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  • 特開-銅製錬の操業方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001917
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】銅製錬の操業方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 15/00 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
C22B15/00 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101695
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】川上 明人
(72)【発明者】
【氏名】本村 竜也
(72)【発明者】
【氏名】佐野 浩行
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA09
4K001BA03
4K001BA10
4K001CA01
4K001DA03
4K001FA14
4K001GA04
(57)【要約】
【課題】 メタリックCu相の生成を抑制することができる、銅製錬の操業方法を提供する。
【解決手段】 銅製錬の操業方法は、溶錬炉において、銅精鉱と、メタリックCuを含む製錬原料とから生成されるマットに前記メタリックCuのメタル相が生成される条件下で、前記製錬原料を溶錬炉に投入し、前記メタリックCuが溶融することで生成されるメタル相を分散させた状態のマットを得ることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶錬炉において、銅精鉱と、メタリックCuを含む製錬原料とから生成されるマットに前記メタリックCuのメタル相が生成される条件下で、
前記製錬原料を溶錬炉に投入し、前記メタリックCuが溶融することで生成されるメタル相を分散させた状態のマットを得ることを特徴とする銅製錬の操業方法。
【請求項2】
前記製錬原料に含まれるメタリックCuの最大粒径を、球相当径として1mm以下にすることを特徴とする請求項1に記載の銅製錬の操業方法。
【請求項3】
前記マットにおける溶解度を超える量の前記メタリックCuが前記製錬原料に含まれる場合に、前記製錬原料を前記溶錬炉に投入する前に前記メタリックCuに対して微粉砕処理を行い、前記メタル相が前記マット中で溶融して球体になったときの最大粒径を1mm以下にすることを特徴とする請求項1に記載の銅製錬の操業方法。
【請求項4】
前記マットのサンプリングによって、前記メタリックCuのメタル相が前記マットに確認された場合に、前記メタリックCuに対して微粉砕処理を行ってから前記製錬原料を前記溶錬炉に投入し、前記メタル相が前記マット中で溶融して球体になったときの最大粒径を1mm以下にすることを特徴とする請求項1に記載の銅製錬の操業方法。
【請求項5】
前記製錬原料を溶錬炉に投入し、前記メタリックCuが溶融することで生成されるメタル相の最大粒径を1mm以下に制御する請求項1に記載の銅製錬の操業方法。
【請求項6】
前記マットの重量を100とした場合に、前記メタリックCuの供給重量は前記マットへの前記メタリックCuの溶解度を超過する分を5以下にすることを特徴とする請求項1に記載の銅製錬の操業方法。
【請求項7】
前記メタリックCuが溶融することで生成されるメタル相を懸濁させた状態の前記マットを得た後に、前記メタル相を懸濁した状態の前記マットを、次の錬銅炉に装入して処理する、請求項1に記載の銅製錬の操業方法。
【請求項8】
前記マットの組成と前記マットに懸濁した前記メタル相の銅量とを分析して、前記錬銅炉の操業条件を決める、請求項7に記載の銅製錬の操業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅製錬の操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅製錬自溶炉の反応シャフトでは、精鉱バーナから銅精鉱、溶剤などの製錬原料とともに、反応ガスが投入される。銅精鉱が反応ガスによって酸化反応を起こすことで、反応シャフトの底部でマットおよびスラグが生成する(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-363659号公報
【特許文献2】特開平11-140554号公報
【特許文献3】特公平01-036539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、製錬原料としてリサイクル原料の比率が増加している。しかしながら、リサイクル原料には、メタリックCuが含まれていることがある。リサイクル原料の処理量が増加すると、自溶炉などの溶錬炉へ供給されるメタリックCuの割合が増加してくる。溶錬炉へのメタリックCu供給量が増加し、メタリックCuのマットへの溶解度を超過した場合、炉内にスラグ、マット、およびメタルの3相が共存する。溶錬炉の炉底にメタルが滞留すると、不純物元素のメタル相への濃縮、低融点メタルの炉底レンガ目地への浸透、またレンガ自体への含浸が促進され、炉底部からの湯漏れ等のリスクが増加する。また、メタル量が一定量を超過してマットタップホールレベルに到達した場合、マットホールから突如メタルが排出され、メタル製のマット樋の溶損リスク、また転炉への高不純物メタルが供給されて操業に支障が生じるおそれもある。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、溶融炉の炉底にメタリックCu相が生成することを軽減することができる、銅製錬の操業方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る銅製錬の操業方法は、溶錬炉において、銅精鉱と、メタリックCuを含む製錬原料とから生成されるマットに前記メタリックCuのメタル相が生成される条件下で、前記製錬原料を溶錬炉に投入し、前記メタリックCuが溶融することで生成されるメタル相を分散させた状態のマットを得ることを特徴とする。前記製錬原料に含まれるメタリックCuの最大粒径を、球相当径として1mm以下にしてもよい。前記マットにおける溶解度を超える量の前記メタリックCuが前記製錬原料に含まれる場合に、前記製錬原料を前記溶錬炉に投入する前に前記メタリックCuに対して微粉砕処理を行い、前記メタル相が前記マット中で溶融して球体になったときの最大粒径を1mm以下にしてもよい。前記マットのサンプリングによって、前記メタリックCuのメタル相が前記マットに確認された場合に、前記メタリックCuに対して微粉砕処理を行ってから前記製錬原料を前記溶錬炉に投入し、前記メタル相が前記マット中で溶融して球体になったときの最大粒径を1mm以下にしてもよい。前記製錬原料を溶錬炉に投入し、前記メタリックCuが溶融することで生成されるメタル相の最大粒径を1mm以下に制御してもよい。前記マットの重量を100とした場合に、前記メタリックCuの供給重量は前記マットへの前記メタリックCuの溶解度を超過する分を5以下にしてもよい。前記メタリックCuが溶融することで生成されるメタル相を懸濁させた状態の前記マットを得た後に、前記メタル相を懸濁した状態の前記マットを、次の錬銅炉に装入して処理してもよい。前記マットの組成と前記マットに懸濁した前記メタル相の銅量とを分析して、前記錬銅炉の操業条件を決めてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、溶融炉の炉底にメタリックCu相が生成することを軽減することができる、銅製錬の操業方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る銅製錬用の自溶炉の構成を概略的に示す図である。
図2】精鉱バーナ4の詳細を例示する図である。
図3】マットに対するCuの溶解度を表す状態図である。
図4】実験装置を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る銅製錬用の自溶炉100の構成を概略的に示す図である。図1に示すように、自溶炉100は、精鉱と反応用ガスとが混合する反応シャフト1、セットラ2、アップテイク3を備える。反応シャフト1の天井部には、精鉱バーナ4が備わっている。精鉱バーナ4は、銅精鉱、溶剤、リサイクル原料等(以下、これらの固体原料を製錬原料と称する)とともに、反応用主送風ガス、反応用補助ガス、及び分散用ガス(反応にも寄与する)を反応シャフト1内に供給する。例えば、反応用主送風ガス及び反応用補助ガスは、酸素富化空気であり、分散用ガスは、空気または酸素富化空気である。
【0010】
図2は、精鉱バーナ4の詳細を例示する図であって、製錬原料、反応用主送風ガス、反応用補助ガス、および分散用ガスを反応シャフト1側へ投入する投入部10を示した説明図である。
【0011】
精鉱バーナ4の投入部10は、ランス16を備え、ランス16内には分散用ガスの通る第1通路11、反応用補助ガスが通過する第4通路14が形成されている。第4通路14は、ランス16の中心部分に設けられており、第1通路11は、第4通路14の周囲に設けられている。また、投入部10は、ランス16の外側、より具体的にランス16の外周に設けられた原料流路としての第2通路12を備えている。投入部10は、さらに、第2通路12の外側、より具体的には第2通路12の外周に設けられ、反応用主送風ガスが通過する第3通路13を備えている。第3通路13は、第2通路12を囲むように設けられた管状部分によって形成されており、その上方に設けられた漏斗状のエアチャンバー17と通じている。第2通路12と、第3通路13は、円筒状の仕切り壁21により、仕切られた状態となっている。
【0012】
第1通路11は、分散用ガスを反応シャフト1内へ供給する。第2通路12は、精鉱を反応シャフト1内へ供給する。第3通路13は、反応用主送風ガスをエアチャンバー17から反応シャフト1内へ供給する。また、第4通路14は、反応用補助ガスを反応シャフト1内へ供給する。
【0013】
なお、ランス16の先端部(下端部)には、中空円錐台状の分散コーン15が形成されている。分散コーン15の側面下部151には第1通路11を通過した分散用ガスを反応シャフト1内へ吐出する複数の供給孔152が形成されている。供給孔152は、ガスの吐出方向が分散コーン15の底面円の法線方向となるように設けられている。
【0014】
精鉱バーナ4から製錬原料が反応シャフト1内に投入されると、下記反応式(1)などにより、硫化物を含む銅精鉱が酸化反応を起こし、図1で例示するように、反応シャフト1の底部でマット5およびスラグ6に分離する。なお、下記反応式(1)で、CuS・FeSがマット5の主成分に相当し、FeO・SiOがスラグ6の主成分に相当する。溶剤として、珪酸鉱が用いられている。
CuFeS+SiO+O→CuS・FeS+FeO・SiO+SO + 反応熱 (1)
【0015】
リサイクル原料にはメタリックCuが含まれていることがある。メタリックCuの量が少なければ、精鉱バーナ4からの落下の過程でメタリックCuが硫化してマット5となる。したがって、メタル相は生成されない。
【0016】
しかしながら、リサイクル原料の処理量が増えてくると、製錬原料におけるメタリックCuの割合が高くなる傾向にある。近年では、製錬原料におけるCu成分中のメタリックCuの割合が、9.0mass%以上30.0mass%以下、または12.0mass%以上27.0mass%以下、または18.0mass%以上20.0mass%以下となることがある。
【0017】
製錬原料におけるメタリックCuの割合が高くなってくると、精鉱バーナ4からの落下の過程で、メタリックCuが硫化しきれず、メタリックCuのまま落下する。マット5において、ある程度まではメタリックCuがマット5に溶解するものの、溶解限度がある。図3は、1250℃における、マットに対するCuの溶解度を表す状態図である。図3において、「matte(l)」は、メタリックCuがマットに溶解可能な範囲を示している。「matte(l)+Cu(l)」は、メタリックCuがマットに溶解できずにメタル相が生成される範囲を示している。なお、図3の状態図は、「高在越、矢沢彬 1983年 選研彙報」を出展としている。
【0018】
本実施形態においては、自溶炉100において、銅精鉱と、メタリックCuを含む製錬原料とから生成されるマット5にメタリックCuのメタル相が生成される条件下で、製錬原料を自溶炉100に投入し、メタリックCuが溶融することで生成されるメタル相を懸濁させた状態のマット5を得る。このようにマット5にメタリックCuが分散して懸濁することで、マット5と別にメタル相が炉底部に生成することを抑制することができる。
【0019】
マット5においてメタリックCuをより分散させるためには、メタリックCuが溶融することで生成されるメタル相の粒径は小さいことが好ましい。各メタリックCuは、マット5において溶融すると、略球形状のメタル相になる傾向がある。そこで、製錬原料に含まれるメタリックCuの粒径を、球相当径で規定することができ、本実施形態においては、製錬原料に含まれるメタリックCuの最大粒径は、球相当径として1mm以下であることが好ましい。製錬原料に含まれるメタリックCuの球相当径は、アルキメデスの原理を利用した方法で体積を測定した後に球相当径を計算してもよい。あるいは、レーザー回折式の粒度分布計のように、体積基準で粒度を測定する装置を使用して、複数のメタリック銅の粒径を測定することもできる。
【0020】
マット5における溶解度を超える量のメタリックCuが製錬原料に含まれる場合に、製錬原料を自溶炉100に投入する前にメタリックCuに対して微粉砕処理を行い、投入するメタリックCuの最大粒径を、球相当径として1mm以下にすることが好ましい。
【0021】
マット5のサンプリングによって、メタリックCuのメタル相がマット5に確認された場合に、メタリックCuに対して微粉砕処理を行ってから製錬原料を自溶炉100に投入し、その際のメタリックCuの最大粒径を、球相当径として1mm以下にすることが好ましい。
【0022】
マット5においてメタル相をより分散させるためには、メタル相がマット5中で溶融して球体になったときの平均粒径は小さいことが好ましい。本実施形態においては、製錬原料に含まれるメタリックCuの平均粒径は、体積平均径として41μm以下であることが好ましく、35μm以下であることがより好ましい。
【0023】
なお、メタリックCuにおいて、一部に過度に大きい粒子が含まれていると、当該大きい粒子をマット5内に懸濁させられないおそれがある。そこで、メタリックCuは、シャープな粒度分布を有していることが好ましい。本実施形態においては、製錬原料に含まれるメタリックCuの粒度分布を測定した場合に、粒径の標準偏差が17μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、13μm以下であることがさらに好ましい。製錬原料に含まれるメタリックCuを粒度分布測定する場合、製錬原料と混合する前のメタリックCuのみの状態で縮分したサンプルを採取し、レーザー回折式粒度分布計を用いて粒度分布を測定することができる。
【0024】
また、メタリックCu、または、マット5内におけるメタル相において、最大径を設けておくことで、大きい粒子の混入を抑制することができる。そこで、メタリックCu、または、マット5内におけるメタル相に最大径を設けておくことが好ましい。本実施形態においては、製錬原料に含まれるメタリックCuの最大径は、球相当径として、1mm以下であることが好ましく、170μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。マット5内におけるメタル相の最大粒径は、1mm以下であることが好ましく、170μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。
【0025】
マット5で懸濁したメタル相は、マット5が自溶炉100から排出される際に随伴して排出されるため、次工程の錬銅炉に装入して処理する。この場合、メタル相を懸濁させた状態のマット5を次の錬銅炉にそのまま装入する。次の錬銅炉では、マット5中のCu成分とメタル相のCuとを合わせた全溶湯中のCu、Fe、Sの濃度を基準とし、送風条件を含む操業条件を調整して処理すればよい。なお、ここでの次の錬銅炉とは、転炉等のマットから粗銅を生成する製錬炉などが挙げられる。
【0026】
なお、製錬原料に含まれるメタリックCuの量がマット5への溶解度以下である場合には、メタリックCuを微粉砕しなくてもマット5へ溶解するため、メタル相の生成は抑制される。この場合においては、メタル相の生成に起因する操業上の支障は生じない。そこで、製錬原料に含まれるメタリックCuの量がマット5への溶解度以下である場合には、リサイクル原料の微粉砕処理を省略してもよい。
【0027】
マット5におけるメタル相の平均粒径を小さくしても、製錬原料のメタリックCuの量が多すぎると、粒径の小さいメタリックCu同士が接触して粗大化し、マット5にメタリックCuを十分に懸濁させられないおそれがある。そこで、メタリックCuの供給量に上限を設けることが好ましい。本実施形態においては、マット5の重量を100とした場合に、メタリックCuの供給重量は、マット5へのメタリックCuの溶解度を超過する分を5以下にすることが好ましく、4以下にすることがより好ましく、3以下にすることがさらに好ましい。
【0028】
メタリックCuの供給量がマット5への溶解度を超過するか否かは、製錬原料に対するサンプリングを行って組成比率を測定することによって、判断することができる。または、反応シャフト1のマット5に対するサンプリングを行なってメタル相が確認された場合に、メタリックCuの供給量がマット5への溶解度を超過すると判断してもよい。
【0029】
なお、上記実施形態においては、溶錬炉の一例として自溶炉について説明したが、それに限られない。銅精鉱と、メタリックCuを含む原料とを含む製錬原料から銅の硫化物を主体とするマットを生成する溶錬炉であれば、溶錬炉において、銅精鉱と、メタリックCuを含む製錬原料とから生成されるマットに前記メタリックCuのメタル相が生成される条件下で、前記製錬原料を溶錬炉に投入し、前記メタリックCuが溶融することで生成されるメタル相を懸濁させた状態のマットを得ることができる。
【実施例0030】
(実施例)
事前に石英タンマン管51内にマットを充填して純度99.6%以上のCu粉を混合し、石英タンマン管51をアルミナ坩堝に固定した。Cu粉の平均粒径は体積平均径として41μmとした。Cu粉の添加量は、溶融させたマットに状態図上で溶解度を超過した量とした。具体的には、マットの重量を100とした場合に、Cu粉の重量を5とした。次に、アルミナ坩堝ごと電気炉にセットし、溶湯温度1250℃まで昇温した。電気炉における保持時間を2時間~10時間の範囲で変更して、複数回の実験を行った。このとき、図4で例示するように、石英タンマン管51内の溶体は、マット52にCu相53が懸濁したマット-Cuの2液相共存組成となった。次に、冷却過程でのCu析出を回避するため、電気炉からアルミナ坩堝を取り出し、石英タンマン管51ごと氷水に浸けて急冷した。
【0031】
なお、試験に用いたマットおよびCu粉の組成を表1に示す。
【表1】
【0032】
(分析)
実施例の試料について、急冷後の試料内の残存Cu相(メタリックCu)の有無を確認した。残存Cu相は、CTスキャン及び試料断面の顕微鏡観察(観察倍率は100~2000倍で行った)により評価した。試料断面の観察は直径17.0mmの試料に対して0.5mm単位で研磨し、観察を繰り返し、Cu相の有無を確認した。CTと併用することで評価精度を高めた。
【0033】
実施例の試料においては、メタリックCuがマット中で分相状態になっていることが確認された。すなわち、メタリックCuが炉底に沈降せずに分散安定性を保つことが確認された。なお、マット中で分散していたCu粒の中で最大のものは略円形の状態で観察され、その直径は500μm程度であった。
【0034】
これらの結果から、マットが自溶炉内で70t/h生成する操業条件において、追加でメタリックCuを7.3t/h供給する場合、マットに対して5.4t/hのメタリックCuがマット中で分相状態になると考えられる。このとき、分相状態のメタリックCuは、炉底に沈降せずに、分散安定性を保つことが明らかとなった。
【0035】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 反応シャフト
2 セットラ
3 アップテイク
4 精鉱バーナ
5 マット
6 スラグ
10 投入部
11 第1通路
12 第2通路
13 第3通路
14 第4通路
16 ランス
51 石英タンマン管
52 マット
53 メタリックCu
100 自溶炉
図1
図2
図3
図4