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特開2025-19457ブローバイガスプレート及び往復動圧縮機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019457
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】ブローバイガスプレート及び往復動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/16 20060101AFI20250131BHJP
   F04B 27/04 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
F04B39/16 D
F04B27/04 F
F04B27/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123077
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 隆成
【テーマコード(参考)】
3H003
3H076
【Fターム(参考)】
3H003AA02
3H003AC03
3H003BD09
3H003BG02
3H003CB02
3H003CD04
3H076AA04
3H076BB17
3H076CC12
3H076CC24
3H076CC77
(57)【要約】
【課題】簡易的な構造によりブローバイガスを吸入室に戻すことによる油上りを低減できるブローバイガスプレートを提供する。
【解決手段】本開示の少なくとも一実施形態に係るブローバイガスプレートは、往復動圧縮機のブローバイガスを吸気側に戻すための均圧流路を形成するように、往復動圧縮機のケーシングに設けられた均圧流路の一部としての凹部に面してケーシングに取り付け可能なブローバイガスプレートである。本開示の少なくとも一実施形態に係るブローバイガスプレートは、凹部に対向する位置に設けられる1以上の開口部と、開口部に設けられてブローバイガスが通過可能なメッシュ部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復動圧縮機のブローバイガスを吸気側に戻すための均圧流路を形成するように、前記往復動圧縮機のケーシングに設けられた前記均圧流路の一部としての凹部に面して前記ケーシングに取り付け可能なブローバイガスプレートであって、
前記凹部に対向する位置に設けられる1以上の開口部と、
前記開口部に設けられて前記ブローバイガスが通過可能なメッシュ部と、
を備えるブローバイガスプレート。
【請求項2】
前記開口部は、前記ブローバイガスプレートが前記ケーシングに取り付けられたときに、環状に形成されていて周方向の一方側の端部及び他方側の端部が下方を向くよう設けられた前記凹部の前記一方側の端部、又は、前記他方側の端部の少なくともいずれか一方の端部に対向する位置を含むように形成されており、
前記メッシュ部は、前記ブローバイガスプレートが前記ケーシングに取り付けられたときに、前記少なくともいずれか一方の端部を覆うように前記開口部に設けられている、
請求項1に記載のブローバイガスプレート。
【請求項3】
前記開口部は、前記ブローバイガスプレートが前記ケーシングに取り付けられたときに、環状に形成されている前記凹部と対向する位置に周方向に間隔を空けて複数設けられている、
請求項1又は2に記載のブローバイガスプレート。
【請求項4】
前記周方向で隣り合う2つの前記開口部の間で前記開口部が設けられていない少なくとも1つの非開口領域を備え、
前記非開口領域の少なくとも1つは、前記ブローバイガスプレートが前記ケーシングに取り付けられたときに、前記凹部内に設けられていて前記ブローバイガスプレートに向かって突出する突部に対向する位置に設けられている、
請求項3に記載のブローバイガスプレート。
【請求項5】
前記周方向で隣り合う2つの前記開口部の間で前記開口部が設けられていない少なくとも1つの非開口領域を備え、
前記非開口領域の少なくとも1つは、前記ブローバイガスプレートが前記ケーシングに取り付けられたときに、前記凹部に開口する開口端に対向する位置に設けられている、
請求項3に記載のブローバイガスプレート。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のブローバイガスプレートと、
吸入室、吐出室、シリンダ、およびクランク室が設けられ、前記クランク室の下部が潤滑油を貯留する貯油室として構成されたハウジングと、
前記シリンダ内に往復動可能に配置されたピストンと、
前記クランク室に回転可能に配置され、前記ピストンと連接棒を介して連結されたクランク軸と、
前記クランク軸を軸受けする軸受部が配置される軸受ハウジングと、
を備え、
前記凹部は、前記軸受ハウジングに形成されている、
往復動圧縮機。
【請求項7】
前記凹部は、環状に形成されていて周方向の一方側の端部及び他方側の端部が下方を向くよう設けられ、
前記開口部は、前記凹部の前記一方側の端部、又は、前記他方側の端部の少なくともいずれか一方に対向する位置を含むように形成され、
前記少なくともいずれか一方の前記端部において、前記凹部を画定する前記周方向を向いた壁面は、前記凹部の底面から前記開口部に向かうにつれて下方に向かうように傾斜している、
請求項6に記載の往復動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、往復動圧縮機に設けられるブローバイガスプレート、及び、このブローバイガスプレートを備える往復動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
往復動圧縮機は、クランク軸(駆動軸)の回転運動をクランク室内においてピストンの往復動に変え、冷凍サイクルを循環する冷媒ガスを圧縮するようにしている。往復動圧縮機の内部は、吸入室、吐出室、シリンダおよびクランク室に区画され、クランク室の下部は、潤滑油を貯留する貯油室となっている。貯油室に貯留された潤滑油は、オイルポンプによる強制給油方式で往復動圧縮機の各摺動部へ給油される。
【0003】
冷凍サイクルを循環する冷媒ガスは、ピストンの往復動により吸入室から吸入弁を通じてシリンダ内に吸入されてから圧縮され、吐出弁を通じて吐出室に吐出される。
【0004】
従来から、シリンダの内壁面とピストンリングの隙間からクランク室内に漏れた冷媒ガス(ブローバイガス)によって、クランク室内の圧力が上昇することを防止するために、クランク室と吸入室を連通する均圧路(バランスホール)を設けて、ブローバイガスを吸入室に戻すようにしている。
【0005】
均圧路を通じて吸入室に流入するブローバイガスの吸入室への戻りは、クランク室内の油滴を同伴するため、潤滑油を貯留する貯油室の油量が減少する油上りを生ずる虞がある。
【0006】
このような油上りを防止する機構として、例えば下記の特許文献1には、クランク室および吸入室を連通する均圧路のクランク室側の開口端と、ピストンが連結されたクランク軸との間に配置された仕切り部材を備え、さらに仕切り部材と前記均圧路の開口端との間に配置された油分離器を備える往復動圧縮機が開示されている。
【0007】
このように構成された往復動圧縮機によれば、クランク室内の油滴が仕切り部材により均圧路の開口端に直接流入することが防止され、さらに油分離器によって均圧路の開口端に流入する潤滑油の量がさらに低減され、油溜室の油量が減少する油上りが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2014/054092号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の構成に対して、クランク室内に仕切り部材を設けることなく、またクランク室内に突出する油分離器を設けることなく、ブローバイガスを吸入室に戻すことによる油上りを防止することが求められている。
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、簡易的な構造によりブローバイガスを吸入室に戻すことによる油上りを低減できるブローバイガスプレート、及び往復動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るブローバイガスプレートは、
往復動圧縮機のブローバイガスを吸気側に戻すための均圧流路を形成するように、前記往復動圧縮機のケーシングに設けられた前記均圧流路の一部としての凹部に面して前記ケーシングに取り付け可能なブローバイガスプレートであって、
前記凹部に対向する位置に設けられる1以上の開口部と、
前記開口部に設けられて前記ブローバイガスが通過可能なメッシュ部と、
を備える。
【0012】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係る往復動圧縮機は、
上記(1)の構成のブローバイガスプレートと、
吸入室、吐出室、シリンダ、およびクランク室が設けられ、前記クランク室の下部が潤滑油を貯留する貯油室として構成されたハウジングと、
前記シリンダ内に往復動可能に配置されたピストンと、
前記クランク室に回転可能に配置され、前記ピストンと連接棒を介して連結されたクランク軸と、
前記クランク軸を軸受けする軸受部が配置される軸受ハウジングと、
を備え、
前記凹部は、前記軸受ハウジングに形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、簡易的な構造によりブローバイガスを吸入室に戻すことによる油上りを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る往復動圧縮機の概略縦断面を、冷凍サイクルとともに示す図である。
図2】本実施形態に係る往復動圧縮機の概略横断面を示す図である。
図3】本実施形態に係る往復動圧縮機を示す斜視断面図である。
図4】軸受ハウジングと仕切り板とをクランク室の内側から外側に向かって見た図である。
図5】軸受ハウジングをクランク室の内側から外側に向かって見た図である。
図6図5のVI-VI矢視断面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0016】
本発明の実施形態を、図1図6を参照しつつ説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0017】
図1は、本実施形態に係る往復動圧縮機1の概略縦断面を、冷凍サイクルとともに示す図である。図2は、本実施形態に係る往復動圧縮機1の概略横断面を示す図である。図3は、本実施形態に係る往復動圧縮機1を示す斜視断面図である。図4は、軸受ハウジング60と仕切り板70とをクランク室34の内側から外側に向かって見た図である。図5は、軸受ハウジング60をクランク室34の内側から外側に向かって見た図である。図6は、図5のVI-VI矢視断面を模式的に示した図である。なお、図5では、理解を容易とするため、仕切り板70の開口部71を二点鎖線で示している。
【0018】
まず、図1を参照して、冷凍サイクルの構成について説明する。
【0019】
冷凍サイクルは、冷媒が循環する環状の冷媒循環路10を有し、冷媒循環路10には、往復動圧縮機1、凝縮器(高圧側熱交換器)12、膨張弁(膨張器)14、および蒸発器(低圧側熱交換器)16が冷媒の循環方向にてこの順序で接続され配置されている。なお、本実施形態では、冷媒循環路10に、油分離器18および受液器20がさらに配置されている。
【0020】
冷凍サイクルにおいて、往復動圧縮機1は、例えば、0.1MPa~0.3MPaの圧力(吸入圧力)の冷媒を吸入して圧縮し、1.5MPa~2MPaの圧力(吐出圧力)の冷媒を吐出するように構成されているが、冷媒の吸入圧力および吐出圧力の範囲はこれに限定されることはない。冷媒は、例えばR32等の種々の代替フロン冷媒、又はアンモニアや二酸化炭素等である。
【0021】
次に、図1図6を参照して、本実施形態に係る往復動圧縮機1の構成について説明する。
【0022】
往復動圧縮機1は、概説すると、ハウジング22と、シリンダ32内に往復動可能に配置されたピストン36と、クランク室34に回転可能に配置されたクランク軸40と、クランク軸40を軸受するオイルポンプ90側の軸受部50A、及びクランク軸40の一端側(図1の右側)の軸受部50Bと、オイルポンプ90側の軸受部50Aが配置される軸受ハウジング60と、軸受ハウジング60およびクランク室34の間に設けられ、軸受ハウジング60とともに閉空間Vを形成する仕切り板70と、閉空間Vおよび吸入室28を連通する均圧路80と、を有する。以下、各構成について説明する。なお、説明の便宜上、クランク軸40の回転中心軸AXを中心とする周方向を周方向Cとし、回転中心軸AXの延在方向を軸方向Xとし、回転中心軸AXを中心とする径方向を径方向Rとする。また、鉛直方向は各図における紙面の上下方向と一致するものとする。
【0023】
図1に示すように、ハウジング22には、吸入ポート24および吐出ポート26が設けられている。吸入ポート24は、配管を介して蒸発器16の出口に接続され、吐出ポート26は、配管を介して油分離器18の入口に接続されている。
【0024】
図1図3に示すように、ハウジング22の内部には、吸入室28、吐出室30、シリンダ32、クランク室34、および貯油室35が設けられている。シリンダ32内にはピストン36が往復動可能に配置され、シリンダ32内には、ピストン36によって圧縮室Wが区画される。吸入室28は、吸入ポート24と連通するとともに、吸入弁を介して圧縮室Wと連通可能である。吐出室30は、吐出ポート26と連通するとともに、吐出弁を介して圧縮室Wと連通可能である。
【0025】
シリンダ32の下端は、クランク室34に連通しており、ピストン36に連結された連接棒38がクランク室34内まで延びている。クランク室34内には、クランク軸40が回転可能に配置され、連接棒38がクランク軸40に連結されている。
【0026】
貯油室35は、図1に示すように、クランク室34の底部に形成されている。貯油室35に貯留されている油は、往復動圧縮機1の運転中、各摺動部に潤滑油として供給される。本実施形態では、潤滑油を浄化するためのオイルフィルタ46、48が貯油室35内およびハウジング22の外にそれぞれ設置されている。
【0027】
クランク軸40の一端側(図1の右側)は、軸シール43を介してハウジング22を気密に貫通しており、クランク軸40の外端に不図示の駆動源が連結される。駆動源によってクランク軸40が回転させられると、シリンダ32内をピストン36が往復動し、これにより、冷媒の吸入行程、圧縮行程および吐出行程が繰り返し実行される。
【0028】
軸受部50Aは、図3に示すように、駆動源とは反対のオイルポンプ90側のクランク軸40を軸受するように構成されている。軸受部50Aの内周には、図3に示すように、貯油室35からの潤滑油がクランク軸40の外周に接するように、溝部51が形成されている。軸受部50Aの一端側(図3の手前側)はフランジ形状を備えており、軸受ハウジング60に当接するように構成されている。
【0029】
軸受ハウジング60には、図3に示すように、軸受部50Aが配置される。軸受ハウジング60は、不図示の固定部によって、ハウジング22に固定される。固定部は特に限定されないが、例えば、ボルトである。
【0030】
本実施形態に係る往復動圧縮機1では、ハウジング22及び軸受ハウジング60は、クランク室34及び貯油室35を形成する往復動圧縮機1のケーシング2に含まれる。すなわち、ハウジング22及び軸受ハウジング60は、本実施形態に係る往復動圧縮機1のケーシング2を構成する部材である。
【0031】
軸受ハウジング60には、図3に示すように、径方向の外方に向けて、潤滑油が通過する油路61が形成されている。また、軸受ハウジング60の一端側(図3の手前側)には、クランク軸40の軸方向に凹んだ凹部62が形成されている。凹部62は、仕切り板70が軸受ハウジング60に固定されることによって閉空間Vを形成する。閉空間Vは、均圧路80と接続した第1閉空間V1および油路61と接続した第2閉空間V2を備える。貯油室35から軸受ハウジング60に供給された潤滑油は、油路61を介して第2閉空間V2に流通する。
【0032】
凹部62は、軸受部50Aの径方向外側の領域において軸受部50Aを周方向Cに取り囲むように周方向Cに延在している。凹部62は、第1閉空間V1を形成する第1凹部621と、第2閉空間V2を形成する第2凹部622とを含む。第1凹部621と第2凹部622とは、壁部623、624で隔てられている。すなわち、仕切り板70が軸受ハウジング60に固定されると、第1閉空間V1は第2閉空間V2と隔てられる。
第1凹部621、及び第2凹部622は、クランク室34の内部から外部に向かって軸方向に沿って見たときに、それぞれ部分円環形状を有する。
第2凹部622は、第1凹部621の下方に設けられている。
【0033】
凹部62には、凹部62内で径方向Rに延在し、軸方向Xに沿ってクランク室34の外側から内側に向かって、すなわち後述する仕切り板70に向かって突出する突部が軸受ハウジング60の強度を補強するためのリブ66として複数形成されている。
なお、リブ66は、凹部62の底面62aからの軸方向Xへの突出高さが壁部623、624よりも低い。そのため、後述する仕切り板70が軸受ハウジング60に固定されると、仕切り板70は壁部623、624の軸方向Xを向いた頂部623a、624aと密着するが、リブ66の軸方向Xを向いた頂部66aとは軸方向Xに離間する。
【0034】
仕切り板70は、図3に示すように、軸受ハウジング60およびクランク室34の間に設けられる。また、仕切り板70は、軸受ハウジング60の凹部62を覆うように、軸受ハウジング60に固定される。仕切り板70を軸受ハウジング60に対して固定する手段は特に限定されないが、例えばボルトによる締結である。すなわち仕切り板70は、凹部62に対して軸方向Xに沿ってクランク室34の内側に配置されている。
【0035】
仕切り板70は、図3図4に示すように、クランク室34および第1閉空間V1を連通する開口部71を備える。また、仕切り板70は、クランク室34および第2閉空間V2を連通する潤滑油排出孔74を備える。
【0036】
開口部71は、図3図4に示すように、均圧路80と連通する第1閉空間V1と連通するように周方向Cに間隔を空けて複数形成されている。各開口部71は、凹部62(第1閉空間V1)に対向する位置に設けられている。
【0037】
潤滑油排出孔74は、図3に示すように、軸受ハウジング60の油路61と連通する第2閉空間V2と連通するように形成されている。潤滑油排出孔74は、図3に示すように、開口形状を横に広くとる扁平形状の切り欠き部によって形成される。
【0038】
各開口部71には、メッシュ部72が設けられている。メッシュ部72は、各開口部71を覆うように設けられた網部材である。メッシュ部72の目開きは、ブローバイガスが通過可能であって、潤滑油の油滴が通過不可能または通過困難となるように規定されていることが好ましい。
【0039】
仕切り板70は、周方向Cで隣り合う2つの開口部71の間で開口部71が設けられていない非開口領域73を備えている。本実施形態に係る往復動圧縮機1では、仕切り板70は、複数の非開口領域73を備えている。複数の非開口領域73の内の少なくとも何れか1つは、仕切り板70が軸受ハウジング60に取り付けられたときに、リブ66と対向する位置に設けられている。
【0040】
均圧路80は、往復動圧縮機1の運転中にピストン36とシリンダ32の壁面との隙間から漏れ出したブローバイガスによって、クランク室34の圧力が上昇するのを抑制するために設けられる。
均圧路80は、第1閉空間V1に開口する開口端(入口端)81と、吸入室28に開口する開口端(出口端)82と、を有する(図3参照)。
すなわち、本実施形態に係る往復動圧縮機1では、第1閉空間V1を形成する凹部62と、仕切り板70と、均圧路80とによって、往復動圧縮機1のブローバイガスを吸気側(具体的には吸入室28)に戻すための均圧流路100が形成されている。
【0041】
次に、本実施形態に係る往復動圧縮機1の効果について説明する。
【0042】
例えば、仕切り板70が設けられない往復動圧縮機の場合、往復動圧縮機の運転中、軸受等を潤滑した後の潤滑油の油滴がクランク軸や軸受から飛散し、均圧路を通じて吸入室に流入するブローバイガスによって潤滑油が同伴されて、貯油室の油量が減少して油上りが生じてしまう虞がある。
【0043】
これに対して、本実施形態に係る往復動圧縮機1によれば、軸受ハウジング60およびクランク室34の間に仕切り板70が設けられるため、各開口部71を覆うメッシュ部72を通過するブローバイガスに同伴しようとする潤滑油は、メッシュ部72において、通過が困難であるため、貯油室35に戻される。さらに、ブローバイガスに同伴する潤滑油がわずかにメッシュ部72を通過したとしても、第1閉空間V1を通過する間に、同伴された油滴は大きくなり、重力沈降によりブローバイガスから分離される。ブローバイガスから分離された油滴は、第1閉空間V1の下部から開口部71及びメッシュ部72を介して貯油室35に戻される。一方、油滴が分離されたブローバイガスは、第1閉空間V1から均圧路80を介して吸入室28に移動する。このため、均圧路80を通じて吸入室28に流入する潤滑油の量が低減され、往復動圧縮機1の油上りを防止できる。
【0044】
本実施形態に係る往復動圧縮機1では、開口部71にメッシュ部72を設けることで、開口部71の面積を比較的大きくして、第1凹部621に侵入するブローバイガスの流速を低下させて、ブローバイガスの油滴同伴力を低下させることができるので、第1凹部621に侵入する油滴の量を減らすことができる。また、本実施形態に係る往復動圧縮機1によれば、油滴の第1凹部621への侵入をメッシュ部72で阻害できるので、第1凹部621に侵入する油滴の量を減らすことができる。これにより、油上りを低減できる。
【0045】
本実施形態に係る往復動圧縮機1では、第1閉空間V1を形成する第1凹部621は、環状に形成されていて周方向Cの一方側の端部621a及び他方側の端部621bが下方を向くように(他の部位よりも下方に位置するように)設けられている。開口部71は、一方側の端部621a、又は、他方側の端部621bの少なくともいずれか一方に対向する位置を含むように形成されている。図5に示す例では、開口部71は、一方側の端部621a、及び、他方側の端部621bに対向する位置を含むように形成されている。
例えば図6に示すように、少なくともいずれか一方の端部621a、621bにおいて、第1凹部621を画定する周方向Cを向いた壁面621cは、第1凹部621の底面62aから仕切り板70に向かうにつれて下方に向かうように傾斜している。なお、図6では、一方の端部621aの近傍について示している。
これにより、上記壁面621cを伝って第1凹部621内に溜まった潤滑油が開口部71及びメッシュ部72を介しクランク室34に戻り易くなるので、油上りを低減できる。
【0046】
本実施形態に係る往復動圧縮機1では、開口部71は、仕切り板70がケーシング2(軸受ハウジング60)に取り付けられたときに、環状に形成されている凹部62と対向する位置に周方向Cに間隔を空けて複数設けられている。
開口部71が周方向Cに分割されて設けられることで、個々の開口部71の周方向Cの長さが短くなる。これにより、メッシュ部72の周方向Cへの延在長さが短くなってメッシュ部72の剛性が向上する。よって、ブローバイガスが第1凹部621に流入する際にメッシュ部72を通過することによってメッシュ部72に外力が作用しても、メッシュ部72の変形等を抑制できる。
【0047】
軸受ハウジング60内に第1閉空間V1を比較的大きな流路断面積とする形状とし、ブローバイガスの吸入室28への戻りの流速を低下させてより油滴の重力沈降を促進させる。また、軸受ハウジング60内の凹部62で形成される空間内には、上述したリブ66が複数設けられている。そして、非開口領域73の少なくとも1つは、仕切り板70がケーシング2(軸受ハウジング60)に取り付けられたときに、リブ66と対向する位置に設けられている。
【0048】
このようにリブ66が設けられることによって、ブローバイガスは複雑な流路を通過することにより、さらに油分離が促進される。すなわち、ブローバイガス及び油滴が凹部62を周方向Cに流れる際に、リブ66と非開口領域73とが絞りのような役割を果たして圧力損失を生じさせることができ、凹部62内でのブローバイガス及び油滴の流速を低下させて凹部62からブローバイガスと共に持ち去られる油滴を少なくすることができる。また、リブ66と非開口領域73との間を周方向Cに流れたブローバイガス及び油滴がリブ66及びこれと対向する非開口領域73とによって形成された絞りの下流側で渦流れを形成することで油滴の合体が促進されて油滴が大きくなることが期待できる。これにより、凹部62からブローバイガスと共に持ち去られる油滴を少なくすることが期待できる。
【0049】
本実施形態に係る往復動圧縮機1では、仕切り板70は、周方向Cで隣り合う2つの開口部71の間で開口部71が設けられていない少なくとも1つの非開口領域73を備えているとよい。非開口領域73の少なくとも1つは、仕切り板70がケーシング2(軸受ハウジング60)に取り付けられたときに、第1凹部621に開口する均圧路80の開口端81に対向する位置に設けられているとよい。
これにより、開口部71が第1凹部621に開口する開口端81と対向する位置に設けられている場合と比べて、第1凹部621に開口する開口端81からブローバイガスと共に持ち去られる油滴を少なくすることができる。
【0050】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した実施形態では、仕切り板70は、潤滑油排出孔74を有したが、潤滑油排出孔74を有していなくてもよい。
また、上述した実施形態では、凹部62は軸受ハウジング60に設けられているが、ハウジング22に設けられていてもよい。すなわち凹部62は、ケーシング2に設けられていればよい。そして仕切り板70は、凹部62を覆うようにケーシング2に固定されていればよい。
【0051】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るブローバイガスプレート(仕切り板70)は、往復動圧縮機1のブローバイガスを吸気側に戻すための均圧流路100を形成するように、往復動圧縮機1のケーシング2に設けられた均圧流路100の一部としての凹部62(第1凹部621)に面してケーシング2に取り付け可能なブローバイガスプレート(仕切り板70)である。本開示の少なくとも一実施形態に係るブローバイガスプレート(仕切り板70)は、凹部62に対向する位置に設けられる1以上の開口部71と、開口部71に設けられてブローバイガスが通過可能なメッシュ部72と、を備える。
【0052】
上記(1)の構成によれば、開口部71にメッシュ部72を設けることで、開口部71の面積を比較的大きくして、凹部62(均圧流路100)に侵入するブローバイガスの流速を低下させて、ブローバイガスの油滴同伴力を低下させることができるので、凹部62(均圧流路100)に侵入する油滴の量を減らすことができる。また、上記(1)の構成によれば、油滴の凹部62(均圧流路100)への侵入をメッシュ部72で阻害できるので、凹部62(均圧流路100)に侵入する油滴の量を減らすことができる。これにより、油上りを低減できる。
【0053】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、開口部71は、ブローバイガスプレート(仕切り板70)がケーシング2に取り付けられたときに、環状に形成されていて周方向Cの一方側の端部621a及び他方側の端部621bが下方を向くよう設けられた凹部62の一方側の端部621a、又は、他方側の端部621bの少なくともいずれか一方の端部621a、621bに対向する位置を含むように形成されているとよい。メッシュ部72は、ブローバイガスプレート(仕切り板70)がケーシング2に取り付けられたときに、上記少なくともいずれか一方の端部621a、621bを覆うように開口部71に設けられているとよい。
【0054】
上記(2)の構成によれば、凹部62(均圧流路100)内に溜まった潤滑油が開口部71及びメッシュ部72を介して凹部62(均圧流路100)の外部に戻り易くなるので、油上りを低減できる。
【0055】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、開口部71は、ブローバイガスプレート(仕切り板70)がケーシング2に取り付けられたときに、環状に形成されている凹部62と対向する位置に周方向Cに間隔を空けて複数設けられていてもよい。
【0056】
上記(3)の構成によれば、開口部71が周方向Cに分割されて設けられることで、個々の開口部71の周方向Cの長さが短くなる。これにより、メッシュ部72の周方向Cへの延在長さが短くなってメッシュ部72の剛性が向上する。よって、ブローバイガスが凹部62(均圧流路100)に流入する際にメッシュ部72を通過することによってメッシュ部72に外力が作用しても、メッシュ部72の変形等を抑制できる。
【0057】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、ブローバイガスプレート(仕切り板70)は、周方向Cで隣り合う2つの開口部71の間で開口部71が設けられていない少なくとも1つの非開口領域73を備えているとよい。非開口領域73の少なくとも1つは、ブローバイガスプレート(仕切り板70)がケーシング2に取り付けられたときに、凹部62内に設けられていてブローバイガスプレート(仕切り板70)に向かって突出する突部(リブ66)に対向する位置に設けられているとよい。
【0058】
上記(4)の構成によれば、ブローバイガス及び油滴が凹部62(均圧流路100)を周方向Cに流れる際に、突部(リブ66)と非開口領域73とが絞りのような役割を果たして圧力損失を生じさせることができ、凹部62(均圧流路100)内でのブローバイガス及び油滴の流速を低下させて凹部62(均圧流路100)からブローバイガスと共に持ち去られる油滴を少なくすることができる。また、突部(リブ66)と非開口領域73との間を周方向Cに流れたブローバイガス及び油滴が突部(リブ66)及びこれと対向する非開口領域73とによって形成された絞りの下流側で渦流れを形成することで油滴の合体が促進されて油滴が大きくなることが期待できる。これにより、凹部62(均圧流路100)からブローバイガスと共に持ち去られる油滴を少なくすることが期待できる。
【0059】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)又は(4)の構成において、ブローバイガスプレート(仕切り板70)は、周方向Cで隣り合う2つの開口部71の間で開口部71が設けられていない少なくとも1つの非開口領域73を備えているとよい。非開口領域73の少なくとも1つは、ブローバイガスプレート(仕切り板70)がケーシング2に取り付けられたときに、凹部62に開口する開口端81に対向する位置に設けられているとよい。
【0060】
上記(5)の構成によれば、開口部71が凹部62に開口する開口端81に対向する位置に設けられている場合と比べて、凹部62に開口する開口端81からブローバイガスと共に持ち去られる油滴を少なくすることができる。
【0061】
(6)本開示の少なくとも一実施形態に係る往復動圧縮機1は、上記(1)乃至(5)の何れかのブローバイガスプレート(仕切り板70)を備える。本開示の少なくとも一実施形態に係る往復動圧縮機1は、吸入室28、吐出室30、シリンダ32、およびクランク室34が設けられ、クランク室34の下部が潤滑油を貯留する貯油室35として構成されたハウジング22を備える。本開示の少なくとも一実施形態に係る往復動圧縮機1は、シリンダ32内に往復動可能に配置されたピストン36と、クランク室34に回転可能に配置され、ピストン36と連接棒を介して連結されたクランク軸40と、クランク軸40を軸受けする軸受部50Aが配置される軸受ハウジング60と、を備える。凹部62は、軸受ハウジング60に形成されている。
【0062】
上記(6)の構成によれば、開口部71にメッシュ部72を設けることで、開口部71の面積を比較的大きくして、凹部62(均圧流路100)に侵入するブローバイガスの流速を低下させて、ブローバイガスの油滴同伴力を低下させることができるので、凹部62(均圧流路100)に侵入する油滴の量を減らすことができる。また、上記(6)の構成によれば、油滴の凹部62(均圧流路100)への侵入をメッシュ部72で阻害できるので、凹部62(均圧流路100)に侵入する油滴の量を減らすことができる。これにより、油上りを低減できる。
【0063】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、凹部62は、環状に形成されていて周方向Cの一方側の端部621a及び他方側の端部621bが下方を向くよう設けられているとよい。開口部71は、凹部62の一方側の端部621a、又は、他方側の端部621bの少なくともいずれか一方に対向する位置を含むように形成されているとよい。少なくともいずれか一方の端部621a、621bにおいて、凹部62を画定する周方向Cを向いた壁面621cは、凹部62の底面62aから開口部71に向かうにつれて下方に向かうように傾斜しているとよい。
【0064】
上記(7)の構成によれば、上記壁面621cを伝って凹部62(均圧流路100)内に溜まった潤滑油が開口部71及びメッシュ部72を介しクランク室34に戻り易くなるので、油上りを低減できる。
【符号の説明】
【0065】
1 往復動圧縮機
2 ケーシング
22 ハウジング
24 吸入ポート
26 吐出ポート
28 吸入室
30 吐出室
32 シリンダ
34 クランク室
35 貯油室
36 ピストン
38 連接棒
40 クランク軸
50A 軸受部
60 軸受ハウジング
62 凹部
62a 底面
66 リブ
66a 頂部
70 仕切り板
71 開口部
72 メッシュ部
73 非開口領域
74 潤滑油排出孔
80 均圧路
81 開口端(入口端)
82 開口端(出口端)
100 均圧流路
621 第1凹部
621a 端部
621b 端部
621c 壁面
622 第2凹部
623 壁部
623a 頂部
624 壁部
624a 頂部
図1
図2
図3
図4
図5
図6