸部211Aは、ねじが施されていない非ねじ部211Abと、非ねじ部211Abよりも先端側に位置する雄ねじ211Aaとを含む。つまり、ボルト部分210Aは、軸部211Aの外周面の一部に雄ねじ211Aaを含む半ねじボルトである。本変形例では、雄ねじ211Aaは、軸部211Aの外周面をねじ切りすることによって形成されたものである。このため、雄ねじ211Aaのねじ山の径D2は、非ねじ部211Abの径D1と同じ又は径D1よりも僅かに小さく、つまり同等である。雄ねじ211Aaの谷の径D3及び雄ねじ211Aaの有効径D4は、非ねじ部211Abの径D1よりも小さい。有効径D4は、径D2と径D3との間の中間の径、つまり径D2及び径D3の平均値の径である。
【0076】
ボルト部分210Aは、センサ220Aをボルト部分210Aに取り付けるための加工部分213Aを含む。ボルト部分210Aは、加工部分213Aを除くと、第1ボルト100と同じ構造、形状及び寸法を有する。本変形例では、第1ボルト100も、非ねじ部と雄ねじとを含む半ねじボルトである。加工部分213Aは、非ねじ部211Abに形成された凹部213Aa及び213Abと、頭部212Aに形成された穴213Acとを含む。穴213Acは、軸部211Aの軸方向に延びて頭部212Aを貫通する。穴213Acは、頭部212Aと軸部211Aとの接続部分で第2凹部213Abと連通する。
【0077】
第1凹部213Aaは、非ねじ部211Abの外周面211Aba上で、軸部211Aの中心軸である軸心211Adを中心とする周方向に延びる。第1凹部213Aaは、非ねじ部211Abの外周面211Abaよりも窪む。限定されないが、本変形例では、第1凹部213Aaは、周方向に連続する円筒状の凹部である。なお、第1凹部213Aaは、周方向に途切れていてもよい。
【0078】
第1凹部213Aaは、軸部211Aの軸方向に、センサ220Aのセンサ素子221Aa及び221Abが収まるような幅B1を有する。幅B1は、軸部211Aの軸方向の幅である。これ故、第1凹部213Aaは、軸方向長さがB1である円筒状の形状を有する。限定されないが、本変形例では、第1凹部213Aaの幅B1及び深さd1は、周方向に一定である。深さd1は、軸部211Aの径方向での非ねじ部211Abの外周面211Abaからの深さである。これ故、第1凹部213Aaは、円筒溝である。
【0079】
第1凹部213Aaでの軸部211Aの断面積は、有効径D4の円の面積以上の大きさを有する。軸部211Aの当該断面積は、軸部211Aの軸心211Adに垂直であり且つ第1凹部213Aaを横断する軸部211Aの断面の面積である。有効径D4の円の面積は、雄ねじ211Aaでの軸部211Aの実質的な断面積であり、有効断面積とも呼ばれる。これ故、第1凹部213Aaでの軸部211Aの強度は、雄ねじ211Aaでの軸部211Aの強度以上の大きさを有し得る。上記強度の例は、引張強度、せん断強度、曲げ強度及び捩じり強度等を含み得る。なお、限定されないが、本変形例では、軸部211Aの軸方向での第1凹部213Aaの全体にわたって、第1凹部213Aaでの軸部211Aの断面積は、有効径D4の円の面積以上の大きさを有する。
【0080】
限定されないが、本変形例では、第1凹部213Aaの深さd1は、非ねじ部211Abの径D1と有効径D4との差分(D1-D4)以下の大きさを有し、好ましくは、差分(D1-D4)の1/2以下の大きさを有する。例えば、第1凹部213Aaの底部での軸部211Aの径D1aは、有効径D4以上の大きさを有する。例えば、径D1aは、軸心211Adと第1凹部213Aaの底部との間の最小距離を半径とする直径であってもよい。これ故、第1凹部213Aaでの軸部211Aは、雄ねじ211Aaでの軸部211Aと同等以上に、力及び衝撃等に対して優れた断面特性を有し得る。断面特性は、断面性能とも呼ばれる。断面特性の例は、断面一次モーメント、断面二次モーメント、断面係数及び断面二次半径等を含み得る。なお、限定されないが、本変形例では、第1凹部213Aaでの軸部211Aの断面の全体にわたって、軸部211Aの径D1aは、有効径D4以上の大きさを有する。限定されないが、本変形例では、軸部211Aの軸方向での第1凹部213Aaの全体にわたって、軸部211Aの径D1aは、有効径D4以上の大きさを有する。
【0081】
第2凹部213Abは、非ねじ部211Abの外周面211Aba上で、第1凹部213Aaから頭部212Aと軸部211Aとの接続部分にまで延びる。限定されないが、本変形例では、第2凹部213Abは、軸部211Aの軸方向に延び、軸部211Aの軸方向に穴213Acと一列に並ぶ。
【0082】
第2凹部213Abは、第2凹部213Abの軸方向の長さに対して大幅に小さい幅B2を有する。幅B2は、軸部211Aの軸心211Adを中心とする周方向の幅であり、第1凹部213Aaの軸方向の幅B1及び周方向の幅よりも大幅に小さい。本変形例では、第2凹部213Abの深さd2は、第1凹部213Aaの深さd1と同じであるが、深さd1よりも大きくてもよく、深さd1よりも小さくてもよい。深さd2は、軸部211Aの径方向での非ねじ部211Abの外周面211Abaからの深さである。第2凹部213Abは、第2凹部213Abに沿って延びる後述する電線222Aを収容できる幅B2及び深さd2を有すればよい。例えば、第2凹部213Abは、細溝である。
【0083】
第2凹部213Abの位置での軸部211Aの断面積は、有効径D4の円の面積以上の大きさを有する。軸部211Aの当該断面積は、軸部211Aの軸心211Adに垂直であり且つ第2凹部213Abを横断する軸部211Aの断面の面積である。これ故、第2凹部213Abが形成された部分での軸部211Aの強度は、雄ねじ211Aaでの軸部211Aの強度以上の大きさを有し得る。なお、限定されないが、本変形例では、軸部211Aの軸方向での第2凹部213Abの全体にわたって、第2凹部213Abの位置での軸部211Aの断面積は、有効径D4の円の面積以上の大きさを有する。
【0084】
さらに、本変形例では、第2凹部213Abの深さd2が第1凹部213Aaの深さd1と同じであるため、第2凹部213Abの底部での軸部211Aの径は、有効径D4以上の大きさを有する。例えば、上記の径は、軸部211Aの軸心211Adと第2凹部213Abの底部との間の最小距離を半径とする直径であってもよい。これ故、第2凹部213Abの位置での軸部211Aは、雄ねじ211Aaでの軸部211Aと同等以上に、力及び衝撃等に対して優れた断面特性を有し得る。なお、限定されないが、本変形例では、軸心211Adを中心とする周方向での第2凹部213Abの底部の全体にわたって、第2凹部213Abの底部での軸部211Aの径は、有効径D4以上の大きさを有する。限定されないが、本変形例では、軸部211Aの軸方向での第2凹部213Abの全体にわたって、第2凹部213Abの底部での軸部211Aの径は、有効径D4以上の大きさを有する。
【0085】
上述のようなボルト部分210Aは、加工部分213Aを含むにも関わらず、第1ボルト100と同等の強度を有することでき、第1ボルト100と同等の断面特性を有することもできる。なお、第1ボルト100の強度及び断面特性は、第1ボルト100の雄ねじ部分の強度及び断面特性に依存する。
【0086】
センサ220Aは、センサ素子221Aa及び221Abと、電線222Aと、中継端子223Aと、被膜224Aとを含む。限定されないが、本変形例では、センサ素子221Aa及び221Abは、シート状のひずみゲージと、端子とを含み、中継端子223Aは、シート状の箔型端子である。中継端子223Aは、センサ素子221Aa及び221Abの端子と、電線222Aとを電気的に接続する。
【0087】
センサ素子221Aa及び221Abと、中継端子223Aとは、第1凹部213Aa内に配置される。例えば、センサ素子221Aa及び221Abと、中継端子223Aとは、第1凹部213Aaの底部に貼り付けられる。センサ素子221Aa及び221Ab、並びに、中継端子223Aは、深さd1より小さい厚さを有するため、第1凹部213Aa内に収まり径方向に突出しない。中継端子223Aは、センサ素子221Aa及び221Abよりも第2凹部213Abに近い位置に配置され、例えば、軸部211Aの軸方向に第2凹部213Abと一列に並ぶように配置される。センサ素子221Aa及び221Abは、軸部211Aの軸心211Adに関して反対側の位置に配置され、例えば、互いから軸心211Adを中心に180°回転した位置に配置される。センサ素子221Aa及び221Abは、軸心211Adを挟んで対向する位置に配置される。センサ素子221Aa及び221Abそれぞれの端子から延びるリード線が中継端子223Aと接続される。
【0088】
電線222Aは、一方の端部で中継端子223Aと接続され、第2凹部213Abに沿って第2凹部213Ab内に収められる。さらに、電線222Aは、穴213Acを通って頭部212Aの外に延びる。電線222Aの他方の先端には、コネクタ222aが取り付けられる。
【0089】
被膜224Aは、凹部213Aa及び213Abに施され、センサ素子221Aa及び221Abと、電線222Aと、中継端子223Aとを被覆する。被膜224Aは、電気的な絶縁性を有する材料で形成される。被膜224Aは、樹脂材料のように、可撓な状態と、硬化による固化状態とをとることができる材料で形成されるのが好ましい。樹脂材料の例は、エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂等を含み得る。
【0090】
コネクタ222aは、ボルト部分210Aに取り付けられた図5に示すような無線通信器500と接続される。無線通信器500は、センサ素子221Aa及び221Abに電圧を印加することで、センサ素子221Aa及び221Abの伸縮による電気抵抗値の変化を測定し、測定結果を処理装置2に送信する。処理装置2は、受信した測定結果に基づき、センサ素子221Aa及び221Abそれぞれの伸縮方向及び伸縮量を算出し、センサ素子221Aa及び221Abの伸縮方向及び伸縮量の差異に基づき、軸部211Aの歪み方向及び歪み量、並びに、軸部211Aに作用する力の方向及び大きさを算出する。これにより、軸部211Aに作用する軸力及びせん断力、並びに、軸部211の捩じれ方向及び捩じれ量等の検出が可能である。
【0091】
なお、ボルト部分210Aの強度を確認する方法として、図5に示す無線通信器500を接続した状態のボルト部分210Aに対して、強度計測用の設備によって、ボルト部分210Aの軸方向に沿う所定の引張力を与えることで、所定の強度を満たしているかどうかの判定を行うことができる。すなわち、ボルト部分210Aの軸方向に所定の引張力が与えられている状態下で、図5に示す処理装置2は、センサ素子221Aa及び221Abの電気抵抗値の変化に基づいて、軸部211Aの伸縮量(この状態下では、伸長量)を算出する。処理装置2は、さらに、その算出された伸縮量が、必要な強度に対応付けて予め保存されている所定の範囲内にあることを判定することで、軸部211Aの軸方向の引張力に対する強度について、第1ボルト100と同等の強度を満たすことが判定できる。
【0092】
[変形例2]
本開示のボルトセット1には、変形例2に係る第1ボルト100Bと、変形例2に係る第2ボルト200Bとの適用も可能である。第1ボルト100Bは、頭部を有さず、軸部の両端に雄ねじを含む両ねじボルトである。第2ボルト200Bは、第1ボルト100Bを加工して得られる。第2ボルト200Bは、加工部分の構造に関して、変形例1に係る第2ボルト200Aと異なる。以下、本変形例に係る第1ボルト100B及び第2ボルト200Bについて、実施の形態及び変形例1と異なる点を中心に説明し、実施の形態又は変形例1と同様の点の説明を適宜省略する。
【0093】
図12は、変形例2に係る第1ボルト100Bの構成の一例を示す側面図である。図12に示すように、第1ボルト100Bは、直線状に延びる軸部101Bを含む。軸部101Bは,外周面上の両端の雄ねじ101Ba及び101Bbと、雄ねじ101Ba及び101Bbの間の非ねじ部101Bcとを含む。本変形例では、雄ねじ101Baの軸方向の長さは、雄ねじ101Bbの軸方向の長さよりも短く、雄ねじ101Ba及び101Bbは、軸部101Bの外周面をねじ切りすることによって形成されたものである。雄ねじ101Ba及び101Bbのねじ山の径は、非ねじ部101Bcの径と同等である。雄ねじ101Ba及び101Bbの谷の径、並びに雄ねじ101Ba及び101Bbの有効径は、非ねじ部101Bcの径よりも小さい。
【0094】
図13は、変形例2に係る第1ボルト100Bによる締結状態の一例を示す側面図である。図13に示すように、第1ボルト100BによりフランジT1b及びT2bを締結する場合、第1ボルト100Bは、フランジT1bの締結穴T1cとフランジT2bの締結穴T2cとに通される。さらに、両端の雄ねじ101Ba及び101Bbにそれぞれ、座金310及びナット300が取り付けられ、ナット300が締め付けられる。限定されないが、本変形例では、雄ねじ101Ba側では、雄ねじ101Baの根元に至るまでナット300が締め付けられる。座金310は、円環板状の形状を有し、座金310の中心の孔に第1ボルト100Bが通される。座金310は、ナット300とフランジT1bとの間と、ナット300とフランジT2bとの間とに介在して配置される。
【0095】
図14A及び図14Bは、変形例2に係る第2ボルト200Bの構成の一例を示す側面図である。図14Bは、図14Aに対して、ボルト部分210Bの軸部211Bの中心軸211Bdを中心に90°回転した方向から第2ボルト200Bを視た図である。図14A及び図14Bに示すように、第2ボルト200Bは、ボルト部分210Bとセンサ220Bとを含む。ボルト部分210Bは、センサ220Bをボルト部分210Bに取り付けるための加工部分213Bを含む。ボルト部分210Bは、加工部分213Bを除くと、第1ボルト100Bと同じ構造、形状及び寸法を有する。
【0096】
ボルト部分210Bは、直線状に延びる軸部211Bを含む。軸部211Bは,外周面上の両端の雄ねじ211Ba及び211Bbと、雄ねじ211Ba及び211Bbの間の非ねじ部211Bcとを含む。雄ねじ211Baの軸方向の長さは、雄ねじ211Bbの軸方向の長さよりも短い。雄ねじ211Ba及び211Bbのねじ山の径は、非ねじ部211Bcの径と同等である。雄ねじ211Ba及び211Bbの谷の径、並びに雄ねじ211Ba及び211Bbの有効径は、非ねじ部211Bcの径よりも小さい。
【0097】
加工部分213Bは、非ねじ部211Bcに形成された第1凹部213Baと、第1凹部213Baから雄ねじ211Baに向かって延びる第2凹部213Bbとを含む。
【0098】
第1凹部213Baは、変形例1の第1凹部213Aaと同様の構造を有する。第1凹部213Baは、非ねじ部211Bcの外周面211Bca上で、軸部211Bの軸心211Bdを中心とする周方向に延びる。第1凹部213Baは、円筒状の形状を有する。
【0099】
第1凹部213Baでの軸部211Bの断面積は、雄ねじ211Ba及び211Bbの有効径の円の面積以上の大きさを有する。これ故、第1凹部213Baでの軸部211Bの強度は、雄ねじ211Ba及び211Bbそれぞれでの軸部211Aの強度以上の大きさを有し得る。なお、限定されないが、本変形例では、軸部211Bの軸方向での第1凹部213Baの全体にわたって、第1凹部213Baでの軸部211Bの断面積は、雄ねじ211Ba及び211Bbの有効径の円の面積以上の大きさを有する。
【0100】
第1凹部213Baの底部での軸部211Bの径は、雄ねじ211Ba及び211Bbの有効径以上の大きさを有する。これ故、第1凹部213Baでの軸部211Bは、雄ねじ211Ba及び211Bbそれぞれでの軸部211Bと同等以上に、力及び衝撃に対して優れた断面特性を有し得る。なお、限定されないが、本変形例では、第1凹部213Baでの軸部211Bの断面の全体にわたって、第1凹部213Baの底部での軸部211Bの径は、雄ねじ211Ba及び211Bbの有効径以上の大きさを有する。限定されないが、本変形例では、軸部211Bの軸方向での第1凹部213Baの全体にわたって、第1凹部213Baの底部での軸部211Bの径は、雄ねじ211Ba及び211Bbの有効径以上の大きさを有する。
【0101】
第2凹部213Bbは、第1凹部213Baから雄ねじ211Baに向かって、軸部211Bの軸方向に延びる。限定されないが、本変形例では、第2凹部213Bbは、非ねじ部211Bcのみに形成され、雄ねじ211Baに至らない。このため、第2凹部213Bbは、変形例1の第2凹部213Abと同様の構造を有する。
【0102】
第2凹部213Bbは、第2凹部213Bbの軸方向の長さに対して大幅に小さい幅を有する。第2凹部213Bbの幅は、軸心211Bdを中心とする周方向の幅であり、第1凹部213Baの軸方向の長さ及び周方向の幅よりも大幅に小さい。本変形例では、第2凹部213Bbの深さは、第1凹部213Baの深さ以下である。凹部213Ba及び213Bbの深さは、軸部211Bの径方向での非ねじ部211Bcの外周面211Bcaからの深さである。第2凹部213Bbは、第2凹部213Bbに沿って延びる電線222Aを収容できる幅及び深さを有すればよい。例えば、第2凹部213Bbは、細溝である。
【0103】
第2凹部213Bbの位置での軸部211Bの断面積は、雄ねじ211Ba及び211Bbの有効径の円の面積以上の大きさを有する。軸部211Bの当該断面積は、軸部211Bの軸心211Bdに垂直であり且つ第2凹部213Bbを横断する軸部211Bの断面の面積である。これ故、第2凹部213Bbが形成された部分での軸部211Bの強度は、雄ねじ211Ba及び211Bbそれぞれでの軸部211Bの強度以上の大きさを有し得る。なお、限定されないが、本変形例では、軸部211Bの軸方向での第2凹部213Bbの全体にわたって、第2凹部213Bbの位置での軸部211Bの断面積は、雄ねじ211Ba及び211Bbの有効径の円の面積以上の大きさを有する。
【0104】
第2凹部213Bbの底部での軸部211Bの径は、雄ねじ211Ba及び211Bbの有効径以上の大きさを有する。これ故、第2凹部213Bbでの軸部211Bは、雄ねじ211Ba及び211Bbそれぞれでの軸部211Bと同等以上に、力及び衝撃に対して優れた断面特性を有し得る。なお、限定されないが、本変形例では、軸心211Bdを中心とする周方向での第2凹部213Bbの底部の全体にわたって、第2凹部213Bbの底部での軸部211Bの径は、雄ねじ211Ba及び211Bbの有効径以上の大きさを有する。限定されないが、本変形例では、軸部211Bの軸方向での第2凹部213Bbの全体にわたって、第2凹部213Bbの底部での軸部211Bの径は、雄ねじ211Ba及び211Bbの有効径以上の大きさを有する。
【0105】
上述のようなボルト部分210Bは、加工部分213Bを含むにも関わらず、第1ボルト100Bと同等の強度を有することできる。
【0106】
センサ220Bは、変形例1のセンサ220Aと同様に、センサ素子221Aa及び221Abと、電線222Aと、中継端子223Aと、被膜224Aとを含む。センサ素子221Aa及び221Abと、中継端子223Aとは、第1凹部213Ba内に配置される。中継端子223Aは、センサ素子221Aa及び221Abよりも第2凹部213Bbに近い位置に配置され、例えば、軸部211Bの軸方向に第2凹部213Bbと一列に並ぶように配置される。センサ素子221Aa及び221Abは、軸部211Bの軸心211Bdに関して反対側の位置に配置され、例えば、互いから軸心211Bdを中心に180°回転した位置に配置される。センサ素子221Aa及び221Abは、軸心211Bdを挟んで対向する位置に配置される。
【0107】
電線222Aは、一方の端部で中継端子223Aと接続され、第2凹部213Bbに沿って第2凹部213Bb内に収められる。被膜224Aは、凹部213Ba及び213Bbに施され、センサ素子221Aa及び221Abと、電線222Aと、中継端子223Aとを被覆する。
【0108】
図15は、変形例2に係る第2ボルト200Bによる締結状態の一例を示す側面図である。図15に示すように、第2ボルト200BによりフランジT1b及びT2bを締結する場合、ボルト部分210Bは、フランジT1bの締結穴T1cとフランジT2bの締結穴T2cとに通される。さらに、雄ねじ211Baに座金310Bとナット300とが取り付けられ、雄ねじ211Bbに座金310とナット300とが取り付けられ、ナット300が締め付けられる。限定されないが、本変形例では、雄ねじ211Ba側では、雄ねじ211Baの根元に至るまでナット300が締め付けられる。座金310Bは、ナット300とフランジT1bとの間に介在して配置され、座金310は、ナット300とフランジT2bとの間とに介在して配置される。
【0109】
雄ねじ211Baに配置される座金310Bは、その中心の孔310Baから外周縁に延びる凹部310Bbを含む。凹部310Bbは、フランジT1bに対向する座金310Bの表面310Bcと、ナット300に対向する座金310Bの表面310Bdとのいずれに形成されてもよい。限定されないが、本変形例では、雄ねじ211Baの根元に至るまでナット300が締め付けられた状態において、第2凹部213Bbは、凹部310Bbの位置にまで軸部211Bの軸方向に延び、凹部310Bbと連通することができる。
【0110】
凹部310Bbは、座金310Bの径方向に延びる。凹部310Bbは、凹部310Bbに沿って延びる電線222Aを収容できる幅及び深さを有する。例えば、凹部310Bbは、凹部213Ba又は213Bbと同等以上の深さを有してもよく、第2凹部213Bbと同等以上の幅を有してもよい。例えば、凹部310Bbは、細溝である。
【0111】
座金310Bは、軸心211Bdを中心とする周方向で、凹部310Bbの位置と第2凹部213Bbの位置とが合うように配置される。第2凹部213Bbから延びるセンサ220Bの電線222Aは、座金310Bが軸部211Bに取り付けられる際に、座金310Bの凹部310Bbに通され、座金310Bから径方向外側へ引き出される。これにより、電線222Aは、ナット300の締め付けによる変形又は損傷等の影響を受けない。限定されないが、本変形例では、凹部310Bbは、フランジT1bに対向する表面310Bcに位置する。
【0112】
座金310Bへの凹部310Bbの形成は、ボルト部分210B及びナット300の強度、ボルト部分210Bの断面特性、ボルト部分210B及びナット300による締結の保持等へ影響を与えずに、電線222Aを引き出す構造を第2ボルト200Bに設けることを可能にする。凹部310Bbを通った電線222Aの引き出しは、ナット300よりも軸部211Bの先端側の位置で電線222Aを引き出す場合よりも、物との接触による電線222Aの損傷を防ぐことができる。
【0113】
なお、座金310Bを実施の形態の第2ボルト200及び変形例1の第2ボルト200Aに用いてもよい。この場合、頭部212及び211Aに形成された穴213b及び213Acは省略されてもよい。
【0114】
[変形例3]
実施の形態及び変形例1-2のいずれかに係る第1ボルト及び第2ボルトを含むボルトセットを用いた締結方法の変形例を説明する。図16は、1つのボルトセット1を用いた変形例3に係る締結方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【0115】
ステップS301では、ボルトセットを対象物の締結に使用する前に、第2ボルト200、200A又は200Bに強度試験を実施する。本変形例では、ボルトの弾性域での強度試験が実施される。これにより、第2ボルトは、試験により塑性変形を起こさず、試験の前後で変わらない第2ボルトの断面特性及び強度を維持することができる。強度試験の例は、引張試験、せん断試験、ボルトの軸力-トルク試験、及び、トルク係数試験等を含み得る。例えば、引張圧縮試験機などの設備が、強度試験に用いられる。引張圧縮試験機により、弾性域での第2ボルトの引張力と伸び量との関係が得られる。さらに、強度試験中に、センサ220、220A又は220Bから検出結果を取得してもよい。これにより、引張圧縮試験機の試験結果とセンサの検出結果との関係を得ることができる。このような関係は、後述する締結完了後の第2ボルトの締結力の監視に利用できる。例えば、センサの検出結果を引張圧縮試験機の試験結果に換算した結果を利用できる。さらに、センサの検出結果が正常であるか否かを判定できる。
【0116】
上述のような試験をした結果、第2ボルトの引張力と伸び量と歪みとの関係などの、第2ボルトに作用する力と第2ボルトの弾性変形量との関係が得られる。このように得られる関係から、締結された第1ボルト及び第2ボルトにおいて所望の軸力を実現するための締め付けトルクを算出することが可能である。さらに、第2ボルトが第1ボルトと同等の強度を満たすか否かを判定できる。
【0117】
なお、ステップS301において、第1ボルト100又は100Bにも第2ボルト200、200A又は200Bと同じ強度試験を実施してもよい。
【0118】
ステップS302及びS303はそれぞれ、実施の形態の図6に示すステップS101及びS102と同様である。
【0119】
次いで、ステップS304では、作業者は、第1ボルト及び第2ボルトのそれぞれに、ナットを取り付け、各ナットを所定のトルクで締め付ける。所定のトルクは、規定トルクであるが、ステップS301で算出した締め付けトルクが規定トルクよりも大きい場合には当該締め付けトルクであってもよい。
【0120】
次いで、ステップS305及びS306はそれぞれ、実施の形態の図6に示すステップS104及びS105と同様である。
【0121】
次いで、ステップS307では、作業者は、処理装置2の出力結果を参照することで、締結完了後の第2ボルトの締結力を監視する。例えば、締結力として、第2ボルトの軸力が監視されてもよい。
【0122】
作業者は、締結力が目標締結力よりも小さい第2ボルトがある場合(ステップS308でYes)、ステップS309に進み、締結力が目標締結力よりも小さい第2ボルトがない場合(ステップS308でNo)、ステップS307に戻る。
【0123】
ステップS309では、作業者は、第1ボルト及び第2ボルトの少なくとも一部のナットを、所定トルクで締め付ける。本変形例では、締め付けの対象は、第1ボルト及び第2ボルトの全てである。例えば、締め付けの対象は、締結力が目標締結力よりも小さい第2ボルトと、当該第2ボルトの周囲の第1ボルトとを含む一部のボルトであってもよい。なお、締結力が目標締結力よりも小さい第2ボルトが、締結に未使用の新たな第2ボルトと交換されてもよい。第1ボルト及び第2ボルトの全てが、締結に未使用の新たな第1ボルト及び第2ボルトと交換されてもよい。ステップS309の実行後、ステップS308に戻り、締結力の判定が行われる。なお、ステップS309の実行後、ステップS307に戻ってもよい。
【0124】
変形例3によると、少なくとも第2ボルトの200、200A又は200Bの強度及び特性等についての実際に検出されたデータを活用した締結及び締結後の管理が可能になる。
【0125】
[その他の実施の形態]
以上、本開示の例示的な実施の形態及び変形例について説明したが、本開示は、上記実施の形態及び変形例に限定されない。すなわち、本開示の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。例えば、各種変形を実施の形態又は変形例に施したもの、及び、異なる実施の形態及び変形例における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0126】
例えば、実施の形態及び変形例では、第1ボルト100、及び、第2ボルト200、200Aのボルト部分210、210Aは、六角ボルトであるが、これに限定されない。第1ボルト100及びボルト部分210、210Aは、ねじ部を含む軸部を含めばよい。例えば、第1ボルト100及びボルト部分210、210Aの頭部は、円形等の六角形以外のいかなる平面視形状を有してもよく、プラスドライバ又はマイナスドライバ等が係合する穴を含んでもよい。例えば、第1ボルト100及びボルト部分210、210Aは、頭部を含まず、両端にねじ部を含む両ねじボルト、又は全ねじボルトであってもよい。
【0127】
実施の形態では、センサ220のセンサ素子221は、第2ボルト200のボルト部分210の軸部211の凹部213a内に配置されるが、これに限定されない。例えば、センサ素子221は、軸部211の外周面に配置されてもよく、軸部211の内部に配置されてもよい。センサ220の電線222は、ボルト部分210の頭部212を貫通する穴213b内に配置されるが、これに限定されない。例えば、電線222は、頭部212の表面212bに延びる凹部213aを通って配置されてもよく、軸部211内を通って配置されてもよい。
【0128】
変形例1及び2では、センサ220A、220Bは、2つのセンサ素子221Aa及び221Abを含むが、これに限定されない。センサ220A、220Bは、3つ以上のセンサ素子を含んでもよい。この場合、3つ以上のセンサ素子の2つ以上が、軸部211A、211Bの周方向に並んで配置されてもよく、軸部211A、211Bの軸方向に並んで配置されてもよい。
【0129】
実施の形態では、フランジT1b及びT2bの周方向での第2ボルト200間の間隙それぞれに配置される第1ボルト100の数量は、同じであるが、これに限定されない。第2ボルト200間の複数の間隙の1つ以上における第1ボルト100の数量が、他の間隙における第1ボルト100の数量と異なっていてもよい。複数の第1ボルト100及び複数の第2ボルトの間隙も、均等であってもよく、不均等であってもよい。
【0130】
本開示の技術の各態様例は、以下のように挙げられる。本開示の第1態様に係るセンサ付きボルトは、対象物の締結に用いられるセンサ付きボルトであって、ねじが形成されたねじ部分と、ねじが形成されていない非ねじ部分とを含むボルト軸と、前記ボルト軸に取り付けられ、前記ボルト軸の歪みを検出するセンサとを備え、前記ボルト軸は、前記非ねじ部分の外周面から窪み且つ前記センサを収容する凹部を、前記非ねじ部分の外周面に含み、前記凹部の位置での前記ボルト軸の断面積は、前記ねじ部分での前記ボルト軸の有効断面積以上の大きさを有する。
【0131】
上記態様によると、凹部の位置でのボルト軸の断面積が、ねじ部分でのボルト軸の有効断面積以上の大きさを有するため、凹部の位置でのボルト軸の強度は、ねじ部分でのボルト軸の強度以上である。ボルト軸は、ボルト軸に凹部が形成されない場合と同等の強度を有することができる。よって、センサ付きボルトの強度向上が可能である。
【0132】
上記の第1態様において、本開示の第2態様に係るセンサ付きボルトでは、前記凹部の位置での前記ボルト軸の径は、前記ねじ部分での前記ボルト軸の有効径以上の大きさを有してもよい。
【0133】
上記態様によると、凹部の位置でのボルト軸の径が、ねじ部分でのボルト軸の有効径以上の大きさを有するため、凹部の位置でのボルト軸の断面は、ねじ部分でのボルト軸の有効断面よりも、強度及び衝撃等に優れた断面特性を有し得る。よって、センサ付きボルトのさらなる強度向上が可能である。
【0134】
上記の第2態様において、本開示の第3態様に係るセンサ付きボルトでは、前記凹部の位置での前記ボルト軸の径は、前記凹部の底部と前記ボルト軸の中心軸との間の最小距離を半径とする直径であってもよい。
【0135】
上記態様によると、凹部の位置でのボルト軸の最小の円断面が、ねじ部分でのボルト軸の有効断面以上の大きさを有する。よって、凹部の位置でのボルト軸は、ねじ部分でのボルト軸よりも優れた断面特性を有する。
【0136】
上記の第1態様から第3態様のいずれかにおいて、本開示の第4態様に係るセンサ付きボルトでは、前記凹部は、前記ボルト軸の中心軸を中心とする周方向に延びる円筒状の溝であってもよい。
【0137】
上記態様によると、ボルト軸に凹部を形成するための加工が容易になる。さらに、ボルト軸は、凹部において、周方向に均等な強度を有することができる。
【0138】
上記の第1態様から第4態様のいずれかにおいて、本開示の第5態様に係るセンサ付きボルトでは、前記センサは、シート状の端子と、前記端子と接続される2つ以上のシート状のひずみゲージと、前記端子と接続される電線とを含み、前記ボルト軸は、前記端子及び前記2つ以上のひずみゲージを収容する前記凹部としての第1凹部と、前記第1凹部から前記ボルト軸の軸方向に延び且つ前記電線を収容する第2凹部とを含み、前記第2凹部の位置での前記ボルト軸の断面積は、前記ねじ部分での前記ボルト軸の有効断面積以上の大きさを有してもよい。
【0139】
上記態様によると、センサがコンパクトであるため、第1凹部を過剰に大きくすることなく、ひずみゲージ及び端子を第1凹部内に収めることができる。さらに、センサは、2つ以上の位置でボルト軸のひずみを検出するため、ボルト軸の様々な挙動の検出が可能になる。また、電線が第2凹部内に収容されるため、電線の損傷を防ぐことができる。さらに、第2凹部の位置でのボルト軸の断面積が、ねじ部分でのボルト軸の有効断面積以上の大きさを有するため、ボルト軸は、ボルト軸に第2凹部が形成されない場合と同等の強度を有することができる。
【0140】
上記の第5態様において、本開示の第6態様に係るセンサ付きボルトでは、前記第2凹部の位置での前記ボルト軸の径は、前記ねじ部分での前記ボルト軸の有効径以上の大きさを有してもよい。
【0141】
上記態様によると、第2凹部の位置でのボルト軸の径が、ねじ部分でのボルト軸の有効径以上の大きさを有するため、第2凹部の位置でのボルト軸の断面は、ねじ部分でのボルト軸の有効断面よりも優れた断面特性を有し得る。
【0142】
上記の第5態様又は第6態様において、本開示の第7態様に係るセンサ付きボルトでは、前記第1凹部は、前記ボルト軸の中心軸を中心とする周方向に延び、前記周方向での前記第2凹部の幅は、前記周方向及び前記ボルト軸の軸方向での前記第1凹部の幅及び長さよりも小さくてもよい。
【0143】
上記態様によると、第2凹部がコンパクトであるため、第2凹部の形成がボルト軸の強度に与える影響を低減できる。
【0144】
上記の第1態様から第7態様のいずれかにおいて、本開示の第8態様に係るセンサ付きボルトは、前記ボルト軸の端部に接続され且つ前記非ねじ部分と隣り合うボルト頭部をさらに備え、前記ボルト頭部は、前記凹部に連通し且つ前記ボルト軸の軸方向に前記ボルト頭部を貫通する穴を含み、前記センサが含む電線が、前記穴を通って外部に引き出されていてもよい。
【0145】
上記態様によると、ボルト軸と螺合するナット、及び、締結の対象物と干渉することなく、電線をセンサ付きボルトから外部に引き出すことができる。よって、センサによるボルト軸の安定的な計測が可能になる。
【0146】
上記の第1態様から第8態様のいずれかにおいて、本開示の第9態様に係るセンサ付きボルトは、前記ねじ部分に螺合するナットと前記対象物との間に介在して前記ボルト軸に配置される座金をさらに備え、前記座金は、前記ボルト軸から前記座金の周縁に延びる第3凹部を、前記ナット又は前記対象物に対向する表面に含み、前記センサが含む電線が、前記第3凹部を通って外部に引き出されていてもよい。
【0147】
上記態様によると、ボルト軸と螺合するナット、及び、締結の対象物と干渉することなく、電線をセンサ付きボルトから外部に引き出すことができる。第3凹部を座金に形成することによって、電線を引き出すためのボルト軸の加工を少なくすることができる。よって、ボルト軸の強度低下が抑えられる。
【0148】
上記の第1態様から第9態様のいずれかにおいて、本開示の第10態様に係るセンサ付きボルトは、前記センサと接続される無線通信器をさらに備え、前記無線通信器は、前記センサに電圧を印加する電池と、前記無線通信器と無線通信接続された機器に、前記センサの検出結果を出力するアンテナとを含んでもよい。
【0149】
上記態様によると、センサは、無線通信器から給電を受けて安定的に動作できる。無線通信器を設けることにより、センサと、センサの出力先の機器とを接続する電線が不要になる。電線の損傷等により、センサの検出結果の出力が支障を受けることが低減する。よって、安定したセンサの検出結果の出力が可能になる。
【0150】
本開示の第11態様に係る締結方法は、上記の第10態様に係るセンサ付きボルトを用いて対象物を締結する締結方法であって、それぞれが前記センサ付きボルトである1つ以上の第2ボルトであって、前記凹部の形成を含む前記センサを取り付けるための加工を受けた加工部分をそれぞれ含む1つ以上の第2ボルトに弾性域での強度試験を実施することと、前記加工部分及び前記センサを含まず且つ前記加工部分を除いて前記第2ボルトと同じ構造、形状及びサイズを有する複数の第1ボルトと、前記1つ以上の第2ボルトとを、前記対象物の複数の締結穴にセットすることと、前記複数の第1ボルト及び前記1つ以上の第2ボルトを、所定のトルクで締め付けることと、締結後の前記1つ以上の第2ボルトに1つ以上の前記無線通信器を取り付けることと、前記1つ以上の無線通信器と、前記センサの検出結果を出力する処理装置との無線通信接続を確立することと、前記処理装置を介して、締結後の前記1つ以上の第2ボルトの締結力を監視することを含む。
【0151】
上記態様によると、センサ付きの第2ボルトは、加工部分及びセンサを含まない第1ボルトと同等の強度を有し得る。このため、締結後の第1ボルト及び第2ボルトは、歪み等に関して同様の挙動を示すことができる。作業者は、処理装置を介して第2ボルトの締結力を監視することで、対象物の全体の締結状態を確認できる。さらに、締結に使用する前の第2ボルトに弾性域の強度試験を実施することによって、第2ボルトの弾性変形量と第2ボルトに作用する力との関係を取得できる。このような関係を使用することで、第1ボルト及び第2ボルトの締め付けトルクを決定することができる。さらに、処理装置を介した監視の際の締結力の異常の有無の判定基準を決定することができる。
【0152】
上記の第11態様において、本開示の第12態様に係る締結方法では、前記強度試験を実施することは、前記第2ボルトに軸方向に沿う所定の引張力を与えたときに前記センサから得られる伸縮量に基づいて、少なくとも軸方向の引張力に対する強度について、前記第2ボルトが前記第1ボルトと同等の強度を満たすか否かを判定することを含み、前記対象物の複数の締結穴へセットすることは、前記第1ボルトと同等の強度を満たす前記第2ボルトを使用することを含んでもよい。
【0153】
上記態様によると、弾性域の強度試験において、センサの検出結果を用いて、第2ボルトが第1ボルトと同等の強度を満たすか否かが判定される。これにより、センサの検出結果が正常であるか否かも判定できる。さらに、センサの検出結果に基づいた、第2ボルトの弾性変形量と第2ボルトに作用する力との関係を取得できる。このような関係は、締結後の第2ボルトの締結力の異常の有無の判定に利用できる。さらに、センサの検出結果に基づいて第1ボルトと同等の強度を満たすと判定された第2ボルトが締結に用いられるため、締結後の第2ボルトのセンサの検出結果は、第2ボルトの締結状態を高精度で示すことができる。
【0154】
本明細書で用いた序数、数量等の数字は、全て本開示の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本開示は例示された数字に制限されない。構成要素間の接続関係は、本開示の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本開示の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【0155】
本開示は、その本質的な特徴の範囲から逸脱することなく、様々なかたちで実施され得るように、本開示の範囲は、明細書の記載よりも添付の請求項によって定義されるため、例示的な実施の形態及び変形例は、例示的なものであって限定的なものではない。請求項及びその範囲内にあるすべての変更、又は、請求項及びその範囲の均等物は、請求項によって包含されることが意図されている。
【符号の説明】
【0156】
1 ボルトセット
2 処理装置
100、100B 第1ボルト
200、200a‐200f、200A、200B 第2ボルト
210、210A、210B ボルト部分
211、211A、211B 軸部(ボルト軸)
211a、211Aa、211Ba、211Bb 雄ねじ(ねじ部分)
211Ab、211Bc 非ねじ部(非ねじ部分)
212、212A 頭部(ボルト頭部)
213、213A、213B 加工部分
213a 凹部
213Aa、213Ba 第1凹部
213Ab、213Bb 第2凹部
213b、213Ac 穴
220、220A、220B センサ
221、221Aa、221Ab センサ素子
222、222A 電線
300 ナット
310、310B 座金
310Bb 凹部(第3凹部)
500 無線通信器
T 対象物
T1、T2 部材
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16